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1. (WO2019035335) 核酸の回収方法、核酸結合用担体および核酸回収キット
Document

明 細 書

発明の名称 核酸の回収方法、核酸結合用担体および核酸回収キット

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

非特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008  

発明の効果

0009  

図面の簡単な説明

0010  

発明を実施するための形態

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056  

実施例

0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 核酸の回収方法、核酸結合用担体および核酸回収キット

技術分野

[0001]
 本発明は、核酸の回収方法、核酸結合用担体および核酸回収キットに関する。

背景技術

[0002]
 従来、感染症診断キットとしては、タンパク質(抗原、抗体等)を対象としたものが用いられている。しかし、インフルエンザ等の一部の感染症を除いて精度が低いこと、抗体を対象とする場合には過去の感染による偽陽性等の問題がある。そこで近年、核酸を対象とする感染症診断キットが検討されている。核酸を対象とすることで、精度の向上が期待される。
[0003]
 生物試料である検体には種々の成分が含まれており、診断を行うには検体から核酸を単離する必要がある。
 生物試料から核酸を単離する方法として、シリカを含む担体に核酸を吸着または結合させ、洗浄により核酸以外の成分を除去した後、担体から核酸を溶出させる方法が知られている。この方法を使用した核酸精製キットは既に実用化されており、担体としてはシリカメンブレンが汎用されている(例えば、非特許文献1~3)。また、単離操作の簡便化、自動化のために、磁性体の表面を多孔質シリカで被覆した磁性シリカ粒子を担体として用いることが提案されている(例えば、特許文献1)。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 日本特開2000-300262号公報

非特許文献

[0005]
非特許文献1 : 「核酸精製キット」(カタログ)、[online]、日本ジェネティクス株式会社、[平成29年6月26日検索]、インターネット〈URL: http://www.sns-kk.co.jp/data/pdf/2012_6/2011769944.pdf〉
非特許文献2 : 「DNAクリーンアップ」(カタログ)、[online]、タカラバイオ株式会社、[平成29年6月26日検索]、インターネット〈URL: http://www.takara-bio.co.jp/goods/catalog/pdf/mach2012_15-28.pdf〉
非特許文献3 : 「Genomic DNA from blood」(カタログ)、[online]、Macherey-Nagel社、[平成29年6月26日検索]、インターネット〈URL: http:www.mn-net.com/.../8/.../Genomic%20DNA/UM_gDNABlood.pdf〉

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 しかし、従来の核酸の単離方法は、核酸の抽出率が必ずしも高くなく、特に10 bp以上の長さの核酸の場合、抽出できないか、抽出できても抽出率が低い、などの課題があった。また、抽出率が低いと、高価な装置を用いて長時間の増幅処理を行う必要があり、実施できる施設が限定され、時間もかかるという課題もあった。
[0007]
 本発明の目的は、核酸が長い場合でも、簡便な操作により高回収率で核酸を回収する方法、前記回収方法に好適に用いられる核酸結合用担体および核酸回収キットを提供することにある。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明は、以下の〔1〕~〔16〕の態様を有する、核酸の回収方法、核酸結合用担体および核酸回収キットを提供する。
 〔1〕体積基準での粒度分布のD 50が6~50μmであり、BJH法により求めた細孔容積が0.3~5cm /gであり、BJH法により求めた平均細孔径が60~500Åである多孔質シリカ粒子(以下、多孔質シリカ粒子Iともいう)に核酸を結合させて複合体を形成し、
 前記複合体から前記核酸を溶出させ、回収することを特徴とする、核酸の回収方法。
 〔2〕体積基準での粒度分布のD 50が6~50μmであり、水銀ポロシメータにより求めた細孔容積が0.6~5cm /gであり、水銀ポロシメータにより求めた平均細孔径が200~5000Åである多孔質シリカ粒子(以下、多孔質シリカ粒子IIともいう)に核酸を結合させて複合体を形成し、
 前記複合体から前記核酸を溶出させ、回収することを特徴とする、核酸の回収方法。
 〔3〕前記多孔質シリカ粒子の体積基準での粒度分布のD 90/D 10が10以下である、〔1〕または〔2〕に記載の核酸の回収方法。
 〔4〕前記多孔質シリカ粒子の比表面積が150~1000m /gである、〔1〕または〔3〕に記載の核酸の回収方法。
 〔5〕前記多孔質シリカ粒子の比表面積が8~400m /gである、〔2〕または〔3〕に記載の核酸の回収方法。
 〔6〕前記多孔質シリカ粒子のシリカ純度が90質量%以上である、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の核酸の回収方法。
 〔7〕カオトロピック物質溶液の存在下で、前記多孔質シリカ粒子に前記核酸を結合させる、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の核酸の回収方法。
 〔8〕前記複合体から前記核酸を溶出させる前に、前記複合体を洗浄する、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の核酸の回収方法。
 〔9〕前記核酸の長さが10 ~10 11bpである、〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の核酸の回収方法。
 〔10〕体積基準での粒度分布のD 50が6~50μmであり、BJH法により求めた細孔容積が0.3~5cm /gであり、BJH法により求めた平均細孔径が60~500Åである多孔質シリカ粒子を含有することを特徴とする核酸結合用担体。
 〔11〕体積基準での粒度分布のD 50が6~50μmであり、水銀ポロシメータにより求めた細孔容積が0.6~5cm /gであり、水銀ポロシメータにより求めた平均細孔径が200~5000Åである多孔質シリカ粒子からなることを特徴とする核酸結合用担体。
 〔12〕体積基準での粒度分布のD 50が6~50μmであり、BJH法により求めた細孔容積が0.3~5cm /gであり、BJH法により求めた平均細孔径が60~500Åである多孔質シリカ粒子を収容した第1の容器と、
 核酸を前記多孔質シリカ粒子に結合させる結合液を収容した第2の容器と、を備えることを特徴とする核酸回収キット。
 〔13〕体積基準での粒度分布のD 50が6~50μmであり、水銀ポロシメータにより求めた細孔容積が0.6~5cm /gであり、水銀ポロシメータにより求めた平均細孔径が200~5000Åである多孔質シリカ粒子を収容した第1の容器と、
 核酸を前記多孔質シリカ粒子に結合させる結合液を収容した第2の容器と、を備えることを特徴とする核酸回収キット。
 〔14〕前記結合液がカオトロピック物質溶液である、〔12〕または〔13〕に記載の核酸回収キット。
 〔15〕前記多孔質シリカ粒子と前記核酸とが結合した複合体から前記核酸を溶出させる溶出液を収容した第3の容器をさらに備える、〔12〕~〔14〕のいずれか一項に記載の核酸回収キット。
 〔16〕前記多孔質シリカ粒子と前記核酸とが結合した複合体を洗浄する洗浄液を収容した第4の容器をさらに備える、〔12〕~〔15〕のいずれか一項に記載の核酸回収キット。

発明の効果

[0009]
 本発明の核酸の回収方法によれば、核酸が長い場合でも、簡便な操作により高回収率で核酸を回収できる。
 本発明の核酸結合用担体および核酸回収キットはそれぞれ、前記回収方法に好適に用いることができる。

図面の簡単な説明

[0010]
[図1] 実施例Aの例1~10における多孔質シリカ粒子IのD 50とDNA回収率との関係を示すグラフである。
[図2] 実施例Aの例1~10における多孔質シリカ粒子IのD 90/D 10とDNA回収率との関係を示すグラフである。
[図3] 実施例Aの例1~10における多孔質シリカ粒子Iの細孔容積とDNA回収率との関係を示すグラフである。
[図4] 実施例Aの例1~10における多孔質シリカ粒子Iの平均細孔径とDNA回収率との関係を示すグラフである。
[図5] 実施例Aの例1~10における多孔質シリカ粒子Iの比表面積(SSA)とDNA回収率との関係を示すグラフである。
[図6] 実施例Bの例12~26における多孔質シリカ粒子IIのD 50とDNA回収率との関係を示すグラフである。
[図7] 実施例Bの例12~26における多孔質シリカ粒子IIのD 90/D 10とDNA回収率との関係を示すグラフである。
[図8] 実施例Bの例12~26における多孔質シリカ粒子IIの細孔容積とDNA回収率との関係を示すグラフである。
[図9] 実施例Bの例12~26における多孔質シリカ粒子IIの平均細孔径とDNA回収率との関係を示すグラフである。
[図10] 実施例Bの例12~26における多孔質シリカ粒子IIの比表面積(SSA)とDNA回収率との関係を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0011]
 本明細書における以下の用語の意味は、以下の通りである。
 「D 50」は、体積基準での粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径である。
 「D 10」は、体積基準での粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線において10%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積10%径である。
 「D 90」は、体積基準での粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線において90%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積90%径である。
[0012]
 「体積基準での粒度分布」は、レーザー散乱粒度分布測定装置(たとえば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置等)で測定した頻度分布および累積体積分布曲線から求められる。測定は、粉末を水媒体中に超音波処理等で充分に分散させて行われる。
 「BJH法により求めた細孔容積」とは、BJH法によって吸着等温線から求めた細孔容積である。吸着等温線の測定では、吸着ガスとして窒素ガスを用いる。
 「BJH法により求めた平均細孔径」とは、BJH法によって吸着等温線から求めた平均細孔径である。吸着等温線の測定では、吸着ガスとして窒素ガスを用いる。
 「BJH法」とは、吸着等温線から細孔径分布を求める方法の一つである、Barrett,JoynerおよびHalendaによるメソ細孔径分布の決定法である。
[0013]
 「水銀ポロシメータにより求めた細孔容積」とは、水銀ポロシメータを用いて測定した細孔容積である。
 「水銀ポロシメータにより求めた平均細孔径」とは、水銀ポロシメータを用いて測定した平均細孔径である。
 水銀ポロシメータによる細孔容積または平均細孔径の測定において、水銀の物性値には接触角140°、表面張力480dynes/cm、密度13.5335g/mLを用いる。測定条件は圧力50mmHg、真空引き時間5分、注入圧力1.49psi、平衡時間10秒とする。
 「比表面積」とは、BET(Brunauer,Emmet,Teller)法によって吸着等温線から求めた比表面積である。吸着等温線の測定では、吸着ガスとして窒素ガスを用いる。
 「シリカ純度」は、多孔質シリカ粒子の総質量に対するシリカ(SiO )の質量の割合である。シリカ純度は、医薬部外品原料規格2006「無水ケイ酸」定量法により測定される。
 数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
[0014]
〔核酸の回収方法〕
 本発明の核酸の回収方法は、以下の結合工程および溶出工程を有する。結合工程の後、溶出工程の前に、以下の洗浄工程をさらに有してもよい。
 結合工程:多孔質シリカ粒子Iまたは多孔質シリカ粒子IIに核酸を結合させて複合体を形成する工程。
 洗浄工程:前記複合体を洗浄する工程。
 溶出工程:前記複合体から核酸を溶出させ、回収する工程。
[0015]
(多孔質シリカ粒子)
 本発明の核酸の回収方法において多孔質シリカ粒子は、核酸結合用担体として用いられる。多孔質シリカ粒子は、その表面にシリカが存在している。多孔質シリカ粒子は、シリカ以外の成分(以下、他の成分ともいう)をさらに含んでもよい。
[0016]
 多孔質シリカ粒子のシリカ純度は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が特に好ましい。シリカ純度の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
 特許文献1の記載のように、他の成分が多孔質シリカ粒子に含まれる場合、核酸の回収時に多孔質シリカ粒子から他の成分が溶出して測定に悪影響を及ぼすことがある。また、磁性体の表面を多孔質シリカで被覆した磁性シリカ粒子は、原料や製造にコストがかかり、高価である。
 シリカ純度が前記下限値以上であれば、核酸の回収時に多孔質シリカ粒子から他の成分が溶出したとしても測定に悪影響を及ぼしにくく、また安価である。
 多孔質シリカ粒子は、コスト、耐薬性の点から、磁性シリカ粒子ではないことが好ましい。例えば粒子全体が多孔質シリカからなる粒子であってもよい。
[0017]
 多孔質シリカ粒子の体積基準での粒度分布において、D 50は6~50μmであり、6~45μmが好ましく、7~30μmが特に好ましい。D 50が前記範囲内であれば、核酸回収率が優れる。
 D 90/D 10は、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下が特に好ましい。D 90/D 10が前記上限値以下であれば、核酸回収率がより優れる。D 90/D 10の下限は特に限定されず、例えば1であってもよい。
 D 90は、例えば10~100μmであり、D 10は、例えば1~50μmである。
[0018]
 多孔質シリカ粒子Iの細孔容積は、BJH法により求めた細孔容積であり、その範囲は0.3~5cm /gであり、0.4~3cm /gが好ましく、0.5~2.5cm /gが特に好ましい。
 また、多孔質シリカ粒子IIの細孔容積は、水銀ポロシメータにより求めた細孔容積であり、その範囲は0.6~5cm /gであり、0.6~4cm /gが好ましく、0.6~2.5cm /gが特に好ましい。細孔容積が前記下限値以上であれば、核酸回収率が優れる。細孔容積が前記上限値以下であれば、洗浄性が優れる。
[0019]
 多孔質シリカ粒子Iの平均細孔径は、BJH法により求めた平均細孔径であり、その範囲は60~500Åであり、60~450Åが好ましく、90~450Åが特に好ましい。多孔質シリカ粒子Iの平均細孔径が前記下限値以上であれば、核酸回収率が優れる。平均細孔径が前記上限値以下であれば、短い核酸に対しても回収率が優れる。
 また、多孔質シリカ粒子IIの平均細孔径は、水銀ポロシメータにより求めた平均細孔径であり、その範囲は200~5000Åであり、200~4000Åが好ましく、200~2500Åが特に好ましい。多孔質シリカ粒子IIの平均細孔径が前記下限値以上上限値以下であれば、核酸回収効率が優れる。
[0020]
 多孔質シリカ粒子Iの比表面積は、BET法により求めた比表面積であり、150~1000m /gが好ましく、150~800m /gがより好ましく、170~650m /gが特に好ましい。
 また、多孔質シリカ粒子IIの比表面積は、BET法により求めた比表面積であり、8~400m /gが好ましく、8~350m /gがより好ましく、8~300m /gが特に好ましい。比表面積が前記下限値以上であれば、核酸回収率がより優れ、前記上限値以下であれば、洗浄性が優れる。
[0021]
 多孔質シリカ粒子は、市販の多孔質シリカ粒子のなかから所望の特性(D 50、細孔容積、平均細孔径等)を満たすものを適宜選択して用いることができる。
[0022]
(核酸)
 核酸は、DNA(デオキシリボ核酸)およびRNA(リボ核酸)の総称である。
 多孔質シリカ粒子に結合させる核酸の種類は、特に限定されず、DNAであってもよく、RNAであってもよく、それらの混合物であってもよい。DNAおよびRNAの種類や構造は特に限定されない。例えばDNAは1本鎖DNAであってもよく2本鎖DNAであってもよい。
 核酸は、真核生物(動物、植物、昆虫、線虫、酵母、カビ等)由来の核酸であってもよく、原核生物(大腸菌、枯草菌、ラン藻、マイコプラズマ等のバクテリア)由来の核酸であってもよく、無生物(ウイルス、葉緑体、ミトコンドリア等)由来の核酸であってもよい。
[0023]
 核酸の長さは、10~10 11bpが好ましく、10 ~10 11bpがより好ましく、10 ~10 bpが特に好ましい。
 従来のシリカメンブレンを用いた核酸精製キットで対象とされる核酸の長さは通常10 bp以下である。核酸が長くなるにつれて、回収率が低くなり、特に10 bp以上になると、回収率がより低くなる。これは、核酸が長くなるにつれて、核酸が担体に強固に結合し、溶出しにくくなるためと考えられる。
 本発明の回収方法によれば、長さが10 bp以上の核酸であっても優れた回収率で回収できる。そのため、核酸の長さが10 bp以上である場合に特に本発明の有用性が高い。核酸の長さが10 11bp以下であれば、核酸回収率がより優れる。
 なお、天然に存在する長さ10 ~10 11bpの核酸はDNAである。
[0024]
(結合工程)
 結合工程では、多孔質シリカ粒子に核酸を結合させて複合体を形成する。
 結合工程は、担体として前記多孔質シリカ粒子を用いる以外は、公知の方法を使用して実施できる。
 多孔質シリカ粒子に核酸を結合させる方法の一例として、核酸を含む試料と、結合液とを混合して混合液(以下、第1混合液ともいう)を得て、前記第1混合液と多孔質シリカ粒子とを接触させる方法が挙げられる。
[0025]
 核酸を含む試料としては通常、生物試料が用いられる。生物試料としては、例えば血液、血清、穿刺液、気道ぬぐい液、尿、糞便、膿、毛髪、爪等が挙げられる。
[0026]
 結合液は、核酸を前記多孔質シリカ粒子に結合させる作用を有する液である。結合液の作用により、試料中の核酸が多孔質シリカ粒子に結合する。
 結合液としては、好ましくは、カオトロピック物質溶液が用いられる。したがって、結合工程では、好ましくは、カオトロピック物質溶液の存在下で多孔質シリカ粒子に核酸を結合させる。
[0027]
 カオトロピック物質は、水等の溶媒中でカオトロピックイオンを生成する。カオトロピックイオンの作用によって、核酸と多孔質シリカ粒子とが結合しやすくなる。また、カオトロピックイオンは、タンパク質や核酸の一次構造を変えることなく二次、三次、四次構造を変えることができる。そのため、生物試料とカオトロピック物質溶液とを混合することで、生物試料中の核酸を含む細胞等を破壊し、核酸を溶離させることができる。したがって、カオトロピック物質溶液は、生物試料中の細胞等から核酸を溶離させる溶離液としても機能する。
[0028]
 カオトロピック物質としては、例えば、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン塩酸塩、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、過塩素酸ナトリウム、尿素等が挙げられる。カオトロピック物質は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのうち、カオトロピック効果の強さ、リボヌクレアーゼ等の核酸分解酵素に対する阻害効果の大きさから、グアニジンチオシアン酸塩またはグアニジン塩酸塩が好ましい。
[0029]
 結合液のカオトロピック物質濃度は、充分なカオトロピック効果が得られればよく、カオトロピック物質に応じて適宜設定されるが、好ましくは1.0~8.0Mであり、カオトロピック物質がグアニジン塩酸塩である場合は、4.0~7.5Mが好ましく、カオトロピック物質がグアニジンチオシアン酸塩である場合には、3.0~5.5Mが好ましい。
[0030]
 結合液は、緩衝剤を含むことが好ましい。緩衝剤としては、一般に使用されるものであればよく、特に限定されないが、中性付近、すなわちpH5.0~9.0において緩衝能を有するものが好ましく、例えば、トリス-塩酸緩衝液、TE緩衝液(トリスおよびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有)、四ホウ酸ナトリウム-塩酸緩衝液、リン酸二水素カリウム-四ホウ酸ナトリウム緩衝液等が挙げられる。
 結合液の緩衝剤濃度は、固形分換算で、1~500mMが好ましい。また、結合液のpHは、6.0~9.0が好ましい。pHは、25℃における値である。
[0031]
 結合液は、細胞膜の破壊、細胞中に含まれるタンパク質を変性させる目的で、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤としては、一般に細胞等からの核酸抽出に使用されるものであればよく、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤(例えばトリトン系界面活性剤)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤(例えばTween系界面活性剤)等の非イオン界面活性剤、N-ラウロイルサルコシンナトリウム等の陰イオン界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
 結合液の界面活性剤濃度は、例えば非イオン界面活性剤の場合は、1~500mMが好ましい。
[0032]
 結合液は、試料中に含まれるタンパク質、特にリボヌクレアーゼを変性、失活させる目的で、還元剤をさらに含んでもよい。還元剤としては、一般に細胞等からの核酸抽出に使用されるものであればよく、特に限定されないが、例えば、2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール等が挙げられる。
[0033]
 試料と結合液とを混合する際、アルコールをさらに混合してもよい。アルコールによって、核酸の不溶化を促進することができる。アルコールとしては、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。
 結合液に予めアルコールを含有させてもよい。
[0034]
 試料および結合液とともにアルコールを混合する場合、試料および結合液と混合するアルコールの量としては、例えば、第1混合液中のアルコールの含有量が、試料に対して10~90質量%となる量である。
 混合時の温度条件は、例えば4~80℃である。混合時間は、混合方法によっても異なるが、例えば0.1~60分間である。
[0035]
 第1混合液と多孔質シリカ粒子とを接触させる前に、第1混合液に対し、核酸以外の成分(固形の夾雑物等)の低減等のために、遠心分離等の前処理を行ってもよい。遠心分離の条件は、例えば100~20000rpmで0.1~60分間である。
[0036]
 第1混合液と多孔質シリカ粒子との接触方法としては、例えば、第1混合液と多孔質シリカ粒子とを混合して混合液(以下、第2混合液ともいう)を得て、第2混合液から多孔質シリカ粒子(すなわち複合体)を回収する方法(以下、方法(1)ともいう)、または多孔質シリカ粒子が容器外に流出しないように保持された通液可能な容器(例えばカラム等)に第1混合液を通液する方法(以下、方法(2)ともいう)等が挙げられる。
 第1混合液と多孔質シリカ粒子とを接触させる際の、接触温度は、例えば4~80℃であり、接触時間は、例えば0.1~60分間である。
[0037]
 方法(1)において、第1混合液と混合する多孔質シリカ粒子の量は、第1混合液100質量部に対して好ましくは2~200質量部である。
 第1混合液と多孔質シリカ粒子とを混合した時点から、多孔質シリカ粒子を第2混合液から回収するまでの時間が接触時間に相当する。この間、第2混合液に対し、撹拌等を行ってもよい。
 第2混合液から多孔質シリカ粒子を回収する方法としては、遠心分離、ろ過等の各種の固液分離方法を利用できる。一例として、フィルタによって上下に区画された容器の上部に第2混合液を入れ、遠心、吸引等により通液させ、フィルタ上に残った多孔質シリカ粒子を回収する方法が挙げられる。
[0038]
 方法(2)は、例えば、前記容器に第1混合液を入れ、任意の時間(接触時間)保持した後、容器から排出する方法であってよい。
 容器に入れる第1混合液の量は、例えば多孔質シリカ粒子100質量部に対し、好ましくは50~5000質量部である。
 第1混合液を容器内に保持している間に、撹拌等を行ってもよい。
 第1混合液を容器から排出させる方法としては、特に限定されず、例えば遠心、吸引、等が挙げられる。
[0039]
(洗浄工程)
 洗浄工程では、結合工程で得た、多孔質シリカ粒子と核酸とが結合した複合体を洗浄する。
 複合体には核酸以外の成分(タンパク質、糖類、脂質等)が付着していることがある。複合体を洗浄することで、核酸以外の成分を低減できる。洗浄を行う回数は1回でもよく2回以上でもよい。
[0040]
 洗浄に用いる洗浄液としては、複合体から核酸を溶出させず、かつ核酸以外の成分の脱離を促進できるものであれば特に限定されない。洗浄液としては、例えば、カオトロピック物質溶液、アルコール、その水溶液等が挙げられる。
 カオトロピック物質溶液としては、前述の結合液で挙げたものと同様であってよく、例えば4.0~7.5Mのグアニジン塩酸塩溶液が挙げられる。カオトロピック物質溶液は、緩衝剤、界面活性剤、還元剤等を含んでいてもよい。
 上記アルコールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロパノールまたはブタノール等が好ましく、エタノールが特に好ましい。アルコールまたはその水溶液のアルコール濃度は、40~100質量%が好ましく、60~100質量%がより好ましい。アルコール濃度が前記下限値以上であれば、核酸が溶出しにくい。
[0041]
 洗浄液として、カオトロピック物質溶液と、アルコールまたはその水溶液とを併用してもよい。例えばカオトロピック物質溶液による洗浄を行った後に、アルコールまたはその水溶液による洗浄を行ってもよい。
 洗浄液として、アルコール濃度が互いに異なる2種以上のアルコールまたはその水溶液を併用してもよい。
[0042]
 複合体の洗浄方法としては、特に限定されない。例えば、結合工程で前記方法(1)で回収した複合体と洗浄液とを混合して混合液(以下、第3混合液ともいう)を得て、第3混合液から複合体を回収する方法(以下、方法(1’)ともいう)、または結合工程で前記方法(2)で第1混合液を排出した後の容器に洗浄液を通液する方法(以下、方法(2’)ともいう)等が挙げられる。
 洗浄時の温度条件は、好ましくは4~80℃である。
 1回あたりの洗浄時間は、好ましくは0.1~60分間である。
[0043]
 方法(1’)において、1回の洗浄で複合体と混合する洗浄液の量は、好ましくは複合体100質量部に対して10~10000質量部である。
 複合体と洗浄液とを混合した時点から、複合体を第3混合液から回収するまでの時間が洗浄時間に相当する。この間、第2混合液に対し、撹拌等を行ってもよい。
 第3混合液から複合体を回収する方法としては、第2混合液から多孔質シリカ粒子を回収する方法と同様の方法が挙げられる。
[0044]
 方法(2’)は、例えば、前記容器に洗浄液を入れ、任意の時間(洗浄時間)保持した後、容器から排出する方法であってもよい。
 容器に入れる洗浄液の量は、複合体100質量部に対し、好ましくは10~10000質量部である。
 洗浄液を容器内に保持している間に、撹拌等を行ってもよい。
 洗浄液を容器から排出させる方法としては、容器から第1混合液を排出させる方法と同様の方法が挙げられる。
[0045]
 洗浄後、必要に応じて、複合体を乾燥させてもよい。乾燥方法としては、例えば恒温槽等が挙げられる。乾燥条件としては、好ましくは、乾燥温度が30~80℃であり、乾燥時間が0.1~3000分間である。
[0046]
(溶出工程)
 溶出工程では、結合工程後または洗浄工程後の複合体から核酸を溶出させ、核酸を回収する。溶出を行う回数は1回でもよく2回以上でもよい。
 溶出工程は、公知の方法を利用して実施できる。例えば、複合体と溶出液とを接触させ、その後、溶出液を回収する方法が挙げられる。
 溶出液は、多孔質シリカ粒子に結合した核酸を溶出させる作用を有する液である。溶出液の作用によって、複合体から核酸が溶出し、核酸を含む溶出液が得られる。
 溶出液としては、例えば、水、TE緩衝液(10mMトリス-塩酸塩、1.0mM EDTA、pH8.0)等が挙げられる。
[0047]
 複合体と溶出液とを接触させ、その後、溶出液を回収する方法としては、特に限定されない。例えば、結合工程で前記方法(1)で回収した複合体または洗浄工程で前記方法(1’)で洗浄した複合体と、溶出液とを混合して混合液(以下、第4混合液ともいう)を得て、第4混合液から、核酸を溶出させた複合体(すなわち多孔質シリカ粒子)を除去する方法(以下、方法(1”)ともいう)、結合工程で前記方法(2)で第1混合液を排出した後の容器または洗浄工程で前記の方法(2’)で洗浄液を排出した後の容器に、溶出液を通液する方法(以下、方法(2”)ともいう)等が挙げられる。
 複合体と溶出液との接触時の接触温度は、好ましくは4~80℃であり、接触時間は、好ましくは0.1~60分間である。
[0048]
 方法(1”)において、複合体と混合する溶出液の量は、例えば複合体100質量部に対して10~10000質量部である。
 複合体と溶出液とを混合した時点から、多孔質シリカ粒子を第4混合液から回収するまでの時間が接触時間に相当する。この間、第4混合液に対し、撹拌等を行ってもよい。
 第4混合液から多孔質シリカ粒子を除去する方法としては、遠心分離、ろ過等の各種の固液分離方法を利用できる。
[0049]
 方法(2”)は、例えば、前記容器に溶出液を入れ、任意の時間(接触時間)保持した後、容器から排出する方法であってよい。
 容器に入れる溶出液の量は、例えば複合体100質量部に対し、10~10000質量部である。
 溶出液を容器内に保持している間に、撹拌等を行ってもよい。
 溶出液を容器から排出させる方法としては、容器から第1混合液を排出させる方法と同様の方法が挙げられる。
[0050]
 本発明にあっては、核酸結合用担体として、D 50が6~50μmであり、BJH法により求めた細孔容積が0.3~5cm /gであり、BJH法により求めた平均細孔径が60~500Åである多孔質シリカ粒子、またはD 50が6~50μmであり、水銀ポロシメータにより求めた細孔容積が0.6~5cm /gであり、水銀ポロシメータにより求めた平均細孔径が200~5000Åである多孔質シリカ粒子を用いているため、核酸が長い場合でも、高回収率で核酸を回収できる。また、多孔質シリカ粒子に核酸を結合させ、溶出させるだけで核酸を回収でき、操作が簡便である。
 前記多孔質シリカ粒子にあっては、D 50、細孔容積および平均細孔径が前記範囲内であることで、結合工程での多孔質シリカ粒子への核酸の結合効率、および溶出工程での複合体からの核酸の溶出効率が共に優れるため、核酸を高回収率で回収できる。
 結合効率が高い理由としては、多孔質シリカ粒子の表面に開口した細孔に核酸の一部が嵌まりやすいことが考えられる。溶出効率が高い理由としては、多孔質シリカ粒子の表面に開口した細孔によって核酸との接触面積が相対的に少なくなっていること、個々の細孔が複数箇所に開口していることで、細孔に嵌まった核酸が脱離する際に細孔内から溶出液が回り込み、核酸が脱離しやすいこと等が考えられる。
[0051]
〔核酸回収キット〕
 本発明の核酸回収キットは、上述した多孔質シリカ粒子を収容した第1の容器と、核酸を前記多孔質シリカ粒子に結合させる結合液を収容した第2の容器と、を備える。
 本発明の核酸回収キットは、必要に応じて、前記多孔質シリカ粒子と前記核酸とが結合した複合体から前記核酸を溶出させる溶出液を収容した第3の容器をさらに備えていてもよい。
 本発明の核酸回収キットは、必要に応じて、前記多孔質シリカ粒子と前記核酸とが結合した複合体を洗浄する洗浄液を収容した第4の容器をさらに備えていてもよい。
[0052]
 本発明の核酸回収キットは、上述した本発明の核酸の回収方法に用いることができる。例えば第1の容器に収容された多孔質シリカ粒子と、第2の容器に収容された結合液とを用いて、結合工程を実施できる。
 第3の容器をさらに備えている場合は、第3の容器に収容された溶出液を用いて、溶出工程をさらに実施できる。
 第4の容器をさらに備えている場合は、第4の容器に収容された洗浄液を用いて、洗浄工程をさらに実施できる。
[0053]
 第1の容器に収容された多孔質シリカ粒子を結合工程で用いる際には、多孔質シリカ粒子を第1の容器から取り出し、別の容器で結合工程を行うようにしてもよく、多孔質シリカ粒子を第1の容器内に収容したまま、第1の容器内で結合工程を行うようにしてもよい。
[0054]
 第2の容器に収容された結合液としては、結合工程で挙げた結合液が挙げられ、カオトロピック物質溶液が好ましい。
 第2の容器に収容された結合液を結合工程で用いる際には、水等の溶媒で希釈してもよい。
[0055]
 第3の容器に収容された溶出液としては、溶出工程で挙げた溶出液が挙げられる。
 第3の容器に収容された溶出液を溶出工程で用いる際には、水等の溶媒で希釈してもよい。
[0056]
 第4の容器に収容された洗浄液としては、洗浄工程で挙げた洗浄液が挙げられる。
 第4の容器に収容された洗浄液を洗浄工程で用いる際には、水等の溶媒で希釈してもよい。
実施例
[0057]
 以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[0058]
 <実施例A>
 下記の多孔質シリカ粒子1~10について、下記の評価方法に従って粒度分布、細孔容積、平均細孔径および比表面積を求め、更に下記の実施例Aの例1~11に基づいて核酸(DNA)の回収率を求めた。なお、実施例Aの例1~11のうち、例1~6は実施例であり、例7~11は比較例である。
 各例で使用した評価方法および材料を以下に示す。
[0059]
〔評価方法〕
(粒度分布)
 多孔質シリカ粒子を超音波処理によって水に充分に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製、MT-3300EX)により測定を行い、頻度分布および累積体積分布曲線を得ることで体積基準の粒度分布を得た。得られた累積体積分布曲線からD 10、D 50、D 90、D 90/D 10を求めた。
[0060]
(BJH法による細孔容積および平均細孔径の測定)
 細孔分布測定装置(mirometrics社製、3FLEX)にて、吸着ガスとして窒素ガスを用いて、吸着等温線を測定した。
 細孔分布測定装置に付属の解析ソフトウェアを用い、吸着等温線における相対圧力P/P が0.01~0.995の34点からBJH法によって細孔容積(BJH吸着積算細孔容積)および平均細孔径(BJH平均細孔直径)を求めた。
(比表面積)
 また、相対圧力P/P が0.05~0.30の10点からBET法によって比表面積を求めた。
[0061]
〔材料〕
 多孔質シリカ粒子1:AGCエスアイテック社製、型番:L-52。
 多孔質シリカ粒子2:AGCエスアイテック社製、型番:L-203。
 多孔質シリカ粒子3:AGCエスアイテック社製、型番:EP-DM-20-120A。
 多孔質シリカ粒子4:大阪ソーダ社製、型番:SP-120-20P。
 多孔質シリカ粒子5:大阪ソーダ社製、型番:IR-60-25/40。
 多孔質シリカ粒子6:富士シリシア社製、型番:SMB100-20。
 多孔質シリカ粒子7:AGCエスアイテック社製、型番:サンラブリー。
 多孔質シリカ粒子8:AGCエスアイテック社製、型番:NP-200。
 多孔質シリカ粒子9:富士シリシア社製、型番:BW-820MH。
 多孔質シリカ粒子10:富士シリシア社製、型番:MB100-75/200。
[0062]
 結合液:核酸抽出キット(Qiagen社製、商品名:DNeasy Blood tisue kit)に付属の吸着バッファー(組成:50mMトリス-塩酸塩、5.0Mグアニジンチオシアン酸塩、20mM EDTA、1.2質量%ポリエチレングリコールモノ-p-イソオクチルフェニレンエーテル)。
 洗浄液1:前記核酸抽出キットに付属の洗浄バッファー1。
 洗浄液2:前記核酸抽出キットに付属の洗浄バッファー2。
 溶出液:前記核酸抽出キットに付属の溶出バッファー。
 ヒトゲノム溶液:プロメガ社製、製品名human genomic DNA G3041、長さおよそ3×10 塩基対のDNAを含有、DNA濃度200μg/mL。
 大腸菌ゲノム溶液:シグマアルドリッチ社製、製品名GenElute Plasmid Miniprep Kitを用いて大腸菌DH5αの培養液を処理して調製した、長さおよそ4.65×10 塩基対のDNAを含有、DNA濃度50μg/mL。
[0063]
 チップカラム:2本のピペットチップ(BioPointe Scientific社製、商品名:Pipette tip 1250μl)をそれぞれ周方向に沿って2つに切断し、ピペットチップの先端を含む部分(以下、「部分A」ともいう。)と、ピペットチップの後端を含む部分(以下、「部分B」ともいう。)とを得た。このとき、2本のピペットチップそれぞれの切断位置(先端から切断位置までの距離)を変えた。ピペットチップは、先端に向かって直径が小さくなっているため、2つのピペットチップそれぞれの切断位置における内径は異なっている。
 2本のピペットチップそれぞれから得た2つの部分Aのうち長い方(切断位置の内径が大きい方)の部分Aの後端の開口を、孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタで覆った。その状態で部分Aを先端側から、2つの部分Bのうち長い方(切断位置の内径が小さい方)の部分Bの後端の開口からその内側に挿入し、部分Aの後端部分およびフィルタの外縁部分が部分Bの先端部分に係止された状態とした。これをチップカラムとして用いた。
[0064]
〔例1~10〕
 試料としてヒトゲノム溶液または大腸菌ゲノム溶液を使用し、以下の手順で試料からの核酸の回収を行い、核酸(DNA)の回収率を求めた。結果を表1に示す。
 まず、容量1.5mLのエッペンドルフチューブに、試料220μL、結合液200μLおよび100質量%エタノール200μLを加え、混合して第1混合液を得た。
 次に、第1混合液620μLに表1に示す多孔質シリカ粒子20mgを加え、混合して第2混合液を得た。
 次に、第2混合液の全量をチップカラムに移し、遠心分離機を使用して3500rpm、2分間、20℃の条件で遠心分離することにより、多孔質シリカ粒子をチップカラムのフィルタ上に集めた。
 次に、ろ過液を捨て、チップカラムに洗浄液1の500μLを加え、前記と同様の条件で遠心分離した。次に、ろ過液を捨て、チップカラムに洗浄液2の500μLを加え、前記と同様の条件で遠心分離した。その後、ろ過液を捨て、3500rpm、7分間、20℃の条件で遠心分離した。
 次に、前記チップカラムに溶出液の200μLを加え、1分間放置したのち、3500rpm、2分間、20℃の条件で遠心分離した。得られたろ過液を核酸抽出液とした。
[0065]
 核酸抽出液中のDNA濃度を、アッセイキット(invitrogen社製、商品名Qubit assay)を用いて、そのプロトコルに従って測定した。具体的には核酸抽出液1μLに対してWorking solution 199μLを加え、2~3秒間ボルテックスし、室温で2分間反応させたのち、フルオロメータ(invitrogen社、商品名Qubit FluorometerにてDNA濃度を測定した。
 測定されたDNA濃度から、核酸抽出液中のDNAの質量W (g)を算出した。この値と、用いた試料(220μL)中のDNAの質量W (g)から、以下の式によりDNA回収率を求めた。
 DNA回収率(%)=W /W ×100
[0066]
〔例11〕
 試料としてヒトゲノム溶液または大腸菌ゲノム溶液を使用し、シリカメンブレンを備えた市販の核酸抽出キット(Qiagen社製、商品名:DNeasy Blood tisue kit)を用いて、そのプロトコルに従って核酸を抽出し、核酸抽出液を得た。
 得られた核酸抽出液について、例1~10と同様にして、以下の手順で試料からの核酸の回収を行い、核酸(DNA)の回収率を求めた。結果を表1に示す。
[0067]
 例1~10で用いた多孔質シリカ粒子のD 10、D 50、D 90、D 90/D 10、シリカ(SiO )純度、比表面積、細孔容積、および平均細孔径を表1に示す。なお、シリカ純度については、多孔質シリカ粒子3および8のみ測定したが、他の多孔質シリカ粒子のシリカ純度はいずれも98質量%以上とみられる。
 また、例1~10における、ヒトゲノム溶液を試料としたときのDNA回収率を縦軸にとり、多孔質シリカ粒子のD 50、D 90/D 10、細孔容積、平均細孔径または比表面積(SSA)を横軸にとったグラフを図1~5に示す。各グラフにおいて、例1~6の結果は実施例として、例7~10の結果は比較例として示した。
[0068]
[表1]


[0069]
 例1~6においては、核酸の回収率が高かった。
 一方、例7では、多孔質シリカ粒子のD 50が6μm未満であり、細孔容積が0.3cm /g未満であるため、核酸の回収率が劣っていた。例8では、多孔質シリカ粒子の細孔容積が0.3cm /g未満であり、平均細孔径が60Å未満であるため、核酸の回収率が劣っていた。例9では、多孔質シリカ粒子のD 50が50μmより大きく、細孔容積が0.3cm /g未満であり、平均細孔径が60Å未満であるため、核酸の回収率が劣っていた。例10では、多孔質シリカ粒子のD 50が50μm未満より大きいため、核酸の回収率が劣っていた。
[0070]
 <実施例B>
 下記の多孔質シリカ粒子12~26について、下記の評価方法に従って粒度分布、細孔容積、平均細孔径および比表面積を求め、更に下記の実施例Bの例12~27に基づいて核酸(DNA)の回収率を求めた。なお、実施例Bの例12~27のうち、例12~21は実施例であり、例22~27比較例である。
 各例で使用した評価方法および材料を以下に示す。
[0071]
〔評価方法〕
(粒度分布)
 多孔質シリカ粒子12~26ついて、実施例Aと同様にして体積基準の粒度分布を得た。得られた累積体積分布曲線からD 10、D 50、D 90、D 90/D 10を求めた。
[0072]
(比表面積)
 細孔分布測定装置(mirometrics社製、3FLEX)にて、吸着ガスとして窒素ガスを用いて、吸着等温線を測定した。
 細孔分布測定装置に付属の解析ソフトウェアを用い、吸着等温線における相対圧力P/P が0.05~0.30の10点からBET法によって比表面積を求めた。
[0073]
(水銀ポロシメータによる細孔容積および平均細孔径の測定)
 水銀ポロシメータ(mirometrics社製、AutoPore IV9500)を用いて細孔容積および平均細孔径の測定を行った。
 水銀の物性値には接触角140°、表面張力480dynes/cm、密度13.5335g/mLを用いた。測定条件は圧力50mmHg、真空引き時間5分、注入圧力1.49psi、平衡時間10秒とした。
[0074]
〔材料〕
 多孔質シリカ粒子12:AGCエスアイテック社製、型番:L-52。
 多孔質シリカ粒子13:AGCエスアイテック社製、型番:EP-DM-10-1000AW。
 多孔質シリカ粒子14AGCエスアイテック社製、型番:EP-DM-10-700AW。
 多孔質シリカ粒子15AGCエスアイテック社製、型番:EP-DM-20-1000AW。
 多孔質シリカ粒子16AGCエスアイテック社製、型番:L-203。
 多孔質シリカ粒子17大阪ソーダ社製、型番:SP-1000-10。
 多孔質シリカ粒子18:大阪ソーダ社製、型番:SP-1000-20。
 多孔質シリカ粒子19大阪ソーダ社製、型番:SP-2000-20。
 多孔質シリカ粒子20富士シリシア社製、型番:SMB1000-10。
 多孔質シリカ粒子21富士シリシア社製、型番:SMB1000-20。
 多孔質シリカ粒子22:AGCエスアイテック社製、型番:EP-DF-5-1000AW2。
 多孔質シリカ粒子23AGCエスアイテック社製、型番:NP-200。
 多孔質シリカ粒子24AGCエスアイテック社製、型番:D-75-1000AW。
 多孔質シリカ粒子25AGCエスアイテック社製、型番:D-150-1000AW。
 多孔質シリカ粒子26:AGCエスアイテック社製、型番:D-250-1000AW。
[0075]
 結合液、洗浄液1、洗浄液2、溶出液、ヒトゲノム溶液、大腸菌ゲノム溶液およびチップカラムについては、実施例Aと同じ種類のものを使用した。
[0076]
〔例12~26〕
 試料としてヒトゲノム溶液または大腸菌ゲノム溶液を使用し、実施例Aの例1~10と同様の手順で試料からの核酸の回収を行い、核酸(DNA)の回収率を求めた。結果を表2に示す。
[0077]
〔例27〕
 例27は、実施例Aの表1の例11の結果を示したものである。
 得られた核酸抽出液について、例12~26と同様にして、以下の手順で試料からの核酸の回収を行い、核酸(DNA)の回収率を求めた。結果を表2に示す。
[0078]
 例12~26で用いた多孔質シリカ粒子のD 10、D 50、D 90、D 90/D 10、シリカ(SiO )純度、比表面積、細孔容積、および平均細孔径を表2に示す。なお、シリカ純度については、多孔質シリカ粒子13~15、22~23のみ測定したが、他の多孔質シリカ粒子のシリカ純度もいずれも98質量%以上とみられる。
 また、例12~26における、ヒトゲノム溶液を試料としたときのDNA回収率を縦軸に、多孔質シリカ粒子のD 50、D 90/D 10、細孔容積、平均細孔径または比表面積(SSA)を横軸にとったグラフを図6~10に示す。各グラフにおいて、例12~21の結果は実施例として、例22~27の結果は比較例として示した。
[0079]
[表2]


[0080]
 例12~21では、核酸の回収率が高かった。
 一方、例22では、多孔質シリカ粒子のD 50が6μm未満であるため、核酸の回収率が劣っていた。例23では、多孔質シリカ粒子の細孔容積が0.6cm /g未満、平均細孔径が200Å未満であるため、核酸の回収率が劣っていた。例24~26では、多孔質シリカ粒子のD 50が50μm超であるため、核酸の回収率が劣っていた。
 なお、2017年8月18日に出願された日本特許出願2017-157978号および日本特許出願2017-157968号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

請求の範囲

[請求項1]
 体積基準での粒度分布のD 50が6~50μmであり、BJH法により求めた細孔容積が0.3~5cm /gであり、BJH法により求めた平均細孔径が60~500Åである多孔質シリカ粒子に核酸を結合させて複合体を形成し、
 前記複合体から前記核酸を溶出させ、回収することを特徴とする、核酸の回収方法。
[請求項2]
 体積基準での粒度分布のD 50が6~50μmであり、水銀ポロシメータにより求めた細孔容積が0.6~5cm /gであり、水銀ポロシメータにより求めた平均細孔径が200~5000Åである多孔質シリカ粒子に核酸を結合させて複合体を形成し、
 前記複合体から前記核酸を溶出させ、回収することを特徴とする、核酸の回収方法。
[請求項3]
 前記多孔質シリカ粒子の体積基準での粒度分布のD 90/D 10が10以下である、請求項1または2に記載の核酸の回収方法。
[請求項4]
 前記多孔質シリカ粒子の比表面積が150~1000m /gである、請求項1または3に記載の核酸の回収方法。
[請求項5]
 前記多孔質シリカ粒子の比表面積が8~400m /gである、請求項2または3に記載の核酸の回収方法。
[請求項6]
 前記多孔質シリカ粒子のシリカ純度が90質量%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸の回収方法。
[請求項7]
 カオトロピック物質溶液の存在下で、前記多孔質シリカ粒子に前記核酸を結合させる、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸の回収方法。
[請求項8]
 前記複合体から前記核酸を溶出させる前に、前記複合体を洗浄する、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸の回収方法。
[請求項9]
 前記核酸の長さが10 ~10 11bpである、請求項1~8のいずれか一項に記載の核酸の回収方法。
[請求項10]
 体積基準での粒度分布のD 50が6~50μmであり、BJH法により求めた細孔容積が0.3~5cm /gであり、BJH法により求めた平均細孔径が60~500Åである多孔質シリカ粒子を含有することを特徴とする核酸結合用担体。
[請求項11]
 体積基準での粒度分布のD 50が6~50μmであり、水銀ポロシメータにより求めた細孔容積が0.6~5cm /gであり、水銀ポロシメータにより求めた平均細孔径が200~5000Åである多孔質シリカ粒子からなることを特徴とする核酸結合用担体。
[請求項12]
 体積基準での粒度分布のD 50が6~50μmであり、BJH法により求めた細孔容積が0.3~5cm /gであり、BJH法により求めた平均細孔径が60~500Åである多孔質シリカ粒子を収容した第1の容器と、
 核酸を前記多孔質シリカ粒子に結合させる結合液を収容した第2の容器と、を備えることを特徴とする核酸回収キット。
[請求項13]
 体積基準での粒度分布のD 50が6~50μmであり、水銀ポロシメータにより求めた細孔容積が0.6~5cm /gであり、水銀ポロシメータにより求めた平均細孔径が200~5000Åである多孔質シリカ粒子を収容した第1の容器と、
 核酸を前記多孔質シリカ粒子に結合させる結合液を収容した第2の容器と、を備えることを特徴とする核酸回収キット。
[請求項14]
 前記結合液がカオトロピック物質溶液である、請求項12または13に記載の核酸回収キット。
[請求項15]
 前記多孔質シリカ粒子と前記核酸とが結合した複合体から前記核酸を溶出させる溶出液を収容した第3の容器をさらに備える、請求項12~14のいずれか一項に記載の核酸回収キット。
[請求項16]
 前記多孔質シリカ粒子と前記核酸とが結合した複合体を洗浄する洗浄液を収容した第4の容器をさらに備える、請求項12~15のいずれか一項に記載の核酸回収キット。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]