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1. (WO2019044481) 積層体およびその製造方法
Document

明 細 書

発明の名称 積層体およびその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008   0009   0010  

発明の効果

0011  

発明を実施するための形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131  

実施例

0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14  

明 細 書

発明の名称 : 積層体およびその製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、積層体およびその製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 含フッ素化合物は、高い潤滑性、撥水撥油性等を示すため、表面処理剤に好適に用いられる。表面処理剤によって基材の表面に撥水撥油性を付与すると、基材の表面の汚れを拭き取りやすくなり、汚れの除去性が向上する。上記含フッ素化合物の中でも、ペルフルオロアルキレン鎖の途中にエーテル結合(-O-)が存在するポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有する含フッ素エーテル化合物は、柔軟性に優れる化合物であり、特に油脂等の汚れの除去性に優れる。
 近年、多様な基材に対する上記含フッ素エーテル化合物の適用が試みられており、特許文献1には、上記含フッ素エーテル化合物を用いて形成される表面層を有するサファイア基材が開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開2016-060792号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 近年、表面処理剤を用いて得られる表面層の指紋拭き取り性のさらなる向上が求められている。
 従来、指紋拭き取り性を向上させるためには、上記含フッ素エーテル化合物を用いて形成される表面層のように、水接触角の大きい表面層を形成すればよいと考えられていた。しかしながら、特許文献1に記載された含フッ素エーテル化合物を用いて基材の表面に表面層を形成したところ、指紋拭き取り性に改善の余地があるのを知見した。
 このような問題に対して、本発明者が検討したところ、表面層の水接触角が大きくても、水の転落角(以下、「水転落角」ともいう。)が大きければ、指紋拭き取り性が不充分になる場合があるのを見出した。
[0005]
 本発明は、上記課題に鑑みて、水転落角の小さい表面層を有する積層体およびその製造方法の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

[0006]
 本発明は、下記[1]~[10]の構成を有する積層体、および下記[11]~[14]の構成を有する積層体の製造方法を提供する。
 [1]基材と、基材上に設けられる中間層と、前記中間層上に設けられる表面層と、を有する積層体であって、
 前記中間層が、M-OH基および前記M-OH基を生成可能な基(式中、Mは金属原子またはケイ素原子を表す。)の少なくとも一方、アミノ基およびメルカプト基の少なくとも一方、ならびに、トリアジン環を有するトリアジン化合物を用いて形成される層であり、
 前記表面層が、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖、ならびに、ケイ素原子に結合した加水分解性基およびケイ素原子に結合した水酸基の少なくとも一方を有する含フッ素エーテル化合物を用いて形成される層であることを特徴とする積層体。
 [2]前記トリアジン化合物がM-OH基を生成可能な基を有し、該M-OH基を生成可能な基が加水分解性シリル基である、[1]の積層体。
[0007]
 [3]前記トリアジン化合物がアミノ基を有する、[1]または[2]の積層体。
 [4]前記トリアジン化合物が、下式TN-1または下式TN-2で表される化合物である、[3]の積層体。
[化1]


 A N1は、-N(R N1)-R N2-Si(R N3Nn(OR N43-Nnまたは-N{R N2-Si(R N3Nn(OR N43-Nnである。
 A N2は、-N(R N5)-R N6(NH Nmまたは-N{R N6(NH Nmである。
 A N3は、前記A N1、前記A N2または-N(R N7)-R N8である。
 A N4は、2価の連結基である。
 R N1、R N5およびR N7は、それぞれ独立に、水素原子または1価の炭化水素基である。
 R N2は、2価の連結基である。
 R N3およびR N8は、それぞれ独立に、1価の炭化水素基である。
 R N4は、水素原子または1価の炭化水素基である。
 R N6は、(Nm+1)価の連結基である。
 Nnは0~2の整数であり、Nmは1または2である。
[0008]
 [5]前記トリアジン化合物がメルカプト基を有する、[1]または[2]の積層体。
 [6]前記トリアジン化合物が、下式TSで表される化合物である、[5]の積層体。
[化2]


 A は、-N(R S4)-R S1-Si(R S2Sn(OR S33-Snまたは-N{R S1-Si(R S2Sn(OR S33-Snである。
 R S1は、単結合または2価の連結基である。
 R S2は、1価の炭化水素基である。
 R S3およびR S4は、それぞれ独立に、水素原子または1価の炭化水素基である。
 M S1は、水素原子またはアルカリ金属原子である。
 Snは、0~2の整数である。
[0009]
 [7]前記含フッ素エーテル化合物が、下式1で表される、[1]~[6]のいずれかの積層体。
 [A-O-Z -(R O) -] [-SiR 3-n  式1
 Aは、ペルフルオロアルキル基または-Q[-SiR 3-nである。
 Qは、(k+1)価の連結基である。
 kは1~10の整数である。
 Rは、1価の炭化水素基である。
 Lは、加水分解性基または水酸基である。
 nは、0~2の整数である。
 Z は、単結合、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のオキシフルオロアルキレン基または1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のポリ(オキシフルオロアルキレン)基である。
 R は、ペルフルオロアルキレン基である。
 mは、2~200の整数であり
 Z は、(j+q)価の連結基である。
 jおよびqはそれぞれ独立に、1以上の整数である。
 [8]前記Aがペルフルオロアルキル基である、[7]の積層体。
 [9]前記基材は、前記中間層側の最表面に、サファイア層、金属層、金属酸化物層、ダイヤモンドライクカーボン層または樹脂層を有する、[1]~[8]のいずれかの積層体。
 [10]前記積層体が、電子機器用物品、輸送機器用物品、精密機器用物品、光学機器用物品または建築用物品に用いられる、[1]~[9]のいずれかの積層体。
[0010]
 [11]基材と、基材上に設けられる中間層と、前記中間層上に設けられる表面層と、を有する積層体の製造方法であって、
 M-OH基および前記M-OH基を生成可能な基(式中、Mは金属原子またはケイ素原子を表す。)の少なくとも一方、アミノ基およびメルカプト基の少なくとも一方、ならびに、トリアジン環を有するトリアジン化合物を用いて、ドライコーティング法またはウェットコーティング法により基材上に前記中間層を形成し、次いで、
 ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖、ならびに、ケイ素原子に結合した加水分解性基およびケイ素原子に結合した水酸基の少なくとも一方を有する含フッ素エーテル化合物を用いて、ドライコーティング法またはウェットコーティング法により前記中間層上に前記表面層を形成する
ことを特徴とする積層体の製造方法。
 [12]前記ドライコーティング法が真空蒸着法である、[11]の製造方法。
 [13]前記ウェットコーティング法による中間層の形成方法が、前記トリアジン化合物および液状媒体を含む組成物を用い、該組成物を前記基材上に塗布し、形成された液状媒体を含む塗膜から前記液状媒体を除去して中間層を形成する方法であり、
 前記ウェットコーティング法による表面層の形成方法が、前記含フッ素エーテル化合物および液状媒体を含む組成物を用い、該組成物を前記中間層上に塗布し、形成された液状媒体を含む塗膜から前記液状媒体を除去して表面層を形成する方法である、
[11]の製造方法。
 [14]前記トリアジン化合物が、加水分解性シリル基と、アミノ基またはメルカプト基と、トリアジン環とを有するトリアジン化合物である、[11]~[13]のいずれかの製造方法。

発明の効果

[0011]
 本発明によれば、水転落角の小さい表面層を有する積層体を提供できる。

発明を実施するための形態

[0012]
 本明細書において、式1で表される化合物を化合物1と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。式1で表される基を基1と記す。他の式で表される基も同様に記す。
 本明細書において、「アルキレン基がA基を有していてもよい」、「A基を有していてもよいアルキレン基」とは、アルキレン基中の炭素原子-炭素原子間にA基を有していてもよいし、アルキレン基-A基-のように末端にA基を有していてもよいことを意味する。
 本発明における用語の意味は以下の通りである。
 「エーテル性酸素原子」とは、炭素原子-炭素原子間においてエーテル結合(-O-)を形成する酸素原子を意味する。
 「2価のオルガノポリシロキサン残基」とは、下式で表される基である。下式におけるR は、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、または、フェニル基である。また、g1は、1以上の整数であり、1~9の整数が好ましく、1~4の整数が特に好ましい。
[0013]
[化3]


[0014]
 「シルフェニレン骨格基」とは、-Si(R PhSi(R -(ただし、Phはフェニレン基であり、R は1価の有機基である。)で表される基である。R としては、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)が好ましい。
 「ジアルキルシリレン基」は、-Si(R -(ただし、R はアルキル基(好ましくは炭素数1~10)である。)で表される基である。
 「表面層」とは、基材の表面に形成される層を意味する。
 含フッ素エーテル化合物の「数平均分子量」は、NMR分析法を用い、下記の方法で算出される。
  H-NMRおよび 19F-NMRによって、末端基を基準にしてオキシペルフルオロアルキレン基の数(平均値)を求めることによって算出される。
[0015]
 本発明の積層体は、基材と、基材上に設けられる中間層と、上記中間層上に設けられる表面層と、を有する積層体であって、上記中間層が、M-OH基および上記M-OH基を生成可能な基の少なくとも一方、アミノ基およびメルカプト基の少なくとも一方、ならびに、トリアジン環を有するトリアジン化合物(以下、「特定トリアジン化合物」ともいう。)を用いて形成される層であり、上記表面層が、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖、ならびに、ケイ素原子に結合した加水分解性基およびケイ素原子に結合した水酸基の少なくとも一方を有する含フッ素エーテル化合物を用いて形成される層である。
[0016]
 本発明の積層体は、水転落角の小さい表面層を有する。この理由の詳細は、未だ明らかになっていないが概ね以下の理由によると推測される。
 指紋拭き取り性を向上するためには、含フッ素エーテル化合物を用いて形成される表面層を基材の表面に形成して、水接触角を大きくする方法が知られている。しかしながら、本発明者は、水接触角の大きい表面層を用いても、指紋拭き取り性が不充分になる場合があることを知見した。
 この問題に対して、本発明者が検討したところ、表面層の水転落角が小さくなれば、指紋拭き取り性が向上することを見出した。
 すなわち、水転落角と水接触角とは一定の相関関係があり、具体的には、水接触角が大きくなれば、水転落角は小さくなると考えられていた。しかしながら、必ずしもこのような関係を満たさず、水接触角が大きくても、水転落角が大きくなる場合があった。この理由としては、含フッ素エーテル化合物に含まれるポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が、基材上に充分に導入されていないためと推測される。
 そこで、本発明者は、基材上に特定のトリアジン化合物を用いた中間層を形成し、中間層上に含フッ素エーテル化合物を用いて得られる表面層を形成したところ、表面層の水転落角が小さくなるのを知見した。この理由としては、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が積層体の表面に良好に導入されているためと推測される。その結果、指紋拭き取り性に優れた積層体が得られたと考えられる。
[0017]
〔基材〕
 基材は、撥水撥油性の付与が求められる基材であれば特に限定されない。
 基材は、中間層側の最表面に、サファイア層、金属層、金属酸化物層、ダイヤモンドライクカーボン層、樹脂層、ガラス層、セラミック層、石を含む層またはこれらの複合材料からなる層を有するのが好ましい。これらの中でも、本発明の効果がより顕著に発現する点から、サファイア層、金属層、金属酸化物層、ダイヤモンドライクカーボン層または樹脂層が好ましい。
 基材は、上記層のみから構成されていてもよいし、最表面に位置する上記層を含む複数の層から構成されていてもよい。
[0018]
 サファイア層は、サファイアのみからなる層であってもよいし、サファイアとサファイア以外の成分(例えば、SiO )とを含む層であってもよい。
 金属層を構成する材料の具体例としては、鉄、ステンレス(SUS)、アルミニウム、クロム、銅、亜鉛、チタンおよびこれらの合金(真鍮等)が挙げられる。
 金属酸化物層を構成する材料の具体例としては、上記金属の酸化物が挙げられる。
 ダイヤモンドライクカーボン層とは、ダイヤモンド結合(炭素同士のsp 混成軌道による結合)とグラファイト結合(炭素同士のsp 混成軌道による結合)との両方の結合が混在するアモルファス構造をもつ膜を意味する。ダイヤモンドライクカーボンは、炭素原子以外の原子(例えば、水素原子、酸素原子、ケイ素原子、窒素原子、アルミニウム、ホウ素原子、リン原子)を含んでいてもよい。
 樹脂層を構成する材料の具体例としては、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、エチレン酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、ノルボルネン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリルウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、MS(メチルメタクリレート・スチレン)樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。なかでも、アクリル樹脂またはメタクリル樹脂が好ましい。
 樹脂層は、上記樹脂を含む硬化型樹脂組成物(好ましくは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物)を硬化させてなるハードコート層が好ましい。ここで、本明細書におけるハードコート層とは、JIS K7204に規定のテーバー摩耗試験において、500gの荷重で100回転させた後のヘーズ(曇価)変化が30%以下の樹脂層をいう。
[0019]
 基材と中間層との密着性をより向上させる点から、基材の表面には活性化処理(例えば、乾式の活性化処理、湿式の活性化処理)が施されていてもよい。
 乾式の活性化処理の具体例としては、活性エネルギー線(例えば、紫外線、電子線、X線)を基材の表面に照射する処理、コロナ放電処理、真空プラズマ処理、常圧プラズマ処理、火炎処理、イトロ処理が挙げられる。
 湿式の活性化処理の具体例としては、表面層を酸ないしアルカリ溶液に接触させる処理が挙げられる。
 上記活性化処理の中でも、基材と中間層との密着性がより向上する点から、コロナ放電処理が好ましい。
[0020]
〔中間層〕
 中間層は、特定トリアジン化合物を用いて形成される層であり、多様な基材に対する密着性に優れる。
 この理由の詳細は明らかになっていないが、特定トリアジン化合物は、後述するように、M-OH基および上記M-OH基を生成可能な基の少なくとも一方、ならびに、アミノ基およびメルカプト基の少なくとも一方を有し、これらの基の作用によって、上記効果が奏されると推測される。
[0021]
 特定トリアジン化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
 中間層は、トリアジン化合物の以外の成分を含んでいてもよい。
 中間層の膜厚は、特定トリアジン化合物の単分子厚であるのが好ましい。具体的には、中間層の膜厚は、1~20nmが好ましく、3~10nmが特に好ましい。中間層の膜厚が上記範囲内にあれば、中間層と表面層との密着性に優れ、また、表面層の水転落角をより小さくできる。
 中間層の膜厚は、薄膜解析用X線回折計(ATX-G:製品名、RIGAKU社製)を用いて、X線反射率法によって反射X線の干渉パターンを得て、この干渉パターンの振動周期から算出できる。
[0022]
(特定トリアジン化合物)
 Mとしては、Si、AlまたはTiが好ましく、Siが特に好ましい。
 M-OH基を生成可能な基としては、例えば、Mに結合した加水分解性基を有する基が挙げられ、加水分解性シリル基が好ましい。
[0023]
 特定トリアジン化合物における加水分解性シリル基は、ケイ素原子に結合した加水分解性基を有する基であり、加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イソシアナート基(-NCO)等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
 加水分解性基としては、工業的な製造が容易な点から、炭素数1~6のアルコキシ基またはハロゲン原子が好ましい。加水分解性基としては、中間層形成時のアウトガスが少なく、化合物の保存安定性がより優れる点から、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、化合物の長期の保存安定性が必要な場合にはエトキシ基が特に好ましく、中間層形成時の反応時間を短時間とする場合にはメトキシ基が特に好ましい。
[0024]
 特定トリアジン化合物における加水分解性シリル基は、2価の連結基を介して、トリアジン環の炭素原子に結合した窒素原子に結合していることが好ましい。2価の連結基としては、2価の炭化水素基が好ましい。トリアジン環の炭素原子に結合した窒素原子には、1個の加水分解性シリル基が2価の連結基を介して結合してしてもよく、2個の加水分解性シリル基がそれぞれ2価の連結基を介して結合してしてもよい。
 なお、特定トリアジン化合物における加水分解性シリル基は、後述式TN-1および下式TN-2で表される化合物においては、-Si(R N3Nn(OR N43-Nnで表される基(ただし、R N4は1価の炭化水素基である。)であり、後述式TSで表される化合物においては、-Si(R S2Sn(OR S33-Snで表される基(ただし、R S3は1価の炭化水素基である。)である。上記の様に、R N4である1価の炭化水素基およびR S3である1価の炭化水素基としては、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
[0025]
 特定トリアジン化合物において、アミノ基およびメルカプト基は、直接または連結基を介して、トリアジン環を構成する炭素原子に結合しているのが好ましい。特定トリアジン化合物がアミノ基を有する場合、アミノ基は、連結基を介して、トリアジン環を構成する炭素原子に結合していることが好ましい。また、特定トリアジン化合物がメルカプト基を有する場合、メルカプト基は、トリアジン環を構成する炭素原子に直接結合していることが好ましい。
 特定トリアジン化合物は、中間層と表面層との密着性が特に優れる点から、アミノ基を有することが好ましい。
[0026]
(アミノ基を有するトリアジン化合物)
 アミノ基を有するトリアジン化合物としては、化合物TN-1および化合物TN-2が好ましい。
[0027]
[化4]


[0028]
 式TN-1およびTN-2中の記号は、以下の意味を示す。
 A N1は、-N(R N1)-R N2-Si(R N3Nn(OR N43-Nnまたは-N{R N2-Si(R N3Nn(OR N43-Nnである。
 A N2は、-N(R N5)-R N6(NH Nmまたは-N{R N6(NH Nmである。
 A N3は、上記A N1、上記A N2または-N(R N7)-R N8である。
 A N4は、2価の連結基である。
 R N1、R N5およびR N7は、それぞれ独立に、水素原子または1価の炭化水素基である。
 R N2は、2価の連結基である。
 R N3およびR N8はそれぞれ独立に、1価の炭化水素基である。
 R N4は、水素原子または1価の炭化水素基である。
 R N6は、(Nm+1)価の連結基である。
 Nnは0~2の整数であり、Nmは1または2である。
 R N1、R N2、R N3、R N4、R N5およびR N6がそれぞれ複数存在する場合、複数のR N1、R N2、R N3、R N4、R N5およびR N6はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
[0029]
 R N1、R N3、R N4、R N5、R N7およびR N8における1価の炭化水素基は、1価の脂肪族炭化水素基(飽和であっても、不飽和であってもよい。)または1価の芳香族炭化水素基が好ましく、1価の脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。
 1価の炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状構造を有してもよい。
 1価の炭化水素基は、-S-、-O-、-NHCO-、-N<および-NH-からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでもよい。
 R N1、R N5、R N7およびR N8における1価の炭化水素基の炭素数は、1~12が好ましい。R N3およびR N4における1価の炭化水素基の炭素数は、1~6が好ましい。
[0030]
 A N4およびR N2における2価の連結基は、2価の炭化水素基が好ましく、2価の脂肪族炭化水素基(飽和であっても、不飽和であってもよい。)または2価の芳香族炭化水素基がより好ましく、2価の脂肪族炭化水素基がさらに好ましく、アルキレン基が特に好ましい。
 2価の炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状構造を有してもよい。
 2価の炭化水素基の炭素数は、1~12が好ましい。
 2価の炭化水素基は、-S-、-O-、-NHCO-、-N<および-NH-からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでもよい。
[0031]
 R N6における(Nm+1)価の連結基は、(Nm+1)価の炭化水素基が好ましく、(Nm+1)価の脂肪族炭化水素基(飽和であっても、不飽和であってもよい。)または(Nm+1)価の芳香族炭化水素基がより好ましく、(Nm+1)価の脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
 2価の炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状構造を有してもよい。
 2価の炭化水素基の炭素数は、1~12が好ましい。
 2価の炭化水素基は、-S-、-O-、-NHCO-、-N<および-NH-からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでもよい。
 上述の通り、Nmは1または2である。よって、R N6は、2または3価の連結基であり、2価の連結基が好ましい。2価の連結基の好適態様は、上述のA N4およびR N2における2価の連結基と同様である。
[0032]
 A N1の具体例は以下の通りである。式中、r1は、1以上の整数であり、r2は、0以上の整数である。
-NH-(CH r1-Si{O(CH r2(CH )}
-N[(CH r1-Si{O(CH r2(CH )}]
-NH-(CH r1-Si(CH ){O(CH r2(CH )}
-NH-C O(CH r1-Si{O(CH r2(CH )}
 A N2の具体例は以下の通りである。式中、r1は1以上の整数である。
-NH-(CH r1(NH
-N{(CH r1(NH )}
 A N3の具体例は以下の通りである。式中、r1は、1以上の整数であり、r2は、0以上の整数である。
-NH-(CH r1-Si{O(CH r2(CH )}
-N[(CH r1-Si{O(CH r2(CH )}]
-NH-(CH r1-Si(CH ){O(CH r2(CH )}
-NH-C O(CH r1-Si{O(CH r2(CH )}
-NH-(CH r1(NH
-N{(CH r1(NH )}
 A N4の具体例は以下の通りである。式中、r1は1以上の整数である。
-(CH r1
 r1としては、1~6が好ましく、r2としては、0~5が好ましい。
[0033]
 アミノ基を有するトリアジン化合物の具体例としては、式TN-1またはTN-2に該当するアミノ基を有するトリアジン化合物として、N,N’-ビス(2-アミノエチル)-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-2,4-ジヒドラジニル-1,3,5-トリアジン、2-(N,N’-ジ-3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-4,6-ジ(2-アミノエチル)アミノ-1,3,5-トリアジン、2-(2-アミノエチル)アミノ-4,6-ジ(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン、6-(2-アミノエチル)アミノ-2,4-ジ(トリイソプロポキシシリル)プロピルアミノ-1,3,5-トリアジン、6-(2-アミノエチル)アミノ-2,4-ジ(トリイソプロペノオキシシシリル)プロピルアミノ-1,3,5-トリアジン、6-(2-アミノエチル)アミノ-2,4-ジ(トリイソプロポキシシリル)プロピルアミノ-1,3,5-トリアジン、6-(2-アミノエチル)アミノ-2,4-ジ(トリベンゾキシシリル)プロピルアミノ-1,3,5-トリアジン、6-(2-アミノエチル)アミノ-2,4-ビス(トリエトキシシリルへキシル)アミノ-1,3,5-トリアジン、6-(2-アミノエチル)アミノ-2,4-ビス(トリエトキシシリルドデシル)アミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジ(2-アミノエチル)アミノ-6-ジ(トリイソプロポキシシリル)プロピルアミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジ(2-アミノエチル)アミノ-6-ジ(トリイソプロペノオキシシシリル)プロピルアミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジ(2-アミノエチル)アミノ-6-ジ(トリベンゾキシシリル)プロピルアミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジ(2-アミノエチル)アミノ-6-ビス(トリエトキシシリルヘキシルアミノ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジ(2-アミノエチル)アミノ-6-ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン、N,N’-ビス(2-ジメチルアミノエチル)-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、N,N’-ビス(2-アミノヘキシル)-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、N,N’-ビス{2-[ビス-(2-アミノエチル)アミノ]エチル}-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、N,N’-ビス(12-アミノドデシル)-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンが挙げられる。
 式TN-1およびTN-2のいずれにも該当しないアミノ基を有するトリアジン化合物として、6-(2-アミノエチル)アミノ-2,4-ビス(メチルエチルケトキシミノシリル)プロピルアミノ-1,3,5-トリアジン、6-(2-アミノエチル)アミノ-2,4-ジ(トリアセトキシシリル)プロピルアミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジ(2-アミノエチル)アミノ-6-ビス(メチルエチルケトキシミノシリル)プロピルアミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジ(2-アミノエチル)アミノ-6-ジ(トリアセトキシシリル)プロピルアミノ-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
 これらの具体例の中でも、式TN-1またはTN-2で表されるアミノ基を有するトリアジン化合物が好ましい。
[0034]
(メルカプト基を有するトリアジン化合物)
 メルカプト基を有するトリアジン化合物としては、表面層の水転落角が優れる点からは、化合物TSが好ましい。
[0035]
[化5]


[0036]
 式TS中の記号は、以下の意味を示す。
 A は、-N(R S4)-R S1-Si(R S2Sn(OR S33-Snまたは-N{R S1-Si(R S2Sn(OR S33-Snである。
 R S1は、単結合または2価の連結基である。
 R S1における2価の連結基は、2価の炭化水素基が好ましく、2価の脂肪族炭化水素基(飽和であっても、不飽和であってもよい。)または2価の芳香族炭化水素基が特に好ましい。
 2価の炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状構造を有してもよい。
 2価の炭化水素基の炭素数は、1~20が好ましく、1~12がより好ましく、2~8が特に好ましい。
 2価の炭化水素基は、-NH-、-C(O)-、-O-、-S-および-C(O)O-からなる群より選択される少なくとも1種の基を含んでもよい。
 R S1の具体例としては、-CH CH -、-CH CH CH -、-CH CH CH CH CH CH -、-CH CH SCH CH -、-CH CH CH SCH CH CH -、-CH CH NHCH CH CH -、-(CH CH NCH CH CH -、-C -、-C -、-CH CH -、-CH CH CH CH CH CH CH CH CH CH -、-CH CH OCONHCH CH CH -、-CH CH NHCONHCH CH CH -、-(CH CH CHOCONHCH CH CH -が挙げられる。
 R S1が複数存在する場合、複数のR S1は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
[0037]
 R S2は、1価の炭化水素基である。
 R S3は、水素原子または1価の炭化水素基である。
 R S2およびR S3における1価の炭化水素基は、1価の脂肪族炭化水素基(飽和であっても、不飽和であってもよい)または1価の芳香族炭化水素基が好ましく、1価の脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。
 1価の炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状構造を有してもよい。
 1価の炭化水素基は、置換基を有してもよい。
 R S2およびR S3が1価の炭化水素基の場合、その炭素数は、1~10が好ましく、1~6が特に好ましい。
 R S2およびR S3が1価の炭化水素基の場合における具体例としては、CH -、C -、n-C -、i-C -、n-C -、i-C -、t-C -が挙げられる。
 R S2が複数存在する場合、複数のR S2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。R S3が複数存在する場合、複数のR S3は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
[0038]
 R S4は、水素原子または1価の炭化水素基である。
 1価の炭化水素基は、1価の脂肪族炭化水素基(飽和であっても、不飽和であってもよい)または1価の芳香族炭化水素基が好ましい。1価の炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状構造を有してもよい。
 1価の炭化水素基の炭素数は、1~20が好ましく、2~8が特に好ましい。
 1価の炭化水素基は、置換基を有してもよい。
 R S4が1価の炭化水素基の場合における具体例としては、CH -、C -、n-C -、CH =CHCH -、n-C -、C -、C 11-が挙げられる。
[0039]
 M S1は、水素原子またはアルカリ金属原子であり、水素原子、Li、Na、KまたはCsが好ましい。
 Snは、0~2の整数である。
[0040]
 メルカプト基を有するトリアジン化合物の具体例としては、6-(3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム(TES)、6-(3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-(3-(モノメチルジエトキシシリル)プロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム(DES)、6-(3-(ジメチルモノエトキシシリル)プロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム(MES)、6-ジ-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム(BTES)、6-N-シクロヘキシル-N-(3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム、6-N-ベンジル-N-(3-(モノメチルジエトキシシリル)プロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウムが挙げられる。
[0041]
〔表面層〕
 表面層は、含フッ素エーテル化合物を用いて形成される層である。含フッ素エーテル化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
 表面層は、含フッ素エーテル化合物以外の成分を含んでいてもよい。
 表面層の膜厚は、1~100nmが好ましく、1~50nmが特に好ましい。表面層の膜厚は、中間層の膜厚と同様に測定できる。
[0042]
 表面層の水転落角は、20度以下が好ましく、18度以下がより好ましく、16度以下が特に好ましい。水転落角が20度以下であれば、表面層の指紋拭き取り性がより向上する。表面層の水転落角は、低いほど好ましいため、下限値は特に限定されない。水転落角は、転落角測定装置(SA-11:製品名、協和界面科学社製)を用いて測定できる。
 表面層の水接触角は、100度以上が好ましく、110度以上がより好ましく、115度以上が特に好ましい。水接触角が100度以上であれば、表面層の撥水性が優れる。表面層の水接触角は、低いほど好ましいため、下限値は特に限定されない。水接触角は、接触角測定装置(DM-500:製品名、協和界面科学社製)を用いて測定される。
 表面層の水接触角が100度以上であり、かつ、表面層の水転落角が20度以下であれば、表面層の指紋拭き取り性に特に優れる。
[0043]
(含フッ素エーテル化合物)
 ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖としては、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、(R O) (ただし、R はペルフルオロアルキレン基であり、mは2~200の整数であり、炭素数の異なる2種以上のR Oからなるものであってもよい。)が好ましい。
 (R O) の定義は、後段で詳述する。
[0044]
 特定含フッ素エーテル化合物は、化合物の保存安定性がより優れる点から、加水分解性シリル基を有するのが好ましく、表面層の耐摩擦性がより優れる点から、加水分解性シリル基を2つ以上有するのが特に好ましい。
 なお、特定含フッ素エーテル化合物における加水分解性シリル基は、Lが加水分解性基である場合の-SiR 3-nである。
[0045]
 特定含フッ素エーテル化合物の数平均分子量は、500~20,000が好ましく、800~10,000がより好ましく、1,000~8,000が特に好ましい。数平均分子量が該範囲内であれば、表面層の耐摩擦性に優れる。
[0046]
 特定含フッ素エーテル化合物としては、表面層の撥水撥油性がより優れる点で、化合物1が好ましい。
 [A-O-Z -(R O) -] [-SiR 3-n  式1
[0047]
 Aは、ペルフルオロアルキル基または-Q[-SiR 3-nである。
 ペルフルオロアルキル基中の炭素数は、表面層の耐摩擦性がより優れる点から、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましく、1~3が特に好ましい。
 ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
 ただし、Aが-Q[-SiR 3-nである場合、jは1である。
[0048]
 ペルフルオロアルキル基としては、CF -、CF CF -、CF CF CF -、CF CF CF CF -、CF CF CF CF CF -、CF CF CF CF CF CF -、CF CF(CF )-等が挙げられる。
 ペルフルオロアルキル基としては、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、CF -、CF CF -、CF CF CF -が好ましい。
[0049]
 Qは、(k+1)価の連結基である。後述するように、kは1~10の整数である。よって、Qとしては、2~11価の連結基が挙げられる。
 Qとしては、本発明の効果を損なわない基であればよく、例えば、エーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有していてもよいアルキレン基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子、2~8価のオルガノポリシロキサン残基、および、後述する式2-1、式2-2、式2-1-1~2-1-6からSiR 3-nを除いた基が挙げられる。
[0050]
 Rは、1価の炭化水素基である。
 Rは、1価の飽和炭化水素基が特に好ましい。1価の炭化水素基の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が特に好ましい。
[0051]
 Lは、加水分解性基または水酸基である。
 Lの加水分解性基は、加水分解反応により水酸基となる基である。すなわち、加水分解性シリル基は、加水分解反応によりシラノール基となる。シラノール基は、さらにシラノール基間で反応してSi-O-Si結合を形成する。また、シラノール基は、中間層の表面の水酸基、シラノール基、加水分解性シリル基等と反応して、化学結合(中間層-O-Si)を形成できる。
[0052]
 Lとしては加水分解性基が好ましく、加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イソシアナート基(-NCO)等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
 Lとしては、工業的な製造が容易な点から、炭素数1~4のアルコキシ基またはハロゲン原子が好ましい。Lとしては、塗布時のアウトガスが少なく、化合物の保存安定性がより優れる点から、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、化合物の長期の保存安定性が必要な場合にはエトキシ基が特に好ましく、塗布後の反応時間を短時間とする場合にはメトキシ基が特に好ましい。
[0053]
 nは、0~2の整数である。
 nは、0または1が好ましく、0が特に好ましい。Lが複数存在することによって、表面層の基材への密着性がより強固になる。
 nが1以下である場合、1分子中に存在する複数のLは互いに同じであっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や製造容易性の点からは、互いに同じであることが好ましい。
[0054]
 加水分解性シリル基としては、-Si(OCH 、-SiCH (OCH 、-Si(OCH CH 、-SiCl 、-Si(OC(O)CH 、-Si(NCO) が好ましい。工業的な製造における取扱いやすさの点から、-Si(OCH が特に好ましい。
[0055]
 Z は、単結合、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のオキシフルオロアルキレン基(ただし、オキシペルフルオロアルキレン基を除く。上記オキシフルオロアルキレン基中の酸素原子は、(R O) に結合する。)、または、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のポリ(オキシフルオロアルキレン)基((R O) に結合するオキシフルオロアルキレン基中の酸素原子は、(R O) に結合する。(R O) に結合するオキシフルオロアルキレン基は、1個以上の水素原子を含む。ポリ(オキシフルオロアルキレン)基には、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたオキシペルフルオロアルキレン基と、1個以上の水素原子を含むオキシフルオロアルキレン基との両方が含まれていてもよい。)である。オキシフルオロアルキレン基またはポリ(オキシフルオロアルキレン)基の炭素数は1~10が好ましい。
[0056]
 Z としては、化合物を製造しやすい点から、単結合、-CHFCF OCH CF O-、-CF CHFCF OCH CF CF O-、-CF CF CHFCF OCH CF O-、-CF CF OCHFCF OCH CF O-、-CF CF OCF CF OCHFCF OCH CF O-、-CF CH OCH CF O-、-CF CF OCF CH OCH CF O-が好ましい(ただし、左側がA-Oに結合する。)。Z としては、単結合、-CHFCF OCH CF O-が特に好ましい。
[0057]
 R は、ペルフルオロアルキレン基である。
 ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、1~6が好ましい。
 ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、表面層の撥水撥油性により優れる点から、直鎖状が好ましい。
 なお、複数のR は、同一であっても異なっていてもよい。つまり、(R O) は、炭素数の異なる2種以上のR Oから構成されていてもよい。
[0058]
 mは、2~200の整数であり、5~150の整数が好ましく、10~100の整数が特に好ましい。mが上記範囲の下限値以上であれば、表面層の撥水撥油性がより優れる。mが上記範囲の上限値以下であれば、表面層の耐摩擦性がより優れる。
[0059]
 (R O) において、炭素数の異なる2種以上のR Oが存在する場合、各R Oの結合順序は限定されない。例えば、2種のR Oが存在する場合、2種のR Oがランダム、交互、ブロックに配置されてもよい。
 (R O) としては、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、{(CF O) m11(CF CF O) m12(CF CF CF O) m13(CF CF CF CF O) m14}、(CF CF O) m16、(CF CF CF O) m17、(CF CF O-CF CF CF CF O) m15(CF CF O)、(CF O-CF CF CF CF CF O) m18(CF O)または(CF CF O-CF CF CF CF CF CF O) m19(CF CF O)が好ましく、{(CF O) m11(CF CF O) m12(CF CF CF O) m13(CF CF CF CF O) m14}、(CF CF O-CF CF CF CF O) m15(CF CF O)、(CF O-CF CF CF CF CF O) m18(CF O)、(CF CF O-CF CF CF CF CF CF O) m19(CF CF O)が特に好ましい。
 ただし、m11およびm12は、それぞれ1以上の整数であり、m13およびm14は、それぞれ0または1以上の整数であり、m11+m12+m13+m14は2~200の整数であり、m11個のCF O、m12個のCF CF O、m13個のCF CF CF O、m14個のCF CF CF CF Oの結合順序は限定されない。m16およびm17は、それぞれ2~200の整数であり、m15、m18およびm19は、1~99の整数である。
[0060]
 Z は、(j+q)価の連結基である。
 Z は、本発明の効果を損なわない基であればよく、例えば、エーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有していてもよいアルキレン基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子、2~8価のオルガノポリシロキサン残基、および、後述する式2-1、式2-2、式2-1-1~2-1-6からSiR 3-nを除いた基が挙げられる。
[0061]
 jは、1以上の整数であり、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、1~5の整数が好ましく、化合物を製造しやすい点から、1が特に好ましい。
 qは、1以上の整数であり、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、2~4の整数が好ましく、2または3がより好ましく、3が特に好ましい。
[0062]
 化合物1は、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、化合物1-1が好ましい。
 A-O-Z -(R O) -Z   式1-1
 式1-1中、A、Z 、R およびmの定義は、式1中の各基の定義と同義である。
[0063]
 Z は、基2-1または基2-2である。
 -R f7-Q -X(-Q -SiR 3-n(-R   式2-1
 -R f7-Q 71-[CH C(R 71)(-Q 72-SiR 3-n)] -R 72  式2-2
[0064]
 式2-1および2-2中、R、Lおよびnの定義は、式1中の各基の定義と同義である。
[0065]
 R f7は、ペルフルオロアルキレン基である。
 ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~6が特に好ましい。
 ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
 R f7としては、化合物を製造しやすい点から、-CF CF CF CF -または-CF CF CF CF CF -が好ましい。
[0066]
 Q は、単結合または2価の連結基である。
 2価の連結基としては、例えば、2価の炭化水素基(2価の飽和炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、アルケニレン基、アルキニレン基であってもよい。2価の飽和炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよく、例えば、アルキレン基が挙げられる。炭素数は1~20が好ましい。また、2価の芳香族炭化水素基は、炭素数5~20が好ましく、例えば、フェニレン基が挙げられる。それ以外にも、炭素数2~20のアルケニレン基、炭素数2~20のアルキニレン基であってもよい。)、2価の複素環基、-O-、-S-、-SO -、-N(R )-、-C(O)-、-Si(R -および、これらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。ここで、R は、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、または、フェニル基である。R は、水素原子またはアルキル基(好ましくは炭素数1~10)である。
 なお、上記これらを2種以上組み合わせた基としては、例えば、-OC(O)-、-C(O)N(R )-、アルキレン基-O-アルキレン基、アルキレン基-OC(O)-アルキレン基、アルキレン基-Si(R -フェニレン基-Si(R が挙げられる。
[0067]
 Xは、単結合、アルキレン基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子または2~8価のオルガノポリシロキサン残基である。
 なお、上記アルキレン基は、-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有していてもよい。アルキレン基は、-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基およびジアルキルシリレン基からなる群から選択される基を複数有していてもよい。
 Xで表されるアルキレン基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10が特に好ましい。
 2~8価のオルガノポリシロキサン残基としては、2価のオルガノポリシロキサン残基、および、後述する(w+1)価のオルガノポリシロキサン残基が挙げられる。
[0068]
 Q は、単結合または2価の連結基である。
 2価の連結基の定義は、上述したQ で説明した定義と同義である。
[0069]
 R は、水酸基またはアルキル基である。
 アルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が特に好ましい。
[0070]
 Xが単結合またはアルキレン基の場合、hは1、iは0であり、
 Xが窒素原子の場合、hは1~2の整数であり、iは0~1の整数であり、h+i=2を満たし、
 Xが炭素原子またはケイ素原子の場合、hは1~3の整数であり、iは0~2の整数であり、h+i=3を満たし、
 Xが2~8価のオルガノポリシロキサン残基の場合、hは1~7の整数であり、iは0~6の整数であり、h+i=1~7を満たす。
 (-Q -SiR 3-n)が2個以上ある場合は、2個以上の(-Q -SiR 3-n)は、同一であっても異なっていてもよい。R が2個以上ある場合は、2個以上の(-R )は、同一であっても異なっていてもよい。
[0071]
 Q 71は、単結合、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、化合物を製造しやすい点から、単結合が好ましい。
 アルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
[0072]
 R 71は、水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、化合物を製造しやすい点から、水素原子が好ましい。
 アルキル基としては、メチル基が好ましい。
[0073]
 Q 72は、単結合またはアルキレン基である。アルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6が特に好ましい。化合物を製造しやすい点から、Q 72は、単結合または-CH -が好ましい。
[0074]
 R 72は、水素原子またはハロゲン原子であり、化合物を製造しやすい点から、水素原子が好ましい。
[0075]
 yは、1~10の整数であり、1~6の整数が好ましい。
 2個以上の[CH C(R 71)(-Q 72-SiR 3-n)]は、同一であっても異なっていてもよい。
[0076]
 基2-1としては、基2-1-1~2-1-6が好ましい。
 -R f7-(X -Q -SiR 3-n  式2-1-1
 -R f7-(X -Q 21-N[-Q 22-SiR 3-n  式2-1-2
 -R f7-Q 31-G(R )[-Q 32-SiR 3-n  式2-1-3
 -R f7-[C(O)N(R )] -Q 41-(O) -C[-(O) -Q 42-SiR 3-n  式2-1-4
 -R f7-Q 51-Si[-Q 52-SiR 3-n  式2-1-5
 -R f7-[C(O)N(R )] -Q 61-Z [-Q 62-SiR 3-n  式2-1-6
 なお、式2-1-1~2-1-6中、R f7、R、L、および、nの定義は、上述した通りである。
[0077]
 X は、-O-、または、-C(O)N(R )-である(ただし、式中のNはQ に結合する)。
 R の定義は、上述した通りである。
 pは、0または1である。
[0078]
 Q は、アルキレン基である。なお、アルキレン基は、-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有していてもよい。アルキレン基は、-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基およびジアルキルシリレン基からなる群から選択される基を複数有していてもよい。
 なお、アルキレン基が-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有する場合、炭素原子-炭素原子間にこれらの基を有することが好ましい。
[0079]
 Q で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
[0080]
 Q としては、pが0の場合は、-CH OCH CH CH -、-CH OCH CH OCH CH CH -、-CH CH -、-CH CH CH -、-CH OCH CH CH Si(CH OSi(CH CH CH -が好ましい。(X が-O-の場合は、-CH CH CH -、-CH CH OCH CH CH -が好ましい。(X が-C(O)N(R )-の場合は、炭素数2~6のアルキレン基が好ましい(ただし、式中のNはQ に結合する)。Q がこれらの基であると化合物が製造しやすい。
[0081]
 基2-1-1の具体例としては、以下の基が挙げられる。
[0082]
[化6]


[0083]
 X は、-O-、-NH-、または、-C(O)N(R )-である。
 R の定義は、上述した通りである。
[0084]
 Q 21は、単結合、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-もしくは-NH-を有する基である。
 Q 21で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 21で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-または-NH-を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
[0085]
 Q 21としては、化合物を製造しやすい点から、-CH -、-CH CH -、-CH CH CH -、-CH OCH CH -、-CH NHCH CH -、-CH CH OC(OCH CH -が好ましい(ただし、右側がNに結合する。)。
[0086]
 rは、0または1(ただし、Q 21が単結合の場合は0である。)である。化合物を製造しやすい点から、0が好ましい。
[0087]
 Q 22は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に、2価のオルガノポリシロキサン残基、エーテル性酸素原子もしくは-NH-を有する基である。
 Q 22で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 22で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に、2価のオルガノポリシロキサン残基、エーテル性酸素原子または-NH-を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
[0088]
 Q 22としては、化合物を製造しやすい点から、-CH CH CH -、-CH CH OCH CH CH -が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)。
[0089]
 2個の[-Q 22-SiR 3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
[0090]
 基2-1-2の具体例としては、以下の基が挙げられる。
[0091]
[化7]


[0092]
 Q 31は、単結合、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、化合物を製造しやすい点から、単結合が好ましい。
 Q 31で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 31で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
[0093]
 Gは、炭素原子またはケイ素原子である。
 R は、水酸基またはアルキル基である。R で表されるアルキル基の炭素数は、1~4が好ましい。
 G(R )としては、化合物を製造しやすい点から、C(OH)またはSi(R 3a)(ただし、R 3aはアルキル基である。アルキル基の炭素数は1~10が好ましく、メチル基が特に好ましい。)が好ましい。
[0094]
 Q 32は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。
 Q 32で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 32で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 32としては、化合物を製造しやすい点から、-CH CH -、-CH CH CH -、-CH CH CH CH CH CH CH CH -が好ましい。
[0095]
 2個の[-Q 32-SiR 3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
[0096]
 基2-1-3の具体例としては、以下の基が挙げられる。
[0097]
[化8]


[0098]
 式2-1-4中のR の定義は、上述した通りである。
 sは、0または1である。
 Q 41は、単結合、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。
 Q 41で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 41で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 tは、0または1(ただし、Q 41が単結合の場合は0である。)である。
 -Q 41-(O) -としては、化合物を製造しやすい点から、sが0の場合は、単結合、-CH O-、-CH OCH -、-CH OCH CH O-、-CH OCH CH OCH -、-CH OCH CH CH CH OCH -が好ましく(ただし、左側がR f7に結合する。)、sが1の場合は、単結合、-CH -、-CH CH -が好ましい。
[0099]
 Q 42は、アルキレン基であり、上記アルキレン基は-O-、-C(O)N(R )-〔R の定義は、上述した通りである。〕、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有していてもよい。
 なお、アルキレン基が-O-またはシルフェニレン骨格基を有する場合、炭素原子-炭素原子間に-O-またはシルフェニレン骨格基を有することが好ましい。また、アルキレン基が-C(O)N(R )-、ジアルキルシリレン基または2価のオルガノポリシロキサン残基を有する場合、炭素原子-炭素原子間または(O) u1と結合する側の末端にこれらの基を有することが好ましい。
 Q 42で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
[0100]
 uは、0または1である。
 -(O) -Q 42-としては、化合物を製造しやすい点から、-CH CH -、-CH CH CH -、-CH OCH CH CH -、-CH OCH CH CH CH CH -、-OCH CH CH -、-OSi(CH CH CH CH -、-OSi(CH OSi(CH CH CH CH -、-CH CH CH Si(CH PhSi(CH CH CH -が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)
[0101]
 3個の[-(O) -Q 42-SiR 3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
[0102]
 基2-1-4の具体例としては、以下の基が挙げられる。
[0103]
[化9]


[0104]
 Q 51は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。
 Q 51で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 51で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 51としては、化合物を製造しやすい点から、-CH OCH CH CH -、-CH OCH CH OCH CH CH -、-CH CH -、-CH CH CH -が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)。
[0105]
 Q 52は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。
 Q 52で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 52で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 52としては、化合物を製造しやすい点から、-CH CH CH -、-CH CH OCH CH CH -が好ましい(ただし、右側がSiR 3-nに結合する。)。
[0106]
 3個の[-Q 52-SiR 3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
[0107]
 基2-1-5の具体例としては、以下の基が挙げられる。
[0108]
[化10]


[0109]
 式2-1-6中のR の定義は、上述の通りである。
 vは、0または1である。
[0110]
 Q 61は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。
 Q 61で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 61で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 61としては、化合物を製造しやすい点から、-CH OCH CH CH -、-CH OCH CH OCH CH CH -、-CH CH -、-CH CH CH -が好ましい(ただし、右側がZ に結合する。)。
[0111]
 Z は、(w+1)価のオルガノポリシロキサン残基である。
 wは、2~7の整数である。
 (w+1)価のオルガノポリシロキサン残基としては、下記の基が挙げられる。ただし、下式におけるR は、上述の通りである。
[0112]
[化11]


[0113]
 Q 62は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。
 Q 62で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 62で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
 Q 62としては、化合物を製造しやすい点から、-CH CH -、-CH CH CH -が好ましい。
[0114]
 w個の[-Q 62-SiR 3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
[0115]
 含フッ素エーテル化合物は、市販品を使用することもできる。例えば信越化学工業社製のKY-100シリーズ(KY-178、KY-185、KY-195等)、ダイキン工業社製のオプツール(登録商標)DSX、オプツール(登録商標)AES、オプツール(登録商標)UF503、オプツール(登録商標)UD509、旭硝子社製のAfluid(登録商標)S550が挙げられる。
[0116]
〔用途〕
 本発明の積層体は、電子機器用物品、輸送機器用物品、精密機器用物品、光学機器用物品または建築用物品に用いるのが好ましい。また、本発明の積層体は、上記各種機器以外の物品に用いてもよい。
 電子機器用物品の具体例は、通信用端末または画像表示装置におけるディスプレイ用ガラス、ディスプレイ用保護フィルム、反射防止フィルム、指紋センサーが挙げられる。輸送機器用物品の具体例としては、電車、自動車、船舶および航空機等における、外装部材、内装部材、ガラス(例えば、フロントガラス、サイドガラス及びリアガラス)、ミラー、タイヤホイールが挙げられる。精密機器用物品の具体例としては、撮影機器における窓材が挙げられる。光学機器用物品の具体例としては、レンズが挙げられる。建築用物品の具体例としては、窓、床材、壁材、ドア材が挙げられる。
[0117]
 本発明の積層体を適用可能な物品の詳細な具体例を以下に示す。
・カーナビゲーション、カーオーディオ、タブレット型コンピュータ、ノートPC、時計型・眼鏡型ウェアラブル端末、携帯電話・スマートフォン等の携帯(通信)情報端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA、ポータブルオーディオプレーヤー、ゲーム機器、各種操作パネル、デジタルメディアプレイヤー、電子ブックリーダー、複写機等の筐体
・液晶ディスプレイ、陰極線管(CRT:例、TV、パソコンモニター)、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)等のディスプレイまたはそれらのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板、あるいはそれらの表面に反射防止膜処理を施した物品
・接触型の表示入力装置を有する電子機器(例えば、携帯電話、携帯情報端末)のタッチパネルシートおよびタッチパネルディスプレイ
・太陽電池パネル等に使用する撥水部材、および、ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD-R、MO等の光ディスクおよび磁気ディスクの記録メディア
・サングラス用レンズ、眼鏡レンズ、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、反射防止膜、光ファイバー、光カプラー、反射防止被覆眼科用レンズ、双眼鏡レンズ、カメラレンズ、レンズフィルター、胃カメラのレンズ
・自転車等乗り物の外装、楽器および家具の外装、大理石や人工大理石等の建築用石材の表面、トイレ、風呂、洗面所、キッチン等の水回りの装飾建材、ガラス装飾を施した家電(例えば冷蔵庫)、美術品展示用保護ガラス、ショーウインドー、ショーケース、フォトフレーム用カバー、腕時計の表示面、時計カバー
・ディスプレイケース、オーバーヘッドプロジェクタ、ステレオキャビネットドア、ステレオカバー、窯業製品、布製品、皮革製品、医療品、医療機器の外装
・道路舗装マーカー(例えば隆起)、舗装マーキングテープ、再帰反射シーティング
・燃料システムに用いられるO-リング、軸封、ガスケット、チューブ、裏地、シート、コンテナ、蓋、ホース、またはこれらの構成要素、膜、および接着されたシール、ベアリング、クランクシャフト、スライドベアリング、ピストン、ガスケット、ギヤ、ドアパネル、インストルメントパネル、ドアロック、タイミングベルト、サンルーフ用ボティシール、グラスラン、ウェザーストリップ、回転軸受、滑り軸受、ピボットピン、カム、ガイド、ウェイ、ドライブスクリュー、ギヤ、スプライン、チェーン等の保護膜
・配線板用防水コーティング熱交換機の撥水・防水部材、電解槽の撥水部材、プリント配線板の防水・撥水部材、帯電ロールの防汚部材、基材搬送装置の防汚部材、高周波発熱体の絶縁性向上部材、送電線の絶縁性向上部材、各種フィルターの防水撥水部材、電波吸収材や吸音材の防水性部材
・押出成形、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、FRP成形、積層成形、注型、粉末成形、溶液流延法、真空・圧空成形、押出複合成形、延伸成形、発泡成形、各種二次加工、圧縮成形、中空成形、ナノインプリント等に使用する離型用の金型、熱交換機の撥水・防水・滑水用部材、振動ふるいやシリンダ内部等の表面低摩擦コート用部材、機械部品、真空機器部品、ベアリング部品、工具等の表面保護部材
[0118]
〔積層体の製造方法〕
 本発明の積層体の製造方法としては、上記特定トリアジン化合物を用いて上記基材上に中間層を形成し、上記含フッ素エーテル化合物を用いて中間層の表面に表面層を形成する方法が挙げられる。
 中間層の形成および表面層の形成は、ドライコーティング法やウェットコーティング法によって行うことができる。ドライコーティング法では、上記特定トリアジン化合物や上記含フッ素エーテル化合物を用いて中間層や表面層を形成する。
 ウェットコーティング法においては、液状媒体を用いた溶液を塗布して液状媒体を含む層を形成し、次いで液状媒体を除去(以下、乾燥ともいう。)して、中間層や表面層を形成する。より具体的には、特定トリアジン化合物および液状媒体を含む組成物(以下、「中間層形成用組成物」ともいう。)を用い、塗布および乾燥を行って基材上に中間層を形成する。また、含フッ素エーテル化合物および液状媒体を含む組成物(以下、「表面層形成用組成物」ともいう。)を用い、塗布および乾燥を行って中間層上に表面層を形成する。
[0119]
(中間層の形成)
 中間層形成用組成物に含まれる液状媒体の具体例としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、フッ素系有機溶媒および非フッ素系有機溶媒が挙げられる。
 有機溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
[0120]
 フッ素系有機溶媒の具体例としては、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フッ素化アルキルアミン、フルオロアルコールが挙げられる。
 フッ素化アルカンは、炭素数4~8の化合物が好ましく、例えば、C 13H(AC-2000:製品名、旭硝子社製)、C 13(AC-6000:製品名、旭硝子社製)、C CHFCHFCF (バートレル:製品名、デュポン社製)が挙げられる。
 フッ素化芳香族化合物の具体例としては、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが挙げられる。
 フルオロアルキルエーテルは、炭素数4~12の化合物が好ましく、例えば、CF CH OCF CF H(AE-3000:製品名、旭硝子社製)、C OCH (ノベック-7100:製品名、3M社製)、C OC (ノベック-7200:製品名、3M社製)、C CF(OCH )C (ノベック-7300:製品名、3M社製)が挙げられる。
 フッ素化アルキルアミンの具体例としては、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミンが挙げられる。
 フルオロアルコールの具体例としては、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールが挙げられる。
[0121]
 非フッ素系有機溶媒としては、水素原子および炭素原子のみからなる化合物、および、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる化合物が好ましく、具体的には、炭化水素系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒、アルコール系有機溶媒が挙げられる。
 炭化水素系有機溶媒の具体例としては、ヘキサン、へプタン、シクロヘキサンが挙げられる。
 ケトン系有機溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
 エーテル系有機溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
 エステル系有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。
 アルコール系有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
 中間層形成用組成物に含まれる液状媒体としては、水、フッ素系有機溶媒、アルコール系有機溶媒もしくはこれらの混合溶媒が好ましい。
[0122]
 液状媒体の含有量は、中間層形成用組成物の全質量に対して、50.00~99.99質量%が好ましく、70.00~99.95質量%が特に好ましい。
 特定トリアジン化合物の含有量は、中間層形成用組成物の全質量に対して、0.01~50.00質量%が好ましく、0.05~30.00質量%が特に好ましい。
 また、特定トリアジン化合物の含有量は、中間層形成用組成物の全固形分質量に対して、50~100質量%が好ましく、70~100質量%が特に好ましい。
[0123]
 上記中間層は、例えば、下記の方法で製造できる。
・特定トリアジン化合物を用いたドライコーティングよって基材の表面を処理して、上記中間層を得る方法。
・ウェットコーティング法によって中間層形成用組成物を基材の表面に塗布し、乾燥させて、上記中間層を得る方法。
[0124]
 ドライコーティング法の具体例としては、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法が挙げられる。
 ウェットコーティング法の具体例としては、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、グラビアコート法が挙げられる。
[0125]
 上記手順によって形成される中間層には、特定トリアジン化合物の加水分解反応および縮合反応を介して得られる化合物が含まれる。
[0126]
(表面層の形成)
 表面層形成用組成物に含まれる液状媒体の具体例としては、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、フッ素系有機溶媒および非フッ素系有機溶媒が挙げられる。
 有機溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
 フッ素系有機溶剤および非フッ素系有機溶剤の具体例は、中間層形成用組成物に含まれる液状媒体と同様である。ただし、表面層形成用組成物においては、非フッ素系有機溶媒の具体例の中でも、炭化水素系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒およびアルコール系有機溶媒が好ましい。
 表面層形成用組成物に含まれる液状媒体としては、フッ素系有機溶媒、アルコール系有機溶媒もしくはこれらの混合溶媒が特に好ましい。
[0127]
 液状媒体の含有量は、表面層形成用組成物の全質量に対して、50.00~99.99質量%が好ましく、70.00~99.95質量%が特に好ましい。
 含フッ素エーテル化合物の含有量は、表面層形成用組成物の全質量に対して、0.01~50.00質量%が好ましく、0.05~30.00質量%が特に好ましい。
 また、含フッ素エーテル化合物の含有量は、表面層形成用組成物の全固形分質量に対して、30~100質量%が好ましく、50~100質量%が特に好ましい。
[0128]
 上記表面層は、例えば、下記の方法で製造できる。
・含フッ素エーテル化合物を用いたドライコーティングよって中間層の表面を処理して、上記表面層を得る方法。
・ウェットコーティング法によって表面層形成用組成物を中間層の表面に塗布し、乾燥させて、上記表面層を得る方法。
[0129]
 表面層の製造におけるドライコーティング法およびウェットコーティング法の具体例は、中間層の製造で挙げた具体例と同様である。
 特に、表面層をドライコーティング法によって製造する場合、含フッ素エーテル化合物の分解を抑える点、および、装置の簡便さの点から、真空蒸着法が好適である。真空蒸着時には、鉄や鋼等の金属多孔体に含フッ素エーテル化合物または表面層形成用組成物を含浸させたペレット状物質を使用してもよい。
[0130]
 上記手順によって形成される表面層には、含フッ素エーテル化合物の加水分解反応および縮合反応を介して得られる化合物が含まれる。
[0131]
 ここで、含フッ素エーテル化合物または表面層形成用組成物は、中間層に含まれるM-OH基やM-OH基を生成可能な基が縮合等の反応により不活性化する前に、中間層と接触させるのが好ましい。これにより、中間層と表面層との密着性が向上する。
実施例
[0132]
 以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、各成分の配合量は、質量基準を示す。例1~10のうち、例1~4、6~9が実施例、例5および10が比較例である。
[0133]
〔評価方法〕
(水接触角)
 表面層の表面に置いた約2μLの蒸留水の接触角を、接触角測定装置(DM-500:製品名、協和界面科学社製)を用いて測定した。表面層の表面における異なる5箇所で測定し、その平均値を算出した。接触角の算出には2θ法を用いた。
[0134]
(水転落角)
 水平に保持した表面層上に50μLの蒸留水を滴下した後、表面層の設けられた基材を徐々に傾けて、水滴が転落し始めたときの表面層の表面と、水平面との角度(転落角)を、転落角測定装置(SA-11:製品名、協和界面科学社製)を用いて測定した。表面層の表面における異なる5箇所に蒸留水を滴下して、それぞれの転落角を測定し、その平均値を算出した。
[0135]
(指紋拭き取り性)
 表面層に付着した指紋をセルロース製不織布(ベンコットM-3:製品名、旭化成社製)で拭きとり、その取れやすさを目視で判定した。判定基準を以下に示す。
 ○(良好):指紋を完全に拭き取ることができる。
 △(可) :指紋の拭き取り跡が残る。
 ×(不良):指紋の拭き取り跡が広がり、拭き取ることができない。
[0136]
〔実施例で使用した化合物〕
(トリアジン化合物)
化合物TN-3A:特許第5729852の実施例1の反応式1-1および反応式1-2の方法で合成した。
化合物TN-3B:特許第5729852の実施例4の反応式5-1および反応式5-2の合成方法で合成した。
化合物TS-A:特許第5166980の段落0034で使用された化合物を用いた。
[0137]
[化12]


[0138]
(含フッ素エーテル化合物)
化合物1A:特開2015-199906の実施例1の化合物3の合成方法で合成した、数平均分子量4,430の化合物である。
化合物1B:数平均分子量4,570の化合物である。
[0139]
[化13]


[0140]
〔例1~10〕
(基材の準備)
 例1~10では、以下の各基材を用いた。
 なお、各基材を、アルカリ水溶液(シカクリーンLX-IV:製品名、関東化学社製、濃度10質量%)で洗浄し、さらにイオン交換水で洗浄した後、得られた洗浄後の基材の片面に対してコロナ放電処理を行った。そして、基材のコロナ放電処理を行った面に中間層(中間層が形成されない場合には、表面層)を形成した。
 ・サファイア:並木精密宝石社製
 ・DLC:ガラス基材(Dragontrail:登録商標、旭硝子社製)の表面にプラズマCVD法により、原料にアセチレンを用い、約100nmのDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を製膜した。
 ・ハードコート:UV硬化型樹脂組成物(ビームセット575CL:製品名、荒川化学社製)をイソプロピルアルコールで固形分が50質量%になるように希釈し、溶液を得た。得られた溶液をアクリル基材(旭化成社製)の表面にバーコータを用いて塗布し、溶媒を含む塗膜を有するアクリル基材を80℃で60秒間乾燥後、高圧水銀灯により積算照射量300mJ/cm となるようにUV照射して、ハードコート層付きアクリル樹脂基材を得た。
 ・SUS:ステンレス鋼SUS304
[0141]
(中間層の形成)
 化合物TN-3AおよびTN-3Bを使用した場合には、次の手順で中間層を形成した。まず、化合物TN-3AまたはTN-3Bを0.1質量%含む水溶液を調製した。次いで、表1に記載の各基材を25℃の水溶液中に10分間浸漬した後、水で充分に洗浄し、80℃で30分間乾燥させた。このようにして、トリアジン化合物を用いて得られる中間層を基材表面に形成した。
 一方、化合物TS-Aを用いた場合には、次の手順で中間層を形成した。まず、水およびエタノールの混合溶媒(水:エタノール=95質量%:5質量%)中に化合物TS-Aを0.1質量%含む溶液を調製した。次いで、表1に記載の各基材を25℃の溶液中に10分間浸漬した後、水で充分に洗浄し、80℃で30分間乾燥させた。このようにして、トリアジン化合物を用いて得られる中間層を基材表面に形成した。
 なお、例5および10では、中間層を形成しなかった。
[0142]
(表面層の形成)
 ドライコーティング法によって、中間層の表面に表面層を形成した。
 具体的には、まず、化合物1Aまたは1Bの35mgを真空蒸着装置(SGC-22WA:製品名、昭和真空社製)内のモリブデン製ボートに充填し、真空蒸着装置内を5×10 -3Pa以下に排気した。次に、各化合物を配置したボートを加熱し、各化合物を中間層の表面に堆積することによって、中間層の表面に蒸着膜を形成した。そして、これを温度25℃、湿度40%RHの条件で12時間放置し、中間層の表面に含フッ素エーテル化合物を用いて得られる表面層を有する積層体を得た。
 なお、例5および10では、中間層を形成しなかったため、基材上に表面層を直接形成した以外は上記手順にしたがって、積層体を得た。
[0143]
[表1]


[0144]
 表1の通り、特定トリアジン化合物を用いて形成された中間層を有する場合、水転落角の小さい表面層を形成できる結果、指紋拭き取り性が良好であることを確認した(例1~4、6~9)。このように、特定トリアジン化合物を用いて形成された中間層を有する場合、多様な基材に対して、指紋拭き取り性に優れた表面層を形成できる。
 一方、中間層を有しない場合、得られる表面層の水転落角が大きく、指紋拭き取り性が劣ることを確認した(例5および10)。
 なお、2017年08月28日に出願された日本特許出願2017-163310号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

請求の範囲

[請求項1]
 基材と、基材上に設けられる中間層と、前記中間層上に設けられる表面層と、を有する積層体であって、
 前記中間層が、M-OH基および前記M-OH基を生成可能な基(式中、Mは金属原子またはケイ素原子を表す。)の少なくとも一方、アミノ基およびメルカプト基の少なくとも一方、ならびに、トリアジン環を有するトリアジン化合物を用いて形成される層であり、
 前記表面層が、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖、ならびに、ケイ素原子に結合した加水分解性基およびケイ素原子に結合した水酸基の少なくとも一方を有する含フッ素エーテル化合物を用いて形成される層であることを特徴とする積層体。
[請求項2]
 前記トリアジン化合物がM-OH基を生成可能な基を有し、該M-OH基を生成可能な基が加水分解性シリル基である、請求項1に記載の積層体。
[請求項3]
 前記トリアジン化合物がアミノ基を有する、請求項1または2に記載の積層体。
[請求項4]
 前記トリアジン化合物が、下式TN-1または下式TN-2で表される化合物である、請求項3に記載の積層体。
[化1]


 A N1は、-N(R N1)-R N2-Si(R N3Nn(OR N43-Nnまたは-N{R N2-Si(R N3Nn(OR N43-Nnである。
 A N2は、-N(R N5)-R N6(NH Nmまたは-N{R N6(NH Nmである。
 A N3は、前記A N1、前記A N2または-N(R N7)-R N8である。
 A N4は、2価の連結基である。
 R N1、R N5およびR N7は、それぞれ独立に、水素原子または1価の炭化水素基である。
 R N2は、2価の連結基である。
 R N3およびR N8は、それぞれ独立に、1価の炭化水素基である。
 R N4は、水素原子または1価の炭化水素基である。
 R N6は、(Nm+1)価の連結基である。
 Nnは0~2の整数であり、Nmは1または2である。
[請求項5]
 前記トリアジン化合物がメルカプト基を有する、請求項1または2に記載の積層体。
[請求項6]
 前記トリアジン化合物が、下式TSで表される化合物である、請求項5に記載の積層体。
[化2]


 A は、-N(R S4)-R S1-Si(R S2Sn(OR S33-Snまたは-N{R S1-Si(R S2Sn(OR S33-Snである。
 R S1は、単結合または2価の連結基である。
 R S2は、1価の炭化水素基である。
 R S3およびR S4は、それぞれ独立に、水素原子または1価の炭化水素基である。
 M S1は、水素原子またはアルカリ金属原子である。
 Snは、0~2の整数である。
[請求項7]
 前記含フッ素エーテル化合物が、下式1で表される、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体。
 [A-O-Z -(R O) -] [-SiR 3-n  式1
 Aは、ペルフルオロアルキル基または-Q[-SiR 3-nである。
 Qは、(k+1)価の連結基である。
 kは1~10の整数である。
 Rは、1価の炭化水素基である。
 Lは、加水分解性基または水酸基である。
 nは、0~2の整数である。
 Z は、単結合、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のオキシフルオロアルキレン基または1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のポリ(オキシフルオロアルキレン)基である。
 R は、ペルフルオロアルキレン基である。
 mは、2~200の整数であり
 Z は、(j+q)価の連結基である。
 jおよびqはそれぞれ独立に、1以上の整数である。
[請求項8]
 前記Aがペルフルオロアルキル基である、請求項7に記載の積層体。
[請求項9]
 前記基材は、前記中間層側の最表面に、サファイア層、金属層、金属酸化物層、ダイヤモンドライクカーボン層または樹脂層を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体。
[請求項10]
 前記積層体が、電子機器用物品、輸送機器用物品、精密機器用物品、光学機器用物品または建築用物品に用いられる、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体。
[請求項11]
 基材と、基材上に設けられる中間層と、前記中間層上に設けられる表面層と、を有する積層体の製造方法であって、
 M-OH基および前記M-OH基を生成可能な基(式中、Mは金属原子またはケイ素原子を表す。)の少なくとも一方、アミノ基およびメルカプト基の少なくとも一方、ならびに、トリアジン環を有するトリアジン化合物を用いて、ドライコーティング法またはウェットコーティング法により基材上に前記中間層を形成し、次いで、
 ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖、ならびに、ケイ素原子に結合した加水分解性基およびケイ素原子に結合した水酸基の少なくとも一方を有する含フッ素エーテル化合物を用いて、ドライコーティング法またはウェットコーティング法により前記中間層上に前記表面層を形成する
ことを特徴とする積層体の製造方法。
[請求項12]
 前記ドライコーティング法が真空蒸着法である、請求項11に記載の製造方法。
[請求項13]
 前記ウェットコーティング法による中間層の形成方法が、前記トリアジン化合物および液状媒体を含む組成物を用い、該組成物を前記基材上に塗布し、形成された液状媒体を含む塗膜から前記液状媒体を除去して中間層を形成する方法であり、
 前記ウェットコーティング法による表面層の形成方法が、前記含フッ素エーテル化合物および液状媒体を含む組成物を用い、該組成物を前記中間層上に塗布し、形成された液状媒体を含む塗膜から前記液状媒体を除去して表面層を形成する方法である、
請求項11に記載の製造方法。
[請求項14]
 前記トリアジン化合物が、加水分解性シリル基と、アミノ基またはメルカプト基と、トリアジン環とを有するトリアジン化合物である、請求項11~13のいずれか1項に記載の製造方法。