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1. (WO2019049966) ヒスタミンの検出法およびキット
Document

明 細 書

発明の名称 ヒスタミンの検出法およびキット

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010  

先行技術文献

特許文献

0011  

非特許文献

0012  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0013   0014   0015  

課題を解決するための手段

0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032  

発明の効果

0033  

図面の簡単な説明

0034  

発明を実施するための形態

0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065  

実施例

0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108  

産業上の利用可能性

0109  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7  

明 細 書

発明の名称 : ヒスタミンの検出法およびキット

技術分野

[0001]
 本発明は、発色反応を利用したヒスタミンの検出法に関するものであり、特に、経時的な退色を防止するために改善された方法に関する。また、本発明は、当該方法に用いられるキットに関する。

背景技術

[0002]
 ヒスタミンは、体内で起こるアレルギー反応の化学伝達物質であるため、ヒスタミンを多量蓄積した食品を摂取するとアレルギー様中毒となる。その症状は、食後数分から数時間での顔面などの発赤、続いて、かゆみ、じん麻疹、あるいは湿疹の発症である。まれに、じん麻疹が全身に広がり、気管支炎や血圧降下を起こし、重症化することもある。このため、食品加工工場や食品衛生監視機関、臨床検査室などにおいて、ヒスタミン濃度を簡易かつ迅速に測定することができるヒスタミン定量法の開発が強く求められていた。
[0003]
 ヒスタミンの定量法としては、蛍光分析法、薄相クロマトグラフィーやペーパークロマトグラフィーを用いるクロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法、抗原抗体反応法、酵素法などが知られている(例えば、非特許文献1)。
[0004]
 蛍光分析法は、Official Methods of Analysis of AOAC Internationalに掲載されている公定法であり、一般的に使用されている方法の一つである(例えば、非特許文献2)。その原理は、ヒスタミンと蛍光試薬のo-フタルアルデヒドとヒスタミンとの縮合作用により蛍光色素を生成させ、その蛍光の強度を蛍光分光光度計で測定するものである。しかし、この方法は、縮合作用前に作用妨害成分をサンプルから除去する必要があり、陽イオンあるいは陰イオン交換樹脂カラム処理などを行うための手間と時間を避けることができない。また、一般に、魚肉が腐敗する際、ヒスタミンの生成とほぼ同時に、カダベリンやプトレッシンといった生体アミンも生成するため、ヒスタミンの定量に際しては、これら生体アミンを分離除去しなければならない不便さもある。
[0005]
 クロマトグラフィーによるヒスタミン定量法については、これまで多くの研究がなされている。薄相クロマトグラフィーやペーパークロマトグラフィーは、比較的安価な測定装置で多数の試料を同時に測定できるものの、定量性が十分でないことが指摘されており、また、ガスクロマトグラフィーは、ヒスタミンのような不揮発性アミンの直接定量は不可能であり、ヘプタフロロブチリル誘導体などに変換してから定量しなければならない不便さが指摘されている。
[0006]
 一方、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による定量は、日本において、最良の方法として食品分析の書籍などで紹介されている(例えば、非特許文献3)。しかしながら、前処理操作が煩雑であることや、測定のための高度な装置や技術能力を必要とすることに加え、クロマトグラフィーの操作に、通常、30~60分程度かかることから、多数分析には不向きである。
[0007]
 抗原抗体反応法は、市販キットとして普及している測定法の一つであるが、操作手順が多く、また、反応時間が厳密であり測定の迅速さが求められる。
[0008]
 酵素法では、モノアミンオキシダーゼ固定化膜で被覆した電極を用いる酵素電極法が知られているが(例えば、非特許文献4)、検液の局部的な溶存酸素濃度(DO)を測定する方法であるため、精度が高くない(相対誤差約8%)という欠点を有する。
[0009]
 他の酵素法としては、微生物由来のヒスタミンオキシダーゼ活性を有する酵素を用いた溶存酸素電極法が知られている(例えば、非特許文献5)。この方法は、従来の蛍光分析法やHPLC法と比較して、煩雑な妨害物質除去操作や、ヒスタミン標準液を用いる校正操作を要せず、電極の応答時間が1分半であることから、簡易で迅速な方法として、また高精度な方法(相対誤差が0.98%)として、既にFDAから高い内部評価を得ている(例えば、非特許文献6)。しかしながら、この方法も、酸素電極の出力電流および飽和溶存酸素濃度が、温度の影響を受けやすいこと(温度依存型)に配慮して、実施に際しては、検液の空気飽和操作を含め全工程を一定温度(37℃)の下に行わなければならない。そのため、作用セルの温度を一定に保持するためのサーモスタット付き温水ジャケットを備えた大型の反応装置が必要となり、その移動の困難性や消費電力に対応する電源確保の困難性などの問題があった。またDO電極が装着された作用セルは、気泡(空気)が混入すると正確なDOの測定が困難となるため、定量操作の際、必ず液密的に保持しなければならず、また、作用セルは繰返して使用し、その都度洗浄しなければならないこと(すなわち使い捨て作用セルは使用できないこと)から、不便であった。
[0010]
 これらの諸問題を解決した酵素によるヒスタミン測定法として、ヒスタミンデヒドロゲナーゼを用いる方法が開発された(例えば、特許文献1)。この方法は、ヒスタミン含有試料に、テトラゾリウム系の電子キャリアー(例えば、フェナジンメトサルフェート、メルドラブルーなど)およびテトラゾリウム系の還元系発色試薬(例えば、MTT、Nitro-TB、WST-8など)の存在下、ヒスタミンデヒドロゲナーゼを添加して酵素作用を行わせ、生成する色素を測定する比色定量法であり、試料からのヒスタミンの分画操作や煩雑な妨害物質(不純物)の除去操作などの前処理が不要であること、定量に要する時間が短時間であること、簡便な装置を用いて測定することができること、作用セルは液密的条件下で操作する必要がないこと(すなわち開放系で操作することが可能であること)、など多くの利点を有する。

先行技術文献

特許文献

[0011]
特許文献1 : 特開2001-157597号公報

非特許文献

[0012]
非特許文献1 : 斉藤、外1名,「食品中のアミン類の分析」,月刊フードケミカル,1994年7月,第10巻,第7号,p.115-122
非特許文献2 : エイオーエイシー オフィシャル メソッド(AOAC Official Method) 977.13,“エイオーエイシー オフィシャル メソッド  オブ  アナリシス”(“AOAC Official Methods of Analysis ”),米国,1995年,p.16-18
非特許文献3 : “日本薬学会編 衛生試験法・注解”,金原出版,1990年,p.288
非特許文献4 : Karube et al、Enzyme Microb. Technl. 1980年,第2巻,p.117-120
非特許文献5 : 野村、外4名,「酸素センサーによる魚肉ヒスタミン定量法の改良」,食品衛生学雑誌,1996年2月,第37巻,第2号,p.109―113
非特許文献6 : フード ケミカル ニュース(Food Chemical News),(米国食品医薬品局)FDA発行,米国,1994年9月26日,p.19

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0013]
 しかしながら、ヒスタミンデヒドロゲナーゼを利用して発色を指標にヒスタミンを検出する方法において、マルチウェルプレートなどを利用して、多検体の発色を同時に測定しようとした場合、各ウェルにおける操作のために、生成する色素の検出時には、発色反応の開始から長時間(例えば、1時間以上)経過することも想定される。このため、発色反応の開始から測定までの時間の如何にかかわらず、効率的にヒスタミンを定量できることが望ましい。
[0014]
 そこで、本発明者は、まず、当該方法において、発色反応開始後に退色が生じるか否か、およびその程度につき検討を行った。その結果、発色反応開始後、比較的短時間では退色は問題とならないが、その後に経時的な退色が生じることが判明した(後述の実施例3)。この事実から、当該方法を利用して、一定時間経過後に発色を指標としてヒスタミン濃度を定量しようとした場合には、検出時の退色が問題となり得る。
[0015]
 よって、本発明は、ヒスタミンデヒドロゲナーゼを利用して発色を指標にヒスタミンを検出する方法において、経時的な退色を防止し得る方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0016]
 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ヒスタミンデヒドロゲナーゼを利用して発色を指標にヒスタミンを検出する方法において、反応系に界面活性剤、特に下記式(1)の構造を有する界面活性剤を添加することにより、経時的な退色を顕著に抑制し得ることを見出した。
[0017]
[化1]


[0018]
(式中、Rは飽和または不飽和の炭化水素基を示し、nは、0~10の整数であり、Mは対イオンを示す。)。
[0019]
 また、反応系に上記界面活性剤を添加した場合、発色反応開始から長時間経過後においても、ヒスタミン濃度と発色強度の正の相関が極めて高く、引いては、高い精度でヒスタミン濃度の定量が可能となることも見出した。
[0020]
 さらに、上記界面活性剤が、妨害物質(不純物)を含む試料においては、その発色への影響を抑制する効果をも有することを見出し、本発明を完成するに至った。
[0021]
 すなわち、本発明は、ヒスタミンデヒドロゲナーゼを利用して発色を指標にヒスタミンを検出する方法において、界面活性剤の利用により、経時的な退色や妨害物質による発色への影響が改善された方法、および当該方法に用いられるキットに関し、より詳しくは、以下を提供するものである。
[0022]
 [1]試料中のヒスタミンを検出する方法であって、
 テトラゾリウム塩、電子キャリアー、および界面活性剤の存在下で、当該試料中のヒスタミンにヒスタミンデヒドロゲナーゼを作用させ、テトラゾリウム塩の還元により生成するホルマザン色素を指標として、当該試料中のヒスタミンを検出する方法。
[0023]
 [2]試料中のヒスタミンを検出する方法であって、
 テトラゾリウム塩、電子キャリアー、および界面活性剤の存在下で、当該試料中のヒスタミンにヒスタミンデヒドロゲナーゼを作用させ、テトラゾリウム塩の還元により生成するホルマザン色素を指標として、当該試料中のヒスタミンを検出することを含み、
 当該界面活性剤が、下記式(1)の構造を有する化合物である方法。
[0024]
[化2]


[0025]
(式中、Rは飽和または不飽和の炭化水素基を示し、nは、0~10の整数であり、Mは対イオンを示す。)。
[0026]
 [3]式(1)の構造を有する化合物が、ポリオキシエチレンアルキルエ一テル硫酸塩である、[2]に記載の方法。
[0027]
 [4]ポリオキシエチレンアルキルエ一テル硫酸塩が、ポリオキシエチレンラウリルエ一テル硫酸トリエタノールアミンまたはポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムである、[3]に記載の方法。
[0028]
 [5]テトラゾリウム塩が、2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム・モノナトリウム塩である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[0029]
 [6]電子キャリアーが、1-メトキシ-5-フェナジンメトサルフェートである、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[0030]
 [7][1]~[6]のいずれかに記載の方法に用いるためのキットであって、下記(a)~(d)を含むキット。
(a)ヒスタミンデヒドロゲナーゼ
(b)テトラゾリウム塩
(c)電子キャリアー
(d)界面活性剤。
[0031]
 [8]テトラゾリウム塩および電子キャリアーの存在下で、試料中のヒスタミンにヒスタミンデヒドロゲナーゼを作用させ、テトラゾリウム塩の還元により生成するホルマザン色素を指標として、当該試料中のヒスタミンを検出する方法において、反応系に界面活性剤を添加することにより、ホルマザン色素の退色を抑制する方法。
[0032]
 [9][8]に記載の方法に用いるためのキットであって、下記(a)~(d)を含むキット。
(a)ヒスタミンデヒドロゲナーゼ
(b)テトラゾリウム塩
(c)電子キャリアー
(d)界面活性剤。

発明の効果

[0033]
 本発明によれば、ヒスタミンデヒドロゲナーゼを利用して発色を指標にヒスタミンを検出する方法において、経時的な退色を顕著に抑制することができ、しかもヒスタミン濃度と発色強度の高い相関を得ることができる。加えて、妨害物質を含む試料においては、その発色への影響を抑制することもできる。従って、本発明により、発色反応の開始から測定までの経過時間にかかわらず、高い精度でヒスタミン濃度を定量することが可能となった。

図面の簡単な説明

[0034]
[図1] ヒスタミンデヒドロゲナーゼを利用して発色を指標にヒスタミンを検出する方法における反応開始後の経時的な退色を測定した結果を示すグラフである。各濃度(1ppm~4ppm)のヒスタミンで検討を行った。
[図2] ヒスタミンデヒドロゲナーゼを利用して発色を指標にヒスタミンを検出する方法において、反応系にエマール20Cを添加した場合の反応開始後の経時的な退色を測定した結果を示すグラフである。各濃度(1ppm~4ppm)のヒスタミンで検討を行った。
[図3] ヒスタミンデヒドロゲナーゼを利用して発色を指標にヒスタミンを検出する方法において、反応系に各種界面活性剤を添加した場合の、反応開始5分後の発色強度を測定した結果を示すグラフである。各濃度(1ppm~4ppm)のヒスタミンで検討を行った。
[図4] ヒスタミンデヒドロゲナーゼを利用して発色を指標にヒスタミンを検出する方法において、反応系に各種界面活性剤を添加した場合の、反応開始15分後の発色強度を測定した結果を示すグラフである。各濃度(1ppm~4ppm)のヒスタミンで検討を行った。
[図5] ヒスタミンデヒドロゲナーゼを利用して発色を指標にヒスタミンを検出する方法において、反応系に各種界面活性剤を添加した場合の、反応開始30分後の発色強度を測定した結果を示すグラフである。各濃度(1ppm~4ppm)のヒスタミンで検討を行った。
[図6] ヒスタミンデヒドロゲナーゼを利用して発色を指標にヒスタミンを検出する方法において、反応系に各種界面活性剤を添加した場合の、反応開始60分後の発色強度を測定した結果を示すグラフである。各濃度(1ppm~4ppm)のヒスタミンで検討を行った。
[図7] ヒスタミンデヒドロゲナーゼを利用して発色を指標にヒスタミンを検出する方法において、反応系に各種界面活性剤を添加した場合の、反応開始100分後の発色強度を測定した結果を示すグラフである。各濃度(1ppm~4ppm)のヒスタミンで検討を行った。

発明を実施するための形態

[0035]
 -ヒスタミンの検出法-
 本発明は、試料中のヒスタミンを検出する方法であって、テトラゾリウム塩、電子キャリアー、および界面活性剤の存在下で、当該試料中のヒスタミンにヒスタミンデヒドロゲナーゼを作用させ、テトラゾリウム塩の還元により生成するホルマザン色素を指標として、当該試料中のヒスタミンを検出する方法を提供する。
[0036]
 また、本発明は、テトラゾリウム塩および電子キャリアーの存在下で、試料中のヒスタミンにヒスタミンデヒドロゲナーゼを作用させ、テトラゾリウム塩の還元により生成するホルマザン色素を指標として、当該試料中のヒスタミンを検出する方法において、反応系に界面活性剤を添加することにより、ホルマザン色素の退色を抑制する方法をも提供する。
[0037]
 本発明における「ヒスタミン」は、必須アミノ酸であるヒスチジンが細菌により分解されることにより生成する活性アミンであり、アレルギー様食中毒の原因物質とされている。
[0038]
 本発明において、ヒスタミンを含有し得る「試料」としては、特に制限はなく、例えば、液状および固形状の食品、尿や血漿などの生体内物質や生体組織などが挙げられる。アレルギー様食中毒に関しては、例えば、魚類やその加工品、しょうゆ、魚醤、ワイン、チーズなどの発酵食品において、ヒスタミンの検出例がある。
[0039]
 試料は、その種類に応じて、そのまま、あるいは抽出・ろ過した後に、定量に供してもよい。必要に応じて、抽出前に粉砕、遠心分離、溶媒添加などの前処理を行ってもよく、抽出後に濃縮、希釈、pH調整などの後処理を行ってもよい。抽出や希釈には、例えば、水や緩衝液などを用いることができる。抽出には、例えば、EDTA・2ナトリウムなどのキレート剤を用いることが好ましく(特開2004-129597号公報)、必要に応じて加熱処理を行ってもよい。
[0040]
 本発明においては、テトラゾリウム塩、電子キャリアー、および界面活性剤の存在下で、当該試料中のヒスタミンにヒスタミンデヒドロゲナーゼを作用させる。これによりテトラゾリウム塩からホルマザン色素が生成することから、その発色を指標としてヒスタミンを検出し、その濃度を定量することができる。
[0041]
 本発明における「ヒスタミンデヒドロゲナーゼ」は、電子受容体の存在下、ヒスタミンに作用して、酸化的脱アミノ化反応により、4-イミダゾリルアセトアルデヒドとアンモニアを生じさせる酵素である。本発明に用いられる「ヒスタミンデヒドロゲナーゼ」としては、特に制限はないが、例えば、リゾビウム属細菌に由来するものが好適である。リゾビウム属細菌に由来するヒスタミンデヒドロゲナーゼは、文献(特開2001-157579号公報、特開2003-289864号公報)に記載されており、ヒスタミンに対して特異性が高く、鮮度の低下した食品などでヒスタミンと同時に生成するカダベリンやプトレッシンといった生体アミンには作用しない。このような特異性の高いヒスタミンデヒドロゲナーゼを用いることにより、ヒスタミン以外の生体アミンを分離することなく、効率的にヒスタミンを検出することが可能となる。反応系においてヒスタミンデヒドロゲナーゼは、通常、0.02~2U/mlの濃度で用いられる。
[0042]
 還元型発色試薬として用いられる「テトラゾリウム塩」としては、電子キャリアーとの共存下で還元されてホルマザン色素を生成する限り、特に制限はない。好適な例としては、WST-8[2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム・モノナトリウム塩]、WST-1[2-(4-ヨードフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム・モノナトリウム塩]、WST-3[2-(4-ヨ-ドフェニル)-3-(2,4-ジニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルフェニル)-2H-テトラゾリウム・モノナトリウム塩]、WST-4[2-ベンソチアゾール-3-(4-カルボキシ-2-メトキシフェニル)-5-[4-(2-スルホエチルカルボモイル)フェニル]-2H-テトラゾリウム(分子内塩)]、WST-5[2,2’-ジベンゾチアゾリル-5,5’-ビス[4-ジ(2-スルフォエチル)カルバモイルフェニル]-3,3’-(3,3’-ジメトキシ-4.4’-ビフェニレン)ジテトラゾリウム・2ナトリウム塩]、WST-9[2-(4-ニトロフェニル)-5-フェニル-3-[4-(4-スルホフェニラゾ)-2-スルホフェニル]-2H-テトラゾリウム・モノナトリウム塩]、MTT[3-(4,5-ジメチル-チアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム・ブロミド]、NITRO-TB[3,3’-[3,3’-ジメトキシ-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジイル]-ビス[2-(4-ニトロフェニル)-5-フェニル-2H-テトラゾリウム・クロリド]が挙げられる。反応系においてテトラゾリウム塩は、通常、5~5000μMの濃度で用いられる。
[0043]
 「電子キャリアー」としては、テトラゾリウム塩を還元して、ホルマザン色素を生成させる限り、特に制限はないが、例えば、フェナジンメトサルフェート、1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムサルフェート、メルドラブルーが挙げられる。反応系において電子キャリアーは、通常、0.2~100μMの濃度で用いられる。
[0044]
 本発明においては、反応系において「界面活性剤」を用いることを特徴とする。「界面活性剤」としては、ホルマザン色素の退色を抑制し得る限り、特に制限はない。
[0045]
 界面活性剤の好ましい態様は、発色反応開始90分後における退色を、発色反応開始後の最大の発色強度と比較して、10%以下(例えば、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0%)に抑制するものである。退色の割合は、本実施例3に記載の通り、所定濃度(例えば、4ppm)のヒスタミン溶液を用いて、470nmにおける吸光度を経時的に測定した値から、算出することができる。
[0046]
 退色抑制効果の観点から好ましい界面活性剤の分類は、陰イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤である。
[0047]
 陰イオン性界面活性剤としては、下記式(1)の構造を有するものが特に好ましい。
[0048]
[化3]


[0049]
(式中、Rは飽和または不飽和の炭化水素基を示し、nは、0~10の整数であり、Mは対イオンを示す。)。
[0050]
 飽和または不飽和の炭化水素基としては、炭素数が8~20のものが好ましい。このような炭化水素基としては、直鎖または分岐アルキル基またはアルケニル基、例えば、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチリル基、パルミチル基、ステアリル基、イソステアリル基、オレイル基、ドコシル基などが挙げられ、中でも炭素数11~13の飽和アルキル基、特に、ラウリル基が好ましい。
[0051]
 エチレングリコール基の数であるnは、0~10の整数であるが、好ましくは1~10(例えば、2~5)である。
[0052]
 対イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、第1級~第3級のアンモニウムイオン、アンモニウムイオンが挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられ、第1級~第3級のアンモニウムイオンとしては、例えば、モノ、ジ、またはトリエタノールアンモニウムイオンが挙げられる。
[0053]
 式(1)の構造を有する界面活性剤は、例えば、文献(特開平08-073891号公報)に開示されている。好ましい市販の界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエ一テル硫酸塩であり、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエ一テル硫酸トリエタノールアミンまたはポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエ一テル硫酸塩の具体的な商品としては、例えば、エマール20T、エマール20C、エマールE-27C、エマール270J、およびエマール20CM(いずれも花王株式会社)などが挙げられるが、これらに制限されない。
[0054]
 一方、好ましい市販の非イオン性界面活性剤の具体的な商品としては、例えば、レオドールスーパーTW-S120(花王株式会社)、エマルゲンB-66(花王株式会社)、エマルゲン420(花王株式会社)、ナイミーンF-215(日油株式会社)、BL-9EX(日光ケミカルズ社)などが挙げられるが、これらに制限されない。
[0055]
 退色の抑制に加えて、発色反応開始から長時間経過後においても、ヒスタミン濃度と発色強度との正の相関が極めて高いこと、さらには、妨害物質を含む試料においては、その発色への影響を抑制することが可能となることから、界面活性剤の分類としては、陰イオン性界面活性剤が特に好ましく、その中でも、式(1)の構造を有する上記界面活性剤が最も好ましい。
[0056]
 反応系において界面活性剤は、通常、0.008%~10%、好ましくは、0.01~5%の濃度で用いられる。界面活性剤は、単独で使用することができるが、二種以上を混合して使用してもよい。
[0057]
 反応系において、ヒスタミンデヒドロゲナーゼを作用させる際の温度は、通常、20~70℃、好ましくは30~50℃である。作用時間は、試料中のヒスタミンを分解するに十分な時間であれば特に制限はないが、通常、1~120分間である。本発明においては、界面活性剤の添加により、作用時間が長時間となった場合でも、退色が抑制されることが見出された。従って、本発明によれば、20分以内の比較的短時間の反応後であっても、60分を超える比較的長時間の反応後であっても、効率的にヒスタミン濃度の定量を行うことが可能である。
[0058]
 反応系におけるpHは、無調整でもよいが、適当なpH調整剤、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど酸やアルカリを用いてpH8~10に調整することが望ましい。また、反応系においては、適当な緩衝剤を用いることができる。緩衝剤としては、例えば、トリス-塩酸塩、リン酸カリウムなどのリン酸塩、酢酸塩などが挙げられる。
[0059]
 上記の反応により生成するホルマザン色素の発色強度の測定においては、還元型発色試薬として、例えば、WST-8を用いる場合には、通常、470nm付近の吸光度を利用し、WST-1を用いる場合には、通常、438nm付近の吸光度を利用し、WST-3を用いる場合には、通常、433nm付近の吸光度を利用し、WST-4を用いる場合には、通常、550nm付近の吸光度を利用し、WST-5を用いる場合には、通常、550nm付近の吸光度を利用し、WST-9を用いる場合には、通常、479nm付近の吸光度を利用し、MTTを用いる場合には、通常、565nm付近の吸光度を利用し、NITRO-TBを用いる場合には、通常、530nm付近の吸光度を利用する。
[0060]
 ホルマザン色素の発色強度は、分光光度計により測定することができる。多検体の検出においては、マイクロプレートリーダーの利用が好適である。測定機器としては、例えば、吸光度計B(共立理化学研究所)やTriStar2S LB942 Multimode Reader(ベルトールド社)などの市販機器を利用することができる。
[0061]
 -ヒスタミンの検出キット-
 また、本発明は、上記方法に用いるためのキットであって、下記(a)~(d)を含むキットを提供する。
(a)ヒスタミンデヒドロゲナーゼ
(b)テトラゾリウム塩
(c)電子キャリアー
(d)界面活性剤。
[0062]
 本発明のキットにおいて、ヒスタミンデヒドロゲナーゼ、テトラゾリウム塩、および電子キャリアーは、凍結乾燥品であっても、これらが溶解している溶液標品であってもよい。また、ヒスタミンデヒドロゲナーゼは、例えば、固相担体に結合させた標品とすることにより、反復使用することもできる。テトラゾリウム塩および電子キャリアーは、両者を混合した発色試薬標品としてもよい。界面活性剤は、単独の液状標品としてもよく、テトラゾリウム塩および/または電子キャリアーと混合した液体標品としてもよい。
[0063]
 本発明のキットにおいては、さらに、ヒスタミンの定量に用いられる標準液(特定の濃度のヒスタミン溶液)、ヒスタミンデヒドロゲナーゼの溶解や希釈に用いられる緩衝液、検体からのヒスタミンの抽出に用いられる抽出液を含んでいてもよい。
[0064]
 各標品は、最終的な反応系におけるヒスタミンデヒドロゲナーゼ、テトラゾリウム塩、電子キャリアー、および界面活性剤の各濃度が、適切な濃度(上記)となるように、使用時に、適宜、組み合わせて用いられる。
[0065]
 本発明のキットにおいては、さらに、キットの説明書を含むことができる。説明書においては、例えば、当該キットの用途、測定原理、特長、性能、構成、測定における使用法などの情報を含むことができる。
実施例
[0066]
 以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[0067]
 [実施例1] ヒスタミン検出用発色試薬の調製例
 精製水に以下の成分をそれぞれ以下の濃度で溶解し、ヒスタミン検出用発色試薬を調製した。
[0068]
[表1]


[0069]
注1:1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムサルフェート
注2:2(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルフォフェニル)-2H-テトラゾリウム・モノナトリウム塩。
[0070]
 [実施例2] ヒスタミン検出用酵素試薬の調製例
 精製水に以下の成分をそれぞれ以下の濃度または単位で溶解し、ヒスタミン検出用酵素試薬を調製した。
[0071]
[表2]


[0072]
 [実施例3] ヒスタミン検出用発色試薬、ヒスタミン検出用酵素試薬を用いた、既知濃度のヒスタミンの検出
 ヒスタミン検出用発色試薬で使用するアルキル硫酸ナトリウムとして、エマール20C(花王株式会社)を使用した。
[0073]
 まず、96穴マイクロプレートのウェルに、ヒスタミン 1ppm、2ppm、3ppm、4ppmの溶液を各50μlずつ分注し、その後、ヒスタミン検出用発色液(エマール20C非含有とエマール20C2%含有)をそれぞれ、50μlずつ分注し、ヒスタミン検出用酵素試薬を50μlずつ分注し、室温で作用させ、経時的にプレートリーダーにより、470nmにおける吸光度(Es)を測定した。
[0074]
 発色ブランク用には、ヒスタミン検出用酵素試薬の代わりに、750mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(pH9.0)を50μl添加し、上記の方法と同様に470nmにおける吸光度(Eb)を測定した。
[0075]
 得られた吸光度から、Es-Ebの値をヒスタミン検出吸光度とした。マイクロプレートリーダーとして、 TriStar2S LB942 Multimode Reader(ベルトールド社)を使用した。
[0076]
 図1に、アルキル硫酸ナトリウム非含有のヒスタミン検出用試薬を用いた場合の経時的な吸光度を示した。経時的に退色することが判明した。
[0077]
 図2に、アルキル硫酸ナトリウム(エマール20C)2%含有のヒスタミン検出用試薬を用いた場合の経時的な吸光度を示した。エマール20Cを含有させることで、退色を抑えることが判明した。
[0078]
 [実施例4] ヒスタミン濃度と発色強度との正の相関を高める物質の探索
 ヒスタミン検出用発色試薬のアルキル硫酸ナトリウムの代わりに、陽イオン性界面活性剤として、コータミン60W(花王株式会社)、コータミン86W(花王株式会社)、陰イオン性界面活性剤として、エマール20T、非イオン性界面活性剤として、レオドールスーパーTW-S120(花王株式会社)、エマルゲンB-66(花王株式会社)、エマルゲン420(花王株式会社)、ナイミーンF-215(日油株式会社)、BL-9EX(日光ケミカルズ社)を各2%含有する試薬、また、陽イオン性界面活性剤、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB、シグマアルドリッチ)を0.2%含有した試薬を調製し、界面活性剤の代わりに、精製水を添加した試薬を対照として、ヒスタミン 1ppm、2ppm、3ppm、4ppmの溶液を実施例3の方法でヒスタミンを検出した。
[0079]
 (1) 作用5分後のヒスタミン検出試薬の吸光度
 図3に、反応5分後の既知濃度のヒスタミン検出結果を示した。反応後の吸光度が高く、原点を通り、ばらつきの無い試薬としてエマール20T含有試薬が確認された。レオドールスーパーTW-S120は原点を通り、バラツキはないが、吸光度が低めであった。
[0080]
 (2) 作用15分後のヒスタミン検出試薬の吸光度
 図4に、反応15分後の既知濃度のヒスタミン検出結果を示した。反応後の吸光度が高く、原点を通り、ばらつきの無い試薬として、エマール20T含有試薬が確認された。
[0081]
 (3) 作用30分後のヒスタミン検出試薬の吸光度
 図5に、反応30分後の既知濃度のヒスタミン検出結果を示した。反応後の吸光度が高く、原点を通り、ばらつきの無い試薬として、エマール20T含有試薬が確認された。
[0082]
 (4) 作用60分後のヒスタミン検出試薬の吸光度
 図6に、反応60分後の既知濃度のヒスタミン検出結果を示した。反応後の吸光度が高く、原点を通り、ばらつきの無い試薬として、エマール20T含有試薬が確認された。
[0083]
 (5) 作用100分後のヒスタミン検出試薬の吸光度
 図7に、反応100分後の既知濃度のヒスタミン検出結果を示した。反応後の吸光度が高く、原点を通り、ばらつきの無い試薬として、エマール20T含有試薬が確認された。
[0084]
 [実施例5] 各種サンプル中の成分がヒスタミン検出系に及ぼす影響の確認
 ヒスタミン検出試薬を用いて、しょうゆ、赤ワイン、白ワイン、牛乳(無調整)、魚醤の各種サンプル中の成分による、ヒスタミンの検出への影響を確認した。
[0085]
 実施例1のヒスタミン検出用発色試薬(界面活性剤なし、エマール20T、2%含有)と実施例2のヒスタミン検出用酵素試薬を使用した。各種サンプルを0.1M EDTA・2Na(pH8.0)で25倍に希釈し、検液Aとし、また、各種サンプルに、既知濃度のヒスタミンを100ppm添加し、0.1M EDTA・2Na(pH8.0)で25倍希釈した検液Bとした。発色ブランク用には、精製水を使用した。測定機器は、日本電子製JCA-BM1650自動分析装置を使用し、測定波長は、主波長451nm、副波長751nmを使用した。37℃で、各検液25μlと実施例1に示した検出用発色試薬25μlを5分作用させた後、検出用酵素液25μl、検液ブランク用には、750mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(pH9.0)25μlを添加し、5分後の吸光度を測定した。検液の吸光度を「Es」、検液ブランクの吸光度を「Eb」とし、各サンプルの吸光度を計算した。
[0086]
 各サンプルの吸光度=Es-Eb
 なお、ヒスタミン100ppm標準液を実施例5の方法で希釈、検出した場合の吸光度は、0.4前後となる。表3に示した測定結果から、エマール20Tには、白ワインと魚醤におけるヒスタミンの検出において、それらに含まれる成分による検出への負の影響を抑える効果があることが確認できた。
[0087]
[表3]


[0088]
 [実施例6] 各種サンプル中のヒスタミンの検出と添加回収試験
 ヒスタミン検出試薬を用いて、しょうゆ、赤ワイン、白ワイン、魚醤の各種サンプル中のヒスタミンを検出した。さらに、既知濃度のヒスタミンを検出系に添加して、その回収率を評価する添加回収試験を行った。
[0089]
 実施例1のヒスタミン検出用発色試薬(界面活性剤なし、エマール20T、2%含有)と実施例2のヒスタミン検出用酵素試薬を使用した。各種サンプルを0.1M EDTA・2Na(pH8.0)で25倍に希釈し、検液Aとし、また、各種サンプルに、既知濃度のヒスタミンを100ppm添加し、0.1M EDTA・2Na(pH8.0)で25倍希釈した検液Bとした。発色ブランク用には、精製水を使用した。測定機器は、日本電子製JCA-BM1650自動分析装置を使用し、測定波長は、主波長451nm、副波長751nmを使用した。37℃で、各検液25μlと実施例1に示した検出用発色試薬25μlを5分作用させた後、検出用酵素液25μl、検液ブランク用には、750mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(pH9.0)25μlを添加し、5分後の吸光度を測定した。既知濃度のヒスタミン標準液(キッコーマンバイオケミファ社)を用いて、検出したヒスタミン濃度(ppm)を求めた。検液の吸光度(Es)、検液ブランクの吸光度(Eb)、ヒスタミン標準液の吸光度(Estd)、発色ブランクの吸光度(Ec)を測定した後、下記の計算式でヒスタミン濃度を求めた。
[0090]
 サンプル中のヒスタミン濃度(ppm)=(Es-Eb)/(Estd-Ec)x4x25
 式中の「4」は、標準液のヒスタミン濃度が4ppmであること、「25」は、検体が25倍に希釈されていることによる希釈倍率を表している。
[0091]
 添加回収率(%)=(B-A)/100x100
 添加したヒスタミン濃度が100ppmであることから100で割っている。
[0092]
 表4に示した測定結果から、白ワインと魚醤において、エマール20T添加により、添加回収率が改善したことが確認された。
[0093]
[表4]


[0094]
 [実施例7] しょうゆ中のヒスタミンの検出と添加回収試験
 しょうゆ中には、検出系に負の影響を及ぼす物質が含まれていることから、検体を希釈するだけでは、しょうゆ中のヒスタミンを検出することは困難であった。従来は、しょうゆを希釈した後、固相カラム(Sep-Pak Accell Plus CM Plus Short Cartridge:Waters)を用いて、前処理後、ヒスタミンの検出を行っていたが、発色試薬にエマール20Tを含有させることで、固相カラムによる前処理をせず、ヒスタミン検出が可能か検討した。
[0095]
 (1) 固相カラム使用によるしょうゆ中のヒスタミンの検出と添加回収試験
 ヒスタミン希釈液、カラム洗浄液として、20mM リン酸緩衝液(pH6.0)を調製した。また、溶出液として、175mM NaCl含有20mM リン酸緩衝液(pH7.0)を調製した。
[0096]
 まず、しょうゆ0.1mlに精製水を1ml加え、希釈液にて20mlとし、200倍希釈サンプル(A)とした。次に、しょうゆ0.1mlに100ppmヒスタミン溶液1ml加え、希釈液にて20mlとし、ヒスタミン添加200倍希釈サンプル(B)とした。10mlテルモシリンジ(テルモ社)に固相カラム Sep-Pak Accell Plus CM Short Cartridge,360mg Sorbent per Cartridge,37-55μm Particle Size,50/pk [WAT020550](Waters社)を装着した。希釈サンプル10mlをシリンジに添加し、液をカラムに通した。溶出された液は廃棄した。次に、洗浄液10mlをシリンジに添加し、液をカラムに通した。溶出された液は廃棄した。溶出液10mlをシリンジに添加し、液をカラムに通した。溶出された液をすべて回収し、これ検液(A,B)とした。
[0097]
 37℃で、各検液500μlと実施例1に示した検出用発色試薬(アルキル硫酸ナトリウムなし)500μlを混合し、次いで、検出用酵素液500μl、検液ブランク用には、750mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(pH9.0)500μlを添加し、15分後の吸光度を、分光光度計(吸光度計B:共立理科化学研究所)を用いて測定した。既知濃度のヒスタミン標準液(キッコーマンバイオケミファ社)を用いて、検出したヒスタミン濃度(ppm)を求めた。検液の吸光度(Es)、検液ブランクの吸光度(Eb)、ヒスタミン標準液の吸光度(Estd)、発色ブランクの吸光度(Ec)を測定した後、下記の計算式でヒスタミン濃度を求めた。
[0098]
 サンプル中のヒスタミン濃度(ppm)=(Es-Eb)/(Estd-Ec)x4x200
 式中の「4」は、標準液のヒスタミン濃度が4ppmであること、「200」は、検体が200倍に希釈されていることによる希釈倍率を表している。
[0099]
 添加回収率(%)= (B-A)/100x100
 添加したヒスタミン濃度が100ppmであることから100で割っている。
[0100]
 (2) エマール20T含有発色液を用いた、しょうゆ中のヒスタミンの検出と添加回収試験
 しょうゆ0.1mlに精製水を1ml加え、0.1M EDTA・2Na(pH8.0)にて20mlとし、100倍希釈サンプル(A)とした。次に、しょうゆ0.1mlに100ppmヒスタミン溶液1ml加え、0.1M EDTA・2Na(pH8.0)にて20mlとし、ヒスタミン添加200倍希釈サンプル(B)とした。
[0101]
 37℃で、各検液500μlと実施例1に示した検出用発色試薬(アルキル硫酸ナトリウム 2%含有)500μlを混合し、次いで、検出用酵素液500μl、検液ブランク用には、750mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(pH9.0)を 500μlを添加し15分後の吸光度を、分光光度計(吸光度計B:株式会社共立理科化学研究所)を用いて測定した。既知濃度のヒスタミン標準液(キッコーマンバイオケミファ株式会社)を用いて、検出したヒスタミン濃度(ppm)を求めた。検液の吸光度(Es)、検液ブランクの吸光度(Eb)、ヒスタミン標準液の吸光度(Estd)、発色ブランクの吸光度(Ec)を測定した後、下記の計算式でヒスタミン濃度を求めた。
[0102]
 サンプル中のヒスタミン濃度(ppm)=(Es-Eb)/(Estd-Ec)x4x200
 式中の「4」は、標準液のヒスタミン濃度が4ppmであること、「200」は、検体が200倍に希釈されていることによる希釈倍率を表している。
[0103]
 添加回収率(%)=(B-A)/100x100
 添加したヒスタミン濃度が100ppmであることから100で割っている。
[0104]
 (3) しょうゆ中のヒスタミンの検出と添加回収試験の結果
 表5に示す通り、エマール20T含有ヒスタミン検出用発色試薬を使用した、しょうゆ中のヒスタミンの検出結果は、固相カラムを使用した検出結果と一致した。よって、ヒスタミン検出試薬にエマール20Tを含有させることで、固相カラムを使用しなくても、しょうゆの測定が可能となることが判明した。
[0105]
[表5]


[0106]
 [実施例8] 魚醤におけるヒスタミンの検出と添加回収への界面活性剤濃度の影響
 界面活性剤として各濃度のエマール20Tを用いて、魚醤におけるヒスタミンの検出と添加回収への影響を検証した。ヒスタミンの検出における吸光度の測定は、実施例5に記載された方法で行った。また、添加回収試験は、実施例6に記載された方法で行った。なお、吸光度の測定においては、ヒスタミン100ppm標準液の吸光度(0.400)に対する割合(%)も算出した。
[0107]
 その結果、表6に示す通り、0.008~10%のエマール20Tを用いた場合、標準液に対する吸光度割合と添加回収率の双方が90%以上となり、好ましい結果が得られた。0.01~5%のエマール20Tを用いた場合、標準液に対する吸光度割合と添加回収率の双方が95%以上となり、より好ましい結果が得られた。
[0108]
[表6]


産業上の利用可能性

[0109]
 以上説明したように、本発明によれば、ホルマザン色素の発色を指標としてヒスタミンを検出する際に、経時的な退色を抑制することができ、しかも、ヒスタミン濃度と発色強度との正の相関が極めて高い。さらに、妨害物質を含む試料においては、その発色への影響を抑制することができる。このため高い精度でヒスタミン濃度の定量が可能となる。食品中に含まれるヒスタミンは、アレルギー様中毒の原因となっていることから、本発明は、研究上の利用のみならず、食品産業や医療業を含む幅広い産業分野での利用が可能である。

請求の範囲

[請求項1]
 試料中のヒスタミンを検出する方法であって、
 テトラゾリウム塩、電子キャリアー、および界面活性剤の存在下で、当該試料中のヒスタミンにヒスタミンデヒドロゲナーゼを作用させ、テトラゾリウム塩の還元により生成するホルマザン色素を指標として、当該試料中のヒスタミンを検出することを含み、
 当該界面活性剤が、下記式(1)の構造を有する化合物である方法。
[化1]


(式中、Rは飽和または不飽和の炭化水素基を示し、nは、0~10の整数であり、Mは対イオンを示す。)
[請求項2]
 式(1)の構造を有する化合物が、ポリオキシエチレンアルキルエ一テル硫酸塩である、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
 ポリオキシエチレンアルキルエ一テル硫酸塩が、ポリオキシエチレンラウリルエ一テル硫酸トリエタノールアミンまたはポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムである、請求項2に記載の方法。
[請求項4]
 テトラゾリウム塩が、2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム・モノナトリウム塩である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
[請求項5]
 電子キャリアーが、1-メトキシ-5-フェナジンメトサルフェートである、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
[請求項6]
 請求項1~5のいずれかに記載の方法に用いるためのキットであって、下記(a)~(d)を含むキット。
(a)ヒスタミンデヒドロゲナーゼ
(b)テトラゾリウム塩
(c)電子キャリアー
(d)式(1)の構造を有する界面活性剤

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]