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1. (WO2018230207) ガーネット珪酸塩、ガーネット珪酸塩蛍光体、並びにガーネット珪酸塩蛍光体を用いた波長変換体及び発光装置
Document

明 細 書

発明の名称 ガーネット珪酸塩、ガーネット珪酸塩蛍光体、並びにガーネット珪酸塩蛍光体を用いた波長変換体及び発光装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

0006   0007   0008   0009   0010   0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070  

実施例

0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107  

産業上の利用可能性

0108  

符号の説明

0109  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

明 細 書

発明の名称 : ガーネット珪酸塩、ガーネット珪酸塩蛍光体、並びにガーネット珪酸塩蛍光体を用いた波長変換体及び発光装置

技術分野

[0001]
 本発明は、ガーネット珪酸塩、ガーネット珪酸塩蛍光体、並びにガーネット珪酸塩蛍光体を用いた波長変換体及び発光装置に関する。詳細には本発明は、発光ダイオード照明やレーザー照明などの固体照明、及びプロジェクターなどの発光装置に利用可能な蛍光体と成り得るガーネット珪酸塩、当該ガーネット珪酸塩を用いたガーネット珪酸塩蛍光体、並び波長変換体及び発光装置に関する。

背景技術

[0002]
 従来、固体発光素子と、蛍光体を含む波長変換体とを組み合わせてなる発光装置が知られている。このような発光装置としては、例えば、白色発光ダイオード光源、レーザー照明装置及びレーザープロジェクターが知られている。
[0003]
 このような発光装置向けの蛍光体において、実用化の候補となっている蛍光体の一つとして、Lu CaMg (SiO :Ce 3+が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、本明細書において、Lu CaMg (SiO :Ce 3+蛍光体をLuCaMG蛍光体ともいう。
[0004]
 LuCaMG蛍光体は、一般式:Lu CaMg (SiO で表されるガーネット化合物の珪酸塩を、Ce 3+で付活したガーネット珪酸塩蛍光体である。そして、LuCaMG蛍光体は青色光を吸収して、波長600nm付近に蛍光ピークを持つ橙色光に波長変換する特性を持つ。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 米国特許第7442326号明細書

発明の概要

[0006]
 しかしながら、従来のLuCaMG蛍光体は、粒子径が極めて小さく不定形の微粉末となりやすいため、効率的に波長変換することが難しかった。そして、発光装置用として十分適するLuCaMG蛍光体が無いために、LuCaMG蛍光体を利用し、発光装置用としての実用に値する波長変換体を得られなかった。そのため、LuCaMG蛍光体を用いて、高出力かつ超短残光性の蛍光成分を放つ発光装置を得ることが困難であった。
[0007]
 本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、比較的大きな一次粒子サイズを有し、高発光効率と高光吸収率を兼ね備える蛍光体を得ることが可能なガーネット珪酸塩を提供することにある。さらに本発明の目的は、当該ガーネット珪酸塩からなるガーネット珪酸塩蛍光体、並びにガーネット珪酸塩蛍光体を用いた波長変換体及び発光装置を提供することにある。
[0008]
 上記課題を解決するために、本発明の第一の態様に係るガーネット珪酸塩は、一般式:Lu CaMg (SiO で表される珪酸塩を主成分とするガーネット珪酸塩である。当該ガーネット珪酸塩は、ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状を持つ一次粒子を含む。ガーネット珪酸塩は、さらに、少なくともリチウムを含むアルカリ金属を含有し、当該アルカリ金属の含有量が2000ppm未満である。
[0009]
 本発明の第二の態様に係るガーネット珪酸塩蛍光体は、ガーネット珪酸塩と、ガーネット珪酸塩に含まれる、発光中心として機能するイオンとを含む。
[0010]
 本発明の第三の態様に係る波長変換体は、ガーネット珪酸塩蛍光体を備える。
[0011]
 本発明の第四の態様に係る発光装置は、ガーネット珪酸塩蛍光体又は波長変換体を備える。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 図1は、本発明の実施形態に係る波長変換体の一例を示す概略断面図である。
[図2] 図2は、本発明の実施形態に係る波長変換体の他の例を示す概略断面図である。
[図3] 図3は、本発明の実施形態に係る波長変換体の他の例を示す概略断面図である。
[図4] 図4は、本発明の実施形態に係る波長変換体の他の例を示す概略断面図である。
[図5] 図5は、本発明の実施形態に係る波長変換体の他の例を示す概略断面図である。
[図6] 図6は、本発明の実施形態に係る発光装置を説明するための概略図である。
[図7] 図7(a)は、実施例に係るLu CaMg (SiO :Ce 3+蛍光体を示す電子顕微鏡写真である。図7(b)は、比較例に係るLu CaMg (SiO :Ce 3+蛍光体を示す電子顕微鏡写真である。
[図8] 図8は、実施例に係るLu CaMg (SiO :Ce 3+蛍光体を拡大して示す電子顕微鏡写真である。
[図9] 図9(a)は、参考例1に係るLu CaMg (SiO :Ce 3+蛍光体を示す電子顕微鏡写真である。図9(b)は、参考例2に係るLu CaMg (SiO :Ce 3+蛍光体を示す電子顕微鏡写真である。図9(c)は、参考例3に係るLu CaMg (SiO :Ce 3+蛍光体を示す電子顕微鏡写真である。図9(d)は、参考例4に係るLu CaMg (SiO :Ce 3+蛍光体を示す電子顕微鏡写真である。
[図10] 図10は、実施例に係る蛍光体と比較例に係る蛍光体のX線回折パターンを測定した結果を示すグラフである。
[図11] 図11は、実施例に係る蛍光体と比較例に係る蛍光体の発光スペクトルを測定した結果を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0013]
 以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、いずれも本実施形態の好ましい一例を示すものである。したがって、以下の実施形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序などは一例であって、本実施形態を限定する主旨ではない。
[0014]
[ガーネット珪酸塩]
 本実施形態に係るガーネット珪酸塩は、一般式:Lu CaMg (SiO で表される珪酸塩を主成分とするガーネット珪酸塩である。そして、ガーネット珪酸塩は、ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状を持つ一次粒子を含んでいる。このようなガーネット珪酸塩は結晶性が良好であるため、単分散性に優れ、高発光効率と高光吸収率を兼ね備える蛍光体を得ることが可能となる。
[0015]
 上述の「一般式:Lu CaMg (SiO で表される珪酸塩を主成分とするガーネット珪酸塩」は、Lu CaMg (SiO のみからなり、ガーネット型の結晶構造を持つ珪酸塩をいう。または、「一般式:Lu CaMg (SiO で表される珪酸塩を主成分とするガーネット珪酸塩」は、端成分となるLu CaMg (SiO 珪酸塩の固溶割合が70mol%以上の固溶体であって、ガーネット型の結晶構造を持つ珪酸塩をいう。なお、ガーネット珪酸塩おいて、端成分となるLu CaMg (SiO 珪酸塩の固溶割合は90mol%以上であることが好ましい。
[0016]
 本実施形態のガーネット珪酸塩がLu CaMg (SiO 珪酸塩を含む固溶体である場合、Lu CaMg (SiO 珪酸塩に被固溶する化合物は特に限定されない。被固溶する化合物としては、例えば、Lu MgMg (SiO のような、化合物としての実在が推定される仮想化合物も包含する。この理由は、当業者にとって公知であるように、実在が推定される化合物が被固溶した形態の固溶体の実例が、数多く存在するためである。
[0017]
 本実施形態に係る、固溶体であるガーネット珪酸塩の具体例としては、(1-x)Lu CaMg (SiO ・xLu Al (AlO 、(1-x)Lu CaMg (SiO ・xLu Mg (SiO (AlO )、(1-x)Lu CaMg (SiO ・xCa Sc (SiO 、(1-x)Lu CaMg (SiO ・xLu MgMg (SiO などが挙げられる。ここで、xは0≦x<0.3を満たす数値であることが好ましく、0≦x<0.1を満たす数値であることがより好ましい。
[0018]
 上述の「ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状」は、ガーネット型の結晶構造を持つ主要な実用蛍光体(例えば、Y Al (AlO :Ce 3+、Lu Al (AlO :Ce 3+)の粒子に認められる多面体形状をいう。また、「ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状」は、当該多面体の角や縁が丸みを帯びた擬似多面体形状も包含する。本実施形態のガーネット珪酸塩は、このような多面体形状または擬似多面体形状を持つ一次粒子を少なくとも含むものである。多面体形状または擬似多面体形状を持つ一次粒子からなるガーネット珪酸塩は、単分散かこれに近い粒子形態を取りやすいため、励起光を高効率で吸収して発光することが可能な蛍光体となることができる。なお、本実施形態のガーネット珪酸塩は、このような多面体形状または擬似多面体形状を持つ一次粒子を主体にしてなるものであることがより好ましい。
[0019]
 なお、「ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状」は、明瞭なファセット面を持つ粒子形状であることが好ましい。「ファセット面」とは、原子的なスケールで見て平坦な結晶面をいう。一般にファセット面は、結晶品位に優れる単結晶に認められる。したがって、高平坦性のファセット面が認められるほど、結晶品位に優れる単結晶粒子とみなすことができる。
[0020]
 本実施形態のガーネット珪酸塩は、粉末状であることが好ましい。そして、ガーネット珪酸塩は、平均粒子径が3μm以上であることが好ましい。具体的には、ガーネット珪酸塩は粒子群であって、当該ガーネット珪酸塩の平均粒子径が3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが特に好ましい。ガーネット珪酸塩の平均粒子径が3μm以上であることにより、発光装置用に使用しやすい蛍光体を得ることが可能となる。また、このようなガーネット珪酸塩を、例えば、Ce 3+で付活することにより、短波長可視光(紫または青色光)の吸収率が大きいガーネット珪酸塩蛍光体を得ることが可能となる。
[0021]
 ガーネット珪酸塩において、平均粒子径の上限は特に限定されないが、発光装置用の蛍光体として好適に用いる場合には、50μm未満であることが好ましく、30μm未満であることがより好ましい。なお、ガーネット珪酸塩の平均粒子径は、分散したガーネット珪酸塩の粒子群を顕微鏡で観察した際の、粒子の最長軸長さの平均値をいう。そのため、ガーネット珪酸塩の平均粒子径は、分散したガーネット珪酸塩が一次粒子と二次粒子の混合物である場合には、当該一次粒子の最長軸長さと当該二次粒子の最長軸長さの合計の平均値をいう。
[0022]
 本実施形態のガーネット珪酸塩は、アルカリ金属を含有している。具体的には、ガーネット珪酸塩は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)からなる群より選ばれる少なくとも一つのアルカリ金属を含有していることが好ましい。ただ、ガーネット珪酸塩は、少なくともリチウムを含有することが好ましい。ガーネット珪酸塩が微量のアルカリ金属、特にリチウムを含有することによって、ガーネット珪酸塩の粒子群は、ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状を持つ一次粒子を含むようになる。そして、ガーネット珪酸塩の一次粒子の成長を伴いながら、単分散した状態で粒子化することが可能となる。
[0023]
 このような有利な効果が認められるようになる理由は定かではない。ただ、微量のアルカリ金属を含有することにより、ガーネット珪酸塩が単一結晶相となることが認められる。そのため、ガーネット珪酸塩におけるLu 3+やCa 2+、Mg 2+とは価数が異なる一価のアルカリ金属イオンが挿入されることにより、ガーネット珪酸塩の結晶中の格子欠陥を電荷補償するように作用し、結晶成長が促されることなどが考えられる。
[0024]
 本実施形態のガーネット珪酸塩において、少なくともリチウムを含むアルカリ金属の含有量が2000ppm未満であることが好ましい。アルカリ金属の含有量が2000ppm以上の場合には、ガーネット珪酸塩の粒子同士の焼結が促進し、大きな塊状の粒子となりやすい。そして、大きな塊状の粒子からなる蛍光体は、高分散し難いため、効率的に励起光を吸収し難くなる可能性がある。そのため、励起光を高効率で吸収する蛍光体を得るために、アルカリ金属の含有量は2000ppm未満であることが好ましい。なお、ガーネット珪酸塩において、アルカリ金属の含有量は1500ppm未満であることがより好ましく、300ppm未満であることがさらに好ましい。
[0025]
 本実施形態のガーネット珪酸塩において、少なくともリチウムを含むアルカリ金属の含有量が50ppm以上であることが好ましく、100ppm以上であることがより好ましい。この場合、ガーネット珪酸塩は、ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状を持つ一次粒子が増加するため、単分散した状態で粒子化することが可能となる。
[0026]
 ガーネット珪酸塩において、リチウムの含有量が2000ppm未満であることが好ましく、1500ppm未満であることがより好ましく、300ppm未満であることがさらに好ましい。また、ガーネット珪酸塩において、リチウムの含有量が50ppm以上であることが好ましく、100ppm以上であることがより好ましい。リチウムの含有量がこの範囲内であることにより、ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状を持つ一次粒子がさらに増加するため、単分散した粒子を効率的に得ることが可能となる。
[0027]
 次に、本実施形態に係るガーネット珪酸塩の製造方法について説明する。ガーネット珪酸塩は、オーソドックスな固相反応を用いて合成することができる。具体的には、反応式1に沿ってガーネット珪酸塩を製造することができる。
 [化1]
 Lu +CaCO +2MgO+3SiO +xLiCl→Lu CaMg (SiO +xLiCl(+CO ↑)
[0028]
 具体的には、まず、反応式1に示すように、酸化ルテチウム(Lu )、炭酸カルシウム(CaCO )、酸化マグネシウム(MgO)及び二酸化ケイ素(SiO )などの原料粉末を準備する。次に、所望の化合物の化学量論的組成またはこれに近い組成となるように原料粉末を調合し、乳鉢やボールミル、スターラーなどを用いて十分に混合する。十分に混合されるのであれば、混合方式は乾式混合でも湿式混合でもよい。湿式混合の場合は、媒質としてイオン交換水やエタノール、イソプロピルアルコール、アセトンなどを用いることができるが、その他の媒質でもよく、限定するものではない。
[0029]
 その後、アルミナるつぼや白金るつぼ、磁性るつぼなどの焼成容器を用いて、電気炉などにより混合原料を焼成することで、混合原料の焼成物を得ることができる。なお、混合原料を焼成する際には、大気中または還元雰囲気下、700~1000℃の焼成温度にて数時間加熱することが好ましい。
[0030]
 ここで、本実施形態に係る製造方法では、反応促進剤を使用することが好ましく、反応促進剤としては塩化リチウム(LiCl)を使用することが好ましい。また、反応促進剤の使用量は、合成する1モルのガーネット珪酸塩に対して、2~5モルの反応促進剤を使用することが好ましく、2~4モルの反応促進剤を使用することがより好ましい。反応促進剤の使用量は、合成する1モルのガーネット珪酸塩に対して、3モルの反応促進剤を使用することが特に好ましい。つまり、反応式1において、xが2~5であることが好ましく、xが2~4であることがより好ましく、xが3であることが特に好ましい。
[0031]
 通常、粉末状の蛍光体を合成する際の一般的な合成法における反応促進剤の添加量は、蛍光体1モルに対して数モル%から数10モル%である。しかしながら、本実施形態に係る製造方法では、得られるガーネット珪酸塩に対して、200モル%以上の反応促進剤を使用している。これにより、ガーネット珪酸塩はアルカリ金属を含むようになるため、ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状を持つ一次粒子を得ることが可能となる。
[0032]
 本実施形態の製造方法では、上述のように得られた混合原料の焼成物と反応促進剤とを混合した後に本焼成することにより、ガーネット珪酸塩を得ることができる。混合原料の焼成物と反応促進剤との混合方法は特に限定されず、例えば乾式混合により行うことができる。また、本焼成は、還元雰囲気下、1100~1400℃の焼成温度にて数時間加熱することが好ましい。
[0033]
 なお、本実施形態に係るガーネット珪酸塩の製造方法は、上述の反応式1に沿った方法に限定されない。そのため、他の製造方法により得られたガーネット珪酸塩も本実施形態に包含されるものである。
[0034]
 このように、本実施形態に係るガーネット珪酸塩は、一般式:Lu CaMg (SiO で表される珪酸塩を主成分とするガーネット珪酸塩である。そして、当該ガーネット珪酸塩は、ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状を持つ一次粒子を含む。ガーネット珪酸塩は、さらに、少なくともリチウムを含むアルカリ金属を含有し、アルカリ金属の含有量が2000ppm未満である。本実施形態のガーネット珪酸塩はアルカリ金属を含有しているため、ガーネット珪酸塩の粒子群は、ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状を持つ一次粒子を含むようになる。そして、ガーネット珪酸塩の一次粒子の成長を伴いながら、単分散した状態で粒子化する。そのため、このようなガーネット珪酸塩に発光中心を付活することにより、比較的大きな一次粒子サイズを合わせ持ち、高発光効率と高光吸収率を兼ね備えるガーネット珪酸塩蛍光体を得ることが可能となる。
[0035]
[ガーネット珪酸塩蛍光体]
 次に、本実施形態に係るガーネット珪酸塩蛍光体について詳細に説明する。本実施形態に係るガーネット珪酸塩蛍光体は、ガーネット珪酸塩と、ガーネット珪酸塩に含まれる、発光中心として機能するイオンとを含む。これにより、ガーネット珪酸塩蛍光体は、外部刺激、例えば粒子線(α線、β線、電子線)や電磁波(γ線、X線、真空紫外線、紫外線、可視光線)の照射などによって容易に励起され、蛍光を放つことが可能となる。なお、ガーネット珪酸塩蛍光体から放出される蛍光は、紫外線、可視光線及び赤外線から選ばれるいずれかの電磁波であれは、後述する発光装置用として用いることができるが、実用面で好ましい蛍光は可視光である。放出される蛍光が可視光であれば、表示装置や照明装置用の発光装置として広範囲に利用できるものになる。
[0036]
 ガーネット珪酸塩蛍光体において、発光中心として機能するイオンは特に限定されない。発光中心として機能するイオンとしては、例えば、ns 形イオン、遷移金属イオン及び希土類イオンからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。ns 形イオンの具体例を挙げると、例えばSn 2+、Sb 3+、Tl 、Pb 2+、Bi 3+である。遷移金属イオンの具体例を挙げると、例えばMn 2+、Mn 4+、Cr 3+、Fe 3+である。希土類イオンの具体例を挙げると、例えばCe 3+、Pr 3+、Nd 3+、Sm 3+、Eu 3+、Eu 2+、Gd 3+、Tb 3+、Dy 3+、Ho 3+、Er 3+、Tm 3+、Yb 3+である。発光中心としてこのようなイオンを用いることにより、蛍光特性が付与されたガーネット珪酸塩蛍光体を得ることが可能となる。
[0037]
 ガーネット珪酸塩蛍光体において、発光中心として機能するイオンはCe 3+であることが好ましい。これにより、ガーネット珪酸塩蛍光体は橙色の蛍光を放ち、さらに当該橙色の蛍光は、発光装置用としての需要が多い赤色光成分を多く含むことができる。
[0038]
 本実施形態のガーネット珪酸塩蛍光体は、ガーネット珪酸塩を母体とするCe 3+付活蛍光体であり、当該ガーネット珪酸塩は、一般式:Lu CaMg (SiO で表される珪酸塩を主成分とすることが好ましい。このようなガーネット珪酸塩蛍光体は、波長460nm付近の青色光を吸収して、波長600nm付近に蛍光ピークを持つ橙色光に波長変換することができる。また、Ce 3+の蛍光寿命は10 -8~10 -7sであり、上記のイオン中で最も短い超短残光性を有する。このため、ハイパワーレーザー光などのハイパワー密度の光励起条件下でも、蛍光出力の飽和現象が少なく、励起光密度に殆ど比例する高い出力を得ることができる。このため、発光中心としてCe 3+を用いることにより、高出力タイプのLED照明やレーザー照明用に適する蛍光体を得ることができる。
[0039]
 本実施形態のガーネット珪酸塩蛍光体は、上述のガーネット珪酸塩を母体としている。そのため、ガーネット珪酸塩蛍光体は、結晶性が良好で単分散性に優れ、かつ、一次粒子サイズが比較的大きな粉末状の蛍光体になる。一般に、蛍光体の発光効率は結晶性と相関し、単分散性は波長変換体の製造の容易性と相関する。さらに、Ce 3+付活蛍光体の一次粒子サイズは、青色光の光吸収特性と相関する。このため、本実施形態のガーネット珪酸塩蛍光体は、発光効率が高く、波長変換体の製造が容易であり、かつ、光吸収特性に優れるという有利な効果を奏する蛍光体となることができる。
[0040]
[波長変換体]
 次に、本実施形態に係る波長変換体について詳細に説明する。本実施形態の波長変換体は、ガーネット珪酸塩蛍光体を備えるものである。波長変換体は、例えば、発光ダイオードなどの固体発光素子が放つエネルギーを吸収し、吸収したエネルギーを色調制御された可視光に変換する機能を有する。固体発光素子を用いた発光装置にこのような波長変換体を用いることにより、固体発光素子が放つ光を色調制御し、所望の照明光を得ることが可能となる。
[0041]
 図1乃至図5では、本実施形態に係る波長変換体を概略的に示している。図1乃至図5において、第一の蛍光体1は、本実施形態に係るガーネット珪酸塩蛍光体である。第二の蛍光体2は、本実施形態に係るガーネット珪酸塩蛍光体とは組成または結晶構造が異なる蛍光体である。
[0042]
 本実施形態に係る波長変換体100は、図1に示すように、第一の蛍光体1が封止体3の内部で分散した構成とすることができる。また、波長変換体100Aは、図2に示すように、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2が封止体3の内部で分散した構成とすることができる。封止体3は、蛍光体粒子を封止する封止物であり、無機材料及び有機材料の少なくとも一方を用いることができる。このような無機材料としては、例えば、低融点ガラスなどの透明無機材料を挙げることができる。また、有機材料としては、例えば、シリコーン樹脂などの透明有機材料を用いることができる。封止体3として無機材料を用いた場合、全て無機物質からなる波長変換体とすることができるため、熱伝導性に優れ放熱性の面で有利な波長変換体を得ることができる。一方、封止体3として有機材料を用いた場合、樹脂中に蛍光体が分散した波長変換体を得ることできる。このような波長変換体は、公知の方法により容易に製造することができる。
[0043]
 なお、本実施形態の波長変換体は、図3及び図4に示すように、封止体3を利用しない波長変換体とすることもできる。この場合、有機または無機の結着剤を利用して、蛍光体同士を固着すればよい。また、第一の蛍光体1同士の加熱反応、または、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2との加熱反応を利用して、蛍光体同士を固着することもできる。結着剤としては、一般的に利用される樹脂系の接着剤、またはセラミックス微粒子や低融点ガラスなどを使用することができる。封止体3を利用しない波長変換体は厚みを薄くすることができるため、発光装置に好適に用いることができる。
[0044]
 図3に示す波長変換体100Bは、第一の蛍光体1同士を固着した波長変換体、または結着剤で結合した波長変換体である。図4に示す波長変換体100Cは、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2を固着した波長変換体、または結着剤で結合した波長変換体である。
[0045]
 図5に示すように、本実施形態の波長変換体100Dは、板状の第二の蛍光体2の表面に、封止体3を利用せずに第一の蛍光体1の粒子群を固着させた構造とすることもできる。この場合、板状の第二の蛍光体2として、複数の蛍光体粒子が焼結し、内部に複数の空隙を有する焼結体を用いることができる。また、第二の蛍光体2として、複数の蛍光体粒子が焼結し、内部に複数の空隙を有しないセラミックス体を用いることもできる。
[0046]
 第一の蛍光体1は一種類に限定されず、本実施形態に係るガーネット珪酸塩蛍光体であれば、粒子サイズや粒子形状、組成が異なる複数種類の蛍光体を適宜組み合わせたものであってもよい。また、第二の蛍光体2も一種類に限定されず、組成や結晶構造、粒子サイズ、粒子形状、あるいは性状や形態が異なる複数種類の第二の蛍光体を適宜組み合わせたものであってもよい。
[0047]
 本実施形態の波長変換体において、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2は、互いに発光色が異なる蛍光を放つことが好ましい。これにより、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2の種類や含有割合を適宜変えることによって、色調が制御された出力光を放つ波長変換体を得ることができる。
[0048]
 本実施形態の波長変換体において、第二の蛍光体2として利用できる蛍光体は、酸化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、窒化物系蛍光体及びハロゲン化物系蛍光体からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。第二の蛍光体2として好ましい蛍光体は、大気中及び常圧での取り扱いが容易な酸化物系蛍光体である。第二の蛍光体2としては、酸化物、ケイ酸塩、アルミン酸塩、燐酸塩、硼酸塩、ハロケイ酸塩、ハロアルミン酸塩及びハロ燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。このような蛍光体は、工業生産が容易であるため、特に好適に用いることができる。
[0049]
 酸化物系蛍光体としては、例えば、Y Al (AlO :Ce 3+、Ca Sc (SiO :Ce 3+、Lu CaMg (SiO :Ce 3+などのCe 3+で付活されたガーネット蛍光体;MSc :Ce 3+、MLu :Ce 3+などのカルシウムフェライト型の蛍光体;M AlO F:Ce 3+などの酸フッ化物蛍光体を挙げることができる。但し、Mは、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも一つの元素である。
[0050]
 硫化物系蛍光体としては、例えば、MS:Ce 3+、MGa :Ce 3+などの、Ce 3+で付活されたアルカリ土類金属硫化物や、チオガリウム酸塩の蛍光体を挙げることができる。但し、Mは、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも一つの元素である。
[0051]
 窒化物系蛍光体としては、例えば、LaAl(Si,Al) (N,O) 10:Ce 3+、LaSi :Ce 3+、Ca-α-sialon:Ce 3+、CaAlSiN :Ce 3+、La Si 11:Ce 3+などの、Ce 3+で付活された酸窒化アルミノ窒化ケイ酸塩、窒化ケイ酸塩、酸窒化ケイ酸塩および窒化アルミノケイ酸塩から選択される蛍光体を挙げることができる。
[0052]
 第二の蛍光体2として利用できる蛍光体の結晶構造は、ガーネット型、ペロブスカイト型、アパタイト型、K NiF 型、オリビン型、A希土型、B希土型、C希土型、スピネル型、シーライト型、またはカルシウムフェライト型であることが好ましい。なお、当該結晶構造は、高効率蛍光体の母体として機能する化合物が多い構造であることが好ましい。そのため、第二の蛍光体2として利用できる蛍光体の結晶構造は、ペロブスカイト型、アパタイト型、K NiF 型、ガーネット型、オリビン型、スピネル型、またはカルシウムフェライト型であることがより好ましい。
[0053]
 ガーネット型の結晶構造を持つ酸化物の具体例としては、端成分となるケイ酸塩としてのCa Sc (SiO 、Lu CaMg (SiO ;端成分となるアルミノケイ酸塩としてのY Mg (SiO (AlO )、Y MgAl(AlO (SiO )、Lu Mg (SiO (AlO )、Y BaAl (AlO (SiO )、Y MgAl (AlO (SiO )、Y CaAl (AlO (SiO )、Lu CaAl (AlO (SiO )、Ca Zr (AlO (SiO );端成分となるアルミン酸塩としてのLu Al (AlO 、Y Al (AlO 、Gd Al (AlO 、Tb Al (AlO 、Y Ga (AlO 、Y Sc (AlO 、Ca YZr (AlO 、Ca EuZr (AlO 、Ca GdZr (AlO 、Ca TbZr (AlO 、Ca LuZr (AlO 、Ca YHf (AlO などが挙げられる。本実施形態では、母体となるこれらの化合物に発光中心を添加した蛍光体を利用することができる。
[0054]
 本実施形態の波長変換体の形状は特に限定されるものではない。波長変換体は薄板状であることが好ましく、円盤状または角板状であることも好ましい。このような形状の波長変換体は、製造及び取り扱いが容易となる。
[0055]
 波長変換体の大きさは特に限定されるものではない。波長変換体は、断面における横方向の最長長さが0.1mm以上100mm未満であることが好ましく、1mm以上30mm未満であることがより好ましい。また、波長変換体の断面における横方向の最短長さが0.1mm以上100mm未満であることも好ましく、1mm以上30mm未満であることがより好ましい。波長変換体の厚みは、30μm以上1cm未満であることが好ましく、50μm以上3mm未満であることがより好ましい。
[0056]
 波長変換体は、レーザー光のスポット径(一般に数10μm以上5mm未満)よりも大きい投影面積を持つ大きさであることが好ましい。この場合、全てのレーザー光を波長変換体に照射できるようになるため、効率的に波長変換することが可能となる。
[0057]
 本実施形態に係る波長変換体は、図1乃至図5に示すように、上述のガーネット珪酸塩蛍光体、とりわけCe 3+付活ガーネット珪酸塩蛍光体を利用して構成されている。本実施形態に係るガーネット珪酸塩蛍光体は、製造が容易であり、かつ、光吸収特性に優れるという有利な効果を有する。このため、当該ガーネット珪酸塩蛍光体を用いることによって、発光装置用として好適な波長変換体を得ることができる。また、Ce 3+付活ガーネット珪酸塩蛍光体を用いることにより、高出力かつ超短残光性の暖色光成分を放つ波長変換体を得ることができる。
[0058]
 なお、本実施形態に係る波長変換体は、図1乃至図5に例示したものに限定されるものではなく、これら以外の様々な変形例を取ることができる。
[0059]
[発光装置]
 次に、本実施形態に係る発光装置を説明する。本実施形態の発光装置は、上述のガーネット珪酸塩蛍光体または波長変換体を備えている。
[0060]
 本実施形態の発光装置は、発光する機能を備えた電子装置を広く包含するものであり、何らかの光を発する電子装置であれば特に限定されるものではない。また、発光装置は、照明光源及び照明装置並びに表示装置なども包含する。そのため、レーザーダイオードを備える照明装置やプロジェクターなども発光装置とみなされる。
[0061]
 本実施形態の発光装置は、少なくとも上述のガーネット珪酸塩蛍光体または波長変換体を利用しており、さらに当該ガーネット珪酸塩蛍光体または波長変換体が放つ蛍光を出力光として利用する装置である。詳細に説明すると、本実施形態の発光装置は、上述のガーネット珪酸塩蛍光体または波長変換体と、当該ガーネット珪酸塩蛍光体または波長変換体を励起する励起源とを組み合わせている。そして、ガーネット珪酸塩蛍光体が、励起源が放つエネルギーを吸収し、吸収したエネルギーを色調制御された蛍光に変換するものである。
[0062]
 以下、図面を参考に本実施形態の発光装置を説明する。図6は、本実施形態に係る発光装置の概略を示す。図6(a)及び図6(b)において、励起源101は、本実施形態の波長変換体100が備える蛍光体を励起するための励起光102を生成する光源である。励起源101は、粒子線(α線、β線、電子線など)や、電磁波(γ線、X線、真空紫外線、紫外線、可視光など)を放つ放射装置を用いることができる。なお、励起源101は、紫色光または青色光である短波長可視光を放つ放射装置を用いることが好ましい。
[0063]
 励起源101としては、各種の放射線発生装置や電子ビーム放射装置、放電光発生装置、固体発光素子、固体発光装置などを用いることができる。励起源101の代表的なものとしては、電子銃、X線管球、希ガス放電装置、水銀放電装置、発光ダイオード、半導体レーザーを含むレーザー光発生装置、無機または有機のエレクトロルミネッセンス素子などが挙げられる。
[0064]
 図6(a)及び図6(b)において、出力光103は、励起源101が放つ励起線または励起光102によって励起された波長変換体100中の蛍光体が放つ蛍光である。そして、出力光103は、発光装置において照明光や表示光として利用されるものである。
[0065]
 図6(a)では、励起線または励起光102を波長変換体100に照射する方向に、波長変換体100からの出力光103が放出される構造の発光装置を示す。なお、図6(a)に示す発光装置としては、白色LED光源や透過型のレーザー照明装置のほか、蛍光ランプ、電子管なども挙げられる。一方、図6(b)では、励起線または励起光102を波長変換体100に照射する方向とは逆の方向に、波長変換体100からの出力光103が放出される構造の発光装置を示す。図6(b)に示す発光装置としては、反射型のレーザー照明装置、例えば、反射板付き蛍光体ホイールを利用する光源装置やプロジェクターなどが挙げられる。
[0066]
 本実施形態の発光装置の具体例として好ましいものは、蛍光体を利用して構成した半導体発光装置、照明光源、照明装置、表示装置などであり、特にレーザー照明やレーザープロジェクターである。
[0067]
 そして、本実施形態の発光装置は固体発光素子をさらに備え、ガーネット珪酸塩蛍光体または波長変換体は、固体発光素子が放つ励起光を、当該励起光よりも長波長の光に変換することが好ましい。また、固体発光素子は、短波長可視光を放つことが好ましい。励起源として固体発光素子を用いることにより、衝撃に強い全固体の発光装置、例えば固体照明を実現することが可能となる。なお、このような発光装置は、屋外照明、店舗照明、調光システム、施設照明、海洋照明、プロジェクター、および内視鏡のいずれかの用途に好適に用いることができる。
[0068]
 このように、本実施形態に係る発光装置は、ガーネット珪酸塩蛍光体または波長変換体を備える。本実施形態のガーネット珪酸塩蛍光体は、発光装置の製造の面で好ましい粒子サイズ、形状および性状を備える。そのため、このようにすると、製造が容易であり、さらに高出力かつ超短残光性の暖色光成分を放つ発光装置を得ることが可能となる。
[0069]
 本実施形態に係る発光装置では、励起源として、440nm以上475nm未満の波長範囲内にピークを持つ青色光を放つ発光素子をさらに備え、当該青色光はガーネット珪酸塩蛍光体を励起することが好ましい。これにより、青色光と、ガーネット珪酸塩蛍光体が放つ暖色光との加法混色により、白色系の光を放つ発光装置を得ることができる。
[0070]
 なお、発光装置において、ガーネット珪酸塩蛍光体が放つ蛍光成分は、照明光または表示画素として利用されることが好ましい。これにより、照明装置または表示装置として利用できる発光装置を得ることができる。
実施例
[0071]
 以下、本実施形態を実施例、比較例及び参考例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態は実施例に限定されるものではない。
[0072]
 固相反応を利用する調製手法を用いて、実施例、比較例及び参考例に係るガーネット珪酸塩蛍光体を合成し、その特性を評価した。なお、実施例、比較例及び参考例では、以下の化合物粉末を主原料として使用した。
 酸化ルテチウムセリウム((Lu 0.97Ce 0.03):純度3N、日本イットリウム株式会社製
 炭酸カルシウム(CaCO ):純度2N5、関東化学株式会社製
 酸化マグネシウム(MgO):純度3N、和光純薬工業株式会社製
 二酸化ケイ素(SiO ):純度>3N、日本アエロジル株式会社製
[0073]
 また、実施例及び参考例では、以下の化合物粉末を反応促進剤として使用した。
 塩化リチウム(LiCl):純度2N、和光純薬工業株式会社製
[0074]
 実施例、比較例及び参考例では、目標とするガーネット珪酸塩蛍光体を、「(Lu 0.97Ce 0.03CaMg (SiO 」とした。
[0075]
[実施例]
 実施例では、反応式2に沿って、ガーネット珪酸塩蛍光体の合成を試みた。なお、反応式2から分かるように、実施例は、合成する1モルのガーネット珪酸塩蛍光体(Lu CaMg (SiO :Ce 3+)に対して、3モルの反応促進剤(LiCl)を利用する合成法である。
 [化2]
 (Lu,Ce) +CaCO +2MgO+3SiO +3LiCl→(Lu,Ce) CaMg (SiO +3LiCl(+CO ↑)
[0076]
 実施例では、表1に示す割合で蛍光体の主原料を秤量した。次に、これらの原料を100mlの純水を入れたビーカー中に投入し、スターラーを用いて湿式混合した。そして、湿式混合後のスラリーを乾燥機で乾燥させて、焼成原料を得た。その後、焼成原料をアルミナるつぼに移し、箱型炉を用いて900℃の大気中で2時間焼成した。得られた焼成物に、表1に示す割合の反応促進剤を添加した後、乳鉢と乳棒を用いて乾式混合した。
[0077]
 このようにして準備した混合粉末を、管状雰囲気炉を用いて1350℃の還元雰囲気中(96vol%窒素4vol%水素雰囲気中)で1時間本焼成することによって、実施例の蛍光体焼成物を合成した。なお、本焼成の際の昇温速度と降温速度は、いずれも400℃/時間とした。
[0078]
[表1]


[0079]
 合成された蛍光体焼成物に純水を加え、ボールミルを用いて解砕処理した。その後、ふるい(250メッシュ)を利用する水篩によって分級した後、乾燥させることにより、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体を得た。なお、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体は、鮮やかな橙色の焼成物であった。
[0080]
[比較例]
 比較例では、反応式3に沿って、フラックスを一切利用しないオーソドックスな固相反応を利用して、ガーネット珪酸塩蛍光体の合成を試みた。具体的には、反応促進剤を添加しなかったこと以外は実施例と同様の手順で、比較例のガーネット珪酸塩蛍光体を得た。なお、比較例のガーネット珪酸塩蛍光体は、淡い橙色の焼成物であった。
 [化3]
 (Lu,Ce) +CaCO +2MgO+3SiO →(Lu,Ce) CaMg (SiO (+CO ↑)
[0081]
[参考例]
 参考例では、反応式4に沿って、ガーネット珪酸塩蛍光体の合成を試みた。反応式4におけるxは、0.1、0.3、1、10から選択される数値である。そして、参考例1、参考例2、参考例3及び参考例4のxは、各々0.1、0.3、1及び10である。
 [化4]
 (Lu,Ce) +CaCO +2MgO+3SiO +xLiCl→(Lu,Ce) CaMg (SiO +xLiCl(+CO ↑)
[0082]
 参考例1~4のガーネット珪酸塩蛍光体は、反応促進剤の添加量を表1に示す量に調整したこと以外は実施例1と同様にして合成した。なお、参考例1~3のガーネット珪酸塩蛍光体は、比較例と同様に、淡い橙色の焼成物であった。一方、参考例4のガーネット珪酸塩蛍光体は、濃い橙色の焼成物であった。
[0083]
 反応式4から分かるように、参考例1~3は、合成する1モルのガーネット珪酸塩蛍光体に対して、0.1モル以上1モル以下の反応促進剤を利用する合成法である。また、参考例4は、合成する1モルのガーネット珪酸塩蛍光体に対して、10モルの反応促進剤を利用する合成法である。
[0084]
 ここで、粉末状の蛍光体を合成する際の一般的な合成法における反応促進剤の添加量は、蛍光体1モルに対して数モル%から数10モル%である。このため、参考例1および参考例2は、LiClを反応促進剤として選択する、珪酸塩蛍光体のオーソドックスな合成法である。一方、参考例3および参考例4は、LiClを反応促進剤として選択した上で、当該反応促進剤を大量に使用する特殊な合成法である。
[0085]
[評価]
 上述のようにして得られた実施例、比較例、及び参考例1乃至4のガーネット珪酸塩蛍光体について、電子顕微鏡を用いた観察、結晶構造解析、及び発光スペクトル測定を行った。また、実施例及び比較例のガーネット珪酸塩蛍光体について、金属不純物の含有量を測定した。
[0086]
 (電子顕微鏡観察)
 実施例、比較例及び参考例のガーネット珪酸塩蛍光体を、電子顕微鏡(製品名:VE-9800、株式会社キーエンス製)を用いて観察した。図7(a)は実施例のガーネット珪酸塩蛍光体の観察結果を示し、図7(b)は比較例のガーネット珪酸塩蛍光体の観察結果を示す。
[0087]
 図7(b)に示すように、比較例のガーネット珪酸塩蛍光体の一次粒子径は1μm~3μmが主体である。これに対して、図7(a)に示すように、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体の一次粒子径は3μm~15μmが主体である。このことから、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体は、比較例のガーネット珪酸塩蛍光体に対して、一次粒子径が数倍大きいことが分かる。
[0088]
 また、図7(b)に示すように、比較例のガーネット珪酸塩蛍光体は、不定形の一次粒子を比較的多く含み、小さな一次粒子が凝集してなる凝集粒子の形態が多く認められる。そして、比較例のガーネット珪酸塩蛍光体では、ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状を持つ一次粒子を確認することができなかった。
[0089]
 これに対して、図7(a)に示すように、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体は、ガーネット化合物の晶癖である菱形十二面体に近い形状を持つ一次粒子を多く含み、単分散粒子に近い粒子形態が多く認められた。つまり、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体では、ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状を持つ一次粒子を数多く確認することができた。
[0090]
 図8では、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体の粒子群に含まれている粒子の一例を示す。図8に示すガーネット珪酸塩蛍光体は、ガーネットの結晶構造に由来する一次粒子からなる単分散粒子であり、粒子径は約13μmであった。また、図8より、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体は、ガーネットの結晶構造に由来するファセット面を持つことが分かる。
[0091]
 図9(a)では、参考例1のガーネット珪酸塩蛍光体の観察結果を示す。図9(b)では、参考例2のガーネット珪酸塩蛍光体の観察結果を示す。図9(c)では、参考例3のガーネット珪酸塩蛍光体の観察結果を示す。図9(d)では、参考例4のガーネット珪酸塩蛍光体の観察結果を示す。
[0092]
 参考例1~3に係る図9(a)~(c)と、比較例に係る図7(b)とを比較して分かるように、ガーネット珪酸塩蛍光体1モルに対して1モル(100モル%)以下のLiClを使用したガーネット珪酸塩蛍光体は、得られた粒子は大差の無い結果となった。つまり、不定形の一次粒子を比較的多く含み、小さな一次粒子が凝集してなる凝集粒子の形態が多く認められる結果となった。また、参考例1~3のガーネット珪酸塩蛍光体は、ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状を持つ一次粒子を確認することができなかった。
[0093]
 一方、図9(d)から分かるように、ガーネット珪酸塩蛍光体1モルに対して、10モルのLiClを利用する合成法では、得られるガーネット珪酸塩蛍光体は、粒子同士の焼結が激しく、大きな塊状になってしまった。また、参考例4のガーネット珪酸塩蛍光体は、ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状を持つ一次粒子を確認することができなかった。このため、実施例のように、反応促進剤としてLiClを選択し、かつ、特定の添加量とした場合、発光装置用として適する形態のLu CaMg (SiO :Ce 3+蛍光体の粒子群が生成することは、思いがけないことであった。
[0094]
 (結晶構造解析)
 実施例及び比較例のガーネット珪酸塩蛍光体の結晶構造解析を、X線回折装置(製品名:MultiFlex、株式会社リガク製)を用いて行った。実施例のガーネット珪酸塩蛍光体の測定結果を図10(a)に示す。また、比較例のガーネット珪酸塩蛍光体の測定結果を図10(b)に示す。参考のため、図10(c)には、PDF(Power Diffraction Files)に登録されている、ガーネット型の結晶構造を持つY Al 12のパターン(PDF No.330040)を示す。
[0095]
 図10の(a)と(c)を比較して分かるように、実施例の蛍光体のX線回折パターンは、ガーネット型の結晶構造を持つY Al 12に類似したパターンが主体であった。このことは、実施例の蛍光体が、ガーネット型構造を有する化合物を主体にしてなることを示している。
[0096]
 ここで、図10の(a)と(b)に若干認められる、ガーネット型の結晶構造を持つY Al 12とは異なる回折ピークに注目する。なお、Y Al 12とは異なる回折ピークは、図10において「▽」で示す。Y Al 12とは異なる回折ピークの強度は、図10(a)に示す実施例の方が、図10(b)に示す比較例よりも小さかった。このことは、実施例の蛍光体の方が比較例の蛍光体よりも異種化合物の混在量が少ないことを示している。そして、比較例と比べた結果、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体は、単一結晶相に比較的近い希土類ガーネット珪酸塩であるといえる。
[0097]
 なお、データは省略するが、参考例1~4のガーネット珪酸塩蛍光体に対して結晶構造解析を行った結果、実施例と同様のX線回折パターンを示した。
[0098]
 (発光スペクトル測定)
 次に、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体を青色光で励起したときの発光スペクトルを、瞬間マルチ測光システム(製品名:QE-1100、大塚電子株式会社製)を用いて評価した。なお、発光スペクトル測定時の励起波長は450nmとした。実施例の発光スペクトルの測定結果を図11中に(a)として示した。また、図11中の(b)は、同様に測定した比較例のガーネット珪酸塩蛍光体の発光スペクトルである。
[0099]
 図11から分かるように、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体の発光スペクトルは、発光ピーク波長が596nm付近にあり、Ce 3+によるブロードな蛍光成分を有していた。比較例のガーネット珪酸塩蛍光体の発光スペクトルは、発光ピーク波長が594nm付近にあり、実施例と比較例との間には若干のずれが認められた。詳細は不明であるが、例えば、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体では、実効的なCe 3+付活量が増え、Ce 3+の自己吸収効果の増加によって長波長シフトしたことなどが考えられる。
[0100]
 なお、データは省略するが、参考例1~4のガーネット珪酸塩蛍光体に対して発光スペクトルを測定した結果、実施例と同様の発光スペクトルを示した。
[0101]
 (金属不純物分析)
 次に、実施例及び比較例のガーネット珪酸塩蛍光体における金属不純物を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(製品名:CIROS-120、Spectro社製)を用いて評価した。なお、分析に際しては、乾燥させたサンプルを過酸化ナトリウムでアルカリ融解し、得られた融成物を塩酸で溶解した後、純水で希釈して分析に供した。金属不純物分析の結果、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体からは、リチウムが検出された。これに対して、比較例のガーネット珪酸塩蛍光体からリチウムは検出されなかった。
[0102]
 実施例のガーネット珪酸塩蛍光体におけるリチウムの含有量は、サンプル間でバラツキが認められるものの、約0.02質量%(200ppm)から約0.14質量%(1400ppm)の範囲内であった。このため、サンプル間でのバラツキや測定誤差などを考慮すると、最大0.03質量%(300ppm)から0.2質量%(2000ppm)程度のリチウムを含む場合には、実施例と同様の作用効果が得られるものと推察できる。
[0103]
 なお、誘導結合プラズマ発光分光分析の結果、実施例と比較例の結晶を構成する主金属成分(Lu、Ca、MgおよびSi)の原子割合に大差が認められなかった。このことを考慮すると、詳しいメカニズムは不明であるが、実施例に含まれるLi成分が、ガーネット珪酸塩蛍光体の一次粒子径の増大や単一結晶相化に関与した可能性がある。例えば、価数が一価のリチウムイオンが、結晶中の格子欠陥を電荷補償するように作用するなどして、結晶成長が促されたことが考えられる。
[0104]
 このように、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体は、これまで無かった、ガーネットの結晶構造に由来する形状に近い一次粒子形状、単分散かこれに近い粒子形態、さらには比較的大きな一次粒子サイズを合わせ持っている。そして、実施例のガーネット珪酸塩蛍光体は、高発光効率と高光吸収率を兼ね備える粒子群としてのLu CaMg (SiO :Ce 3+蛍光体である。
[0105]
 なお、粉末状の蛍光体を合成する際の一般的な合成法における反応促進剤の添加量は、蛍光体1モルに対して数モル%から数10モル%である。このため、蛍光体1モルに対して300モル%という大量の反応促進剤を利用する実施例の合成法は、粒径が3μm~20μmである粉末状の蛍光体の合成法として、容易に思いよらない特異な合成法といえる。
[0106]
 以上、本実施形態を実施例及び比較例によって説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
[0107]
 特願2017-117619号(出願日:2017年6月15日)の全内容は、ここに援用される。

産業上の利用可能性

[0108]
 本発明によれば、比較的大きな一次粒子サイズを合わせ持ち、高発光効率と高光吸収率を兼ね備える蛍光体を得ることが可能なガーネット珪酸塩、当該ガーネット珪酸塩からなるガーネット珪酸塩蛍光体、並びに波長変換体及び発光装置を提供することができる。

符号の説明

[0109]
 1 第一の蛍光体(ガーネット珪酸塩蛍光体)
 100,100A,100B,100C,100D 波長変換体

請求の範囲

[請求項1]
 一般式:Lu CaMg (SiO で表される珪酸塩を主成分とするガーネット珪酸塩であって、
 ガーネットの結晶構造に由来する粒子形状を持つ一次粒子を含み、
 少なくともリチウムを含むアルカリ金属を含有し、当該アルカリ金属の含有量が2000ppm未満であるガーネット珪酸塩。
[請求項2]
 平均粒子径が3μm以上である、請求項1に記載のガーネット珪酸塩。
[請求項3]
 請求項1又は2に記載のガーネット珪酸塩と、
 前記ガーネット珪酸塩に含まれる、発光中心として機能するイオンと、
を含むガーネット珪酸塩蛍光体。
[請求項4]
 前記イオンはCe 3+である、請求項3に記載のガーネット珪酸塩蛍光体。
[請求項5]
 請求項3又は4に記載のガーネット珪酸塩蛍光体を備える波長変換体。
[請求項6]
 請求項3若しくは4に記載のガーネット珪酸塩蛍光体、又は請求項5に記載の波長変換体を備える発光装置。
[請求項7]
 励起源として、440nm以上475nm未満の波長範囲内にピークを持つ青色光を放つ発光素子をさらに備え、
 前記青色光は前記ガーネット珪酸塩蛍光体を励起する、請求項6に記載の発光装置。
[請求項8]
 前記ガーネット珪酸塩蛍光体が放つ蛍光成分は、照明光又は表示画素として利用される、請求項6又は7に記載の発光装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]