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1. (WO2018186339) 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物および成形品
Document

明 細 書

発明の名称 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物および成形品

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008  

発明の効果

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109  

実施例

0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

明 細 書

発明の名称 : 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物および成形品

技術分野

[0001]
 本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品に関するものである。

背景技術

[0002]
 熱可塑性ポリエステル樹脂は、その優れた射出成形性や機械物性などの諸特性を生かし、機械機構部品、電気・電子部品および自動車部品などの幅広い分野に利用されている。しかしながら、熱可塑性ポリエステル樹脂は、加水分解により劣化しやすいため、機械機構部品、電気部品や電子部品および自動車部品などの工業用材料として使用するためには、一般の化学的および物理的諸特性のバランスに加えて、長期における耐加水分解性を有することが求められている。また、近年では、成形品の小型化とともに、薄肉化・軽量化に対する要求が高まっている。特にコネクターなどの薄肉成形品用途においては、溶融滞留時の粘度変化が大きい場合、成形時にバリやショートショットなど成形不具合が発生するため、溶融滞留時の粘度変化の少ない、滞留安定性に優れた材料が求められている。
[0003]
 熱可塑性ポリエステル樹脂に耐加水分解性を付与する方法としては、熱可塑性ポリエステル樹脂にエポキシ樹脂を配合する方法や、ヒンダードアミン化合物を配合する方法が知られている。かかる樹脂組成物として、これまでに、熱可塑性ポリエステル樹脂に、3個以上官能基を有する化合物、2種以上の反応性末端封鎖剤を配合してなる熱可塑性樹脂組成物(特許文献1)、ポリブチレンテレフタレート系樹脂に、グリシジル基含有共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、繊維強化材、エポキシ化合物を配合してなるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物(特許文献2)、特定のヒンダ-ドアミン化合物を配合してなるポリエステル樹脂組成物(特許文献3)が提案されている。
[0004]
 また、エポキシ化合物とヒンダードアミン化合物を含有する樹脂組成物として、5~200KOHmg/gの酸価を有するカルボキシル基含有樹脂にポリβ-メチルグリシジル化合物、立体障害アミンを配合してなる樹脂組成物(特許文献4)が提案されている。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2009-155478号公報
特許文献2 : 特開2014-196484号公報
特許文献3 : 特開平8-48860号公報
特許文献4 : 特開平11-228867号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 しかしながら、特許文献1~3に開示された技術においても、耐加水分解性は不十分であるという課題があった。また、特許文献4に開示された発明は、主として熱硬化組成物の耐候性の向上を課題とする発明であり、耐加水分解性および滞留安定性が不十分である課題があった。
[0007]
 本発明は、優れた機械物性および耐熱性を有し、さらに長期の耐加水分解性に優れ、270℃以上の高温で溶融加工した場合でも機械特性や耐加水分解性の低下が少ない成形品を得ることのできる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物およびその成形品を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明者らは、上記した課題を解決するために検討を重ねた結果、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂に、(B)エポキシ化合物および(C)ヒンダードアミン化合物を特定量配合することにより、上記した課題を解決できることを見出し、本発明に達した。すなわち本発明は、以下の構成を有する。
[1]カルボキシル基量が50eq/t以下である(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、(B)エポキシ化合物0.05~10重量部および(C)ヒンダードアミン化合物0.001~1重量部を配合してなる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[2]上記の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
[3]上記の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を溶融成形する、成形品の製造方法。

発明の効果

[0009]
 本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物によれば、優れた機械物性および耐熱性を有し、さらに長期の耐加水分解性に優れた成形品を得ることができる。また、270℃以上の高温で溶融加工した時でも、機械物性に優れ、耐加水分解性の低下が少ない成形品を得ることができる。

発明を実施するための形態

[0010]
 本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物について、詳細に説明する。
[0011]
 本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、(B)エポキシ化合物0.05~10重量部および(C)ヒンダードアミン化合物0.01~1重量部を配合してなる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。(A)熱可塑性ポリエステル樹脂は、射出成形性や機械物性に優れるものの、加水分解によりエステル結合が分解しやすく、その結果カルボキシル基濃度が増加する。カルボキシル基濃度の増加に伴い、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量低下が促進され、機械物性が低下する。本発明においては、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂とともに(B)エポキシ化合物を配合することにより、加水分解により生じる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のカルボキシル基と(B)エポキシ化合物のエポキシ基とが反応してカルボキシル基濃度の増加を抑制する。その結果、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の有する高い機械物性を維持することができる。
[0012]
 しかしながら、270℃以上という高温の溶融加工温度においては、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の熱分解によりカルボキシル基が急激に増加し、(B)エポキシ化合物のエポキシ基と増加したカルボキシル基が反応しきれず、機械物性と耐加水分解性が著しく低下する。薄肉成形時においては、流動性を上げるために成形加工温度を上げることが好ましいが、上記の理由により、270℃以上に成形加工温度を上げることが困難であった。本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂および(B)エポキシ化合物に加えて、(C)ヒンダードアミン化合物をさらに配合することにより、高温での加工時でも増加したカルボキシル基とエポキシ化合物との反応を促進することができる。さらに(B)エポキシ化合物と(C)ヒンダードアミン化合物とが反応することで(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量を増加させ、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の劣化を抑制することができる。このように、耐加水分解性をさらに向上させながら、高温での加工を可能とすることができる。
[0013]
 ここで、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、配合原料により発明を特定している。これは、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分および(C)成分が反応した反応物を含むが、当該反応物は複雑な反応により生成されたものであり、その構造を特定することは実際的でない事情が存在するためである。
[0014]
 (A)熱可塑性ポリエステル樹脂は、(1)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体、(2)ヒドロキシカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、および、(3)ラクトンからなる群より選択される少なくとも一種の残基を主構造単位とする重合体である。ここで、「主構造単位とする」とは、(1)~(3)からなる群より選択される少なくとも一種の残基を、全構造単位中の50モル%以上有することを指し、それらの残基を80モル%以上有することが好ましい態様である。これらの中でも、(1)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体の残基を主構造単位とする重合体が、機械物性や耐熱性により優れる点で好ましい。(A)熱可塑性ポリエステル樹脂は、共重合体であってもよい。
[0015]
 上記のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
[0016]
 また、上記のジオールまたはそのエステル形成性誘導体としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなどの炭素数2~20の脂肪族または脂環式グリコール;ポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの分子量200~100,000の長鎖グリコール;4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどの芳香族ジオキシ化合物およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
[0017]
 ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を構造単位とする重合体または共重合体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、ポリプロピレンテレフタレート/5-ナトリウムスルホイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/5-ナトリウムスルホイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/サクシネート、ポリプロピレンテレフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/セバケート、ポリブチレンテレフタレート/セバケート、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/セバケートなどの芳香族ポリエステル樹脂などが挙げられる。ここで、「/」は共重合体を表す。
[0018]
 これらの中でも、機械物性および耐熱性をより向上させる観点から、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体の残基と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体の残基を主構造単位とする重合体が好ましく、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体から選ばれた少なくとも1種の残基と、エチレングリコール、プロピレングリコール、および1,4-ブタンジオールまたはそれらのエステル形成性誘導体から選ばれた少なくとも1種の残基を主構造単位とする重合体がさらに好ましい。
[0019]
 中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレートおよびポリブチレンテレフタレート/ナフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂が特に好ましい。ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンナフタレートがより好ましく、成形性や結晶性に優れる点でポリブチレンテレフタレートがさらに好ましい。また、これらの2種以上を任意の含有量で混合して用いることもできる。
[0020]
 上記の(A)熱可塑性ポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸残基に対する、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体の残基の割合は、30モル%以上であることが好ましく、より好ましくは40モル%以上である。
[0021]
 (A)熱可塑性ポリエステル樹脂として、溶融時に異方性を形成し得る液晶性ポリエステル樹脂も用いることができる。液晶性ポリエステル樹脂の構造単位としては、例えば、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位および芳香族イミノオキシ単位などが挙げられる。
[0022]
 (A)熱可塑性ポリエステル樹脂のカルボキシル基量は、流動性、耐加水分解性および耐熱性の点で、50eq/t以下である。カルボキシル基量が50eq/tを越えると、カルボキシル基が酸触媒として作用するため耐加水分解性が大幅に低下する。さらに、エポキシ(B)と反応するカルボキシル基が多いため(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量の変化が大きくなり、滞留安定性が著しく悪化する。カルボキシル基量は、好ましくは40eq/t以下であり、より好ましくは30eq/t以下である。カルボキシル基量の下限値は、0eq/tである。ここで、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のカルボキシル基量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂をo-クレゾール/クロロホルム溶媒に溶解させた後、エタノール性水酸化カリウムで滴定し、測定した値である。
[0023]
 (A)熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械物性をより向上させる点で、重量平均分子量(Mw)が8,000以上であることが好ましい。また、重量平均分子量(Mw)が500,000以下の場合、流動性が向上できるため、好ましい。重量平均分子量(Mw)は、より好ましくは300,000以下であり、さらに好ましくは250,000以下である。本発明において、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
[0024]
 (A)熱可塑性ポリエステル樹脂は、公知の重縮合法や開環重合法などにより製造することができる。製造方法は、バッチ重合および連続重合のいずれでもよく、また、エステル交換反応および直接重合による反応のいずれでも適用することができるが、生産性の観点から、連続重合が好ましく、また、直接重合がより好ましく用いられる。
[0025]
 (A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体である場合には、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応することにより製造することができる。
[0026]
 エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に重合反応触媒を添加することが好ましい。重合反応触媒の具体例としては、チタン酸のメチルエステル、テトラ-n-プロピルエステル、テトラ-n-ブチルエステル、テトライソプロピルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ-tert-ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステルあるいはこれらの混合エステルなどの有機チタン化合物;ジブチルスズオキシド、メチルフェニルスズオキシド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキシド、シクロヘキサヘキシルジスズオキシド、ジドデシルスズオキシド、トリエチルスズハイドロオキシド、トリフェニルスズハイドロオキシド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキシド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などのアルキルスタンノン酸などのスズ化合物;ジルコニウムテトラ-n-ブトキシドなどのジルコニア化合物;三酸化アンチモンおよび酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
[0027]
 これらの重合反応触媒の中でも、有機チタン化合物およびスズ化合物が好ましく、チタン酸のテトラ-n-ブチルエステルがさらに好ましく用いられる。重合反応触媒の添加量は、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.01~0.2重量部の範囲が好ましい。
[0028]
 本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、カルボキシル基量が50eq/t以下である(A)熱可塑性ポリエステル樹脂に、(B)エポキシ化合物を配合してなることを特徴とする。前述のとおり、熱可塑性ポリエステル樹脂は、加水分解により劣化しやすい傾向にあるが、(B)エポキシ化合物を配合することにより、耐加水分解性を向上させることができる。
[0029]
 (B)エポキシ化合物は、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、特に限定されるものではないが、グリシジルエステル化合物、グリシジルエーテル化合物、エポキシ化脂肪酸エステル化合物、グリシジルイミド化合物、および脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。これらを2種以上併用してもよい。
[0030]
 グリシジルエステル化合物は、グリシジルエステル構造を有する化合物であり、具体的には、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、バーサティック酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、4-t-ブチル安息香酸グリシジルエステル、p-トルイル酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、ポリアクリル酸グリシジレートとその共重合体が挙げられる。
[0031]
 グリシジルエーテル化合物は、グリシジルエーテル構造を有する化合物であり、フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの縮合物、ノボラック型エポキシ、多価水酸基化合物のグリシジルエーテルなどが挙げられる。
[0032]
 フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの縮合物の具体例として、ビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、ビスフェノールS、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロアントラセン-9,10-ジオール、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、1,1-メチレンビス-2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,1,2,2-テトラキス-4-ヒドロキシフェニルエタン、カシューフェノール等のフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの縮合により得られる縮合物が挙げられる。
[0033]
 ノボラック型エポキシの具体例として、フェノールノボラック型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシ、ナフトールノボラック型エポキシ、ビスフェノールAノボラック型エポキシ、ジシクロペンタジエン-フェノール付加ノボラック型エポキシ、ジメチレンフェニレン-フェノール付加ノボラック型エポキシ、ジメチレンビフェニレン-フェノール付加ノボラック型エポキシなどが挙げられる。
[0034]
 多価水酸基化合物とは、水酸基を2個以上有する脂肪族化合物であり、具体的には炭素数2~20のグリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクトース、マルチトール、ラクチトール、イソマルト、イノシトール、グルコース、フルクトースなどが挙げられる。
[0035]
 エポキシ化脂肪酸エステル化合物とは、大豆油や亜麻仁油などの不飽和脂肪酸エステルの不飽和結合をエポキシ化した化合物であり、具体的にはエポキシ化脂肪酸オクチルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油などが挙げられる。
[0036]
 グリシジルイミド化合物の具体例としては、N-グリシジルフタルイミド、N-グリシジル-4-メチルフタルイミド、N-グリシジル-4,5-ジメチルフタルイミド、N-グリシジル-3-メチルフタルイミド、N-グリシジル-3,6-ジメチルフタルイミド、N-グリシジル-4-エトキシフタルイミド、N-グリシジル-4-クロルフタルイミド、N-グリシジル-4,5-ジクロルフタルイミド、N-グリシジル-3,4,5,6-テトラブロムフタルイミド、N-グリシジル-4-n-ブチル-5-ブロムフタルイミド、N-グリシジルサクシンイミド、N-グリシジルヘキサヒドロフタルイミド、N-グリシジル-1,2,3,6-テトラヒドロフタルイミド、N-グリシジルマレインイミド、N-グリシジル-α,β-ジメチルサクシンイミド、N-グリシジル-α-エチルサクシンイミド、N-グリシジル-α-プロピルサクシンイミド、イソシアヌル酸トリグリシジル、N-グリシジルベンズアミド、N-グリシジル-p-メチルベンズアミド、N-グリシジルナフトアミドまたはN-グリシジルステラミドなどが挙げられる。
[0037]
 脂環式エポキシ化合物の具体例としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、N-メチル-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸イミド、N-エチル-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸イミド、N-フェニル-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸イミド、N-ナフチル-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸イミドまたはN-トリル-3-メチル-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸イミドなどが挙げられる。
[0038]
 (B)エポキシ化合物は、エポキシ同士の反応を抑え、滞留安定性の悪化を抑制できることから、グリシジルエーテル化合物、エポキシ化脂肪酸エステル化合物、および脂環式エポキシ化合物から選択される少なくとも1つであることが好ましい。その中でもグリシジルエーテル化合物またはエポキシ化脂肪酸エステル化合物がより好ましく、耐加水分解性をより向上できることから、グリシジルエーテル化合物がさらに好ましい。また、グリシジルエーテル化合物の中でも、耐熱性を向上できることからノボラック型エポキシが好ましい。さらにノボラック型エポキシの中でも、滞留安定性をより向上できることからジシクロペンタジエン-フェノール付加ノボラック型エポキシが特に好ましい。
[0039]
 (B)エポキシ化合物として、ノボラック型エポキシと1分子あたりのエポキシ基数が2以下のエポキシ化合物を併用すると、高温での滞留安定性の悪化を抑制でき、さらに耐加水分解性を向上できる。
[0040]
 1分子あたりのエポキシ基数が2以下のエポキシ化合物としては、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、バーサティック酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、4-t-ブチル安息香酸グリシジルエステル、p-トルイル酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル;ビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、ビスフェノールS、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロアントラセン-9,10-ジオール、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、1,1-メチレンビス-2,7-ジヒドロキシナフタレン等のフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの縮合により得られる縮合物などが挙られる。その中でもビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合物が好ましい。
[0041]
 また、(B)エポキシ化合物としては、エポキシ当量が100~3000g/eqであるエポキシ化合物が好ましい。(B)エポキシ化合物のエポキシ当量が100g/eq以上の場合、溶融加工時のガス量を抑制できる。エポキシ当量は150g/eq以上がさらに好ましい。また、(B)エポキシ化合物のエポキシ当量が3000g/eq以下の場合、長期耐加水分解性および高温での溶融滞留安定性をより高いレベルで両立することができる。エポキシ当量は2000g/eq以下がさらに好ましい。
[0042]
 (B)エポキシ化合物の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、0.05~10重量部である。(B)成分の配合量が0.05重量部未満の場合、長期耐加水分解性が低下する。(B)成分の配合量は、より好ましくは0.1重量部以上であり、さらに好ましくは0.3重量部以上である。一方、(B)成分の配合量が10重量部を超えると、耐熱性が低下し、滞留安定性が悪化する。(B)成分の配合量は、より好ましくは8重量部以下であり、さらに好ましくは5重量部以下である。
[0043]
 また、(B)エポキシ化合物の配合量の好ましい範囲は、(B)エポキシ化合物のエポキシ当量に応じて設定することができる。例えば、配合量から計算した、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に配合する(A)熱可塑性ポリエステル樹脂由来のカルボキシル基の量に対する、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に配合する(B)エポキシ化合物由来のエポキシ基の量の比(エポキシ基配合量(eq/g)/カルボキシル基配合量(eq/g))は、0.5~8が好ましい。(エポキシ基配合量(eq/g)/カルボキシル基配合量(eq/g))が0.5以上の場合、長期耐加水分解性をより向上させることができる。該比率は、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。また、(エポキシ基配合量(eq/g)/カルボキシル基配合量(eq/g))が8以下の場合、滞留安定性、耐熱性および機械物性をより高いレベルで両立することができる。該比率は、7以下が好ましく、6以下がより好ましい。
[0044]
 なお、本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に配合する(A)熱可塑性ポリエステル樹脂由来のカルボキシル基の量は、(A)成分のカルボキシル基濃度と、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物全体における(A)成分の配合割合とから算出することができる。(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のカルボキシル基濃度は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂をo-クレゾール/クロロホルム(2/1,vol/vol)混合溶液に溶解させた溶液を、1%ブロモフェノールブルーを指示薬として、0.05mol/Lエタノール性水酸化カリウムで滴定することにより算出することができる。
[0045]
 本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂に、さらに(C)ヒンダードアミン化合物を配合してなることを特徴とする。前述のとおり、(C)ヒンダードアミン化合物を配合することにより、耐加水分解性をさらに向上させながら、高温での加工を可能とすることができる。ここで、一般的なアミン化合物を配合した場合は、アミンの求核性により下記一般式(2)で表されるように、エポキシ化合物の自己開環重合も促進してしまうことにより、滞留安定性が悪化してしまう。これに対し、ヒンダードアミン化合物を配合した場合は、その立体障害の強い構造により、エポキシ化合物の自己開環重合を抑制できる点で反応促進剤として優れている。
[0046]
[化1]


[0047]
 (C)ヒンダードアミン化合物は、下記構造式(3)で表される2,2,6,6-テトラメチルピペリジン誘導体を分子中に少なくとも一つ有する構造を持つ化合物である。
[0048]
[化2]


[0049]
 (C)ヒンダードアミン化合物の具体例としては、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アジペート、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)スベレート、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)フタレート、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)テレフタレート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)テレフタレート、N,N’-ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イソフタルアミド、N,N’-ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アジパミド、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ[5,1,11,2]ヘニコサン-21-オン、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-n-ブチル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-n-ブチル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、ブタンテトラカルボン酸のテトラ-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)エステル、1-[2-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物などが挙げられる。
[0050]
 (C)ヒンダードアミン化合物の中でも、活性水素を有し、塩基性の強い2級アミンであり、(B)エポキシ化合物とカルボキシル基との反応を促進できることから、一般式(1)で表される2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル構造のNH型ヒンダードアミンが好ましい。
[0051]
[化3]


[0052]
 (C)ヒンダードアミン化合物の配合量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、0.001~1重量部である。(C)ヒンダードアミン化合物の配合量が0.001重量部未満であると、耐加水分解性を向上させる効果が得られない。配合量は、より好ましくは0.01重量部以上であり、さらに好ましくは0.03重量部以上である。一方、(C)ヒンダードアミン化合物の配合量が1重量部を超えると、アミンの塩基性によりポリエステルの分解が顕著になり、滞留安定性が低下する傾向がある。配合量は、より好ましくは0.8重量部以下であり、さらに好ましくは0.5重量部以下である。
[0053]
 本発明において、従来の技術では達成できなかった耐加水分解性を達成できる第一の要因は、(B)エポキシ化合物および(C)ヒンダードアミン化合物を配合し、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂に元々存在するカルボキシル末端基を反応により減少させることである。その観点から、溶融混練後の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中におけるカルボキシル基濃度はできる限り低いことが好ましい。カルボキシル基濃度は、20eq/t以下が好ましく、15eq/t以下が特に好ましい。カルボキシル基濃度は、最も好ましくは0eq/tである。なお、本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中におけるカルボキシル基濃度とは、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ化合物および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物の合計量に対する、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂由来のカルボキシル基および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物由来のカルボキシル基の合計濃度を言うものとする。それ以外の成分は、計算からは除外する。なお、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ化合物および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物の合計量とは、すなわち(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の配合量と(B)エポキシ化合物の配合量とを合計したものである。熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中におけるカルボキシル基濃度は、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物をo-クレゾール/クロロホルム(2/1,vol/vol)混合溶液に溶解させた溶液を、1%ブロモフェノールブルーを指示薬として、0.05mol/Lエタノール性水酸化カリウムで滴定することにより求めたカルボキシル基濃度と、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の組成とから算出することができる。
[0054]
 従来の技術では達成できなかった耐加水分解性を達成できる第二の要因は、熱可塑性ポリエステル樹脂の加水分解により新たに生成するカルボキシル基をエポキシ基と反応させ、カルボキシル基の増加を抑制することである。その観点から、溶融混練後の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中のエポキシ基濃度は、5eq/t以上が好ましい。エポキシ基濃度は、10eq/t以上がさらに好ましく、20eq/t以上が特に好ましい。また、溶融混練後の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中のエポキシ基濃度が150eq/t以下の場合、長期耐加水分解性、高温での滞留安定性、および機械物性をより高いレベルで両立することができ好ましい。エポキシ基濃度は、130eq/t以下がより好ましい。
[0055]
 なお、本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中におけるエポキシ基濃度とは、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ化合物および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物の合計量に対する、(B)エポキシ化合物由来のエポキシ基および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物由来のエポキシ基の合計濃度を言うものとする。それ以外の成分は、計算からは除外する。なお、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ化合物および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物の合計量とは、すなわち(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の配合量と(B)エポキシ化合物の配合量を足したものである。
[0056]
 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中のエポキシ基濃度は、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物をo-クレゾール/クロロホルム(2/1,vol/vol)混合溶液に溶解させた後、酢酸および臭化トリエチルアンモニウム/酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸酢酸によって電位差滴定することにより求めたエポキシ基濃度と、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の組成とから算出することができる。
[0057]
 本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、さらに(C)ヒンダードアミン化合物以外の(D)反応促進剤を配合することが好ましい。(D)反応促進剤により、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のカルボキシル基と(B)エポキシ化合物のエポキシ基との反応をさらに促進させ、長期耐加水分解性を大きく改善することができる。
[0058]
 (D)反応促進剤は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のカルボキシル基と(B)エポキシ化合物のエポキシ基との反応を促進させるものであれば特に制限されることはない。例えば、(C)ヒンダードアミン化合物以外の第3級アミン、アミジン化合物、有機金属化合物、有機ホスフィンおよびその塩、イミダゾール、ホウ素化合物などが利用できる。これらを2種以上配合してもよい。なお、本発明においては、(D)反応促進剤のうち(C)ヒンダードアミン化合物にも該当するものは、(C)ヒンダードアミン化合物として扱う。
[0059]
 第3級アミンとしては、例えば、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノールと、トリ-2-エチルヘキシル酸との塩などが挙げられる。
[0060]
 アミジン化合物としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、5,6-ジブチルアミノ-1,8ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ(4,4,0)デセン-5などが挙げられる。また、前記のアミジン化合物は、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7・テトラフェニルボレートなどの無機酸あるいは有機酸との塩の形でも使用できる。
[0061]
 有機金属化合物としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウムなどのステアリン酸金属塩、アセチルアセトネートクロム、アセチルアセトネート亜鉛、アセチルアセトネートニッケル、トリエタノールアミンチタネート、オクチル酸スズなどが挙げられる。
[0062]
 有機ホスフィンおよびその塩としては、例えば、トリパラトリルホスフィン、トリス-4-メトキシフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレ-ト、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、トリフェニルホスフィン1,4-ベンゾキノン付加物などが挙げられる。
[0063]
 イミダゾールとしては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-アミノイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-アリルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2-フェニルイミダゾリウムイソシアヌレート、2,4-ジアミノ-6-[2-メチルイミダゾリル-(1)]エチルS-トリアジン、1,3-ジベンジル-2-メチルイミダゾリウムクロライド、1,3-ジアザ-2,4-シクロペンタジエン、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(シアノエトキシメチル)イミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2-ウンデシルイミダゾリル-(1)]エチル-S-トリアジンなどが挙げられる。
[0064]
 ホウ素化合物としては、例えば、三フッ化ホウ素-n-ヘキシルアミン、三フッ化ホウ素-モノエチルアミン、三フッ化ホウ素-ベンジルアミン、三フッ化ホウ素-ジエチルアミン、三フッ化ホウ素-ピペリジン、三フッ化ホウ素-トリエチルアミン、三フッ化ホウ素-アニリン、四フッ化ホウ素-n-ヘキシルアミン、四フッ化ホウ素-モノエチルアミン、四フッ化ホウ素-ベンジルアミン、四フッ化ホウ素-ジエチルアミン、四フッ化ホウ素-ピペリジン、四フッ化ホウ素-トリエチルアミン、四フッ化ホウ素-アニリンなどが挙げられる。
[0065]
 (D)反応促進剤としては、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のカルボキシル基と(B)エポキシ化合物の反応性をより促進させ、長期耐加水分解性をより向上できる点で、窒素またはリンを含有するものが好ましい。アミジン化合物、有機ホスフィンおよびその塩、イミダゾールなどがより好ましく、特に好ましくは有機ホスフィンおよびその塩である。
[0066]
 (D)反応促進剤の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、0.001~1重量部が好ましい。(D)成分の配合量が0.001重量部以上であれば、長期耐加水分解性をより向上させることができる。一方、(D)成分の配合量が1重量部以下であれば、機械物性を維持したまま長期耐加水分解性をより向上させることができる。
[0067]
 本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、さらに(E)繊維強化材を配合することが好ましい。(E)繊維強化材により、機械強度と耐熱性をより向上させることができる。
[0068]
 (E)繊維強化材の具体例としては、ガラス繊維、アラミド繊維、および炭素繊維などが挙げられる。
[0069]
 ガラス繊維としては、チョップドストランドタイプやロービングタイプのガラス繊維が挙げられる。アミノシラン化合物やエポキシシラン化合物などのシランカップリング剤で処理されたガラス繊維が好ましく用いられる。また、ウレタン、アクリル酸/スチレン共重合体などのアクリル酸からなる共重合体、アクリル酸メチル/メタクリル酸メチル/無水マレイン酸共重合体などの無水マレイン酸からなる共重合体、酢酸ビニル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルやノボラック系エポキシ化合物などの一種以上のエポキシ化合物などを含有した集束剤で処理されたガラス繊維が好ましく用いられる。無水マレイン酸からなる共重合体を含有した収束剤で処理されたガラス繊維が、耐加水分解性をより向上できることからさらに好ましい。シランカップリング剤および/または集束剤は、エマルジョン液に混合されて使用されていてもよい。
[0070]
 繊維強化材の繊維径は、1~30μmの範囲が好ましい。ガラス繊維の樹脂中の分散性の観点から、繊維径の下限値は好ましくは5μmである。機械強度の観点から、繊維径の上限値は好ましくは15μmである。また、繊維強化材の繊維断面は通常円形状であるが、任意の縦横比の楕円形ガラス繊維、扁平ガラス繊維、および、まゆ型形状ガラス繊維など任意な断面を持つ繊維強化材を用いることもでき、射出成形時の流動性向上と、ソリの少ない成形品が得られる特徴がある。
[0071]
 (E)繊維強化材の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、好ましくは、1~100重量部である。(E)繊維強化材を1重量部以上配合することにより、樹脂組成物の機械強度と耐熱性をより向上させることができる。配合量は、2重量部以上がより好ましく、3重量部以上がさらに好ましい。一方、(E)繊維強化材を100重量部以下配合することにより、樹脂組成物の機械強度と耐熱性をより向上させることができる。配合量は、95重量部以下がより好ましく、90重量部以下がさらに好ましい。
[0072]
 本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維強化材以外の強化材を配合することができる。例えば、針状、粒状、粉末状および層状の無機充填材を配合することで、成形品の結晶化特性、耐アーク性、異方性、機械強度、難燃性あるいは熱変形温度などの一部を改良することができる。
[0073]
 このような強化材の具体例としては、ガラスビーズ、ミルドファイバー、ガラスフレーク、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、ワラステナイト、シリカ、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの混合物、微粉ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、スメクタイト系粘土鉱物(モンモリロナイト、ヘクトライト)、バーミキュライト、マイカ、フッ素テニオライト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウム、およびドロマイトなどが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。ミルドファイバー、ガラスフレーク、カオリン、タルクおよびマイカから選ばれる強化材を用いた場合は、異方性の低減に効果があるためソリの少ない成形品が得られる。また、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの混合物、微粉ケイ酸、ケイ酸アルミニウムおよび酸化ケイ素から選ばれる強化材を(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、0.01~1重量部の範囲で配合した場合は、滞留安定性をより向上させることができる。
[0074]
 上記の繊維強化材以外の強化材には、カップリング剤処理、エポキシ化合物による処理、あるいはイオン化処理などの表面処理が行われていてもよい。また、粒状、粉末状および層状の無機充填材の平均粒径は、衝撃強度の点から0.1~20μmであることが好ましい。平均粒径は、無機充填材の樹脂中での分散性の観点から、0.2μm以上であることが好ましく、機械強度の観点から10μm以下であることが好ましい。
[0075]
 繊維強化材以外の無機充填材の配合量は、成形時の流動性と成形機や金型の耐久性の点から、繊維強化材の配合量との合計が、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、100重量部以下が好ましい。繊維強化材以外の無機充填材の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、好ましくは1~50重量部である。繊維強化材以外の無機充填材の配合量が1重量部以上であれば、異方性を低減させ、滞留安定性をより向上させることができる。配合量は、2重量部以上がより好ましく、3重量部以上がさらに好ましい。一方、繊維強化材以外の無機充填材の配合量が50重量部以下であれば、機械強度を向上させることができる。
[0076]
 本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤および帯電防止剤などの任意の添加剤を1種以上配合してもよい。
[0077]
 本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、リン系安定剤を配合してもよい。リン系安定剤を配合することにより、(B)エポキシ化合物同士の架橋反応を抑制し、270℃以上の高温時において滞留安定性をさらに向上することができる。
[0078]
 リン系安定剤とは、下記構造式(4)で表される構造、すなわち、非共有電子対を有するリン原子に、2個以上の酸素原子が結合している構造を含む化合物である。かかる構造を有することにより、ノボラック型エポキシ樹脂由来の着色原因であるフェノキシラジカルやキノンに配位し、分解もしくは無色化することができる。なお、一般的なリン化合物において、リン原子の原子価が5であることから、非共有電子対を有するリン原子へ結合可能な酸素原子の上限は3個である。
[0079]
[化4]


[0080]
 リン系安定剤としては、非共有電子対を有するリン原子へ2個の酸素原子が結合している構造を含む化合物としてホスフォナイト化合物、非共有電子対を有するリン原子へ3個の酸素原子がリン原子と結合している構造を含む化合物としてホスファイト化合物などを挙げることができる。
[0081]
 ホスフォナイト化合物としては、例えば、フェニル亜ホスホン酸や4,4’-ビフェニレンジ亜ホスホン酸などの亜ホスホン酸化合物と、炭素数4~25の脂肪族アルコールおよび/または2,6-ジ-t-ブチルフェノールや2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェノールなどのフェノール化合物との縮合物が挙げられる。具体的には、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-フェニルホスフォナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスフォナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスフォナイトなどが挙げられる。
[0082]
 なかでも、リン系安定剤の耐熱安定性の観点から、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスフォナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスフォナイトが好ましい。
[0083]
 ホスファイト化合物としては、例えば、亜リン酸と、炭素数4~25の脂肪族アルコール、グリセロールやペンタエリスリトールなどの多価アルコールおよび/または2,6-ジ-t-ブチルフェノールや2,4-ジ-t-ブチルフェノールなどのフェノール化合物との縮合物が挙げられる。具体的には、トリイソデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス[2-(1,1-ジメチルプロピル)-フェニル]ホスファイト、トリス[2,4-(1,1-ジメチルプロピル)-フェニル]ホスファイトなどのトリス(アルキルアリール)ホスファイト(ただし、この場合のアルキル基は炭素数3~6の分岐アルキル基である);ビス(2-t-ブチルフェニル)フェニルホスファイト、トリス(2-シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(2-t-ブチル-4-フェニル)ホスファイト、ビス(オクチル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのビス(アルキルアリール)ペンタエリスリトールジホスファイト(ただし、この場合のアルキル基は炭素数3~9のアルキル基である)などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
[0084]
 なかでも、リン系安定剤の耐熱安定性の観点から、ビス(アルキルアリール)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
[0085]
 リン系安定剤の配合量は、(B)エポキシ化合物の種類や配合量によって調整することができるが、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、0.01~1重量部が好ましい。リン系安定剤の配合量を0.01重量部以上とすることにより、色調を向上させることができる。配合量は、より好ましくは0.05重量部以上である。一方、リン系安定剤の配合量を1重量部以下とすることにより、長期耐加水分解性および機械物性をより向上させることができる。配合量は、0.5重量部以下がより好ましい。
[0086]
 本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、(A)成分以外の熱可塑性樹脂を配合してもよく、成形性、寸法精度、成形収縮および靭性などを向上させることができる。(A)成分以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、芳香族または脂肪族ポリケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、ポリウレタン樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリエーテルイミド樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などを挙げることができる。オレフィン系樹脂の具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブテン-1/無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。また、ビニル系樹脂の具体例としては、メチルメタクリレート/スチレン樹脂(MS樹脂)、メタクリル酸メチル/アクリロニトリル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS樹脂)、スチレン/ブタジエン樹脂、スチレン/N-フェニルマレイミド樹脂、スチレン/アクリロニトリル/N-フェニルマレイミド樹脂などのビニル系(共)重合体;アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/メタクリル酸メチル/スチレン樹脂(MABS樹脂)、ハイインパクト-ポリスチレン樹脂等のゴム質重合体で変性されたスチレン系樹脂;スチレン/ブタジエン/スチレン樹脂、スチレン/イソプレン/スチレン樹脂、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレン樹脂などのブロック共重合体;さらにコアシェルゴムとして、ジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル重合体(コア層)とメタクリル酸メチル重合体(シェル層)多層構造体、ジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル重合体(コア層)とアクリロニトリル/スチレン共重合体(シェル層)多層構造体、ブタンジエン/スチレン重合体(コア層)とメタクリル酸メチル重合体(シェル層)の多層構造体、ブタンジエン/スチレン重合体(コア層)とアクリロニトリル/スチレン共重合体(シェル層)の多層構造体などが挙げられる。
[0087]
 なかでも、樹脂組成物の靭性および耐加水分解性を向上できる点から、耐加水分解性の高いオレフィン系樹脂を添加することが好ましい。
[0088]
 オレフィン系樹脂の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、0.1~30重量部が好ましい。配合量が0.1重量部以上であれば、靭性および耐加水分解性がより向上する。配合量は0.5重量部以上がより好ましく、さらに好ましくは1重量部以上である。一方、配合量が30重量部以下であれば、機械物性がより向上する。配合量は20重量部以下がより好ましく、さらに好ましくは10重量部以下である。
[0089]
 本発明の樹脂組成物には、3つまたは4つの官能基を有し、アルキレンオキシド単位を1つ以上含む多価アルコール化合物(以下、「多価アルコール化合物」と記載する場合がある)を配合することができる。かかる化合物を配合することにより、射出成形など成形加工時の流動性を向上させることができる。多価アルコール化合物は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよい。また、官能基としては、水酸基、アルデヒド基、カルボン酸基、スルホ基、アミノ基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基、シリルエーテル基などが挙げられる。これらの中から同一あるいは異なる3つまたは4つの官能基を有することが好ましく、特に流動性、機械物性、耐久性、耐熱性および生産性をより向上させる点で、同一の官能基を3つまたは4つ有することがさらに好ましい。
[0090]
 アルキレンオキシド単位の好ましい例として、炭素原子数1~4である脂肪族アルキレンオキシド単位が挙げられる。具体例としては、メチレンオキシド単位、エチレンオキシド単位、トリメチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、テトラメチレンオキシド単位、1,2-ブチレンオキシド単位、2,3-ブチレンオキシド単位、イソブチレンオキシド単位などを挙げることができる。
[0091]
 流動性、リサイクル性、耐久性、耐熱性および機械物性により優れるという点で、アルキレンオキシド単位としてエチレンオキシド単位またはプロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用することが好ましい。また、長期耐加水分解性および靭性(引張破断伸度)により優れるという点で、プロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用することが特に好ましい。アルキレンオキシド単位数については、流動性により優れるという点で、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数が0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは1以上である。一方、機械物性により優れるという点で、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数が20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下である。
[0092]
 また、多価アルコール化合物は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と反応し、(A)成分の主鎖および/または側鎖に導入されていてもよく、(A)成分と反応せずに、樹脂組成物中で配合前の構造を保っていてもよい。
[0093]
 多価アルコール化合物の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、0.01~3重量部が好ましい。配合量は、流動性の観点から、0.1重量部以上であることがより好ましく、機械強度の観点から1.5重量部以下がより好ましい。
[0094]
 本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、難燃剤を配合することができる。難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、臭素系難燃剤などのハロゲン系難燃剤、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌル酸との塩、シリコーン系難燃剤および無機系難燃剤などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
[0095]
 難燃剤の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、1~50重量部が好ましい。配合量は、難燃性の観点から、5重量部以上がより好ましく、耐熱性の観点から40重量部以下がより好ましい。
[0096]
 本発明の樹脂組成物には、離型剤を配合することができ、溶融加工時に金型からの離型性をよくすることができる。離型剤としては、モンタン酸やステアリン酸などの高級脂肪酸エステル系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、エチレンビスステアロアマイド系ワックスなどが挙げられる。
[0097]
 離型剤の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、0.01~1重量部が好ましい。配合量は、離型性の観点から、0.03重量部以上がより好ましく、耐熱性の観点から0.6重量部以下がより好ましい。
[0098]
 本発明の樹脂組成物には、さらに、カーボンブラック、酸化チタンおよび種々の色の顔料や染料を1種以上配合することにより、種々の色に調色したり、耐候(光)性および導電性を改良することも可能である。カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、アントラセンブラック、油煙、松煙、および、黒鉛などが挙げられる。カーボンブラックは、平均粒径が500nm以下、ジブチルフタレート吸油量が50~400cm /100gであるものが好ましく用いられる。酸化チタンとしては、ルチル形あるいはアナターゼ形などの結晶形を持ち、平均粒径5μm以下の酸化チタンが好ましく用いられる。
[0099]
 これらカーボンブラック、酸化チタンおよび種々の色の顔料や染料は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、およびシランカップリング剤などで表面処理されていてもよい。また、樹脂組成物中における分散性向上や製造時のハンドリング性の向上のため、種々の熱可塑性樹脂と溶融ブレンドあるいは単にブレンドした混合材料として用いてもよい。
[0100]
 顔料や染料の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、0.01~3重量部が好ましい。配合量は、着色ムラ防止の観点から、0.03重量部以上がより好ましく、機械強度の観点から1重量部以下がより好ましい。
[0101]
 本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、例えば、前記(A)成分~(C)成分および必要に応じてその他の成分を溶融混練することにより得ることができる。
[0102]
 溶融混練の方法としては、例えば、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ化合物、(C)ヒンダードアミン化合物、必要に応じて(D)反応促進剤、および各種添加剤などを予備混合して、溶融混練機に供給して溶融混練する方法、あるいは、重量フィダーなどの定量フィダーを用いて各成分を所定量溶融混練機に供給して溶融混練する方法などが挙げられる。溶融混練機としては、例えば“ユニメルト”あるいは“ダルメージ”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機、コニカル押出機およびニーダータイプの混練機などを用いることができる。
[0103]
 上記の予備混合の例として、ドライブレンドする方法や、タンブラー、リボンミキサーおよびヘンシェルミキサー等の機械的な混合装置を用いて混合する方法などが挙げられる。また、二軸押出機などの多軸押出機を用いて混練する場合、(E)繊維強化材や繊維強化材以外の無機充填材は、元込め部とベント部の途中にサイドフィーダーを設置して添加してもよい。また、液体の添加剤の場合は、二軸押出機などの多軸押出機の元込め部とベント部の途中に液添ノズルを設置してプランジャーポンプを用いて添加する方法や、元込め部などから定量ポンプで供給する方法などを用いてもよい。
[0104]
 本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、ペレット化して、成形加工に供することが好ましい。ペレット化の方法として、溶融混練機などを用いて溶融混練された熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を、ストランド状に吐出し、ストランドカッターでカッティングする方法が挙げられる。
[0105]
 本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を溶融成形することにより、フィルム、繊維およびその他各種形状の成形品を得ることができる。溶融成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形およびブロー成形などが挙げられ、射出成形が特に好ましく用いられる。
[0106]
 射出成形の方法としては、通常の射出成形方法以外にもガスアシスト成形、2色成形、サンドイッチ成形、インモールド成形、インサート成形およびインジェクションプレス成形などが知られているが、いずれの成形方法も適用できる。
[0107]
 また、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、270℃~300℃の高温で溶融成形した場合であっても、機械特性や耐加水分解性の低下が少ないという優れた特性を有する。高温で成形することにより、樹脂組成物の流動性をさらに向上でき、より薄肉で精密な成形品に加工することができる。
[0108]
 本発明の成形品は、長期の耐加水分解性や引張強度や伸びなどの機械物性および耐熱性に優れる特徴を活かして、機械機構部品、電気部品、電子部品および自動車部品から選ばれる成形品として好適に用いることができる。本発明の成形品は、長期の耐加水分解性に優れることから、特に外装部品に有用である。
[0109]
 機械機構部品、電気部品、電子部品および自動車部品の具体的な例としては、ブレーカー、電磁開閉器、フォーカスケース、フライバックトランス、複写機やプリンターの定着機用成形品、一般家庭電化製品、OA機器などのハウジング、バリコンケース部品、各種端子板、変成器、プリント配線板、ハウジング、端子ブロック、コイルボビン、コネクター、リレー、ディスクドライブシャーシー、トランス、スイッチ部品、コンセント部品、モーター部品、ソケット、プラグ、コンデンサー、各種ケース類、抵抗器、金属端子や導線が組み込まれる電気・電子部品、コンピューター関連部品、音響部品などの音声部品、照明部品、電信機器関連部品、電話機器関連部品、エアコン部品、VTRやテレビなどの家電部品、複写機用部品、ファクシミリ用部品、光学機器用部品、自動車点火装置部品、自動車用コネクター、および各種自動車用電装部品などが挙げられる。
実施例
[0110]
 次に、実施例により本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物について具体的に説明する。実施例および比較例に用いられる原料を次に示す。ここで%および部とは、すべて重量%および重量部を表し、下記の樹脂名中の「/」は共重合を意味する。
[0111]
 (A)熱可塑性ポリエステル樹脂
<A-1>ポリブチレンテレフタレート樹脂:東レ(株)製、カルボキシル基量30eq/t(酸価1.7KOHmg/g)のポリブチレンテレフタレート樹脂
<A-2>ポリエチレンテレフタレート樹脂:東レ(株)製、カルボキシル基量40eq/t(酸価2.2KOHmg/g)のポリエチレンテレフタレート樹脂
<A’-3>飽和ポリエステル樹脂:日本ユピカ(株)製、カルボキシル基量55eq/t(酸価3.1KOHmg/g)の“ユピカコート”(登録商標)GV130。
[0112]
 (B)エポキシ化合物
<B-1>エポキシ当量147g/eqのジグリシジルテレフタレート:ナガセケムテックス(株)製“デナコール”(登録商標)EX711
<B-2>エポキシ当量190g/eqのビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合物:三菱化学(株)製“jER(登録商標)819”
<B-3>エポキシ当量211g/eqのクレゾールノボラック型エポキシ:日本化薬(株)製“EOCN-102S”
<B-4>エポキシ当量253g/eqのジシクロペンタジエン-フェノール付加ノボラック型エポキシ:日本化薬(株)製“XD-1000”
<B-5>エポキシ当量290g/eqのジメチレンビフェニレン-フェノール付加ノボラック型エポキシ:日本化薬(株)製“NC-3000H”
<B-6>エポキシ当量232g/eqのエポキシ化大豆油:(株)ADEKA製“アデカサイザー”(登録商標)O-130P
<B-7>エポキシ当量109g/eqのイソシアヌル酸トリグリシジル:日産化学(株)製“TEPIC(登録商標)-S”
<B-8>エポキシ当量135g/eqの3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート:(株)ダイセル製“セロキサイド”(登録商標)2021P。
[0113]
 (C)ヒンダードアミン化合物
<C-1>テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート:(株)ADEKA製の“アデカスタブ”(登録商標)LA52
<C-2>ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)テレフタレート:(株)ADEKA製の“アデカスタブ”(登録商標)LA57
<C-3>N,N’-ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イソフタルアミド:クラリアントケミカル(株)製の“Nylostab S-EED”(登録商標)
<C-4>ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート:ケミプロ化成(株)製の“KEMISTAB”(登録商標)77。
[0114]
 (D)反応促進剤
<D-1>アミジン化合物:1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、サンアプロ(株)製“DBU”(登録商標)、分子量152.2
<D-2>イミダゾール:2-エチル-4-メチルイミダゾール、四国化成(株)製2E4MZ、分子量110.2
<D-3>有機ホスフィンおよびその塩:テトラフェニルホスホニウムブロマイド、東京化成工業(株)製テトラフェニルホスホニウムブロマイド(試薬)、分子量419.3。
[0115]
 (E)繊維強化材
<E-1>エポキシ化合物を含有する集束剤により処理されたガラス繊維:日本電気硝子(株)製ガラス繊維ECS03T-187、断面の直径13μm、繊維長3mm
<E-2>無水マレイン酸からなる共重合体を含有する集束剤により処理されたガラス繊維:日本電気硝子(株)製ECS03T-253、断面の直径13μm、繊維長3mm。
[0116]
 (F)その他添加剤
<F-1>ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト:(株)ADEKA製“アデカスタブ”(登録商標)PEP36。
[0117]
 [各特性の測定方法]
 各実施例および比較例においては、次に記載する測定方法によって、その特性を評価した。
[0118]
 1.熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中の(A)成分に由来するカルボキシル基配合量
 (A)熱可塑性ポリエステル樹脂をo-クレゾール/クロロホルム(2/1,vol/vol)混合溶液に溶解させた溶液を、1%ブロモフェノールブルーを指示薬として、0.05mol/Lエタノール性水酸化カリウムで滴定し、下記式によりカルボキシル基濃度を算出した。なお、滴定の終点は、青色(色調D55-80(2007年Dpockettype日本塗料工業会))とした。
カルボキシル基濃度[eq/g]={((A)成分を溶解させたo-クレゾール/クロロホルム(2/1,vol/vol)混合溶液の滴定に要した0.05mol/Lエタノール性水酸化カリウムの量[ml]-(A)成分を含まないo-クレゾール/クロロホルム(2/1,vol/vol)混合溶液の滴定に要した0.05mol/Lエタノール性水酸化カリウムの量[ml])×0.05mol/Lエタノール性水酸化カリウムの濃度[mol/ml]×1}/滴定に用いた(A)成分の採取量[g]。
[0119]
 前述の滴定により算出した(A)成分のカルボキシル基濃度と、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中の(A)成分の配合量から、下記式により熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中における(A)由来のカルボキシル基配合量を算出した。
熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中における(A)由来のカルボキシル基配合量[eq/g]=((A)成分のカルボキシル基濃度[eq/g]×(A)成分の配合量[重量部])/熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の全体量[重量部]。
[0120]
 2.(B)成分に由来するエポキシ基配合量
 JISK7236:2001に従い、(B)エポキシ化合物をクロロホルムに溶解させた溶液に、酢酸および臭化トリエチルアンモニウム/酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸酢酸によって電位差滴定し、下記式によりエポキシ基濃度を算出した。
エポキシ基濃度[eq/g]=((B)成分をクロロホルムに溶解させた後、酢酸および臭化トリエチルアンモニウム/酢酸溶液を加えた溶液の滴定に要した0.1mol/L過塩素酸酢酸[ml]-クロロホルムに酢酸および臭化トリエチルアンモニウム/酢酸溶液のみを加えた溶液の滴定に要した0.1mol/L過塩素酸酢酸[ml])×0.1mol/L過塩素酸酢酸の濃度[mol/ml]×1/滴定に用いた(B)成分の採取量[g])。
[0121]
 前述の電位差滴定により算出した(B)成分のエポキシ基濃度と、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中の(B)成分の配合量から、下記式により熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中における(B)由来のエポキシ基配合量を算出した。
熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中における(B)由来のエポキシ基配合量[eq/g]=((B)成分のエポキシ基濃度[eq/g]×(B)成分の配合量[重量部])/熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の全体量[重量部]。
[0122]
 3.機械物性(引張強度および引張伸度)
 東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、金型温度80℃の温度条件で、射出時間と保圧時間は合わせて10秒、冷却時間10秒の成形サイクル条件で、試験片厚み1/8インチ(約3.2mm)のASTM1号ダンベルの引張物性評価用試験片を得た。(A)成分としてポリブチレンテレフタレート樹脂を使用した場合は、成形温度を250℃、270℃、および290℃の3通りの温度条件とした。また、(A)成分としてポリエチレンテレフタレート樹脂を使用した場合、成形温度を270℃および290℃の2通りの温度条件とした。得られた引張物性評価用試験片を用い、ASTMD638(2005年)に従い、引張最大点強度(引張強度)および引張最大点伸び(引張伸度)を測定した。値は3本の測定値の平均値とした。引張強度の値が大きい材料を機械強度に優れていると判断し、引張伸度の値が大きい材料を靭性に優れていると判断した。
[0123]
 4.耐熱性(熱変形温度)
 東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、(A)成分としてポリブチレンテレフタレート樹脂を使用した場合、上記3.項の成形温度が250℃での引張物性と同一の射出成形条件で、厚み1/8インチ(約3.2mm)、縦127mm幅13mmの熱変形温度評価用試験片を得た。また、(A)成分としてポリエチレンテレフタレート樹脂を使用した場合、成形温度を270℃の温度条件とした。得られた熱変形温度評価用試験片を用い、ASTMD648(2005年)に従い、測定荷重1.82MPaの条件で熱変形温度を測定した。値は3本の測定値の平均値とした。熱変形温度が50℃未満の材料は耐熱性に劣ると判断し、熱変形温度の数字が大きい材料ほど耐熱性に優れると判断した。
[0124]
 5.長期耐加水分解性(引張強度保持率)
 東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、上記3.項の引張物性と同一の射出成形条件で、試験片厚み1/8インチ(約3.2mm)のASTM1号ダンベルの引張物性評価用試験片を得た。得られたASTM1号ダンベルを121℃×100%RHの温度と湿度に設定されたエスペック(株)社製高度加速寿命試験装置EHS-411に投入し、96時間(4日間)、湿熱処理を行った。湿熱処理後の成形品について、上記3.項の引張試験と同一の条件で引張最大点強度を測定し、3本の測定値の平均値を求めた。湿熱処理後の試験片の引張最大点強度と湿熱処理未処理の試験片の引張最大点強度から、下記式により引張強度保持率を求めた。
引張強度保持率(%)=(湿熱処理後の引張最大点強度÷湿熱処理前の引張最大点強度)×100
 引張強度保持率が50%未満の材料は耐加水分解性に劣ると判断し、引張強度保持率の数字が大きい材料ほど耐加水分解性に優れていると判断した。
[0125]
 6.滞留安定性(溶融粘度指数の変化率)
 東洋精機(株)製C501DOSを用いて、温度270℃、荷重325gの条件で、ASTM D1238(1999年)に準じて熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の溶融粘度指数(メルトフローインデックス)を測定した。
[0126]
 さらに、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物をシリンダ内で30分間滞留させた後、同条件で溶融粘度指数を測定し、溶融粘度指数の変化率(%)を下記式により求めた。
溶融粘度指数の変化率(%)=((30分間滞留後の溶融粘度指数)-(滞留前の溶融粘度指数))÷(滞留前の溶融粘度指数)×100
ここで算出される変化率(%)は絶対値であり正の値で算出した。溶融粘度指数の変化率が50%を超える場合は滞留安定性に劣ると判断し、差が小さいほど滞留安定性に優れると判断した。
[0127]
 7.色調(黄色度(YI))
 東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、(A)成分としてポリブチレンテレフタレート樹脂を使用した場合、上記3.項の成形温度が250℃での引張物性と同一の射出成形条件で、試験片厚み1/8インチ(約3.2mm)のASTM1号ダンベルの色調評価用試験片を得た。また、(A)成分としてポリエチレンテレフタレート樹脂を使用した場合、成形温度を270℃の温度条件とした。得られたASTM1号ダンベルについて、日本電色工業製スペクトルカラーメーターSE2000にて色調を測定し、黄色度(YI値)を算出した。黄色度(YI値)が30を超える場合は色調が劣ると判断し、黄色度(YI値)が小さい材料ほど色調が優れていると判断した。
[0128]
 8.カルボキシル基濃度(樹脂組成物中のカルボキシル基濃度)
 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中における、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ化合物および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物の合計量に対する、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂由来のカルボキシル基および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物由来のカルボキシル基の合計濃度は、樹脂組成物2gをo-クレゾール/クロロホルム(2/1,vol/vol)混合溶液50mLに溶解させた溶液を、1%ブロモフェノールブルーを指示薬として、0.05mol/Lエタノール性水酸化カリウムで滴定し、組成物中のカルボキシル基濃度を算出した後に、組成物中の各成分の組成比に基づいて算出した。
[0129]
 9.エポキシ基濃度
 熱可塑性ポリエステル組成物中における、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ化合物および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物の合計量に対する、(B)エポキシ化合物由来のエポキシ基および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物由来のエポキシ基の合計濃度は、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物2gをo-クレゾール/クロロホルム(2/1,vol/vol)30mL混合溶液に溶解させた後、酢酸20mLおよび臭化トリエチルアンモニウム/酢酸20wt%溶液10mLを加え、0.1mol/L過塩素酸酢酸によって電位差滴定し、組成物中のエポキシ基濃度を算出した後に、組成物中の各成分の組成比に基づいて算出した。
[0130]
 10.ブリードアウト
 東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、(A)成分としてポリブチレンテレフタレート樹脂を使用した場合、上記3.項の成形温度が250℃での引張物性と同一の射出成形条件で、試験片厚み1/8インチ(約3.2mm)のASTM1号ダンベルのブリードアウト評価用試験片を得た。また、(A)成分としてポリエチレンテレフタレート樹脂を使用した場合、成形温度を270℃の温度条件とした。得られたASTM1号ダンベルを121℃×100%RHの温度と湿度に設定されたエスペック(株)社製高度加速寿命試験装置EHS-411に96時間(4日間)投入し湿熱処理を行った。湿熱処理後の成形品外観を目視観察し、次の基準によりブリードアウトの判定を行った。
A:成形品に液状もしくは白粉状のブリードアウトが観察されない。
B:成形品の一部もしくは随所に液状または白粉状のブリードアウトが観察される。
[0131]
 [実施例1~26]、[比較例1~6]
 スクリュー径30mm、L/D35の同方向回転ベント付き二軸押出機(日本製鋼所製、TEX-30α)を用いて、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ化合物、(C)ヒンダードアミン化合物、必要に応じて(D)反応促進剤、およびその他材料を表1~表4に示した組成で混合し、二軸押出機の元込め部から添加した。なお、(E)繊維強化材は、元込め部とベント部の途中にサイドフィーダーを設置して添加した。混練温度260℃、スクリュー回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、得られた樹脂組成物をストランド状に吐出し、冷却バスを通して固化させた後、ストランドカッターによりペレット化した。
[0132]
 得られたペレットを110℃の温度の熱風乾燥機で6時間乾燥後、前記方法で評価した。表1~表4にその結果を示した。熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中における、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ化合物および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物の合計量に対する、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂由来のカルボキシル基および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物由来のカルボキシル基の合計濃度を、表中において「樹脂組成物中のカルボキシル基濃度」として表記した。また、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中における、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)エポキシ化合物および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物の合計量に対する、(B)エポキシ化合物由来のエポキシ基と(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物に由来するエポキシ基の合計濃度を、表中において「樹脂組成物中のエポキシ基濃度」として表記した。
[0133]
[表1]


[0134]
[表2]


[0135]
[表3]


[0136]
[表4]


[0137]
 実施例1~21と比較例1~8の比較より、カルボキシル基量が50eq/t以下の(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して(B)成分の配合量および(C)成分の配合量が特定の範囲にあることにより、機械物性、耐加水分解性、耐熱性、270℃での滞留安定性および高温成形時の特性に優れる材料が得られることが分かった。
[0138]
 実施例2~7、9と実施例1、8の比較より、(B)エポキシ化合物としてグリシジルエーテル化合物およびエポキシ化脂肪酸エステル化合物、脂環式エポキシ化合物を用いた場合、より耐加水分解性と高温成形時の特性に優れる材料が得られることが分かった。
[0139]
 実施例11、19、20と実施例3の比較により(C)ヒンダードアミン化合物としてNH型ヒンダードアミンを用いることで、より耐加水分解性と高温成形時の特性に優れる材料が得られることが分かった。
[0140]
 実施例22、23、24と実施例11の比較により、(D)反応促進剤を0.001~1重量部配合した場合に、機械物性と長期耐加水分解性、270℃での滞留安定性および高温成形時の特性に、より優れる材料が得られることが分かった。
[0141]
 実施例25、26と実施例11の比較により、(E)繊維強化材を1~100重量部配合した場合に、機械物性と耐熱性、長期耐加水分解性、270℃での滞留安定性および高温成形時の特性に、より優れる材料が得られることが分かった。
[0142]
 実施例11と実施例21および比較例1の比較より、(A)成分としてポリブチレンテレフタレート樹脂を使用した場合、他のポリエステル樹脂を使用した場合と比較して、機械強度と長期耐加水分解性に優れる材料を得られることが分かった。

請求の範囲

[請求項1]
カルボキシル基量が50eq/t以下である(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、(B)エポキシ化合物0.05~10重量部および(C)ヒンダードアミン化合物0.001~1重量部を配合してなる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[請求項2]
熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中における、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物の合計量に対する、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂由来のカルボキシル基および(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)エポキシ化合物との反応物由来のカルボキシル基の合計濃度が20eq/t以下である請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[請求項3]
前記(B)エポキシ化合物が、グリシジルエーテル化合物、エポキシ化脂肪酸エステル化合物、および脂環式エポキシ化合物の中から選ばれる少なくとも一つである請求項1または2に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[請求項4]
前記(C)ヒンダードアミン化合物が、一般式(1)で表される構造を有するNH型ヒンダードアミンである請求項1~3のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[化1]


[請求項5]
さらに(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、前記(C)ヒンダードアミン化合物以外の(D)反応促進剤0.001~1.0重量部を配合してなる請求項1~4のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[請求項6]
さらに(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、(E)繊維強化材1~100重量部を配合してなる請求項1~5のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[請求項7]
前記(A)熱可塑性ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂である請求項1~6のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル組成物。
[請求項8]
請求項1~7のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
[請求項9]
請求項1~7のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を溶融成形する、成形品の製造方法。