処理中

しばらくお待ちください...

設定

設定

1. WO2020003595 - 非水電解質二次電池

Document

明 細 書

発明の名称 非水電解質二次電池

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009  

課題を解決するための手段

0010  

発明の効果

0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090  

産業上の利用可能性

0091  

符号の説明

0092  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1  

明 細 書

発明の名称 : 非水電解質二次電池

技術分野

[0001]
 本発明は、シリコン粒子を分散させたリチウムシリケート相を含む負極活物質を用いた非水電解質二次電池に関する。

背景技術

[0002]
 近年、非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、高電圧かつ高エネルギー密度を有するため、小型民生用途、電力貯蔵装置および電気自動車の電源として期待されている。電池の高エネルギー密度化が求められる中、理論容量密度の高い負極活物質として、リチウムと合金化するケイ素(シリコン)を含む材料の利用が期待されている。
[0003]
 SiO xは、黒鉛と比べて、単位体積あたりのリチウムイオンの吸蔵量が多い反面、充放電時の不可逆容量が大きい。SiO(x=1)を用いた非水電解質二次電池では、初回充放電効率が、例えば約70%と低くなり得る。
[0004]
 SiO xは、SiO 2のマトリクスと、当該マトリクス中に分散した微小なSi粒子と、を含む。充電時に、Si粒子では下記の式(i)の反応が起こり、SiO 2のマトリクスでは下記の式(ii)の反応が起こる。
[0005]
 (i)Si+4Li ++4e -→Li 4Si
 (ii)2SiO 2+8Li ++8e -→Li 4Si+Li 4SiO 4
[0006]
 上記の式(ii)の反応は不可逆反応である。すなわち、充電時にSiO 2のマトリクス中に吸蔵されたリチウムイオンは、放電時に放出されにくい。Li 4SiO 4の生成が、初回充放電効率を低下させる主な要因である。
[0007]
 これに対して、特許文献1では、負極活物質に、Li 2zSiO 2+z(0<z<2)で表されるリチウムシリケート相と、リチウムシリケート相中に分散したシリコン粒子と、を含む複合材料を用いた非水電解質二次電池が、提案されている。上記複合材料は、SiO xに比べて不可逆容量が小さいため、初回充放電効率が向上する。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 国際公開第2016/035290号パンフレット

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 電子機器などの更なる高性能化に伴い、その電源として期待される上記複合材料を用いた非水電解質二次電池について、更なる充放電効率の向上(高容量化)が求められている。

課題を解決するための手段

[0010]
 以上に鑑み、本発明の一側面は、正極と、負極と、電解液と、を備え、前記負極は、電気化学的にリチウムを吸蔵および放出可能な負極活物質を含み、前記負極活物質は、リチウムシリケート相と、前記リチウムシリケート相内に分散しているシリコン粒子と、を含み、前記リチウムシリケート相は、リチウムと、ケイ素と、酸素と、を含む酸化物相であり、前記リチウムシリケート相における前記ケイ素に対する前記酸素の原子比:O/Siは、2超4未満であり、前記電解液は、ハロゲン化ベンゼンを含み、前記電解液中の前記ハロゲン化ベンゼンの含有量は、1ppm以上500ppm以下である、非水電解質二次電池に関する。

発明の効果

[0011]
 本発明によれば、非水電解質二次電池の初期の充放電効率を高めることができる。
 本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池の一部を切欠いた概略斜視図である。

発明を実施するための形態

[0013]
 本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池は、正極と、負極と、電解液と、を備え、負極は、電気化学的にリチウムを吸蔵および放出可能な負極活物質を含む。負極活物質は、リチウムシリケート相と、リチウムシリケート相内に分散しているシリコン粒子と、を含む負極材料(以下、「負極材料LSX」、あるいは、単に「LSX」とも称する。)である。リチウムシリケート相は、リチウム(Li)と、ケイ素(Si)と、酸素(O)と、を含む酸化物相である。リチウムシリケート相におけるSiに対するOの原子比:O/Siは、2超4未満である。電解液は、ハロゲン化ベンゼンを含む。電解液中のハロゲン化ベンゼンの含有量は、質量比で1ppm以上500ppm以下である。
[0014]
 O/Siが2超4未満(後述の式中のzが0<z<2)の場合、安定性やリチウムイオン伝導性の面で有利である。リチウムシリケート相におけるSiに対するLiの原子比:Li/Siは、例えば、0超4未満である。リチウムシリケート相は、Li、SiおよびO以外に、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)などの他の元素を微量含んでもよい。
 上記のリチウムシリケート相は、式:Li 2zSiO 2+z(0<z<2)で表される組成を有し得る。
[0015]
 例えばLSXのリチウムシリケート相の組成がLi 2Si 25(z=1/2)である場合、充電時に、シリコン粒子では式(1)の反応が進行し、リチウムシリケート相の一部では式(2)の反応が進行する。式(2)は不可逆反応である。
 (1)Si+4Li ++4e -→Li 4Si
 (2)0.8Li 2Si 25+4.8Li ++4.8e -→0.6Li 4Si+Li 4SiO 4
[0016]
 LSXは、SiOxと比べて、Li 4SiO 4の生成に消費されるリチウムの割合が小さく、不可逆容量が小さい。このようなLSXを用いた非水電解質二次電池の電解液にハロゲン化ベンゼンを含ませると、主に初回充電時に、LSX表面にハロゲン化ベンゼン由来の被膜が適度に形成される。LSX表面が上記被膜で適度に覆われることにより、上記式(2)の不可逆反応(Li 4SiO 4の生成)が抑制され、上記式(1)の反応が効率的に進行する。すなわち、ハロゲン化ベンゼンの添加により、不可逆反応に消費されるリチウムの割合が減少する。よって、LSXを用いた非水電解質二次電池の初期の充放電効率が向上する。上記被膜は、適度に疎な膜であるため、反応抵抗が小さく、良好なリチウムイオン伝導性を有するものと考えられる。
[0017]
 ただし、電解液中のハロゲン化ベンゼンの含有量が1ppm未満である場合、ハロゲン化ベンゼンの添加による効果が小さくなる。よって、負極の不可逆容量を抑制することが困難になり、初期の充放電効率を向上させる効果が得られない。
 また、電解液中のハロゲン化ベンゼンの含有量が500ppm超である場合、LSX表面に被膜が過剰に形成されるため、被膜の反応抵抗が増大する。よって、上記式(2)だけでなく、上記(1)の反応も抑制され、初期の充放電効率および初期容量がかえって低下する。
[0018]
 初期の充放電効率向上の観点から、電解液中のハロゲン化ベンゼンの含有量は、1ppm以上400ppm以下であることが好ましい。
[0019]
 ハロゲン化ベンゼンは、ベンゼン環に少なくとも1つのハロゲン原子が結合した化合物である。ベンゼン環に結合するハロゲン原子の種類は特に限定されないが、適度に疎な被膜を形成しやすい点で、フッ素原子および塩素原子の少なくとも一方であることが好ましい。
[0020]
 ベンゼン環に複数のハロゲン原子が結合している場合、複数のハロゲン原子の相対的な位置関係は、特に限定されない。ベンゼン環に結合するハロゲン原子の相対的な位置関係に依らず、ベンゼン環にハロゲン原子が結合していれば、適度に疎な被膜が形成され、充放電効率の向上効果が得られる。また、ベンゼン環に結合する複数のハロゲン原子の種類は、同じでもよく、異なってもよい。
[0021]
 ハロゲン化ベンゼンの具体例としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼンおよびヘキサフルオロベンゼンよりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。中でも、クロロベンゼンが好ましい。ジクロロベンゼンは、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼンおよび1,4-ジクロロベンゼンのいずれでもよく、ジフルオロベンゼンは、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼンおよび1,4-ジフルオロベンゼンのいずれでもよい。
[0022]
 電解液中のハロゲン化ベンゼンの含有量は、電池に含まれる電解液について、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)を用いて求められる。
[0023]
 電解液は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解したリチウム塩と、添加剤として特定量のハロゲン化ベンゼンと、を含む。
 電位窓が広く、電気伝導度が高いという点で、リチウム塩は、LiN(SO 2F) 2(以下、LFSIと称する。)およびLiPF 6の少なくとも一方を含むことが好ましい。LiPF 6は、正極集電体などに不動態皮膜を適度に形成するため、正極集電体などの腐食が抑制され、電池信頼性が向上する。LFSIは、LSX表面に良質な被膜(SEI:Solid Electrolyte Interface)を形成しやすい。
[0024]
 電解液中のLFSIの濃度は、0.1mol/L以上1.0mol/L以下であることが好ましい。電解液中のLiPF 6の濃度は、0.5mol/L以上1.5mol/L以下であることが好ましい。電解液中のLFSIおよびLiPF 6の合計濃度は、1mol/L以上2mol/L以下であることが好ましい。上記範囲の濃度のLFSIおよびLiPF 6を併用する場合、上記のLFSIおよびLiPF 6による効果がバランス良く得られ、電池の初回充放電効率が更に高められる。
[0025]
 [負極材料LSX]
 上記のリチウムシリケート相は、Li 2zSiO 2+z(0<z<2)で表される組成を有し得る。zが小さいほど、リチウムシリケート相内でリチウムを吸蔵し得るサイトが増える。よって、ハロゲン化ベンゼンによるリチウムシリケート相でのリチウムの吸蔵を抑制する効果が顕著に得られる。安定性、作製容易性、リチウムイオン伝導性などの観点から、zは、0<z<1の関係を満たすことが好ましく、z=1/2がより好ましい。
[0026]
 リチウムシリケート相は、SiO x中のSiO 2マトリクスに比べ、リチウムと反応し得るサイトが少ない。よって、LSXはSiO xと比べて充放電に伴う不可逆容量を生じにくい。リチウムシリケート相内にシリコン粒子を分散させる場合、充放電の初期に、優れた充放電効率が得られる。また、シリコン粒子の含有量を任意に変化させることができるため、高容量の負極を設計することができる。
[0027]
 リチウムシリケート相内に分散しているシリコン粒子の結晶子サイズは、例えば10nm以上である。シリコン粒子は、ケイ素(Si)単体の粒子状の相を有する。シリコン粒子の結晶子サイズを10nm以上とする場合、シリコン粒子の表面積を小さく抑えることができるため、不可逆容量の生成を伴うシリコン粒子の劣化を生じにくい。シリコン粒子の結晶子サイズは、シリコン粒子のX線回折(XRD)パターンのSi(111)面に帰属される回析ピークの半値幅からシェラーの式により算出される。
[0028]
 負極材料LSXは、構造安定性にも優れている。シリコン粒子は、リチウムシリケート相内に分散しているため、充放電に伴う負極材料LSXの膨張収縮が抑制されるためである。シリコン粒子自身の亀裂を抑制する観点から、シリコン粒子の平均粒径は、初回充電前において、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。初回充電後においては、シリコン粒子の平均粒径は、400nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。シリコン粒子を微細化することにより、充放電時の体積変化が小さくなり、負極材料LSXの構造安定性が更に向上する。
[0029]
 シリコン粒子の平均粒径は、負極材料LSXの断面SEM(走査型電子顕微鏡)写真を観察することにより測定される。具体的には、シリコン粒子の平均粒径は、任意の100個のシリコン粒子の最大径を平均して求められる。シリコン粒子は、複数の結晶子が寄り集まることにより形成されている。
[0030]
 負極材料LSX中のシリコン粒子の含有量は、高容量化の観点からは、例えば30質量%以上であればよく、35質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましい。この場合、リチウムイオンの拡散性が良好であり、優れた負荷特性を得やすくなる。一方、サイクル特性の向上の観点からは、負極材料LSX中のシリコン粒子の含有量が95質量%以下であることが好ましく、75質量%以下がより好ましい。リチウムシリケート相で覆われずに露出するシリコン粒子の表面が減少し、電解液とシリコン粒子との反応が抑制されやすいからである。
[0031]
 シリコン粒子の含有量は、Si-NMRにより測定することができる。以下、Si-NMRの望ましい測定条件を示す。
 測定装置:バリアン社製、固体核磁気共鳴スペクトル測定装置(INOVA‐400)
 プローブ:Varian 7mm CPMAS-2
 MAS:4.2kHz
 MAS速度:4kHz
 パルス:DD(45°パルス+シグナル取込時間1Hデカップル)
 繰り返し時間:1200sec
 観測幅:100kHz
 観測中心:-100ppm付近
 シグナル取込時間:0.05sec
 積算回数:560
 試料量:207.6mg
[0032]
 リチウムシリケート相Li 2zSiO 2+zの組成は、例えば、以下の方法により分析することができる。
 まず、負極材料LSXの試料の質量を測定する。その後、以下のように、試料に含まれる炭素、リチウムおよび酸素の含有量を算出する。次に、試料の質量から炭素含有量を差し引き、残量に占めるリチウムおよび酸素含有量を算出し、リチウム(Li)と酸素(O)のモル比から2zと(2+z)の比が求められる。
[0033]
 炭素含有量は、炭素・硫黄分析装置(例えば、株式会社堀場製作所製のEMIA-520型)を用いて測定する。磁性ボードに試料を測り取り、助燃剤を加え、1350℃に加熱された燃焼炉(キャリアガス:酸素)に挿入し、燃焼時に発生した二酸化炭素ガス量を赤外線吸収により検出する。検量線は、例えば、Bureau of Analysed Sampe.Ltd製の炭素鋼(炭素含有量0.49%)を用いて作成し、試料の炭素含有量を算出する(高周波誘導加熱炉燃焼-赤外線吸収法)。
[0034]
 酸素含有量は、酸素・窒素・水素分析装置(例えば、株式会社堀場製作所製のEGMA-830型)を用いて測定する。Niカプセルに試料を入れ、フラックスとなるSnペレットおよびNiペレットとともに、電力5.75kWで加熱された炭素坩堝に投入し、放出される一酸化炭素ガスを検出する。検量線は、標準試料Y 23を用いて作成し、試料の酸素含有量を算出する(不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法)。
[0035]
 リチウム含有量は、熱フッ硝酸(熱したフッ化水素酸と硝酸の混酸)で試料を全溶解し、溶解残渣の炭素をろ過して除去後、得られたろ液を誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES)で分析して測定する。市販されているリチウムの標準溶液を用いて検量線を作成し、試料のリチウム含有量を算出する。
[0036]
 負極材料LSXの試料の質量から、炭素含有量、酸素含有量、リチウム含有量を差し引いた量がシリコン含有量である。このシリコン含有量には、シリコン粒子の形で存在するシリコンと、リチウムシリケートの形で存在するシリコンとの双方の寄与が含まれている。Si-NMR測定によりシリコン粒子の含有量が求められ、負極材料LSX中にリチウムシリケートの形で存在するシリコンの含有量が求まる。
[0037]
 負極材料LSXは、平均粒径1~25μm、更には4~15μmの粒子状材料(以下、LSX粒子とも称する。)を形成していることが好ましい。上記粒径範囲では、充放電に伴う負極材料LSXの体積変化による応力を緩和しやすく、良好なサイクル特性を得やすくなる。LSX粒子の表面積も適度になり、非水電解質との副反応による容量低下も抑制される。
[0038]
 LSX粒子の平均粒径とは、レーザー回折散乱法で測定される粒度分布において、体積積算値が50%となる粒径(体積平均粒径)を意味する。測定装置には、例えば、株式会社堀場製作所(HORIBA)製「LA-750」を用いることができる。
[0039]
 LSX粒子は、その表面の少なくとも一部を被覆する導電性材料を具備することが好ましい。リチウムシリケート相は、電子伝導性に乏しいため、LSX粒子の導電性も低くなりがちである。導電性材料で表面を被覆することで、導電性を飛躍的に高めることができる。導電層は、実質上、LSX粒子の平均粒径に影響しない程度に薄いことが好ましい。
[0040]
 次に、本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池について詳述する。非水電解質二次電池は、例えば、以下のような負極と、正極と、非水電解質とを備える。
[0041]
 [負極]
 負極は、例えば、負極集電体と、負極集電体の表面に形成され、かつ負極活物質を含む負極合剤層とを具備する。負極合剤層は、負極合剤を分散媒に分散させた負極スラリーを、負極集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより形成できる。乾燥後の塗膜を、必要により圧延してもよい。負極合剤層は、負極集電体の一方の表面に形成してもよく、両方の表面に形成してもよい。
[0042]
 負極合剤は、負極活物質として、負極材料LSX(もしくはLSX粒子)を必須成分として含み、任意成分として、結着剤、導電剤、増粘剤などを含むことができる。負極材料LSX中のシリコン粒子は、多くのリチウムイオンを吸蔵できることから、負極の高容量化に寄与する。
[0043]
 負極活物質は、更に、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出する炭素材料を含むことが好ましい。負極材料LSXは、充放電に伴って体積が膨張収縮するため、負極活物質に占めるその比率が大きくなると、充放電に伴って負極活物質と負極集電体との接触不良が生じやすい。一方、負極材料LSXと炭素材料とを併用することで、シリコン粒子の高容量を負極に付与しながら優れたサイクル特性を達成することが可能になる。負極材料LSXと炭素材料との合計に占める負極材料LSXの割合は、例えば3~30質量%が好ましい。これにより、高容量化とサイクル特性の向上を両立し易くなる。
[0044]
 炭素材料としては、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)などが例示できる。中でも、充放電の安定性に優れ、不可逆容量も少ない黒鉛が好ましい。黒鉛とは、黒鉛型結晶構造を有する材料を意味し、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン粒子などが含まれる。炭素材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0045]
 負極集電体としては、無孔の導電性基板(金属箔など)、多孔性の導電性基板(メッシュ体、ネット体、パンチングシートなど)が使用される。負極集電体の材質としては、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金などが例示できる。負極集電体の厚さは、特に限定されないが、負極の強度と軽量化とのバランスの観点から、1~50μmが好ましく、5~20μmがより望ましい。
[0046]
 結着剤としては、樹脂材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;アラミド樹脂などのポリアミド樹脂;ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、エチレン-アクリル酸共重合体などのアクリル樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニルなどのビニル樹脂;ポリビニルピロリドン;ポリエーテルサルフォン;スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)などのゴム状材料などが例示できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0047]
 導電剤としては、例えば、アセチレンブラックやカーボンナノチューブなどのカーボン類;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;アルミニウムなどの金属粉末類;酸化亜鉛やチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;フェニレン誘導体などの有機導電性材料などが例示できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0048]
 増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその変性体(Na塩などの塩も含む)、メチルセルロースなどのセルロース誘導体(セルロースエーテルなど);ポリビニルアルコールなどの酢酸ビニルユニットを有するポリマーのケン化物;ポリエーテル(ポリエチレンオキシドなどのポリアルキレンオキサイドなど)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0049]
 分散媒としては、特に制限されないが、例えば、水、エタノールなどのアルコール、テトラヒドロフランなどのエーテル、ジメチルホルムアミドなどのアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、またはこれらの混合溶媒などが例示できる。
[0050]
 [正極]
 正極は、例えば、正極集電体と、正極集電体の表面に形成された正極合剤層とを具備する。正極合剤層は、正極合剤を分散媒に分散させた正極スラリーを、正極集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより形成できる。乾燥後の塗膜を、必要により圧延してもよい。正極合剤層は、正極集電体の一方の表面に形成してもよく、両方の表面に形成してもよい。
[0051]
 正極活物質としては、リチウム複合金属酸化物を用いることができる。例えば、Li aCoO 2、Li aNiO 2、Li aMnO 2、Li aCo bNi 1-b2、Li aCo b1-bc、Li aNi 1-bbc、Li aMn 24、Li aMn 2-bb4、LiMPO 4、Li 2MPO 4F(Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも一種である。)が挙げられる。ここで、a=0~1.2、b=0~0.9、c=2.0~2.3である。なお、リチウムのモル比を示すa値は、活物質作製直後の値に相当し、充放電により増減する。
[0052]
 中でも、Li aNi b1-b2(Mは、Mn、CoおよびAlよりなる群から選択された少なくとも1種であり、0<a≦1.2であり、0.3≦b≦1である。)で表されるリチウムニッケル複合酸化物が好ましい。高容量化の観点から、0.85≦b≦1を満たすことがより好ましい。結晶構造の安定性の観点からは、MとしてCoおよびAlを含むLi aNi bCo cAl d2(0<a≦1.2、0.85≦b<1、0<c<0.15、0<d≦0.1、b+c+d=1)が更に好ましい。
[0053]
 結着剤および導電剤としては、負極について例示したものと同様のものが使用できる。導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛を用いてもよい。
[0054]
 正極集電体の形状および厚みは、負極集電体に準じた形状および範囲からそれぞれ選択できる。正極集電体の材質としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタンなどが例示できる。
[0055]
 [電解液]
 電解液は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解したリチウム塩と、添加剤として特定量のハロゲン化ベンゼンと、を含む。
[0056]
 電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.5mol/L以上2mol/L以下が好ましい。リチウム塩濃度を上記範囲に制御することで、イオン伝導性に優れ、適度の粘性を有する電解液を得ることができる。ただし、リチウム塩濃度は上記に限定されない。
[0057]
 非水溶媒としては、例えば、環状炭酸エステル(後述の不飽和環状炭酸エステルを除く。)、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステルなどが用いられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)などが挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン(GVL)などが挙げられる。鎖状カルボン酸エステルとしては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルなどが挙げられる。非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0058]
 リチウム塩としては、公知のリチウム塩を用いることができる。好ましいリチウム塩としては、例えば、LiClO 4、LiBF 4、LiPF 6、LiAlCl 4、LiSbF 6、LiSCN、LiCF 3SO 3、LiCF 3CO 2、LiAsF 6、LiB 10Cl 10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、ホウ酸塩類、イミド塩類などが挙げられる。ホウ酸塩類としては、ビス(1,2-ベンゼンジオレート(2-)-O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3-ナフタレンジオレート(2-)-O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’-ビフェニルジオレート(2-)-O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5-フルオロ-2-オレート-1-ベンゼンスルホン酸-O,O’)ほう酸リチウムなどが挙げられる。イミド塩類としては、LFSI、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(CF 3SO 22)、トリフルオロメタンスルホン酸ノナフルオロブタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(CF 3SO 2)(C 49SO 2))、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(C 25SO 22)などが挙げられる。これらの中でも、LiPF 6およびLFSIの少なくとも一方が好ましい。リチウム塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0059]
 電解液に、ハロゲン化ベンゼン以外の他の添加剤を更に含ませてもよい。他の添加剤として、分子内に炭素-炭素の不飽和結合を少なくとも1つ有する環状炭酸エステル(以下、不飽和環状炭酸エステルと称する。)を含ませてもよい。不飽和環状炭酸エステルが負極上で分解することにより負極表面にリチウムイオン伝導性の高い被膜が形成され、充放電効率が更に高められる。
[0060]
 不飽和環状炭酸エステルとしては、公知の化合物を用いることができる。好ましい不飽和環状炭酸エステルとしては、例えば、ビニレンカーボネート、4-メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、4-エチルビニレンカーボネート、4,5-ジエチルビニレンカーボネート、4-プロピルビニレンカーボネート、4,5-ジプロピルビニレンカーボネート、4-フェニルビニレンカーボネート、4,5-ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネートなどが挙げられる。これらの中でも、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、およびジビニルエチレンカーボネートよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。不飽和環状炭酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不飽和環状炭酸エステルは、水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい。
[0061]
 [セパレータ]
 通常、正極と負極との間には、セパレータを介在させることが望ましい。セパレータは、イオン透過度が高く、適度な機械的強度および絶縁性を備えている。セパレータとしては、微多孔薄膜、織布、不織布などを用いることができる。セパレータの材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンが好ましい。
[0062]
 非水電解質二次電池の構造の一例としては、正極および負極がセパレータを介して巻回されてなる電極群と、非水電解質とが外装体に収容された構造が挙げられる。或いは、巻回型の電極群の代わりに、正極および負極がセパレータを介して積層されてなる積層型の電極群など、他の形態の電極群が適用されてもよい。非水電解質二次電池は、例えば円筒型、角型、コイン型、ボタン型、ラミネート型など、いずれの形態であってもよい。
[0063]
 図1は、本発明の一実施形態に係る角形の非水電解質二次電池の一部を切欠いた概略斜視図である。
 電池は、有底角形の電池ケース4と、電池ケース4内に収容された電極群1および非水電解質(図示せず)とを備えている。電極群1は、長尺帯状の負極と、長尺帯状の正極と、これらの間に介在し、かつ直接接触を防ぐセパレータとを有する。電極群1は、負極、正極、およびセパレータを、平板状の巻芯を中心にして捲回し、巻芯を抜き取ることにより形成される。
[0064]
 負極の負極集電体には、負極リード3の一端が溶接などにより取り付けられている。負極リード3の他端は、樹脂製の絶縁板(図示せず)を介して、封口板5に設けられた負極端子6に電気的に接続されている。負極端子6は、樹脂製のガスケット7により、封口板5から絶縁されている。正極の正極集電体には、正極リード2の一端が溶接などにより取り付けられている。正極リード2の他端は、絶縁板を介して、封口板5の裏面に接続されている。すなわち、正極リード2は、正極端子を兼ねる電池ケース4に電気的に接続されている。絶縁板は、電極群1と封口板5とを隔離するとともに負極リード3と電池ケース4とを隔離している。封口板5の周縁は、電池ケース4の開口端部に嵌合しており、嵌合部はレーザー溶接されている。このようにして、電池ケース4の開口部は、封口板5で封口される。封口板5に設けられている非水電解質の注入孔は、封栓8により塞がれている。
[0065]
 以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
 <実施例1>
 [負極材料LSXの調製]
 二酸化ケイ素と炭酸リチウムとを原子比:Si/Liが1.05となるように混合し、混合物を950℃空気中で10時間焼成することにより、式:Li 2Si 25(z=0.5)で表わされるリチウムシリケートを得た。得られたリチウムシリケートは平均粒径10μmになるように粉砕した。
[0066]
 平均粒径10μmのリチウムシリケート(Li 2Si 25)と、原料シリコン(3N、平均粒径10μm)とを、45:55の質量比で混合した。混合物を遊星ボールミル(フリッチュ社製、P-5)のポット(SUS製、容積:500mL)に充填し、ポットにSUS製ボール(直径20mm)を24個入れて蓋を閉め、不活性雰囲気中で、200rpmで混合物を50時間粉砕処理した。
[0067]
 次に、不活性雰囲気中で粉末状の混合物を取り出し、不活性雰囲気中、ホットプレス機による圧力を印加した状態で、800℃で4時間焼成して、混合物の燒結体(負極材料LSX)を得た。
[0068]
 その後、負極材料LSXを粉砕し、40μmのメッシュに通した後、得られたLSX粒子を石炭ピッチ(JFEケミカル株式会社製、MCP250)と混合し、混合物を不活性雰囲気で、800℃で焼成し、LSX粒子の表面を導電性炭素で被覆して導電層を形成した。導電層の被覆量は、LSX粒子と導電層との総質量に対して5質量%とした。その後、篩を用いて、導電層を有する平均粒径5μmのLSX粒子を得た。
[0069]
 LSX粒子のXRD分析によりSi(111)面に帰属される回折ピークからシェラーの式で算出したシリコン粒子の結晶子サイズは15nmであった。
[0070]
 リチウムシリケート相の組成を上記方法(高周波誘導加熱炉燃焼-赤外線吸収法、不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES))により分析したところ、Si/Li比は1.0であり、Si-NMRにより測定されるLi 2Si 25の含有量は45質量%(シリコン粒子の含有量は55質量%)であった。
[0071]
 [負極の作製]
 導電層を有するLSX粒子と黒鉛とを混合し、負極活物質として用いた。導電層を有するLSX粒子と黒鉛との合計に占める黒鉛の割合を94質量%とした。負極活物質と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)とを、97.5:1:1.5の質量比で混合し、水を添加した後、混合機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス)を用いて攪拌し、負極スラリーを調製した。
[0072]
 次に、銅箔の表面に1m 2当りの負極合剤の質量が190gとなるように負極スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して、銅箔の両面に、密度1.5g/cm 3の負極合剤層が形成された負極を作製した。
[0073]
 [正極の作製]
 リチウムニッケル複合酸化物(LiNi 0.8Co 0.18Al 0.022)と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンとを、95:2.5:2.5の質量比で混合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した後、混合機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス)を用いて攪拌し、正極スラリーを調製した。次に、アルミニウム箔の表面に正極スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して、アルミニウム箔の両面に、密度3.6g/cm 3の正極合剤層が形成された正極を作製した。
[0074]
 [電解液の調製]
 非水溶媒にリチウム塩を溶解させて電解液を調製した。非水溶媒には、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、酢酸メチル(MA)とを、20:40:40の体積比で含む混合溶媒を用いた。電解液にハロゲン化ベンゼンとしてフルオロベンゼンを500ppm含ませた(仕込み量)。リチウム塩には、LiPF 6を用いた。電解液中のLiPF 6の濃度は、1.2mol/Lとした。
[0075]
 [非水電解質二次電池の作製]
 各電極にタブをそれぞれ取り付け、タブが最外周部に位置するように、セパレータを介して正極および負極を渦巻き状に巻回することにより電極群を作製した。電極群をアルミニウムラミネートフィルム製の外装体内に挿入し、105℃で2時間真空乾燥した後、電解液を注入し、外装体の開口部を封止して、電池A1を得た。
[0076]
 <実施例2~4>
 電解液の調製において、ハロゲン化ベンゼンとして表1に示す化合物を用い、電解液中のハロゲン化ベンゼンの含有量(仕込み量)を、表1に示す値とした。リチウム塩には、LiPF 6またはLiPF 6およびLFSIを用いた。電解液中のLiPF 6の濃度と、電解液中のLFSIの濃度とを、それぞれ、表1に示す値とした。上記以外、実施例1と同様にして電池A2~A4を作製した。
[0077]
 <比較例1>
 電解液の調製において、電解液にハロゲン化ベンゼンを含ませない以外、実施例1と同様にして電池B1を作製した。
[0078]
 <比較例2~4>
 電解液の調製において、ハロゲン化ベンゼンとして表1に示す化合物を用い、電解液中のハロゲン化ベンゼンの含有量(仕込み量)を、表1に示す値とした。リチウム塩には、LiPF 6およびLFSI用いた。電解液中のLiPF 6の濃度と、電解液中のLFSIの濃度とを、それぞれ、表1に示す値とした。上記以外、実施例1と同様にして電池B2~B4を作製した。
[0079]
 <比較例5>
 負極の作製において、負極活物質に黒鉛のみを用いた。電解液の調製において、電解液にハロゲン化ベンゼンを含ませなかった。上記以外、実施例1と同様にして電池B5を作製した。
[0080]
 <比較例6>
 負極の作製において、負極活物質に黒鉛のみを用いた。電解液の調製において、ハロゲン化ベンゼンとして表1に示す化合物を用い、電解液中のハロゲン化ベンゼンの含有量(仕込み量)を、表1に示す値とした。リチウム塩には、LiPF 6およびLFSIを用いた。電解液中のLiPF 6の濃度と、電解液中のLFSIの濃度とを、それぞれ、表1に示す値とした。上記以外、実施例1と同様にして電池B6を作製した。
[0081]
 上記で作製した各電池について、以下の方法で評価を行った。
[0082]
 [評価1:初回充放電効率および初期容量]
 作製後の各電池について、25℃の環境下で、0.3Itの電流で電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、その後、4.2Vの定電圧で電流が0.015Itになるまで定電圧充電した。その後、0.3Itの電流で電圧が2.75Vになるまで定電流放電を行った。なお、(1/X)Itは、電流を表し、(1/X)It(A)=定格容量(Ah)/X(h)であり、Xは定格容量分の電気を充電または放電するための時間を表す。例えば、0.5Itとは、X=2であり、電流値が定格容量(Ah)/2(h)であることを意味する。
[0083]
 充電と放電との間の休止期間は10分とした。充放電は25℃の環境下で行った。
 このときの充電容量に対する放電容量の割合(百分率)を、初回充放電効率として求めた。また、このときの放電容量を、初期容量として求めた。
 評価結果を表1に示す。
[0084]
 [評価2:電池中の電解液の分析]
 上記評価1の充放電条件で充放電を5サイクル繰り返した。その後、電池を取り出して分解し、電解液の成分をガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)により分析した。
[0085]
 電解液の分析に用いたGCMSの測定条件は以下の通りである。
 装置:島津製作所製、GC17A、GCMS-QP5050A
 カラム:アジレントテクノロジー社製、HP-1(膜厚1.0μm×長さ60m)
 カラム温度:50℃→110℃(5℃/min,12min hold)→250℃(5℃/min,7min hold)→300℃(10℃/min,20min hold)
 スプリット比:1/50
 線速度:29.2cm/s
 注入口温度:270℃
 注入量:0.5μL
 インターフェース温度:230℃
 質量範囲:m/z=30~400(SCANモード)、m/z=29,31,32,43,45,60(SIMモード)
 分析により得られたハロゲン化ベンゼンの含有量(電解液全体に対する質量比)を、表1に示す。
[0086]
 [評価3:サイクル容量維持率]
 0.3Itの電流で電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、その後、4.2Vの定電圧で電流が0.015Itになるまで定電圧充電した。その後、0.3Itの電流で電圧が2.75Vになるまで定電流放電を行った。充電と放電との間の休止期間は10分とした。充放電は25℃の環境下で行った。
 上記充放電の条件で充放電を繰り返した。1サイクル目の放電容量に対する500サイクル目の放電容量の割合(百分率)を、サイクル容量維持率として求めた。
 評価結果を表1に示す。
[0087]
[表1]


[0088]
 実施例1~4(電池A1~A4)および比較例2~4(電池B2~B4)のいずれも、ハロゲン化ベンゼンの含有量について、分析値が仕込み量よりも小さくなった。これは、ハロゲン化ベンゼンがLSX表面の被膜形成に利用されたことなどによるものと考えられる。
[0089]
 ハロゲン化ベンゼンの含有量(分析値)が1ppm以上500ppm以下の電池A1~A4では、初回充放電効率、初期容量、およびサイクル容量維持率が、高められた。
 電池A3、A4は、電池A1と比べて、電解液中のハロゲン化ベンゼンの含有量は少ないが、電解液のリチウム塩としてLiPF 6とともにLFSIを用いたため、初回充放電効率および初期容量が、更に高められた。電池A3、A4では、電解液中のLFSIの濃度が0.1mol/L以上1.0mol/L以下であり、電解液中のLiPF 6の濃度が0.5mol/L以上1.5mol/L以下であった。
[0090]
 電解液にハロゲン化ベンゼンを含ませない電池B1では、初回充放電効率、初期容量、およびサイクル容量維持率が低下した。
 電解液中のハロゲン化ベンゼンの含有量(分析値)が500ppm超である電池B2、B3では、LSX表面にハロゲン化ベンゼン由来の被膜が過剰に形成されたものと考えられ、初回充放電効率、初期容量、およびサイクル容量維持率が低下した。
 電解液中のハロゲン化ベンゼンの含有量(分析値)が1ppm未満である電池B4では、ハロゲン化ベンゼン添加による効果が小さいため、初回充放電効率、初期容量およびサイクル容量維持率が向上しなかった。
 電池B5、B6では、負極活物質に黒鉛のみを用いてLSXを用いなかったため、初期容量が低下した。一方、ハロゲン化ベンゼン添加による効果は見られなかった。

産業上の利用可能性

[0091]
 本発明に係る非水電解質二次電池は、移動体通信機器、携帯電子機器などの主電源に有用である。
 本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。

符号の説明

[0092]
 1:電極群、2:正極リード、3:負極リード、4:電池ケース、5:封口板、6:負極端子、7:ガスケット、8:封栓

請求の範囲

[請求項1]
 正極と、負極と、電解液と、を備え、
 前記負極は、電気化学的にリチウムを吸蔵および放出可能な負極活物質を含み、
 前記負極活物質は、リチウムシリケート相と、前記リチウムシリケート相内に分散しているシリコン粒子と、を含み、
 前記リチウムシリケート相は、リチウムと、ケイ素と、酸素と、を含む酸化物相であり、
 前記リチウムシリケート相における前記ケイ素に対する前記酸素の原子比:O/Siは、2超4未満であり、
 前記電解液は、ハロゲン化ベンゼンを含み、
 前記電解液中の前記ハロゲン化ベンゼンの含有量は、1ppm以上500ppm以下である、非水電解質二次電池。
[請求項2]
 前記リチウムシリケート相の組成は、式:Li 2zSiO 2+zで表され、
 前記式中のzは、0<z<2の関係を満たす、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
[請求項3]
 前記式中のzは、0<z<1の関係を満たす、請求項2に記載の非水電解質二次電池。
[請求項4]
 前記ハロゲン化ベンゼンは、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼンおよびヘキサフルオロベンゼンよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
[請求項5]
 前記電解液は、非水溶媒と、前記非水溶媒に溶解したリチウム塩と、を含み
 前記リチウム塩は、LiN(SO 2F) 2およびLiPF 6の少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
[請求項6]
 前記電解液中の前記LiN(SO 2F) 2の濃度が、0.1mol/L以上1.0mol/L以下である、請求項5に記載の非水電解質二次電池。
[請求項7]
 前記電解液中の前記LiPF 6の濃度が、0.5mol/L以上1.5mol/L以下である、請求項5または6に記載の非水電解質二次電池。

図面

[ 図 1]