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1. (WO2019039070) 成膜方法
Document

明 細 書

発明の名称 成膜方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029  

符号の説明

0030  

請求の範囲

1   2   3  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : 成膜方法

技術分野

[0001]
 本発明は、酸化物膜または窒化物膜を成膜するための成膜方法に関し、より詳しくは、スパッタリング法によりSiO 膜、TaSiO 膜、CrSiO 膜やNbSiO 膜といった高抵抗値の酸化物膜または窒化物膜を成膜するための成膜方法に関する。

背景技術

[0002]
 例えば、感熱式プリンタに用いられるサーマルヘッド用の発熱抵抗体の中には、スパッタリング法や真空蒸着法によって成膜される薄膜タイプのものがあり、このような薄膜タイプのものとして、TaSiO 膜、CrSiO 膜やNbSiO 膜などの高抵抗値の酸化物膜を用いることが知られている。このような酸化物膜を成膜する場合、Ta、Cr、Nbなどの遷移金属元素とSiなどの半金属元素と酸素との組成比が微妙に変化するだけで、抵抗値が大きく変化してしまう。このため、通常は、スパッタリング法により上記用途の酸化物膜が成膜されている。
[0003]
 具体的には、成膜しようとする薄膜の組成に応じたTa、Cr、Nbなどの遷移金属元素とSiなどの半金属元素を含む酸化物をスパッタリング用のターゲットし、このターゲットと成膜しようとする被成膜物とを真空チャンバ内に対向配置し、真空雰囲気中で真空チャンバ内に希ガスを導入し、ターゲットに所定電力を投入して真空チャンバ内にプラズマを形成する。そして、プラズマ中で電離した希ガスのイオンをターゲットに衝突させてターゲットをスパッタリングすることでターゲットから飛散する上記酸化物からなるスパッタ粒子を被成膜物に付着、堆積させて被成膜物表面に酸化物膜が成膜される。
[0004]
 ターゲットのスパッタリングに際しては、上記ターゲットが絶縁物であるため、高周波電源(周波数13.56MHZ)を用いてターゲットに、アース電位との間で高周波電力を投入することが一般的である(所謂RFスパッタリング法:例えば、特許文献1参照)。ここで、RFスパッタリング法により成膜する場合、例えば所謂DCスパッタリング法による成膜と比較して著しく成膜レートが遅い。このため、高い量産性で酸化物膜を成膜するにはより速い成膜レートを得ることが必要になり、このような場合には、ターゲットに投入する高周波電力を高めたり、または、スパッタリング時に真空チャンバ内のアルゴンガス等のスパッタガスの分圧(例えば、真空チャンバ内の全圧が10Pa)を高めたりすることが考えられる。
[0005]
 然し、スパッタガスの分圧を高めた状態でスパッタリングすると、却ってスパッタリングレートが低下して量産性が損なわれる場合がある。これは、RFスパッタリング法を実施できる一般のRFスパッタリング装置では、真空チャンバ内で互いに対向配置されるターゲットと被処理物との間の空間を囲繞して真空チャンバの内壁面へのスパッタ粒子の付着を防止する防着板が備えられているが、被処理物への成膜の繰り返しに伴い、防着板表面も酸化物膜で覆われてくると、真空チャンバ内に防着板を組み付けたときの隙間を通してアース接地の真空チャンバの内壁面へとプラズマが漏れ出して防着板と真空チャンバとの間の空間でも放電し、相対的にターゲットに投入される電力が低下することに起因していると考えられる。
[0006]
 他方、ターゲットが絶縁物である場合、ターゲットに対してパルス状の直流電力を投入して当該ターゲットをスパッタリングすること(所謂DC Pulse放電)が考えられる。この方法では、RFスパッタリング法と比較して速い成膜レートが得られるものの、RFスパッタリング法と同様に、アース設置の真空チャンバや防着板をアノードとして用いている。このため、防着板等が絶縁膜で覆われてくると、電荷が帯電し、絶縁破壊を起こし、異常放電が発生する。その結果、異常放電が起因となって、放電の持続性が損なわれたり、または、パーティクルの発生を引き起こす問題がある。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特許第3968128号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 本発明は、以上の点に鑑み、遷移金属元素及び半金属元素のうち少なくとも1種を構成元素として含む酸化物または窒化物をターゲットとする場合に、ターゲットのライフエンドまで安定して酸化物膜や窒化物膜を成膜できる成膜方法を提供することをその課題とするものである。

課題を解決するための手段

[0009]
 上記課題を解決するために、本発明は、遷移金属元素及び半金属元素のうち少なくとも1種を構成元素として含む酸化物または窒化物をターゲットとし、真空雰囲気中でこのターゲットをスパッタリングしてターゲットから飛散するスパッタ粒子を被成膜物に付着、堆積させ、被成膜物表面に高抵抗値を持つ酸化物膜または窒化物膜を成膜する成膜方法において、同等の組成を有する上記ターゲットの複数枚を同一平面内に並設し、この並設されたターゲットのうち対をなすターゲット間に所定の周波数の交流電力を投入し、各ターゲットをアノード電極、カソード電極に交互に切り換えることでターゲット相互の間でプラズマを発生させ、カソード電極となっているターゲットをスパッタリングすることを特徴とする。
[0010]
 本発明によれば、同等のターゲットをRFスパッタリング法によりスパッタリングして高抵抗値の酸化物膜を成膜する場合と比較して、同等の膜質を得ることができ(即ち、抵抗値変化が殆どなく)、その上、成膜時のスパッタガスの分圧を高めたりすることなく、10倍以上速い成膜レートでターゲットのライフエンドまで安定して成膜でき、量産性を向上できることが確認された。
[0011]
 ところで、上記の如く、対をなすターゲット間に所定の周波数の交流電力を投入してターゲットをスパッタリングする場合、例えばスパッタリング時にターゲットが割れたり、冷却不足で溶けたりする不具合が生じないように、投入電力密度が、例えば10W/cm 以下の所定値に設定されるが、そのときの周波数によっては、例えば異常放電が多発する場合があり、これでは、ターゲットにスプラッシュが発生したり、予め設定したスパッタ時間では目標の膜厚で成膜することができない等の問題が生じることが判明した。そこで、本発明は、前記交流電力の周波数が20kHz~60kHzの範囲に設定されることが好ましく、また、前記交流電力のDuty比を20%~80%の範囲に設定することが好ましい。なお、遷移金属元素と半金属元素との組成比は、0.3~0.8の範囲に設定される。この範囲以外では、放電電圧の上昇に伴う異常放電の発生や、成膜した薄膜が所望の抵抗値を満たせないまたは抵抗の温度変化が大きくなるといった不具合が生じる。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 本発明の成膜方法の実施に利用できるスパッタリング装置を模式的に示す断面図。
[図2] 本発明の効果を示す実験の結果を示すグラフ。
[図3] 本発明の効果を示す他の実験の結果を示すグラフ。

発明を実施するための形態

[0013]
 以下、図面を参照して、被成膜物をガラス基板とし、ガラス基板(以下、「基板Sb」という)の表面にTaSiO 膜からなる高抵抗値の酸化物膜を成膜する場合を例に本発明の成膜方法の実施形態を説明する。
[0014]
 図1を参照して、SMは、本発明の成膜方法の実施が可能なマグネトロン方式のスパッタリング装置である。スパッタリング装置SMは所謂デポアップにより成膜が行われるインライン式のものであり、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプPuを介して所定圧力(10 -5Pa)に真空排気して真空雰囲気に保持できる真空チャンバ1を有する。真空チャンバ1の上部には、キャリア2にセットされた基板Sbがその成膜面を下方に向けて配置される。この場合、特に図示して説明しないが、真空チャンバ1には真空雰囲気の形成が可能な予備チャンバが連設され、予備チャンバにて基板Sbがキャリア2にセットされ、真空雰囲気中で基板搬送手段により真空チャンバ1の所定位置に搬送されるようになっている。基板搬送手段としては公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明は省略する。また、真空チャンバ1内には、真空チャンバ1内に搬送された基板Sbと後述するターゲットとの間の空間を囲繞して真空チャンバ1の内壁面へのスパッタ粒子の付着を防止する防着板11が備えられている。
[0015]
 真空チャンバ1には、ガス導入手段3が設けられている。ガス導入手段3は、マスフローコントローラ31を設けたガス管32を介してガス源33に連通し、Arなど希ガスからなるスパッタガスを(場合によっては、反応性スパッタリングの際に用いるO 、N といった反応ガスも)真空チャンバ1内に所定の流量で導入できるようにしている。そして、真空チャンバ1の下側には、基板Sbに対向するようにカソードユニットCuが設けられている。
[0016]
 カソードユニットCuは一対のターゲット41a,41bを有する。各ターゲット41a,41bは、同等の組成比を有し、かつ、公知の方法で同等の形状(本実施形態では、上面が長方形の輪郭に形成されている)に形成されたものであり、Ta(遷移金属元素)とSi(半金属元素)とを所定の組成比で含む酸化物である。なお、TaとSiとの組成比は、0.3~0.8の範囲に設定される。この範囲以外では、放電電圧の上昇に伴う異常放電の発生や、成膜した薄膜が所望の抵抗値を満たせないまたは抵抗の温度変化が大きくなるといった不具合が生じる。なお、互いに並設される各ターゲット41a,41bの組成比が同等といった場合、その組成比が完全に一致する場合だけでなく、例えば半金属元素に対する金属元素の組成比が0.3~0.8の範囲で異なっていても、同等の膜質を得ることができる(即ち、成膜した酸化物膜の抵抗値変化が殆どない)場合も含む。
[0017]
 各ターゲット41a,41bは、スパッタリング中、ターゲット41a,41bを冷却するバッキングプレート42に、インジウムやスズなどのボンディング材を介して接合され、図示しない絶縁材を介して真空チャンバ1内に電気的にフローティング状態に設置されている。この場合、各ターゲット41a,41bは、その未使用時のスパッタ面としての上面が、基板Sbに平行な同一平面上に位置するように並設されている。なお、本実施形態では、2枚のターゲット41a,41bを並設するものを例に説明するが、これに限定されるものではなく、並設されるターゲットの数は、基板Sbの外形寸法等を考慮して適宜設定される。
[0018]
 また、カソードユニットCuは、各ターゲット41a,41bの下方に位置させて磁石組立体5を備える。磁石組立体5は、各ターゲット41a,41bに平行に設けられた支持板51を有する。この支持板51は、各ターゲット41a,41bの横幅より小さく、ターゲット41a,41bの長手方向に沿ってその両側に延出するように形成した長方形状の平板から構成され、磁石の吸着力を増幅する磁性材料製である。支持板51上には、ターゲット41a,41bの長手方向に沿った棒状の中央磁石52と、支持板51の外周に沿って設けた周辺磁石53とが設けられている。この場合、中央磁石52の同磁化に換算したときの体積を、例えば周辺磁石53の同磁化に換算したときの体積の和(周辺磁石:中心磁石:周辺磁石=1:2:1)に等しくなるように設計している。これにより、各ターゲット41a,41bの前方に、釣り合った閉ループのトンネル状の磁束がそれぞれ形成され、ターゲット41a,41bの前方で電離した電子及びスパッタリングによって生じた二次電子を捕捉することで、ターゲット41a,41bのそれぞれ前方での電子密度を高くしてプラズマ密度を高くできる。各ターゲット41a,41bの利用効率を高めるために、各ターゲット41a,41bに対して所定のストロークで磁石組立体5が相対往復動するように構成することもできる。
[0019]
 一対のターゲット41a,41bには、単一の交流電源Aeからの出力ケーブルKlがそれぞれ接続されている。交流電源Aeとしては所謂バイポーラパルス電源を用いることができ、一対のターゲット41a,41b間に所定の周波数でバイポーラパルス状に電力投入できるようになっている。バイポーラパルス電源としては、一対のターゲット41a,41bへの出力電圧波形の電圧降下時間の長短から異常放電(アーク放電)の発生を検出する回路を備える公知のものが利用できるため、ここでは、詳細な説明を省略する。以下に、上記スパッタリング装置SMを用いた基板Sbへの酸化物膜の成膜方法を説明する。
[0020]
 先ず、図外の予備チャンバにて基板Sbをキャリア2にセットし、予備チャンバが所定圧力に真空排気されると、基板搬送手段により真空雰囲気中の真空チャンバ1に搬送する。真空チャンバ1内が所定圧力まで真空排気されると、ガス導入手段3を介して所定のスパッタガスを導入する。この場合、スパッタリング時の真空チャンバ1内の圧力が0.1Pa~1.0Paの範囲になるようにスパッタガスの流量が制御される。そして、交流電源Aeを介して対をなす各ターゲット41a,41bに交流電力を夫々投入する。この場合、投入電力密度は、例えば10W/cm 以下の所定値に設定される。なお、ターゲット41a,41bがTaとSiとを所定の組成比で含む酸化物である場合、投入電力密度が10W/cm を超えると、ターゲットの割れや欠けが生じたり、または、異常放電が多発したりするといった不具合が生じる。
[0021]
 また、交流電源Aeたるバイポーラパルス電源から出力される交流電力の周波数が20kHz~60kHzの範囲に設定される。周波数が20kHzより小さくなると、異常放電が多発して、例えば膜厚管理が面倒になるといった不具合が生じる。他方、周波数が60kHzを超えると、瞬間的な放電電圧の上昇並びにバイポーラパルス電源の構成回路であるインバーターの動作範囲を超えるという問題がある。また、上記交流電力のDuty比が20%~80%の範囲に設定される。この範囲を外れると、直ちに異常放電(アーク放電)の発生回数が増大するという不具合が生じる。
[0022]
 ここで、スパッタリング中のターゲット41a,41b間の電圧の二乗平均平方根Vmfの値(V)は、成膜時の真空チャンバ1内の圧力や、交流電源Aeからの投入電力及びその周波数を変えると、変化する。この場合、Vmfが高いほど異常放電(アーク放電)の発生頻度が上がり、また、Vmfの値が同等であっても、周波数を低くしていくのに従い、異常放電(アーク放電)の発生頻度が上がることが確認された。この結果から、Vmfが高いほど、ターゲット41a,41bのスパッタリングに伴い、当該ターゲット41a,41bの非侵食領域(酸化物膜)などの絶縁被膜が絶縁破壊を起こす駆動力が高くなり、また、周波数が低くなると、絶縁被膜に蓄積する電荷が増加し、その上、電荷が蓄積されている時間が長くなり、その結果、異常放電の発生頻度が上がる原因となると考えられる。このため、交流電力の周波数が20kHz~60kHzの範囲に設定され、更には、Duty比が20%~80%の範囲に設定されていれば、異常放電の発生に直結する駆動力が低減され、また、周波数を所定の範囲に設定することで異常放電が発生する前に放電が切り替わり、絶縁被膜の除電効果の向上が可能になり、結果として、異常放電の発生を可及的に抑制することが可能になる。
[0023]
 また、Vmfが690V以下に制御されていれば、異常放電の発生が抑制され、630~690Vの範囲に制御されれば異常放電の発生がさらに抑制されることがある。なお、一対のターゲット41a,41b間に所定電圧を印加するためのバイポーラパルス電源の出力方式は、出力切り替え回路であるインバーターと実負荷の間にトランスを介さない方式が好ましい。トランスを介して出力した場合、実負荷のインピーダンスとの共振が起きるために、ターゲット41a,41b、投入電力、成膜圧力などの成膜因子が変わると、共振周波数が変化してしまう。このため、任意の切り替え周波数に設定する際に、電源Ae内のキャパシタンスやインダクタンスを変更する必要が生じる。トランスを介さなければ、任意の周波数に固定できるという利点がある。
[0024]
 これにより、対をなす2枚のターゲット41a,41bが夫々アノード電極とカソード電極との役割を果たし、各ターゲット41a,41bの上方に、トンネル状の漏洩磁場が形成され、この漏洩磁場の垂直成分が0となる位置を通るレーストラック状に高密度のプラズマが発生する。そして、周波数に応じて各ターゲット41a,41bがアノード電極、カソード電極に交互に切り換わり、プラズマ中で電離したスパッタガスのイオンでカソード電極となっているターゲット41a,41bがスパッタリングされ、各ターゲット41a,41bから放出されたスパッタ粒子が、対向する基板Sbの下面に付着、堆積して所定の酸化物膜が成膜される。
[0025]
 以上によれば、同等のターゲットをRFスパッタリング法によりスパッタリングして高抵抗値の酸化物膜を成膜する場合と比較して、同等の膜質を得ることができ、その上、成膜時のスパッタガスの分圧を高めたりすることなく、10倍以上速い成膜レートが得られる。しかも、基板Sbへの成膜を繰り返すことで、防着板11の表面が酸化物膜で覆われるようになっても、プラズマが不安定になったりするといった不具合は発生せず、ターゲット41a,41bのライフエンドまで安定して成膜できる。
[0026]
 次に、以上の効果を確認するため、図1に示すスパッタリング装置SMを用いて次の実験を行った。本実験では、ターゲット41a,41bとして、50~52原子%の組成比でTaを含むTaSiO 製のものを用い、長方形の輪郭に成形した後、バッキングプレート42に接合して、スパッタリング装置の所定位置に2枚のターゲット41a,41bを間隔を置いて設置した。ターゲット41a,41bと基板Sbとの間の距離を80mmとした。また、スパッタ条件として、真空排気されている真空チャンバ1内の圧力が0.37Paに維持されるようにマスフローコントローラ31を制御してスパッタガスであるアルゴンを導入し、ターゲット41a,41bに対する投入電力が4kWに維持されるように交流電源Aeを制御し、所定のスパッタ時間だけガラス基板表面にTaSiO 膜からなる高抵抗値の酸化物膜を成膜した。このときの成膜レートを測定したところ、45nm/minであり、同等のターゲットに対して投入電力密度が4.8W/cm になるように電力投入してRFスパッタリング法によりスパッタリングし、TaSiO 膜を成膜する場合(約4nm/min)と比較して10倍以上速い成膜レートが得られることが確認された。
[0027]
 次に、上記スパッタ条件で成膜するものを試料1とし、投入電力を2kW、真空チャンバ1内の圧力を0.37Paとして成膜するものを試料2、投入電力を2kW、真空チャンバ1a内の圧力を0.37Paとして成膜するものを試料3、投入電力を4kW、真空チャンバ1a内の圧力を0.85Paとして成膜するものを試料4とし、投入電力の周波数を10,20,40,60kHzに夫々設定し、スパッタリング中のターゲット41a,41b間の電圧の二乗平均平方根(Vmf)と、異常放電発生回数を測定し、その結果を図2に示す。この場合、図2中、-◇-が試料1、-□-が試料2、-●-が試料3、-○-が試料4である。なお、試料1において周波数10kHzとしたときの異常放電発生回数を1として、その他の試料について夫々の異常放電発生回数を規格化した。これによれば、Vmfの低電圧化、切り替え周波数化により、異常放電発生回数が抑制されることが判る。
[0028]
 次に、上記スパッタ条件で投入周波数を40kHzに設定して成膜するものを試料5とし、上記スパッタ条件で投入周波数を10kHzに設定して成膜するものを試料6とし、一対のターゲット41a,41bに印加される電力のDutyを10~90%に設定して、夫々の異常放電回数を測定し、その結果を図3に示す。この場合、図3中、-◇-が試料5、-□-が試料6である。なお、試料5及び試料6においてDutyを50%としたときの異常放電回数を1として規格化した。これによれば、10kHzにおいてはDuty50%を外れると直ちに異常放電回数が増大するのに対し、40kHzにおいてはDuty20~70%において概ねDuty50%と同様の異常放電回数に抑制されている。周波数を20kHzに設定した場合にはDuty30%~70%において概ねDuty50%と同様の異常放電回数に抑制され、周波数を60kHzに設定した場合にはDuty20%~80%において概ねDuty50%と同様の異常放電回数に抑制されることが分かった。つまり周波数を20kHz~60kHzに設定することで、より広範囲のDuty比において異常放電を効果的に抑制できることが分かった。
[0029]
 以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の上記実施形態のものに限定されるものではない。上記実施形態では、TaとSiとを所定の組成比で含む酸化物をターゲットとし、TaSiO 膜からなる高抵抗値の酸化物膜を成膜するものを例に説明したが、これに限定されるものはなく、Ta、CrやNb等の遷移金属元素とSiとを含む酸化物や、シリコン酸化物またはアルミナをターゲットとすることができ、上記成膜方法を適用すれば、同等のターゲットをRFスパッタリング法によりスパッタリングして成膜する場合と比較して、同等の膜質を得ることができ、その上、成膜時のスパッタガスの分圧を高めたりすることなく、速い成膜レートが得られ、しかも、基板Sbへの成膜を繰り返すことで、防着板11の表面が酸化物膜で覆われるようになっても、プラズマが不安定になったりすることがないことが確認された。他方、TaN等の窒化物膜を成膜する場合に、上記成膜方法を適用すれば、同様の結果が得られることが確認できた。

符号の説明

[0030]
 SM…本発明の実施に適したスパッタリング装置、41a,41b…ターゲット、Ae…交流電源、Sb…基板(被成膜物)。

請求の範囲

[請求項1]
 遷移金属元素及び半金属元素のうち少なくとも1種を構成元素として含む酸化物または窒化物をターゲットとし、真空雰囲気中でこのターゲットをスパッタリングしてターゲットから飛散するスパッタ粒子を被成膜物に付着、堆積させ、被成膜物表面に酸化物膜または窒化物膜を成膜する成膜方法において、
 同等の組成を有する上記ターゲットの複数枚を同一平面内に並設し、この並設されたターゲットのうち対をなすターゲット間に所定の周波数の交流電力を投入し、各ターゲットをアノード電極、カソード電極に交互に切り換えることでターゲット相互の間にプラズマを発生させ、カソード電極となっているターゲットをスパッタリングすることを特徴とする成膜方法。
[請求項2]
 前記交流電力の周波数が20kHz~60kHzの範囲に設定されることを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
[請求項3]
 前記交流電力のDuty比を20%~80%の範囲に設定することを特徴とする請求項2記載の成膜方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]