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1. (WO2018193528) ガスレーザ装置及び磁気軸受制御方法
Document

明 細 書

発明の名称 ガスレーザ装置及び磁気軸受制御方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005   0006   0007  

図面の簡単な説明

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198   0199   0200   0201   0202   0203   0204   0205   0206   0207   0208   0209   0210   0211   0212   0213   0214   0215   0216   0217   0218   0219   0220   0221   0222   0223   0224   0225   0226   0227   0228   0229   0230   0231   0232   0233   0234   0235   0236   0237   0238   0239   0240   0241   0242   0243   0244   0245   0246   0247   0248   0249   0250   0251   0252   0253   0254   0255   0256   0257   0258   0259   0260   0261   0262   0263   0264   0265   0266   0267   0268   0269   0270   0271   0272   0273   0274   0275   0276   0277   0278   0279   0280   0281   0282   0283   0284   0285   0286   0287   0288   0289   0290   0291   0292   0293   0294   0295   0296   0297   0298   0299   0300   0301   0302   0303   0304   0305   0306   0307   0308   0309   0310   0311   0312   0313   0314   0315   0316   0317   0318   0319   0320   0321   0322   0323   0324   0325   0326   0327   0328   0329   0330   0331   0332   0333   0334   0335   0336   0337   0338   0339   0340   0341   0342   0343   0344   0345   0346   0347   0348   0349   0350   0351   0352   0353   0354   0355   0356   0357   0358   0359   0360   0361   0362   0363   0364   0365   0366   0367   0368   0369   0370   0371   0372   0373   0374   0375   0376   0377   0378   0379   0380   0381   0382   0383   0384   0385  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30A   30B   31   32   33   34A   34B   35   36   37   38   39   40   41   42   43   44   45   46   47   48   49   50   51   52   53   54   55   56   57   58   59A   59B   60A   60B   61   62   63   64   65A   65B   66  

明 細 書

発明の名称 : ガスレーザ装置及び磁気軸受制御方法

技術分野

[0001]
 本開示は、ガスレーザ装置及び磁気軸受制御方法に関する。

背景技術

[0002]
 半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置においては解像力の向上が要請されている。半導体露光装置を以下、単に「露光装置」という。このため露光用光源から出力される光の短波長化が進められている。露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられている。現在、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線を出力するKrFエキシマレーザ装置ならびに、波長193nmの紫外線を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられている。
[0003]
 現在の露光技術としては、露光装置側の投影レンズとウエハ間の間隙を液体で満たして、当該間隙の屈折率を変えることによって、露光用光源の見かけの波長を短波長化する液浸露光が実用化されている。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として用いて液浸露光が行われた場合は、ウエハには水中における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光という。ArF液浸露光はArF液浸リソグラフィーとも呼ばれる。
[0004]
 KrF、ArFエキシマレーザ装置の自然発振におけるスペクトル線幅は約350~400pmと広いため、露光装置側の投影レンズによってウエハ上に縮小投影されるレーザ光(紫外線光)の色収差が発生して解像力が低下する。そこで色収差が無視できる程度となるまでガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を狭帯域化する必要がある。スペクトル線幅はスペクトル幅とも呼ばれる。このためガスレーザ装置のレーザ共振器内には狭帯域化素子を有する狭帯域化部(Line Narrow Module)が設けられ、この狭帯域化部によりスペクトル幅の狭帯域化が実現されている。なお、狭帯域化素子はエタロンやグレーティング等であってもよい。このようにスペクトル幅が狭帯域化されたレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2000-216460号公報
特許文献2 : WO2010/101107
特許文献3 : 特開2010-113192号公報

概要

[0006]
 本開示の1つの観点に係るガスレーザ装置は、以下を備える:
 A.レーザガスを封入するレーザチャンバ;
 B.前記レーザチャンバ内に配置され、互いに対向して配置された一対の放電電極;
 C.前記一対の放電電極間にレーザガスを流すファン;
 D.磁力を制御可能な電磁石を含み、前記ファンの回転軸を前記磁力によって磁気浮上させた状態で回転自在に支持する磁気軸受;
 E.前記回転軸の浮上位置の変位に基づいて前記電磁石の磁力を制御して、前記浮上位置を調節する電磁石制御部;
 F.前記ファンを回転させるトルクを発生するモータ;
 G.前記回転軸と前記モータの駆動軸とを磁気による吸引力で結合して、前記回転軸に前記モータのトルクを伝達する磁気カップリング;
 H.前記磁気カップリングの吸引力を推定可能なパラメータを検出する吸引力推定用センサ;
 I.前記吸引力推定用センサによって検出された前記パラメータに基づいて、前記磁気カップリングの前記吸引力を計測する吸引力計測部;及び
 J.前記吸引力計測部によって計測された前記吸引力の変動に応じて、前記電磁石の磁力を補正する補正部。
[0007]
 本開示の1つの観点に係る磁気軸受制御方法は、以下を備える:
 レーザガスが封入されたレーザチャンバと、前記レーザチャンバ内に配置され、互いに対向して配置された一対の放電電極と、前記一対の放電電極間にレーザガスを流すファンと、を備えたガスレーザ装置に用いられ、
 磁力を制御可能な電磁石を含み、前記ファンの回転軸を前記磁力によって磁気浮上させた状態で回転自在に支持する磁気軸受を制御する磁気軸受制御方法は、以下を備える:
 A.前記回転軸の浮上位置の変位に基づいて前記電磁石の磁力を制御して、前記浮上位置を調節する電磁石制御ステップ;
 B.磁気カップリングを用いて、前記ファンの回転軸とモータの駆動軸とを磁気による吸引力で結合して、前記モータから前記回転軸にトルクを伝達してファンを回転させるファン回転ステップ;
 C.前記磁気カップリングの吸引力を推定可能なパラメータを検出するパラメータ検出ステップ;
 D.検出された前記パラメータに基づいて、前記磁気カップリングの前記吸引力を計測する吸引力計測ステップ;及び
 E.前記吸引力計測ステップにおいて計測された前記吸引力の変動に応じて、前記電磁石の磁力を補正する補正ステップ。

図面の簡単な説明

[0008]
 本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
[図1] 図1は、比較例に係るガスレーザ装置の構成を概略的に示す説明図である。
[図2] 図2は、比較例の磁気軸受システムの構成を示す説明図である。
[図3] 図3は、磁気カップリングの構成を示す説明図であり、図3Aは回転軸に対して直交する方向の横断面図であり、図3Bは回転軸と平行な方向の縦断面図である。
[図4] 図4は、ラジアル変位センサとラジアル電磁石の配置を示す説明図である。図4Aは、第1磁気軸受の第1ラジアル変位センサの配置を示し、図4Bは、第1磁気軸受の第1ラジアル電磁石の配置を示す。図4Cは、第2磁気軸受の第2ラジアル変位センサの配置を示し、図4Dは、第2磁気軸受の第2ラジアル電磁石の配置を示す。
[図5] 図5は、アキシャル軸受部の構成を示す説明図である。
[図6] 図6は、比較例に係る磁気軸受制御部の電気構成の概略を示すブロック図である。
[図7] 図7は、第1ラジアル電磁石制御部C1Xの制御フローを示すフローチャートである。
[図8] 図8は、第1ラジアル電磁石制御部C1Yの制御フローを示すフローチャートである。
[図9] 図9は、第2ラジアル電磁石制御部C2Xの制御フローを示すフローチャートである。
[図10] 図10は、第2ラジアル電磁石制御部C2Yの制御フローを示すフローチャートである。
[図11] 図11は、アキシャル電磁石制御部CZの制御フローを示すフローチャートである。
[図12] 図12は、統括制御部の制御フローを示すフローチャートである。
[図13] 図13は、磁気カップリングのCP吸引力の変動がアキシャル電磁石に与える影響を説明する説明図である。
[図14] 図14は、磁気カップリングの駆動側ロータ部と従動側ロータ部の位相差の説明図である。図14Aは、各ロータ部の初期の対向状態を示す斜視図であり、図14Bは、初期の対向状態を示す模式図である。
[図15] 図15は、位相差が有る場合の各ロータ部の対向状態を示す模式図である。
[図16] 図16は、位相差角度θとCP吸引力Fcpθの対応関係を示すグラフである。
[図17] 図17は、位相差が無い場合に、回転軸のZ軸方向に作用する力の釣り合いの関係を示す説明図である。
[図18] 図18は、位相差が有る場合に、回転軸のZ軸方向に作用する力の釣り合いの関係を示す説明図である。
[図19] 図19は、比較例の位置調節の動作を示す説明図であり、位相差が無い場合において、回転軸が外力によって変位した場合の位置調節の制御を示す説明図である。図19Aは、回転軸が目標位置にある初期状態を示し、図19Bは外力によって回転軸が変位した場合を示し、図19Cは目標位置に近づける制御が行われた状態を示す。
[図20] 図20は、比較例の位置調節の動作を示す説明図であり、比較例の制御について、位相差が有る場合において、回転軸が外力によって変位した場合の位置調節の制御を示す説明図である。図20Aは、回転軸が目標位置にある初期状態を示し、図20Bは外力によって回転軸が変位した場合を示し、図20Cは目標位置に近づける制御が行われた状態を示す。
[図21] 図21は、第1実施形態に係る磁気軸受システムの構成を示す説明図である。
[図22] 図22は、磁束密度センサの配置を示す説明図である。図22Aは、X-Y平面における配置を示し、図22Bは、Y-Z平面における配置を示す。
[図23] 図23は、位相差が無く、モータが停止している場合の磁束密度センサの出力を示す説明である。図23Aは、磁束密度センサの検出信号の時間変化を示し、図23Bは駆動側ロータ部と従動側ロータ部の対向状態を示す。
[図24] 図24は、モータが低速で回転し、位相差がほとんど無い場合の磁束密度センサの出力を示す説明である。図24Aは、磁束密度センサの検出信号の時間変化を示し、図24Bは駆動側ロータ部と従動側ロータ部の対向状態を示す。
[図25] 図25は、モータが比較的高速で回転し、位相差が有る場合の磁束密度センサの出力を示す説明である。図25Aは、磁束密度センサの検出信号の時間変化を示し、図25Bは駆動側ロータ部と従動側ロータ部の対向状態を示す。
[図26] 図26は、第1実施形態に係る磁気軸受制御部の電気構成の概略を示すブロック図である。
[図27] 図27は、モータが低速で回転し、位相差がほとんど無い場合の磁束密度センサの検出信号を絶対値に変換する様子を説明する説明図である。図27Aは、磁束密度センサの検出信号の時間変化を示し、図27Bは絶対値に変換後の検出信号を示す。
[図28] 図28は、モータが比較的高速で回転し、位相差が有る場合の磁束密度センサの検出信号を絶対値に変換する様子を説明する説明図である。図28Aは、磁束密度センサの検出信号の時間変化を示し、図28Bは絶対値に変換後の検出信号を示す。
[図29] 図29は、CP吸引力計測部の処理を示すフローチャートである。
[図30A] 図30Aは、第1実施形態に係るアキシャル電磁石制御部のフローチャートの前半を示す。
[図30B] 図30Bは、第1実施形態に係るアキシャル電磁石制御部のフローチャートの後半を示す。
[図31] 図31は、第1実施形態における、Z軸方向において回転軸27に対して作用する力の釣り合いの関係を示す。
[図32] 図32は、第1実施形態の位置調節の動作を示す説明図であり、第1実施形態の制御について、位相差が有る場合において、回転軸が外力によって変位した場合の位置調節の制御を示す説明図である。図32Aは、回転軸が目標位置にある初期状態を示し、図32Bは外力によって回転軸が変位した場合を示し、図32Cは目標位置に近づける制御が行われた状態を示す。
[図33] 図33は、CP吸引力の下限値の説明図である。
[図34A] 図34Aは、第1実施形態に係る統括制御部の制御フローのフローチャートの前半を示す。
[図34B] 図34Bは、第1実施形態に係る統括制御部の制御フローのフローチャートの後半を示す。
[図35] 図35は、第2実施形態に係る磁気軸受システムの構成を示す説明図である。
[図36] 図36は、磁束密度変化センサの配置を示す説明図である。図36Aは、X-Y平面における配置を示し、図36Bは、Y-Z平面における配置を示す。
[図37] 図37は、第2実施形態に係る磁気軸受制御部の電気構成の概略を示すブロック図である。
[図38] 図38は、モータの回転が停止している場合の磁束密度変化センサの出力の説明図である。図38Aは、磁束密度センサの出力を示し、図38Bは、図38Aに対応する磁束密度変化センサの出力を示す。
[図39] 図39は、モータが低速で回転し、位相差が無い場合の磁束密度変化センサの出力の説明図である。図39Aは、磁束密度センサの出力を示し、図39Bは、図39Aに対応する磁束密度変化センサの出力を示す。
[図40] 図40は、モータが比較的高速で回転し、位相差が有る場合の磁束密度変化センサの出力の説明図である。図40Aは、磁束密度センサの出力を示し、図40Bは、図40Aに対応する磁束密度変化センサの出力を示す。
[図41] 図41は、図39Bに示す磁束密度変化センサの出力を変換する処理を示す。図41Aは、図39Bに示す出力を示し、図41Bは、絶対値変換後の出力を示し、図41Cは、コンパレータの出力を示す。
[図42] 図42は、図39Cに示す磁束密度変化センサの出力を変換する処理を示す。図42Aは、図40Cに示す出力を示し、図42Bは、絶対値変換後の出力を示し、図42Cは、コンパレータの出力を示す。
[図43] 図43は、CP吸引力計測部の処理を示すフローチャートである。
[図44] 図44は、位相差角度θの計測処理を示すフローチャートである。
[図45] 図45は、CP吸引力Fcpθを計算する処理を示すフローチャートである。
[図46] 図46は、位相差角度θとCP吸引力Fcpθの対応関係を示すテーブルデータの説明図である。
[図47] 図47は、CP吸引力の異常処理の変形例を示すフローチャートである。
[図48] 図48は、磁束密度センサと微分回路を組み合わせた位相差センサの第1の変形例を示す説明図である。
[図49] 図49は、図48の位相差センサの信号処理の説明図である。図49Aは、磁束密度センサの出力を示し、図49Bは、微分回路の出力を示す。
[図50] 図50は、回転センサを用いた位相差センサの第2の変形例を示す説明図である。
[図51] 図51は、図50の位相差センサの配置図である。図51Aは、X-Y平面における配置を示し、図51Bは、Y-Z平面における配置を示す。
[図52] 図52は、図51の位相差センサの位相差検出方法の説明図である。図52Aは、駆動側ロータ部の回転検出信号を示し、図52Bは、従動側ロータ部の回転検出信号を示す。
[図53] 図53は、第3実施形態に係る磁気軸受システムの構成を示す説明図である。
[図54] 図54は、第3実施形態の磁気カップリングの説明図である。図54Aは、回転軸と直交する横断面を示し、図54Bは、回転軸と平行な縦断面を示す。
[図55] 図55は、第3実施形態に係る磁気軸受制御部の電気構成の概略を示すブロック図である。
[図56] 図56は、図55の磁気カップリングのCP吸引力の説明図である。
[図57] 図57は、初期状態における、回転軸に作用する力の釣り合いの関係を示す説明図である。
[図58] 図58は、CP吸引力の減少分ΔFcpθに基づいて補正が行われた場合における、回転軸に作用する力の釣り合いの関係を示す説明図である。
[図59A] 図59Aは、第3実施形態における、第2ラジアル電磁石制御部C2XCの制御フローを示すフローチャートの前半である。
[図59B] 図59Bは、第3実施形態における、第2ラジアル電磁石制御部C2XCの制御フローを示すフローチャートの後半である。
[図60A] 図60Aは、第3実施形態における、第2ラジアル電磁石制御部C2YCの制御フローを示すフローチャートの前半である。
[図60B] 図60Bは、第3実施形態における、第2ラジアル電磁石制御部C2YCの制御フローを示すフローチャートの後半である。
[図61] 図61は、第4実施形態に係る磁気軸受システムの構成を示す説明図である。
[図62] 図62は、第4実施形態に係る磁気軸受制御部の電気構成の概略を示すブロック図である。
[図63] 図63は、位相差が無い初期状態の場合の回転軸に作用する力の釣り合いの関係を示す説明図である。
[図64] 図64は、CP吸引力の減少分ΔFcpθに基づいて補正が行われた場合における、回転軸に作用する力の釣り合いの関係を示す説明図である。
[図65A] 図65Aは、第4実施形態に係るアキシャル電磁石制御の制御フローを示すフローチャートの前半である。
[図65B] 図65Bは、第4実施形態に係るアキシャル電磁石制御の制御フローを示すフローチャートの後半である。
[図66] 図66は、磁気軸受制御部をアナログ回路で構成した場合のブロック図である。

実施形態

[0009]
 <内容>
 1.概要
 2.比較例に係るガスレーザ装置
  2.1 ガスレーザ装置の全体構成
  2.2 ファンの磁気軸受システムの構成
   2.2.1 磁気カップリングの詳細
   2.2.2 ラジアル軸受部における電磁石の配置と力の釣り合い
   2.2.3 アキシャル軸受部における電磁石の配置と力の釣り合い
   2.2.4 磁気軸受制御部の構成
  2.3 磁気軸受システムの動作
   2.3.1 ラジアル電磁石制御部の制御フロー
    2.3.1.1 第1ラジアル電磁石制御部C1Xの制御フロー
    2.3.1.2 第1ラジアル電磁石制御部C1Yの制御フロー
    2.3.1.3 第2ラジアル電磁石制御部C2Xの制御フロー
    2.3.1.4 第2ラジアル電磁石制御部C2Yの制御フロー
   2.3.2 アキシャル電磁石制御部の制御フロー
   2.3.3 統括制御部の制御フロー
  2.4 ガスレーザ装置のレーザ発振動作
  2.5 課題
 3.第1実施形態のガスレーザ装置
  3.1 ファンの磁気軸受システムの構成
   3.1.1 磁束密度センサ
   3.1.2 磁気軸受制御部の構成
   3.1.3 CP吸引力計測方法
  3.2 磁気軸受システムの動作
   3.2.1 ラジアル電磁石制御部の制御フロー
   3.2.2 CP吸引力計測部の処理
   3.2.3 アキシャル電磁石制御部CZAの制御フロー
  3.3 作用
   3.3.1 第1の効果
   3.3.2 第2の効果
   3.3.3 第3の効果
  3.4 CP吸引力の異常判定
  3.5 磁気カップリングの変形例
  3.6 PID制御
  3.7 その他
 4.第2実施形態のガスレーザ装置
  4.1 ファンの磁気軸受システムの構成
   4.1.1 磁束密度変化センサ
   4.1.2 CP吸引力計測方法
  4.2 磁気軸受システムの動作
   4.2.1 CP吸引力計測部の処理
  4.3 作用
  4.4 CP吸引力の異常判定処理の変形例
  4.5 位相差センサの変形例
   4.5.1 変形例1
   4.5.2 変形例2
 5.第3実施形態のガスレーザ装置
  5.1 ファンの磁気軸受システムの構成
   5.1.1 磁気カップリング
   5.1.2 磁気軸受制御部の構成
   5.1.3 磁気カップリングのラジアル方向のCP吸引力
   5.1.4 ラジアル軸受部の力の釣り合い
  5.2 磁気軸受システムの動作
   5.2.5 第2ラジアル電磁石制御部の制御フロー
    5.2.5.1 第2ラジアル電磁石制御部C2XCの制御フロー
    5.2.5.2 第2ラジアル電磁石制御部C2YCの制御フロー
  5.3 作用
  5.4 その他
 6.第4実施形態のガスレーザ装置
  6.1 ファンの磁気軸受システムの構成
   6.1.1 磁気軸受制御部の構成
   6.1.2 アキシャル方向の力の釣り合い
  6.2 磁気軸受システムの動作
   6.2.1 アキシャル電磁石制御部の制御フロー
  6.3 作用
 7.アナログ回路
 8.その他
[0010]
 以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
[0011]
 1.概要
 本開示は、レーザチャンバ内に配置されるクロスフローファンの磁気軸受システムを備えるガスレーザ装置に関する。
[0012]
 2.比較例に係るガスレーザ装置
  2.1 ガスレーザ装置の全体説明
 図1は、比較例に係るガスレーザ装置2の全体構成を概略的に示す。ガスレーザ装置2は、パルスレーザ光を生成するレーザ光源である。ガスレーザ装置2が生成したパルスレーザ光は、例えば露光装置3に供給される。ガスレーザ装置2は、放電励起式のガスレーザ装置である。ガスレーザ装置2は、レーザ媒質であるレーザガスとして、例えば、アルゴン(Ar)及びフッ素(F)を含むArFレーザガスを使用するエキシマレーザ装置である。レーザガスは、レアガスとして、アルゴンの他、クリプトン若しくはキセノンなどを使用してもよいし、ハロゲンガスとして、フッ素の他、塩素などを使用してもよい。バッファガスとしては、ネオン若しくはヘリウム、又はこれらの混合ガスなどが使用される。
[0013]
 ガスレーザ装置2は、レーザチャンバ10と、充電器11と、パルスパワーモジュール(Pulse Power Module:PPM)12と、レーザ共振器と、パルスエネルギ計測器13と、圧力センサ14と、ガス給排気装置16と、レーザ制御部17と、磁気軸受システム40と、を備えている。
[0014]
 レーザチャンバ10は、その内部にレーザガスが封入される。レーザチャンバ10の内部空間を形成する壁10cは、例えばアルミ金属等の金属材料で形成されている。この金属材料の表面には、例えばニッケルめっきが施されている。レーザチャンバ10は、一対の放電電極21a及び21bと、電気絶縁部23と、導電ホルダ24と、ファン26と、を含んでいる。
[0015]
 一対の放電電極21a及び21bは、レーザガスを放電により励起するための電極である。一対の放電電極21a及び21bのそれぞれは、例えば、ハロゲンガスがフッ素を含む場合は銅を含む金属材料で形成され、ハロゲンガスが塩素を含む場合はニッケルを含む金属材料で形成される。一対の放電電極21a及び21bは、所定間隔を空けた状態で、且つ、互いの長手方向が略平行となるように対向して配置される。
[0016]
 電気絶縁部23は、レーザチャンバ10に形成された開口を塞ぐように配置されている。電気絶縁部23は、レーザガスとの反応性が低い絶縁材料で形成される。例えば、ハロゲンガスがフッ素又は塩素を含む場合は、電気絶縁部23は、高純度のアルミナセラミックスで形成される。電気絶縁部23は、放電電極21aを支持する。電気絶縁部23には、導電部23aが埋め込まれている。導電部23aは、パルスパワーモジュール12から供給される高電圧を放電電極21aに印加するように、パルスパワーモジュール12の高電圧端子と放電電極21aとを電気的に接続する。
[0017]
 導電ホルダ24は、放電電極21bを支持する。導電ホルダ24は、レーザチャンバ10の壁10cに固定されており、壁10cと電気的に接続される。導電ホルダ24は、例えば、アルミや銅等を含む金属材料で形成され、その表面にはニッケルめっきが施される。
[0018]
 ファン26は、レーザガスをレーザチャンバ10内で循環させて、一対の放電電極21a及び21b間に高速のレーザガス流を作り出すクロスフローファンである。ファン26は、一対の放電電極21a及び21bの長手方向とファン26の長手方向とが略平行となるように配置されている。
[0019]
 磁気軸受システム40は、ファン26の回転軸27を磁力によって磁気浮上させ、その状態でモータ31を介してファン26を回転させる。磁気軸受システム40は、第1磁気軸受28及び第2磁気軸受29、モータ31、磁気カップリング32、回転検出部33、インバータ34、及び磁気軸受制御部36を含む。
[0020]
 ファン26の回転軸27は、両端がそれぞれ第1磁気軸受28及び第2磁気軸受29によって支持される。第1磁気軸受28及び第2磁気軸受29は、磁力を発生し、発生した磁力によって回転軸27を磁気浮上させて、回転軸27と非接触の状態で、回転軸27を回転自在に支持する。
[0021]
 回転軸27の軸方向において、第2磁気軸受29側には、ファン26を回転させるトルクを発生するモータ31が設けられている。モータ31は、例えば誘導モータである。第2磁気軸受29とモータ31の間には磁気カップリング32が配置されている。磁気カップリング32は、後述するように、磁気による吸引力を利用してファン26の回転軸27にモータ31のトルクを伝達する。第1磁気軸受け29には、回転検出部33が設けられている。
[0022]
 回転検出部33は、ファン26の回転数を検出する。回転検出部33は、例えば、回転センサと計数回路とを備えている。回転センサは、第1磁気軸受28内に設けられ、回転軸27が1回転する毎に検出信号を出力する。計数回路は、所定時間内の検出信号の数をカウントすることによりファン26の回転数を検出する。回転検出部33は、検出した回転数を磁気軸受制御部36に送信する。インバータ34は、図示しない直流電源やコンバータ等から供給される直流を所望の出力周波数及び出力電圧を有する交流に変換してモータ31に供給する。
[0023]
 磁気軸受制御部36は、レーザ制御部17からファン26の回転軸27の磁気浮上やファン26の回転開始を指令する信号を受信し、第1磁気軸受28及び第2磁気軸受29や、モータ31を作動させる。
[0024]
 また、磁気軸受制御部36は、インバータ34を通じてモータ31の回転数及びトルクを制御する。磁気軸受制御部36は、レーザ制御部17からファン26の目標回転数Rtのデータを受信し、回転検出部33からファン26の回転数の実測値を受信する。磁気軸受制御部36は、ファン26の回転数の実測値が目標回転数Rtに近付くように、インバータ34を制御する。具体的には、磁気軸受制御部36は、インバータ34の制御として、例えばV/f制御等の制御手法を用いてインバータ34の出力周波数及び出力電圧を制御する。これにより、モータ31の回転数及びトルクが制御される。磁気軸受システム40の詳細な構成については、図2を参照しながら後述する。
[0025]
 充電器11とパルスパワーモジュール12は、電源装置を構成する。パルスパワーモジュール12は、図示しない充電コンデンサとスイッチ12aとを含んでいる。充電器11は、充電コンデンサと接続され、充電コンデンサを所定電圧で充電する。レーザ制御部17の制御によってスイッチ12aがOFFからONになると、パルスパワーモジュール12は、充電コンデンサを放電させる。これにより、パルス状の高電圧が生成されて、この高電圧が一対の放電電極21a及び21b間に印加される。
[0026]
 一対の放電電極21a及び21b間に高電圧が印加されると、一対の放電電極21a及び21b間に放電が起こる。この放電のエネルギにより、レーザチャンバ10内のレーザガスが励起されて高エネルギ準位に移行する。励起されたレーザガスが、その後低エネルギ準位に移行するとき、そのエネルギ準位差に応じた波長の光を放出する。
[0027]
 レーザチャンバ10の両端にはウインドウ10a及び10bが設けられている。レーザチャンバ10内で発生した光は、ウインドウ10a及び10bを介してレーザチャンバ10の外部に出射する。
[0028]
 レーザ共振器は、狭帯域化モジュール(Line Narrowing Module:LNM)18及び出力結合ミラー(Output Coupler:OC)19によって構成される。狭帯域化モジュール18は、プリズム18aとグレーティング18bとを含んでいる。プリズム18aは、レーザチャンバ10からウインドウ10bを介して出射された光のビーム幅を拡大し、拡大した光をグレーティング18b側に透過する。
[0029]
 グレーティング18bは、表面に多数の溝が所定間隔で形成された波長分散素子である。グレーティング18bは、入射角度と回折角度とが同じ角度となるリトロー配置にされる。グレーティング18bは、プリズム18aを透過した光のうち特定の波長付近の光を回折角度に応じて選択的に取り出し、レーザチャンバ10内に戻す。これにより、グレーティング18bからレーザチャンバ10に戻った光のスペクトル幅は、狭帯域化される。
[0030]
 出力結合ミラー19の表面には、部分反射膜がコーティングされている。したがって、出力結合ミラー19は、ウインドウ10aを介してレーザチャンバ10から出射された光の一部を透過させ、他の一部を反射させてレーザチャンバ10内に戻す。
[0031]
 レーザチャンバ10から出射した光は、狭帯域化モジュール18と出力結合ミラー19との間で往復し、一対の放電電極21a及び21bとの間のレーザゲイン空間を通過する度に増幅される。増幅された光の一部が、出力結合ミラー19を介して、パルスレーザ光として出力される。
[0032]
 パルスエネルギ計測器13は、ビームスプリッタ13aと、集光光学系13bと、光センサ13cとを含んでいる。ビームスプリッタ13aは、パルスレーザ光の光路上に配置されている。ビームスプリッタ13aは、出力結合ミラー19を透過したパルスレーザ光を高い透過率で露光装置3に向けて透過させるとともに、パルスレーザ光の一部を集光光学系13bに向けて反射する。集光光学系13bは、ビームスプリッタ13aによって反射された光を光センサ13cの受光面に集光する。光センサ13cは、受光面に集光されたパルスレーザ光を検出し、検出したパルスレーザ光のパルスエネルギを計測する。光センサ13cは、計測したパルスエネルギのデータをレーザ制御部17に出力する。
[0033]
 圧力センサ14は、レーザチャンバ10内のガス圧を検出する。圧力センサ14は、検出されたガス圧のデータをレーザ制御部17に出力する。
[0034]
 ガス給排気装置16は、ガス配管によってレーザチャンバ10と接続されており、ガス配管を通じて、レーザチャンバ10内へのレーザガスの供給と、レーザチャンバ10内のレーザガスのレーザチャンバ10外への排出とを行う。
[0035]
 レーザ制御部17は、露光装置3に設けられた露光装置制御部3aとの間で各種信号を送受信する。各種信号には、レーザ制御部17に対してレーザ発振準備を指令する信号、パルスレーザ光の目標パルスエネルギEtのデータ、レーザ光を発振させるタイミング信号である発振トリガ信号などが含まれる。
[0036]
 レーザ制御部17は、露光装置制御部3aから送信された各種信号に基づいて、ガスレーザ装置2の各構成要素の動作を統括的に制御する。例えば、レーザ制御部17は、充電器11に対して充電電圧の設定信号を送信したり、パルスパワーモジュール12に対してスイッチON又はOFFの発振トリガ信号を送信する。さらに、レーザ制御部17は、レーザチャンバ10内のレーザガスの圧力を制御するために、圧力センサ14の検出値に基づいて、ガス給排気装置16を制御する。
[0037]
 レーザ制御部17は、パルスエネルギ計測器13から受信するパルスエネルギのデータを参照して、充電器11の充電電圧やレーザガスの圧力を制御することにより、パルスレーザ光のパルスエネルギを制御する。
[0038]
 また、上述したように、レーザ制御部17は、磁気軸受制御部36に対して、ファン26の回転軸27の磁気浮上やファン26の回転開始を指令する信号や、ファン26の目標回転数Rtのデータを送信する。磁気軸受制御部36は、レーザ制御部17から受信する信号やデータに基づいて、ファン26の回転を制御する。
[0039]
  2.2 ファンの磁気軸受システムの構成
 図2は、磁気軸受システム40の構成を示す説明図である。磁気軸受システム40は、上述のように、ファン26の回転軸27を磁気浮上させ、かつ、ファン26の回転を制御する。磁気軸受システム40を採用することで、ボールベアリングを採用した場合と比べて、回転軸27とボールベアリングとの接触による摩耗が無いため、その分長寿命化が期待できる。また、ボールベアリングに使用される潤滑剤から不純物となる物質がレーザガスに混入することが防止されるため、パルスレーザ光の出力の低下が抑制される。
[0040]
 第1磁気軸受28は、第1ラジアル軸受部RB1、アキシャル軸受部AXB、及び第1ケース44を含んでいる。第2磁気軸受29は、第2ラジアル軸受部RB2及び第2ケース46を含んでいる。ここで、ラジアル方向とは、回転軸27の径方向を意味し、X軸方向及びY軸方向を含む。アキシャル方向とは、Z軸方向と平行な、回転軸27の軸方向を意味する。
[0041]
 第1ラジアル軸受部RB1は、第1ラジアル電磁石M1と第1ラジアル変位センサS1とを備えている。第2ラジアル軸受部RB2は、第2ラジアル電磁石M2と第2ラジアル変位センサS2とを備えている。アキシャル軸受部AXBは、アキシャル電磁石MZとアキシャル変位センサSZとを備えている。アキシャル電磁石MZは、アキシャル電磁石MZaとアキシャル電磁石MZbとを含む。
[0042]
 第1ケース44内には、レーザチャンバ10から突出する回転軸27の一端部が収容される。また、第1ケース44内には、キャン48が設けられている。キャン48は、第1ケース44内において、レーザチャンバ10内と連通する内部空間とその外側の外部空間とを隔てる隔壁である。キャン48は、キャン48a、48b、48cの各部で構成される。キャン48は、レーザガスと反応し難い金属材料で形成され、金属材料としては、例えば、表面にニッケルメッキが施されたステンレスが使用される。ただし、ハロゲンに対して耐蝕性のあるステンレス(例えばSUS316L)の場合は、表面にニッケルメッキを施さなくてもよい。
[0043]
 キャン48aは、回転軸27の軸回りに配置され、回転軸27を覆うように円筒状に形成された隔壁である。キャン48b及び48cは、それぞれ回転軸27に対して直交して配置される円板状の隔壁であり、第1ケース44の内径に応じた径を備えている。第1ケース44内の回転軸27の端縁にはターゲットディスク49が取り付けられている。キャン48b及び48cは、回転軸27の軸方向において、ターゲットディスク49を挟んだ状態で対向して配置され、ターゲットディスク49を収容する空間を画定する。
[0044]
 第1ラジアル軸受部RB1を構成する第1ラジアル電磁石M1及び第1ラジアル変位センサS1は、第1ケース44内のキャン48aの外側の外部空間に収容されている。第1ラジアル電磁石M1及び第1ラジアル変位センサS1は、回転軸27の軸回りに配置されており、キャン48aの外面に固定されている。回転軸27において、各第1ラジアル電磁石M1と対向する位置には、電磁石ターゲット51が設けられており、各第1ラジアル変位センサS1と対向する位置には、センサターゲット52が設けられている。電磁石ターゲット51は、キャン48aを隔てて、第1ラジアル電磁石M1と対向し、センサターゲット52は、キャン48aを隔てて、第1ラジアル変位センサS1と対向する。電磁石ターゲット51とセンサターゲット52は、回転軸27の全周を覆う円筒形状をしている。
[0045]
 第1ラジアル電磁石M1は、通電により磁力を発生し、電磁石ターゲット51を引きつける。電磁石ターゲット51は、レーザガスと反応し難い磁性材料で形成される。磁性材料としては、例えばパーマロイが使用される。電磁石ターゲット51は、回転軸27に固定されているため、第1ラジアル電磁石M1の磁力は、回転軸27を引きつけて吸引する吸引力として作用する。第1ラジアル電磁石M1は、通電する電流の大きさを変化させることで磁力を制御することが可能である。
[0046]
 第1ラジアル電磁石M1は、回転軸27の周囲において、回転軸27を挟んで対向する位置に複数個配置されている。対向する複数の第1ラジアル電磁石M1は、回転軸27を引きつけ合うことで、回転軸27をラジアル方向において磁気浮上させる。
[0047]
 第1ラジアル変位センサS1は、第1ラジアル電磁石M1によって磁気浮上する回転軸27のラジアル方向における浮上位置を検出する。第1ラジアル変位センサS1は、例えば、測定対象であるセンサターゲット52の位置を非接触で検出可能な渦電流式変位センサである。
[0048]
 渦電流式変位センサは、センサコイルを有するセンサヘッドと、発振器、共振回路、検波回路、リニアライザなどを含むドライバとを備えている。渦電流式変位センサは、センサコイルに高周波電流を流して、高周波の磁束を発生する。この磁束は、キャン48aを透過して、センサターゲット52の表面に渦電流を発生させる。渦電流の大きさは、センサコイルとセンサターゲット52との距離に応じて変化する。センサコイルとセンサターゲット52との距離が変化すると、センサコイルのインピーダンスが変化して、共振回路から出力される出力電圧が変化する。出力電圧は、検波回路及びリニアライザによって、距離に比例した直流電圧に変換される。この電圧は、センサターゲット52が固定された回転軸27のラジアル方向における浮上位置を表す検出信号として、磁気軸受制御部36に出力される。
[0049]
 また、センサターゲット52の位置を非接触で検出可能な変位センサとして、渦電流式変位センサの変わりにインダクタンス変化式センサを使用してもよい。インダクタンス変化式変位センサは、コイルを巻き付けた鉄芯で構成されるセンサヘッドを有する。インダクタンス変化式変位センサは、センサヘッドにより、センサヘッドとセンサターゲット52との隙間の大きさに応じて変化するコイルのインダクタンスを検出することにより、センサターゲット52の距離を検出する。
[0050]
 センサターゲット52は、レーザガスと反応し難く、電流を流す金属材料で形成される。この金属材料としては、例えば、銅、ニッケル、金、アルミ及びパーマロイの少なくとも1つが使用され、その表面にはニッケルめっきが施されてもよい。なお、第1ラジアル変位センサS1は、渦電流式変位センサに限定されず、インダクタンス式変位センサや静電容量式変位センサ等の非接触式の変位センサであってもよい。
[0051]
 アキシャル軸受部AXBを構成するアキシャル電磁石MZと変位センサSZは、第1ケース44内のキャン48の外側の外部空間に収容されている。アキシャル電磁石MZは、第1ラジアル電磁石M1と同様に、通電により磁力を発生し、電流の大きさを変化させることで磁力を制御することが可能である。ターゲットディスク49は、アキシャル電磁石MZのターゲットとして機能し、アキシャル電磁石MZは、発生した磁力によってターゲットディスク49を引きつける。ターゲットディスク49は、電磁石ターゲット51と同様に、レーザガスと反応し難い磁性材料で形成され、磁性材料としては、例えばパーマロイが使用される。ターゲットディスク49は、回転軸27に固定されているため、アキシャル電磁石MZの磁力は、回転軸27を引きつけて吸引する吸引力として作用する。
[0052]
 アキシャル電磁石MZa及びMZbは、それぞれ円環状をした電磁石であり、それぞれ1個ずつ、合計2個設けられている。アキシャル電磁石MZa及びMZbは、回転軸27の軸方向においてターゲットディスク49を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。アキシャル電磁石MZa及びMZbは、ターゲットディスク49の両側にそれぞれ配置されたキャン48b、48cの外側の面にそれぞれ固定される。対向するアキシャル電磁石MZa及びMZbは、回転軸27を引きつけ合うことで、回転軸27をアキシャル方向において磁気浮上させる。
[0053]
 変位センサSZは、例えば、第1ラジアル変位センサS1と同様の渦電流式変位センサであり、回転軸27のアキシャル方向の浮上位置を検出する。ターゲットディスク49は、変位センサSZのセンサターゲットとしても機能する。ターゲットディスク49には、例えば、変位センサSZと対向する位置にセンサターゲットとして機能する材料が埋め込まれている。変位センサSZは、ターゲットディスク49との距離に比例した電圧を出力する。この電圧は、ターゲットディスク49が固定された回転軸27のアキシャル方向における浮上位置を表す検出信号として、磁気軸受制御部36に出力される。
[0054]
 第2磁気軸受29を構成する第2ラジアル軸受部RB2及び第2ケース46の構成については、第1磁気軸受28と同様であるので、相違点を中心に説明する。第2ケース46内には、レーザチャンバ10から突出する回転軸27の一端部が収容されており、第2ケース46内は、キャン54によって、レーザチャンバ10内と連通する内部空間とその外側の外部空間とが隔てられている。
[0055]
 キャン54aは、キャン48aと同様に、回転軸27の軸回りに配置される円筒状の隔壁である。キャン54bは、回転軸27に対して直交して配置される円板状の隔壁であり、第2ケース46の内径に応じた径を備えている。第2ケース46内の回転軸27の端縁には、後述する、磁気カップリング32の従動側ロータ部32bが取り付けられている。キャン54bと第2ケース46の端壁との間の空間に、従動側ロータ部32bが収容される。
[0056]
 第2ラジアル軸受部RB2を構成する第2ラジアル電磁石M2及び第2ラジアル変位センサS2は、第2ケース46内のキャン54aの外側の外部空間に収容されており、キャン54aの外面に固定されている。回転軸27において、各第2ラジアル電磁石M2と対向する位置には、電磁石ターゲット51が設けられており、各第2ラジアル変位センサS2と対向する位置には、センサターゲット52が設けられている。電磁石ターゲット51は、キャン54aを隔てて、第2ラジアル電磁石M2と対向し、センサターゲット52は、キャン54aを隔てて、第2ラジアル変位センサS2と対向する。
[0057]
 第2ラジアル電磁石M2は、第1ラジアル電磁石M1と同様に、通電により磁力を発生し、通電する電流の大きさを変化させることで磁力を制御することが可能である。第2ラジアル電磁石M2の磁力は、回転軸27を引きつけて吸引する吸引力として作用する。第2ラジアル電磁石M2は、回転軸27の周囲において、回転軸27を挟んで対向する位置に複数個配置されている。対向する複数の第2ラジアル電磁石M2は、回転軸27を引きつけ合うことで、回転軸27をラジアル方向において磁気浮上させる。
[0058]
 第2ラジアル変位センサS2は、第2ラジアル電磁石M2によって磁気浮上する回転軸27のラジアル方向における浮上位置を検出する。第2ラジアル変位センサS2は、第1ラジアル変位センサS1と同様の渦電流式変位センサである。
[0059]
 第2ケース46の端面には、モータ31を第2ケース46に固定するモータ固定部56が取り付けられている。モータ固定部56は、円筒形状の部材である。モータ固定部56は、一端がモータ31の本体部の外周に取り付けられ、他端が第2ケース46の端面に取り付けられる。モータ固定部56の内部には、モータ31の駆動軸31aと、磁気カップリング32を構成する駆動側ロータ部32aが収容されている。
[0060]
 磁気カップリング32は、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bを備える。駆動側ロータ部32aは、モータ31の駆動軸31aに取り付けられて固定され、従動側ロータ部32bは、ファン26の回転軸27に取り付けられて固定される。駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bは、第2ケース46の端壁を挟んで、対向して配置される。
[0061]
 磁気カップリング32は、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bとの間に磁気による吸引力を発生し、ファン26の回転軸27とモータ31の駆動軸31aとを吸引力で結合して、ファン26の回転軸27にモータ31のトルクを伝達する。
[0062]
   2.2.1 磁気カップリングの詳細
 図3は、磁気カップリングの詳細を示す。図3Aは、回転軸27の軸方向と直交するX-Y平面の磁気カップリング32の断面を示し、図3Bは、回転軸27の軸方向と平行なY-Z平面の磁気カップリング32の断面を示す。図3Aは、図3Bに示すB-B断面を示し、図3Bは、図3Aに示すA-A断面を示す。図3Aは、従動側ロータ部32bを示すが、駆動側ロータ部32aも同様である。
[0063]
 図3A及び図3Bに示すように、駆動側ロータ部32a及び従動側ロータ部32bは、平面形状が円盤形状であり、それぞれ、円盤型の磁石部320a、320bと、支持部321a、321bと、ケース322a、322bとを備えている。磁石部320a、320bは、例えば中心角αが45°の扇形の磁極を8個備えた8極タイプである。各磁極はN極またはS極の永久磁石であり、磁石部320a、320bのそれぞれの周方向において、N極とS極の永久磁石が交互に配置される。支持部321aと321bは、それぞれ円形のディスク部と、円形のディスク部の中心に設けられた回転軸固定部とを備えている。円形のディスク部は、磁石部320aと320bのそれぞれを支持する。支持部321aの回転軸固定部には、駆動軸31aを挿通する穴が形成されている。支持部321bの回転軸固定部には、回転軸27を挿通する穴が形成されている。各ケース322a、322bは、それぞれ、有底の円筒形状をしており、磁石部321a、321bを覆うように支持部321a、321bに取り付けられる。
[0064]
 図3Bに示すように、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bは、N極とS極の磁極が相互に対向するように配置される。N極とS極が対向することにより、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bとの間には、アキシャル方向において互いに引きつけ合う磁力である吸引力Fcpが発生する。駆動側ロータ部32aが取り付けられる駆動軸31aのZ軸方向の位置は固定されている。そのため、吸引力Fcpは、従動側ロータ部32bを、駆動側ロータ部32aに近づける方向、すなわち、アキシャル方向であるZ軸方向においてプラス方向に作用する。
[0065]
 駆動側ロータ部32aは、モータ31の駆動軸31aが回転するとZ軸回りに回転する。駆動側ロータ部32aが回転を開始すると、従動側ロータ部32bは吸引力Fcpによって駆動側ロータ部32aに吸引されているため、駆動側ロータ部32aの回転に従動して回転を開始する。これにより、モータ31の駆動軸31aのトルクがファン26の回転軸27に非接触で伝達される。
[0066]
   2.2.2 ラジアル軸受部における電磁石の配置と力の釣り合い
 図4は、第1ラジアル軸受部RB1及び第2ラジアル軸受部RB2の各電磁石の配置と各電磁石間の力の釣り合いの関係を示す。図4Aに示すように、第1ラジアル軸受部RB1の第1ラジアル変位センサS1は、回転軸27の周方向において、4個配置されている。具体的には、第1ラジアル変位センサS1は、X軸方向において回転軸27を挟んで対向する位置に配置された2個の第1ラジアル変位センサS1Xa及びS1Xbと、Y軸方向において回転軸27を挟んで対向する位置に配置された2個の第1ラジアル変位センサS1Ya及びS1Ybとを含む。ここで、X軸方向は水平方向であり、Y軸方向は鉛直方向であり、Y軸方向においてマイナス方向が重力方向である。
[0067]
 第1ラジアル変位センサS1Xa、S1Xbは、それぞれ回転軸27とのX軸方向の距離を示す検出信号を磁気軸受制御部36に送信する。第1ラジアル変位センサS1Ya、S1Ybは、それぞれ回転軸27とのY軸方向の距離を示す検出信号を磁気軸受制御部36に送信する。
[0068]
 磁気軸受制御部36は、回転軸27の浮上位置として目標となる、X-Y平面における目標位置X 10,Y 10のデータを内部メモリに記憶している。目標位置X 10,Y 10のデータは、例えば、回転軸27が目標位置X 10,Y 10にある場合の第1ラジアル変位センサS1Xa、S1Xb、S1Ya、S1Ybの検出信号の出力値である。磁気軸受制御部36は、目標位置X 10,Y 10のデータと第1ラジアル変位センサS1Xa、S1Xb、S1Ya、S1Ybの検出信号に基づいて、回転軸27の現在の浮上位置の目標位置X 10,Y 10に対する変位量を評価する。この変位量は、以下のように求められる。
[0069]
 磁気軸受制御部36は、第1ラジアル変位センサS1Xa及びS1Xbの検出信号に基づいて、回転軸27の浮上位置の現在位置X 1を計測する。磁気軸受制御部36は、以下の式(1)に従って、回転軸27の浮上位置のX軸方向の現在位置X 1とX軸方向における目標位置X 10との差ΔX 1を求める。
 ΔX 1=X 1-X 10  ・・・(1)
[0070]
 一方、磁気軸受制御部36は、第1ラジアル変位センサS1Ya及びS1Ybの検出信号に基づいて、回転軸27の浮上位置の現在位置Y 1を計測する。磁気軸受制御部36は、以下の式(2)に従って、回転軸27の浮上位置のY軸方向の現在位置Y 1とY軸方向における目標位置Y 10との差ΔY 1を求める。
 ΔY 1=Y 1-Y 10  ・・・(2)
[0071]
 差ΔX 1又は差ΔY 1はそれぞれ、回転軸27の現在の浮上位置の目標位置X 10,Y 10に対するX軸方向又はY軸方向における変位量を表す。磁気軸受制御部36は、回転軸27の浮上位置が目標位置X 10、Y 10に近づくように、すなわち、ΔX 1及びΔY 1が「0」になるように、回転軸27の浮上位置を調節する。
[0072]
 図4Bに示すように、第1ラジアル軸受部RB1の第1ラジアル電磁石M1は、回転軸27の周方向において、4個配置されている。具体的には、第1ラジアル電磁石M1は、X軸方向において回転軸27を挟んで対向する位置に配置された2個の第1ラジアル電磁石M1Xa及びM1Xbと、Y軸方向において回転軸27を挟んで対向する位置に配置された2個の第1ラジアル電磁石M1Ya及びM1Ybとを含む。
[0073]
 図4Bには、第1ラジアル軸受部RB1において、回転軸27に作用する第1ラジアル電磁石M1の力の釣り合いの関係が示されている。回転軸27を目標位置X 10,Y 10に合わせるための第1ラジアル電磁石M1による力の釣り合いの関係は、次式(3)、(4)のようになる。
 F X10=F -X10   ・・・(3)
 F Y10=F g1+F -Y10  ・・・(4)
 F X10は、X軸方向においてプラス方向に発生する第1ラジアル電磁石M1Xaの吸引力であり、F -X10は、X軸方向においてマイナス方向に発生する第1ラジアル電磁石M1Xbの吸引力である。
 F Y10は、Y軸方向においてプラス方向に発生する第1ラジアル電磁石M1Yaの吸引力であり、F -Y10は、Y軸方向においてマイナス方向に発生する第1ラジアル電磁石M1Ybの吸引力である。F g1はY軸方向においてマイナス方向である重力方向に回転軸27に対して作用する重力である。F -Y10の大きさは、F Y10と比べて、重力F g1分小さい。
[0074]
 ここで、第1ラジアル電磁石M1Xa、M1Xbが、それぞれ吸引力F X10、F -X10を発生する時の電流値はI X10、I -X10である。これらの電流値I X10、I -X10は、第1ラジアル電磁石M1Xa、M1Xbに対して供給されるバイアス電流の電流値である。第1ラジアル電磁石M1Ya、M1Ybが、それぞれ吸引力F Y10、F -Y10を発生する時の電流値はI Y10、I -Y10である。これらの電流値I Y10、I -Y10は、第1ラジアル電磁石M1Ya、M1Ybに対して供給されるバイアス電流の電流値である。バイアス電流は、磁気浮上を開始させる際に供給される電流の初期値である。バイアス電流は、回転軸27が磁気浮上を開始する際に、各ラジアル電磁石M1Xa、M1Xb、M1Ya、M1Ybに対して供給される。
[0075]
 第2ラジアル軸受部RB2も、第1ラジアル軸受部RB1と同様に、図4Cに示すように、第2ラジアル変位センサS2は、回転軸27の周方向において、4個配置されている。第2ラジアル変位センサS2は、X軸方向において回転軸27を挟んで対向して配置される2個の第2ラジアル変位センサS2Xa及びS2Xbと、Y軸方向において回転軸27を挟んで対向して配置される2個の第2ラジアル変位センサS2Ya及びS2Ybとを含む。
[0076]
 第2ラジアル変位センサS2Xa及びS2Xbは、それぞれ回転軸27とのY軸方向の距離を示す検出信号を磁気軸受制御部36に送信する。第2ラジアル変位センサS2Ya及びS2Ybは、それぞれ回転軸27とのY軸方向の距離を示す検出信号を磁気軸受制御部36に送信する。
[0077]
 磁気軸受制御部36は、回転軸27の浮上位置として目標となる、X-Y平面における目標位置X 20,Y 20のデータを内部メモリに記憶している。目標位置X 20,Y 20のデータは、例えば、回転軸27が目標位置X 20,Y 20にある場合の第2ラジアル変位センサS2Xa、S2Xb、S2Ya、S2Ybの検出信号の出力値である。磁気軸受制御部36は、目標位置X 20,Y 20のデータと第2ラジアル変位センサS2Xa、S2Xb、S2Ya、S2Ybの検出信号に基づいて、回転軸27の現在の浮上位置の目標位置X 20,Y 20に対する変位量を把握する。この変位量は、以下のように求められる。
[0078]
 磁気軸受制御部36は、第2ラジアル変位センサS2Xa及びS2Xbの検出信号に基づいて、回転軸27の浮上位置の現在位置X 2を計測する。磁気軸受制御部36は、以下の式(5)に従って、回転軸27の浮上位置のX軸方向の現在位置X 2とX軸方向における目標位置X 20との差ΔX 2を求める。
 ΔX 2=X 2-X 20  ・・・(5)
[0079]
 一方、磁気軸受制御部36は、第2ラジアル変位センサS2Ya及びS2Ybの検出信号に基づいて、回転軸27の浮上位置の現在位置Y 2を計測する。磁気軸受制御部36は、以下の式(6)に従って、回転軸27の浮上位置のY軸方向の現在位置Y 2とY軸方向における目標位置Y 20との差ΔY 2を求める。
 ΔY 2=Y 2-Y 20  ・・・(6)
[0080]
 差ΔX 2又は差ΔY 2はそれぞれ、回転軸27の現在の浮上位置の目標位置X 20,Y 20に対するX軸方向又はY軸方向における変位量を表す。磁気軸受制御部36は、回転軸27の浮上位置が目標位置X 20、Y 20に近づくように、すわなち、ΔX 2及びΔY 2が「0」になるように、回転軸27の浮上位置を調節する。
[0081]
 図4Dに示すように、第2ラジアル軸受部RB2の第2ラジアル電磁石M2は、回転軸27の周方向において、4個配置されている。具体的には、第2ラジアル電磁石M2は、X軸方向において回転軸27を挟んで対向して配置された2個の第2ラジアル電磁石M2Xa及びM2Xbと、Y軸方向において回転軸27を挟んで対向して配置された2個の第2ラジアル電磁石M2Ya及びM2Ybとを含む。
[0082]
 図4Dには、第2ラジアル軸受部RB2において、回転軸27に作用する第2ラジアル電磁石M2の力の釣り合いの関係が示されている。回転軸27を目標位置X 20,Y 20に合わせるための第2ラジアル電磁石M2による力の釣り合いの関係は、次式(7)、(8)のようになる。
 F X20=F -X20  ・・・(7)
 F Y20=F g2+F -Y20  ・・・(8)
 F X20は、X軸方向においてプラス方向に発生する第2ラジアル電磁石M2Xaの吸引力であり、F -X20は、X軸方向においてマイナス方向に発生する第2ラジアル電磁石M2Xbの吸引力である。
 F Y20は、Y軸方向においてプラス方向に発生する第2ラジアル電磁石M2Yaの吸引力であり、F -Y20は、Y軸方向においてマイナス方向に発生する第2ラジアル電磁石M2Ybの吸引力である。F g2はY軸方向においてマイナス方向である重力方向に回転軸27に対して作用する重力である。F -Y20の大きさは、F Y20と比べて、重力F g2分小さい。
[0083]
 第2ラジアル電磁石M2Xa、M2Xbが吸引力F X20、F -X20を発生する時の電流値はI X20、I -X20である。これらの電流値I X20、I -X20は、第2ラジアル電磁石M2Xa、M2Xbに対して供給されるバイアス電流の電流値である。第2ラジアル電磁石M2Ya、M2Ybが吸引力F Y20、F -Y20を発生する時の電流値はI Y20、I -Y20である。これらの電流値I Y20、I -Y20は、第2ラジアル電磁石M2Ya、M2Ybに対して供給されるバイアス電流の電流値である。
[0084]
   2.2.3 アキシャル軸受部における電磁石の配置と力の釣り合い
 図5は、アキシャル軸受部AXBの詳細を示す。アキシャル軸受部AXBのアキシャル変位センサSZは、回転軸27に固定されたターゲットディスク49とのZ軸方向の距離を示す検出信号を磁気軸受制御部36に送信する。
[0085]
 磁気軸受制御部36は、回転軸27の浮上位置として目標となる、Z軸方向における目標位置Z 0のデータを内部メモリに記憶している。目標位置Z 0のデータは、例えば、回転軸27が目標位置Z 0にある場合のアキシャル変位センサSZの検出信号の出力値である。磁気軸受制御部36は、目標位置Z 0のデータとアキシャル変位センサSZの検出信号に基づいて、回転軸27の現在の浮上位置の目標位置Z 0に対する変位量を把握する。この変位量は、以下のように求められる。
[0086]
 磁気軸受制御部36は、アキシャル変位センサSZの検出信号に基づいて、回転軸27の浮上位置の現在位置Zを計測する。磁気軸受制御部36は、以下の式(9)に従って、回転軸27の浮上位置のZ軸方向の現在位置ZとZ軸方向における目標位置Z 0との差ΔZを求める。
 ΔZ=Z-Z 0  ・・・(9)
[0087]
 差ΔZは、回転軸27の現在の浮上位置の目標位置Z 0に対するZ軸方向における変位量を表す。磁気軸受制御部36は、回転軸27の浮上位置が目標位置Z 0に近づくように、すなわち、ΔZ 1が「0」になるように、回転軸27の浮上位置を調節する。
[0088]
 上述したとおり、アキシャル電磁石MZは、ターゲットディスク49の両側に2個ずつ、合計4個設けられている。ターゲットディスク49を挟んでZ軸方向においてプラス方向となるファン26側に配置されている2つのアキシャル電磁石MZaは、Z軸方向においてプラス方向に吸引力を発生する。ターゲットディスク49を挟んでマイナス方向に配置されている2つのアキシャル電磁石MZbは、Z軸方向においてマイナス方向に吸引力を発生する。
[0089]
 アキシャル電磁石MZaは、磁気カップリング32の吸引力Fcpと同じ第1の方向であるプラス方向に吸引力を発生する第1アキシャル電磁石に相当し、アキシャル電磁石MZbは第1の方向と反対のマイナス方向に吸引力を発生する第2アキシャル電磁石に相当する。
[0090]
 図5は、アキシャル軸受部AXBにおいて、回転軸27に作用し、ターゲットディスク49を挟んで対向配置されるアキシャル電磁石MZaとMZbの力の釣り合いの関係を示す。回転軸27を目標位置Z 0に合わせるためのアキシャル電磁石MZaとMZbの力の釣り合いの関係は、次式(10)のようになる。
 F -Z0=F Z0+Fcp  ・・・(10)
 F Z0は、Z軸方向においてプラス方向に発生するアキシャル電磁石MZaの吸引力であり、F -Z0は、Z軸方向においてマイナス方向に発生するアキシャル電磁石MZbの吸引力である。
 FcpはZ軸方向においてプラス方向に回転軸27に対して作用する磁気カップリング32の吸引力である。F Z0の大きさは、F -Z0と比べて、Fcp分小さい。
[0091]
 ここで、アキシャル電磁石MZa、MZbが、それぞれ吸引力F Z0、F -Z0を発生する時の電流値は、I Z0、I -Z0である。これらの電流値I Z0、I -Z0は、アキシャル電磁石MZa、MZbに対して供給されるバイアス電流の電流値である。
[0092]
 また、以下において、電磁石M1、M2、MZが発生する吸引力と、磁気カップリング32が発生する吸引力を区別するため、以下、電磁石M1、M2、MZの吸引力をEM吸引力と呼び、磁気カップリング32の吸引力をCP吸引力と呼ぶ。
[0093]
   2.2.4 磁気軸受制御部の構成
 図6は、磁気軸受制御部36の電気構成の概略を示すブロック図である。図6においては、変位センサ及び電磁石のブロックや標記を便宜的に一部省略して示している。例えば、第1ラジアル変位センサS1X及びS1Y、第2ラジアル変位センサS2X及びS2Yについては、集合的に1つのブロックで示しているが、実際には、図4で示したように、複数のセンサから構成される。
[0094]
 さらに、第1ラジアル電磁石M1a及びM1b、第2ラジアル電磁石M2a及びM2b、アキシャル電磁石MZa及びMZbについては、各ブロックにおいて、それぞれラジアル及びアキシャルの標記を省略して、単に電磁石としている。図6以降の図についても同様に記載スペース等の便宜上、ラジアル及びアキシャルといった標記を省略する場合がある。
[0095]
 磁気軸受制御部36は、第1ラジアル電磁石制御部C1X、C1Yと、第2ラジアル電磁石制御部C2X、C2Yと、アキシャル電磁石制御部CZと、A/D変換器58と、統括制御部61とを備えている。A/D変換器58は、各変位センサS1、S2、SZが出力するアナログの検出信号をデジタルデータに変換する。第1ラジアル電磁石M1X及びM1Y、第2ラジアル電磁石M2X及びM2Y、アキシャル電磁石MZには、駆動部として、それぞれに通電する電流を制御する電流制御器59が接続されている。
[0096]
 各電磁石制御部C1X、C1Y、C2X、C2Y、CZは、各変位センサS1X、S1Y、S2X、S2Y、SZから入力される検出信号に基づいて、回転軸27が、ラジアル方向及びアキシャル方向のそれぞれの目標位置に近づくように、EM吸引力の変化量を決定する。そして、各電磁石制御部C1X、C1Y、C2X、C2Y、CZは、決定したEM吸引力の変化量に基づいて、各電磁石M1X、M1Y、M2X、M2Y、MZに供給する電流値を決定し、電流制御器59を通じて、EM吸引力を制御する。各電磁石制御部C1X、C1Y、C2X、C2Y、CZは、このようにEM吸引力を制御して、回転軸27の浮上位置を調節する。
[0097]
 統括制御部61は、レーザ制御部17と、各電磁石制御部C1X、C1Y、C2X、C2Y、CZのそれぞれと通信可能に接続されている。統括制御部61は、レーザ制御部17から、回転軸27の磁気浮上の開始及び停止を指令する信号を受信して、各電磁石制御部C1X、C1Y、C2X、C2Y、CZに磁気浮上の開始及び停止を指令する。また、統括制御部61は、各電磁石制御部C1X、C1Y、C2X、C2Y、CZからの信号に基づいて、回転軸27の浮上位置が適正か否かを判定し、判定結果をレーザ制御部17に送信する。
[0098]
 また、統括制御部61は、レーザ制御部17から送信される目標回転数Rtに基づいて、インバータ34を通じてモータ31の回転数が目標回転数Rtとなるように制御する。
[0099]
  2.3 磁気軸受システムの動作
 レーザ制御部17は、露光装置制御部3aからガスレーザ装置2のレーザ発振準備の指令を受けると、ガス給排気装置16を制御して、所定の圧力となるまでレーザガスをレーザチャンバ10内に供給する。この後、レーザ制御部17は、磁気軸受制御部36に、ファン26の回転軸27の磁気浮上を指令する。磁気軸受制御部36は、磁気浮上の指令を受信すると、以下の制御フローに従って、軸受制御を実行する。
[0100]
   2.3.1 ラジアル電磁石制御部の制御フロー
    2.3.1.1 第1ラジアル電磁石制御部C1Xの制御フロー
 図7は、第1ラジアル電磁石制御部C1Xの制御フローを示すフローチャートである。第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、回転軸27の磁気浮上を開始する指令を受けると、S1000Xにおいて、第1ラジアル電磁石M1XaとM1Xbに対して、それぞれ初期値I X10とI -X10のバイアス電流を供給して磁気浮上を開始させる。初期値I X10、I -X10は、上述のとおり、回転軸27を目標位置X 10に合わせるためのEM吸引力F X10とF -X10を、第1ラジアル電磁石M1XaとM1Xbのそれぞれに発生させるために必要な電流値である。そのため、回転軸27に対して、EM吸引力F X10とF -X10以外に外力が加わらない限り、回転軸27が目標位置X 10付近で磁気浮上する。磁気浮上が開始された後、第1ラジアル変位センサS1Xから第1ラジアル電磁石制御部C1Xへの検出信号の出力が開始される。
[0101]
 S1010Xにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、第1ラジアル変位センサS1Xの検出信号に基づいて、X軸方向における回転軸27の浮上位置の現在位置X 1を計測する。S1020Xにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、上記式(1)に従って、目標位置X 10と現在位置X 1との差ΔX 1を計算する。差ΔX 1は、回転軸27の目標位置X 10からの変位量である。差ΔX 1は、現在位置X 1が目標位置X 10を基準にプラス側にあるかマイナス側にあるかに応じて、プラスの値もマイナスの値もとり得る。具体的には、上記式(1)より、現在位置X 1が目標位置X 10よりもプラス側にある場合は、差ΔX 1はプラスの値となり、反対に、現在位置X 1が目標位置X 10よりもマイナス側にある場合は、差ΔX 1はマイナスの値となる。また、現在位置X 1が目標位置X 10と一致している場合は、差ΔX 1は「0」となる。
[0102]
 S1030Xにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、差ΔX 1のデータを統括制御部61に送信する。
[0103]
 一方、S1040Xにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、差ΔX 1に基づいて、差ΔX 1を「0」に近づけるための第1ラジアル電磁石M1XaとM1XbのそれぞれのEM吸引力の変化量ΔF X1とΔF -X1とを計算する。
[0104]
 すなわち、第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、回転軸27が目標位置X 10からプラス方向又はマイナス方向にどの程度変位したかに応じて、回転軸27を目標位置X 10に近づけるために、第1ラジアル電磁石M1Xa及びM1Xbの一方のEM吸引力を強く、他方のEM吸引力を弱くする。そのために、第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、第1ラジアル電磁石M1Xa及びM1Xbのそれぞれの変化量ΔF X1とΔF -X1を計算する。
[0105]
 このEM吸引力の変化量ΔF X1とΔF -X1は、対向して配置される各電磁石M1Xa及びM1Xbに対してそれぞれ割り当てられる力であり、各変化量ΔF X1とΔF -X1は、向きが異なるが、大きさは同じである。このEM吸引力の変化量ΔF X1とΔF -X1は、X軸方向において目標位置X 10から差ΔX 1変位した回転軸27を目標位置X 10に近づけるために、初期の吸引力F X10とF -X10に対して加減される。
[0106]
 例えば、図4Bにおいて、回転軸27の現在位置X 1が目標位置X 10からX軸方向においてプラス方向に変位している場合、すなわち、差ΔX 1がプラスの値となる場合は、回転軸27を目標位置X 10に戻すためにマイナス方向に移動させる必要がある。そのために、第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、第1ラジアル電磁石M1Xaのプラス方向のEM吸引力F X10をΔF X1分減少させ、第1ラジアル電磁石M1Xbのマイナス方向のEM吸引力F -X10をΔF -X1分増加させる。つまり、差ΔX 1がプラスの値となる場合は、マイナス方向のEM吸引力F -X10の変化量ΔF -X1がプラスの値となり、プラス方向のEM吸引力F X10の変化量ΔF X1がマイナスの値となる。
[0107]
 反対に、回転軸27の現在位置X 1が目標位置X 10からX軸方向においてマイナス方向に変位している場合、すなわち、差ΔX 1がマイナスの値となる場合は、回転軸27を目標位置X 10に近づけるためにプラス方向に移動させる必要がある。そのために、第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、マイナス方向のEM吸引力F -X10をΔF -X1分減少させ、プラス方向のEM吸引力F X10をΔF X1分増加させる。つまり、差ΔX 1がマイナスの値となる場合は、マイナス方向のEM吸引力F -X10の変化量ΔF -X1がマイナスの値となり、プラス方向のEM吸引力F X10の変化量ΔF X1がプラスの値となる。
[0108]
 このように、変化量ΔF X1と変化量ΔF -X1は、一方がプラスの値をとる場合は他方はマイナスの値となる。なお、差ΔX 1が「0」の場合は、変化量ΔF X1と変化量ΔF -X1も「0」である。
[0109]
 また、回転軸27を一方向に移動させる場合に、対向配置される各電磁石M1Xa及びM1Xbに対してそれぞれ同じ大きさの変化量ΔF X1と変化量ΔF -X1が割り当てられるのは、各電磁石M1Xa及びM1Xbによる力の制御範囲を大きくするためである。例えば、回転軸27を一方向に移動させるための力の変化量の割り当て方法として、第1ラジアル電磁石M1Xa又はM1Xbの一方に変化量のすべてを割り当てることも可能である。しかし、各電磁石の力の制御範囲には限界があるため、両方の電磁石に分散して変化量を割り当てた方が、一方の電磁石の力の制御範囲が飽和することを抑制することができる。これにより、各電磁石のトータルの力の制御範囲を大きくすることが可能になる。
[0110]
 S1050Xにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、EM吸引力の変化量ΔF X1とΔF -X1を発生するための第1ラジアル電磁石M1XaとM1Xbの電流のそれぞれの変化量ΔI X1とΔI -X1を計算する。電流の変化量ΔI X1は、プラス方向のEM吸引力の変化量ΔF X1がプラスのときはプラスの値をとり、マイナスのときはマイナスの値をとる。電流の変化量ΔI -X1も同様に、マイナス方向のEM吸引力の変化量ΔF -X1がプラスのときはプラスの値をとり、マイナスのときはマイナスの値をとる。なお、差ΔX 1が「0」の場合は、変化量ΔI X1とΔI -X1も「0」である。
[0111]
 このように、変化量ΔF X1と変化量ΔF -X1は、電流の変化量ΔI X1とΔI -X1は、プラスマイナスの符号が一致する。上述のとおり、変化量ΔF X1と変化量ΔF -X1は、一方がプラスの値をとる場合は他方はマイナスの値となるため、電流の変化量ΔI X1とΔI -X1も、一方がプラスの値をとる場合は他方はマイナスの値となる。
[0112]
 S1060Xにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、第1ラジアル電磁石M1XaとM1Xbに流すそれぞれの電流値I X1とI -X1を、次式(11)、(12)に従って計算する。
 I X1=I X10+ΔI X1  ・・・(11)
 I -X1=I -X10+ΔI -X1  ・・・(12)
[0113]
 電流の変化量ΔI X1とΔI -X1は、一方がプラスの値をとる場合は他方はマイナスの値となる。そのため、式(11)、(12)の計算においては、変化量ΔI X1の絶対値とΔI -X1の絶対値の一方は加算となり、他方は減算となる。したがって、式(11)、(12)の計算により、差ΔX 1がプラスで回転軸27をマイナス方向に移動させる場合には、プラス方向のEM吸引力F X10を発生させる電磁石M1Xaの電流の初期値I X10から電流の変化量ΔI X1の絶対値が減算される。他方、マイナス方向のEM吸引力F -X10を発生させる電磁石M1Xbの電流の初期値I -X10に電流の変化量ΔI -X1の絶対値が加算される。こうして、電流値I X1とI -X1がそれぞれ求められる。
[0114]
 反対に、差ΔX 1がマイナスで回転軸27をプラス方向に移動させる場合には、プラス方向のEM吸引力F X10を発生させる電磁石M1Xaの電流の初期値I X10にΔI X1の絶対値が加算される。他方、マイナス方向のEM吸引力F -X10を発生させる電磁石M1Xbの電流の初期値I -X10からΔI -X1が減算される。こうして、電流値I X1と電流値I -X1の絶対値がそれぞれ求められる。
[0115]
 図4Bに示したとおり、第1ラジアル電磁石M1XaとM1Xbは対向して配置されているため、X軸方向において一方がプラスで他方がマイナス方向のEM吸引力を発生する。そのため、図7の制御フローで示したとおり、回転軸27をX軸方向において一方の方向に変位させる場合には、第1ラジアル電磁石制御部C1Xにおいて、第1ラジアル電磁石M1XaとM1Xbの各EM吸引力の一方が強く、他方が弱くなるように、各電流値I X1とI -X1の一方を大きくして、他方を小さくする制御が行われる。各電流値I X1とI -X1のどちらを大きくし、どちらを小さくするかは、目標位置X 10を基準に回転軸27がどちらに変位しているかによって変化する。
[0116]
 S1070Xにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、計算した電流値I X1とI -X1を、接続されている電流制御器59に送信する。これにより、第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、電流制御器59を通じて、電磁石M1XaとM1Xbに、計算で求めた電流値I X1とI -X1の電流を流す(S1080X)。
[0117]
 第1ラジアル電磁石制御部C1Xは、磁気浮上の停止が指令されるまで、S1010XからS1080Xのステップを繰り返す。
[0118]
    2.3.1.2 第1ラジアル電磁石制御部C1Yの制御フロー
 図8は、第1ラジアル電磁石制御部C1Yの制御フローを示すフローチャートである。第1ラジアル電磁石制御部C1Yの制御フローは、X軸方向とY軸方向という制御の方向が異なるのみで、上述の図7に示す第1ラジアル電磁石制御部C1Xと同様であるので、同様の説明については適宜省略する。
[0119]
 S1000Yにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Yは、第1ラジアル電磁石M1YaとM1Ybに対して、それぞれ初期値I Y10、I -Y10のバイアス電流を供給して磁気浮上を開始させる。これにより、回転軸27に対して、EM吸引力F Y10とF -Y10以外に外力が加わらない限り、回転軸27が目標位置Y 10付近で磁気浮上する。第1ラジアル電磁石制御部C1Yは、S1010Yにおいて、第1ラジアル変位センサS1Yから入力される検出信号に基づいて、Y軸方向における回転軸27の浮上位置の現在位置Y 1を計測する。S1020Yにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Yは、上記式(2)に従って、目標位置Y 10と現在位置Y 1との差ΔY 1を計算する。
[0120]
 S1030Yにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Yは、差ΔY 1のデータを統括制御部61に送信する。
[0121]
 S1040Yにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Yは、差ΔY 1を「0」に近づけるための第1ラジアル電磁石M1YaとM1YbのそれぞれのEM吸引力の変化量ΔF Y1とΔF -Y1とを計算する。このEM吸引力の変化量ΔF Y1とΔF -Y1は、Y軸方向において、目標位置Y 10から差ΔY 1変位した回転軸27を目標位置Y 10に近づけるために、初期の吸引力F Y10とF -Y10に対して加減される。
[0122]
 S1050Yにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Yは、EM吸引力の変化量ΔF Y1とΔF -Y1を発生するための第1ラジアル電磁石M1YaとM1Ybの電流のそれぞれの変化量ΔI Y1とΔI -Y1を計算する。
[0123]
 S1060Yにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Yは、第1ラジアル電磁石M1YaとM1Ybに流すそれぞれの電流値I Y1とI -Y1を、次式(13)、(14)に従って計算する。
 I Y1=I Y10+ΔI Y1  ・・・(13)
 I -Y1=I -Y10+ΔI -Y1  ・・・(14)
[0124]
 図4Bに示したとおり、第1ラジアル電磁石M1YaとM1Ybは対向して配置されているため、Y軸方向において一方がプラスで他方がマイナス方向のEM吸引力を発生する。そのため、図8の制御フローで示したとおり、回転軸27をY軸方向において一方の方向に変位させる場合には、第1ラジアル電磁石制御部C1Yにおいて、第1ラジアル電磁石M1YaとM1Ybの各EM吸引力の一方が強く、他方が弱くなるように、各電流値I Y1とI -Y1の一方を大きくして、他方を小さくする制御が行われる。各電流値I Y1とI -Y1のどちらを大きくし、どちらを小さくするかは、目標位置Y 10を基準に回転軸27がどちらに変位しているかによって変化する。
[0125]
 S1070Yにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1Yは、計算した電流値I Y1とI -Y1を、接続されている電流制御器59に送信する。これにより、第1ラジアル電磁石制御部C1Yは、電流制御器59を通じて、電磁石M1YaとM1Ybに、計算で求めた電流値I Y1とI -Y1の電流を流す(S1080Y)。
[0126]
 第1ラジアル電磁石制御部C1Yは、磁気浮上の停止が指令されるまで、S1010YからS1080Yのステップを繰り返す。
[0127]
    2.3.1.3 第2ラジアル電磁石制御部C2Xの制御フロー
 図9は、第2ラジアル電磁石制御部C2Xの制御フローを示すフローチャートである。第2ラジアル電磁石制御部C2Xの制御フローも、上述の図7に示す第1ラジアル電磁石制御部C1Xと同様であるので、同様の説明については適宜省略する。
[0128]
 S2000Xにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Xは、第2ラジアル電磁石M2XaとM2Xbに対して、それぞれ初期値I X20、I -X20のバイアス電流を供給して磁気浮上を開始させる。これにより、回転軸27に対して、EM吸引力F X20とF -X20以外に外力が加わらない限り、回転軸27が目標位置X 20付近で磁気浮上する。第2ラジアル電磁石制御部C2Xは、S2010Xにおいて、第2ラジアル変位センサS2Xから入力される検出信号に基づいて、X軸方向における回転軸27の浮上位置の現在位置X 2を計測する。S2020Xにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Xは、上記式(5)に従って、目標位置X 20と現在位置X 2との差ΔX 2を計算する。
[0129]
 S2030Xにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Xは、差ΔX 2のデータを統括制御部61に送信する。
[0130]
 S2040Xにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Xは、差ΔX 2を「0」に近づけるための第2ラジアル電磁石M2XaとM2XbのそれぞれのEM吸引力の変化量ΔF X2とΔF -X2とを計算する。このEM吸引力の変化量ΔF X2とΔF -X2は、X軸方向において、目標位置X 20から差ΔX 2変位した回転軸27を目標位置X 20に近づけるために、初期の吸引力F X20とF -X20に対して加減される。
[0131]
 S2050Xにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Xは、EM吸引力の変化量ΔF X2とΔF -X2を発生するための第2ラジアル電磁石M2XaとM2Xbの電流のそれぞれの変化量ΔI X2とΔI -X2を計算する。
[0132]
 S2060Xにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Xは、第2ラジアル電磁石M2XaとM2Xbに流すそれぞれの電流値I X2とI -X2を、次式(15)、(16)に従って計算する。
 I X2=I X20+ΔI X2  ・・・(15)
 I -X2=I -X20+ΔI -X2  ・・・(16)
[0133]
 図4Dに示したとおり、第2ラジアル電磁石M2XaとM2Xbは対向して配置されているため、X軸方向において一方がプラスで他方がマイナス方向のEM吸引力を発生する。そのため、図9の制御フローで示したとおり、回転軸27をX軸方向において一方の方向に変位させる場合には、第2ラジアル電磁石制御部C2Xにおいて、第2ラジアル電磁石M2XaとM2Xbの各EM吸引力の一方が強く、他方が弱くなるように、各電流値I X2とI -X2の一方を大きくして、他方を小さくする制御が行われる。各電流値I X2とI -X2のどちらを大きくし、どちらを小さくするかは、目標位置X 20を基準に回転軸27がどちらに変位しているかによって変化する。
[0134]
 S2070Xにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Xは、計算した電流値I X2とI -X2を、接続されている電流制御器59に送信する。これにより、第2ラジアル電磁石制御部C2Xは、電流制御器59を通じて、電磁石M2XaとM2Xbに、計算で求めた電流値I X2とI -X2の電流を流す(S2080X)。
[0135]
 第2ラジアル電磁石制御部C2Xは、磁気浮上の停止が指令されるまで、S2010XからS2080Xのステップを繰り返す。
[0136]
    2.3.1.4 第2ラジアル電磁石制御部C2Yの制御フロー
 図10は、第2ラジアル電磁石制御部C2Yの制御フローを示すフローチャートである。第2ラジアル電磁石制御部C2Yの制御フローも、上述の図7に示す第1ラジアル電磁石制御部C1Xと同様であるので、同様の説明については適宜省略する。
[0137]
 S2000Yにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Yは、第2ラジアル電磁石M2YaとM2Ybに対して、それぞれ初期値I Y20、I -Y20のバイアス電流を供給して磁気浮上を開始させる。これにより、回転軸27に対して、EM吸引力F Y20とF -Y20以外に外力が加わらない限り、回転軸27が目標位置Y 20付近で磁気浮上する。第2ラジアル電磁石制御部C2Yは、S2010Yにおいて、第2ラジアル変位センサS2Yから入力される検出信号に基づいて、Y軸方向における回転軸27の現在位置Y 2を計測する。S2020Yにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Yは、上記式(6)に従って、目標位置Y 20と現在位置Y 2との差ΔY 2を計算する。
[0138]
 S2030Yにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Yは、差ΔY 2のデータを統括制御部61に送信する。
[0139]
 S2040Yにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Yは、差ΔY 2を「0」に近づけるための第2ラジアル電磁石M2YaとM2YbのそれぞれのEM吸引力の変化量ΔF Y2とΔF -Y2とを計算する。このEM吸引力の変化量ΔF Y2とΔF -Y2は、X軸方向において、目標位置Y 20から差ΔY 2変位した回転軸27を目標位置Y 20に近づけるために、初期の吸引力F Y20とF -Y20に対して加減される。
[0140]
 S2050Yにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Yは、EM吸引力の変化量ΔF Y2とΔF -Y2を発生するための第2ラジアル電磁石M2YaとM2Ybの電流のそれぞれの変化量ΔI Y2とΔI -Y2を計算する。
[0141]
 S2060Yにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Yは、第2ラジアル電磁石M2YaとM2Ybに流すそれぞれの電流値I Y2とI -Y2を、次式(17)、(18)に従って計算する。
 I Y2=I Y20+ΔI Y2    ・・・(17)
 I -Y2=I -Y20+ΔI -Y2  ・・・(18)
[0142]
 図4Dに示したとおり、第2ラジアル電磁石M2YaとM2Ybは対向して配置されているため、Y軸方向において一方がプラスで他方がマイナス方向のEM吸引力を発生する。そのため、図10の制御フローで示したとおり、回転軸27をY軸方向において一方の方向に変位させる場合には、第2ラジアル電磁石制御部C2Yにおいて、第2ラジアル電磁石M2YaとM2Ybの各EM吸引力の一方が強く、他方が弱くなるように、各電流値I Y2とI -Y2の一方を大きくして、他方を小さくする制御が行われる。各電流値I Y2とI -Y2のどちらを大きくし、どちらを小さくするかは、目標位置Y 20を基準に回転軸27がどちらに変位しているかによって変化する。
[0143]
 S2070Yにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2Yは、計算した電流値I Y2とI -Y2を、接続されている電流制御器59に送信する。これにより、第2ラジアル電磁石制御部C2Yは、電流制御器59を通じて、電磁石M2YaとM2Ybに、計算で求めた電流値I Y2とI -Y2の電流を流す(S2080Y)。
[0144]
 第2ラジアル電磁石制御部C2Yは、磁気浮上の停止が指令されるまで、S2010YからS2080Yのステップを繰り返す。
[0145]
   2.3.2 アキシャル電磁石制御部の制御フロー
 図11は、アキシャル電磁石制御部CZの制御フローを示すフローチャートである。アキシャル電磁石制御部CZの制御フローも、X軸方向とZ軸方向という制御の方向が異なるのみで、上述の図7に示す第1ラジアル電磁石制御部C1Xと同様であるので、同様の説明については適宜省略する。
[0146]
 S3000Zにおいて、アキシャル電磁石制御部CZは、アキシャル電磁石MZaとMZbに対して、それぞれ初期値I Z0、I -Z0のバイアス電流を供給して磁気浮上を開始させる。これにより、回転軸27に対して、EM吸引力F Z0とF -Z0以外に外力が加わらない限り、回転軸27が目標位置Z 0付近で磁気浮上する。アキシャル電磁石制御部CZは、S3010Zにおいて、アキシャル変位センサSZから入力される検出信号に基づいて、Z軸方向における回転軸27の現在位置Zを計測する。S3020Zにおいて、アキシャル電磁石制御部CZは、上記式(9)に従って、目標位置Z 0と現在位置Zとの差ΔZを計算する。
[0147]
 S3030Zにおいて、アキシャル電磁石制御部CZは、差ΔZのデータを統括制御部61に送信する。
[0148]
 S3040Zにおいて、アキシャル電磁石制御部CZは、差ΔZを「0」に近づけるためのアキシャル電磁石MZaとMZbのそれぞれのEM吸引力の変化量ΔF ZとΔF -Zとを計算する。このEM吸引力の変化量ΔF ZとΔF -Zは、Z軸方向において、目標位置Z 0から差ΔZ変位した回転軸27を目標位置Z 0に近づけるために、初期の吸引力F Z0とF -Z0に対して加減される。
[0149]
 S3050Zにおいて、アキシャル電磁石制御部CZは、EM吸引力の変化量ΔF ZとΔF -Zを発生するためのアキシャル電磁石MZaとMZbの電流のそれぞれの変化量ΔI ZとΔI -Zを計算する。
[0150]
 S3060Zにおいて、アキシャル電磁石制御部CZは、アキシャル電磁石MZaとMZbに流すそれぞれの電流値I ZとI -Zを、次式(19)、(20)に従って計算する。
 I Z=I Z0+ΔI Z  ・・・(19)
 I -Z=I -Z0+ΔI -Z  ・・・(20)
[0151]
 図5に示したとおり、アキシャル電磁石MZaとMZbは対向して配置されているため、Z軸方向において一方がプラスで他方がマイナス方向のEM吸引力を発生する。そのため、図11の制御フローで示したとおり、回転軸27をZ軸方向において一方の方向に変位させる場合には、アキシャル電磁石制御部CZにおいて、アキシャル電磁石MZaとMZbの各EM吸引力の一方が強く、他方が弱くなるように、各電流値I ZとI -Zの一方を大きくして、他方を小さくする制御が行われる。各電流値I ZとI -Zのどちらを大きくし、どちらを小さくするかは、目標位置Z 0を基準に回転軸27がどちらに変位しているかによって変化する。
[0152]
 S3070Zにおいて、アキシャル電磁石制御部CZは、計算した電流値I ZとI -Zを、接続されている電流制御器59に送信する。これにより、アキシャル電磁石制御部CZは、電流制御器59を通じて、電磁石MZaとMZbに、計算で求めた電流値I ZとI -Zの電流を流す(S3080Z)。
[0153]
 アキシャル電磁石制御部CZは、磁気浮上の停止が指令されるまで、S3010ZからS3080Zのステップを繰り返す。
[0154]
   2.3.3 統括制御部の制御フロー
 図12は、統括制御部61の制御フローを示すフローチャートである。図12において、統括制御部61は、レーザ制御部17からファン26の回転を開始する指令や目標回転数Rtを受信する(S4010)。統括制御部61は、目標回転数Rtを受信すると、S4020において、レーザ制御部17に対して、軸受制御が完了していないことを表す軸受制御NG信号を送信して、回転軸27が適切に磁気浮上しているか否かの監視と、ファン26を目標回転数Rtで回転させるための制御とを開始する。
[0155]
 S4030において、統括制御部61は、ファン26の回転数が目標回転数Rtとなるようにインバータ34を介してモータ31を制御する。
[0156]
 S4040において、統括制御部61は、第1ラジアル電磁石制御部C1X、C1Y、第2ラジアル電磁石制御部C2X、C2Y、及びアキシャル電磁石制御部CZからそれぞれ受信した、回転軸27の浮上位置の各軸方向における現在位置と各目標位置との差ΔX 1、ΔY 1、ΔX 2、ΔY 2、ΔZのデータを読み込む。
[0157]
 S4050において、統括制御部61は、各目標位置との差ΔX 1、ΔY 1、ΔX 2、ΔY 2、ΔZは、すべて許容範囲内か否かを判定する。具体的には、統括制御部61は、各差ΔX 1、ΔY 1、ΔX 2、ΔY 2、ΔZの絶対値が、以下の条件式(21)~(25)を満足するかを判定する。
 |ΔX 1|≦X1tr  ・・・(21)
 |ΔY 1|≦Y1tr  ・・・(22)
 |ΔX 2|≦X2tr  ・・・(23)
 |ΔY 2|≦Y2tr  ・・・(24)
 |ΔZ|≦Ztr   ・・・・(25)
 ここで、X1tr、Y1tr、X2tr、Y2tr、Ztrは、各目標位置を基準にプラス方向及びマイナス方向で許容される誤差の範囲を示す。
[0158]
 統括制御部61は、各差ΔX 1、ΔY 1、ΔX 2、ΔY 2、ΔZの値がすべて許容範囲であると判定した場合(S4050でY)には、S4060において、レーザ制御部17に対して、回転軸27が適正な浮上位置において目標回転数Rtで回転していることを表す軸受制御OK信号を送信する。一方、S4050において、各差ΔX 1、ΔY 1、ΔX 2、ΔY 2、ΔZの値のうち、1つでも許容範囲外であると判定した場合(S4050でN)は、統括制御部61は、S4090に進み、レーザ制御部17に対して軸受制御NG信号を送信する。統括制御部61は、軸受制御NG信号を送信後、S4040、S4050のステップを繰り返して、各差ΔX 1、ΔY 1、ΔX 2、ΔY 2、ΔZの値がすべて許容範囲になるのを監視する。
[0159]
 統括制御部61は、レーザ制御部17に対して軸受制御OK信号を送信した後、レーザ制御部17からファン26の回転を停止する指令を受信するまでの間(S4070でN)、S4040以下のステップを繰り返して、回転軸27の浮上位置が許容範囲内にあるか否かの監視を継続する。
[0160]
 統括制御部61は、レーザ制御部17からファン26の回転を停止する指令を受信した場合(S4070でY)は、S4080において、ファン26の回転数が「0」になるようにインバータ34を介してモータ31を制御して、ファン26の回転を停止させる。
[0161]
  2.4 ガスレーザ装置のレーザ発振動作
 図1に示すように、レーザ制御部17は、統括制御部61から軸受制御OK信号を受信後、露光装置制御部3aから目標パルスエネルギEtのデータと発振トリガ信号を受信した場合は、目標パルスエネルギEtとなるように充電器11に所定の充電電圧Vhvを設定する。そして、発振トリガ信号に同期させて、パルスパワーモジュール12内のスイッチ12aを動作させて、一対の放電電極21a及び21b間に高電圧を印加する。その結果、放電電極21a及び21b間で放電し、レーザガスが励起されてパルスレーザ光が放出される。
[0162]
 レーザガスから放出されたパルスレーザ光は、レーザ共振器を構成する狭帯域化モジュール18と出力結合ミラー19で反射されて、レーザ共振器内でレーザ発振する。レーザ共振器内を往復するパルスレーザ光は、狭帯域化モジュール18によって狭帯域化されて、その一部が出力結合ミラー19から出力される。
[0163]
 出力結合ミラー19から出力されたパルスレーザ光の一部は、パルスエネルギ計測器13に入射し、ビームスプリッタ13aによって一部は反射されて、集光光学系13bを介して光センサ13cに入射する。光センサ13cにおいて、パルスレーザ光のパルスエネルギが検出される。ビームスプリッタ13aを透過したパルスレーザ光は、露光装置3に入射する。
[0164]
 パルスエネルギ計測器13は、検出したパルスエネルギのデータを、レーザ制御部17に送信する。レーザ制御部17は、目標パルスエネルギEtと実際に出力されたパルスエネルギEの差ΔEに基づいて、目標パルスエネルギEtとなるように充電電圧Vhvをフィードバック制御する。
[0165]
 レーザ制御部17は、新たに設定する充電電圧Vhvが許容範囲の最大値よりも大きくなった場合、ガス給排気装置16を制御して、所定のガス圧になるまでレーザチャンバ10内にレーザガスを供給する。一方、レーザ制御部17は、新たに設定する充電電圧Vhvが許容範囲の最小値よりも小さくなった場合、ガス給排気装置16を制御して、所定のガス圧になるまでレーザチャンバ10内からレーザガスを排出する。
[0166]
 レーザチャンバ10内のガス圧が高くなると、モータ31の負荷が増大し、ファン26の回転数が目標回転数Rtに維持できなくなる場合がある。この場合、磁気軸受制御部40は、回転検出部33の検出信号に基づいてファン26の回転数を計測し、ファン26の回転数が目標回転数Rtとなるように、インバータ34の出力周波数及び出力電圧を制御してモータ31の回転数及びトルクを制御する。
[0167]
 これにより、磁気軸受制御部36は、レーザチャンバ10内のガス圧が変化しても、ファン26の回転数を目標回転数Rtに維持することができる。
[0168]
  2.5 課題
 比較例に係るガスレーザ装置2は、モータ31の駆動軸31aからファン26の回転軸27にトルクを伝達する磁気カップリング32と、回転軸27の変位に基づいて回転軸27の浮上位置を調節する磁気軸受システム40とを組み合わせて使用する。そして、比較例に係るガスレーザ装置2は、磁気カップリング32のCP吸引力Fcpが作用するZ軸方向における回転軸27の位置調節を、回転軸27の変位のみに基づいて行っている。この場合、次に示すように、回転軸27の浮上位置の位置調節の制御がしにくいという課題があった。
[0169]
 上述したとおり、アキシャル方向にCP吸引力Fcpを発生させる磁気カップリング32を使用する場合、図5に示したように、CP吸引力Fcpは、アキシャル軸受部AXBにおける力の釣り合いの関係に影響を及ぼす。実際には、このCP吸引力Fcpは、一定ではなく、モータ31が発生するトルクに応じて変化する。具体的には、CP吸引力Fcpは、磁気カップリング32における、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの位相差を角度で表した位相差角度θの大きさに応じて変化する。
[0170]
 すなわち、図13に示すように、磁気カップリング32は、位相差角度θに応じて変化するCP吸引力Fcpθを発生し、このCP吸引力Fcpθの変動がアキシャル軸受部AXBにおける力の釣り合いの関係に影響を及ぼす。
[0171]
 図14及び図15は、位相差角度θを説明するための模式図である。図14Aに示すように、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bは、それぞれにおいて周方向に配置されたN極とS極の磁極が相互に対向して配置される。図14B及び図15は、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの各磁極の対向状態が明確になるように、駆動側ロータ部32aを外輪に、従動側ロータ部32bを内輪とする同心円で示した模式図である。
[0172]
 図14Bは、位相差が無い状態、すなわち、位相差角度θ=0の場合の各磁極の対向状態を示す。モータ31が停止している状態では、トルクが0である。そのため、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bのそれぞれのすべての磁極において、互いに引き合うN極とS極同士が対向しており、N極とN極、S極とS極といった同極同士が対向している部分が無い。この状態が位相差角度θ=0の対向状態であり、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの初期位置である。
[0173]
 一方、図15は、位相差が有る状態、すなわち、位相差角度θ≠0の場合の各磁極の対向状態を示す。モータ31が回転している状態では、駆動側ロータ部32aから、従動側ロータ部32bに対して、従動側ロータ部32bを従動回転させるためのトルクが発生する。トルクは、モータ31の回転速度が変化する場合だけでなく、定速回転している場合にも発生する。従動側ロータ部32bが連結されているファン26は、レーザガスが封入されたレーザチャンバ10内で回転するため、ファン26に対して負荷が掛かるためである。
[0174]
 このようなトルクが発生すると、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bは、図14Bに示す初期の対向状態を維持することができなくなり、図15に示すように、対向状態に位相差が生じる。位相差角度θは、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bのそれぞれのN極とS極の対向状態において、位相差が無い状態の初期の対向状態からのずれの角度である。図15においては、外輪に位置する駆動側ロータ部32aを基準とすると、内輪の従動側ロータ部32bが初期の対向状態から時計方向に約10°回転している状態であり、この場合の位相差角度θは約10°となる。
[0175]
 図16は、CP吸引力Fcpθと位相差角度θとの対応関係を示すグラフである。図16に示すように、磁気カップリング32の吸引力Fcpθは、位相差が無い状態、すなわち、位相差角度θが「0」の初期の対向状態で最大となり、位相差角度θが大きくなるほど減少する。CP吸引力Fcpθは、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの各磁極間で発生する吸引力の総和である。そのため、各磁極において、N極とS極が、位相差が無い状態で対向している場合にCP吸引力Fcpθが最大となる。そして、位相差が生じると、各磁極において同極同士が対向する部分が生じる。同極同士が対向する部分は、反発力を発生するため、その分CP吸引力Fcpθは減少することになる。図16のグラフはこうした関係を示している。
[0176]
 本例の磁気カップリング32は、各磁極の中心角αが45°の8極タイプを例にしているため、図16のグラフに示すように、位相差角度θが中心角αの半分、すなわち、θ=1/2・α=22.5°のときにCP吸引力Fcpθが「0」になる。位相差角度θが22.5°の場合は、吸引力を発生する異極同士が対向する部分と、反発力を発生する同極同士が対向する部分とが、丁度半分半分になるためである。位相差角度θが1/2・α=22.5°を超えると、反発力が強くなるため、CP吸引力Fcpθはマイナスとなり、もはや磁気カップリング32として機能しない。
[0177]
 図17及び図18は、CP吸引力Fcpθが変動した場合のアキシャル軸受部AXBにおける力の釣り合いの関係を示す。図17は、位相差角度θが0°の場合において、回転軸27を目標位置Z 0に合わせる場合の力の釣り合いの関係を示す。ここで、位相差角度θ=0°の状態のCP吸引力Fcpθを、特にCP吸引力Fcp0、あるいは初期値Fcp0という。
[0178]
 図17に示すように、アキシャル電磁石MZaがEM吸引力F Zとして、バイアス電流に応じた初期値F Z0を発生する場合は、Z軸方向のプラス方向には、EM吸引力F Z0とCP吸引力Fcp0が作用する。これらのトータルの力をFt Zとすると、対向するアキシャル電磁石MZbにおいて、EM吸引力F -Zとして、力Ft Zと同じ大きさで向きがマイナス方向のEM吸引力F -Z0を発生する力とが釣り合う。マイナス方向の力は、アキシャル電磁石MZbが発生するEM吸引力しかないため、マイナス方向のトータルの力は、EM吸引力F -Z0がトータルの力Ft -Zである。力Ft ZとFt -Z以外に力が加わらなければ回転軸27を目標位置Z 0に合わせることができる。この場合の釣り合いの関係は、次式(26)、(27)のようになる。
 Ft Z=F Z0+Fcp0 ・・・(26)
 Ft Z=Ft -Z=F -Z0  ・・・・・・(27)
[0179]
 一方、図18に示すように、位相差が発生し、位相差角度θ≠0°になると、CP吸引力FcpθはCP吸引力Fcpの初期値Fcp0から変動する。具体的には、初期値Fcp0はCP吸引力Fcpの最大値であるため、位相差角度θの大きさに応じて減少する。すなわち、初期値Fcp0をCP吸引力の基準値とした場合は、基準値に対する変動分は、初期値Fcp0からの減少分ΔFcpθである。そのため、位相差が発生すると、Z軸方向において回転軸27に対して作用するプラス方向の力はΔFcpθ分減少し、プラス方向に作用するトータルの力Ft Zも、ΔFcpθ分減少する。
[0180]
 この場合、アキシャル電磁石MZbのEM吸引力F -Zが初期のEM吸引力 -Z0のままだと、回転軸27を目標位置Z 0に合わせることができないので、トータルの力Ft Zと向きが反対のマイナス方向の力Ft -Zと同じ力に補正する必要がある。この場合の力の釣り合いの関係は、次式(28)、(29)のようになる。
 Ft Z=F Z0+Fcpθ=F Z0+Fcp0-ΔFcpθ ・・・(28)
 Ft Z=Ft -Z=F -Z0-ΔFcpθ ・・・・・・(29)
[0181]
 このように、磁気カップリング32のCP吸引力が変動すると、回転軸27の力の釣り合に影響する。
[0182]
 図19及び図20は、回転軸27に外力が加わって目標位置Z 0が変位した場合に、回転軸27を目標位置Z 0に近づけるために、アキシャル電磁石制御部CZが行う制御の例を示す。図19は、CP吸引力Fcpが初期値Fcp0の場合の例であり、図20は、外力に加えて、磁気カップリング32に位相差角度θの位相差が発生して、CP吸引力Fcpが初期値Fcp0からFcpθに減少した場合の例である。
[0183]
 図19において、図19Aは、図17で示したように、CP吸引力Fcpが初期値Fcp0で、かつ、回転軸27が目標位置Z 0において、回転軸27に対する作用する力Ft Zと力Ft -Zが上記式(26)、(27)の関係で釣り合っている状態を示す。
[0184]
 この状態で、図19Bに示すように、回転軸27に対してマイナス方向に外力EF1が加わった場合を考える。この場合、外力EF1によって、回転軸27が目標位置Z 0からマイナス方向に移動して、浮上位置の現在位置ZがZ 1に変位する。回転軸27の変位量ΔZは、ΔZ 1=Z 1-Z 0となる。回転軸27が目標位置Z 0から変位すると、図11の制御フローで示したとおり、アキシャル電磁石制御部CZは、回転軸27を目標位置Z 0に近づけるように、アキシャル電磁石MZaとMZbのEM吸引力を変化させる。
[0185]
 具体的には、図19Cに示すように、アキシャル電磁石制御部CZは、回転軸27を目標位置Z 0に近づけるために、マイナス方向の外力EF1に対向するプラス方向の力CF1を計算する。力CF1は、図11のS3040Zのステップで示したように、アキシャル電磁石MZaとMZbのEM吸引力F ZとF -Zの変化量ΔF Z1とΔF -Z1として計算される。アキシャル電磁石制御部CZは、プラス方向の初期のEM吸引力F Z0に変化量ΔF Z1が加算され、マイナス方向に力の初期のEM吸引力F -Z0から変化量ΔF -Z1が減算されるように、各アキシャル電磁石MZaとMZbのEM吸引力F ZとF -Zを制御する。EM吸引力F ZとF -Zの制御は、図11のS3050Z、S3060Zに示したように、アキシャル電磁石MZaとMZbに流す電流値を制御することにより行われる。
[0186]
 CP吸引力Fcpが初期値Fcp0から変動しない場合は、回転軸27に対する力の釣り合いの関係に変化はない。そのため、アキシャル電磁石制御部CZは、回転軸27の変位のみに基づいて変化量ΔF Z1とΔF -Z1を計算すれば、回転軸27を目標位置Z 0に近づける制御を行うことができる。
[0187]
 これに対して、図20に示すように、位相差が発生してCP吸引力Fcpが初期値Fcp0からFcpθに変化する場合においては、回転軸27の変位に基づく制御のみでは、適切な制御ができない場合がある。
[0188]
 図20において、図20Aは、図19Aと同様に、CP吸引力Fcpが初期値Fcp0で、かつ、回転軸27が目標位置Z 0において、回転軸27に対する作用する力Ft Zと力Ft -Zとが上記式(26)、(27)の関係で釣り合っている状態を示す。
[0189]
 この状態で、図20Bに示すように、回転軸27に対してマイナス方向に、図19Bに示したのと同様の外力EF1が加わった場合を考える。この場合、外力EF1によって、回転軸27が目標位置Z 0からマイナス方向に移動して、浮上位置の現在位置ZがZ 1に変位する。回転軸27の変位量ΔZは、ΔZ 1=Z 1-Z 0となる。回転軸27が目標位置Z 0から変位すると、図11の制御フローに従って、アキシャル電磁石制御部CZは、回転軸27を目標位置Z 0に近づけるように、アキシャル電磁石MZaとMZbのEM吸引力を変化させる。
[0190]
 アキシャル電磁石制御部CZは、図19Bと同じ変位量ΔZ 1であるため、回転軸27を目標位置Z 0に戻すための力CF1として、アキシャル電磁石MZaとMZbのEM吸引力F ZとF -Zの変化量をΔF Z1とΔF -Z1として計算する。
[0191]
 図20Bにおいては、図19Bと異なり、こうした制御を行うタイミングで、CP吸引力Fcpが初期値Fcp0からFcpθに減少していたとする。そうすると、図20Cに示すように、アキシャル電磁石MZaのEM吸引力F Zに変化量ΔF Z1を加算し、アキシャル電磁石MZbのEM吸引力F -Zから変化量ΔF -Z1を減算するだけでは、図19Cの場合と比較して、外力EF1に対する反対方向の力CF1が、CP吸引力Fcpの減少分ΔFcpθ=Fcp0-Fcpθだけ不足することになる。
[0192]
 この場合、回転軸27に作用する力において、力CF1を加えたプラス方向の力(Fz+Fcp0―ΔFcpθ)よりも、マイナス方向に作用するアキシャル電磁石MZbのEM吸引力F -Zが大きいと、回転軸27が目標位置Z 0に戻るどころか、現在の浮上位置Z 1よりもさらにマイナス方向の浮上位置Z 2に変位してしまうおそれもある。
[0193]
 あるいは、力CF1を加えたプラス方向の力が、マイナス方向に作用するアキシャル電磁石MZbのEM吸引力F -Zより大きくても、その差が少ないと、目標位置Z 0に近づけるのに時間が掛かってしまう。
[0194]
 また、CP吸引力Fcpの変動は、回転軸27の力の釣り合いの関係に影響するため、回転軸27の変位として現れる。回転軸27が変位すれば、アキシャル電磁石制御部CZにより回転軸27の位置調節の制御が働く。しかし、これは逆に言えば、回転軸27が目標位置Z 0から変位しなければ、位置調節の制御が働かないことを意味し、CP吸引力Fcpの変動を、回転軸27の変位に基づいて吸収するのには、時間的な遅れが伴う。
[0195]
 このように、CP吸引力Fcpの変動は、磁気軸受システムにおける電磁石を用いた回転軸27の位置調節の制御に影響を及ぼす。そのため、比較例に係るガスレーザ装置2のように、回転軸27の位置調節を回転軸27の変位のみに基づいて行うだけでは、CP吸引力Fcpの変動に起因して、回転軸27を目標位置Z 0に近づけることができなかったり、目標位置Z 0に近づけるための制御に遅れが生じる場合があるなど、位置調節のための制御がし難い。
[0196]
 位置調節の制御がし難いと、ファン26の回転や回転軸27のアキシャル方向の浮上位置が不安定となることがある。第1磁気軸受28や第2磁気軸受29には、図2に示した構成要素の他に、緊急停止させる場合に機能するタッチダウンベアリングが組み込まれている。ファン26の回転や回転軸27のアキシャル方向の位置が不安定となると、タッチダウンベアリングを含めて、第1磁気軸受28や第2磁気軸受29が破損する可能性があった。特に、ガスレーザ装置2において、ファン26の回転軸27の位置調節の制御は、数百ミクロンのオーダで行われるものであり、迅速でかつ高精度な制御が要求される。
[0197]
 3.第1実施形態のガスレーザ装置
 図21から図34Bを参照して第1実施形態のガスレーザ装置を説明する。第1実施形態のガスレーザ装置の全体構成は、比較例に係るガスレーザ装置2と同様である。相違点は、ファン26の磁気軸受システム40Aであり、ガスレーザ装置の全体構成及びレーザ発振動作などの全体的な動作については説明を省略する。また、磁気軸受システム40Aについても、比較例に係る磁気軸受システム40と同様の構成については同様の符号を付し、説明についても適宜省略し、相違点を中心に説明する。
[0198]
  3.1 ファンの磁気軸受システムの構成
 図21は、第1実施形態に係る磁気軸受システム40Aの構成を示す。第1実施形態に係る磁気軸受システム40Aにおいて、図2に示す比較例と異なる構成上の相違点は、磁気カップリング32に磁束密度センサ63が設けられている点と、磁気軸受制御部36の代わりに磁気軸受制御部36Aが設けられている点と、磁気軸受制御部36AにCP吸引力計測部64が設けられている点である。
[0199]
   3.1.1 磁束密度センサ
 磁束密度センサ63は、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの磁極間の磁束密度を検出し、磁気軸受制御部36Aに送信する。磁束密度は、磁気カップリング32のCP吸引力Fcpを推定可能なパラメータである。こうしたパラメータを検出する磁束密度センサ63は、吸引力推定用センサに相当する。
[0200]
 CP吸引力計測部64は、磁束密度センサ63から受信した磁束密度に基づいて、CP吸引力Fcpを計測する。磁気軸受制御部36Aは、アキシャル変位センサSZが検出する回転軸27の変位に加えて、計測したCP吸引力Fcpに基づいて、アキシャル電磁石MZaとMZbのEM吸引力F ZとF -Zを制御して、Z軸方向における回転軸27の位置調節を行う。
[0201]
 図22において、図22Aに示すように、磁束密度センサ63は、センサ本体部63aと、センサ本体部63aを支持する支持ケース63bとを含む。図22Bに示すように、磁束密度センサ63は、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの磁極間に配置されている。磁束密度センサ63は、例えば、駆動側ロータ部32aとともにモータ固定部56(図21参照)内に収容されており、大気中に配置されている。磁束密度センサ63は、例えば従動側ロータ部32bが収容される第2ケース46の外壁面に取り付けられている。磁束密度センサ63は、例えばホール素子や磁気抵抗素子である。
[0202]
 図23において、図23Bは、モータ31の回転が停止している状態、すなわち、モータ31の回転数Rが「0」rpmの場合の駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの各磁極間の対向状態を示す。図23Bは、図14B及び図15と同様の模式図である。図23Aは、図23Bの対向状態における磁束密度Bの時間変化を示すグラフである。
[0203]
 図23Bに示すように、モータ31の回転数Rが「0」rpmの場合は、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの対向状態は、各磁極間に位相差が無い状態、すなわち、位相差角度θ=0°である。この場合は、図23Aに示すように、磁束密度Bは、最大値B 0で一定である。
[0204]
 一方、図24は、モータ31が回転を開始し、比較的低速の回転数R=r1rpmで定速回転している場合の例を示す。この例では、回転数Rが比較的低速であり、トルクQはほとんど発生しない理想状態を想定しており、そのため、図24Bに示すように、位相差もほとんど無く、位相差角度θ≒0の状態である。
[0205]
 この場合は、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bが初期の対向状態を維持したまま回転するため、磁束密度センサ63の位置を、駆動側ロータ部32aのN極と従動側ロータ部32bのS極が対向する部分と、駆動側ロータ部32aのS極と従動側ロータ部32bのN極が対向する部分が交互に入れ替わりながら通過する。これは、磁束密度センサ63の位置において、磁束の向きが180°異なる状態が一定間隔で変化することを意味する。そのため、図24Aに示すように、磁束密度センサ63の検出信号においては、絶対値がそれぞれ磁束密度B 0に相当する、プラス方向の出力値とマイナス方向の出力値が一定間隔で交互に繰り返される。
[0206]
 図25は、モータ31の回転数Rがr1rpmよりも早いr2rpmで定速回転している場合の例を示す。この例は、q1NmのトルクQが発生し、それにより、図25Bに示すように、位相差が発生し、位相差角度θが、例えば、中心角αの半分である1/2・45°=22.5°の状態になっている例である。
[0207]
 この場合は、磁気カップリング32は、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの一方のN極が、他方のN極とS極の半分ずつと対向している状態で回転する。そのため、磁束密度センサ63の位置を、一方のN極と他方のS極が対向している部分が通過する場合には、磁束密度Bが検出されるが、一方のN極と他方のN極、すなわち、同極同士が対向している部分は、磁極間を結ぶように磁束が発生しないため、磁極間に配置された磁束密度センサ63では、磁束密度Bは検出されない。
[0208]
 そのため、図25Aに示すように、磁束密度Bの時間変化においては、プラス方向の磁束密度B 0が検出される状態の後、いったん磁束密度Bが0になり、その後マイナス方向の磁束密度B 0が検出される状態が繰り返される。磁束密度Bが0になる時間は、同極同士が対向した部分が多いほど、すなわち、位相差角度θが大きいほど長くなる。
[0209]
 同極同士が対向する部分は反発力を発生する。そのため、図25に示すように、位相差角度θ=1/2・α=22.5°の場合は、同極同士が対向して反発力が発生する部分と異極同士が対向して吸引力が発生する部分の大きさが等しくなるため、各磁極の吸引力と反発力の合計は0になる。そのため、図16のグラフに示したとおり、磁気カップリング32のCP吸引力Fcpθは0になる。上述のとおり、この状態では、磁気カップリング32として機能しない。そのため、統括制御部61Aは、位相差角度θが22.5°未満の所定角度に達して、CP吸引力Fcpθが所定の下限値Fcpth以下にならないように、回転軸27を制御する。
[0210]
   3.1.2 磁気軸受制御部の構成
 図26に示すように、第1実施形態に係る磁気軸受制御部36Aは、CP吸引力計測部64に加えて、アンプ66、絶対値回路67、積分回路68、及びA/D変換器69を含む。また、磁気軸受制御部36Aは、アキシャル電磁石制御部CZに代えて、アキシャル電磁石制御部CZAを備えている。
[0211]
 アンプ66は、磁束密度センサ63からの検出信号を増幅する。絶対値回路67は、磁束密度センサ63から受信する検出信号の出力値を絶対値に変換する。積分回路68は、検出信号の出力値を積分して、積分値を電圧信号として出力する。A/D変換器69は、積分回路68から出力されるアナログの電圧信号をデジタル信号に変換して、これをAD変換値Adとして出力する。CP吸引力計測部64は、A/D変換器69から入力されるAD変換値Adに基づいて、平均磁束密度Bavを計算し、計算した平均磁束密度BavからCP吸引力Fcpを計測する。具体的には、以下のような処理を行う。
[0212]
   3.1.3 CP吸引力計測方法
 図27は、図24で示した例の磁束密度Bの検出信号を、絶対値|B|に変換する様子を示す。絶対値回路67は、図27Aに示すように、プラス方向とマイナス方向に交互に出力される磁束密度B 0の検出信号の出力値を、図27Bに示すように、すべてプラス方向に変換する。図28は、図28Aに示すように、図25で示した例の磁束密度Bの検出信号を、図28Bに示すように、絶対値|B|に変換する様子を示す。
[0213]
 積分回路68は、磁束密度Bの絶対値|B|を積分して平均磁束密度Bavを表すアナログの電圧信号を出力する。磁気カップリング32が回転している場合の平均磁束密度Bavは、絶対値|B|を時間で積分して、積分時間Tで割った値であり、以下の式(30)で求められる。
[数1]


 積分時間Tは、図27A及び図28Aに示すように、少なくとも1周期の時間間隔である。ここで、1周期は、磁束密度センサ63の位置に、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの一方のN極またはS極が進入を開始して、再び同極が進入する直前までの時間間隔である。本例の磁気カップリング32のように、各磁極の中心角αが45°の場合には、積分時間Tは、90°回転して、2つの磁極が通過する間の時間である。
[0214]
 図27Bおよび図28Bに示すように、Wは、磁気カップリング32が45°回転する時間Δt 45を1とした場合に、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの各磁極の異極同士が対向している部分が磁束密度センサ63の位置を通過する時間の時間割合を示す。
[0215]
 時間割合Wは、平均磁束密度Bavから次式(31)で求められる。
 W=Bav/B 0  ・・・・(31)
 時間割合W及び平均磁束密度Bavは、位相差角度θが大きくなるほど小さくなる。
[0216]
 駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの各磁極の異極同士が対向する部分のCP吸引力Fcpは、磁束密度Bの最大値B 0の絶対値|B 0|の二乗に比例し、各磁極の同極同士が対向する部分は磁束密度Bが「0」になるので、異極同士が対向する部分で発生するCP吸引力Fcpと同じ大きさの反発力が発生する。
 したがって、CP吸引力Fcpθは、次式(32)で求められる。
 Fcpθ=Kcp・(B 0 2・W-B 0 2・(1-W))
     =Kcp・B 0 2・(2W-1)
     =Kcp・B 0・(2Bav-B 0)  ・・・・(32)
 ここで、Kcpは比例定数である。
[0217]
 式(32)より、図27に示すように、位相差角度θ=0°の場合は、W=1となるので、Fcp0=Kcp・B 0 2となる。また、図28に示すように、位相差角度θ=22.5°の場合は、W=0.5となるので、Fcpθ(=22.5°)=0となる。なお、図示しないが、位相差角度θ=45°の場合は、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの各磁極はすべて同極同士が対向する。この場合は、W=0となるので、Fcpθ(=45°)=-Kcp・B 0 2となり、反発力が最大となる。
[0218]
  3.2 磁気軸受システムの動作
   3.2.1 ラジアル電磁石制御部の制御フロー
 第1実施形態に係る磁気軸受システム40Aにおいて、第1ラジアル電磁石制御部C1X、C1Y、第2ラジアル電磁石制御部C2X、C2Yの制御フローについては、図7から図10で示した比較例に係る制御フローと同様であるので、説明を省略する。
[0219]
   3.2.2 CP吸引力計測部の処理
 磁気軸受システム40Aにおいて、アキシャル電磁石制御部CZAがアキシャル軸受部AXBを制御するに際して、CP吸引力計測部64は、図29に示す手順で、CP吸引力Fcpθを計測する。
[0220]
 S5010において、CP吸引力計測部64は、積分回路68に対して、平均磁束密度Bavを測定するための積分時間Tを設定する。S5020において、CP吸引力計測部64は、積分回路68をリセットして、タイマをスタートさせる。CP吸引力計測部64は、タイマの時間tが積分時間Tに到達したら(S5030でY)、AD変換値AdをA/D変換器69から読み込む(S5040)。AD変換値Adは、時間tが積分時間Tに達した時点の積分回路68の積分値を表すデジタル信号である。S5050において、CP吸引力計測部64は、式(30)に従って、AD変換値AdをTで割って、平均磁束密度Bavを計算する。
[0221]
 S5060において、CP吸引力計測部64は、計算した平均磁束密度Bavに基づいて、式(32)に従って、CP吸引力Fcpθを計算により求める。S5070において、CP吸引力計測部64は、計測したCP吸引力Fcpθのデータを、電磁石制御部CZA及び統括制御部61Aに送信する。
[0222]
   3.2.3 アキシャル電磁石制御部CZAの制御フロー
 図30A及び図30Bは、第1実施形態に係るアキシャル電磁石制御部CZAの制御フローを示す。図30Aに示す前半のS3000ZからS3040Zのステップについては、図11に示す比較例に係るアキシャル電磁石制御部CZの制御フローと同様である。S3040Zのステップにおいては、回転軸27が目標位置Z 0から変位した場合に、現在位置Zとの差ΔZに基づいて、差ΔZを0に近づけるための、各電磁石MZaとMZbのEM吸引力F ZとF -Zの変化量ΔF ZとΔF -Zが計算される。
[0223]
 図30Bにおいて、アキシャル電磁石制御部CZAは、S3040Zの後、S3041Zにおいて、CP吸引力計測部64が計測したCP吸引力Fcpθを読み込む。次に、S3042Zにおいて、アキシャル電磁石制御部CZAは、CP吸引力Fcpの初期値Fcp0からの減少分ΔFcpθを、次式(33)に従って計算する。
 ΔFcpθ=Fcp0-Fcpθ  ・・・・(33)
[0224]
 S3043Zにおいて、アキシャル電磁石制御部CZAは、次式(34)、(35)に従って、回転軸27の変位に基づいて計算された、EM吸引力F ZとF -Zの変化量ΔF ZとΔF -Zを、減少分ΔFcpθで補正して、補正値ΔFc ZとΔFc -Zを計算する。
 ΔFc Z=ΔF Z+ΔFcpθ  ・・・・(34)
 ΔFc -Z=ΔF -Z  ・・・・(35)
[0225]
 そして、アキシャル電磁石制御部CZAは、S3050ZAにおいて、EM吸引力F ZとF -Zの変化量の補正値ΔFc ZとΔFc -Zを発生するための電磁石MZaとMZbの電流のそれぞれの変化量ΔI ZとΔI -Zを計算する。このように、アキシャル電磁石制御部CZAは、計測されたCP吸引力Fcpθの変動に応じて、アキシャル電磁石MZa及びMZbの磁力であるEM吸引力F ZとF -Zを補正する補正部に相当する。本例においては、アキシャル電磁石制御部CZAは、計測されたCP吸引力Fcpθと予め設定された基準値である初期値Fcp0との差である減少分ΔFcpθに基づいて、EM吸引力F ZとF -Zを補正する。
[0226]
 S3050ZAの後のS3060ZからS3080Zのステップは図11に示す比較例と同様である。すなわち、アキシャル電磁石制御部CZAは、S3060Zにおいて、アキシャル電磁石MZaとMZbの電流値I ZとI -Zを、式(19)、(20)に従って計算する。S3070Z及びS3080Zにおいて、電流制御器59を通じて、アキシャル電磁石MZaとMZbにそれぞれ電流値I ZとI -Zを流す。
[0227]
 また、上記制御フローにおいて、仮に回転軸27の浮上位置の現在位置Zと目標位置Z 0が一致し、ΔZ=「0」の場合でも、S3030ZからS3080Yまでのステップは実行される。つまり、ΔZ=「0」の場合でも、CP吸引力Fcpθに変動が生じた場合には、減少分ΔFcpθに基づいて、アキシャル電磁石MZaとMZbのEM吸引力F ZとF -Zの補正が実行される。この場合は、S3043Zにおいて、変化量ΔF ZとΔF -Zが「0」になるため、減少分ΔFcpθのみが補正値ΔFc Zとなる。そして、S3050ZAからS3080Zのステップが実行されて、結果として、EM吸引力F Zに対して、減少分ΔFcpθに相当する力の変化量ΔFc Zが加算される。
[0228]
  3.3 作用
 第1実施形態に係る磁気軸受制御部36Aは、このような制御を行うことによって、次のような作用効果が得られる。
   3.3.1 第1の効果
 図31に示すように、補正部に相当するアキシャル電磁石制御部CZAは、CP吸引力Fcpが変動して、減少分ΔFcpθがある場合は、CP吸引力Fcpと同じ向きのプラス方向に作用するトータルの力Ft Zに対して、減少分ΔFcpθを補償する補正を行う。具体的には、アキシャル電磁石MZaのEM吸引力F Z0に減少分ΔFcpθを加算する。この補正に際して、CP吸引力Fcpθは、CP吸引力計測部64が磁束密度センサ63の検出信号に基づいて計測する。
[0229]
 この場合の力の釣り合いの関係は、次式(36)、(37)のようになる。
 Ft Z=F Z+Fcp0=F Z0+Fcp0-ΔFcpθ+ΔFcpθ=F Z0+Fcp0  ・・・(36)
 Ft Z=Ft -Z=F -Z0  ・・・・・・(37)
[0230]
 図31に示すように、アキシャル電磁石制御部CZAは、Z軸方向において、回転軸27に対して作用するプラス方向の第1の力に相当するトータルの力Ft Zとマイナス方向の第2の力に相当するFt -Zとの2つの力が釣り合うように、アキシャル電磁石MZaの磁力であるEM吸引力F Zを、CP吸引力Fcpの変動分であるΔFcpθに基づいて補正する。ここで、第1の力に相当するトータルの力Ft Zには、CP吸引力Fcpとアキシャル電磁石MZaの磁力であるEM吸引力F Zが含まれ、第2の力に相当するFt -Zとには、アキシャル電磁石MZbの磁力であるEM吸引力F -Zが含まれる。
[0231]
 このようなCP吸引力Fcpの変動に応じた補正を行うため、第1実施形態のガスレーザ装置は、CP吸引力Fcpの変動が、ファン26の回転軸27の力の釣り合いの関係やアキシャル電磁石MZaとMZbとを用いた回転軸27の位置調節のための制御に与える影響を低減することができる。そのため、回転軸27の位置調節のための制御がしやすい。これにより、ファン26の回転や回転軸27の浮上位置を安定させることができ、第1磁気軸受28や第2磁気軸受29の破損の可能性を低減することできる。
[0232]
 また、補正に使用するCP吸引力Fcpθを、吸引力推定用センサに相当する磁束密度センサ63で検出される検出信号を用いて計測するから、CP吸引力Fcpθを正確に計測することができ、補正の精度が向上する。また、回転軸27の変位とは無関係に、センサを用いてCP吸引力Fcpθを計測して、CP吸引力Fcpに変動が生じた場合には補正を行うから、回転軸27が目標位置Z 0から変位しない場合でも補正が可能となる。そのため、位置調節の制御の時間的な遅れが少ない。その結果、従来と比較して、迅速でかつ高精度な制御が期待できる。
[0233]
 図32を用いて、具体例に即して作用効果を説明する。図32は、回転軸27に変位が生じた場合のアキシャル電磁石制御部CZAの制御の例を示す。図32において、図32Aは、比較例に係る図20Aと同様に、CP吸引力Fcpが初期値Fcp0で、かつ、回転軸27が目標位置Z 0において、図17で示した式(26)、(27)の条件で、プラス方向に作用する力Ft Zとマイナス方向に作用する力Ft -Zとが釣り合っている状態を示す。
[0234]
 この状態で、図32Bに示すように、回転軸27に対してマイナス方向に、図20Bに示したのと同様の外力EF1が加わった場合を考える。この場合、外力EF1によって、回転軸27が目標位置Z 0からマイナス方向に移動して、浮上位置ZがZ 1に変位する。回転軸27の変位量ΔZは、ΔZ 1=Z 1-Z 0となる。回転軸27に変位量ΔZが発生すると、アキシャル電磁石制御部CZAは、回転軸27を目標位置Z 0に戻すように、アキシャル電磁石MZaとMZbのEM吸引力を変化させる。
[0235]
 アキシャル電磁石制御部CZAは、図20Bと同じ変位量ΔZ 1であるため、回転軸27を目標位置Z 0に近づけるための力CF1として、アキシャル電磁石MZaとMZbのEM吸引力F ZとF -Zの変化量をΔF Z1とΔF -Z1を計算する。
[0236]
 図32Bにおいては、こうして変化量ΔF Z1とΔF -Z1を計算した際に、図20Bと同様に、CP吸引力Fcpが初期値Fcp0からFcpθに減少していたとする。この場合、図20に示した比較例と異なり、アキシャル電磁石制御部CZAは、回転軸27の変位量ΔZ 1に基づいて計算した変化量ΔF Z1とΔF -Z1を、CP吸引力Fcpθの減少分ΔFcpθに基づいて補正して、補正値ΔFc Z1とΔFc -Z1を計算する。ここで、ΔFc -Z1は、上記式(35)に示すように、ΔF -Z1と同じである。
[0237]
 図32Cに示すように、第1実施形態においては、比較例の図20Cと異なり、外力EF1に対向する力CF2は-ΔF -Z1+ΔFc Z1となり、ΔFc Z1に対しては減少分ΔFcpθが補償される。そのため、力CF1を加えたプラス方向の力(Fz+Fcp0)は、マイナス方向に作用するアキシャル電磁石MZbのEM吸引力F -Zより大きくなり、図20Cに示すように減少分ΔFcpθが不足することはない。このようにCP吸引力Fcpが変動した場合でも、減少分ΔFcpθが補償されるため、位置調節のための制御への影響が少ない。
[0238]
 そのため、回転軸27に目標位置Z 0からの変位が生じた場合でも、回転軸27を目標位置Z 0に近づけるための力の変化量を適切に与えることができる。これにより、比較例と比べて、位置調節の精度が向上し、位置調節の制御の時間的な遅れも低減できるので、迅速かつ高精度な制御が可能となる。
[0239]
   3.3.2 第2の効果
 また、本例においては、アキシャル電磁石制御部CZAは、EM吸引力の補正を、回転軸27に作用する力の釣り合いの初期条件が維持されるように、減少分ΔFcpθに基づいて行っている。ここで、初期条件とは、回転軸27に作用する力の釣り合いの関係であって、モータ31が停止しCP吸引力Fcpが基準値である初期値Fcp0に維持されている状態において、回転軸27の浮上位置を目標位置Z 0に合わせるための力の釣り合いの関係である。
[0240]
 つまり、上記式(36)、(37)において、回転軸27に作用するプラス方向とマイナス方向のトータルの力Ft Zと力Ft -Zとの釣り合いの関係は、上記式(26)、(27)で示した場合と同様に、磁気カップリング32が初期のCP吸引力Fcp0を発生している場合の力の釣り合いの関係と同じになる。このため、次のような効果が得られる。
[0241]
 Z軸方向における回転軸27に作用する力の釣り合いは、対向して配置されるアキシャル電磁石MZaとMZbが、プラス方向のEM吸引力F Zとマイナス方向のEM吸引力F -Zで回転軸27を引き合うことによって成立する。電磁石同士の引き合いで力を釣り合わせる関係は、プラス方向とマイナス方向に相互にバネで引っ張り合って力を釣り合わせる関係に類似する。例えば、バネが伸縮する場合にフックの法則に従って距離に応じてバネの反力が変化するのと同様に、電磁石に流す電流が変化しない場合でも、電磁石と回転軸27との距離によって回転軸27に作用する吸引力は変化する。
[0242]
 そのため、電磁石を使用する場合において、目標位置Z 0で釣り合わせるためのトータルの力Ft ZとFt -Zの大きさが変化するということは、バネを使用する場合にバネ定数が変化することに等しい。バネ定数が変化した場合、同じ変位量でも力の変化量が異なる。したがって、目標位置Z 0において釣り合わせるためのトータルの力Ft ZとFt -Zの大きさが変化した場合は、回転軸27の変位量が同じでも、回転軸27を目標位置Z 0に近づけるためのEM吸引力の変化量は変化する。
[0243]
 アキシャル電磁石MZaとMZbに設定される初期のEM吸引力F Z0とF -Z0は、磁気カップリング32がCP吸引力Fcpの初期値Fcp0を発生することを前提に設定される。また、アキシャル電磁石制御部CZAも、CP吸引力Fcpの初期値Fcp0を前提として、制御回路におけるゲインなどの最適値が設定されている。例えば、CP吸引力Fcpが初期値Fcp0であるという前提の下、回転軸27が目標位置Z 0からどの程度変位したら、目標位置Z 0に近づけるためにどの程度の力を発生させればよいか、そのためにどの程度の電流を流したらよいかといった値が計算されて、それに応じた最適値が設定される。
[0244]
 そのため、CP吸引力Fcpが変動して力の釣り合いの初期条件が変化すると、アキシャル電磁石制御部CZAに設定された最適値の前提が狂ってしまう。そうすると、回転軸27を目標位置Z 0に戻すためのEM吸引力の変化量が大きすぎたり、小さすぎたりということが生じ、適切な制御がし難くなる原因にもなる。本例では、回転軸27に作用する力の釣り合いの初期条件が維持されるため、このような不都合を回避することができ、より適切な制御が可能となる。
[0245]
   3.3.3 第3の効果
 さらに、図30A及び図30Bの制御フローに示したとおり、アキシャル電磁石制御部CZAは、変位センサSZによって検出した回転軸27の変位量である差ΔZに基づいて、現在位置Zを目標位置Z 0に近づけるためのEM吸引力F Z0とF -Z0の変化量ΔF ZとF -Zを計算し、計算した変化量ΔF ZとF -Zを減少分ΔFcpθに基づいて補正する。そのため、回転軸27の変位に基づいて変化量ΔF ZとF -Zを計算する処理は、比較例と共通にすることができるため、従来の回路部品等の流用が可能となり、低コスト化にも寄与する。
[0246]
 3.4 CP吸引力の異常判定
 図33から図34に示すように、統括制御部61Aは、CP吸引力Fcpを監視して、CP吸引力Fcpが所定の下限値Fcpthを下回った場合に、モータ31の回転を停止する制御を行う。統括制御部61Aはモータ制御部に相当する。
[0247]
 図33に示すように、CP吸引力Fcpθと位相差角度θとの対応関係を示すグラフにおいて、下限値Fcpthは、位相差角度θの上限値θcpthに対応するCP吸引力である。上限値θcpthは、中心角αが45°の本例の磁気カップリング32において、位相差角度θが22.5°未満の所定値に設定される。下限値Fcpthのデータは、統括制御部61Aの図示しない内部メモリに記憶されている。
[0248]
 図34A及び図34Bは、統括制御部61Aの制御フローである。図34Aに示す前半のS4010からS4040のステップは、比較例の図12に示す制御フローと同様である。図12との相違点は、図34Bに示すように、S4041、S4042、S4043のステップが追加されている点である。
[0249]
 統括制御部61Aは、S4041において、CP吸引力計測部64が計測したCP吸引力Fcpθを読み込む。S4042において、統括制御部61Aは、読み込んだCP吸引力Fcpθと下限値Fcpthとを比較して、CP吸引力Fcpθが下限値Fcpthを下回ったか否かを監視する。統括制御部61Aは、CP吸引力Fcpθが下限値Fcpth以上の場合は(S4042でY)、S4050以下のステップに進む。
[0250]
 一方、統括制御部61Aは、CP吸引力Fcpθが下限値Fcpthを下回った場合は(S4042でN)、S4043に進み、レーザ制御部17に対して磁気カップリング32のCP吸引力Fcpが異常である旨のCP吸引力異常信号を出力する。そして、統括制御部61Aは、S4080に進み、モータ31の回転を停止する。
[0251]
 CP吸引力Fcpが小さすぎると、モータ31のトルクがファン26に適切に伝達されず、モータ31が回転していても、モータ31に同期してファン26が回転しないおそれがある。また、CP吸引力が小さすぎると、ファン26の回転や回転軸27の位置が不安定になり、第1磁気軸受28及び第2磁気軸受29の損傷の原因にもなる。本例のように、CP吸引力Fcpθを監視して、下限値Fcpthを下回った場合にCP吸引力異常信号を出力することで、ファン26がモータ31に同期して回転しているか否かを検出することができる。加えて、CP吸引力Fcpの異常に起因して第1磁気軸受28及び第2磁気軸受29が損傷することを未然に防ぐことができる。
[0252]
  3.5 磁気カップリングの変形例
 本例では、磁気カップリング32として、中心角αが45°の磁極が8個ある8極タイプを例に説明したが、この例に限定されることなく、磁極の数nは2個以上、すなわち、n≧2であればよい。磁極の数をnとした場合の各磁極の中心角αは、α=360°/nとなる。
[0253]
  3.6 PID制御
 上述の比較例及び第1実施形態において、回転軸27の変位に応じた力の変化量ΔFを計算する場合には、実際には、PID制御が行われる。PID制御は、比例制御(P:proportional)と、積分制御(I:integral)と、微分制御(D:differential)からなる。比例制御は、回転軸27の目標位置からの変位量に応じて、目標位置に近づけるための力の変化量を変える制御である。積分制御は、変位量を積分して積分値に応じて力の変化量を調節する制御である。微分制御(D制御)は、前回の変位量と今回の変位量を比較してその差に応じて力の変化量を変える制御である。
[0254]
 こうしたPID制御は、フィードバック制御における周知の制御手法であり、特に磁気軸受のように電磁石を使用して回転軸27の位置を制御する不安定な系においては、回転軸27の振動を減衰させるなど回転軸27の位置を安定化させるために当然に必要となる制御である。上記例においては、説明の煩雑化を避けるため、便宜上、比例制御のみを行っている例で説明したが、実際には、比例制御に、積分制御及び微分制御を加えたPID制御が行われる。
[0255]
 アキシャル電磁石制御部CZAは、変位センサSZからの出力に基づいて計算した差ΔZを変位量として、PID制御を行う。こうしたPID制御を行うことで、回転軸27を目標位置Z 0に近づける位置調節において、回転軸27を迅速に目標位置Z 0に近づけつつ、回転軸27の振動的な動きを抑制することが可能となる。
[0256]
  3.7 その他
 本例では、磁束密度センサ63の出力を絶対値に変換する絶対値回路67を設けた例で説明したが、絶対値回路67を設けなくてもよい。図27A及び図28Aに示すように、位相差が発生すると、位相差角度θに応じて磁束密度Bの出力信号の時間幅は変化するので、プラス側だけの出力信号に基づいて演算を行ってもCP吸引力Fcpθを計測することが可能である。
[0257]
 また、図26に示す磁気軸受制御部36AのCP吸引力計測部64、電磁石制御部C1X、C1Y、C2X、C2Y、CZAは、高速制御を行うために、FPGA(field-programmable gate array)で構成してもよい。
[0258]
 また、本例において、予め設定されるCP吸引力Fcpの基準値を初期値Fcp0としている。CP吸引力Fcpは、モータが停止して、位相差が無い初期状態が最大値となり、これが初期値Fcp0に相当する。本例で示したように、初期値Fcp0を基準値に設定しておけば、変動分は初期値Fcp0からの減少分ΔFcpθのみとなる。そのため、CP吸引力の変動分の計算に際しては、増加分を考慮せずに済み、計算が容易になるなどの効果があるので、初期値Fcp0を基準値とすることが好ましい。しかし、基準値は必ずしも初期値Fcp0に設定しなくてもよい。
[0259]
 また、本例では、アキシャル電磁石制御部CZAは、計測されたCP吸引力Fcpと予め設定された基準値との差である変動分に基づいて、EM吸引力F ZとF -Zの補正量を計算している。しかし、アキシャル電磁石制御部CZAは、EM吸引力F ZとF -Zの補正量の計算に際して必ずしも変動分を求めなくてもよく、例えば、計測したCP吸引力Fcpの絶対値から直接、補正量を計算してもよい。
[0260]
 4.第2実施形態のガスレーザ装置
 図35から図47を参照して第2実施形態のガスレーザ装置を説明する。第2実施形態のガスレーザ装置の全体構成や、図35に示す磁気軸受システム40Bの基本的な構成は、第1実施形態のガスレーザ装置と同様である。相違点は、磁気軸受システム40BのCP吸引力計測方法である。より具体的には、第1実施形態に係る磁気軸受システム40Aは、吸引力推定用センサとして磁束密度センサ63を用い、磁束密度センサ63によって磁束密度そのものを検出して、磁気カップリング32のCP吸引力Fcpθを計測する。これに対して、第2実施形態に係る磁気軸受システム40Bは、吸引力推定用センサとして位相差センサを用い、位相差センサによって磁気カップリング32の位相差を検出してCP吸引力Fcpθを計測する。位相差は、CP吸引力Fcpθを推定可能なパラメータである。
[0261]
 第2実施形態に係る磁気軸受システム40Bは、こうしたCP吸引力計測方法が異なる以外は、第1実施形態に係る磁気軸受システム40Aと同様であるので、同様の構成については同様の符号を付し、説明を適宜省略し、相違点を中心に説明する。
[0262]
  4.1 ファンの磁気軸受システムの構成
 図35は、第2実施形態に係る磁気軸受システム40Bの構成を示す説明図である。第2実施形態に係る磁気軸受システム40Bにおいて、第1実施形態と異なる構成上の相違点は、第1に、磁気カップリング32に位相差センサとして磁束密度変化センサ71が設けられている点と、第2に、磁気軸受制御部36Aの代わりに磁気軸受制御部36Bが設けられている点である。加えて、第3に、CP吸引力計測部64の代わりにCP吸引力計測部64Bが設けられている点と、第4に、磁気軸受制御部36BにCP吸引力Fcpθと位相差角度θとの対応関係76を記憶する記憶部70が設けられている点である。
[0263]
   4.1.1 磁束密度変化センサ
 磁束密度変化センサ71は、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの磁極間の磁束密度の変化点を検出し、磁気軸受制御部36Bに送信する。磁束密度Bの変化点は、磁気カップリング32のCP吸引力Fcpθを推定可能なパラメータである。
[0264]
 CP吸引力計測部64Bは、磁束密度センサ63から受信した磁束密度Bの変化点の信号に基づいて、位相差である位相差角度θを計測する。記憶部70に記憶されているCP吸引力Fcpθと位相差角度θとの対応関係76は、図33のグラフに示した対応関係を表すデータである。CP吸引力計測部64Bは、計測した位相差角度θに基づいて、対応関係76を参照して、位相差角度θに対応するCP吸引力Fcpθを求める。
[0265]
 磁気軸受制御部36Bは、第1実施形態に係る磁気軸受制御部36Aと同様に、アキシャル変位センサSZが検出する回転軸27の変位に加えて、計測したCP吸引力Fcpに基づいて、アキシャル電磁石MZaとMZbのEM吸引力F ZとF -Zを制御する。この制御を通じて、Z軸方向における回転軸27の位置調節を行う。
[0266]
 図36において、図36Aに示すように、磁束密度変化センサ71は、センサ本体部71aと、センサ本体部71aを支持する支持ケース71bとを含む。図36Bに示すように、磁束密度変化センサ71は、第1実施形態に係る磁束密度センサ63と同様に、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの磁極間に配置されている。磁束密度変化センサ71の固定位置も、第2ケース46の外壁面であり、第1実施形態に係る磁束密度センサ63と同様である。磁束密度変化センサ71は、例えばピックアップコイルである。
[0267]
   4.1.2 CP吸引力計測方法
 図37に示すように、第2実施形態に係る磁気軸受制御部36Bは、CP吸引力計測部64B及び記憶部70に加えて、アンプ72、絶対値回路73、コンパレータ74を含む。また、磁気軸受制御部36Bは、アキシャル電磁石制御部CZAに代えて、アキシャル電磁石制御部CZBを備えている。
[0268]
 アンプ72は、磁束密度変化センサ71からの検出信号を増幅する。絶対値回路73は、磁束密度変化センサ71から受信する検出信号の出力値を絶対値に変換する。コンパレータ74は、磁束密度変化センサ71からの出力値である出力電圧と閾値電圧Vthとを比較して比較結果を出力する。
[0269]
 CP吸引力計測部64Bは、コンパレータ74から出力されるデータに基づいて、位相差角度θを計測する。具体的には、以下のような処理を行う。
[0270]
 図38から図40は、磁束密度変化センサ71の検出信号を説明する説明図である。図38Aは、磁気カップリング32の位相差角度θ=0°で、かつ、回転数R=0rmp、すなわち、回転が停止している場合の磁束密度変化センサ71の位置における磁束密度Bの時間変化を示す。この場合は、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bは、図23Bに示す初期の対向状態で停止しているため、図23Aでも示したとおり、磁束密度Bは最大値B 0で一定である。そのため、磁束密度Bの変化点は発生せず、図38Bに示すように、磁束密度変化センサ71の検出信号の出力も無い。
[0271]
 図39は、図24で示したのと同様に、モータ31が回転を開始し、比較的低速の回転数R=r1rpmで定速回転している場合の例を示す。この例では、回転数Rは比較的低速であるため、トルクQはほとんど発生せず、そのため、図39Bに示すように、位相差もほとんど無く、位相差角度θ≒0の状態である。
[0272]
 この場合は、図24で説明したとおり、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bが初期の対向状態を維持したまま回転するため、磁束密度変化センサ71の位置において、磁束の向きが180°異なる状態が一定間隔で変化する。そのため、磁束密度センサ63の検出信号においては、絶対値がそれぞれ磁束密度B 0に相当する、プラス方向の出力値とマイナス方向の出力値が一定間隔で交互に繰り返される。
[0273]
 この場合は、図39Bに示すように、磁束密度変化センサ71において、磁束密度Bのプラス方向への立ち上がりとマイナス方向への立ち下がりが磁束密度Bの変化点として検出される。変化点に対応するタイミングで、プラス方向とマイナス方向に一定間隔で検出信号が出力される。
[0274]
 図40は、図25で示したのと同様に、モータ31の回転数Rがr1rpmよりも早いr2rpmで定速回転している場合の例を示す。この例は、q1NmのトルクQが発生し、それにより、図40Aに示すように、位相差が発生し、位相差角度θ≠0となる例である。この場合は、図40Bに示すように、磁束密度変化センサ71において、磁束密度Bのプラス方向への立ち上がりとマイナス方向への立ち下がりが磁束密度Bの変化点として検出される。そして、本例のように、磁極の中心角αが45°の磁気カップリング32の場合には、位相差角度θは、図40Bに示す検出信号から、次式(38)で求められる。
 θ=(Δt w/Δt 45)・45°  ・・・(38)
[0275]
 式(38)において、図27及び図28で示したように、Wは、磁気カップリング32が45°回転する時間Δt 45を1とした場合に、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの各磁極の異極同士が対向している部分が磁束密度変化センサ71の位置を通過する時間の時間割合を示す。その反対に、Δt wは、時間Δt 45を1とした場合に、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの各磁極の同極同士が対向している部分が磁束密度変化センサ71の位置を通過する時間の時間割合を示す。すなわち、Δt w=Δt 45-W=1-Wという関係である。位相差角度が0の場合は、Δt 45とWがともに1となるため、Δt w=0である。Δt wが大きいほど、位相差角度θが大きくなる。
[0276]
 図41は、磁束密度変化センサ71から図39Bに示す検出信号が出力された場合における、絶対値回路73とコンパレータ74の処理を示す。磁束密度変化センサ71から、図41Aに示す検出信号が、絶対値回路73に入力されると、絶対値回路73は、検出信号の出力値を、図41Bに示すように、すべてプラス方向に変換する。
[0277]
 コンパレータ74は、絶対値回路73から出力される出力電圧Vと、閾値電圧Vthとを比較して、出力電圧が閾値電圧Vthを超えた場合には「1」に相当するハイレベルの電圧を出力し、閾値電圧Vth以下の場合は「0」に相当するローレベルの電圧を出力する。ハイレベルの電圧信号はパルス信号として検出され、ローレベルの電圧信号は出力が無いものと扱われる。
[0278]
 図41Cに示すように、PT1は、連続して出力される複数のパルス信号が出力される場合において、連続して出力される2発のパルス信号の時間間隔であるパルス間隔を示す。PT2は、連続して出力される3発のパルス信号の1発目と3発目の時間間隔であるパルス間隔を示す。
[0279]
 図41の場合は、磁気カップリング32は位相差が無い状態で定速回転しているため、図41Cにおいて、連続して出力される複数のパルス信号の時間間隔は一定である。そのため、パルス間隔PT1とPT2の関係は、次式(39)のようになる。
 PT2-2・PT1=0  ・・・(39)
 すなわち、パルス間隔PT1の2倍がパルス間隔PT2である。
[0280]
 図42は、磁束密度変化センサ71から図40Bに示す検出信号が出力された場合における、絶対値回路73とコンパレータ74の処理を示す。絶対値回路73は、磁束密度変化センサ71からの図42Aに示す検出信号を、図42Bに示すように、すべてプラス方向の信号に変換する。コンパレータ74は、図41で示したのと同様に、絶対値回路73から出力される出力電圧Vと、閾値電圧Vthとを比較して、出力電圧が閾値電圧Vthを超えた場合には「1」に相当するパルス信号を出力する。
[0281]
 図42の場合は、磁気カップリング32に位相差が発生している状態で、定速回転しているため、図42Cにおいて、連続して出力される複数のパルス信号の時間間隔は一定ではない。図40Bに示したΔt 45に応じたパルス間隔とΔt wに応じたパルス間隔が周期的に繰り返される。そのため、パルス間隔PT1とPT2の関係は、式(39)のように一義的には決まらず、1発目のパルス信号をどのパルス信号とするかに応じて、PT2がPT1の2倍よりも短くなる場合、すなわち、PT2-2・PT1<0の場合と、PT2がPT1の2倍よりも長くなる場合、すなわち、PT2-2・PT1>0の場合とが変化する。
[0282]
  4.2 磁気軸受システムの動作
 第2実施形態の磁気軸受システム40Bの動作は、CP吸引力計測部64Bの処理が、第1実施形態と異なるのみである。第1ラジアル電磁石制御部C1X、C1Y、第2ラジアル電磁石制御部C2X、C2Yの制御フローについては、図7から図10に示す比較例及び第1実施形態の制御フローと同様である。アキシャル電磁石制御部CZBの制御フローは、図30A及び図30Bに示す第1実施形態の制御フローと同様である。統括制御部61Bの制御フローは、図34A及び図34Bに示す第1実施形態の制御フローと同様である。そのため、これらの説明は省略し、相違点である、CP吸引力計測部64Bの処理のみを説明する。
[0283]
   4.2.1 CP吸引力計測部の処理
 図43に示すように、CP吸引力計測部64Bは、S6100において、位相差角度θを計測する。そして、S6200において、位相差角度θからCP吸引力Fcpθを計算する。最後に、S6300において、CP吸引力Fcpθのデータを、アキシャル電磁石制御部CZBと統括制御部61Bに送信する。
[0284]
 図44は、位相差角度θを計測する処理の詳細を示す。図44に示すように、S6101において、CP吸引力計測部64Bは、タイマをリセットして、タイマ値tを0にする。この後、S6102において、CP吸引力計測部64Bは、コンパレータ74から1発目のパルス信号が入力されるのを監視して、1発目のパルス信号が入力された時点で、タイマカウントをスタートさせる(S6103)。
[0285]
 タイマカウントをスタートさせた後、S6104において、CP吸引力計測部64Bは、2発目のパルス信号の入力を監視する。そして、2発目のパルス信号が入力された場合(S6104でY)に、その時点のタイマ値tを、パルス間隔PT1として取得する(S6105)。さらに、CP吸引力計測部64Bは、3発目のパルス信号の入力を監視して(S6106)、3発目のパルス信号が入力された場合(S6106でY)、その時点のタイマ値tをパルス間隔PT2として取得する(S6107)。
[0286]
 次に、CP吸引力計測部64Bは、取得したパルス間隔PT1とPT2に基づいて、次式(40)により、評価値Cを計算する(S6108)。
 C=PT2-2・PT1  ・・・(40)
[0287]
 S6109において、CP吸引力計測部64Bは、Cの値に応じて位相差角度θを計算する。S6109において、Cの値が0の場合は、上記式(39)で示したように、位相差が無いと評価できるので、S6110に進み、位相差角度θ=0°と判定する。
[0288]
 また、S6109において、Cの値が0より大きいか小さいかに応じて、CP吸引力計測部64Bは、評価値Cの判定方法を変える。これは、上述したとおり、パルス間隔PT1とPT2が、1発目のパルス信号をどのパルス信号とするかに応じて、PT2がPT1の2倍よりも短くなる場合、すなわち、C=PT2-2・PT1<0の場合と、PT2がPT1の2倍よりも長くなる場合、すなわち、C=PT2-2・PT1>0の場合があるためである。
[0289]
 S6109において、CP吸引力計測部64Bは、上記不等式の判定を行う。そして、評価値Cが0よりも大きい場合、すなわち、C=PT2-2・PT1>0の場合、CP吸引力計測部64Bは、S6111に進み、次式(41)の計算をして、位相差角度θを求める。
 θ=(PT1/PT2)・45°  ・・・(41)
[0290]
 S6109において、評価値Cが0よりも小さい場合、すなわち、すなわち、C=PT2-2・PT1<0の場合は、CP吸引力計測部64Bは、S6112に進み、次式(42)の計算をして、位相差角度θを求める。
 θ={(PT2-PT1)/T2}・45°  ・・・(42)
[0291]
 図45は、図43におけるS6200の位相差角度θからCP吸引力Fcpθの計算処理の詳細を示すフローチャートである。図45に示すように、CP吸引力計測部64Bは、S6201において、記憶部70から、対応関係76を読み出す。S6202において、CP吸引力計測部64Bは、対応関係76に基づいて、位相差角度θに対応するCP吸引力Fcpθを求める。
[0292]
 図46に示すように、対応関係76は、例えば位相差角度θの複数の角度のデータと、各角度に対応するCP吸引力Fcpθのデータとを対応付けて記録したテーブルデータ76Aである。テーブルデータ76Aにおいては、例えば位相差角度θが1°刻みで0°~22°のそれぞれに対応するCP吸引力Fcpθのデータが記録されている。
[0293]
 なお、CP吸引力計測部64Bは、位相差角度θが1°刻みで記録されたテーブルデータ76Aと補間法とを組み合わせて用いることにより、例えば2°と3°の間の中間値である2.5°に対応するCP吸引力Fcpθのデータなど、1°刻みで記録された2つの位相差角度θの間の中間値に対応するCP吸引力Fcpθのデータを求めてもよい。また、対応関係76としては、テーブルデータ76Aの代わりに、関数として記憶しておいてもよい。
[0294]
 また、例えば、磁気カップリング32毎の個体差を反映するために、磁気カップリング32毎に対応関係76を用意して、使用する磁気カップリング32に応じた対応関係76を記憶部70に記憶してもよい。この場合は、使用する磁気カップリング32毎に、予めCP吸引力Fcpθを測定して、1つ1つの磁気カップリング32毎に対応関係76が作成される。こうすればより正確にCP吸引力Fcpθを計測することができる。また、対応関係76は、磁気カップリング32の種類や仕様に応じて作成してもよい。
[0295]
  4.3 作用
 第2実施形態に係る磁気軸受システム40Bの作用としては、第1実施形態と同様に、上記第1から第3の効果が得られる。また、第2実施形態においては、磁束密度変化センサ71を用いて磁束密度Bの変化点を検出し、コンパレータ74を通じて、CP吸引力計測部64Bに対して2値化したデータが出力される。そのため、CP吸引力計測部64Bをデジタル回路で構成する場合には、積分回路68やA/D変換器69を使用しないため、処理の高速化の点で有利な場合がある。
[0296]
  4.4 CP吸引力の異常判定処理の変形例
 図47に示すように、CP吸引力Fcpの異常判定に際して、図34Bの処理に変えて、位相差角度θに基づいて行ってもよい。
[0297]
 この場合、統括制御部61Bは、位相差角度θの上限値θcpthを記憶しておく。そして、図47のS4041Bにおいて、統括制御部61Bは、上限値θcpthを読み込む。S4042Bにおいて、統括制御部61Bは、計測した位相差角度θが上限値θcpth以下の場合(S4042BでY)は、S4050に進む。一方、計測した位相差角度θが上限値θcpthを上回った場合にCP吸引力が異常と判定し(S4042BでN)、S4043Bに進み、レーザ制御部17に対してCP吸引力異常信号を出力する。
[0298]
 図34Bの例は、CP吸引力Fcpθを直接監視するのに対して、図47の例は、位相差角度θを用いて、CP吸引力Fcpθを間接的に監視する例である。CP吸引力Fcpθと位相差角度θの間には、図33に示すような対応関係があるため、このような方法でCP吸引力Fcpの異常判定を行うことも可能である。
[0299]
  4.5 位相差センサの変形例
   4.5.1 変形例1
 第2実施形態において、磁束密度変化センサ71に変えて、図48に示すように、磁束密度センサ63を用いてもよい。磁束密度センサ63は、第1実施形態で説明したセンサと同様である。この場合、磁束密度センサ63と微分回路73とによって位相センサが構成される。
[0300]
 図49において、図49Aは、図28及び図40Aで示したのと同様の、磁束密度センサ63の検出信号の出力である。微分回路77は、磁束密度センサ63からの信号を受信して、図49Bに示すような、磁束密度Bの変化点である信号の立ち上がりと立ち下がりに相当するパルス信号を出力する。これは、図40Bに示した磁束密度変化センサ71の出力と同じである。このように、磁束密度センサ63と微分回路77とによって位相差センサを構成してもよい。
[0301]
   4.5.2 変形例2
 図50から図52は、位相差センサの変形例2を示す。変形例2の位相差センサは、磁気カップリング32の駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの回転を検出する回転センサ78で構成される。図50に示すように、回転センサ78は、駆動側センサ78aと、従動側センサ78bと、ホルダ78cとを備えている。駆動側センサ78aと従動側センサ78bは、それぞれ磁気軸受制御部36Bに接続され、検出信号を出力する。
[0302]
 図51において、図51Bに示すように、駆動側センサ78aは、駆動側ロータ部32aとともに、モータ固定部56内に収容されており、大気中に配置されている。駆動側センサ78aは、モータ固定部56内に設けられたホルダ78cに固定されている。従動側センサ78bは、従動側ロータ部32bが収容される内部空間と大気側の外部空間を隔てるキャン54の外側に取り付けられており、大気中に配置されている。
[0303]
 図51A及び図51Bに示すように、駆動側ロータ部32aには、支持部321aの一部に切り欠き部323aが形成され、従動側ロータ部32bにも、支持部321bの一部に切り欠き部323bが形成されている。切り欠き部323a及び323bは、磁石部320a及び320bからの磁束を漏出するためのものである。駆動側センサ78aは、駆動側ロータ部32aの磁石部320aの磁束を検出できるように、径方向において、切り欠き部323aと対応する位置にホルダ78cを介して配置されている。従動側センサ78bは、従動側ロータ部32bの磁石部320bの磁束を検出できるように、切り欠き部323bと対応する位置に配置される。駆動側センサ78a及び従動側センサ78bとしては、ホール素子、磁気抵抗素子、磁束密度センサなどが使用される。
[0304]
 駆動側センサ78aは、駆動側ロータ部32aが1回転する毎に、切り欠き部323aから漏出する磁束を検出して回転検出信号を出力する。従動側センサ78bは、従動側ロータ部32bが1回転する毎に、切り欠き部323bから漏出する磁束を検出して回転検出信号を出力する。
[0305]
 磁気カップリング32が回転していない場合の駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの初期の対向状態において、それぞれの切り欠き部323aと323bとが対向するように、駆動側ロータ部32aと従動側ロータ部32bの回転位置が調節される。そのため、位相差が無い状態では、駆動側センサ78aと従動側センサ78bのそれぞれの回転検出タイミングは一致する。
[0306]
 図52に示すように、位相差が発生すると、駆動側センサ78aの回転検出タイミングと、従動側センサ78bの回転検出タイミングにずれが生じる。図52Aにおいて、Tr1は、駆動側センサ78aが検出する駆動側ロータ部32aの回転周期であり、図52Bにおいて、Tr2は、従動側センサ78bが検出する従動側ロータ部32bの回転周期である。CP吸引力計測部64Bは、各回転周期Tr1とTr2に基づいて、その差Δt 12を計測する。位相差角度θは、次式(43)で計算することができる。
 θ=Δt 12/Tr1・360°  ・・・(43)
[0307]
 このように、位相差センサは、種々のものが考えられ、いずれを用いてもよい。
[0308]
 5.第3実施形態のガスレーザ装置
 図53から図60Bを参照して第3実施形態のガスレーザ装置を説明する。第3実施形態のガスレーザ装置の全体構成やレーザ発振動作については、第1実施形態のガスレーザ装置と同様である。以下、相違点を中心に説明する。
[0309]
  5.1 ファンの磁気軸受システムの構成
 第3実施形態は、磁気軸受システム40Aに変えて、磁気軸受システム40Cが設けられている。磁気軸受システム40Cと磁気軸受システム40Aとの相違点は、第1に、磁気カップリング32の代わりに磁気カップリング82が設けられている点である。磁気カップリング82は、磁気カップリング32のようにアキシャル方向にCP吸引力Fcpを発生するタイプではなく、ラジアル方向にCP吸引力Fcpを発生するタイプである。
[0310]
 第2の相違点は、第3実施形態に係る磁気軸受システム40Cでは、磁気カップリング82を設けることに伴って、ラジアル方向のCP吸引力Fcpの変動に応じて、磁気カップリング82と隣接して配置される第2ラジアル軸受部RB2におけるEM吸引力を補正する点である。第3実施形態は、回転軸27が十分に長く、磁気カップリング82のCP吸引力Fcpの影響は、第2ラジアル軸受部RB2のみに及び、第1ラジアル軸受部RB1には及ばないという想定の下、構成されている。
[0311]
   5.1.1 磁気カップリング
 図54にも示すように、磁気カップリング82は、駆動側ロータ部82aと従動側ロータ部82bを備える。駆動側ロータ部82aは、モータ31の駆動軸31aに取り付けられて固定され、従動側ロータ部82bは、ファン26の回転軸27に取り付けられて固定される。駆動側ロータ部82aは、Z軸方向を回転軸とする円筒形状をしており、従動側ロータ部82bも、Z軸方向を回転軸とする円柱形状をしている。
[0312]
 図54Bに示すように、駆動側ロータ部82aの内径は、従動側ロータ部82bの外径よりも大きく、駆動側ロータ部82aは、従動側ロータ部82bの外周を覆うように配置されている。駆動側ロータ部82aと従動側ロータ部82bは、駆動側ロータ部82aの内周面と従動側ロータ部82bの外周面とが対向するように配置されている。駆動側ロータ部82aの内周面と従動側ロータ部82bの外周面との間には、キャン54の構成要素である円筒部54dが配置されている。円筒部54dは、従動側ロータ部82bを収容し、レーザガスが充填される内部空間と、駆動側ロータ部82aが配置される外部空間とを隔てる隔壁である。
[0313]
 図54Aに示すように、駆動側ロータ部82a及び従動側ロータ部82bの各磁石部820a、820bは、それぞれ中心角αが45°の磁極が8個、回転軸であるZ軸回りに周方向に配置された8極タイプである。図54において、例えば濃いハッチングで示す磁極がN極であり、薄いハッチングで示す磁極がS極である。駆動側ロータ部82a及び従動側ロータ部82bは、ラジアル方向にCP吸引力Fcpを発生して、駆動側ロータ部82aから従動側ロータ部82bに非接触でトルクを伝達する。磁束密度センサ63は、各磁石部820aと820bの間に配置され、円筒部54dの外周面に固定されている。
[0314]
   5.1.2 磁気軸受制御部の構成
 図55に示すように、第3実施形態に係る磁気軸受制御部36Cは、図26に示す第1実施形態に係る磁気軸受制御部36Aと基本的な構成は同様である。相違点は、第2ラジアル電磁石制御部C2X、C2Yに代えて、第2ラジアル電磁石制御部C2XC、C2YCが設けられている点である。CP吸引力計測部64は、第2ラジアル電磁石制御部C2XC、C2YCに対して、計測したCP吸引力Fcpθと、統括制御部61Aとに送信する。
[0315]
 また、第3実施形態においては、第1実施形態に係るアキシャル電磁石制御部CZAは設けられておらず、比較例と同様のアキシャル電磁石制御部CZが設けられている。第3実施形態においては、磁気カップリング82のCP吸引力Fcpはアキシャル方向に作用しないので、アキシャル電磁石制御部CZは、CP吸引力Fcpの変動に応じたEM吸引力の補正を行わないためである。
[0316]
   5.1.3 磁気カップリングのラジアル方向のCP吸引力
 図56は、磁気カップリング82において、位相差角度θ=0°の場合のX軸方向とY軸方向のそれぞれの方向に作用するCP吸引力Fcpの初期値を示す。Fcp X0、Fcp -X0は、X軸方向においてプラス方向とマイナス方向にそれぞれ作用するCP吸引力Fcpの初期値である。Fcp Y0、Fcp -Y0は、Y軸方向においてプラス方向とマイナス方向にそれぞれ作用するCP吸引力Fcpの初期値である。
[0317]
 各磁石部820a、820bの各磁極は中心角αが同じで周方向において等間隔で配置されているため、各磁極にラジアル方向に作用するCP吸引力Fcpは同じである。そのため、X軸方向及びY軸方向のプラス方向及びマイナス方向に作用するCP吸引力Fcpの初期値はすべて同じ値になる。この初期値をFcp0とする。すなわち、次式(44)に示す関係となる。
 Fcp X0=Fcp -X0=Fcp Y0=Fcp -Y0=Fcp0  ・・・(44)
[0318]
   5.1.4 ラジアル軸受部の力の釣り合い
 図57は、第2ラジアル軸受部RB2において、磁気カップリング82の位相差角度θ=0°の場合の力の釣り合いの関係を示す。回転軸27を目標位置X 20,Y 20に合わせる場合の第2ラジアル電磁石M2による力の釣り合いの関係は、次式(45)から(50)のようになる。
 Ft X=Ft -X  ・・・(45)
 Ft X=F X20+Fcp0  ・・・(46)
 Ft -X=F -X20+Fcp0  ・・・(47)
 Ft Y=Ft -Y  ・・・(48)
 Ft Y=F Y20+Fcp0  ・・・(49)
 Ft- Y=F -Y20+Fcp0+F g2  ・・・(50)
[0319]
 F X20は、X軸方向においてプラス方向に発生する第2ラジアル電磁石M2XaのEM吸引力であり、F -X20は、X軸方向においてマイナス方向に発生する第2ラジアル電磁石M2XbのEM吸引力である。Ft XとFt -Xは、X軸方向においてプラス方向とマイナス方向のそれぞれに作用するトータルの力であり、EM吸引力とCP吸引力の合計である。
[0320]
 F Y20は、Y軸方向においてプラス方向に吸引力を発生する第2ラジアル電磁石M2Yaの吸引力であり、F -Y20は、Y軸方向においてマイナス方向に吸引力を発生する第2ラジアル電磁石M2Ybの吸引力である。F g2はY軸方向においてマイナス方向である重力方向に回転軸27に対して作用する重力である。F -Y20の大きさは、F Y20と比べて、重力F g2分小さい。Ft YとFt -Yは、Y軸方向においてプラス方向及びマイナス方向に作用するトータルの力であり、プラス方向は、EM吸引力とCP吸引力の合計であり、マイナス方向は、EM吸引力とCP吸引力と重力の合計である。
[0321]
 ここで、第2ラジアル軸受部RB2において、磁気カップリング82に位相差が発生し、位相差角度θ≠0°の場合は、CP吸引力Fcpが初期値Fcp0からΔFcpθ減少して、Fcpθとなる。この場合の第2ラジアル電磁石M2による力の釣り合いの関係は、次式(51)から(56)のようになる。
 Ft X=Ft -X  ・・・(51)
 Ft X=F X20+Fcpθ=F X20+Fcp0-ΔFcpθ  ・・・(52)
 Ft -X=F -X20+Fcpθ=F -X20+Fcp0-ΔFcpθ  ・・・(53)
 Ft Y=Ft -Y  ・・・(54)
 Ft Y=F Y20+Fcpθ=F Y20+Fcp0-ΔFcpθ  ・・・(55)
 Ft- Y=F -Y20+Fcpθ+F g2=F -Y20+Fcp0-ΔFcpθ+F g2   ・・・(56)
[0322]
 磁気軸受制御部36Cにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2XCは、計測されたCP吸引力Fcpの変動に応じて、第2ラジアル電磁石M2Xa、M2XbのEM吸引力F X2、F -X2を補正する補正部に相当する。第2ラジアル電磁石制御部C2YCは、計測されたCP吸引力Fcpの変動に応じて、第2ラジアル電磁石M2Ya、M2YbのEM吸引力F Y2、F -Y2を補正する補正部に相当する。
[0323]
 より具体的には、第2ラジアル電磁石制御部C2XCは、CP吸引力Fcpが減少した場合、回転軸27に対してX軸方向のプラス方向とマイナス方向に作用する2つの力が釣り合うように、第2ラジアル電磁石M2Xa、M2XbのEM吸引力F X2、F -X2を減少分ΔFcpθに基づいて補正する。また、第2ラジアル電磁石制御部C2YCも同様に、CP吸引力Fcpが減少した場合、回転軸27に対してY軸方向のプラス方向とマイナス方向に作用する2つの力が釣り合うように、第2ラジアル電磁石M2Ya、M2YbのEM吸引力F Y2、F -Y2を減少分ΔFcpθに基づいて補正する。
[0324]
 図58は、減少分ΔFcpθに基づいて、EM吸引力F X2、F -X2、F Y2、F -Y2を補正した場合の第2ラジアル軸受部RB2における力の釣り合いの関係を示す。この力の釣り合いの関係は、次式(57)から(62)のようになる。
 Ft X=Ft -X  ・・・(57)
 Ft X=F X2+Fcpθ=F X20+ΔFcpθ+Fcp0―ΔFcpθ=F X20+Fcp0  ・・・(58)
 Ft -X=F -X2+Fcpθ=F -X20+ΔFcpθ+Fcp0―ΔFcpθ=F -X20+Fcp0  ・・・(59)
 Ft Y=Ft -Y  ・・・(60)
 Ft Y=F Y2+Fcpθ=F Y20+ΔFcpθ+Fcp0―ΔFcpθ=F Y20+Fcp0  ・・・(61)
 Ft -Y=F -Y2+Fcpθ=F -Y20+ΔFcpθ+Fcp0―ΔFcpθ=F -Y20+Fcp0  ・・・(62)
[0325]
  5.2 磁気軸受システムの動作
   5.2.5 第2ラジアル電磁石制御部の制御フロー
    5.2.5.1 第2ラジアル電磁石制御部C2XCの制御フロー
 図59A及び図59Bは、第2ラジアル電磁石制御部C2XCの制御フローを示すフローチャートである。図59Aに示すS2000XからS2040Xまでの前半部分は、図9に示す比較例に係るフローチャートと同じであり、相違点は、図59Bに示すように、S2041XからS2043Xのステップが追加されている点と、S2050XのステップがS2050XCに変更されている点である。S2041XからS2043Xのステップは、第1実施形態の図30Bで示したS3041ZからS3043Zと吸引力が作用する方向が異なるだけで、処理の内容は同様である。
[0326]
 第2ラジアル電磁石制御部C2XCは、図59Aの前半のS2040Xまでのステップにおいて、回転軸27が目標位置X 20から変位して、目標位置X 20と現在位置X 2との間に差ΔX 2が生じた場合に、ΔX 2を「0」に近づけるように、第2ラジアル電磁石M2Xa及びM2XbのそれぞれのEM吸引力F X2とF -X2の変化量ΔF X2とF -X2を計算する。
[0327]
 図59Bに示すS2041Xにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2XCは、CP吸引力Fcpθを読み込み、S2042Xにおいて、CP吸引力Fcpの減少分ΔFcpθを計算する。そして、S2043Xにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2XCは、EM吸引力の変化量ΔF X2とΔF -X2を、減少分ΔFcpθで補正して、補正値ΔF CX2とΔF C-X2を計算する。具体的には、次式(63)、(64)に従って計算する。
 ΔF CX2=ΔF X2+ΔFcpθ  ・・・(63)
 ΔF C-X2=ΔF -X2+ΔFcpθ  ・・・(64)
[0328]
 図58に示したように、ラジアル方向においては、X軸方向のプラス方向及びマイナス方向の両方でCP吸引力Fcpが減少する。そのため、プラス方向とマイナス方向の両方の変化量ΔF X2とΔF -X2に対して減少分ΔFcpθが加算される。
[0329]
 S2050XCにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2XCは、補正値ΔF CX2とΔF C-X2を発生するための第2ラジアル電磁石M2XaとM2Xbの電流のそれぞれの変化量ΔI X2とΔI -X2とを計算する。S2060Xにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2XCは、回転軸27の現在の浮上位置から目標位置X 20に近づけるために、対向する電磁石M2XaとM2Xbの初期のバイアス電流I 20とΔI -20に対して、変化量ΔI X2とΔI -X2を加算して、電流値I X2とI -X2を計算する。S2070X及びS2070Xにおいて、計算した電流値I X2とI -X2が第2ラジアル電磁石M2XaとM2Xbに流される。これにより、回転軸27の浮上位置を目標位置X 20に向けて近づけることができる。回転軸27の変位に応じて上記の処理が繰り返される。
[0330]
 また、上記制御フローにおいて、仮に回転軸27の浮上位置の現在位置X 2と目標位置X 20とが一致し、ΔX 2=「0」の場合でも、S2030XからS2080Xまでのステップは実行される。つまり、ΔX 2=「0」の場合でも、CP吸引力Fcpθに変動が生じた場合には、減少分ΔFcpθに基づいて、第2ラジアル電磁石M2XaとM2XbのEM吸引力F X2とF -X2の補正が実行される。この場合は、S2043Xにおいて、変化量ΔF X2とΔF -X2が「0」になるため、減少分ΔFcpθのみがそれぞれ補正値ΔF CX2、ΔF C-X2となる。そして、S2050XCからS2080Xのステップが実行されて、結果として、EM吸引力F X2とF -X2に対して、減少分ΔFcpθに相当する力の変化量ΔF CX2、ΔF C-X2が加算される。
[0331]
    5.2.5.2 第2ラジアル電磁石制御部C2YCの制御フロー
 図60A及び図60Bは、第2ラジアル電磁石制御部C2YCの制御フローを示すフローチャートである。図60Aに示すSS2000YからS2040Yまでの前半部分は、図10に示す比較例に係るフローチャートと同じであり、相違点は、図60Bに示すように、S2041YからS2043Yのステップが追加されている点と、S2050YのステップがS2050YCに変更されている点である。S2041YからS2043Yのステップは、第1実施形態の図30Bで示したS3041ZからS3043Z、及び図60Bで示したS2041XからS2043Xと、吸引力が作用する方向が異なるだけで、処理の内容は同様である。
[0332]
 第2ラジアル電磁石制御部C2YCは、図60Aの前半のS2040Yまでのステップにおいて、回転軸27が目標位置Y 20から変位して、目標位置Y 20と現在位置Y 2との間に差ΔY 2が生じた場合に、ΔY 2を「0」に近づけるように、第2ラジアル電磁石M2Ya及びM2YbのそれぞれのEM吸引力F Y2とF -Y2の変化量ΔF Y2とF -Y2を計算する。
[0333]
 図60Bに示すS2041Yにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2YCは、CP吸引力Fcpθを読み込み、S2042Yにおいて、CP吸引力Fcpの減少分ΔFcpθを計算する。そして、S2043Yにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2YCは、EM吸引力の変化量ΔF Y2とΔF -Y2を、減少分ΔFcpθで補正して、補正値ΔF CY2とΔF C-Y2を計算する。具体的には、次式(65)、(66)に従って計算する。
 ΔF CY2=ΔF Y2+ΔFcpθ  ・・・(65)
 ΔF C-Y2=ΔF -Y2+ΔFcpθ  ・・・(66)
[0334]
 図58に示したように、ラジアル方向においては、X軸方向と同様に、Y軸方向のプラス方向及びマイナス方向の両方でCP吸引力Fcpが減少する。そのため、プラス方向とマイナス方向の両方の変化量ΔF Y2とΔF -Y2に対して減少分ΔFcpθが加算される。
[0335]
 S2050YCにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2YCは、補正値ΔF CY2とΔF C-Y2を発生するための第2ラジアル電磁石M2YaとM2Ybの電流のそれぞれの変化量ΔI Y2とΔI -Y2とを計算する。そして、S2060Yにおいて、第2ラジアル電磁石制御部C2YCは、回転軸27の現在の浮上位置から目標位置Y 20に近づけるために、対向する電磁石M2YaとM2Ybの初期のバイアス電流I 20とΔI -20に対して、変化量ΔI Y2とΔI -Y2を加減して、電流値I Y2とI -Y2を計算する。S2070Y及びS2070Yにおいて、計算した電流値I Y2とI -Y2が第2ラジアル電磁石M2YaとM2Ybに流される。これにより、回転軸27の浮上位置を目標位置Y 20に向けて近づけることができる。回転軸27の変位に応じて上記の処理が繰り返される。
[0336]
 また、上記制御フローにおいて、仮に回転軸27の浮上位置の現在位置Y 2と目標位置Y 20とが一致し、ΔY 2=「0」の場合でも、S2030YからS2080Yまでのステップは実行される。つまり、ΔY 2=「0」の場合でも、CP吸引力Fcpθに変動が生じた場合には、減少分ΔFcpθに基づいて、第2ラジアル電磁石M2YaとM2YbのEM吸引力F Y2とF -Y2の補正が実行される。この場合は、S2043Yにおいて、変化量ΔF Y2とΔF -Y2が「0」になるため、減少分ΔFcpθのみがそれぞれ補正値ΔF CY2、ΔF C-Y2となる。そして、S2050YCからS2080Yのステップが実行されて、結果として、EM吸引力F Y2とF -Y2に対して、減少分ΔFcpθに相当する力の変化量ΔF CY2、ΔF C-Y2が加算される。
[0337]
 第2実施形態において、第2ラジアル電磁石制御部C2XC、C2YCはそれぞれ、減少分ΔFcpθに基づいて、第2ラジアル電磁石M2Xa、M2Xb、M2Ya、M2YbのEM吸引力F X2、F -X2、F Y2、F -Y2を補正する補正部に相当する。
[0338]
  5.3 作用
 このように、CP吸引力Fcpに変動が生じた場合でも、回転軸27に作用するプラス方向及びマイナス方向のそれぞれのトータルの力が釣り合うように、EM吸引力F X2、F -X2、F Y2、F -Y2に対して、CP吸引力Fcpの減少分ΔFcpθが補償される。これにより、第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、CP吸引力Fcpの変動が、第2ラジアル電磁石M2Xa、M2Xb、M2Ya、M2Ybを用いた回転軸27の位置調節のための制御に与える影響を低減することができる。そのため、回転軸27の位置調節のための制御がしやすい。
[0339]
 ただし、アキシャル方向と異なり、ラジアル方向においては、CP吸引力Fcpの変動は、プラス方向及びマイナス方向の両方に同じ大きさだけ生じるため、CP吸引力Fcpが変動しても、EM吸引力及びCP吸引力Fcp以外の外力EMが加わらない限り、回転軸27に作用する力の釣り合いは保たれる。そのため、アキシャル方向にCP吸引力が作用する第1実施形態と異なり、第3実施形態においては、CP吸引力Fcpが変動しても、外力EMが加わらない限り、回転軸27の浮上位置が目標位置 X20Y20から変位することはない。
[0340]
 しかし、上述のとおり、電磁石を使用する場合において、目標位置X 20、Y 20に回転軸27に作用する力を釣り合わせるためのトータルの力Ft X、Ft -X、Ft Y、Ft -Yの大きさが変化するということは、バネを使用する場合にバネ定数が変化することに等しい。これは、力の釣り合いの初期条件が変化することになるため、位置調節の適切な制御をし難くする要因となる。
[0341]
 第3実施形態においては、第1実施形態と同様に、CP吸引力Fcpが変動しても、上記式(45)から(50)に示した、回転軸27に作用する力の釣り合いの初期条件が維持される。そのため、第3実施形態においても、第1実施形態において説明した第2の効果が得られる。
[0342]
 また、第3実施形態における図59A、59B、図60A、図60Bの制御フローも、第1実施形態の同様の図30A及び30Bの制御フローであるため、第1実施形態において説明した第3の効果が期待できる。
[0343]
  5.4 その他
 本例において、CP吸引力Fcpが第1ラジアル軸受部RB1に影響を及ぼさないという前提の下、第2ラジアル軸受部RB2に対してのみ制御を行う例で説明した。しかし、第1ラジアル軸受部RB1においてもCP吸引力Fcpの影響を無視できない場合には、同様の制御を第1ラジアル軸受部RB1に対して行ってもよい。
[0344]
 6.第4実施形態のガスレーザ装置
 図61から図65Bを参照して第4実施形態のガスレーザ装置を説明する。第4実施形態のガスレーザ装置の全体構成やレーザ発振動作については、第1実施形態のガスレーザ装置と同様である。以下、相違点を中心に説明する。
[0345]
  6.1 ファンの磁気軸受システムの構成
 第4実施形態は、磁気軸受システム40Aに変えて、磁気軸受システム40Dが設けられている。磁気軸受システム40Dと磁気軸受システム40Aとの相違点は、アキシャル軸受部AXBが、アキシャル電磁石MZaを備えておらず、アキシャル電磁石MZbのみを備えている点である。アキシャル電磁石MZbは、Z軸方向においてマイナス方向に作用するEM吸引力F -Zを発生させる電磁石である。
[0346]
 第4実施形態のアキシャル軸受部AXBは、アキシャル電磁石MZaを用いずに、アキシャル電磁石MZbが発生するマイナス方向のEM吸引力F -Zと、磁気カップリング32が発生するプラス方向のCP吸引力Fcpによって、回転軸27に作用するアキシャル方向の力を釣り合わせる。
[0347]
   6.1.1 磁気軸受制御部の構成
 図62に示すように、第4実施形態に係る磁気軸受制御部36Dと図26に示す第1実施形態に係る磁気軸受制御部36Aの相違点は、アキシャル電磁石制御部CZAに代えて、アキシャル電磁石制御部CZDを備えている点である。第1実施形態のアキシャル電磁石制御部CZAが、プラス方向とマイナス方向のアキシャル電磁石MZaとMZbを制御するのに対して、第4実施形態のアキシャル電磁石制御部CZDは、マイナス方向のアキシャル電磁石MZbのみを制御する。
[0348]
   6.1.2 アキシャル方向の力の釣り合い
 図63は、ファン26の回転数Rが0rpmで、位相差角度θ=0の場合における、回転軸27に作用するアキシャル方向の力の釣り合いの関係を示す。回転軸27を目標位置 Z0に合わせる場合の力の釣り合いの関係は次式(67)、(68)のようになる。
 Ft Z=F Z0=Fcp0  ・・・(67)
 Ft Z=Ft -Z=F -Z  ・・・(68)
[0349]
 図64は、ファン26が回転して、位相差角度θ≠0の場合における、回転軸27に作用するアキシャル方向の力の釣り合いの関係を示す。回転軸27を目標位置Z 0に合わせる場合の力の釣り合いの関係は次式(69)、(70)のようになる。
 Ft Z=F Z0=Fcpθ-ΔFcpθ  ・・・(69)
 Ft Z=Ft -Z=F -Z-ΔFcpθ  ・・・(70)
[0350]
  6.2 磁気軸受システムの動作
 第4実施形態に係る磁気軸受システム40Dの動作において、第1実施形態と異なる点は、アキシャル電磁石制御部CZDの制御フローのみであり、他は同様である。
[0351]
   6.2.1 アキシャル電磁石制御部の制御フロー
 図65A及び図65Bは、アキシャル電磁石制御部CZDの制御フローを示す。アキシャル電磁石制御部CZDは、図65Aに示すS3000ZDにおいて、アキシャル電磁石MZbに対して、電流値の初期値I -Z0を供給して磁気浮上を開始させる。電流値の初期値I -Z0は、磁気カップリング32のCP吸引力Fcpの初期値Fcp0と同じ大きさのEM吸引力F -Zをアキシャル電磁石MZbに発生させるための電流値である。
[0352]
 アキシャル電磁石制御部CZDは、図65Aの前半のS3040ZDまでのステップにおいて、回転軸27が目標位置Z 0から変位して、目標位置Z 0と現在位置Zとの間に差ΔZが生じた場合に、ΔZを「0」に近づけるように、アキシャル電磁石MZaのEM吸引力F -Zの変化量ΔF -Zを計算する。
[0353]
 第4実施形態の場合は、第1実施形態と異なり、CP吸引力Fcpと同じプラス方向のEM吸引力F Zを発生するアキシャル電磁石MZaが設けられていない。そのため、回転軸27の現在の浮上位置Zが目標位置Z 0からプラス方向に変位した場合には、アキシャル電磁石MZbのEM吸引力F -ZがCP吸引力Fcp0を上回るように変化量ΔF -Zを計算する。一方、回転軸27の現在の浮上位置Zが目標位置Z 0からマイナス方向に変位した場合には、アキシャル電磁石MZbのEM吸引力F -ZがCP吸引力Fcp0を下回るように変化量ΔF -Zを計算する。
[0354]
 この後、図65Bに示すように、アキシャル電磁石制御部CZDは、S3041Zにおいて、CP吸引力Fcpθを読み込み、CP吸引力Fcpの減少分ΔFcpθを計算する(S3042Z)。そして、S3043ZDにおいて、アキシャル電磁石制御部CZDは、次式(71)に従って、アキシャル電磁石MZbのEM吸引力F -Zを減少分ΔFcpθで補正して補正値ΔF C-Zを計算する。
 ΔF C-Z=ΔF -Z-ΔFcpθ  ・・・(71)
このように、アキシャル電磁石制御部CZDは、CP吸引力計測部64によって計測されたCP吸引力Fcpの変動に応じて、アキシャル電磁石MZbのEM吸引力F -Zを補正する。
[0355]
 S3050ZDにおいて、アキシャル電磁石制御部CZDは、補正値ΔF C-Zを発生するためのアキシャル電磁石MZbの電流の変化量ΔI -Zを計算する。S3060ZDにおいて、アキシャル電磁石MZに流す電流値I -Zを次式(72)に従って計算する。
 I -Z=I -Z0+ΔI -Z  ・・・(72)
[0356]
 回転軸27の浮上位置が目標位置Z 0からプラス方向に変位した場合には、変化量ΔI -Zの値がプラスになり、初期値I -Z0に加算される。一方、回転軸27の浮上位置が目標位置Z 0からマイナス方向に変位した場合には、変化量ΔI -Zの値がマイナスになり、初期値I -Z0から減算される。
[0357]
 S3070ZD及びS3080ZDにおいて、アキシャル電磁石制御部CZDは、計算した電流値I -Zをアキシャル電磁石MZに供給する。これにより、回転軸27を目標位置Z 0に近づける位置調節が可能となる。
[0358]
 統括制御部61Aの制御フローについては、図34A及び図34Bで示した第1実施形態の制御フローと同様である。
[0359]
  6.3 作用
 第4実施形態においては、回転軸27の変位に応じたEM吸引力F -Zの制御に際して、CP吸引力Fcpに変動が生じた場合には、CP吸引力Fcpと釣り合うように、EM吸引力F -Zが補正される。具体的には、CP吸引力Fcpが初期値Fcp0から減少した場合は、減少分ΔFcpθだけEM吸引力F -Zを減少させる。
[0360]
 これにより、CP吸引力Fcpが変動した場合でも、回転軸27に作用するプラス方向とマイナス方向のトータルの力が釣り合うため、CP吸引力Fcpの変動が回転軸27の変位に与える影響を低減することができる。そのため、回転軸27の位置調節の制御がしやすい。
[0361]
 ただし、第4実施形態においては、第1実施形態と異なり、CP吸引力Fcpが初期値Fcp0から減少した場合には、それに合わせて、減少分ΔFcpθをEM吸引力F -Zから減少させるため、力の釣り合いの初期条件を維持することができない。
[0362]
 そのため、第4実施形態においては、上述した第2の効果は得られないが、第1の効果及び第3の効果は得ることができる。また、第4実施形態においては、アキシャル電磁石MZaを設けずに、アキシャル電磁石MZbのみを設けているため、構成要素を簡素化することができるため、低コスト化が期待できる。
[0363]
 また、第4実施形態において、統括制御部61Aは、図34A及び図34Bで示した第1実施形態の制御フローを実行する。この制御フローにおいて、S4041からS4043において示したCP吸引力が異常の場合にモータ31を停止させる処理は、第4実施形態においては、特に有効である。
[0364]
 というのも、第4実施形態においては、磁気カップリング32のCP吸引力Fcpと同じプラス方向にEM吸引力を発生するアキシャル電磁石MZaが設けられていない。そのため、磁気カップリング32に異常が生じて、CP吸引力Fcpが小さくなりすぎた場合、アキシャル電磁石MZaを用いて回転軸27をプラス方向に移動させることができない。したがって、第4実施形態においては、S4041からS4043の処理は、CP吸引力に異常が生じた場合の非常手段として特に有効である。
[0365]
 7.アナログ回路
 図66に示す磁気軸受制御部36Eは、第1実施形態の磁気軸受制御部36Aの電磁石制御部とCP吸引力計測部を、アナログ回路で構成した例である。磁気軸受制御部36Aに示したデジタル回路に代えてこのようなアナログ回路を使用してもよい。図66では、便宜上、アキシャル電磁石MZaとMZbを制御するアキシャル電磁石制御部CZEのみを示しているが、第1ラジアル電磁石制御部及び第2ラジアル電磁石制御部についても、アキシャル電磁石制御部CZEと同様の構成であり、図示及び説明を省略する。
[0366]
 アキシャル電磁石制御部CZEは、擬似微分・擬似積分回路81、ゲイン調整回路82、加算回路83、反転回路84、バイアス電流設定電圧回路86、センサ回路87を備えている。また、センサ回路87は、変位センサSZの後段に配置される。アキシャル電磁石MZaとMZbには、それぞれ電磁石駆動回路88が接続されている。
[0367]
 加算回路83、バイアス電流設定電圧回路86、及び電磁石駆動回路88は、アキシャル電磁石MZa用の加算回路83a、バイアス電流設定電圧回路86a、及び加算回路83aと、アキシャル電磁石MZb用の加算回路83b、バイアス電流設定電圧回路86b、及び加算回路83bとを含む。図21に示したように、アキシャル電磁石MZaは、磁気カップリング32のCP吸引力Fcpと同じプラス方向にEM吸引力F Zを発生する。アキシャル電磁石MZbは、マイナス方向のEM吸引力F -Zを発生する。アキシャル電磁石MZa用の加算回路83aの前段には、反転回路84が接続されている。
[0368]
 センサ回路87には、変位センサSZから出力される回転軸27の現在位置Zに相当する電圧が入力される。センサ回路87は、変位センサSZから入力される電圧に基づいて、回転軸27の現在位置Zと目標位置Z 0との差ΔZに相当する電圧を出力する。センサ回路87には、回転軸27が目標位置Z 0にある場合に変位センサSZから出力される電圧が参照電圧として設定されている。センサ回路87は、変位センサSZから出力される電圧であるセンサ出力と参照電圧とに基づいて、両者の差分に相当する電圧を、差ΔZを表す信号として出力する。
[0369]
 具体的には、センサ回路87の出力は、回転軸27の現在位置Zが目標位置Z 0にある場合は、変位センサSZのセンサ出力と参照電圧が一致するため、後段の回路において「0」として扱われる信号を出力する。そして、回転軸27の現在位置Zが目標位置Z 0からプラス側にある場合、すなわち、センサ出力が参照電圧よりも大きい場合は、その差ΔZの絶対値の大きさに応じた出力値をプラスの値で出力する。反対に、現在位置Zが目標位置Z 0からマイナス側にある場合、すなわち、センサ出力が参照電圧よりも小さい場合は、その差ΔZの絶対値の大きさに応じた出力値をマイナスの値で出力する。
[0370]
 センサ回路87は、差ΔZに相当する信号を後段の擬似微分・擬似積分回路81と統括制御部61Aに出力する。擬似微分・擬似積分回路81及びゲイン調整回路82は、上述したPID制御を実行する回路である。擬似微分・擬似積分回路81は微分制御と積分制御を担い、ゲイン調整回路82は比例制御を担う。擬似微分・擬似積分回路81は、差ΔZに相当する信号に基づいて、上述の微分制御と積分制御を実行し、ゲイン調整回路82は比例制御を実行する。ゲイン調整回路82は、PID制御によって調整された差ΔZの電圧を出力する。
[0371]
 ゲイン調整回路82は、アキシャル電磁石MZa用の加算回路83aと、アキシャル電磁石MZb用の加算回路83bに差ΔZの電圧を出力する。ゲイン調整回路82と加算回路83aの間には反転回路84が配置されているので、加算回路83aには、差ΔZの電圧の符号が反転されて入力される。これにより、ゲイン調整回路82からの差ΔZの電圧がプラスの値をとる場合は、加算回路83aにはマイナスの信号として入力され、加算回路83bには、同じ大きさのプラスの信号として入力される。反対に、差ΔZの電圧がマイナスの値をとる場合は、加算回路83aにはプラスの信号として、加算回路83bにはマイナスの信号として入力される。
[0372]
 バイアス電流設定電圧回路86aと86bは、アキシャル電磁石MZaとMZbのそれぞれにバイアス電流を供給するためのバイアス電圧を、各加算回路83aと93bにそれぞれ設定する。バイアス電流は、上述のとおり電流の初期値I Z0及びI -Z0であり、加算回路83aには、初期値I Z0に対応するバイアス電圧が、加算回路83bには初期値I -Z0に対応するバイアス電圧が設定される。
[0373]
 例えば、図31に示したように、アキシャル電磁石MZaは、CP吸引力Fcpと同じ方向のEM吸引力F Zを発生し、アキシャル電磁石MZbは、CP吸引力FcpとEM吸引力F Zとを合計したトータルの力に見合うEM吸引力F -Zを発生する。そのため、バイアス電流設定電圧回路86aが設定するバイアス電圧は、バイアス電流設定電圧回路86bが設定するバイアス電圧と比べてCP吸引力の初期値Fcp0だけ小さい。
[0374]
 加算回路83aは、バイアス電圧に対して、ゲイン調整回路82から出力され反転回路84で符号が反転された差ΔZの電圧を加算する。加算回路83bは、バイアス電圧に対して、ゲイン調整回路82から直接入力された差ΔZの電圧を加算する。電磁石駆動回路88aと88bは、加算回路83aと83bのそれぞれか入力される電圧の大きさに応じた駆動電流を、電磁石MZaとMZbに供給する。
[0375]
 図21に示したとおり、アキシャル電磁石MZaとアキシャル電磁石MZbは対向して配置されている。この場合、回転軸27を一方向に変位させるために、例えば、図30BのS3060Zに示したように、同じ大きさの変化量ΔI ZとΔI -Zを、アキシャル電磁石MZaとMZbの一方に供給されるバイアス電流に加算し、他方に供給されるバイアス電流から減算する処理が行われる。反転回路84は、対向配置されたアキシャル電磁石MZaとMZbに対して同じ大きさで符号が異なる変化量ΔI ZとΔI -Zを割り当てるために配置される。
[0376]
 例えば、回転軸27の現在位置Zが目標位置Z 0からプラス方向にある場合は、ゲイン調整回路82から出力される差ΔZの電圧は、プラスの値をとるので、加算回路83aには、反転回路84で反転されたマイナスの値が入力され、加算回路83bには、プラスの値が入力される。これにより、アキシャル電磁石MZaのプラス方向のEM吸引力F Zは、初期のEM吸引力F Z0から変化量ΔF Z分減少し、アキシャル電磁石MZbのマイナス方向のEM吸引力F Zは、初期のEM吸引力F Z0から変化量ΔF Z分増加する。その結果、回転軸27がマイナス方向に移動して目標位置Z 0に近づく。回転軸27の現在位置Zが目標位置Z 0からマイナス方向にある場合は、その逆になり、回転軸27がプラス方向に移動して目標位置Z 0に近づく。
[0377]
 また、積分回路68の後段には、減算回路91とゲイン設定回路92とが配置されている。減算回路91には、CP吸引力Fcp0に対応する参照電圧が設定されており、積分回路68から出力されるCP吸引力Fcpθに相当する出力電圧を、CP吸引力Fcp0に対応する参照電圧から減算して、減少分ΔFcpθに相当する電圧を出力する。ゲイン設定回路92は、減算回路91の出力値に所定のゲインを掛けて、後段の回路が適正に処理できる出力値に設定する。
[0378]
 ゲイン設定回路92は、アキシャル電磁石MZa用の加算回路83aに接続されている。ゲイン設定回路92は、減少分ΔFcpθに相当する電圧を出力するため、加算回路83aにおいて、その電圧がバイアス電圧に加算される。バイアス電流設定電圧回路86aにおいては、磁気カップリング32がCP吸引力Fcpの初期値Fcp0を発生することを前提として設定されたEM吸引力F Zに対応するバイアス電圧が設定されている。そのため、ゲイン設定回路92から入力される電圧がバイアス電圧に加算されることで、EM吸引力F Zに対して減少分ΔFcpθが補償される。
[0379]
 また、統括制御部61Aには、センサ回路87から差ΔZに相当する信号が入力される。統括制御部61Aは、図34BのS4050に示したように、差ΔZに基づいて、回転軸27の浮上位置が許容範囲にあるか否かを判定する。
[0380]
 上述したとおり、ガスレーザ装置2の磁気軸受システムにおいて、回転軸27の位置調節のための制御は、迅速な処理が要求される。そのため、ガスレーザ装置2の磁気軸受システムにおいて、電磁石制御部とCP吸引力計測部をアナログ回路で構成することは、処理の迅速化に有効である。
[0381]
 8.その他
 上記各実施形態において、以下のような変形が可能である。例えば、各軸受部RB1、RB2、AXBにおいて、各電磁石の磁力として吸引力を利用して回転軸27を磁気浮上させる例で説明したが、磁力として吸引力の代わりに反発力を利用して回転軸27を磁気浮上させてもよい。また、各軸受部RB1、RB2、AXBにおいて、電磁石のみを用いた例で説明したが、電磁石と永久磁石とを組み合わせて使用してもよい。この場合は、例えば、永久磁石でバイアス電流に対応する初期の磁力を発生し、変化量を電磁石で調節する。
[0382]
 ガスレーザ装置2は、狭帯域化されていない自然励起光をパルスレーザ光として露光装置3に出力するガスレーザ装置であってもよい。この場合のガスレーザ装置は、狭帯域化モジュールの代りに高反射ミラーが配置される。
[0383]
 ガスレーザ装置2は、エキシマレーザ装置でなくてもよい。ガスレーザ装置2は、ハロゲンガスであるフッ素ガスとバッファガスとをレーザガスとするフッ素分子レーザ装置であってもよい。また、ガスレーザ装置2とレーザ加工装置とを組み合わせて、レーザ加工装置のレーザ光源として使用されてもよい。
[0384]
 上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の各実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
[0385]
 本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。

請求の範囲

[請求項1]
 ガスレーザ装置は、以下を備える:
 A.レーザガスを封入するレーザチャンバ;
 B.前記レーザチャンバ内に配置され、互いに対向して配置された一対の放電電極;
 C.前記一対の放電電極間にレーザガスを流すファン;
 D.磁力を制御可能な電磁石を含み、前記ファンの回転軸を前記磁力によって磁気浮上させた状態で回転自在に支持する磁気軸受;
 E.前記回転軸の浮上位置の変位に基づいて前記電磁石の磁力を制御して、前記浮上位置を調節する電磁石制御部;
 F.前記ファンを回転させるトルクを発生するモータ;
 G.前記回転軸と前記モータの駆動軸とを磁気による吸引力で結合して、前記回転軸に前記モータのトルクを伝達する磁気カップリング;
 H.前記磁気カップリングの吸引力を推定可能なパラメータを検出する吸引力推定用センサ;
 I.前記吸引力推定用センサによって検出された前記パラメータに基づいて、前記磁気カップリングの前記吸引力を計測する吸引力計測部;及び
 J.前記吸引力計測部によって計測された前記吸引力の変動に応じて、前記電磁石の磁力を補正する補正部。
[請求項2]
 請求項1に記載のガスレーザ装置であって、
 前記電磁石の前記磁力と前記磁気カップリングの前記吸引力のうち少なくとも前記吸引力を含み、前記回転軸に対して作用する第1の力と、前記電磁石の磁力を少なくとも含み、前記回転軸に対して前記第1の力と反対方向に作用する第2の力の2つの力が釣り合うように、前記補正部は、前記第1の力又は前記第2の力に含まれる前記電磁石の前記磁力を、前記吸引力の変動に応じて補正する。
[請求項3]
 請求項2に記載のガスレーザ装置であって、
 前記回転軸に作用する力の釣り合いの関係であって、前記モータが停止し前記吸引力が前記基準値に維持されている状態において、前記回転軸の浮上位置を目標位置に合わせるための力の釣り合いの関係を初期条件とした場合に、
 前記補正部は、前記初期条件が維持されるように、前記吸引力の変動に応じて前記電磁石の前記磁力を補正する。
[請求項4]
 請求項1に記載のガスレーザ装置であって、
 前記磁気軸受は、前記回転軸の浮上位置を検出する変位センサを含み、
 前記電磁石制御部は、前記変位センサによって検出した前記浮上位置が目標位置から変位した場合に、前記浮上位置と前記目標位置との差に基づいて、前記浮上位置を目標位置に近づけるための前記電磁石の磁力の変化量を計算し、
 前記補正部は、計算された前記変化量を、前記吸引力の変動に応じて補正する。
[請求項5]
 請求項1に記載のガスレーザ装置であって、
 前記補正部は、前記吸引力計測部によって計測された前記吸引力と予め設定された基準値との差である吸引力の変動分を求め、前記変動分に基づいて、前記電磁石の磁力を補正する。
[請求項6]
 請求項5に記載のガスレーザ装置であって、
 前記吸引力の基準値は、前記モータが停止している場合に前記磁気カップリングが発生する吸引力であって、吸引力の大きさが最大となる初期値であり、
 前記変動分は前記初期値からの減少分である。
[請求項7]
 請求項1に記載のガスレーザ装置は、さらに以下を備える;
 K.前記ファンが回転中に前記磁気カップリングの前記吸引力を監視して、前記吸引力が所定の下限値を下回った場合に、前記モータの回転を停止する制御を行うモータ制御部。
[請求項8]
 請求項1に記載のガスレーザ装置であって、
 前記磁気カップリングは、前記モータの駆動軸に取り付けられ、前記駆動軸からモータのトルクが入力されて回転する駆動側ロータ部と、前記ファンの前記回転軸に取り付けられた従動側ロータ部とを含み、
 前記従動側ロータ部は、前記駆動側ロータ部との間で発生する前記吸引力によって前記駆動側ロータ部から前記トルクが伝達されて、前記駆動側ロータ部に従動して回転する。
[請求項9]
 請求項8に記載のガスレーザ装置であって、
 前記パラメータは、前記駆動側ロータ部と前記従動側ロータ部の間の磁束密度であり、
 前記吸引力推定用センサは、前記磁束密度を検出する磁束密度センサであり、
 前記吸引力計測部は、前記磁束密度から前記吸引力を計測する。
[請求項10]
 請求項8に記載のガスレーザ装置であって、
 前記パラメータは、前記駆動側ロータ部と前記従動側ロータ部との位相差であり、
 前記吸引力推定用センサは、前記位相差を検出する位相差センサであり、
 前記吸引力計測部は、予め設定された前記吸引力と前記位相差の対応関係に基づいて、前記位相差センサによって検出した前記位相差に対応する前記吸引力を計測する。
[請求項11]
 請求項10に記載のガスレーザ装置であって、
 前記位相差センサは、前記駆動側ロータ部と前記従動側ロータ部の間の磁束密度の変化点を検出する磁束密度変化センサである。
[請求項12]
 請求項11に記載のガスレーザ装置であって、
 前記位相差センサは、前記駆動側ロータ部と前記従動側ロータ部の間の磁束密度を検出する磁束密度センサと、前記磁束密度センサが出力する周期的に変化する信号を微分する微分回路とを含み、
 前記微分回路の出力に基づいて前記磁束密度の変化点を検出する。
[請求項13]
 請求項10に記載のガスレーザ装置であって、
 前記位相差センサは、前記駆動側ロータ部の回転を検出する回転センサと、前記従動側ロータ部の回転を検出する回転センサとを含み、
 前記各回転センサの検出信号に基づいて前記位相差を検出する。
[請求項14]
 請求項8に記載のガスレーザ装置であって、
 前記磁気軸受は、前記回転軸のラジアル方向に磁力を発生するラジアル電磁石を含むラジアル軸受部、及び前記回転軸のアキシャル方向に磁力を発生するアキシャル電磁石を含むアキシャル軸受部を備えており、
 前記電磁石制御部は、前記ラジアル電磁石の磁力及び前記アキシャル電磁石の磁力を制御する。
[請求項15]
 請求項14に記載のガスレーザ装置であって、
 前記磁気カップリングは、前記駆動側ロータ部と前記従動側ロータ部の間で前記アキシャル方向に前記吸引力を発生し、
 前記補正部は、前記アキシャル電磁石の磁力を前記吸引力の変動に応じて補正する。
[請求項16]
 請求項15に記載のガスレーザ装置であって、
 前記アキシャル電磁石は、前記吸引力の向きと同じ第1の方向に前記磁力を発生する第1アキシャル電磁石と、前記第1の方向と反対の第2の方向に磁力を発生する第2アキシャル電磁石とを含み、
 前記補正部は、前記前記第1アキシャル電磁石の磁力を前記吸引力の変動に応じて補正する。
[請求項17]
 請求項15に記載のガスレーザ装置であって、
 前記アキシャル電磁石は、前記吸引力の向きと反対の第2の方向に磁力を発生する第2電磁石のみを含み、
 前記補正部は、前記第2電磁石の磁力を前記吸引力の変動に応じて補正する。
[請求項18]
 請求項14に記載のガスレーザ装置であって、
 前記磁気カップリングは、前記駆動側ロータ部と前記従動側ロータ部の間で前記ラジアル方向に前記吸引力を発生し、
 前記補正部は、前記ラジアル電磁石の磁力を前記吸引力の変動に応じて補正する。
[請求項19]
 請求項18に記載のガスレーザ装置であって、
 前記ラジアル電磁石は、前記回転軸の周方向において対向する位置に配置された少なくとも2つのラジアル電磁石を含み、
 前記補正部は、前記2つのラジアル電磁石の磁力を前記吸引力の変動に応じて補正する。
[請求項20]
 請求項1に記載のガスレーザ装置であって、
 前記電磁石制御部、前記吸引力計測部及び前記補正部は、アナログ回路で構成される。
[請求項21]
 レーザガスが封入されたレーザチャンバと、前記レーザチャンバ内に配置され、互いに対向して配置された一対の放電電極と、前記一対の放電電極間にレーザガスを流すファンと、を備えたガスレーザ装置に用いられ、
 磁力を制御可能な電磁石を含み、前記ファンの回転軸を前記磁力によって磁気浮上させた状態で回転自在に支持する磁気軸受を制御する磁気軸受制御方法は、以下を備える:
 A.前記回転軸の浮上位置の変位に基づいて前記電磁石の磁力を制御して、前記浮上位置を調節する電磁石制御ステップ;
 B.磁気カップリングを用いて、前記ファンの回転軸とモータの駆動軸とを磁気による吸引力で結合して、前記モータから前記回転軸にトルクを伝達してファンを回転させるファン回転ステップ;
 C.前記磁気カップリングの吸引力を推定可能なパラメータを検出するパラメータ検出ステップ;
 D.検出された前記パラメータに基づいて、前記磁気カップリングの前記吸引力を計測する吸引力計測ステップ;及び
 E.前記吸引力計測ステップにおいて計測された前記吸引力の変動に応じて、前記電磁石の磁力を補正する補正ステップ。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25]

[ 図 26]

[ 図 27]

[ 図 28]

[ 図 29]

[ 図 30A]

[ 図 30B]

[ 図 31]

[ 図 32]

[ 図 33]

[ 図 34A]

[ 図 34B]

[ 図 35]

[ 図 36]

[ 図 37]

[ 図 38]

[ 図 39]

[ 図 40]

[ 図 41]

[ 図 42]

[ 図 43]

[ 図 44]

[ 図 45]

[ 図 46]

[ 図 47]

[ 図 48]

[ 図 49]

[ 図 50]

[ 図 51]

[ 図 52]

[ 図 53]

[ 図 54]

[ 図 55]

[ 図 56]

[ 図 57]

[ 図 58]

[ 図 59A]

[ 図 59B]

[ 図 60A]

[ 図 60B]

[ 図 61]

[ 図 62]

[ 図 63]

[ 図 64]

[ 図 65A]

[ 図 65B]

[ 図 66]