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1. (WO2019064686) 渦電流探傷装置および渦電流探傷方法
Document

明 細 書

発明の名称 渦電流探傷装置および渦電流探傷方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018  

発明の効果

0019  

図面の簡単な説明

0020  

発明を実施するための形態

0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045  

符号の説明

0046  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : 渦電流探傷装置および渦電流探傷方法

技術分野

[0001]
 本発明は、渦電流探傷装置に関するものであり、特に磁気飽和法を用いた渦電流探傷装置に関するものである。また本発明は渦電流探傷方法にも関するものである。

背景技術

[0002]
 従来、導電性材料からなる構造物(被検体、検査対象物)の表面に傷(欠陥)が生じているかどうかを検査するための探傷装置として、特許文献1に記載されているような渦電流探傷装置が用いられることがある。この装置は、検査対象物に渦電流を発生させ、その渦電流の強度および渦電流の流れの形の変化を検出することで、検査対象物に傷が生じているかどうかを調べることができる。またこの装置は、検査対象物に傷がある場合にはその傷の位置、形状、深さを調べることもできる。
[0003]
 ところで、非磁性体の物体に、たたく、まげる、加熱するといった仕事が加えられた場合、加えられた仕事の仕事量が大きいと、その物体が非磁性体から磁性体に変化することが知られている。特に溶接が施された場合は、溶接が施された個所が高温となり加えられた仕事の仕事量が大きいため、その影響を受ける部位が磁性体に変化する。このため、検査対象物が、非磁性体の材料をベースとし、そのうちの一部に溶接が施されたものである場合、検査対象物のうち溶接が施された個所付近の部分は不規則な磁界を有する磁性体となっている。
[0004]
 ここで、発明者は、このような、不規則な磁界を有する磁性体が非磁性体の中に存在する場合に、その磁性体の領域に傷があるかどうかの検査を行うことについて考察した。上述した従来の探傷装置を用いて検査が行われる場合、検査対象の領域は磁界が乱れており、検査対象物に発生する渦電流にノイズが生じるので、傷を検出することが非常に困難である。
[0005]
 このような状況に対応するための1つの手法として、磁気飽和を利用する手法(磁気飽和法)がある。この手法では、外部から強力な磁力が検査領域に印加され、検査領域に強力な均一磁界が形成される。すると、この強力な均一磁界により、検査領域に生じている不規則な磁界が打ち消される。探傷装置の励磁コイルにより検査対象物の表面に発生させられる渦電流は、この均一磁界中を移動することになるため、検査対象物の表面に傷がある場合、その傷が原因で渦電流に変化が生じる。したがって、この手法によれば傷の検出が可能となる。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特許第4885068号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 しかしながら、検査対象物に含まれている可能性がある様々な磁性体の全種類を完全に磁気飽和させるには強力な磁界が必要である。単純に強い磁力を持つ磁石で強力な磁界が形成される場合、センサ本体に比べて格段に大きなサイズの磁石が必要となったり、特殊な磁石が必要であったりする。また、強い磁力を持つ磁石によって磁性化された部位には強力な磁力が働くこととなるので、傷を検出するために検査装置を移動させることが困難となる。その一方で、検査対象物に印加される磁界が弱ければ、ノイズが十分に除去されない。
[0008]
 そこで本発明は、磁気飽和法を用いた渦電流探傷装置および渦電流探傷方法において、さほど強力な磁界が形成されなくとも、適切な磁界が形成されることで、十分にノイズが除去される渦電流探傷装置および渦電流探傷方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明に係る渦電流探傷装置は、検査対象物に渦電流を発生させ、前記渦電流の変化を検出することにより前記検査対象物の表面の状態を検査する渦電流探傷装置において、前記渦電流の変化を検出するための検出部と、前記検出部の外側に配置され、前記検査対象物に磁界を印加する磁界形成用磁石とを備え、前記磁界形成用磁石のうち前記検査対象物へと向く磁石先端部の中央と、前記検出面の中央との距離をx(単位mm)、前記検査対象物の厚みをt(単位mm)とするとき、前記磁界形成用磁石により発生する磁界の磁束密度B(単位mT)が、前記磁石先端部の中央に対応する検査対象物の表面において下記の数1を満たすことを特徴とする。
[0010]
[数1]


[0011]
 また前記磁界形成用磁石により発生する磁界の磁束密度B(単位mT)は、前記磁石先端部の中央に対応する検査対象物の表面において下記の数2を満たすことが好ましい。
[0012]
[数2]


[0013]
 また本発明に係る渦電流探傷装置の前記検査対象物は、使用済み核燃料が封入される金属製のキャニスタであってもよく、この場合、渦電流探傷装置は、前記キャニスタの外表面に渦電流を発生させて、この渦電流の変化を検出することにより前記キャニスタの外表面における傷の有無を検査するとよい。
[0014]
 また本発明に係る渦電流探傷装置の前記検査対象物は、オーステナイト系ステンレス鋼を材料として製造されたものであるとよい。
[0015]
 また本発明に係る渦電流探傷装置の前記検査対象物が、オーステナイト系ステンレス鋼同士の溶接により形成された溶接部を有していてもよく、この場合、渦電流探傷装置は、前記溶接部における傷の有無を検査するとよい。
[0016]
 また、本発明に係る渦電流探傷方法は、渦電流探傷装置によって検査対象物に渦電流を発生させ、前記渦電流を測定することにより前記検査対象物の表面における傷の有無を検査する渦電流探傷方法において、前記渦電流探傷装置が備える磁界形成用磁石によって前記検査対象物に磁界を印加しながら、前記渦電流探傷装置によって前記検査対象物に前記渦電流を発生させ、前記渦電流から生じる磁束を前記渦電流探傷装置が備える検出部で受けることにより前記検査対象物の表面における傷の有無を検査し、磁界形成用磁石によって前記検査対象物に印加される磁界の磁束密度B(単位mT)は、前記磁界形成用磁石のうち前記検査対象物へと向く磁石先端部の中央に対応する検査対象物の表面において下記の数3を満たしており、
[0017]
[数3]


[0018]
 ここで、x(単位mm)は前記磁石先端部の中央と、前記検出面の中央との距離、t(単位mm)は前記検査対象物の厚みであることを特徴とする。

発明の効果

[0019]
 本発明に係る渦電流探傷装置および渦電流探傷方法によれば、さほど強力な磁界が形成されなくとも、適切な磁界が形成されることで、探傷の際に十分にノイズが除去される渦電流探傷装置および渦電流探傷方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0020]
[図1] 本発明の実施形態の一例において渦電流探傷装置による検査の対象となるキャニスタを示す図。
[図2] 過電流探傷装置を用いた探傷の様子を示す概略図。
[図3] 検査プローブの構造の一例を模式的に示す図。
[図4] ノイズが含まれる検出信号とノイズが除去された検出信号を示す図。
[図5] 磁界形成用磁石、検査面、検査対象物の位置関係を示す図。
[図6] 検出信号にノイズが含まれている場合を示すグラフ。
[図7] 検出信号のノイズが低減された場合を示すグラフ。
[図8] 検出信号からノイズが十分に除去された場合を示すグラフ。

発明を実施するための形態

[0021]
 図1は、本発明の実施形態の一例において渦電流探傷装置によって傷の検査(探傷)が行われる対象(検査対象物)となるキャニスタ20を示す。このキャニスタ20は金属製の筒型容器であり、その内部には使用済み核燃料が封入される。図1に示されているように、キャニスタ20はコンクリート製の大型容器(コンクリートキャスク10)内に入れられた状態で、都市部から離れた地域、典型的には沿岸部に保管される。
[0022]
 コンクリートキャスク10の下方には径方向に貫通する空気導入路14が設けられており、上方には径方向に貫通する空気排出路15が設けられている。キャニスタ20はその内部に封入された使用済み核燃料の崩壊熱によって加熱される。その一方、外部空気が空気導入路14から取り入れられ、空気排出路15から排出される過程で、外部空気がキャニスタ20の側面に触れることにより、キャニスタ20は冷却される。
[0023]
 ここで、コンクリートキャスク10が沿岸部で保管されている場合、沿岸部の空気には海塩が含まれているため、外部空気に触れるキャニスタ20の表面には塩化物によって錆や腐食が生じるおそれがある。そして、錆や腐食の生じた箇所に引張応力が加わっていると、その箇所に応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)が生じることがある。そこで、キャニスタ20は定期的にコンクリートキャスク10から抜き出され、その表面にSCCが生じていないかどうかの検査(探傷)が行われる。
[0024]
 キャニスタ20は図1に示されているように、底を有する円筒形状の本体と、その本体上部の開口を閉ざす蓋22とで構成されている。キャニスタ20の本体と蓋22とは、溶接によって固着されており、図1に示されているように、その溶接の跡が蓋溶接部26として残る。またキャニスタ20の本体側面は、長方形状の金属板が円筒状に湾曲され、その金属板の両端同士が溶接されることで形成される。この溶接の跡も、図1に示されているように側面溶接部24として残る。こうした側面溶接部24や蓋溶接部26には引張応力が加わり易いため、これらの箇所にSCCが発生する可能性が高い。そのため、特にこれら側面溶接部24や蓋溶接部26において探傷を行うことが重要である。
[0025]
 図2に、渦電流探傷装置40を用いた探傷の様子を概略的に示す。渦電流探傷装置40は検出プローブ50を備えている。この検出プローブ50からは交番磁界が発生する。交番磁界が検査対象物30(ここではキャニスタ20の側壁、蓋、底面など)の表面に接近すると、検査対象物30の外表面を構成する金属(キャニスタ20の場合は一般的にオーステナイト系ステンレス鋼)に渦電流34が発生する。この渦電流34が発生させる磁束は検出プローブ50によって検出され、検出された磁界の強さや波形を基にして検査対象物30表面の状態が判定される。例えば図2に示されるように検査対象物30表面に傷32がある場合、傷32の領域は電気抵抗が大きいため、渦電流34は傷32を避けるようにして流れる。そのため渦電流34の波形は図2に示されるように傷32の周囲で歪んだ形状となる。したがって、渦電流探傷装置40は渦電流34の波形を解析して、検査対象物30表面のうちどの位置で波形が歪むかを調べることにより、検査対象物30表面のどの位置に傷32が存在するのかを検査することができる。
[0026]
 図3は、渦電流探傷装置40の構造の一例を模式的に示す。渦電流探傷装置40は、検査プローブ50と制御器42を備えている。検査プローブ50は検査対象物30表面に発生する渦電流の変化を検出するための検出部54を有する。また制御器42は、検査プローブ50から受信した検出信号を処理する機能を備えている。
[0027]
 ここでは、検出部54の下端面は検査対象物30の表面と向かい合うように配置されており、この下端面が、検査対象物30に発生する渦電流から生じる磁束を受ける検査プローブ50の検出面55となる。
[0028]
 ここで、検査対象物30の表面がどのように交番磁界に対して反応するかは、検査対象物30の材料自体が持つ性質によって異なる。検査範囲内において材料の性質が均一であれば、渦電流探傷装置40は他の部分に比べて交番磁界に対する反応が異なる部分を探すことで探傷を行うことができる。しかし、材料の性質、特に透磁率が位置によって異なっていると、傷が無くとも位置によって交番磁界に対する反応が異なることとなり、検査に影響を及ぼすノイズが発生するため、探傷が困難となる。したがってこのようなノイズは可能な限り除去されることが望ましい。
[0029]
 図3では、検査対象物30の表面の一部に、周りと異なる透磁率を持つ異種材料からなる異種材料部35が現れている。例えば検査対象物30が図1に示されているキャニスタ20である場合、側面溶接部24や蓋溶接部26(溶接部)に異種材料が現れることがある。具体的には、キャニスタ20がオーステナイト系ステンレス鋼で構成されている場合、溶接部にはフェライト系の合金が現れる可能性がある。すなわち、溶接の過程でオーステナイト系ステンレス鋼が融解した際、その成分である鉄(Fe),クロム(Cr),ニッケル(Ni),モリブデン(Mo),そして炭素(C)などの原子配列が乱されるため、溶接の完了後、表面にはオーステナイト系ステンレス鋼と異なる原子配列を持つ合金が現れることになり、場合によってはフェライト系合金が現れることもある。このように検査対象物30表面の透磁率が不均一な場合において、検出信号にノイズが現れる様子と、磁界形成用磁石60を用いることによりノイズが除去される様子が、図4に示されている。
[0030]
 フェライト系合金が存在する位置では磁界の向きに乱れが生じるため、表面に傷が無くとも、フェライト系合金が存在する位置では、検査プローブ50が検出する検出信号に変化が現れてしまう。このため、フェライト系合金が表面に現われる溶接部においては、検出信号の変化が傷に起因するものなのか、フェライト系合金に起因するものなのかを判別することが困難である。具体的には図3に示されているように、検査対象物30の表面にフェライト系合金が現れて異種材料部35が形成されている場合、検査プローブ50から発せられる交番磁界の磁束が異種材料部35の位置で乱されることとなる。この位置の上方を検査プローブ50が通過した際、検出信号にノイズが生じる(図4のグラフZ1)。そのため、異種材料部35内に傷32があるとしても、その傷32に起因する検出信号の変化を発見することが困難である。
[0031]
 ここで、図2,図3が仮想線で示しているように、磁界形成用磁石60が検査プローブ50の外側に配置されていれば、この磁界形成用磁石60から発せられる磁界を受けた検査対象物30と異種材料部35の透磁率が変化する。磁界形成用磁石60の磁界の強さが適切に設定されていれば、検査対象物30と異種材料部35の透磁率がほぼ等しくなる。そのため、検査プローブ50から発せられる交番磁界に対する反応が、異種材料部35とそれ以外とでほぼ等しくなるため、検出信号が強くなるのは傷32の位置のみとなる(図4のグラフZ2)。
[0032]
 本発明の発明者は、検査対象物30の厚みや磁界形成用磁石60の位置などの条件を検討した結果、磁界形成用磁石60の磁界がどの程度の強さであればノイズが十分に除去されるかを見出した。すなわち、図3に示されるような磁界形成用磁石60により発生する磁界は、磁界形成用磁石60のうち検査対象物30へと向く先端部62(磁石先端部)の中央と向かい合う検査対象物30の表面位置(先端部62に対応する検査対象物30の表面)において測定された場合に、磁束密度Bのミリテスラ(mT)値が、以下の数4を満たしていることが望ましい。
[0033]
[数4]


[0034]
 ここで、図5に示すように、xは磁界形成用磁石60の先端部62(磁極となる部分)の中央と、検出部54の中央との距離(単位mm)である。tは検査対象物30(例えば図1のキャニスタ20)の厚み(単位mm)である。kは13以上15以下の任意数値で、好ましくはk=14である。数4の磁束密度Bの範囲を、kを使わずに表すと以下の数5となる。
[0035]
[数5]


[0036]
 また数4においてk=14の場合、磁束密度Bの範囲は以下の数6となる。
[0037]
[数6]


[0038]
 数6では、例えばx=13.75(mm)、t=14(mm)であれば、Bはおよそ385.84mT以上、578.765mT以下となる。
[0039]
 磁束密度Bの値が数4,数5の範囲内であれば十分にノイズが除去されることを図6、図7、図8を用いて説明する。図6、図7、図8のグラフは、図1に示されるキャニスタ20の溶接部(側面溶接部24や蓋溶接部26)において渦電流探傷装置40が探傷を行う場合の検出信号を示している。具体的には発明者は、キャニスタ20の材質として用いられるオーステナイト系ステンレス鋼に溶接が施された試験片の表面を検査して、どのような検出信号が得られるかを調べた。より具体的にはSUS316の試験片同士をTIG溶接して、その溶接部に対して検査を行った。なお、ここでは表面に傷がない場合に得られる検出信号が示されている。
[0040]
 まず図6は、図3に示される磁界形成用磁石60を用いずに検査プローブ50のみにより溶接部の検査を行った場合に得られる検出信号のグラフを示している。試験片表面に傷が無いにも関わらず、図6のグラフZ3には起伏が多く見られ、溶接部に現われる異種金属(フェライト系合金など)の影響によって検出信号にノイズが混入していることがわかる。次に、図7、図8は磁界形成用磁石60を用いた場合に得られる検出信号のグラフを示している。図7、図8のどちらも、上記数6におけるx,tの条件は同じであり、x=13.75(mm)、t=14(mm)である。図7のグラフZ4は磁束密度Bの値が300mTの場合に得られる検出信号を示している。300mTは数5においてx=13.75(mm)、t=14(mm)の場合の範囲内(293mT以上)の値である。図7のグラフZ4は図6のグラフZ3に比べて起伏が小さくなっており、この程度までノイズが低減されたならば観測者が信号にフィルタリングなどの加工を施すことによりノイズを無視することが可能になる。すなわち、B=300(mT)の磁束密度によってノイズが許容範囲内まで低減される。
[0041]
 図8のグラフZ5は磁束密度Bの値が500mTの場合に得られる検出信号を示している。500mTは数6に示される磁束密度Bの範囲内である。図8のグラフZ5は図7のグラフZ4よりもさらに起伏がなくなっており、B=500(mT)の磁束密度によってノイズが十分に除去されていることがわかる。
[0042]
 このように、本実施形態においてはわずか300~500mTの磁束密度で許容範囲内までノイズを除去することができる。従来の磁気飽和法による渦電流探傷方法では、オーステナイト系ステンレス鋼の検査において十分にノイズを除去するためには1T~数10Tという高い磁束密度が必要とされてきたので、従来の方法に比べて遥かに低い磁束密度でノイズ除去を実現できたことになる。そのため、従来の方法と比べて高い磁束密度を発生させるための高価な材料や装置を使う必要がない。また、強い磁力によって渦電流探傷装置40が検査対象物30の表面に束縛されて渦電流探傷装置40を移動させることが困難になってしまうこともない。
[0043]
 従来の磁気飽和法において高い磁束密度が必要とされてきた理由は、オーステナイト系ステンレス鋼を磁気飽和させるためには1T~数10Tの磁束密度が必要となるためである。しかしながら、検査対象物に含まれる複数の材料間の透磁率の違いに起因するノイズを除去するためには、検査対象物が必ずしも完全に磁気飽和される必要はない。印加されている磁界内において、複数の材料の透磁率が互いにほぼ等しくなっていれば、透磁率の違いに起因するノイズは除去される。オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部に現われるフェライト系合金の透磁率とオーステナイト系ステンレス鋼の透磁率は、上記数5を満たす磁束密度の中ではほぼ等しくなる。また両者の透磁率が等しくなくとも、近い値になれば透磁率の違いに起因するノイズは低減される。傷の深さを推定できる程度にノイズの大きさが小さければ、ノイズは許容範囲内にまで低減されたといえる。本実施形態によれば、検査対象物30に比較的低い磁束密度の磁界が印加されることで、図3に示すような異種材料部35と検査対象物30の本来の材質との透磁率が近づき、透磁率の違いに起因するノイズが許容範囲内にまで低減される。
[0044]
 なお本実施形態においては、特に図1に示されるキャニスタ20、特にオーステナイト系ステンレス鋼を材料として製造されたものが検査対象物30であるが、渦電流探傷装置40は表面に渦電流が発生する物質全般の探傷のために用いられることができる。
[0045]
 また渦電流探傷装置40の検出部54は検査対象物30表面に発生する渦電流の変化を検出できるものであればよく、具体的な形態は様々なものが利用可能である。例えば大きな励磁コイルで一様な渦電流を発生させ、その下方に配置され励磁コイルと中心軸が直交する小さな検出コイルで渦電流の変化を検出するものであってもよい。また一つの励磁コイルを挟むように二つの検出コイルが配置されて、二つの検出コイルに流れる電流の差が検出信号として測定される形態であったり、インピーダンスの変化が測定されることにより励磁コイルと検出コイルの役割を一つのコイルが兼用できる形態であったりしてもよい。いずれの形態でも励磁コイルと検出コイルは全体として面対称や軸対称に配置されるため、その対称中心の位置が検出部54の中央と考えられる。

符号の説明

[0046]
  10   コンクリートキャスク
  20   キャニスタ
  30   検査対象物
  40   渦電流探傷装置
  50   検査プローブ
  54   検出部
  55   検査面
  60   磁界形成用磁石
  62   先端部

請求の範囲

[請求項1]
 検査対象物に渦電流を発生させ、前記渦電流の変化を検出することにより前記検査対象物の表面の状態を検査する渦電流探傷装置において、
 前記渦電流の変化を検出するための検出部と、
 前記検出部の外側に配置され、前記検査対象物に磁界を印加する磁界形成用磁石と
を備え、
 前記磁界形成用磁石のうち前記検査対象物へと向く磁石先端部の中央と、前記検出部の中央との距離をx(単位mm)、
 前記検査対象物の厚みをt(単位mm)とするとき、
 前記磁界形成用磁石により発生する磁界の磁束密度B(単位mT)が、前記磁石先端部の中央に対応する前記検査対象物の表面において下記の数1を満たすこと
[数1]



を特徴とする渦電流探傷装置。
[請求項2]
 前記磁界形成用磁石により発生する磁界の磁束密度B(単位mT)が、前記磁石先端部の中央に対応する前記検査対象物の表面において下記の数2を満たすこと
[数2]



を特徴とする請求項1に記載の渦電流探傷装置。
[請求項3]
 前記検査対象物が、使用済み核燃料が封入される金属製のキャニスタであり、
 前記渦電流探傷装置は前記キャニスタの外表面に渦電流を発生させて、前記渦電流の変化を検出することにより前記キャニスタの外表面における傷の有無を検査すること
を特徴とする請求項1に記載の渦電流探傷装置。
[請求項4]
 前記検査対象物が、オーステナイト系ステンレス鋼を材料として製造されたものであること
を特徴とする請求項1のいずれか1項に記載の渦電流探傷装置。
[請求項5]
 前記検査対象物が、オーステナイト系ステンレス鋼同士の溶接により形成された溶接部を有しており、前記渦電流探傷装置は前記溶接部における傷の有無を検査すること
を特徴とする請求項4に記載の渦電流探傷装置。
[請求項6]
 渦電流探傷装置によって検査対象物に渦電流を発生させ、前記渦電流を測定することにより前記検査対象物の表面における傷の有無を検査する渦電流探傷方法において、
 前記渦電流探傷装置が備える磁界形成用磁石によって前記検査対象物に磁界を印加しながら、前記渦電流探傷装置によって前記検査対象物に前記渦電流を発生させ、前記渦電流から生じる磁束を前記渦電流探傷装置が備える検出部で受けることにより前記検査対象物の表面における傷の有無を検査し、
 磁界形成用磁石によって前記検査対象物に印加される磁界の磁束密度B(単位mT)は、前記磁界形成用磁石のうち前記検査対象物へと向く磁石先端部の中央に対応する前記検査対象物の表面において下記の数3を満たしており、
[数3]



 ここで、x(単位mm)は前記磁石先端部の中央と、前記検出面の中央との距離、
 t(単位mm)は前記検査対象物の厚みであること
を特徴とする渦電流探傷方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]