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1. (WO2018235625) モータ制御装置及びモータシステム
Document

明 細 書

発明の名称 モータ制御装置及びモータシステム 0001  

技術分野

0002  

背景技術

0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

0005   0006   0007  

図面の簡単な説明

0008  

発明を実施するための形態

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

明 細 書

発明の名称 : モータ制御装置及びモータシステム

関連出願の相互参照

[0001]
 本出願は、2017年6月21日に出願された日本出願番号2017-121402号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。

技術分野

[0002]
 本開示は、高調波電流の重畳制御を行うモータ制御装置及びモータシステムに関する。

背景技術

[0003]
 従来、モータのトルク脈動の抑制を図るため、駆動電流に高調波電流を重畳する制御を行うモータの制御装置が知られている。例えば特許文献1に開示の技術は発電システムとして示されているが、高調波電流を重畳して発電機のトルク脈動を抑制するものである。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2015-70781号公報

発明の概要

[0005]
 高調波電流の重畳は、抑制対象としていた次数のトルク脈動の抑制が図れるものの、単純な高調波電流の重畳は、抑制対象とは異なる次数のトルク脈動を新たに発生させてしまい、十分な抑制効果が得られない虞があった。
[0006]
 本開示の目的は、トルク脈動の効果的な抑制を図ることができるモータ制御装置及びモータシステムを提供することにある。
 本開示の第一の態様にかかるモータ制御装置は、構造上位相差を有して組み合わされるA相及びB相モータ部の合成トルクを出力トルクとして得る2相モータが制御対象である。モータ制御装置は、前記A相及びB相モータ部に供給するA相及びB相駆動電流をそれぞれ設定して前記2相モータの制御を行う。モータ制御装置は、前記A相及びB相駆動電流の正弦波状の基本波電流を設定する基本波設定部と、前記基本波電流に重畳する高次高調波電流を設定する重畳波設定部とを含む。前記重畳波設定部は、前記合成トルクのトルク脈動の4n次成分の抑制を図るべく4n+1次及び4n-1次の少なくとも一方の前記高次高調波電流を設定する。nは自然数である。
[0007]
 上記構成によれば、A相及びB相モータ部の合成トルクを出力トルクとして得る2相モータが制御対象であり、A相及びB相駆動電流の基本波電流に対する高次高調波電流の重畳において、4n+1次及び4n-1次の少なくとも一方の高次高調波電流が設定される。これにより、合成トルクのトルク脈動の4n(nは自然数)次成分の抑制が図られる。一方で、合成トルクのトルク脈動の内で、先の高調波電流の重畳を受けてAB相個々では(4n±2)次成分が増加するが、2相モータの構成上、互いが打ち消し合いの対象のため、合成トルク(出力トルク)としてはトルク脈動が低減する。結果、トルク脈動の効果的な抑制を図ることが可能である。

図面の簡単な説明

[0008]
 本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。
[図1] 実施形態におけるモータ制御装置の制御対象であるモータの構成図である。
[図2] 図1のモータの分解図である。
[図3] 図1のステータの分解図である。
[図4] モータ制御装置(モータシステム)を示すブロック図である。
[図5] 第1態様の制御を説明するための説明図であり、(a)は電流波形、(b)は電流FFT、(c)はトルク波形、(d)はトルクFFTを示す図である。
[図6] 第2態様の制御を説明するための説明図であり、(a)は電流波形、(b)は電流FFT、(c)はトルク波形、(d)はトルクFFTを示す図である。
[図7] 第1比較例の制御を説明するための説明図であり、(a)は電流波形、(b)は電流FFT、(c)はトルク波形、(d)はトルクFFTを示す図である。
[図8] 第2比較例の制御を説明するための説明図であり、(a)は電流波形、(b)は電流FFT、(c)はトルク波形、(d)はトルクFFTを示す図である。
[図9] AB相ステータコア間の間隔とAB相間の位相差とを示す説明図である。
[図10] 第3態様の制御を説明するための説明図であり、(a)は電流波形、(b)は電流FFT、(c)はトルク波形、(d)はトルクFFTを示す図である。
[図11] 第4態様の制御を説明するための説明図であり、(a)は電流波形、(b)は電流FFT、(c)はトルク波形、(d)はトルクFFTを示す図である。

発明を実施するための形態

[0009]
 以下、一実施形態について説明する。モータシステムを構成するモータ及びモータ制御装置において、先ずはモータの構成について説明する。本実施形態のモータは、自動車のラジエータ用電動ファン装置、空調用送風装置、電池冷却用ファン装置等、高回転用の駆動源を想定しているが、これに限るものではない。
[0010]
 図1及び図2に示すように、本実施形態のモータMは、ロータ10がステータ20を覆うように配置されるアウターロータ型のブラシレスモータとして構成される。一例ではモータMは2相モータである。ロータ10はA相用ロータ部11とB相用ロータ部12とを備え、ステータ20はA相用ステータ部21とB相用ステータ部22とを備える。即ち、A相用ロータ部11とA相用ステータ部21とはA相モータ部MAを構成し、B相用ロータ部12とB相用ステータ部22とはB相モータ部MBを構成している。A相モータ部MAとB相モータ部MBとは、互いに電気角90度の位相差を有するように周方向にずらして組み合わされる。
[0011]
 ロータ10は、A相用ロータ部11とB相用ロータ部12とで共用の磁性金属製のロータコア13と、A相用ロータ部11として用いるA相用第1及び第2磁石14a,14bと、B相用ロータ部12として用いるB相用第1及び第2磁石15a,15bとを備える。
[0012]
 ロータコア13は、内周側円筒部13aと、同軸上で内周側円筒部13aよりも外周側に位置する外周側円筒部13bと、内周側円筒部13aと外周側円筒部13bとの軸方向一端同士を繋ぐ平板円環状の上底部13cとを有する。内周側円筒部13aは、ロータコア13(ロータ10)の支持部位として用いられる。
[0013]
 ロータコア13の外周側円筒部13bの内周面には、A相用第1及び第2磁石14a,14bとB相用第1及び第2磁石15a,15bとが固着される。A相用第1及び第2磁石14a,14bとB相用第1及び第2磁石15a,15bとは、それぞれ同一構成をなし、周方向等間隔に本実施形態では12磁極を有する。各磁石14a,14b,15a,15bは、ロータコア13の開放端側から軸方向に上底部13cに向かって、A相用第1磁石14a、A相用第2磁石14b、B相用第1磁石15a、B相用第2磁石15bの順に配置される。
[0014]
 A相用第1及び第2磁石14a,14bとB相用第1及び第2磁石15a,15bとは、A相の基準位置とB相の基準位置との間で電気角45度の位相差を有する配置構成としている。また、本実施形態ではスキュー効果を得るために、A相用第1及び第2磁石14a,14bはA相の基準位置から周方向両側にそれぞれ22.5度ずつずらして配置され、B相用第1及び第2磁石15a,15bもB相の基準位置から周方向両側にそれぞれ22.5度ずつずらして配置される。結果として、A相用第2磁石14bとB相用第1磁石15aとの周方向位置は同じ位置に配置される。
[0015]
 ステータ20は、それぞれ同一構成のA相用ステータ部21とB相用ステータ部22とを軸方向に並設してなる。A相用ステータ部21は、軸方向下側(ロータコア13の開放端側)に配置され、B相用ステータ部22は、軸方向上側(ロータコア13の上底部13c側)に配置される。即ち、A相用ステータ部21は、A相用第1及び第2磁石14a,14b(A相用ロータ部11)と径方向に対向し、B相用ステータ部22は、B相用第1及び第2磁石15a,15b(B相用ロータ部12)と径方向に対向する。
[0016]
 図3に示すように、A相用及びB相用ステータ部21,22は、それぞれにおいて、同一構成をなす第1及び第2ステータコア23,24と、各ステータコア23,24の間に配置されたコイル部25とを備える。
[0017]
 第1及び第2ステータコア23,24は、円筒部26と、円筒部26から外周側に延出された本実施形態では12個の爪状磁極27,28とを備えている。尚、第1ステータコア23に形成された爪状磁極を第1爪状磁極27とし、第2ステータコア24に形成された爪状磁極を第2爪状磁極28とする。第1及び第2爪状磁極27,28は、それぞれ周方向等間隔(30度間隔)に設けられる。第1及び第2爪状磁極27,28は、円筒部26から径方向外側に延びる径方向延出部29aと、径方向延出部29aの先端部から軸方向に直角に屈曲して延びる磁極部29bを有する。そして、第1及び第2ステータコア23,24は、第1及び第2爪状磁極27,28の曲げられた方向同士が向き合うように配置され、各爪状磁極27,28の磁極部29bが周方向等間隔に交互に位置するように組み合わされる。磁極部29bの数は24個(24磁極)となる。
[0018]
 第1及び第2ステータコア23,24の軸方向の間には、コイル部25が介装される。コイル部25は、ステータコア23,24の円筒部26周りに円環状をなすボビンに巻線が巻回されてなる。つまり、コイル部25は、軸方向においては第1及び第2爪状磁極27,28の各径方向延出部29a間に位置し、径方向においては第1及び第2ステータコア23,24の各円筒部26と第1及び第2爪状磁極27,28の各磁極部29bとの間に位置している。このようにA相用及びB相用ステータ部21,22は、それぞれ所謂ランデル型構造にて構成される。
[0019]
 A相用及びB相用ステータ部21,22は、電気角45度の位相差を有する配置構成としている。この場合、A相用及びB相用ステータ部21,22の電気角45度のずらす方向と、A相用及びB相用ロータ部11,12(A相用第1及び第2磁石14a,14bとB相用第1及び第2磁石15a,15b)の電気角45度のずらす方向とは逆方向に設定され、A相及びB相モータ部MA,MBとして互いに電気角90度の位相差を有する構造となるように構成される。A相及びB相モータ部MA,MBは、A相用及びB相用ステータ部21,22の各コイル部25に対しそれぞれ対応する駆動電流の供給を受けて回転駆動を行う。
[0020]
 次に、上記構成のモータMを制御対象とするモータ制御装置について説明する。
 図4に示すように、本実施形態のモータ制御装置30は、制御回路31を含んで構成される、制御回路31は、モータM(A相及びB相モータ部MA,MB)の駆動指令に基づいてA相駆動電流IaとB相駆動電流Ibとの生成及び供給を行う。
[0021]
 制御回路31は、A相及びB相駆動電流Ia,Ibの生成に際し、A相電流センサ32からA相駆動電流Iaに対応するA相電流検出信号Saを、B相電流センサ33からB相駆動電流Ibに対応するB相電流検出信号Sbをそれぞれ入力する。また、制御回路31は、回転位置検出センサ34からモータMのロータ10の回転位置(回転角)に対応する回転位置検出信号Sxを入力する。制御回路31は、A相及びB相電流検出信号Sa,SbからA相及びB相駆動電流Ia,Ibの振幅と位相とを把握し、回転位置検出信号Sxからロータ10の回転位置を把握する。
[0022]
 制御回路31は、基本波設定部31aと重畳波設定部31bと位相差設定部31cとを備える。基本波設定部31aは、駆動指令と共にA相及びB相駆動電流Ia,Ibの振幅及び位相とロータ10の回転位置とに基づき、A相及びB相駆動電流Ia,Ibの内の正弦波状の基本波電流を設定する。重畳波設定部31bは、基本波設定部31aにて設定された基本波電流に対して高次高調波電流を重畳、本実施形態では3次高調波電流を重畳する。またこの場合、3次高調波電流の大きさ(振幅)は、基本波電流よりも小さい所定割合に設定される。位相差設定部31cは、A相及びB相駆動電流Ia,Ibの位相差を設定する。この場合、基本波電流に3次高調波電流を重畳する前に個別に位相差を設定してもよく、重畳後に位相差を設定してもよい。
[0023]
 [第1比較例]
 ここで、A相及びB相駆動電流Ia,Ibを正弦波状の基本波電流とした第1比較例について図7(a)~(d)を用いて説明する。また、制御対象のモータMを構成するA相及びB相モータ部MA,MBは互いに電気角90度の位相差を有する構造をなしているため、この第1比較例ではA相及びB相駆動電流Ia,Ibの位相差についても一般的な90度に設定している。
[0024]
 図7(a)の電流波形では、A相及びB相駆動電流Ia,Ibが正弦波状の基本波電流で互いの位相差が90度であることが示され、図7(b)のフーリエ変換による電流波形の周波数解析(電流FFT)では、A相及びB相駆動電流Ia,Ibが基本波電流(1次高調波)であり、高次高調波電流が重畳されていないことが示されている。
[0025]
 このようなA相及びB相駆動電流Ia,Ibの供給に基づけば、モータMのA相モータ部MAのトルク波形及びB相モータ部MBのトルク波形の各々は、図7(c)に示されるように、波形形状の歪みが大きくなり正弦波状から乖離している。詳しくは、A相モータ部MAのトルク波形における上側部分及び下側部分の一方とB相モータ部MBのトルク波形における上側部分及び下側部分の他方とは、非対称形状となる。また、A相及びB相モータ部MA,MBの各トルクは、互いに電気角で90度よりも数度ずれた位相差となっている。従って、これらA相及びB相モータ部MA,MBの合成トルクはAB相間での打ち消し作用が十分でなく、比較的大きいトルク脈動が現れる。
[0026]
 また、図7(d)のフーリエ変換によるトルク波形の周波数解析(トルクFFT)からでもわかるが、A相及びB相モータ部MA,MBの各トルクFFTでは、0次成分以外に主として2次成分や4次成分が現れ、2次成分に着目するとAB相間で大きさが異なる。この2次成分は合成時にAB相間で打ち消し合いの対象となるが、AB相間で大きさが異なることで、合成トルクとしては2次成分が若干残る。4次成分は合成時にAB相間で加算されるため、合成トルクとしては4次成分が大きくなる。
[0027]
 その結果、図7(a)~(d)に示した第1比較例では、A相及びB相モータ部MA,MBの合成トルク、即ちモータMとしての出力トルクには、2次成分や4次成分を含む比較的大きなトルク脈動が現れる。
[0028]
 [本実施形態の第2態様]
 これに対し、A相及びB相駆動電流Ia,Ibの基本波電流に3次高調波電流を重畳した本実施形態の第2態様について図6(a)~(d)を用いて説明する。尚、この第2態様でも、A相及びB相駆動電流Ia,Ibの位相差は90度に設定している。
[0029]
 図6(a)の電流波形では、A相及びB相駆動電流Ia,Ibが基本波電流に3次高調波電流が重畳された電流波形で互いの位相差が90度であることが示され、図6(b)の電流波形の周波数解析(電流FFT)では、A相及びB相駆動電流Ia,Ibが基本波電流(1次高調波)に3次高調波電流が重畳されていることが示されている。3次高調波電流の大きさは基本波電流の例えば約1/4に設定される。
[0030]
 このようなA相及びB相駆動電流Ia,Ibの供給に基づけば、モータMのA相モータ部MAのトルク波形及びB相モータ部MBのトルク波形の各々は、図6(c)に示されるように、波形形状の歪みが小さくなり正弦波状に近似する。詳しくは、A相モータ部MAのトルク波形における上側部分及び下側部分の一方と、B相モータ部MBのトルク波形における上側部分及び下側部分の他方とは、位相差を除くと対称形状となる。尚、A相及びB相モータ部MA,MBの各トルクは、互いに電気角で90度よりも数度ずれた位相差は維持される。従って、これらA相及びB相モータ部MA,MBの合成トルクはAB相間で十分な打ち消し作用が生じ、トルク脈動が小さく抑えられる。
[0031]
 また、図6(d)のトルク波形の周波数解析(トルクFFT)からでもわかるが、A相及びB相モータ部MA,MBの各トルクFFTでは、0次成分以外に主として2次成分が現れ、4次成分は消滅している。これは、3次高調波電流がトルク脈動の4次成分の消滅に寄与しているからである。一方で、この3次高調波電流は、上記した第1比較例よりも2次成分を増大させてしまうが、この2次成分は合成時にAB相間で打ち消し合いの対象となるため、十分な打ち消し合いにより十分に小さくなる。尚、合成トルクのトルク脈動の2次成分としては、AB相間で大きさが異なる分、若干ではあるが残る。
[0032]
 その結果、図6(a)~(d)に示した本実施形態の第2態様では、A相及びB相モータ部MA,MBの合成トルク、即ちモータMとしての出力トルクは、2次成分が僅かに残るものの、4次成分が略消滅したトルク脈動の小さい安定したトルク変化となる。
[0033]
 [第2比較例]
 次いで、A相及びB相駆動電流Ia,Ibを正弦波状の基本波電流とし(高次高調波電流の重畳なし)、位相差を90度より小さい82度に設定した第2比較例について図8(a)~(d)を用いて説明する。
[0034]
 上記したように、制御対象のモータMを構成するA相及びB相モータ部MA,MBはその構造上、互いに電気角90度の位相差を有するため、A相及びB相駆動電流Ia,Ibの位相差を90度とするのが一般的である。また、本実施形態ではA相及びB相モータ部MA,MBを構成するA相用及びB相用ステータ部21,22の第2ステータコア24同士を当接させて軸方向に小型化とした構造を採用しているため、AB相間で磁気干渉が生じ易い状況であり、これに起因するトルク脈動が生じ易い状況である。本発明者はこの対策として、A相及びB相駆動電流Ia,Ibの位相差を90度より小さくすると、AB相間での磁気干渉の低減によるトルク脈動の低減が図れることを把握している。
[0035]
 図9は、A相用及びB相用ステータ部21,22間の間隔(ギャップ)に対し、トルク脈動の低減に最適なAB相間の位相差(A相及びB相駆動電流Ia,Ibの位相差)を表したものである。間隔(ギャップ)が0mmの場合のAB相間の最適な位相差は82度であり、A相用及びB相用ステータ部21,22が当接状態(間隔ゼロ)の本実施形態である。そこから間隔(ギャップ)が増加するに連れてAB相間の最適な位相差は82度から90度に次第に近接する。そして、間隔(ギャップ)が4mmになるとAB相間の最適な位相差は90度となり、以降は間隔(ギャップ)が増加してもAB相間の最適な位相差は90度、即ち磁気干渉が略生じていないことを意味する。そして、この第2比較例では、A相及びB相駆動電流Ia,Ibの位相差が82度に設定される。
[0036]
 図8(a)の電流波形では、A相及びB相駆動電流Ia,Ibが基本波電流で互いの位相差が82度であることが示され、図8(b)の電流波形の周波数解析(電流FFT)では、A相及びB相駆動電流Ia,Ibが基本波電流(1次高調波)であり、高次高調波電流が重畳されていないことが示されている。
[0037]
 このようなA相及びB相駆動電流Ia,Ibの供給に基づけば、モータMのA相モータ部MAのトルク波形及びB相モータ部MBのトルク波形の各々は、図8(c)に示されるように、高次高調波電流の重畳がないため、波形形状の歪みが依然として残る。それでも、位相差が電気角で90度になり、図7の第1比較例で懸念していた位相ずれが改善されている。従って、これらA相及びB相モータ部MA,MBの合成トルクは、AB相間で位相ずれが改善された分その打ち消し作用が改善し、トルク脈動に改善が見られる。
[0038]
 また、図8(d)のトルク波形の周波数解析(トルクFFT)からでもわかるが、A相及びB相モータ部MA,MBの各トルクFFTでは、0次成分以外に主として2次成分や4次成分が現れるが、2次成分に着目するとAB相間で大きさが略同等となる。AB相間で打ち消し合いの対象となるこの2次成分が略同等となることで、合成トルクの2次成分は消滅する。尚、合成トルクの4次成分は加算により依然残る。
[0039]
 その結果、図8(a)~(d)に示した第2比較例では、A相及びB相モータ部MA,MBの合成トルク、即ちモータMとしての出力トルクには、4次成分が依然残るが2次成分が略消滅し、トルク脈動の若干の改善が見込める。
[0040]
 [本実施形態の第1態様]
 上記を踏まえ、A相及びB相駆動電流Ia,Ibの基本波電流に3次高調波電流を重畳し、更に位相差を90度より小さい82度に設定した本実施形態の第1態様について図5(a)~(d)を用いて説明する。
[0041]
 図5(a)の電流波形では、A相及びB相駆動電流Ia,Ibが基本波電流に3次高調波電流が重畳された電流波形で互いの位相差が82度であることが示され、図5(b)の電流波形の周波数解析(電流FFT)では、A相及びB相駆動電流Ia,Ibが基本波電流(1次高調波)に3次高調波電流が重畳されていることが示されている。
[0042]
 このようなA相及びB相駆動電流Ia,Ibの供給に基づけば、モータMのA相モータ部MAのトルク波形及びB相モータ部MBのトルク波形の各々は、図5(c)に示されるように、波形形状の歪みは小さくなり正弦波状に近似する。即ち、A相モータ部MAのトルク波形における上側部分及び下側部分の一方と、B相モータ部MBのトルク波形における上側部分及び下側部分の他方とは、対称形状となる。また、A相及びB相モータ部MA,MBの各トルクは、位相差が電気角で90度になり、位相差も改善される。従って、これらA相及びB相モータ部MA,MBの合成トルクは、3次高調波電流の重畳と位相ずれの改善とからAB相間でより適切な打ち消し作用が生じ、トルク脈動の極めて小さい一層安定したトルク変化となる。
[0043]
 また、図5(d)のトルク波形の周波数解析(トルクFFT)からでもわかるが、A相及びB相モータ部MA,MBの各トルクFFTでは、0次成分以外に主として2次成分が現れ、4次成分は3次高調波電流の重畳により消滅している。また、この3次高調波電流は2次成分を増大させるものの、位相ずれの改善のためこの2次成分は合成時にAB相間でより適切に打ち消し合い、合成トルクのトルク脈動の2次成分も消滅することとなる。
[0044]
 その結果、図5(a)~(d)に示した本実施形態の第1態様では、A相及びB相モータ部MA,MBの合成トルク、即ちモータMとしての出力トルクは、2次成分と4次成分とが共に略消滅したトルク脈動の極めて小さい一層安定したトルク変化となる。
[0045]
 従って、本実施形態のモータ制御装置30は、A相及びB相駆動電流Ia,Ibの内の正弦波状の基本波電流を設定し(基本波設定部31a)、基本波電流に3次高調波電流を重畳し(重畳波設定部31b)、AB相関で位相差を82度に設定して(位相差設定部31c)、A相及びB相モータ部MA,MBよりなる2相構成のモータMの制御を行う。この第1態様を用いることで、モータMのトルク脈動がより効果的に抑制され、モータMの低振動化・低騒音化が図られる。尚、AB相関で位相差を90度、3次高調波電流の重畳のみの第2態様でも、モータMのトルク脈動を効果的に抑制することが可能である。
[0046]
 因みに、上記では3次高調波電流の重畳の態様であったが、5次高調波電流を重畳させてもよく(第3態様)、3次及び5次高調波電流を重畳してもよい(第4態様)。
 [本実施形態の第3態様]
 A相及びB相駆動電流Ia,Ibの基本波電流に5次高調波電流を重畳(位相差は82度に設定)した本実施形態の第3態様について図10(a)~(d)を用いて説明する。
[0047]
 図10(a)の電流波形では、A相及びB相駆動電流Ia,Ibが基本波電流に5次高調波電流が重畳された電流波形で互いの位相差が82度であることが示され、図10(b)の電流波形の周波数解析(電流FFT)では、A相及びB相駆動電流Ia,Ibが基本波電流(1次高調波)に5次高調波電流が重畳されていることが示されている。この5次高調波電流の大きさについても、上記した3次高調波電流と同様に基本波電流の例えば約1/4に設定される。
[0048]
 このようなA相及びB相駆動電流Ia,Ibの供給に基づけば、モータMのA相モータ部MAのトルク波形及びB相モータ部MBのトルク波形の各々は、図5(c)に示す3次高調波電流の重畳時と同様、AB相個々のトルク波形の形状の歪みは小さい(図示略)。また、AB相のトルク波形が90度の位相差となるように調整されている。これらのことから、図10(c)の合成トルクの波形に示されるように、AB相間でより適切な打ち消し作用が生じ、トルク脈動の極めて小さい一層安定したトルク変化となる。
[0049]
 また、図10(d)の合成トルクの波形の周波数解析(トルクFFT)からでもわかるが、A相及びB相モータ部MA,MBの各トルクFFTでは、5次高調波電流の重畳においても4次成分の消滅が可能である。また、この5次高調波電流は6次成分を増大させるものの、この6次成分については合成時にAB相間でより適切に打ち消し合い、合成トルクのトルク脈動の6次成分を十分に低減可能である。尚、合成トルクの6次成分、8次成分といった次数の高い成分が僅かに残るが、トルク脈動の効果的な抑制が可能である。
[0050]
 [本実施形態の第4態様]
 A相及びB相駆動電流Ia,Ibの基本波電流に3次及び5次高調波電流を重畳(位相差は82度に設定)した本実施形態の第4態様について図11(a)~(d)を用いて説明する。
[0051]
 図11(a)の電流波形では、A相及びB相駆動電流Ia,Ibが基本波電流に3次及び5次高調波電流が重畳された電流波形で互いの位相差が82度であることが示され、図11(b)の電流波形の周波数解析(電流FFT)では、A相及びB相駆動電流Ia,Ibが基本波電流(1次高調波)に3次及び5次高調波電流が重畳されていることが示されている。この3次及び5次高調波電流の大きさについては、上記した3次(又は5次)高調波電流の更に半分、即ち基本波電流の例えば約1/8にそれぞれ設定され、また互いに同等に設定される。
[0052]
 このようなA相及びB相駆動電流Ia,Ibの供給に基づくモータMのA相及びB相モータ部MA,MBの各トルクは、図5(c)に示す3次(又は図10(c)に示す5次)高調波電流の重畳時と同様、AB相個々のトルク波形の形状の歪みは小さい(図示略)。また、AB相のトルク波形が90度の位相差となるように調整されていることから、図11(c)の合成トルクの波形に示されるように、AB相間でより適切な打ち消し作用が生じ、トルク脈動の極めて小さい一層安定したトルク変化となる。
[0053]
 また、図11(d)の合成トルクの波形の周波数解析(トルクFFT)からでもわかるが、A相及びB相モータ部MA,MBの各トルクFFTでは、合成トルクの2次成分、4次成分、6次成分、8次成分の消滅が可能で、トルク脈動のより効果的な抑制が可能である。
[0054]
 次に、本実施形態の効果を以下に記載する。
 (1)A相及びB相モータ部MA,MBの合成トルクを出力トルクとして得る2相構造のモータMが制御対象であり、A相及びB相駆動電流Ia,Ibの基本波電流に対する高次高調波電流の重畳において、3次(すなわち4n-1次)又は5次(すなわち4n+1次)高調波電流が設定される(本実施形態の第1~第4態様)。これにより、合成トルクのトルク脈動の4次(すなわち4n次)成分の抑制を図ることができる。一方で、合成トルクのトルク脈動の内で、先の高調波電流の重畳を受けてAB相個々では2次又は6次成分が増加するが、2相型のモータMの構成上、互いが打ち消し合いの対象のため、合成トルク(出力トルク)としてはトルク脈動が低減する。結果、トルク脈動の効果的な抑制を図ることができる。
[0055]
 (2)高次高調波電流の重畳において、3次及び5次の何れか一方の高次高調波電流の設定が行われる本実施形態の第1~第3態様では、重畳波設定部31b(制御回路31)を比較的簡単な構成で十分なトルク脈動の抑制を図ることができる。
[0056]
 (3)高次高調波電流の重畳において、3次及び5次の両方の高次高調波電流の設定が行われる本実施形態の第4態様では、高度なトルク脈動の抑制を図ることができる。
 (4)構造上電気角90度の位相差を有するA相及びB相モータ部MA,MBに対し、A相及びB相駆動電流Ia,Ibの位相差が82度(80度以上90度未満)に設定される。本実施形態の2相型のモータMは、AB相間でステータコア24同士を当接するA相及びB相モータ部MA,MBを有する。A相及びB相モータ部MA,MBの各々は、複数の磁極部29bを有する一対のステータコア23,24と、一対のステータコア23,24間に配置されたコイル部25とを含む。本実施形態の2相型のモータMではそのAB相間で磁気干渉し得るため、3次又は5次高調波電流の重畳によりAB相個々のトルク脈動で増加する2次又は6次成分の打ち消し合いにおいて、AB相間で若干の位相ずれが生じてその打ち消し合いの効果が低減する。これを考慮し、A相及びB相駆動電流Ia,Ibの位相差を80度以上90度未満に設定することで改善が図れる。結果、高次高調波電流の重畳に加え位相調整を更に行うことで、トルク脈動のより効果的な抑制を図ることができる。またこの場合、A相及びB相モータ部MA,MBでの構造上(位相差)の変更を伴わず、制御にて簡易に対応することができる。
[0057]
 (5)A相及びB相駆動電流Ia,Ibの位相差を80度以上90度未満に設定する一方で、A相及びB相モータ部MA,MBの構造としては電気角90度の位相差にて構成されるため、モータMの非駆動時のコギングトルクを小さく抑えることができる。
[0058]
 (6)モータMは自動車のラジエータ用電動ファン装置、空調用送風装置、電池冷却用ファン装置等、高回転用の駆動源に用いられるため、モータMの出力トルクのトルク脈動は各装置の低振動化・低騒音化に十分な貢献を図ることができる。
[0059]
 尚、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
 ・2相(AB相)型のモータMのトルク脈動の内で4次成分の抑制を図るべくA相及びB相駆動電流Ia,Ibに3次又は5次高調波電流の重畳を行い、これに伴うトルク脈動のAB相個々の2次又は6次成分の増加はモータMの構造で相殺するものであったが、次数はこれに限らない。
[0060]
 即ち、トルク脈動の4n(nは自然数)次成分の抑制を図るべく(4n±1)次高調波電流の重畳を行うようにし、これに伴うトルク脈動の(4n±2)次成分の増加はモータMの構造で相殺するものであってもよい(上記実施形態ではn=1)。
[0061]
 ・上記実施形態の第1~第3態様では高次高調波電流の大きさを基本波電流の約1/4に、第4態様では高次高調波電流の大きさを基本波電流の約1/8に設定したが、電流の大きさはこれに限らず、適宜変更してもよい。
[0062]
 ・上記実施形態の第4態様のように3次及び5次の両方の高調波電流を重畳する場合、上記実施形態では3次と5次で同じ大きさ(振幅)の電流を重畳するようにしたが、次数毎に電流の大きさを異ならせてもよい。
[0063]
 ・A相及びB相駆動電流Ia,Ibの位相差を上記実施形態の第2態様では90度(位相調整なし)、上記実施形態の第1,第3,第4態様では82度に設定したが、角度はこれに限らず、適宜変更してもよい。A相及びB相モータ部MA,MB間で磁気干渉が生じ得る構成の場合では特に、有効範囲の80度以上90度未満に設定するのが好ましい。
[0064]
 尚、上記実施形態の第1,第3,第4態様においてA相及びB相駆動電流Ia,Ibの位相差82度とした制御での対応であったが、例えばA相及びB相駆動電流Ia,Ibの位相差を90度(位相調整なし)とし、A相及びB相モータ部MA,MB間の位相差を電気角98度とする構造での対応を図っても、同様のAB相間での打ち消し合いの効果を得ることができる。この場合、A相及びB相モータ部MA,MB間の位相差の有効範囲は90度より大きく100度以下に設定するのが好ましい。また、AB相間での制御上の位相差と構造上の位相差とを共に変更してもよい。
[0065]
 ・モータM(A相及びB相モータ部MA,MB)の構成を適宜変更してもよい。
 例えばA相用及びB相用ステータ部21,22において、AB相のステータコア24同士を当接させる構成としたが、離間する配置構成としたり、AB相のステータコア24間に非磁性体等を介在させる構成としてもよい。
[0066]
 例えばA相用及びB相用ステータ部21,22において、複数の磁極部29bを有する一対のステータコア23,24間にコイル部25を配置する所謂ランデル型構造としたが、径方向に延びるティースを周方向に複数備えるステータコアにおいてそのティースにコイル部を巻装する周知のステータであってもよい。
[0067]
 例えばA相用及びB相用ロータ部11,12において、AB相毎でも軸方向に2分割とした磁石14a,14b,15a,15bを用い、周方向にずらしたスキュー構造としたが、各相毎で軸方向に分割せずスキュー構造を採らない一般的な磁石を用いてもよい。また、各相毎で3分割以上のスキュー構造としてもよい。
[0068]
 本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。

請求の範囲

[請求項1]
 構造上位相差を有して組み合わされるA相及びB相モータ部(MA,MB)の合成トルクを出力トルクとして得る2相モータ(M)が制御対象であり、前記A相及びB相モータ部に供給するA相及びB相駆動電流(Ia,Ib)をそれぞれ設定して前記2相モータの制御を行うモータ制御装置であって、
 前記A相及びB相駆動電流の正弦波状の基本波電流を設定する基本波設定部(31a)と、
 前記基本波電流に重畳する高次高調波電流を設定する重畳波設定部(31b)と、を備え、
 前記重畳波設定部は、前記合成トルクのトルク脈動の4n次成分の抑制を図るべく4n+1次及び4n-1次の少なくとも一方の前記高次高調波電流を設定し、nは自然数であるモータ制御装置。
[請求項2]
 請求項1に記載のモータ制御装置において、
 前記A相及びB相モータ部は、構造上電気角90度の位相差を有するモータ制御装置。
[請求項3]
 請求項1又は2に記載のモータ制御装置において、
 前記重畳波設定部は、4n-1次及び4n+1次の何れか一方の前記高次高調波電流を設定するモータ制御装置。
[請求項4]
 請求項1又は2に記載のモータ制御装置において、
 前記重畳波設定部は、4n-1次及び4n+1次の両方の前記高次高調波電流を設定するモータ制御装置。
[請求項5]
 請求項1~4の何れか1項に記載のモータ制御装置において、
 前記A相及びB相駆動電流の位相差を設定する位相差設定部をさらに備え、
 前記位相差設定部は、前記A相及びB相駆動電流の位相差を80度以上90度未満に設定するモータ制御装置。
[請求項6]
 請求項1~5の何れか1項に記載のモータ制御装置において、
 前記A相及びB相モータ部の各々は、複数の磁極部を有する一対のステータコアと、該一対のステータコア間に配置されたコイル部とを含むモータ制御装置。
[請求項7]
 構造上位相差を有して組み合わされるA相及びB相モータ部の合成トルクを出力トルクとして得る2相モータと、
 前記A相及びB相モータ部に供給するA相及びB相駆動電流をそれぞれ設定して前記2相モータの制御を行う請求項1~6の何れか1項に記載のモータ制御装置と
を備えているモータシステム。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]