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1. (WO2018189797) 回路基板の製造方法、回路シート及び回路基板
Document

明 細 書

発明の名称 回路基板の製造方法、回路シート及び回路基板

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007   0008   0009   0010  

課題を解決するための手段

0011  

発明の効果

0012  

図面の簡単な説明

0013  

発明を実施するための形態

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074  

実施例

0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102  

符号の説明

0103  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 回路基板の製造方法、回路シート及び回路基板

技術分野

[0001]
 本発明は、回路基板の製造方法、回路シート及び回路基板に関する。

背景技術

[0002]
 電子機器の小型化及び高機能化の進展に伴い、電子部品を基板上に高密度実装することが可能な回路基板としてプリント基板が広く用いられている。プリント基板は一般に、基板に金属箔を貼り付け、これをエッチングして所望の回路形状に加工することで製造されている。
[0003]
 一方、電子機器の使用環境の多様化に伴い、回路基板の電流容量の増大(大電流化)が求められている。回路基板の電流容量は、回路(導体)の断面積を大きくすることで増大させることができる。しかし、プリント基板においてエッチングにより回路を形成される手法で回路の厚さを厚くすることは、技術的に困難な点がある。例えば、回路の断面形状がテーパー状になり、回路間の絶縁性を確保しにくいこと、回路加工にかかる時間が厚さに比例して長くなること等が挙げられる。このため、エッチング法で回路形成するときに、回路の断面積を大きくするためには、配線の厚さではなく、幅を広げる必要がある。その結果、回路基板の小型化の要請に応えられない場合がある。
[0004]
 回路基板の小型化に対応しつつ大電流化する方法として、あらかじめ回路の状態に加工された金属部材を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2014-99574号公報
特許文献2 : 特開2001-36201号公報
特許文献3 : 国際公開WO2009/110376号
特許文献4 : 特開2002-33558号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 特許文献1に記載の方法では、大電流化と放熱性を付与するため、回路の状態に加工された金属板とヒートスプレッダの間に絶縁層を配置して、積層構造体の基板を一旦形成する。その後、隣接する回路の間を樹脂で充填する。しかしながらこの方法では、回路が板状ではないリードフレームを一括で絶縁層に貼り付ける手法で回路基板を形成するため、貼り付けのための加圧力のムラによる位置ずれを生じやすく、高信頼性が要求される金属基板の絶縁性に不安がある。
[0007]
 特許文献2に記載の方法では、回路の状態に加工された金属部材を加熱により軟化させた絶縁層に押し込むことによって回路基板が製造される。しかしながらこの方法では、金属部材を樹脂基材に押し込む際に金属部材と絶縁層の界面にボイドが生じたり、金属部材の位置ずれ、押し出された樹脂の盛り上がり等が生じて寸法が変化したりする結果、絶縁信頼性が低下する可能性がある。
[0008]
 特許文献3に記載の方法では、金属板から互いに独立した複数のパターンと、その隣接したパターンを相互に接続する連結部(ブリッジ部)を有するリードフレームを得る工程と、これを熱伝導性の高い絶縁シートとを組み合わせて、高放熱の基板を提供する。しかしながら、この方法は連結部を金型等で打ち抜き、その後、絶縁層を流動させることで、空いた穴を埋める工程が必要である。このため、基板が厚い程、ブリッジ部を打ち抜いた周囲にクラックが入る可能性が高まる。また、ブリッジ部を除去した後の穴を埋めた箇所のボイド、不均一性等が生じるおそれがある。その結果、湿気等の環境条件による絶縁劣化が問題になる。また、廃棄部位であるブリッジ部にも材料を使用するため、材料効率が低くなる。
[0009]
 特許文献4に記載の方法では、無機質フィラーを含む熱硬化性樹脂組成物と、ブリッジ部を有するリードフレームを積層及び接着して回路基板を形成する。この方法では、シートをリードフレームに接着し、連結していたブリッジを不要部として打ち抜きによりシートと共に除去し、その後のプレスにより、打ち抜いて消失した周囲の樹脂をプレスで再流動して、その孔部を充填する。しかしながら、この方法では、打ち抜きにより孔周囲にクラックが入るおそれがある。また、孔部を埋めるために、フィラーの高充填された樹脂を再流動させる必要があり、気泡の巻き込みや樹脂とフィラーの流動性の差によって製品歩留まりは高くないと考えられる。 
[0010]
 本発明は上記事情に鑑み、絶縁信頼性に優れる回路基板を製造可能な回路基板の製造方法、絶縁信頼性に優れる回路基板を製造可能な回路シート、及び絶縁信頼性に優れる回路基板を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

[0011]
<1>回路と、前記回路の間の空間に設けられる樹脂部と、を備える回路シートを基板上に配置する工程を備える、回路基板の製造方法。
<2>前記回路シートを基板上に配置する工程の前に、回路と、前記回路の間の空間に設けられる樹脂部と、を備え、かつ前記回路がブリッジを有さない回路シートを準備する工程をさらに備える、<1>に記載の回路基板の製造方法。
<3>前記回路シートが、前記回路の外周に設けられる樹脂部をさらに備える、<1>又は<2>に記載の回路基板の製造方法。
<4>前記樹脂部の線膨張率が10ppm/K~50ppm/Kである、<1>~<3>のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
<5>前記回路の厚さが350μm以上である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
<6>前記回路シートと前記基板との間に絶縁層を配置する工程をさらに備える、<1>~<5>のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
<7>前記絶縁層が、前記回路シートが前記基板と対向する面及び前記基板が前記回路シートと対向する面のいずれか一方又は双方に配置される、<6>に記載の回路基板の製造方法。
<8>前記絶縁層の配置が、前記回路シートが前記基板と対向する面及び前記基板が前記回路シートと対向する面の双方に配置される絶縁層を接合することで行われる、<6>又は<7>に記載の回路基板の製造方法。
<9>前記絶縁層が、前記回路シートを前記基板上に配置する工程の前に半硬化の状態である、<6>~<8>のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
<10>前記絶縁層の厚さが前記回路の厚さと同じか、回路厚さよりも小さい、<6>~<9>のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
<11>回路と、前記回路の間の空間に設けられる樹脂部と、を備える回路シート。
<12>前記回路がブリッジ部を有さない、<11>に記載の回路シート。
<13>前記回路の外周に設けられる樹脂部をさらに備える、<11>又は<12>に記載の回路シート。
<14>前記樹脂部の線膨張率が10ppm/K~50ppm/Kである、<11>~<13>のいずれか1項に記載の回路シート。
<15>前記回路の厚さが350μm以上である、<11>~<14>のいずれか1項に記載の回路シート。
<16>少なくとも一方の面に配置される絶縁層をさらに備える、<11>~<15>のいずれか一項に記載の回路シート。
<17>前記絶縁層の厚さが前記回路の厚さよりも小さい、<16>に記載の回路シート。
<18>基板と、前記基板に配置される<11>~<17>のいずれか1項に記載の回路シートから形成される回路と、を備える回路基板。

発明の効果

[0012]
 本発明によれば、絶縁信頼性に優れる回路基板を製造可能な回路基板の製造方法、絶縁信頼性に優れる回路基板を製造可能な回路シート、及び絶縁信頼性に優れる回路基板が提供される。

図面の簡単な説明

[0013]
[図1] 回路シートの一例を概念的に示す斜視図である。
[図2] 回路シートの一例を概念的に示す断面図である。
[図3] 絶縁層を備える回路シートの一例を概念的に示す斜視図である。
[図4] 絶縁層を備える回路シートの一例を概念的に示す断面図である。
[図5] 回路基板の一例を概念的に示す斜視図である。
[図6] 回路基板の一例を概念的に示す断面図である。
[図7] 実施例で作製した回路基板の状態を概念的に示す断面図である。
[図8] 比較例で作製した回路基板の状態を概念的に示す断面図である。
[図9] 特許文献3、4に記載した、従来技術で作製した回路基板の状態を概念的に示す断面図であり、回路間を接続しているブリッジを除去する前の状態である。
[図10] 特許文献3、4に記載した、従来技術で作製した回路基板の状態を概念的に示す断面図であり、ブリッジを打ち抜きにより除去した後の状態である。

発明を実施するための形態

[0014]
 以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
[0015]
 本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
 本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
 本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
 本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
 本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
 本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
 本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
[0016]
<回路基板の製造方法>
 本実施形態の回路基板の製造方法は、回路と、前記回路の間の空間に設けられる樹脂部と、を備える回路シートを基板上に配置する工程を備える。本実施形態の方法では、回路の間の空間に樹脂部が設けられた状態の回路シートを用いるため、基板上への回路の配置を簡便に精度よく行うことができる。
[0017]
 さらに本実施形態の方法では、銅のエッチングにより回路を形成する場合と比べて回路形成に時間がかからず、かつ回路の断面形状を制御しやすいため、回路の厚みを大きくすることが容易である。従って、回路の幅を大きくせずにその断面積を大きくでき、回路基板の小型化に対応しつつ大電流化を達成することができる。また、回路を厚くすることで、回路が面方向への熱の拡散を促すため、回路基板の温度上昇を抑制する効果も期待できる。
[0018]
 さらに本実施形態の方法では、回路と、回路の間の空間に設けられる樹脂部と、を備える回路シートを用いることで、絶縁信頼性に優れる回路基板を製造することができる。その理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。
[0019]
 回路の間の空間に樹脂部が設けられていない状態の回路を基板上に設けられた絶縁層の上に配置して回路を加圧する場合は、図8に示すように、絶縁層5の回路1と接していない部分が加圧によって盛り上がり、クラック等が生じる原因になると考えられる。これに対して、回路の間に樹脂部が設けられた状態の回路シートを基板上に設けられた絶縁層の上に配置して加圧する場合は、図7に示すように、回路1の間の絶縁層5の盛り上がりが樹脂部2によって抑制され、クラック等の発生も抑制されることが考えられる。
[0020]
 回路基板の製造方法は、回路シートを基板上に配置する工程の前に、回路と、前記回路の間の空間に設けられる樹脂部と、を備え、かつ前記回路がブリッジを有さない回路シートを準備する工程をさらに備えることが好ましい。
 この方法では、回路の間の空間に設けられる樹脂部を備える回路シートを用いるため、回路を接合するためのブリッジ部を有していなくても樹脂部が回路を接合する役割を果たす。その結果、回路を基板の上に配置する際の位置ずれが有効に防止され、位置あわせの精度が向上するという効果が期待できる。また、上記構成を有する回路シートを用いることで、基板上に回路を配置した後に回路の間を絶縁する工程が省略でき、回路基板の生産効率が向上するという効果が期待できる。また、回路の位置ずれを防止するためのブリッジ部を設ける必要がないために、ブリッジ部の除去に伴う回路間樹脂及び絶縁層に対するダメージを考慮する必要がない。
[0021]
 さらに、図9に示すように回路1の間を接続するブリッジ部13が存在すると、ブリッジ部が除去されることによって、図10に示すようにブリッジ部13が除去された部分に空間14が生じて充分な絶縁信頼性が得られないおそれがある。
[0022]
 上記方法において回路シートが基板上に「配置」された状態とは、回路シートが接している部材にまったく埋め込まれていない場合(埋め込み深さが0μmである)か、回路シートの埋め込み深さが20μm以内である場合を意味する。
[0023]
 回路シートを基板上に配置する方法は、特に制限されない。例えば、重力方向にみて回路シートが上になるようにして行っても、重力方向にみて基板が上になるようにして行っても、その他の方法で行ってもよい。
[0024]
 回路の厚さは特に制限されず、これを用いて製造される回路基板の用途等に応じて選択できる。回路基板の大電流化の観点からは、回路の厚さは350μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましく、1000μm以上であることがさらに好ましい。容積及び重量の観点からは、回路の厚さは、例えば、3000μm以下であってよい。
 回路の場所によって上記の値が異なる場合は、任意に選択した5箇所で得られた測定値の算術平均値を上記の値としてもよい。
 上記回路の厚さは回路自体の厚さを意味し、隣接する部材に回路の一部が埋め込まれている場合は埋め込まれている部分の厚さも回路の厚さに含まれる。
[0025]
 回路の幅及び長さは特に制限されず、これを用いて製造される回路基板の用途等に応じて選択できる。例えば、350μm~70000μmの範囲から選択できる。回路シートの場所によって上記の値が異なる場合は、任意に選択した5箇所で得られた測定値の算術平均値を上記の値としてもよい。
[0026]
 回路は、例えば、金属板を所望の形状の回路の状態に加工することで得られる。加工の方法は特に制限されず、打抜き、切削等の公知の方法から選択できる。
[0027]
 回路の材質は、特に制限されない。例えば、銅、銀、クロム銅、タングステン銅、ニッケル、ニッケルメッキ銅、アルミニウム、アルマイトに表面修飾したアルミニウム等の金属が挙げられる。導電性の観点からは、銅を含むことが好ましい。
[0028]
 樹脂部に用いる樹脂は、特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂、アミドイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。樹脂部に用いる樹脂は、1種であっても2種以上であってもよい。電気絶縁性と接着性の観点からは、樹脂部に用いる樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アミドイミド樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、耐湿性の観点からはエポキシ樹脂、アクリル樹脂及びアミドイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。また、樹脂部に用いる樹脂は、必要に応じてフィラー(粉末、繊維等)などの樹脂以外の成分を含んでもよい。
[0029]
 回路の間の空間に樹脂部を設ける方法は、特に制限されない。例えば、粉末等の固体状の樹脂材料を用いる方法として押出成形法、圧縮成形法、トランスファーモールド、インサート成形方法等が挙げられ、液状の樹脂材料を用いる方法として注型法、塗布法、印刷法、埋め込み法等が挙げられる。回路の間の空間に樹脂部を設ける際は、回路シートを樹脂シート等の仮基材上に配置してもよい。
[0030]
 回路シートにおいて樹脂部が「回路の間の空間に設けられる」状態とは、樹脂部を設けることによる効果の発現が求められる部分に少なくとも樹脂部が設けられている状態を意味し、回路シートにおける回路の間の空間のすべてに樹脂部が設けられている場合に限られない。例えば、本実施形態の方法により達成される効果に寄与しない部分に樹脂部が設けられていない場合も上記の状態に該当するものとする。また、樹脂部を形成するにあたって意図せず生じるボイド、クラック、未充填部等が存在する場合も実用上問題のない場合には上記の状態に該当するものとする。
[0031]
 回路シートにおいて、回路の間の空間に設けられる樹脂部の割合は、回路の形状、基板(又は絶縁層)の材質、回路基板の作製条件等によって異なり、特に制限されない。例えば、樹脂部が回路の間の空間のすべてに設けられた状態であってもよい。また、例えば、回路シートを上部から見た(平面視した)場合、回路の間の空間に相当する領域のすべてに樹脂部が存在する状態であってもよい。なおこれらの場合における「すべて」には、上述したような本実施形態の方法により達成される効果に寄与しない部分、樹脂部を形成するにあたって意図せず生じる樹脂部が存在しない部分などは考慮しない。
[0032]
 回路シートにおける樹脂部の厚さは、回路の厚さの80%以上~120%以下であることが好ましく、90%以上~110%以下であることがより好ましく、95%以上~105%以下であることがさらに好ましい。回路シートの場所によって上記の値が異なる場合は、任意に選択した5箇所で得られた測定値の算術平均値を上記の値としてもよい。
[0033]
 絶縁性保持の観点からは、樹脂部の線膨張率は、10ppm/K~50ppm/Kであることが好ましく、12ppm/K~45ppm/Kであることがより好ましい。
 樹脂部の線膨張率は、熱機械分析法によりサンプルの歪みを温度に対してプロットした場合の接線の傾きであり、サンプルのガラス転移温度以下の温度領域により測定される値である。
[0034]
 回路シートに用いる回路はブリッジ部を有さないため、回路シート、及び、基板として利用する場合において、打ち抜き、切削、エッチング等の加工によりブリッジ部を除去する必要がない。このため、ブリッジ部を打ち抜いた周囲にクラックが入る可能性や、ブリッジ部を除去した後の穴を埋めた箇所に生じるボイド、不均一性等と湿度による絶縁性悪化が抑制される。また、ブリッジ部の形成に用いる分の材料を節約することができる。
[0035]
 回路シートの取り扱い性の観点からは、回路シートは、回路と樹脂部とが一体化した状態である(一枚のシートとして扱うことができる)ことが好ましい。例えば、回路シートが、回路の外周に設けられる樹脂部をさらに備えることが好ましい。この場合、回路の間の空間に設けられる樹脂部の少なくとも一部と回路の外周に設けられる樹脂部の少なくとも一部とが連続していることがより好ましい。
[0036]
 回路シートにおける回路と樹脂部とが一体化した状態であると、回路基板の作製においてプレス成形を行う場合に圧力ムラ、位置ズレ等がより生じにくく、得られる回路基板の絶縁信頼性が向上する傾向にある。また、回路の水分との接触が抑制され、回路基板の耐湿信頼性が充分に確保され、沿面放電、部分放電、トラッキング、マイグレーション等の発生が抑制される傾向にある。
[0037]
 回路シートは、粗化処理されていてもよい。例えば、回路シートが絶縁層と接する側の面が少なくとも粗化処理されていると、ボイドの発生を抑制しながら、絶縁層と充分に接着できる状態とすることができる。具体的には、回路シートの絶縁層と接する側の面を粗化し、アンカー効果による引き抜き力を向上させるか密着面積を増大させることで、ファンデルワールス力による密着性を向上することができると考えられる。回路シートの粗化処理は、回路と樹脂部のいずれか一方についてのみ行っても、回路と樹脂部の双方について行ってもよい。回路シートの粗化処理を、回路と樹脂部のいずれか又は双方について行う場合は、絶縁層との接着強度が弱い方の粗化処理を優先的に施すことが好ましい。
[0038]
 回路シートを粗化処理する方法は特に制限されず、物理的な方法で行っても、化学的な方法で行ってもよい。例えば、回路の材質が銅であれば、物理的な方法としては、やすりがけ、サンドブラスト処理、レーザー照射、フライス加工等が挙げられる。化学的な方法としては、マグダミット処理、CZ処理、黒化処理、エッチング処理等が挙げられる。粗化処理は、いずれか1種の方法により行っても、2種以上を組み合わせてもよい。2種以上を組み合わせる場合は、物理的な方法と化学的な方法を組み合わせて行っても、化学的な方法同士を組み合わせて行っても、物理的な方法同士を組み合わせて行ってもよい。また、樹脂部を粗化処理する場合の方法としては、デスミア処理、ケミカルデフラッシュ等による処理が挙げられ、いずれか一つの手法で行っても複数の手法を組み合わせて行ってもよい。
[0039]
 回路シートの粗化処理は、樹脂部が存在しない状態で行っても、樹脂部が存在する状態で行ってもよい。樹脂部が存在しない状態で回路シートの粗化処理を行う場合の利点としては、回路の絶縁層に対する密着性のみならず、樹脂部に対する密着性も向上する点が挙げられる。樹脂部が存在する状態で回路シートの粗化処理を行う場合の利点としては、回路と樹脂部の粗化処理を一括して行うことができる点が挙げられる。
[0040]
 回路シートの作製方法は、特に制限されない。例えば、下記のようにして作製することができる。まず、金属板を打抜き、切削等により切断して所望の形状の回路の状態に加工し、その後バリ取り加工を行い、回路を得る。次いで、粘着フィルム等の仮基材の上に作製した回路を配置する。必要に応じて回路形成の際に生じたバリ、残渣等を除去してもよい。その後、回路の間、及び、必要に応じて回路の外縁部に樹脂部を形成し、必要に応じて硬化処理等を行う。その後、回路から仮基材を剥離する。次いで、必要に応じて樹脂部の形成時に生じたバリの除去、樹脂の後硬化処理等を行って、回路シートを得る。
[0041]
 回路基板の製造に使用する基板の種類は、特に制限されない。例えば、ヒートスプレッダ等の放熱機能を有する部材であってもよい。ヒートスプレッダとしては、フィン、空気又は水の流路を持ったケース、グリースを介した金属板等の部材が挙げられる。基板の材質は特に制限されず、銅、アルミニウム、タングステン銅、モリブデン銅等の銅合金、ニッケルめっき銅などが挙げられる。基板の表面は平滑であってもよく、粗化処理が施されていてもよい。粗化処理の方法は、回路シートに対する粗化処理の方法として例示したものから選択してもよい。
[0042]
 回路基板は、回路シートと基板との間に絶縁層が配置されていることが好ましい。
 絶縁層の材質は、特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の樹脂が挙げられる。耐熱性の観点からは、熱硬化性樹脂が好ましい。絶縁層に含まれる樹脂は、1種であっても2種以上であってもよい。絶縁性と回路シートに対する接着性の観点からは、絶縁層はエポキシ樹脂を含むことが好ましい。絶縁層は、必要に応じてフィラー(粉末、繊維等)などの樹脂以外の成分を含んでもよい。
[0043]
 絶縁層に求められる諸特性のバランスの観点からは、上記樹脂の中でもエポキシ樹脂が好ましく、メソゲン基を有するエポキシ樹脂がより好ましい。メソゲン構造としては、例えば、ビフェニル構造、フェニルベンゾエート構造、シクロヘキシルベンゾエート構造、アゾベンゼン構造、スチルベン構造、ターフェニル構造、アントラセン構造、これらの誘導体、及びこれらのメソゲン構造の2つ以上が結合基を介して結合した構造が挙げられる。
[0044]
 メソゲン基を有するエポキシ樹脂は、下記一般式(I)で表される構造を1つ以上有するエポキシ化合物を含むものでであってもよい。
[化1]


[0045]
 一般式(I)において、R ~R はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示す。R ~R はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。また、R ~R のうちの2個~4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個すべてが水素原子であることがさらに好ましい。R ~R のいずれかが炭素数1~3のアルキル基である場合、R 及びR の少なくとも一方が炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。
[0046]
 一般式(I)で表される構造を有するエポキシ化合物としては、下記一般式(M)で表されるエポキシ化合物が挙げられる。
[0047]
[化2]


[0048]
 一般式(M)中におけるR ~R の具体例は、一般式(I)におけるR ~R の具体例と同様であり、その好ましい範囲も同様である。
[0049]
 エポキシ樹脂は、硬化剤と組み合わせてもよい。硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂等のフェノール硬化剤が好ましい。
[0050]
 絶縁層の厚さは特に制限されず、回路基板の用途等に応じて選択できる。充分な絶縁性を確保する観点からは、絶縁層の厚さは厚いほど好ましい。例えば、70μm以上であることが好ましく、90μm以上であることがより好ましく、110μm以上であることがさらに好ましい。
[0051]
 充分な放熱性を確保する観点からは、絶縁層の厚さは薄いほど好ましい。例えば、230μm以下であることが好ましく、210μm以下であることがより好ましく、190μm以下であることがさらに好ましい。絶縁層の厚さは、回路シートの回路の厚さよりも小さいことが好ましい。後述するように回路シートの基板と対向する面と、基板の回路シートと対向する面の双方に絶縁層を配置する場合は、双方の絶縁層の厚さの合計を上記絶縁層の厚さとする。
[0052]
 回路シートと基板との間に絶縁層を配置する方法は、特に制限されない。例えば、シート状の絶縁層を回路シート及び基板の少なくとも一方の表面に貼り付け、必要に応じて硬化処理等を行う方法、絶縁層形成用の樹脂組成物を回路シート及び基板の少なくとも一方の表面に付与し、必要に応じて硬化処理等を行う方法等が挙げられる。作業性の観点からは、回路シートの基板と対向する面及び基板の回路シートと対向する面のいずれか一方又は双方に絶縁層を配置することが好ましい。
[0053]
 回路シートと基板に対する密着性を高め、絶縁信頼性をより向上させる観点からは、絶縁層の配置は、回路シートの基板と対向する面と、基板の回路シートと対向する面の双方に配置される絶縁層を接合することで行うことが好ましい。
[0054]
 回路シートの基板と対向する面と、基板の回路シートと対向する面の双方に絶縁層を配置する場合、それぞれの絶縁層の材料及び厚さは同じでも異なっていてもよい。それぞれの絶縁層の材質及び厚さは、回路シート及び基材の状態(絶縁層に対する接着性、厚さムラの程度等)に応じて設定できる。
[0055]
 充分な絶縁性を得る観点からは、絶縁層の配置は、樹脂組成物を用いて行うことが好ましい。樹脂組成物を用いて絶縁層を配置する方法は、特に制限されない。例えば、ディスペンス方式、スプレー方式、グラビア方式、スクリーン印刷、メタルマスクを用いたスクリーン印刷、転写等により、回路シート及び基板の少なくとも一方の表面に樹脂組成物を付与することで行うことができる。
[0056]
 絶縁層の配置を樹脂組成物を用いて行う場合は、液状の樹脂組成物を用いることが好ましい。液状の樹脂組成物を用いることで、回路及び樹脂部の厚みの差等に起因する凹凸が回路シートの表面に存在していても、ボイド等の発生が抑制されて絶縁性に優れる絶縁層が得られる傾向にある。また、基板の表面がうねり、凹凸等によって平坦でない場合にも液状の樹脂組成物を用いることで絶縁性に優れる絶縁層が得られる傾向にある。
[0057]
 本開示において「液状である」とは、少なくとも樹脂組成物を回路シート又は基板に付与する時点において液状であることを意味する。液状の程度は特に制限されず、回路シート又は基板の表面の状態、樹脂組成物を付与する方法等に応じて選択できる。例えば、樹脂組成物を部材に付与する際の粘度が10Pa・s以下であることが好ましい。樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物を部材に付与する際の温度(例えば、18℃~23℃のいずれか)において、E型粘度計(東機産業(株)、TV-33)を用いて5回転/分(rpm)で測定される値とする。
[0058]
 絶縁層の配置を液状の樹脂組成物を用いて行う場合、樹脂組成物は溶媒等の粘度を調節する成分を含んでいてもよい。樹脂組成物が溶媒を含む場合は、樹脂組成物を回路シート又は基板の上に付与した後に溶媒を乾燥等により除去してもよい。溶媒を除去した後の溶媒の含有率は、樹脂組成物全体の2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
[0059]
 回路基板の製造方法の作業性の観点からは、絶縁層は、半硬化の状態の絶縁層から形成されるものであることが好ましい。具体的には、基板上に回路シートを配置する工程の前の絶縁層が半硬化(Bステージ)の状態であることが好ましい。絶縁層を半硬化の状態にする方法及び条件は特に制限されず、樹脂組成物の組成等に応じて設定できる。絶縁層が、基板上に回路シートを配置する工程の前に半硬化の状態である場合、基板上に回路シートを配置した後に後硬化処理を行って硬化した状態にすることが好ましい。後硬化処理の方法及び条件は特に制限されず、樹脂組成物の組成等に応じて設定できる。
[0060]
 絶縁層の回路シート又は基板に対する接着性を高める観点からは、絶縁層の硬化前の粘度が、常温(25℃)においては10 Pa・s~10 Pa・sであり、100℃においては10 Pa・s~10 Pa・sであり、常温(25℃)から100℃への温度変化により、粘度が0.0001%~50%に低下するものであることが好ましい。また、硬化後の絶縁層は、加温によっても溶融しないことが好ましい。なお、上記粘度は、動的粘弾性測定(周波数1ヘルツ、荷重40g、昇温速度3℃/分)によって測定されうるものである。
[0061]
 回路シートと基板(又は絶縁層)との密着性を高める観点からは、回路シートを基板上に配置する際に加熱及び加圧の少なくとも一方を行うことが好ましく、双方を行うことがより好ましい。加熱の温度は特に制限されず、例えば、50℃~250℃の範囲から選択することができる。加圧の圧力は特に制限されず、例えば、0.1MPa~50MPaの範囲から選択することができる。
[0062]
 回路シートを加圧する方法は、特に制限されない。圧力の分布を平均化するためには、回路シートの上にクッション性のある部材(紙、板、布等)を配置した状態で加圧することが好ましい。また、回路シートにおける回路の厚さと樹脂部の厚さの差を小さくするように行うことが好ましい。加圧は、回路シートを固定して基板側から行っても、基板を固定して回路シート側から行っても、双方を固定せずに行ってもよい。
[0063]
 回路シートを加熱する方法は、特に制限されない。例えば、加圧に用いる部材の温度を所望の温度に設定する方法が挙げられる。表面が平滑で厚みムラが抑えられた回路基板を得る観点からは、回路シート、必要に応じて配置される絶縁層及び基板がこの順で積層された状態で一対の熱板で挟み、加圧しながら加熱する方法が好ましい。
[0064]
 上記方法により製造される回路基板は、絶縁信頼性に優れている。また、回路の厚さを大きくできるため、大電流化に適している。
[0065]
<回路シート>
 本実施形態の回路シートは、回路と、前記回路の間の空間に設けられる樹脂部と、を備える。
[0066]
 上記回路シートの詳細及び好ましい態様は、上述した実施態様の回路基板の製造方法に用いられる回路シートの詳細及び好ましい態様と同様である。
[0067]
 回路シートは、少なくとも一方の面に配置される絶縁層をさらに備えていてもよい。絶縁層の詳細は、上述した実施態様の回路基板の製造方法における絶縁層の詳細と同様である。
[0068]
 回路シートの少なくとも一方の面に絶縁層を配置する方法は、特に制限されない。例えば、シート状の絶縁層を回路シートの少なくとも一方の面に貼り付け、必要に応じて硬化処理等を行う方法、絶縁層形成用の樹脂組成物を回路シートの少なくとも一方の面に付与し、必要に応じて硬化処理等を行う方法等が挙げられる。
[0069]
<回路基板>
 本実施形態の回路基板は、基板と、前記基板上に配置される上述した実施形態の回路シートから形成される回路と、を備える。
[0070]
 本実施形態の回路基板の詳細及び好ましい態様は、上述した実施形態の回路基板の製造方法により製造される回路基板の詳細及び好ましい態様と同様である。
[0071]
 以下、図面を参照して回路基板の製造方法、回路シート及び回路基板の具体的態様について説明するが、上記実施形態はこれに限定されるものではない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
[0072]
 図1は、回路基板の製造方法に用いる回路シートの一例を概念的に示す斜視図であり、図2は回路基板の製造方法に用いる回路シートの一例を概念的に示す断面図である。図1及び図2に示すように、回路シート3は、回路1と、回路1の間の空間に設けられる樹脂2とを備える。図1及び図2では、回路シート3は仮基材10の上に配置されている。
[0073]
 図3は、絶縁層を備える回路シートの一例を概念的に示す斜視図であり、図4は絶縁層を備える回路シートの一例を概念的に示す断面図である。図3及び図4では、回路シート3は仮基材10が除去された面の上に絶縁層5が配置されている。
[0074]
 図5は、回路基板の製造方法により製造される回路基板の一例を概念的に示す斜視図であり、図6は回路基板の製造方法により製造される回路基板の一例を概念的に示す断面図である。図5及び図6では、回路基板11は、回路シート3と、絶縁層5と、基板(ヒートスプレッダ)4とがこの順に配置された積層体の状態である。
実施例
[0075]
 以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
[0076]
 実施例及び比較例における絶縁層の形成は、エポキシ樹脂組成物を用いて行った。以下にエポキシ樹脂組成物の作製に用いた材料とその略号を示す。
[0077]
(メソゲン骨格を有するエポキシモノマーA(モノマーA))
 ・[4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4-(2,3-エポキシプロポキシ)ベンゾエート、エポキシ当量:212g/eq、特開2011-74366号公報に記載の方法により製造]
[0078]
[化3]


[0079]
(メソゲン骨格を有するエポキシモノマーB(モノマーB))
 ・YL6121H[ビフェニル型エポキシモノマー、三菱化学株式会社製、エポキシ当量:172g/eq]
[0080]
(無機充填材)
 ・AA-3[アルミナ粒子、住友化学株式会社製、体積平均粒子径(D50):3μm]
 ・AA-04[アルミナ粒子、住友化学株式会社製、体積平均粒子径(D50):0.40μm]
 ・HP-40[窒化ホウ素粒子、水島合金鉄株式会社製、体積平均粒子径(D50):40μm]
[0081]
(硬化剤)
 ・CRN[カテコールレゾルシノールノボラック(質量基準の仕込み比:カテコール/レゾルシノール=5/95)樹脂、下記方法で合成、シクロヘキサノン50質量%含有]
[0082]
<硬化剤(CRN)の合成方法>
 撹拌機、冷却器及び温度計を備えた3Lのセパラブルフラスコに、レゾルシノール627g、カテコール33g、37質量%ホルムアルデヒド水溶液316.2g、シュウ酸15g、水300gを入れ、オイルバスで加温しながら100℃に昇温した。104℃前後で還流し、還流温度で4時間反応を続けた。その後、水を留去しながらフラスコ内の温度を170℃に昇温した。170℃を保持しながら8時間反応を続けた。反応後、減圧下20分間濃縮を行い、系内の水等を除去し、目的であるフェノールノボラック樹脂(CRN)を得た。
[0083]
 得られたCRNのMn(数平均分子量)及びMw(重量平均分子量)の測定を、高速液体クロマトグラフィ(株式会社日立製作所製、商品名:L6000)及びデータ解析装置(株式会社島津製作所製、商品名:C-R4A)を用いて行った。分析用GPCカラムは東ソー株式会社製のG2000HXL及びG3000HXL(以上、商品名)を使用した。試料濃度は0.2質量%とし、移動相にはテトラヒドロフランを用い、流速1.0mL/minで測定を行った。ポリスチレン標準サンプルを用いて検量線を作成し、それを用いてポリスチレン換算値でMn及びMwを計算したところ、Mnは422でMwは564であった。
[0084]
 得られたCRNについて、水酸基当量の測定を塩化アセチル-水酸化カリウム滴定法により測定した。なお、滴定終点の判断は溶液の色が暗色のため、指示薬による呈色法ではなく、電位差滴定によって行った。具体的には、測定樹脂の水酸基をピリジン溶液中塩化アセチル化した後に、過剰の試薬を水で分解し、生成した酢酸を水酸化カリウム/メタノール溶液で滴定した。結果は62g/eqであった。
[0085]
(硬化促進剤)
 ・TPP:トリフェニルホスフィン[和光純薬工業株式会社製、商品名]
[0086]
(添加剤)
 ・KBM-573:3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン[シランカップリング剤、信越化学工業株式会社製、商品名]
[0087]
(溶剤)
 ・CHN:シクロヘキサノン
[0088]
(エポキシ樹脂組成物の調製)
 メソゲン骨格を有するエポキシモノマーとして、モノマーAとモノマーBとをエポキシ当量が8:2となるように混合してエポキシモノマー混合物を得た。このエポキシモノマー混合物を8.19質量%と、硬化剤としてCRNを4.80質量%と、硬化促進剤としてTPPを0.09質量%と、無機充填材としてHP-40を39.95質量%と、AA-3を9.03質量%と、AA-04を9.03質量%と、添加剤としてKBM-573を0.06質量%と、溶剤としてCHNを28.85質量%と、を混合し、ワニス状のエポキシ樹脂組成物を調製した。
[0089]
 窒化ホウ素(HP-40)の密度を2.20g/cm 、アルミナ(AA-3及びAA-04)の密度を3.98g/cm 、及びエポキシモノマー(モノマーA及びモノマーB)と硬化剤(CRN)との混合物の密度を1.20g/cm として、エポキシ樹脂組成物の全固形分の全体積に対する無機充填材の割合を算出したところ、72体積%であった。
[0090]
<実施例1>
 厚さ500μmの銅板に対し、金型による打ち抜きと切削法により回路を形成し、粘着フィルム上に位置ズレしないように固定した。次に、金型に回路を固定して、トランスファプレス機(テクノマルシチ(株)、汎用プレス機)を用いて、エポキシ樹脂(日立化成(株)、型番:CEL-4650M、線膨張率:14ppm/℃)を回路の間の空間に充填し、所定の条件(温度:175℃、圧力:8MPa、時間:3分)でプレス処理を行って樹脂部を形成した。次いで、回路を金型から脱型し、粘着フィルムを剥離し、バリを切削により除去して、オーブン温度180℃、6時間で加熱して後硬化処理を行い、回路シートを作製した。回路シートにおける樹脂部の厚みは、回路の厚みと同じであった。
[0091]
 作製した回路シートをディスペンサ(ムサシエンジニアリング(株)、型番:HPC-3)のステージに固定し、上述した方法で調製したエポキシ樹脂組成物を回路シートの全体を覆うように、厚さが90μmとなるように塗布し、防爆型オーブンにて130℃で7.5分乾燥して、半硬化状態の絶縁層を形成した。一方、ヒートスプレッダとなる平板銅板(厚さ:0.5mm)をディスペンサのステージに固定し、回路シートに塗布した範囲と同じ大きさで絶縁層を形成するための液状樹脂組成物を塗布し、防爆型オーブンにて130℃で7.5分乾燥して、半硬化状態の絶縁層を形成した。
[0092]
 次いで、回路シート側に形成した絶縁層とヒートスプレッダ側に形成した絶縁層が対向するように回路シートとヒートスプレッダを配置し、真空熱圧着により貼り合わせを実施した。具体的には、プレス温度は50℃を開始温度とし、3℃/分の条件で180℃まで昇温した後、2時間保持し、その後、加圧したまま50℃まで冷却して、回路基板を作製した。この間の真空度は昇温開始前より冷却完了まで1kPa以下とし、プレス圧は10MPaとした。
[0093]
<実施例2>
 厚さが500μmの銅板の代わりに厚さが1000μmの銅板を用いて回路シート(樹脂部の厚みは回路の厚みと同じ)を作製したことと、ヒートスプレッダとして厚さが500μmの銅板の代わりに厚さが1000μmの銅板を用いたこと以外は実施例1と同様にして、回路基板を作製した。
[0094]
<実施例3>
 厚さが500μmの銅板の代わりに厚さが2000μmの銅板を用いて回路シート(樹脂部の厚みは回路の厚みと同じ)を作製したことと、ヒートスプレッダとして厚さが500μmの銅板の代わりに厚さが2000μmの銅板を用いたこと以外は実施例1と同様にして、回路基板を作製した。
[0095]
<比較例1>
 回路の間の空間に樹脂部を形成しない状態のものを回路シートの代わりに用いたこと以外は実施例1と同様にして、回路基板を作製した。
[0096]
<比較例2>
 回路の間の空間に樹脂部を形成しない状態のものを回路シートの代わりに用いたこと以外は実施例2と同様にして、回路基板を作製した。
[0097]
<比較例3>
 回路の間の空間に樹脂部を形成しない状態のものを回路シートの代わりに用いたこと以外は実施例3と同様にして、回路基板を作製した。
[0098]
(絶縁破壊電圧の測定)
 回路基板の回路が形成された側の面と、ヒートスプレッダの回路側の反対の面を、電源にそれぞれ接続した。その後、回路基板の全体をフロリナートに入れて絶縁破壊電圧の測定を行った。測定条件は、測定開始電圧を500(V)とし、500(V)ずつ段階的に電圧を上げて30秒保持することを繰り返し、電流値が0.2(mA)を超えたときの電圧を絶縁破壊電圧(kV)とした。結果を表1に示す。
[0099]
(位置ズレ量の測定)
 実施例及び比較例で作製した回路基板において、所定の位置に回路が配置しているかどうかを三次元測定機((株)キーエンス、型式:VR-3000D)を用いて評価した。具体的には、測定する回路基板の位置ズレが起きないように、ステージ上の四隅に枠組みを設置し、回路基板を固定して、リファレンスとなる設計図に近い回路基板のパターンデータを取得した。その後、回路基板の回路中央位置とリファレンスの回路中央位置を比較して、位置ズレ量(μm)を測定した。
[0100]
(線膨張率の測定方法)
 回路シートの樹脂部の線膨張率は、熱機械分析装置(SII製、型番:EXSTAR6000)を用いて評価した。具体的には、樹脂部の形成に用いたエポキシ樹脂を硬化させて得た硬化物から30mm×3mm、厚み0.2 mmの試料を作製し、引張り測定時の試料の伸びの温度依存性を測定した。測定条件は試料の歪み取りの条件を25℃から150℃、スキャン温度を25℃から300℃とし、温度に対して歪みをプロットしたグラフの25℃から試料のガラス転移温度以下の温度である150℃までプロットした場合の接線の傾きを線膨張率とした。昇温速度は5℃/min、荷重は49mN、測定雰囲気は窒素中とした。その結果、線膨張率は14ppm/℃であった。
[0101]
[表1]


[0102]
 表1に示すように、実施例1~3で作成した回路基板は、比較例1~3で作製した回路基板に比べて回路の位置ズレが小さく、絶縁破壊電圧が大きかった。このような差が生じたことの要因としては、実施例の回路基板では図7に示すように、回路の間の空間に設けられる樹脂部によって絶縁層の盛り上がりが抑制されたのに対し、比較例の回路基板では図8に示すように、回路の間の空間に樹脂部が設けられていないために絶縁層の盛り上がりが生じてクラックが発生したことが考えられる。また、回路の間の空間に設けられる樹脂部によって回路が固定されているために、位置ズレ量が低減されたと考えられる。

符号の説明

[0103]
1 回路
2 樹脂部
3 回路シート
4 基板(ヒートスプレッダ)
5 絶縁層
10 仮基材
11 回路基板
12 クラック
13 ブリッジ
14 ブリッジ除去により生じる空間

請求の範囲

[請求項1]
 回路と、前記回路の間の空間に設けられる樹脂部と、を備える回路シートを基板上に配置する工程を備える、回路基板の製造方法。
[請求項2]
 前記回路シートを基板上に配置する工程の前に、回路と、前記回路の間の空間に設けられる樹脂部と、を備え、かつ前記回路がブリッジを有さない回路シートを準備する工程をさらに備える、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
[請求項3]
 前記回路シートが、前記回路の外周に設けられる樹脂部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の回路基板の製造方法。
[請求項4]
 前記樹脂部の線膨張率が10ppm/K~50ppm/Kである、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
[請求項5]
 前記回路の厚さが350μm以上である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
[請求項6]
 前記回路シートと前記基板との間に絶縁層を配置する工程をさらに備える、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
[請求項7]
 前記絶縁層が、前記回路シートが前記基板と対向する面及び前記基板が前記回路シートと対向する面のいずれか一方又は双方に配置される、請求項6に記載の回路基板の製造方法。
[請求項8]
 前記絶縁層の配置が、前記回路シートが前記基板と対向する面及び前記基板が前記回路シートと対向する面の双方に配置される絶縁層を接合することで行われる、請求項6又は請求項7に記載の回路基板の製造方法。
[請求項9]
 前記絶縁層が、前記回路シートを前記基板上に配置する工程の前に半硬化の状態である、請求項6~請求項8のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
[請求項10]
 前記絶縁層の厚さが前記回路の厚さと同じか、回路厚さよりも小さい、請求項6~請求項9のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
[請求項11]
 回路と、前記回路の間の空間に設けられる樹脂部と、を備える回路シート。
[請求項12]
 前記回路がブリッジ部を有さない、請求項11に記載の回路シート。
[請求項13]
 前記回路の外周に設けられる樹脂部をさらに備える、請求項11又は請求項12に記載の回路シート。
[請求項14]
 前記樹脂部の線膨張率が10ppm/K~50ppm/Kである、請求項11~請求項13のいずれか1項に記載の回路シート。
[請求項15]
 前記回路の厚さが350μm以上である、請求項11~請求項14のいずれか1項に記載の回路シート。
[請求項16]
 少なくとも一方の面に配置される絶縁層をさらに備える、請求項11~請求項15のいずれか一項に記載の回路シート。
[請求項17]
 前記絶縁層の厚さが前記回路の厚さよりも小さい、請求項16に記載の回路シート。
[請求項18]
 基板と、前記基板に配置される請求項11~請求項17のいずれか1項に記載の回路シートから形成される回路と、を備える回路基板。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]