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1. (WO2018193722) 皮脂腺の観察方法
Document

明 細 書

発明の名称 皮脂腺の観察方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005  

課題を解決するための手段

0006  

発明の効果

0007  

図面の簡単な説明

0008  

発明を実施するための形態

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049  

実施例

0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099  

符号の説明

0100  

請求の範囲

1   2   3  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

明 細 書

発明の名称 : 皮脂腺の観察方法

技術分野

[0001]
 本発明は、皮脂腺の観察方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、化粧料などの外用剤の開発などに有用な皮脂腺の観察方法および被験物質の評価方法に関する。

背景技術

[0002]
 皮脂は、皮脂腺から皮膚の表面に分泌され、体外からの刺激から皮膚を保護する作用を有する。しかし、皮膚に存在する皮脂が過少である場合、皮膚を十分に保護することができないことがある。一方、皮膚に存在する皮脂が過剰である場合、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、皮脂腺増殖症などが引き起こされることがある。したがって、皮脂の産生を適度に調節する化粧料などの外用剤が望まれている。
[0003]
 一方、皮脂の産生に与える物質の影響は、皮脂腺細胞を用いる培養試験によって解析されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、皮脂腺細胞を用いる培養試験には、生体における皮脂腺からの皮脂の産生を十分に再現することができないことから、生体における皮脂腺の動態を的確に観察し難いという欠点がある。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2013-32331号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、生体における皮脂腺の動態を的確に観察することができる皮脂腺の観察方法および被験物質が皮脂の産生を調節する物質であるかどうかを的確に評価することができる被験物質の評価方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0006]
 本発明の要旨は、
(1)皮脂腺を観察する方法であって、
(I)皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去された皮脂腺構造体を培地中に浮遊させた状態で培養するステップ、および
(II)ステップ(I)で得られた培養後の皮脂腺構造体を観察するステップ
を含む皮脂腺の観察方法、
(2)前記ステップ(I)を行なう前に、単離された皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部を除去して前記皮脂腺構造体を得るステップをさらに含む前記(1)に記載の皮脂腺の観察方法、ならびに
(3)被験物質が有する皮脂産生調節作用を評価する方法であって、
(A)皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去された皮脂腺構造体を被験物質の非存在下で培地中に浮遊させた状態で培養するステップ、
(B)皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去された皮脂腺構造体を被験物質の存在下で培地中に浮遊させた状態で培養するステップ、および
(C)前記ステップ(A)で得られた培養後の皮脂腺構造体(A)と前記ステップ(B)で得られた培養後の皮脂腺構造体(B)とを観察し、前記皮脂腺構造体(A)における皮脂腺の動態と前記皮脂腺構造体(B)における皮脂腺の動態との違いに基づき、前記被験物質が有する皮脂産生調節作用を評価するステップ
を含む被験物質の評価方法
に関する。

発明の効果

[0007]
 本発明の皮脂腺の観察方法によれば、生体における皮脂腺の動態を的確に観察することができるという優れた効果が奏される。また、本発明の被験物質の評価方法によれば、被験物質が皮脂の産生を調節する物質であるかどうかを的確に評価することができるという優れた効果が奏される。

図面の簡単な説明

[0008]
[図1] 皮脂腺構造体の皮脂腺を含む要部の構造を示す概略説明図である。
[図2] 試験例1(1)において、調製例7で得られた観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの外観を観察した結果を示す図面代用写真である。
[図3] 試験例1(1)において、調製例7で得られた観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの外観を観察した結果を示す図面代用写真である。
[図4] 試験例1(2)において、調製例7で得られた観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの内部を観察した結果を示す図面代用写真である。
[図5] 試験例1(2)において、調製例7で得られた観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの内部における皮脂の油滴を観察した結果を示す図面代用写真である。
[図6] 実施例1(5)において、実験番号1~6それぞれの観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの皮脂腺の最外層に含まれる細胞内の油滴の状態を分類して観察した結果を示す図面代用写真である。
[図7] (A)は実施例2(3)において、実験番号7の観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの内部を観察した結果を示す図面代用写真、(B)は(A)における枠囲み部分を拡大して観察した結果を示す図面代用写真である。
[図8] (A)は実施例2(3)において、実験番号8の観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの内部を観察した結果を示す図面代用写真、(B)は(A)における枠囲み部分を拡大して観察した結果を示す図面代用写真である。
[図9] (A)は実施例2(3)において、実験番号9の観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの内部を観察した結果を示す図面代用写真、(B)は(A)における枠囲み部分を拡大して観察した結果を示す図面代用者写真である。
[図10] 実施例2(3)において、試料の種類と皮脂産生進行度との関係を調べた結果を示すグラフである。
[図11] 実施例4(4)において、試料の種類と皮脂生成度との関係を調べた結果を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0009]
 本発明は、1つの側面では、皮脂腺を観察する方法であって、
(I)皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去された皮脂腺構造体を培地中に浮遊させた状態で培養するステップ、および
(II)ステップ(I)で得られた培養後の皮脂腺構造体を観察するステップ
を含む皮脂腺の観察方法に関する。
[0010]
 本発明の皮脂腺の観察方法によれば、前記皮脂腺構造体を培地中に浮遊させた状態で培養するという操作が採られているので、前記皮脂腺構造体が真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去されていても、当該皮脂腺構造体において、生体における皮脂腺からの皮脂の産生などに代表される生体における皮脂腺の動態が観察しやすい状態で、的確に再現される。したがって、本発明の皮脂腺の観察方法によれば、生体内により近い環境下で皮脂腺の動態を観察することができる。
[0011]
 前記皮脂腺構造体は、皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去された構造体である。具体的には、前記皮脂腺構造体は、図1に示されるように、皮脂腺1と、毛2と、毛2を取り囲む毛包3と、表皮4とを含有する。皮脂腺1は、皮脂腺1の最外層に局在する未分化の皮脂腺基底細胞11と、未分化の皮脂腺基底細胞11の局在位置よりも内側に局在し、脂肪滴を生成する細胞(以下、「成熟皮脂腺細胞」ともいう)12と、皮脂腺1の中心部に局在し、成熟皮脂腺細胞12が死滅して崩壊した細胞残さ13とを含有している。皮脂腺1で生成された皮脂Sは、毛包3を介して皮膚の外に放出される。前記皮脂腺構造体における皮脂腺1と毛2と毛包3と表皮4とから構成される部分は、皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去されている点を除き、生体中の皮膚組織における皮脂腺と毛と毛包と表皮とから構成される部分と同じ構造を有する。
[0012]
 なお、本明細書において、「皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの一部が除去された」とは、皮膚組織から真皮および皮下組織が除去され、皮脂腺を観察することができる程度に皮脂腺が露出していることを意味する。
[0013]
 前記ステップ(I)では、前記皮脂腺構造体を培地中に浮遊させた状態で培養する。前記皮脂腺構造体は、例えば、単離した皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部を除去することなどによって製造することができる。したがって、本発明の皮脂腺の観察方法は、前記ステップ(I)を行なう前に、単離された皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部を除去して前記皮脂腺構造体を得るステップをさらに含むことができる。
[0014]
 前記皮脂腺構造体の製造方法としては、例えば、
(a1)単離された皮膚組織から皮下組織の全部または一部を切除するステップ、および
(a2)前記ステップ(a1)で得られた組織から膠原繊維などの繊維を除去して皮脂腺を露出させて前記皮脂腺構造体を得るステップ
を含む方法(以下、「製法A」ともいう);
(b1)単離された皮膚組織から皮下組織の全部または一部を切除するステップ、
(b2)前記ステップ(b1)で得られた組織をディスパーゼ、コラゲナーゼ、プロナーゼなどの表皮付属器官を真皮から解離させるための酵素と接触させるステップ、および
(b3)前記ステップ(b2)で得られた組織から真皮を分離するステップ
を含む方法(以下、「製法B」ともいう)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの皮脂腺構造体の製法のなかでは、皮脂腺構造体を容易に製造することができ、しかも生体における皮脂腺の動態を的確に観察することができることから、製法Aおよび製法Bが好ましく、製法Aがより好ましい。
[0015]
 前記単離された皮膚組織としては、例えば、外科手術の際に生じた余剰皮膚などから取得され、生きている状態の皮膚組織などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、本明細書において、「生きている状態の皮膚組織」とは、生体内における本来の生物学的活性および本来の動きと同様の生物学的活性および動きを示す状態の皮膚組織をいう。
[0016]
 前記皮膚組織の供給源としては、例えば、ヒトなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。本発明の皮脂腺の観察方法をヒトにおける皮脂の産生時の皮脂腺の観察などに用いる場合、前記皮膚組織の供給源は、ヒトであることが好ましい。従来、ヒトの皮脂腺の動態を的確に観察することが困難であったことから、本発明の皮脂腺の観察方法は、ヒトの皮脂腺の観察に好適である。
[0017]
 皮脂腺の動態としては、例えば、皮脂の産生の際の少なくとも2つの時点における皮脂腺を構成する細胞の形状を対比したときの細胞の形状の変化、皮脂の産生の際の少なくとも2つの時点における皮脂腺を構成する細胞の分化状態を対比したときの細胞の分化状態の変化、皮脂の産生の際の少なくとも2つの時点における分化した細胞の形状を対比したときの分化した細胞の形状の変化、皮脂の産生の際の少なくとも2つの時点における分化した細胞の局在部位の位置を対比したときの分化した細胞の局在部位の位置の変化などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
[0018]
 皮脂腺構造体の培養は、皮脂腺構造体を培地中に浮遊させた状態で行なわれる。「皮脂腺構造体を培地中に浮遊させた状態」は、前記皮脂腺構造体の培養に用いられる培養容器の壁面に当該皮脂腺構造体が接触していない状態であればよく、特に限定されるものではない。したがって、「皮脂腺構造体を培地中に浮遊させた状態」は、前記皮脂腺構造体の培養に用いられる培養容器の壁面に当該皮脂腺構造体が接触していない状態であれば、前記皮脂腺構造体の全体が培地中に浸漬している状態であってもよく、前記皮脂腺構造体の一部が培地外に露出し、その残部が培地中に浸漬している状態であってもよい。
[0019]
 前記培地は、皮脂腺構造体に含まれる未分化の皮脂腺基底細胞を成熟皮脂腺細胞に分化させるのに適した分化促進成分および細胞を増殖させる増殖成分を含む培地であればよく、特に限定されるものではない。前記培地は、慣用の基本培地に、前記分化促進成分および増殖成分を補った培地であってもよく、市販されている培地であってもよい。前記分化促進成分としては、例えば、ウシ胎児血清、脂肪酸、ペプチド、ホルモンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの分化促進成分は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。前記培地における前記分化促進成分の含有率は、前記培地の種類、前記分化促進成分の種類などによって異なるので一概に決定されるものではないことから、前記培地の種類、前記分化促進成分の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。前記増殖成分としては、例えば、アミノ酸、ビタミン、無機塩、糖類、細胞増殖促進因子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記培地における前記増殖成分の含有率は、前記培地の種類、前記増殖成分の種類などによって異なるので一概に決定されるものではないことから、前記培地の種類、前記増殖成分の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。これらの増殖成分は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。前記基本培地としては、例えば、ダルベッコ改変培地とF-12培地との混合培地などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
[0020]
 前記皮脂腺構造体の培養を行なう際の培養条件は、前記皮脂腺構造体の製造に用いられる皮膚組織の供給源の種類、観察対象の皮脂腺の動態の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、前記皮脂腺構造体の製造に用いられる皮膚組織の供給源の種類、観察対象の皮脂腺の動態の種類などに応じて決定することが望ましい。前記培養条件は、例えば、培養温度、培養時間、培地のpH、培養雰囲気における二酸化炭素濃度などを含む。
[0021]
 前記皮膚組織の供給源がヒトである場合、培養温度は、生体における皮脂腺の状態を的確に再現する観点から、通常、好ましくは35℃~38℃、より好ましくは36.5℃~37.5℃である。また、前記皮膚組織の供給源がヒトである場合、培養時間は、培地中において、前記皮脂腺構造体における生理機能を良好な状態で維持する観点から、通常、好ましくは6~168時間、より好ましくは24~48時間である。さらに、前記皮膚組織の供給源がヒトである場合、培地のpHは、生体における皮脂腺の状態を的確に再現する観点から、通常、好ましくは6.8~7.6、より好ましくは7.0~7.4である。培養雰囲気における二酸化炭素濃度は、生体における皮脂腺の状態を的確に再現する観点から、通常、好ましくは4~10体積%、より好ましくは5~7体積%である。
[0022]
 つぎに、前記ステップ(II)では、培養後の皮脂腺構造体を観察する。培養後の皮脂腺構造体の観察は、例えば、培養後の皮脂腺構造体を染色試薬によって染色された皮脂腺構造体を観察試料として用いることなどによって行なうことができる。
[0023]
 前記皮脂腺構造体の染色は、例えば、前記皮脂腺構造体と前記染色試薬とを接触させることなどによって行なうことができる。前記染色に用いられる前記培養後の皮脂腺構造体は、固定液によって固定された固定試料であってもよい。前記固定試料は、前記皮脂腺構造体に含まれる各細胞の細胞膜が前記染色試薬を透過させるのに十分な透過性を有する状態にされた試料であればよい。皮脂腺構造体の固定は、例えば、皮脂腺構造体が入っている培養容器中に、固定液を添加して、皮脂腺構造体と固定液とを接触させることなどによって行なわれる。
[0024]
 前記固定液としては、例えば、アセトン、メタノール、アセトンとメタノールとの混合溶液、ホルムアルデヒド水溶液、ホルムアルデヒドのリン酸緩衝液溶液、パラホルムアルデヒド水溶液、パラホルムアルデヒドのリン酸緩衝液溶液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記固定試料は、染色に先立ち、必要に応じて、適切な洗浄液で洗浄してもよく、洗浄しなくてもよい。前記洗浄液としては、例えば、リン酸緩衝化生理的食塩水、トリス緩衝化生理的食塩水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
[0025]
 前記染色試薬としては、例えば、マーカーに結合する結合物質と検出可能な物質との複合体を含む試薬、前記結合物質を含有し、前記検出可能な物質を含まない試薬などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、本明細書において、「マーカー」とは、皮脂腺構造体に含まれる組織、細胞などの存在の指標、細胞の分化度などの指標となる物質をいう。
[0026]
 前記結合物質は、本発明の皮脂腺の観察方法の用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、発明の皮脂腺の観察方法の用途などに応じて適宜決定することが好ましい。前記結合物質としては、例えば、前記マーカーに結合する抗体(以下、単に、「抗体」という)またはその断片(以下、単に、「抗体断片」という)、前記マーカーに結合する化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよい。前記抗体のなかでは、前記マーカーに対する特異性が高いことから、モノクローナル抗体が好ましい。前記抗体断片としては、例えば、Fabフラグメント、F(ab’) 2フラグメント、単鎖抗体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記ポリクローナル抗体、前記モノクローナル抗体および前記抗体断片は、前記マーカーを抗原として用い、慣用の手法によって製造することができる。また、前記ポリクローナル抗体、前記モノクローナル抗体および前記抗体断片として、商業的に容易に入手可能なポリクローナル抗体、商業的に容易に入手可能なモノクローナル抗体および商業的に容易に入手可能な抗体断片を用いることができる。前記結合物質は、検出可能なシグナルを生じる物質であってもよく、当該シグナルを生じない物質であってもよい。
[0027]
 前記検出可能な物質としては、例えば、蛍光物質、酵素などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記蛍光物質としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、Alexa Fluorシリーズの蛍光物質〔例えば、インビトロジェン製、商品名:Alexa Fluor 647など〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、前記酵素としては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスフォターゼなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの検出可能な物質のなかでは、検出操作が容易であり、高い精度で検出対象物を検出することができることから、蛍光物質が好ましく、Alexa Fluorシリーズの蛍光物質〔例えば、インビトロジェン製、商品名:Alexa Fluor 647など〕がより好ましい。
[0028]
 なお、前記結合物質が抗体またはその抗体断片である場合、前記染色試薬は、必要に応じ、前記抗体またはその抗体断片に結合する標識結合物質をさらに含んでいてもよい。前記標識結合物質としては、例えば、前記結合物質に結合する第2の結合物質と標識物質との複合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記第2の結合物質としては、例えば、前記抗体を製造する際に免疫した動物が有する免疫グロブリンに対する抗体、当該免疫グロブリンの断片に対する抗体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記標識物質としては、例えば、前記検出可能な物質などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
[0029]
 前記染色試薬の種類は、発明の皮脂腺の観察方法の用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、発明の皮脂腺の観察方法の用途などに応じて適宜決定することが好ましい。前記染色試薬としては、例えば、前記未分化の皮脂腺基底細胞に対する染色試薬(以下、「未分化細胞染色試薬」ともいう)、皮脂に対する染色試薬(以下、「皮脂染色試薬」ともいう)、細胞核に対する染色試薬(以下、「核染色試薬」ともいう)、分化細胞染色試薬などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
[0030]
 前記未分化細胞染色試薬は、未分化の皮脂腺基底細胞に特異的なマーカー(以下、「未分化マーカー」ともいう)に結合する物質(以下、「未分化細胞結合物質」ともいう)を含む。前記未分化細胞染色試薬は、未分化細胞結合物質と検出可能な物質との複合体を含む試薬であってもよく、前記未分化細胞結合物質自体が検出可能なシグナルを生じる物質である場合には、前記未分化細胞結合物質を含有し、前記検出可能な物質を含まない試薬であってもよい。前記未分化細胞マーカーとしては、例えば、ケラチン-5、ケラチン―7、ケラチン―14、Bリンパ球誘導成熟タンパク質1(Blimp1)、ロイシン-リッチリピート・イムノグロブリン様ドメインタンパク質1(Lrig1)などが挙げられるが、本発明は、特に限定されるものではない。
[0031]
 前記核染色試薬は、核を構成する物質に結合する結合物質(以下、「核結合物質」ともいう)を含む。前記核染色試薬は、核結合物質と検出可能な物質との複合体を含む試薬であってもよく、前記核結合物質自体が検出可能なシグナルを生じる物質である場合には、前記核結合物質を含有し、前記検出可能な物質を含まない試薬であってもよい。前記核を構成する物質としては、例えば、DNAなどの核酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記核結合物質は、細胞膜を透過する物質であればよい。前記核結合物質としては、例えば、Hoechst 33342などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、Hoechst 33342は、検出可能な蛍光を生じる物質であることから、前記核染色試薬は、前記検出可能な物質を含有しない試薬であってもよい。
[0032]
 前記皮脂染色試薬としては、例えば、皮脂に溶解する脂溶性色素などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記脂溶性色素としては、例えば、ナイルレッド、ナイルブルー、オイルレッドO、ズダンIII、ズダンIV、ズダンブラックBなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、前記脂溶性色素は、皮脂に溶解して皮脂を染色することから、前記脂溶性色素を含む皮脂染色試薬は、前記検出可能な物質を含有しない試薬であってもよい。
[0033]
 前記分化細胞染色試薬としては、例えば、未分化の皮脂腺基底細胞から分化した皮脂腺細胞に特異的なマーカー(以下、「分化マーカー」ともいう)に結合する物質(以下、「分化細胞結合物質」ともいう)を含む。前記分化細胞染色試薬は、分化細胞結合物質と検出可能な物質との複合体を含む試薬であってもよく、前記分化細胞結合物質自体が検出可能なシグナルを生じる物質である場合には、前記分化細胞結合物質を含有し、前記検出可能な物質を含まない試薬であってもよい。前記分化細胞マーカーとしては、例えば、ステアリル-CoA不飽和化酵素1(Scd-1)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)などが挙げられるが、本発明は、特に限定されるものではない。
[0034]
 前記染色試薬中における前記結合物質の含有率は、前記結合物質の種類、発明の皮脂腺の観察方法の用途などによって異なるので一概に決定されるものではないことから、前記結合物質の種類、発明の皮脂腺の観察方法の用途などに応じて適宜決定することが好ましい。
[0035]
 前記未分化細胞染色試薬に含まれる検出可能な物質、前記皮脂染色試薬に含まれる検出可能な物質および前記核染色試薬に含まれる検出可能な物質は、互いに識別可能な物質であることが好ましい。
[0036]
 前記皮脂腺構造体と前記染色試薬との混合比および接触時間は、前記染色試薬の種類などによって異なるので一概に決定されるものではないことから、前記染色試薬の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。
[0037]
 前記皮脂腺構造体と前記染色試薬との接触後、皮脂腺の動態をより的確に観察する観点から、染色された皮脂腺構造体を適切な洗浄液で洗浄することが好ましい。前記洗浄液としては、例えば、リン酸緩衝生理的食塩水、リン酸緩衝液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
[0038]
 なお、前記染色試薬が抗体またはその抗体断片を含む場合、皮脂腺の動態をより的確に観察する観点から、前記染色された皮脂腺構造体に対し、ブロッキング剤を用いてブロッキング処理を施すことが好ましい。前記ブロッキング剤としては、例えば、アルブミンを含有するリン酸緩衝生理的食塩水溶液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
[0039]
 前記染色された皮脂腺構造体を用いて皮脂腺の動態を観察する。皮脂腺の観察は、例えば、蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡などの光学顕微鏡などを用いて行なうことができる。具体的には、皮脂腺の観察は、例えば、染色された皮脂腺構造体をそのまま観察すること、染色された皮脂腺構造体における染色試薬に由来するシグナルを検出することによって行なうことができる。
[0040]
 以上説明したように、本発明の皮脂腺の観察方法によれば、皮脂腺からの皮脂の産生を的確に観察することができることから、皮脂産生調節物質のスクリーニング、皮脂産生調節物質の有効性の評価などに用いられることが期待される。
[0041]
2.被験物質の評価方法
 本発明は、他の側面では、被験物質が有する皮脂産生調節作用を評価する方法であって、
(A)皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去された皮脂腺構造体を被験物質の非存在下で培地中に浮遊させた状態で培養するステップ、
(B)皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去された皮脂腺構造体を被験物質の存在下で培地中に浮遊させた状態で培養するステップ、および
(C)前記ステップ(A)で得られた培養後の皮脂腺構造体(A)と前記ステップ(B)で得られた培養後の皮脂腺構造体(B)とを観察し、前記皮脂腺構造体(A)における皮脂腺の動態と前記皮脂腺構造体(B)における皮脂腺の動態との違いに基づき、前記被験物質が有する皮脂産生調節作用を評価するステップ
を含む被験物質の評価方法に関する。
[0042]
 本発明の被験物質の評価方法は、前記ステップ(A)およびステップ(B)を行ない、前記ステップ(A)で得られた培養後の皮脂腺構造体(A)と前記ステップ(B)で得られた培養後の皮脂腺構造体(B)とを観察するという操作が行なわれるので、前記被験物質が有する皮脂産生調節作用を的確に評価することができる。したがって、本発明の被験物質の評価方法によれば、被験物質が皮脂の産生を調節する物質であるかどうかを的確に評価することができる。前記皮脂産生調節作用には、皮脂産生を増加させる皮脂産生促進作用および皮脂産生を減少させる皮脂産生抑制作用が含まれる。なお、前記ステップ(A)およびステップ(B)を行なう順は、ステップ(A)を行なった後にステップ(B)を行なう順であってもよく、ステップ(B)を行なった後にステップ(A)を行なう順であってもよい。また、ステップ(A)およびステップ(B)を同時に行なってもよい。
[0043]
 まず、前記ステップ(A)では、皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去された皮脂腺構造体を被験物質の非存在下で培地中に浮遊させた状態で培養する。前記ステップ(A)に用いられる皮脂腺構造体および培地は、前述の皮脂腺の観察方法に用いられる皮脂腺構造体および培地と同様である。前記ステップ(A)における前記皮脂腺構造体の培養は、前述の皮脂腺の観察方法における前記皮脂腺構造体の培養の手法と同様の手法で行なうことができる。前記皮脂腺構造体の培養条件は、評価内容、評価対象の被験物質の種類、被験物質と前記皮脂腺構造体の製造に用いられる皮膚組織の供給源の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、評価内容、評価対象の被験物質の種類、前記皮脂腺構造体の製造に用いられる皮膚組織の供給源の種類などに応じて決定することが望ましい。
[0044]
 前記ステップ(B)では、皮膚組織から真皮および皮下組織が除去された皮脂腺構造体を被験物質の存在下で培地中に浮遊させた状態で培養する。前記ステップ(B)に用いられる皮脂腺構造体は、前記ステップ(A)で用いられる皮脂腺構造体と同じ供給源の皮膚組織から得られる同じ種類の皮脂腺構造体であるが、前記ステップ(A)で用いられた皮脂腺構造体とは別の皮脂腺構造体である。前記ステップ(B)で用いられる培地は、前記ステップ(A)で用いられる培地と同じ種類の培地である。前記ステップ(B)において、被験物質の存在下での前記皮脂腺構造体の培養は、例えば、前記ステップ(A)で用いられる培地と同じ種類の培地に被験物質を添加して得られた被験物質含有培地を用いることを除き、前述の皮脂腺の観察方法における前記皮脂腺構造体の培養の手法と同様の手法で行なうことができる。被験物質含有培地における被験物質の濃度は、評価内容、評価対象の被験物質の種類、前記皮脂腺構造体の製造に用いられる皮膚組織の供給源の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、評価内容、評価対象の被験物質の種類、前記皮脂腺構造体の製造に用いられる皮膚組織の供給源の種類などに応じて決定することが望ましい。前記ステップ(B)における皮脂腺構造体の培養条件は、被験物質を用いないことを除き、前記ステップ(A)における皮脂腺構造体の培養条件と同じである。
[0045]
 前記ステップ(C)では、前記ステップ(A)で得られた培養後の皮脂腺構造体(A)と前記ステップ(B)で得られた培養後の皮脂腺構造体(B)とを観察し、前記皮脂腺構造体(A)における皮脂腺の動態と前記皮脂腺構造体(B)における皮脂腺の動態との違いに基づき、前記被験物質が有する皮脂産生調節作用を評価する。前記ステップ(C)における皮脂腺構造体の観察の手法は、前述の皮脂腺の観察方法における皮脂腺構造体の観察の手法と同様である。
[0046]
 前記皮脂腺構造体(A)における皮脂腺の動態と前記皮脂腺構造体(B)における皮脂腺の動態との違いとしては、被験物質の有無による皮脂腺の最外層における皮脂を内包する細胞の数の違い、被験物質の有無による皮脂腺における未分化の皮脂腺基底細胞から成熟皮脂腺細胞への分化の速度の違い、被験物質の有無による皮脂腺の中心部付近に存在する崩壊した成熟皮脂腺細胞の数の違い、被験物質の有無による皮脂腺の中心部付近に存在する皮脂量の違い、被験物質の有無による分化マーカーの発現位置の違い、被験物質の有無による分化マーカーの発現量の違いなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
[0047]
 前記被験物質が皮脂産生促進作用を有することの指標としては、例えば、以下の(1a)~(3a)の指標などが挙げられる。これらの指標は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(1a)前記皮脂腺構造体(A)の皮脂腺の最外層における皮脂を内包する細胞の数に比べて前記皮脂腺構造体(B)の皮脂腺の最外層における皮脂を内包する細胞の数が多いこと、
(2a)前記皮脂腺構造体(A)の皮脂腺における未分化の皮脂腺基底細胞から成熟皮脂腺細胞への分化の速度に比べて前記皮脂腺構造体(B)の皮脂腺における未分化の皮脂腺基底細胞から成熟皮脂腺細胞への分化の速度が大きいこと、および
(3a)前記皮脂腺構造体(A)の皮脂腺の中心部付近に存在する崩壊した成熟皮脂腺細胞の数に比べて前記皮脂腺構造体(B)の皮脂腺の中心部付近に存在する崩壊した成熟皮脂腺細胞の数が多いこと。
[0048]
 また、前記被験物質が皮脂産生抑制作用を有することの指標としては、例えば、以下の(1b)~(3b)の指標などが挙げられる。これらの指標は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(1b)前記皮脂腺構造体(A)の皮脂腺の最外層における皮脂を内包する細胞の数に比べて前記皮脂腺構造体(B)の皮脂腺の最外層における皮脂を内包する細胞の数が少ないこと、
(2b)前記皮脂腺構造体(A)の皮脂腺における未分化の皮脂腺基底細胞から成熟皮脂腺細胞への分化の速度に比べて前記皮脂腺構造体(B)の皮脂腺における未分化の皮脂腺基底細胞から成熟皮脂腺細胞への分化の速度が小さいこと、および
(3b)前記皮脂腺構造体(A)の皮脂腺の中心部付近に存在する崩壊した成熟皮脂腺細胞の数に比べて前記皮脂腺構造体(B)の皮脂腺の中心部付近に存在する崩壊した成熟皮脂腺細胞の数が少ないこと。
[0049]
 以上説明したように、本発明の被験物質の評価方法によれば、前記被験物質が有する皮脂産生調節作用を的確に評価することができることから、皮脂産生調節物質のスクリーニング、皮脂産生調節物質の有効性の評価などに用いられることが期待される。前記皮脂産生調節物質は、例えば、顔、腋、頭皮などの皮膚用の化粧料に配合される皮脂産生抑制剤、皮脂産生促進剤などに用いられることが期待されるものである。
実施例
[0050]
 以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。以下において、各略語の意味は、以下のとおりである。
<略語の説明>
 BSA:ウシ血清アルブミン
 DMEM:ダルベッコ改変培地
 FBS:ウシ胎児血清
 PBS:リン酸緩衝生理食塩水
 PBSTT:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween20)とポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X-100)とを含有するPBS溶液〔組成:0.1体積%Tween20、0.5体積%Triton X-100および残部PBS〕
 PFA:パラホルムアルデヒド
[0051]
調製例1
 DMEMとF-12培地との混合培地〔DMEM/F-12培地(体積比)が1/1〕に、FBSおよび細胞外基質〔コーニング(Corning)社製、商品名:マトリゲル〕をFBSの濃度が10体積%および細胞外基質の濃度が2体積%となるように添加して混合培地を得た。
[0052]
調製例2
 抗K5抗体〔アブカム(abcam)(株)製、商品名:αK5 antibody〕をその濃度が0.33μg/mLとなるように2質量%BSA含有PBSTT溶液に添加して一次抗体含有溶液を得た。なお、K5は、皮脂腺の最外層に存在する未分化の皮脂腺基底細胞のマーカーである。
[0053]
調製例3
 標識抗IgG抗体〔インビトロジェン(Invitrogen)(株)製、商品名:α IgG antibody Alexa fluor 647〕および核染色剤〔インビトロジェン(Invitrogen)(株)製、商品名:hoechst33342〕を標識抗IgG抗体の濃度が2μg/mLおよび核染色剤の濃度が10μg/mLとなるように2質量%BSA含有PBSTT溶液に添加して染色試薬Aを得た。なお、前記標識抗IgG抗体は、調製例2で用いられた抗K5抗体に対する二次抗体である。
[0054]
調製例4
 脂肪染色試薬〔和光純薬(株)製、商品名:ナイルレッド(Nile Red)〕をその濃度が10μg/mLとなるように2質量%BSA含有PBSTT溶液に添加して染色試薬Bを得た。
[0055]
調製例5
 カバーグラス(24mm×55mm)上にスペーサー(直径9mmおよび厚さ0.12mm)を貼り、スペーサー付カバーグラスを得た。
[0056]
調製例6
 実体顕微鏡下に、ハサミを用い、皮膚組織から皮下組織を除去した。つぎに、ハサミおよびピンセットを用い皮下組織除去後の皮膚組織中の真皮から膠原繊維を除去することにより、皮脂腺が露出した皮脂腺構造体(以下、「皮脂腺構造体A」という)を得た。なお、皮脂腺構造体Aは、皮膚組織における皮脂腺と毛と毛包と表皮とを含有しているが、真皮および皮下組織を実質的に含有しておらず、皮脂腺が露出していた。
[0057]
調製例7
 調製例6で得られた皮脂腺構造体Aを4質量%PFA含有PBS溶液中に4℃で30分間浸漬させることにより、皮脂腺構造体Aを固定して固定試料を得た。得られた固定試料を2質量%BSA含有PBSTT溶液中において、4℃で1時間インキュベーションすることにより、洗浄を行なった。洗浄は、3回行なった。
[0058]
 洗浄後の固定試料を、調製例2で得られた一次抗体含有溶液中において、4℃で24時間インキュベーションした。インキュベーション後の固定試料を2質量%BSA含有PBSTT溶液中において、4℃で1時間インキュベーションすることにより、洗浄を行なった。洗浄は、3回行なった。
[0059]
 洗浄後の固定試料を、調製例3で得られた染色試薬A中において、4℃で12時間インキュベーションすることにより、皮脂腺の最外層に存在する皮脂腺基底細胞および核を染色した。染色後の固定試料を2質量%BSA含有PBSTT溶液中において、4℃で1時間インキュベーションすることにより、洗浄を行なった。洗浄は、3回行なった。
[0060]
 洗浄後の固定試料を、調製例4で得られた染色試薬B中において、室温(25℃)で30分間インキュベーションすることにより、皮脂腺構造体Aに含まれる皮脂を染色した。染色後の固定試料を2質量%BSA含有PBSTT溶液中において、4℃で1時間インキュベーションすることにより、洗浄を行なった。洗浄は、3回行なった。
[0061]
 洗浄後の固定試料を20質量%グリセロール含有PBS溶液中における4℃で1時間のインキュベーション、50質量%グリセロール含有PBS溶液中における4℃で1時間のインキュベーションおよび80質量%グリセロール含有PBS溶液中における室温4℃で1時間のインキュベーションに供して固定試料に含まれる水分をグリセロールに置換した。
[0062]
 調製例5で得られたスペーサー付カバーグラスのスペーサーに囲まれた部分に80質量%グリセロール水溶液適量(例えば50μL)を添加した。つぎに、グリセロール置換後の皮脂腺構造体Aを前記スペーサー付カバーグラスのスペーサーに囲まれた部分に皮脂腺側が下向きになるように載置した。その後、前記スペーサー付カバーグラスのスペーサーに囲まれた部分に円形のカバーガラス(直径12mm)をかぶせることにより、観察用試料を得た。
[0063]
試験例1
(1)皮脂腺構造体の外観の観察
 調製例7で得られた観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの外観を共焦点顕微鏡下で観察した。試験例1(1)において、調製例7で得られた観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの外観を観察した結果を図2および図3に示す。図2中のスケールバーの長さは、50μmである。また、図3中のスケールバーの長さは、50μmである。図3中、1は皮脂腺、3は毛包を示す。
[0064]
 図2に示された結果から、皮脂腺構造体Aは、未分化の皮脂腺基底細胞で覆われた滑らかな表面を有する皮脂腺を有していることがわかる。また、図3に示された結果から、皮脂腺構造体Aには、毛包3および毛包3に包まれた毛が除去されずに残存していることがわかる。したがって、皮脂腺構造体Aは、生体における皮脂腺本来の構造を保持していることがわかる。このように、皮脂腺構造体Aは、生体における皮脂腺の構造を保持していることから、皮脂腺構造体Aを用いることにより、生体における皮脂腺の動態を的確に観察することができることがわかる。
[0065]
(2)皮脂腺構造体の内部の観察
 調製例7で得られた観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの内部を共焦点顕微鏡下で観察した。試験例1(2)において、調製例7で得られた観察用試料に含まれる皮脂腺構造体の内部を観察した結果を図4、調製例7で得られた観察用試料に含まれる皮脂腺構造体の内部における皮脂の油滴を観察した結果を図5に示す。図4中のスケールバーの長さは70μm、図5中のスケールバーの長さは、50μmである。図4中、11は未分化の皮脂腺基底細胞、Nは核、Sは皮脂を示す。また、図5中、Aは皮脂腺の最外層に存在する皮脂の油滴、Bは皮脂腺の中間層に存在する皮脂の油滴、Cは皮脂腺の中心付近に存在する皮脂の油滴を示す。
[0066]
 図4に示された結果から、皮脂腺の表面は、未分化の皮脂腺基底細胞で覆われた滑らかな表面であることから、皮脂腺構造体Aは、生体における皮脂腺本来の構造を保持していることがわかる。また、図5に示された結果から、皮脂腺の最外層(図5中、A)から中心付近(図5中、C)に向かうにしたがって細胞内の油滴の大きさが大きくなっていることがわかる。これらの結果から、皮脂腺構造体Aは、培地中に浮遊させた状態で培養した場合、培養時間の経過に伴い、図1に示されるように、未分化の皮脂腺基底細胞11が、皮脂腺1の最外層から皮脂腺1の中心部に向けて移動しながら成熟皮脂腺細胞12に分化すること、および成熟皮脂腺細胞12によって生成された油滴が成熟皮脂腺細胞12が死滅して崩壊した細胞残さ13から毛2を取り囲む毛包3を介して皮脂Sとして皮膚の外に放出されることが推定される。このように、皮脂腺構造体Aは、生体における皮脂腺の構造を保持するとともに、生体における皮脂産生過程を再現することができることがわかる。したがって、皮脂腺構造体Aによれば、生体における皮脂腺の動態を的確に観察することができることがわかる。
[0067]
実施例1
(1)被験試料の調製
 調製例1で得られた混合培地(以下、「被験試料A」ともいう)に、リノール酸をその濃度が1×10 -4Mとなるように添加して被験試料Bを得た。また、調製例1で得られた混合培地に、リノール酸の濃度が1×10 -3Mとなるように添加して被験試料Cを得た。
[0068]
(2)皮脂腺構造体の培養および皮脂腺構造体と被験試料との接触
 被験試料A1mLを24ウェルプレートの各ウェルに添加した。つぎに、調製例6で得られた皮脂腺構造体Aを、前記24ウェルプレートの各ウェル内の被験試料A中に浮かべた状態で、5体積%二酸化炭素下に37℃で24時間培養することにより、皮脂腺構造体Aと被験試料Aとを接触させた(実験番号1)。また、実験番号1において、24時間の培養を行なう代わりに48時間の培養を行なうことを除き、実験番号1と同様の操作を行ない、皮脂腺構造体Aと被験試料Aとを接触させた(実験番号2)。
[0069]
 調製例6で得られた皮脂腺構造体Aを、前記24ウェルプレートの各ウェル内の被験試料B中に浮かべた状態で、5体積%二酸化炭素下に37℃で24時間培養することにより、皮脂腺構造体Aと被験試料Bとを接触させた(実験番号3)。また、実験番号3において、24時間の培養を行なう代わりに48時間の培養を行なうことを除き、実験番号3と同様の操作を行ない、皮脂腺構造体Aと被験試料Bとを接触させた(実験番号4)。
[0070]
 調製例6で得られた皮脂腺構造体Aを、前記24ウェルプレートの各ウェル内の被験試料B中に浮かべた状態で、5体積%二酸化炭素下に37℃で24時間培養することにより、皮脂腺構造体Aと被験試料Cとを接触させた(実験番号5)。また、実験番号5において、24時間の培養を行なう代わりに48時間の培養を行なうことを除き、実験番号5と同様の操作を行ない、皮脂腺構造体Aと被験試料Cとを接触させた(実験番号6)。
[0071]
(3)観察用試料の調製
 調製例7において、調製例6で得られた皮脂腺構造体Aを用いる代わりに実施例1(2)で得られた培養後の皮脂腺構造体A(実験番号1~6)を用いたことを除き、調製例7と同様の操作を行ない、実験番号1~6の観察用試料を得た。
[0072]
(4)皮脂腺構造体の内部の観察
 試験例1(1)において、調製例6で得られた観察用試料を用いる代わりに実施例1(3)で得られた実験番号1~6の観察用試料を用いたことを除き、試験例1(1)と同様の操作を行ない、実験番号1~6それぞれの観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの内部を共焦点顕微鏡下で観察した。
[0073]
(5)皮脂産生過程の観察
 試験例1(1)において、調製例6で得られた観察用試料を用いる代わりに実施例1(3)で得られた実験番号1~6の観察用試料を用いたことを除き、試験例1(1)と同様の操作を行ない、実験番号1~6それぞれの観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの皮脂腺の最外層に含まれる細胞内の油滴の状態を観察した。つぎに、観察された皮脂腺の細胞内の油滴の状態を表1の(A)~(G)に基づいて分類して観察した。なお、分類は、観察された細胞内の油滴の状態に基づき、一見して表1の(A)~(G)に最も近いものを選択することによって行なった。実施例1(5)において、実験番号1~6それぞれの観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの皮脂腺の最外層に含まれる細胞内の油滴の状態を分類して観察した結果を図6に示す。図中、(A)~(G)それぞれのスケールバーの長さは、10μmである。また、図中、(A)から(G)の順に分化が進んだ細胞を含む部分を示す。(A)~(G)それぞれの上段と下段とは、皮脂腺構造体Aの皮脂腺中の同一の部分を示す。さらに、図中、(A)~(G)の下段において、実線は細胞の輪郭、破線は油滴の輪郭を示す。なお、図6(A)~(G)に示される皮脂腺の最外層に含まれる細胞内の油滴の状態は、それぞれ、表1中の(A)~(G)の状態に対応する。
[0074]
[表1]


[0075]
 また、実験番号1~6それぞれの観察用試料の皮脂腺の最外層で見られる細胞内の油滴の状態と、図6に示される皮脂腺の最外層に含まれる細胞内の油滴の状態との対応関係を表2に示す。表2中、「〇(白丸)」は図6に示される所定の状態が観察されること、「-」は図6に示される所定の状態が観察されないことを示す。
[0076]
[表2]


[0077]
 図6に示された結果から、(A)から(F)の順に分化が進むにつれて、細胞内に占める油滴の割合が増えていることがわかる。また、(G)では、皮脂が放出され、細胞が消失していることがわかる。また、表2に示された結果から、皮脂腺構造体Aにおける皮脂産生には、生体における皮脂産生と同様に、被験試料におけるリノール酸濃度が低く、培養時間が短いほど、皮脂産生が進んでいない細胞が多く、被験試料におけるリノール酸濃度が高く、培養時間が長いほど、皮脂産生が進んでいる細胞が多くなる傾向が見られることがわかる。これらの結果から、皮脂腺構造体Aは、生体における皮脂産生過程を再現することができることがわかる。したがって、皮脂腺構造体Aによれば、生体における皮脂腺の動態を的確に観察することができることがわかる。
[0078]
調製例8
 調製例1で得られた混合培地に、リノール酸および被験物質としてのリノール酸受容体アンタゴニスト〔アブカム(株)製、商品名:GSK-3787〕をリノール酸の濃度が1×10 -4Mおよび被験物質の濃度が1μMとなるように添加して被験試料Dを得た。
[0079]
実施例2
(1)皮脂腺構造体の培養および皮脂腺構造体と被験試料との接触
 被験試料A1mLを24ウェルプレートの各ウェルに添加した。つぎに、調製例6で得られた皮脂腺構造体Aを、前記24ウェルプレートの各ウェル内の被験試料A中に浮かべた状態で、5体積%二酸化炭素下に37℃で24時間培養することにより、皮脂腺構造体Aと被験試料Aとを接触させた(実験番号7)。
[0080]
 また、実験番号7において、被験試料Aを用いる代わりに実施例1(1)で得られた被験試料B(実験番号8)または調製例8で得られた被験試料D(実験番号9)を用いたことを除き、実験番号7と同様の操作を行ない、皮脂腺構造体Aと、被験試料B(実験番号8)または被験試料D(実験番号9)とを接触させた。
[0081]
(2)観察用試料の調製
 調製例7において、調製例6で得られた培養後の皮脂腺構造体Aを用いる代わりに実施例2(1)で得られた実験番号7~9の皮脂腺構造体Aを用いたことを除き、調製例7と同様の操作を行ない、実験番号7~9の観察用試料を得た。
[0082]
(3)皮脂腺構造体の内部の観察
 試験例1(1)において、調製例7で得られた観察用試料を用いる代わりに実施例2(2)で得られた実験番号7~9の観察用試料を用いたことを除き、試験例1(1)と同様の操作を行ない、実験番号7~9それぞれの観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの内部を共焦点顕微鏡下で観察した。
[0083]
 実施例2(3)において、実験番号7の観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの内部を観察した結果を図7(A)、図7(A)における枠囲み部分を拡大して観察した結果を図7(B)に示す。図7(A)におけるスケールバーの長さは20μm、図7(B)におけるスケールバーの長さは10μmである。また、図7中、破線で囲まれた部分は皮脂腺の最外層を示す。また、実施例2(3)において、実験番号8の観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの内部を観察した結果を図8(A)、図8(A)における枠囲み部分を拡大して観察した結果を図8(B)に示す。図8(A)におけるスケールバーの長さは40μm、図8(B)におけるスケールバーの長さは10μmである。また、図8中、破線で囲まれた部分は皮脂腺の最外層、矢頭は皮脂の油滴を示す。さらに、実施例2(3)において、実験番号9の観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの内部を観察した結果を図9(A)、図9(A)における枠囲み部分を拡大して観察した結果を図9(B)に示す。図9(A)におけるスケールバーの長さは40μm、図9(B)におけるスケールバーの長さは10μmである。また、図9中、破線で囲まれた部分は皮脂腺の最外層を示す。
[0084]
 さらに、図7~9に示された結果を用い、以下の評価基準に基づいて各図に示された最外層の細胞40個の各細胞の状態を評価した。
<評価基準>
 0点:細胞内に油滴がまったく見られない〔図6(A)参照〕。
 1点:細胞内にわずかに油滴が見られる〔図6(B)参照〕。
 2点:細胞内に油滴のスペースができている〔図6(C)参照〕。
 3点:細胞内の油滴が細胞の核を侵食しはじめている〔図6(D)参照〕。
 4点:細胞内の油滴同士がつながりはじめている〔図6(E)参照〕。
 5点:細胞内のすべてが油滴によって占められている〔図6(F)参照〕。
 6点:細胞が消失している〔図6(G)参照〕。
[0085]
 つぎに、図7~9のそれぞれにおいて、最外層の細胞40個における点数の平均値を求めることにより、皮脂腺構造体Aに含まれる皮脂腺の細胞における皮脂産生進行度を評価した。実施例2(3)において、試料の種類と皮脂産生進行度との関係を調べた結果を図10に示す。図中、レーン1はリノール酸を含まない被験試料Aと接触させた皮脂腺構造体A(実験番号7)における皮脂産生進行度、レーン2はリノール酸を含む被験試料Bと接触させた皮脂腺構造体A(実験番号8)における皮脂産生進行度、レーン3はリノール酸とリノール酸受容体アンタゴニストとを含む被験試料Dと接触させた皮脂腺構造体A(実験番号9)における皮脂産生進行度を示す。
[0086]
 図7および図10に示された結果から、リノール酸を含まない被験試料Aと接触させた皮脂腺構造体A(実験番号7)の最外層には、皮脂の油滴が見られないことがわかる。ところが、図8および図10に示された結果から、リノール酸を含む被験試料Bと接触させた皮脂腺構造体A(実験番号8)の最外層には、皮脂の油滴が見られることがわかる。一方、図9および図10に示された結果から、リノール酸とリノール酸受容体アンタゴニストとを含む被験試料Dと接触させた皮脂腺構造体A(実験番号9)の最外層には、皮脂の油滴が見られないことがわかる。
[0087]
調製例9
 実体顕微鏡下に、ハサミを用い、皮膚組織から皮下組織を除去した。つぎに、皮下組織除去後の皮膚組織を、前記60mm径ディッシュ内のディスパーゼ含有PBS溶液に浮かべた状態で、4℃で16時間インキュベーションした。インキュベーション後の皮膚組織から真皮を除去して表皮と毛と毛包と皮脂腺とを含む構造体を得た。
[0088]
 前記構造体から皮脂腺が付属している毛包の根元の周囲をピンセットの先で傷つけた後、皮脂腺が付属している毛包を引っ張ることにより、皮脂腺と毛包とを含有する皮脂腺構造体(以下、「皮脂腺構造体B」という)を得た。なお、皮脂腺構造体Bは、皮膚組織における皮脂腺と毛と毛包と表皮とを含有しているが、真皮および皮下組織を実質的に含有していなかった。
[0089]
実施例3
(1)皮脂腺構造体の培養
 実施例2(1)において、調製例6で得られた皮脂腺構造体Aを用いる代わりに調製例9で得られた皮脂腺構造体Bを用いたことを除き、実施例2(1)と同様の操作を行ない、皮脂腺構造体と被験試料との接触を行なう。
[0090]
(2)観察用試料の調製
 調製例7において、調製例6で得られた皮脂腺構造体Aを用いる代わりに実施例3(1)で得られた培養後の皮脂腺構造体Bを用いたことを除き、調製例7と同様の操作を行ない、観察用試料を得る。
[0091]
(3)皮脂腺構造体の観察
 試験例1(1)において、調製例7で得られた観察用試料を用いる代わりに実施例3(2)で得られた観察用試料を用いたことを除き、試験例1(1)と同様の操作を行ない、皮脂腺構造体Bの観察を行なう。その結果、皮脂腺構造体Bが有する皮脂腺が小さい場合には、当該皮脂腺の動態を的確に観察することができることがわかる。一方、皮脂腺構造体Bが有する皮脂腺が大きい場合には、調製例6で得られた皮脂腺構造体Aを用いたときと比べ、当該皮脂腺の動態を的確に観察しにくいことがあることがわかる。
[0092]
実施例4
(1)被験試料の調製
 調製例1で得られた混合培地(被験試料A)に、リノール酸および被験物質としてのフィチン酸をリノール酸の濃度が1×10 -4Mおよび被験物質の濃度が100μMとなるように添加して被験試料Eを得た。
[0093]
(2)皮脂腺構造体の培養および皮脂腺構造体と被験試料との接触
 被験試料A1mLを24ウェルプレートの各ウェルに添加した。つぎに、調製例6で得られた皮脂腺構造体Aを、前記24ウェルプレートの各ウェル内の被験試料A中に浮かべた状態で、5体積%二酸化炭素下に37℃で24時間培養することにより、皮脂腺構造体Aと被験試料Aとを接触させた(実験番号10)。
[0094]
 また、実験番号10において、被験試料Aを用いる代わりに実施例1(1)で得られた被験試料B(実験番号11)または実施例4(1)で得られた被験試料E(実験番号12)を用いたことを除き、実験番号10と同様の操作を行ない、皮脂腺構造体Aと、被験試料B(実験番号11)または被験試料E(実験番号12)とを接触させた。
[0095]
(3)観察用試料の調製
 調製例7において、調製例6で得られた培養後の皮脂腺構造体Aを用いる代わりに実施例4(2)で得られた培養後の皮脂腺構造体A(実験番号10~12)を用いたことを除き、調製例7と同様の操作を行ない、実験番号10~12の観察用試料を得た。
[0096]
(4)皮脂腺構造体の観察
 画像解析ソフトウェア〔ビットプレーン(Bitplane)社製、商品名:Imaris〕を用い、実施例4(3)で得られた実験番号10~12それぞれの観察用試料に含まれる皮脂腺構造体Aの外観を共焦点顕微鏡下で観察することにより、皮脂腺構造体Aの3次元画像のデータを得た。つぎに、画像解析ソフトウェア〔ビットプレーン(Bitplane)社製、商品名:Imaris〕を用い、得られた3次元画像のデータから皮脂腺構造体Aの最外層の情報を抽出した。その後、抽出された情報から最外層に存在する細胞の全体積を算出するとともに、最外層に含まれる皮脂滴を計数した。最外層に存在する細胞の全体積および皮脂の油滴数を用い、式(I):
 [皮脂生成度]
=[皮脂の油滴数]/[最外層に存在する細胞の全体積]   (I)
にしたがい、皮脂生成度を求めた。
[0097]
 試料の種類と皮脂生成度との関係を調べた結果を図11に示す。図中、レーン1はリノール酸を含まない被験試料Aと接触させた皮脂腺構造体Aにおける皮脂生成度、レーン2はリノール酸を含む被験試料Bと接触させた皮脂腺構造体Aにおける皮脂生成度、レーン3はリノール酸とフィチン酸とを含む被験試料Eと接触させた皮脂腺構造体Aにおける皮脂産生進行度を示す。
[0098]
 図11に示された結果から、リノール酸を含む被験試料Bと接触させた皮脂腺構造体Aにおける皮脂生成度は、リノール酸を含まない被験試料Aと接触させた皮脂腺構造体Aにおける皮脂生成度と比べて高いことがわかる。したがって、リノール酸は、皮脂産生促進作用を有することがわかる。一方、リノール酸とフィチン酸とを含む被験試料Cと接触させた皮脂腺構造体Aにおける皮脂生成度は、リノール酸を含む被験試料Bと接触させた皮脂腺構造体Aにおける皮脂生成度と比べて低いことがわかる。したがって、フィチン酸は、皮脂産生抑制作用を有することがわかる。これらの結果から、皮脂腺構造体Aによれば、被験物質が有する皮脂産生調節作用を的確に評価することができることがわかる。
[0099]
 以上説明したように、皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去された皮脂腺構造体を用いることにより、皮脂腺の動態を的確に観察することができるとともに、被験物質が皮脂産生調節作用を有する物質であるかどうかを的確に評価することができることがわかる。したがって、本発明の皮脂腺の観察方法および被験物質の評価方法、皮脂産生の調節が必要なヒトに適した化粧料などの外用剤の開発に用いられることが期待されるものである。

符号の説明

[0100]
 1 皮脂腺
 2 毛
 3 毛包
 4 表皮
 11 未分化の皮脂腺基底細胞
 12 成熟皮脂腺細胞
 13 細胞残さ
 S 皮脂
 N 核

請求の範囲

[請求項1]
 皮脂腺を観察する方法であって、
(I)皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去された皮脂腺構造体を培地中に浮遊させた状態で培養するステップ、および
(II)ステップ(I)で得られた培養後の皮脂腺構造体を観察するステップ
を含む皮脂腺の観察方法。
[請求項2]
 前記ステップ(I)を行なう前に、単離された皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部を除去して前記皮脂腺構造体を得るステップをさらに含む請求項1に記載の皮脂腺の観察方法。
[請求項3]
 被験物質が有する皮脂産生調節作用を評価する方法であって、
(A)皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去された皮脂腺構造体を被験物質の非存在下で培地中に浮遊させた状態で培養するステップ、
(B)皮膚組織から真皮および皮下組織それぞれの全部または一部が除去された皮脂腺構造体を被験物質の存在下で培地中に浮遊させた状態で培養するステップ、および
(C)前記ステップ(A)で得られた培養後の皮脂腺構造体(A)と前記ステップ(B)で得られた培養後の皮脂腺構造体(B)とを観察し、前記皮脂腺構造体(A)における皮脂腺の動態と前記皮脂腺構造体(B)における皮脂腺の動態との違いに基づき、前記被験物質が有する皮脂産生調節作用を評価するステップ
を含む被験物質の評価方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]