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1. (WO2018212098) 磁粉及び磁石
Document

明 細 書

発明の名称 磁粉及び磁石 0001  

技術分野

0002  

背景技術

0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

0005   0006   0007   0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

明 細 書

発明の名称 : 磁粉及び磁石

関連出願の相互参照

[0001]
 本国際出願は、2017年5月16日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2017-097348号及び2018年4月3日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2018-071511号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2017-097348号及び日本国特許出願第2018-071511号の全内容を本国際出願に参照により援用する。

技術分野

[0002]
 本開示は磁粉及び磁石に関する。

背景技術

[0003]
 従来、希土類ボンド磁石が知られている。希土類ボンド磁石は、母材と、その母材中に分散した希土類磁粉とを備える。希土類ボンド磁石は、磁気特性、成形自由度、寸法安定性等において優れている。希土類ボンド磁石は、自動車向け各種モーター、アクチュエータ等に使用される。希土類ボンド磁石は特許文献1に開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2013-98254号公報

発明の概要

[0005]
 しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、希土類ボンド磁石は、高温環境において磁気特性が低下してしまうという課題が見出された。磁気特性が低下してしまう理由は、高温環境において希土類磁粉の表面が酸化されるためであると推測される。本開示の一局面では、高温環境における磁気特性の低下を抑制できる磁粉及び磁石を提供することが好ましい。
[0006]
 本開示の一局面は、L10-FeNiを含む本体部と、前記本体部の表面に形成された酸化物層と、を備える磁粉である。本開示の一局面である磁粉は、高温環境でも、磁気特性が低下しにくい。
[0007]
 本開示の別の局面は、母材と、前記母材中に分散した本開示の一局面である磁粉と、を備える磁石である。本開示の別の局面である磁石は、高温環境でも、磁気特性が低下しにくい。
[0008]
 なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] 磁粉の構成を表す断面図である。
[図2] 磁石の構成を表す断面図である。
[図3] 熱処理温度と、酸化物層の厚さとの関係を示すグラフである。
[図4] 熱処理の前後における磁粉のXRDパターンを示すチャートである。
[図5] 磁粉の粒径測定に用いるTEM画像である。
[図6] 酸化物層の厚さ測定に用いるTEM画像である。
[図7] 測定温度と、規格化したMr値との関係を表すグラフである。
[図8] 測定温度と、規格化したHc値との関係を表すグラフである。
[図9] 磁粉1DのXRDパターンを表すチャートである。
[図10] 磁粉1AのXRDパターンを表すチャートである。
[図11] 酸化物層が反強磁性体を含む場合の磁粉の磁気特性を表すヒステリシスカーブである。

発明を実施するための形態

[0010]
 本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
 1.磁粉の構成
 図1に示すように、磁粉1は、L10-FeNiを含む本体部3と、本体部3の表面に形成された酸化物層5と、を備える。磁粉1は、高温環境でも磁気特性が低下しにくい。磁気特性として、例えば、残留磁化Mr、保持力Hc等が挙げられる。
[0011]
 L10-FeNiとは、L10構造を有するFeNiを意味する。本体部3の形状は特に限定されない。本体部3の形状として、例えば、球形、不規則な形状等が挙げられる。
 磁粉1の粒径は30nm~10μmの範囲内であることが好ましく、30nm~5μmの範囲内であることがより好ましい。磁粉1の粒径が30nm以上である場合、磁粉1の保持力が一層高くなる。磁粉1の粒径が10μm以下である場合、磁粉1の保持力が一層高くなる。また、磁粉1の粒径が10μm以下である場合、磁粉1を含む磁石の成型自由度が一層向上する。磁粉1の粒径の測定方法は以下のとおりである。
[0012]
 磁粉1の集合を表すTEM画像を取得する。そのTEM画像において、10個の磁粉1を任意に抽出する。抽出した10個の磁粉1のそれぞれについて、粒径を測定する。10個の磁粉1の粒径を平均化した値を、磁粉1の粒径とする。図5に、TEM画像の例を示す。図5において○印が付された部分は、抽出された磁粉1である。
[0013]
 酸化物層5の厚みは、0.83nm以上、5.0nm以下であることが好ましい。0.83nmは、酸化物層5を構成する酸化物の結晶格子の間隔に該当する。酸化物層5の厚みが0.83nm以上である場合、本体部3の酸化を一層抑制できる。酸化物層5の厚みが5.0nm以下である場合、本体部3の酸化を一層抑制でき、磁粉1の残留磁化が一層高くなる。酸化物層5の厚みの測定方法は以下のとおりである。磁粉1の集合を表すTEM画像を取得する。そのTEM画像において、5個の磁粉1を抽出する。それぞれの磁粉1において、任意に選択した4点での酸化物層5の厚みを測定する。合計20点における酸化物層5の厚みの平均値を、酸化物層5の厚みとする。
[0014]
 図6に、TEM画像の例を示す。図6における左側の部分は1個の磁粉1を表す。1~4の番号が付された矩形の枠は、酸化物層5の厚みを測定する部分を表す。図6における右側の部分は、1の番号が付された枠内を表す。「4.2nm」は、1の番号が付された枠内における酸化物層5の厚みを意味する。図6における右側の部分に示すように、TEM画像において、画像の明暗により、酸化物層5を識別することができる。
[0015]
 酸化物層5は、Ni xFe (3-x)4を含むことが好ましい。xの値は0以上3以下である。酸化物層5がNi xFe (3-x)4を含む場合、高温環境でも、磁粉1の磁気特性が一層低下しにくい。
[0016]
 酸化物層5は、反強磁性体を含むことが好ましい。酸化物層5が反強磁性体を含む場合の磁粉の磁気特性を図11に示す。酸化物層5が反強磁性体を含む場合、マイナスの外部磁場における磁粉の保持力Hcが大きくなり、プラスの外部磁場における磁粉の保持力Hcが小さくなる。
[0017]
 なお、図11におけるAは、酸化物層5が自然酸化膜である磁粉の、マイナスの外部磁場における保持力である。また、Bは、酸化物層5が自然酸化膜である磁粉の、プラスの外部磁場における保持力である。
[0018]
 酸化物層5が反強磁性体を含む場合に、マイナスの外部磁場における磁粉の保持力Hcが大きくなる理由は、酸化物層5に含まれる反強磁性体と、本体部3に含まれるL10-FeNiとの界面で交換磁気異方性が発生し、L10-FeNiの磁気モーメントの向きを保持するためであると推測される。酸化物層5は、反強磁性体を主成分とすることが一層好ましい。
[0019]
 酸化物層5が反強磁性体を含む場合、磁粉をプラスに着磁するための磁場が小さくて済む。酸化物層5が反強磁性体を含む場合、マイナスの磁場に対して反転しにくくなり、永久磁石としての性能が安定化する。
[0020]
 また、酸化物層5が反強磁性体を含む場合、酸化物層の耐環境性及び耐久性が一層高くなる。酸化物層5が反強磁性体を含む場合、外部磁場の変化で生じる誘導起電力による渦損を低減できる。その理由は、NiO等の反強磁性体の電気伝導度が半導体並みであるためである。
[0021]
 磁粉のXRDの測定結果において、反強磁性体に由来する(111)のピーク面積をS 1とし、Ni xFe (3-x)4に由来する(311)のピーク面積をS 2とする。S 2に対するS 1の比率をS 1/S 2比とする。S 1/S 2比は0.27より大きいことが好ましい。S 1/S 2比が0.27より大きい場合、マイナスの外部磁場における磁粉の保持力Hcが一層高くなる。酸化物層が含む反強磁性体が多いほど、S 1/S 2比は大きくなる。
[0022]
 なお、酸化物層が自然酸化膜である場合、S 1/S 2比は0.27以下となる。その理由は以下のとおりである。FeNi粒子におけるFeとNiとの質量比は1:1である。そのため、自然酸化膜において、NiOのモル比が最大となるとき、NiFe 24とNiOとのモル比は、1:1である。NiFe 24とNiOとのモル比が1:1であるときのS 1/S 2比は0.27である。よって、酸化物層が自然酸化膜である場合、S 1/S 2比は0.27以下である。
[0023]
 なお、Ni xFe (3-x)4に由来する(222)のピークの角度は、NiOに由来する(111)のピークの角度に近い。そのため、Ni xFe (3-x)4に由来する(222)のピークが観測される場合において、NiOに由来する(111)のピーク面積S 1を算出するとき、Ni xFe (3-x)4に由来する(222)のピークの寄与を差し引くことが望ましい。
[0024]
 反強磁性体の少なくとも一部のネール温度は273K以上であることが好ましい。反強磁性体の少なくとも一部のネール温度が273K以上である場合、室温以上の温度において、マイナスの外部磁場における磁粉1の保持力Hcが一層高くなる。
[0025]
 反強磁性体として、例えば、NiO、CoO、Cr 23、Fe 23、CuFeS 2、FeF 2、Cr、AuMn、MnPt、MnPd、γFeMn、及びγIrMnから成る群から選択される1以上が挙げられる。反強磁性体がこれらの物質である場合、マイナスの外部磁場における磁粉1の保持力Hcが一層高くなる。
[0026]
 酸化物層5が反強磁性体を含む場合、酸化物層の厚みは1nm以上であることが好ましい。酸化物層の厚みが1nm以上である場合、マイナスの外部磁場における磁粉1の保持力Hcが一層高くなる。
[0027]
 2.磁石の構成
 図2に示すように、磁石7は、母材9と、母材9中に分散した磁粉1と、を備える。磁石7はボンド磁石である。磁石7は、高温環境でも磁気特性が低下しにくい。磁気特性として、例えば、残留磁化Mr、保持力Hc等が挙げられる。
[0028]
 母材9は、例えば、樹脂を含む。母材9が樹脂を含む場合、磁石7の成形自由度や寸法安定性が高い。樹脂として、ガラス転移温度が100℃以上である樹脂が好ましい。母材9が、ガラス転移温度が100℃以上である樹脂を含む場合、高温状態における磁石7の強度が一層高くなる。ガラス転移温度が100℃以上である樹脂として、例えば、エポキシ、フェノール、ポリエステル、ポリイミド、及びポリアミド等が挙げられる。母材9の全てが樹脂であってもよいし、母材9の一部が樹脂であってもよい。樹脂として、熱硬化型樹脂が好ましい。熱硬化型樹脂として、例えば、エポキシ系、フェノール系等が挙げられる。
[0029]
 磁石7の全体積を100vol%としたとき、磁粉1の体積割合は50~80vol%であることが好ましい。磁粉1の体積割合が50vol%以上である場合、磁石7の磁気特性が一層向上する。磁粉1の体積割合が80vol%以下である場合、磁石7の製造が一層容易になる。
[0030]
 磁石7は、官能基を有する有機金属化合物をさらに備えることが好ましい。有機金属化合物は、磁粉1と母材9との界面11に選択的に存在していてもよいし、母材9の全体にわたって存在していてもよい。
[0031]
 母材に含まれる樹脂のSP値をSP1とする。官能基を有する有機金属化合物のSP値をSP2とする。以下の式(1)で表されるXが、-0.25~0.25の範囲内であることが好ましい。SP値は、Fedors法による推算値である。
[0032]
[数1]


 Xが-0.25~0.25の範囲内である場合、母材9における磁粉1の分散性や、磁粉1と母材9との密着性が一層向上する。官能基として、例えば、エポキシ基、アミノ基等が挙げられる。有機金属化合物として、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、4-アミノフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。有機金属化合物が含む金属として、例えば、Si、P、Al、Ti、Zr等が挙げられる。
[0033]
 有機金属化合物が含む金属は、磁粉が備える酸化物層と共有結合していると推測される。また、有機金属化合物が含む官能基は、母材側に存在すると推測される。
 磁粉1の全質量を100質量%としたとき、有機金属化合物の質量割合は0.1~10質量%であることが好ましい。有機金属化合物の質量割合が0.1~10質量%の範囲内である場合、母材9における磁粉1の分散性や、磁粉1と母材9との密着性が一層向上する。
[0034]
 3.磁粉における酸化物層の形成
 L10-FeNi粒子を150~200℃で熱処理すると、その表面に酸化物層が形成される。その結果、L10-FeNiを含む本体部と、本体部の表面に形成された酸化物層とを備える磁粉が製造される。
[0035]
 熱処理は、例えば、L10-FeNi粒子と樹脂との混練物に対し行うことができる。また、L10-FeNi粒子が単独で存在する状態において熱処理を行ってもよい。
 図3に、熱処理温度と、酸化物層の厚さとの関係を示す。熱処理温度を150~200℃とすれば、酸化物層の厚さを、ほぼ飽和する厚さとすることができる。飽和する厚さは約5nmである。
[0036]
 図4に、熱処理の前における磁粉のXRDパターン(以下では処理前パターンAとする)と、300℃での熱処理後の磁粉のXRDパターン(以下では処理後パターンBとする)とを示す。図4に示すXRDパターンは「あいちシンクロトロン光センター」のビームラインBL5S2の粉末X線回折を利用して取得したものである。処理前パターンAには、Ni xFe 3-x4(x~1.5)の存在を示すピークPはない。処理後パターンBには、Ni xFe 3-x4(x~1.5)の存在を示すピークPがある。このことから、熱処理により酸化物層が生じ、酸化物層にNi xFe 3-x4(x~1.5)が含まれることが確認できた。
[0037]
 なお、上記のように熱処理を行うことで形成された酸化物層は自然酸化膜である。反強磁性体を主成分とする酸化物層を、以下のようにして形成することができる。まず、本体部3の表面に形成されている自然酸化膜を除去する。自然酸化膜を除去する方法として、例えば、水素雰囲気の下、高温で熱処理する方法が挙げられる。また、自然酸化膜を除去する方法として、例えば、酸の水溶液に浸漬する方法が挙げられる。酸として、例えば、硝酸等が挙げられる。
[0038]
 自然酸化膜を除去した後、本体部3を水酸化ニッケル溶液に入れる。このとき、NiOを主成分とする酸化物層が本体部3の表面に形成される。また、後述する実施例2において示す電気化学法によっても、NiOを主成分とする酸化物層を形成することができる。
[0039]
 4.実施例1
 (4-1)L10-FeNi粒子の製造方法
 原料として、FeNi不規則合金粉末を用意した。このFeNi不規則合金粉末は、熱プラズマ法により作製された日清エンジニアリング株式会社製の特注品である。FeNi不規則合金粉末における組成比は、Fe:Ni=50:50である。組成比の単位はmol%である。FeNi不規則合金粉末の平均粒径は60nmである。
[0040]
 上記のFeNi不規則合金粉末の構造をL10構造とするために、窒化脱窒素処理を施した。窒化脱窒素処理の具体的な手順は下記のとおりである。
 FeNi不規則合金粉末を試料ボートに乗せた。その試料ボートを管状炉に設置した。管状炉は、アンモニアガス及び水素ガスを導入可能である。管状炉の雰囲気をアンモニアガスとし、350℃で50時間窒素化処理を行った。
[0041]
 次に、管状炉の雰囲気を水素ガスに置換し、300℃で2時間脱窒素処理を行った。次に、管状炉を冷却してから、試料ボートを管状炉から取り出した。その結果、L10-FeNi粒子が得られた。L10-FeNi粒子は、L10構造を有するFeNi粒子である。
[0042]
 (4-2)磁石の製造方法
 前記(4-1)で得られたL10-FeNi粒子の表面に対して、4-アミノフェニルトリメトキシシランによる表面改質を行った。表面改質の目的は、L10-FeNi粒子と樹脂との親和性及び密着性の向上である。4-アミノフェニルトリメトキシシランは、有機金属化合物に対応する。また、4-アミノフェニルトリメトキシシランは、シランカップリング剤溶液の一種である。4-アミノフェニルトリメトキシシランのSP値は10 .2である。
[0043]
 表面改質の具体的な方法は以下のとおりである。L10-FeNi粒子にアルコール水溶液を加え、スラリー液を調製した。アルコール水溶液は、質量比で、水/エタノールが1/9であるものである。そのスラリー液に、4-アミノフェニルトリメトキシシランを添加した。4-アミノフェニルトリメトキシシランの添加量は、スラリー液に含まれるL10-FeNi粒子の1質量%である。4-アミノフェニルトリメトキシシランの添加後、スラリー液を超音波により3分間攪拌し、その後10分間放置した。次に、スラリー液から、表面改質されたL10-FeNi粒子をろ過によって取り出した。取り出したL10-FeNi粒子を浅いトレー上に広げて、30分間乾燥した。
[0044]
 次に、表面改質されたL10-FeNi粒子とエポキシ樹脂とを攪拌機を用いて混練し、混練物を得た。混練物におけるL10-FeNi粒子の体積割合は60vol%であり、エポキシ樹脂の体積割合は40vol%である。エポキシ樹脂は3M製EXP955である。エポキシ樹脂のSP値は10.9である。エポキシ樹脂の耐熱温度は180℃である。エポキシ樹脂のガラス転移温度は195℃である。エポキシ樹脂は母材に対応する。攪拌機は、プライミクス株式会社製のフィルミックス30-30型である。
[0045]
 次に、混練物を、1cm×1cm×5cmのサイズの角柱の型に注入した。次に、64MPaの圧力、及び、2Tの磁場を加えながら、150℃の温度でエポキシ樹脂を硬化させ、磁石を完成した。エポキシ樹脂を硬化させるとき、L10-FeNi粒子の表面に酸化物層が形成される。その結果、L10-FeNi粒子を含む本体部と、本体部の表面に形成された酸化物層とを備える磁粉が生じる。磁石において、磁粉はエポキシ樹脂中に分散している。
[0046]
 (4-3)磁石の評価
 前記(4-2)で製造した磁石に含まれる磁粉の粒径を上述した方法で測定した。磁粉の粒径は60nmであった。前記(4-2)で製造した磁石に含まれる磁粉が備える酸化物層の厚みを上述した方法で測定した。酸化物層の厚みは5nmであった。前記(4-2)で製造した磁石に含まれる磁粉が備える酸化物層のXRDパターンを取得した。そのXRDパターンには、Ni xFe 3-x4(x~1.5)の存在を示すピークPが存在した。
[0047]
 前記(4-2)で製造した磁石の保持力Hc及び残留磁化Mrを測定した。測定には、Quantum Desighn社製の小型無冷媒型PPMS VersaLabとヒーターオプションとを用いた。測定において、磁場掃引速度を10Oe/sとした。測定サンプルの形状は、おおよそ3mm×3mm×3mmの立方体とした。
[0048]
 まず、測定サンプルに対し、十分大きな磁場を印加し、測定サンプルの磁化を飽和させた。このときの磁場は例えば50000Oeである。次に、印加磁場を徐々に小さくしていき、印加磁場がゼロになったときの測定サンプルの磁化の大きさを残留磁化Mrとした。
[0049]
 次に、上とは逆方向の磁場を測定サンプルに印加し、印加磁場を徐々に大きくした。測定サンプルの磁化がゼロになったときの印加磁場の強さを保磁力Hcとした。
 ヒーターオプションを用い、測定サンプルの温度を変えながら、上記の方法で磁石の保持力Hc及び残留磁化Mrを測定した。また、比較例として、ネオマグ株式会社製のNdボンド磁石についても、同様の測定を行った。測定結果を図7、図8に示す。図7、図8における縦軸は、規格化した値を表す。規格化した値とは、27℃における値を100とする値を意味する。
[0050]
 前記(4-2)で製造した磁石は、Ndボンド磁石に比べて、高温環境においても、保持力Hc及び残留磁化Mrが低下しにくかった。
 5.実施例2
 (5-1)磁粉1Aの製造
 実施例1と同様にして、L10-FeNi粒子を得た。L10-FeNi粒子の平均粒径は500nmである。L10-FeNi粒子を、240℃の大気中に1時間放置した。このとき、L10-FeNi粒子の表面に酸化物層が形成された。この酸化物層は自然酸化膜である。以上の工程により、L10-FeNi粒子を含む本体部と、その本体部の表面に形成された酸化物層とを備える磁粉が製造された。以下ではこの磁粉を磁粉1Aとする。
[0051]
 (5-2)磁粉1Bの製造
 磁粉1Aを、水素100%の雰囲気の下、400℃の温度で1時間熱処理した。この熱処理により、酸化物層が還元、除去され、酸化物層を備えない磁粉が得られた。
[0052]
 次に、酸化物層を備えない磁粉を、水酸化ニッケル水溶液に1時間浸漬した。水酸化ニッケル水溶液における水酸化ニッケルの濃度は0.1質量%である。水酸化ニッケル水溶液の温度は室温である。水酸化ニッケル水溶液に浸漬する処理により、不完全なNiO膜がL10-FeNi粒子の表面に形成された。
[0053]
 次に、一定の酸素濃度の下、磁粉を磁場中で1時間熱処理した。酸素濃度は約0.01質量%である。磁場の強さは9Tである。熱処理の温度は400℃である。この熱処理により、NiO膜の結晶性が向上した。また、この熱処理により、NiO膜とL10-FeNi粒子との界面における交換結合力が発現した。
[0054]
 以上の工程により、L10-FeNi粒子を含む本体部と、その本体部の表面に形成された酸化物層とを備える磁粉が製造された。以下ではこの磁粉を磁粉1Bとする。磁粉1Bが備える酸化物層は、主としてNiOから成る。
[0055]
 (5-3)磁粉1Cの製造
 基本的には磁粉1Bの製造方法と同様にして、磁粉1Cを製造した。ただし、磁粉1Aの酸化物層を除去する方法として、磁粉1Aを硝酸水溶液に10時間浸漬する方法を採用した。硝酸水溶液の濃度は30質量%である。硝酸水溶液の温度は80℃である。
[0056]
 (5-4)磁粉1Dの製造
 磁粉1Aを、水素100%の雰囲気の下、400℃の温度で1時間熱処理した。この熱処理により、酸化物層が還元、除去され、酸化物層を備えない磁粉が得られた。
[0057]
 次に、電気化学法により、酸化物層を形成した。電気化学法は以下のとおりである。NiCl 2、ZnCl、及びKClを、1:10:12のモル比で混合し、300℃に加熱して溶融することで、浴を作製した。上記の酸化物層を備えない磁粉を、フェライトメッシュに1トン/cm 2の圧力で圧粉することで、作用極を作製した。また、グラッシーカーボンから成るカウンター電極と、Niから成る参照電極とを用意した。
[0058]
 作用極、カウンター電極、及び参照電極を浴に浸漬した。作用極に対し、所定の電位を加えた。所定の電位とは、Ni/Ni 2+の溶解と析出との平衡電位に対し、-0.2~-0.7Vの電位である。その結果、作用極に含まれる磁粉に、NiOを主成分とする酸化物層が形成された。
[0059]
 次に、作用極に含まれる磁粉を、一定の酸素濃度の下、磁場中で1時間熱処理した。酸素濃度は約0.01質量%である。磁場の強さは9Tである。熱処理の温度は400℃である。この熱処理により、NiOを主成分とする酸化物層の結晶性が向上した。また、この熱処理により、NiOを主成分とする酸化物層とL10-FeNi粒子との界面における交換結合力が発現した。
[0060]
 以上の工程により、L10-FeNi粒子を含む本体部と、その本体部の表面に形成された酸化物層とを備える磁粉が製造された。以下ではこの磁粉を磁粉1Dとする。磁粉1Dが備える酸化物層は、主としてNiOから成る。
[0061]
 (5-5)磁粉1Eの製造
 基本的には磁粉1Dの製造方法と同様にして、磁粉1Eを製造した。ただし、磁粉1Aの酸化物層を除去する方法として、磁粉1Aを硝酸水溶液に10時間浸漬する方法を採用した。硝酸水溶液の濃度は30質量%である。硝酸水溶液の温度は80℃である。
[0062]
 (5-6)磁粉のXRD測定
 磁粉1A~1Eのそれぞれについて、XRD測定を行った。XRD測定において使用したX線はkβ線である。測定試料には、測定精度を確認するために、Si粉末を微量混合した。
[0063]
 磁粉1DのXRDパターンを図9に示す。このXRDパターンには、NiOに由来する42.6℃のピーク(以下ではNiO(111)ピークとする)と、FeNiに由来する50.2のピークと、FeNiに由来する58.7°のピーク(以下ではFeNi(200)ピークとする)と、Siに由来する54.4°のピークとがある。
[0064]
 図9における縦軸の数値は、50.2°のピーク面積の値で割り、100を掛けて規格化した値である。FeNi(200)ピークの面積に対する、NiO(111)ピークの面積の比率は0.02程度であった。この面積の比率から解析すると、磁粉1DにおけるFeNiとNiOとの質量比は、94.0:6.0となる。磁粉1Dの形態が理想コアシェル構造であり、コアの直径が500nmであると仮定すると、シェルの厚みは6nm程度になる。シェルは酸化物層に対応する。
[0065]
 なお、NiO(111)ピークがNiOに由来するピークである根拠は以下のとおりである。XRDシミュレーションによれば、仮に、NiFe 24の量が充分多ければ、NiFe 24に由来するピークが、40.8°、42.7°、49.6°に観測される。NiFe 24に由来する40.8°のピーク強度は、NiFe 24に由来する42.6°のピーク強度より大きい。図9のXRDパターンでは、40.8°にピークは観測されない。そのため、42.6°のピークは、NiFe 24に由来するピークではなく、NiOに由来するピークである。
[0066]
 磁粉1AのXRDパターンを図10に示す。図9のXRDパターンとは異なり、NiO(111)ピークは観測されなかった。また、図9のXRDパターンとは異なり、NiFe 24に由来する40.8°のピークが観測された。このことから、磁粉1Aが備える酸化物層の主成分はNiFe 24であることが確認できた。
[0067]
 磁粉1Bでは、S 2が観測できなかった。そのため、磁粉1BにおけるS 1/S 2比は無限大であった。磁粉1CにおけるS 1/S 2比は0.8であった。磁粉1Dでは、S 2が観測できなかった。そのため、磁粉1DにおけるS 1/S 2比は無限大であった。磁粉1EにおけるS 1/S 2比は0.5であった。
[0068]
 (5-7)磁粉の磁気特性の測定
 磁粉1A~1Eのそれぞれについて、保持力Hc、及び残留磁化Mrを測定した。測定には、Quantum Desighn社製の小型無冷媒型PPMS VersaLabとヒーターオプションと用いた。磁場掃引速度は10Oe/sとした。測定サンプルは、磁粉そのものである。
[0069]
 マイナスの外部磁場における磁粉1Bの保持力は、マイナスの外部磁場における磁粉1Aの保持力の1.05倍であった。マイナスの外部磁場における磁粉1Cの保持力は、マイナスの外部磁場における磁粉1Aの保持力の1.03倍であった。マイナスの外部磁場における磁粉1Dの保持力は、マイナスの外部磁場における磁粉1Aの保持力の1.1倍であった。マイナスの外部磁場における磁粉1Eの保持力は、マイナスの外部磁場における磁粉1Aの保持力の1.08倍であった。
[0070]
<他の実施形態>
 以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
[0071]
 (1)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
[0072]
 (2)上述した磁粉、磁石の他、当該磁石を構成要素とするシステム、磁粉の製造方法、磁石の製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。

請求の範囲

[請求項1]
 L10-FeNiを含む本体部(3)と、
 前記本体部の表面に形成された酸化物層(5)と、
 を備える磁粉(1)。
[請求項2]
 請求項1に記載の磁粉であって、
 前記酸化物層の厚みは5nm以下である磁粉。
[請求項3]
 請求項1又は2に記載の磁粉であって、
 前記酸化物層はNi xFe (3-x)4を含み、
 前記xは0以上3以下である磁粉。
[請求項4]
 請求項1又は2に記載の磁粉であって、
 前記酸化物層は反強磁性体を含む磁粉。
[請求項5]
 請求項4に記載の磁粉であって、
 前記磁粉のXRDの測定結果において、前記反強磁性体に由来する(111)のピーク面積が、Ni xFe (3-x)4に由来する(311)のピーク面積の0.27倍より大きい磁粉。
[請求項6]
 請求項4又は5に記載の磁粉であって、
 前記反強磁性体の少なくとも一部のネール温度は273K以上である磁粉。
[請求項7]
 請求項4~6のいずれか1項に記載の磁粉であって、
 前記反強磁性体は、NiO、CoO、Cr 23、Fe 23、CuFeS 2、FeF 2、Cr、AuMn、MnPt、MnPd、γFeMn、及びγIrMnから成る群から選択される1以上である磁粉。
[請求項8]
 請求項4~7のいずれか1項に記載の磁粉であって、
 前記酸化物層の厚みは1nm以上である磁粉。
[請求項9]
 請求項1~8のいずれか1項に記載の磁粉であって、
 前記磁粉の粒径が30nm~10μmの範囲内である磁粉。
[請求項10]
 母材(9)と、
 前記母材中に分散した請求項1~9のいずれか1項に記載の磁粉(1)と、
 を備える磁石(7)。
[請求項11]
 請求項10に記載の磁石であって、
 前記母材は樹脂を含み、
 前記酸化物層と前記母材との界面(11)に、官能基を有する有機金属化合物をさらに備え、
 以下の式(1)で表されるXが、-0.25~0.25の範囲内である磁石。
[数1]


 前記式(1)におけるSP1は前記樹脂のSP値であり、SP2は前記官能基を有する有機金属化合物のSP値である。
[請求項12]
 請求項10又は11に記載の磁石であって、
 前記母材は、ガラス転移温度が100℃以上である樹脂を含む磁石。
[請求項13]
 請求項11又は12に記載の磁石であって、
 前記樹脂は、エポキシ、フェノール、ポリエステル、ポリイミド、及びポリアミドから成る群から選択される1以上である磁石。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]