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1. (WO2018220979) 金属電着用陰極板及びその製造方法
Document

明 細 書

発明の名称 金属電着用陰極板及びその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016  

課題を解決するための手段

0017   0018   0019   0020   0021   0022  

発明の効果

0023  

図面の簡単な説明

0024  

発明を実施するための形態

0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055  

実施例

0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074  

符号の説明

0075  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2   3   4   5   6   7  

明 細 書

発明の名称 : 金属電着用陰極板及びその製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、金属電着用陰極板及びその製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 従来、ニッケルメッキのアノード原料として供せられる電気ニッケルは、アノード保持具となるチタンバスケット内に入れられ、ニッケルメッキ槽内に吊るされて使用されている。このとき、アノード原料である電気ニッケルとしては、陰極板に電着された板状の電気ニッケルを切断して小片状としたものを使用していた。
[0003]
 しかしながら、小片状の電気ニッケルは、角部が鋭いためチタンバスケットへ投入する際の取り扱いが困難であった。また、その小片状の電気ニッケルは、チタンバスケットに投入後に角部がチタンバスケットの網目に引っ掛っていわゆる棚吊りを起こし、チタンバスケット内での充填状態が変化して、メッキむらの発生要因となることがあった。
[0004]
 そこで、角部の取れた丸みのある小塊状(ボタン状)の電気ニッケルの使用が提案されている。小塊状の電気ニッケルは、例えば、複数の円形状の導電部を等間隔に配列している陰極板を用いて、電解によりその導電部にニッケルを析出させた後、導電部から電着したニッケルを剥ぎ取ることにより製造することができる。このような方法によれば、1枚の陰極板から複数の小塊状の電気ニッケルを効率的に製造することができる。
[0005]
 図5は、小塊状の電気ニッケルの製造に用いられる従来の陰極板の一例を示す図である。陰極板11は、平板状の金属板12上に、導電部12aとなる箇所を残して非導電膜13でマスキングが施されており、この陰極板11では、導電部12aが凹部となり、非導電膜13が凸部となっている。このような陰極板11を用いることで、その導電部12aに適度な大きさのニッケルを電着させ、小塊状の電気ニッケルを製造する。
[0006]
 陰極板11のように、金属板12上に非導電膜13を形成する方法としては、例えば、図6(a)に示すように、平板状の金属板12上に、エポキシ樹脂等の熱硬化性の非導電性樹脂をスクリーン印刷法により塗布して加熱することで所望のパターンを有する非導電膜13を形成する方法がある(特許文献1、2参照)。なお、図6(b)は、非導電膜13を形成した陰極板11を用いてニッケル(電気ニッケル)14を導電部12aに電着析出させた状態を示すものである。陰極板11では、ニッケル14が、導電部12aから電着析出しはじめ、厚さ(縦)方向だけではなく平面(横)方向にも成長し、非導電膜13の上部にも盛り上がった状態となる。
[0007]
 また、例えば図7(a)に示すように、金属板22上に、感光性の非導電性樹脂を塗布し、露光及び現像により導電部22aに相当する箇所の非導電性樹脂を除去して、所望のパターンを有する非導電膜23を形成する方法も提案されている。なお、図7(b)は、非導電膜23を形成した陰極板21を用いてニッケル(電気ニッケル)24を導電部22aに電着析出させた状態を示すものである。陰極板21においても、ニッケル24は、導電部22aから電着析出しはじめ、厚さ方向だけではなく平面方向にも成長していく。
[0008]
 さらに、導電部となる複数のスタッドが等間隔に複数配列されるように組み込まれた金属の構造体の周囲を射出成形法により絶縁性樹脂で固めることによって、非導電部を構成する陰極板を製造する方法も提案されている(特許文献3参照)。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 特公昭51-036693号公報
特許文献2 : 特開昭52-152832号公報
特許文献3 : 特公昭56-029960号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0010]
 さて、上述したような陰極板を用いて小塊状の電気ニッケルの製造する場合、陰極板に形成される非導電膜(非導電部)の寿命が長いこと、その非導電膜が欠落(劣化)した場合でも容易に整備可能であることが要求される。
[0011]
 図6(a)に示したように、金属板12に非導電性樹脂をスクリーン印刷により塗布して非導電膜13を形成した場合、非導電膜13の膜厚は、導電部12aに近づくにしたがって徐々に薄くなるため、導電部12aとの境界で非常に薄くなる。このような非導電膜13の膜厚の変化は、非導電性樹脂の塗布量、非導電性樹脂の粘性及び粘性の温度特性、非導電性樹脂の硬化温度、金属表面の表面粗さや表面自由エネルギー等に依存する。そのため、非導電膜13の膜厚は、導電部12aとの境界で非常に薄くなる。
[0012]
 上述したように、図5、図6に示すような陰極板11を用いて小塊状の電気ニッケルを製造すると、ニッケル14は、導電部12aから電着析出しはじめ、縦方向だけでなく横方向にも成長するため、徐々に非導電膜13の上にも盛り上がった状態となる。そのため、導電部12aとの境界近傍に形成される薄い非導電膜13の部分においては、電解液の浸透により金属板12との密着性が低下しやすくなるとともに、ニッケル14の電着時の応力やその電気ニッケルの剥ぎ取り時の衝撃によって欠落しやすくなる。また、一度、非導電膜13の欠落が発生すると、その周辺の非導電膜13が金属板12の表面から浮き上がるため、その間隙にさらに電解液が侵入しやすくなり、その結果、引き続きニッケルを電着させようとすると、金属板12の表面から浮き上がった非導電膜13の間隙に電解液が潜り込んでニッケル14が電着していく。そして、その間隙に潜り込んで電着したニッケル14を剥ぎ取ろうとすると、ニッケル14が噛み込んでいる非導電膜13をさらに欠落させてしまう。
[0013]
 このように、従来の陰極板11においては、連鎖的に非導電膜13の欠落が発生し、欠落部分が広がっていくと隣接する導電部12aから成長したニッケル14同士が連結しやすくなり、所望の形状の電気ニッケルを得ることができず、不良品となる。したがって、非導電膜13の欠落が発生する前に、すべての非導電膜13を剥ぎ取り、再度非導電膜13を形成して陰極板11を整備する必要が生じる。しかしながら、実際には、数回から多くても10回未満程度のニッケルの電着処理を行った段階で陰極板11の整備を行う必要が生じてしまい、生産性が低下するばかりか整備コストも増大する。
[0014]
 一方、図7(a)に示したように、感光性の非導電性樹脂を用いて露光及び現像により非導電膜23を形成した陰極板21では、均一な膜厚に非導電膜23を形成することができる。しかしながら、電着後にニッケル24を剥ぎ取る際に、そのニッケル24が凸部を構成する非導電膜23の段差に引っ掛かり、その非導電膜23に大きな衝撃が加わりやすくなるため、やはり非導電膜23の欠落が発生してしまう。
[0015]
 なお、特許文献3のように射出成形により非導電部を構成する方法では、形成される非導電部の寿命は長くなるものの、陰極板それ自体の製造コストが高くなり、非導電部が劣化した場合の陰極板の整備が困難である。
[0016]
 本発明は、このような従来の事情に鑑み、金属板上の非導電膜が欠落しにくく、繰り返し使用可能で、且つ非導電膜が欠落した場合であっても整備が容易な金属電着用陰極板及びその製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0017]
 本発明者らは、上述した解題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、金属板に突起部を設けて導電部とし、突起部以外の金属表面に非導電膜を設けることで、非導電膜が欠落しにくくなることを見出した。さらに、その突起部の側面の形状を所定の形状にすることにより、非導電膜の欠落をより効果的に防ぐとともに、非導電膜の再形成による整備が必要になった場合であっても、非導電膜を剥ぎ取る際に非導電膜が残存することなく整備が容易となることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0018]
 (1)本発明の第1の発明は、少なくとも一方の表面に複数の円盤状の突起部が配列している金属板と、前記金属板の突起部以外の表面に形成される非導電膜とを有し、前記突起部は、その側面が、略垂直部と傾斜部とからなる形状であり、前記突起部の高さL1は、50μm以上1000μm以下であり、前記突起部の外周縁から外側に20μm離れた位置Xから垂直に下ろした垂線と前記側面との交点をYとするとき、XからYまでの長さL2は40μm以上、0.8×L1μm以下である、金属電着用陰極板である。
[0019]
 (2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記金属板は、チタン又はステンレス鋼からなる、金属電着用陰極板である。
[0020]
 (3)本発明の第3の発明は、第1又は2の発明において、メッキ用電気ニッケルの製造に使用される、金属電着用陰極板である。
[0021]
 (4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明に係る金属電着用陰極板の製造方法であって、金属板の少なくとも一方の表面に、ウェットエッチング加工又はエンドミル加工によって、円盤状の前記突起部を複数形成する、金属電着用陰極板の製造方法である。
[0022]
 (5)本発明の第5の発明は、第4の発明において、上記エンドミル加工では、ラジアスエンドミルを使用する、金属電着用陰極板の製造方法。

発明の効果

[0023]
 本発明によれば、非導電膜が欠落しにくく、繰り返し使用可能で、且つ非導電膜が欠落した場合であっても容易に整備可能な金属電着用陰極板及びその製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0024]
[図1] 陰極板の構成を示す平面図である。
[図2] 陰極板の構成を示す要部拡大断面図であり、(a)はニッケル電着前の陰極板の状態を説明する要部拡大断面図であり、(b)はニッケル電着後の陰極板の状態を説明する要部拡大断面図である。
[図3] 図2におけるA部を拡大した要部拡大断面図であり、金属板の突起部の側面形状を説明する要部拡大断面図である。
[図4] 陰極板の製造方法を説明する要部拡大断面図であり、(a)は第1工程を説明する要部拡大断面図であり、(b)は第2工程を説明する要部拡大断面図である。
[図5] 従来の陰極板の構成を示す平面図である。
[図6] 従来の陰極板の構成を示す要部拡大断面図であり、(a)はニッケル電着前の陰極板の状態を説明する要部拡大断面図であり、(b)はニッケル電着後の陰極板の状態を説明する要部拡大断面図である。
[図7] 従来の陰極板の構成を示す要部拡大断面図であり、(a)はニッケル電着前の陰極板の状態を説明する要部拡大断面図であり、(b)はニッケル電着後の陰極板の状態を説明する要部拡大断面図である。

発明を実施するための形態

[0025]
 以下、本発明の金属電着用陰極板を、電気ニッケルの製造に使用される金属電着用陰極板に適用した実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することができる。
[0026]
 <1.金属電着用陰極板>
 (1)陰極板の構成
 本実施の形態に係る陰極板1は、図1に示すように、複数の円盤状の突起部2aが配列している金属板2と、金属板2の突起部2a以外の表面に形成される非導電膜3とを有する。陰極板1は、後述するように、例えばニッケルを含む電解液や陽極を収容する電解槽内に吊下げ部材5により吊下げられて使用され、その表面に所望とする形状のニッケルを電着析出させる。
[0027]
 [金属板]
 金属板2は、図1及び図2(a)に示すように、平板状の金属の板であり、複数の円盤状の突起部2aを有する。ここで、金属板2において、突起部2a以外の表面を、突起部2aに対して「平坦部2b」という。また、「突起部の高さL1」は、金属板2における平坦部2bの表面からの突出高さとする。
[0028]
 なお、図2では、金属板2の一方の面に突起部2aを有する例を示しているが、その両方の面に突起部2aを有していてもよい。
[0029]
 金属板2の大きさは、特に限定されず、製造する電気ニッケルの所望の大きさや数に応じて適宜設定すればよい。例えば、一辺が100mm以上、2000mm以下の矩形状の大きさとすることができる。また、金属板2の厚みとしては、突起部2aを一方の表面に設ける場合には、例えば、1.5mm以上、5mm以下程度であることが好ましく、突起部2aを両方の表面に設ける場合には、例えば、3mm以上、10mm以下程度であることが好ましい。金属板2の厚みが過小であると、突起部2aと平坦部2bとによって反りが生じやすくなる傾向がある。一方で、金属板2の厚みが過大であると、金属板2の重量が増大して取り扱いが困難になる。
[0030]
 金属板2の材質としては、使用する電解液による腐食が小さく、ニッケル等の電着物とゆるい接着しか形成しない金属であれば特に限定されないが、チタン、ステンレス鋼が好ましく挙げられる。
[0031]
 金属板2において、複数の円盤状の突起部2aは、その上面が後述する非導電膜3から露出して導電部としての機能を果たすとともに、非導電膜3が所定の厚みをもって成膜されるべく、隣接する突起部2aによって凹状の段差を形成する。以下、突起部2aのうち、非導電膜3から露出する上面を「導電部2c」ということがある。導電部2cでは、電解処理によりニッケル4を電着析出する。
[0032]
 円盤状の突起部2aの大きさは、所望の電気ニッケルの大きさに応じて適宜設定されればよいが、その直径としては、例えば、5mm以上、30mm以下とすることができる。また、突起部2aの高さL1は、50μm以上、1000μm以下であることが好ましく、100μm以上、500μm以下であることがより好ましい。突起部2aの高さL1が過小であると、金属板2の平坦部2b上に形成される非導電膜3の膜厚が不十分となり、ニッケル4の電着時の応力やその電気ニッケルの剥ぎ取り時の衝撃によって欠落しやすくなる。一方、突起部2aの高さL1が過大であると、例えばスクリーン印刷で非導電膜を形成するとき、塗布回数が多くなり生産性が低下する。また、その高さL1が過大であると、突起部2a加工時に金属板2の歪が生じやすくなり、金属板2が反りやすくなるため、非導電膜3の形成が困難になる。なお、金属板2の歪による影響を小さくするため、金属板2の厚みを厚くすることも可能であるが、金属板2の重量が増大し取扱いが困難になる。
[0033]
 ここで、図3は、図2におけるA部を拡大した要部拡大断面図であり、金属板の突起部の側面形状を説明する要部拡大断面図である。図3に示すように、金属板2において、突起部2aの側面は、略垂直部2dと傾斜部2eとからなる形状を有している。具体的に、略垂直部2dは、突起部2aの導電部2cとなる上面に対して略垂直に形成される箇所である。また、傾斜部2eは、略垂直部2dから平坦部2cに向かって傾斜して形成される箇所である。
[0034]
 このように、突起部2aの側面が、略垂直部2dと傾斜部2eとからなる形状となるよう構成されることにより、電着処理を繰り返しても非導電膜3の欠落をより効果的に防ぐことができ、繰り返し使用を可能にする。また、非導電膜3の欠落等の劣化により、非導電膜3の再形成による整備が必要となった場合においても、非導電膜3を金属板2から剥離する際、突起部2aの側面に非導電膜3が残存する、いわゆる剥離残りが生じにくく、整備が容易となる。
[0035]
 例えば、突起部の側面が、略垂直部のみで形成され、傾斜部が存在しないような形状である場合には、金属板から非導電膜を剥離しようとしても、突起部の側面の略直角に形成される隅に非導電膜が残存しやすくなる。一方で、突起部の側面が、傾斜部のみで形成され、略垂直部が存在しないような形状である場合には、導電部近傍の非導電膜が薄くなり、電着処理により非導電膜が欠落しやすくなる等、非導電膜の劣化が速くなる。
[0036]
 より具体的に、突起部2aの側面の形状は、図3に示すように、突起部2aの外周縁から外側に20μm離れた位置Xから垂直に下した線と突起部2aの側面との交点をYとするとき、XからYまでの長さL2は、40μm以上であり、また100μm以上が好ましい。長さL2が40μm以上であることにより、金属板2(平坦部2b)上に形成される非導電膜3が、電解処理を繰り返しても欠落しにくくなる。なお、ここで、突起部2aの外周縁とは、突起部2aの導電部2cとなる上面の外周縁(エッジ部分)である。
[0037]
 また、長さL2は、突起部2aの高さL1の0.8倍(L1×0.8μm)以下である。長さL2がL1×0.8μm以下であることにより、傾斜部2eを有効に確保することができ、上述したように、非導電膜3を金属板2から剥離する際に突起部2aの側面に非導電膜3が残存する剥離残りが生じにくくなる。
[0038]
 なお、XからYまでの長さL2は、略垂直部2dの高さに相当するが、必ずしも交点Yは、突起部2aの側面の形状を略垂直部2dと傾斜部2eとを明確に分ける分岐点でなくてもよい。以下、長さL2を「略垂直部2dの高さL2」と称する場合がある。
[0039]
 また、突起部2aの高さL1と長さL2との差分である長さL3は、10μm以上が好ましく、25μm以上0.7×L1μm以下がより好ましい。以下、長さL3を、「傾斜部2eの高さ」と称する場合がある。さらに、交点Yから垂直に下した線と平坦部2bの表面を水平方向に延長した仮想面との交点をY’とし、突起部2aと平坦部2bとの境界位置をZとし、Y’からZまでの長さをL4としたとき、L3/L4は、0.2以上1以下であることが好ましい。以下、長さL4を「傾斜部2eの長さL4」と称する場合がある。L3/L4は、傾斜部2eの傾斜角度に相当する。
[0040]
 長さL3や、L3/L4が上記範囲であることにより、非導電膜3の再形成による整備が必要となった場合においても、非導電膜3を金属板2から剥離する際、突起部2aの側面に非導電膜3が残存する剥離残りが生じにくく、整備が容易である。
[0041]
 また、金属板2の表面、すなわち、金属板2における円盤状の突起部2aの上面には、サンドブラストやエッチングにより細かい凹凸を設けてもよい。これにより、突起部2aに電着したニッケル4が電解処理中に脱落することなく、適度な衝撃で剥ぎ取ることができる。この場合、後述する非導電膜3の膜厚は、金属板2の最大表面粗さRzの2倍以上であることが好ましい。非導電膜3の膜厚が金属板2の最大表面粗さRzの2倍より小さいと、非導電膜3のピンホールや絶縁不良部分の発生が懸念される。
[0042]
 [非導電膜]
 非導電膜3は、図2に示すように、金属板2における突起部2a以外の表面である平坦部2b上に形成され、これにより、金属板2上に複数配列している突起部2aの上面、すなわち導電部2cが露出された状態となる。そして、このような金属板2の導電部2cにニッケル4が電着析出することにより、そのニッケル4は小塊状の形状に個々に分割されて形成される。
[0043]
 非導電膜3は、隣接する突起部2aによって形成された凹状の段差を有する平坦部2b上に形成される。そのため、非導電膜3は、図6に示す従来の非導電膜13のように、端部の膜厚が薄くなりにくく、ニッケル4の電着時の応力や電着後の剥ぎ取り時の衝撃によっても欠落しにくくなる。また、非導電膜3は、図7に示す従来の非導電膜23のように、凸状に突出しておらず、その端部が凹状の段差によって保護されている。よって、ニッケル4を陰極板1から剥ぎ取る際にも、ニッケル4が非導電膜3の端部に与える衝撃は小さく、非導電膜3が欠落しにくい。このように、陰極板1においては、非導電膜3が欠落しにくいことから、非導電膜3を交換することなく、繰り返し電着に使用することが可能であり、整備コストの低減、生産性の向上を図ることが可能である。
[0044]
 なお、スクリーン印刷法によって、金属板2上の平坦部2bに非導電膜3を形成する場合、非導電膜3の材料が突起部2aの上面にも塗布されて導電部2cの表面積が減少し、初期の電流密度が増加することがあるが、電着したニッケル4の特性に不具合が発生しなければ問題ない。また、突起部2aの上面上に付着した非導電膜3は、膜厚が非常に薄いため欠落しやすいが、平坦部2b上に形成される非導電膜3は、膜厚が厚く欠落が抑制されるため問題ない。
[0045]
 非導電膜3は、非導電性のものであり、使用する電解液による腐食が小さい材料からなるものであれば特に限定されない。例えば、成膜が容易であるという観点から、熱硬化樹脂又は光硬化(紫外線硬化等)樹脂により構成することが好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等の絶縁樹脂が挙げられる。
[0046]
 (2)陰極板を用いた電気ニッケルの製造
 上述した構成からなる陰極板1では、図2(b)に示すように、非導電膜3から露出する突起部2aの上面が導電部2cとなって、ニッケル4を電着析出させる。陰極板1において、ニッケル4は、厚さ方向だけではなく平面方向にも成長するため、非導電膜3の上部に盛り上がった状態になる。このことから、隣接する突起部2aにおいて導電部2cから成長したニッケル4同士が接触する前に電着を終了することが好ましい。
[0047]
 そして、ニッケル4の電着が終了した後、陰極板1からそのニッケル4を剥ぎ取ることで、1枚の陰極板1より複数の小塊状の電気ニッケルを得ることができる。上述したように、本実施の形態に係る陰極板1では、非導電膜3が欠落しにくいことから、非導電膜3を交換することなく、繰り返し電着に使用することができ、整備コストの低減、生産性の向上を図ることができる。
[0048]
 なお、本実施の形態に係る陰極板1は、ニッケル4を電着したが、ニッケルに限定されず、銀、金、亜鉛、錫、クロム、コバルト、又はこれらの合金を電着してもよい。
[0049]
 <2.金属電着用陰極板の製造方法>
 本実施の形態に係る陰極板1の製造方法は、図4に示すように、金属板2の少なくとも一方の表面に複数の円盤状の突起部2aを形成する第1工程(図4(a))と、金属板2の突起部2a以外の表面に非導電膜3を形成する第2工程(図4(b))とを有する。
[0050]
 [第1工程]
 第1工程では、金属板2の表面に、複数の円盤状の突起部2aを形成する。例えば、平板状の金属板2に対して、突起部2a以外の部分を削って、高さL1となる突起部2aを残し、平坦部2bを形成する。加工方法としては、ウェットエッチング加工あるいはエンドミル加工が好ましく、大面積を加工するにはウェットエッチング加工がより好ましい。
[0051]
 例えば、平板状のステンレス鋼板をウェットエッチングで加工する場合には、ステンレス鋼板の表面に感光性のエッチングレジストを塗布し、続いて、所望のパターンを描画したフィルムやガラスを通して露光し、エッチングする部分のエッチングレジストを現像処理により除去する。そして、現像処理されたステンレス鋼板をエッチング液(例えば、塩化第二鉄溶液)に付け、エッチングレジストが除去されたステンレス鋼板の一部を除去し、最後にエッチングレジストを剥離することで、所望のパターンに対応した、複数の円盤状の突起部2aを形成することができる。ウェットエッチングの場合、レジスト近傍部分のステンレスはレジスト端部から離れた部分に比べてエッチング速度が遅くなるため、突起部2aの断面の形状が略垂直部2dと傾斜部2eから形成される形状となる。また、大面積を一度に加工できるため、短時間で製作することができる。
[0052]
 一方、エンドミル加工の場合は、金属板2にドリルの刃の先端に所望の丸みのある形状のラジアスエンドミルで加工することで、略垂直部2dと傾斜部2eとをより精密に形成することができる。
[0053]
 なお、突起部2aは、金属板2の一方の表面のみに形成してもよいし、金属板2の両方の表面に形成してもよい。
[0054]
 [第2工程]
 第2工程では、金属板2の突起部2a以外の表面となる平坦部2bに、非導電膜3を形成する。非導電膜3の形成方法としては、特に制限されず、スクリーン印刷により行うことができる。非導電膜3の材料が熱硬化樹脂又は光硬化樹脂である場合には、必要に応じて熱硬化又は光硬化を行えばよい。
[0055]
 本実施の形態に係る陰極板の製造方法によれば、上述した簡易な方法で、金属板2上の非導電膜3が欠落しにくく、繰り返し使用可能な陰極板1を得ることができる。また、非導電膜3の欠落等による劣化により、非導電膜3の再形成による整備が必要になった場合でも、非導電膜3を剥離する際に非導電膜3が突起部2aの側面に残存する剥離残りが生じにくく整備が容易である。
実施例
[0056]
 以下に、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、便宜上、図1乃至図6で示した部材と同一の機能をもつ部材には同一符号を付して説明する。
[0057]
 ≪陰極板の作製≫
 [実施例1]
 図1、図2に示すような陰極板1を作製した。具体的には、まず、200mm×100mm×4mmのステンレス鋼製(冷間圧延材)の金属板2に、ウェットエッチングを施し、円盤状の突起部2a(18個)を形成した。このとき、突起部2aの大きさは、直径14mm、高さL1を300μmとし、隣接する突起部2aの最小中心間距離は21mmとした。レーザー変位計で形状を測定したところ略垂直部2dの高さL2は平均120μm、傾斜部2eの高さL3は平均180μm、傾斜部2eの長さL4は平均420μmであった。
[0058]
 次に、スクリーン印刷法により、熱硬化性エポキシ樹脂を金属板2における平坦部2b上に塗布し、150℃60分の加熱により硬化させて非導電膜3を形成した。
[0059]
 [実施例2]
 金属板2の突起部2aの高さL1を500μmとした以外は、実施例1と同様に、陰極板1を作製した。このようにして作製した陰極板1において、レーザー変位計により、略垂直部2dの高さL2を測定したところ平均で200μm、傾斜部2eの高さL3は平均300μm、傾斜部2eの長さL4は平均650μmであった。
[0060]
 [実施例3]
 金属板2の突起部2aの高さL1を60μmとした以外は、実施例1と同様に、陰極板1を作製した。このようにして作製した陰極板1において、レーザー変位計により、略垂直部2dの高さL2を測定したところ平均で45μm、傾斜部2eの高さL3は平均15μm、傾斜部2eの長さL4は平均20μmであった。
[0061]
 [実施例4]
 金属板2の突起部2aの高さL1を200μmとした以外は、実施例1と同様に、陰極板1を作製した。このようにして作製した陰極板1において、レーザー変位計により、略垂直部2dの高さL2を測定したところ平均で90μm、傾斜部2eの高さL3は平均110μm、傾斜部2eの長さL4は平均240μmであった。
[0062]
 [実施例5]
 ラジアスエンドミルドリルを使用して、円盤状の突起部を形成したこと以外は、実施例1と同様に、陰極板1を作製した。このようにして作製した陰極板1において、レーザー変位計により、略垂直部2dの高さL2を測定したところ平均で100μm、傾斜部2eの高さL3は平均200μm、傾斜部2eの長さL4は平均220μmであった。
[0063]
 [比較例1]
 比較例1では、図5、図6に示すような従来の陰極板11を作製した。具体的には、200mm×100mm×4mmのステンレス鋼製(冷間圧延材)の平板状の金属板12に、直径14mmとなる導電部12a(18個)を残して、スクリーン印刷法により、熱硬化性エポキシ樹脂を塗布し、150℃60分の加熱により硬化させて非導電膜13を形成し、陰極板11を作製した。
[0064]
 [比較例2]
 金属板2の突起部2aの高さL1を40μmとした以外は、実施例1と同様に、陰極板1を作製した。このようにして作製した陰極板1において、レーザー変位計により、略垂直部2dの高さL2を測定したところ平均で30μm、傾斜部2eの高さL3は平均10μm、傾斜部2eの長さL4は平均50μmであった。
[0065]
 [比較例3]
 200mm×100mm×4mmのステンレス鋼製(熱間圧延材)の金属板2を使用したこと以外は、実施例4と同様に、陰極板1を作製した。このようにして作製した陰極板1において、レーザー変位計により、略垂直部2dの高さL2を測定したところその一部は20μm程度、傾斜部2eの高さL3は平均180μm、傾斜部2eの長さL4は平均300μmであった。このような略垂直部2dの高さL2が低い箇所は、熱間圧延材の製造工程で形成される表面の凹凸の凹部で形成される。
[0066]
 [比較例4]
 フラットエンドミルドリルを使用して、円盤状の突起部2aを形成したこと以外は、実施例4と同様に、陰極板1を作製した。このようにして作製した陰極板1において、レーザー変位計により、略垂直部2dの高さL2を測定したところ200μmであり、傾斜部はなかった。
[0067]
 [比較例5]
 実施例1と同様に、金属板にウェットエッチングを施し、高さL1が2000μmとなる突起部を形成した。しかしながら、金属板の反りが大きく、スクリーン印刷による非導電膜の形成が困難であった。
[0068]
 ≪電気ニッケルの製造≫
 各実施例及び比較例にて作製した陰極板を用いて、電解処理により電気ニッケルを製造した。具体的には、塩化ニッケル電解液を収容した電解槽中に、陰極板と、200mm×100mm×10mmの電気ニッケルからなる陽極板とを、対向させて浸漬した。そして、初期電流密度710A/m 、電解時間3日間の条件で、陰極板の表面にニッケルを電着させた。電解後、陰極板上に析出した電気ニッケルを剥ぎ取り、小塊状のメッキ用電気ニッケルを得た。
[0069]
 ≪評価≫
 電解処理に使用した陰極板を、そのまま繰り返し利用できる回数を評価した。非導電膜の欠落が広がると、隣接する突起部、導電部で電着したニッケル同士が連結し、所望の形状の電気ニッケルを得られないことがある。したがって、非導電膜が突起部との境界から平坦部方向に1mm以上に亘って欠落した場合には、使用を中止し、その時点までの繰り返し回数を評価した。また、ニッケルの電着と剥ぎ取りは、最大20回まで繰り返した。また、非導電膜が欠落し、導電部の径が1mm以上拡大した場合にも、使用を中止し、この時点までの繰り返し回数を評価した。
[0070]
 繰り返し回数を評価した陰極板の非導電膜をウォータージェットにより剥離し、非導電膜の剥離性を評価した。具体的には、ウォータージェットを用いて、孔径0.4mm、孔数3個の回転式ノズルを用いて、水圧200MPa、水量10L/分、有効幅30mmで、ノズルを2m/分で移動させながら非導電膜の剥離を実施した。非導電膜の剥離性に関して、陰極板1枚当たり(200mm×100mm)を約20秒以内で非導電膜をほぼ完全に除去できた場合を「良好」とし、20秒以上かかっても非導電膜を除去できなかった場合を「剥離残り発生」として評価した。
[0071]
 表1に、陰極板の構成とともに評価結果を示す。
[0072]
[表1]


[0073]
 表1に示すように、金属板2の平坦部2bに非導電膜3が形成され、突起部2aの高さL1が60μm以上500μm以下である陰極板1を用いた実施例1~5では、非導電膜3の欠落が抑制され、十分に繰り返し使用することができた。特に、突起部2aの高さL1が100μm以上となる実施例1、2、4、5では、繰り返し使用回数が20回を超えていた。また、略垂直部2dの高さL2が40μm以上、0.8×L1μm以下である実施例1~5では、ウォータージェットで非導電膜3を剥離した際に、剥離残り等が発生せず、良好に剥離することができた。
[0074]
 一方、平板状の金属板12に非導電膜13が形成された比較例1では、非導電膜14が欠落してしまい、十分に繰り返し使用することができなかった。また、突起部2aの高さL1が低かった比較例2でも非導電膜3が欠落してしまい、十分に繰り返し使用することができなかった。また、比較例3では、突起部2aの側面の形状において略垂直部2dの高さL2が20μmと低い部分から非導電膜3が欠落してしまい、十分に繰り返し使用することができなかった。比較例4では、突起部2aの側面の形状に傾斜部がないため、ウォータージェットで非導電膜3を剥離した際に、突起部2aの側面の略直角に形成された隅に剥離残りが発生した。さらに、比較例5では、突起部2aの高さL1が高すぎため、金属板2の反りが大きくなり、非導電膜の塗布が困難となり、陰極板を構成することができなかった。

符号の説明

[0075]
 1  陰極板
 2  金属板
 2a  突起部
 2b  平坦部
 2c  導電部
 2d  略垂直部
 2e  傾斜部
 3  非導電膜
 4  ニッケル

請求の範囲

[請求項1]
 少なくとも一方の表面に複数の円盤状の突起部が配列している金属板と、
 前記金属板の突起部以外の表面に形成される非導電膜と、を有し、
 前記突起部は、その側面が、略垂直部と傾斜部とからなる形状であり、
 前記突起部の高さL1は、50μm以上1000μm以下であり、
 前記突起部の外周縁から外側に20μm離れた位置Xから垂直に下ろした垂線と前記側面との交点をYとするとき、XからYまでの長さL2は40μm以上、0.8×L1μm以下である、金属電着用陰極板。
[請求項2]
 前記金属板は、チタン又はステンレス鋼からなる、
 請求項1に記載の金属電着用陰極板。
[請求項3]
 メッキ用電気ニッケルの製造に使用される、
 請求項1又は2に記載の金属電着用陰極板。
[請求項4]
 請求項1乃至3のいずれかに記載の金属電着用陰極板の製造方法であって、
 金属板の少なくとも一方の表面に、ウェットエッチング加工又はエンドミル加工によって、円盤状の前記突起部を複数形成する、金属電着用陰極板の製造方法。
[請求項5]
 上記エンドミル加工では、ラジアスエンドミルを使用する、
 請求項4に記載の金属電着用陰極板の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]