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1. (WO2019009327) 有機エレクトロニクス材料及び有機エレクトロニクス素子
Document

明 細 書

発明の名称 有機エレクトロニクス材料及び有機エレクトロニクス素子

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024  

発明の効果

0025  

図面の簡単な説明

0026  

発明を実施するための形態

0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135  

実施例

0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168  

符号の説明

0169  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : 有機エレクトロニクス材料及び有機エレクトロニクス素子

技術分野

[0001]
 本発明の実施形態は、有機エレクトロニクス材料、インク組成物、有機層、有機エレクトロニクス素子、有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)、表示素子、照明装置、及び表示装置に関する。

背景技術

[0002]
 有機EL素子は、例えば、白熱ランプ又はガス充填ランプの代替えとなる大面積ソリッドステート光源用途として注目されている。また、フラットパネルディスプレイ(FPD)分野における液晶ディスプレイ(LCD)に置き換わる最有力の自発光ディスプレイとしても注目されており、製品化が進んでいる。
[0003]
 有機EL素子は、使用される有機材料から、低分子型有機EL素子及び高分子型有機EL素子の2つに大別される。高分子型有機EL素子では、有機材料として高分子化合物が用いられ、低分子型有機EL素子では、低分子化合物が用いられる。一方、有機EL素子の製造方法は、主に真空系で成膜が行われる乾式プロセスと、凸版印刷、凹版印刷等の有版印刷、インクジェット等の無版印刷などにより成膜が行われる湿式プロセスの2つに大別される。簡易成膜が可能であるため、湿式プロセスは、今後の大画面有機ELディスプレイには不可欠な方法として期待されている。
[0004]
 このため、湿式プロセスに適した材料の開発が進められており、例えば、重合性基を有する化合物を利用して多層構造を形成する検討が行われている(例えば、特許文献1参照)。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 国際公開第2010/140553号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 湿式プロセスを用いて作製した有機EL素子は、低コスト化及び大面積化が容易であるという特長を有している。湿式プロセスにおいては、塗布溶媒への高い溶解性が望まれることがある。また、プラスチックフィルムへの塗工を考慮すると、用途によっては、低温で硬化する材料が望まれている。
[0007]
 本発明の実施形態は、湿式プロセスにおいて広いプロセスマージンを確保できる有機エレクトロニクス材料を提供することを目的とする。また、本発明の他の実施形態は、湿式プロセスに適したインク組成物、並びに、生産効率に優れた有機層、有機エレクトロニクス素子、有機EL素子、表示素子、照明装置、及び表示装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明には様々な実施形態が含まれる。実施形態の例を以下に列挙する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
[0009]
 一実施形態は、電荷輸送性ポリマーを含有する有機エレクトロニクス材料であって、前記電荷輸送性ポリマーが、該電荷輸送性ポリマーとトルエンとを、該電荷輸送性ポリマー/トルエン=20mg/2,290μLの比で含有する溶液1,000μLに、メタノールを25μLずつ滴下し、撹拌した場合に、前記溶液に濁りが生じるまでに添加したメタノール量が350μLより大きいポリマーである、有機エレクトロニクス材料に関する。
[0010]
 一実施形態によれば、前記電荷輸送性ポリマーは、重合性官能基を有することが好ましい。より好ましくは、前記電荷輸送性ポリマーは、末端に、重合性官能基を2つ有する芳香環を有する。
[0011]
 他の一実施形態は、電荷輸送性ポリマーを含有する有機エレクトロニクス材料であって、前記電荷輸送性ポリマーが、末端に、重合性官能基を2つ有する芳香環を有する、有機エレクトロニクス材料に関する。
[0012]
 一実施形態によれば、前記重合性官能基を2つ有する芳香環は、下記式で表される芳香環を含むことが好ましい。
[化1]


 (nは、それぞれ独立に、1~6の整数を表す。)
[0013]
 一実施形態によれば、前記重合性官能基は、オキセタニル基、オキシラニル基、ビニル基、アクリロイルオキシ基、及びメタクリロイルオキシ基からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
[0014]
 一実施形態によれば、前記電荷輸送性ポリマーは、正孔輸送性ポリマーであることが好ましい。
[0015]
 一実施形態によれば、前記電荷輸送性ポリマーは、3方向以上に分岐した構造を有することが好ましい。
[0016]
 一実施形態によれば、前記電荷輸送性ポリマーは、電荷輸送性を有する構造単位を有し、該電荷輸送性を有する構造単位が、2価の構造単位L及び3価以上の構造単位Bからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
[0017]
 一実施形態によれば、前記電荷輸送性を有する構造単位が、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、ビチオフェン構造、ベンゼン構造、フェノキサジン構造、及びフルオレン構造からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有することが好ましい。
[0018]
 一実施形態によれば、前記いずれかの有機エレクトロニクス材料は、重合開始剤を更に含有してもよい。
[0019]
 一実施形態によれば、前記重合開始剤は、オニウム塩を含むことが好ましい。
[0020]
 また、他の一実施形態は、前記いずれかの有機エレクトロニクス材料と溶媒とを含有する、インク組成物に関する。
[0021]
 他の一実施形態は、前記いずれかの有機エレクトロニクス材料、又は、前記インク組成物により形成された、有機層に関する。
[0022]
 他の一実施形態は、前記有機層を備えた、有機エレクトロニクス素子に関する。
[0023]
 他の一実施形態は、前記有機層を備えた、有機エレクトロルミネセンス素子に関する。
[0024]
 さらに、他の実施形態は、前記有機エレクトロルミネセンス素子を備えた、表示素子及び照明装置、並びに、前記照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えた、表示装置に関する。

発明の効果

[0025]
 本発明の実施形態によれば、湿式プロセスにおいて広いプロセスマージンを確保できる有機エレクトロニクス材料を提供することができる。また、本発明の他の実施形態によれば、湿式プロセスに適したインク組成物、並びに、生産効率に優れた有機層、有機エレクトロニクス素子、有機EL素子、表示素子、照明装置、及び表示装置を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0026]
[図1] 図1は、本発明の実施形態である有機EL素子の一例を示す模式図である。
[図2] 図2は、実施例で用いたモノマーの H NMR(核磁気共鳴)スペクトルを示す図である。

発明を実施するための形態

[0027]
 本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
<有機エレクトロニクス材料>
 有機エレクトロニクス材料は、電荷輸送性ポリマーを少なくとも含有する。有機エレクトロニクス材料は、ドーパント、重合開始剤等の任意の成分を含有してもよい。
[電荷輸送性ポリマー]
 一実施形態によれば、有機エレクトロニクス材料は、下記を満たす電荷輸送性ポリマーを含有する。
 電荷輸送性ポリマーとトルエンとを「電荷輸送性ポリマー/トルエン=20mg/2,290μL」の比で含有する溶液1,000μLに、メタノールを25μLずつ滴下し、撹拌した場合に、前記溶液に濁りが生じるまでに添加したメタノール量が350μLより大きい。
[0028]
 メタノール量の確認は、室温(25℃)で行う。溶液及びメタノールとして、温度が25℃に調整された溶液及びメタノールを用いる。また、溶液とメタノールとの撹拌は、サンプル管等の密閉できる容器内で行う。具体的には、以下の方法により確認できる。
[0029]
 電荷輸送性ポリマー20mgをトルエン2,290μLに溶かし、溶液を得る。次いで、得られた溶液から1,000μL(25℃)をサンプル管に量り取り、室温(25℃)でメタノール(25℃)を25μL滴下し、撹拌する。メタノールの滴下及び撹拌を繰り返し行い、濁りが生じるまでに添加したメタノール量を求める。濁りは目視により確認する。
[0030]
 電荷輸送性ポリマーの良好な溶解性を得る観点から、メタノール量は350μLより大きいことが好ましく、450μLより大きいことがより好ましく、500μLより大きいことが更に好ましい。溶解性の向上効果は、特に、電荷輸送性ポリマーを有機溶剤に溶解させる際に良好に得られる。有機溶剤は、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤が挙げられる。
[0031]
 メタノール量は、ポリマーの高い溶解性を得る観点からは、好ましくは800μL以下であり、より好ましくは700μL以下であり、更に好ましくは600μL以下である。
[0032]
 メタノール量が大きい電荷輸送性ポリマーを得るための方法として、例えば、ヘテロ原子を含む基等の極性基を有する構造を導入する方法などが挙げられる。一方、メタノール量が小さい電荷輸送性ポリマーを得るための方法として、例えば、アルキル基等の低極性基を有する構造を導入する方法などが挙げられる。
[0033]
 一実施形態において、350μLより大きいメタノール量を示す電荷輸送性ポリマーは、重合性官能基を有していてもよい。重合反応により電荷輸送性ポリマーを硬化させ、溶剤への溶解度を変化させることができる。重合性官能基として、極性基又は低極性基を選択することによって、電荷輸送性ポリマーのメタノール量を調整することも可能である。
[0034]
 重合性官能基は、電荷輸送性ポリマーの末端部(すなわち、後述する構造単位T)に導入されていても、末端以外の部分(すなわち、後述する構造単位L又はB)に導入されていても、末端部と末端以外の部分の両方に導入されていてもよい。硬化性の観点からは、少なくとも末端部に導入されていることが好ましく、硬化性及び電荷輸送性の両立を図る観点からは、末端部のみに導入されていることが好ましい。
[0035]
 後述するように電荷輸送性ポリマーが分岐構造を有する場合、重合性官能基は、電荷輸送性ポリマーの主鎖に導入されていても、側鎖に導入されていてもよく、主鎖と側鎖の両方に導入されていてもよい。
[0036]
 「重合性官能基」とは、熱、光等を加えることにより、互いに結合を形成し得る官能基をいう。
[0037]
 重合性官能基としては、炭素-炭素多重結合を有する基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、エチニル基、アクリロイル基、アクリレート基(アクリロイルオキシ基)、アクリロイルアミノ基、メタクリロイル基、メタクリレート基(メタクリロイルオキシ基)、メタクリロイルアミノ基、ビニルオキシ基、ビニルアミノ基等)、小員環を有する基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基等の環状アルキル基;エポキシ基(オキシラニル基)、オキセタン基(オキセタニル基)等の環状エーテル基;ジケテン基;エピスルフィド基;ラクトン基;ラクタム基等)、複素環基(例えば、フラン-イル基、ピロール-イル基、チオフェン-イル基、シロール-イル基等)などが挙げられる。重合性官能基は、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
[0038]
 好ましい重合性官能基としては、オキセタニル基、オキシラニル基、ビニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。保存安定性の観点から、オキセタニル基が好ましい。また、オキセタニル基の導入により、メタノール量の調整を容易に行うことができる。
[0039]
 重合性官能基の自由度を上げ、重合反応を生じさせやすくする観点からは、電荷輸送性ポリマーの主骨格と重合性官能基とが、アルキレン鎖で連結されていることが好ましい。また、例えば、電極上に有機層を形成する場合、ITO等の親水性電極との親和性を向上させる観点からは、エチレングリコール鎖、ジエチレングリコール鎖等の親水性の鎖で連結されていることが好ましい。さらに、重合性官能基を導入するために用いられるモノマーの調製が容易になる観点からは、電荷輸送性ポリマーは、アルキレン鎖及び/又は親水性の鎖の末端部、すなわち、これらの鎖と重合性官能基との連結部、及び/又は、これらの鎖と電荷輸送性ポリマーの骨格との連結部に、エーテル結合又はエステル結合を有していてもよい。後述する「重合性官能基を含む基」の例には、重合性官能基それ自体、置換基を有する重合性官能基、又は、非置換又は置換の重合性官能基とアルキレン鎖等の結合基とを合わせた基などが含まれる。重合性官能基を含む基として、例えば、国際公開第2010/140553号に例示された基を好適に用いることができる。
[0040]
 重合性官能基は、溶解度の変化に寄与する観点からは、電荷輸送性ポリマー中に多く含まれる方が好ましい。一方、電荷輸送性を妨げない観点からは、電荷輸送性ポリマー中に含まれる量が少ない方が好ましい。重合性官能基の含有量は、これらを考慮し、適宜設定できる。
[0041]
 例えば、電荷輸送性ポリマー1分子あたりの重合性官能基の数は、十分な溶解度の変化を得る観点から、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、重合性官能基数は電荷輸送性を保つ観点から、1,000個以下が好ましく、500個以下がより好ましい。
[0042]
 電荷輸送性ポリマー1分子あたりの重合性官能基の数は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、重合性官能基の仕込み量(例えば、重合性官能基を有するモノマーの仕込み量)、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量、電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量等を用い、平均値として求めることができる。また、重合性官能基の数は、電荷輸送性ポリマーの H NMR(核磁気共鳴)スペクトルにおける重合性官能基に由来するシグナルの積分値と全スペクトルの積分値との比、電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量等を利用し、平均値として算出できる。簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、好ましくは、仕込み量を用いて求めた値を採用する。
[0043]
 一実施形態によれば、有機エレクトロニクス材料は、末端に、重合性官能基を2つ有する芳香環を有する電荷輸送性ポリマーを含有する。末端とは、ポリマー鎖の末端である。
[0044]
 「芳香環」とは、芳香性を示す環をいう。芳香環は、例えばベンゼンのような単環であってもよく、例えばナフタレンのような環が互いに縮合した縮合環であってもよい。
[0045]
 芳香環は、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素であってもよく、ピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントロリン、フラン、ピロール、チオフェン、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチオフェン等の芳香族複素環であってもよい。
[0046]
 芳香環は、例えば、ビフェニル、ターフェニル、及びトリフェニルベンゼンのように、独立した単環及び縮合環から選択される2個以上が結合した構造であってもよい。
[0047]
 芳香環は、芳香族炭化水素であることが好ましい。また、芳香環は単環であることが好ましい。特に好ましくはベンゼンである。
[0048]
 「重合性官能基」については上述のとおりである。「重合性官能基を2つ有する芳香環」において、2つの重合性官能基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。「重合性官能基を2つ有する芳香環」において、重合性官能基は、芳香環に直接結合していても、又は、アルキレン鎖等の結合基を介して結合していてもよい。すなわち、「重合性官能基を2つ有する芳香環」は、「重合性官能基を含む基を2つ有する芳香環」であってもよい。「重合性官能基を含む基を2つ有する芳香環」において、2つの重合性官能基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、2つの重合性官能基を含む基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
[0049]
 好ましい実施形態において、重合性官能基を2つ有する芳香環として以下が挙げられる。重合性官能基を2つ有する芳香環は以下に限定されない。
[0050]
[化1A]


[0051]
 Arは、芳香環を表し、Rは、それぞれ独立に、重合性官能基を含む基を表す。「*」は他の構造との結合部位を表す。
 Arは、芳香族炭化水素基であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。Arは、R以外に置換基を有してもよく、置換基の例として、構造単位LにおけるR(ただし、重合性官能基を含む基を除く。)が挙げられる。
 Rは、炭素-炭素多重結合を有する基及び小員環を有する基から選択される基を含むことが好ましく、小員環を有する基を含むことがより好ましく、環状エーテル基を含むことが更に好ましく、オキセタン基を含むことが特に好ましい。Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
[0052]
 重合性官能基を2つ有する芳香環として、好ましくは以下が挙げられる。
[0053]
[化1B]


[0054]
 Rは、それぞれ独立に、重合性官能基を含む基を表す。「*」は他の構造との結合部位を表す。
 Rは、炭素-炭素多重結合を有する基及び小員環を有する基から選択される基を含むことが好ましく、小員環を有する基を含むことがより好ましく、環状エーテル基を含むことが更に好ましく、オキセタン基を含むことが特に好ましい。Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
[0055]
 重合性官能基を2つ有する芳香環の具体例として以下が挙げられる。重合性官能基を2つ有する芳香環は以下に限定されない。
[0056]
[化2]


[0057]
 nは、それぞれ独立に、1~6の整数を表す。「*」は他の構造との結合部位を表す。
[0058]
 重合性官能基を2つ有する芳香環として、より具体的には以下が挙げられる。「*」は他の構造との結合部位を表す。
[化3]


[0059]
 電荷輸送性ポリマーは、末端に重合性官能基を2つ有する芳香環を有することによって、低温で良好な硬化性を示す。また、電荷輸送性ポリマーは、末端に重合性官能基を2つ有する芳香環を有することによって、良好な溶解性を示す。電荷輸送性ポリマーでは、重合性官能基を2つ有する芳香環が立体障害となり、溶媒への溶解性が向上していると推察される。ただし、この推察は本発明を限定するものではない。
[0060]
 一実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、上述のメタノール量を満たし、かつ、末端に、重合性官能基を2つ有する芳香環を有するポリマーであることが好ましい。
[0061]
 電荷輸送性ポリマーは、電荷を輸送する能力を有するポリマーである。電荷輸送性ポリマーは、正孔を輸送する能力を有することが好ましい。正孔輸送性ポリマーは、例えば、有機EL素子の正孔注入層及び/又は正孔輸送層として用いることができる。また、電子輸送性ポリマーであれば、例えば、電子輸送層及び/又は電子注入層として用いることができる。また、正孔と電子の両方を輸送する能力を有するポリマーであれば、例えば、発光層の材料に用いることができる。
[0062]
 電荷輸送性ポリマーは、直鎖状であっても、又は、分岐状であってもよい。分岐状の電荷輸送性ポリマーは、3方向以上に分岐した構造を有する。分岐状の電荷輸送性ポリマーは、主鎖と分岐鎖(側鎖)とを有し、側鎖には1つ以上の構造単位を含む。
[0063]
 電荷輸送性ポリマーは、好ましくは、電荷輸送性を有する2価の構造単位Lと、ポリマー鎖の末端部を構成する1価の構造単位Tとを少なくとも含み、分岐部を構成する3価以上の構造単位Bを更に含んでもよい。また、電荷輸送性ポリマーは、好ましくは、電荷輸送性を有し、分岐部を構成する3価以上の構造単位Bと、ポリマー鎖の末端部を構成する1価の構造単位Tとを少なくとも含み、2価の構造単位Lを更に含んでもよい。電荷輸送性ポリマーは、各構造単位を、それぞれ1種のみ含んでいても、又は、それぞれ複数種含んでいてもよい。電荷輸送性ポリマーにおいて、各構造単位は、「1価」~「3価以上」の結合部位において互いに結合している。
[0064]
 電荷輸送性ポリマーは、構造単位L及びBの少なくともいずれかとして、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、ビチオフェン構造、フルオレン構造、ベンゼン構造、及びフェノキサジン構造からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
[0065]
(構造)
 電荷輸送性ポリマーに含まれる部分構造の例として、以下が挙げられる。電荷輸送性ポリマーは以下の部分構造を有するポリマーに限定されない。部分構造中、「L」は構造単位Lを、「T」は構造単位Tを、「B」は構造単位Bを表す。部分構造中、複数のLは、互いに同一の構造単位であっても、互いに異なる構造単位であってもよい。T及びBについても、同様である。「*」は、他の構造単位との結合部位を表す。以下の構造単位L、T及びBの具体例においても同じである。
[0066]
 直鎖状の電荷輸送性ポリマーの部分構造例
[化4]


[0067]
 分岐状の電荷輸送性ポリマーの部分構造例
[化5]


[0068]
(構造単位L)
 構造単位Lは、2価の構造単位である。構造単位Lは、電荷輸送性を有する構造単位であることが好ましい。電荷輸送性を有する構造単位Lは、電荷を輸送する能力を有する原子団を含んでいればよく、特に限定されない。例えば、構造単位Lは、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、フルオレン構造、フェノキサジン構造、ベンゼン構造、ビフェニレン構造、ターフェニレン構造、ナフタレン構造、アントラセン構造、テトラセン構造、フェナントレン構造、ジヒドロフェナントレン構造、ピリジン構造、ピラジン構造、キノリン構造、イソキノリン構造、キノキサリン構造、アクリジン構造、ジアザフェナントレン構造、フラン構造、ピロール構造、オキサゾール構造、オキサジアゾール構造、チアゾール構造、チアジアゾール構造、トリアゾール構造、ベンゾチオフェン構造、ベンゾオキサゾール構造、ベンゾオキサジアゾール構造、ベンゾチアゾール構造、ベンゾチアジアゾール構造、ベンゾトリアゾール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。また、これらを2個以上含む構造であってもよく、2個以上含む構造としては、例えば、ビチオフェン構造が挙げられる。芳香族アミン構造は、好ましくはトリアリールアミン構造であり、より好ましくはトリフェニルアミン構造である。
[0069]
 一実施形態において、構造単位Lは、優れた正孔輸送性を得る観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、ビチオフェン構造、フルオレン構造、ベンゼン構造、及びフェノキサジン構造からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、置換又は非置換の、芳香族アミン構造及びカルバゾール構造からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。他の実施形態において、構造単位Lは、優れた電子輸送性を得る観点から、置換又は非置換の、フルオレン構造、ベンゼン構造、フェナントレン構造、ピリジン構造、及びキノリン構造からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
[0070]
 構造単位Lの具体例として、以下が挙げられる。構造単位Lは、以下に限定されない。
[0071]
[化6]


[0072]
[化7]


[0073]
 Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。好ましくは、Rは、それぞれ独立に、-R 、-OR 、-SR 、-OCOR 、-COOR 、-SiR 、ハロゲン原子、及び、重合性官能基を含む基からなる群から選択される。R ~R は、それぞれ独立に、水素原子;炭素数1~22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基;又は、炭素数2~30個のアリール基又はヘテロアリール基を表す。アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団である。ヘテロアリール基は、芳香族複素環から水素原子1個を除いた原子団である。アルキル基は、炭素数2~20個のアリール基又はヘテロアリール基により更に置換されていてもよく、アリール基及びヘテロアリール基は、炭素数1~22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基により更に置換されていてもよい。Rは、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、及びアルキル置換アリール基である。Arは、炭素数2~30個のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。アリーレン基は、芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた原子団である。ヘテロアリーレン基は、芳香族複素環から水素原子2個を除いた原子団である。Arは、好ましくはアリーレン基であり、より好ましくはフェニレン基である。
[0074]
 芳香族炭化水素としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環が挙げられる。芳香族複素環としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環が挙げられる。
[0075]
(構造単位T)
 構造単位Tは、電荷輸送性ポリマーの末端部を構成する1価の構造単位である。構造単位Tは、特に限定されず、例えば、置換又は非置換の、芳香族炭化水素構造、芳香族複素環構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。構造単位Tが構造単位Lと同じ構造を有していてもよい。この場合、例えば、構造単位Lとして挙げた例を1価に変更して構造単位Tとできる。一実施形態において、構造単位Tは、電荷の輸送性を低下させずに耐久性を付与するという観点から、置換又は非置換の芳香族炭化水素構造であることが好ましく、置換又は非置換のベンゼン構造であることがより好ましい。電荷輸送性ポリマーが末端に重合性官能基を2つ有する芳香環を有する場合、構造単位Tには、2つの重合性官能基を有する芳香族炭化水素構造及び/又は2つの重合性官能基を有する芳香族複素環構造が少なくとも含まれる。
[0076]
 構造単位Tの具体例として、以下が挙げられる。構造単位Tは、以下に限定されない。
[0077]
[化8]


[0078]
 Rは、構造単位LにおけるRと同様である。一実施形態において、電荷輸送性ポリマーが末端に重合性官能基を2つ有する芳香環を有する場合、好ましくは、Rのいずれか2つが、重合性官能基を含む基である。
[0079]
 電荷輸送性ポリマーが末端に重合性官能基を2つ有する芳香環を有する場合、構造単位Tの具体例として、重合性官能基を2つ有する芳香環の例として説明した上述の構造が挙げられる。
[0080]
(構造単位B)
 構造単位Bは、電荷輸送性ポリマーが分岐構造を有する場合に、分岐部を構成する3価以上の構造単位である。構造単位Bは、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、好ましくは6価以下であり、より好ましくは3価又は4価である。構造単位Bは、電荷輸送性を有する構造単位であることが好ましい。構造単位Bが構造単位Lと同じ構造を有していてもよい。この場合、例えば、構造単位Lとして挙げた例を3価以上に変更して構造単位Bとできる。例えば、構造単位Bは、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、縮合多環式芳香族炭化水素構造、及び、これらの1種又は2種以上を含有する構造から選択される。
[0081]
 構造単位Bの具体例として、以下が挙げられる。構造単位Bは、以下に限定されない。
[0082]
[化9]


[0083]
 Wは、3価の連結基を表し、例えば、炭素数2~30個のアレーントリイル基又はヘテロアレーントリイル基を表す。アレーントリイル基は、芳香族炭化水素から水素原子3個を除いた原子団である。ヘテロアレーントリイル基は、芳香族複素環から水素原子3個を除いた原子団である。Arは、それぞれ独立に2価の連結基を表し、例えば、それぞれ独立に、炭素数2~30個のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Arは、好ましくはアリーレン基、より好ましくはフェニレン基である。Yは、2価の連結基を表し、例えば、構造単位LにおけるR(ただし、重合性官能基を含む基を除く。)のうち水素原子を1個以上有する基から、更に1個の水素原子を除いた2価の基が挙げられる。Zは、炭素原子、ケイ素原子、又はリン原子のいずれかを表す。構造単位中、ベンゼン環及びArは、置換基を有していてもよく、置換基の例として、構造単位LにおけるRが挙げられる。
[0084]
(数平均分子量)
 電荷輸送性ポリマーの数平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。数平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、2,000以上が更に好ましい。また、数平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、50,000以下が更に好ましい。
[0085]
(重量平均分子量)
 電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。重量平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、1,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上が更に好ましい。また、重量平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、700,000以下がより好ましく、400,000以下が更に好ましい。
[0086]
 数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。
[0087]
 測定には、例えば以下の条件を適用できる。
送液ポンプ    :L-6050 (株)日立ハイテクノロジーズ
UV-Vis検出器:L-3000 (株)日立ハイテクノロジーズ
カラム      :Gelpack(登録商標) GL-A160S/GL-A150S 日立化成(株)
溶離液      :THF(HPLC用、安定剤を含まない) 和光純薬工業(株)
流速       :1mL/min
カラム温度    :室温
分子量標準物質  :標準ポリスチレン
[0088]
(構造単位の割合)
 電荷輸送性ポリマーが構造単位Lを含む場合、構造単位Lの割合は、十分な電荷輸送性を得る観点から、全構造単位を基準として、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Lの割合は、構造単位T及び必要に応じて導入される構造単位Bを考慮すると、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下が更に好ましい。
[0089]
 電荷輸送性ポリマーに含まれる構造単位Tの割合は、有機エレクトロニクス素子の特性向上の観点、又は、粘度の上昇を抑え、電荷輸送性ポリマーの合成を良好に行う観点から、全構造単位を基準として、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Tの割合は、十分な電荷輸送性を得る観点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。
[0090]
 電荷輸送性ポリマーが構造単位Bを含む場合、構造単位Bの割合は、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、全構造単位を基準として、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Bの割合は、粘度の上昇を抑え、電荷輸送性ポリマーの合成を良好に行う観点、又は、十分な電荷輸送性を得る観点から、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下が更に好ましい。
[0091]
 電荷輸送性ポリマーが重合性官能基を有する場合、重合性官能基の割合は、電荷輸送性ポリマーを効率よく硬化させるという観点から、全構造単位を基準として0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、3モル%以上が更に好ましい。また、重合性官能基の割合は、良好な電荷輸送性を得るという観点から、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。なお、ここでの「重合性官能基の割合」とは、重合性官能基を有する構造単位の割合をいう。
[0092]
 電荷輸送性、耐久性、生産性等のバランスを考慮すると、電荷輸送性ポリマーが構造単位L及び構造単位Tを含む場合、構造単位L及び構造単位Tの割合(モル比)は、L:T=100:1~70が好ましく、100:3~50がより好ましく、100:5~30が更に好ましい。また、電荷輸送性ポリマーが構造単位Bを更に含む場合、構造単位L、構造単位T、及び構造単位Bの割合(モル比)は、L:T:B=100:10~200:10~100が好ましく、100:20~180:20~90がより好ましく、100:40~160:30~80が更に好ましい。
[0093]
 構造単位の割合は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量を用いて求めることができる。また、構造単位の割合は、電荷輸送性ポリマーの H NMRスペクトルにおける各構造単位に由来するスペクトルの積分値を利用し、平均値として算出することができる。簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、好ましくは、仕込み量を用いて求めた値を採用する。
[0094]
 電荷輸送性ポリマーが正孔輸送性材料であるとき、高い正孔注入性及び正孔輸送性を得る観点から、芳香族アミン構造を有する単位及び/又はカルバゾール構造を有する単位を主要な構造単位として有する化合物であることが好ましい。この観点から、電荷輸送性ポリマー中の全構造単位数(ただし、末端の構造単位を除く。)に対する芳香族アミン構造を有する単位及びカルバゾール構造を有する単位の全数の割合(一方の場合は一方の全数。両方の場合は両方を合計した全数。)は、40モル%以上が好ましく、45モル%以上がより好ましく、50モル%以上が更に好ましい。芳香族アミン構造を有する単位及び/又はカルバゾール構造を有する単位の全数の割合を100モル%とすることも可能である。
[0095]
(製造方法)
 電荷輸送性ポリマーは、種々の合成方法により製造でき、特に限定されない。例えば、鈴木カップリング、根岸カップリング、薗頭カップリング、スティルカップリング、ブッフバルト・ハートウィッグカップリング等の公知のカップリング反応を用いることができる。鈴木カップリングは、芳香族ボロン酸誘導体と芳香族ハロゲン化物の間で、Pd触媒を用いたクロスカップリング反応を起こさせるものである。鈴木カップリングによれば、所望とする芳香環同士を結合させることにより、電荷輸送性ポリマーを簡便に製造できる。
[0096]
 カップリング反応では、触媒として、例えば、Pd(0)化合物、Pd(II)化合物、Ni化合物等が用いられる。また、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等を前駆体とし、ホスフィン配位子と混合することにより発生させた触媒種を用いることもできる。電荷輸送性ポリマーの合成方法については、例えば、国際公開第2010/140553号の記載を参照できる。
[0097]
[ドーパント]
 有機エレクトロニクス材料は、ドーパントを更に含有してもよい。ドーパントは、有機エレクトロニクス材料に添加することでドーピング効果を発現させ、電荷の輸送性を向上させ得る化合物であればよく、特に制限はない。ドーピングには、p型ドーピングとn型ドーピングがあり、p型ドーピングではドーパントとして電子受容体として働く物質が用いられ、n型ドーピングではドーパントとして電子供与体として働く物質が用いられる。正孔輸送性の向上にはp型ドーピング、電子輸送性の向上にはn型ドーピングを行うことが好ましい。有機エレクトロニクス材料に用いられるドーパントは、p型ドーピング又はn型ドーピングのいずれの効果を発現させるドーパントであってもよい。また、1種のドーパントを単独で添加しても、複数種のドーパントを混合して添加してもよい。
[0098]
 p型ドーピングに用いられるドーパントは、電子受容性の化合物であり、例えば、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属化合物、イオン化合物、ハロゲン化合物、π共役系化合物等が挙げられる。具体的には、ルイス酸としては、FeCl 、PF 、AsF 、SbF 、BF 、BCl 、BBr 等;プロトン酸としては、HF、HCl、HBr、HNO 、H SO 、HClO 等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、1-ブタンスルホン酸、ビニルフェニルスルホン酸、カンファスルホン酸等の有機酸;遷移金属化合物としては、FeOCl、TiCl 、ZrCl 、HfCl 、NbF 、AlCl 、NbCl 、TaCl 、MoF ;イオン化合物としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、AsF (ヘキサフルオロ砒酸イオン)、BF (テトラフルオロホウ酸イオン)、PF (ヘキサフルオロリン酸イオン)等のパーフルオロアニオンを有する塩、アニオンとして前記プロトン酸の共役塩基を有する塩など;ハロゲン化合物としては、Cl 、Br 、I 、ICl、ICl 、IBr、IF等;π共役系化合物としては、TCNE(テトラシアノエチレン)、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)等が挙げられる。また、特開2000-36390号公報、特開2005-75948号公報、特開2003-213002号公報等に記載の電子受容性化合物を用いることも可能である。好ましくは、ルイス酸、イオン化合物、π共役系化合物等である。なかでも、オニウム塩が特に好ましく用いられる。
[0099]
 オニウム塩は、オニウムイオンを含む化合物である。オニウム塩としては、例えば、アンモニウム、ホスホニウム、オキソニウム、スルホニウム、ヨードニウム等のオニウムイオンを含む塩が挙げられる。例えば、イオン化合物の例からオニウム塩を選択し、使用することができる。
[0100]
 n型ドーピングに用いられるドーパントは、電子供与性の化合物であり、例えば、Li、Cs等のアルカリ金属;Mg、Ca等のアルカリ土類金属;LiF、Cs CO 等のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩;金属錯体;電子供与性有機化合物などが挙げられる。
[0101]
 有機層の溶解度の変化を容易にするために、ドーパントとして、重合性官能基に対する重合開始剤として作用し得る化合物を用いることが好ましい。ドーパントとしての機能と重合開始剤としての機能とを兼ねる物質として、例えば、オニウム塩が挙げられる。
[0102]
[重合開始剤]
 電荷輸送性ポリマーが重合性官能基を有する場合、有機エレクトロニクス材料は、好ましくは、重合開始剤を含有する。重合開始剤として、公知のラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤等を使用できる。インク組成物を簡便に調製できる観点から、ドーパントとしての機能と重合開始剤としての機能とを兼ねる物質を用いることが好ましい。ドーパントとしての機能も備えた重合開始剤として、例えば、オニウム塩が挙げられる。オニウム塩の例として、パーフルオロアリール基又はパーフルオロアルキル基を有するアニオンを有する塩が挙げられ、具体例には、パーフルオロアリール基を有するアニオンとヨードニウムイオン又はアンモニウムイオンとの塩が含まれる。これらの例を以下に挙げる。
[0103]
[化10]


[0104]
[他の任意成分]
 有機エレクトロニクス材料は、他の電荷輸送性ポリマー、電荷輸送性低分子化合物等を更に含有してもよい。
[0105]
[含有量]
 電荷輸送性ポリマーの含有量は、良好な電荷輸送性を得る観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。100質量%とすることも可能である。
[0106]
 ドーパントを含有する場合、その含有量は、有機エレクトロニクス材料の電荷輸送性を向上させる観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、成膜性を良好に保つ観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
[0107]
 重合開始剤を含有する場合、その含有量は、電荷輸送性ポリマーの硬化性を向上させる観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、電荷輸送性を良好に保つ観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
[0108]
<インク組成物>
 有機エレクトロニクス材料は、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料と該材料を溶解又は分散し得る溶媒とを含有するインク組成物として用いることが好ましい。インク組成物を用いることによって、塗布法といった簡便な方法によって有機層を容易に形成できる。
[0109]
[溶媒]
 溶媒としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を使用できる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ペンタン、ヘキサン、オクタン等のアルカン;シクロヘキサン等の環状アルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン等の芳香族炭化水素;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート等の脂肪族エーテル;1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。好ましくは、芳香族炭化水素、脂肪族エステル、芳香族エステル、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等であり、より好ましくは、芳香族炭化水素である。
[0110]
[添加剤]
 インク組成物は、更に、任意成分として添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、難燃剤、酸化防止剤、還元防止剤、酸化剤、還元剤、表面改質剤、乳化剤、消泡剤、分散剤、界面活性剤等が挙げられる。
[0111]
[含有量]
 インク組成物における溶媒の含有量は、種々の塗布方法へ適用することを考慮して定めることができる。例えば、溶媒の含有量は、溶媒に対し電荷輸送性ポリマーの割合が、0.1質量%以上となる量が好ましく、0.2質量%以上となる量がより好ましく、0.5質量%以上となる量が更に好ましい。また、溶媒の含有量は、溶媒に対し電荷輸送性ポリマーの割合が、20質量%以下となる量が好ましく、15質量%以下となる量がより好ましく、10質量%以下となる量が更に好ましい。
[0112]
<有機層>
 一実施形態によれば、有機層は、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料又はインク組成物を用いて形成される。インク組成物を用いることによって、塗布法により有機層を良好に形成できる。塗布方法としては、例えば、スピンコーティング法;キャスト法;浸漬法;凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、平版印刷、凸版反転オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の有版印刷法;インクジェット法等の無版印刷法などの公知の方法が挙げられる。塗布法によって有機層を形成する場合、塗布後に得られた有機層(塗布層)を、ホットプレート又はオーブンを用いて乾燥させ、溶媒を除去してもよい。
[0113]
 電荷輸送性ポリマーが重合性官能基を有する場合、光照射、加熱処理等により電荷輸送性ポリマーの重合反応を進行させ、有機層の溶解度を変化させてもよい。溶解度を変化させた有機層を積層することで、有機エレクトロニクス素子の多層化を容易に図ることが可能となる。有機層の形成方法については、例えば、国際公開第2010/140553号の記載を参照できる。
[0114]
 乾燥後又は硬化後の有機層の厚さは、電荷輸送の効率を向上させる観点から、好ましくは0.1nm以上であり、より好ましくは1nm以上であり、更に好ましくは3nm以上である。また、有機層の厚さは、電気抵抗を小さくする観点から、好ましくは300nm以下であり、より好ましくは200nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。
[0115]
<有機エレクトロニクス素子>
 一実施形態によれば、有機エレクトロニクス素子は、少なくとも前記実施形態の有機層を有する。有機エレクトロニクス素子として、例えば、有機EL素子、有機光電変換素子、有機トランジスタ等が挙げられる。有機エレクトロニクス素子は、好ましくは、少なくとも一対の電極の間に有機層が配置された構造を有する。
[0116]
<有機EL素子>
 一実施形態によれば、有機EL素子は、少なくとも前記実施形態の有機層を有する。有機EL素子は、通常、発光層、陽極、陰極、及び基板を備えており、必要に応じて、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層等の他の機能層を備えている。各層は、蒸着法により形成してもよく、塗布法により形成してもよい。有機EL素子は、好ましくは、有機層を発光層又は機能層として有し、より好ましくは機能層として有し、更に好ましくは正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方として有する。
[0117]
 図1は、有機EL素子の一実施形態を示す断面模式図である。図1の有機EL素子は、多層構造の素子であり、基板8、陽極2、前記実施形態の有機層からなる正孔注入層3、正孔輸送層6、発光層1、電子輸送層7、電子注入層5、並びに陰極4をこの順に有している。以下、各層について説明する。
[0118]
 図1では、正孔注入層3が、前記実施形態の有機層であるが、実施形態の有機ELはこのような構造に限らず、他の層が前記実施形態の有機層であってもよい。
[0119]
[発光層]
 発光層に用いる材料として、低分子化合物、ポリマー、デンドリマー等の発光材料を使用できる。ポリマーは、溶媒への溶解性が高く、塗布法に適しているため好ましい。発光材料としては、蛍光材料、燐光材料、熱活性化遅延蛍光材料(TADF)等が挙げられる。
[0120]
 蛍光材料として、ペリレン、クマリン、ルブレン、キナクリドン、スチルベン、色素レーザー用色素、アルミニウム錯体、これらの誘導体等の低分子化合物;ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール、フルオレンーベンゾチアジアゾール共重合体、フルオレン-トリフェニルアミン共重合体、これらの誘導体等のポリマー;これらの混合物等が挙げられる。
[0121]
 燐光材料として、Ir、Pt等の金属を含む金属錯体などを使用できる。Ir錯体としては、例えば、青色発光を行うFIr(pic)(イリジウム(III)ビス[(4,6-ジフルオロフェニル)-ピリジネート-N,C ]ピコリネート)、緑色発光を行うIr(ppy) (ファク トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム)、赤色発光を行う(btp) Ir(acac)(ビス〔2-(2’-ベンゾ[4,5-α]チエニル)ピリジナート-N,C 〕イリジウム(アセチル-アセトネート))、Ir(piq) (トリス(1-フェニルイソキノリン)イリジウム)等が挙げられる。Pt錯体としては、例えば、赤色発光を行うPtOEP(2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-フォルフィンプラチナ)等が挙げられる。
[0122]
 発光層が燐光材料を含む場合、燐光材料のほかに、更にホスト材料を含むことが好ましい。ホスト材料としては、低分子化合物、ポリマー、又はデンドリマーを使用できる。低分子化合物としては、例えば、CBP(4,4’-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、mCP(1,3-ビス(9-カルバゾリル)ベンゼン)、CDBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)-2,2’-ジメチルビフェニル)、これらの誘導体等が、ポリマーとしては、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレン、ポリフルオレン、これらの誘導体等が挙げられる。
[0123]
 熱活性化遅延蛍光材料としては、例えば、Adv. Mater., 21, 4802-4806 (2009);Appl. Phys. Lett., 98, 083302 (2011);Chem. Comm., 48, 9580 (2012);Appl. Phys. Lett., 101, 093306 (2012);J. Am. Chem. Soc., 134, 14706 (2012);Chem. Comm., 48, 11392 (2012);Nature, 492, 234 (2012);Adv. Mater., 25, 3319 (2013);J. Phys. Chem. A, 117, 5607 (2013);Phys. Chem. Chem. Phys., 15, 15850 (2013);Chem. Comm., 49, 10385 (2013);Chem. Lett., 43, 319 (2014)等に記載の化合物が挙げられる。
[0124]
[正孔輸送層、正孔注入層]
 正孔輸送層及び正孔注入層に用いる材料としては、例えば、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料が挙げられる。また、例えば、有機EL素子が、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料を用いて形成された層を正孔注入層として有し、更に正孔輸送層を有する場合、正孔輸送層には公知の材料を使用できる。又は、例えば、有機EL素子が、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料を用いて形成された層を正孔輸送層として有し、更に正孔注入層を有する場合、正孔注入層には公知の材料を使用できる。
[0125]
 正孔注入層及び正孔輸送層に用いることができる材料として、例えば、芳香族アミン系化合物(例えば、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン(α-NPD)等の芳香族ジアミン)、フタロシアニン系化合物、チオフェン系化合物(例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホン酸塩)(PEDOT:PSS)等のチオフェン系導電性ポリマー)などが挙げられる。
[0126]
[電子輸送層、電子注入層]
 電子輸送層及び電子注入層に用いる材料としては、例えば、フェナントロリン誘導体、ビピリジン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレン、ペリレンなどの縮合環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(例えば、2,2’,2”-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(TPBi))、キノキサリン誘導体、アルミニウム錯体(例えば、ビス(2-メチル-8-キノリノレート)-4-(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq))等が挙げられる。また、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料も使用できる。
[0127]
[陰極]
 陰極材料としては、例えば、Li、Ca、Mg、Al、In、Cs、Ba、Mg/Ag、LiF、CsF等の金属又は金属合金が用いられる。
[0128]
[陽極]
 陽極材料としては、例えば、金属(例えば、Au)又は導電性を有する他の材料が用いられる。他の材料として、例えば、酸化物(例えば、ITO:酸化インジウム/酸化錫)、導電性高分子(例えば、ポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸混合物(PEDOT:PSS))が挙げられる。
[0129]
[基板]
 基板として、ガラス、プラスチック等を使用できる。基板は、透明であることが好ましく、また、フレキシブル性を有することが好ましい。石英ガラス、光透過性樹脂フィルム等が好ましく用いられる。
[0130]
 樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルムが挙げられる。
[0131]
 樹脂フィルムを用いる場合、水蒸気、酸素等の透過を抑制するために、樹脂フィルムへ酸化珪素、窒化珪素等の無機物をコーティングして用いてもよい。
[0132]
[発光色]
 有機EL素子の発光色は特に限定されない。白色の有機EL素子は、家庭用照明、車内照明、時計又は液晶のバックライト等の各種照明器具に用いることができるため好ましい。
[0133]
 白色の有機EL素子を形成する方法としては、複数の発光材料を用いて複数の発光色を同時に発光させて混色させる方法を用いることができる。複数の発光色の組み合わせとしては、特に限定されないが、青色、緑色及び赤色の3つの発光極大波長を含有する組み合わせ、青色と黄色、黄緑色と橙色等の2つの発光極大波長を含有する組み合わせなどが挙げられる。発光色の制御は、発光材料の種類と量の調整により行うことができる。
[0134]
<表示素子、照明装置、表示装置>
 一実施形態によれば、表示素子は、前記実施形態の有機EL素子を備えている。例えば、赤、緑及び青(RGB)の各画素に対応する素子として、有機EL素子を用いることで、カラーの表示素子が得られる。画像の形成方法には、マトリックス状に配置した電極でパネルに配列された個々の有機EL素子を直接駆動する単純マトリックス型と、各素子に薄膜トランジスタを配置して駆動するアクティブマトリックス型とがある。
[0135]
 また、一実施形態によれば、照明装置は、前記実施形態の有機EL素子を備えている。さらに、一実施形態によれば、表示装置は、照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えている。例えば、表示装置は、バックライトとして前記照明装置を用い、表示手段として公知の液晶素子を用いた表示装置、すなわち液晶表示装置とできる。
実施例
[0136]
 以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[0137]
<モノマーC1の合成>
[化11]


[0138]
 丸底フラスコに、5-ブロモレソルシノール(20mmol)、オキセタン化合物(50mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(3mmol)、水酸化カリウム(240mmol)、水13.5g、及びトルエン30mLを加え、6時間、加熱還流した。その後、水でクエンチし、目的物を酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。エバポレーターで溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填剤:和光純薬工業株式会社製「ワコーゲル(登録商標) C-300HG」、移動層:n-ヘキサン:酢酸エチル=8:2)により精製し、モノマーC1を無色油状物として3.8g得た。収率は50%であった。 H-NMRによる測定結果を図2及び以下に示す。
  H-NMR(300MHz,CDCl ,δppm);0.93(t,J=7.5Hz,6H),1.85(q,J=7.5Hz,4H),4.05(s,4H),4.48(d,J=5.7Hz,4H),4.45(d,J=5.7Hz,4H),6.48(s,1H),6.73(s,2H)
[0139]
<Pd触媒の調製>
 窒素雰囲気下のグローブボックス中で、室温下、サンプル管にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(73.2mg、80μmol)を秤取り、トルエン(15mL)を加え、30分間撹拌した。同様に、サンプル管にトリス(t-ブチル)ホスフィン(129.6mg、640μmol)を秤取り、トルエン(5mL)を加え、5分間撹拌した。これらの溶液を混合し、室温で30分間撹拌し、Pd触媒溶液とした。全ての溶媒は30分以上、窒素バブルにより脱気した後、使用した。
[0140]
<電荷輸送性ポリマー1の合成>
 三口丸底フラスコに、モノマーA1(5.0mmol)、モノマーB1(2.0mmol)、モノマーC1(4.0mmol)、及びメチルトリ-n-オクチルアンモニウムクロリド(Alfa Aesar社製「アリコート336」)(0.03g)、水酸化カリウム(1.12g)、純水(5.54mL)、及びトルエン(50mL)を加え、調製したPd触媒溶液(3.0mL)を加えた。全ての溶媒は30分以上、窒素バブルにより脱気した後、使用した。この混合物を2時間、加熱還流した。ここまでの全ての操作は窒素気流下で行った。
[0141]
 反応終了後、有機層を水洗し、有機層をメタノール-水(9:1)に注いだ。生じた沈殿を吸引ろ過により回収し、メタノール-水(9:1)で洗浄した。得られた沈殿をトルエンに溶解し、メタノールから再沈殿した。得られた沈殿を吸引ろ過により回収し、トルエンに溶解し、金属吸着剤(Strem Chemicals社製「Triphenylphosphine, polymer-bound on styrene-divinylbenzene copolymer」、沈殿物100mgに対して200mg)を加えて、80℃で2時間撹拌した。撹拌終了後、金属吸着剤と不溶物をろ過して取り除き、ろ液をメタノールから再沈殿した。生じた沈殿を吸引ろ過により回収し、メタノールで洗浄した。得られた沈殿を真空乾燥し、電荷輸送性ポリマー1を得た。分子量は、溶離液にテトラヒドロフラン(THF)を用いたGPC(ポリスチレン換算)により測定した。得られた電荷輸送性ポリマー1の数平均分子量は13,600、重量平均分子量は49,200であった。
[0142]
 数平均分子量及び重量平均分子量の測定条件は以下のとおりである。
送液ポンプ    :L-6050 (株)日立ハイテクノロジーズ
UV-Vis検出器:L-3000 (株)日立ハイテクノロジーズ
カラム      :Gelpack(登録商標) GL-A160S/GL-A150S 日立化成(株)
溶離液      :THF(HPLC用、安定剤を含まない) 和光純薬工業(株)
流速       :1mL/min
カラム温度    :室温
分子量標準物質  :標準ポリスチレン
[0143]
<電荷輸送性ポリマー2の合成>
 三口丸底フラスコに、モノマーA1(5.0mmol)、モノマーB1(2.0mmol)、モノマーC2(4.0mmol)、及びトルエン(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、電荷輸送性ポリマー1の合成と同様にして、電荷輸送性ポリマー2の合成を行った。得られた電荷輸送性ポリマー2の数平均分子量は14,700、重量平均分子量は46,100であった。
[0144]
<正孔輸送性ポリマー3の合成>
 三口丸底フラスコに、モノマーA1(5.0mmol)、モノマーB1(2.0mmol)、モノマーC3(4.0mmol)、及びトルエン(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、電荷輸送性ポリマー1の合成と同様にして、電荷輸送性ポリマー3の合成を行った。得られた電荷輸送性ポリマー3の数平均分子量は15,800、重量平均分子量は141,100であった。
[0145]
 電荷輸送性ポリマー1~3に使用したモノマーを以下にまとめる。
[表1]


[0146]
[化12]


[0147]
<電荷輸送性ポリマー1及び2のメタノール量>
 電荷輸送性ポリマー20mgをトルエン(良溶媒、関東化学株式会社製、25℃)2,290μLに溶かし、ポリマー溶液を得た。ポリマー溶液1,000μLを撹拌子が入ったサンプル管(アズワン株式会社製、6mL)に量り取った。室温(25℃)で、サンプル管にメタノール(貧溶媒、関東化学株式会社製、25℃)25μLを滴下し、蓋をし、スターラーを用いて撹拌(回転数600min -1)した。ポリマー溶液に濁りが生じるまで、滴下し、蓋をし、撹拌するという操作を繰り返し、濁りが生じるまでに滴下したメタノール量を測定した。濁りは、目視で確認した。
[0148]
 メタノールの滴下量を表2に示す。
[表2]


[0149]
 電荷輸送性ポリマー1は、350μLを超えるメタノール量を示すポリマーであり、電荷輸送性ポリマー2は、350μL以下のメタノール量を示すポリマーであった。
[0150]
<電荷輸送性ポリマーの溶解性評価>
[溶解性の評価方法]
 電荷輸送性ポリマー1及び2をそれぞれ10mg、サンプル管(アズワン株式会社製、6mL)に秤量した。その後、撹拌子及びトルエン(25℃)1,145μLを加え、温度(25℃)において撹拌(回転数600min -1)しながら、目視によって観察し、トルエンを加えてからポリマー混合液が透明になるまでに要した時間を測定した。
[0151]
[溶解性の評価結果]
 電荷輸送性ポリマー1及び2の溶解時間を表3に示す。
[表3]


[0152]
 電荷輸送性ポリマー1の溶解時間は、電荷輸送性ポリマー2の半分以下であった。本発明の実施形態である電荷輸送性ポリマー1は、優れた溶解性を有することが明らかとなった。
[0153]
<有機エレクトロニクス材料の溶解度変化の評価>
[実施例2]
 電荷輸送性ポリマー1(10.0mg)をトルエン(1,991μL)に溶解し、ポリマー溶液を得た。また、下記オニウム塩(0.309mg)をトルエン(309μL)に溶解し、オニウム塩溶液を得た。得られたポリマー溶液とオニウム塩溶液とを混合し、塗布溶液(有機エレクトロニクス材料を含有するインク組成物)を調製した。塗布溶液を、室温(25℃)で回転数3,000min -1で石英ガラス板上にスピンコートし、有機薄膜を形成した。次いで、石英ガラス板をホットプレート上で、各種温度で10分の条件で加熱した。その後、石英ガラス板をピンセットで掴んで、トルエン(25℃)を満たした200mLビーカーに浸漬し、石英ガラス板を、石英ガラス板の厚み方向に10秒間に10往復振動させた。浸漬前後の有機薄膜のUV-visスペクトルにおける吸収極大(λmax)の吸光度(Abs)の比から、以下の式により有機薄膜の残膜率を求めた。
[0154]
[化13]


[0155]
[数1]


[0156]
 吸光度の測定条件には、分光光度計((株)日立製作所製 U-3310)を用い、有機薄膜について300~500nmの波長範囲での極大吸収波長における吸光度を測定した。
[0157]
[比較例2]
 電荷輸送性ポリマー2(10.0mg)をトルエン(1,991μL)に溶解し、ポリマー溶液を得た。また、前記オニウム塩(0.309mg)をトルエン(309μL)に溶解し、オニウム塩溶液を得た。得られたポリマー溶液とオニウム塩溶液とを混合し、塗布溶液を調製した。塗布溶液を、室温(25℃)で回転数3,000min -1で石英ガラス板上にスピンコートし、有機薄膜を形成した。次いで、実施例2と同様に、有機薄膜の残膜率を求めた。
[0158]
 電荷輸送性ポリマー1及び2の残膜率を表4に示す。
[表4]


[0159]
 電荷輸送性ポリマー1を用いて形成した有機薄膜は、電荷輸送性ポリマー2を用いて形成した有機薄膜と比較して、低温による加熱で高い残膜率を示した。電荷輸送性ポリマー1を含有する有機エレクトロニクス材料は、低温硬化が可能であることが明らかとなった。
[0160]
<有機EL素子の作製>
[実施例3]
 電荷輸送性ポリマー1(10.0mg)をトルエン(2,200μL)に溶解し、ポリマー溶液を得た。また、前記オニウム塩(0.1mg)をトルエン(100μL)に溶解し、オニウム塩溶液を得た。得られたポリマー溶液とオニウム塩溶液とを混合し、電荷輸送性ポリマー1を含有するインク組成物1を調製した。大気下で、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、インク組成物1を3,000min -1でスピンコートした後、ホットプレート上で140℃、10分間加熱し、正孔注入層(20nm)を形成した。
[0161]
 次に、電荷輸送性ポリマー3(10.0mg)及びトルエン(1.145mL)を混合し、インク組成物2を調製した。前記正孔注入層の上に、インク組成物2を3,000min -1でスピンコートし、ホットプレート上で180℃、10分間加熱して乾燥させ、正孔輸送層(40nm)を形成した。正孔注入層を溶解させることなく、正孔輸送層を形成することができた。
[0162]
 その後、ガラス基板を、真空蒸着機中に移し、正孔輸送層上にCBP:Ir(ppy) (94:6、30nm)、BAlq(10nm)、Alq (30nm)、LiF(0.8nm)、及びAl(100nm)の順に蒸着法で成膜し、封止処理を行って有機EL素子を作製した。
[0163]
[比較例3]
 電荷輸送性ポリマー1を電荷輸送性ポリマー2に代えた以外は実施例3と同様にして、有機EL素子を作製した。正孔輸送層の形成時に正孔注入層が一部溶解し、多層構造を形成することができなかった。
[0164]
 実施例3及び比較例3で得た有機EL素子に電圧を印加したところ緑色発光が確認された。それぞれの素子について、発光輝度1,000cd/m 時の駆動電圧及び発光効率、並びに、初期輝度5,000cd/m における発光寿命(輝度半減時間)を測定した。測定結果を表5に示す。
[0165]
[表5]


[0166]
 実施例3の有機EL素子では、低温(140℃)加熱で耐溶剤性に優れた有機層を含むことにより、多層構造を形成することができた。実施例3の有機EL素子は、比較例3の有機EL素子に対し、長い発光寿命が得られた。さらに、実施例3の有機EL素子では、駆動電圧が低下し、発光効率が向上するという効果が得られた。
[0167]
 本発明の実施形態である有機エレクトロニクス材料を用いることにより、湿式プロセスにおいて広いプロセスマージンを確保でき、優れた有機エレクトロニクス素子を作製することができる。
[0168]
 本願の開示は、2017年7月4日に出願された特願2017-131159号に記載の主題と関連しており、その全ての開示内容は引用によりここに援用される。

符号の説明

[0169]
1 発光層
2 陽極
3 正孔注入層
4 陰極
5 電子注入層
6 正孔輸送層
7 電子輸送層
8 基板

請求の範囲

[請求項1]
 電荷輸送性ポリマーを含有する有機エレクトロニクス材料であって、
 前記電荷輸送性ポリマーが、該電荷輸送性ポリマーとトルエンとを、該電荷輸送性ポリマー/トルエン=20mg/2,290μLの比で含有する溶液1,000μLに、メタノールを25μLずつ滴下し、撹拌した場合に、前記溶液に濁りが生じるまでに添加したメタノール量が350μLより大きいポリマーである、有機エレクトロニクス材料。
[請求項2]
 電荷輸送性ポリマーを含有する有機エレクトロニクス材料であって、
 前記電荷輸送性ポリマーが、末端に、重合性官能基を2つ有する芳香環を有する、有機エレクトロニクス材料。
[請求項3]
 前記電荷輸送性ポリマーが、重合性官能基を有する、請求項1に記載の有機エレクトロニクス材料。
[請求項4]
 前記重合性官能基が、オキセタニル基、オキシラニル基、ビニル基、アクリロイルオキシ基、及びメタクリロイルオキシ基からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項2又は3に記載の有機エレクトロニクス材料。
[請求項5]
 前記重合性官能基を2つ有する芳香環が、下記式で表される芳香環を含む、請求項2又は4に記載の有機エレクトロニクス材料。
[化1]


 (nは、それぞれ独立に、1~6の整数を表す。)
[請求項6]
 前記電荷輸送性ポリマーが、正孔輸送性ポリマーである、請求項1~5のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料。
[請求項7]
 前記電荷輸送性ポリマーが、3方向以上に分岐した構造を有する、請求項1~6のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料。
[請求項8]
 前記電荷輸送性ポリマーが、電荷輸送性を有する構造単位を有し、該電荷輸送性を有する構造単位が、2価の構造単位L及び3価以上の構造単位Bからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~7のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料。
[請求項9]
 前記電荷輸送性を有する構造単位が、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、ビチオフェン構造、ベンゼン構造、フェノキサジン構造、及びフルオレン構造からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する、請求項8に記載の有機エレクトロニクス材料。
[請求項10]
 重合開始剤を更に含有する、請求項1~9のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料。
[請求項11]
 前記重合開始剤が、オニウム塩を含む、請求項10に記載の有機エレクトロニクス材料。
[請求項12]
 請求項1~11のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料と溶媒とを含有する、インク組成物。
[請求項13]
 請求項1~11のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料、又は、請求項12に記載のインク組成物により形成された有機層。
[請求項14]
 請求項13に記載の有機層を備えた、有機エレクトロニクス素子。
[請求項15]
 請求項13に記載の有機層を備えた、有機エレクトロルミネセンス素子。
[請求項16]
 請求項15に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を備えた、表示素子。
[請求項17]
 請求項15に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を備えた、照明装置。
[請求項18]
 請求項17に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えた、表示装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]