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1. (WO2018190144) イソブチレン系重合体の製造方法
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明 細 書

発明の名称 イソブチレン系重合体の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008   0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026  

発明の効果

0027  

発明を実施するための形態

0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101  

実施例

0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

明 細 書

発明の名称 : イソブチレン系重合体の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、イソブチレンのリビングカチオン重合によるイソブチレン系重合体の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 イソブチレンの重合はカチオン重合で進行することが知られている。このようなカチオン重合の一例としては、ルイス酸触媒の存在下で、ジクミルクロリドのような三級炭素に結合したハロゲン基を有する化合物を重合開始剤として用いる、所謂イニファー法が知られている。この方法によれば、イソブチレンのリビングカチオン重合が可能になり、得られるイソブチレン系重合体の分子量が、重合開始剤とモノマーのモル比によって決まる為、用途に応じた分子設計が可能となる。
[0003]
 リビングカチオン重合により得られるイソブチレン系重合体は、分子鎖末端に反応性基を導入したり、スチレン系重合体ブロックを結合させることができる。従って、これらの方法で得られるイソブチレン系重合体は、反応硬化性液状樹脂として各種シール剤や、粘着剤、接着剤等の用途に用いられたり、熱可塑性エラストマーとして、各種ゴム材料用途に好適に使用されている。
[0004]
 しかしながら、カチオン重合においては、成長ポリマー末端は不安定なカルボカチオン構造を有しているため、種々の副反応により失活することが知られている。失活したポリマー末端には上記のような反応性基やブロック共重合体セグメントを導入できなくなるのに加え、分子量分布が増大して、粘度特性や取り扱い安さに欠ける場合があるため、通常は、ポリマー末端の失活を避け、反応性を維持する工夫がなされている。
[0005]
 そのようなイソブチレン系重合体を得る技術としては、例えば、特許文献1~6に記載されているように、種々の電子供与剤成分を共存させて製造する方法が知られている。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特表平07-500617号公報
特許文献2 : 特開2003-292504号公報
特許文献3 : WO2006/061968号パンフレット
特許文献4 : 特開2007-182573号公報
特許文献5 : 特表2008-510854号公報
特許文献6 : WO2013/047314号パンフレット

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 特許文献1~6に記載されているように、イソブチレンのリビングカチオン重合においては、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン(ルチジン)、2-メチルピリジン(ピコリン)等のピリジン系化合物や、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系化合物を電子供与体成分として共存させることが知られている。
[0008]
 更に、これらの文献の幾つかに記載されているように、酢酸エステル系化合物として、酢酸メチルや酢酸エチルといった、比較的単純な構造を有するエステル系化合物を電子供与体成分として利用することが知られている。しかしながら、上記のピリジン系化合物、アミド系化合物と比べると、エステル系化合物はあまり利用されておらず、更なる検討の余地があった。
[0009]
 特に、エステル系化合物の中でも(メタ)アクリル酸エステルの様な炭素-炭素二重結合を有する化合物を電子供与体成分として利用することに関しては、該官能基の安定性の観点からも、当業者であれば、通常、避けるべきことであった。
 他方、特許文献6では、(メタ)アクリル酸エステルが開示されているものの、イソブチレンの重合が実質的に終了し、ポリイソブチレン系重合体の骨格を形成した後でこの重合体末端に(メタ)アクリル酸エステルを付加反応させることが開示されているに過ぎない。よって、この特許文献6は、イソブチレンの重合中に(メタ)アクリル酸エステルを使用していない点で、イソブチレンの重合中に(メタ)アクリル酸エステルを使用する本願発明と相異なっている。
[0010]
 従って、本発明の課題は、リビング性を高める(メタ)アクリル酸エステルの重合制御効果を明らかにし、これを用いることによって、副反応を抑制し、分子量分布Mw/Mnが小さいイソブチレン系重合体を得るための方法を提供することである。

課題を解決するための手段

[0011]
 本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(メタ)アクリル酸エステル化合物、重合開始剤、重合触媒、必要に応じて電子供与体成分の存在下にイソブチレンのリビングカチオン重合を行うことで、上記の目的を達成できることを見出した。
[0012]
 すなわち、本発明は、
 (1)重合開始剤、重合触媒、および(メタ)アクリル酸エステル化合物の共存下で、イソブチレンのリビングカチオン重合を行うことを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
[0013]
 (2)遅くともイソブチレンの転化率が70%となる前に前記(メタ)アクリル酸エステル化合物が、前記重合開始剤、前記重合触媒、および前記イソブチレンと共存していることを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
[0014]
 (3)前記(メタ)アクリル酸エステル化合物が、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル化合物であることを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
[0015]
[化1]


[0016]
(R 1は、水素またはメチル基を表す。R 2は、炭素数2~6の2価の飽和炭化水素基であって、ヘテロ原子を有しない基を表す。R 3、R 4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20の1価の炭化水素基またはアルコキシ基を表す。)
[0017]
 (4)前記一般式(1)のR 1が水素であることを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
[0018]
 (5)前記一般式(1)のR 2が、-CH 2CH 2-、-CH 2CH 2CH 2-、及び-CH 2CH 2CH 2CH 2-からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の炭化水素基であることを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
[0019]
 (6)前記一般式(1)のR 3およびR 4が水素であることを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
[0020]
 (7)前記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル化合物が、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシプロピル、及び(メタ)アクリル酸4-フェノキシブチルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
[0021]
 (8)前記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル化合物を、1.00×10 -6~1.00mol/Lの濃度で共存させることを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
[0022]
 (9)前記重合開始剤が一般式(2)
 Z(X)  (2)
(式中、Zは、1価または多価の、芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基を表す。Xは塩素、臭素、ヨウ素、メトキシ基、炭素数1~4のアルキル基及びアセトキシ基からなる群から選ばれる基を表す。nは自然数を表す。)
で表される化合物であることを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
[0023]
 (10)前記重合触媒を電子供与体成分とともに使用することを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
[0024]
 (11)前記電子供与体成分のドナー数が15~62であることを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
[0025]
 (12)前記イソブチレン系重合体の重量平均分子量(Mw)が、1000~21000であることを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
[0026]
 (13)前記イソブチレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)が、1.00~1.50であることを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。

発明の効果

[0027]
 本発明によれば、リビングカチオン重合中の副反応を抑制し、分子量分布Mw/Mnが小さいイソブチレン系重合体を得ることができる。そのようなイソブチレン系重合体は、粘度特性に優れ、取り扱いやすい特徴があるため好ましい。
 更に本発明の方法は、リビング性に優れるため、末端官能化反応などを行う場合、1分子当たりの官能基導入数を高めることができ、良好な物性を発現しうるため好ましい。一方、スチレン等の芳香族ビニル系化合物とのブロック共重合体とすることで、熱可塑性エラストマーとすることもできるが、得られた熱可塑性エラストマーのゴム物性に優れた重合体が得られるという点で好ましい。

発明を実施するための形態

[0028]
 本発明は、重合開始剤、重合触媒、および(メタ)アクリル酸エステル化合物の共存下に、イソブチレン系重合体をリビングカチオン重合により製造する方法である。
 特に、遅くともイソブチレンの転化率が70%となる前に前記(メタ)アクリル酸エステル化合物が、前記重合開始剤、前記重合触媒、および前記イソブチレンと共存していることが好ましい。
[0029]
 リビングカチオン重合は、-CH 2C(CH 32X(式中Xはハロゲン)等のドーマント種(不活性種)と-CH 2+(CH 32-(式中Xはハロゲン)等のイオン種(活性種)との可逆反応において、ルイス酸等の重合触媒の作用によりドーマント種からイオン種を生成させ、これとモノマーとを反応させる重合法である。通常、平衡はドーマント種側に偏っており、速い開始反応によりイオン種を生成させることで、副反応を抑制し、分子量分布の狭いポリマーが得られることが特徴である。
 このリビングカチオン重合において、(メタ)アクリル酸エステル化合物は、重合開始剤、重合触媒、必要に応じて電子供与体成分と組み合わせた場合、平衡をドーマント種側に更に片寄らせたり、ポリマーのカチオン末端に作用して安定化させたり、触媒に配位してルイス酸性を調整したりすることで、結果として、イソブチレン系重合体の分子量分布を小さくすることができ、また、イソブチレン系重合体の重量平均分子量を低くすることができる。
[0030]
(イソブチレン系重合体を構成するモノマー)
 本発明において、イソブチレン系重合体を構成するモノマーとしてはイソブチレンを主として用いる他には、本発明の効果を損なわない範囲であれば他のカチオン重合性モノマーを共重合してもよい。
[0031]
 そのような他のカチオン重合性モノマーとしては例えば炭素数4~12のオレフィン(ただし、イソブチレンを除く)、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類などがあげられる。具体的には、イソプレン、アミレン、1,3-ブタジエン、1-ブテン、2-ブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキセン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等のオレフィン、スチレン、インデン、α-メチルスチレン、メトキシスチレン、メチルスチレン、トリメチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン等のビニルシラン類、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン等のアリルシラン類を挙げることができる。
[0032]
 これらの中でも、イソプレン、アミレン、1,3-ブタジエン、1-ブテン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、スチレン、インデン、α-メチルスチレン、メチルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体を含む)、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルが共重合性の観点から特に好ましい。
[0033]
 イソブチレンと共重合が可能な他のモノマーを使用する場合は、本発明の効果を維持する観点から、共重合可能なモノマー由来の構成単位が、イソブチレン系重合体中好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは10重量%以下の範囲で含有されてもよい。
 言い換えれば、イソブチレンモノマーに由来する構成単位は、イソブチレン系重合体中、好ましくは50重量%超、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であり、好ましくは100重量%以下である。
[0034]
(重合開始剤)
 本発明において、重合開始剤は下記一般式(2)で表される化合物が好適に用いられる。
[0035]
 Z(X)  (2)
(式中、Zは、1価または多価の、芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基を表す。Xは塩素、臭素、ヨウ素、メトキシ基、及びアセトキシ基からなる群から選ばれる基を表す。nは自然数を表す。)
[0036]
 1価の芳香族炭化水素基は、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、クミル基、tert-ブチルクミル基、ナフチル基等が挙げられる。
 多価の芳香族炭化水素基は、例えば、m-ジクミル基、p-ジクミル基、5-tert-ブチル-1,3-ジクミル基、5-メチル-1,3-ジクミル基、1,3,5-トリクミル基等の、ベンジル位に遊離原子価(結合手ともいう。以下、同様)を有する2価以上のアルキル置換ベンゼンが挙げられる(下式参照。下式において*は結合手を示す)。
[0037]
[化2]


[0038]
 芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6~30、より好ましくは6~20、さらに好ましくは6~12である。
[0039]
 1価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
 直鎖状脂肪族炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
 分岐鎖状脂肪族炭化水素基は、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、CH 3(CH 32CCH 2(CH 32C-基等が挙げられる。
 環状脂肪族炭化水素基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、1-メチルシクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
 多価の脂肪族炭化水素基は、例えば、-(CH 32CCH 2(CH 32C-、-(CH 32CCH 2(CH 32CCH 2(CH 32C-で表される基などの、炭素数が4~20程度であって3級炭素上に遊離原子価を有する2価以上のアルキレン基が挙げられる。
 脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは2~15、さらに好ましくは3~10である。
[0040]
 これらの中でも特に、Zは、クミル基、CH 3(CH 32CCH 2(CH 32C-、m-ジクミル基、p-ジクミル基、-(CH 32CCH 2(CH 32C-、-(CH 32CCH 2(CH 32CCH 2(CH 32C-、1,3,5-トリクミル基が原料の入手性や、反応性の観点から好ましく、p-ジクミル基であることがより好ましい。
[0041]
 Xは塩素、臭素、ヨウ素、メトキシ基、及びアセトキシ基からなる群から選ばれる基を表す。Xは、塩素であることが好ましい。
[0042]
 nは、好ましくは1以上8以下、より好ましくは1以上6以下、さらに好ましくは1以上4以下である。nが複数である場合、Xは同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0043]
 上記一般式(2)の化合物としては特に制限されないが、具体的には、クミルクロリド、(1-クロロエチル)ベンゼン、4-tert-ブチル-クミルクロリド、CH 3(CH 32CCH 2(CH 32C-Cl、m-ジクミルクロリド、p-ジクミルクロリド、5-tert-ブチル-1,3-ジクミルクロリド、5-メチル-1,3-ジクミルクロリド、Cl-(CH 32CCH 2(CH 32C-Cl、Cl-(CH 32CCH 2(CH 32CCH 2(CH 32C-Cl、1,3,5-トリクミルクロリド等が挙げられる。
[0044]
 これらの中でも、クミルクロリド、m-ジクミルクロリド、p-ジクミルクロリド、1,3,5-トリクミルクロリドが反応性および入手性の点で特に好ましく、p-ジクミルクロリドが最も好ましい。
[0045]
 重合開始剤の使用量は、仕込みモノマー量に応じた量であればよく、例えば、モノマー総量1モルに対して、1/10倍モル~1/1000倍モルであることが好ましく、1/50倍モル~1/500倍モルであることがより好ましい。
[0046]
(重合触媒)
 本発明において、イソブチレンのカチオン重合系には、重合触媒を共存させる。このような重合触媒としては、カチオン重合に一般的に使用されるルイス酸触媒であれば特に限定されず、例えば、TiCl 4、TiBr 4、BCl 3、BF 3、BF 3・OEt 2、SnCl 4、AlCl 3、AlBr 3等の金属ハロゲン化物;または、TiCl 3(OiPr)、TiCl 2(OiPr) 2、TiCl(OiPr) 3等の金属上にハロゲン原子とアルコキシ基の両方を有する金属化合物;Et 2AlCl、EtAlCl 2、Me 2AlCl、MeAlCl 2、Et 1.5AlCl 1.5、Me 1.5AlCl 1.5等の有機金属ハロゲン化物等が挙げられる。
[0047]
 なかでも、触媒能や入手の容易さを考慮に入れると、TiCl 4、EtAlCl 2、BCl 3、SnCl 4が特に好ましく、TiCl 4が最も好ましい。
[0048]
 上記重合触媒の使用量としては特に限定されず、使用する単量体の重合特性、重合濃度、所望する重合時間や系中の発熱挙動等を鑑みて任意に設定することができる。重合触媒の使用量は、好ましくは、重合開始剤(好ましくは上記一般式(2)で表される化合物)1モルに対して、0.1~200倍モルの範囲であり、より好ましくは0.2~100倍モルである。
 上記重合触媒は、後述する電子供与体成分とともに使用してもよい。
[0049]
(有機溶媒)
 本発明における重合反応は有機溶媒中で行うことが好ましい。そのような重合用有機溶媒としては、カチオン重合で一般的に使用される溶媒であれば特に限定されず、ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素等が使用可能である。
[0050]
 上記ハロゲン化炭化水素の具体例としては、塩化メチル、塩化メチレン、塩化プロピル、塩化ブチル、塩化ペンチル、塩化ヘキシル等の炭素数1~6のアルキルに塩素が置換したものが挙げられる。
[0051]
 上記脂肪族及び/又は芳香族系炭化水素の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭素数5~10の脂肪族炭化水素、トルエン、エチルベンゼン、キシレン(オルト体、メタ体、パラ体を含む)等の炭素数6~15の芳香族炭化水素が挙げられる。
[0052]
 これらの中でも特に、溶解性、経済性の点から、塩化メチル、塩化ブチル、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエンが好ましく、ヘキサン、塩化ブチルがより好ましい。
[0053]
 これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合して用いる場合は、溶解性、反応性の観点を鑑みて、任意の割合で混合することができる。
[0054]
 上記重合用有機溶媒は、溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、得られる重合体の溶液濃度が1~50重量%となるように設定するのが好ましく、より好ましくは、3~35重量%である。
[0055]
 本発明のリビングカチオン重合を行う温度は、特に制限は無いが、例えば、-100℃以上50℃未満の温度で各成分を混合し、重合させることが好ましい。更には、エネルギーコストと重合反応の安定性から、-85℃~0℃がより好ましい。-100℃より低い温度ではポリマーが析出する場合があるため好ましくない。逆に、50℃以上では、副反応の割合が増大し、目的とするイソブチレン系重合体が得られにくくなる場合があるため好ましくない。
[0056]
((メタ)アクリル酸エステル化合物)
 本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物をリビングカチオン重合系中に添加することで、平衡をドーマント種側に更に片寄らせたり、イソブチレン系重合体の成長末端を安定化させるか、または、重合触媒の触媒活性を適度なものに調整することで、重合中の副反応を抑制する効果が得られるものと考えられる。
[0057]
 本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物は、従来公知のエステル系化合物に比べ、少量の使用でも重合制御効果に優れる特徴がある。この理由としては必ずしも明らかではないが、ポリマーのカルボカチオン末端やルイス酸に対して、(メタ)アクリル酸エステル結合部位のカルボニル基が安定化および反応性の調整に関与するのに加え、同一分子内のフェノキシ基も同様の関与をし得るため、少量の添加でも十分な重合制御効果が得られるものと推察される。
[0058]
 (メタ)アクリル酸エステル化合物は、(メタ)アクリロイルオキシ基以外に、アルキル基を有することが好ましい。アルキル基は、置換されていてもよく、アルキル置換基と称することがある。
 アルキル置換基の炭素原子の数が6以上20未満であることが好ましい。アルキル置換基の炭素原子数が6以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物は、水への溶解性が低く、工業的な生産で利用する場合でも、廃水への混入を防ぐことができるため好ましい。逆に、アルキル置換基の炭素原子数が6未満の場合、水への溶解性が高くなる場合があり、上記の観点から好ましくない。また、アルキル置換基の炭素原子の数が20以上になると、原料の入手が難しくなる場合があるため好ましくない。
 アルキル置換基(アルキルと置換基)の炭素原子数は、18以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましく、12以下であることがさらにより好ましい。
[0059]
 また、アルキル置換基中に芳香族環を有することが好ましい。このような芳香族環としては特に制限は無いが、具体例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、アントラセン環、ピレン環などが挙げられる。これらの中でも、添加効果および原料の入手性の観点から、ベンゼン環、ナフタレン環、及びビフェニル環からなる群から選ばれる少なくとも1種を有していることが好ましい。
[0060]
 これらの芳香族環を含有する(メタ)アクリル酸エステル化合物は油溶性が向上し、低温での重合においても好適に使用することができる他、上述の様に高い添加効果が得られる点で好ましい。
[0061]
 さらに、前記芳香族環は酸素原子に結合していることが好ましい。このような芳香族環としては特に制限は無いが、具体例として、フェノキシ基、ナフタレンオキシ基、ビフェニルオキシ基、アントラセンオキシ基、ピレンオキシ基などが挙げられる。これらの中でも、添加効果および原料の入手性の観点から、フェノキシ基、ナフタレンオキシ基、ビフェニルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有していることが好ましく、取り扱いやすさの観点から、フェノキシ基が更に好ましい。
[0062]
 前記芳香族環が酸素原子に結合している場合、芳香族環の電子供与性が高まり、本発明の添加効果が得られやすくなることから好ましい。
[0063]
 本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物は、アルキル置換基中に酸素原子を一つだけ有し、他のヘテロ原子(酸素原子以外のヘテロ原子)は有しないことが好ましい。酸素原子を二つ以上有する場合や、酸素原子以外のヘテロ原子を有する場合、重合触媒を失活させる効果が顕著になり、重合の進行が遅くなるか、実質的に進行しなくなる場合があるため好ましくない。
[0064]
 ただし、ここで言う「アルキル置換基」とは、(メタ)アクリル酸エステル化合物を表す下記一般式(3)におけるR 5を示すものとする。
[0065]
[化3]


[0066]
(R 1は、水素またはメチル基を表す。R 5は、置換されていてもよい一価のアルキル基を表す。)
[0067]
 本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物は、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル化合物であることが好ましい。
[0068]
[化4]


[0069]
(R 1は、水素またはメチル基を表す。R 2は、炭素数2~6の2価の飽和炭化水素基であって、ヘテロ原子を有しない基を表す。R 3、R 4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20の1価の炭化水素基またはアルコキシ基を表す。)
[0070]
 R 3、R 4で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基は、上述した1価の脂肪族炭化水素基のうち、炭素数が1~20のものであればよく、上述した1価の芳香族炭化水素基のうち、炭素数が6~20のものであればよく、R 2で表される炭素数2~6の2価の飽和炭化水素基は、上述した1価の脂肪族炭化水素基のうち、炭素数が2~6のものであり、1つの水素原子が結合手になったものであればよい。
[0071]
 アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等の炭素数1~20のアルコキシ基が挙げられる。
[0072]
 本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物において、一般式(1)のR 1が水素であることが、原料の入手性および添加効果のバランスの点から好ましい。
[0073]
 本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、一般式(1)のR 2が、-CH 2CH 2-、-CH 2CH 2CH 2-、及び-CH 2CH 2CH 2CH 2-からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の炭化水素基であることが、原料の入手性および添加効果のバランスの点から好ましい。一般式(1)のR 2は、-CH 2CH 2-、または-CH 2CH 2CH 2-であることがより好ましい。
[0074]
 一般式(1)のR 3およびR 4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~12の1価の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、水素、メチル基、メトキシ基、フェニル基であることがさらに好ましい。
 また、一般式(1)のR 3及びR 4のいずれか一方又は両方は、結合する芳香族環と共に、2以上の環から構成される縮合環を形成してもよく、ナフタレン、アントラセン、ピレンであってもよい。
 本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、一般式(1)のR 3およびR 4が水素であることが、原料の入手性および添加効果のバランスの点から特に好ましい。
[0075]
 本発明の一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル化合物としては特に制限は無いが、具体例としては、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-フェノキシブチル、(メタ)アクリル酸5-フェノキシペンチル、(メタ)アクリル酸6-フェノキシヘキシル等、R 2基が直鎖のもの、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシブチル、(メタ)アクリル酸4-フェノキシペンチル、(メタ)アクリル酸5-フェノキシヘキシル等、R 2基が分岐構造のものが挙げられる。
[0076]
 R 2基が分岐構造を持つ場合は、上記の具体例に制限されず、他の分岐構造を有していても良い。
[0077]
 これらの中でも、添加効果の観点から、一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル化合物は、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-フェノキシブチル、(メタ)アクリル酸5-フェノキシペンチル、(メタ)アクリル酸6-フェノキシヘキシル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシプロピルが好ましい。
[0078]
 更に、入手性や取り扱い易さの観点も含めると、一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル化合物は、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-フェノキシブチルが更に好ましく、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシプロピルが特に好ましい。
[0079]
 これらは単独で用いても良いが、2つ以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
[0080]
 本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物(好ましくは一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル化合物)は、生産性および経済性の観点から、1.00×10 -6~1.00mol/Lの濃度で使用することが好ましく、副反応を抑制する効果の観点から、1.00×10 -5~1.00mol/Lの濃度で使用することが更に好ましく、1.50×10 -5~1.00mol/Lの濃度で使用することが更に好ましい。
[0081]
 (メタ)アクリル酸エステル化合物(好ましくは一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル化合物)の濃度が1.00×10 -6mol/L未満であると、副反応を抑制する効果が得られにくい場合があるため好ましくない。逆に、1.00mol/L超では、生産性が著しく低下する場合がある他、経済的に利点が無い場合があるため好ましくない。
[0082]
 本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物は、重合を開始する前から系中に加えていてもよく、また重合の途中で加えてもよい。重合途中で加える場合は、イソブチレンモノマーの転化率が例えば70%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下の時点で加えることが、本発明の効果を得る観点から好ましい。
[0083]
 しかしながら、本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物は、カチオン重合における副反応の抑制を目的に使用するものであることから、重合開始前に添加しておくことが最も好ましい。
[0084]
 本発明で使用する(メタ)アクリル酸エステル化合物は、上記の濃度範囲であれば好適に重合を実施できるが、重合開始剤と(メタ)アクリル酸エステル化合物とのモル比の観点から、次の範囲であれば更に良好な結果が得られる。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル化合物/重合開始剤のモル比(前者/後者)が、1.00×10 -8~10,000(mol/mol)であることが好ましく、1.00×10 -7~1,000(mol/mol)であることがより好ましく、1.00×10 -6~100(mol/mol)であることが更に好ましい。当該モル比が1.00×10 -8(mol/mol)未満の場合、副反応の抑制効果が得られにくい場合があるため好ましくない。逆に、当該モル比が10,000(mol/mol)超の場合、重合反応が遅くなり生産性が低下する場合があることや、経済性の面で好ましくない。
[0085]
 更に、重合触媒と(メタ)アクリル酸エステル化合物とのモル比の観点からは、次の範囲であれば更に良好な結果が得られる。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル化合物/重合触媒のモル比(前者/後者)が、1.00×10 -8~10,000(mol/mol)であることが好ましく、1.00×10 -7~1,000(mol/mol)であることがより好ましく、1.00×10 -6~100(mol/mol)であることが更に好ましい。当該モル比が1.00×10 -8(mol/mol)未満の場合、副反応の抑制効果が得られにくい場合があるため好ましくない。逆に、当該モル比が10,000(mol/mol)超の場合、重合反応が遅くなり生産性が低下する場合があることや、経済性の面で好ましくない。
[0086]
 本発明の製造方法においては、上記の(メタ)アクリル酸エステル化合物の他に、更に必要に応じて、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物等の、各種電子供与体成分を共存させてもよい。
[0087]
 上記電子供与体成分としては、ドナー数が15~62であるもの(好ましくは20~62、より好ましくは25~62であるもの、さらに好ましくは30~60であるもの)が好適に使用できる。ドナー数とは、GutmannとWycheraがSbCl 5と種々の溶媒との反応熱をとりまとめて、次式で与えられる値として定義したものである(V.Gutmann:Coordination Chemistry in NonAqueous Solutions, Springer,(1968))。
DN(ドナー数)=-ΔHSbCl 5
 ドナー数が大きいほど、金属イオンに配位する傾向が強いことを意味する。
[0088]
 前記ドナー数を満足する電子供与体成分としては、例えば、ピリジン(ドナー数33.1)、2-メチルピリジン(ドナー数30~45のいずれかの値)、2,6-ジメチルピリジン((ルチジン)ドナー数33.0)等のピリジン類、トリエチルアミン(ドナー数61)、トリブチルアミン(ドナー数50)等のアミン類、N,N-ジメチルホルムアミド(ドナー数26.6)、N,N-ジメチルアセトアミド(ドナー数27.8)等のアミド類、ジメチルスルホキシド(ドナー数29.8)等のスルホキシド類、酢酸エチル(ドナー数17.1)、酢酸ブチル(ドナー数15)等のエステル類、チタン(IV)テトラメトキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、チタン(IV)ブトキシド等の金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物、N,N-ジメチルアミノピリジン等のこれらの組み合わせたもの等が好適に使用できる。
 上記物質のドナー数は、「ドナーとアクセプター」、グードマン著、大瀧、岡田訳、学会出版センター(1983)に示されている。
[0089]
 この内、ピリジン類、アミン類、アミド類、金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物が好ましく、2-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、チタン(IV)テトライソプロポキシドが、添加効果、入手性の面で特に好ましく、2-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、トリエチルアミンが最も好ましい。
[0090]
 上記電子供与体成分は、通常、上記重合開始剤1モルに対して0.01~100倍モル用いるのが好ましく、重合後の精製工程における除去や廃棄物削減の観点から、0.1~50倍モルの範囲で用いられるのが更に好ましい。
[0091]
 電子供与体成分と(メタ)アクリル酸エステル化合物とのモル比の観点からは、次の範囲であれば更に良好な結果が得られる。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル化合物/電子供与体成分のモル比(前者/後者)が、1.00×10 -7~50,000(mol/mol)であることが好ましく、1.00×10 -6~10,000(mol/mol)であることがより好ましく、1.00×10 -5~1,000(mol/mol)であることが更に好ましい。当該モル比が1.00×10 -7(mol/mol)未満の場合、副反応の抑制効果が得られにくい場合があるため好ましくない。逆に、当該モル比が50,000(mol/mol)超の場合、重合反応が遅くなり生産性が低下する場合があることや、経済性の面で好ましくない。
[0092]
 本発明の製造方法は、窒素ガス等の不活性ガスの存在下で実施することが好ましい。また、バッチ式で行う場合、有機溶媒、イソブチレンモノマー、重合開始剤、(メタ)アクリル酸エステル、重合触媒、必要に応じて使用される電子供与体成分を適当な順で混合して反応させることで、イソブチレン系重合体を製造できる。
 添加順は特に限定されず、また各成分を同時添加してもよく、逐次添加してもよい。さらに同じ成分を1回で仕込んでもよく、複数回に分けて仕込んでもよく、もしくは、連続的に滴下して仕込んでも良い。
 典型的には、有機溶媒、イソブチレンモノマー、重合開始剤、(メタ)アクリル酸エステル、及び必要に応じて使用される電子供与体成分を含む混合物を調製した後、重合触媒を添加することで、所望のイソブチレン系重合体を製造できる。また、イソブチレンモノマー以外の成分を全て混合しているところに、イソブチレンモノマーを一度に、または分割して、もしくは連続的に加えてもよい。
 反応温度は、例えば、0~-100℃、好ましくは-30~-80℃、より好ましくは-50~-80℃である。
[0093]
 本発明の製造方法においては、重合反応が終了した時点で、純水やアルコールなどにより重合触媒を失活させ、必要に応じて重合溶液を純水、メタノールやアセトン等の有機溶媒などで精製することにより、末端にハロゲン基などの官能基を有するイソブチレン系重合体を得ることが出来る。
[0094]
 本発明の製造方法により得られるイソブチレン系重合体は、副反応が非常に抑制されたものである。従って、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定されるイソブチレン系重合体の分子量分布((重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)で表される値)が、1.00~1.50のものが好ましく、1.00~1.40のものがより好ましい。更には、1.00~1.37のものが更に好ましい。分子量分布の値が1.50超の場合、イソブチレン系重合体の粘度特性や、取り扱い安さが劣る場合があるため好ましくない。
[0095]
 サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定されるイソブチレン系重合体の分子量ピーク(Mp)は、6000~50000であることが好ましく、6500~40000であることがより好ましい。
[0096]
 サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定されるイソブチレン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、1000~21000であることが好ましく、3000~20000であることがより好ましく、6000以上であることがさらに好ましい。
[0097]
 本発明で得られるイソブチレン系重合体は、副反応が抑制されたものであるため、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定されるイソブチレン系重合体の数平均分子量Mnが1,000~1,000,000のものが好ましい。更には、2,000~500,000の数平均分子量のイソブチレン系重合体が各種のシール剤や粘着剤用途で好適に用いることができるため好ましい。
[0098]
 本発明の製造方法は、バッチ式重合反応において好適に実施可能であるのに加え、連続式重合反応においても好適に実施可能である。特に、アミン系電子供与体を用いるイソブチレンのカチオン重合においては、連鎖移動反応により副生する塩化水素と反応して、溶媒に不溶な沈殿物を形成することが知られている。一方、本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物を用いる場合、塩化水素と不溶性沈殿物を形成しないため、このような沈殿物の生成量を減らすことができる。このことは、連続式重合反応において、管内閉塞の課題を解決するために特に好適に実施できる。
[0099]
 本発明の製造方法で得られたイソブチレン系重合体は、末端官能化反応等をさらに行ってもよく、1分子当たりの官能基導入数を高めてもよい。他方、本発明の製造方法で得られたイソブチレン系重合体は、スチレン等の芳香族ビニル系化合物等からなる重合体と共重合させてもよく、得られたブロック共重合体は熱可塑性エラストマーとして優れたゴム物性を奏することもできる。
[0100]
 本発明により得られるイソブチレン系重合体は、ゴム弾性、柔軟性、粘弾性、耐候性、気体透過遮断性などの優れた特性を活用して、コーティング材、シーリング材、封止材、チューブ、ダンパー、ガスケットなどの用途に好適に使用できる。
[0101]
 本願は、2017年4月10日に出願された日本国特許出願第2017-77506号に基づく優先権の利益を主張するものである。2017年4月10日に出願された日本国特許出願第2017-77506号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
実施例
[0102]
 以下、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
[0103]
 (分子量測定)
 下記実施例中、「ピークトップ分子量」、「数平均分子量」、「重量平均分子量」および「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、SECシステムとしてWaters社製LCModule1を、GPCカラム(固定相)としてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(ShodexGPCK-804および、ShodexGPCK-802.5;いずれも昭和電工(株)製)、移動層としてクロロホルムを用いた。
[0104]
 (製造例1)アクリル酸3-フェノキシプロピルの合成
 臭化3-フェノキシプロピル(100g、465mmol)、アクリル酸カリウム(66.6g、604mmol)、N,N-ジメチルアセトアミド(465ml、1mol/L)を室温で混合し、室温で48時間攪拌した。次に、90℃でさらに48時間攪拌した。その後、反応混合物を室温に戻し、純水(1162ml)および塩化ブチル(1162ml)を加え、十分に混合した後、静置させることで有機相と水相を分離させた。分け取った水相を塩化ブチル(325ml)で3回抽出し、先の有機相と合わせた。こうして得られた有機相を純水(1162ml)で7回洗浄した後、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させた。沈殿物をろ過により分け取り、ろ液を減圧下に留去することで、無色透明液体のアクリル酸3-フェノキシプロピルを得た(91g、95%)。
[0105]
 (実施例1)
 500mLのセパラブルフラスコの容器内を窒素置換した後、n-ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)23.8mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)214mLを加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら-70℃まで冷却した。次いで、イソブチレン87mL(0.922mol)、p-ジクミルクロライド1.02g(0.00441mol)及び2,6-ルチジン0.18ml(0.0015mol)、アクリル酸3-フェノキシプロピル0.0260g(3.87x10 -4mol/L)を加えた。反応混合物が-72℃まで冷却された後で、四塩化チタン0.48mL(0.00441mol)を加えて重合を開始した。重合開始後、ガスクロマトグラフィーで残存イソブチレン濃度を測定して、投入したイソブチレンの99.9%以上が消費された段階で、イソブチレンの重合を終了した。重合終了後、反応混合物を約2mLサンプリングし、約5mLの純水に注ぎ、よく混合することで、触媒を失活させた。こうして得られた反応混合物をメタノールとアセトンの混合溶媒から再沈殿させることで、粘ちょうな沈殿物を得た。この沈殿物をヘキサンに溶解させ、再度メタノールとアセトンの混合溶媒から再沈殿させて、粘ちょうな沈殿物を得た。この生成物を80℃下で乾燥させることで、実施例1のイソブチレン系重合体を得た。分子量および分子量分布の測定結果は表1に示す通りであった。
[0106]
 (実施例2)
 アクリル酸3-フェノキシプロピルを5.80x10 -5mol/Lとなるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のイソブチレン系重合体を得た。分子量および分子量分布の測定結果は表1に示す通りであった。
[0107]
 (実施例3)
 アクリル酸3-フェノキシプロピルを2.90x10 -5mol/Lとなるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のイソブチレン系重合体を得た。分子量および分子量分布の測定結果は表1に示す通りであった。
[0108]
 (実施例4)
 アクリル酸2-フェノキシエチルを1.24x10 -3mol/Lとなるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のイソブチレン系重合体を得た。分子量および分子量分布の測定結果は表1に示す通りであった。
[0109]
 (実施例5)
 アクリル酸2-フェノキシエチルを6.22x10 -5mol/Lとなるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5のイソブチレン系重合体を得た。分子量および分子量分布の測定結果は表1に示す通りであった。
[0110]
 (実施例6)
 アクリル酸3-フェノキシプロピルを1.93x10 -5mol/Lとなるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、イソブチレンの重合を開始した。実施例6では、重合初期に生成しているイソブチレン系重合体の分子量および分子量分布について検討するために、重合開始5分後に、反応混合物を約2mLサンプリングした。サンプリングした反応混合物の精製法は実施例1と同様にして、実施例6のイソブチレン系重合体を得た。分子量および分子量分布の測定結果は表1に示す通りであった。
[0111]
 (比較例1)
 本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のイソブチレン系重合体を得た。分子量および分子量分布の測定結果は表1に示す通りであった。
[0112]
 (比較例2)
 酢酸エチルを9.05x10 -4mol/Lとなるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のイソブチレン系重合体を得た。分子量および分子量分布の測定結果は表1に示す通りであった。
[0113]
 (比較例3)
 比較例1と同様にしてイソブチレンの重合反応を行い、重合開始5分後に反応混合物を約2mLサンプリングし、実施例1と同様にして、サンプル調製することで、比較例3のイソブチレン系重合体を得た。分子量および分子量分布の測定結果は表1に示す通りであった。
[0114]
[表1]


[0115]
 本発明の(メタ)アクリル酸エステル化合物を添加しなかった比較例1に比べると、実施例1~5で得られたイソブチレン系重合体は、分子量分布の値が小さく、重合が高度に制御されていることがわかる。
[0116]
 これらに比べると、比較例1では、重量平均分子量が大きいことが分かる。これは、主たるポリマー以外に、高分子量体の副生成物が混入していることを示唆している。この高分子量体の原因としては、系中に存在する水分子などから意図せず重合が開始して、制御されない反応によって副生した高分子量ポリイソブチレンであると推察される。
[0117]
 一方、実施例1~5では、重量平均分子量の数値はいずれも低いため、そのような副反応は十分制御出来ていることがわかる。
[0118]
 また、エステル系化合物として、酢酸エチルを用いた比較例2では、比較例1に比べると分子量分布の数値は小さくなっているものの、十分ではなく、また、重量平均分子量が高いことから、比較例1と同様の副反応が起こっていることがわかる。
[0119]
 次に、本発明の効果を更に理解するために、重合初期に生じているイソブチレン系重合体を分析することを試みた。
[0120]
 すなわち、比較例3において、重合開始5分の時点で反応混合物をサンプリングし、得られたイソブチレン系重合体の分子量分布を調べたところ、表1に記載の通り、非常に大きい分子量分布を有していることがわかった。
[0121]
 一方、アクリル酸3-フェノキシプロピルを用いた実施例6で得られたイソブチレン系重合体は、重合初期にも係わらず比較的小さい分子量分布を有しているという顕著な差異があることが明らかとなった。
[0122]
 このように、従来公知のエステル系化合物では、イソブチレンのリビングカチオン重合を制御することは不十分であることがわかる。一方、本発明の製造方法によれば、従来公知の技術よりも低濃度であっても、高度な重合制御が達成できることがわかる。
[0123]
 これにより、廃棄物の低減も可能になるなど環境負荷の低減への効果も期待される。更には、得られたイソブチレン系重合体中への残存量も低減することができるため、透明性などの品質に優れるイソブチレン系重合体を製造することが可能になる。

請求の範囲

[請求項1]
 重合開始剤、重合触媒、および(メタ)アクリル酸エステル化合物の共存下で、イソブチレンのリビングカチオン重合を行うことを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法。
[請求項2]
 遅くともイソブチレンの転化率が70%となる前に前記(メタ)アクリル酸エステル化合物が、前記重合開始剤、前記重合触媒、および前記イソブチレンと共存していることを特徴とする請求項1に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。
[請求項3]
 前記(メタ)アクリル酸エステル化合物が、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。
[化1]



(R 1は、水素またはメチル基を表す。R 2は、炭素数2~6の2価の飽和炭化水素基であって、ヘテロ原子を有しない基を表す。R 3、R 4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20の1価の炭化水素基またはアルコキシ基を表す。)
[請求項4]
 前記一般式(1)のR 1が水素であることを特徴とする請求項3に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。
[請求項5]
 前記一般式(1)のR 2が、-CH 2CH 2-、-CH 2CH 2CH 2-、及び-CH 2CH 2CH 2CH 2-からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の炭化水素基であることを特徴とする請求項3または4に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。
[請求項6]
 前記一般式(1)のR 3およびR 4が水素であることを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。
[請求項7]
 前記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル化合物が、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシプロピル、及び(メタ)アクリル酸4-フェノキシブチルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項3~6のいずれか一項に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。
[請求項8]
 前記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸フェノキシアルキル化合物を、1.00×10 -6~1.00mol/Lの濃度で共存させることを特徴とする請求項3~7のいずれか一項に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。
[請求項9]
 前記重合開始剤が一般式(2)
 Z(X) n (2)
(式中、Zは、1価または多価の、芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基を表す。Xは塩素、臭素、ヨウ素、メトキシ基、炭素数1~4のアルキル基及びアセトキシ基からなる群から選ばれる基を表す。nは自然数を表す。)
で表される化合物であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。
[請求項10]
 前記重合触媒を電子供与体成分とともに使用することを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。
[請求項11]
 前記電子供与体成分のドナー数が15~62であることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。
[請求項12]
 前記イソブチレン系重合体の重量平均分子量(Mw)が、1000~21000であることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。
[請求項13]
 前記イソブチレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)が、1.00~1.50であることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。