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1. (WO2018190202) めっき材及びその製造方法
Document

明 細 書

発明の名称 めっき材及びその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004  

課題を解決するための手段

0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030  

発明の効果

0031  

図面の簡単な説明

0032  

発明を実施するための形態

0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146  

符号の説明

0147  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30   31   32   33   34   35   36   37   38  

明 細 書

発明の名称 : めっき材及びその製造方法

技術分野

[0001]
 本開示は、めっき材及びその製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 特許文献1に開示のように、多量の基材を一度に電気めっきする方法としてバレルめっきが知られている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開平1-139799号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 バレルめっきにおいては、めっき層と基材の界面に起因してめっき層と基材の密着性が低いという課題がある。

課題を解決するための手段

[0005]
 本開示の一態様に係るめっき材は、1以上の基材金属元素を含む基材と、前記基材の直上に形成されためっき層を備え、
 前記めっき層が、少なくとも、第1のめっき層金属元素と、前記第1のめっき層金属元素とは異なる第2のめっき層金属元素を含み、
 前記第2のめっき層金属元素が、前記1以上の基材金属元素の少なくとも一つと同一の金属元素であり、
 前記めっき層の厚み方向において前記基材から離間するに応じて前記めっき層における前記第2のめっき層金属元素の割合が連続的に減少し、
 前記基材と前記めっき層の間に明確な界面が生じないように、少なくとも前記第1及び第2のめっき層金属元素を含む合金の結晶粒が前記めっき層に分布する。
[0006]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層のTEM(Transmission Electron Microscope)画像において前記基材と前記めっき層の間に明確な界面が観察できない。
[0007]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層には100nm以下、又は50nm以下の幅を有する複数の結晶粒が密集した領域が含まれる。
[0008]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層には25nm以下の幅を有する結晶粒が含まれる。
[0009]
 幾つかの実施形態では、前記25nm以下の幅を有する結晶粒は、金属原子の配列状態を写すTEM画像において観察される。
[0010]
 幾つかの実施形態では、前記25nm以下の幅を有する結晶粒は、前記めっき層の初期成長領域に形成される。
[0011]
 幾つかの実施形態では、前記初期成長領域は、前記TEM画像において前記基材の金属原子の配列状態を示す領域から50nmの範囲内の領域である。
[0012]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層のTEM画像で観察される前記結晶粒に対して矩形枠を適用し、この矩形枠の面積の半分の値を前記結晶粒の面積と決定する時、
 前記めっき層のTEM画像における前記結晶粒の平均面積は、1000nm 2以下である。
[0013]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層のTEM画像における前記結晶粒の平均面積は、500nm 2以下である。
[0014]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層のTEM画像で観察される前記結晶粒に対して矩形枠を適用し、この矩形枠の面積の半分の値を前記結晶粒の面積と決定する時、
 前記めっき層のTEM画像における前記結晶粒の最大面積は、1000nm 2又は700nm 2以下である。
[0015]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層には、バレルめっきによってめっき層が形成される場合にめっき層に含まれる粗大粒が含まれない。
[0016]
 幾つかの実施形態では、前記粗大粒は、150nm又は100nmを超える幅を有する。
[0017]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層についてしたX線回折の結果は、前記めっき層に含まれる合金と同一の組成の合金のICDDカードに基づいて特定される回折ピーク角からシフトした回折ピークを示す。
[0018]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層の厚み方向において前記基材から離間するに応じて前記第2のめっき層金属元素の割合が連続的に減少する部分の厚みが10nm以上、又は20nm以上、又は、60nm以上である。
[0019]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層の厚み方向において前記基材から離間するに応じて前記第2のめっき層金属元素の割合が連続的に減少する部分の厚みが、80nm以下、又は60nm以下、又は、30nm以下、又は、20nm以下である。
[0020]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層の表面において前記第1のめっき層金属元素の割合は100%未満、又は、90%未満である。
[0021]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層の厚みが、150nm以下、又は100nm以下である。
[0022]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層が、前記基材とは反対側の反対面を有し、
 前記めっき層における前記第2のめっき層金属元素の割合の減少は、前記めっき層の厚み方向において前記反対面に至るまで又は前記反対面の近傍に至るまで継続する。
[0023]
 幾つかの実施形態では、前記基材が、複数の前記基材金属元素を含み、
 前記めっき層が、複数の前記第2のめっき層金属元素を含み、
 前記めっき層の厚み方向において前記基材から離間するに応じて前記めっき層における各第2のめっき層金属元素の割合が減少する。
[0024]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層の厚み方向において前記基材に接近するに応じて前記めっき層における前記第1のめっき層金属元素の割合が減少する。
[0025]
 幾つかの実施形態では、前記基材が前記基材金属元素として少なくとも銅を含む金属又は合金である。
[0026]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層が、前記第1のめっき層金属元素として少なくとも錫を含む金属又は合金である。
[0027]
 幾つかの実施形態では、前記めっき層が、前記基材とは反対側の反対面を有し、
 前記反対面には粒子状部分及び/又は小塊状部分が2次元状に密集して形成される。
[0028]
 幾つかの実施形態では、前記めっき材が、服飾部品の少なくとも一部である。
[0029]
 本開示の一態様に係るめっき材の製造方法は、
 1以上の基材金属元素を含む基材を電気めっき槽に投入する工程と、
 前記電気めっき槽において前記基材を周方向に流動させながら電気めっきする工程にして、前記電気めっきにより前記基材の直上に、少なくとも第1のめっき層金属元素と、前記第1のめっき層金属元素とは異なる第2のめっき層金属元素を含むめっき層が形成される工程を含み、
 前記第2のめっき層金属元素が、前記1以上の基材金属元素の少なくとも一つと同一の金属元素であり、
 前記めっき層の厚み方向において前記基材から離間するに応じて前記めっき層における前記第2のめっき層金属元素の割合が連続的に減少し、
 前記基材と前記めっき層の間に明確な界面が生じないように、少なくとも前記第1及び第2のめっき層金属元素を含む合金の結晶粒が前記めっき層に分布する。
[0030]
 本開示の一態様に係るめっき材は、1以上の第1金属元素を含む基材と、前記基材の直上に形成されためっき層を備え、
 前記めっき層が、少なくとも、第2金属元素と、前記第2金属元素とは異なる第3金属元素を含み、
 前記第3金属元素が、前記1以上の第1金属元素の少なくとも一つと同一の金属元素であり、
 前記めっき層の厚み方向において前記基材から離間するに応じて前記めっき層における前記第3金属元素の割合が連続的に減少し、
 前記基材と前記めっき層の間に明確な界面が生じないように、少なくとも前記第1及び第2のめっき層金属元素を含む合金の結晶粒が前記めっき層に分布する。

発明の効果

[0031]
 本開示の一態様によれば、基材とめっき層の密着性が高められためっき材を提供できる。

図面の簡単な説明

[0032]
[図1] 本開示の一態様に係るめっき材のキャップの概略的な斜視図である。
[図2] 本開示の一態様に係るめっき材のキャップが芯材に装着された服飾部品の概略的な斜視図である。
[図3] 本開示の一態様に係るめっき材の層構造を概略的に示す模式図であり、基材と、基材の直上に形成されためっき層を示す。
[図4] 本開示の一態様に係るめっき層の厚み方向におけるめっき材の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じてめっき層における第2のめっき層金属元素(Cu,Zn)の割合が連続的に減少する。めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて第1のめっき層金属元素(Sn)の割合が減少する。
[図5] 本開示の一態様に係るめっき材の断面における元素分布を示す図であり、第1のめっき層金属元素(Sn)がめっき層に存在し、基材金属元素(Cu)が基材及びめっき層に存在し、基材金属元素(Zn)が基材及びめっき層に存在することを示す。Cuは、Znよりもめっき層の表面近くまで存在していることが示される。
[図6] 本開示の一態様に係るめっき材の断面を示すTEM(Transmission Electron Microscope)画像(観察倍率は20万倍、観察視野は0.64μm×0.44μm)であり、基材とめっき層の間に明確な界面が存在しないことを示す。
[図7] 本開示の一態様に係るめっき層の表面の状態を示すSEM画像(観察倍率は5万倍、観察視野は2.5μm×1.8μm)であり、粒子状部分及び/又は小塊状部分が2次元状に密集して形成されていることが示される。
[図8] 従来のめっき材の断面を示すTEM画像(観察倍率は10万倍、観察視野は1.3μm×0.88μm)であり、基材とめっき層の間に界面が存在することを示す。
[図9] 従来のめっき材の断面における元素分布を示す図であり、めっき層金属元素(Sn)がめっき層に存在し、めっき層金属元素及び基材金属元素(Cu)が基材及びめっき層に存在し、基材金属元素(Zn)が基材に存在することを示す。基材金属元素(Zn)がめっき層に存在しないことが示される。
[図10] 従来のめっき材のめっき層の表面の状態を示すSEM画像(観察倍率は5万倍、観察視野は2.5μm×1.8μm)であり、クラックやピンホールが形成されていることが示される。
[図11] 本開示の一態様に係るめっき層の厚み方向におけるめっき材の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じてめっき層における第2のめっき層金属元素(Zn)の割合が連続的に減少する。めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて第1のめっき層金属元素(Cu)の割合が減少する。
[図12] 本開示の一態様に係るめっき層の厚み方向におけるめっき材の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じてめっき層における第2のめっき層金属元素(Cu)の割合が連続的に減少する。めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて第1のめっき層金属元素(Zn)の割合が減少する。
[図13] 本開示の一態様に係るめっき層の厚み方向におけるめっき材の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じてめっき層における第2のめっき層金属元素(Cu,Zn)の割合が連続的に急峻に減少する。めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて第1のめっき層金属元素(Sn)の割合が減少する。図4の場合よりもめっき層の厚みが更に薄くなる。
[図14] 図13よりも薄くめっき層を形成した場合の概略的なグラフである。
[図15] 本開示の一態様に係るめっき材の層構造を概略的に示す模式図であり、基材の直上に形成されためっき層が、下地めっき層と表面めっき層を含む。
[図16] 本開示の一態様に係るめっき層の厚み方向におけるめっき材の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。下地めっき層が、ある第1のめっき層金属元素(Sn)から成る。表面めっき層が、別の第1のめっき層金属元素(Cu)から成る。
[図17] 本開示の一態様に係るめっき層の厚み方向におけるめっき材の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じてめっき層における第2のめっき層金属元素(Zn)の割合が連続的に減少する。めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて第1のめっき層金属元素(Cu)の割合が減少する。
[図18] 本開示の一態様に係るめっき層の厚み方向におけるめっき材の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じてめっき層における第2のめっき層金属元素(Fe)の割合が連続的に減少する。めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて第1のめっき層金属元素(Cu)の割合が減少する。
[図19] 本開示の一態様に係るめっき材の非限定の一例の製造方法を示す概略的なフローチャートである。
[図20] 本開示の一態様に係るめっき材の製造のために用いられ得る非限定の一例の電気めっき装置の概略的な構成を示す模式図である。
[図21] 本開示の一態様に係るめっき材の製造のために用いられ得る非限定の一例の電気めっき装置の概略的な構成を示す模式図である。
[図22] スライドファスナーの概略的な正面模式図であり、めっき材のバリエーションを示すために参酌される。
[図23] 本開示の一態様に係るめっき材の断面を示すTEM画像(観察倍率は100万倍、観察視野は0.13μm×0.09μm)である。
[図24] 図23と同一のTEM画像(観察倍率は100万倍、観察視野は0.13μm×0.09μm)であり、めっき層における結晶粒の分布に含まれる3つの結晶粒を点線にて指し示す。結晶粒の面積は、結晶粒を周囲するように適用された一点鎖線の矩形枠の面積の半分として算出される。
[図25] 従来のめっき材の断面を示すTEM画像(観察倍率は50万倍、観察視野は0.28μm×0.20μm)である。
[図26] 図25と同一のTEM画像(観察倍率は50万倍、観察視野は0.28μm×0.20μm)であり、めっき層における結晶粒の分布に含まれる5つの結晶粒を点線にて指し示す。
[図27] 結晶粒に対する矩形枠の適用に基づいて決定された結晶粒の面積の分布を示すチャートである。
[図28] 本開示の一態様に係るめっき材の断面を更に微細な観察視野で示すTEM画像(観察倍率は100万倍、観察視野は40nm×40nm)であり、めっき層の初期成長領域において25nm以下の幅を有する結晶粒(図28において点線により明示される)が示される(図28に点線で示した結晶粒は、10nm程度の幅を有する)。このTEM画像には金属原子の配列状態が写される。
[図29] 従来のめっき材の断面を更に微細な観察視野で示すTEM画像(観察倍率は100万倍、観察視野は40nm×40nm)であり、基材とめっき層の間の界面を境界として基材における金属原子の配列状態とめっき層における金属原子の配列状態が異なることを示す。
[図30] 本開示の一態様に係るめっき材のX線回折結果を示すグラフである。
[図31] 従来のめっき材のX線回折結果を示すグラフである。
[図32] 図30の要部を拡大して示す模式図である。
[図33] 本開示の一態様に係るめっき材の断面を示すTEM画像(観察倍率は100万倍、観察視野は0.13μm×0.09μm)である。
[図34] 図33と同一のTEM画像であり、めっき層における結晶粒の分布に含まれる結晶粒を点線にて指し示す。
[図35] 本開示の一態様に係るめっき材の断面を示すTEM画像(観察倍率は20万倍、観察視野は0.64μm×0.44μm)である。
[図36] 図35と同一のめっき材のめっき層の表面を示すSEM画像(観察倍率は5万倍、観察視野は2.5μm×1.8μm)である。
[図37] 従来のめっき材の断面を示すTEM画像(観察倍率は5万倍、観察視野は2.5μm×1.8μm)である。
[図38] 図37と同一のめっき材のめっき層の表面を示すSEM画像(観察倍率は5万倍、観察視野は2.5μm×1.8μm)である。

発明を実施するための形態

[0033]
 以下、図1乃至図38を参照しつつ、本発明の非限定の実施形態例について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態例及び/又は各特徴を組み合わせることができる。また、当業者は、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態例間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている場合がある。
[0034]
 以下の記述において、あるめっき材及び/又はめっき材の製造方法に関して記述される複数の特徴が、これらの特徴の組み合わせとして理解される他、他の特徴とは独立した個別の特徴として理解される。個別の特徴は、他の特徴との組み合わせを必須とすることなく独立した個別の特徴として理解されるが、1以上の他の個別の特徴との組み合わせとしても理解される。個別の特徴の組み合わせの全てを記述することは当業者には冗長である他なく、省略される。個別の特徴は、「幾つかの実施形態」、「幾つかの場合」、「幾つかの例」といった表現により明示される。個別の特徴は、例えば、図面に開示されためっき材及び/又はめっき材の製造方法にのみ有効であるものではなく、他の様々なめっき材及び/又はめっき材の製造方法にも通用する普遍的な特徴として理解される。
[0035]
 第1、第2、第3といった用語は、これらが付された名詞を論理的に区別するために付される。例えば、第1との用語は、これが付された名詞が一つだけ存在することを明示するために用いられない(そのように明示する場合を除く)。例えば、請求項は、「複数の前記第2のめっき層金属元素」といった記述を含む。第2のめっき層金属元素としての複数の金属元素の存在が示される。第1、第2、第3との用語は、これらが付された名詞が異なることを明示するために用いられない(そのように明示する場合を除く)。例えば、請求項は、「前記第3金属元素が、前記1以上の第1金属元素の少なくとも一つと同一の金属元素であり」と述べる。このように、第3金属元素は、第1金属元素と同一であり得る。
[0036]
 図1は、めっき材5のキャップの概略的な斜視図である。図2は、めっき材5のキャップが芯材6に装着された服飾部品7の概略的な斜視図である。図3は、めっき材5の層構造を概略的に示す模式図であり、基材51と、基材51の直上に形成されためっき層52を示す。なお、基材51とめっき層52の界面53が実線により図示されるが、実際には明確な界面が存在しない。基材51は、1以上の基材金属元素を含む。めっき層52は、1以上の第1のめっき層金属元素を含む。めっき層52は、第1のめっき層金属元素に加えて、基材金属元素を含む。図4は、めっき層52の厚み方向におけるめっき材5の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。めっき層52の厚み方向において基材51から離間するに応じてめっき層52における第2のめっき層金属元素(Cu,Zn)の割合が連続的に減少する。めっき層52の厚み方向において基材51に接近するに応じて第1のめっき層金属元素(Sn)の割合が減少する。図5は、めっき材5の断面における元素分布を示す図であり、第1のめっき層金属元素(Sn)がめっき層52に存在し、基材金属元素(Cu)が基材51及びめっき層52に存在し、基材金属元素(Zn)が基材51及びめっき層52に存在することを示す。Cuは、Znよりもめっき層の表面近くまで存在していることが示される。図6は、本開示の一態様に係るめっき材5の断面を示すTEM画像であり、基材51とめっき層52の間に明確な界面が存在しないことを示す。図7は、めっき層52の表面の状態を示すSEM画像であり、粒子状部分及び/又は小塊状部分が2次元状に密集して形成されていることが示される。
[0037]
 幾つかの実施形態においては、めっき材5は、基材51と、基材51の直上に形成されためっき層52を含む。めっき材5は、基材51が少なくともめっき層52により被覆された部品であり得る。必ずしもこの限りではないが、めっき材5は、服飾部品7の少なくとも一部であり得る。図1及び図2に例示の幾つかの場合、めっき材5が服飾部品7の一部であり、別のパーツに組み合わされ、服飾部品7が製造される。図1及び図3の例示の幾つかの場合、めっき材5が、キャップであるカップ状の基材51と、基材51の表面上に形成された又は基材51の全表面を被覆するめっき層52を有する。図2に示す場合、図1のめっき材5が芯材6に装着され、服飾部品7が構築される。なお、服飾部品の分野においては、材料及び/又は製造コストを抑えながら、服飾部品の金属色や金属光沢のバリエーションを確保することが強く求められる。
[0038]
 図3及び図4に例示の幾つかの場合、基材51が、1以上の基材金属元素を含む。めっき層52が、少なくとも、第1のめっき層金属元素と、第1のめっき層金属元素とは異なる第2のめっき層金属元素を含む。基材51が純金属から成る場合、基材51は、一つの基材金属元素を含む。基材51が合金から成る場合、基材51は、2以上の基材金属元素を含む。なお、純金属又は合金といった金属材の製造又は精製過程において微量な不可避不純物又は不可避金属が含まれてしまう場合がある。例えば、基材51が黄銅(CuZn)から成る場合、基材51には他の微量な金属又は合金が含まれ得る。例えば、電気めっき用のSnの電極材には、Sn以外の微量な金属が含まれ得る。本明細書で述べる基材金属元素及びめっき層金属元素は、いずれも不可避金属を意味しないものと理解される。なお、基材金属元素は、様々な任意の金属元素であり得る。第1及び第2のめっき層金属元素、又はこれ以外のめっき層金属元素は、様々な任意の金属元素であり得る。
[0039]
 図3及び図4から理解できるように、幾つかの場合、めっき層52に含まれる第2のめっき層金属元素が、1以上の基材金属元素の少なくとも一つと同一の金属元素である。図4の例では、第1のめっき層金属元素が、Snであり、第2のめっき層金属元素が、Cu及び/又はZnである。第1のめっき層金属元素(図4の例ではSn)は、少なくとも一つの基材金属元素(図4の例ではCu及びZnの両方)とは異なる。幾つかの場合、めっき層52に含まれる第1のめっき層金属元素は、複数の基材金属元素のうち少なくとも一つとは異なる(この点は、図11等の参照からより良く理解される)。
[0040]
 図4及び図5の非限定の一例の実証から分かるように、幾つかの場合、めっき層52の厚み方向において基材51から離間するに応じてめっき層52における第2のめっき層金属元素(図4の例ではCu及びZn)の割合が連続的に減少する。追加的又は代替的に、図6の非限定の一例の実証から分かるように、めっき層52と基材51の間に明確な界面が存在しない。かかる場合、基材51とめっき層52の密着性が高められる。この密着性の向上のため、例えば、基材51とめっき層52の界面での剥離の発生が低減され、及び/又は、めっき層52の薄厚化が促進され得る。なお、必ずしもこの限りではないが、第1のめっき層金属元素は、電気めっきに際して電解液中に存在する金属イオンに由来する。第2のめっき層金属元素は、基材51の基材金属元素に由来する。
[0041]
 本明細書の開示全体から理解できるように、必要ならば、めっき層は、その厚み方向において電気めっきにより基材上に析出した金属を含む層として定義され得る。従って、本明細書においては、めっき層は、電気めっきにより基材上に析出した金属以外の金属を含み得る。上述しためっき層金属元素は、めっき層を構成する金属元素であり、換言すれば、めっき層に含まれる金属元素である。第2のめっき層金属元素は、基材の組成に由来し得る。他方、第1のめっき層金属元素は、基材の組成に由来する必要性はない。限定の意図なくより具体的に述べれば、第1のめっき層金属元素は、めっき層の少なくとも一部として基材上に析出した金属元素であり得る。例えば、第1のめっき層金属元素は、基材とは別にめっき液中に供給され、基材に向かって電気泳動する金属イオンの析出物の金属元素に一致する。第2のめっき層金属元素は、第1のめっき層金属元素とは異なり、基材上の析出物には限られず、めっき対象の基材に存在していた又は含まれていた基材金属元素、及び/又は、めっき対象の基材から溶出して析出した基材金属元素であり得る。基材金属元素は、基材を構成する金属元素であり、換言すれば、基材に含まれる金属元素である。
[0042]
 図4及び図5の非限定の一例の実証から分かるように、幾つかの場合、めっき層の厚みの変更によりめっき層の表面での金属元素の割合が簡単に変更可能である。例えば、図4の厚みT1のめっき層の表面と、図4の厚みT2のめっき層の表面では、金属元素の割合が異なる。めっき層の厚みの変更によりめっき層の構成を変化させることができ、めっき層のバリエーションが簡単に得られる。めっき層のバリエーションは、元素の割合に応じた化学的特性、電気的特性、及び/又は物理的特性のバリエーションであり得る。めっき層のバリエーションは、めっき層の色のバリエーションであり得る。幾つかの場合、服飾部品の金属色や金属光沢のバリエーションがより簡単に確保される。なお、図4では、めっき層と基材の境界L1が描かれる。図4では、第1のめっき層金属元素(Sn)が、境界L1よりも深部の基材領域において完全にゼロになっていない。しかしながら、これは計測とデータ出力過程で生じる誤差に起因する。図5の元素分布からわかるように第1のめっき層金属元素(Sn)は基材51の領域には存在しない。
[0043]
 図4及び図5の非限定の一例の実証から分かるように、幾つかの場合、めっき層52の厚み方向において基材51に接近するに応じて第1のめっき層金属元素(Sn)の割合が減少する。図4の非限定の一例の実証から分かるように、幾つかの場合、めっき層52の厚み方向における第1のめっき層金属元素の割合の変化を示す曲線と、めっき層52の厚み方向における基材金属元素の割合の変化を示す曲線が交差する。換言すれば、基材51側とは反対側のめっき層52の反対面52sの近傍において第1のめっき層金属元素が多く存在し、めっき層52における基材51の近傍の領域において第2のめっき層金属元素が多く存在する。本明細書では、めっき層52の反対面52sがめっき層52の表面とも呼ばれる。
[0044]
 図4の非限定の一例の実証から分かるように、幾つかの場合、めっき層52における第2のめっき層金属元素の割合の減少は、めっき層52の厚み方向において反対面52sに至るまで又は反対面52sの近傍に至るまで継続する。換言すれば、幾つかの実施形態においては、基材金属元素の割合に変化がなくなる程までめっき層52が厚く形成されない。めっき層52の薄厚化は、めっき層の形成のために用いられる金属材の量の低減に寄与する。
[0045]
 図4の非限定の一例の実証から分かるように、幾つかの場合、基材51が、複数の基材金属元素を含み、めっき層52が、複数の基材金属元素を含み、めっき層52の厚み方向において基材51から離間するに応じてめっき層52における各第2のめっき層金属元素の割合が減少する。基材51が、3以上の基材金属元素を含む場合も想定される。めっき層52が、2又は3以上のめっき層金属元素を含む場合も想定される。
[0046]
 なお、元素の割合については、原子パーセント(at%)に依拠するものとする。すなわち、ある元素の割合が大きい時、その元素の原子パーセントの値が大きい。原子パーセントの決定は、日本電子(株)製 JAMP9500F オージェ電子分光分析装置を用いて決定するものとする。
[0047]
 基材金属元素及び第1のめっき層金属元素は、様々な任意の金属元素であり得るが、一例としては、基材51が黄銅(CuZn)から成り、基材金属元素が、銅(Cu)及び亜鉛(Zn)である。幾つかの場合、基材51は、基材金属元素として少なくとも銅を含む金属又は合金である。めっき層52は、幾つかの場合、第1のめっき層金属元素として少なくとも錫(Sn)を含む金属又は合金である。図4等に例示の幾つかの場合、基材51が複数の基材金属元素(例えば、Cu,Sn)を含み、めっき層52が、複数の第2のめっき層金属元素(例えば、Cu,Sn)を含む。めっき層52の厚み方向において基材51から離間するに応じてめっき層52における各第2のめっき層金属元素(例えば、Cu,Sn)の割合が減少する。
[0048]
 図7の非限定の一例の実証から分かるように、幾つかの場合、めっき層52の反対面52sには粒子状部分及び/又は小塊状部分が2次元状に密集して形成される。めっき層52は、その緻密な表面状態のため、高められたアルカリ、酸、薬品耐性を有し得る。めっき層52を薄くしたとしても、めっき層52の十分な薬品耐性が確保される。幾つかの場合、めっき層52の厚みが、150nm以下、又は100nm以下である。なお、幾つかの実施形態に係るめっき材においては、めっき層52の厚みは、150nm以下、又は100nm以下でもめっきの密着性の面で特段の問題が無い。従って、めっき材の生産性を考慮すれば必要最低限の厚みにすればよい。かかる観点から150nm以下、又は100nm以下が好ましいが、これに限らず、めっき時間を長く継続して膜厚を更に厚くしてもよい。
[0049]
 上述したように、幾つかの場合、基材51とめっき層52の間に明確な界面が存在しない。めっき層52における第1の及び/又は第2のめっき層金属元素の割合の緩やかな変化が無界面に帰結していることが推定される。或いは、少なくとも第1及び第2のめっき層金属元素を含む合金の結晶粒の分布が無界面に帰結していることが推定される。めっき層52の厚みの決定のため、基材51とめっき層52の境界を定める必要がある。本明細書においては、図4及び/又は図5に示す測定方法に基づいて基材51とめっき層52の境界が決定される。図4の測定方法では、基材51における所定の基材金属元素の割合に到達するめっき層52の表面からの深さにより基材51とめっき層52の境界が定められる。図5の測定方法では、第1のめっき層金属元素の分布及び/又は基材金属元素の分布から基材51とめっき層52の境界が定められる。例えば、Cu:Zn=80:20の元素比の黄銅の基材51が用いられる場合、Cuの原子パーセントが約80at%であり、Znの原子パーセントが約20at%に到達する位置に境界が定められ得る。しかし、図4に示す元素パーセントの割合の変化は、測定機においてエッチングにより放出される材料の元素分析により観察されるものであり、当然に誤差を含む。基材51とめっき層52の境界は、このような測定誤差も踏まえ、妥当な深さに決定されるべきものである。
[0050]
 本発明の実施品についての基材51とめっき層52の境界が次のように決定されるべきものとする。基材51における主たる基材金属元素の最大割合に対してその基材金属元素の割合が98%に到達する位置が、基材51とめっき層52の境界として決定される。基材51における主たる基材金属元素は、基材51が単一の基材金属元素を含む場合、その単一の基材金属元素である。基材51における主たる基材金属元素は、基材51が複数の基材金属元素を含む場合、割合、つまり、原子パーセントが最大の基材金属元素である。例えば、Cu:Zn=80:20の元素比の黄銅が基材51として用いられる場合、割合が最大の金属成分(原子パーセントが最大の金属成分)であるCuの原子パーセントが、最大割合の80at%の98%に到達した位置が境界として定められる。
[0051]
 なお、従来のバレルめっきや静止めっきについては、本発明の実施品のような無界面状態ではなく、明確な界面が存在するので、その位置を基材51とめっき層52の境界と定義する。ただ、母材の表面には実際には微細な凹凸があるため、便宜上はその表面の凹凸の平均高さ(Rc)の位置を基材51とめっき層52の境界と定義する。
[0052]
 上述のように、幾つかの場合、めっき層52における第2のめっき層金属元素の割合が緩慢に変化し、及び、基材51とめっき層52の間に明確な界面が存在しない。このようなめっき層52を有しない従来のめっき材について図8乃至図10を参照して記述する。図8は、従来のめっき材の断面を示すTEM画像であり、基材とめっき層の間に界面が存在することを示す。図9は、従来のめっき材の断面における元素分布を示す図であり、めっき層金属元素(Sn)がめっき層に存在し、めっき層金属元素及び基材金属元素(Cu)が基材及びめっき層に存在し、基材金属元素(Zn)が基材に存在することを示す。基材金属元素(Zn)がめっき層に存在しないことが示される。図8、図9のとおり、従来のバレルめっきにおいては、めっき表面の色調や表面状態の改善のために膜厚を200nmよりも厚くする場合があり、かつ、母材の上にめっき層が単純に積層するように形成されるため、基材51とめっき層52の境界は視覚的に明確に特定できる。ただ、母材の表面には実際には微細な凹凸があるため、界面とはその凹凸の表面自体になる。なお、めっき膜厚を数値的に表現する場合には、便宜上はその表面の凹凸の平均高さ(Rc)の位置を基材51とめっき層52の境界とする。また、図10は、従来のめっき材のめっき層の表面の状態を示すSEM画像であり、クラックやピンホールが形成されていることが示される。
[0053]
 図8乃至図10では、基材が黄銅(CuZn)から成り、めっき層がCuSn合金から成る。250nm厚のCuSn層のめっき層においてCuの元素パーセントとSnの元素パーセントが実質的に一定である。図8に示すように、めっき層と基材の金属組織の違いから理解される明確な界面がめっき層と基材の間に存在する。図9に示すように、めっき層は、基材金属元素のZnを含まない。めっき層がCuを含む理由は、Cuがめっき層金属元素であるためである。図10に示すように、めっき層の表面には、クラックD1やピンホールD2が存在する。クラックD1やピンホールD2へのアルカリ、酸、薬品の進入によりめっき層の腐蝕や崩壊が進行し得る。この課題及び/又は他の課題に完全に対処するには10000nm程度以上のめっき厚が必要とされているが、従来の現実的な工業生産レベルでのめっき材においては、例えば、250nm厚といった100nm~200nmを超える厚みのめっき層を形成して、めっき剥がれや酸化や変色といった問題についてある程度の実用レベルに耐えれるところで妥協している。
[0054]
 図8乃至図10の従来例のめっき材のめっき層は、バレルめっきにより形成されたものである。バレルめっきは、めっき浴に浸漬したバレル(回転カゴ)内に被めっき材、本明細書で言う基材を投入し、バレルを回転させながら電気めっきする方法である。一度に多量の被めっき材を電気めっきすることができる利点がある。図1乃至図7の実施形態に係るめっき材のめっき層は、図19乃至図21を参照して記述する後述の非限定の一例の方法により形成されるが、必ずしもこの方法に限定されるべきではない。当業者は、本開示に係るめっき層を実現するため、既存のバレルめっきを改良し、又は、全く異なる別の方法を想到し得る。
[0055]
 図1乃至図7に例示の実施形態に係るめっき材は、図8乃至図10の従来のめっき材の1以上の問題を解決し得る。すなわち、図1乃至図7に例示の実施形態に係るめっき材は、基材とめっき層の界面に起因した低い密着性という従来の課題の解決に貢献し得る。めっき層を厚く形成しても、めっき層と基材の間に界面があれば、めっき層の剥離が誘起され得る。追加的又は代替的に、図1乃至図7に例示の実施形態に係るめっき材は、めっき層が厚いという従来の課題の解決に貢献し得る。追加的又は代替的に、図1乃至図7に例示の実施形態に係るめっき材は、めっき層の表面に多数のクラック及び/又はピンホールがあるという従来の課題の解決に貢献し得る。
[0056]
 以下、図11乃至図18を参照して金属元素のバリエーションについて主に記述する。図11は、めっき層の厚み方向におけるめっき材の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。図11においては、基材51が黄銅(CuZn)から成り、第1のめっき層金属元素が銅(Cu)である。図11から分かるように、めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じてめっき層における第2のめっき層金属元素(Zn)の割合が連続的に減少する。図11の場合、第1のめっき層金属元素が銅(Cu)であるため、めっき層における基材51由来の金属元素(Cu)の割合の変化が観察できない。
[0057]
 めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて金属元素(Cu)の割合が減少する。図11のめっき層における金属元素(Cu)の割合の変化は、基材金属元素としてのCuと第1のめっき層金属元素としてのCuの合計の割合の変化を示す。しかし、めっき層52の表面側において第1のめっき層金属元素が多く存在することが明らかであるため、図11のめっき層における金属元素(Cu)の割合の変化は、めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて第1のめっき層金属元素(Cu)の割合が減少することを裏付ける。
[0058]
 図12は、めっき層の厚み方向におけるめっき材の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。図12においては、基材51が黄銅(CuZn)から成り、第1のめっき層金属元素が亜鉛(Zn)である。図12から分かるように、めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じてめっき層における第2のめっき層金属元素(Cu)の割合が連続的に減少する。図12の場合、第1のめっき層金属元素が亜鉛(Zn)であるため、めっき層における基材51由来の金属元素(Zn)の割合の変化が観察できない。めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて金属元素(Zn)の割合が減少することは、めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて第1のめっき層金属元素(Zn)の割合が減少することを裏付ける。
[0059]
 図13は、めっき層の厚み方向におけるめっき材の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。図13においては、基材51が黄銅(CuZn)から成り、第1のめっき層金属元素が錫(Sn)である。めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じてめっき層における第2のめっき層金属元素(Cu又はZn)の割合が連続的に急峻に減少する。めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて第1のめっき層金属元素(Sn)の割合が減少する。図13の場合、図4とは異なる装置でめっき層が形成され、図4のめっき層よりもめっき層の厚みが薄くなる顕著な効果が得られる。
[0060]
 なお、めっき層の厚みは、必ずしも、上述の各例の厚みに限定されるべきではない。例えば、図13の場合、めっきの厚みを20nmより大きくすれば、よりSnの素材の色であるシルバー色に近づく色目のめっき材が得られる。逆に、めっきの厚みを20nmより小さくすれば、より基材51の黄銅の色である黄色に近づく色目のめっき材が得られる。
[0061]
 具体的には、図13のめっきの厚みを10nmとした例を、図14に記載する。この場合、図13の実施形態のめっき材が薄いゴールド色となるのに対して、それよりも若干黄色が強い色目となる。このように、厚みを10nmとした本発明の実施形態の場合であっても、従来のバレルめっきよりも密着性において優位性があるめっき材が得られる。
[0062]
 図15は、めっき材の層構造を概略的に示す模式図であり、基材の直上に形成されためっき層が、下地めっき層と表面めっき層を含む。図16は、めっき層の厚み方向におけるめっき材の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。図16では、図15のように、めっき層が下地めっき層と表面めっき層から成る。図16においては、基材51が黄銅(CuZn)から成り、下地めっき層の第1のめっき層金属元素が錫(Sn)から成り、表面めっき層の第1のめっき層金属元素が銅(Cu)から成る。めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じて下地めっき層における第2のめっき層金属元素(Cu又はZn)の割合が連続的に減少する。めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて下地めっき層の第1のめっき層金属元素(Sn)の割合が連続的に減少する。
[0063]
 めっき層の厚み方向において下地めっき層から離間するに応じて表面めっき層における第2のめっき層金属元素(Zn)の割合が連続的に減少し、下地めっき層の第1のめっき層金属元素(Sn)の割合も同様に連続的に減少する。図16の場合、表面めっき層の第1のめっき層金属元素が銅(Cu)であるため、表面めっき層における基材51由来の金属元素(Cu)の割合の変化が観察できない。表面めっき層の厚み方向において下地めっき層に接近するに応じて表面めっき層の金属元素(Cu)の割合が減少することは、表面めっき層の厚み方向において下地めっき層に接近するに応じて表面めっき層の基材51由来の金属元素(Cu)の割合が減少することを裏付ける。
[0064]
 基材51として主に黄銅が用いられる例について記述したが、他の金属(例えば、亜鉛、ステンレス)、合金、或いは純金属(亜鉛等)が用いられることも想定される。単層や2層の他、3層以上にめっき層が形成される場合も想定される。図4、図11乃至図14、及び図16~18においてめっき層52の表面の位置が52sにより示される。
[0065]
 図17は、めっき層の厚み方向におけるめっき材の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。図17においては、基材51が亜鉛(Zn)から成り、めっき層の第1のめっき層金属元素が銅(Cu)である。めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じてめっき層における第2のめっき層金属元素(Zn)の割合が連続的に減少する。めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて第1のめっき層金属元素(Cu)の割合が減少する。
[0066]
 図18は、めっき層の厚み方向におけるめっき材の各金属元素の割合の変化を示す概略的なグラフである。図18においては、基材51がステンレスから成り、基材金属元素(Fe)を含む。めっき層の第1のめっき層金属元素が銅(Cu)である。めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じてめっき層における第2のめっき層金属元素(Fe)の割合が連続的に減少する。めっき層の厚み方向において基材に接近するに応じて第1のめっき層金属元素(Cu)の割合が減少する。
[0067]
 上述の開示から分かるように、幾つかの場合、めっき層52の厚み方向において基材51から離間するに応じて第2のめっき層金属元素の割合が連続的に減少する部分の厚みが10nm以上、又は20nm以上、又は、60nm以上である。図17は、60nm及び/又は400nm以上の厚み範囲において第2のめっき層金属元素(Zn)の割合が連続的に減少することを示す。図18は、60nm及び/又は100nm以上の厚み範囲において第2のめっき層金属元素(Fe)の割合が減少することを示す。図4は、60nm以上の厚み範囲において第2のめっき層金属元素(Cu)の割合が連続的に減少することを示す。図4は、40nm以上の厚み範囲において第2のめっき層金属元素(Zn)の割合が連続的に減少することを示す。図11及び図12は、図4と同様である。図13は、10nm及び/又は20nm以上の厚み範囲において第2のめっき層金属元素(Cu,Zn)の割合が連続的に急峻に減少することを示す。
[0068]
 上述の開示から分かるように、幾つかの場合、めっき層52の厚み方向において基材51から離間するに応じて第2のめっき層金属元素の割合が連続的に減少する部分の厚みが80nm以下、又は60nm以下、又は、30nm以下、又は、20nm以下である。図4は、80nm以下又は60nm以下の厚み範囲において第2のめっき層金属元素(Cu,Zn)の割合が連続的に減少することを示す。図11及び図12も同様である。図13は、30nm以下及び/又は20nm以下の厚み範囲において第2のめっき層金属元素(Cu,Zn)の割合が連続的に急峻に減少することを示す。
[0069]
 上述の開示から分かるように、幾つかの場合、めっき層52の表面において第1のめっき層金属元素の割合は100%未満、又は90%未満である。めっき層における第2のめっき金属元素のため、めっき層52の最表面において第1のめっき層金属元素の割合が100%にならない。めっき層52の表面において第1のめっき層金属元素の割合が理論上は100%未満であり、又は、異物や測定誤差を考慮しても90%未満である。例えば、図13の実施形態では、第1のめっき層金属元素であるSnが35%に到達した時点でめっきを終了している。従来のバレルめっきにおいては、めっき終了後のめっき材の表面において、めっき層金属元素の割合が理論上は100%であるし、又は、異物や測定誤差を考慮しても90%以上となっている。所望の色目のめっき状態において電気めっきを停止することで、微妙な色目の違うめっき材を簡単に製造できる。
[0070]
 以下、図19乃至図21を参照して非限定の一例のめっき材の製造方法(又はめっき方法)と、これに用いられ得る電気めっき装置の構成について記述する。なお、図19乃至図21及びこれに関する記述は、請求項において物として特定されためっき材について何らの限定を与えるものではない。図19は、めっき材の非限定の一例の製造方法を示す概略的なフローチャートである。図20は、めっき材の製造のために用いられ得る非限定の一例の電気めっき装置の概略的な構成を示す模式図である。図21は、めっき材の製造のために用いられ得る非限定の一例の電気めっき装置の概略的な構成を示す模式図である。
[0071]
 図19に示すように、めっき材の製造方法は、基材金属元素を含む基材を電気めっき槽に投入する工程と、電気めっき槽において基材を周方向に流動させながら電気めっきする工程を含み得る。この電気めっきにより基材の直上に基材金属元素とは異なる第1のめっき層金属元素を含むめっき層が形成される。上述したように、この形成されためっき層が基材金属元素を更に含む。上述したように、めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じてめっき層における第2のめっき層金属元素の割合が減少する、及び/又は、めっき層と基材の間に明確な界面が存在しない。めっき材5に関して記述した他の特徴が、この段落で述べためっき材にも通用する。
[0072]
 図20及び図21に例示される幾つかの実施形態に係る電気めっき装置1は、電解液を蓄えるめっき槽10と、めっき槽10に蓄えられた電解液中で沈降した一群の基材51を流動させる撹拌機構40を備える。電解液は、例えば、シアン系の電解液である。基材51を被めっき材と呼ぶ場合がある。撹拌機構40の作動に応じて基材51の周方向の流動が生じ、同時に電気めっきも行われる。幾つかの場合、撹拌機構40は、めっき槽10に蓄えられた電解液中で沈降した一群の基材51を、実質的に沈降状態を維持しながらめっき槽10の内壁19沿いの周方向に流動させる。
[0073]
 図20に例示の幾つかの場合、撹拌機構40は、めっき槽10の電解液中の一群の磁性メディア30に対して磁気的に作用して一群の磁性メディア30を流動させる。磁性メディア30の流動に際して磁性メディア30が基材51に衝突する。磁性メディア30の運動力が基材51に伝達し、基材51が流動を開始する。基材51に対する磁性メディア30の連続的又は断続的な衝突により基材51の流動が維持又は促進される。基材51同士の接触及び衝突、また、基材51と磁性メディア30の接触及び衝突により、基材51及びめっき層52が研磨される。
[0074]
 図21に例示の幾つかの場合、撹拌機構40は、めっき槽10の底側に設けられた撹拌部46の回転により一群の基材51を周方向に流動させる。撹拌機構40は、めっき槽10の底側において回転可能に設けられた撹拌部46と、撹拌部46に回転力を供給する回転力供給機構47を備える。撹拌部46の回転に応じて各基材51が周方向に流動する。めっき層52が形成される前の基材51同士の接触及び衝突、また、めっき層52の成長過程の基材51同士の接触及び衝突により、基材51及びめっき層52が研磨される。
[0075]
 めっき槽10は、幾つかの場合、筒部11及び底部12を含む。筒部11は、基材51の投入又は回収を許容する開口18を上部に有する円筒状部材である。筒部11の下端には底部12が設けられる。めっき槽10及び筒部11は静止部材である。筒部11は、筒部11の中心軸が後述の回転軸AX5に合致するように配される。筒部11の中心軸及び回転軸AX5は、幾つかの場合、鉛直方向に合致する。従って、めっき槽10に投入された一群の基材51は鉛直方向下方に向けて電解液中で沈降し、底部12上に堆積する。
[0076]
 電気めっき装置1は、幾つかの場合、めっき槽10の底側に設けられた下部カソード21及び下部カソード21よりも上方に設けられる上部アノード22を備える。底側とは、めっき槽10の電解液中に投入された基材51の基材51が沈降していく方向に等しい。下部カソード21が電源90の負極に接続し、上部アノード22が電源90の正極に接続される。
[0077]
 上部アノード22から電解液中に放出又は溶出した金属イオン、又は、電解液中にあらかじめ入れておいた金属イオンは、下部カソード21に直接接触した基材51から電子を受け取り、また他の基材51を介して下部カソード21に電気的に接続した基材51から電子を受け取る。金属イオンは、電子の受け取り後、基材51上に析出し、めっき層を形成する。下部カソード21に直接的に接触した基材51は、下部カソード21からその基材51に受け渡された電子を金属イオンに供給することができる。下部カソード21に直接的に接触せず、下部カソード21に対して他の1以上の基材51を介して電気的に接続した基材51は、他の1以上の基材51を介して伝達した下部カソード21由来の電子を金属イオンに供給することができる。
[0078]
 幾つかの実施形態では、一群の基材51は、めっき槽10に蓄えられた電解液中で実質的に沈降状態を維持しながら周方向沿いに流動し、一群の基材51の少なくとも一部が下部カソード21に接触し、下部カソード21に接触した基材51よりも上方に位置する基材51が、少なくとも下部カソード21に接触した基材51を介して下部カソード21に電気的に接続される。実質的に沈降状態を維持しながら周方向沿いに流動することは、大半の基材51が電解液中で浮き上がらない状態を意味する。実質的に沈降状態を維持しながら周方向沿いに流動することは、偶発的な電解液の流れの乱れや基材51同士の衝突により一時的に浮遊する基材51の存在を排除するものではなく、これを包含する。ある特定の場合、実質的に沈降状態を維持しながら周方向沿いに流動することは、めっき処理液及び/又は基材51が最大回転速度で流動している状態において、偶発的な電解液の流れの乱れや基材51同士の衝突により一時的に浮遊したごく一部の基材51を除く大半の基材51がめっき槽10の底部または他の基材51と接触している状態を包含する。これにより基材51と下部カソード21間の電気的接続がより確実に確保でき、基材51が無給電状態になることを回避可能である。
[0079]
 一般的なバレルめっきは、バレルの回転数が3~8rpmと低速で回転することで一群の基材51を撹拌しながらめっきをするものであり、均一で色むらのないめっきが得られるまでにより長い時間を要してしまう。他方、本開示の方法によれば、均一で色むらのないめっきが得られるまでに要する時間の短縮化も促進可能である。幾つかの場合、バレルめっきと比較してめっき工程に要する時間が半減される。
[0080]
 下部カソード21は、筒部11の底側の内壁19近傍で周方向沿いに延びる。下部カソード21は、めっき槽10の底側に位置する環状電極であり得る。一群の基材51が周方向に流動するため、下部カソード21が環状電極を含む場合、基材51と下部カソード21の良好な接触が確保される。なお、周方向とは、めっき槽10の内壁19に沿いに進行する方向であり、正円形状に即した方向に限定されず、楕円形状やその他の形状に即した方向も包含する。なお、下部カソードは環状が好ましいが、それ以外にも棒状、板状、球状などの形状でもよいし、めっき槽10の底部12の全体または一部をカソードとしてもよい。
[0081]
 上部アノード22は、周方向沿いに延びる。これにより、周方向においてめっき層の成長速度に差が生じることが回避又は抑制される。より端的には、上部アノード22は、筒部11の開口18側で周方向沿いに延びる。上部アノード22は、めっき槽10の上部に位置する環状電極である。幾つかの場合、上部アノード22は、必ずしもこれに限られないが、金属ワイヤであり、新たな金属ワイヤに簡単に交換可能に設けられる。別例においては、上部アノード22は、球状、板状、チップ状であり得る。上部アノード22としては、様々な種類の金属が採用され得る。例えば、カーボン、ステンレス、銅、錫、亜鉛、黄銅、チタン、金、銀、ニッケル、クロム、鉛、パラジウム、コバルト、白金、ルテニウム、ロジウムの群から選択される1以上の金属である。上部アノード22は、電気めっきの進行に伴い、電解液中に溶出し、時間の経過と共に体積及び重量が減じられる。なお、アノードやカソードが周方向沿いに延びるというのは完全な円であることを意味するのではなく、部分断続的に周方向に沿って電極が設置されている状態を含む。
[0082]
 上部アノード22の金属種や電解液の組成を適切に調整することにより所望の仕上げ色を確保することができる。例えば、基材51は、金色、黒色、シルバー色、淡銅色、濃銅色、ブラウン色のめっき層により被覆される。
[0083]
 下部カソード21としては、様々な種類の金属が採用され得る。例えば、ステンレス、銅、錫、亜鉛、ステンレス、カーボン、チタン、金、銀、ニッケル、クロム、鉛、パラジウム、コバルト、白金、ルテニウム、ロジウムの群から選択される1以上の金属である。下部カソード21にもめっき層が成長する。従って、幾つかの場合、適切なタイミングでめっき層が除去され、又は下部カソード21が交換される。
[0084]
 電気めっき装置1は、幾つかの場合、蓋15を更に有する。蓋15には上部アノード22に接続した配線を通過するための孔が設けられる。めっき槽10の深さ方向における上部アノード22の高さは、蓋15に対する上部アノード22の間隔を定めることにより決定される。換言すれば、めっき槽10に蓋15をすることにより、上部アノード22はめっき槽10内で適切な高さに位置決めされる。
[0085]
 図20に例示の幾つかの場合、めっき槽10内には一群の基材51に加えて、一群の磁性メディア30が投入される。上述したように、図20の撹拌機構40は、基材51に対して直接的に作用して基材51を流動させるものではなく、一群の磁性メディア30を介して基材51に対して作用するものであるためである。幾つかの場合、一つの磁性メディア30は、一つの基材51に比して十分に小さい。磁性メディア30の具体的な種類は様々であり得る。一例としては、磁性メディア30は、棒又は針状の部材であり得る。別例としては、磁性メディア30は、球、直方体、立方体、又はピラミッド状であり得る。磁性メディア30は、典型的には、ステンレス製であるが、必ずしもこの限りではない。磁性メディア30が、棒又は針状のステンレス材である時、基材51との衝突時に基材51の最外面のめっき層を効果的に研磨することができる。なお、蓋15を使わずに棒材で上部アノード22を吊り下げるようにしてもよい。
[0086]
 図20に例示の幾つかの場合、周方向沿いの一群の基材51の流動は、撹拌機構40が、めっき槽10の電解液中の一群の磁性メディア30に対して磁気的に作用して一群の磁性メディア30を周方向沿いに流動させることにより確保される。磁性メディア30が周方向沿いに流動する時、磁性メディア30は、基材51よりも大きい運動力を持つ。成長過程のめっき層の効果的な研磨が促進される。
[0087]
 撹拌機構40は、幾つかの場合、電動モーター41、回転軸42、回転板43、及び1以上の永久磁石44を有する。電動モーター41で生成される回転力が直接又は間接的に回転軸42に伝達し、回転軸42に固定された回転板43が回転し、回転板43上の永久磁石44が周方向に回転する。電動モーター41と回転軸42の間に回転力伝達系、例えば、無担ベルト等を設けることも想定される。撹拌機構40の具体的な構成は、当業者により適切に決定される。
[0088]
 幾つかの場合、撹拌機構40は、磁気回路を含むことができる。磁気回路を適切に設計することにより、物理的な部材の回転を伴うことなく、磁性メディア30を周方向沿いに流動させることができる。
[0089]
 永久磁石44は、例えば、N極が鉛直方向上方に向くように回転板43の上面に固定されている。磁性メディア30は、永久磁石44に吸引される。従って、永久磁石44の周方向移動に応じて磁性メディア30が永久磁石44に連行される。このようにして磁性メディア30の周方向の流動が達成され、これにより基材51の周方向の流動が達成される。
[0090]
 図21に例示の幾つかの場合、撹拌部46は、めっき槽10の底部の少なくとも一部を成す円盤部461、及び円盤部461に連結した回転軸462を含む。円盤部461の上面は、めっき槽10の底部12の底面に一致する。円盤部461の上面の中央には鉛直方向上方に突出した突起部464が設けられる。円盤部461の上面には、上方、つまり鉛直方向上方に突出する翼部463の放射状配列が設けられる。翼部463は、円盤部461の中央に関して放射状に設けられる。
[0091]
 撹拌部46が回転軸AX5周りに回転する時、翼部463も回転軸AX5周りに回転する。一つの翼部463に着目すると、翼部463は、周方向沿いに進行し、この過程で、電解液に流れを生じさせ、基材51の周方向沿いの流動が生じる。翼部463は、基材51に直接的に接触及び衝突し得る。幾つかの場合、翼部463は、円盤部461の上面に関して低い高さを持つ。撹拌部46の円滑な回転が促進される。このようにしてめっき槽10内での基材51の均一な撹拌が促進される。なお、めっき槽10の筒部11は静止部材である。
[0092]
 円盤部461の径方向外側領域に設けられた傾斜部が、めっき槽10の筒部11の下端に設けられた径方向内側に向けて延びるフランジ部119上に配置される。円盤部461の傾斜部とフランジ部119の間の隙間は、不図示のドレイン管が接続されている。ドレイン管の開閉によりめっき槽10の電解液を排出可能である。
[0093]
 回転力供給機構47は、電動モーター471と、及び動力伝達ベルト472を含む。電動モーター471の回転力が動力伝達ベルト472を介して撹拌部46の回転軸462に伝達する。これに応じて回転軸462が回転し、また、回転軸462に連結した円盤部461が回転し、円盤部461の上面上の翼部463が周方向沿いに移動する。これによりめっき槽10の電解液中で撹拌部46の円盤部461上に沈降していた一群の基材51が周方向沿いに遊動する。
[0094]
 幾つかの場合、下部カソード21よりも径方向内側の底部12の底面上には低摩擦材が設けられる。これにより、底部12上での基材51の流動が促進される。幾つかの場合、追加的又は代替的に、低摩擦材がめっき槽10の内壁19に設けられる。低摩擦材は、例えば、樹脂製シートであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン製である。
[0095]
 図20及び図21に例示の幾つかの実施形態では、電気めっき装置1において、撹拌と電気めっきが同時に行われる。撹拌過程で、基材51の表面が研磨され、基材51上のめっき層52の表面が研磨される。図20の装置では磁性メディア30が基材51に衝突すると共に基材51同士をも衝突することで、表面状態に影響を与えつつめっき層52を成長させることができる。図21の装置においても、回転数を調整して基材51同士を一定頻度以上で衝突させることで、表面状態に影響を与えつつめっき層52を成長させることができる。なお、図4、図11、図12、及び図16~18のめっき層は、図20の電気めっき装置1により形成されたものである。図13及び14のめっき層は、図21の電気めっき装置1により形成されたものである。
[0096]
 めっき層の成長過程でめっき層が研磨されることは、めっき層を成長させることの当初目的に反するように見える。しかしながら、めっき層の成長過程でめっき層が研磨される場合、めっき層が薄い段階からその平坦度が高まり、結果として薄いめっき層で所望の仕上がり、換言すれば、所望の平坦度や光沢度を得ることに帰結し得る。めっき層の薄厚化は、電気めっきに要する時間及び電力の低減に帰結し、めっき材5及び/又は服飾部品7の製品単価の低減に顕著に寄与し得る。
[0097]
 幾つかの場合、撹拌過程で、基材51の流動方向が反転される。これにより、めっき槽10の底部12上での基材51の凝集の発生の低減又は回避を促進することができる。
[0098]
 めっき槽10内における基材51の最大回転速度(rpm)は、基材51が実質的に沈降状態を維持できる程度の回転数であればよい。最大回転速度(rpm)とは、投入した基材51のうちの最大の回転状態にある基材51の回転速度のことである。基材51の回転速度は基材51の投入量に応じても変化するものであるが、この場合においても、実質的に沈降状態を維持できる程度の投入量と回転数であることが好ましい。幾つかの場合、めっき液20リットル~30リットルに対し、基材51の投入量は10グラム~8000グラムであり、磁性メディアを50cc程度めっき槽に入れる。
[0099]
 幾つかの場合、図20に示すタイプのめっき装置においては、めっき槽10内における基材51の最大rpmが40rpm未満に維持される。これによりめっき厚バラツキを効果的に低減することができる。
[0100]
 幾つかの場合、図20に示すタイプのめっき装置においては、めっき槽10内における基材51の最大rpmが30rpm未満、或いは、25rpm未満、或いは、20rpm未満、或いは、15rpm未満、或いは、10rpm未満に維持される。
[0101]
 幾つかの場合、図21に示すタイプのめっき装置においては、めっき槽10内における基材51の最大rpmが120rpm未満に維持される。これによりめっき厚バラツキを効果的に低減することができる。
[0102]
 幾つかの場合、図21に示すタイプのめっき装置においては、めっき槽10内における基材51の最大rpmが100rpm未満、或いは、80rpm未満、或いは、70rpm未満、或いは、60rpm未満、或いは、50rpm未満に維持される。なお、図21に示すタイプのめっき装置においては、上述のように回転数の設定により基材51同士の衝突頻度を調整してもよいが、更に研磨用のメディアを混入させて研磨メディアと基材51の衝突を生じさせるようにしてもよい。
[0103]
 図22は、スライドファスナーの概略的な正面模式図であり、めっき材のバリエーションを示すために参酌される。めっき材5は、スライドファスナー8に含まれる金属材部品、例えば、止め具81、スライダー82、引手83であり得る。
[0104]
 図23乃至図30を参照して更に説明する。図23は、本開示の一態様に係るめっき材の断面を示すTEM画像である。図24は、図23と同一のTEM画像であり、めっき層における結晶粒の分布に含まれる3つの結晶粒を点線にて指し示す。なお、点線で指し示した3つの結晶粒以外の部分は、結晶粒の方向性に起因して画像上でコントラストが出ていない部分であり、点線で示した結晶粒と同程度の大きさの結晶粒が存在しているものと考えられる。図25は、従来のめっき材の断面を示すTEM画像である。図26は、図25と同一のTEM画像であり、めっき層における結晶粒の分布に含まれる5つの結晶粒を点線にて指し示す。図27は、結晶粒に対する矩形枠の適用に基づいて決定された結晶粒の面積の分布を示すチャートである。Emが、図23及び図24に示しためっき材のめっき層において観察された結晶粒の面積を示す。Refが、図25及び図26に示しためっき材のめっき層において観察された結晶粒の面積を示す。図28は、本開示の一態様に係るめっき材の断面を更に微細な観察視野で示すTEM画像であり、めっき層の初期成長領域において25nm以下の幅を有する結晶粒(図28において点線により明示される)が示される(図28に点線で示した結晶粒は、10nm程度の幅を有する)。このTEM画像には金属原子の配列状態が写される。図29は、従来のめっき材の断面を更に微細な観察視野で示すTEM画像であり、基材とめっき層の間の界面を境界として基材における金属原子の配列状態とめっき層における金属原子の配列状態が異なることを示す。図30は、本開示の一態様に係るめっき材のX線回折結果を示すグラフである。図31は、従来のめっき材のX線回折結果を示すグラフである。図32は、本開示の一態様に係るめっき材のX線回折結果を示すグラフである。
[0105]
 上述のように、本開示の一態様に係るめっき材5では、基材51とめっき層52の間に明確な界面が存在しない。このように基材51とめっき層52の間に明確な界面が存在しないことは、めっき層52における合金の結晶粒の分布の帰結である。めっき層52は、多数の合金の結晶粒の集合、つまり多結晶金属層である。本開示の一態様では、めっき層52における合金の結晶粒の分布により基材51とめっき層52の間に明確な界面が生じない。更に述べれば、めっき層52において合金の結晶粒同士の界面も明確ではない。これにより、基材とめっき層の密着性が高められためっき材を提供することができる。幾つかの場合、めっき層52は、100nm以下、又は50nm以下の幅を有する複数の結晶粒が密集した領域を有する。なお、本明細書では、結晶粒の幅は、TEM画像で濃淡差から認識できる結晶粒の境界線を画定し、この境界線上の任意の2点を結んで画定される最大幅を意味する。
[0106]
 図23で観察しためっき材5は、図6で観察しためっき材5と同一製法で製造されためっき材であり、基材51は、黄銅(CuZn)から成り、めっき層52は、めっき液から供給された錫(Sn)を含む。図23で観察しためっき材のめっき層は、図20に示した電気めっき装置を用いた電気めっきにより形成されたものである。図23で観察しためっき材5のめっき層52の厚みは、20~30nmである。なお、図6で観察しためっき材5よりもめっき層52の厚みが薄くなっているのは、めっき時間が短いことによる。このめっき材のめっき色に関しては、めっき時間を長くすれば濃いめっき色になり、めっき時間を短くすれば淡いめっき色になる。図23のTEM画像は、図6のTEM画像よりも高い倍率の100万倍で得られたものである。
[0107]
 図23に示すように基材51とめっき層52の界面が明確ではなく、更には、めっき層52における結晶粒同士の界面も明確ではない。なお、図23において、基材51とめっき層52の界面を示す点線は、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectrometry)で点分析を行い、Snの検出の有無で決定したものであり、概ねの目安として引いている。基材51とめっき層52の界面は、これまでの説明のとおり明確ではない。その一方で、めっき層52における結晶粒は、TEM画像における濃淡差(コントラスト)に基づいて、図24に示すように特定することができる。
[0108]
 図25で観察しためっき材は、図8で観察しためっき材5と同一製法で製造されためっき材であり、基材は、黄銅(CuZn)から成り、めっき層がCuSn合金から成る。図25で観察しためっき材5のめっき層52の厚みは、約350nmである(なお、図25は、めっき層の全体の厚みを示すものではない)。図25で観察しためっき材は、バレルめっき法により形成されたものであるが、静止めっき法により形成されたものでも同様の結果になることが予測される。図25のTEM画像は、図8のTEM画像よりも高い倍率の50万倍で得られたものである。なお、TEM画像で改めて示さないが、図25で観察しためっき材は、基材とめっき層の間に明確な界面がある(例えば図8を参照)。図25に示しためっき層について、図26に示すように結晶粒を特定することができる。
[0109]
 なお、結晶粒の特定のために用いられる断面画像としてTEM画像を用いるものとする。TEM画像は、めっき層の厚み方向におけるめっき層の切断面を写すように取得される。TEM画像は、日本エフイー・アイ株式会社製の透過型電子顕微鏡(型番:TalosF200X)、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査透過型電子顕微鏡(型番:HD-2300A)を用いるものとする。観察倍率は、5万倍~100万倍である(なお、等倍率であっても、透過型電子顕微鏡の装置毎に倍率の定義が異なる場合がある。従って、厳密には、観察視野の広さで拡大の程度を評価するのが適切である。この点を踏まえて本明細書では観察視野も併記している。)。図28及び図29を除いて、TEM画像は、HD-2300Aにより取得されたものである。図28及び図29のTEM画像は、TalosF200Xにより取得されたものである。SEM画像は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡(型番:S-4800)を用いるものとする。図7,図10,図36及び図38のSEM画像は、S-4800により取得されたものである。
[0110]
 上述のように特定される結晶粒の断面積は、次のように決定することができる。繰り返すが、まず、TEM画像における結晶粒の境界を画定する。この目的のために適切なソフトウェアを用いることもできる。次に、結晶粒を周囲するように矩形枠(図24の一点鎖線の枠を参照)を結晶粒に適用し、その矩形枠の面積の半分の値を結晶粒の断面積とする。矩形枠は、コンピューターにより結晶粒に対して適用され、従って、矩形枠の適用に基づいて自動的に結晶粒の断面積を算出することができる。矩形枠は、結晶粒を内側に包囲するように設定され、結晶粒の境界と複数の箇所で接触する。
[0111]
 図27に示すように、結晶粒の断面積の分布の態様は、図23に示した本開示に係るめっき材の場合(Em)と図25に示した従来のめっき材の場合(Ref)の間で異なる。図23のTEM画像で観察された結晶粒は、図25のTEM画像で観察された結晶粒と比較して、結晶粒の断面積が、小さい範囲に局所的に分布する。
[0112]
 図25に示しためっき材のめっき層の厚み(厚み=約350nm)は、基材に対するめっき層の密着性を確保するため、図23に示しためっき材5のめっき層52の厚み(厚み=20~30nm)よりも厚い。しかしながら、この点を考慮するとしても、図27の点線J1で示されるように、Emの場合、Refの場合と比較して、結晶粒の面積が小さい範囲に局所的に分布する。
[0113]
 図27に示すチャートは、Emの場合に関して、複数の異なるTEM画像(例えば、図24のTEM画像を含む)において47個の結晶粒を特定し、矩形枠の適用に基づいて決定した結晶粒の断面積の分布を示す。図27に示すチャートは、Refの場合に関して、複数の異なるTEM画像(例えば、図26のTEM画像を含む)において48個の結晶粒を特定し、矩形枠の適用に基づいて決定した結晶粒の断面積の分布を示す。Em,Refの場合について、平均面積、最小面積、最大面積は、次の表1のとおりである。
[0114]
[表1]


[0115]
 本開示の一態様に係るめっき材5では、基材51とめっき層52の間に明確な界面が生じないように、少なくとも第1及び第2のめっき層金属元素を含む合金の結晶粒が分布する。合金の結晶粒の分布は、上述のように、めっき層52のTEM画像に基づいて観察することができる。結晶粒の特定のために用いられるTEM画像は、観察倍率が50万倍以上の条件下で得られたものである。幾つかの場合、めっき層52のTEM画像で観察される結晶粒の分布には100nm以下、又は50nm以下、又は25nm以下の幅を有する結晶粒が含まれる。換言すれば、めっき層52は、100nm以下、又は50nm以下の幅を有する複数の結晶粒が密集した領域を有する。図24に示す本開示の一態様に係るめっき材の断面を示すTEM画像と図26に示す従来のめっき材の断面を示すTEM画像とを比較した場合に読み取れる相違点が、100nm以下、又は50nm以下の幅を有する複数の結晶粒が密集した領域という特徴によって表される。この特徴の代替又は追加として、めっき材の断面を示すTEM画像において濃淡差から認識される、100nm以下、又は50nm以下の幅を有する結晶粒の合計面積が、100nmを超える幅を有する結晶粒の合計面積よりも大きい領域という特徴を読み取ることができる。また、上記特徴の代替又は追加として、めっき材の断面を示すTEM画像において濃淡差から認識される、9割以上又は全ての結晶粒が、100nm以下、又は50nm以下の幅を有する結晶粒である領域という特徴を読み取ることができる。このような結晶粒を含む結晶粒の分布により、基材51とめっき層52の間に明確な界面が生じないことが促進される。
[0116]
 めっき層52のTEM画像で観察される結晶粒に対して矩形枠を適用し、この矩形枠の面積の半分の値を結晶粒の面積と決定する時、めっき層52のTEM画像における結晶粒の平均面積は、1000nm 2以下、又は500nm 2以下、又は400nm 2以下、又は300nm 2以下、又は250nm 2以下である。追加的又は代替的に、めっき層52のTEM画像における結晶粒の最小面積は、50nm 2以下であり、及び/又は、めっき層52のTEM画像における結晶粒の最大面積は、1000nm 2又は700nm 2以下である。このような結晶粒の分布により、基材51とめっき層52の間に明確な界面が生じないことが促進される。
[0117]
 図28のTEM画像は、図23のTEM画像よりも更に微細な観察視野で得られたものであり、結晶構造や原子配列状態を把握することができる。TEM画像における縞状のパターンは、結晶の方向性(成長方向)の違いを反映する。図28では、5nm~10nm又は5nm~20nmの幅を有する濃い領域と薄い領域が無秩序に混在している。従って、図28では、5nm~10nm又は5nm~20nmの単位で結晶構造が複雑に変化していることが分かる。図28の点線で示される結晶粒は、25nm以下(図示の場合、10nm程度)の幅を有する結晶粒であり、本明細書では「微結晶」と呼ばれる。このような「微結晶」の存在は、特にめっき層52の初期成長段階において結晶成長の方向が無秩序(ランダム)であることを裏付ける。結晶成長の方向が無秩序であり、更に、めっき層52の成長過程において粗大な結晶粒の成長が阻止される。これらは、基材51同士の衝突、又は、別々の基材51上に形成されるめっき層52同士の衝突、又は、基材51とメディアの衝突、又は、めっき層52とメディアの衝突といった1以上の要因によって生じ得る。結果として、基材51とめっき層52の間に明確な界面が生じないことを促進し、また、上述のようにTEM画像で観察される小幅又は小断面積の結晶粒の分布を促進する。なお、図24のようなTEM画像に基づく結晶粒の観察は、結晶粒のある断面に着目したものであり、結晶粒の3次元的な形状までも明らかにするものではないことに留意されたい。TEM画像において観察される結晶粒の具体的形状は、TEM画像の取得位置や取得条件に応じて変化し得るものである。
[0118]
 本実施形態では、めっき層52には、バレルめっきによってめっき層が形成される場合にめっき層に含まれる粗大粒が含まれない。バレルめっきによってめっき層が形成される場合にめっき層に含まれる粗大粒は、150nm又は100nmを超える幅を有する。
[0119]
 繰り返すが、微結晶は、図28のTEM画像のように金属原子の配列状態を写すTEM画像において観察可能である。微結晶は、めっき層52の初期成長領域に形成される。初期成長領域は、例えば、TEM画像において基材51の金属原子の配列状態を示す領域から50nmの範囲内の領域である。なお、図28で観察しためっき材5の基材51は、黄銅(CuZn)から成り、めっき層52は、めっき液から供給された錫(Sn)を含む。
[0120]
 図29は、図28と同じ観察視野で取得された従来のめっき材のTEM画像である。図29に示すように、TEM画像下側の基材51の薄い領域と、TEM画像上側のめっき層52の濃い領域に区分される。図29の各領域では、図28のTEM画像とは異なり、5nm~10nm又は5nm~20nmの単位で結晶構造が複雑に変化していることは見て取れない。図29の各領域では、濃さに大きな変動がなく、従って、結晶構造が、一様に連続的に広がっていることが見て取れる。
[0121]
 図29を参照すると、めっき材5における基材51とめっき層52の界面を境界として、基材51における金属原子の配列状態とめっき層52における金属原子の配列状態が異なることが分かる。図29のTEM画像に追加された矢印は、金属原子の配列方向を示す。図28と図29の対比から、図28で観察されるめっき層52における金属原子の配列状態が秩序に欠けることが分かる。なお、図29で観察した従来のめっき材について、基材は、黄銅(CuZn)から成り、めっき層52は、CuSn合金から成る。
[0122]
 以下、更に別の観点からめっき材5のめっき層52について検討する。ここでは、本発明の製法によれば、めっき層52の結晶構造が、基材51の結晶構造の影響を受けながら成長することを説明する。図30は、図28と同一のめっき材5についてしたX線回折の結果である。図30において、波形iw1は、インプレーン(in-plane)測定法に基づくめっき層のX線回折結果である。波形iw2は、アウトオブプレーン(out of plane)測定法に基づくめっき層のX線回折結果である。PP1~PP3は、ICDD(International Centre for Diffraction Data)(登録商標)カードに基づく回折ピーク角を示す。PP1は、η-CuSnの回折ピーク角を示す。PP2は、α-CuSnの回折ピーク角を示す。PP3は、α-CuZnの回折ピーク角を示す。なお、波形iw1と波形iw2の重複を回避するため、縦軸に沿って波形iw1が波形iw2よりも上方にずらされている。
[0123]
 インプレーン測定法は、めっき層52の表面に対して垂直な格子面からの回折を測定する。他方、アウトオブプレーン測定法は、めっき層52の表面に平行な格子面からの回折を測定する。
[0124]
 この図30の結果からは、めっき層52には、η-CuSn、α-CuSn、α-CuZnの回折ピークが混在していることが確かめられる。ここで注目すべきは、めっき層52のCuSnが、基材51のCuZnのと同じ角度に回折ピークを示していることである。これは、めっき層52がη-CuSnに加えてα-CuSnを有し、かつ、このα-CuSnが、基材51のα-CuZnの結晶構造(面間隔等)を反映して成長した結晶構造を有することを意味する。つまり、CuSn結晶粒が成長する時、基材51側に存在するCuZnの結晶構造から影響を受けたものと考えられる。この結晶構造の連続性により、基材51とめっき層52の間に明確な界面が生じないことが促進されるものと考えられる。
[0125]
 図31は、従来のバレルめっきを用いて黄銅(CuZn)の基材上に形成されたCuSnめっき層のX線回折結果を示す。図31において、波形iw1は、インプレーン測定法に基づくめっき層のX線回折結果である。波形iw2は、アウトオブプレーン測定法に基づくめっき層のX線回折結果である。PP1は、ICDD(International Centre for Diffraction Data)(登録商標)カードに基づく回折ピーク角を示す。PP1は、図30のPP1と同じく、η-CuSnの回折ピーク角を示す。図31の回折結果では、η-CuSnの回折ピーク角に対応する回折ピークが観察されたが、α-CuSnの回折ピーク角に対応するピークが観察されなかった。これは、図30に関する説明と対照的である。基材51上にめっき層52を成膜する時、基材51側の結晶構造から影響を受けることなくめっき層52が成長したものと考えられる。
[0126]
 図32は、図30の要部を拡大して示す模式図である。図32において、G1~G4はインプレーン測定法に基づくめっき層52の回折ピークを示し、他方、B1~B4はICDD(登録商標)カードに基づいて特定されるα-CuSnの回折ピーク角を示す。インプレーン測定法に基づくめっき層52の回折ピークG1~G4のピーク角は、ICDD(登録商標)カードに基づいて特定されるα-CuSnの回折ピーク角B1,B2,B3,B4に一致せず、それよりも低角度側にシフトすることが分かった。この回折ピークのシフトは、めっき層52のα-CuSnが基材51のα-CuZnの影響を受けていることを裏付けるものと考えられる。この理由は次のように考えられる。
[0127]
 格子面間隔と回折ピーク角の関係は、格子面間隔をd、回折ピーク角をθ、波長をλ、nを所定の整数とする時、2dsinθ=nλを満足する。同じ波長λに関して格子面間隔の増加に応じて回折ピーク角θが小さくなる。α相のCuSnの格子面間隔は、α相のCuZnの格子面間隔よりも小さいことが知られている。つまり、インプレーン測定法に基づくめっき層52の回折ピークG1~G4のピーク角が、α-CuSnのICDD(登録商標)カードに基づいて特定される回折ピークB1,B2,B3,B4のピーク角よりも低角度側にシフトしたことは、α-CuSnの格子面間隔が通常値よりも大きくなっていることを意味しており、この現象は、基材51のα相のCuZnの影響を受けたことが原因として考えられる。これは、図28におけるめっき層52と基材51の境界部分の画像が複雑に入り組んでおり、結晶成長の方向が無秩序となっている様子とも整合する。更に述べれば、図29に示す比較画像では、基材51の上に単純にめっき層52が秩序よく積層しており、本発明のめっき層52とは明らかに異なるものである。これとの比較において、本段落で述べる理由は、より説得力を持つものと考える。本開示の製法に特有な基材51同士の衝突、又は、別々の基材51上に形成されるめっき層52同士の衝突、又は、基材51とメディアの衝突、又は、めっき層52とメディアの衝突といった1以上の要因によって引き起こされているものと考えられる。
[0128]
 以上のとおり、本発明のめっき層52においては、めっき層52の成長初期段階において、基材51の結晶構造の格子面間隔と連続性を有するようにめっき層が成長しているものと考えられる。なお、低角度側又は高角度側のいずれにシフトするかは、基材51及びめっき層52の金属組成やその結晶構造に依存する。あえて表現すれば、めっき層52について測定されたX線回折の測定結果は、めっき層52に含まれる合金と同一の組成の合金のICDDカードに基づいて特定される回折ピーク角から、基材51の回折ピーク角のうちで最も近傍の回折ピーク角側にシフトした回折ピークを示すということになる。
[0129]
 本実施形態にかかるめっき材5のめっき層52は、従来のバレルめっきによるめっき層には含まれないα-CuSnが含まれ、このα-CuSnは、基材51のα-CuZnの影響を受けて形成されたものと考えられる。つまり、幾つかの場合、めっき層52に含まれる合金の結晶構造は、基材51に含まれる合金の結晶構造(面間隔等)を反映して成長した結晶構造である。上述のように、基材51のCuZnの結晶構造は、α相である。めっき層52のCuSnの結晶構造は、α相である。これにより基材51とめっき層52と密着性が高められ、薄いめっき層52であってもめっき層52の剥がれが生じにくくなる。
[0130]
 X線解析装置として、株式会社リガク社のSmartlabを用いるものとする。測定条件は、次のとおりのものとする。
[0131]
 X線源:Cu Kα
 X線源波長:λ=1.54186Å
 管電圧:45kV
 管電流200mA
 角度範囲20~90°
 スキャン速度3°/min
 サンプリング間隔0.04°
 図33は、本開示の一態様に係るめっき材の断面を示す別のTEM画像である。図34は、図33と同一のTEM画像であり、めっき層における結晶粒の分布に含まれる結晶粒を点線にて指し示す。図33で観察しためっき材5について、基材51は、黄銅(CuZn)から成り、めっき層52は、めっき液から供給された錫(Sn)を含む。結晶粒同士の境界は、図33から直ちに明らかではないが、濃淡差に基づいて図34に示すように画定することができる。各結晶粒に関して、めっき層52の厚み方向において基材51から離間するに応じてめっき層52における第2のめっき層金属元素(Cu,Zn)の割合が連続的に減少する。この点は、図23及び図24に示した結晶粒についても同様に当てはまる。
[0132]
 図35は、本開示の一態様に係るめっき材の断面を示す別のTEM画像である。図36は、図35と同一のめっき材のめっき層の表面を示すSEM画像である。図35で観察しためっき材5について、基材51は、黄銅(CuZn)から成り、めっき層52は、めっき液から供給された錫(Sn)を含む。図37は、従来のめっき材の断面を示すTEM画像である。図38は、図37と同一のめっき材のめっき層の表面を示すSEM画像である。図37で観察しためっき材5について、基材51は、黄銅(CuZn)から成り、めっき層52は、Cu及びSnから成る。
[0133]
 図35で観察しためっき材5のめっき層52は、50~80nmの厚みを有する。他方、図37で観察しためっき材5のめっき層52は、150~180nmの厚みを有する。図35は、図20に示した電気めっき装置を用いて基材51にめっき層52を形成して得られためっき材5のTEM画像である。他方、図37は、従来のバレルめっきを用いて基材51にめっき層52を形成して得られためっき材5のTEM画像である。
[0134]
 図35で観察しためっき材5の製造条件は、以下のとおりである。
[0135]
 めっき液:40リットル
 めっき液に浸した錫電極の重さ:2000g
 めっき液に投入した基材51の個数:5000個
 めっき液に投入した基材51の合計重量:5000グラム
 めっき液に投入した磁性メディアの合計の体積:50cc
 電動モーター41の回転速度:1600rpm
 印加電圧:5~10V
 めっき時間:30分
 周囲温度:室温
 図36のSEM画像は、図7と同様、粒子状部分及び/又は小塊状部分が2次元状に密集して形成されていることを示す。図38のSEM画像は、四角形、五角形、六角形、八角形といった多角形状の界面によって画定された結晶粒を示す。上述したように、TEM画像において観察される結晶粒の形状は、結晶粒の3次元的な形状までも示さない。図36及び図38のSEM画像の参酌によって、結晶粒の3次元的な形状を推測することができる。
[0136]
 図36及び図38の比較から推測されるように、図35で観察できる結晶粒は、より小さな3次元形状を有し、他方、図37で観察できる結晶粒は、より大きい3次元形状を有するものと推測できる。めっき層52の成長過程における、基材51同士の衝突、又は、別々の基材51上に形成されるめっき層52同士の衝突、又は、基材51とメディアの衝突、又は、めっき層52とメディアの衝突といった1以上の要因により結晶粒の成長が阻害され、結晶粒の粗大化が抑制されるものと考えられる。結晶粒の粗大化の抑制と同時に、めっき層52の緻密さが増し、或いは、格子空孔の発生も抑制されるものと推測される。めっき層52の緻密さや格子空孔の割合は、めっき層52の密度により評価可能であるが、実際の測定上の有効な手段がないのが実情である。
[0137]
 なお、バレルめっきによってCuSn合金やCuのめっき層を形成する時、めっき層の表面にはクラックやピンホールが形成されることを確認している。
[0138]
 本開示の一態様によれば、基材51とめっき層52の間に明確な界面が生じないように、少なくとも第1及び第2のめっき層金属元素を含む合金の結晶粒がめっき層52に分布する。これにより、基材51とめっき層52の密着性が高められためっき材5を提供できる。
[0139]
 製法例1
 製法例1は、図20を参照して説明したように磁性メディアを用いる例に関する。半径300mm、深さ150mm、つまり容積40リットルのめっき槽を用いた。めっき槽は金属製である。めっき槽の筒部の内周面にゴムシートを貼り付け、めっき槽の底部にポリエチレン製の低摩擦材を貼り付けた。ゴムシートと低摩擦材の間の露出部をカソードとして用いた。つまり、カソードは、めっき槽の一部が提供する。カソードは、周方向に連続して環状に構成される。アノードは、吊り下げ式にて溶液中に浸漬した。アノードとしては銅ワイヤを用いた。磁性メディアとしてステンレスピンを用いた。一つのステンレスピンの大きさは、長さ5mm、直径0.5mmである。ステンレスピンを100cc分だけめっき槽に加えた。基材としてはボタン用のシェルを用いた。シェルは、真鍮(Cu:Zn=65:35)製である。シェルは、脱脂及び洗浄工程を経たものである。シェルの投入量は、1kgである。電動モーターの回転速度は、1800rpmとした。溶液の回転速度は、30rpmである。溶液の回転速度は、浮遊する指標の観測に基づいて決定できる。シェルの回転速度は、40rpm未満である。ほとんどのシェルが給電状態にあり、均一な厚みのめっき層を形成することができた。
[0140]
 製法例2
 シェルを2kg投入し、ステンレスピンを200cc投入した点を除いて実施例1と同様である。ほとんどのシェルが給電状態にあり、均一な厚みのめっき層を形成することができた。
[0141]
 製法例3
 シェルを3kg投入し、ステンレスピンを250cc投入し、電動モーター41の回転方向を30秒間隔で間欠的に反転させた点を除いて実施例1と同様である。大半のシェルが給電状態にあり、均一な厚みのめっき層を形成することができた。しかし、一部のシェルが上手く流動せず、未確認ながら、めっき層の厚みにむらが生じていることが予想される。
[0142]
 シェルに代えてスライドファスナー用のスライダーについても同様の試験を行い、同様の結果が得られた。
[0143]
 めっき材の製法に関する2件のPCT出願(出願番号PCT/JP2017/015365、出願番号PCT/JP2017/017949)の全開示が本明細書に参照により組み込まれる。
[0144]
 上述の開示においては、基材が1以上の基材金属元素を含み、めっき層が、少なくとも第1及び第2のめっき層金属元素を含むものと記述してきた。望まれるならば、又は、必要性に応じて、基材金属元素、第1のめっき層金属元素、及び第2のめっき層金属元素は、第1金属元素、第2金属元素、及び第3金属元素と代替的に呼ばれ得る。かかる場合、請求項に記載された発明は、次の付記に示されるように特定される。
-付記1-
 1以上の第1金属元素を含む基材(51)と、
 前記基材(51)の直上に形成されためっき層(52)を備え、
 前記めっき層(52)が、少なくとも、第2金属元素と、前記第2金属元素とは異なる第3層金属元素を含み、
 前記第3金属元素が、前記1以上の第1金属元素の少なくとも一つと同一の金属元素であり、
 前記めっき層(52)の厚み方向において前記基材(51)から離間するに応じて前記めっき層(52)における前記第3金属元素の割合が連続的に減少し、
 前記基材(51)と前記めっき層(52)の間に明確な界面が生じないように、少なくとも前記第2及び第3金属元素を含む合金の結晶粒が分布する、めっき材。
-付記2-
 前記めっき層(52)の厚み方向において前記基材(51)から離間するに応じて前記第3金属元素の割合が連続的に減少する部分の厚みが10nm以上、又は20nm以上、又は、60nm以上である、付記1に記載のめっき材。
-付記3-
 前記めっき層(52)の厚み方向において前記基材(51)から離間するに応じて前記第3金属元素の割合が連続的に減少する部分の厚みが、80nm以下、又は60nm以下、又は、30nm以下、又は、20nm以下である、付記1又は2に記載のめっき材。
-付記4-
 前記めっき層(52)の表面において前記第2金属元素の割合は100%未満、又は、90%未満である、付記1乃至3のいずれか一項に記載のめっき材。
-付記5-
 前記めっき層(52)の厚みが、150nm以下、又は100nm以下である、付記1乃至4のいずれか一項に記載のめっき材。
-付記6-
 前記めっき層(52)が、前記基材(51)とは反対側の反対面(52s)を有し、
 前記めっき層(52)における前記第3金属元素の割合の減少は、前記めっき層(52)の厚み方向において前記反対面(52s)に至るまで又は前記反対面(52s)の近傍に至るまで継続する、付記1乃至5のいずれか一項に記載のめっき材。
-付記7-
 前記基材(51)が、複数の前記第1金属元素を含み、
 前記めっき層(52)が、複数の前記第3金属元素を含み、
 前記めっき層(52)の厚み方向において前記基材(51)から離間するに応じて前記めっき層(52)における各第3金属元素の割合が減少する、付記1乃至6のいずれか一項に記載のめっき材。
-付記8-
 前記めっき層(52)の厚み方向において前記基材(51)に接近するに応じて前記めっき層(52)における前記第2金属元素の割合が減少する、付記1乃至7のいずれか一項に記載のめっき材。
-付記9-
 前記基材(51)が前記第1金属元素として少なくとも銅を含む金属又は合金である、付記1乃至8のいずれか一項に記載のめっき材。
-付記10-
 前記めっき層(52)が、前記第2金属元素として少なくとも錫を含む金属又は合金である、付記1乃至9のいずれか一項に記載のめっき材。
-付記11-
 前記めっき層(52)が、前記基材(51)とは反対側の反対面(52s)を有し、
 前記反対面(52s)には粒子状部分及び/又は小塊状部分が2次元状に密集して形成されている、付記1乃至10のいずれか一項に記載のめっき材。
-付記12-
 前記めっき材(5)が、服飾部品(7)の少なくとも一部である、付記1乃至11のいずれか一項に記載のめっき材。
[0145]
 上述の開示においては、めっき層の厚み方向において基材から離間するに応じてめっき層における第2のめっき層金属元素の割合が連続的に減少し、基材とめっき層の間に明確な界面が存在しないことが幾つかの主な特徴の一つとして記述してきた。しかしながら、この主たる特徴の一つは、他の特徴よりも優位又は他の特徴の前提となるものではない。例えば、次の発明も理解される。
-付記13-
 基材(51)と、
 前記基材(51)の直上に形成されためっき層(52)を備え、
 前記めっき層(52)が、前記基材(51)とは反対側の反対面(52s)を有し、
 前記反対面(52s)には粒子状部分及び/又は小塊状部分が2次元状に密集して形成される、めっき材。
-付記14-
 前記反対面(52s)にはクラック又はピンホールが実質的に存在しない、付記13に記載のめっき材。
-付記15-
 前記基材(51)が、1以上の基材金属元素を含み、
 前記めっき層(52)が、少なくとも、第1のめっき層金属元素と、前記第1のめっき層金属元素とは異なる第2のめっき層金属元素を含み、
 前記第2のめっき層金属元素が、前記1以上の基材金属元素の少なくとも一つと同一の金属元素であり、
 前記めっき層(52)の厚み方向において前記基材(51)から離間するに応じて前記めっき層(52)における前記第2のめっき層金属元素の割合が連続的に減少する、及び/又は、前記基材(51)と前記めっき層(52)の間に明確な界面が存在しない、付記13又は14に記載のめっき材。
-付記16-
 前記反対面(52s)には多角形状の界面によって画定された結晶粒が現れない、付記13乃至15のいずれかに記載のめっき材。
[0146]
 上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。

符号の説明

[0147]
5      めっき材
51     基材
52     めっき層

請求の範囲

[請求項1]
 1以上の基材金属元素を含む基材(51)と、
 前記基材(51)の直上に形成されためっき層(52)を備え、
 前記めっき層(52)が、少なくとも、第1のめっき層金属元素と、前記第1のめっき層金属元素とは異なる第2のめっき層金属元素を含み、
 前記第2のめっき層金属元素が、前記1以上の基材金属元素の少なくとも一つと同一の金属元素であり、
 前記めっき層(52)の厚み方向において前記基材(51)から離間するに応じて前記めっき層(52)における前記第2のめっき層金属元素の割合が連続的に減少し、
 前記基材(51)と前記めっき層(52)の間に明確な界面が生じないように、少なくとも前記第1及び第2のめっき層金属元素を含む合金の結晶粒が前記めっき層(52)に分布する、めっき材。
[請求項2]
 前記めっき層(52)のTEM(Transmission Electron Microscope)画像において前記基材(51)と前記めっき層(52)の間に明確な界面が観察できない、請求項1に記載のめっき材。
[請求項3]
 前記めっき層(52)には100nm以下、又は50nm以下の幅を有する複数の結晶粒が密集した領域が含まれる、請求項1又は2に記載のめっき材。
[請求項4]
 前記めっき層(52)には25nm以下の幅を有する結晶粒が含まれる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項5]
 前記25nm以下の幅を有する結晶粒は、金属原子の配列状態を写すTEM画像において観察される、請求項4に記載のめっき材。
[請求項6]
 前記25nm以下の幅を有する結晶粒は、前記めっき層(52)の初期成長領域に形成される、請求項4又は5に記載のめっき材。
[請求項7]
 前記初期成長領域は、前記TEM画像において前記基材(51)の金属原子の配列状態を示す領域から50nmの範囲内の領域である、請求項6に記載のめっき材。
[請求項8]
 前記めっき層(52)のTEM画像で観察される前記結晶粒に対して矩形枠を適用し、この矩形枠の面積の半分の値を前記結晶粒の面積と決定する時、
 前記めっき層(52)のTEM画像における前記結晶粒の平均面積は、1000nm 2以下である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項9]
 前記めっき層(52)のTEM画像における前記結晶粒の平均面積は、500nm 2以下である、請求項8に記載のめっき材。
[請求項10]
 前記めっき層(52)のTEM画像で観察される前記結晶粒に対して矩形枠を適用し、この矩形枠の面積の半分の値を前記結晶粒の面積と決定する時、
 前記めっき層(52)のTEM画像における前記結晶粒の最大面積は、1000nm 2又は700nm 2以下である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項11]
 前記めっき層(52)には、バレルめっきによってめっき層が形成される場合にめっき層に含まれる粗大粒が含まれない、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項12]
 前記粗大粒は、150nm又は100nmを超える幅を有する、請求項11に記載のめっき材。
[請求項13]
 前記めっき層(52)についてしたX線回折の結果は、前記めっき層(52)に含まれる合金と同一の組成の合金のICDDカードに基づいて特定される回折ピーク角からシフトした回折ピークを示す、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項14]
 前記めっき層(52)の厚み方向において前記基材(51)から離間するに応じて前記第2のめっき層金属元素の割合が連続的に減少する部分の厚みが10nm以上、又は20nm以上、又は、60nm以上である、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項15]
 前記めっき層(52)の厚み方向において前記基材(51)から離間するに応じて前記第2のめっき層金属元素の割合が連続的に減少する部分の厚みが、80nm以下、又は60nm以下、又は、30nm以下、又は、20nm以下である、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項16]
 前記めっき層(52)の表面において前記第1のめっき層金属元素の割合は100%未満、又は、90%未満である、請求項1乃至15のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項17]
 前記めっき層(52)の厚みが、150nm以下、又は100nm以下である、請求項1乃至16のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項18]
 前記めっき層(52)が、前記基材(51)とは反対側の反対面(52s)を有し、
 前記めっき層(52)における前記第2のめっき層金属元素の割合の減少は、前記めっき層(52)の厚み方向において前記反対面(52s)に至るまで又は前記反対面(52s)の近傍に至るまで継続する、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項19]
 前記基材(51)が、複数の前記基材金属元素を含み、
 前記めっき層(52)が、複数の前記第2のめっき層金属元素を含み、
 前記めっき層(52)の厚み方向において前記基材(51)から離間するに応じて前記めっき層(52)における各第2のめっき層金属元素の割合が減少する、請求項1乃至18のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項20]
 前記めっき層(52)の厚み方向において前記基材(51)に接近するに応じて前記めっき層(52)における前記第1のめっき層金属元素の割合が減少する、請求項1乃至19のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項21]
 前記基材(51)が前記基材金属元素として少なくとも銅を含む金属又は合金である、請求項1乃至20のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項22]
 前記めっき層(52)が、前記第1のめっき層金属元素として少なくとも錫を含む金属又は合金である、請求項1乃至21のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項23]
 前記めっき層(52)が、前記基材(51)とは反対側の反対面(52s)を有し、
 前記反対面(52s)には粒子状部分及び/又は小塊状部分が2次元状に密集して形成される、請求項1乃至22のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項24]
 前記めっき材(5)が、服飾部品(7)の少なくとも一部である、請求項1乃至23のいずれか一項に記載のめっき材。
[請求項25]
 1以上の基材金属元素を含む基材(51)を電気めっき槽に投入する工程と、
 前記電気めっき槽において前記基材(51)を周方向に流動させながら電気めっきする工程にして、前記電気めっきにより前記基材(51)の直上に、少なくとも第1のめっき層金属元素と、前記第1のめっき層金属元素とは異なる第2のめっき層金属元素を含むめっき層(52)が形成される工程を含み、
 前記第2のめっき層金属元素が、前記1以上の基材金属元素の少なくとも一つと同一の金属元素であり、
 前記めっき層(52)の厚み方向において前記基材(51)から離間するに応じて前記めっき層(52)における前記第2のめっき層金属元素の割合が連続的に減少し、
 前記基材(51)と前記めっき層(52)の間に明確な界面が生じないように、少なくとも前記第1及び第2のめっき層金属元素を含む合金の結晶粒が前記めっき層(52)に分布する、めっき材の製造方法。
[請求項26]
 1以上の第1金属元素を含む基材(51)と、
 前記基材(51)の直上に形成されためっき層(52)を備え、
 前記めっき層(52)が、少なくとも、第2金属元素と、前記第2金属元素とは異なる第3金属元素を含み、
 前記第3金属元素が、前記1以上の第1金属元素の少なくとも一つと同一の金属元素であり、
 前記めっき層(52)の厚み方向において前記基材(51)から離間するに応じて前記めっき層(52)における前記第3金属元素の割合が連続的に減少し、
 前記基材(51)と前記めっき層(52)の間に明確な界面が生じないように、少なくとも前記第1及び第2のめっき層金属元素を含む合金の結晶粒が前記めっき層(52)に分布する、めっき材。

図面

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[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

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[ 図 19]

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[ 図 21]

[ 図 22]

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