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1. (WO2018193979) フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン、及びそれを含む硬化性組成物
Document

明 細 書

発明の名称 フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン、及びそれを含む硬化性組成物

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004  

課題を解決するための手段

0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012  

発明の効果

0013  

図面の簡単な説明

0014  

発明を実施するための形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121  

実施例

0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132  

産業上の利用可能性

0133  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3   4   5   6  

明 細 書

発明の名称 : フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン、及びそれを含む硬化性組成物

技術分野

[0001]
 本発明は、新規のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン、及び前記フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを用いた硬化性組成物に関する。本願は、2017年4月17日に日本に出願した特願2017-081292号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。

背景技術

[0002]
 各種ディスプレイの表面に貼付して使用するハードコートフィルムには、表面硬度と耐擦傷性を備えることが求められる。特許文献1には、エポキシ変性シルセスキオキサンを含むハードコート剤の硬化膜を備えたハードコートフィルムが前記特性を備えることが記載されている。しかし、耐擦傷性の更なる向上が求められている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開2015-193747号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 従って、本発明の目的は、耐擦傷性に優れた硬化物を形成することができる、新規のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを提供することにある。
 また、本発明の他の目的は、前記のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを含み、耐擦傷性に優れた硬化物を形成することができる硬化性組成物を提供することにある。
 さらに、本発明の他の目的は、前記硬化性組成物の硬化膜を備えたハードコートフィルムを提供することにある。

課題を解決するための手段

[0005]
 本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、エポキシ基とフッ素置換アルキル基とを有するシルセスキオキサンは、カチオン重合により優れた耐擦傷性を有する硬化物を形成することができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
[0006]
 すなわち、本発明は、下記式(T-1)
 [R 1SiO 3/2]   (T-1)
[式中、R 1は、エポキシ基を含有する基を示す]
で表されるシロキサン構成単位(T-1)と、
 下記式(T-2)
 [R 2SiO 3/2]   (T-2)
[式中、R 2は、炭素数2~16のアルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子で置換された基を示す]
で表されるシロキサン構成単位(T-2)とを有するフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを提供する。
[0007]
 本発明は、また、フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを構成する全てのシロキサン構成単位(100モル%)における、シロキサン構成単位(T-1)とシロキサン構成単位(T-2)の合計の占める割合が80モル%以上であり、且つシロキサン構成単位(T-1)とシロキサン構成単位(T-2)のモル比(前者/後者)が、90/10~10/90である、前記のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを提供する。
[0008]
 本発明は、また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が500~4000である、前記のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを提供する。
[0009]
 本発明は、また、前記R 1が、下記式(1a)、(1b)、(1c)、及び(1d)で表される基からなる群より選択される1種以上の基である、前記のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを提供する。
[化1]


[式中、R 1a、R 1b、R 1c、及びR 1dは、同一又は異なって、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す]
[0010]
 本発明は、また、前記のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを含む硬化性組成物を提供する。
[0011]
 本発明は、また、ハードコート剤である、前記の硬化性組成物を提供する。
[0012]
 本発明は、また、前記の硬化性組成物の硬化膜を備えたハードコートフィルムを提供する。

発明の効果

[0013]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、硬化性組成物に添加することで、得られる硬化物の耐擦傷性を向上することができる。また、本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、硬化性組成物に添加しても、得られる硬化物の透明性を損なうことがない。従って、本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、耐擦傷性付与材等として好適に使用することができる。

図面の簡単な説明

[0014]
[図1] 実施例1で得られたフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの 29Si-NMRスペクトルを示す図である。
[図2] 実施例1で得られたフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの 1H-NMRスペクトルを示す図である。
[図3] 実施例2で得られたフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの 29Si-NMRスペクトルを示す図である。
[図4] 実施例2で得られたフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの 1H-NMRスペクトルを示す図である。
[図5] 実施例3、4、及び比較例1で得られたハードコートフィルムの耐擦傷性を示す図である。
[図6] 実施例5、及び比較例1で得られたハードコートフィルムの耐擦傷性を示す図である。

発明を実施するための形態

[0015]
[フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、下記式(T-1)
 [R 1SiO 3/2]   (T-1)
[式中、R 1は、エポキシ基を含有する基を示す]
で表されるシロキサン構成単位(T-1)と、
 下記式(T-2)
 [R 2SiO 3/2]   (T-2)
[式中、R 2は、炭素数2~16のアルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子で置換された基を示す]
で表されるシロキサン構成単位(T-2)とを有する。
[0016]
 前記シロキサン構成単位(T-1)とシロキサン構成単位(T-2)はT単位(1個のケイ素原子に3個の酸素原子が結合する単位)であり、詳細には後述の式(t3)で表されるT3体である。
[0017]
 式(T-1)中のR 1は、エポキシ基を含有する基(一価の基)を示す。即ち、本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、分子内にエポキシ基を少なくとも有するカチオン硬化性化合物である。上記エポキシ基を含有する基としては、オキシラン環を有する公知乃至慣用の基が挙げられ、特に限定されないが、硬化性組成物の硬化性、耐熱性の観点で、下記式(1a)で表される基、下記式(1b)で表される基、下記式(1c)で表される基、下記式(1d)で表される基が好ましく、より好ましくは下記式(1a)で表される基、下記式(1c)で表される基、さらに好ましくは下記式(1a)で表される基である。
[化2]


[0018]
 上記式中、R 1a、R 1b、R 1c、及びR 1dは、同一又は異なって、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、デカメチレン基等の炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。本発明においては、中でも、硬化性の観点で、炭素数1~4の直鎖状のアルキレン基、炭素数3又は4の分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、より好ましくはエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、さらに好ましくはエチレン基、トリメチレン基である。
[0019]
 式(T-1)中のR 1としては、特に、上記式(1a)で表される基であって、R 1aがエチレン基又はトリメチレン基である基[中でも、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基]が好ましい。
[0020]
 式(T-2)中のR 2は、炭素数2~16(好ましくは3~10、特に好ましくは3~6)のアルキル基(好ましくは直鎖状アルキル基)の水素原子の2個以上がフッ素原子で置換された基(フッ化アルキル基)である。中でも、下記式(r2)で表される基が好ましい。下記式中、nは1以上の整数であり、好ましくは1~8、特に好ましくは1~5、最も好ましくは1~3である。mは0以上の整数であり、好ましくは0~8、特に好ましくは0~5、最も好ましくは0~4である。尚、下記式の左端が式(T-2)中のケイ素原子に結合する。
   -(CH 2n-(CF 2m-CF 3  (r2)
[0021]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、T単位として、シロキサン構成単位(T-1)とシロキサン構成単位(T-2)とを有するものであればよく、各シロキサン構成単位は1種を単独で有するものであっても、2種以上を組み合わせて有するものであってもよい。
[0022]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを構成する全てのシロキサン構成単位(100モル%)における、シロキサン構成単位(T-1)とシロキサン構成単位(T-2)の合計の占める割合は、例えば80モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。尚、上限は100モル%である。前記シロキサン構成単位(T-1)、(T-2)を前記範囲で含有するフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、硬化物に耐擦傷性を付与する効果が特に優れる傾向がある。
[0023]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、T単位としてシロキサン構成単位(T-1)とシロキサン構成単位(T-2)以外にも他のシロキサン構成単位を有していてもよい。T3体として、下記式(T-3)で表されるシロキサン構成単位(T-3)を有していてもよい。更に、T2体として、下記式(T-1’)、(T-2’)で表されるシロキサン構成単位を有していてもよい。
 [R 3SiO 3/2]   (T-3)
 [R 1SiO 2/2(OR 4)]   (T-1')
 [R 2SiO 2/2(OR 4)]   (T-2’)
(式中、R 1、R 2は上記に同じ。R 3は水素原子、又は置換基(ハロゲン原子及びエポキシ基を除く)を有していてもよい炭化水素基を示す。R 4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す)
[0024]
 尚、T3体は、より詳細には下記式(t3)で表される。また、T2体は、より詳細には下記式(t2)で表される。下記式(t3)で表される構造中に示されるケイ素原子に結合した3つの酸素原子はそれぞれ、他のケイ素原子(式(t3)中に示されていないケイ素原子)と結合している。一方、下記式(t2)で表される構造中に示されるケイ素原子の上と下に位置する2つの酸素原子はそれぞれ、他のケイ素原子(式(t2)中に示されていないケイ素原子)と結合している。尚、下記式中、Rは前記R 1、R 2、又はR 3を示す。R 4は前記に同じ。
[化3]


[0025]
 上記R 3における炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基が含まれる。
[0026]
 脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基等の炭素数1~10(好ましくは1~5、特に好ましくは1~3)のアルキル基;ビニル基、アリル基、1-ブテニル基等の炭素数2~10(好ましくは2~5、特に好ましくは2~3)のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2~10(好ましくは2~5、特に好ましくは2~3)のアルキニル基等を挙げることができる。
[0027]
 脂環式炭化水素基としては、3~10員の脂環式炭化水素基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の3~10員(好ましくは5~8員)のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロへキセニル基等の3~10員(好ましくは5~8員)のシクロアルケニル基等を挙げることができる。
[0028]
 芳香族炭化水素基としては、炭素数6~14(特に、炭素数6~10)芳香族炭化水素基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
[0029]
 上記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、C 1-3アルコキシ基、C 6-10アリールオキシ基、C 7-10アラルキルオキシ基、アシルオキシ基等)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(例えば、C 1-3アルコキシカルボニル基、C 6-10アリールオキシカルボニル基、C 7-10アラルキルオキシカルボニル基等)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。
[0030]
 上記R 4における炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
[0031]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを構成する全てのシロキサン構成単位に含まれる、T3体とT2体のモル比[T3体/T2体]は、例えば5~40であり、耐擦傷性を向上する効果が得られる点で、好ましくは10~30、特に好ましくは15~25、最も好ましくは20~25である。
[0032]
 前記T3体とT2体のモル比[T3体/T2体]は、例えば、 29Si-NMRスペクトル測定により求めることができる。 29Si-NMRスペクトルにおいて、T3体におけるケイ素原子と、T2体におけるケイ素原子とは、異なる位置(化学シフト)にシグナル(ピーク)を示すため、これらそれぞれのピークの積分比を算出することにより、[T3体/T2体]が求められる。尚、T3体におけるケイ素原子のシグナルは-64~-70ppmに現れ、T2体におけるケイ素原子のシグナルは-54~-60ppmに現れる。
[0033]
  29Si-NMRスペクトルは、例えば、下記の装置及び条件により測定することができる。
 測定装置:商品名「JNM-ECA500NMR」(日本電子(株)製)
 溶媒:重クロロホルム
 積算回数:1800回
 測定温度:25℃
[0034]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、上記T単位以外にも、M単位[R 3SiO 1/2]、D単位[R 2SiO 2/2]、Q単位[SiO 4/2]を1種又は2種以上有していてもよい。尚、前記Rは前記R 1、R 2、又はR 3を示す。
[0035]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンにおけるフッ素原子含有量としては、フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンに含まれるケイ素原子1モルに対して、フッ素原子を例えば0.1モル以上10モル未満であり、上限は好ましくは5モル、より好ましくは2.5モル、特に好ましくは2.0モル、最も好ましくは1.8モル、とりわけ好ましくは1.5モルである。本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンが上記範囲でフッ素原子を含有すると、エポキシ変性シルセスキオキサン等の他のカチオン硬化性化合物との相溶性を有し、他のカチオン硬化性化合物に添加することで得られる硬化物の耐擦傷性付を向上することができる。一方、フッ素原子含有量が過剰となると、エポキシ変性シルセスキオキサン等の他のカチオン硬化性化合物との相溶性が低下し、混ざりにくくなる傾向がある。
[0036]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンのエポキシ当量(g/eq)は、例えば150~500、好ましくは170~400、特に好ましくは190~350である。上記エポキシ当量が上記範囲内であると、他のカチオン硬化性化合物との重合性に特に優れ、得られる硬化物の耐擦傷性を著しく向上することができる。また、硬化物の耐クラック性及び被接着体に対する接着性に優れる傾向がある。更に、耐熱性に優れる傾向もある。なお、エポキシ当量は、JIS K7236:2001に準じて測定される。
[0037]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、例えば500~4000、好ましくは1000~2500、特に好ましくは1200~1800、最も好ましくは1300~1700である。フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの数平均分子量が500以上であると、これを含有する硬化性組成物は製膜性が良好であり、基材等に塗布する際にはハジキが生じにくく、塗膜表面に窪みやへこみが生じにくい。また、前記硬化性組成物の硬化物は耐熱性、及び耐擦傷性に特に優れる。一方、フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの数平均分子量が4000以下であると、硬化性組成物に含まれる他の成分との相溶性に優れる。
[0038]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量分散度(Mw/Mn)は、特に限定されないが、3.0以下(例えば、1.0~3.0)が好ましく、より好ましくは1.1~2.0、さらに好ましくは1.1~1.5である。フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの分子量分散度が3.0以下であると、これを含有する硬化性組成物の硬化物は耐擦傷性に特に優れる。一方、フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの分子量分散度が1.1以上であると、液状となりやすく、取り扱い性が良好である。
[0039]
 なお、本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの数平均分子量、分子量分散度は、下記の装置及び条件により測定することができる。
 測定装置:商品名「LC-20AD」((株)島津製作所製)
 カラム:Shodex KF-801×2本、KF-802、及びKF-803(昭和電工(株)製)
 測定温度:40℃
 溶離液:THF、試料濃度0.1~0.2重量%
 流量:1mL/分
 検出器:UV-VIS検出器(商品名「SPD-20A」、(株)島津製作所製)
 分子量:標準ポリスチレン換算
[0040]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの構造としては、ラダー構造、カゴ構造(完全カゴ構造、不完全カゴ構造)、ランダム型等が挙げられる。フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの構造は、FT-IRスペクトル測定及びT3体とT2体のモル比[T3体/T2体]から確認することができる。
[0041]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、これを構成するシロキサン構成単位に対応する加水分解性三官能シラン化合物(例えば、下記式(t)で表される化合物)を加水分解及び縮合反応に付すことによって製造することができる。
   RSi(X) 3   (t)
(式中、Rは前記R 1、R 2、又はR 3を示す。Xは、同一又は異なって、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す)
[0042]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンにおける各シロキサン構成単位の割合は、これらの構成単位を形成するための原料(加水分解性三官能シラン)の組成をコントロールすることにより適宜調整可能である。
[0043]
 使用する加水分解性シラン化合物の全量(100モル%)における、シロキサン構成単位(T-1)に対応する三官能シラン化合物とシロキサン構成単位(T-2)に対応する三官能シラン化合物の割合(総量の割合)は、特に限定されないが、80モル%以上であり、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。尚、上限は100モル%である。
[0044]
 また、シロキサン構成単位(T-1)に対応する三官能シラン化合物とシロキサン構成単位(T-2)に対応する三官能シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、同時に行うこともできるし、逐次行うこともできる。上記反応を逐次行う場合、反応を行う順序は特に限定されない。
[0045]
 上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記溶媒としては、中でも、ケトン及び/又はエーテルが好ましい。
[0046]
 溶媒の使用量は、特に限定されず、加水分解性シラン化合物の全量100重量部に対して、2000重量部以下の範囲内で、反応時間等に応じて適宜調整することができる。
[0047]
 上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、触媒及び水の存在下で進行させることが好ましい。上記触媒としては、酸触媒、及びアルカリ触媒が挙げられる。上記酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸;リン酸エステル;酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸;活性白土等の固体酸;塩化鉄等のルイス酸等が挙げられる。上記アルカリ触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等のアルカリ金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);酢酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属のフェノキシド;トリエチルアミン、N-メチルピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等のアミン類(第3級アミン等);ピリジン、2,2'-ビピリジル、1,10-フェナントロリン等の含窒素芳香族複素環化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、触媒は、水や溶媒等に溶解又は分散させた状態で使用することもできる。
[0048]
 上記触媒の使用量は、特に限定されず、加水分解性シラン化合物の全量1モルに対して、例えば0.002~0.200モルであり、この範囲内で適宜調整することができる。
[0049]
 上記加水分解及び縮合反応に際しての水の使用量は、特に限定されず、加水分解性シラン化合物の全量1モルに対して、例えば0.5~20モルであり、この範囲内で適宜調整することができる。
[0050]
 上記水の添加方法は、特に限定されず、使用する水の全量(全使用量)を一括で添加してもよいし、逐次的に添加してもよい。逐次的に添加する際には、連続的に添加してもよいし、間欠的に添加してもよい。
[0051]
 上記加水分解及び縮合反応の反応温度は、特に限定されないが、15~100℃が好ましく、より好ましくは20~80℃である。反応温度を上記範囲に制御することにより、重合度が向上する傾向がある。また、上記加水分解及び縮合反応の反応時間は、特に限定されないが、0.1~10時間が好ましく、より好ましくは1~8時間である。また、上記加水分解及び縮合反応は、常圧下で行うこともできるし、加圧下又は減圧下で行うこともできる。なお、上記加水分解及び縮合反応を行う際の雰囲気は、特に限定されず、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下、空気下等の酸素存在下等のいずれであってもよいが、不活性ガス雰囲気下が好ましい。
[0052]
 なお、本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの製造方法として、シロキサン構成単位(T-1)に対応する三官能シラン化合物[R 1Si(X) 3]とシロキサン構成単位(T-2)に対応する三官能シラン化合物[R 2Si(X) 3]を少なくとも含む加水分解性シラン化合物を加水分解及び縮合させる方法を説明したが、本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの製造方法はこの方法には限定されず、例えば、前記[R 1Si(X) 3]に代えて、[R xSi(X) 3](R x:置換若しくは無置換のアルケニル基である)で表される化合物を加水分解及び縮合反応させ、その後、過酸等の酸化剤を反応させてエポキシ化する方法により製造してもよい。
[0053]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは上述の構成を有するため、硬化性組成物に添加することにより、得られる硬化物の耐擦傷性を向上する効果を発揮することができる。従って、本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、耐擦傷性付与材等として好適に使用することができる。
[0054]
[硬化性組成物]
 本発明の硬化性組成物は、上記フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを必須成分とする硬化性組成物である。本発明の硬化性組成物は、上記フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有することができる。本発明の硬化性組成物は、更に、上記フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン以外の硬化性化合物(以後、「他の硬化性化合物」と称する場合がある)、重合開始剤(特に光カチオン重合開始剤)や表面調整剤あるいは表面改質剤等を含んでいてもよい。
[0055]
 本発明の硬化性組成物に含まれる硬化性化合物全量(100重量%)における上記フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの含有量(配合量)は、例えば0.1重量%以上、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~10重量%、特に好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは0.5~3重量%である。上記フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを0.1重量%以上含有することで、耐擦傷性に優れた硬化物を得ることができる。また、上記フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを10重量%以下の範囲で含有することで、透明性に優れた硬化物が得られる。
[0056]
 他の硬化性化合物としては、公知乃至慣用のカチオン硬化性化合物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン以外のエポキシ化合物(「他のエポキシ化合物」と称する場合がある)、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[0057]
 本発明の硬化性組成物は、他の硬化性化合物として、5%重量減少温度(Td 5)が、例えば280℃以上(好ましくは300℃以上、特に好ましくは350℃以上)である化合物を含有することが、耐熱性に優れた硬化物を形成することができ、耐熱性に優れたハードコート層を形成することができる点で好ましい。なお、硬化性化合物の5%重量減少温度は、TG/DTAにより測定することができる。
[0058]
 他のエポキシ化合物としては、分子内に1以上のエポキシ基(オキシラン環)を有する公知乃至慣用の化合物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、エポキシ変性シロキサン化合物、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
[0059]
 前記エポキシ変性シロキサン化合物としては、例えば、エポキシ変性シリコーンやエポキシ変性シルセスキオキサン等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[0060]
 前記エポキシ変性シリコーンは、ジメチルシリコーン骨格の末端及び側鎖の少なくとも1つにエポキシ基(例えば、グリシジル基、脂環エポキシ基等)を導入した化合物である。
[0061]
 前記エポキシ変性シルセスキオキサンはシルセスキオキサン構造(ラダー構造、カゴ構造(完全カゴ構造、不完全カゴ構造)、ランダム型等)と、それに結合したエポキシ基を有するポリシロキサン化合物であり、例えば、T単位(特に、T3体)として、下記式(T-1)
 [R 1SiO 3/2]   (T-1)
[式中、R 1は、エポキシ基を含有する基を示す]
で表されるシロキサン構成単位(T-1)と、下記式(T-3)
 [R 3SiO 3/2]   (T-3)
[式中、R 3は水素原子、又は置換基(ハロゲン原子及びエポキシ基を除く)を有していてもよい炭化水素基を示す]
で表されるシロキサン構成単位(T-3)とを有する化合物を挙げることができる。
[0062]
 尚、前記式(T-1)中のR 1、及び前記式(T-3)中のR 3は、何れも上記と同様の例を挙げることができる。
[0063]
 前記エポキシ変性シルセスキオキサンは、T単位(特に、T2体)として、下記式で表されるシロキサン構造単位を有していてもよい。
 [R 1SiO 2/2(OR 4)]   (T-1’)
 [R 3SiO 2/2(OR 4)]   (T-3’)
(式中、R 1、R 3、R 4は、上記に同じ)
[0064]
 前記エポキシ変性シルセスキオキサンは、T単位以外にも、M単位、D単位、Q単位を1種又は2種以上有していてもよい。
[0065]
 前記エポキシ変性シルセスキオキサンにおける[T3体/T2体]としては、5以上であることが耐クラック性に優れる点で好ましい。
[0066]
 前記エポキシ変性シルセスキオキサンのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、500~4000が好ましく、より好ましくは1000~2500、さらに好ましくは1100~2600である。数平均分子量が1000以上であると、得られる硬化物の耐擦傷性、耐熱性、接着性が優れる傾向がある。また、該硬化性組成物の硬化物の耐熱性、接着性が向上する傾向がある。一方、数平均分子量が4000以下であると、硬化性組成物における他の成分との相溶性が向上し、硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。
[0067]
 前記エポキシ変性シルセスキオキサンのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量分散度(Mw/Mn)は、特に限定されないが、3.0以下(例えば、1.0~3.0)が好ましく、より好ましくは1.1~2.0、さらに好ましくは1.1~1.5である。
[0068]
 前記エポキシ変性シルセスキオキサンは、これを構成するシロキサン構成単位に対応する加水分解性三官能シラン化合物を加水分解及び縮合反応に付すことによって製造することができる。
[0069]
 上記脂環式エポキシ化合物としては、分子内に1個以上の脂環と1個以上のエポキシ基とを有する公知乃至慣用の化合物が挙げられ、特に限定されないが、例えば、下記化合物等が挙げられる。
(1)分子内に脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(「脂環エポキシ基」と称する)を有する化合物
(2)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物
(3)分子内に脂環及びグリシジルエーテル基を有する化合物(グリシジルエーテル型エポキシ化合物)
[0070]
 上記(1)分子内に脂環エポキシ基を有する化合物としては、下記式(i)で表される化合物が挙げられる。
[化4]


[0071]
 上記式(i)中、Yは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、これらが複数個連結した基等が挙げられる。なお、式(i)におけるシクロヘキサン環(シクロヘキセンオキシド基)を構成する炭素原子の1以上には、アルキル基等の置換基が結合していてもよい。
[0072]
 上記二価の炭化水素基としては、炭素数が1~18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1~18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
[0073]
 上記炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2~8の直鎖又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2~4のアルケニレン基である。
[0074]
 上記式(i)で表される脂環式エポキシ化合物の代表的な例としては、(3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタンや、下記式(i-1)~(i-10)で表される化合物等が挙げられる。尚、下記式(i-5)中のR'は炭素数1~8のアルキレン基であり、なかでも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。また、下記式(i-5)、(i-7)、(i-9)、(i-10)中のn 1~n 8は、それぞれ1~30の整数を示す。
[化5]


[化6]


[0075]
 上述の(2)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物としては、例えば、下記式(ii)で表される化合物等が挙げられる。
[化7]


[0076]
 式(ii)中、R"は、p価のアルコールの構造式からp個の水酸基(-OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、n 9はそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R"(OH) p]としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノール等の多価アルコール(炭素数1~15のアルコール等)等が挙げられる。pは1~6が好ましく、n 9は1~30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの[ ]内(外側の角括弧内)の基におけるn 9は同一でもよく異なっていてもよい。上記式(ii)で表される化合物としては、具体的には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)等]等が挙げられる。
[0077]
 上述の(3)分子内に脂環及びグリシジルエーテル基を有する化合物としては、例えば、脂環式アルコール(特に、脂環式多価アルコール)のグリシジルエーテルが挙げられる。より詳しくは、例えば、2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパンなどのビスフェノールA型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールA型エポキシ化合物);ビス[o,o-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[o,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[p,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタンなどのビスフェノールF型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールF型エポキシ化合物);水素化ビフェノール型エポキシ化合物;水素化フェノールノボラック型エポキシ化合物;水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;ビスフェノールAの水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;水素化ナフタレン型エポキシ化合物;トリスフェノールメタンから得られるエポキシ化合物を水素化した化合物等が挙げられる。
[0078]
 上述の(3)分子内に脂環及びグリシジルエーテル基を有する化合物としては、例えば、脂環式アルコール(特に、脂環式多価アルコール)のグリシジルエーテルが挙げられる。より詳しくは、例えば、2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパンなどのビスフェノールA型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールA型エポキシ化合物);ビス[o,o-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[o,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[p,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタンなどのビスフェノールF型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールF型エポキシ化合物);水素化ビフェノール型エポキシ化合物;水素化フェノールノボラック型エポキシ化合物;水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;ビスフェノールAの水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;水素化ナフタレン型エポキシ化合物;トリスフェノールメタンから得られるエポキシ化合物の水素化エポキシ化合物;下記芳香族エポキシ化合物の水素化エポキシ化合物等が挙げられる。
[0079]
 上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール類[例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等]と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;これらのエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を上記ビスフェノール類とさらに付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール類[例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等]とアルデヒド[例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等]とを縮合反応させて得られる多価アルコール類を、さらにエピハロヒドリンと縮合反応させることにより得られるノボラック・アルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フルオレン環の9位に2つのフェノール骨格が結合し、かつこれらフェノール骨格のヒドロキシ基から水素原子を除いた酸素原子に、それぞれ、直接又はアルキレンオキシ基を介してグリシジル基が結合しているエポキシ化合物等が挙げられる。
[0080]
 上記脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、q価の環状構造を有しないアルコール(qは自然数である)のグリシジルエーテル;一価又は多価カルボン酸[例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸等]のグリシジルエステル;エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、エポキシ化ひまし油等の二重結合を有する油脂のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン等のポリオレフィン(ポリアルカジエンを含む)のエポキシ化物等が挙げられる。なお、上記q価の環状構造を有しないアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール等の一価のアルコール;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の二価のアルコール;グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等の三価以上の多価アルコール等が挙げられる。また、q価のアルコールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等であってもよい。
[0081]
 上記オキセタン化合物としては、分子内に1以上のオキセタン環を有する公知乃至慣用の化合物が挙げられ、特に限定されないが、例えば、3,3-ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1-エチル(3-オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4'-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4-ビス{〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3-エチル-3-{〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕メチル)}オキセタン、キシリレンビスオキセタン、3-エチル-3-{[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン等が挙げられる。
[0082]
 上記ビニルエーテル化合物としては、分子内に1以上のビニルエーテル基を有する公知乃至慣用の化合物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル(エチレングリコールモノビニルエーテル)、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1-メチル-3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1-メチル-2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1-ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,8-オクタンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,3-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,2-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、p-キシレングリコールモノビニルエーテル、p-キシレングリコールジビニルエーテル、m-キシレングリコールモノビニルエーテル、m-キシレングリコールジビニルエーテル、o-キシレングリコールモノビニルエーテル、o-キシレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールジビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールジビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールジビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、イソソルバイドジビニルエーテル、オキサノルボルネンジビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、ヒドロキシオキサノルボルナンメタノールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等が挙げられる。
[0083]
 本発明の硬化性組成物に含まれる硬化性化合物全量(100重量%)における他の硬化性化合物(特に他のエポキシ化合物、とりわけエポキシ変性シロキサン化合物と脂環式エポキシ化合物)の含有量(配合量)は、例えば90~99.5重量%、好ましくは95~99.5重量%、特に好ましくは97~99.5重量%である。他の硬化性化合物を上記範囲で配合することにより所望の性能(例えば、速硬化性や粘度調整等)を付与することができる場合がある。
[0084]
 また、本発明の硬化性組成物に含まれる硬化性化合物全量(100重量%)におけるフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンと他のエポキシ化合物(特に、エポキシ変性シロキサン化合物と脂環式エポキシ化合物)の合計含有量の占める割合は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、とりわけ好ましくは95重量%以上である。尚、上限は100重量%である。
[0085]
 (カチオン重合開始剤)
 本発明の硬化性組成物はカチオン重合開始剤を1種又は2種以上含有することが、速硬化性を発揮して、タックフリーとなるまでの硬化時間を短縮することができる点で好ましい。カチオン重合開始剤には光カチオン重合開始剤と熱カチオン重合開始剤が含まれるが、なかでも光カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。
[0086]
 光カチオン重合開始剤は、光の照射によって酸を発生して、硬化性組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の硬化反応を開始させる化合物であり、光を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなる。光カチオン重合開始剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[0087]
 光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、臭素塩系化合物等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、ヨードニウム塩系化合物及び/又はスルホニウム塩系化合物を使用することが好ましい。
[0088]
 ヨードニウム塩系化合物のカチオン部としては、例えば、ビス[4-n-アルキル(C 10-13)フェニル]ヨードニウムイオン等を挙げることができる。
[0089]
 スルホニウム塩系化合物のカチオン部としては、例えば、(4-ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムイオン、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウムイオン、トリ-p-トリルスルホニウムイオン等のアリールスルホニウムイオン(特に、トリアリールスルホニウムイオン)を挙げることができる。
[0090]
 光カチオン重合開始剤のアニオン部としては、例えば、[(Z) sB(Phf) 4-s-(式中、Zはフェニル基又はビフェニリル基を示す。Phfは水素原子の少なくとも1つが、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基を示す。sは0~3の整数である)、BF 4 -、[(Rf) tPF 6-t-(Rf:水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基、t:0~5の整数)、AsF 6 -、SbF 6 -、SbF 5OH -等を挙げることができる。
[0091]
 光カチオン重合開始剤としては、例えば、ビス[4-n-アルキル(C 10-13)フェニル]ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(4-ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム] ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]フェニル-2-チオキサントニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、商品名「サイラキュアUVI-6970」、「サイラキュアUVI-6974」、「サイラキュアUVI-6990」、「サイラキュアUVI-950」(以上、米国ユニオンカーバイド社製)、「Irgacure250」、「Irgacure261」、「Irgacure264」(以上、BASF社製)、「CG-24-61」(チバガイギー社製)、「オプトマーSP-150」、「オプトマーSP-151」、「オプトマーSP-170」、「オプトマーSP-171」(以上、(株)ADEKA製)、「DAICAT II」((株)ダイセル製)、「UVAC1590」、「UVAC1591」(以上、ダイセル・サイテック(株)製)、「CI-2064」、「CI-2639」、「CI-2624」、「CI-2481」、「CI-2734」、「CI-2855」、「CI-2823」、「CI-2758」、「CIT-1682」(以上、日本曹達(株)製)、「PI-2074」(ローディア社製、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート トリルクミルヨードニウム塩)、「FFC509」(3M社製)、「BBI-102」、「BBI-101」、「BBI-103」、「MPI-103」、「TPS-103」、「MDS-103」、「DTS-103」、「NAT-103」、「NDS-103」(以上、ミドリ化学(株)製)、「CD-1010」、「CD-1011」、「CD-1012」(以上、米国、Sartomer社製)、「CPI-100P」、「CPI-101A」(以上、サンアプロ(株)製)等の市販品を使用できる。
[0092]
 上記カチオン重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、硬化性組成物に含まれるカチオン硬化性化合物100重量部に対して、0.01~3.0重量部が好ましく、より好ましくは0.05~3.0重量部、さらに好ましくは0.1~1.0重量部、特に好ましくは0.3~0.8重量部である。カチオン重合開始剤の含有量を0.01重量部以上とすることにより、硬化反応を効率的に、且つ十分に進行させることができ、耐擦傷性に優れた硬化物を得ることができる。一方、カチオン重合開始剤の含有量を3.0重量部以下とすることにより、硬化性組成物の保存安定性を向上することができ、硬化物の着色を抑制することができる。
[0093]
 (レベリング剤)
 本発明の硬化性組成物は、更にレベリング剤を含有することが、得られる硬化物に表面平滑性、及び密着性を付与することができ、耐擦傷性を一層向上する効果が得られる点で好ましい。レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、なかでも、特に優れた表面平滑性を付与することができる点で、フッ素系レベリング剤が好ましい。
[0094]
 上記フッ素系レベリング剤には、パーフルオロアルキル基を有する化合物、及びポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有する化合物が含まれる。
[0095]
 前記パーフルオロアルキル基を有する化合物におけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘキサフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル等のパーフルオロC 1-10アルキル基等を挙げることができる。
[0096]
 前記ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有する化合物におけるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖は、例えば、下記式(c)で表され、式中のY’は例えばC 1-10パーフルオロアルキレン基であり、具体的には下記式(1)~(5)で表される基を挙げることができる。
[化8]


[0097]
 上記式(c)中の複数のY’はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、式(c)中のt’はパーフルオロアルキレンエーテル単位の繰り返しの数(重合度)であり、例えば10~3000、好ましくは30~1000、より好ましくは50~500である。
[0098]
 フッ素系レベリング剤は、パーフルオロアルキル基、又はポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖以外にも、例えば、親水性基、親油性基、エポキシ基に対する反応性基、ラジカル重合性基等を有していてもよい。
[0099]
 前記親水性基としては、例えば、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、ポリエチレンオキシド鎖、水酸基等を挙げることができる。
[0100]
 前記親油性基としては、例えば、炭化水素基、エーテル基、エステル基等を挙げることができる。
[0101]
 前記エポキシ基に対する反応性基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基(無水マレイン酸基等)、イソシアネート基等を挙げることができる。
[0102]
 上記ラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基等を挙げることができる。
[0103]
 上記フッ素系レベリング剤としては、例えば、商品名「オプツールDSX」、「オプツールDAC-HP」(以上、ダイキン工業(株)製);商品名「サーフロンS-242」、「サーフロンS-243」、「サーフロンS-420」、「サーフロンS-611」、「サーフロンS-651」、「サーフロンS-386」(以上、AGCセイミケミカル(株)製);商品名「BYK-340」(ビックケミー・ジャパン(株)製);商品名「AC 110a」、「AC 100a」(以上、Algin Chemie製);商品名「メガファックF-114」、「メガファックF-410」、「メガファックF-444」、「メガファックEXP TP-2066」、「メガファックF-430」、「メガファックF-472SF」、「メガファックF-477」、「メガファックF-552」、「メガファックF-553」、「メガファックF-554」、「メガファックF-555」、「メガファックR-94」、「メガファックRS-72-K」、「メガファックRS-75」、「メガファックRS-90」、「メガファックF-556」、「メガファックEXP TF-1367」、「メガファックEXP TF-1437」、「メガファックF-558」、「メガファックEXP TF-1537」(以上、DIC(株)製);商品名「FC-4430」、「FC-4432」(以上、住友スリーエム(株)製);商品名「フタージェント 100」、「フタージェント 100C」、「フタージェント 110」、「フタージェント 150」、「フタージェント 150CH」、「フタージェント A-K」、「フタージェント 501」、「フタージェント 250」、「フタージェント 251」、「フタージェント 222F」、「フタージェント 208G」、「フタージェント 300」、「フタージェント 310」、「フタージェント 400SW」(以上、(株)ネオス製);商品名「PF-136A」、「PF-156A」、「PF-151N」、「PF-636」、「PF-6320」、「PF-656」、「PF-6520」、「PF-651」、「PF-652」、「PF-3320」(以上、北村化学産業(株)製)等の市販品を使用することができる。
[0104]
 レベリング剤の使用量(2種以上使用する場合はその総量)は、カチオン硬化性化合物100重量部に対して、例えば0.1~2.0重量部である。レベリング剤を上記範囲で使用すると、得られる硬化物の耐擦傷性を向上することができる。一方、レベリング剤の使用量が過剰であると、硬化物の表面硬度が低下する傾向がある。
[0105]
 (溶媒)
 本発明の硬化性組成物は、更に、溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられ、本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン、及び必要に応じて使用される添加物を溶解することができ、且つ重合を阻害しないものであれば特に制限されることはない。
[0106]
 溶媒は、スピンコートによって塗布するのに適した流動性を付与することができ、且つ重合の進行を抑制可能な温度において加熱することにより容易に除去できる溶媒を使用することが好ましく、沸点(1気圧における)が170℃以下の溶媒(例えば、トルエン、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、キシレン、メシチレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等)を1種又は2種以上使用することが好ましい。
[0107]
 溶媒は、硬化性組成物に含まれる不揮発分の濃度が例えば30~80重量%程度、好ましくは40~70重量%、特に好ましくは50~60重量%となる範囲で使用することが、良好な塗布性を付与することができる点で好ましい。溶媒の使用量が過剰であると、硬化性組成物の粘度が低くなり適度な膜厚(例えば、0.5~30μm程度)の層を形成することが困難となる傾向がある。一方、溶媒の使用量が少なすぎると、硬化性組成物の粘度が高くなりすぎ、支持体若しくは被着体に均一に塗布することが困難となる場合がある。
[0108]
 本発明の硬化性組成物は、更にまた、任意成分として、無機質充填剤(沈降シリカ、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化チタン、アルミナ、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等)や、これらの無機質充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により表面処理したもの、有機樹脂微粉末(シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の微粉末)、導電性金属粉末(銀、銅等の粉末)、硬化剤(アミン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤等)、硬化助剤、硬化促進剤(イミダゾール類、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシド、ホスフィン類、アミド化合物、ルイス酸錯体化合物、硫黄化合物、ホウ素化合物、縮合性有機金属化合物等)、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤、重金属不活性化剤等)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤等)、難燃助剤、補強材(他の充填剤等)、核剤、カップリング剤、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃改良剤、色相改良剤、透明化剤、レオロジー調整剤(流動性改良剤等)、加工性改良剤、着色剤(染料、顔料等)、帯電防止剤、分散剤、表面改質剤(スリップ剤等)、艶消し剤、消泡剤、抑泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、光増感剤、発泡剤等を1種又は2種以上含んでいてもよい。上記任意成分の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、本発明の硬化性組成物全量の、例えば10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
[0109]
 本発明の硬化性組成物は、上記の各成分を室温で又は必要に応じて加熱しながら撹拌・混合することにより調製することができる。
[0110]
 本発明の硬化性組成物は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。本発明の硬化性組成物の粘度は、スピンコートにて塗布を行う際の膜厚に応じて調整することが好ましく、例えば、0.1~50μmの膜厚で塗布する場合、1~5000mPa・sとすることが好ましい。本発明の硬化性組成物の粘度が上記範囲内である場合、例えば、基材等の表面に均一な膜厚を有する塗膜を形成することが容易となる。なお、本発明の硬化性組成物の粘度は、粘度計(商品名「MCR301」、アントンパール社製)を用いて、振り角5%、周波数0.1~100(1/s)、温度:25℃の条件で測定される。
[0111]
[硬化物]
 本発明の硬化性組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の重合反応を進行させることにより、該硬化性組成物を硬化させることができ、硬化物(「本発明の硬化物」と称する場合がある)を得ることができる。硬化の方法は、周知の方法より適宜選択でき、特に限定されないが、活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。上記活性エネルギー線としては、例えば、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等のいずれを使用することもできる。中でも、取り扱い性に優れる点で、紫外線が好ましい。
[0112]
 本発明の硬化性組成物を活性エネルギー線の照射により硬化させる際の条件(活性エネルギー線の照射条件等)は、照射する活性エネルギー線の種類やエネルギー、硬化物の形状やサイズ等に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、紫外線を照射する場合には、例えば1~1000mJ/cm 2程度とすることが好ましい。なお、活性エネルギー線の照射には、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光、LEDランプ、レーザー等を使用することができる。活性エネルギー線の照射後には、さらに加熱処理(アニール、エージング)を施してさらに硬化反応を進行させることができる。
[0113]
 本発明の硬化物は耐擦傷性に優れる。このため、本発明の硬化性組成物はハードコート剤として好適に使用することができる。
[0114]
 [ハードコートフィルム]
 本発明のハードコートフィルムは、上記硬化性組成物の硬化膜(すなわち、上記硬化性組成物の硬化物から成る膜)を備えることを特徴とする。本発明のハードコートフィルムは、基材の少なくとも一方の面に上記硬化性組成物の硬化膜が積層された構成を有することが好ましい。従って、本発明のハードコートフィルムは基材層と上記硬化性組成物の硬化膜からなるハードコート層とを備えることが好ましい。本発明のハードコートフィルムは、基材層及びハードコート層を、それぞれ1層のみ有するものであってもよいし、2層以上有するものであってもよい。また、本発明のハードコートフィルムは、前記基材層とハードコート層以外の層(例えば、下塗り層、接着剤層、中間層等)も備えていてもよい。
[0115]
 前記基材としては、周知慣用の基材(接着シートに使用される基材)を使用することができ、特に限定されないが、例えば、プラスチック基材、金属基材、セラミックス基材、半導体基材、ガラス基材、紙基材、木基材、表面が塗装表面である基材等が挙げられる。また、上記基材の厚み(2層以上有する場合はその総厚み)は、例えば、1~1000μmの範囲で適宜選択できる。
[0116]
 本発明のハードコートフィルムは前記基材の少なくとも一方の面に、上記硬化性組成物を塗布し、必要に応じて乾燥させ、さらに、活性エネルギー線の照射等により硬化性組成物を硬化させることによって製造することができる。塗布の方法は特に限定されず、周知慣用の手段を利用することができる。また、乾燥の手段や条件も特に限定されず、溶媒等の揮発分をできるだけ除去できる条件を設定することができ、周知慣用の手段を用いることができる。
[0117]
 本発明のハードコートフィルムにおける硬化膜(すなわち、ハードコート層)の厚みは、例えば1~100μm程度であり、下限は、好ましくは3μm、特に好ましくは5μm、最も好ましくは8μm、とりわけ好ましくは10μmである。また、上限は、好ましくは70μm、特に好ましくは50μm、最も好ましくは30μmである。
[0118]
 本発明のハードコートフィルム全体の厚みは、例えば10~400μm程度であり、下限は、好ましくは30μm、特に好ましくは50μm、最も好ましくは100μm、とりわけ好ましくは150μmである。また、上限は、好ましくは300μm、特に好ましくは250μm、とりわけ好ましくは200μmである。
[0119]
 本発明のハードコートフィルムは上記硬化性組成物の硬化膜をハードコート層として備えるため耐擦傷性に優れ、スチールウール耐久性試験(1000回)によるヘーズの変化度(ΔHz)は例えば0.1%以下、特に好ましくは0.05%以下、スチールウール耐久性試験(2000回)によるヘーズの変化度(ΔHz)は例えば0.5%以下である。
[0120]
 また、本発明のハードコートフィルムのハードコート層は上記硬化性組成物の硬化膜であるため透明性に優れ、ハードコート層積層によるヘーズの変化度(ΔHz)は例えば1.0%以下、好ましくは0.7%以下、特に好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.3%以下である。
[0121]
 本発明のハードコートフィルムは上記特性を兼ね備えるため、例えば、液晶テレビ、液晶モニター、ノートパソコン、モバイルディスプレイ、タブレットPC、スマートフォン等の各種ディスプレイやタッチパネルの傷付き防止用途に好適に使用することができる。
実施例
[0122]
 以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、生成物の分子量の測定は、Alliance HPLCシステム 2695(Waters製)、Refractive Index Detector 2414(Waters製)、カラム:Tskgel GMH HR-M×2(東ソー(株)製)、ガードカラム:Tskgel guard column H HRL(東ソー(株)製)、カラムオーブン:COLUMN HEATER U-620(Sugai製)、溶媒:THF、測定条件:40℃、分子量:標準ポリスチレン換算により行った。また、生成物におけるT2体とT3体のモル比[T3体/T2体]の測定は、JEOL ECA500(500MHz)による 29Si-NMRスペクトル測定により行った。
[0123]
 調製例1[エポキシ変性シルセスキオキサンの製造]
 温度計、撹拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付けた300mLのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下で2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン161.5ミリモル(39.79g)、フェニルトリメトキシシラン9ミリモル(1.69g)、及びアセトン165.9gを仕込み、50℃に昇温した。このようにして得られた混合物に、5%炭酸カリウム水溶液4.70g(炭酸カリウムとして1.7ミリモル)を5分かけて滴下した後、水1700ミリモル(30.60g)を20分かけて滴下した。なお、滴下の間、著しい温度上昇は起こらなかった。その後、50℃のまま、重縮合反応を窒素気流下で4時間行った。
 重縮合反応後の反応溶液中の生成物をGPC測定に付したところ、数平均分子量は1911であり、分子量分散度は1.47であった。上記生成物の 29Si-NMRスペクトルから算出されるT2体とT3体の割合[T3体/T2体]は10.3であった。
 その後、反応溶液を冷却し、下層液が中性になるまで水洗を行い、上層液を分取した後、1mmHg、40℃の条件で上層液から溶媒を留去し、無色透明の液状の生成物(エポキシ変性シルセスキオキサン;ESQ、エポキシ当量:198g/eq)を得た。上記生成物のT d5は370℃であった。
[0124]
 実施例1[フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの製造]
 温度計、撹拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付け100mLのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下で2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン20.0ミリモル(4.93g)、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン20ミリモル(4.37g)、アセトン37.32g、及び水400ミリモル(7.2g)を仕込み、48℃に昇温した。このようにして得られた混合物に、5%炭酸カリウム水溶液1.11g(炭酸カリウムとして0.4ミリモル)を5分かけて滴下した。なお、滴下の間、著しい温度上昇は起こらなかった。その後、48℃のまま、重縮合反応を窒素気流下で5時間行った。
 重縮合反応後の反応溶液中の生成物をGPC測定に付したところ、数平均分子量は約1400であり、分子量分散度は1.27であった。上記生成物の 29Si-NMRスペクトル(図1)から算出されるT2体とT3体の割合[T3体/T2体]は23.5であった。また、上記生成物の 1H-NMR(CDCl 3)測定結果を図2に示す。
 その後、反応溶液を冷却し、MIBKを加え、下層液が中性になるまで水洗を行い、上層液を分取した後、1mmHg、50℃の条件で上層液から溶媒を留去し、MIBKを約25重量%含有する無色透明の液状の生成物(フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン;FESQ(1)、エポキシ当量:222g/eq)を約10g得た。
[0125]
 実施例2[フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの製造]
 温度計、撹拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付け100mLのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下で2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン20.0ミリモル(4.93g)、1H、1H、2H、2H-ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン20ミリモル(7.37g)、アセトン49.2g、及び水400ミリモル(7.2g)を仕込み、48℃に昇温した。このようにして得られた混合物に、5%炭酸カリウム水溶液1.10g(炭酸カリウムとして0.4ミリモル)を5分かけて滴下した。なお、滴下の間、著しい温度上昇は起こらなかった。その後、48℃のまま、重縮合反応を窒素気流下で5時間行った。重縮合反応後の反応溶液中の生成物を分析したところ、数平均分子量は1550であり、分子量分散度は1.30であった。上記生成物の 29Si-NMRスペクトル(図3)から算出されるT2体とT3体の割合[T3体/T2体]は19.4であった。また、上記生成物の 1H-NMR(CDCl 3)測定結果を図4に示す。
 その後、反応溶液を冷却し、MIBKを加え、下層液が中性になるまで水洗を行い、上層液を分取した後、1mmHg、50℃の条件で上層液から溶媒を留去し、MIBKを約25重量%含有する無色透明の液状の生成物(フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン;FESQ(2)、エポキシ当量:294g/eq)を12g得た。
[0126]
 実施例3
 6mLの茶褐色サンプル瓶に、実施例1で得られた生成物を0.15g(FESQ(1)0.11g+MIBK0.04g)、調製例1で得られた生成物を2.85g(ESQ2.18g+MIBK0.67g)、WPI-124を45.8mg(50%溶液、光カチオン重合開始剤を22.9mg含む)、S-243を0.0114g、及びMIBKを0.502g入れてバイブレーターで撹拌混合し、硬化性組成物(ハードコート剤、25℃における粘度:97.5mPa・s)を作製した。
 得られたハードコート剤を、PETフィルム(厚み188μm、商品名「A4300」、東洋紡(株)製)上に、硬化後のハードコート層の厚さが10μmとなるようにワイヤーバーを使用して流延塗布した後、120℃のオーブン内で10分間放置(プレベイク)し、次いで紫外線を照射した(照射条件(照射量):430mJ/cm 2、照射強度:120W/cm 2)。最後に80℃で2時間熱処理(エージング)することによって、上記ハードコート剤の塗工膜を硬化させ、ハードコート層を有するハードコートフィルム(厚み198μm)を作製した。
[0127]
 実施例4~5、比較例1
 下記表1に記載の通りに処方(単位:g)を変更した以外は実施例3と同様にして、硬化性組成物(ハードコート剤)を作製し、ハードコートフィルムを作製した。
[0128]
 実施例及び比較例で得られたハードコートフィルムについて、下記方法で耐擦傷性を評価した。
 ハードコートフィルムのハードコート層表面を、スチールウール耐久性試験機を用い、直径1.0cmのスチールウール#0000で2.0kg/cm 2の荷重において1000、2000往復(速度10cm/s)摩擦した。試験前後のハードコートフィルムのヘイズをヘーズメータ(日本電色工業(株)製、NDH-300A)を用いて測定し、ヘーズの変化度(ΔHz)から耐擦傷性を評価した。結果を表1、図5、6に示す。
[0129]
[表1]


[0130]
FESQ(1):実施例1で得られたフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン
FESQ(2):実施例2で得られたフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン
ESQ:調製例1で得られたエポキシ変性シルセスキオキサン
WPI-124:光カチオン重合開始剤、ビス[4-n-アルキル(C 10-13)フェニル]ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、分子量1296.79、和光純薬工業(株)製
S-243:フッ素系レベリング剤、商品名「サーフロンS-243」、AGCセイミケミカル(株)製
MIBK:メチルイソブチルケトン、溶媒
[0131]
 表1より、本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを含む硬化性組成物によれば、得られる硬化物の透明性を維持しつつ、優れた耐擦傷性を付与することができることがわかる。
[0132]
 以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記しておく。
[1]下記式(T-1)
 [R 1SiO 3/2]   (T-1)
[式中、R 1は、エポキシ基を含有する基を示す]
で表されるシロキサン構成単位(T-1)と、
 下記式(T-2)
 [R 2SiO 3/2]   (T-2)
[式中、R 2は、炭素数2~16のアルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子で置換された基を示す]
で表されるシロキサン構成単位(T-2)とを有するフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[2]前記シロキサン構成単位(T-1)とシロキサン構成単位(T-2)はT単位(1個のケイ素原子に3個の酸素原子が結合する単位)であり、式(t3):
[化9]


で表されるT3体である、[1]に記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[3]フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを構成する全てのシロキサン構成単位(100モル%)における、シロキサン構成単位(T-1)とシロキサン構成単位(T-2)の合計の占める割合が80モル%以上であり、且つシロキサン構成単位(T-1)とシロキサン構成単位(T-2)のモル比(前者/後者)が、90/10~10/90である、[1]又は[2]に記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[4]フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを構成する全てのシロキサン構成単位(100モル%)における、シロキサン構成単位(T-1)とシロキサン構成単位(T-2)の合計の占める割合は、80モル%以上、85モル%以上、または90モル%以上であり、上限は100モル%である、[1]~[3]の何れか1つに記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[5]ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が500~4000である、[1]~[4]の何れか1つに記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[6]ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、500~4000、1000~2500、1200~1800、及び1300~1700からなる群より選択される、[1]~[5]の何れか1つに記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[7]前記R 1が、下記式(1a)、(1b)、(1c)、及び(1d)で表される基からなる群より選択される1種以上の基である、[1]~[6]の何れか1つに記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[化10]


[式中、R 1a、R 1b、R 1c、及びR 1dは、同一又は異なって、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す]
[8]R 1a、R 1b、R 1c、及びR 1dは、同一又は異なって、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、前記直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、デカメチレン基を含む炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数1~4の直鎖状のアルキレン基、炭素数3又は4の分岐鎖状のアルキレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、エチレン基、及びトリメチレン基からなる群より選択される、[1]~[7]の何れか1つに記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[9]式(T-1)中のR 1が、式(1a)で表される基であって、R 1aがエチレン基又はトリメチレン基である基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基である、[1]~[8]の何れか1つに記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[10]式(T-2)中のR 2は、炭素数2~16、3~10、3~6のアルキル基、直鎖状アルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子で置換された基、フッ化アルキル基、式(r2):
   -(CH 2n-(CF 2m-CF 3  (r2)
で表される基であり、上記式中、nは1以上、1~8、1~5、1~3である整数であり、mは0以上、0~8、0~5、0~4の整数であり、ここで、下記式の左端が式(T-2)中のケイ素原子に結合する、[1]~[9]の何れか1つに記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[11]T単位として、シロキサン構成単位(T-1)とシロキサン構成単位(T-2)とを有し、各シロキサン構成単位は1種を単独で有するか、又は2種以上を組み合わせて有するものである、[1]~[10]の何れか1つに記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[12][1]~[11]の何れか1項に記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを含む硬化性組成物。
[13][1]~[11]の何れか1項に記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有する、[12]に記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを含む硬化性組成物。
[14]フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン以外の硬化性化合物、光カチオン重合開始剤を含む重合開始剤、表面調整剤、または表面改質剤をさらに含有する、[12]又は[13]に記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを含む硬化性組成物。
[15]硬化性組成物に含まれる硬化性化合物全量(100重量%)におけるフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンの含有量(配合量)が、0.1重量%以上、0.1~10重量%、0.5~10重量%、0.5~5重量%、又は0.5~3重量%である、[12]~[14]の何れか1つに記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを含む硬化性組成物。
[16]ハードコート剤である、[12]~[15]の何れか1つに記載の硬化性組成物。
[17][16]に記載の硬化性組成物の硬化膜を備えたハードコートフィルム。

産業上の利用可能性

[0133]
 本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、硬化性組成物に添加することで、得られる硬化物の耐擦傷性を向上することができる。また、本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、硬化性組成物に添加しても、得られる硬化物の透明性を損なうことがない。従って、本発明のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンは、耐擦傷性付与材等として好適に使用することができる。

請求の範囲

[請求項1]
 下記式(T-1)
 [R 1SiO 3/2]   (T-1)
[式中、R 1は、エポキシ基を含有する基を示す]
で表されるシロキサン構成単位(T-1)と、
 下記式(T-2)
 [R 2SiO 3/2]   (T-2)
[式中、R 2は、炭素数2~16のアルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子で置換された基を示す]
で表されるシロキサン構成単位(T-2)とを有するフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[請求項2]
 フッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを構成する全てのシロキサン構成単位(100モル%)における、シロキサン構成単位(T-1)とシロキサン構成単位(T-2)の合計の占める割合が80モル%以上であり、且つシロキサン構成単位(T-1)とシロキサン構成単位(T-2)のモル比(前者/後者)が、90/10~10/90である、請求項1に記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[請求項3]
 ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が500~4000である、請求項1又は2に記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[請求項4]
 前記R 1が、下記式(1a)、(1b)、(1c)、及び(1d)で表される基からなる群より選択される1種以上の基である、請求項1~3の何れか1項に記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサン。
[化1]


[式中、R 1a、R 1b、R 1c、及びR 1dは、同一又は異なって、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す]
[請求項5]
 請求項1~4の何れか1項に記載のフッ素含有エポキシ変性シルセスキオキサンを含む硬化性組成物。
[請求項6]
 ハードコート剤である、請求項5に記載の硬化性組成物。
[請求項7]
 請求項6に記載の硬化性組成物の硬化膜を備えたハードコートフィルム。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]