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1. (WO2018193700) 空気入りタイヤ
Document

明 細 書

発明の名称 空気入りタイヤ

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015  

発明の効果

0016  

図面の簡単な説明

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073  

符号の説明

0074  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9A   9B   9C   9D  

明 細 書

発明の名称 : 空気入りタイヤ

技術分野

[0001]
 本発明は、空気入りタイヤに関する。

背景技術

[0002]
 空気入りタイヤには、操縦安定性等の種々の性能が要求されるため、従来の空気入りタイヤでは、これらの要求を満たすため、構造に様々な工夫が施されている。例えば、特許文献1、2では、カーカスをビードコアに巻き回した際の巻上げ部を、タイヤ径方向外側に延在させてベルトの両端部とオーバーラップして終端させたり、巻上げ端をベルト層の近傍に配置したりすることにより、操縦安定性の確保や耐久性の向上を図っている。また、特許文献3では、カーカスプライの折り返し部の外側に硬質ゴム層と軟質ゴム層とを配置することにより、タイヤ重量を増加させることなくビード部耐久性の向上を図っている。
[0003]
 また、特許文献4では、第1と第2のカーカスプライを備え、第1のカーカスプライにおける外側に折り返された部分の端部をベルトの内側に位置させ、ビードフィラーのタイヤ幅方向外側にサイド補強層を備えることにより、耐久性や操縦安定性の確保を図っている。また、特許文献5では、2枚のカーカスプライが設けられると共に、1枚のカーカスプライは折返し部の外端がベルト層のタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ軸方向内側に位置し、ビード部に、ビードエーペックスに沿ってタイヤ半径方向に延びるコード補強層を設けることにより、負荷率の低い状況で使用される場合であっても高い操縦安定性を発揮することを可能としている。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特許第4437845号公報
特許文献2 : 特開2001-341506号公報
特許文献3 : 特開平10-24712号公報
特許文献4 : 特開2016-43886号公報
特許文献5 : 特開2004-352174号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 ここで、近年では車両の燃費が重要視されており、それに伴い、空気入りタイヤに対しては、軽量化と転がり抵抗の低減が求められている。軽量化を図るためには、空気入りタイヤを構成する部材を減らせばよく、例えば、カーカスを1枚にすることにより軽量化を図ることができる。しかし、カーカスを1枚にした場合は、剛性が低下するため、操縦安定性が低下する虞がある。操縦安定性を極力高めるための手法としては、例えば、トレッド部のベースゴムの硬度を高くすることが挙げられる。しかし、ベースゴムの硬度を高くした場合、転がり抵抗が大きくなる虞があり、空気入りタイヤに求められる性能を確保出来ない虞がある。これらのように、操縦安定性を低下させることなく軽量化と転がり抵抗の低減を図ることは、大変困難なものとなっていた。
[0006]
 本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、質量の軽量化と転がり抵抗の低減を図りつつ操縦安定性を向上させることのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0007]
 上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部のタイヤ径方向内側に配設されるベルト層と、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面の両側に配設される一対のサイドウォール部と、一対の前記サイドウォール部のタイヤ幅方向内側に配設され、円環状に形成されるビードコアを備える一対のビード部と、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配設されるビードフィラーと、一対の前記ビード部同士の間に亘って配設されると共に前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返される巻上げ部を有する1枚のカーカスと、前記カーカスの前記巻上げ部と前記ビードフィラーとの間に配設される補強層と、を備え、前記カーカスは、前記巻上げ部の端部が前記ベルト層のタイヤ径方向内側で、且つ、前記ベルト層のタイヤ幅方向における内側の領域に配置され、前記ビードフィラーは、タイヤ径方向における外側端部と、前記ビード部のビードヒール部との距離がタイヤ断面高さの20%以上40%以下の範囲内であり、前記補強層は、タイヤ径方向における外側端部が、前記ビードフィラーのタイヤ径方向における外側端部よりもタイヤ径方向外側で、且つ、タイヤ最大幅位置のタイヤ径方向における位置よりもタイヤ径方向内側に位置し、タイヤ径方向における内側端部が、前記ビードコアよりもタイヤ径方向外側に位置し、前記サイドウォール部は、60℃でのtanδが0.04以上0.10以下の範囲内となるサイドゴムにより形成されることを特徴とする。
[0008]
 上記空気入りタイヤにおいて、前記補強層は、前記補強層の前記外側端部と前記ビードフィラーの前記外側端部との距離が5mm以上15mm以下の範囲内であることが好ましい。
[0009]
 上記空気入りタイヤにおいて、前記補強層は、スチールからなる補強コードを有し、前記補強コードは、線径が0.20mm以上0.30mm以下の範囲内であり、前記補強層は、50mmあたりの前記補強コードの打ち込み本数が35本以上45本以下の範囲内であることが好ましい。
[0010]
 上記空気入りタイヤにおいて、前記補強層は、20℃でのJIS硬度が85以上95以下の範囲内で、60℃でのtanδが0.12以上0.20以下の範囲内のゴムにより形成されることが好ましい。
[0011]
 上記空気入りタイヤにおいて、前記ビードフィラーは、前記空気入りタイヤの子午断面における断面積が110mm 以上160mm 以下の範囲内であることが好ましい。
[0012]
 上記空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部は、トレッド面を形成するキャップゴムと、前記キャップゴムのタイヤ径方向内側に位置するベースゴムと、を有し、前記ベースゴムは、20℃でのJIS硬度が75以上81以下の範囲内で、60℃でのtanδが0.14以上0.22以下の範囲内であることが好ましい。
[0013]
 上記空気入りタイヤにおいて、前記サイドゴムは、厚さの最小値Dmが1.0mm≦Dm≦3.5mmの範囲内であることが好ましい。
[0014]
 上記空気入りタイヤにおいて、前記サイドゴムまたはリムクッションゴムと、前記カーカスの前記巻上げ部との間には、20℃でのJIS硬度が70以上85以下の範囲内で、60℃でのtanδが0.06以上0.12以下の範囲内のゴムからなるサイド補強層が配設されており、前記サイド補強層は、厚さが0.5mm以上2.0mm以下の範囲内で形成され、前記タイヤ最大幅位置を含む位置に配置されていることが好ましい。
[0015]
 上記空気入りタイヤにおいて、前記タイヤ断面高さは、110mm以上170mm以下の範囲内であり、偏平比が55以上であることが好ましい。

発明の効果

[0016]
 本発明に係る空気入りタイヤは、質量の軽量化と転がり抵抗の低減を図りつつ操縦安定性を向上させることができる、という効果を奏する。

図面の簡単な説明

[0017]
[図1] 図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。
[図2] 図2は、図1のA詳細図である。
[図3] 図3は、図1のB詳細図である。
[図4] 図4は、図3のC-C方向から見たカーカス及び補強層についての説明図である。
[図5] 図5は、図4のD-D矢視図である。
[図6] 図6は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、サイド補強層についての説明図である。
[図7] 図7は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、サイド補強層についての説明図である。
[図8] 図8は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、サイド補強層についての説明図である。
[図9A] 図9Aは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
[図9B] 図9Bは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
[図9C] 図9Cは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
[図9D] 図9Dは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。

発明を実施するための形態

[0018]
 以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[0019]
 以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。
[0020]
 図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、子午断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の外周表面は、空気入りタイヤ1の輪郭を構成する。トレッド部2の外周表面は、空気入りタイヤ1を装着する車両の走行時に路面と接触する面になっており、この外周表面はトレッド面3として形成されている。トレッド面3には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝(図示省略)や、タイヤ幅方向に延びるラグ溝(図示省略)等の溝が複数形成されている。
[0021]
 トレッド部2は、トレッド面3を形成するキャップゴム31と、キャップゴム31のタイヤ径方向内側に位置するベースゴム32と、を有している。即ち、トレッド部2は、キャップゴム31とベースゴム32とがタイヤ径方向に積層されることにより構成されている。これらのキャップゴム31とベースゴム32は、互いにゴムが異なっており、即ち、キャップゴム31とベースゴム32とでゴム硬さが互いに異なっている。具体的には、キャップゴム31は、20℃でのJIS硬度が62以上68以下の範囲内のゴムにより構成されており、ベースゴム32は、20℃でのJIS硬度が75以上81以下の範囲内のゴムにより構成されている。また、キャップゴム31とベースゴム32とでは、粘弾性も異なっており、キャップゴム31は、60℃でのtanδが0.08以上0.16以下の範囲内になっているのに対し、ベースゴム32は、60℃でのtanδが0.14以上0.22以下の範囲内になっている。
[0022]
 なお、本実施形態において、20℃でのJIS硬度は、20℃の条件下で測定される、JIS K6253に準拠したJIS-A硬度により示されるゴム硬さをいう。また、本実施形態において、60℃でのtanδは、JIS K6394に準拠して粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を使用し、温度60℃、周波数20Hz、静歪10%、動歪±2%の条件で測定したときの値をいう。
[0023]
 タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内側には、サイドゴム33より構成されるサイドウォール部4が配設されている。つまり、サイドウォール部4は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されており、即ち、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に一対が配設されている。サイドウォール部4を構成するサイドゴム33は、20℃でのJIS硬度が50以上54以下の範囲内で、60℃でのtanδが0.04以上0.10以下の範囲内のゴムにより構成されている。なお、サイドゴム33の60℃でのtanδは、0.05以上0.11以下の範囲内であるのが好ましい。
[0024]
 また、サイドウォール部4は、サイドゴム33の厚さの最小値Dmが、1.0mm≦Dm≦3.5mmの範囲内となって形成されている。サイドゴム33の厚さの最小値Dmは、タイヤ最大幅位置Pと、交差ベルト251の端部251aの位置との間において、サイドゴム33の厚さが最も薄くなる位置でのサイドゴム33の厚さになっている。この場合におけるタイヤ最大幅位置Pは、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みして、規定内圧を充填して、空気入りタイヤ1に荷重を加えない無負荷状態のときの、サイドウォール部4の表面から突出する構造物を除いたタイヤ幅方向における寸法が最大となる位置のタイヤ径方向における位置である。
[0025]
 なお、ここでいう規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、ここでいうリムベースラインBLは、JATMAの規格で定められるリム径を通るタイヤ軸方向線である。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。
[0026]
 タイヤ幅方向における両側に位置する一対のサイドウォール部4のタイヤ径方向内側には、ビード部10が配設されている。ビード部10は、サイドウォール部4と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されており、即ち、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に一対が配設されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外側にはビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、複数のビードワイヤを束ねて円環状に形成される環状部材になっており、ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配設されるゴム部材になっている。
[0027]
 また、トレッド部2のタイヤ径方向内側にはベルト層25が配設されている。ベルト層25は、複数の交差ベルト251、252とベルトカバー253とが積層されることによって設けられている。このうち、交差ベルト251、252は、スチール或いは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20°以上55°以下のベルト角度を有して構成される。また、複数の交差ベルト251、252は、タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角として定義されるベルト角度が互いに異なっており、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。また、ベルトカバー253は、コートゴムで被覆されたスチール、或いは有機繊維材から成る1本或いは複数のコードを圧延加工して構成され、絶対値で0°以上10°以下のベルト角度を有する。また、ベルトカバー253は、ベルトカバー253を構成する1本或いは複数のコードを、交差ベルト251、252の外周面に対してタイヤ周方向に複数回、且つ、螺旋状に巻き付けることにより、交差ベルト251、252のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
[0028]
 ベルト層25のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部4のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス20が連続して設けられている。このカーカス20は、1枚のカーカスプライから成る単層構造を有し、一対のビード部10同士の間に亘って配設されている。即ち、1枚のカーカス20は、タイヤ幅方向の両側に配設されるビードコア11間にトロイダル状に架け渡されて、空気入りタイヤ1の骨格を構成する。
[0029]
 詳しくは、カーカス20は、タイヤ幅方向における両側に位置するビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むように、ビード部10でビードコア11のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて、ビードコア11に沿って折り返されている。カーカス20は、このようにビードコア11のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返される部分である巻上げ部22を有している。カーカス20の巻上げ部22は、ビードコア11のタイヤ径方向外側の位置でタイヤ径方向外側に向かって延びて配設されており、カーカス20における、一対のビード部10同士の間に亘って配設される部分である本体部21に対して、タイヤ幅方向外側から重ねられている。ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側における、ビードコア11とカーカス20の本体部21と巻上げ部22とに囲まれた領域に配設されている。
[0030]
 巻上げ部22を有するカーカス20は、空気入りタイヤ1の子午断面におけるカーカス20全体のペリフェリ長と巻上げ部22のペリフェリ長とを比較した場合に、(巻上げ部22のペリフェリ長/カーカス20全体のペリフェリ長)が、0.20以上0.35以下の範囲内になっている。この場合におけるカーカス20全体のペリフェリ長は、子午断面における2箇所の巻上げ部22と本体部21とを合わせた、カーカス20に沿った方向におけるカーカス20の全長をいう。また、巻上げ部22のペリフェリ長は、巻上げ部22のタイヤ径方向内側の端部と、巻上げ部22のタイヤ径方向外側の端部23(図2参照)との間の、巻上げ部22に沿った方向における巻上げ部22の全長をいう。
[0031]
 また、カーカス20のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されており、タイヤ周方向に対するカーカスコードの傾斜角であるカーカス角度が、絶対値で85°以上95°以下となって形成されている。また、カーカスコードは、カーカスコードの直径である線径が1100T/2以上1670T/2以下の範囲内になっており、カーカスコードが並ぶ方向における50mmあたりのカーカスコードの打ち込み本数が、45本以上55本以下の範囲内になっている。
[0032]
 ビード部10における、ビードコア11及びカーカス20の巻上げ部22のタイヤ径方向内側やタイヤ幅方向外側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム34が配設されている。また、空気入りタイヤ1の内面には、空気透過防止層であるインナーライナ35が配設されている。このインナーライナ35は、カーカス20の内側、或いは、当該カーカス20の、空気入りタイヤ1における内部側に、カーカス20に沿って形成されている。
[0033]
 図2は、図1のA詳細図である。カーカス20は、巻上げ部22の端部23が、ベルト層25のタイヤ径方向内側で、且つ、ベルト層25のタイヤ幅方向における内側の領域に配置されている。詳しくは、ビード部10側からタイヤ径方向外側に延びて配設される巻上げ部22は、ベルト層25の近傍まで延びており、巻上げ部22のタイヤ径方向外側の端部23が、ベルト層25の近傍で、カーカス20の本体部21とベルト層25との間に入り込んでいる。つまり、カーカス20の巻上げ部22の端部23は、ベルト層25が有する複数の交差ベルト251、252のうち最もタイヤ径方向内側に位置する交差ベルト251とカーカス20の本体部21との間に位置し、且つ、当該交差ベルト251のタイヤ幅方向における端部251aよりもタイヤ幅方向内側に位置している。これにより、カーカス20は、巻上げ部22の端部23が、カーカス20の本体部21とベルト層25とによってタイヤ径方向に挟まれている。
[0034]
 図3は、図1のB詳細図である。ビード部10は、ビードベース15を有している。ビードベース15は、ビード部10のタイヤ径方向内側の表面になっており、タイヤ幅方向における内側から外側に向かうに従ってタイヤ径方向外側に広がる方向に、タイヤ回転軸に対して傾斜して形成されている。ビードベース15のタイヤ幅方向内側の端部は、ビードトウ16として設けられており、ビードトウ16は、ビード部10のタイヤ径方向における、最も内側の端部であるビード部最内端になっている。また、ビードベース15のタイヤ幅方向における外側の端部は、ビードヒール部17になっており、ビードヒール部17は、空気入りタイヤ1の表面側に凸となる曲面状に形成されている。つまり、ビードベース15と、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における外側の表面とは、空気入りタイヤ1の子午断面視において円弧状に形成されるビードヒール部17によって接続されている。
[0035]
 ビードフィラー12は、タイヤ径方向における外側端部13と、ビード部10のビードヒール部17との距離Dfが、タイヤ断面高さHsの20%以上40%以下の範囲内になっている。この場合の距離Dfのビードヒール部17側の測定点は、一対のビード部10同士のタイヤ幅方向における距離を、空気入りタイヤ1を規定リムへ装着した状態の距離にした場合における、ビードヒール部17とリムベースラインBLとの交点17aになっている。このため、距離Dfは、厳密には、ビードフィラー12のタイヤ径方向における外側端部13と、ビードヒール部17とリムベースラインBLとの交点17aとの距離になっている。
[0036]
 また、タイヤ断面高さHsは、トレッド部2における最もタイヤ径方向外方側に位置している部分と、リムベースラインBLとのタイヤ径方向の距離になっている。つまり、タイヤ断面高さHsは、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みして、規定内圧を充填して、空気入りタイヤ1に荷重を加えない無負荷状態のときの、タイヤ外径とリム径との差の1/2をいう。これらのように規定される、ビードフィラー12の外側端部13とビードヒール部17との距離Dfは、40mm以上50mm以下であるのが好ましい。
[0037]
 また、ビードフィラー12は、空気入りタイヤ1の子午断面における断面積が110mm 以上160mm 以下の範囲内であるのが好ましく、タイヤ断面高さHsは、110mm以上170mm以下の範囲内であるのが好ましい。さらに、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、偏平比が55以上であるのが好ましい。
[0038]
 また、カーカス20の巻上げ部22とビードフィラー12との間には、補強層40が配設されている。補強層40は、タイヤ径方向における外側端部41が、ビードフィラー12のタイヤ径方向における外側端部13よりもタイヤ径方向外側で、且つ、タイヤ最大幅位置Pのタイヤ径方向における位置よりもタイヤ径方向内側に位置している。また、補強層40は、タイヤ径方向における内側端部42が、ビードコア11よりもタイヤ径方向外側に位置している。
[0039]
 つまり、補強層40は、タイヤ径方向におけるビードフィラー12が位置する範囲では、タイヤ幅方向における両側からビードフィラー12とカーカス20の巻上げ部22とによって挟まれている。また、補強層40は、ビードフィラー12よりもタイヤ径方向外側の位置では、タイヤ幅方向における両側からカーカス20の本体部21と巻上げ部22とによって挟まれている。なお、補強層40のタイヤ径方向における外側端部41と、ビードフィラー12のタイヤ径方向における外側端部13との距離Drは、5mm以上15mm以下の範囲内であるのが好ましい。
[0040]
 図4は、図3のC-C方向から見たカーカス20及び補強層40についての説明図である。補強層40は、スチールからなる補強コード43を有しており、複数の補強コード43をコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。補強コード43は、タイヤ周方向に傾斜角度ACが15°以上25°以下の範囲内になっている。このため、補強コード43は、カーカス20が有するカーカスコード24に対して交差して配設されている。補強コード43は、カーカスコード24に対して65°以上75°以下の範囲内で交差して配設されるのが好ましい。
[0041]
 図5は、図4のD-D矢視図である。補強コード43は、線径φCが0.20mm以上0.30mm以下の範囲内になっている。また、補強層40は、補強コード43の延在方向に直交する方向、即ち、補強コード43が並ぶ方向における50mmあたりの補強コード43の打ち込み本数が、35本以上45本以下の範囲内になっている。
[0042]
 本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、主にSUV(Sport Utility Vehicle)と呼ばれる、高い走破性と快適性とを兼ね備えた車両に用いられる。SUVに装着されるタイヤは、大きな駆動力を路面に伝えることを可能とし、また、操縦安定性も確保するため、比較的大きな外径を有するものが多くなっている。このような車両に用いられる空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、ビード部10にリムホイールを嵌合してリムホイールに、リム組みしてインフレートした状態で車両に装着する。
[0043]
 空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド面3のうち下方に位置するトレッド面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。車両は、トレッド面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。例えば、駆動力を路面に伝達する際には、車両が有するエンジン等の原動機で発生した動力がリムホイールに伝達され、リムホイールからビード部10に伝達され、空気入りタイヤ1に伝達される。
[0044]
 空気入りタイヤ1の使用時は、これらのように各部に様々な方向の荷重が作用し、これらの荷重は、インフレートした空気の圧力や、空気入りタイヤ1の骨格として設けられるカーカス20によって受ける。例えば、車両の重量や路面の凹凸によって、トレッド部2とビード部10との間でタイヤ径方向に作用する荷重は、主にインフレートした空気の圧力やカーカス20によって受ける。このように、カーカス20は、空気入りタイヤ1に作用する荷重を受ける必要があるため、SUVに装着される従来の空気入りタイヤ1では、カーカス20が複数設けられるものが多くなっており、例えば、従来の空気入りタイヤ1では、2枚のカーカス20が重ねられて配置される。
[0045]
 これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、カーカス20は1枚のみが配置されている。これにより、カーカス20全体の質量が軽減するため、空気入りタイヤ1の質量を軽減することができる。
[0046]
 なお、カーカス20を1枚にした場合、強度を確保するための部材が減るため、通常はカーカス20全体としての剛性が低下するが、本実施形態では、カーカス20の巻上げ部22の端部23を、ベルト層25のタイヤ径方向内側で、且つ、ベルト層25のタイヤ幅方向における内側の領域に配置している。これにより、カーカス20の巻上げ部22は、タイヤ径方向における両端が固定されるため、強度を確保する部材として用いることができ、巻上げ部22は、サイドウォール部4に沿ってトレッド部2とビード部10との間にかけて配置されるため、サイドウォール部4の剛性を確保することができる。
[0047]
 また、カーカス20の巻上げ部22とビードフィラー12との間には補強層40が配設されており、補強層40は、外側端部41が、ビードフィラー12の外側端部13よりもタイヤ径方向外側で、且つ、タイヤ最大幅位置Pのタイヤ径方向における位置よりもタイヤ径方向内側に位置しているため、サイドウォール部4の剛性を、適度に向上させることができる。これらにより、空気入りタイヤ1に大きな荷重が作用する場合でも、巻上げ部22と補強層40とによって剛性が確保されたサイドウォール部4によって適切に受けることができるため、操縦安定性を向上させることができ、また、乗り心地性能も確保することができる。
[0048]
 さらに、ビードフィラー12は、ビードフィラー12の外側端部13とビード部10のビードヒール部17との距離Dfが、タイヤ断面高さHsの20%以上40%以下の範囲内であるため、ビードフィラー12によってもサイドウォール部4の剛性を適切に向上させることができる。つまり、ビードフィラー12の外側端部13とビードヒール部17との距離Dfがタイヤ断面高さHsの20%未満である場合は、ビードフィラー12のタイヤ径方向における大きさが小さ過ぎるため、ビードフィラー12によってサイドウォール部4の剛性を向上させる効果が、適切に発揮されない可能性がある。また、ビードフィラー12の外側端部13とビードヒール部17との距離Dfがタイヤ断面高さHsの40%を超える場合は、ビードフィラー12のタイヤ径方向における大きさが大き過ぎるため、ビードフィラー12によってサイドウォール部4の剛性を高くし過ぎる可能性がある。この場合、サイドウォール部4の剛性が高過ぎることに起因して乗り心地性能が低下する虞がある。これに対し、ビードフィラー12の外側端部13とビードヒール部17との距離Dfがタイヤ断面高さHsの20%以上40%以下の範囲内である場合は、乗り心地性能が低下しない程度にサイドウォール部4の剛性を向上させる効果を、ビードフィラー12によって得ることができる。
[0049]
 本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、これらのようにカーカス20を1枚で構成することよって軽量化を図りつつ、サイドウォール部4の剛性を向上させることにより操縦安定性を向上させることができるが、一般的にサイドウォール部4の剛性を向上させた場合、転がり抵抗が悪化する傾向にある。これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、サイドウォール部4は、60℃でのtanδが0.04以上0.10以下の範囲内となるサイドゴム33により形成されており、通常、サイドウォール部4に用いられるゴムよりもtanδが低く低発熱のゴムが用いられている。これにより、サイドウォール部4の剛性を向上させつつ、転がり抵抗を低減することができる。これらの結果、質量の軽量化と転がり抵抗の低減を図りつつ、操縦安定性を向上させることができる。
[0050]
 また、補強層40は、補強層40の外側端部41とビードフィラー12の外側端部13との距離Drが、5mm以上15mm以下の範囲内であるため、サイドウォール部4の剛性を、より確実に適度に向上させることができる。つまり、補強層40の外側端部41とビードフィラー12の外側端部13との距離Drが5mm未満である場合は、補強層40を配設する範囲があまり大きくなく、補強層40によって補強を行う範囲が大きくないため、補強層40を設けてもサイドウォール部4の剛性を向上させ難くなる可能性がある。この場合、補強層40を配設しても、操縦安定性を効果的に向上させ難くなる可能性がある。また、補強層40の外側端部41とビードフィラー12の外側端部13との距離Drが15mmを超える場合は、補強層40を配設する範囲が大きくなり過ぎる可能性がある。この場合、補強層40によって補強をする範囲が大きくなるため、サイドウォール部4の剛性が高くなり過ぎ、乗り心地性能を確保し難くなる可能性がある。
[0051]
 これに対し、補強層40の外側端部41とビードフィラー12の外側端部13との距離Drが、5mm以上15mm以下の範囲内である場合は、補強層40を配設する範囲を、より確実に適切な範囲にすることができる。これにより、補強層40によってサイドウォール部4を補強する際に、より確実に適切な範囲を補強することができ、サイドウォール部4の剛性を、より確実に適度に向上させることができる。この結果、より確実に乗り心地性能を確保しつつ、操縦安定性を確保することができる。
[0052]
 また、補強層40は、スチールからなる補強コード43を有し、補強コード43の線径φCが0.20mm以上0.30mm以下の範囲内であり、また、50mmあたりの補強コード43の打ち込み本数が35本以上45本以下の範囲内であるため、サイドウォール部4の剛性を、より確実に適切な大きさにすることができる。つまり、補強コード43の線径φCが0.20mm未満であったり、50mmあたりの補強コード43の打ち込み本数が35本未満であったりする場合は、補強層40自体の剛性を確保するのが困難になる可能性があり、補強層40を配設しても、サイドウォール部4の剛性を効果的に高めるのが困難になる可能性がある。この場合、操縦安定性を効果的に向上させ難くなる可能性がある。また、補強コード43の線径φCが0.30mmを超えたり、50mmあたりの補強コード43の打ち込み本数が45本を超えたりする場合は、補強層40自体の剛性が高くなり過ぎる可能性があり、補強層40を配設することによってサイドウォール部4の剛性が高くなり過ぎる可能性がある。この場合、乗り心地性能を確保し難くなる可能性がある。
[0053]
 これに対し、補強コード43の線径φCが0.20mm以上0.30mm以下の範囲内で、50mmあたりの補強コード43の打ち込み本数が35本以上45本以下の範囲内である場合は、補強層40自体の剛性を適切な大きさにすることができ、この補強層40を配設することによって、サイドウォール部4の剛性を適切な大きさにすることができる。この結果、より確実に乗り心地性能を確保しつつ、操縦安定性を向上させることができる。
[0054]
 また、ビードフィラー12は、空気入りタイヤ1の子午断面における断面積が110mm 以上160mm 以下の範囲内であるため、サイドウォール部4の剛性を、より確実に適切な大きさにすることができる。つまり、ビードフィラー12の断面積が110mm 未満である場合は、ビードフィラー12の断面積が小さ過ぎるため、ビードフィラー12によってサイドウォール部4の剛性を向上させる効果が、適切に発揮されない可能性がある。また、ビードフィラー12の断面積が160mm を超える場合は、ビードフィラー12の断面積が大き過ぎるため、ビードフィラー12によってサイドウォール部4の剛性を高くし過ぎる可能性がある。この場合、サイドウォール部4の剛性が高過ぎることに起因して乗り心地性能が低下する虞がある。
[0055]
 これに対し、ビードフィラー12の断面積が110mm 以上160mm 以下の範囲内である場合は、乗り心地性能が低下しない程度にサイドウォール部4の剛性を向上させる効果を、ビードフィラー12によって得ることができる。この結果、より確実に乗り心地性能を確保しつつ、操縦安定性を向上させることができる。
[0056]
 また、ビードフィラー12の外側端部13とビードヒール部17との距離Dfが、40mm以上50mm以下である場合は、サイドウォール部4の剛性を、より確実に適切な大きさにすることができる。つまり、ビードフィラー12の外側端部13とビードヒール部17との距離Dfが40mm未満である場合は、ビードフィラー12のタイヤ径方向における大きさが小さ過ぎるため、ビードフィラー12によってサイドウォール部4の剛性を向上させる効果が、適切に発揮されない可能性がある。また、ビードフィラー12の外側端部13とビードヒール部17との距離Dfが50mmを超える場合は、ビードフィラー12のタイヤ径方向における大きさが大き過ぎるため、ビードフィラー12によってサイドウォール部4の剛性を高くし過ぎる可能性がある。この場合、サイドウォール部4の剛性が高過ぎることに起因して乗り心地性能が低下する虞がある。
[0057]
 これに対し、ビードフィラー12の外側端部13とビードヒール部17との距離Dfが40mm以上50mm以下の範囲内である場合は、乗り心地性能が低下しない程度にサイドウォール部4の剛性を向上させる効果を、ビードフィラー12によって得ることができる。この結果、より確実に乗り心地性能を確保しつつ、操縦安定性を向上させることができる。
[0058]
 また、トレッド部2のベースゴム32は、20℃でのJIS硬度が75以上81以下の範囲内で、60℃でのtanδが0.14以上0.22以下の範囲内であるため、タイヤ転動時の発熱を抑えつつ、トレッド部2の剛性を適切な大きさにすることができる。つまり、20℃の条件下で測定されるベースゴム32のゴム硬さが75未満である場合は、トレッド部2の剛性が低くなり過ぎて操縦安定性を確保し難くなる可能性がある。また、20℃の条件下で測定されるベースゴム32のゴム硬さが81を超える場合は、トレッド部2の剛性が高くなり過ぎて乗り心地性能を確保し難くなる可能性がある。また、60℃でのベースゴム32のtanδが0.14未満である場合は、タイヤ転動時の発熱を抑えることはできるものの、ベースゴム32のゴム硬さを確保するのが困難になり、操縦安定性を確保し難くなる可能性がある。また、60℃でのベースゴム32のtanδが0.22を超える場合は、タイヤ転動時の発熱を効果的に抑えるのが困難になり、転がり抵抗を低減し難くなる可能性がある。
[0059]
 これに対し、ベースゴム32のゴム硬さが75以上81以下の範囲内で、60℃でのtanδが0.14以上0.22以下の範囲内である場合は、タイヤ転動時の発熱を抑えつつ、トレッド部2の剛性を適切な大きさにすることができる。この結果、より確実に転がり抵抗を低減し、乗り心地性能を確保しつつ、操縦安定性を向上させることができる。
[0060]
 また、サイドゴム33は、厚さの最小値Dmが、1.0mm≦Dm≦3.5mmの範囲内であるため、耐カット性能を維持しつつ、より確実にサイドウォール部4の質量を軽減することができる。つまり、サイドゴム33の厚さの最小値Dmが1.0mm未満である場合は、サイドゴム33の厚さが薄過ぎるため、サイドウォール部4が縁石等に擦られた際にカーカス20等の内部構造体が損傷しないように内部構造体を保護する性能である耐カット性能が低下する可能性がある。また、サイドゴム33の厚さの最小値Dmが3.5mmを超える場合は、サイドゴム33の厚さが厚過ぎるため、サイドウォール部4の質量が増加し易くなり、空気入りタイヤ1の質量を軽減するのが困難になる可能性がある。
[0061]
 これに対し、サイドゴム33の厚さの最小値Dmが、1.0mm≦Dm≦3.5mmの範囲内であるため、耐カット性能を維持することのできるサイドゴム33の厚さを確保しつつ、より確実にサイドウォール部4の質量を軽減することができる。この結果、耐カット性能を確保しつつ、より確実に空気入りタイヤ1の質量の軽量化を図ることができる。
[0062]
 また、タイヤ断面高さHsが110mm以上170mm以下の範囲内で、偏平比が55以上である場合は、空気入りタイヤ1の子午断面におけるカーカス20が長くなるため、カーカス20が1枚の場合は、カーカス20が2枚の場合と比較して、質量を大幅に軽量化することができる。また、サイドウォール部4のタイヤ径方向における配設領域も大きくなるため、サイドゴム33に、60℃でのtanδが0.04以上0.10以下の範囲内となるゴムを用いることによる転がり抵抗の低減の効果が大きくなる。また、サイドウォール部4のタイヤ径方向における配設領域が大きくなるため、カーカス20の端部23をベルト層25に重ねたり、補強層40を配設したり、距離Dfをタイヤ断面高さHsの20%以上40%以下の範囲内にしたりすることによって操縦安定性を向上させる効果を、より顕著に得ることができる。これらの結果、質量の軽量化と転がり抵抗の低減を図りつつ、操縦安定性を向上させることができる効果を、より顕著に得ることができる。
[0063]
 なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、補強層40はスチールからなる補強コード43を有しているが、補強層40は補強コード43を有していなくてもよい。補強層40は、補強コード43を有さずに、20℃でのJIS硬度、つまり、20℃の条件下で測定され、JIS K6253に準拠したJIS-A硬度により示されるゴム硬さが、85以上95以下の範囲内で、60℃でのtanδが0.12以上0.20以下の範囲内のゴムにより形成されていてもよい。このような物性値を有するゴムを用いて補強層40を構成することにより、補強コード43を用いることなくサイドウォール部4の剛性を適度に向上させることができ、転がり抵抗を抑えることができる。これにより、転がり抵抗の低減を図りつつ、操縦安定性と乗り心地性能とを向上させることができる。
[0064]
 また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1に、補強層40とは異なる補強部材を設けてもよい。図6~図8は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、サイド補強層50についての説明図である。補強層40とは異なる補強部材としては、例えば、図6~図8に示すように、サイドゴム33またはリムクッションゴム34と、カーカス20の巻上げ部22との間に、サイド補強層50を配設してもよい。サイド補強層50は、20℃でのJIS硬度が70以上85以下の範囲内で、60℃でのtanδが0.06以上0.12以下の範囲内のゴムによって構成するのが好ましく、厚さが0.5mm以上2.0mm以下の範囲内で形成されるのが好ましい。
[0065]
 また、サイド補強層50を配置する位置は、タイヤ最大幅位置Pを含む位置に配置されていればよい。例えば、図6に示すように、タイヤ径方向における外側端部51がトレッド部2の近傍に位置し、サイド補強層50のタイヤ径方向における内側端部52がカーカス20の巻上げ部22とリムクッションゴム34との間に位置するようにサイド補強層50を配置してもよい。または、図7に示すように、外側端部51はトレッド部2の近傍に位置し、内側端部52はタイヤ最大幅位置Pの近傍でタイヤ最大幅位置Pの僅かにタイヤ径方向内側の位置に位置するようにサイド補強層50を配置してもよい。または、図8に示すように、内側端部52はカーカス20の巻上げ部22とリムクッションゴム34との間に位置し、外側端部51はタイヤ最大幅位置Pの近傍でタイヤ最大幅位置Pの僅かにタイヤ径方向外側の位置に位置するようにサイド補強層50を配置してもよい。つまり、サイド補強層50は、外側端部51がカーカス20の巻上げ部22の端部23よりもタイヤ径方向内側に位置し、且つ、外側端部51はタイヤ最大幅位置Pのタイヤ径方向外側で、内側端部52はタイヤ最大幅位置Pのタイヤ径方向内側に位置するように配置されていればよい。
[0066]
 これらのように、サイドゴム33のゴム硬さよりも硬いゴムからなるサイド補強層50を、厚さが0.5mm以上2.0mm以下の範囲内で、タイヤ最大幅位置Pを含む位置に配置することにより、より容易にサイドウォール部4の剛性を確保することができる。これにより、空気入りタイヤ1の剛性を所望の大きさにする際に、サイド補強層50も用いて調節することができるので、より確実に所望の大きさの剛性にすることができる。また、サイド補強層50を、60℃でのtanδが0.06以上0.12以下の範囲内のゴムによって構成することにより、サイド補強層50を設ける場合でも、転がり抵抗が大きくなることを抑制することができる。これらの結果、より確実に転がり抵抗の低減を図りつつ、操縦安定性と乗り心地性能とを向上させることができる。
[0067]
 〔実施例〕
 図9A~図9Dは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例及び比較例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、空気入りタイヤ1の質量であるタイヤ質量と、操縦安定性と、転がり抵抗との試験について行った。
[0068]
 性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが235/55R19 101Vサイズの空気入りタイヤ1を用いて行った。各試験項目の評価方法は、タイヤ質量については、試験タイヤの1本当たりの重量を、後述する従来例1を100とする指数で表示した。この数値が小さいほどタイヤ1本当たりの重量が軽く、タイヤ質量については、軽量化の観点で優れていることを示している。
[0069]
 また、操縦安定性については、試験タイヤをJATMA標準リムのリムホイールにリム組みして規定内圧を充填し、排気量が2400ccの四輪駆動のSUVを試験車両として試験タイヤを試験車両の総輪に装着し、テストドライバーがテストコースで試験車両を走行させて走行時の操縦安定性についての官能評価を行った。操縦安定性は、後述する従来例1を100とする評点で表示され、数値が大きいほど、操縦安定性についての性能が優れていることを示している。
[0070]
 また、転がり抵抗については、試験タイヤをJATMA標準リムのリムホイールにリム組みし、規定内圧を充填して、室内のドラム試験機(ドラム径:1707mm)を使用し、ISO28580に準拠し荷重6.47kN、速度80km/時の条件における転がり抵抗係数を算出した。その結果を、後述する従来例1の転がり抵抗係数の逆数を100とする指数で示した。この指数が大きいほど転がり抵抗が低いことを示している。
[0071]
 評価試験は、従来の空気入りタイヤ1の一例である従来例1~3の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1~15と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例1~4の22種類の空気入りタイヤについて行った。これらの空気入りタイヤ1のうち、従来例1~3の空気入りタイヤは、全てカーカス20が2枚になっており、カーカス20の巻上げ部22の端部23が、タイヤ最大幅位置P付近、即ち、サイドウォール部4におけるベルト層25とビード部10との中間付近に位置している。また、従来例1~3の空気入りタイヤは、補強層40が設けられておらず、サイドゴム33の60℃でのtanδが、0.04以上0.10以下の範囲内にない。また、比較例1~4の空気入りタイヤは、カーカス20が1枚になっているものの、サイドゴム33の60℃でのtanδが、0.04以上0.10以下の範囲内にない。
[0072]
 これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1~15は、全てカーカス20が1枚になっており、カーカス20の巻上げ部22の端部23が、ベルト層25下、即ち、ベルト層25のタイヤ径方向内側で、且つ、ベルト層25のタイヤ幅方向における内側の領域に位置している。また、実施例1~15に係る空気入りタイヤ1は、全て補強層40が設けられており、サイドゴム33の60℃でのtanδが、0.04以上0.10以下の範囲内になっている。また、実施例1~15に係る空気入りタイヤ1は、補強層40の外側端部41とビードフィラー12の外側端部13との距離Drや、ビードフィラー12の断面積、サイドゴム33の厚さの最小値Dm、サイド補強層50の有無やゴム硬さ、ベースゴム32のゴム硬さが、それぞれ異なっている。
[0073]
 これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図9A~図9Dに示すように、実施例1~15の空気入りタイヤ1は、従来例1~3や比較例1~4に対して、タイヤ質量を軽量化させ、操縦安定性を向上させることができ、さらに、転がり抵抗を低減させることができることが分かった。つまり、実施例1~15に係る空気入りタイヤ1は、質量の軽量化と転がり抵抗の低減を図りつつ、操縦安定性を向上させることができる。

符号の説明

[0074]
 1 空気入りタイヤ
 2 トレッド部
 3 トレッド面
 4 サイドウォール部
 5 ショルダー部
 10 ビード部
 11 ビードコア
 12 ビードフィラー
 13 外側端部
 15 ビードベース
 16 ビードトウ
 17 ビードヒール部
 20 カーカス
 21 本体部
 22 巻上げ部
 23 端部
 24 カーカスコード
 25 ベルト層
 31 キャップゴム
 32 ベースゴム
 33 サイドゴム
 34 リムクッションゴム
 35 インナーライナ
 40 補強層
 41、51 外側端部
 42、52 内側端部
 43 補強コード
 50 サイド補強層

請求の範囲

[請求項1]
 トレッド部のタイヤ径方向内側に配設されるベルト層と、
 タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面の両側に配設される一対のサイドウォール部と、
 一対の前記サイドウォール部のタイヤ幅方向内側に配設され、円環状に形成されるビードコアを備える一対のビード部と、
 前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配設されるビードフィラーと、
 一対の前記ビード部同士の間に亘って配設されると共に前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返される巻上げ部を有する1枚のカーカスと、
 前記カーカスの前記巻上げ部と前記ビードフィラーとの間に配設される補強層と、
 を備え、
 前記カーカスは、前記巻上げ部の端部が前記ベルト層のタイヤ径方向内側で、且つ、前記ベルト層のタイヤ幅方向における内側の領域に配置され、
 前記ビードフィラーは、タイヤ径方向における外側端部と、前記ビード部のビードヒール部との距離がタイヤ断面高さの20%以上40%以下の範囲内であり、
 前記補強層は、タイヤ径方向における外側端部が、前記ビードフィラーのタイヤ径方向における外側端部よりもタイヤ径方向外側で、且つ、タイヤ最大幅位置のタイヤ径方向における位置よりもタイヤ径方向内側に位置し、タイヤ径方向における内側端部が、前記ビードコアよりもタイヤ径方向外側に位置し、
 前記サイドウォール部は、60℃でのtanδが0.04以上0.10以下の範囲内となるサイドゴムにより形成されることを特徴とする空気入りタイヤ。
[請求項2]
 前記補強層は、前記補強層の前記外側端部と前記ビードフィラーの前記外側端部との距離が5mm以上15mm以下の範囲内である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
[請求項3]
 前記補強層は、スチールからなる補強コードを有し、
 前記補強コードは、線径が0.20mm以上0.30mm以下の範囲内であり、
 前記補強層は、50mmあたりの前記補強コードの打ち込み本数が35本以上45本以下の範囲内である請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
[請求項4]
 前記補強層は、20℃でのJIS硬度が85以上95以下の範囲内で、60℃でのtanδが0.14以上0.22以下の範囲内のゴムにより形成される請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
[請求項5]
 前記ビードフィラーは、前記空気入りタイヤの子午断面における断面積が110mm 以上160mm 以下の範囲内である請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
[請求項6]
 前記トレッド部は、トレッド面を形成するキャップゴムと、前記キャップゴムのタイヤ径方向内側に位置するベースゴムと、を有し、
 前記ベースゴムは、20℃でのJIS硬度が75以上81以下の範囲内で、60℃でのtanδが0.14以上0.22以下の範囲内である請求項1~5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
[請求項7]
 前記サイドゴムは、厚さの最小値Dmが1.0mm≦Dm≦3.5mmの範囲内である請求項1~6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
[請求項8]
 前記サイドゴムまたはリムクッションゴムと、前記カーカスの前記巻上げ部との間には、20℃でのJIS硬度が70以上85以下の範囲内で、60℃でのtanδが0.06以上0.12以下の範囲内のゴムからなるサイド補強層が配設されており、
 前記サイド補強層は、厚さが0.5mm以上2.0mm以下の範囲内で形成され、前記タイヤ最大幅位置を含む位置に配置されている請求項1~7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
[請求項9]
 前記タイヤ断面高さは、110mm以上170mm以下の範囲内であり、
 偏平比が55以上である請求項1~8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9A]

[ 図 9B]

[ 図 9C]

[ 図 9D]