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1. (WO2019031461) 懸濁重合用分散安定剤及びそれを用いたビニル系重合体の製造方法
Document

明 細 書

発明の名称 懸濁重合用分散安定剤及びそれを用いたビニル系重合体の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006  

課題を解決するための手段

0007   0008  

発明の効果

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060  

実施例

0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

明 細 書

発明の名称 : 懸濁重合用分散安定剤及びそれを用いたビニル系重合体の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、けん化度及び粘度平均重合度が特定の範囲にあり、さらに側鎖にエチレン性二重結合を有する基を特定の割合で有し、特定の吸光度を有するビニルアルコール系重合体を含有する懸濁重合用分散安定剤及びそれを用いたビニル系重合体の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記することがある)の用途の一つとしてビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤があり、様々なPVAが使用されている。
[0003]
 例えば、特許文献1及び2では、ビニル化合物の重合時における重合安定性を向上させて得られるビニル系重合体の粗粒化を抑制する目的で、熱処理したPVAをビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤に用いている。特許文献3では、エチレン性二重結合を2つ以上含有する多官能単量体を共重合したPVAを、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤に用いている。
[0004]
 しかしながら、上記した特許文献に記載される方法では、ビニル化合物重合時の重合安定性に改善は見られるものの、近年求められる要求に対しては不十分であった。さらに、ビニル系重合体をシート状に成形した際のブツや欠点によるフィッシュアイが多いことや、反応性二重結合の存在に起因する水溶液の不溶解分の多さ等、課題が残るものであった。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開昭51-45189号公報
特許文献2 : 特開2004-250695号公報
特許文献3 : 国際公開第2014/171502号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 本発明は、ビニル化合物を懸濁重合する際に懸濁重合用分散安定剤として用いると、重合安定性に優れ、得られるビニル系重合体は粗大粒子の形成が少なく、さらに、得られるビニル系重合体をシート状に成形した際にフィッシュアイを低減できるビニルアルコール系重合体を含有する懸濁重合用分散安定剤及びそれを用いたビニル系重合体の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、得られるビニル系重合体の可塑剤吸収性が優れる、懸濁重合用分散安定剤及びそれを用いたビニル系重合体の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0007]
 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、けん化度及び粘度平均重合度が特定の範囲にあり、側鎖にエチレン性二重結合を有する基を特定の割合で有し、吸光度が特定範囲にあるビニルアルコール系重合体を含有する、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
[0008]
 すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]粘度平均重合度が400を超え1000未満であり、けん化度が67モル%を超え78モル%未満であり、側鎖にエチレン性二重結合を有する基を0.02モル%以上1.0モル%以下含み、0.1質量%水溶液の紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度(x)が0.17を超え0.65未満であるビニルアルコール系重合体(A)を含有する、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤。
[2]ビニルアルコール系重合体(A)が片末端に炭素数2~8の脂肪族アシル基又はプロピル基を含有する、上記[1]の懸濁重合用分散安定剤。
[3]脂肪族アシル基の炭素数が2~4である、上記[2]の懸濁重合用分散安定剤。
[4]脂肪族アシル基がアセチル基である、上記[2]又は[3]の懸濁重合用分散安定剤。
[5]エチレン性二重結合を有する基がアリルエーテル基又はビニルエーテル基である、上記[1]~[4]のいずれか1項の懸濁重合用分散安定剤。
[6]ビニルアルコール系重合体(A)が片末端にプロピル基を0.0005モル%以上0.1モル%以下有する、上記[1]の懸濁重合用分散安定剤。
[7]エチレン性二重結合を有する基がイタコニル基、メタクリロイル基及びアクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種の基である、上記[1]又は[6]の懸濁重合用分散安定剤。
[8]上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の懸濁重合用分散安定剤の存在下でビニル化合物を懸濁重合する、ビニル系重合体の製造方法。
[9]さらに、粘度平均重合度が600未満であり、けん化度が30モル%を超え60モル%未満であるビニルアルコール系重合体(B)の存在下でビニル化合物を懸濁重合する、上記[8]のビニル系重合体の製造方法。

発明の効果

[0009]
 本発明のビニルアルコール系重合体を含有する懸濁重合用分散安定剤は、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いると、重合安定性に優れ、得られるビニル系重合体は粗大粒子の形成が少なく、さらに、得られるビニル系重合体をシート状に成形した際にフィッシュアイを低減できる。また、本発明は、得られるビニル系重合体の可塑剤吸収性が優れる、懸濁重合用分散安定剤及びそれを用いたビニル系重合体の製造方法を提供できる。なお、本明細書において重合安定性とは、重合時にビニル化合物からなる液滴の分散性が良好であるため、結果として、粗粒化が抑制され径が均一なビニル系重合体の粒子が得られることを意味する。

発明を実施するための形態

[0010]
[懸濁重合用分散安定剤]
 本発明の懸濁重合用分散安定剤は、粘度平均重合度が400を超え1000未満であり、けん化度が67モル%を超え78モル%未満であり、側鎖にエチレン性二重結合を有する基を0.02モル%以上1.0モル%以下含み、0.1質量%水溶液の紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度(x)が0.17を超え0.65未満であるビニルアルコール系重合体(A)(以下、「PVA(A)」と略記することがある)を含有する。本発明の懸濁重合用分散安定剤をビニル化合物の懸濁重合における分散安定剤に用いると、重合反応が安定し粗大粒子の形成が少なくなる。また得られるビニル系重合体は可塑剤吸収性に優れ、シート状にした際のフィッシュアイが低減できるため、加工性に優れる。本発明の懸濁重合用分散安定剤は、実質的にビニルアルコール系重合体(A)のみを含有するものであってもよい。実質的にビニルアルコール系重合体(A)のみを含有するとは、懸濁重合用分散安定剤に含まれるビニルアルコール系重合体(A)以外の成分の含有率が、5.0質量%未満であることを意味し、1.0質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましく、0.01質量%未満がさらに好ましい。なお、本明細書において、数値範囲(各成分の含有量、各成分から算出される値及び各物性等)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。
[0011]
[ビニルアルコール系重合体(A)]
 本発明のビニルアルコール系重合体(A)は、粘度平均重合度が400を超え1000未満であり、けん化度が67モル%を超え78モル%未満であり、側鎖にエチレン性二重結合を有する基を0.02モル%以上1.0モル%以下有し、0.1質量%水溶液の紫外線吸収スペクトルによる280nmの吸光度(x)が0.17を超え0.65未満であることを特徴とする。
[0012]
 PVA(A)の粘度平均重合度は400を超え1000未満であることが重要であり、600を超え900未満が好ましい。粘度平均重合度が400以下の場合は、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際に重合安定性が低下し、得られるビニル系重合体における粗大粒子が増える。一方、粘度平均重合度が1000以上の場合は、PVA(A)の水不溶解分が増加したり、得られるビニル系重合体の可塑剤吸収性が低下したり、得られるビニル系重合体をシート状に成形した際のフィッシュアイが増加する。
[0013]
 粘度平均重合度はJIS K 6726:1994に準じて測定して得られる値である。具体的には、けん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化したPVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](L/g)を用いて下記式により粘度平均重合度(P)を求める。
  P=([η]×10 /8.29) (1/0.62)
[0014]
 PVA(A)のけん化度は、67モル%を超え78モル%未満であることが重要であり、70モル%を超え75モル%未満が好ましい。けん化度が67モル%以下の場合は、PVA(A)の水溶性が低下したり、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際に重合安定性が低下し、得られるビニル系重合体における粗大粒子が増える。一方、けん化度が78モル%以上の場合は、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際に重合安定性が低下し、得られるビニル系重合体における粗大粒子が増えたり、得られるビニル系重合体の可塑剤吸収性が低下したり、得られるビニル系重合体をシート状に成形した際のフィッシュアイが増加する。けん化度はJIS K 6726:1994に準じて測定して得られる値である。
[0015]
 PVA(A)は側鎖にエチレン性二重結合を有する基(以下、「側鎖の変性基」ともいう)を全単量体単位に対して0.02モル%以上1.0モル%以下含むことが重要であり、前記基の含有量は0.05モル%以上0.90モル%以下が好ましく、0.05モル%以上0.70モル%以下がより好ましく、0.07モル%以上0.55モル%以下がさらに好ましく、0.08モル%以上0.50モル%以下が特に好ましい。0.02モル%未満の場合は、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際に重合安定性が不十分となり、得られるビニル系重合体における粗大粒子が増える。一方、1.0モル%を超える場合は、PVA(A)の水不溶解分が増加したり、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際に重合安定性が不十分となったり、得られるビニル系重合体をシート状に成形した際にフィッシュアイが増加する。
[0016]
 エチレン性二重結合を有する基に含まれるエチレン性二重結合の数は1つ以上であればよいが、PVA(A)の重合工程やビニル化合物の懸濁重合工程においてゲル化を抑制するために、エチレン性二重結合の数は1つが好ましい。エチレン性二重結合を有する基としては、例えばアリルエーテル基、ビニルエーテル基、イタコニル基、メタクリロイル基及びアクリロイル基等が挙げられ、ある好適な実施形態では、アリルエーテル基、ビニルエーテル基を用いられ、中でも、得られるPVA(A)の保存安定性の観点からアリルエーテル基が好ましい。他の好適な実施形態としては、PVA(A)は側鎖にイタコニル基、メタクリロイル基及びアクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する。本発明のPVA(A)は、側鎖にイタコニル基、メタクリロイル基及びアクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種の基に由来するエチレン性二重結合を有していながらも水溶液にした際に水不溶解分が少ないため、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いると、重合反応が安定し粗大粒子の形成を抑制でき、得られるビニル系重合体をシート状に成形した際のフィッシュアイを抑制できる。入手性、PVA(A)の水不溶解分の量、及びビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際の性能面から、イタコニル基又はメタクリロイル基を含有することが好ましい。側鎖にエチレン性二重結合を有するPVA(A)はビニル化合物への吸着力が高いため、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際に重合安定性に優れ、得られるビニル系重合体は粗大粒子の形成が少なく、さらに、得られるビニル系重合体をシート状に成形した際にフィッシュアイも低減できる。また、本発明の効果を奏する限り、PVA(A)はその側鎖に他の変性基を含んでいてもよいが、他の変性基の含有率は、全単量体単位に対して5モル%未満が好ましく、1モル%未満がより好ましく、0.1モル%未満がさらに好ましい。
[0017]
 他の変性基としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ヘキセン等のα-オレフィン;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;オキシアルキレン基を有する単量体;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、7-オクテン-1-オール、9-デセン-1-オール、3-メチル-3-ブテン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルトリエトキシシラン等のシリル基を有する単量体;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-カプロラクタム等のN-ビニルアミド系単量体等が挙げられる。
[0018]
 PVA(A)の0.1質量%水溶液の紫外線吸収スペクトルによる280nmの吸光度(x)は0.17を超え0.65未満であることが重要であり、0.21を超え0.60未満が好ましく、0.25を超え0.55未満がより好ましく、0.27を超え0.54未満がさらに好ましく、0.28を超え0.46未満が特に好ましい。紫外線吸収スペクトルによる吸光度はPVA(A)の主鎖に存在するエチレン性二重結合の量又は連鎖を示し、上記した範囲内にあることでビニル化合物への吸着性が向上し、側鎖のエチレン性二重結合との相乗効果によりビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際の重合安定性がより一層向上する。なお、波長280nmの吸収はPVA(A)中の[-CO-(CH=CH) -]の構造に由来する。本構造の導入は、重合度調整剤としてアルデヒド類を用いたり、共重合により主鎖にエチレン性二重結合を導入できる単量体等を用いることで達成できる。吸光度(x)が上記範囲外の場合は、ビニル化合物への吸着力の低下する、又は吸着を通り越し溶解状態になるため、懸濁重合用分散安定剤としての効果が発揮できなくなる。吸光度(x)の測定装置等の条件は後記する実施例に記載の通りである。
[0019]
 PVA(A)は、片末端に炭素数2~8の脂肪族アシル基又はプロピル基を含有することが好ましい。
[0020]
 ある好適な実施形態では、PVA(A)は、片末端に炭素数2~8の脂肪族アシル基(R -CO-で表される基であり、R は炭素数1~7のアルキル基を表す)を含有する。以下、この実施形態について、説明する。
[0021]
 本明細書において、脂肪族アシル基の炭素数とは、脂肪族アシル基中に存在する全ての炭素原子の数(すなわち、R のアルキル基とカルボニル基の炭素数の合計)を指す。脂肪族アシル基としては飽和脂肪族アシル基が好ましい。脂肪族アシル基の炭素数は2~4が好ましい。R が表すアルキル基は直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、2-メチルプロピル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基(イソヘキシル基)、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,4-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチル-2-メチル-プロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、n-ヘプチル基等が挙げられる。上記脂肪族アシル基は直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基等が挙げられる。中でも、懸濁重合用分散安定剤として用いた際の性能及びハンドリング性の観点からアセチル基が好ましい。片末端にアルデヒド基(HCO-)を有する場合、取扱いが困難になるとともに、懸濁重合用分散安定剤として用いた際に重合安定性が低下する。脂肪族アシル基の炭素数が9以上の場合は、PVA(A)の水溶性が低下するため、結果としてハンドリング性が低下したり、懸濁重合用分散安定剤として用いた際の重合安定性が低下する。
[0022]
 他の好適な実施形態では、PVA(A)は、片末端にプロピル基を含有する。プロピル基の含有率は、全単量体単位に対して0.0005モル%以上0.1モル%以下が好ましい。プロピル基の導入法に制限はないが、プロピル基を導入する変性剤を用いて片末端に導入する方法が挙げられる。プロピル基を導入する変性剤としては、プロパンチオール、プロピルアルデヒド等の連鎖移動剤;n-プロピルパーオキシジカーボネート等の重合開始剤等が挙げられる。末端に導入される基がプロピル基より長いアルキル基の場合、PVA(A)の水不溶解分が増加する傾向がある。末端に導入される基がプロピルより短いアルキル基の場合、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際の性能が低下する傾向がある。また、末端に導入されるプロピル基の含有率が、0.0005モル%以上0.1モル%以下であることによって、PVA(A)の水溶液の水不溶解分を減らすことができ、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として使用した際に他の構成との相乗効果により、重合安定性がより一層向上し、粗大粒子の形成をさらに減らすことができる。
[0023]
(PVA(A)の製造方法)
 本発明のPVA(A)の製造方法としては、好適には、(i)ビニルエステル系単量体を重合してビニルエステル系重合体を得る重合工程、得られたビニルエステル系重合体をけん化してビニルアルコール系重合体(X)を得るけん化工程、次いで、得られたビニルアルコール系重合体(X)と、側鎖に変性基を導入するためのエステル化剤とを反応させてPVA(A)を得る工程を含む製造方法、(ii)溶媒、さらに必要に応じて片末端変性剤の存在下でビニルエステル系単量体と2つ以上のエチレン性二重結合を有する単量体とを共重合してビニルエステル系共重合体を得る重合工程、及び重合工程で得られたビニルエステル系重合体をけん化してビニルアルコール系重合体を得るけん化工程を有し、重合工程において、ビニルエステル系単量体と溶媒との質量比(ビニルエステル系単量体/溶媒)が100/0~80/20とする方法が挙げられる。製造方法(i)の重合工程においてプロピル基を導入する変性剤、溶媒、及び重合度調整剤としてアルデヒド類を用いることがより好適な製造方法である。製造方法(ii)の片末端変性剤として炭素数2~8のアルデヒドを用いることがより好適な製造方法である。
[0024]
 製造方法(i)及び(ii)の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等の公知の方法が挙げられ、工業的観点から、溶液重合法、乳化重合法及び分散重合法が好ましい。重合操作にあたっては、回分法、半回分法及び連続法のいずれの方式も採用できる。
[0025]
 製造方法(i)及び(ii)のビニルエステル系単量体としては、例えば酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも工業的観点から酢酸ビニルが好ましい。
[0026]
 製造方法(ii)の2つ以上のエチレン性二重結合を有する単量体としては、分子中にエチレン性二重結合を2つ以上含有するものであれば、種々の単量体を使用できる。但し、ビニルエステル系単量体との共重合時に過剰な架橋反応が進行してゲルが生じることなく、しかも必要量のエチレン性二重結合を導入できるものでなければならない。ビニルエステル系単量体に対する2つ以上のエチレン性二重結合を有する単量体の配合割合、重合温度、単量体濃度、重合率、粘度平均重合度等、様々な要因を考慮しながら、適切な反応性を有する単量体を選択する必要がある。過剰架橋反応を抑制する観点から、エチレン性二重結合を有する単量体に含まれるエチレン性二重結合の数は2つが好ましい。
[0027]
 上記2つ以上のエチレン性二重結合を有する単量体として、好適には、エタンジオールジビニルエーテル、プロパンジオールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル等のジビニルエーテル化合物のようなビニルエーテル基を含有する単量体が挙げられる。
[0028]
 また、2つ以上のエチレン性二重結合を有する単量体として、アリル基を有する単量体も好適である。アリル基を含有する単量体としては、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、ノナジエン、デカジエン等のジエン化合物;グリセリンジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル等のジアリルエーテル化合物、グリセリントリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等のトリアリルエーテル化合物、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル等のテトラアリルエーテル化合物のようなアリルエーテル基を含有する単量体;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル等カルボン酸ジアリルのようなアリルエステル基を含有する単量体;ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン等のジアリルアミン化合物、トリアリルアミン等のアリルアミノ基を含有する単量体;ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアリルアンモニウム塩のようなアリルアンモニウム基を含有する単量体;イソシアヌル酸トリアリル;1,3-ジアリル尿素;リン酸トリアリル;ジアリルジスルフィド等が挙げられる。中でも、反応性や重合制御が容易な観点からジアリルエーテル化合物が好ましい。
[0029]
 さらに、2つ以上のエチレン性二重結合を有する単量体としては、上述の他に、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸を有する単量体;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドを有する単量体;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等も挙げられる。
[0030]
 ビニルエステル系単量体と2つ以上のエチレン性二重結合を有する単量体との共重合に際して、本発明の趣旨を損なわない範囲で、他の単量体を共重合してもよい。当該他の単量体としては例えば、エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;(メタ)アクリル酸及びその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N-メチロール(メタ)アクリルアミド及びその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩又はそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。このような他の単量体を共重合させる場合、その共重合量は通常5モル%以下である。
[0031]
 製造方法(i)の重合工程においてさらに溶媒を用い、ビニルエステル系単量体と溶媒の質量比がビニルエステル系単量体/溶媒=100/0~90/10であることが好ましい。溶媒の質量比が10を超える場合、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際の性能が低下する傾向がある。
[0032]
 製造方法(i)及び(ii)の重合工程において、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ビニルエステル系単量体以外の他の単量体を共重合してもよい。他の単量体をビニルエステル系単量体と共重合することによって、得られる重合体の主鎖中に他の単量体単位の構造を有することができる。当該他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;(メタ)アクリル酸及びその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N-メチロール(メタ)アクリルアミド及びその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩又はそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。このような他の単量体を共重合する場合、その含有率は全単量体単位に対して通常5モル%以下である。
[0033]
 製造方法(i)及び(ii)の重合工程に用いる溶媒としては、アルコール類が好ましい。アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられ、中でもメタノールが好ましい。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用できる。
[0034]
 製造方法(ii)の片末端変性剤として炭素数2~8のアルデヒドの存在下でビニルエステル系単量体と2つ以上のエチレン性二重結合を有する単量体との共重合を行うことにより、得られるビニルエステル系共重合体の片末端に炭素数2~8の脂肪族アシル基を導入でき、続くけん化工程により、片末端に炭素数2~8の脂肪族アシル基を有するPVA(A)を得ることができる。片末端変性剤の使用量はビニルエステル系単量体に対して、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
[0035]
 片末端変性剤として用いる炭素数2~8のアルデヒドは、例えばアセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド等が挙げられる。中でも、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際の重合安定性、水溶性の観点から、炭素数2~4のアルデヒドが好ましく、アセトアルデヒド又はブチルアルデヒドがより好ましく、アセトアルデヒドがさらに好ましい。
[0036]
 製造方法(ii)の重合工程において、ビニルエステル系単量体と溶媒との質量比(ビニルエステル系単量体/溶媒)は100/0~80/20であることが重要であり、前記質量比は100/0~90/10が好ましく、100/0~95/5がより好ましい。ビニルエステル系単量体と溶媒との質量比を上記範囲にすることで片末端変性剤の反応効率をコントロールでき、結果として得られるPVA(A)の0.1質量%水溶液の紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度(x)を上記特定の範囲にすることが可能となる。ビニルエステル系単量体の割合が少ないと片末端変性剤の反応効率が低下し、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際に重合安定性が低下する傾向となる。
[0037]
 製造方法(i)及び(ii)の重合工程に用いる重合開始剤は特に限定されず、重合方法に応じて公知の重合開始剤から選択できる。重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。過酸化物系重合開始剤は、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド;2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート等が挙げられる。レドックス系重合開始剤としては、酸化剤と還元剤を組み合わせたものを使用できる。酸化剤としては、過酸化物が好ましい。還元剤としては、金属イオン、還元性化合物等が挙げられる。酸化剤と還元剤の組み合わせとしては、過酸化物と金属イオンとの組み合わせ;過酸化物と還元性化合物との組み合わせ;過酸化物と、金属イオン及び還元性化合物との組み合わせ等が挙げられる。過酸化物としては、過酸化水素、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド等のヒドロパーオキサイド、過硫酸塩(カリウム、ナトリウム又はアンモニウム塩)、過酢酸t-ブチル、過酸エステル(過安息香酸t-ブチル)等が挙げられる。金属イオンとしては、Fe 2+、Cr 2+、V 2+、Co 2+、Ti 3+、Cu +等の1電子移動を受けることのできる金属イオンが挙げられる。還元性化合物としては、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、フルクトース、デキストロース、ソルボース、イノシトール、ロンガリット、アスコルビン酸が挙げられる。これらの中でも、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸アンモニウムからなる群より選択される1種以上の過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、ロンガリット及びアスコルビン酸からなる群より選択される1種以上の還元剤との組み合わせが好ましく、過酸化水素と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、ロンガリット及びアスコルビン酸からなる群より選択される1種以上の還元剤との組み合わせがより好ましい。また、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンヒドロパーオキサイド等の水溶性の重合開始剤を上記重合開始剤に組み合わせて重合開始剤としてもよい。これらの重合開始剤は、1種を単独で、又は2種以上を併用できる。
[0038]
 製造方法(i)の重合度調整剤としては、アルデヒド類が好ましい。アルデヒド類としては、例えばアセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド等が挙げられる。中でも、得られるPVA(A)の水溶性、及びPVA(A)をビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際の重合安定性の観点から、炭素数2~4のアルデヒドが好ましく、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド又はブチルアルデヒドがより好ましく、入手性の面からアセトアルデヒドがさらに好ましい。重合度調整剤の使用量はビニルエステル系単量体に対して、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
[0039]
 製造方法(i)の重合工程におけるビニルエステル系単量体の重合率は特に限定されないが、20%以上90%未満が好ましく、25%以上80%未満がより好ましく、30%以上60%未満がさらに好ましい。重合率が20%未満では生産性が悪く、90%以上では得られるPVA(A)の色相が悪化したり、PVA(A)をビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際の性能が低下する傾向がある。製造方法(ii)の重合工程における重合率は特に限定されないが、20%以上90%未満が好ましく、25%以上80%未満がより好ましく、30%以上60%未満がさらに好ましい。重合率が20%未満では生産性が悪く、90%以上では得られるPVA(A)の色相が悪化したり、PVA(A)をビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際の性能が低下する傾向がある。
[0040]
 製造方法(i)及び(ii)の重合工程で得られたビニルエステル系重合体をけん化する方法は特に限定されず、公知のけん化方法を採用できる。例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒やp-トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いた、加アルコール分解反応又は加水分解反応が挙げられる。この反応に使用できる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類:ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で、又は2種以上を併用できる。中でも、メタノール又はメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒としてけん化する方法が簡便であり好ましい。けん化工程におけるけん化反応液の含水率は3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
[0041]
 製造方法(i)のけん化工程によって得られるビニルアルコール系重合体(X)(以下、「PVA(X)」と略記載する)の側鎖に変性基(好適には、イタコニル基、メタクリロイル基及びアクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種の基)を導入するために、PVA(X)とエステル化剤とを反応させる。エステル化剤としては、イタコン酸又はその塩、イタコン酸無水物、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、メタクリル酸又はその塩、メタクリル酸無水物、メタクリル酸モノアルキルエステル、アクリル酸又はその塩、アクリル酸無水物、アクリル酸モノアルキルエステル等が好ましい。中でも、PVA(X)との反応性の観点から、イタコン酸、イタコン酸無水物、メタクリル酸、メタクリル酸無水物、アクリル酸、又はアクリル酸無水物がより好ましい。エステル化剤の使用量はPVA(X)に対して、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上6質量%以下がより好ましい。
[0042]
 PVA(X)とエステル化剤の反応を促進するために加熱することが好ましい。加熱温度としては、50℃~200℃が好ましい。反応時間としては通常10分~24時間である。
[0043]
 PVA(A)は、水溶液とした場合の水不溶解分が少ない。具体的には、PVA(A)の水不溶解分(ppm)は、1000ppm以下が好ましく、800ppm以下がより好ましく、600ppm以下がさらに好ましい。PVA(A)の水不溶解分(ppm)は、少なければ少ないほどよいが、0ppm以上であってもよく、0ppmを超えるものであってもよい。PVA(A)の水不溶解分の測定値が0ppmを下回る場合は、0ppmと判断する。前記ppmは、質量ppmを意味する。水不溶解分の測定方法は、後記する実施例に記載の通りである。
[0044]
 (用途)
 本発明のPVA(A)は種々の用途に使用される。以下にその例を挙げるがこれに限定されるものではない。
(1)分散剤用途:塗料、接着剤等に含まれる顔料の分散安定剤、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等の各種ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤及び分散助剤
(2)被覆剤用途:紙のコーティング剤、サイズ剤、繊維加工剤、皮革仕上剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤、医薬被覆剤
(3)接着剤用途:接着剤、粘着剤、再湿接着剤、各種バインダー、セメントやモルタル用添加剤
(4)乳化剤用途:乳化重合用乳化剤、ビチュメン等の後乳化剤
(5)凝集剤用途:水中懸濁物及び溶存物の凝集剤、金属凝集剤
(6)紙加工用途:紙力増強剤、耐油性・耐溶剤性付与剤、平滑性向上剤、表面光沢改良助剤、目止剤、バリア剤、耐光性付与剤、耐水化剤、染料・顕色剤分散剤、接着力改良剤、バインダー
(7)農業用途:農薬用バインダー、農薬用展着剤、農業用被覆剤、土壌改良剤、エロージョン防止剤、農薬用分散剤
(8)医療用途及び化粧品用途:造粒バインダー、コーティング剤、乳化剤、貼付剤、結合剤、フィルム製剤基材、皮膜形成剤
(9)粘度調整剤用途:増粘剤、レオロジー調整剤
(10)フィルム用途:水溶性フィルム、偏光フィルム、バリアフィルム、繊維製品包装用フィルム、種子養生シート、植生シート、シードテープ、吸湿性フィルム
(11)成形物用途:繊維、パイプ、チューブ、防漏膜、ケミカルレース用水溶性繊維、スポンジ
(12)ゲル用途:医薬用ゲル、工業用ゲル
(13)後反応用途:低分子有機化合物、高分子有機化合物、無機化合物との後反応用途
 中でも、本発明のPVA(A)は後記する通り、分散剤用途に好適に用いられる。
[0045]
 本発明の懸濁重合用分散安定剤は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、各種添加剤を含有してもよい。上記添加剤としては、例えば、アルデヒド類、ハロゲン化炭化水素類、メルカプタン類等の重合度調節剤;フェノール化合物、イオウ化合物、N-オキサイド化合物等の重合禁止剤;pH調整剤;架橋剤;防腐剤;防黴剤;ブロッキング防止剤;消泡剤;相溶化剤等が挙げられる。懸濁重合用分散安定剤における各種添加剤の含有量は、懸濁重合用分散安定剤全体に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
[0046]
[ビニル系重合体の製造方法]
 本発明の他の好適な実施態様としては、本発明のPVA(A)を含有する懸濁重合用分散安定剤の存在下で、ビニル化合物を懸濁重合するビニル系重合体の製造方法が挙げられる。かかる製造方法では、粒子状のビニル系重合体が得られる。
[0047]
 PVA(A)を含有する本発明の懸濁重合用分散安定剤を重合槽へ仕込む方法としては、例えば(i)水溶液にして重合槽に仕込む方法、(ii)粉末状態のまま仕込む方法等が挙げられる。重合槽内での均一性の観点から、上記(i)の方法が好ましい。
[0048]
 ビニル化合物としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、これらのエステル及び塩;マレイン酸、フマル酸、これらのエステル及び無水物;スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、塩化ビニルが好ましく、塩化ビニルと塩化ビニルと共重合できる単量体とを併用することも好ましい。塩化ビニルと共重合できる単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。
[0049]
 ビニル化合物の懸濁重合には、従来から塩化ビニルの重合に使用される、油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用できる。油溶性の重合開始剤としては、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、クミルパーオキシネオデカノエート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。水溶性の重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンヒドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[0050]
 ビニル化合物の懸濁重合に際し、重合温度は特に制限はなく、20℃程度の低い温度でも、90℃を超える高い温度でもよく、中でも20~60℃程度が好ましい。また、重合反応系の除熱効率を高めるために、還流冷却器が付属した重合槽を用いてもよい。
[0051]
 得られたビニル系重合体は、適宜可塑剤等を配合して各種の成形品用途に使用できる。
[0052]
 ビニル化合物の懸濁重合において、本発明の懸濁重合用分散安定剤の使用量(濃度)は、ビニル化合物に対して、1000ppm以下であってもよく、800ppm以下であってもよく、600ppm以下であってもよく、400ppm以下であってもよく、200ppm以下であってもよい。前記ppmは、質量ppmを意味する。
[0053]
 得られるビニル系重合体のフィッシュアイの低減や可塑剤吸収性をより一層向上させる観点から、PVA(A)に加えて、粘度平均重合度が600未満であり、けん化度が30モル%を超え60モル%未満であるビニルアルコール系重合体(B)(以下、「PVA(B)」と略記することがある)の存在下でビニル化合物を懸濁重合することが好ましい。PVA(B)の粘度平均重合度及びけん化度は、上述のPVA(A)と同様に、JIS K 6726:1994に準じて測定して得られる値である。
[0054]
 PVA(B)の粘度平均重合度は500未満がより好ましく、400未満がさらに好ましく、300未満が特に好ましい。PVA(B)の粘度平均重合度が600以上である場合は、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際に重合安定性が低下したり、得られるビニル系重合体の可塑剤吸収性が低下する傾向となる。
[0055]
 PVA(B)のけん化度は、35モル%を超え57モル%未満がより好ましく、40モル%を超え55モル%未満がさらに好ましい。PVA(B)のけん化度が30モル%以下である場合は、疎水性が強すぎるためビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として用いた際に重合安定性が低下したり、得られるビニル系重合体の可塑剤吸収性が低下する傾向となる。一方、けん化度が60モル%以上であると、重合安定性が低下したり、得られるビニル系重合体の可塑剤吸収性が低下し、フィッシュアイが増加する傾向となる。
[0056]
 ビニル化合物の懸濁重合に際して、PVA(A)の他に、ビニル化合物を水性媒体中で懸濁重合する際に通常使用されるメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテル;ゼラチンなどの水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックコポリマーなどの油溶性乳化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤等を併用してもよい。その添加量は特に制限されず、ビニル化合物100質量部あたり0.01質量部以上1.0質量部以下が好ましい。
[0057]
 本発明の懸濁重合用分散安定剤の好適な実施形態(Y)としては、例えば、粘度平均重合度が400を超え1000未満であり、けん化度が67モル%を超え78モル%未満であり、側鎖にエチレン性二重結合を有する基を0.02モル%以上1.0モル%以下含み、片末端に炭素数2~8の脂肪族アシル基を含有し、0.1質量%水溶液の紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度(x)が0.32を超え0.65未満であるビニルアルコール系重合体(A)を含有する懸濁重合用分散安定剤が挙げられる。前記脂肪族アシル基は炭素数2~4の脂肪族アシル基が好ましく、アセチル基がより好ましい。
[0058]
 本発明の懸濁重合用分散安定剤の好適な実施形態(Z)としては、例えば、粘度平均重合度が400を超え1000未満であり、けん化度が67モル%を超え78モル%未満であり、側鎖にイタコニル基、メタクリロイル基及びアクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を0.05モル%以上0.5モル%以下有し、0.1質量%水溶液の紫外線吸収スペクトルによる280nmの吸光度(x)が0.17を超え0.50未満である、ビニルアルコール系重合体(A)を含有する懸濁重合用分散安定剤が挙げられる。実施形態(Z)の含有する懸濁重合用分散安定剤は、末端にプロピル基を0.0005モル%以上0.1モル%以下有するものが好ましい。
[0059]
 上記した実施形態(Y)及び(Z)のいずれにおいても、上述の説明に基づいて、各構成要素に関する数値を適宜変更でき、任意の成分について、追加、削除等の変更をすることができる。また、上記したいずれの実施形態においても、ビニルアルコール系重合体(A)の各構成要素と各特性(水不溶解分等)の値を適宜変更して組み合わせることもできる。例えば、実施形態(Y)及び(Z)のビニルアルコール系重合体(A)において、水不溶解分(ppm)は、1000ppm以下であってもよい。
[0060]
 本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的思想の範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
実施例
[0061]
 以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下の実施例及び比較例において、特に断りがない場合、「部」及び「%」はそれぞれ質量部及び質量%を示し、ppmは質量ppmを示す。
[0062]
[PVA(A)の粘度平均重合度]
 PVA(A)の粘度平均重合度はJIS K 6726:1994に準じて測定した。具体的には、PVA(A)のけん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化したPVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](L/g)を用いて下記式により粘度平均重合度(P)を求めた。
  P=([η]×10 /8.29) (1/0.62)
[0063]
[PVA(A)のけん化度]
 PVA(A)のけん化度は、JIS K 6726:1994に準じて測定した。
[0064]
[PVA(A)の末端プロピル基の含有率]
 PVA(A)の末端プロピル基の含有率はPVA(A)の10質量%水溶液を調製し、この水溶液を、500gの酢酸メチル/水=95/5の溶液中に5g滴下しPVA(A)を析出させ、回収し乾燥させ、単離されたPVA(A)をDMSO-d に溶解し、400MHzの H-NMRを用いて測定することで、ビニルアルコール単位のメチン由来のピークは3.2~4.0ppm(積分値〔M〕)、プロピル基のメチル由来のプロトンのピークは0.7~1.0ppm付近に帰属され、(積分値〔N〕)、各ピークから以下の式により末端プロピル基の含有率を求めた。
  末端プロピル基の含有率(モル%)=(〔N〕/3)/〔M〕×100
[0065]
[PVA(A)の側鎖の変性基の含有率]
 PVA(A)の側鎖の変性基の含有率の測定及び算出は以下の方法で行った。まず、PVA(A)の10質量%水溶液を調製した。次に、この水溶液を、500gの酢酸メチル/水=95/5の溶液中に5g滴下しPVA(A)を析出させ、回収し乾燥させ、単離されたPVA(A)をDMSO-d に溶解し、400MHzの H-NMRを用いて測定することで、ビニルアルコール単位のメチン由来のピークは3.2~4.0ppm(積分値〔P〕)、側鎖の変性基由来のプロトンのピークは5.0~6.5ppm付近に何箇所か帰属され、任意のものを使用することができ(積分値〔Q〕)、各ピークから以下の式により側鎖の変性基の含有率を求めた。
  側鎖の変性基の含有率(モル%)=〔Q〕/〔P〕×100
[0066]
[PVA(A)の紫外線吸収スペクトルによる吸光度]
 PVA(A)の0.1質量%水溶液を作製した。その後、該水溶液を光路長1cmのセルに入れ、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製UV-2450)を用いて280nmの吸光度(x)を測定した。
[0067]
[PVA(A)の水溶液における水不溶解分]
 PVA(A)の4質量%水溶液を100g作製した後、200メッシュ(JIS標準篩のメッシュ換算では、目開き75μm;前記篩の目開きは、JIS Z 8801-1-2006の公称目開きWに準拠)の金網で全量ろ過し(ろ過前の金網の質量をa(g)とする)、金網ごと105℃で3時間乾燥した(絶乾後の金網と金網上に残存した物質の合計質量をb(g)とする)。下記式を用いて水不溶解分(ppm)を求めた。
  水不溶解分(ppm)=1000000×(b-a)/4
[0068]
[製造例1-1 PVA(A1-1)の製造]
 酢酸ビニル(以下、「VAc」と略記することがある)1500部、メタノール30部、トリメチロールプロパンジアリルエーテル6.7部を重合槽に仕込んだのち、窒素置換後にアセトアルデヒド25.5部を追加して仕込み、加熱して60℃まで昇温させ、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)の存在下に重合率が50%となるまで重合を行った。減圧下残存するVAcをメタノールとともに系外に追い出す操作をメタノールを添加しながら行い、ビニルエステル系共重合体(以下、「PVAc」と略記することがある)のメタノール溶液(濃度50質量%)を得た。次いでメタノールと酢酸メチルの混合溶媒中(酢酸メチル濃度はけん化系全体に対して10質量%)で、ビニルエステル系共重合体の濃度を30質量%に希釈し、温度40℃、けん化反応液の含水率1質量%、けん化触媒としてPVAcに対してモル比0.0106の割合で水酸化ナトリウムを用い、1時間けん化反応を行った。得られたPVAを酢酸メチル/メタノール=80/20の洗浄液に浸漬し洗浄を行った。次いで溶媒を遠心分離で除去したのち乾燥を行い、粘度平均重合度が750であり、けん化度が72モル%であり、アリルエーテル基の変性量が0.13mol%であり、片末端にアセチル基を含有し、0.1質量%水溶液の280nmにおける紫外線吸収スペクトルにおける吸光度の値(x)が0.412であるPVA(A1-1)を得た。
[0069]
[製造例1-2~1-16 PVA(A1-2)~(A1-16)の製造]
 酢酸ビニル及びメタノールの使用量、2つ以上のエチレン性二重結合を有する単量体の種類及び使用量、片末端変性剤の種類及び使用量、重合率、けん化条件を表1~3に記載のとおり変更したこと以外は製造例1と同様にしてPVA(A1-2)~PVA(A1-16)を製造した。製造条件及び製造結果を表1に、使用した単量体の種類を表2に、使用した片末端変性剤の種類を表3に示す。
[0070]
[表1]


[0071]
[表2]


[0072]
[表3]


[0073]
[製造例2-1 PVA(A2-1)の製造]
 酢酸ビニル1500部、プロパンチオール0.0338部を重合槽に仕込んだ。次いで、重合槽内を窒素置換後にアセトアルデヒド19部を重合槽に追加して仕込み、重合槽を加熱して60℃まで昇温させ、重合開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)の存在下に重合率が50%となるまで重合を行った。減圧下残存するVAcをメタノールとともに系外に追い出す操作をメタノールを添加しながら行い、ビニルエステル系重合体(以下、「PVAc」と略記することがある)のメタノール溶液(濃度50質量%)を得た。次いでメタノール溶媒中で、PVAcの濃度を30質量%に希釈し、温度40℃、けん化反応液の含水率1質量%、けん化触媒としてPVAcに対してモル比0.007の割合で水酸化ナトリウムを用い、1時間けん化反応を行った。得られたビニルアルコール系重合体を酢酸メチル/メタノール=80/20の洗浄液に浸漬し洗浄を行った。次いで溶媒を遠心分離で除去した後に乾燥を行い、得られたビニルアルコール系重合体(PVA(X))100部に対して、エステル化剤としてイタコン酸4部をメタノール16部に溶解した液を加えた後、110℃下4時間熱処理を行った。その結果、PVA(A)として粘度平均重合度が740であり、けん化度が72モル%であり、末端プロピル基の含有率が0.0051モル%であり、側鎖のイタコニル基の含有率が0.11モル%、0.1質量%水溶液の紫外線吸収スペクトルによる280nmの吸光度(x)が0.293であるPVA(A2-1)を得た。また、PVA(A2-1)の水不溶解分を上記した方法で測定したところ、80ppmであった。
[0074]
[製造例2-2~2-13 PVA(A2-2)~(A2-13)の製造]
 酢酸ビニル及び重合時に使用するメタノール、プロパンチオール、アセトアルデヒドの使用有無及び使用量、重合反応停止時の重合率、けん化条件、エステル化剤の種類及び使用量を表4に記載のとおりに変更したこと以外は製造例2-1と同様にしてPVA(A2-2)~PVA(A2-13)を製造した。製造条件を表4に、製造結果を表6に示す。
[0075]
[表4]


[0076]
[実施例1-1]
 PVA(A1-1)を懸濁重合用分散安定剤として脱イオン水に溶解させて、オートクレーブにPVA(A1-1)の水溶液を100部仕込んだ。仕込んだPVA(A1-1)の量は、塩化ビニル(VCM)の仕込み量に対して800ppmであった。さらにPVA(B)として粘度平均重合度250、けん化度50モル%のビニルアルコール系重合体をメタノール/水=2/8の溶液として100部仕込んだ。仕込んだPVA(B)の量は、塩化ビニルの仕込み量に対して100ppmであった。次いで、脱イオン水の合計が1200部となるように脱イオン水を添加した。次いで、クミルパーオキシネオデカノエートの70%トルエン溶液0.65部及びt-ブチルパーオキシネオデカノエートの70%トルエン溶液1.05部をオートクレーブに添加し、オートクレーブ内に圧力0.2MPaとなるように窒素を導入した。その後窒素のパージを行う操作を計5回行い、オートクレーブ内を十分に窒素置換して酸素を除いた後、塩化ビニル940部を添加した。オートクレーブ内の内容物を57℃に昇温して撹拌下で塩化ビニルの重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は0.80MPaであった。重合開始から約3.5時間経過後、オートクレーブ内の圧力が0.70MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルを除去して、重合反応物を取り出し、65℃にて16時間乾燥を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。そして、以下に示す方法で得られた塩化ビニル重合体粒子を評価した。
[0077]
(塩化ビニル重合体粒子の評価)
 得られた塩化ビニル重合体粒子について、(1)平均粒子径、(2)粒度分布、(3)可塑剤吸収性、(4)フィッシュアイを以下の方法に従って評価した。評価結果を表5に示す。
[0078]
(1)平均粒子径
 タイラー(Tyler)メッシュ基準の篩を使用して、JIS Z 8815:1994に記載の乾式篩法により粒度分布を測定した。その結果をロジン・ラムラー(Rosin-Rammler)分布式にプロットして平均粒子径(d p50)を算出した。
[0079]
(2)粒度分布
 目開き355μmの篩(JIS標準篩のメッシュ換算では、42メッシュ)を通過しなかった塩化ビニル重合体粒子の含有量(質量%)を下記評価基準で評価した。前記含有量は、篩上累積(%)を意味する。また、前記篩の目開きは、JIS Z 8801-1-2006の公称目開きWに準拠する。
  A:0.5%未満
  B:0.5%以上1.0%未満
  C:1.0%以上
[0080]
 目開き355μmの篩を通過し、目開き250μmの篩(JIS標準のメッシュ換算では、60メッシュ)を通過しなかった塩化ビニル重合体粒子の含有量(質量%)を下記評価基準で評価した。前記含有量は、篩上累積(%)を意味する。また、前記篩の目開きは、JIS Z 8801-1-2006の公称目開きWに準拠する。
  A:5%未満
  B:5%以上10%未満
  C:10%以上
[0081]
 なお、目開き355μmの篩を通過しなかった塩化ビニル重合体粒子の含有量及び目開き250μmの篩を通過しなかった塩化ビニル重合体粒子の含有量は共に、値が小さいほど粗大粒子が少なくて粒度分布がシャープであり、重合安定性に優れていることを示す。
[0082]
(3)可塑剤吸収性
 脱脂綿を0.02g詰めた容量5mLのシリンジの質量(A(g))を量り、そこに塩化ビニル重合体粒子0.5gを入れ質量(B(g))を量り、そこにジオクチルフタレート(DOP)1gを入れ15分静置後、3000rpmで40分間遠心分離して質量(C(g))を量った。下記の計算式より可塑剤吸収性(%)を求めた。可塑剤吸収性が高いほど、加工が容易で、主にシートへの加工時にブツ等の外観に生じる欠陥が生じにくいことを示す。
  可塑剤吸収性(%)=100×[{(C-A)/(B-A)}-1]
[0083]
(4)フィッシュアイ
 得られた塩化ビニル重合体粒子100部、ジオクチルフタレート50部、三塩基性硫酸鉛5部及びステアリン酸亜鉛1部を150℃で7分間ロール混練して0.1mm厚のシートを作製し1000cm 当たりのフィッシュアイの数を目視で測定した。フィッシュアイの数が少ないほどシートの欠陥が少ないことを示す。
[0084]
[実施例1-2~1-9]
 懸濁重合用分散安定剤として用いたPVA(A)の種類、PVA(B)の使用有無を、表5に記載の通り変更したこと以外は実施例1-1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表5に示す。本発明の懸濁重合用分散安定剤は得られる塩化ビニル重合体粒子径が粗大になることなく、良好な重合安定性を示し、可塑剤吸収性に優れ、かつフィッシュアイ数が少なかった。
[0085]
[比較例1-1]
 PVA(A)としてPVA(A1-9)を使用した以外は実施例1-1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表5に示す。PVA(A1-9)は側鎖にエチレン性二重結合を有する基がないため、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径が大きく、粗大粒子の割合も多く、重合安定性が悪化し、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多かった。
[0086]
[比較例1-2]
 PVA(A)としてPVA(A1-10)を使用した以外は実施例1-1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表5に示す。PVA(A1-10)はけん化度が低いため、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径が大きく、粗大粒子の割合も多く、重合安定性が悪化し、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多かった。
[0087]
[比較例1-3]
 PVA(A)としてPVA(A1-11)を使用した以外は実施例1-1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表5に示す。PVA(A1-11)はけん化度が高すぎて界面活性が不十分なため、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径が大きく、粗大粒子の割合も多く、重合安定性が悪化し、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多かった。
[0088]
[比較例1-4]
 PVA(A)としてPVA(A1-12)を使用した以外は実施例1-1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表5に示す。PVA(A1-12)は0.1質量%水溶液の280nmにおける紫外線吸収スペクトルにおける吸光度の値(x)が低すぎるため、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径が大きく、粗大粒子の割合も多く、重合安定性が悪化し、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多かった。
[0089]
[比較例1-5]
 PVA(A)としてPVA(A1-13)を使用したこと以外は実施例1-1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表5に示す。PVA(A1-13)は粘度平均重合度が低すぎるため、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径が大きく、粗大粒子の割合も多く、重合安定性が悪い結果となり、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多い結果となった。
[0090]
[比較例1-6]
 PVA(A)としてPVA(A1-14)を使用した以外は実施例1-1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表5に示す。PVA(A1-14)は粘度平均重合度が高すぎ界面活性が不十分なため、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径が大きく、粗大粒子の割合も多く、重合安定性が悪化し、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多かった。
[0091]
[比較例1-7]
 PVA(A)としてPVA(A1-15)を使用した以外は実施例1-1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表5に示す。PVA(A1-15)は側鎖にエチレン性二重結合を有する基の変性量が高すぎるため、得られる塩化ビニル重合体粒子の可塑剤吸収性が非常に低く、フィッシュアイが非常に多かった。
[0092]
[比較例1-8]
 PVA(A)としてPVA(A1-16)を使用した以外は実施例1-1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表5に示す。PVA(A1-16)は0.1質量%水溶液の280nmにおける紫外線吸収スペクトルにおける吸光度の値(x)が高すぎるため、フィッシュアイが非常に多かった。
[0093]
[表5]


[0094]
[実施例2-1]
 PVA(A2-1)を懸濁重合用分散安定剤として脱イオン水に溶解させて、オートクレーブにPVA(A2-1)の水溶液を100部仕込んだ。仕込んだPVA(A2-1)の量は、塩化ビニルの仕込み量に対して760ppmであった。次いで、脱イオン水の合計量が1200部となるように脱イオン水を添加した。次いで、クミルパーオキシネオデカノエートの70%トルエン溶液0.65部及びt-ブチルパーオキシネオデカノエートの70%トルエン溶液1.05部をオートクレーブに添加し、オートクレーブ内に圧力0.2MPaとなるように窒素を導入した。その後窒素のパージを行う操作を計5回行い、オートクレーブ内を十分に窒素置換して酸素を除いた後、塩化ビニル940部を添加した。オートクレーブ内の内容物を57℃に昇温して撹拌下で塩化ビニルの懸濁重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は0.80MPaであった。重合開始から約3.5時間経過後、オートクレーブ内の圧力が0.70MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルを除去して、重合反応物を取り出し、65℃にて16時間乾燥を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。そして、上記方法で得られた塩化ビニル重合体粒子を評価した。
[0095]
[実施例2-2~2-9]
 PVA(A2-1)に代えてPVA(A2-2)~(A2-9)をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。得られた塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表6に示す。本発明のPVA(A)は、エチレン性二重結合を有していながらも水不溶解分が少なく、懸濁重合用分散安定剤として用いた場合には得られる塩化ビニル重合体の平均粒子径が小さく、粗大粒子の割合も少なく、良好な重合安定性を示し、かつフィッシュアイの数が少なかった。
[0096]
[比較例2-1]
 PVA(A)としてPVA(A2-10)を用いた以外は実施例2-1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。得られた塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表6に示す。PVA(A2-10)は0.1質量%水溶液の280nmにおける紫外線吸収スペクトルによる吸光度の値(x)が低すぎるため、水不溶解分が多く、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径が大きく、粗大粒子の割合も多く、重合安定性が不十分となり、フィッシュアイも多い結果となった。
[0097]
[比較例2-2]
 PVA(A)としてPVA(A2-11)を使用したこと以外は実施例2-1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行おうと試みた。しかしながら、PVA(A2-11)はけん化度が低すぎるため、水に不溶であり、塩化ビニルの懸濁重合を行うことができなかった。
[0098]
[比較例2-3]
 PVA(A)としてPVA(A2-12)を用いた以外は実施例2-1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。得られた塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表6に示す。PVA(A2-12)はけん化度が高すぎるため、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径が大きく、粗大粒子の割合も多く、重合安定性が不十分となり、フィッシュアイも多かった。
[0099]
[比較例2-4]
 PVA(A)としてPVA(A2-13)を用いた以外は実施例2-1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。得られた塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表6に示す。PVA(A2-13)は0.1質量%水溶液の280nmにおける紫外線吸収スペクトルによる吸光度の値(x)が低すぎるため、水不溶解分が多く、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径が大きく、粗大粒子の割合も多く、重合安定性が不十分となり、フィッシュアイも多かった。
[0100]
[表6]


[0101]
 実施例で示されるように、本発明の特定のPVA(A)を含有する、懸濁重合用分散安定剤をビニル化合物の懸濁重合に用いると、重合安定性に優れ、得られるビニル系重合体は平均粒子径が小さく、粗大粒子の生成も少なく、フィッシュアイを低減できるため加工性に優れる。また、得られるビニル系重合体は可塑剤吸収性に優れる。従って、本発明の工業的な有用性は極めて高い。

請求の範囲

[請求項1]
 粘度平均重合度が400を超え1000未満であり、けん化度が67モル%を超え78モル%未満であり、側鎖にエチレン性二重結合を有する基を0.02モル%以上1.0モル%以下含み、0.1質量%水溶液の紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度(x)が0.17を超え0.65未満であるビニルアルコール系重合体(A)を含有する、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤。
[請求項2]
 ビニルアルコール系重合体(A)が片末端に炭素数2~8の脂肪族アシル基又はプロピル基を含有する、請求項1に記載の懸濁重合用分散安定剤。
[請求項3]
 脂肪族アシル基の炭素数が2~4である、請求項2に記載の懸濁重合用分散安定剤。
[請求項4]
 脂肪族アシル基がアセチル基である、請求項2又は3に記載の懸濁重合用分散安定剤。
[請求項5]
 エチレン性二重結合を有する基がアリルエーテル基又はビニルエーテル基である、請求項1~4のいずれかに記載の懸濁重合用分散安定剤。
[請求項6]
 ビニルアルコール系重合体(A)が片末端にプロピル基を0.0005モル%以上0.1モル%以下有する、請求項1に記載の懸濁重合用分散安定剤。
[請求項7]
 エチレン性二重結合を有する基がイタコニル基、メタクリロイル基及びアクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種の基である、請求項1又は6に記載の懸濁重合用分散安定剤。
[請求項8]
 請求項1~7のいずれか1項に記載の懸濁重合用分散安定剤の存在下でビニル化合物を懸濁重合する、ビニル系重合体の製造方法。
[請求項9]
 さらに、粘度平均重合度が600未満であり、けん化度が30モル%を超え60モル%未満であるビニルアルコール系重合体(B)の存在下でビニル化合物を懸濁重合する、請求項8に記載のビニル系重合体の製造方法。