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1. (WO2018198778) ゴム補強用コード及びそれを用いたゴム製品
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明 細 書

発明の名称 ゴム補強用コード及びそれを用いたゴム製品

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011  

発明の効果

0012  

図面の簡単な説明

0013  

発明を実施するための形態

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052  

実施例

0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : ゴム補強用コード及びそれを用いたゴム製品

技術分野

[0001]
 本発明は、ゴム補強用コードと、それを用いたゴム製品とに関する。

背景技術

[0002]
 自動車用の内燃機関のカムシャフト駆動、インジェクションポンプなどの補機駆動、及び産業機械の動力の伝達には、ゴムベルト又は金属チェーンが使用されている。近年、省エネルギーへの関心が高まっており、燃費向上などの観点などから、動力伝達効率に優れるゴムベルトの使用が着目されている。また、ゴムベルトは、金属チェーンと比較して強度及び弾性率が高く、高負荷の条件でも使用できるという利点も有する。しかし、ゴムベルトは、繰り返し応力を受けると強度の低下が見られることがあり、用途が限定されている。
[0003]
 一般に、ゴムベルトのようなゴム製品は、マトリックスゴムと、当該マトリックスゴムに埋め込まれたゴム補強用コードとを含む。ゴムベルトの強度は、ゴム補強用コードの強度に依存する。したがって、ゴム補強用コードは、ゴムベルトの寿命を決定する重要な部材である。
[0004]
 ゴム補強用コードは、一般に、補強用繊維(複数のフィラメントを含むフィラメント束)と、当該補強用繊維の表面を保護する被膜とによって形成されている。このような被膜は、ゴム補強用コードがゴム製品のマトリックスゴムに埋め込まれた際に、ゴム補強用コードとマトリックスゴムとの接着性を向上させることもできる。
[0005]
 上記のような被膜の形成には、例えば、レゾルシン-ホルムアルデヒド縮合物とゴムラテックスとの混合液(RFL液)が使用される。RFL液以外では、例えば特許文献1に開示されているような、ゴムと、架橋剤(ジイソシアネート化合物、芳香族ニトロソ号物及びマレイミド系架橋剤から選ばれる少なくとも1つ)とを含む混合液も使用できる。また、ゴム補強用コードには、特許文献2に開示されているように、補強用繊維の表面を十分に保護し、かつマトリックスゴムとの高い接着性を実現するために、複数層の被膜を設ける構成も知られている。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 国際公開第2006/001385号
特許文献2 : 国際公開第2017/010098号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 しかしながら、ゴム補強用コードで補強されたゴム製品は、繰り返し応力を受けた場合に強度が低下したり、最終的には破断してしまったりする等、強度の点でさらに改善の余地があった。このようなゴム製品の破断等は、ゴム補強用コードとマトリックスゴムとの間に剥離が生じたり、ゴム補強用コードの内部にクラックが生じる等のゴム補強用コード自体が疲労したりすることによって引き起こされる。例えばゴムベルトには、走行中に張側とゆるみ側とが存在する。すなわちゴムベルトは、走行中に繰り返しの引張応力を受けていることになる。それに伴い、ゴムベルト内のゴム補強用コードも、このような繰り返しの引張応力を受けることになる。その結果、補強用コードに疲労が発生する。補強用コードを構成している補強用繊維の一体性が悪い場合、すなわち補強用繊維に含まれるフィラメント間の接着性が十分でない場合には、コード全体で均一に引張応力を分担することができず、コードの疲労が発生しやすくなる。また、フィラメント間に水や油が浸入して被膜の膨潤が促進されやすくなり、ゴム補強用コードの疲労がさらに発生しやすくなる。
[0008]
 そこで、本発明の目的の一つは、繰り返し応力を受けた場合でも、補強用繊維におけるフィラメント間の接着性、及び、ゴム補強用コードとマトリックスゴムとの接着性を維持して、その結果、ゴム製品の強度低下及び破断を生じさせにくくすることが可能な、ゴム補強用コードを提供することである。さらに、本発明の別の目的の一つは、そのようなゴム補強用コードによって補強されることにより、繰り返し応力を受けた場合の強度が向上したゴム製品を提供することである。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明者は、鋭意研究の末、補強用繊維を被覆する被膜に含まれる架橋剤が、上記の本発明の課題、すなわちゴム補強用コードの補強繊維におけるフィラメント間の接着性と、ゴム補強用コードとマトリックスゴムとの接着性とに大きく寄与することを見出し、以下の本発明のゴム補強用コードに至った。
[0010]
 本発明は、ゴム製品を補強するためのゴム補強用コードであって、
 前記ゴム補強用コードは、少なくとも1つのストランドを備え、
 前記ストランドは、少なくとも1つのフィラメント束と、前記フィラメント束の少なくとも表面の一部を覆うように設けられた被膜と、
を含んでおり、
 前記被膜は、ゴム成分及び架橋剤を含み、
 前記架橋剤は、2種以上のイソシアネート化合物を含む。
[0011]
 また、本発明は、上記本発明のゴム補強用コードで補強されたゴム製品を提供する。

発明の効果

[0012]
 本発明のゴム補強用コードは、ゴム製品のマトリックスゴムに埋め込まれた状態において繰り返し応力を受けた場合でも、補強用繊維におけるフィラメント間の接着性、及び、ゴム補強用コードとマトリックスゴムとの接着性を維持して、その結果、ゴム製品の強度低下及び破断を生じさせにくくすることが可能である。また、本発明のゴム製品は、このようなゴム補強用コードで補強されているので、繰り返し応力を受けた場合の強度を向上させることができる。

図面の簡単な説明

[0013]
[図1] 本発明のゴム製品の一例を模式的に示す図である。
[図2] 実施例で行われた繰り返し引張試験を模式的に示す図である。

発明を実施するための形態

[0014]
 以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
[0015]
[ゴム補強用コード]
 本実施形態のゴム補強用コードは、ゴム製品を補強するためのコードである。このゴム補強用コードは、少なくとも1つのストランドを備えている。このストランドは、少なくとも1つのフィラメント束(補強用繊維)と、フィラメント束の少なくとも表面の一部を覆うように設けられた被膜と、を含んでいる。被膜は、ゴム成分及び架橋剤を含む。この架橋剤は、2種以上のイソシアネート化合物を含む。
[0016]
 以下、本実施形態の補強用コードの製造方法について、より詳しく説明する。
[0017]
 本実施形態のゴム補強用コードにおいて、ストランドを構成するフィラメント束は、複数のフィラメントを含む。フィラメントの材料は、特には限定されない。本実施形態おけるゴム補強用コードのフィラメントとして、例えば、ガラス繊維フィラメント、ビニロン繊維に代表されるポリビニルアルコール繊維フィラメント、ポリエステル繊維フィラメント、ナイロンやアラミド繊維(芳香族ポリアミド)などのポリアミド繊維フィラメント、炭素繊維フィラメント、又はポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維フィラメントなどを用いることができる。これらの中でも、寸法安定性、引張強度、モジュラス及び耐屈曲疲労性に優れる繊維のフィラメントを用いることが好ましい。例えば、ガラス繊維フィラメント、アラミド繊維フィラメント、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維フィラメント及び炭素繊維フィラメントから選ばれる少なくとも1つの繊維フィラメントを用いることが好ましく、特にガラス繊維フィラメントが好ましい。フィラメント束は、1種類のフィラメントで構成されていてもよいし、複数種のフィラメントで構成されていてもよい。
[0018]
 フィラメント束に含まれるフィラメントの数は、特に制限はない。フィラメント束は、例えば、200本~24000本の範囲のフィラメントを含むことができる。
[0019]
 フィラメント束に含まれるフィラメントの表面は、接着強度を高めるための前処理が行われていていてもよい。前処理剤の好ましい一例は、エポキシ基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つの官能基を含有する化合物である。前処理剤の例には、アミノシラン、エポキシシラン、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが含まれる。具体的な例としては、ナガセケムテックス社のデナコールシリーズ、DIC社のエピクロンシリーズ、三菱化学社のエピコートシリーズなどが挙げられる。また、前処理剤として、ポリウレタン樹脂及びイソシアネート化合物も同様に使用できる。例えば、前処理剤として、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂及びイソシアネート化合物からなる群より選択される少なくともいずれか1つを含む処理剤を用いてもよい。このような処理剤を用いて前処理することにより、フィラメント束と被膜との間に、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂及びイソシアネート化合物からなる群より選択される少なくともいずれか1つを含む樹脂層がさらに設けられる。表面が前処理されることにより、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維フィラメントといった、接着が発現しにくいような繊維フィラメントを用いる場合においても、マトリックスゴムとゴム補強用コードとの接着性を高めることが可能である。
[0020]
 ゴム補強用コードに含まれるフィラメント束の数に限定はなく、1本であってもよいし、複数本であってもよい。フィラメント束は、フィラメント束を複数本束ねたものであってもよい。この場合、複数本のフィラメント束のそれぞれは、撚られていてもよいし、撚られていなくてもよい。また、複数本のフィラメント束が合わせられた状態で撚られていてもよいし、撚られていなくてもよい。
[0021]
 被膜は、フィラメント束の少なくとも表面の一部を覆うように設けられている。なお、被膜は、フィラメント束の表面上に直接設けられていてもよいし、他の層(例えば、上述のフィラメントの前処理によって形成された被膜(例えば、上記樹脂層))を介してフィラメント束の表面を覆っていてもよい。
[0022]
 被膜は、フィラメント束の表面の少なくとも一部に、後述の被膜用水性処理剤を供給し、それを熱処理によって乾燥させることによって形成される。フィラメント束の表面への水性処理剤の供給は、例えば、フィラメント束を被膜用水性処理剤に含浸させる、又は、フィラメント束の表面の少なくとも一部に被膜用水性処理剤を塗布することによって実施され得る。なお、この際の熱処理により、フィラメント自体が持つ水分及び水性処理剤の溶媒(例えば水)がほぼ除去される。
[0023]
 被膜は、ゴム成分を含む。ゴム成分は、例えば、ブタジエン-スチレン共重合体、ジカルボキシル化ブタジエン-スチレン重合体、ビニルピリジン-ブタジエン-スチレンターポリマー、クロロプレン、ブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、カルボキシル変性ニトリルゴム(X-NBR)及びカルボキシル変性水素化ニトリルゴム(X-HNBR)などが挙げられる。これらの中でも、水素化ニトリルゴム(HNBR)とカルボキシル変性水素化ニトリルゴム(X-HNBR)は、耐油性や耐水性が高いという利点を有するため、好ましい。
[0024]
 被膜は、さらに架橋剤を含む。架橋剤は、2種類以上のイソシアネート化合物を含む。被膜が、架橋剤として2種類以上のイソシアネート化合物を含むことにより、被膜における接着反応、すなわちフィラメント間を接着する被膜における反応が、段階的及び複合的となる。その結果、被膜によるフィラメント間の接着性が向上する。このようなフィラメント間の接着性向上によりフィラメント束の一体性が向上するので、ゴム補強用コードを構成するストランドの疲労を防ぐことができる。さらに、フィラメント間及びフィラメント束間の隙間が低減するので、フィラメント間等の隙間に不純物が侵入し難くなる。これにより、ゴム補強用コード自体の引張強度の低下を防ぐことができる。さらに、本実施形態のゴム補強用コードがマトリックスゴムに埋め込まれる際に、この被膜によってゴム補強用コードとマトリックスゴムとの接着性も向上する。
[0025]
 以上のとおりであるので、本実施形態のゴム補強用コードは、2種類以上のイソシアネート化合物を架橋剤として含む被膜を備えていることにより、ゴム製品のマトリックスゴムに埋め込まれた状態において繰り返し応力を受けた場合でも、フィラメント間及びフィラメント束間の接着性、並びに、ゴム補強用コードとマトリックスゴムとの接着性を向上させて、ゴム製品の強度低下及び破断を生じさせにくくできる。
[0026]
 イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族又は脂肪族の有機ジイソシアネート、ポリイソシアネート、ブロックドイソシアネート及びブロックドポリイソシアネートなどが例示される。被膜における2種以上のイソシアネート化合物が、ブロックドイソシアネート及びジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つを含んでいることが好ましい。好ましくは、ブロック剤の解離温度が互いに異なる2種類のブロックドイソシアネートを用いることである。すなわち、換言すると、被膜における2種以上のイソシアネート化合物が、第1のブロックドイソシアネートと、第1のブロックドイソシアネートと異なる解離温度を有する第2のブロックドイソシアネートとを含むことが好ましい。ここで、第1のブロックドイソシアネートと第2のブロックドイソシアネートとの解離温度の差は、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは20℃以上であり、さらに好ましくは30℃以上である。
[0027]
 被膜は、イソシアネート化合物以外の架橋剤をさらに含んでいてもよい。イソシアネート化合物以外の架橋剤の例としては、P-キノンジオキシムなどのキノンジオキシム系架橋剤、ラウリルメタアクリレートやメチルメタアクリレートなどのメタアクリレート系架橋剤、DAF(ジアリルフマレート)、DAP(ジアリルフタレート)、TAC(トリアリルシアヌレート)及びTAIC(トリアリルイソシアヌレート)などのアリル系架橋剤、ビスマレイミド、フェニルマレイミド及びN,N’-m-フェニレンジマレイミドなどのマレイミド系架橋剤、芳香族ニトロソ化合物、硫黄、及び過酸化物が挙げられる。これらの中で、マレイミド系架橋剤が好ましい。すなわち、被膜は、2種類以上のイソシアネート化合物と、マレイミド系架橋剤とを組み合わせて用いることが好ましい。2種類以上のイソシアネート化合物をマレイミド系架橋剤と組み合わせて用いることにより、マレイミド系架橋剤がイソシアネート化合物の架橋助剤としても働き、より反応性が高まる場合がある。
[0028]
 被膜は、さらに充填材を含んでいてもよい。充填材の例には、カーボンブラックやシリカなどの共有結合系化合物の微粒子、難溶性塩の微粒子、金属酸化物の微粒子、金属水酸化物の微粒子、タルクなどの複合金属酸化物塩の微粒子が含まれる。充填材は、ゴム中に分散して存在することで、被膜の引張強度や引裂き強度などの特性を向上させる効果を有する。これらの効果に加え、充填材は、繊維と被膜との間、及び、被膜とマトリックスゴムとの間において、接着成分の凝集力を高めることによって接着強度を向上させる効果もある。
[0029]
 被膜は、レゾルシン-ホルムアルデヒド縮合物を含まないことが好ましい。被膜がレゾルシン-ホルムアルデヒド縮合物を含まない場合、被膜を作製する際に、ホルムアルデヒド及びアンモニアなどの環境負荷の大きい物質を使用しなくてもよくなる。そのため、作業者のための環境対策が不要になる。ただし、被膜は、レゾルシン-ホルムアルデヒド縮合物を含んでいてもよい。
[0030]
 被膜は、ゴム成分及び架橋剤に加えて、充填材や、さらに他の成分(例えば、上記充填材として添加される金属酸化物以外の金属酸化物や、樹脂など)をさらに含んでいてもよい。
[0031]
 被膜におけるゴム成分及び架橋剤の含有率は、特には限定されない。被膜におけるゴム成分の含有率は、例えば50~97質量%とできる。被膜における架橋剤の含有率は、例えば3~50質量%とできる。また、被膜におけるゴム成分及び架橋剤の含有率の合計は、53質量%以上が好ましい。被膜は、実質的にゴム成分及び架橋剤のみから形成されていてもよい。実質的にゴム成分及び架橋剤のみから形成されるとは、被膜におけるゴム成分及び架橋剤の含有率の合計が99質量%以上であることをいう。また、被膜は、ゴム成分及び架橋剤のみから形成されていてもよい。
[0032]
 フィラメント束の少なくとも表面に設けられる被膜の質量は、特には限定されず適宜調整すればよいが、フィラメント束の質量の1~35%の範囲内となるように設けられることが好ましい。被膜の質量は、フィラメント束の質量の10~25%の範囲であってもよいし、12~20質量%の範囲内であってもよい。被膜の質量が多すぎる場合、ゴム製品内におけるゴム補強用コードの寸法安定性の低下や、ゴム補強用コードの弾性率の低下などの不具合が発生することがある。一方、被膜の質量が少なすぎる場合、ストランドがほつれやすくなったり、被膜により繊維を保護する機能が低下したりして、その結果、ゴム製品の寿命が低下する場合がある。
[0033]
 本実施形態のゴム補強用コードは、マトリックスゴムとの接着性を向上させるために、その表面にゴム製品との接着性を向上させるための別の被膜(以下、「第2の被膜」と記載する。)がさらに形成されていてもよい。上述した被膜のみではゴム製品のマトリックスゴムとの充分な接着性が得られない場合には、マトリックスゴムとの接着性を高めるために、上撚りされたコードの表面に第2の被膜を形成することが好ましい。第2の被膜の成分は、マトリックスゴムとの接着を改善できるものであればよい。たとえば、ハロゲン含有ポリマー系接着剤(例えばロードコーポレーション製のケムロック)や、H-NBRゴムと架橋剤(例えばマレイミド系架橋剤)とを含む接着剤などが好ましく用いられる。
[0034]
 本実施形態のゴム補強用コードの撚り数は、特には限定されない。1本のストランドに加えられる撚り(以下、下撚りということもある)の数は、例えば20~160回/mの範囲、30~120回/mの範囲、又は、40~100回/mの範囲であってよい。さらに、複数のストランドに加えられた撚り(以下、上撚りということもある)の数も同様に、例えば20~160回/mの範囲、30~120回/mの範囲、又は、40~100回/mの範囲であってよい。下撚り方向と上撚り方向が同じラング撚りであってもよく、下撚り方向と上撚り方向が逆方向のモロ撚りでもよい。撚りの方向に限定はなく、S方向であってもよいし、Z方向であってもよい。
[0035]
[ゴム補強用コードの製造方法]
 本実施形態のゴム補強用コードの製造方法の一例を以下に説明する。なお、本実施形態のゴム補強用コードについて説明した事項は以下の製造方法に適用できるため、重複する説明を省略する場合がある。また、以下の製造方法で説明した事項は、本実施形態のゴム補強用コードに適用できる。この製造方法の一例は、以下の工程を含む。
[0036]
 まず、複数のフィラメントを束ねてフィラメント束を作製し、さらに被膜の作製に用いられる被膜用水性処理剤を準備する。次に、フィラメント束の表面の少なくとも一部に被膜用水性処理剤を供給する。その後、被膜用水性処理剤中の溶媒を除去するための熱処理を行う。
[0037]
 上記工程によって、フィラメント束の表面の少なくとも一部に被膜が形成される。被膜用水性処理剤をフィラメント束の表面の少なくとも一部に供給する方法に限定はなく、たとえば、フィラメント束の表面に被膜用水性処理剤を塗布してもよいし、フィラメント束を被膜用水性処理剤中に浸漬してもよい。
[0038]
 被膜用水性処理剤の溶媒を除去するための熱処理の条件は、特に限定されないが、被膜中の架橋剤の反応が完全に進行してしまうような条件で乾燥することは避ける必要がある。したがって、比較的高温(例えば80℃以上)で乾燥を行う場合には、乾燥時間を短時間(例えば5分以下)とすることが好ましい。例えば、150℃以下の雰囲気の場合には、5分以下の乾燥時間としてもよい。一例では、80℃~280℃の雰囲気で0.1~2分間乾燥すればよい。
[0039]
 被膜が形成されたフィラメント束は、一方向に撚られてもよい。撚る方向は、S方向であってもよいし、Z方向であってもよい。フィラメント束に含まれるフィラメントの数及びフィラメント束の撚り数は、上述したため、説明を省略する。このようにして、本実施形態のゴム補強用コードを製造できる。なお、被膜が形成されたフィラメントの束を複数形成し、それら複数のフィラメント束を束ねて上撚りを加えてもよい。上撚りの方向は、フィラメント束の撚りの方向(下撚りの方向)と同じであってもよいし、異なってもよい。また、被膜が形成されたフィラメント束を複数形成し、フィラメント束それぞれには撚りを与えず、複数のフィラメント束を束ねたものに撚りを加えてもよい。
[0040]
 なお、フィラメント束に撚りを加えてから被膜を形成してもよい。なお、フィラメントの種類、数、及び撚り数は、上述した通りである。
[0041]
 本実施形態の製造方法の好ましい一例では、フィラメント束に被膜用水性処理剤を塗布又は含浸した後、その束ねたものを一方向に撚ることによって、ゴム補強用コードを形成する。
[0042]
 被膜の上にさらに別の被膜を形成する場合には、形成された被膜の上に、その別の被膜を形成するための処理剤を塗布し、その処理剤中の溶媒を除去すればよい。この別の被膜の種類は、ゴム補強用コードが適用されるゴム製品のマトリックスゴムに合わせて適宜選択することができ、特に接着性向上の観点から選択されることが望ましい。
[0043]
 次に、被膜用水性処理剤について説明する。
[0044]
 被膜用水性処理剤は、被膜のゴム成分を構成するゴムのラテックスを含むことが好ましい。例えば、被膜のゴム成分が水素化ニトリルゴム及びカルボキシル変性された水素化ニトリルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1つのゴムである場合、被膜用水性処理剤は、水素化ニトリルゴム及びカルボキシル変性された水素化ニトリルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1つのゴムのラテックスを含む。被膜用水性処理剤は、被膜のゴム成分に応じて、1種類のゴムラテックスのみを含んでもよいし、複数種のゴムラテックスを含んでもよい。
[0045]
 被膜用水性処理剤は、さらに架橋剤を含む。被膜用水性処理剤に含まれる架橋剤は、被膜に含まれる架橋剤として上記に説明したものと同じであるため、ここでは説明を省略する。なお、架橋剤は、水分散体の形態で用いることが、水性処理剤中に均質に存在させるためには好ましい。
[0046]
 被膜用水性処理剤は、さらに充填材を含んでいてもよい。被膜用水性処理剤に含まれてもよい充填材の例は、被膜に含まれる充填材として上記に説明したものと同じであるため、ここでは説明を省略する。
[0047]
 被膜用水性処理剤は、レゾルシン-ホルムアルデヒド縮合物を含まないことが好ましい。ただし、被膜用水性処理剤は、レゾルシン-ホルムアルデヒド縮合物を含んでもよい。
[0048]
 被膜用水性処理剤は、ゴムラテックス及び架橋剤に加えて、充填材や、さらに他の成分を含んでもよい。たとえば、被膜用水性処理剤は、樹脂、可塑剤、老化防止剤、安定剤、上記充填材として添加される金属酸化物以外の金属酸化物などを含んでいてもよい。ただし、水性処理剤は、樹脂を含まないものであってもよい。
[0049]
[ゴム製品]
 本実施形態のゴム製品は、本実施形態のゴム補強用コードで補強されたゴム製品である。ゴム製品に特に限定はない。本実施形態のゴム製品の例には、自動車や自転車のタイヤ、及び、伝動ベルトなどが含まれる。伝動ベルトの例には、噛み合い伝動ベルトや摩擦伝動ベルトなどが含まれる。噛み合い伝動ベルトの例には、自動車用タイミングベルトなどに代表される歯付きベルトが含まれる。摩擦伝動ベルトの例には、平ベルト、丸ベルト、Vベルト、Vリブドベルトなどが含まれる。すなわち、本実施形態のゴム製品は、歯付ベルト、平ベルト、丸ベルト、Vベルト、又はVリブドベルトであってもよい。
[0050]
 本実施形態のゴム製品は、本実施形態のゴム補強用コードをゴム組成物(マトリックスゴム)に埋め込むことによって形成されている。ゴム補強用コードをマトリックスゴム内に埋め込む方法は特に限定されず、公知の方法を適用してもよい。本実施形態のゴム製品(たとえばゴムベルト)には、本実施形態のゴム補強用コードが埋め込まれている。そのため、本実施形態のゴム製品は、高い耐屈曲疲労性を備えている。したがって、本実施形態のゴム製品は、車輌用エンジンのタイミングベルトや、車輌用の補機駆動用ベルトなどの用途に特に適している。
[0051]
 本実施形態のゴム補強用コードが埋め込まれるゴム組成物に含まれるゴムは、特に限定されず、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、水素化ニトリルゴムなどであってもよい。水素化ニトリルゴムは、アクリル酸亜鉛誘導体(たとえばメタクリル酸亜鉛)を分散させた水素化ニトリルゴムであってもよい。水素化ニトリルゴム及びアクリル酸亜鉛誘導体を分散させた水素化ニトリルゴムから選ばれる少なくとも1つのゴムは、耐水性及び耐油性の観点から、好ましい。マトリックスゴムは、さらに、カルボキシル変性された水素化ニトリルゴムを含んでもよい。なお、ゴム補強用コードの被膜とゴム製品のゴム組成物とが同じ種類のゴムを含むか、又は、同じ種類のゴムからなることが、接着性の点で好ましい。
[0052]
 ゴム製品の一例として、歯付きベルトを図1に示す。図1に示す歯付ベルト1は、ベルト本体11と、複数のゴム補強用コード12とを含む。ベルト本体11は、ベルト部13と、一定間隔でベルト部13から突き出した複数の歯部14とを含む。ゴム補強用コード12は、ベルト部13の内部に、ベルト部13の長手方向と平行となるように埋め込まれている。ゴム補強用コード12は、本実施形態のゴム補強用コードである。
実施例
[0053]
 以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。
[0054]
[ゴム補強用コードの製造]
 (実施例1~3)
 高強度ガラスからなり、平均直径が7μmであるガラス繊維フィラメントを200本集束して構成されたガラス繊維を用意した。このガラス繊維を33本引き揃えてフィラメントの束とした。そのフィラメント束を、固形分の組成の質量比(固形分質量比)が以下の表1に示すとおりである処理剤に浸漬した後、150℃で2分間乾燥させて、1本のガラス繊維コードを得た。このガラス繊維コードに80回/mの割合で一方向に撚りをかけ、実施例1のゴム補強用コードを作製した。
[0055]
 処理剤の組成を変えることを除いて、実施例1と同様の条件で、実施例2及び3のゴム補強用コードを作製した。実施例2及び3で用いられた処理剤の組成を表1に示す。なおこれらのコードの被膜の質量は、フィラメント束の質量の19%であった。
[0056]
(比較例1~3)
 処理剤の組成を変えることを除いて、実施例1と同様の条件で、比較例1~3のゴム補強用コードを作製した。比較例1~3で用いられた処理剤の組成を表1に示す。表1に示すように、比較例1~3では、イソシアネート化合物を1種しか含まない処理剤を用いた。

[0057]
[表1]


[0058]
 <繰り返し引張試験>
 実施例1~3及び比較例1~3のゴム補強用コードのそれぞれを、以下の表2に示す組成を有するマトリックスゴムに埋め込んで、試験用の試験片(サイズ:200mm×10mm×3mm)を作製した。
[0059]
[表2]


[0060]
 次にそれぞれの試験片について、繰り返し引張試験を行い、破断するまでのサイクル数を測定した。ここで、繰り返し引張試験は、一般的に用いられる動的疲労耐久試験システムを使用した。繰り返し引張試験機は、図2に示すように、直径20mmの1個の平プーリ20と、モータ(図示せず)とを備える。まず、作製された試験片30をプーリ20にかけて両端30a、30bを固定した。その状態でプーリ20を図2に示す矢印の方向に往復運動させて、ベルトが破断するまでのサイクル数を測定した。プーリ20は荷重を検出できるようになっており、プーリ20の往復は荷重で制御した。荷重は10~300N、10~400N及び10~500Nの間で往復運動させた。結果を表3に示す。
[0061]
[表3]


[0062]
 表3に示されるように、被膜に含まれる架橋剤が2種のイソシアネート化合物を含む実施例1~3のゴム補強用コードは、被膜に含まれる架橋剤が1種のイソシアネート化合物しか含まない比較例1~3のゴム補強用コードよりも、破断サイクル数が大きかった。したがって、この結果から、架橋剤として2種以上のイソシアネート化合物を含む被膜を備えたゴム補強用コードによれば、繰り返し応力を受けた場合の強度が向上したゴム製品を実現できるということが確認された。

請求の範囲

[請求項1]
 ゴム製品を補強するためのゴム補強用コードであって、
 前記ゴム補強用コードは、少なくとも1つのストランドを備え、
 前記ストランドは、少なくとも1つのフィラメント束と、前記フィラメント束の少なくとも表面の一部を覆うように設けられた被膜と、
を含んでおり、
 前記被膜は、ゴム成分及び架橋剤を含み、
 前記架橋剤は、2種以上のイソシアネート化合物を含む、
ゴム補強用コード。
[請求項2]
 前記2種以上のイソシアネート化合物が、ブロックドイソシアネート及びジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つを含む、
請求項1に記載のゴム補強用コード。
[請求項3]
 前記2種以上のイソシアネート化合物が、第1のブロックドイソシアネートと、前記第1のブロックドイソシアネートと異なる解離温度を有する第2のブロックドイソシアネートとを含む、
請求項1又は2に記載のゴム補強用コード。
[請求項4]
 前記架橋剤が、さらにマレイミド系架橋剤を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム補強用コード。
[請求項5]
 前記ゴム成分が、水素化ニトリルゴム及びカルボキシル変性水素化ニトリルゴムからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つを含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム補強用コード。
[請求項6]
 前記被膜が、レゾルシン-ホルムアルデヒド縮合物を含まない、
請求項1~5のいずれか1項に記載のゴム補強用コード。
[請求項7]
 請求項1~6のいずれか1項に記載のゴム補強用コードで補強されたゴム製品。
[請求項8]
 マトリックスゴムと、前記マトリックスゴムに埋設された前記ゴム補強用コードと、を含むゴムベルトである、
請求項7に記載のゴム製品。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]