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1. (WO2019053950) 軟磁性合金および磁性部品
Document

明 細 書

発明の名称 軟磁性合金および磁性部品

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020  

発明を実施するための形態

0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070  

実施例

0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

明 細 書

発明の名称 : 軟磁性合金および磁性部品

技術分野

[0001]
 本発明は、軟磁性合金および磁性部品に関する。

背景技術

[0002]
 近年、電子・情報・通信機器等において低消費電力化および高効率化が求められている。さらに、低炭素化社会へ向け、上記の要求が一層強くなっている。そのため、電子・情報・通信機器等の電源回路にも、エネルギー損失の低減や電源効率の向上が求められている。そして、電源回路に使用される磁性素子の磁心には飽和磁束密度の向上、コアロス(磁心損失)の低減および透磁率の向上が求められている。コアロスを低減すれば、電力エネルギーのロスが小さくなり、飽和磁束密度と透磁率を向上すれば、磁性素子を小型化できるので高効率化および省エネルギー化が図られる。上記の磁心のコアロスを低減する方法としては、磁心を構成する磁性体の保磁力を低減することが考えられる。
[0003]
 また、磁性素子の磁心に含まれる軟磁性合金としてFe基軟磁性合金が用いられている。Fe基軟磁性合金は良好な軟磁気特性(高い飽和磁束密度、低い保磁力および高い透磁率)を有することが望まれている。
[0004]
 特許文献1には、B,Si,P,Cu,CおよびCrの含有率を特定の範囲内に制御したFe基合金組成物が記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2016-211017号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 本発明は、高い飽和磁束密度、低い保磁力および高い透磁率μ´を同時に有する軟磁性合金等を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0007]
 上記の目的を達成するために、本発明に係る軟磁性合金は、
 組成式((Fe (1-(α+β))X1 αX2 β(1-(a+b+c+d+e))Si Cu からなる軟磁性合金であって、
 X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
 X2はAl,Cr,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
 MはNb,Hf,Zr,Ta,Ti,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
 0.050≦a≦0.10
 0<b<0.040
 0<c≦0.030
 0<d≦0.020
 0≦e≦0.030
 α≧0
 β≧0
 0≦α+β≦0.50
 であることを特徴とする。
[0008]
 本発明に係る軟磁性合金は、上記の特徴を有することで、熱処理を施すことによりFe基ナノ結晶合金となりやすい構造を有しやすい。さらに、上記の特徴を有するFe基ナノ結晶合金は飽和磁束密度が高く保磁力が低く透磁率μ´が高いという好ましい軟磁気特性を有する軟磁性合金となる。
[0009]
 本発明に係る軟磁性合金は、0≦α{1-(a+b+c+d+e)}≦0.40であってもよい。
[0010]
 本発明に係る軟磁性合金は、α=0であってもよい。
[0011]
 本発明に係る軟磁性合金は、0≦β{1-(a+b+c+d+e)}≦0.030であってもよい。
[0012]
 本発明に係る軟磁性合金は、β=0であってもよい。
[0013]
 本発明に係る軟磁性合金は、α=β=0であってもよい。
[0014]
 本発明に係る軟磁性合金は、非晶質および初期微結晶からなり、前記初期微結晶が前記非晶質中に存在するナノヘテロ構造を有していてもよい。
[0015]
 本発明に係る軟磁性合金は、前記初期微結晶の平均粒径が0.3~10nmであってもよい。
[0016]
 本発明に係る軟磁性合金は、Fe基ナノ結晶からなる構造を有していてもよい。
[0017]
 本発明に係る軟磁性合金は、前記Fe基ナノ結晶の平均粒径が5~30nmであってもよい。
[0018]
 本発明に係る軟磁性合金は、薄帯形状であってもよい。
[0019]
 本発明に係る軟磁性合金は、粉末形状であってもよい。
[0020]
 本発明に係る磁性部品は、上記の軟磁性合金からなる。

発明を実施するための形態

[0021]
 以下、本発明の実施形態について説明する。
[0022]
 本実施形態に係る軟磁性合金は、組成式((Fe (1-(α+β))X1 αX2 β(1-(a+b+c+d+e))Si Cu からなる軟磁性合金であって、
 X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
 X2はAl,Cr,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
 MはNb,Hf,Zr,Ta,Ti,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
 0.050≦a≦0.10
 0<b<0.040
 0<c≦0.030
 0<d≦0.020
 0≦e≦0.030
 α≧0
 β≧0
 0≦α+β≦0.50
 である。
[0023]
 上記の組成を有する軟磁性合金は、非晶質からなり、粒径が30nmよりも大きい結晶からなる結晶相を含まない軟磁性合金としやすい。そして、当該軟磁性合金を熱処理する場合には、Fe基ナノ結晶を析出しやすい。そして、Fe基ナノ結晶を含む軟磁性合金は良好な磁気特性を有しやすい。
[0024]
 言いかえれば、上記の組成を有する軟磁性合金は、Fe基ナノ結晶を析出させた軟磁性合金の出発原料としやすい。
[0025]
 Fe基ナノ結晶とは、粒径がナノオーダーであり、Feの結晶構造がbcc(体心立方格子構造)である結晶のことである。本実施形態においては、平均粒径が5~30nmであるFe基ナノ結晶を析出させることが好ましい。このようなFe基ナノ結晶を析出させた軟磁性合金は、飽和磁束密度が高くなりやすく、保磁力が低くなりやすい。さらに、透磁率μ´が高くなりやすい。なお、透磁率μ´とは複素透磁率の実部を指す。
[0026]
 なお、熱処理前の軟磁性合金は完全に非晶質のみからなっていてもよいが、非晶質および粒径が15nm以下である初期微結晶からなり、前記初期微結晶が前記非晶質中に存在するナノヘテロ構造を有することが好ましい。初期微結晶が非晶質中に存在するナノヘテロ構造を有することにより、熱処理時にFe基ナノ結晶を析出させやすくなる。なお、本実施形態では、前記初期微結晶は平均粒径が0.3~10nmであることが好ましい。
[0027]
 以下、本実施形態に係る軟磁性合金の各成分について詳細に説明する。
[0028]
 Pの含有量(a)は0.050≦a≦0.10を満たす。0.070≦a≦0.090であることが好ましい。Pの含有量を上記の範囲内とすることで、特に保磁力および透磁率μ´を良好にすることができる。aが大きすぎる場合には保磁力が大きくなり、透磁率μ´が低下する。aが小さすぎる場合には、熱処理前の軟磁性合金に粒径30nmよりも大きい結晶からなる結晶相が生じやすく、結晶相が生じる場合には、熱処理によりFe基ナノ結晶を析出させることができず、保磁力が高くなりやすくなり、透磁率μ´が低くなりやすくなる。
[0029]
 Cの含有量(b)は0<b<0.040を満たす。0.010≦b≦0.035であることが好ましく、0.020≦b≦0.035であることがより好ましい。Cの含有量を上記の範囲内とすることで、特に保磁力およびを透磁率μ´を良好にすることができる。bが大きすぎる場合には保磁力が大きくなり、透磁率μ´が低下する。bが小さすぎる場合には、熱処理前の軟磁性合金に粒径30nmよりも大きい結晶からなる結晶相が生じやすく、結晶相が生じる場合には、熱処理によりFe基ナノ結晶を析出させることができず、保磁力が高くなりやすくなり、透磁率μ´が低くなりやすくなる。
[0030]
 Siの含有量(c)は0<c≦0.030を満たす。0.010≦c≦0.030であることが好ましい。Siの含有量を上記の範囲内とすることで、飽和磁束密度、保磁力および透磁率μ´を良好にすることができる。cが大きすぎる場合には飽和磁束密度が低下する。cが小さすぎる場合には、熱処理前の軟磁性合金に粒径30nmよりも大きい結晶からなる結晶相が生じやすく、結晶相が生じる場合には、熱処理によりFe基ナノ結晶を析出させることができず、保磁力が高くなりやすくなり、透磁率μ´が低くなりやすくなる。さらに、0.015≦c≦0.030であることがより好ましい。0.015≦c≦0.030を満たすことで、特に保磁力および透磁率μ´を向上させることができる。
[0031]
 Cuの含有量(d)は0<d≦0.020を満たす。0.005≦d≦0.020であることが好ましく、0.005≦d≦0.015であることがさらに好ましい。Cuの含有量を上記の範囲内とすることで、特に保磁力および透磁率μ´を良好にすることができる。dが大きすぎる場合には、熱処理前の軟磁性合金に粒径30nmよりも大きい結晶からなる結晶相が生じやすく、結晶相が生じる場合には、熱処理によりFe基ナノ結晶を析出させることができず、保磁力が高くなりやすくなり、透磁率μ´が低くなりやすくなる。dが小さすぎる場合には、保磁力が大きくなり、透磁率μ´が低下する。
[0032]
 MはNb,Hf,Zr,Ta,Ti,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上である。
[0033]
 Mの含有量(e)は0≦e≦0.030を満たす。すなわち、Mを含有しなくてもよい。eが大きいほど保磁力が低下し易くなり、透磁率μ´が増加し易くなるが、飽和磁束密度が低下し易くなる。
[0034]
 Feの含有量(1-(a+b+c+d+e))については、特に制限はないが、0.850≦(1-(a+b+c+d+e))≦0.900であることが好ましい。(1-(a+b+c+d+e))を上記の範囲内とすることで、熱処理前の軟磁性合金に粒径30nmよりも大きい結晶からなる結晶相がさらに生じにくくなる。
[0035]
 また、本実施形態に係る軟磁性合金においては、Feの一部をX1および/またはX2で置換してもよい。
[0036]
 X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上である。X1の含有量に関してはα=0でもよい。すなわち、X1は含有しなくてもよい。また、X1の原子数は組成全体の原子数を100at%として40at%以下であることが好ましい。すなわち、0≦α{1-(a+b+c+d+e)}≦0.40を満たすことが好ましい。
[0037]
 X2はAl,Cr,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上である。X2の含有量に関してはβ=0でもよい。すなわち、X2は含有しなくてもよい。また、X2の原子数は組成全体の原子数を100at%として3.0at%以下であることが好ましい。すなわち、0≦β{1-(a+b+c+d+e)}≦0.030を満たすことが好ましい。
[0038]
 FeをX1および/またはX2に置換する置換量の範囲としては、原子数ベースでFeの半分以下とする。すなわち、0≦α+β≦0.50とする。α+β>0.50の場合には、熱処理によりFe基ナノ結晶合金とすることが困難となる。
[0039]
 なお、本実施形態に係る軟磁性合金は上記以外の元素(例えばB等)を不可避的不純物として含んでいてもよい。例えば、軟磁性合金100重量%に対して0.1重量%以下、含んでいてもよい。特にBは比較的高価であるため、含有量を低減させることが好ましい。
[0040]
 以下、本実施形態に係る軟磁性合金の製造方法について説明する。
[0041]
 本実施形態に係る軟磁性合金の製造方法には特に限定はない。例えば単ロール法により本実施形態に係る軟磁性合金の薄帯を製造する方法がある。また、薄帯は連続薄帯であってもよい。
[0042]
 単ロール法では、まず、最終的に得られる軟磁性合金に含まれる各金属元素の純金属を準備し、最終的に得られる軟磁性合金と同組成となるように秤量する。そして、各金属元素の純金属を溶解し、混合して母合金を作製する。なお、前記純金属の溶解方法には特に制限はないが、例えばチャンバー内で真空引きした後に高周波加熱にて溶解させる方法がある。なお、母合金と最終的に得られるFe基ナノ結晶からなる軟磁性合金とは通常、同組成となる。
[0043]
 次に、作製した母合金を加熱して溶融させ、溶融金属(浴湯)を得る。溶融金属の温度には特に制限はないが、例えば1200~1500℃とすることができる。
[0044]
 単ロール法においては、主にロール33の回転速度を調整することで得られる薄帯の厚さを調整することができるが、例えばノズルとロールとの間隔や溶融金属の温度などを調整することでも得られる薄帯の厚さを調整することができる。薄帯の厚さには特に制限はないが、例えば5~30μmとすることができる。
[0045]
 後述する熱処理前の時点では、薄帯は粒径が30nmよりも大きい結晶が含まれていない非晶質である。非晶質である薄帯に対して後述する熱処理を施すことにより、Fe基ナノ結晶合金を得ることができる。
[0046]
 なお、熱処理前の軟磁性合金の薄帯に粒径が30nmよりも大きい結晶が含まれているか否かを確認する方法には特に制限はない。例えば、粒径が30nmよりも大きい結晶の有無については、通常のX線回折測定により確認することができる。
[0047]
 また、熱処理前の薄帯には、粒径が15nm以下の初期微結晶が全く含まれていなくてもよいが、初期微結晶が含まれていることが好ましい。すなわち、熱処理前の薄帯は、非晶質および該非晶質中に存在する該初期微結晶とからなるナノヘテロ構造であることが好ましい。なお、初期微結晶の粒径に特に制限はないが、平均粒径が0.3~10nmの範囲内であることが好ましい。
[0048]
 また、上記の初期微結晶の有無および平均粒径の観察方法については、特に制限はないが、例えば、イオンミリングにより薄片化した試料に対して、透過電子顕微鏡を用いて、制限視野回折像、ナノビーム回折像、明視野像または高分解能像を得ることで確認できる。制限視野回折像またはナノビーム回折像を用いる場合、回折パターンにおいて非晶質の場合にはリング状の回折が形成されるのに対し、非晶質ではない場合には結晶構造に起因した回折斑点が形成される。また、明視野像または高分解能像を用いる場合には、倍率1.00×10 ~3.00×10 倍で目視にて観察することで初期微結晶の有無および平均粒径を観察できる。
[0049]
 ロールの温度、回転速度およびチャンバー内部の雰囲気には特に制限はない。ロールの温度は4~30℃とすることが非晶質化のため好ましい。ロールの回転速度は速いほど初期微結晶の平均粒径が小さくなる傾向にあり、30~40m/sec.とすることが平均粒径0.3~10nmの初期微結晶を得るためには好ましい。チャンバー内部の雰囲気はコスト面を考慮すれば大気中とすることが好ましい。
[0050]
 また、Fe基ナノ結晶合金を製造するための熱処理条件には特に制限はない。軟磁性合金の組成により好ましい熱処理条件は異なる。通常、好ましい熱処理温度は概ね380~500℃、好ましい熱処理時間は概ね5~120分となる。しかし、組成によっては上記の範囲を外れたところに好ましい熱処理温度および熱処理時間が存在する場合もある。また、熱処理時の雰囲気には特に制限はない。大気中のような活性雰囲気下で行ってもよいし、Arガス中のような不活性雰囲気下で行ってもよい。
[0051]
 また、得られたFe基ナノ結晶合金における平均粒径の算出方法には特に制限はない。例えば透過電子顕微鏡を用いて観察することで算出できる。また、結晶構造がbcc(体心立方格子構造)であること確認する方法にも特に制限はない。例えばX線回折測定を用いて確認することができる。
[0052]
 また、本実施形態に係る軟磁性合金を得る方法として、上記した単ロール法以外にも、例えば水アトマイズ法またはガスアトマイズ法により本実施形態に係る軟磁性合金の粉体を得る方法がある。以下、ガスアトマイズ法について説明する。
[0053]
 ガスアトマイズ法では、上記した単ロール法と同様にして1200~1500℃の溶融合金を得る。その後、前記溶融合金をチャンバー内で噴射させ、粉体を作製する。
[0054]
 このとき、ガス噴射温度を4~30℃とし、チャンバー内の蒸気圧を1hPa以下とすることで、上記の好ましいナノヘテロ構造を得やすくなる。
[0055]
 ガスアトマイズ法で粉体を作製した後に、400~600℃で0.5~10分、熱処理を行うことで、各粉体同士が焼結し粉体が粗大化することを防ぎつつ元素の拡散を促し、熱力学的平衡状態に短時間で到達させることができ、歪や応力を除去することができ、平均粒径が10~50nmのFe基軟磁性合金を得やすくなる。
[0056]
 以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。
[0057]
 本実施形態に係る軟磁性合金の形状には特に制限はない。上記した通り、薄帯形状や粉末形状が例示されるが、それ以外にもブロック形状等も考えられる。
[0058]
 本実施形態に係る軟磁性合金(Fe基ナノ結晶合金)の用途には特に制限はない。例えば、磁性部品が挙げられ、その中でも特に磁心が挙げられる。インダクタ用、特にパワーインダクタ用の磁心として好適に用いることができる。本実施形態に係る軟磁性合金は、磁心の他にも薄膜インダクタ、磁気ヘッドにも好適に用いることができる。
[0059]
 以下、本実施形態に係る軟磁性合金から磁性部品、特に磁心およびインダクタを得る方法について説明するが、本実施形態に係る軟磁性合金から磁心およびインダクタを得る方法は下記の方法に限定されない。また、磁心の用途としては、インダクタの他にも、トランスおよびモータなどが挙げられる。
[0060]
 薄帯形状の軟磁性合金から磁心を得る方法としては、例えば、薄帯形状の軟磁性合金を巻き回す方法や積層する方法が挙げられる。薄帯形状の軟磁性合金を積層する際に絶縁体を介して積層する場合には、さらに特性を向上させた磁芯を得ることができる。
[0061]
 粉末形状の軟磁性合金から磁心を得る方法としては、例えば、適宜バインダと混合した後、金型を用いて成形する方法が挙げられる。また、バインダと混合する前に、粉末表面に酸化処理や絶縁被膜等を施すことにより、比抵抗が向上し、より高周波帯域に適合した磁心となる。
[0062]
 成形方法に特に制限はなく、金型を用いる成形やモールド成形などが例示される。バインダの種類に特に制限はなく、シリコーン樹脂が例示される。軟磁性合金粉末とバインダとの混合比率にも特に制限はない。例えば軟磁性合金粉末100質量%に対し、1~10質量%のバインダを混合させる。
[0063]
 例えば、軟磁性合金粉末100質量%に対し、1~5質量%のバインダを混合させ、金型を用いて圧縮成形することで、占積率(粉末充填率)が70%以上、1.6×10 A/mの磁界を印加したときの磁束密度が0.45T以上、かつ比抵抗が1Ω・cm以上である磁心を得ることができる。上記の特性は、一般的なフェライト磁心と同等以上の特性である。
[0064]
 また、例えば、軟磁性合金粉末100質量%に対し、1~3質量%のバインダを混合させ、バインダの軟化点以上の温度条件下の金型で圧縮成形することで、占積率が80%以上、1.6×10 A/mの磁界を印加したときの磁束密度が0.9T以上、かつ比抵抗が0.1Ω・cm以上である圧粉磁心を得ることができる。上記の特性は、一般的な圧粉磁心よりも優れた特性である。
[0065]
 さらに、上記の磁心を成す成形体に対し、歪取り熱処理として成形後に熱処理することで、さらにコアロスが低下し、有用性が高まる。なお、磁心のコアロスは、磁心を構成する磁性体の保磁力を低減することで低下する。
[0066]
 また、上記磁心に巻線を施すことでインダクタンス部品が得られる。巻線の施し方およびインダクタンス部品の製造方法には特に制限はない。例えば、上記の方法で製造した磁心に巻線を少なくとも1ターン以上巻き回す方法が挙げられる。
[0067]
 さらに、軟磁性合金粒子を用いる場合には、巻線コイルが磁性体に内蔵されている状態で加圧成形し一体化することでインダクタンス部品を製造する方法がある。この場合には高周波かつ大電流に対応したインダクタンス部品を得やすい。
[0068]
 さらに、軟磁性合金粒子を用いる場合には、軟磁性合金粒子にバインダおよび溶剤を添加してペースト化した軟磁性合金ペースト、および、コイル用の導体金属にバインダおよび溶剤を添加してペースト化した導体ペーストを交互に印刷積層した後に加熱焼成することで、インダクタンス部品を得ることができる。あるいは、軟磁性合金ペーストを用いて軟磁性合金シートを作製し、軟磁性合金シートの表面に導体ペーストを印刷し、これらを積層し焼成することで、コイルが磁性体に内蔵されたインダクタンス部品を得ることができる。
[0069]
 ここで、軟磁性合金粒子を用いてインダクタンス部品を製造する場合には、最大粒径が篩径で45μm以下、中心粒径(D50)が30μm以下の軟磁性合金粉末を用いることが、優れたQ特性を得る上で好ましい。最大粒径を篩径で45μm以下とするために、目開き45μmの篩を用い、篩を通過する軟磁性合金粉末のみを用いてもよい。
[0070]
 最大粒径が大きな軟磁性合金粉末を用いるほど高周波領域でのQ値が低下する傾向があり、特に最大粒径が篩径で45μmを超える軟磁性合金粉末を用いる場合には、高周波領域でのQ値が大きく低下する場合がある。ただし、高周波領域でのQ値を重視しない場合には、バラツキの大きな軟磁性合金粉末を使用可能である。バラツキの大きな軟磁性合金粉末は比較的安価で製造できるため、バラツキの大きな軟磁性合金粉末を用いる場合には、コストを低減することが可能である。
実施例
[0071]
 以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
[0072]
 下表に示す各実施例および比較例の合金組成となるように原料金属を秤量し、高周波加熱にて溶解し、母合金を作製した。
[0073]
 その後、作製した母合金を加熱して溶融させ、1300℃の溶融状態の金属とした後に、大気中において20℃のロールを回転速度40m/sec.で用いた単ロール法により前記金属をロールに噴射させ、薄帯を作成した。薄帯の厚さ20~25μm、薄帯の幅約15mm、薄帯の長さ約10mとした。
[0074]
 得られた各薄帯に対してX線回折測定を行い、粒径が30nmよりも大きい結晶の有無を確認した。そして、粒径が30nmよりも大きい結晶が存在しない場合には非晶質相からなるとし、粒径が30nmよりも大きい結晶が存在する場合には結晶相からなるとした。なお、非晶質相には粒径が15nm以下である初期微結晶が含まれていてもよい。
[0075]
 その後、各実施例および比較例の薄帯に対し、下表に示す温度で10分、熱処理を行った。なお、下表に熱処理温度の記載の無い試料については、熱処理温度450℃とした。熱処理後の各薄帯に対し、飽和磁束密度、保磁力および透磁率を測定した。飽和磁束密度(Bs)は振動試料型磁力計(VSM)を用いて磁場1000kA/mで測定した。保磁力(Hc)は直流BHトレーサーを用いて磁場5kA/mで測定した。透磁率(μ´)はインピーダンスアナライザを用いて周波数1kHzで測定した。本実施例では、飽和磁束密度は1.80T以上を良好とした。保磁力は20.0A/m以下を良好とし、15.0A/m以下をさらに良好とした。透磁率μ´は10000以上を良好とし、15000以上をさらに良好とした。
[0076]
 なお、以下に示す実施例では特に記載の無い限り、全て平均粒径が5~30nmであり結晶構造がbccであるFe基ナノ結晶を有していたことをX線回折測定、および透過電子顕微鏡を用いた観察で確認した。
[0077]
[表1]


[0078]
[表2]


[0079]
[表3]


[0080]
[表4]


[0081]
[表5]


[0082]
[表6]


[0083]
[表7]


[0084]
 表1はPの含有量以外の条件を同一としてPの含有量のみ変化させた実施例および比較例を記載したものである。
[0085]
 Pの含有量(a)が0.050≦a≦0.10の範囲内である実施例1~5は飽和磁束密度、保磁力および透磁率μ´が良好であった。これに対し、a=0.110である比較例1は保磁力が大きくなり、透磁率μ´が低下した。a=0.040である比較例2は熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理後の保磁力が著しく大きくなり透磁率μ´が著しく小さくなった。
[0086]
 表2はCの含有量(b)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
[0087]
 0<b<0.040を満たす実施例6~8は飽和磁束密度、保磁力および透磁率μ´が良好であった。これに対し、b=0.040である比較例3は保磁力が大きくなり、透磁率μ´が低下した。b=0.000である比較例4は熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理後の保磁力が著しく大きくなり透磁率μ´が著しく小さくなった。
[0088]
 表3はSiの含有量(c)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
[0089]
 0.00<c≦0.030を満たす実施例9~11は飽和磁束密度、保磁力および透磁率μ´が良好であった。これに対し、c=0.034である比較例5は飽和磁束密度が低下した。c=0.000である比較例6は熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理後の保磁力が著しく大きくなり透磁率μ´が著しく小さくなった。
[0090]
 表4はCuの含有量(d)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
[0091]
 0<d≦0.020を満たす実施例12~14は飽和磁束密度、保磁力および透磁率μ´が良好であった。これに対し、d=0.022である比較例7は熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理後の保磁力が著しく大きくなり透磁率μ´が著しく小さくなった。d=0.000である比較例9は保磁力が大きくなり透磁率μ´が低下した。
[0092]
 表5はMの種類およびMの含有量(e)を変化させた実施例21~29を記載したものである。
[0093]
 いずれの実施例も飽和磁束密度、保磁力および透磁率μ´が良好であった。これに対し、eが大きすぎる比較例9では、飽和磁束密度が低下した。
[0094]
 表6は実施例3についてFeの一部をX1および/またはX2で置換した実施例である。
[0095]
 表6より、Feの一部をX1および/またはX2で置換しても良好な特性を示した。
[0096]
 表7は実施例3についてロールの回転速度および/または熱処理温度を変化させることで初期微結晶の平均粒径およびFe基ナノ結晶合金の平均粒径を変化させた実施例である。
[0097]
 表7より、ロールの回転速度および/または熱処理温度を変化させることで初期微結晶の平均粒径およびFe基ナノ結晶合金の平均粒径を変化させても良好な特性を示した。

請求の範囲

[請求項1]
 組成式((Fe (1-(α+β))X1 αX2 β(1-(a+b+c+d+e))Si Cu からなる軟磁性合金であって、
 X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
 X2はAl,Cr,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
 MはNb,Hf,Zr,Ta,Ti,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
 0.050≦a≦0.10
 0<b<0.040
 0<c≦0.030
 0<d≦0.020
 0≦e≦0.030
 α≧0
 β≧0
 0≦α+β≦0.50
 であることを特徴とする軟磁性合金。
[請求項2]
 0≦α{1-(a+b+c+d+e)}≦0.40である請求項1に記載の軟磁性合金。
[請求項3]
 α=0である請求項1または2に記載の軟磁性合金。
[請求項4]
 0≦β{1-(a+b+c+d+e)}≦0.030である請求項1~3のいずれかに記載の軟磁性合金。
[請求項5]
 β=0である請求項1~4のいずれかに記載の軟磁性合金。
[請求項6]
 α=β=0である請求項1~5のいずれかに記載の軟磁性合金。
[請求項7]
 非晶質および初期微結晶からなり、前記初期微結晶が前記非晶質中に存在するナノヘテロ構造を有する請求項1~6のいずれかに記載の軟磁性合金。
[請求項8]
 前記初期微結晶の平均粒径が0.3~10nmである請求項7に記載の軟磁性合金。
[請求項9]
 Fe基ナノ結晶からなる構造を有する請求項1~6のいずれかに記載の軟磁性合金。
[請求項10]
 前記Fe基ナノ結晶の平均粒径が5~30nmである請求項9に記載の軟磁性合金。
[請求項11]
 薄帯形状である請求項1~10のいずれかに記載の軟磁性合金。
[請求項12]
 粉末形状である請求項1~10のいずれかに記載の軟磁性合金。
[請求項13]
 請求項1~12のいずれかに記載の軟磁性合金からなる磁性部品。