明 細 書
技術分野
[0001]
本発明は、メカノフュージョン法を基に、全量10g以下の少量で、かつ、粒径100μm以下の微粒子を簡便に乾式コーティングするための方法、並びに上記方法により製造される微粒子に関する。
背景技術
[0002]
医薬品製剤の分野において、コーティングは、水分、酸素、光などに対して不安定な薬物を保護するため、外観に光沢を与えることによって商品価値を高めるため、薬物の放出特性を調整することによって薬物に遅効性または持続性の機能を付与するためなどを目的として行われている。
[0003]
医薬品製剤におけるコーティングプロセスにおいては、湿式スプレーコーティング技術が主流となっている。上記したコーティング技術は、乾燥様式から、パンコーティング法と気中懸濁方式に大別されている。パンコーティング法ではコーティングパン装置又は通気式コーティング装置が使われ、気中懸濁方式では、流動層型、噴流層型、又は転動流動層型の装置が使われている。
[0004]
一方、メカノフュージョン法が、粒子を混合する際に粒子同士の衝突で発生する物理学的エネルギーを利用して核粒子表面にコーティング物質を修飾/浸透させる方法として知られている(非特許文献1及び非特許文献2)。
先行技術文献
非特許文献
[0005]
非特許文献1 : M.Alonso, M. Satou and K.Miyanami, Mechanism of the combined coating-mechanofusion processing of powders, Powder Technology, 59 (1989) 45-52
非特許文献2 : W.Chen, R.N.Dave, R.Pfeffer and O.Walton, Numerical simulation of mechanofusion system, Powder Technology, 146 (2004) 121-136
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0006]
従来の湿式スプレーコーティング技術においては、対処が困難な領域も存在している。例えば、最少必要量による適用制限がその一つに挙げられる。現在利用されているコーティング技術で用いられている機器は、最少でも数百g程度の試料が必要となり、原薬量がmg単位程度しか得られない研究の初期段階で、コーティングを検討することは困難となっている。また、被コーティング物質(核粒子)の大きさの制限も問題の一つにあげられる。微粒子コーティングに特徴を持っているドラフトチューブ付噴流層コーティング(ワースター法)においても、最小でも100μm程度の粒子径の核粒子が必要となり、マイクロ・ナノテクノロジー分野での応用は困難となっている。上記の通り、従来のコーティング技術においては、100μm以下の核粒子に対するコーティングや数百g以下のスケールにおけるコーティングが困難であることが技術限界とされている。
[0007]
さらに、従来の方法は湿式であるためコーティング剤の溶媒または分散剤を留去が必要となるため、蒸発させるための通気設備が必要となり、一般にコーティングに用いる装置は開放系となっている。しかしながら、高生理活性を有する物質にコーティングを施す場合、開放系の装置では、高生理活性物質が装置外へ漏出のする危険があり、作業員の健康被害や環境汚染に対するリスクが大きくなる。
[0008]
100μm以下の粒子径領域でのプロセッシングが可能になれば、機能性経口製剤のみならず吸入剤や機能性粉末注射剤などの非経口投与製剤の製造にも可能性が拡がり、また、mgオーダーでのコーティングが達成できれば、原末量が限られる研究開発初期の候補化合物の段階においてもコーティングによる製剤設計が可能となる。
[0009]
本発明の課題は、100μm以下の粒子径を有する核物質を一次粒子として使用し、封じ込め容器中で、その表面をコーティングする方法、並びに上記方法により製造される微粒子を提供することである。
課題を解決するための手段
[0010]
本発明者らは、ボールミルを使ってメカノフュージョンを行う場合、粉砕限界粒子径近傍 (数μm~10μm)の核粒子に対してコーティング剤に低融点物質を用いると、核粒子の粒子径は低下しない一方で、強い衝突エネルギーにより微粒子表面上でコーティング剤の溶融が起こって密なコーティングができるのではないかと考えた(図1)。そこで、本発明者らは、ボールミルを用いたメカノフュージョン法により、少量(数100mgオーダー)かつ平均粒子径約10μmの微粒子に対して溶出制御可能なコーティングが可能かどうかを調べた。その結果、本発明者らは、融点の差のある物質を混合することにより、粒子同士の衝突の際に発生する熱により低融点物質が、高融点物質表面をコーティングできることを見出した(図1)。さらに、本発明者らは、この方法により核物質が100μm以下の粒子径においても一次粒子としてコーティングでき、このコーティングにより医薬品の溶出を制御できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
[0011]
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
<1> 活性成分を含む粒径100μm以下の第一の粒子と、樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む第二の粒子とを機械的に混合する工程を含む、樹脂又は油脂で被覆された粒子の製造方法。
<2> 樹脂又は油脂で被覆された粒子が、注射可能な粒子径を有する粒子である、<1>に記載の方法。
<3> 機械的に混合する工程を、溶媒及び液状分散媒の非存在下において行う、<1>又は<2>に記載の方法。
<4> 機械的に混合する工程において、第二の粒子を分割して投入する、<1>から<3>の何れか一に記載の方法。
<5> 第一の粒子の融点より第二の粒子の融点の方が低い、<1>から<4>の何れか一に記載の方法。
<6> 第一の粒子が、多孔性粒子に活性成分を包含させた粒子である、<1>から<5>の何れか一に記載の方法。
<7> 多孔性粒子が、エチルセルロースからなる粒子である、<6>に記載の方法。
<8> 第二の粒子が、15℃以上100℃以下の融点を有する樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む、<1>から<7>の何れか一に記載の方法。
<9> 第二の粒子がシェラックを含む、<1>から<8>の何れか一に記載の方法。
<10> 第二の粒子が生体内分解性高分子を含む、<1>から<9>の何れか一に記載の方法。
<11> 生体内分解性高分子がポリ乳酸、ポリグリコール酸又は乳酸・グリコール酸コポリマーである、<10>に記載の方法。
<12> 第二の粒子が、15℃以上100℃以下の融点を有する油脂と重量平均分子量1000以上の高分子との固体分散体または固溶体である、<1>から<11>の何れか一に記載の方法。
<13> 第二の粒子が、シェラックと腸溶性ポリマーとの固体分散体または固溶体である、<1>から<12>の何れか一に記載の方法。
<14> 腸溶性ポリマーがメタクリル酸コポリマーLである<13>に記載の方法。
<15> 第一の粒子と第二の粒子とを機械的に混合する工程を、封じ込め容器中において行う、<1>から<14>の何れか一に記載の方法。
<16> 第一の粒子と第二の粒子とを機械的に混合する工程を、ボールミルにより行う、<1>から<15>の何れか一に記載の方法。
<17> 封じ込め容器が、底面の長径と高さが1:10~10:1の範囲の容器である、<15>に記載の方法。
<18> 樹脂又は油脂で被覆された粒子が、徐放性粒子である、<1>から<17>の何れか一に記載の方法。
<19> 樹脂又は油脂で被覆された粒子が、腸溶性粒子である、<1>から<17>の何れか一に記載の方法。
<20> <1>から<19>の何れか一に記載の方法により、樹脂又は油脂で被覆された粒子を製造する工程、及び前記の樹脂又は油脂で被覆された粒子と、樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む第三の粒子とを機械的に混合する工程を含む、樹脂又は油脂の多層で被覆された粒子の製造方法。
[0012]
<21> (i)活性成分を含む粒径100μm以下の核粒子と、(ii)前記核粒子の表面に被覆されており、樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む被覆層、とを有する粒子。
<22> 核粒子の融点より、被覆層を構成する樹脂又は油脂の融点の方が低い、<21>に記載の粒子。
<23> 核粒子が、多孔性粒子に活性成分を包含させた粒子である、<21>又は<22>に記載の粒子。
<24> 多孔性粒子が、エチルセルロースからなる粒子である、<23>に記載の粒子。
<25> 被覆層を構成する樹脂又は油脂の融点が、15℃以上100℃以下である、<21>から<24>の何れか一に記載の粒子。
<26> 被覆層がシェラックを含む、<21>から<25>の何れか一に記載の粒子。
<27> 被覆層が生体内分解性高分子を含み、注射可能な粒子径を有する、<21>から<25>の何れか一に記載の粒子。
<28> 被覆層がポリ乳酸または乳酸・グリコール酸コポリマーを含み、粒子の90%粒径(D90)が150μm以下である、<21>から<25>の何れか一に記載の粒子。
<29> 被覆層が、15℃以上100℃以下の融点を有する油脂と重量平均分子量1000以上の高分子とを含む、<21>から<28>の何れか一に記載の粒子。
<30> 被覆層が、シェラックと腸溶性ポリマーとを含む、<21>から<29>の何れか一に記載の粒子。
<31> 腸溶性ポリマーがメタクリル酸コポリマーLである<30>に記載の粒子。
<32> 徐放性粒子である、<21>から<31>の何れか一に記載の粒子。
<33> 腸溶性粒子である、<21>から<31>の何れか一に記載の粒子。
<34> 樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む被覆層を2層以上有している、<21>から<33>の何れか一に記載の粒子。
発明の効果
[0013]
本発明の微粒子は、腸溶性微粒子、又は徐放性微粒子として有用である。本発明は、従来製剤に含有させる高活性医薬品(バイオ医薬品を含む)の機能性原製剤の製造及び院内製剤の製造において有用である。
図面の簡単な説明
[0014]
[図1] 図1は、本発明の方法の模式図を示す。
[図2] 図2は、核粒子1とコーティング品1~3の溶出試験の結果を示す。
[図3] 図3は、核粒子1とコーティング品1の電子顕微鏡像を示す。
[図4] 図4は、核粒子2とコーティング品4の溶出試験の結果を示す。
[図5] 図5は、腸溶性コーティング品1及び2の溶出試験の結果を示す。
[図6] 図6は、核粒子3と腸溶性コーティング品2の電子顕微鏡増を示す。
[図7] 図7は、実施例6における電子顕微鏡像を示す。
[図8] 図8は、実施例6の粒子の体積基準粒度分布を示す。
[図9] 図9は、実施例6における溶出試験の結果を示す。
[図10] 図10は、コーティング品6~8の溶出試験の結果を示す。
[図11] 図11は、コーティング品7及び9~11の溶出試験の結果を示す。
[図12] 図12は、PLGAマイクロスフェア2の光学顕微鏡写真像を示す。
[図13] 図13は、PLGAマイクロスフェア2からのビタミンB
12の溶出を示す。
発明を実施するための形態
[0015]
本発明の実施の形態について説明する。
本発明による粒子の製造方法は、活性成分を含む粒径100μm以下の第一の粒子と、樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む第二の粒子とを機械的に混合する工程を含む、樹脂又は油脂で被覆された粒子の製造方法である。
本発明の粒子は、(i)活性成分を含む粒径100μm以下の核粒子と、(ii)前記核粒子の表面に被覆されており、樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む被覆層、とを有する粒子である。
[0016]
活性成分としては、特に限定されないが、以下の成分を使用することができる。
(抗炎症剤)
アスピリン、アセトアミノフェン、エトドラック、メフェナミック、メクロフェナミック、ピロキシカム、イソプロピルアンチピリン、トラネキサム酸、イブプロフェン等
(催眠・鎮静剤)
ニトラゼパム、トリアゾラム、フェノバルビタール、アミバルビタ-ル、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレニル尿素、フルニトラゼパム、ゾルピデム酒石酸塩、アルプラゾラム、エチゾラム、パロキセチン塩酸塩水和物、ロラゼパム、ロフラゼプ酸エチル、エスシロプラムシュウ酸塩等
(抗てんかん剤)
フェニトイン、メタルビタール、プリミドン、クロナゼパム、カルバマゼピン、バルプロ酸等
(鎮うん剤)
塩酸メクリジン、ジメンヒドリナート等
(抗うつ剤)
イミプラニン、ノキシプチリン、フェネルジン等
(精神神経用剤)
ハロペリドール、メプロバメート、クロルジアゼポキシド、ジアゼバム、オキサゼバム、スルピリド、リスペリドン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピンフマル酸塩、パリペリドン、ペロスピロン塩酸塩水和物、デュロキセチン塩酸塩、パロキセチン、塩酸セルトラリン、アモキサピン等
(鎮けい剤)
パパベリン、アトロピン、エトミドリン等
(強心剤)
ジゴキシン、ジギトキシン、メチルジゴキシン、ユビデカレノン等
(不整脈剤)
ピンドロール、アジマリン、ジソピラミド等
(利尿剤)
ヒドロクロロチアジド、スピロノラクトン、トリアムテレン、フロセミド、ブメタニド等
[0017]
(抗高血圧剤)
レセルピン、メシル酸ジヒドロエルゴトキシン、塩酸プラゾシン、メトプロロール、プロプラノロール、アテノロール、カンデサルタンレキセチル、テルミサルタン、アジルサルタン、オルメサルタン、ビソプロロールフマル酸塩、カルベジロール、バルサルタン、エナラプリル、イミダプリル、アムロジピンベシル酸塩、ジルチアゼム塩酸塩、ドキサシン、トリクロルメチアジド等
(冠血管拡張剤)
ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ジルチアゼム、ニフェジピン、ジピリダモール等
(鎮咳剤)
ノスカピン、サルブタモール、プロカテロール、ツロプテロール、トラニラスト、臭化水素酸デキストロメトルファン、リン酸ジヒドロコデイン、リン酸コデイン等
(去痰剤)
ブロムヘキシン塩酸塩、アンブロキソール塩酸塩、グアイフェネシン等
(脳循環改善剤)
ニカルジピン、ピンポセチン等
(交感神経興奮剤)
塩酸メチルエフェドリン等
(糖尿病治療薬)
グリメピリド、ボグリボース、メトホルミン、ミチグリニドカルシウム水和物、ピオグリタゾン、ビルダグリプチン、シダグリプチンリン酸塩水和物、トレラグリプチンコハク酸塩等
(抗病原微生物剤)
エリスロマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、リファンピシン、グリセオフルビン、レボフロキサシ、セフジトレンピボキシル、セフカペンピボキシル、トスフロキサシントシル酸塩水和物、セフジニル、アジスロマイシン水和物、アモキシシリン、バンコマイシン、オフロキサシン、メトロニダゾール、アシクロビル、バラシクロビル、ミコナゾー、イトラコナゾール等
(抗ヒスタミン剤)
ジフェンヒドラミン、プロメタジン、メキタジン、クレマスチンフマル酸塩、ベボタスチンベシル酸塩、フェキソフェナジン、オロパタジン、セチリジン塩酸塩、ロラタジン等
(ステロイド剤)
トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニソロン、ダナゾール、メチルテストステロン、酢酸クロルマジノン等
[0018]
(ビタミン剤)
ビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンC類(アスコルビン酸等)、ビタミンD類、ビタミンE類、ビタミンK類、葉酸(ビタミンM類)等
(消化器系疾患治療剤)
タンニン酸、タンニン酸アルブミン、ベルベリン、メサラジン、ジメチコン、ボノプラザン、ファモチジン、ラニチジン、シメチジン、ニザチジン、メトクロプラミド、ファモチジン、オメプラゾール、ドンペリドン、スルピリド、トレピブトン、スクラルファート、活性生菌剤(例えば、ラクトミン、ビフィズス菌等)、制酸剤(例えば、水酸化アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、ポリカルボフィルカルシウム等
(その他)
アレンドロン酸ナトリウム水和物、ラロキシフェン、カフェイン、ジクマロール、シンナリジン、クロフィブラート、ゲファルナート、ブロベネシド、メルカプトプリン、メトトレキサート、ウルソデスオキシコール酸、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、グルクロノラクトン、γ-アミノ酪酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ラクトフェリン、乳性タンパク、システイン、コラーゲン、核酸(DNA、si-RNA、RNAデコイ、cDNA、アンチセンスRNAなど)、生理活性ペプチド(インスリン、カルシトニンなど)、生理活性タンパク質(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ガンマグロブリン、成長ホルモン、インターフェロンなど)等
[0019]
第一の粒子(核粒子とも言う)の粒径は100μm以下であり、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、又は30μm以下でもよい。第一の粒子(核粒子とも言う)の粒径の下限は特に限定されないが、5μm以上または10μm以上でもよい。本明細書で言う粒径とは体積基準平均粒子径であり、体積基準平均粒子径は、レーザー回折粒子径測定装置(例えば、SALD2200(島津製作所))により測定することができる。
[0020]
第一の粒子(核粒子)としては多孔性粒子に活性成分を含侵などの方法により担持させた粒子を使用することができる。
多孔性粒子は、多孔性有機粒子又は多孔性無機粒子の何れでもよい。
[0021]
多孔性有機粒子としては、ポリペプチド又はその誘導体、タンパク質又はその誘導体、多糖類又はその誘導体、合成高分子、あるいはそれらの混合物からなる粒子を使用することができる。具体的には、ゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲン、アルブミン、フィブリン、プロタミンなどの蛋白質またはポリペプチド又はそれらの誘導体、エチルセルロース、ジュランガム、アラビアゴム、ヒアルロン酸、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、キチン、キトサンなどの多糖又はそれらの誘導体、エチルセルロース、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸コポリマーなどの合成高分子又はそれらの誘導体などを挙げることができる。
[0022]
多孔性無機粒子としては、ケイ酸またはケイ酸塩などからなる多孔性無機粒子を使用することができる。ケイ酸またはケイ酸塩としては、具体的には、二酸化ケイ酸、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウムなどを使用することができる。
[0023]
第二の粒子は、樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む。第二の粒子を構成する樹脂又は油脂は、本発明の粒子において被覆層を構成する。
第二の粒子又は被覆層を構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
第二の粒子又は被覆層を構成する油脂としては、特に限定されないが、例えば、カルナバロウ、アボガド油、つばき油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ヒマシ油などが挙げられる。
[0024]
第二の粒子を構成する樹脂又は油脂としては、腸溶性ポリマーでもよい。
腸溶性ポリマーとしては、メタクリル酸コポリマー(例えばメタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS等)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースフタル酸エステル(例えば、ヒプロメロースフタル酸エステル)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース酢酸エステルコハク酸エステル(例えば、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル)、カルボキシアルキルアルキルセルロース(例えばカルボキシメチルエチルセルロース)、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート等を使用することができる。
[0025]
また、第二の粒子又は被覆層を構成する樹脂としては、シェラックを使用することができる。シェラックとは、ラックカイガラムシ由来の樹脂であり、ラックカイガラムシが分泌する樹脂状物質を熱湯中で分離、精製することにより得られる。
[0026]
樹脂又は油脂の融点は、好ましくは15℃以上100℃以下であり、より好ましくは25℃以上90℃以下である。
[0027]
本発明においては、第一の粒子の融点より第二の粒子の融点の方が低いことが好ましい。即ち、核粒子の融点より、被覆層を構成する樹脂又は油脂の融点の方が低いことが好ましい。
[0028]
第二の粒子は好ましくは、15℃以上100℃以下の融点を有する油脂と重量平均分子量1000以上の高分子との固体分散体または固溶体である。即ち、本発明の粒子における被覆層は、好ましくは、15℃以上100℃以下の融点を有する油脂と重量平均分子量1000以上の高分子とを含む。
[0029]
第二の粒子の一例としては、シェラックと腸溶性ポリマーとの固体分散体または固溶体である。この場合、本発明の粒子における被覆層は、シェラックと腸溶性ポリマーとを含むものとなる。
[0030]
第二の粒子および被覆層は、生体内分解性高分子を含むものでもよい。生体内分解性高分子としてはポリ乳酸または乳酸・グリコール酸コポリマー、ポリグリコール酸、ポリカプロノラクトンなどを挙げることができる。
[0031]
第一の粒子と第二の粒子とを混合する方法は、機械的に混合する方法であれば特に限定されないが、ボールミル、ディソルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ニーダー、ロールミル、アトライター、サンドミル等を用いて実施することができる。機械的な混合は、好ましくはボールミルを用いて実施することができる。
[0032]
第一の粒子と第二の粒子とを機械的に混合する工程は、好ましくは封じ込め容器中において行うことができる。封じ込め容器は、好ましくは、底面の長径と高さが1:10~10:1の範囲の容器である。
[0033]
第一の粒子と第二の粒子とを機械的に混合する工程は、溶媒及び液状分散媒の非存在下において行うことが好ましい。
第一の粒子と第二の粒子とを機械的に混合する工程において、第二の粒子を分割して投入してもよい。
[0034]
本発明における樹脂又は油脂で被覆された粒子は、注射可能な粒子径を有する粒子であることが好ましく、粒子の90%粒径(累積量90%まで粒子径:D90)が150μm以下であることが好ましく、120μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、80μm以下であることが特に好ましい。粒子の95%粒径(累積量95%まで粒子径:D90)が150μm以下であることが好ましく、120μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、80μm以下であることが特に好ましい。
[0035]
本発明の方法により製造される樹脂又は油脂で被覆された粒子は、好ましくは徐放性粒子、又は腸溶性粒子である。
[0036]
徐放性とは、内包する活性成分物を徐々に放出できる性質である。活性成分が、徐々に固形製剤から溶出され、活性成分の90%以上を溶出するのに要する時間が少なくとも1時間以上であることが好ましい。活性成分の90%以上を溶出するのに要する時間は、活性成分の種類と目的により、例えば、投与から8時間、12時間、24時間と適時選択することができる。徐放性は、第17改正日本薬局方に記載の溶出試験法に準じて測定することができる。
腸溶性とは、胃酸などの酸に溶けず小腸で急速に溶解する性質をいう。
[0037]
本発明においては、樹脂又は油脂で被覆する工程を2回以上行うことができる。即ち、活性成分を含む粒径100μm以下の第一の粒子と、樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む第二の粒子とを機械的に混合する工程により樹脂又は油脂で被覆された粒子を製造した後に、前記の樹脂又は油脂で被覆された粒子と、樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む第三の粒子とを機械的に混合する工程を行うことにより、樹脂又は油脂の多層で被覆された粒子を製造することができる。上記により製造される粒子は、樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む被覆層を2層以上有している。
[0038]
本発明の微粒子は、そのまま又は他の成分と混合し、粒状剤(顆粒剤、細粒剤又は散剤)として使用することができ、又は打錠して錠剤として使用したり、カプセル剤として使用してもよい。
[0039]
以下の実施例により本発明を具体的に説明するか、本発明の範囲は実施例により限定されるものではない。
実施例
[0040]
実施例1
(1)エチルセルロース―多孔性微粒子の調製
50mLビーカーにエチルセルロース(日新化成株式会社、STD 7cps)2gを取り、アセトン16gを加え、スターラーで攪拌して溶解した(A液)。
50mLビーカーにグリセリン7gと5%ポリビニルアルコール(クラレ、クラレポバール220C)以下、PVA)水溶液1gを取り、スリーワンモーターにて混和した(B液)。
100mLビーカーにグリセリン45gと5%PVA水溶液5gを取り、スリーワンモーターにて混和した(C液)。
A液にB液を乳化機(ヒスコトロン マイクロテック・ニチオン)にて用い、60目盛で1分間乳化した(D液)。
[0041]
スリーワンモーターで攪拌中(600rpm)のC液にD液を加え、一分間乳化した。乳化後、500mLビーカーにてスターラーで攪拌中(400rpm)の精製水500mL中へ加え、多孔性微粒子を析出させた。75μm眼開きふるいフルイ、53μm眼開きふるいフルイの順で濾過し、濾液を得た。得た濾液を20μm眼開きフルイにて吸引ろ過し、濾取物を得た。濾取物を200mLの精製水で再分散し、再度20μm眼開きフルイにて吸引ろ過、濾取物を得た。濾取物を10mLの精製水で再分散し再度20眼開きフルイにて吸引ろ過、濾取物を得た。濾取物を100mLビーカーへ移し、少量の水で再分散し、凍結乾燥した。
[0042]
(2)エチルセルロース多孔性微粒子へのビタミンB12の充填
充てんは含浸法にて行った。すなわち、50mLのチューブにエチルセルロース多孔性微粒子0.5gを秤量し、12.5mg/mLのVB
12(ALEXIS BIOCEMICALS)溶液1 mLを加えた。チューブミキサーで攪拌後、真空-0.09Mpaにて30分間減圧を行った。その後一晩凍結乾燥を行った。翌日、均一にかき混ぜ、核粒子1を得た。エチルセルロース多孔性微粒子の融点は165~173℃である。
[0043]
(3)コーティング
メノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に核粒子1を300mg、カルバナロウ(Alfa Aesar
TM)(融点は 82~86 ℃)を600mg秤取した。直径10mmのメノウ製ボールを4個入れた。遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて、回転速度500rpmで6時間混合し、コーティング品1を得た。
[0044]
実施例2
メノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に核粒子1を300mg、カルバナロウを150mg秤取した。直径10mmのメノウ製ボールを4個入れた。遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて、回転速度500rpmで6時間混合し、コーティング品2を得た。
[0045]
実施例3
メノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に核粒子1を300mg、カルバナロウを30mg秤取した。直径10mmのメノウ製ボールを4個入れた。遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて、回転速度500rpmで6時間混合し、コーティング品3を得た。
[0046]
<微粒子の特性の評価>
実施例1~3のサンプルにつき、以下に示す方法により電子顕微鏡観察、粒子径測定、溶出試験を行って、微粒子の特性を評価した。
[0047]
(1)電子顕微鏡観察
走査型電子顕微鏡(JEOL、JSM-6510LA)を用いて、微粒子表面の観察を行った。観察結果を図3に示す。
[0048]
(2)粒子径測定
核粒子1およびコーティング品1~3を数mgとり、0.05%tween80水溶液0.5~1mLにバスソニケーターを用いて分散させた。その液につき、レーザー回折粒子径測定装置SALD2200(島津製作所)で体積平均粒子径を測定した。
[0049]
[表1]
[0050]
(3)溶出試験
核粒子1 15mgまたはコーティング品1~3を約45mg(核粒子1として15mg相当)を試験管に秤取し、あらかじめ37℃に温めておいた溶出試験液(0.05%Tween80含有精製水)5mLずつ加えた。試験管をななめ45°に傾け37℃の恒温水槽にいれ100rpmで振盪し、5、10、30、45、60、90、120分後に微粒子を吸い取らないように、上清のみを500μLをサンプリングし、新たに37℃の溶出試験液500μLを試験管に補充を行った。
溶出試験の結果を図2に示す。
[0051]
<微粒子の特性評価の結果>
コーティング品1~3のVB
12溶出は、いずれも、核粒子1からの溶出に比べて、溶出時間の延長が認められた(図2)。コーティング品1については、核粒子1表面で観察できた細孔が認められなかった(図3)。体積平均粒子径を測定したところ、配合比率に基づき核粒子1表面にカルバナロウが一次粒子としてコーティングされたとしたときの理論の体積平均粒子径の値とほぼ一致した(表1)。そのことから、本特許の方法により、20μmの核粒子上を一次粒子の形態のまま、溶出制御可能なコーティングが施すことができることがわかった。
[0052]
実施例4
キニーネ塩酸塩二水和物(ナカライテスク株式会社)300mgをメノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに回転数250rpmで30分粉砕した。そのときの粉末を核粒子2(融点は115~116℃)とした。核粒子2を150mgとカルバナロウを150mgとをメノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて回転数250rpmで、6時間混合し、コーティング品4を得た。核粒子2とコーティング品4につき、前述の粒子径測定方法に準じて粒子径を測定したところ、それぞれ11μm、18μm であった。0.05% ポリソルベート80水溶液900mL中で日本薬局方の溶出試験法に従い、溶出試験を行ったところ、コーティング品4は核粒子2に比べて溶出の延長が認められた(図4)。
[0053]
実施例5
フルオレセイン-イソチオシアネート-デキストラン(MW 3000-5000)(Sigma-Aldrich)10mgを4mLの精製水に溶解した液をフローライト(多孔性の特殊ケイ酸カルシウム、富田薬品)1gに含浸させ、1晩凍結乾燥し、核粒子を調製した(核粒子3)(ケイ酸カルシウム融点は1200~1500℃)。核粒子3の粒子径を前述の粒子径測定法に従い粒子径を測定した結果、平均粒子径は約20μmであった。シェラックとEudragit L100 (= 80:20) (融点は59℃)をエタノールに溶解して、テフロンシート上に広げ、一週間風乾して、フィルムを形成させた。得られたフィルムをメノウ乳鉢で粉砕し、105μm目開きの金網ふるいで篩過した粉末(シェラック―Eudragit L100 粉末)を得た。核粒子3を100mgとシェラック―Eudragit L100 粉末を300mgとを混合し、メノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて、250 rpm 30min、停止5 minを1サイクルとし、それを12 サイクル行い、腸溶性コーティング品1を得た。コーティング腸溶性コーティング品1を100mgとカルバナロウを50mgとをメノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて回転数250rpmで、6時間混合し、腸溶性コーティング品2を得た。腸溶性コーティング品1と2につき、37℃下、0.05% ポリソルベート80含有日本薬局方溶出試験第一液(pH1.2)25mLで30分間溶出試験を行った後、溶出試験液を0.05% ポリソルベート80含有日本薬局方溶出試験第二液(pH6.8)25mLに入れ替えて溶出試験を継続した(図5)。核粒子3および腸溶性コーティング品2を前述の電子顕微鏡観察を行った結果を図7に示す。核粒子3では微粒子表面に細孔が確認できた一方、腸溶性コーティング品2では細孔は認められなかった(図6)。
[0054]
実施例6
<コーティング剤の調製>
カルナバロウ原末(Alfa Aesar
TM)をメノウ乳鉢にて粉砕し、140メッシュ(106μm目開き)金網ふるいでの篩過品を、コーティング剤として用いた。
[0055]
<キニーネコーティング品の調製>
キニーネ塩酸塩二水和物(ナカライテスク株式会社)原末を粉砕した後、(図1)に示す方法にてコーティングを行った。
すなわち、キニーネ塩酸塩二水和物300mgを、遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)[メノウ製ポット:内径40mm,深さ40mm, メノウ製ボール:径10mm(4個)]を用いて、250rpmで2時間粉砕し、原末粉砕品を得た。コーティング剤を所定量加え、引き続き、250rpmで6時間処理し、コーティング品を得た。
[0056]
<粒子評価>
表面状態は走査型電子顕微鏡(JEOL製 JSM-6510LA)にて評価した。粒度分布はレーザー回折型粒度測定機(島津製SALD2200)を用いて測定した。
[0057]
<溶出試験>
溶出試験は、日本薬局方溶出試験法第二法(パドル法)に準じて行った。溶出した薬物は蛍光光度計(BioTek Instruments Inc.製 SynergyH4)を用いて測定した。
試験サンプル: 原末粉砕品、キニーネコーティング品 (キニーネ塩酸塩二水和物として5mg相当)
条件:溶出試験液/0.05% Tween 80 水溶液 900 mL, 攪拌強度/ 50 rpm ,試験温度 / 37±0.5℃
[0058]
核粒子に用いた原末粉砕品と得られたコーティング品(カルバナロウ/原末粉砕品=1:2)の表面状態を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した(図7)。原末粉砕品の表面は鱗片状であるのに対して、コーティング品は比較的平滑な表面状態を示した。レーザー回折法より求めた粒度分布を図8に示す。平均粒子径は、原末粉砕末が 10.34±0.35μm、コーティング品は 10.16±0.44μmであった。核粒子が一次粒子としてコーティングされる場合、コーティング率50%では体積比から粒子径は約1.145倍になると計算され、コーティングによる粒子径の変化は小さいものと予想される。実際、実測においても累積相対頻度約70~80%のところまで両者に大きな差が認められなかった。従って、この条件では粒子の多くが一次粒子としてコーティングされているものと推察される。
[0059]
原末粉砕品とコーティング品からの薬物溶出挙動を比較したところ、コーティングにより溶出の延長が認められた(図9)。この薬物溶出の延長は、カルバナロウと原末粉砕品の比が1:2で最も大きく、2時間にわたり溶出が持続した。一方、2:1と1:10では30分で約90%が溶出する放出挙動を示した(図9)。
[0060]
実施例7
実施例6に示した原末粉砕品(キニーネ塩酸塩二水和物)とコーティング剤(カルナバロウ)を用い、各150 mgを、ガラス製50mL容遠沈管の中に入れ30回降り混ぜた後、100メッシュ(149μm目開き)金網ふるいでの混合篩過を3回行った。得られた混合品をメノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて回転数100rpmで、6時間混合し、コーティング品6を得た。
[0061]
実施例8
実施例6に示した原末粉砕品(キニーネ塩酸塩二水和物)とコーティング剤(カルナバロウ)を用い、各150 mgをガラス製50mL容遠沈管の中に入れ30回降り混ぜた後、100メッシュ(149μm目開き)金網ふるいでの混合篩過を3回行った。得られた混合品をメノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて回転数250rpmで、6時間混合し、コーティング品7を得た。同操作を3回行い、3バッチを得た。3バッチの粒子径は、それぞれ、14.68±0.45μm、9.80±0.44μm、11.02±0.46μmとなった。
[0062]
実施例9
実施例6に示した原末粉砕品(キニーネ塩酸塩二水和物)とコーティング剤(カルナバロウ)を用い、各150 mgをガラス製50mL容遠沈管の中に入れ30回降り混ぜた後、100メッシュ(149μm目開き)金網ふるいでの混合篩過を3回行った。得られた混合品をメノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて回転数500rpmで、6時間混合し、コーティング品8を得た。粒子径は、13.00±0.40μmとなった。
[0063]
実施例7~9のコーティング品6~8について、実施例6記載の方法に従って溶出試験を行ったところ、溶出挙動は図10に示す通りとなった。
[0064]
実施例10
実施例6に示した原末粉砕品(キニーネ塩酸塩二水和物)とコーティング剤(カルナバロウ)を用い、各150 mgをガラス製50mL容遠沈管の中に入れ30回降り混ぜた後、100メッシュ(149μm目開き)金網ふるいでの混合篩過を3回行った。得られた混合品をメノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて回転数250rpmで、30分混合し、コーティング品9を得た。
[0065]
実施例11
実施例6に示した原末粉砕品(キニーネ塩酸塩二水和物)とコーティング剤(カルナバロウ)を用い、各150 mgをガラス製50mL容遠沈管の中に入れ30回降り混ぜた後、100メッシュ(149μm目開き)金網ふるいでの混合篩過を3回行った。得られた混合品をメノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて回転数250rpmで、60分混合し、コーティング品10を得た。
[0066]
実施例12
実施例6に示した原末粉砕品(キニーネ塩酸塩二水和物)とコーティング剤(カルナバロウ)を用い、各150 mgをガラス製50mL容遠沈管の中に入れ30回降り混ぜた後、100メッシュ(149μm目開き)金網ふるいでの混合篩過を3回行った。得られた混合品をメノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて回転数250rpmで、3時間混合し、コーティング品11を得た。
[0067]
実施例8のコーティング品7および実施例10~12のコーティング品9~11について、実施例6記載の方法に従って溶出試験を行ったところ、溶出挙動は図11に示す通りとなった。
[0068]
実施例13
<PLGAコーティング剤の調製>
乳酸・グリコール酸(シグマ・アルドリッチ社、Resomer
TMRG502)を遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)[メノウ製ポット:内径40mm,深さ40mm, メノウ製ボール:径10mm(4個)]を用いて、250rpm 15分間粉砕して、PLGAコーティング剤1を得た。後述する粒子径測定方法にて測定した粒子径は、21.86±0.45μmであった。
[0069]
<PLGAマイクロスフェアの調製>
シアノコバラミン100mgを、遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)[メノウ製ポット:内径40mm,深さ40mm, メノウ製ボール:径10mm(4個)]を用いて、250rpm 2時間粉砕して、VB
12粉砕品を得た。後述する粒子径測定方法で、分散媒に塩化メチレンを用いて測定したVB
12粉砕品の粒子径は、粒子径9.07±0.47μmであった。VB
12粉砕品15mgとPLGAコーティング剤1 60mgを加え、ガラス製50mL容遠沈管の中に入れ30回降り混ぜた後、100メッシュ(149μm目開き)金網ふるいでの混合篩過を3回行った。得られた混合品をメノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて回転数250rpm30分→5分間休止のサイクルを12回繰り返し、PLGAマイクロスフェア1を得た。PLGAマイクロスフェア1 25mgにPLGAコーティング剤2 31.25 mgを加えて、混合し、メノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて「回転数250rpm 30分→5分間休止」のサイクルを12回繰り返し、PLGAマイクロスフェア2を得た。
[0070]
(1)光学顕微鏡観察
光学顕微鏡を用いて、PLGAマイクロスフェア2の微粒子の観察を行った。
(2)粒子径測定方法
PLGAマイクロスフェア2,4,5を数mgとり、0.05%tween80水溶液0.5~1mLにバスソニケーターを用いて分散させた。その液につき、レーザー回折粒子径測定装置SALD2200(島津製作所)で体積平均粒子径を測定した。
(3)溶出試験方法
PLGAマイクロスフェア1~7を約2~5mgを試験管に秤取し、あらかじめ37℃に温めておいた溶出試験液(9.6mM リン酸緩衝液-生理食塩水 pH7.4)10mL加えた。37℃の空気恒温槽にいれ100rpmで水平振盪し、あらかじめ決めた時間に、上清を1000μLサンプリングし、新たに37℃の溶出試験液1000μLを試験管に補充を行い、溶出試験を継続した。なお、1hr溶出率を初期バーストとして評価した
[0071]
図12に示す光学顕微鏡写真像より、本方法により、球形に近い不定形のマイクロスフェアが得られることが分かった。また、この写真に示すPLGAマイクロスフェア2は、PLGAのコーティング剤1を2分割して投入したが、得られた微粒子一つ一つにVB
12の赤色が確認でき、VB
12を含有していない微粒子は確認できなかった。このことより、本方法により、マイクロスフェア内に薬物を均一に包含させることができることが分かった。
[0072]
さらに、表2に示す通り、遊星ボールミルでの処理中に、PLGAコーティング剤を追加することにより、初期バーストが抑制できること分かった。得られたPLGAマイクロアスフェア2は、図13に示す通り初期バーストの後、長期にわたりVB
12を持続放出することが確認できた。
[0073]
[表2]
[0074]
実施例14
<PLGAコーティング剤の調製>
乳酸・グリコール酸(PLGA5020、和光純薬社)を遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)[メノウ製ポット:内径40mm,深さ40mm, メノウ製ボール:径10mm(4個)]を用いて、250rpm 15分間粉砕して、PLGAコーティング剤2を得た。粒子径測定方法にて測定した粒子径は、62.95±0.34μmであった。
[0075]
<PLGAマイクロスフェアの調製>
実施例13で得たVB
12粉砕品25mg、実施例13で得たコーティング剤1 50mg、コーティング剤2 62.5mgを加え、ガラス製50mL容遠沈管の中に入れ30回降り混ぜた後、100メッシュ(149μm目開き)金網ふるいでの混合篩過を1回行った。得られた混合品をメノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて回転数250rpm30分→5分間休止のサイクルを12回繰り返し、PLGAマイクロスフェア中間体を得た。PLGAマイクロスフェア中間体 68.75 mgにPLGAコーティング剤1 25mgとPLGAコーティング剤2 31.25mgを加えて、混合し、メノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて回転数250rpm 30分→5分間休止のサイクルを12回繰り返し、PLGAマイクロスフェア3を得た。
[0076]
実施例15
実施例13で得たVB
12粉砕品25mg、実施例13で得たコーティング剤1 50mg、コーティング剤2 62.5mgを加え、ガラス製50mL容遠沈管の中に入れ30回降り混ぜた後、100メッシュ(149μm目開き)金網ふるいでの混合篩過を1回行った。得られた混合品をメノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて回転数250rpm30分→5分間休止のサイクルを24回繰り返し、PLGAマイクロスフェア4を得た。
[0077]
実施例16
実施例13で得たVB
12粉砕品12.5 mg、実施例13で得たコーティング剤1 50mg、コーティング剤2 62.5mgを加え、ガラス製50mL容遠沈管の中に入れ30回降り混ぜた後、100メッシュ(149μm目開き)金網ふるいでの混合篩過を1回行った。得られた混合品をメノウ製ボールミルポット(内径4cm、高さ4cm)に入れて、直径10mmのメノウ製ボールを4個とともに遊星ボールミル(フレッチェ社、pulverisette6)にて回転数250rpm30分→5分間休止のサイクルを1回(PLGAマイクロスフェア5を得る)、2回(PLGAマイクロスフェア6を得る)、6回(PLGAマイクロスフェア7を得る)、12回(PLGAマイクロスフェア8を得る)を行った。
[0078]
実施例14及び15にて得られたPLGAマイクロスフェアについて、実施例13に示す粒子径測定方法と溶出試験方法により、粒子径と初期バーストを評価した結果を表3に示す。同じ量のPLGAコーティング剤を1度に投入し処理したときと、2分割投入し処理したときとを比べた。その結果、初期バーストに影響はないものの、PLGAコーティング剤を1度に投入し処理すると粒子同士の凝集が促進され、懸濁注射が出来ない粒子径となった一方で、分割投入すると、凝集が抑えられ、累積量95%まで粒子径150μm以下に分布したことから、懸濁注射可能な粒子径を保つことができた。
[0079]
[表3]
[0080]
実施例15及び16にて得られたPLGAマイクロスフェアについて、実施例13に示す溶出試験方法により、初期バーストを評価した結果を表4に示す。
遊星ボールミルの「回転数250rpm 30分→5分間休止」とのサイクル数、1回(PLGAマイクロスフェア5)、2回(PLGAマイクロスフェア6)、6回(PLGAマイクロスフェア7)、12回(PLGAマイクロスフェア8)、24回(PLGAマイクロスフェア4)と、サイクル数を増やすことにより、初期バーストを抑制することができることが分かった。
[0081]
[表4]
請求の範囲
[請求項1]
活性成分を含む粒径100μm以下の第一の粒子と、樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む第二の粒子とを機械的に混合する工程を含む、樹脂又は油脂で被覆された粒子の製造方法。
[請求項2]
樹脂又は油脂で被覆された粒子が、注射可能な粒子径を有する粒子である、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
機械的に混合する工程を、溶媒及び液状分散媒の非存在下において行う、請求項1又は2に記載の方法。
[請求項4]
機械的に混合する工程において、第二の粒子を分割して投入する、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
[請求項5]
第一の粒子の融点より第二の粒子の融点の方が低い、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
[請求項6]
第一の粒子が、多孔性粒子に活性成分を包含させた粒子である、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
[請求項7]
多孔性粒子が、エチルセルロースからなる粒子である、請求項6に記載の方法。
[請求項8]
第二の粒子が、15℃以上100℃以下の融点を有する樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
[請求項9]
第二の粒子がシェラックを含む、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
[請求項10]
第二の粒子が生体内分解性高分子を含む、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
[請求項11]
生体内分解性高分子がポリ乳酸、ポリグリコール酸又は乳酸・グリコール酸コポリマーである、請求項10に記載の方法。
[請求項12]
第二の粒子が、15℃以上100℃以下の融点を有する油脂と重量平均分子量1000以上の高分子との固体分散体または固溶体である、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
[請求項13]
第二の粒子が、シェラックと腸溶性ポリマーとの固体分散体または固溶体である、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
[請求項14]
腸溶性ポリマーがメタクリル酸コポリマーLである請求項13に記載の方法。
[請求項15]
第一の粒子と第二の粒子とを機械的に混合する工程を、封じ込め容器により行う、請求項1から14の何れか一項に記載の方法。
[請求項16]
第一の粒子と第二の粒子とを機械的に混合する工程を、ボールミル中において行う、請求項1から15の何れか一項に記載の方法。
[請求項17]
封じ込め容器が、底面の長径と高さが1:10~10:1の範囲の容器である、請求項15に記載の方法。
[請求項18]
樹脂又は油脂で被覆された粒子が、徐放性粒子である、請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
[請求項19]
樹脂又は油脂で被覆された粒子が、腸溶性粒子である、請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
[請求項20]
請求項1から19の何れか一項に記載の方法により、樹脂又は油脂で被覆された粒子を製造する工程、及び前記の樹脂又は油脂で被覆された粒子と、樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む第三の粒子とを機械的に混合する工程を含む、樹脂又は油脂の多層で被覆された粒子の製造方法。
[請求項21]
(i)活性成分を含む粒径100μm以下の核粒子と、(ii)前記核粒子の表面に被覆されており、樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む被覆層、とを有する粒子。
[請求項22]
核粒子の融点より、被覆層を構成する樹脂又は油脂の融点の方が低い、請求項21に記載の粒子。
[請求項23]
核粒子が、多孔性粒子に活性成分を包含させた粒子である、請求項21又は22に記載の粒子。
[請求項24]
多孔性粒子が、エチルセルロースからなる粒子である、請求項23に記載の粒子。
[請求項25]
被覆層を構成する樹脂又は油脂の融点が、15℃以上100℃以下である、請求項21から24の何れか一項に記載の粒子。
[請求項26]
被覆層がシェラックを含む、請求項21から25の何れか一項に記載の粒子。
[請求項27]
被覆層が生体内分解性高分子を含み、注射可能な粒子径を有する、請求項21から25の何れか一項に記載の粒子。
[請求項28]
被覆層がポリ乳酸または乳酸・グリコール酸コポリマーを含み、粒子の90%粒径(D90)が150μm以下である、請求項21から25の何れか一項に記載の粒子。
[請求項29]
被覆層が、15℃以上100℃以下の融点を有する油脂と重量平均分子量1000以上の高分子とを含む、請求項21から28の何れか一項に記載の粒子。
[請求項30]
被覆層が、シェラックと腸溶性ポリマーとを含む、請求項21から29の何れか一項に記載の粒子。
[請求項31]
腸溶性ポリマーがメタクリル酸コポリマーLである請求項30に記載の粒子。
[請求項32]
徐放性粒子である、請求項21から31の何れか一項に記載の粒子。
[請求項33]
腸溶性粒子である、請求項21から31の何れか一項に記載の粒子。
[請求項34]
樹脂又は油脂の少なくとも一種を含む被覆層を2層以上有している、請求項21から33の何れか一項に記載の粒子。
図面