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1. (WO2019035367) 抵抗スポット溶接方法および溶接部材の製造方法
Document

明 細 書

発明の名称 抵抗スポット溶接方法および溶接部材の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012  

先行技術文献

特許文献

0013  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021  

課題を解決するための手段

0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032  

発明の効果

0033  

図面の簡単な説明

0034  

発明を実施するための形態

0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061  

実施例

0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068  

符号の説明

0069  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 抵抗スポット溶接方法および溶接部材の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は抵抗スポット溶接方法に関し、とくに分流や板隙などの外乱の影響が大きい場合であっても、散りを発生させることなく安定してナゲット径を確保することを可能ならしめようとするものである。

背景技術

[0002]
 一般に、重ね合わせた鋼板同士の接合には、重ね抵抗溶接法の一種である抵抗スポット溶接法が用いられている。
 この溶接法は、重ね合わせた2枚以上の鋼板を挟んでその上下から一対の電極で加圧しつつ、上下電極間に高電流の溶接電流を短時間通電して接合する方法である。そして、この溶接法では、高電流の溶接電流を流すことで発生する抵抗発熱を利用して、点状の溶接部が得られる。この点状の溶接部は、ナゲットと呼ばれる、重ね合わせた鋼板に電流を流した際に鋼板の接触箇所で両鋼板が溶融し、凝固した部分である。このナゲットにより、鋼板同士が点状に接合される。
[0003]
 良好な溶接部品質を得るためには、ナゲット径が適正な範囲で形成されることが重要である。ナゲット径は、溶接電流、通電時間、電極形状および加圧力等の溶接条件によって定まる。従って、適切なナゲット径を形成するためには、被溶接材の材質、板厚および重ね枚数等の被溶接材条件に応じて、上記の溶接条件を適正に設定する必要がある。
[0004]
 例えば、自動車の製造に際しては、一台当たり数千点ものスポット溶接が施されており、また次々と流れてくる被処理材(ワーク)を溶接する必要がある。この時、各溶接箇所における被溶接材の材質、板厚および重ね枚数等の被溶接材の状態が同一であれば、溶接電流、通電時間および加圧力等の溶接条件も同一の条件で同一のナゲット径を得ることができる。しかしながら、連続した溶接では、電極の被溶接材接触面が次第に摩耗して接触面積が初期状態よりも次第に広くなる。このように接触面積が広くなった状態で、初期状態と同じ値の溶接電流を流すと、被溶接材中の電流密度が低下し、溶接部の温度上昇が低くなる。その結果、ナゲット径は小さくなる。よって、数百~数千点の溶接毎に、電極の研磨または交換を行い、電極の先端径が拡大しすぎないようにしている。
[0005]
 その他、予め定めた回数の溶接を行うと溶接電流値を増加させて、電極の摩耗に伴う電流密度の低下を補償する機能(ステッパー機能)を備えた抵抗溶接装置が、従来から使用されている。このステッパー機能を使用するには、上述した溶接電流変化パターンを予め適正に設定しておく必要がある。しかしながら、このために、数多くの溶接条件および被溶接材条件に対応した溶接電流変化パターンを、試験等によって導き出すには、多くの時間とコストが必要になる。また、実際の施工においては、電極摩耗の進行状態にはバラツキがあるため、予め定めた溶接電流変化パターンが常に適正であるとはいえない。
[0006]
 さらに、溶接に際して外乱が存在する場合、例えば、溶接する点の近くにすでに溶接した点(既溶接点)がある場合や、被溶接材の表面凹凸が大きく溶接する点の近くに被溶接材の接触点が存在する場合には、溶接時に既溶接点や接触点に電流が分流する。このような状態では、所定の条件で溶接しても、電極直下の溶接したい位置における電流密度は低下するため、やはり必要な径のナゲットは得られなくなる。この発熱量不足を補償し、必要な径のナゲットを得るには、予め高い溶接電流を設定することが必要となる。
[0007]
 また、表面凹凸や部材の形状などにより溶接する点の周囲が強く拘束されている場合や、溶接点周囲の鋼板間に異物が挟まっていたりする場合には、鋼板間の板隙が大きくなることで鋼板同士の接触径が狭まり、散りが発生しやすくなることもある。
[0008]
 上記の問題を解決するものとして、以下に述べるような技術が提案されている。
 例えば、特許文献1には、
「高張力鋼板をスポット溶接する高張力鋼板のスポット溶接方法であって、上記高張力鋼板への通電電流を漸変的に上昇させることによりナゲット生成を行なう第1ステップと、上記第1ステップの後に電流下降させる第2ステップと、上記第2ステップ後に電流上昇させて本溶接すると共に、漸変的に通電電流を下降させる第3ステップとを備えた工程によりスポット溶接を行なう高張力鋼板のスポット溶接方法。」
が提案されている。
[0009]
 特許文献2には、
「一対の相対向する電極で被溶接物を挟み、加圧した状態で前記電極間に溶接電流を流して前記被溶接物をスポット溶接するスポット溶接装置において、 通電時間の初期にスパッタの発生を抑え得る程度の電流値に所定時間維持して被溶接物の表面を軟化させ、その後に電流値を所定時間高く維持してスパッタの発生を抑えつつナゲットを成長させるスポット溶接の通電制御方法。」
が提案されている。
[0010]
 特許文献3には、
「溶接電流検出手段と、電極間電圧検出手段と、前記検出手段により検出した溶接電流および電極間電圧の経時変化から溶接部の温度分布1を推算する温度分布推算手段と、前記溶接電流および前記電極間電圧の経時変化から溶接部のインダクタンス特性値を算出するインダクタンス特性値演算手段と、前記温度分布推算手段により推算された温度分布1と前記インダクタンス特性値を用いて推算した温度分布2を比較した結果により前記温度分布推算手段を調整する調整手段と、前記温度分布1を用いて溶接条件である溶接電流、溶接時間または加圧力の少なくとも1つを制御する制御手段とを備えた抵抗溶接機の制御装置。」
が提案されている。
[0011]
 特許文献4には、
「溶接電流とチップ間電圧を検出し、両検出値から熱伝導計算により溶接部のシュミレーションを行う熱伝導シュミレータを用い、溶接中における溶接部のナゲット形成状況を表す状態量を推定し、前記状態量と推定時点での基準状態量を比較し、その比較結果により溶接条件の修正を行うとともに、溶接開始後における溶接状況を表すモニタ値により界面抵抗を挿入するなどの熱伝導シュミレータの構成を修正することにより前記状態量と基準状態量を一致させることを特徴とする抵抗溶接機の溶接条件制御方法。」
が提案されている。
[0012]
 特許文献5には、
「被溶接物を挟む一対の電極と、その一対の電極間に溶接電流を流す電源装置と、その電源装置を制御する制御装置とを備えた抵抗溶接システムにおいて、その被溶接物を良好に溶接する単位体積当たりの累積発熱量から単位体積・単位時間当たりの発熱量を計算し、計算された単位体積・単位時間当たりの発熱量を発生させる溶接電流又は電圧に調整する処理手順を付加したことを特徴とする抵抗溶接システム。」
が提案されている。

先行技術文献

特許文献

[0013]
特許文献1 : 特開2003-236674号公報
特許文献2 : 特開2006-43731号公報
特許文献3 : 特開平9-216071号公報
特許文献4 : 特開平10-94883号公報
特許文献5 : 特開平11-33743号公報
特許文献6 : 国際公開2014/136507号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0014]
 しかしながら、特許文献1および2に記載の技術では、外乱の有無および大小によって適正となる溶接条件は変化すると考えられるため、想定以上の板隙や分流が生じた際には、散りを発生させることなく所望のナゲット径を確保することができないという問題があった。
[0015]
 また、特許文献3および4に記載の技術では、熱伝導モデル(熱伝導シミュレーション)等に基づいてナゲットの温度を推定するため、複雑な計算処理が必要であり、溶接制御装置の構成が複雑になるだけでなく、溶接制御装置自体が高価になるという問題があった。
[0016]
 さらに、特許文献5に記載の技術では、累積発熱量を目標値に制御することによって、電極が一定量摩耗していたとしても良好な溶接を行うことができるものと考えられる。しかしながら、設定した被溶接材条件と実際の被溶接材条件が大きく異なる場合、例えば近くに前述した既溶接点などの外乱が存在する場合や、発熱量の時間変化パターンが短時間で大きく変化する場合、例えば目付量の多い溶融亜鉛めっき鋼板の溶接の場合などには、適応制御が追随できず、最終的な累積発熱量を目標値に合わることができても、発熱の形態、つまり溶接部の温度分布の時間変化が目標とする良好な溶接部が得られる熱量パターンから外れ、必要とするナゲット径が得られなかったり、散りが発生したりする。
 例えば、分流の影響が大きな場合に累積発熱量を合わせようとすると、鋼板間ではなく電極-鋼板間近傍での発熱が著しくなり、鋼板表面からの散りが発生しやすくなるという問題がある。
[0017]
 加えて、特許文献3~5の技術は全て、電極先端が摩耗した場合の変化に対してはある程度は有効であるが、既溶接点との距離が短い場合など、分流の影響が大きい場合については何ら検討がなされておらず、実際に適応制御が働かない場合があった。
[0018]
 そこで、発明者らは先に、上記の問題を解決するものとして、
「複数枚の金属板を重ね合わせた被溶接材を、一対の電極によって挟み、加圧しながら通電して接合する抵抗スポット溶接方法において、
 通電パターンを2段以上の多段ステップに分割して、溶接を実施するものとし、
 まず、本溶接に先立ち、各ステップ毎に、定電流制御により通電して適正なナゲットを形成する場合の電極間の電気特性から算出される、単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化および単位体積当たりの累積発熱量を目標値として記憶させるテスト溶接を行い、
 ついで、本溶接として、該テスト溶接で得られた単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線を基準として溶接を開始し、いずれかのステップにおいて、瞬時発熱量の時間変化量が基準である時間変化曲線から外れた場合に、その差を当該ステップの残りの通電時間内で補償すべく、本溶接の累積発熱量がテスト溶接で予め求めた累積発熱量と一致するように通電量を制御する適応制御溶接を行うことを特徴とする抵抗スポット溶接方法。」を開発し、特許文献6において開示した。
[0019]
 特許文献6の技術により、電極先端が摩耗したり、外乱が存在するような場合であっても、良好な径のナゲットを得ることができるようになった。
[0020]
 しかしながら、外乱の影響が特に大きい場合、例えば、大きなナゲット径を確保する必要がある場合や、既溶接点が直近に存在したり、既溶接点が溶接点の周囲に多数存在する場合、鋼板間の板隙が大きい場合などには、時として電極近傍での発熱が過大となって散りが発生することがあり、尚も満足のいくナゲット径が得られない場合があった。
[0021]
 本発明は、上掲した特許文献6の改良発明に係るものであって、上記のように外乱の影響が特に大きい場合であっても、散りの発生や通電時間の増加なしに、適切な径のナゲットを得ることができる抵抗スポット溶接方法を提供することを目的とする。
 また、本発明は、上記の抵抗スポット溶接方法を用いた溶接部材の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0022]
 さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた。
 前述したように、外乱の影響が大きく、あるいはさらに電極先端が摩耗している場合には、特許文献6の技術に従い、テスト溶接で得られた累積発熱量を目標値に設定していわゆる適応制御溶接を行ったとしても、発熱の形態、つまり溶接部の温度分布の時間変化(以下、熱量パターンともいう)が、目標とする条件(すなわち、テスト溶接により、良好な溶接部が得られたときの溶接部の温度分布の時間変化)と異なることがあり、これによって、必要とするナゲット径が得られなかったり、散りが発生したりする。
[0023]
 この点について、発明者らがさらに詳しく検討したところ、以下のような知見を得た。
 すなわち、抵抗スポット溶接開始前および溶接初期においては、溶接点での鋼板間の抵抗が高い、つまり、通電径が確保されていない状態である。従って、外乱が存在する場合、例えば分流の影響が大きな場合に、テスト溶接で得られた累積発熱量を目標値に設定して適応制御溶接を行うと、溶接初期の鋼板間の通電径が確保されていない状態では、溶接電流が過大となる。このため、鋼板-鋼板間ではなく電極-鋼板間近傍での発熱が著しくなって、テスト溶接と発熱形態が大きく異なってしまう。
[0024]
 また、特に鋼板間の板隙が大きい場合は、電極の形状に沿うように、鋼板が大きく反るため、板隙が無い場合と比較して電極-鋼板間の接触面積が大きくなる。これにより、電極近傍における電流密度が低下し、また電極への抜熱も促されるため、板厚方向へのナゲット成長が妨げられ、薄肉のナゲットが形成されやすくなる。
 さらに、溶融部の体積が減少することで溶接部の固有抵抗が低下し、電極間電圧が下がるという現象が生じることがある。電極間電圧が低下すると、単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化および単位体積当たりの累積発熱量を目標値として適応制御溶接を行う場合、溶接制御装置は、発熱量が低下したと認識することになる。その結果、実際には適正なナゲット径が得られていたとしても、溶接制御装置が溶接電流を急激に増加させて、散りの発生を招く。
[0025]
 以上の点を踏まえ、発明者らがさらに検討を重ねた結果、
・テスト溶接をいくつかの溶接条件で行って、それぞれ単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量(以下、単に時間変化曲線等ともいう)を記憶させ、
・本溶接では、外乱の状態等を考慮し、記憶させた時間変化曲線等の中から最適なものを目標値に設定して適応制御溶接を行えば、外乱の影響が大きく、あるいはさらに電極先端が摩耗している場合であっても、散りの発生なく適切な径のナゲットが得られるのではないか、
と考えるに至った。
[0026]
 そして、発明者らがさらに検討を重ねたところ、
・複数の時間変化曲線などから最適なものを選択するには、通電の極初期に現れる外乱の影響を設定指標とする、具体的には、本通電の前に予通電を行い、この予通電時における電極間の電気特性から、目標値とする時間変化曲線等を選択することが有効であり、
・これにより、外乱の影響が特に大きい場合であっても、適応制御溶接時における溶接部の熱量パターンを、テスト溶接における熱量パターンに沿わせることが可能となり、通電時間の増加や散りの発生なしに、適切な径のナゲットを得ることができる、
・また、自動車の製造などの実作業においては、次々と流れてくる被処理材を連続的に溶接するが、施工条件や被処理材の寸法誤差などによって、通常、溶接位置や被処理材ごとに外乱の状態は変動する、
・この点、上記の溶接方法によれば、予通電時における電極間の電気特性から、外乱の状態を加味して時間変化曲線等を設定するので、外乱の状態の変動に有効に対応して所望のナゲット径を安定的に確保することが可能となり、その結果、実作業での作業効率や歩留まりの向上という点からも極めて有利になる、
との知見を得た。
 本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
[0027]
 すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.複数枚の金属板を重ね合わせた被溶接材を、一対の電極によって挟み、加圧しながら通電して接合する抵抗スポット溶接方法であって、
 本溶接と、該本溶接に先立つテスト溶接とを行うとともに、該テスト溶接を2通り以上の溶接条件で行うものとし、
 前記テスト溶接では、前記溶接条件ごとに、
  同じ通電パターンで定電流制御による予通電を行うとともに、該予通電時における電極間の電気特性を記憶させ、
  ついで、本通電では、定電流制御により通電し、適正なナゲットが形成される場合の電極間の電気特性から算出される、単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量を記憶させ、
 さらに、前記本溶接では、
  前記テスト溶接と同じ通電パターンで定電流制御による予通電を行い、該予通電における電極間の電気特性と、前記テスト溶接の予通電にて記憶させた電極間の電気特性とを前記溶接条件ごとに比較し、その差が最も小さい溶接条件において記憶させた前記テスト溶接の本通電における単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量を、本溶接における本通電の目標値に設定し、
  ついで、本通電として、該目標値に従って、通電量を制御する適応制御溶接を行う、
抵抗スポット溶接方法。
[0028]
2.前記適応制御溶接において、前記目標値として設定した単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および累積発熱量を基準として溶接を行い、単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化量が基準である時間変化曲線から外れた場合には、その外れ量を残りの通電時間内で補償すべく、前記本溶接の本通電での単位体積当たりの累積発熱量が前記目標値として設定した単位体積当たりの累積発熱量と一致するように通電量を制御する、前記1に記載の抵抗スポット溶接方法。
[0029]
3.前記テスト溶接において、少なくとも1つの溶接条件では外乱を模擬して溶接を行い、別の溶接条件では外乱のない状態で溶接を行う、前記1または2に記載の抵抗スポット溶接方法。
[0030]
4.前記テスト溶接を3通り以上の溶接条件で行う、前記1~3のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法。
[0031]
5.前記テスト溶接における予通電の設定加圧力をFp、本通電の設定加圧力をFmとしたとき、
   Fp<Fm
の関係を満足する、前記1~4のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法。
[0032]
6.前記1~5のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法により、重ね合わせた複数枚の金属板を接合する、溶接部材の製造方法。

発明の効果

[0033]
 本発明によれば、大きなナゲット径を必要としたり、既溶接点が直近に存在したり、既溶接点が溶接点の周囲に多数存在したり、鋼板間の板厚が大きいというような、外乱の影響が特に大きい場合であっても、散りの発生や通電時間の増加なしに、良好なナゲットを得ることができる。
 また、本発明によれば、自動車の製造などの実作業において次々と流れてくる被処理材を連続的に溶接する(溶接位置や被処理材ごとに外乱の状態が変動する)場合であっても、外乱の状態の変動に有効に対応して所望のナゲット径を安定的に確保することが可能となり、その結果、作業効率や歩留まりの向上という点でも極めて有利となる。

図面の簡単な説明

[0034]
[図1] 2枚重ねの板組みに対して外乱のない状態でテスト溶接を行う場合の一例を模式的に示す図である。
[図2] 3枚重ねの板組みに対して外乱のない状態でテスト溶接を行う場合の一例を模式的に示す図である。
[図3] 既溶接点のある2枚重ねの板組みに対してテスト溶接を行う場合の一例を模式的に示す図である。
[図4] 既溶接点のある3枚重ねの板組みに対してテスト溶接を行う場合の一例を模式的に示す図である。
[図5] 板隙のある2枚重ねの板組みに対してテスト溶接を行う場合の一例を模式的に示す図である。
[図6] 板隙のある3枚重ねの板組みに対してテスト溶接を行う場合の一例を模式的に示す図である。
[図7] テスト溶接における通電パターン(本通電が1段通電であり、予通電と本通電で設定加圧力が同じ場合)の一例を模式的に示す図である。
[図8] テスト溶接における通電パターン(本通電が2段通電であり、予通電と本通電で設定加圧力が同じ場合)の一例を模式的に示す図である。
[図9] テスト溶接における通電パターン(本通電が1段通電であり、予通電と本通電で設定加圧力が異なる場合)の一例を模式的に示す図である。
[図10] テスト溶接における通電パターン(本通電が2段通電であり、予通電と本通電で設定加圧力が異なる場合)の一例を模式的に示す図である。

発明を実施するための形態

[0035]
 本発明を、以下の実施形態に基づき説明する。
 本発明の一実施形態は、複数枚の金属板を重ね合わせた被溶接材を、一対の電極によって挟み、加圧しながら通電して接合する抵抗スポット溶接方法であって、
 本溶接と、該本溶接に先立つテスト溶接とを行うとともに、該テスト溶接を2通り以上の溶接条件で行うものとし、
 前記テスト溶接では、前記溶接条件ごとに、
  同じ通電パターンで定電流制御による予通電を行うとともに、該予通電時における電極間の電気特性を記憶させ、
  ついで、本通電では、定電流制御により通電し、適正なナゲットが形成される場合の電極間の電気特性から算出される、単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量を記憶させ、
 さらに、前記本溶接では、
  前記テスト溶接と同じ通電パターンで定電流制御による予通電を行い、該予通電における電極間の電気特性と、前記テスト溶接の予通電にて記憶させた電極間の電気特性とを前記溶接条件ごとに比較し、その差が最も小さい溶接条件において記憶させた前記テスト溶接の本通電における単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量を、本溶接における本通電の目標値に設定し、
  ついで、本通電として、該目標値に従って、通電量を制御する適応制御溶接を行うというものである。
[0036]
 なお、本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法で使用可能な溶接装置としては、上下一対の電極を備え、溶接中に加圧力および溶接電流をそれぞれ任意に制御可能であればよく、加圧機構(エアシリンダやサーボモータ等)、形式(定置式、ロボットガン等)、電極形状等はとくに限定されない。
 また、電極間の電気特性とは、電極間抵抗または電極間電圧を意味する。
[0037]
 以下、本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法のテスト溶接と本溶接について、説明する。
[0038]
・テスト溶接
 テスト溶接は、2通り以上、好ましくは3通り以上の溶接条件で行うものとし、また、溶接条件ごとに予通電と本通電を行う。
 予通電は、定電流制御により行い、該予通電時における電極間の電気特性を記憶させる。
 ついで、本通電として、定電流制御により通電して適正なナゲットを形成する場合の電極間の電気特性から算出される、単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量を記憶させる。
[0039]
 ここで、複数記憶させるテスト溶接の溶接条件の組み合わせとしては、本溶接で想定される外乱のある状態を模擬して溶接を行う少なくとも1つの溶接条件と、外乱のない状態で溶接を行う溶接条件とを組み合わせることが好ましい。
[0040]
 なお、本溶接で想定される外乱としては、上述したような分流や板隙などの外乱、具体的には、溶接位置(電極中心位置)から40mm以内にある既溶接点や、被溶接材となる鋼板同士の合わせ面における0.2mm以上の隙間などが挙げられる。
[0041]
 例えば、溶接位置から40mm以内に既溶接点があり、その距離が溶接位置ごとに変動することが想定される場合、テスト溶接の一溶接条件では、溶接位置から6~30mm(好適には6~20mm)隔てた箇所に既溶接点がある状態で溶接を行い、別の溶接条件は、外乱のない状態で溶接を行うことが好適である。また、通常、想定されるような溶接位置から既溶接点までの距離の下限は6mm程度である。さらに、テスト溶接において模擬する既溶接点の数は、1点でもよく、また、2点以上でもよい。また、テスト溶接で模擬する既溶接点の数の上限は特に限定されず、想定される既溶接点数のうち、最も多い点数(具体的には、3点程度)とするのが好適である。さらに、テスト溶接で模擬する既溶接点の大きさは、想定される既溶接点の大きさと同程度の大きさとすればよい。
 なお、ここでいう溶接位置と既溶接点との距離は、それぞれの中心間距離である。
[0042]
 加えて、被溶接材となる金属板同士の合わせ面において0.2mm以上の隙間があり、その隙間が溶接位置ごとに変動することが想定される場合、テスト溶接の一溶接条件では、被溶接材となる金属板同士の合わせ面において0.2~3.0mm(好適には0.5~3.0mm)の隙間がある状態で溶接を行い、別の溶接条件では、外乱のない状態で溶接を行うことが好適である。なお、想定される被溶接材となる金属板同士の合わせ面の隙間の上限は、現実的に3.0mm程度である。
 また、金属板同士の合わせ面の隙間とは、電極により加圧される前の溶接位置での金属板同士の合わせ面の隙間(合わせ面間の距離)である。
[0043]
 さらに、想定される外乱の変動状況などによっては、テスト溶接の一溶接条件では上記のとおり既溶接点がある状態で溶接を行い、別の溶接条件では被溶接材となる金属板同士の合わせ面において上記のように隙間がある状態で溶接を行い、さらに別の溶接条件では外乱のない状態で溶接を行うことが好適である。これにより、種々の外乱状態に有効に対応して、適切な時間変化曲線を選択することが可能となる。
[0044]
 また、予通電時の通電パターンは定電流制御であれば特に制限はないが、本溶接の本通電における目標値は、この予通電時の電極間の電気特性等に応じて設定される。よって、テスト溶接における予通電時の通電パターン(溶接電流、通電時間および設定加圧力)は、全ての溶接条件で同じとする。ただし、溶接電流、通電時間および設定加圧力とも、それぞれ5%程度の誤差であれば許容できる。
 ただし、溶接時間の増加や予通電時の過剰発熱を防ぐため、予通電の通電時間Tpは400ms以下とすることが好適である。より好適には200ms以下である。予通電の通電時間Tpの下限は特に限定されないが、10msとすることが好適である。さらに、予通電においてナゲットが形成される場合、形成するナゲット径(mm)は4√t以下(t: 最も薄い鋼板の板厚(mm))とすることが好適である。さらに、予通電とその後の本通電との間には、20ms以上、1000ms以下の通電休止時間Tcを設けることが好適である。
[0045]
 なお、本通電の通電パターンには特に制限はないが、通電パターンを2ステップ以上に分割し、ステップごとに単位体積当たりの累積発熱量を記憶させてもよい。なお、分割するステップ数は、通常、5ステップ以下である。
[0046]
 また、テスト溶接における予通電の設定加圧力は、本通電の設定加圧力と同じとしてもよいが、テスト溶接における予通電の設定加圧力をFp、本通電の設定加圧力をFmとしたとき、
   Fp<Fm
の関係を満足することが好ましい。
[0047]
 すなわち、前述したように、特に鋼板間の板隙が大きい場合には、板厚方向へのナゲット成長が妨げられ、薄肉のナゲットが形成されやすくなる。また、溶融部の体積が減少することで溶接部の固有抵抗が低下しやすくなる。これにより、電極間電圧が低下するが、電極間電圧が低下すると、単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化および単位体積当たりの累積発熱量を目標値として適応制御溶接を行う場合に、溶接制御装置は、発熱量が低下したと認識することになる。このため、実際には適正なナゲット径が得られていたとしても、溶接制御装置が溶接電流を急激に増加させて、散りの発生を招く場合がある。
[0048]
 この点、本発明では、本通電の前に予通電を行い、上記した鋼板間の板隙などの外乱の影響を加味した予通電時の電極間の電気特性から、本溶接の本通電時に目標値とする時間変化曲線等を選択することが重要である。
 しかし、テスト溶接における予通電の設定加圧力Fpを大きく、特に、本通電の設定加圧力Fmよりも大きくすると、板隙がある場合の予通電時の通電状態(具体的には、鋼板-鋼板間の接触径)と、板隙のない場合の予通電時の通電状態が近くなって、外乱の影響が予通電時の電極間の電気特性に十分に反映されず、結果的に、本溶接の本通電時に目標値とする時間変化曲線等を適切に選択することが困難となるおそれがある。
 一方、テスト溶接における予通電の設定加圧力Fpを、本通電の設定加圧力Fmよりも小さくすると、外乱の影響が予通電時の電極間の電気特性に適切に反映され、より適切に、本溶接の本通電時に目標値とする時間変化曲線等を選択することが可能となる。
 このため、Fp<Fmの関係を満足することが好ましい。特には、Fp<0.9×Fmの関係を満足することがより好ましい。Fpの下限は特に限定されないが、0.1×Fmとすることが好適である。
 なお、本通電の設定加圧力Fmは、1.0~10.0kNの範囲とすることが好適である。
[0049]
 また、テスト溶接における予通電の溶接電流をIp、本通電の溶接電流をImとしたとき、予通電時の散り発生を防ぐという観点から、
   Ip<Im
の関係を満足することが好ましい。
 特に、適正電流範囲が狭い高張力鋼板などを溶接する際には
   Ip<0.8×Im
の関係を満足することがより好ましい。
 なお、本通電の通電パターンを2ステップ以上に分割する場合には、Imは全通電ステップの溶接電流の平均値とする。例えば、2ステップに分割する場合、Im=(I1+I2)/2となる。ここで、I1およびI2はそれぞれ、第1および第2通電ステップの溶接電流である。Ipの下限は特に限定されないが、0.2×Imとすることが好適である。
 また、本通電の溶接電流Imは、4.0~12.0kAの範囲とすることが好適である。
[0050]
 上記以外のテスト溶接条件については特に限定されず、被溶接材と同じ鋼種、厚みの予備溶接試験を、外乱のない状態、および上記のような外乱を模擬した状態で、定電流制御にて種々の条件で行うことにより、適宜、設定すればよい。
[0051]
・本溶接
 上記のテスト溶接後、本溶接を行う。
 本溶接では、まず、テスト溶接と同じ通電パターンで定電流制御による予通電を行い、該予通電における電極間の電気特性と、前記テスト溶接の予通電にて記憶させた電極間の電気特性とを前記溶接条件ごとに比較し、その差が最も小さい溶接条件において記憶させたテスト溶接の本通電における単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量を、本溶接における本通電の目標値に設定する。
[0052]
 ここで、既溶接点への分流が生じる場合においては、通常、分流が生じない場合と比較して電極間電圧が低下する。よって、例えば、テスト溶接の各溶接条件の予通電で記憶させた予通電開始から一定時間(100ms)経過するまでの電極間電圧の平均値と、本溶接の予通電開始から100ms経過時点までの電極間電圧の平均値とそれぞれを比較し、その差が最も小さい溶接条件において記憶させた本通電の単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量を、本溶接における本通電の目標値に設定する。
 また、電極間電圧の最大値や時間変化量、または、電極間抵抗の平均値や最大値、時間変化量、または、予通電の累積発熱量などを、本通電における目標値の設定指標としてもよい。
 なお、「テスト溶接と同じ通電パターンで定電流制御による予通電を行う」とは、溶接電流、通電時間および設定加圧力を、テスト溶接の予通電時の溶接電流、通電時間および設定加圧力と同じにして、定電流制御による本溶接の予通電を行うことを意味する。ただし、溶接電流、通電時間および設定加圧力とも、それぞれ5%程度の誤差であれば許容できる。
[0053]
 ついで、本通電として、上記の予通電を経て設定した目標値に従って、通電量を制御する適応制御溶接を行う。
 この本通電の適応制御溶接では、例えば、上記の予通電を経て目標値に設定した単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および累積発熱量を基準として溶接を行い、単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化量が基準である時間変化曲線に沿っている場合には、そのまま溶接を行って溶接を終了する。ただし、単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化量が基準である時間変化曲線から外れた場合には、その外れ量を残りの通電時間内で補償すべく、本溶接の本通電での単位体積当たりの累積発熱量が目標値として設定した単位体積当たりの累積発熱量と一致するように通電量を制御する。
[0054]
 なお、発熱量の算出方法については特に制限はないが、特許文献5にその一例が開示されており、本発明でもこの方法を採用することができる。この方法による単位体積・単位時間当たりの発熱量qおよび単位体積当たりの累積発熱量Qの算出要領は次のとおりである。
 被溶接材の合計厚みをt、被溶接材の電気抵抗率をr、電極間電圧をV、溶接電流をIとし、電極と被溶接材が接触する面積をSとする。この場合、溶接電流は横断面積がSで、厚みtの柱状部分を通過して抵抗発熱を発生させる。この柱状部分における単位体積・単位時間当たりの発熱量qは次式(1)で求められる。
   q=(V・I)/(S・t)   --- (1)
 また、この柱状部分の電気抵抗Rは、次式(2)で求められる。
   R=(r・t)/S       --- (2)
 (2)式をSについて解いてこれを(1)式に代入すると、発熱量qは次式(3)
   q=(V・I・R)/(r・t
    =(V )/(r・t )   --- (3)
となる。
[0055]
 上掲式(3)から明らかなように、単位体積・単位時間当たりの発熱量qは、電極間電圧Vと被溶接物の合計厚みtと被溶接物の電気抵抗率rから算出でき、電極と被溶接物が接触する面積Sによる影響を受けない。なお、(3)式は電極間電圧Vから発熱量を計算しているが、電極間電流Iから発熱量qを計算することもでき、このときにも電極と被溶接物が接触する面積Sを用いる必要がない。そして、単位体積・単位時間当たりの発熱量qを通電期間にわたって累積すれば、溶接に加えられる単位体積当たりの累積発熱量Qが得られる。(3)式から明らかなように、この単位体積当たりの累積発熱量Qもまた電極と被溶接材が接触する面積Sを用いないで算出することができる。
 以上、特許文献5記載の方法によって、累積発熱量Qを算出する場合について説明したが、その他の算出式を用いても良いのは言うまでもない。
[0056]
 また、前述したように、テスト溶接の本通電において通電パターンを2段以上の多段ステップに分割し、当該多段ステップに分割した溶接条件に基づき適応制御溶接の目標値を設定する場合には、本溶接の本通電の適応制御溶接を、テスト溶接において多段ステップに分割した溶接条件と同様に、多段ステップに分割して行う、ステップ毎の適応制御溶接を行うことが好ましい。
[0057]
 ステップ毎の適応制御溶接では、いずれかのステップにおいて、単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化量が基準である時間変化曲線から外れた場合には、その外れ量を当該ステップの残りの通電時間内で補償すべく、当該ステップでの単位体積当たりの累積発熱量が、前記テスト溶接の当該ステップでの単位体積当たりの累積発熱量と一致するように、通電量を制御する。
[0058]
 さらに、本通電の設定加圧力をFm´は、基本的に、本溶接における本通電の目標値に設定したテスト溶接条件と同じとすればよいが、必要に応じて、当該テスト溶接条件と異なる設定加圧力としてもよい。また、本溶接における予通電の設定加圧力をFp´、本通電の設定加圧力をFm´としたとき、
   Fp´<Fm´
の関係を満足することが好ましい。特には、Fp´<0.9×Fm´の関係を満足することがより好ましい。Fp´の下限は特に限定されないが、0.1×Fm´とすることが好適である。
 なお、本通電の設定加圧力Fm´は、1.0~10.0kNの範囲とすることが好適である。
[0059]
 なお、使用する被溶接材は特に制限はなく、軟鋼から超高張力鋼板までの各種強度を有する鋼板およびめっき鋼板、アルミ合金などの軽金属板の溶接にも適用でき、3枚以上の鋼板を重ねた板組みにも適用できる。
[0060]
 また、ナゲット形成のための通電の後に、溶接部の熱処理のための後通電を加えてもよい。この場合、通電条件は特に限定されず、それ以前のステップの溶接電流との大小関係も特に限定されない。さらに、アップスロープ状やダウンスロープ状の通電パターンとしてもよい。加えて、通電中の加圧力は一定であってもよいし、適宜、変化させてもよい。
[0061]
 そして、上記した抵抗スポット溶接方法を用いて重ね合わせた複数枚の金属板を接合することで、外乱の状態の変動に有効に対応して所望のナゲット径を安定的に確保しつつ、種々の溶接部材、特には、自動車部品等の溶接部材が製造される。
実施例
[0062]
 表1に示す2枚重ねまたは3枚重ねの金属板の板組みについて、表1に示す条件でテスト溶接を行い、ついで、表2に示す2枚重ねまたは3枚重ねの金属板の板組みについて、表2に示す条件で本溶接を行い、溶接継手を作製した。
 ここで、テスト溶接および本溶接は、図1および図2に示すような外乱のない状態、ならびに、図3~6に示すような外乱を模擬した状態で行った。図中、符号11、12および13は金属板、14は電極、15はスペーサ、16は既溶接点である。なお、図3および図4に示すように、既溶接点16は2点とし、溶接位置(電極間中心)が既溶接点同士の中間(既溶接点との距離Lがそれぞれ同じ)となるように調整した。また、図5および図6では、金属板11-12間および金属板12-13間にスペーサ15を挿入し、上下からクランプすることで(図示せず)、種々の板隙厚さtgとなる板隙を設けた。なお、板隙間距離はいずれも40mmとした。
 また、テスト溶接では、図7~10に示すような通電・加圧パターンで、溶接条件ごとに定電流制御にて予通電と本通電を行った。ただし、表1のテスト溶接No.Dでは、予通電を行わなかった。
[0063]
 さらに、本溶接では、まず、テスト溶接と同じ通電パターンで定電流制御による予通電を行い、本通電の目標値の設定指標とする電極間電圧(平均値)について、本溶接の予通電における数値と、テスト溶接の予通電にて記憶させた数値とを溶接条件(表2に示す比較したテスト溶接No.)ごとに比較し、その差が最も小さい溶接条件において記憶させた単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量を、本溶接における本通電の目標値に設定し、ついで、本通電として、該目標値に従って、通電量を制御する適応制御溶接を行った。ただし、表2のNo.3では、予通電を行わなかった。また、本通電における通電時間や加圧力、予通電と本通電との間の通電休止時間などといった条件は、テスト溶接と本溶接とで同じである。また、多段ステップに分割したテスト溶接条件に基づき適応制御溶接の目標値を設定する場合には、本溶接の本通電における適応制御溶接でもステップ毎の適応制御溶接を行った。
 なお、溶接機にはインバータ直流抵抗スポット溶接機を用い、電極にはDR形先端径6mmのクロム銅電極を用いた。
[0064]
 得られた各継手について、溶接部を切断し断面をエッチング後、光学顕微鏡により観察し、金属板間に形成されたナゲット径が目標径である4.5√t´以上(t´:隣り合う2枚の金属板のうち薄い方の金属板の板厚(mm))であり、かつ散りが発生しなかった場合を○と評価した。一方、ナゲット径が4.5√t´未満であるか、散りが発生した場合を×と評価した。なお、3枚重ねの板組みの場合は、最も薄い外側の金属板と、これに隣接する金属板との間に形成されたナゲット径により、評価を行った。
[0065]
[表1]




[0066]
[表2]




[0067]
 発明例ではいずれも、外乱の状態によらず、散りの発生なく、4.5√t´以上の径を有するナゲットが得られた。一方、比較例では、外乱のない状態では散りの発生なく、4.5√t´以上の径を有するナゲットが得られたものの、外乱の影響が大きくなった場合には、散りが発生するか、または、十分な径のナゲットが形成されなかった。
[0068]
 また、テスト溶接の予通電において電極間抵抗の平均値を記憶させ、本溶接の予通電における電極間抵抗の平均値と、テスト溶接の予通電にて記憶させた電極間抵抗の平均値とを溶接条件ごとに比較して、本溶接の本通電において適応制御溶接の行う際の瞬時発熱量の時間変化曲線および累積発熱量の目標値を設定した場合も、上記と同じ結果が得られた。

符号の説明

[0069]
 11,12,13:金属板
 14:電極
 15:スペーサ
 16:既溶接点

請求の範囲

[請求項1]
 複数枚の金属板を重ね合わせた被溶接材を、一対の電極によって挟み、加圧しながら通電して接合する抵抗スポット溶接方法であって、
 本溶接と、該本溶接に先立つテスト溶接とを行うとともに、該テスト溶接を2通り以上の溶接条件で行うものとし、
 前記テスト溶接では、前記溶接条件ごとに、
  同じ通電パターンで定電流制御による予通電を行うとともに、該予通電時における電極間の電気特性を記憶させ、
  ついで、本通電では、定電流制御により通電し、適正なナゲットが形成される場合の電極間の電気特性から算出される、単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量を記憶させ、
 さらに、前記本溶接では、
  前記テスト溶接と同じ通電パターンで定電流制御による予通電を行い、該予通電における電極間の電気特性と、前記テスト溶接の予通電にて記憶させた電極間の電気特性とを前記溶接条件ごとに比較し、その差が最も小さい溶接条件において記憶させた前記テスト溶接の本通電における単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および単位体積当たりの累積発熱量を、本溶接における本通電の目標値に設定し、
  ついで、本通電として、該目標値に従って、通電量を制御する適応制御溶接を行う、
抵抗スポット溶接方法。
[請求項2]
 前記適応制御溶接において、前記目標値として設定した単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線および累積発熱量を基準として溶接を行い、単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化量が基準である時間変化曲線から外れた場合には、その外れ量を残りの通電時間内で補償すべく、前記本溶接の本通電での単位体積当たりの累積発熱量が前記目標値として設定した単位体積当たりの累積発熱量と一致するように通電量を制御する、請求項1に記載の抵抗スポット溶接方法。
[請求項3]
 前記テスト溶接において、少なくとも1つの溶接条件では外乱を模擬して溶接を行い、別の溶接条件では外乱のない状態で溶接を行う、請求項1または2に記載の抵抗スポット溶接方法。
[請求項4]
 前記テスト溶接を3通り以上の溶接条件で行う、請求項1~3のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法。
[請求項5]
 前記テスト溶接における予通電の設定加圧力をFp、本通電の設定加圧力をFmとしたとき、
   Fp<Fm
の関係を満足する、請求項1~4のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法。
[請求項6]
 請求項1~5のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法により、重ね合わせた複数枚の金属板を接合する、溶接部材の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]