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1. WO2020003430 - コンクリートの補修方法および補修剤

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明 細 書

発明の名称 コンクリートの補修方法および補修剤

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006  

課題を解決するための手段

0007  

発明の効果

0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060  

符号の説明

0061  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3   4   5   6   7  

明 細 書

発明の名称 : コンクリートの補修方法および補修剤

技術分野

[0001]
 本発明は、コンクリートの補修方法および補修剤に関し、より詳細にはコンクリートに形成されたひび割れを補修する方法および補修剤に関する。

背景技術

[0002]
 コンクリートの表層は、乾燥、日射、温度変化、湿度変化、雨や二酸化炭素への暴露、凍害等の様々な環境にさらされる。これらの要因からコンクリートを守り、コンクリートの劣化を防いで長寿命化を目指すことが重要である。ところが、実際にひび割れのないコンクリートを作ることは困難である。
[0003]
 そこで、一般にコンクリート構造物に対しては、ひび割れ幅をある一定程度許容し、これを超えるひび割れ幅に対して適切な処置を施すことが、建築、土木構造物の設計施工で規定されている。一般的な建築構造物ではそのひび割れ幅は0.3mmとされ、一般的な土木構造物では0.2mmとされている。
[0004]
 従来、このようなコンクリートのひび割れを補修する方法として、アルカリ金属の珪酸塩水溶液を塗布し、ひび割れに浸透させ、コンクリート中の成分と反応してゲルを形成させ、そのゲルによりひび割れを充填する方法が提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2003-212674号公報
特許文献2 : 特開2004-323333号公報
特許文献3 : 特開2005-239523号公報
特許文献4 : 特開2010-070403号公報
特許文献5 : 特許第5504414号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 しかしながら、ひび割れ幅がある幅以上である場合、ゲルが形成されるまで珪酸塩水溶液をひび割れ内に保持することができないため、ゲルによるひび割れの充填が期待できないという問題があった。

課題を解決するための手段

[0007]
 本発明は、上記課題に鑑み、コンクリートの補修方法であって、
 ひび割れを有するコンクリートの表面に、珪酸塩を含む溶液を注入もしくは噴霧または塗布する第1の工程と、
 珪酸塩を含む溶液により湿潤したコンクリートの表面を持つひび割れ内部に、加水により流動化した無機系材料を注入または塗布して充填する第2の工程と、
 無機系材料がひび割れ内に充填された後のコンクリートの表面に、珪酸塩を含む溶液を噴霧または塗布する第3の工程とを含む、補修方法が提供される。

発明の効果

[0008]
 本発明によれば、ひび割れ幅がある幅以上であっても、ゲルによるひび割れの充填が可能となり、充分な防水性、止水性を付与することができる。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] コンクリートに形成されたひび割れを補修する作業の流れを示したフローチャート。
[図2] コンクリートにひび割れが生じた状態を説明する図。
[図3] ひび割れに各溶液が浸透する様子を示す概念図。
[図4] 2つのコンクリートブロックを収容する透明な容器を例示した面。
[図5] 容器内に2つのコンクリートブロックを収容し、周囲をコーキング材でシールしたところを例示した図。
[図6] 2つのコンクリートブロック間の隙間を塞いだところを例示した図。
[図7] 隙間を塞いだ2つのコンクリートブロックの上部に水を張ったところを例示した図。

発明を実施するための形態

[0010]
 コンクリートは、セメント、骨材、水、混和剤をミキサーに投入し、錬り混ぜ、型枠を組み、型枠内に打設し、凝結が適切に進むように養生し、脱型することにより所望の形状に製造される。
[0011]
 セメントは、石灰石や粘土等を混ぜ、焼成することにより生成されるクリンカと、石膏とを含む、水和反応や重合等により硬化する粉体である。骨材は、砂利や砂等で、セメントの割合を減らし、セメントの水和反応による発熱や水分の蒸発による収縮を抑制する。混和剤は、強度や耐久性の向上、凝結速度の調整等を目的として添加される薬剤である。
[0012]
 養生は、コンクリートが充分に硬化するまで、温度や水分含有量を管理する作業である。養生作業では、ブルーシート等でコンクリートを覆い、ヒータ等により温度を適温に保ち、散水する等して水分含有量を規定量に保つ。
[0013]
 コンクリートは、余剰の水分を含み、余剰水分が蒸発することによる乾燥収縮、温度変化、湿度変化、雨や二酸化炭素への暴露、凍害により、また、建築物の重量や地震力等の外部からの荷重を受けて、ひび割れが発生する。
[0014]
 コンクリートのひび割れは、ある一定程度の幅であれば許容される。その一方で、これを超えるひび割れ幅に対しては、適切な処置を施すことが要求される。処置が必要なひび割れには、ひび割れ幅が0.2mm未満の小さなひび割れから0.2mm以上の大きなひび割れまで存在する。これらの両方を補修する方法について、図1を参照して説明する。
[0015]
 図1は、コンクリートに形成されたひび割れを補修する作業の流れを示したフローチャートである。作業は、ステップ100から開始し、ステップ101で、補修するための溶液が注入しやすいようにコンクリート表面の下地を清掃する等して処理する。下地の清掃は、例えば刷毛、清水による高圧水、ワイヤブラシ等を使用して、埃等を払うことにより行われる。
[0016]
 コンクリート10には、上記の要因により、図2に示すようなひび割れ11が形成される。図2(a)は、外観に見えるひび割れを例示した図で、図2(b)は、切断線A-Aで切断した断面を拡大して示した図である。ひび割れ11が形成されると、雨水や二酸化炭素等がひび割れ11を介してコンクリート10内に入り込み、コンクリート10を劣化させ、内部の鉄筋が錆び等して、耐久性を低下させる。このひび割れを塞ぐために補修が行われる。
[0017]
 ステップ102では、コンクリート表面におけるひび割れの幅を測定する。ひび割れ幅は、図2(b)に示すひび割れの幅で、クラックスケール(定規)や、ひび割れをカメラで撮像し、撮像画像を解析することにより幅を計算するシステム等を測定器として使用し、測定することができる。ひび割れ幅は、ひび割れの大きさと関係し、大きいほど雨水等が浸透しやすくなり、コンクリートの強度が低下する。
[0018]
 ステップ103では、ひび割れ幅が0.2mm以上かどうかを確認し、0.2mm以上の場合、ステップ104へ進み、0.2mm未満の場合、ステップ124へ進む。ステップ104では、ひび割れ幅が0.3mm以上かどうかを確認する。ここでは、ひび割れ幅0.2mm、0.3mmの2つを基準として判断しているが、0.2mm、0.3mmに限定されるものではなく、適切な幅を適宜設定することができる。
[0019]
 ひび割れ幅が0.3mm以上の場合、ステップ105へ進み、ディスクラインダー等の研削装置を使用し、ひび割れに沿って断面がU形またはV形に溝を形成する。この場合、ひび割れが大きく、ひび割れが広がりやすいことから、補強効果を高めるために、このような溝を形成し、接着面積を増やすUカットシール充填工法を併用する。
[0020]
 溝内を清水による高圧水またはワイヤブラシ等で清掃した後、ステップ106へ進み、深く浸透させるために散水した後、ステップ107で、溝内に、珪酸塩を含む溶液(以下、珪酸塩溶液とする。)を注入もしくは噴霧または塗布し、ひび割れの表面を湿潤状態にする。このように湿潤状態にすることで、ひび割れ内部表面近傍のコンクリートを改質するとともに、後に無機系材料をひび割れに充填した際にコンクリートと一体化する。
[0021]
 珪酸塩溶液は、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムの少なくとも2つを混合し、水を適当量添加して作製されたアルカリシリケート水溶液とされる。アルカリシリケート水溶液は、pHが11~12で、珪酸塩の粒子径が約1~10nmと小さく、6~8(mPa・s)といった低粘度の溶液である。
[0022]
 これらの珪酸塩を2種類以上配合するのは、単独の珪酸塩の場合に比較して、硬度、密度が増し、化学耐久性が向上するからである。珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムの少なくとも2つを混合する際の配合比は、2つを混合する場合、モル比で1:9~9:1の範囲内とすることができ、3:7~7:3の範囲内にすることが望ましい。3つを混合する場合は、珪酸ナトリウムを5~90モル%、珪酸カリウムを5~90モル%、珪酸リチウムを5~90モル%の配合比率とすることができ、珪酸ナトリウムを15~70モル%、珪酸カリウムを15~70モル%、珪酸リチウムを15~70モル%の配合比率にすることが望ましい。
[0023]
 珪酸塩に添加する水量は、珪酸塩を分散させることができる量であればいかなる量であってもよい。
[0024]
 珪酸塩溶液を塗布する方法としては、はけ塗り、ロールコーティング、スプレーコート等を挙げることができる。珪酸塩溶液を噴霧する方法としては、スプレーを使用する方法を挙げることができる。スプレーを使用する際は、そのノズルをひび割れ部に密着させ、深い浸透を試みることができる。珪酸塩溶液を注入する方法としては、油差しを使用する方法を挙げることができる。
[0025]
 珪酸塩溶液を塗布等した後のひび割れ11は、例えば図3(a)に示すようなものとなる。図3(a)を参照すると、ひび割れ内部のコンクリート表面から厚さ数mm程度、珪酸塩溶液が浸透して改質部13を形成し、ひび割れ11内の露出した表面が、珪酸塩溶液12で濡れた状態となっている。
[0026]
 補修対象のコンクリートスラブがデッキスラブで、ひび割れが貫通している場合は、油差し等を用いて、珪酸塩溶液の底面滞留を意図してたっぷり注入する。
[0027]
 珪酸塩溶液を塗布等した後、ステップ108で、施工面全体に散水し、湿潤状態に置く。
[0028]
 このようにして湿潤状態に置いた後、ステップ109へ進み、加水により流動化した無機系材料を水性充填剤として注入または塗布する。粒子径が比較的大きい無機系材料により、ひび割れをある程度充填するためである。
[0029]
 無機系材料としては、例えばセメントを用いることができる。なお、一般に使用されるセメントの粒子は、粒子径が大きいので、微細な粒子であることが好ましい。セメントは流動化してセメントスラリーとすることで、手押しモルタルポンプで注入することが可能となる。また、流動化を改善するために、必要に応じて混和剤を添加してもよい。
[0030]
 セメントとしては、ポルトランドセメントを用いることができるが、これに限られるものではなく、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等であってもよい。高炉セメントは、高炉スラグの微粉末とポルトランドセメントを混合したセメントで、シリカセメントは、シリカを60%以上含む天然のシリカ質混合材とポルトランドセメントを混合したセメントである。フライアッシュセメントは、石炭の焼却灰(フライアッシュ)とポルトランドセメントを混合したセメントである。
[0031]
 セメントスラリーの注入は、低濃度スラリーで開始し、配合を変えながら水セメント比60~80%の高濃度スラリーにより行うことができる。
[0032]
 ステップ109で充填した後のひび割れ11は、図3(b)に示すようなものとなる。すなわち、ひび割れ11内のある程度の部分がセメント14により埋められる。加水により流動化したセメントは、珪酸塩溶液に比較して、粒子径も大きく、粘度も高いため、珪酸塩溶液のようにすぐに下方へ流れてしまうことはないからである。
[0033]
 本方法でのひび割れ充填は、セメント等の無機系材料を用い、エポキシ樹脂やアクリル系の樹脂等の有機系材料を使用しないため、材料の経年劣化の発生をなくすことができる。また、珪酸塩溶液と併用することによって、注入したセメントグラウトに硬化や収縮現象が現れて、ひび割れ面でコンクリートと剥離し、新たなひび割れを発生させることを防止することができる。
[0034]
 流動化した無機系材料を塗布する方法は、珪酸塩溶液を塗布する方法と同様、はけ塗り、ロールコーティング、スプレーコート等を挙げることができる。流動化した無機系材料を注入する方法では、手押しモルタルポンプを使用することができる。
[0035]
 セメント14は、充填されたひび割れ11内で水と反応し、重合して硬化し、コンクリート10と一体化する。これだけでは、その後の乾燥や温度変化による収縮に追従することができず、新たなひび割れが発生する。また、注入が進み、ひび割れ幅が小さくなると、セメント粒子を注入することができない部分が生じ、欠陥として残ってしまう。これでは、欠陥から雨水等が入り込み、コンクリートを劣化させ、耐久性を低下させてしまう。
[0036]
 そこで、ステップ110で散水して施工面を充分に湿潤させた後、ステップ111で無機系材料を充填した後のコンクリート表面に、再び珪酸塩溶液を噴霧または塗布する。この作業では、セメント14によりひび割れを粗く充填した後に、残った空隙に珪酸塩溶液を浸透させる。ステップ107で珪酸塩溶液により湿潤状態にしておいたので、ステップ109で充填されたセメント14の細かい粒子間にも珪酸塩溶液を行き渡らせることができる。なお、この珪酸塩溶液の塗布等は、注入した無機系材料がある程度強度を有するように硬化した後に実施される。硬化時間の目安は12時間程度である。
[0037]
 珪酸塩溶液は、上記のように珪酸塩の粒子径が小さく、低粘度の溶液であるため、セメント粒子間等の狭い隙間にも浸透し、また、毛管現象により、垂直方向に立ち上がった溝等にも浸透し、外部へ流出することなくひび割れ11内に保持される。このような珪酸塩溶液を使用することで、コンクリート表面への噴霧や塗布のみでも、小さいひび割れでも内部に浸透させることができる。珪酸塩溶液の散布後、ステップ112で工区全体に散水し、施工面を充分に湿潤させる。
[0038]
 珪酸塩溶液は、水を介してコンクリートに含まれる水酸化カルシウムと反応(ポラゾン反応)し、アルカリカルシウムシリケート(ゲル)を生成する。具体的には、カルシウムイオンが珪酸アニオンの鎖と結合し、カルシウムシリケート鎖を作り、これが互いに結合してゲル化が起こる。このゲル化により、上記の空隙が塞がれ、雨水等の浸入を防ぐ。すなわち、図3(c)に示すように、ひび割れ11内のセメント14で埋められた部分以外の空隙がゲル15により塞がれる。
[0039]
 珪酸塩溶液としては、上記の3つの材料のうちの、特に珪酸ナトリウムと珪酸カリウムとを混合して作製されたアルカリシリケート水溶液が好ましい。これは、ナトリウムイオンやカリウムイオンが珪酸アニオンの鎖を長くせず、むしろ短くするように働き、ゲル化を遅らせるからである。これにより、ゲル化に必要な時間が長くなり、コンクリートの深部までアルカリシリケート水溶液を浸透させることができる。
[0040]
 この場合、ゲル化にかかる時間が長くなり過ぎると、水等の浸入を防止するゲルの作用が発揮されないため、珪酸ナトリウムと珪酸カリウムとの割合をモル比で、上記の3:7~7:3の範囲内にすることが望ましい。
[0041]
 この珪酸塩溶液の塗布等も、先の珪酸塩溶液や流動化した無機系材料の塗布等と同様の方法を用いることができる。ステップ107で使用する珪酸塩溶液と、ステップ111で使用する珪酸塩溶液は、同じ2種類以上のアルカリシリケートを混合した溶液であってもよいし、異なる2種類以上のアルカリシリケートを混合したものであってもよい。また、水の添加量も、ステップ107で使用する珪酸塩溶液と、ステップ111で使用する珪酸塩溶液とで、同じ量としてもよいし、異なる量としてもよい。
[0042]
 ステップ113では、上記の溝に無機系材料(セメント)を充填物として充填し、溝を埋める。この溝を埋めた後も、ステップ114で散水を行い、ステップ115で珪酸塩溶液を噴霧または塗布する。散水は、ひび割れを中心として両側に数センチの範囲に行う。珪酸塩溶液の塗布等も、散水と同じ範囲に行う。この場合の珪酸塩溶液も、ステップ107やステップ111で使用する珪酸塩溶液と同じ2種類以上のアルカリシリケートを混合した溶液であってもよいし、異なる2種類以上のアルカリシリケートを混合したものであってもよい。また、水の添加量も、ステップ107やステップ111で使用する珪酸塩溶液と同じ量としてもよいし、異なる量としてもよい。
[0043]
 珪酸塩溶液を塗布等した後、ステップ116で工区全体に散水し、施工面を充分に湿潤させる。
[0044]
 ステップ104における確認で、ひび割れ幅が0.3mm未満の場合、ステップ117へ進み、上記の溝を形成することなく、散水した後、ステップ118で、ひび割れを有するコンクリート表面に、珪酸塩溶液を注入もしくは噴霧または塗布する。そして、ステップ119で散水し、ステップ120で、加水により流動化した無機系材料を注入または塗布して充填する。
[0045]
 無機系材料の充填後、ステップ121で散水し、ステップ122で、無機系材料を充填した後のコンクリート表面に、珪酸塩溶液を噴霧または塗布する。その後、ステップ123で工区全体に散水し、施工面を充分に湿潤させる。
[0046]
 ステップ103の確認で、ひび割れ幅が0.2mm未満の場合、ステップ124で散水した後、ステップ125で珪酸塩溶液の噴霧または塗布のみを行う。これは、ひび割れ自体が小さいので、セメント粒子によりひび割れを粗く充填する必要がないからである。ステップ125では、珪酸塩溶液を注入し、ゲル15を生成させて空隙を塞ぐ。珪酸塩溶液の塗布等の後、ステップ126で工区全体に散水し、施工面を充分に湿潤させる。
[0047]
 ステップ116もしくはステップ123またはステップ126で散水した後、ステップ127へ進み、ひび割れ箇所が他に存在するかを確認し、存在する場合には、ステップ102へ戻り、他のひび割れについても同様の作業を行う。
[0048]
 ステップ127で存在しないことを確認した場合は、ステップ128へ進み、養生を行う。養生の際、コンクリート中のカルシウムとの反応を促進させるために、散水する等して、水を供給することができる。充分に硬化したところで、ステップ129においてコンクリートのひび割れの補修を終了する。
[0049]
 なお、この作業の流れは一例であり、ひび割れを1つずつ測定、塗布等を行うのではなく、全てのひび割れについて一度に測定し、その後、ひび割れ幅に応じて塗布等を行ってもよい。また、全ての塗布等を待って養生を行うのではなく、1つのひび割れについて塗布等を行う毎に養生を行ってもよい。
[0050]
 ここに、本方法で補修の効果を試すために行った試験および試験結果を示す。試験には、図4に示すような、透明なアクリル製のケース20内に、ケース20の内面から中央に向けて突出する複数の突起21を設け、複数の突起21上に複数の穴22を有するプレート23を載せ、プレート23上に、2つのコンクリートブロック24を一定の間隔で離間して配置したものを、2組用いた。なお、図4では1組のみの構成を例示している。
[0051]
 1つは、2つのコンクリートブロック24の間隔を0.5mmとし、もう1つは、2つのコンクリートブロック24の間隔を0.75mmとした。そして、それぞれの2つのコンクリートブロック24の上部周囲を、図5に示すように、市販のコーキング材25でシールした。図5は、ケース20を上から見た図である。これにより、模擬的なひび割れを、2つのコンクリートブロック24間の隙間26により形成した。
[0052]
 図6に示すように、周囲をコーキング材25でシールされた2つのコンクリートブロック24の上面に、ナトリウムシリケートとカリウムシリケートを5:5のモル比で含有するアルカリシリケート水溶液27を、2つのコンクリートブロック24の上面に塗布し、表面を湿潤状態にした。また、隙間26の内部のコンクリート表面から厚さ数mm程度、珪酸塩溶液が浸透して改質され、改質部28が形成された。
[0053]
 次に、加水により流動化したセメント(セメント分散液)29を、2つのコンクリートブロック24の上面に塗布した。セメント29は、しばらくすると、固化して粘着性がなくなってくる。粘着性がなくなってきたことを確認した後、上記と同じアルカリシリケート水溶液を、再び2つのコンクリートブロック24の上面に塗布し、1週間養生した。養生後の2つのコンクリートブロック24間は、充填物(セメントと生成されたゲル)30により塞がれた。
[0054]
 試験は、図7に示すように、アクリル製のケース20の上部31に水32を張り、アクリル製のケース20の底部33に水が漏れるかどうかを観察することにより行った。上部31は、ケース20内のコーキング材25と充填物30によりシールされた2つのコンクリートブロック24の上側の部分であり、底部33は、ケース20内のプレート23の下側の部分である。
[0055]
 間隔を0.5mm、0.75mmにしたものの底部33を数日間観察したが、いずれも水漏れは観測されなかった。
[0056]
 このことから、ひび割れ幅が0.2mm以上であっても、充分な防水性、止水性を付与することができることが確認できた。
[0057]
 以上に説明したように、複雑なコンクリートのひび割れに対し、珪酸塩溶液と、加水により流動化した無機系材料とを組み合わせて使用することで、コンクリートのひび割れに適切に対応することができる。したがって、本方法は、コンクリートの漏水対策、止水対策として有効に機能を発揮する。
[0058]
 本発明では、コンクリートのひび割れの補修方法のほか、補修剤も提供することができる。補修剤は、珪酸塩溶液と、無機系材料を混合した水性充填材とから構成される。水性充填材は、流動化を改善するために、混和剤を含むこともできる。水性充填剤は、珪酸塩溶液により湿潤したコンクリートの表面を持つひび割れ内部を注入または塗布により充填することができる。
[0059]
 水性充填剤は、現場において無機系材料に水等を加えて混合し、必要に応じて添加剤を添加することにより製造することができる。
[0060]
 これまで本発明のコンクリートの補修方法について上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。

符号の説明

[0061]
10…コンクリート
11…ひび割れ
12…珪酸塩溶液
13…改質部
14…セメント
15…ゲル
20…ケース
21…突起
22…プレート
23…穴
24…コンクリートブロック
25…コーキング材
26…隙間
27…アルカリシリケート水溶液
28…改質部
29…セメント
30…充填物
31…上部
32…水
33…底部

請求の範囲

[請求項1]
 コンクリートの補修方法であって、
 ひび割れを有するコンクリートの表面に、珪酸塩を含む溶液を注入もしくは噴霧または塗布する第1の工程と、
 前記珪酸塩を含む溶液により湿潤したコンクリートの表面を持つひび割れ内部に、加水により流動化した無機系材料を注入または塗布して充填する第2の工程と、
 前記無機系材料がひび割れ内に充填された後のコンクリートの表面に、珪酸塩を含む溶液を噴霧または塗布する第3の工程とを含む、補修方法。
[請求項2]
 前記無機系材料は、セメントであり、前記珪酸塩は、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムのうちの少なくとも2つを含む、請求項1に記載の補修方法。
[請求項3]
 前記珪酸塩は、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムのうちの2つを含み、2つの前記珪酸塩が、モル比で1:9~9:1の割合で配合される、請求項2に記載の補修方法。
[請求項4]
 前記コンクリートに形成されたひび割れの幅を測定する第4の工程を含み、
 測定された幅が所定の幅以上である場合に、前記第1の工程と、前記第2の工程と、第3の工程とを実施する、請求項1~3のいずれか1項に記載の補修方法。
[請求項5]
 前記第3の工程の後に、前記コンクリートに対して散水する第5の工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の補修方法。
[請求項6]
 前記ひび割れに沿って溝を形成する第6の工程と、前記溝を充填物により充填する第7の工程とを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の補修方法。
[請求項7]
 コンクリートの補修剤であって、
 ひび割れを有するコンクリートの表面に注入もしくは噴霧または塗布される珪酸塩を含む溶液と、
 前記珪酸塩を含む溶液により湿潤したコンクリートの表面を持つひび割れ内部を注入または塗布により充填する、無機系材料を混合した水性充填剤とから構成され、
 前記珪酸塩を含む溶液は、前記水性充填剤によりひび割れ内が充填された後のコンクリートの表面に噴霧または塗布される、補修剤。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]