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1. (WO2019059032) 排ガス浄化フィルタ
Document

明 細 書

発明の名称 排ガス浄化フィルタ

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011  

先行技術文献

特許文献

0012  

発明の概要

0013   0014   0015   0016  

図面の簡単な説明

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081  

産業上の利用可能性

0082  

符号の説明

0083  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : 排ガス浄化フィルタ

技術分野

[0001]
 本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガスの浄化に使用される排ガス浄化フィルタに関するものである。

背景技術

[0002]
 ディーゼルエンジンの排ガスには、固体状炭素微粒子や、液体又は固体状の高分子量炭化水素微粒子などの粒子状物質(PM:Particulate Matter)や、窒素酸化物(NOx)が有害成分として含まれている。これらを除去する方法が種々検討されている。
[0003]
 PMを除去する一つの方法は、セラミックハニカム、セラミックフォーム、金属発泡体等の耐熱性の排ガス浄化フィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)を用いるものである。この方法では、DPFがPMを捕集する。DPFはPMの捕集に伴って、圧力損失が上昇してしまう。そこで、DPFの圧力損失が上昇した場合には、DPFを再生する必要がある。DPFの再生では、バーナー又はヒーター等でDPFを加熱し、堆積したPMを燃焼させ、炭酸ガスに変えて外部に放出する。
[0004]
 DPFの再生には、別の方法もある。触媒をDPFに担持し、触媒作用によりPMを燃焼させるものである。この方法では、バーナー又はヒーターなどによる燃焼操作を軽減することができる。例えば、耐熱性セラミックからなるDPFに予めPM燃焼触媒を担持させておくと、PMの捕集と共に燃焼反応を行わせることが可能である。PM燃焼性能(PMを低い温度で燃焼させる性能)および耐久性の観点から、PM燃焼触媒には白金やパラジウム等の白金族金属が広く使用される。
[0005]
 また、NOxを除去する方法は、還元剤を用いて選択的触媒還元(SCR)を行うものである。この方法では主に、セラミックハニカムからなるフィルタ基材にNOx還元除去触媒を担持したSCRフィルタと、還元剤としてアンモニア等が用いられる。そして、排ガスがSCRフィルタを通過する際に、SCRフィルタ上ではアンモニアが排ガスに含まれるNOxの還元をして、窒素に変える。つまり、SCRフィルタを通過した排ガスからNOxが除去される。アンモニアの供給源としては、一般に尿素水が用いられる。尿素水をSCRフィルタの上流側で供給すると、排ガス中で尿素を加水分解して、アンモニアを生成することができる。
[0006]
 ディーゼルエンジンの排ガス浄化システムでは、厳しい排ガス基準をクリアするために、上述のような、PMを捕集する機能を有するDPFとNOxを浄化する機能を有するSCRフィルタとを別個に備えることが多い(例えば、特許文献1参照)。
[0007]
 このような排ガス浄化システムは高コストであり、システムの占有体積が大きいといった課題もある。そのため排ガス浄化システムに対して、低コスト化、コンパクト化への要望が高まっている。これらの要望に応えるために、DPFにPM燃焼触媒とNOxを還元除去するためのSCR触媒を担持したSCRF(SCR on Filter)が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
[0008]
 このようなSCRFでは、フィルタ基材にNOx還元除去触媒は担持されているが、PM燃焼触媒までを担持する場合、NOx還元除去触媒とPM燃焼触媒の組み合わせを考慮する必要があった。
[0009]
 なぜならば、NOx還元除去触媒とPM燃焼触媒とを併用することはNOxを還元除去する機能が損なわれてしまうためである。より詳しく説明すると、PM燃焼触媒として用いる白金族金属は、強い酸化作用を有しているために、アンモニアを酸化してしまうという事例があげられる。SCRFにおいて、上流側からアンモニアを供給してもPM燃焼触媒に使用した白金族金属によって、NOxを還元除去する機能が損なわれてしまうためである。
[0010]
 つまり、NOxを還元除去するという機能を損うことのないPM燃焼触媒を用いて、フィルタに堆積したPMをより低い温度で燃焼させることまでは、配慮がされていなかった。
[0011]
 そこで本発明は、一つのフィルタ基材において、より低い温度で燃焼できるという高いPM燃焼性能と、NOx還元性能とを併せ持つ排ガス浄化フィルタを提供することを目的とする。

先行技術文献

特許文献

[0012]
特許文献1 : 特開2014-224536号公報
特許文献2 : 特開2015-186802号公報

発明の概要

[0013]
 従来のSCRFでは、フィルタに堆積したPMを非常に高い温度で燃焼させる必要があった。
[0014]
 本発明は、セル壁で区画された複数のセルを有する多孔質のフィルタ基材と、PMを燃焼して浄化するPM燃焼触媒と、NOxを還元して浄化するNOx還元除去触媒とを備えている。また、PM燃焼触媒は、排ガスが流入する側の前記セル壁の表面の一部または全部に含まれるPM燃焼触媒層を形成している。また、NOx還元除去触媒は、排ガスが流出する側の前記セル壁の表面の一部または全部に含まれるNOx還元触媒層を形成している。また、PM燃焼触媒は、バナジウムに対するセシウムのモル比(Cs/V)が0.5≦Cs/V≦1.5である、セシウムとバナジウムの複合酸化物を含む溶融塩型触媒である。
[0015]
 セシウムとバナジウムの複合酸化物を含む溶融塩型触媒は、気相中の酸素を利用してPMを燃焼させる、直接酸化型の触媒である。また、溶融塩型触媒は、PMとの反応温度近傍において溶融し、液相となる。そのため、触媒(固体)-PM(固体)-酸素(気体)が関与するPMの燃焼において、触媒が液相となることでPMとの接触が飛躍的に増大し、高いPM燃焼性能を発現すると考えられている。また、セシウムとバナジウムの複合酸化物は、NOx還元反応において還元剤として作用するアンモニアとの相互作用が弱いという特徴を有する。したがって、排ガス温度が比較的低い温度域においては、アンモニアを酸化することなく、排ガス流れの下流に位置するNOx還元触媒層に供給することができ、NOx還元性能を発揮することができる。
[0016]
 これにより、高いPM燃焼性能と、NOx還元性能とを併せ持つ排ガス浄化フィルタを提供することができる。

図面の簡単な説明

[0017]
[図1] 図1は、本発明の第1の実施の形態における排ガス浄化フィルタの一部を示す断面図である。
[図2] 図2は、本発明の第2の実施の形態における排ガス浄化フィルタの一部を示す断面図である。

発明を実施するための形態

[0018]
 以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[0019]
 (第1の実施の形態)
 本発明の一様態について添付図面を用いて説明する。
[0020]
 図1に示すように、排ガス浄化フィルタ1は、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気通路(図示せず)に設けられ、排ガス中の粒子状物質(以下、PMと記載)を捕集するものである。排ガス浄化フィルタ1の上流側において、還元剤の供給装置(図示せず)を配置することができるものである。
[0021]
 排ガス浄化フィルタ1は、セル壁2で区画された複数のセル3を有する多孔質のフィルタ基材4と、PMを燃焼して浄化するPM燃焼触媒を含むPM燃焼触媒層5と、NOxを還元して浄化するNOx還元除去触媒を含むNOx還元触媒層6とを備える。
[0022]
 フィルタ基材4は、ウォールフロー型の構造である。すなわち、セル壁2で区画された複数のセル3を備え、隣接するセル3の端部が交互に目封じされている。これにより、二つの種類のセル3がセル壁2を介して隣接した構成となっている。一つ目は、排ガスの上流側を開口し、下流側が閉塞した排ガス流入側のセル3である。二つ目は、排ガスの上流側が閉塞し、下流側が開口した排ガス流出側のセル3である。
[0023]
 PM燃焼触媒層5は、排ガスが流入する側のセル壁2の表面の全部に設けられている。また、NOx還元触媒層6は、排ガスが流出する側のセル壁2の表面の全部に設けられている。
[0024]
 つまり、排ガス浄化フィルタ1は、セル壁2を挟んで上流側にPM燃焼触媒層5、下流側にNOx還元触媒層6を配置したものである。
[0025]
 排ガス浄化フィルタ1は、フィルタ基材4のセル壁2に設けられた細孔を通じて排ガスを流通させることができる。排ガス中には、PMやNOxなどの有害物質が含まれている。このうちPMは、排ガスが流入する側のセル壁2の内部および表面、さらにはPM燃焼触媒層5により捕集される。排ガス中のNOxは、セル壁2の細孔を通じてフィルタ基材4の下流側に移動する。排ガスが排ガス浄化フィルタ1を通過するときに、排ガス浄化フィルタ1の上流側からアンモニア等の還元剤を供給すると、NOx還元触媒層6に含まれるNOx還元触媒によって、NOxが還元除去される。フィルタ再生処理時に、捕集された排ガス中のPMは、PM燃焼触媒層5に含まれるPM燃焼触媒によって、速やかに燃焼除去される。
[0026]
 本実施の形態の排ガス浄化フィルタ1は、特に以下の構成を備えたものである。
[0027]
 フィルタ基材4の材質は、耐熱性セラミックスや金属材料等からなる多孔質材料であればよい。耐熱性セラミックスとしては、例えば炭化ケイ素(SiC)、コージェライト、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム等を用いることができる。金属材料としては、例えばステンレス合金、Fe-Cr-Al合金等を用いることができる。これらの中でも、耐熱性および触媒塗工性の観点から、炭化ケイ素あるいはコージェライトが好ましい。
[0028]
 セル壁2に設けられた細孔の平均細孔径は特に限定されない。例えば、平均細孔径を5μm~50μmとすることで、効率よくPMを捕集しつつ、PM堆積時の圧力損失の過度の上昇を抑制することができる。
[0029]
 セル3の断面形状は特に限定されない。触媒とPMの接触面積を大きくできるという観点から、4~8角形のうちのいずれかの形状にすることが好ましい。
[0030]
 また、セル3の形成密度は特に限定されない。上記と同様に、触媒とPMの接触面積を大きくできるという観点から、セル3の数は1平方インチあたり200~400セルであることが好ましい。セル数を200セル以上にすることで、触媒とPMの接触面積を十分に確保することができる。また、セル数を400セル以下にすることで、セル3へのPM堆積による目詰まりを生じにくくすることができる。
[0031]
 また、本実施の形態のPM燃焼触媒は、セシウムとバナジウムの複合酸化物(以下、Cs-V複合酸化物と記載)を含む溶融塩型触媒である。バナジウムに対するセシウムのモル比(Cs/V)が0.5≦Cs/V≦1.5である。Cs-V複合酸化物を含む溶融塩型触媒は、気相中の酸素を利用してPMを燃焼させる、直接酸化型の触媒である。また、溶融塩型触媒は、PMとの反応温度近傍において溶融し、液相となる。そのため、触媒(固体)-PM(固体)-酸素(気体)が関与するPMの燃焼において、触媒が液相となることでPMとの接触が飛躍的に増大し、低い温度域でPMの燃焼を行うことができる。以上のことから、Cs-V複合酸化物を含む溶融塩型触媒は、高いPM燃焼性能を発現すると考えられている。
[0032]
 上述のCs-V複合酸化物としては、例えば、Cs 11(Cs:V=0.5:1.0)、CsVO (Cs:V=1.0:1.0)、Cs 10(Cs:V=1.7:1.0)、Cs 321861(Cs:V=1.8:1.0)、Cs (Cs:V=2.0:1.0)、Cs VO (Cs:V=3.0:1.0)などを挙げることができる。この中でも、PM燃焼活性と化学的安定性の観点から、バナジウムに対するセシウムのモル比(Cs/V)がCs/V=0.5であるCs 11、あるいはCs/V=1.0であるCsVO を含むことが好ましい。
[0033]
 また、PM燃焼触媒には、Cs-V複合酸化物を保持するための担体を含むことが好ましい。Cs-V複合酸化物は単独でも高いPM燃焼性を有しているが、触媒の比表面積が低いためにPMと触媒との接触率が低下し、燃焼反応が起こり難いことが懸念される。また、担体を用いない場合には、排ガスの温度及び組成変動の影響を受けて容易に凝集してしまい、PM燃焼活性が低下するということが懸念される。そこで、Cs-V複合酸化物を担体の表面に接触させて保持することにより、Cs-V複合酸化物の比表面積を増加させて、高温雰囲気下での凝集を抑制することができる。担体としては、例えばAl 、SiO 、TiO 、CeO 、ZrO 、CeO -ZrO 、MgOなどを用いることができる。
[0034]
 また、PM燃焼触媒層5の厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。PM燃焼触媒層5の厚みを10μm以上とすることにより、流入したPMがセル壁2の内部に入り込む量を低減させることができる。すなわち、PM堆積過程における深層ろ過(セル壁2の内部におけるろ過)の割合を減少させることで、PM堆積時の圧力損失の増大を抑制することができる。また、PM燃焼触媒層5の厚みを50μm以下とすることにより、触媒コート後の初期圧損を低く保ちつつ、セル壁2の表面とPM燃焼触媒層5との接着性を確保できる。
[0035]
 なお、本実施の形態では、PM燃焼触媒層5を排ガスが流入する側のセル壁2の表面の全部に設けたが、一部に設けてもよい。全部に設けた場合、セル壁2の表面の全域で触媒作用を発揮できるが、圧力損失の増大を招く場合がある。そこで、PM燃焼触媒層5の長さをセル3の長さ(奥行)に比べて短くして、セル壁2の表面の一部に設けることで、排ガス浄化フィルタ1のPM燃焼性能と、圧力損失のバランスを調整することが好ましい。
[0036]
 また、PM燃焼触媒の一部がセル壁2の内部に入り込んでもよい。これにより、セル壁2の内部で深層捕集されたPMの燃焼を促進することができる。ただし、PM燃焼触媒が多量にセル壁2の内部に入り込むと、圧力損失の増大を招くため、内部に入り込むPM燃焼触媒の量を調整する必要がある。
[0037]
 また、Cs-V複合酸化物は、白金族金属を用いた場合に比べて低い温度域で、気相中の酸素を利用したPM燃焼反応を促進させることができる。すなわち、高いPM燃焼性能を発現すると言える。
[0038]
 また、NOx還元反応において還元剤として作用するアンモニアとの相互作用が弱いという特徴も有する。すなわち、アンモニアは比較的低い温度域においてCs-V複合酸化物によって酸化されることが少ない。Cs-V複合酸化物の高いPM撚焼性能と合わせると、排ガス浄化フィルタ1の上流側でアンモニア等の還元剤を供給しても、排ガス流れの下流に位置するNOx還元触媒層6へ供給することができ、NOx還元性能を発揮させることができる。
[0039]
 NOx還元触媒層6に含まれるNOx還元触媒としては、既に知られているものを使用することができる。例えば、V -TiO -WO 、TiO -WO 、銅および鉄成分の中の1種以上から選択される卑金属成分を含むゼオライトなどを用いることができる。中でも、NOx還元性能と耐熱性の観点から、銅成分を含むゼオライトが好ましい。
[0040]
 なお、本実施の形態では、NOx還元触媒層6を排ガスが流出する側のセル壁2の表面の全部に設けたが、一部に設けてもよい。全部に設けた場合、セル壁2の表面の全域で触媒作用を発揮できるが、圧力損失の増大を招く場合がある。NOx還元触媒層6の長さをセル3の長さ(奥行)に比べて短くして、セル壁2の表面の一部に設けることで、排ガス浄化フィルタ1のNOx還元性能と、圧力損失のバランスを調整することもできる。
[0041]
 また、NOx還元触媒の一部がセル壁2の内部に入り込んでもよい。これにより、セル壁2の内部を排ガスが通過する際にNOxの還元を促進することができる。ただし、NOx還元触媒が多量にセル壁2の内部に入り込むと、圧力損失の増大を招くため、内部に入り込むNOx還元触媒の量を調整する必要がある。
[0042]
 上記構成において、排ガス浄化フィルタ1に流入した排ガス中のPMは、排ガスが流入する側のセル壁2の内部および表面、さらにはPM燃焼触媒層5により捕集される。
[0043]
 排ガス浄化フィルタ1に流入した排ガス中のNOxは、排ガス浄化フィルタ1の上流側から供給された還元剤(アンモニア)とともに、セル壁2の細孔を通じてフィルタ基材4の下流側へ移動する。フィルタ基材4の下流側へ移動した排ガス中のNOxは、排ガスが流出する側のセル壁2の表面に設けられたNOx還元触媒層6に含まれるNOx還元触媒によって、還元除去される。
[0044]
 捕集されたPMは、フィルタ再生処理時にPM燃焼触媒層5に含まれるCs-V複合酸化物の触媒作用により、白金族金属を用いた場合に比べて低い温度域で、気相中の酸素と反応し、速やかに燃焼除去される。
[0045]
 その結果、排ガス浄化フィルタ1において、排ガスが流入する側のセル3で高いPM燃焼性能を、排ガスが流出する側のセル3でNOx還元性能を発現する。すなわち、一つのフィルタ基材4において、高いPM燃焼性能とNOx還元性能の双方を併せ持つ排ガス浄化フィルタ1を提供することができる。
[0046]
 (第2の実施の形態)
 DPFの流出側に均一にNOx還元触媒をコートする構成において、一部のガスはNOx還元触媒に接触する沿面距離が短く、NOx還元触媒を効果的に働かせることができない場合があることを見出した。そこで、さらにNOxを効率的に除去することができる排ガス浄化フィルタの構成について説明をする。
[0047]
 排ガス浄化フィルタ1は、図2に示すように、セル壁2で区画された複数のセル3を有する多孔質のフィルタ基材4と、粒子状物質を燃焼して浄化する粒子状物質燃焼触媒を含む第一触媒層であるPM燃焼触媒層5と、NOxを還元して浄化するNOx還元触媒を含む第二触媒層であるNOx還元触媒層6とを備える。
[0048]
 PM燃焼触媒層5は、排ガスが流入する側のセル壁2の表面の一部または全部に設けられている。また、NOx還元触媒層6は、排ガスが流出する側のセル壁2の表面の一部または全部に設けられている。
[0049]
 排ガス浄化フィルタ1は、フィルタ基材4のセル壁2に設けられた細孔を通じて排ガスを流通させることができる。
[0050]
 排ガス中には、粒子状物質やNOxなどの有害物質が含まれている。このうち粒子状物質は、セル壁2の内部および表面、さらにはPM燃焼触媒層5により捕集される。また、排ガス中のNOxは、セル壁2の細孔を通じてフィルタ基材4の下流側に移動する。
[0051]
 排ガスを排ガス浄化フィルタ1へ通過させるときに、排ガス浄化フィルタ1の上流側からアンモニア等の還元剤を供給することにより、NOx還元触媒層6に含まれるNOx還元触媒を働かせて、還元除去させることができる。
[0052]
 フィルタ再生処理時に、PM燃焼触媒層5に含まれる粒子状物質燃焼触媒によって、PM燃焼触媒層5に捕集された排ガス中の粒子状物質は、速やかに燃焼除去される。
[0053]
 本実施の形態の排ガス浄化フィルタ1は、特に以下の構成を備えたものである。
[0054]
 フィルタ基材4は、ウォールフロー型の構造であり、セル壁2で区画された複数のセル3を備え、隣接するセルの端部が交互に目封じされている。これにより、二つの種類のセル3がセル壁2を介して隣接した構成となっている。一つ目は、排ガスの上流側を流入口7として開口し、下流側が閉塞し奥8を形成した排ガス流入セルである。二つ目は、排ガスの上流側が閉塞し奥9を形成し、下流側が流出口10として開口した排ガス流出セルである。
[0055]
 フィルタ基材4の材質は、耐熱性セラミックスや金属材料等からなる多孔質材料であればよい。耐熱性セラミックスとしては、例えば、炭化ケイ素(SiC)、コージェライト、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム等を用いることができる。金属材料としては、例えば、ステンレス合金、Fe-Cr-Al合金等を用いることができる。これらの中でも、耐熱性および触媒塗工性の観点から、炭化ケイ素が好ましい。セル壁2に設けられた細孔の平均細孔径は特に限定されないが、例えば、5μm~50μmとすることができる。平均細孔径が5μm以上の場合には、粒子状物質が堆積しても圧力損失の過度の上昇を抑制することができる。また、平均細孔径が50μm以下の場合には、粒子状物質の過度の素抜けを抑制することができる。セル3の断面形状は特に限定されないが、触媒と粒子状物質の接触面積を大きくできるという観点から、4~8角形のうちのいずれかであることが好ましい。
[0056]
 また、セル3の形成密度は特に限定されないが、上記と同様に触媒と粒子状物質の接触面積を大きくできるという観点から、セル3の数は1平方インチあたり200~400セルであることが好ましい。セル数を200セル以上とすることで、触媒と粒子状物質の接触面積を十分に確保することができる。また、セル数を400セル以下とすることで、セル3への粒子状物質堆積による目詰まりを生じにくくすることができる。
[0057]
 また、本実施の形態の粒子状物質燃焼触媒は、セシウムとバナジウムの複合酸化物(以下、Cs-V複合酸化物と記載)を含む溶融塩型触媒である。バナジウムに対するセシウムのモル比(Cs/V)は0.5≦Cs/V≦1.5である。Cs-V複合酸化物を含む溶融塩型触媒は、気相中の酸素を利用して粒子状物質を燃焼させる、直接酸化型の触媒である。また、溶融塩型触媒は、粒子状物質との反応温度近傍において溶融し、液相となる。そのため、触媒(固体)-粒子状物質(固体)-酸素(気体)が関与する粒子状物質の燃焼において、触媒が液相となることで粒子状物質との接触が飛躍的に増大し、高い粒子状物質燃焼性能を発現すると考えられている。
[0058]
 上述のCs-V複合酸化物としては、例えば、Cs 11(Cs:V=0.5:1.0)、CsVO (Cs:V=1.0:1.0)、Cs 10(Cs:V=1.7:1.0)、Cs 321861(Cs:V=1.8:1.0)、Cs (Cs:V=2.0:1.0)、Cs VO (Cs:V=3.0:1.0)などを挙げることができる。この中でも、粒子状物質燃焼活性と化学的安定性の観点から、バナジウムに対するセシウムのモル比(Cs/V)がCs/V=0.5であるCs 11、あるいはCs/V=1.0であるCsVO を含むことが好ましい。
[0059]
 また、粒子状物質燃焼触媒には、Cs-V複合酸化物を保持するための担体を含むことが好ましい。Cs-V複合酸化物は単独でも高い粒子状物質燃焼性を有しているが、触媒の比表面積が低いために粒子状物質と触媒との接触率が低下し、燃焼反応が起こり難い恐れがある。また、担体を用いない場合には、排ガスの温度及び組成変動の影響を受けて、容易に凝集し、粒子状物質燃焼活性が低下する恐れがある。そのため、担体の表面にCs-V複合酸化物を接触させて保持することにより、Cs-V複合酸化物の比表面積を増加させつつ、高温雰囲気下での凝集を抑制することができる。担体としては、例えばAl 、SiO 、TiO 、CeO 、ZrO 、CeO -ZrO 、MgOなどを用いることができる。
[0060]
 また、前記粒子状物質燃焼触媒は、セル壁2を挟んでフィルタ基材4の流入口7側にPM燃焼触媒層5をなし、前記NOx還元触媒はセル壁2を挟んで流出口10側にNOx還元触媒層6を形成している。粒子状物質燃焼触媒および還元触媒のどちらか、または両方ともセル壁2内部に存在してもよいが、圧力損失を低減するためにセル壁2内部での存在比率が50%以下であることが望ましい。
[0061]
 PM燃焼触媒層5は、フィルタ基材4の流入口7から奥へ行くにしたがって厚く、NOx還元触媒層6は、フィルタ基材4の奥から流出口10へ行くにしたがって厚く形成していることを特徴とするものである。PM燃焼触媒層5およびNOx還元触媒層6の厚みは線形的に変化してもよいが、例えば階段状のような段階的に変化する形状でもよい。また、PM燃焼触媒層5とNOx還元触媒層6の厚みはどちらか一方を変化させるだけでも圧力差を設けることができるので、少なくともどちらか一方の厚みを変化させれば良い。
[0062]
 また、PM燃焼触媒層5の厚みは、10μm以上100μm以下であることが好ましい。PM燃焼触媒層5の厚みを10μm以上とすることにより、流入した粒子状物質がセル壁2の内部に入り込む量を低減し、深層ろ過の割合を減少させることができる。深層ろ過の割合を減少させることで粒子状物質堆積時の圧力損失の増大を抑制できる。またPM燃焼触媒層5の厚みを100μm以下とすることにより、触媒コート後の初期圧損を低く保ちつつ、セル壁2の表面とPM燃焼触媒層5との接着性を確保できる。
[0063]
 また、Cs-V複合酸化物は、NOx還元反応において還元剤として作用するアンモニアとの相互作用が弱いという特徴を有する。したがって、排ガス温度が比較的低い温度域においては、アンモニアを酸化することなく、排ガス流れの下流に位置するNOx還元触媒層6に供給することができ、NOx還元性能を発揮することができる。
[0064]
 NOx還元触媒層6に含まれるNOx還元触媒としては、既に知られているものを使用することができる。例えば、V -TiO -WO 、TiO -WO 、銅および鉄成分の中の1種以上から選択される卑金属成分を含むゼオライトなどを用いることができる。中でも、NOx還元性能と耐熱性の観点から、銅成分を含むゼオライトが好ましい。
[0065]
 上記構成により、排ガス浄化フィルタ1に流入した排ガス中のPMは、排ガスが流入する側のセル壁2の内部および表面、さらにはPM燃焼触媒層5に捕集される。排ガス浄化フィルタ1の上流側から供給された還元剤(アンモニア)とともに、排ガス浄化フィルタ1に流入した排ガス中のNOxは、セル壁2の細孔を通じてフィルタ基材4の下流側へ移動し、排ガスが流出する側のセル壁2の表面に設けられたNOx還元触媒層6に含まれるNOx還元触媒によって、還元除去される。
[0066]
 ここで、Cs-V複合酸化物は、NOx還元反応において還元剤として作用するアンモニアとの相互作用が弱いので、比較的低い温度域において、排ガス浄化フィルタ1の上流側からアンモニア等の還元剤を供給しても、Cs-V複合酸化物は、還元剤を酸化させることなく、フィルタ基材4の下流側へ流通させることができる。フィルタ再生処理時に、PM燃焼触媒層5に含まれるCs-V複合酸化物の触媒は、白金族金属を用いた触媒に比べて、低い温度域で、捕集されたPMを気相中の酸素と反応させ、速やかに燃焼除去させることができる。その結果、排ガス浄化フィルタ1において、排ガスが流入する側のセル3では高いPM燃焼性能を発現し、排ガスが流出する側のセル3でもNOx還元性能を発現することができる。
[0067]
 特に、本実施の形態では、排ガス浄化フィルタ1内部において、フィルタ基材4の流入口7から奥へ行くにしたがってPM燃焼触媒層5を厚く、または、フィルタ基材4の奥から流出口10へ行くにしたがってNOx還元触媒層6を厚く形成することで、圧力損失に差を設けることができる。空気は圧力損失の低いところを優先的に通過するため、排ガスは、フィルタ基材4の流入口7付近を優先的に流れるようになる。結果、排ガスがNOx還元触媒層6(NOx還元触媒)の表面を流れる距離、すなわち、排ガスがNOx還元触媒層6を流れる沿面距離を長くすることができ、PM燃焼触媒層5とNOx還元触媒層6の厚みをそれぞれ均一にした場合に比べて、高い効率でNOxを浄化できる。
[0068]
 すなわち、排ガス浄化フィルタ1において、排ガスが流入する側のセル3で高い粒子状物質燃焼性能を発現し、排ガスが流出する側のセル3でNOx還元性能を発現することができる排ガス浄化フィルタ1を提供することができる。
[0069]
 以上説明したように、排ガス浄化フィルタ1は、セル壁2で区画された複数のセル3を有する多孔質のフィルタ基材4と、PMを燃焼して浄化するPM燃焼触媒と、NOxを還元して浄化するNOx還元除去触媒とを備えている。PM燃焼触媒は、排ガスが流入する側のセル壁2の表面の一部または全部に含まれ、PM燃焼触媒層5を形成している。また、NOx還元除去触媒は、排ガスが流出する側のセル壁2の表面の一部または全部に含まれ、NOx還元触媒層6を形成している。そして、PM燃焼触媒は、バナジウムに対するセシウムのモル比(Cs/V)が0.5≦Cs/V≦1.5である、セシウムとバナジウムの複合酸化物を含む溶融塩型触媒である構成としている。
[0070]
 セシウムとバナジウムの複合酸化物を含む溶融塩型触媒は、気相中の酸素を利用してPMを燃焼させる、直接酸化型の触媒である。また、溶融塩型触媒は、PMとの反応温度近傍において溶融し、液相となる。そのため、触媒(固体)-PM(固体)-酸素(気体)が関与するPMの燃焼において、触媒が液相となることでPMとの接触が飛躍的に増大し、高いPM燃焼性能を発現すると考えられる。
[0071]
 また、セシウムとバナジウムの複合酸化物は、NOx還元反応において還元剤として作用するアンモニアとの相互作用が弱いという特徴を有する。したがって、排ガス温度が比較的低い温度域においては、アンモニアを酸化することなく、排ガス流れの下流に位置するNOx還元触媒層6にアンモニアを供給することができるので、排ガス浄化フィルタ1はNOx還元性能を発揮することができる。
[0072]
 したがって、高いPM燃焼性能と、NOx還元性能とを併せ持つ排ガス浄化フィルタを提供することができる。
[0073]
 また、排ガス浄化フィルタ1は、多孔質のセル壁2で区画された複数のセルを有するウォールフロー型のフィルタ基材4と、フィルタ基材4に担持し粒子状物質を燃焼して浄化する粒子状物質燃焼触媒と、NOxを浄化するNOx還元触媒とを備えている。また、粒子状物質燃焼触媒はセル壁2を挟んでフィルタ基材4の流入口7側に第一触媒層をなし、NOx還元触媒はセル壁2を挟んで流出口10側に第二触媒層をなしている。さらに、少なくとも、第一触媒層をフィルタ基材4の流入口7から奥へ行くにしたがって厚く形成し、または、第二触媒層をフィルタ基材4の奥から流出口10へ行くにしたがって厚く形成しているものとしてもよい。
[0074]
 これにより、触媒層の厚みに変化を設けることで圧力損失に差を設けることができる。空気は圧力損失の低いところを優先的に通過するため、フィルタ基材4の流入口7付近を優先的に流れるようになる。結果、排ガスがNOx還元触媒の表面を流れる距離、すなわち排ガスがNOx還元触媒を流れる沿面距離を長くすることができ、高い効率でNOxを浄化できる。
[0075]
 また、排ガス浄化フィルタ1において、粒子状物質燃焼触媒は、バナジウムに対するセシウムのモル比(Cs/V)が0.5≦Cs/V≦1.5である、セシウムとバナジウムの複合酸化物と、セリウム含有酸化物とを含む溶融塩型触媒としてもよい。
[0076]
 一般的な白金族を含む粒子状物質燃焼触媒では、効果的にススを燃焼するためには排ガスに含まれるNO を使用する必要がある。すなわち、粒子状物質燃焼触媒を担持したセル壁2全域にわたり排ガスを透過させて、NO を粒子状物質燃焼触媒に接触させなければならない。しかし、本実施の形態のような、バナジウムとセシウムの複合酸化物からなる触媒を備えた粒子状物質燃焼触媒では、ススの燃焼においてNO を必要としないので、NO を含む排ガスが粒子状物質燃焼触媒を担持したセル壁2の一部を透過してしまうことがあっても、流入側のセル3内に停留する粒子状物質燃焼触媒によって、NO に比べて粒子径の大きなススを燃焼させることができる。
[0077]
 さらに、NO を含む排ガスが粒子状物質燃焼触媒を担持したセル壁2の一部を透過してしまうことは、フィルタ基材4の流出口10側において、排ガスがNOx還元触媒の表面を流れる距離を長くすることができ、効率的なNOx浄化ができる。
[0078]
 また、排ガス浄化フィルタは、第一触媒層の厚みが10μm以上100μm以下であることとしてもよい。
[0079]
 これにより、粒子状物質燃焼に必要な触媒量を満たしかつ、圧力損失が高くなりすぎない。
[0080]
 また、排ガス浄化フィルタは、粒子状物質燃焼触媒は、酸化物担体に担持されていることとしてもよい。
[0081]
 これにより、担体の微細な凹凸が液相となった溶融塩型触媒の意図しない移動を抑制すると考えられる。また、溶融塩型触媒が担体の表面を覆うことにより、溶融塩型触媒の比表面積が大きくなり、ススとの接触および燃焼を促進することができる。

産業上の利用可能性

[0082]
 本発明にかかる排ガス浄化フィルタは、高いPM燃焼性能と、NOx還元性能とを併せ持つものであるので、各種内燃機関から発生する排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタや、ディーゼルエンジンの排ガスを浄化する触媒DPF等として有用である。

符号の説明

[0083]
 1  排ガス浄化フィルタ
 2  セル壁
 3  セル
 4  フィルタ基材
 5  PM燃焼触媒層
 6  NOx還元触媒層
 7  流入口
 8  奥
 9  奥
 10  流出口

請求の範囲

[請求項1]
セル壁で区画された複数のセルを有する多孔質のフィルタ基材と、
PMを燃焼して浄化するPM燃焼触媒と、
排ガスが流入する側の前記セル壁の表面の一部または全部に前記PM燃焼触媒が含まれたPM燃焼触媒層と、
NOxを還元して浄化するNOx還元除去触媒と、
排ガスが流出する側の前記セル壁の表面の一部または全部に前記NOx還元除去触媒が含まれたNOx還元触媒層とを備え、
前記PM燃焼触媒は、バナジウムに対するセシウムのモル比(Cs/V)が0.5≦Cs/V≦1.5である、セシウムとバナジウムの複合酸化物を含む溶融塩型触媒である、排ガス浄化フィルタ。
[請求項2]
多孔質のセル壁で区画された複数のセルを有するウォールフロー型のフィルタ基材と、前記フィルタ基材に担持し粒子状物質を燃焼して浄化する粒子状物質燃焼触媒と、NOxを浄化するNOx還元触媒とを備え、前記粒子状物質燃焼触媒は前記セル壁を挟んで前記フィルタ基材の流入口側に第一触媒層をなし、前記NOx還元触媒は前記第二触媒層が前記セル壁を挟んで流出口側に第二触媒層をなし、少なくとも、前記第一触媒層を前記フィルタ基材の流入口から奥へ行くにしたがって厚く、または第二触媒層を前記フィルタ基材の奥から流出口へ行くにしたがって厚く形成していることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
[請求項3]
前記粒子状物質燃焼触媒は、バナジウムに対するセシウムのモル比(Cs/V)が0.5≦Cs/V≦1.5である、セシウムとバナジウムの複合酸化物と、セリウム含有酸化物とを含む溶融塩型触媒であることを特徴とする請求項2記載の排ガス浄化フィルタ。
[請求項4]
前記第一触媒層の厚みが10μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項2記載の排ガス浄化フィルタ。
[請求項5]
前記粒子状物質燃焼触媒は、酸化物担体に担持されていることを特徴とする請求項3記載の排ガス浄化フィルタ。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]