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1. (WO2018189789) タンク状態推定方法およびタンク状態推定プログラム
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明 細 書

発明の名称 タンク状態推定方法およびタンク状態推定プログラム

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008   0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012   0013  

発明の効果

0014   0015  

図面の簡単な説明

0016  

発明を実施するための形態

0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049  

産業上の利用可能性

0050  

符号の説明

0051  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : タンク状態推定方法およびタンク状態推定プログラム

技術分野

[0001]
 本発明は、LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)を貯蔵するタンク内の状態を推定する技術に関し、特に、LNGを貨物として輸送するLNG船のタンクに適用されるタンク状態推定プログラムおよびタンク状態推定方法に適用して有効な技術に関するものである。

背景技術

[0002]
 LNGを貨物とするLNG船では、貨物であるLNGの特性から、航海計画の作成に固有の考慮要素を有する。LNGは-160℃程度で気化することから、例えば、外部からの入熱等によりタンク内の貨物であるLNGが徐々に気化することが避けられないという特性を有する。
[0003]
 これに伴い、例えば、LNG船が積地でタンクにLNGを積む際に、タンクの温度が高いとLNGが大量に気化してしまうため、タンク内の温度が所定の温度以下でなければ積み込めないという制約がある。このため、LNG船が積地に到着したときにタンクが所定の温度以下となっているように冷却しなければならない。このとき、急激に温度を下げるとタンクが破損する可能性もあるため、徐々に冷却する必要がある。そこで、積地に向かう運航中にタンクを計画的に冷却しておくクールダウン(C/D)のオペレーションが行われる。
[0004]
 C/Dでは、タンク内に残しておいたLNG(ヒール)をタンク内にスプレーすることで、その気化熱でタンクを冷却する。したがって、LNG船が揚地でLNGを下ろす際に、全て下ろすのではなく、次に積地に向かう際のC/Dに用いるヒールを残した状態で下ろす。このとき、ヒールを多く残せば、C/Dのオペレーションは容易になるが、顧客としては貨物であるLNGの量を減らさないよう、ヒールは極力少なくするのが望ましい。このようなC/Dのオペレーションに係る計画も航海計画に含まれる。
[0005]
 LNGタンカー等におけるLNGの受入、運搬、貯蔵、払出に係る貯蔵タンクの運用計画の作成に関連する技術として、例えば、特開2013-92162号公報(特許文献1)には、混合整数非線形計画問題で表されるLNGの貯蔵タンクの運用計画問題を、制約条件中の非線形式を線形近似することによって非線形制約を捨象した混合整数線形計画問題と、制約条件中に離散変数を含む整数制約および混合整数制約を捨象した連続非線形計画問題の2種類の計画問題に緩和する旨が記載されている。そして、制約条件を段階的に精緻化しながらそれぞれの緩和された計画問題を交互に繰り返し求解することで、局所的最適解であっても大域的最適解に近い実行可能解を取得することができるとされる。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特開2013-92162号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 例えば、上述したようなC/Dのオペレーションに係る計画(いつどの程度のLNGをスプレーするか)等を含むLNG船の航海計画を自動的に作成したり調整したりするためには、その前提として、航路上の各時点におけるタンク内の状態(温度や圧力等)を計算により推定することが必要となる。しかし、これを精緻に計算しようとすると、特許文献1にも記載されているように、非常に複雑で高負荷な計算処理が必要となる。したがって、従来は、主に、計算によるのではなく、船長や航海士等の経験やスキルに基づいて属人的に行われる場合が多かった。
[0008]
 特許文献1に記載された技術によれば、LNGを貯蔵するタンクの運用に係る非線形計画問題の複雑さを緩和し、実用的な計算時間で解を得ることが可能であるとされる。しかし、特許文献1に記載された技術では、航行中の船体(およびタンク内のLNG)の動揺によるLNGの状態の変化についてまでは考慮されていない。この点を考慮した場合、非線形計画問題はより複雑となり、解を得るための演算処理もより負荷が高いものとなる。
[0009]
 そこで本発明の目的は、航行中のLNG船の船体動揺の影響も含む各種の要素を考慮して、LNGを収容するタンクの状態を推定するタンク状態推定方法およびタンク状態推定プログラムを提供することにある。
[0010]
 本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。

課題を解決するための手段

[0011]
 本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
[0012]
 本発明の代表的な実施の形態によるタンク状態推定方法は、タンクに収容されたLNGを貨物とするLNG船の航路上の所定の時点における前記タンク内の状態を推定するタンク状態推定方法であって、前記タンクの諸元に係る情報を取得する第1工程と、前記航路上の対象の区間の始点における前記タンク内の状態に係る情報を取得する第2工程と、前記区間の気象予報値、および前記気象予報値の情報に基づいて求められた、前記区間における前記タンク内のLNGの液体動揺予測値の情報を取得する第3工程と、前記第1~第3工程で取得した情報に基づいて、熱力学に基づく伝熱計算によって、前記区間における前記タンクへの入熱が前記タンク内のLNGの気化に用いられたものとして、前記区間の終点における前記タンク内の状態を計算する第4工程と、を実行するものである。
[0013]
 また、本発明は、上述のタンク状態推定方法をコンピュータに実行させるタンク状態推定プログラムにも適用することができる。

発明の効果

[0014]
 本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
[0015]
 すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、航行中のLNG船の船体動揺の影響も含む各種の要素を考慮して、LNGを収容するタンクの状態を推定することが可能となる。

図面の簡単な説明

[0016]
[図1] 本発明の実施の形態1であるタンク状態を推定する処理の流れの例について概要を示したフロー図である。
[図2] 本発明の実施の形態2であるタンク状態を推定する処理の流れの例について概要を示したフロー図である。
[図3] 本発明の実施の形態2における熱力学に基づく伝熱と二相流の計算モデルの概念の例を模式的に示した図である。

発明を実施するための形態

[0017]
 以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
[0018]
 <概要>
 上述したように、LNG船における貨物であるLNGは、-160℃程度で気化することから、例えば、外部からの入熱等によりタンク内のLNGが徐々に気化することが避けられないという特性を有する。したがって、LNGの積地に向かう航行中に予めタンクを所定の温度以下となるように冷却しておくC/Dのオペレーションのように、航海計画の作成において各種の固有の考慮要素を有する。
[0019]
 C/D以外にも、例えば、タンク内でLNGが気化したガス(Boil Off Gas:BOG)を燃焼させることでタービンを回して動力源とすることが行われる。また、主燃料である重油を燃焼させるのに代えて、強制的にタンク内のLNGを気化させて燃料として用いる場合もある。このような制御により、馬力配分や燃費等の航海計画に影響し得る要素が変化する一方で、貨物であるLNGの量も変化し得る。顧客(荷主)としては、LNGは極力減らさないで、定時性を維持しつつ最経済な航海計画により輸送されるのが望ましい。
[0020]
 また、BOGを燃焼させることを考慮要素とする場合にも、例えば、貨物のLNG毎にその成分であるメタンやエタン等の組成比率が相違することから、BOGにおける組成比率も同じではないものと考えられる。また、同じLNGでも、成分であるメタンやエタン等の気化のし易さがそれぞれ異なると考えられることから、時間経過とともにLNGの組成比率も変化し、その結果BOGにおける組成比率も変化するものと考えられる。したがって、これらのBOGを燃焼させたときに得られる熱量もそれぞれ異なるものと考えられ、これを考慮要素とすることで、燃費等の航海計画に影響し得る要素が変化する。
[0021]
 上述したように、これらの諸要素を考慮して航海計画を作成・調整等する場合、その前提として、航路上の各時点におけるタンク内の状態(以下では「タンク状態」と記載する場合がある)を計算により推定することが必要となる。ここで、「タンク状態」とは原則としてタンク内の温度を指すものとするが、圧力を推定することでボイル・シャルルの法則から温度を容易に得ることができるため、温度に代えて、もしくはこれに加えて圧力を指すものとしてもよい。さらに、タンク内のLNGの組成(メタン、エタン、…の比率等)の情報を含んでいてもよい。
[0022]
 航路上においてタンク状態に影響を与える要素としては、気象、およびC/Dの際のLNGのスプレーが考えられる。気象の情報には、例えば、タンクへの定常的な入熱に影響を与える気温や日照、海水温等の情報に加えて、船体(およびタンク内のLNG)の動揺に影響を与える風や波等の情報が含まれる。LNGのスプレーの情報には、スプレーするLNGの質量流量の情報が含まれる。
[0023]
 (実施の形態1)
 図1は、本発明の実施の形態1であるタンク状態を推定する処理の流れの例について概要を示したフロー図である。当該フローに係る一連の処理は、全部もしくは一部をCPU(Central Processing Unit)とメモリを備える専用もしくは汎用のコンピュータに実行させるプログラムとして実装してもよいし、集積回路等により構成された装置等のハードウェアとして実装してもよい。
[0024]
 本実施の形態では、タンク状態の推定にあたり、図示するように、所定の入力情報に基づいて、タンク状態計算1(ステップS01)とタンク状態計算2(ステップS02)の二段階の計算処理を行うことによって、ある時点におけるタンク状態42を推定する。ここでは、例えば、航海計画における航路上の基準点におけるタンク状態であるタンク初期状態21を入力とし、当該基準点を始点としたある区間の終点におけるタンク状態42を計算する。そして、このタンク状態42を次の(後続の)区間の始点における入力として、当該次の区間の終点におけるタンク状態42を計算する、という処理を、目的地に到達するまで繰り返すことで、目的地におけるタンク状態42を推定する。
[0025]
 なお、基準点から目的地までの区間は、一定の時間毎もしくは距離毎に分割して設定してもよいし、任意の地点で分割してもよい。区間の分割を細かく設定することで、目的地におけるタンク状態42をより精度良く推定することができるが、その分計算負荷が高くなることから、必要な精度が得られる程度の細かさとするのが望ましい。基準点におけるタンク初期状態21は、基本的にはタンクや船体の各所に設置されたセンサ等により測定された実測値を用いる。
[0026]
 タンク状態計算1(ステップS01)では、熱力学に基づく所定の平衡計算(熱力学気液平衡モデル11)によって、対象区間の終点におけるタンク状態41を推定する。例えば、入力となる対象区間の始点におけるタンク状態(すなわち、タンク初期状態21もしくは対象区間の前区間の終点におけるタンク状態42)に対して、気温や日照、海水温等の定常的な入熱の情報を含む気象予報31を入力として、熱力学気液平衡モデル11によって、平衡後のタンク状態41を計算する。なお、気象予報31は、例えば、外部の気象情報サービスから自動もしくは手動で取得することができる。
[0027]
 熱力学気液平衡モデル11は、タンク内の状態を、液体のLNGと気体のBOGとの気液平衡状態であるとして、一般的な熱力学の状態方程式やラウールの法則等を用いた所定の計算式によりモデル化したものである。熱力学気液平衡モデル11による計算は比較的容易に行うことができる。
[0028]
 一方、タンク状態計算2(ステップS02)では、LNG船における特殊な要因、すなわち、船体(およびタンク)の動揺に伴うタンク内のLNGの動揺・撹拌がLNGの気化に与える化学的な影響、およびC/Dのオペレーション計画に従った、人為的なLNGのスプレーの影響を考慮した非線形モデル(非線形化学プロセスモデル12)によってタンク状態を推定する。ここでは、ステップS01の計算結果であるタンク状態41に対して、さらに、船体およびタンクの挙動・運動の情報を含む船体動揺32、およびC/Dのオペレーション計画であるC/D計画33を入力として、非線形化学プロセスモデル12によって、タンク内のLNGの動揺やC/DによるLNGのスプレーの影響を考慮したタンク状態42を計算する。
[0029]
 船体動揺32の情報は、例えば、ストリップ法等の公知のシミュレーション技術を利用して得ることができる。図1の例では、気象予報31や、図示しない船体やタンクの諸元の情報等を入力として、当該処理フロー中の船体動揺計算(ステップS11)によりシミュレーションを行って予測するものとしているが、外部で行われたシミュレーション結果を取得して入力する構成としてもよい。
[0030]
 C/D計画33の情報、すなわち、いつどの程度のLNGをスプレーするかの情報は、船長や航海士等から直接入力を受け付ける、もしくは予めファイル等に記録された情報を読み込んで取得する。船体およびタンクの挙動・運動がC/Dのオペレーションに影響を及ぼす場合があることから、C/D計画33の作成の際に、船体動揺32の情報を参照するようにしてもよい。
[0031]
 以上に説明したように、本発明の実施の形態1であるタンク状態推定方法によれば、図1に示した処理フローにより、LNG船において、比較的単純な熱力学気液平衡モデル11に基づいた計算によりタンク状態41を推定することができる。さらに、船体動揺32やC/D計画33等の情報を考慮した非線形化学プロセスモデル12に基づいた計算により、より精緻なタンク状態42を推定することができる。
[0032]
 なお、非線形化学プロセスモデル12は、タンク内のLNGの揺れ・撹拌に伴うLNGの化学反応レベルでの挙動の変化や、定常的ではなく間欠的に行われるC/Dの際のLNGのスプレーによる影響を計算式によりモデル化したものである。したがって、非線形化学プロセスモデル12は、タンク状態42を精緻に推測できる非線形の非常に複雑な計算モデルとなり、計算処理の負荷は比較的高くなるものと考えられる。
[0033]
 (実施の形態2)
 本発明の実施の形態2であるタンク状態推定方法では、船体動揺やC/Dの際のLNGのスプレーによる影響を、熱力学に基づく伝熱と気液二相流の計算モデルによってモデル化することで、線形計算によりタンク状態を取得可能とする。これにより、船体動揺やC/Dの際のLNGのスプレーによる影響を考慮しつつ、短時間・低負荷で必要十分な精度のタンク状態を計算することが可能となる。
[0034]
 <処理フロー>
 図2は、本発明の実施の形態2であるタンク状態を推定する処理の流れの例について概要を示したフロー図である。当該フローに係る処理についても、上述の実施の形態1の図1に示した処理フローの場合と同様に、全部もしくは一部をCPUとメモリを備える専用もしくは汎用のコンピュータに実行させるプログラムとして実装してもよいし、集積回路等により構成された装置等のハードウェアとして実装してもよい。
[0035]
 本実施の形態では、タンク状態の推定にあたり、図1の例と異なり、所定の入力情報に基づいて、タンク状態計算(ステップS21)の一段階の計算処理を行うことによって、ある時点におけるタンク状態43を推定する。そして、図1の例と同様に、例えば、航海計画における航路上の基準点におけるタンク初期状態21を入力とし、当該基準点を始点としたある区間の終点におけるタンク状態43を計算する。そして、このタンク状態43を次の(後続の)区間の始点における入力として、当該次の区間の終点におけるタンク状態43を計算する、という処理を、目的地に到達するまで繰り返すことで、目的地におけるタンク状態43を推定する。
[0036]
 タンク状態計算(ステップS21)では、熱力学に基づく所定の伝熱計算(伝熱・二相流計算モデル13)によってタンク状態43を推定する。例えば、入力となる対象区間の始点におけるタンク状態(すなわち、タンク初期状態21もしくは対象区間の前区間の終点におけるタンク状態43)、およびタンクの形状や鋼材寸法、タンク物性等の静的な情報を含むタンク諸元22の情報に対して、気象予報31、液体動揺34、およびC/D計画33の各情報を入力として、伝熱・二相流計算モデル13によってタンク状態43を計算する。なお、タンク諸元22の情報は、例えば、予め設定ファイル等に記録された情報を最初に一度読み込んで取得すれば、繰り返しの都度取得する必要はない。
[0037]
 液体動揺34の情報は、例えば、船体動揺32等の情報に基づいて、有限差分法等の公知のシミュレーション技術を利用して得ることができる。図2の例では、船体動揺32等の情報を入力として、当該処理フロー中の液体動揺計算(ステップS12)によりシミュレーションを行って予測するものとしているが、外部で行われたシミュレーション結果を取得して入力する構成としてもよい。船体動揺32の情報についても、実施の形態1の図1の例と同様に、当該処理フロー中の船体動揺計算(ステップS11)により予測するのに代えて、外部で行われたシミュレーション結果を取得する構成としてもよい。
[0038]
 <伝熱・二相流計算モデル>
 本実施の形態では、上述したように、船体動揺やC/Dの際のLNGのスプレーによる影響についても、熱力学に基づく伝熱計算により熱量の収支として取扱い、気象予報31から得られる定常的な入熱の情報と併せて、統一的にモデル化する。
[0039]
 図3は、本実施の形態における熱力学に基づく伝熱と二相流の計算モデル(伝熱・二相流計算モデル13)の概念の例を模式的に示した図である。図中では、LNG船においてLNGを収納するタンク60(図3の例では球形タンクとしている)の部分を、船首と船尾を結ぶ線に垂直な面での断面図により示している。
[0040]
 タンク60は、LNG65の極低温にも耐えられるアルミ合金や鋼材等により形成されたタンク本体61を有する。タンク本体61は、頂上に配管や出入口のためのタンクドーム62を有し、また、球形全体が断熱材としてのポリウレタンフォーム63により覆われている。そして、船体50の上部に露出した部分は金属等により形成されたタンクカバー64により覆われている。タンク本体61内は、ヒールとしてのLNG65と、LNG65が気化したBOG66および空気により満たされている。
[0041]
 船体50から独立した構造の球形のタンク本体61は、熱の侵入を少なくするため、船体50に対してスカート52等の構造によりタンク本体61の赤道付近のみが接する形で支持されており、船体50とタンク本体61との間の空間はカーゴホールド51となっている。C/Dのオペレーションが行われるのは、基本的には積地に向かうときの航海においてであり、図3の例では、タンク60内にはC/Dのために残しておいたヒールとしてのLNG65が収容されている一方、カーゴホールド51は空間であることを示している。
[0042]
 本実施の形態では、タンク60に与えられた入熱が、LNG65がBOG66に気化する際の潜熱として全て用いられるものと仮定する。すなわち、図3の例では、タンク60に与えられた入熱をQ in、気化に使われた熱量をQ evとすると、
  Q in=Q ev
であると仮定する。
[0043]
 ここで、Q inを構成すると考えられる熱量としては、例えば、日照による熱量(Q in1)、タンク60の各層の構造(タンク本体61やポリウレタンフォーム63、タンクカバー64等)から与えられる熱量(Q in2やQ in3等)、LNG65から与えられる熱量(Q conv1)、船体動揺に伴うLNG65の液体動揺・撹拌により与えられる熱量(Q moti)、およびC/Dの際のスプレーにより与えられる(奪われる)熱量(Q spray)等がある。
[0044]
 これらのうち、例えば、Q in1、Q in2、Q in3、Q conv1等については、タンク60や付近の各場所において実際に測定された温度(例えば、T air、T LNG、T vap、T 、T 、T 等)の差に基づいて計算することができる。さらに、本実施の形態では、液体動揺に伴うQ motiについても、温度差(例えば、T とT LNG)に基づいて計算するものとする。これにより、船体動揺(液体動揺)に伴うLNG65の相や組成等の変化を、熱量の移動量から求めることができる。
[0045]
 スプレーに伴うQ sprayについては、例えば、スプレーしたLNG65の質量流量に基づいて計算することができる。Q evについても同様に、例えば、BOG66の資料流量に基づいて計算することができる。
[0046]
 以上のような計算において、未知のパラメータはタンク本体61内の温度変化ΔTのみであることから、複雑な計算処理を要さずにこれを求めることができることが分かる。
[0047]
 以上に説明したように、本発明の実施の形態2であるタンク状態推定方法によれば、船体動揺やC/Dの際のLNGのスプレーによる影響を、熱力学に基づく伝熱計算によってモデル化することで、線形計算によりタンク状態43を計算することができる。これにより、船体動揺やC/Dの際のLNGのスプレーによる影響を考慮しつつ、短時間・低負荷で必要十分な精度でタンク状態43を推定することが可能である。
[0048]
 以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
[0049]
 また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。

産業上の利用可能性

[0050]
 本発明は、LNGを貨物として輸送するLNG船のタンクに適用されるタンク状態推定プログラムおよびタンク状態推定方法に利用可能である。

符号の説明

[0051]
11…熱力学気液平衡モデル、12…非線形化学プロセスモデル、13…伝熱・二相流計算モデル、
21…タンク初期状態、22…タンク諸元、
31…気象予報、32…船体動揺、33…C/D計画、
41、42、43…タンク状態、
50…船体、51…カーゴホールド、52…スカート、
60…タンク、61…タンク本体、62…タンクドーム、63…ポリウレタンフォーム、64…タンクカバー、65…LNG、66…BOG

請求の範囲

[請求項1]
 タンクに収容されたLNGを貨物とするLNG船の航路上の所定の時点における前記タンク内の状態を推定するタンク状態推定方法であって、
 前記タンクの諸元に係る情報を取得する第1工程と、
 前記航路上の対象の区間の始点における前記タンク内の状態に係る情報を取得する第2工程と、
 前記区間の気象予報値、および前記気象予報値の情報に基づいて求められた、前記区間における前記タンク内のLNGの液体動揺予測値の情報を取得する第3工程と、
 前記第1~第3工程で取得した情報に基づいて、熱力学に基づく伝熱計算によって、前記区間における前記タンクへの入熱が前記タンク内のLNGの気化に用いられたものとして、前記区間の終点における前記タンク内の状態を計算する第4工程と、を実行する、タンク状態推定方法。
[請求項2]
 請求項1に記載のタンク状態推定方法において、
 前記第2工程において取得する前記タンク内の状態に係る情報は、前記区間の始点における実測値、もしくは前記航路上における前記区間の前区間に対して前記第4工程において計算された、前記前区間の終点における計算値である、タンク状態推定方法。
[請求項3]
 請求項1に記載のタンク状態推定方法において、
 前記タンクの諸元に係る情報には、前記タンクの形状、寸法、および物性の情報の少なくとも1つ以上を含む、タンク状態推定方法。
[請求項4]
 請求項1に記載のタンク状態推定方法において、
 前記タンク内の状態に係る情報には、前記タンク内のLNGの組成に係る情報、前記タンク内の温度、および圧力の少なくとも1つ以上を含む、タンク状態推定方法。
[請求項5]
 請求項1に記載のタンク状態推定方法において、
 さらに、前記タンク内にLNGをスプレーして冷却するクールダウンの計画に係る情報を取得する第5工程を有し、
 前記第4工程では、前記第1~第3工程で取得した情報に加えて、前記第5工程で取得した情報に基づいて前記タンク内の状態を計算する、タンク状態推定方法。
[請求項6]
 請求項1に記載のタンク状態推定方法において、
 前記第3工程では、前記区間における前記気象予報値の情報に基づいて、前記区間における前記LNG船の船体動揺予測値を計算し、前記船体動揺予測値の情報に基づいて、前記区間における前記液体動揺予測値を計算する、タンク状態推定方法。
[請求項7]
 タンクに収容されたLNGを貨物とするLNG船の航路上の所定の時点における前記タンク内の状態を推定する処理をコンピュータに実行させるタンク状態推定プログラムであって、
 前記タンクの諸元に係る情報を取得する第1処理と、
 前記航路上の対象の区間の始点における前記タンク内の状態に係る情報を取得する第2処理と、
 前記区間の気象予報値、および前記気象予報値の情報に基づいて求められた、前記区間における前記タンク内のLNGの液体動揺予測値の情報を取得する第3処理と、
 前記第1~第3処理で取得した情報に基づいて、熱力学に基づく伝熱計算によって、前記区間における前記タンクへの入熱が前記タンク内のLNGの気化に用いられたものとして、前記区間の終点における前記タンク内の状態を計算する第4処理と、をコンピュータに実行させる、タンク状態推定プログラム。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]