このアプリケーションの一部のコンテンツは現時点では利用できません。
このような状況が続く場合は、にお問い合わせくださいフィードバック & お問い合わせ
1. (WO2018194162) トーショナルダンパー用ゴム組成物及びトーショナルダンパー
Document

明 細 書

発明の名称 トーショナルダンパー用ゴム組成物及びトーショナルダンパー

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011  

先行技術文献

特許文献

0012  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0013   0014   0015   0016   0017   0018  

課題を解決するための手段

0019   0020  

発明の効果

0021  

図面の簡単な説明

0022  

発明を実施するための形態

0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060  

実施例

0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092  

符号の説明

0093  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1  

明 細 書

発明の名称 : トーショナルダンパー用ゴム組成物及びトーショナルダンパー

技術分野

[0001]
 本発明はトーショナルダンパー用ゴム組成物に関し、詳しくは、高減衰化を達成し、トーショナルダンパーに要求される物性バランスに優れると共に、製品耐久性及び生地加工性に優れたトーショナルダンパー用ゴム組成物に関する。

背景技術

[0002]
 トーショナルダンパー(TVD)は、エンジン振動低減(クランクシャフトの捻り振動低減)などを目的として、クランクシャフトに取り付けられている。
[0003]
 そして、トーショナルダンパーは、例えばクランクシャフトの軸端に取付けられるハブとその外周に配置された環状の質量部材とを、ゴムからなる弾性体を介して結合する構成となっている。
[0004]
 ここで、エンジンの駆動に伴ってクランクシャフトに正と負の加速度が交互に生じ固有振動数が生じる。これに対しクランクシャフトに設けている質量部材は、一定の回転速度で回転を続けようとしている。そこで、間にあるトーショナルダンパーは、両者間の角速度の変化を吸収する機能が求められる。
[0005]
 従って、トーショナルダンパーの主な機能としては、エンジンの駆動に伴ってクランクシャフトに生じる固有振動数に対して、トーショナルダンパーの固有振動数を合わせることにより、クランクシャフトの振動を低減することや、ベルトを介して補機類(オルタネーター、エアコンなど)へ動力を伝達することが挙げられる。
[0006]
 これらの機能を発揮するために、トーショナルダンパーに使用されるゴム材料には、以下の機能が求められる。
[0007]
(1)固有振動数をチューニングするために、トーショナルダンパー用に使用されるゴム材料には、硬度バリエーション(タイプAデュロメータ)がHs50°~80°程度であることが求められる。
(2)使用温度による固有振動数の変化が少ないことが要求されるため、ゴム材料のばね定数の温度依存性(E’(振動特性)の温度依存性)が良好であることが必要とされる。
(3)クランクシャフト振動を低減するため、ゴム材料のtanδ(減衰特性)が幅広い温度領域で大きいことが必要とされる。
(4)トーショナルダンパーの高温側の使用領域は、100℃を超えるため、耐熱性及び高温耐久性が良好であることも要求される。
[0008]
 中でも従来のトーショナルダンパー用ゴム材料において、E’温度依存性は重要視されている。クランクシャフトの固有振動数にトーショナルダンパーの固有振動数を合わせることにより、振動を低減する。このため、ゴム材料のE’温度依存性が悪いと、環境に影響し、クランクシャフトとトーショナルダンパーとの固有振動数の乖離が生じ、振動を満足するレベルに低減することができない。一般的に、E’の温度依存性を良好にすることは、一方で振動低減の指標であるtanδを損なうことが知られている。
[0009]
 そのため、ゴム材料のE’温度依存性を良化させることで、固有振動数のずれによる振動の増幅ばらつきを小さくすることは可能であるが、クランクシャフト全体の振動としては悪化する傾向であった。
[0010]
 tanδを大きくした場合、E’温度依存性が悪化し、固有振動数のずれによる振動の増幅が生じ問題となる。
[0011]
 特許文献1には、高減衰化を達成すると共に、硬度Hsが50°~80°であり、ばね定数の温度依存性が良好であり、高温時の熱間物性が良好であり、製作時の嵌合圧縮に伴う反発応力の低下が小さい、トーショナルダンパーに適し物性バランスに優れたトーショナルダンパー用EPDM組成物が記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0012]
特許文献1 : 国際公開第2015/012018号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0013]
 特許文献1では、カーボンブラック及び液状ポリオレフィンオリゴマーの使用により高減衰化は可能となる。
[0014]
 しかし、その一方で、特許文献1記載のカーボンブラックを使用したトーショナルダンパー用EPDM組成物の場合、配合量(割合)の増大に伴い製品耐久性が低下する傾向があることが、本発明者の実験によって明らかとなった。この時、製品耐久性の低下に鑑みて、カーボンブラックの配合量を少量としなければならない状況が発生し得る。この場合、カーボンブラックの配合量を少量とすれば、別の手段で大幅な高減衰化の実現を図る必要が生じていた。
[0015]
 従って、製品耐久性を低下させることなく、大幅な高減衰化が可能なトーショナルダンパー用EPDM組成物について、更なる改善の余地があった。
[0016]
 また、液状ポリオレフィンオリゴマーについても、高減衰化が可能となる一方で、その配合量を増大させると、それに伴って生地粘着性が増大するため、加工性(混練時排出性、ロール加工性)の更なる改善の余地があった。このため、高減衰化の目的で液状ポリオレフィンオリゴマーの配合量を増大させる場合には、加工性についても検討する必要があった。
[0017]
 そこで、本発明は、高減衰化を達成し、トーショナルダンパーに要求される物性バランスに優れると共に、製品耐久性及び生地加工性に優れたトーショナルダンパー用ゴム組成物を提供することを課題とする。
[0018]
 また本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。

課題を解決するための手段

[0019]
 上記課題は以下の各発明によって解決される。
[0020]
[1]
 (A)-30℃~120℃におけるtanδの最小値が0.140以上、
 (B)-30℃におけるtanδが60℃対比で3.5倍以下、及び
 (C)-30℃におけるE’が60℃対比で21倍以下、
である、トーショナルダンパー用ゴム組成物。
[2]
 (a)EPM、EPDM、およびEBDMからなる群から選択された、少なくとも1種のポリマーと、
 (b)少なくとも1種の液状ポリオレフィンオリゴマーと、
 (c)少なくとも1種の黒鉛と、
 (d)過酸化物系架橋剤と
 を含有するトーショナルダンパー用ゴム組成物であって、
 前記(a)のポリマーであるEPMおよびEPDMのエチレン・プロピレン合計量と前記(a)のポリマーであるEBDMのエチレン・ブテン合計量との総和に対する、プロピレンおよびブテンの含量が、35~55wt%であり、
 前記(a)のポリマー100重量部に対して、
 前記(b)の液状ポリオレフィンオリゴマーの数平均分子量Mnが3,000~4,000の範囲にある液状ポリオレフィンオリゴマー5~50重量部と、
 前記(c)の黒鉛3~50重量部と、
 前記(d)の過酸化物系架橋剤0.8~3.5重量部と
 を含有する、上記[1]記載のトーショナルダンパー用ゴム組成物。
[3]
 前記(b)の液状ポリオレフィンオリゴマーが、エチレン・αオレフィンオリゴマーである、上記[2]記載のトーショナルダンパー用ゴム組成物。
[4]
 前記エチレン・αオレフィンオリゴマーが、数平均分子量Mn3,000~3,700、100℃動粘度2,000mm /s、粘度指数300、硫黄分0.1質量%未満のエチレン・αオレフィンオリゴマーである、上記[3]記載のトーショナルダンパー用ゴム組成物。
[5]
 前記黒鉛が、鱗片状黒鉛である、上記[2]~[4]の何れかに記載のトーショナルダンパー用ゴム組成物。
[6]
 上記[1]~[5]の何れかに記載のトーショナルダンパー用ゴム組成物を含む、トーショナルダンパー。

発明の効果

[0021]
 本発明によれば、高減衰化を達成し、トーショナルダンパーに要求される物性バランスに優れると共に、製品耐久性及び生地加工性に優れたトーショナルダンパー用ゴム組成物を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0022]
[図1] 本実施の形態に係るトーショナルダンパーを表す図である。

発明を実施するための形態

[0023]
 以下、本発明の実施の形態を説明する。
[0024]
<EPM、EPDM、またはEBDM>
 本実施の形態に用いられる(a)のポリマーとしては上記(A)~(C)を満たすものであれば特に限定されないが、EPM(エチレン/プロピレン共重合体)ポリマー、EPDM(エチレン/プロピレン/非共役ジエン3元共重合体)ポリマー、およびEBDM(エチレン/ブテン/非共役ジエン3元共重合体)ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。すなわち(a)のポリマーは、EPMポリマー、EPDMポリマー、およびEBDMポリマーの何れか1種を単独で用いてもよいし、それらを混合して用いてもよい。典型的には、(a)のポリマーは固体状である。
[0025]
 本実施の形態において、(a)のポリマーであるEPMおよびEPDMのエチレン・プロピレン合計量と(a)のポリマーであるEBDMのエチレン・ブテン合計量との総和に対する、プロピレンおよびブテンの含量が35~55wt%であることが好ましい。なお、各態様における上記「プロピレンおよびブテンの含量」(以下、(C3、C4)含量と記載する場合がある)を以下に示す。
・(a)のポリマーとしてEPM、EPDM、およびEBDMを使用する場合
 (C3、C4)含量=(EPM中のプロピレン量+EPDM中のプロピレン量+EBDM中のブテン量)/(EPM中のエチレン・プロピレン合計量+EPDM中のエチレン・プロピレン合計量+EBDM中のエチレン・ブテン合計量)×100
・(a)のポリマーとしてEPMおよびEPDMを使用する場合
 (C3、C4)含量=(EPM中のプロピレン量+EPDM中のプロピレン量)/(EPM中のエチレン・プロピレン合計量+EPDM中のエチレン・プロピレン合計量)×100
・(a)のポリマーとしてEPMおよびEBDMを使用する場合
 (C3、C4)含量=(EPM中のプロピレン量+EBDM中のブテン量)/(EPM中のエチレン・プロピレン合計量+EBDM中のエチレン・ブテン合計量)×100
・(a)のポリマーとしてEPDMおよびEBDMを使用する場合
 (C3、C4)含量=(EPDM中のプロピレン量+EBDM中のブテン量)/(EPDM中のエチレン・プロピレン合計量+EBDM中のエチレン・ブテン合計量)×100
 上述の(a)のポリマーを用いることにより、耐熱性、耐寒性、耐久性、ばね定数の温度依存性(E’温度依存性)、反発応力のバランス化を実現できる。
[0026]
 本実施の形態において、より好ましい態様としては、(C3、C4)含量が38~55wt%であり、更に好ましくは40~55wt%である。
[0027]
 本実施の形態の(a)のポリマーの市販品としては、例えば、JSR社製、商品名「EP33(EPDM)」、三井化学社製「EBT K-9330M(EBDM)」などを挙げることができる。
[0028]
<液状ポリオレフィンオリゴマー>
 本実施の形態においては、トーショナルダンパー用ゴム組成物は、少なくとも1種の液状ポリオレフィンオリゴマーを含有することが好ましい。
 本実施の形態において、液状ポリオレフィンオリゴマーとしては、エチレン・αオレフィンオリゴマーであることがより好ましい。
[0029]
 液状ポリオレフィンオリゴマーの数平均分子量Mnは3,000~4,000の範囲のものが好ましく、より好ましくは、数平均分子量Mnが3,000~3,900の範囲もの、さらに好ましくは3,000~3,800の範囲のものが用いられる。
[0030]
 液状ポリオレフィンオリゴマーの数平均分子量Mnが、3,000以上であれば減衰特性が良好となり、4,000以下であれば低温特性が良好となる。
[0031]
 前記液状ポリオレフィンオリゴマーは、(a)のポリマー100重量部当り、好ましくは5~50重量部、より好ましくは10~50重量部の割合で添加する。
[0032]
 液状ポリオレフィンオリゴマーが5重量部以上であれば、高減衰化効果が大きくなると共に混練性が良好となり、50重量部以下であれば混練に問題が生じることがない。
[0033]
 本実施の形態に用いられる液状ポリオレフィンオリゴマーとしては、数平均分子量Mn:3,000~3,700、100℃動粘度2,000mm /s、粘度指数300、硫黄分0.1質量%未満のエチレン・αオレフィンオリゴマーであることが好ましい。このような液状ポリオレフィンオリゴマーとしては例えば、三井化学社製「ルーカントHC2000」などを挙げることができる。
[0034]
<黒鉛>
 本実施の形態においては、トーショナルダンパー用ゴム組成物は、少なくとも1種の黒鉛を含有することが好ましい。
 黒鉛としては、膨張黒鉛、膨張化黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛などが挙げられる。
[0035]
 膨張黒鉛は、化学反応を用いて鱗片状黒鉛に物質を挿入した黒鉛層間化合物を急熱し、層間に入れられた物質を燃焼・ガス化させ、そのガスの放出が爆発的に層と層の間を押し広げ、層の積み重なり方向に膨張したものである。
[0036]
 膨張化黒鉛は、膨張黒鉛を膨張させプレスしシート化させ、そのシートを粉砕したものである。
[0037]
 鱗片状黒鉛には、少なくともその表面の一部に炭素質材料が付着したものや、炭素質材料がその内部や表面に金属酸化物を有するものがあり、いずれのものも用いることができる。
[0038]
 土状黒鉛は、外観は土状または土塊状をした黒色の金属光沢をもった鉱物である。
[0039]
 本実施の形態においては、上記黒鉛の中でも、鱗片状黒鉛が好ましく、例えば中越黒鉛工業社製「CPB-3S」を用いることができる。
[0040]
 前記黒鉛は、(a)のポリマー100重量部当り、3~50重量部、好ましくは3~30重量部、より好ましくは3~20重量部の割合で添加するのがよい。黒鉛が3重量部以上であれば混練性及びロール加工性の改善効果が得られ、50重量部以下であれば混練時の分散性及び型汚染性に問題が生じることがないためである。
[0041]
 <過酸化物系架橋剤>
 本実施の形態のトーショナルダンパー用ゴム組成物に配合される(d)の過酸化物系架橋剤は、(a)のポリマー100重量部当り、0.8~3.5重量部、好ましくは1.0~3.5重量部、より好ましくは1.0~3.0重量部の割合で添加するのがよい。
[0042]
 過酸化物系架橋剤の重量部が、0.8重量部以上であれば加硫成形が良好となり、3.5重量部以下であれば、高減衰化効果が大きくなり、tanδの温度依存性が良好となる。
[0043]
 過酸化物系架橋剤としては、有機過酸化物架橋剤が好ましく、例えば2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ジ(第3ブチルパーオキシ)-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ジ(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n-ブチル-4,4-ジ(第3ブチルパーオキシ)バレレートなどが用いられる。
[0044]
<他の添加剤>
 本実施の形態のトーショナルダンパー用ゴム組成物には、上記黒鉛以外に、カーボンブラック、可塑剤などを配合できる。
[0045]
<カーボンブラック>
 本実施の形態において、トーショナルダンパー用ゴム組成物中に使用できるカーボンブラックは格別限定されないが、例えば、昭和キャボット社製「ショウブラック」などの市販品を用いることができる。
[0046]
 前記カーボンブラックは、(a)のポリマー100重量部当り、10~120重量部の範囲で添加することが好ましい。
[0047]
<可塑剤>
 可塑剤としては、例えばプロセスオイル、潤滑油、パラフィン系オイルなどの石油系軟化剤、ひまし油、あまに油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバセートなどのエステル系可塑剤、炭化水素系オリゴマーなどを用いることができる。
[0048]
<その他添加剤>
 本実施の形態のトーショナルダンパー用ゴム組成物には、上記以外の添加剤として、老化防止剤(例えばポリメライズド-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、2-メルカプトベンゾイミダゾール)、助剤(例えば酸化亜鉛、ステアリン酸)、ハイドロタルサイト等の受酸剤等を使用してもよい。
[0049]
<トーショナルダンパー用ゴム組成物の製法>
 本実施の形態において、トーショナルダンパー用ゴム組成物を製造するには、はじめに、未架橋のゴム組成物の調製を行う。例えばインターミックス、ニーダ、バンバリーミキサ等の混練機またはオープンロールなどを用いて、所定の原料を混練することによってゴム組成物の調製ができる。
[0050]
 その後、前記の調製された生地を加硫プレス、圧縮成形機、射出成形機等を用いて、一般に約150~200℃に約3~60分間程度加熱することによって、一次加硫又は一次架橋を行う。
 その後、必要に応じて、約120~200℃で約1~24時間オーブン加硫などによって、二次加硫又は二次架橋を行うこともできる。上記の架橋によって作製したトーショナルダンパー用ゴム組成物を用いて、本実施の形態のトーショナルダンパーが得られる。
[0051]
<トーショナルダンパー用ゴム組成物の物性>
 本実施の形態のトーショナルダンパー用ゴム組成物は、上記の構成であることから、(A)-30℃~120℃におけるtanδの最小値が0.140以上、(B)-30℃におけるtanδが60℃対比で3.5倍以下、及び(C)-30℃におけるE’が60℃対比で21倍以下、の物性を備える。
[0052]
 振動特性(E’)は、貯蔵弾性率とも呼ばれ、トーショナルダンパー用ゴム組成物に振動を負荷した際に、粘弾性スペクトルとして得られるものである。
 また、上記と同様にトーショナルダンパー用ゴム組成物の動的粘弾性の測定を行うことにより、損失弾性率(E”)の粘弾性スペクトルを得ることができる。このようにして得られたE’およびE”から、E”/E’を算出することにより、減衰特性(tanδ)を求めることができる。減衰特性(tanδ)は損失正接とも呼ばれる。
 振動特性(E’)、(-30℃におけるE’)/(60℃におけるE’)の比、減衰特性(tanδ)、および(-30℃におけるtanδ)/(60℃におけるtanδ)の比等は、トーショナルダンパー用ゴム組成物の組成、原料の種類、架橋密度などを調節することによって制御することができる。例えば、(a)ポリマーの化学構造、数平均分子量、含量、(b)液状ポリオレフィンオリゴマーの化学構造、数平均分子量、含量、(d)架橋剤の種類、含量、架橋密度などを調節することによって、上記の特性を制御することができる。
[0053]
 上記物性を備えるトーショナルダンパー用ゴム組成物は、高減衰化を達成し、トーショナルダンパーに要求される物性バランスに優れると共に、製品耐久性及び生地加工性に優れる。
[0054]
 上記の(A)の減衰特性(tanδ)は、引張条件下、-30℃~120℃において、100Hzにおけるtanδを、UBM社製粘弾性スペクトロメータ「DVE-V4」を用いて測定する。何れの温度においても0.140以上のものは良好と評価でき、好ましくは0.150以上、さらに好ましくは0.160以上である。
[0055]
 上記(B)の減衰特性(tanδ)は、減衰特性の温度依存性であり、引張条件下、-30℃~120℃において、100Hzにおけるtanδを、UBM社製粘弾性スペクトロメータ「DVE-V4」を用いて測定する。60℃対比で-30℃におけるtanδ(-30℃/60℃)が3.5倍以下のものを良好と評価できる。
[0056]
 上記(C)の振動特性(E’)の温度特性は、-30℃におけるE’が60℃対比で21倍以下の物性を備えることである。引張条件下、-30℃~120℃において、100Hzにおける貯蔵弾性率E’を、UBM社製粘弾性スペクトロメータ「DVE-4」を用いて測定する。-30℃におけるE’が60℃対比(E’(-30℃)/E’(60℃))で21倍以下のものを良好と評価でき、好ましくは16倍以下、さらに好ましくは12倍以下のものを良好と評価できる。
[0057]
 本実施の形態においては、ゴム材料の60℃におけるtanδの絶対値を高く、かつ従来重要視していなかったtanδの温度依存性(60℃対比)を良化させる。これにより、第1に、クランクシャフト振動の低減を可能する。つまり、tanδを大きくできることにより、クランクシャフト振動の低減が可能となる。
[0058]
 第2に、製品固有振動数の温度依存性を良化できる。ゴム材料のE’歪依存性はペイン効果により歪量が大きいほどE’が小さくなるため、歪量の温度依存性(tanδの温度依存性)が小さいほど、製品固有振動数の温度依存性が良化する。
[0059]
 以上のことから、トーショナルダンパーの常用使用領域(60℃)でのtanδの絶対値を高く、かつ60℃対比のtanδの温度依存性を小さくすることで、製品として固有振動数の温度依存性を良好とし、かつクランクシャフト全体の振動を低減することが可能となる。
[0060]
<トーショナルダンパー>
 図1は、本実施の形態のトーショナルダンパー用ゴム組成物を含むトーショナルダンパーを表す図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は断面図を表す。図1に示すように、トーショナルダンパー4は、自動車エンジンのクランクシャフトに取り付けられるハブ3と、ハブ3の外周面上に本実施の形態のトーショナルダンパー用ゴム組成物2と、トーショナルダンパー用ゴム組成物2の外周面上に連結された振動リング1を有する。振動リング1の外周面には、タイミングベルトを巻架するためのプーリ溝(不図示)が設けられ、このプーリ溝に巻架したタイミングベルトを介して補機類へ回転トルクを伝達する構造となっている。本実施の形態のトーショナルダンパー用ゴム組成物は上記(A)~(C)の特性を有するため、固有振動数の温度依存性を良好とし、かつクランクシャフト全体の振動を低減することができる。
実施例
[0061]
 以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
[0062]
(実施例1)
 (a)ポリマー:EPDM-1(JSR社製「JSR EP33」)
                          100重量部
 液状ポリオレフィンオリゴマー(数平均分子量Mn:3,000~3,700)(三井化学社製「ルーカントHC2000」)     20重量部
 黒鉛(中越黒鉛工業社製「CPB-3S」)       10重量部
 HAFカーボンブラック(昭和キャボット社製「ショウブラックN330-L」)                         80重量部
 過酸化物系架橋剤(ジクミルパーオキサイド(DCP))  1重量部
[0063]
 以上の各成分を、ニーダおよびオープンロールで混練し、未加硫生地を得た後、圧縮成形機を用い、温度180℃、圧縮時間6分の条件で一次架橋し、更にこれを加熱オーブンにて150℃、5時間の熱処理を加えて二次架橋して、試験片である厚さ2mmのトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0064]
(実施例2)
 実施例1において、過酸化物系架橋剤(DCP)の配合量を表1のように代えた以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0065]
(実施例3)
 実施例1において、過酸化物系架橋剤(DCP)の配合量を表1のように代えた以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0066]
(実施例4)
 実施例1において、過酸化物系架橋剤(DCP)の配合量を表1のように代えた以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0067]
(実施例5)
 実施例1において、過酸化物系架橋剤(DCP)の配合量を表1のように代えた以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0068]
(実施例6)
 実施例2において、液状ポリオレフィンオリゴマーの配合量を表1のように代えた以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0069]
(実施例7)
 実施例2において、液状ポリオレフィンオリゴマーの配合量を表1のように代えた以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0070]
(実施例8)
 実施例2において、液状ポリオレフィンオリゴマーの配合量を表1のように代えた以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0071]
(実施例9)
 実施例2において、黒鉛の配合量を表1のように代えた以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0072]
(実施例10)
 実施例2において、黒鉛の配合量を表1のように代えた以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0073]
(実施例11)
 実施例2において、EPDM-1に代えてEBDM-1(三井化学社製「EBT K-9330M」)を用いた以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0074]
(比較例1)
 実施例1において、過酸化物系架橋剤(DCP)の配合量を表2のように代えた以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0075]
(比較例2)
 実施例6において、黒鉛を配合しなかった以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0076]
(比較例3)
 実施例2において、液状ポリオレフィンオリゴマーを配合しなかった以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0077]
(比較例4)
 実施例5において、液状ポリオレフィンオリゴマーを配合しなかった以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0078]
(比較例5)
 実施例2において、ポリマーをEPDM-2(JSR社製「EP51」)に代え、また、(C3、C4)含量を28.9wt%にした以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0079]
(比較例6)
 実施例5において、黒鉛を用いない以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0080]
(比較例7)
 実施例5において、カーボンブラックをISAF-LSカーボンブラック(東海カーボン社製「シースト600」)に代え、且つ黒鉛を用いない以外は、同様にしてトーショナルダンパー用ゴム組成物の試料を成形した。
[0081]
<評価方法>
 得られた試験片について、各物性を下記の方法で測定し、その測定結果を表1、2に示した。
[0082]
1.振動特性(E’)の温度特性
(1)引張条件下、-30℃~120℃において、100Hzにおける貯蔵弾性率E′を、UBM社製粘弾性スペクトロメータ「DVE-V4」を用いて測定した。
粘弾性測定は、ISO 4664-1に対応するJIS K6394に準拠して行った。
試験片の形状および寸法:短冊状、幅6mm、厚さ2mm
(掴み具間隔20mm、平均歪10%、歪振幅±0.1%)
 60℃対比で-30℃におけるE’変化が21倍以下のものを○とし、そうで無いものを×として評価した。
[0083]
(2)引張条件下、-30℃~120℃において、100Hzにおける貯蔵弾性率E′をUBM社製粘弾性スペクトロメータ「DVE-V4」を用いて測定した。
 60℃対比で120℃におけるE’変化が0.5倍以上のものを○とし、そうで無いものを×として評価した。
[0084]
2.減衰特性(tanδ)
 引張条件下、-30℃~120℃において、100Hzにおけるtanδを、UBM社製粘弾性スペクトロメータ「DVE-V4」を用いて測定した。
その値が何れの温度においても0.140以上のものは良好と評価した。より具体的には、-30℃~120℃におけるtanδが0.140以上のものを○とし、そうで無いものを×として評価した。なお、tanδは好ましくは0.150以上、さらに好ましくは0.160以上である。
[0085]
3.減衰特性(tanδ)の温度依存性
 引張条件下、-30℃~120℃において、100Hzにおけるtanδを、UBM社製粘弾性スペクトロメータ「DVE-V4」を用いて測定した。
 60℃対比で-30℃におけるtanδが3.5倍以下のものを○とし、そうで無いものを×と評価した。
[0086]
4.耐久性
 JIS K6251:2010に準拠した標準試験片(ダンベル状試験片6号形)を調製し、この試験片を掴む治具の周辺雰囲気温度が120℃に保たれた恒温槽を備えた引張試験機を用い、伸張条件0~50%として伸張した。
 上記条件にて定伸張疲労試験を、上島製作所社製の伸張疲労試験機「FT-3103」を用いて測定した。サンプル数は、N=6とし、50000回の伸張疲労を繰り返した。
 0~3本破断しているものを○とし、4本以上破断しているものを×として評価した。
[0087]
5.混練性
 混練性については、下記の2項目(1)、(2)を評価し、2項目とも満足するものを○とし、いずれか1項目でも満たさないものを×として評価した。
 (1)混練時間が30分以内であること。
 (2)生地排出後の混練機の汚染が無いこと。
[0088]
6.ロール加工性
 ロール加工性については、下記の項目(1)、(2)を評価し、2項目とも満足するものを○とし、いずれか1項目でも満たさないものを×として評価した。
 (1)ゴム生地がロールから離れることなく密着しており、バンクがスムーズに回転し、良好なロール加工性を有すること。
 (2)分散性向上のための切り返し作業やシート出しなどの分出し作業時に生地粘着による中断がなく、良好な加工性を有すること。
[0089]
7.成形性
 成形性については、下記の項目(1)~(3)を評価し、3項目とも満足するものを○とし、いずれか1項目でも満たさないものを×と評価した。
 (1)加硫条件にて生地焼け、生地流動不良、発泡等の発生がなく安定した加硫成形性を有すること。
 (2)加硫シート表面にブリード等の発生がなく、表面粘着性が小さいこと。
 (3)加硫成形時に型粘着や過度な型汚染の発生等がなく、良好な加硫成形系を有すること。
[0090]
[表1]


[0091]
[表2]


[0092]
<評価>
 表2より、次のことがわかる。
 比較例1は、過酸化物系架橋剤(DCP)が少ないので、成形性が低下し、成形加工が困難である。
 比較例2は、液状ポリオレフィンオリゴマー(ルーカントHC2000)の高配合により減衰性は得られるが、黒鉛(CPB-3S)を配合していないので、混練性、ロール加工性が悪い。
 比較例3及び比較例4は、液状ポリオレフィンオリゴマー(ルーカントHC2000)を配合していないので、減衰特性が低い。さらに、比較例4は、過酸化物系架橋剤(DCP)を高配合しているので、伸びが小さく、耐久性が低下していることがわかる。
 比較例5は、ポリマーをEP51((C3、C4)含量を28.9wt%)に代えたことにより、60℃対比で低温時(-30℃)ならびに高温時(120℃)におけるE’変化率が大きく温度依存性が悪い。
 比較例6は、黒鉛(CPB-3S)を配合していないので、tanδの温度依存性、混練性、ロール加工性が悪い。
 比較例7は、カーボンブラック(ISAF-LS)を使用し、液状ポリオレフィンオリゴマー(ルーカントHC2000)の配合量増加によって所望の減衰特性は得られたが、カーボンブラック(ISAF-LS)の影響で、混練時の分散性が悪化するので、耐久性が悪化してしまった。また、黒鉛を配合していないため、混練性やロール加工性も悪化している。
 以上のような比較例に対し、表1の実施例1~11に示されたように、本発明のトーショナルダンパー用ゴム組成物は、高減衰化を達成し、トーショナルダンパーに要求される物性バランスに優れると共に、製品耐久性及び生地加工性に優れることがわかる。

符号の説明

[0093]
1 振動リング
2 トーショナルダンパー用ゴム組成物
3 ハブ
4 トーショナルダンパー

請求の範囲

[請求項1]
 (A)-30℃~120℃におけるtanδの最小値が0.140以上、
 (B)-30℃におけるtanδが60℃対比で3.5倍以下、及び
 (C)-30℃におけるE’が60℃対比で21倍以下、
である、トーショナルダンパー用ゴム組成物。
[請求項2]
 (a)EPM、EPDM、およびEBDMからなる群から選択された、少なくとも1種のポリマーと、
 (b)少なくとも1種の液状ポリオレフィンオリゴマーと、
 (c)少なくとも1種の黒鉛と、
 (d)過酸化物系架橋剤と
 を含有するトーショナルダンパー用ゴム組成物であって、
 前記(a)のポリマーであるEPMおよびEPDMのエチレン・プロピレン合計量と前記(a)のポリマーであるEBDMのエチレン・ブテン合計量との総和に対する、プロピレンおよびブテンの含量が、35~55wt%であり、
 前記(a)のポリマー100重量部に対して、
 前記(b)の液状ポリオレフィンオリゴマーの数平均分子量Mnが3,000~4,000の範囲にある液状ポリオレフィンオリゴマー5~50重量部と、
 前記(c)の黒鉛3~50重量部と、
 前記(d)の過酸化物系架橋剤0.8~3.5重量部と
 を含有する、請求項1記載のトーショナルダンパー用ゴム組成物。
[請求項3]
 前記(b)の液状ポリオレフィンオリゴマーが、エチレン・αオレフィンオリゴマーである、請求項2記載のトーショナルダンパー用ゴム組成物。
[請求項4]
 前記エチレン・αオレフィンオリゴマーが、数平均分子量Mn3,000~3,700、100℃動粘度2,000mm /s、粘度指数300、硫黄分0.1質量%未満のエチレン・αオレフィンオリゴマーである、請求項3記載のトーショナルダンパー用ゴム組成物。
[請求項5]
 前記黒鉛が、鱗片状黒鉛である、請求項2~4の何れかに記載のトーショナルダンパー用ゴム組成物。
[請求項6]
 請求項1~5の何れかに記載のトーショナルダンパー用ゴム組成物を含む、トーショナルダンパー。

図面

[ 図 1]