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1. (WO2018186267) 親水化着色セルロース微粒子
Document

明 細 書

発明の名称 親水化着色セルロース微粒子

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008  

課題を解決するための手段

0009   0010  

発明の効果

0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047  

実施例

0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105  

産業上の利用可能性

0106  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : 親水化着色セルロース微粒子

技術分野

[0001]
 本発明は、微粒子表面に、親水層を有し、かつ、スペーサーを介してカルボキシル基が導入されている着色セルロース微粒子、並びにそれを用いた診断薬キット及びインビトロ診断薬に関する。

背景技術

[0002]
 近年、医療分野や食品分野において、簡便かつ迅速に疾患や病原菌等の有無が判断できる技術が望まれている。これらのニーズに応えるべく様々な技術が開発されている。現在ではインフルエンザなどの病原体感染の有無、妊娠の有無、癌マーカーや心筋マーカーの有無、食品中のアレルギー物質や食中毒の原因となる物質の有無など様々な検査を簡便かつ迅速に行うことが可能となってきている。これらの技術としては、イムノクロマト測定法、蛍光イムノクロマト測定法、酵素免疫測定法、ラテックス凝集測定法、化学発光測定法など多くの測定方法が開発されている。その中でも、目視で判断できるイムノクロマト測定法は、特別な装置や専門的な知識が不要であり、誰でも簡便に迅速な診断が可能であるという特徴から、幅広く使用されている。例えば、イムノクロマト測定法の一種である妊娠検査薬などは、一般薬局で入手可能なほど、消費者にとって汎用性の高いものとなっている。
[0003]
 イムノクロマト測定法(以下、「イムノクロマト」という)は、抗原抗体反応を利用したものであり、サンドウィッチ法や競合法という方法がある。測定方法は、検出物をメンブレンに対して水平方向に展開させるラテラルフロー式と、垂直方向に展開させるフロースルー式に大別される。簡便性の観点から、ラテラルフロー式でサンドウィッチ法を用いて、抗原を抗体で捕捉する方法が多く使用されている。測定手順は以下のようなものである:
(i)ニトロセルロース等のメンブレンに、検出対象となる抗原等と反応する抗体を特定部位(テストライン)に固定化する;
(ii)発色粒子と呼ばれる標識物質に、検出対象と反応する抗体を担持した検出試薬を作製し、コンジュゲートパット上に塗布後乾燥させ、前記メンブレン、サンプルパット、吸収パットを組み合わせてイムノクロマトキットを作製する;
(iii)抗原の有無を検査したい検体を混合した展開液をサンプルパット上に滴下し、テストライン(TL)の発色の有無を目視(あるいは簡易的なイムノクロマトリーダー)で観察し、抗原の有無を判断する。検体中に抗原がある場合、テストラインに線が発色する。
 一般的に、目視で判定する場合の多くは、検出対象となる抗原の有無のみを判断する定性分析として使用されている。
[0004]
 イムノクロマトに使用される発色粒子として、例えば、以下の特許文献1には、金コロイドが、そして以下の特許文献2には、着色ラテックスが開示されている。これらの発色粒子の問題点は、微粒子表面が疎水性のため、タンパク質などの生体分子が吸着する非特異吸着という現象を引き起こしてしまうことである。非特異吸着がおこると、イムノクロマトにおいて最大の問題の一つである偽陽性が発生するおそれがある。偽陽性とは、検体中に検出対象が存在しないにも拘らず、テストラインに線が発色することを指す。偽陽性が発生すると誤診につながるため、イムノクロマトキットを市販する場合、偽陽性を発生させないことが必要不可欠である。偽陽性の発生メカニズムの一つとして、発色粒子に非特異吸着した物質を介して、テストラインに塗布した抗体に発色粒子が吸着してしまうと考えられている。そこで以下の特許文献3には、疎水性の金コロイド表面に親水性のポリエチレングリコール(PEG)を結合させる手法により、非特異吸着が抑制され、偽陽性を低減することが開示されている。しかしながら、この方法では、微粒子表面のPEG鎖の立体構造によって抗体抗原反応が阻害され、検出感度が低下するおそれがある。このように一般的に、偽陽性の低減対策を行うと検出感度が低下してしまうケースが多くみられる。
[0005]
 かかる状況下、以下の特許文献4には、着色セルロース微粒子と抗体を化学的に結合させることで非常に高い検出感度を達成したことが開示されている。この微粒子はセルロース由来のものであるのため、金コロイドなどと比べると、表面は若干親水性になっているものの、未だ疎水性であるため、非特異吸着が起こる可能性があり、これまでの発色粒子と同様に偽陽性の発生リスクは未だある。
[0006]
 以上のように、高い検出感度を維持しながら、偽陽性を低減する技術を提供する必要は未だあり、その一つとして、抗体抗原反応を阻害せず、非特異吸着を大幅に抑制することができる発色粒子の開発が強く望まれている。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 国際公開第2015/163384A1号
特許文献2 : 特開2009-168495号公報
特許文献3 : 国際公開第2013/141122A1号
特許文献4 : 国際公開第2011/062157A1号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 前記した従来技術の現状に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、高い検出感度を維持しながら、偽陽性が大幅に低減可能な発色粒子を提供することである。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、微粒子表面に、親水層を付与し、かつ、スペーサーを介してカルボキシル基を導入することで、タンパク質などの生体分子の非特異吸着を驚くべきほど低減したセルロース微粒子が得られることを見出し、これを発色粒子として使用したイムノクロマトが、高い検出感度を維持しながら偽陽性を大幅に低減することができることを確認し、本発明を完成するに至ったものである。
[0010]
 すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
 [1]平均粒子径が60~900nmであり、発色強度が1.0~10.0であり、微粒子表面に、親水層を有し、かつ、スペーサーを介してカルボキシル基が導入されていることを特徴とする発色セルロース微粒子。
 [2]前記カルボキシル基の導入量が、前記発色セルロース微粒子1g当たり0.20~3.00mmolである、前記[1]に記載の発色セルロース微粒子。
 [3]前記親水層が、シラン層、ポリエチレングリコール層(PEG)、又はシラン層とポリエチレングリコール(PEG)層の混合層のいずれかである、前記[1]又は[2]に記載の発色セルロース微粒子。
 [4]前記スペーサーが、炭化水素系の構造体である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の発色セルロース微粒子。
 [5]前記[1]~[4]のいずれかに記載の発色セルロース微粒子の前記カルボキシル基にリガンドが共有結合されている構造体。
 [6]前記[5]に記載の構造体を含むイムノクロマト診断キット。

発明の効果

[0011]
 本発明に係る着色セルロース微粒子は、生体分子の非特異吸着が低減されているため、これをイムノクロマトの発色粒子として使用すれば、高い検出感度を維持しながら偽陽性を大幅に低減することができる。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 親水化度を求めるための、緩和時間の変化割合(Rsp値)と微粒子の総表面積値(TSA値)をプロットしたグラフである。
[図2] ムノクロマト診断キットの測定におけるテストライン(TL)の発色強度(0-10の11段階の目視グレード)を示す写真である。

発明を実施するための形態

[0013]
 本発明者らは、着色セルロース微粒子に所定の親水層と、所定のスペーサーを組み合わせることで、予想外に驚くべきことに偽陽性の大幅な低減効果と、高い検出感度の維持が可能であることを見出した。
 特許文献4に開示されているように、粒子径が大きく、かつ、色が濃い着色セルロース微粒子と抗体を化学結合させることで、検出感度が向上することは判明している。しかしながら、かかる微粒子表面の親水性は不十分であるため、タンパク質などの生体分子が非特異吸着しやすく、イムノクロマトに使用した際に偽陽性が発生するおそれがある。そこで展開液に界面活性剤などの添加剤を加えるなどの偽陽性低減対策を行うが、同時に感度も低下させてしまう。本発明者らは、微粒子そのものが非特異吸着しにくくなり、かつ、抗体を多量に微粒子表面に導入可能にすることで、高い検出感度を維持しつつ、偽陽性が低減可能になるのではないかと考えた。かかる仮説の下、実験を重ねた結果、着色セルロース微粒子表面に、親水層を付与し、かつ、炭化水素系のスペーサーを介して多量にカルボキシル基を導入し、微粒子表面へのタンパク質などの生体分子の非特異吸着を低減させながら、多量の抗体を微粒子に導入することを可能ならしめることによって、偽陽性の大幅な低減を達成しながら、高い検出感度は維持可能であることを見出した。
[0014]
 特許文献3に開示されているように、微粒子表面に親水層を付与することで偽陽性が低減可能なことは判明している。他方、一般的に炭化水素系の化合物は、偽陽性の原因となるタンパク質などの生体分子が吸着しやすいと言われている。かかる状況下、本発明者らは、親水層付与に加えて、炭化水素系の疎水性スペーサーを組み合わせることで大幅に偽陽性低減が可能であることを予想外に見出した。特定の理論に拘束されることは望まないが、本発明者らは、炭化水素系のスペーサーが親水層に反発して微粒子表面に立った状態となり、かつ、スペーサー同士の疎水性相互作用によって微粒子表面に密に導入されるため、偽陽性の原因となるタンパク質などの生体分子が微粒子表面に入る込む隙間がなくなり、非特異吸着が抑制されると、換言すれば、線状の炭化水素系スペーサーの側面は、該スペーサー同士が略平行して微粒子表面に並んで配置されているため、その側面には偽陽性の原因となるタンパク質が吸着することはできないものの、スペーサーの先端にあるカルボキシル基には、抗体が共有結合することができるため、偽陽性の大幅な低減に成功したと、考えている。
[0015]
 以下、実施形態について詳細に説明する。
 本実施形態の着色セルロース微粒子は、平均粒子径が60~900nmであり、発色強度が1.0~10.0であり、微粒子表面に、親水層を有し、かつ、スペーサーを介してカルボキシル基が導入されていることを特徴とする。
 用語「平均粒子径」とは、動的光散乱法で測定した場合の体積平均メジアン径を指す。本実施形態では、平均粒子径は60~900nmの範囲にある。平均粒子径がこの範囲にあると、微粒子の表面積が大きいためにイムノクロマトとして用いる場合にテストラインがより濃くなる、すなわち検出感度が高くなる。平均粒子径が60nm未満であると、表面積が小さくなるため、微粒子一個あたりの発色強度が低下するため、検出感度が下がる場合があり、また、微粒子の凝集が起こる場合もある。以上の点から粒子径の下限は、好ましくは70nm、より好ましくは80nmである。他方、微粒子径が900nmより大きくなるとメンブレンの孔に詰まってしまうため、診断時間が長くなってしまったり、検査後にメンブレン表面が着色し検査結果の判断に悪影響を及ぼしたり、検出感度が悪くなったりする場合がある。以上の点から粒子径の上限は、好ましくは800nm、より好ましくは700nmである。尚、ここで述べている平均粒子径はあくまで平均値であり、粒子径分布の一部が上記範囲から外れていても構わない。
[0016]
 粒子径として、体積平均を用いる理由は、イムノクロマトにおいては、あまりに大きな微粒子はメンブレン中に詰まってしまうが、体積平均であれば、大きい微粒子ほど影響が大きくなるので、大きい粒子が僅かに存在するだけでもその影響が反映されるためである。粒子径としては、体積平均以外にも、数平均、面積平均など様々な表し方がある。当然ながら表し方が異なると粒子径の値も変わってくる。
[0017]
 用語「発色強度」とは、反応性基導入後、抗体結合前の微粒子の色の濃さを定義した値であり、本実施形態では、1.0~10.0の範囲にある。この値が大きいほど微粒子の色の濃さが濃く、イムノクロマトとして用いる場合に検出感度が高い。もちろん値が大きければ大きいほどよく、色の濃い染料を利用する、染色回数を増やす、スペーサーとして何らかの化合物を介して連結させる、微粒子の非晶領域を増やし染料が入り込みやすくする、微粒子を多孔性にして染料が入り込みやすくする、などの方法を採用することができる。しかしながら、経済性を考慮すると上限は、好ましくは7.0、より好ましくは5.0である。また、値が小さいほどイムノクロマトとして用いた場合に検出感度が低下するため、下限は、好ましくは1.5、より好ましくは2.0である。
[0018]
 発色強度の測定方法は、濃度既知の微粒子の純水分散液を調製し、光路長10mmとして、400~800nmの範囲で積分球を用いた可視吸光度測定を行い、得られた吸光度曲線のピーク値(ABS)を測定し、得られた値を発色粒子の重量パーセントで割り返し、発色粒子0.01wt%辺りの吸光度に換算した値として定義する。例えば、調製した微粒子の濃度が0.0045wt%であり、吸光度曲線のピーク値が1.0であるとき、その発色強度は(1×0.01)÷0.0045=2.2となる。
[0019]
 微粒子の色の濃さの測定に積分球を用いた可視吸光度測定を行う理由は、液体に分散した状態の微粒子の色の濃さを最も正確に測定できるためである。微粒子の色の濃さを測る方法としては、微粒子を乾燥させて得られた固体を測色計などで測定する方法もあるが、このような方法では微粒子の色の濃さを正確に測定できない。例えば、金属コロイドなどは粒子径に応じて色調や最大波長が異なり、乾燥した凝集状態は液体に分散した状態の色の濃さを正確に反映できない。また、液体中に同じ粒子濃度で分散させても凝集が発生すると色の濃さは薄くなる。更に、可視吸光度測定を行う際に積分球を用いる理由は、粒子自体の散乱による影響を除去するためである。通常の可視吸光度測定は透過光を測定する方法であり、入射光に対し着色成分による吸収だけでなく微粒子自体の散乱による影響も反映されてしまう。例えば、イムノクロマトに一般的に使われる金コロイドは、粒子径が40nm~60nm、時には100nmのものが用いられる場合もあるがいずれも粒子径が小さいため散乱光の影響はほとんどない。それに反し、ラテックス粒子は粒子径が大きく明らかに散乱光の影響が大きい。上記のような理由から、粒子径や粒子素材が違う場合であっても、微粒子自体の色の濃さをより正確に反映するために、積分球を用いた可視吸光度測定を使用する。
[0020]
 用語「親水層」とは、文字通り親水性の高い構造体で構成された層のことであり、微粒子の水酸基と化学的に結合している層である。この親水層の構造は特に限定されるものではなくシラン層、ポリエチレングリコール(PEG)層、ホスホリルコリン層などを用いることができる。場合によっては、前記層のうちの2つの層の混合体でもよい。例えば、シラン層とPEG層が1:1の割合で含まれた層を形成することも可能である。ここでいう、シラン層とはSi基を含む構造体が粒子の水酸基と結合してできた層のことである。同様に、PEG層、ホスホリルコリン層もそれぞれ、PEG基、ホスホリルコリン基を含む構造体が粒子の水酸基と結合してできた層のことである。その後の反応剤との結合性という点では、親水層を形成する構造体の1つにはアミノ基が含まれていることが好ましい。親水層が形成されたか否かは、赤外分光法、顕微鏡観察、元素分析などにより判断する。
 尚、本明細書中、「スペーサー」は、「親水層」中の反応基と結合する点で、「親水層」とは相違する。
[0021]
 親水層を付与するための親水化剤としては、特に限定されるものではないが、具体例としては以下のものが挙げられる:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトエリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリルーN-(1,3-ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、N-フェニルー3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネーとプロピルトリメトキシシラン、ポリエチレングリコールトリメトキシシラン、ポリエチレングリコールトリエトキシシラン、アミノ-PEG12-プロピオン酸、アミノ-PEG8-プロピオン酸、アミノ-PEG4-プロピオン酸、ポリ(エチレングリコール)2-アミノエチル酢酸、FMOC-PEG 5k-スクシンイミドブタネート、HO-PEG 5k-NHS、O-〔2-(Fmoc-アミノ)―エチル〕―O’-2-カルボエチル)ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールビスアミン、1-O-オクタデシル-2-O-メチル-sn-グリセロ-3-ホスホリルコリン。この中で好ましくは、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、アミノ-PEG12-プロピオン酸、アミノ-PEG8-プロピオン酸、アミノ-PEG4-プロピオン酸、ポリ(エチレングリコール)2-アミノエチル酢酸、ポリエチレングリコールビスアミンであり、より好ましくはN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルーブチリデン)プロピルアミンである。
[0022]
 アミノ基を有する親水層を用いる場合、カルボキシル基を導入した後の残存反応性アミノ基量は、着色セルロース微粒子1gあたり0.20mmol未満であることが望ましい。この範囲にあることで、疎水性物質の吸着を抑制できるだけでなく、イオン性物質、水素結合性物質の吸着も抑制可能であるため、飛躍的に生体分子の吸着量を減少させることができる。カルボキシル基を導入した後の残存反応性アミノ基量は、着色セルロース微粒子1gあたり0.20mmol以上では特に水素結合による吸着が増大するため、偽陽性の低減効果が小さくなってしまう。以上の点から、残存反応性アミノ基量の上限は好ましくは0.15mmol、より好ましくは0.10mmolである。
[0023]
 残存反応性アミノ基量の測定方法としては、蛍光測定を用いる。アミノ基と反応した場合のみ発光する蛍光試薬を使用する。まず、アミノ基量が既知のサンプルで、アミノ基量と発光強度の関係について検量線を作成する。その後、蛍光試薬を微粒子に反応させる。その微粒子の蛍光強度を測定し、発光強度を得る。得られた発光強度を検量線に代入して、アミノ基量を算出する。
[0024]
 親水層の親水化の程度を表す指標として、「親水化度」を定義する。本明細書中、「親水化度」とは、微粒子表面の濡れやすさ、すなわち水との親和性を表す指標である。親水化度はパルスNMR法により測定する。パルスNMR法は、微粒子分散液にラジオ波を照射して水分子のプロトンを励起させた後、基底状態に戻るまでの時間(緩和時間)を測定する分析手法である。微粒子表面に吸着している水分子は運動性が制限されるため緩和時間が短く、バルク水分子(微粒子表面と吸着していない水分子)は運動性に制限が少なく自由に運動できるため緩和時間が長い。したがって、パルスNMR法により得られる微粒子分散液の緩和時間は、微粒子表面に吸着している水分子とバルク水分子の比率により変化する。すなわち、微粒子表面の親水性が高いほど、より多くの水分子を吸着できるため緩和時間は短くなる。
[0025]
 パルスNMRの測定には、ブルカー社製のMinispec mq20装置を用いる。濃度1%(wt/vol)の微粒子分散液を撹拌後、0.5mLを外径10mmのガラス製NMR管に移し、30℃に設定されたパルスNMR装置に設置し、各種パラメータを以下の通りに設定し測定する。
  ・観測核:
  ・測定する緩和時間:横緩和時間T2(ms)
  ・測定モード:CPMG法
  ・積算回数:32回
  ・Recycle Delay:10(s)
  ・90°-180°Pulse Separation(τ):2(ms)
  ・Total Number of Acquired Echoes:2000点。
[0026]
 得られた磁化減衰曲線(磁化強度の経時変化を示す曲線)を、Microsoft Excelの指数近似機能を用いて最小二乗法により下記式(1):
    M(t)=M ・exp(-t/T2)・・・式(1)
{式中、M(t):ある時間tにおける信号強度、M :信号強度の初期値、T2:緩和時間。}にフィッティングした。
 測定した緩和時間から親水化度を算出するためには、縦軸に緩和時間の変化割合(Rsp値)を、横軸に微粒子の総表面積値(TSA値)をプロットしたグラフを用意し、最小二乗法により近似直線を作成し、その傾きを親水化度と定義する。
   ・Rsp値の計算方法
        Rsp値=Rav÷Rb-1
          {式中、Rav:平均緩和時定数(試料の緩和時間逆数)、Rb:バルク水分子の緩和時定数(ブランク水の緩和時間逆数)。}、
 ・TSA値(m )の計算方法
        TSA値=SA×V×Ψ ×ρ
      {式中、SA:微粒子の比表面積(m /g)=6÷(ρ×d)、ここで、ρ:微粒子密度(g/cm )(微粒子密度:1.4g/cm 、ラテックス粒子密度:1.0g/cm 、金コロイド粒子密度:19.3g/cm )、d:微粒子直径(μm)、V:ラジオ波が照射される部分のNMR管体積(cm )(≒試料量)、Ψ :微粒子体積比、ここで、微粒子体積(i)=微粒子濃度(wt%)÷100÷微粒子密度、水の体積(ii)=(1-微粒子体積(i))÷水の密度(0.997g/cm )、Ψ (微粒子体積比)=、微粒子体積(i)÷水の体積(ii)、ρ:同上。}。
 例えば、図1に示すように、A微粒子(TSA値0.5、Rsp値10)とB微粒子(TSA値1、Rsp値5)の数値をグラフにプロットし、最小二乗法により各々の近似直線を作成する。A微粒子の場合はY=20x、B微粒子の場合はY=5xとなる。近似直線の傾き(親水化度)が大きい方、すなわちA微粒子の方を親水化度が大きいと判定する。
[0027]
 本実施形態においては、親水化度は30.0~200.0の範囲であることが好ましい。親水化度がこの範囲にあると、粒子表面が親水的なために、メンブレン中を移動しやすくなることに加え、微粒子表面へのタンパク質などの吸着量が低減する。その結果、イムノクロマトに使用した際に偽陽性が低減する。それに加えて驚くべきことに、この範囲にある微粒子は親水層が保護層として機能するため、カルボキシル基の導入の際に発色強度の低下を起こしにくくなる。そのため、過酷な反応条件に耐えうる微粒子となるので、カルボキシル基の導入量を多量にすることが可能となる。その結果、抗体も多量に微粒子に担持できるため、高い検出感度を維持した微粒子となりうる。親水化度が30.0未満であると微粒子表面は疎水的となるため、微粒子表面にタンパク質などが吸着してしまい、偽陽性が発生しやすくなってしまう。加えてメンブレン中での流れが悪くなり、診断時間も長くなってしまう。また、30.0未満であるとカルボキシル基導入反応を行う際に微粒子の発色強度の低下がおこりやすくなるので、検出感度が低下してしまう。以上の点から、親水化度の下限は、より好ましくは35.0、さらに好ましくは40.0である。他方、親水化度が200.0より大きくなると、水素結合が支配的になるためにタンパク質などの生体分子の吸着量が増加し、偽陽性が発生するおそれがあるため、親水化度の上限はより好ましくは190.0、さらに好ましくは180.0である。
[0028]
 用語「スペーサー」とは、「親水層」を介して、微粒子とカルボキシル基をつなぐ化学基のことである。本実施形態においては、「スペーサー」は「親水層」の反応性基と結合する一方で、「親水層」は、微粒子の水酸基と結合する。例えば、微粒子に結合したシラン層を介して18-ブロモステアリン酸を反応させた場合、親水層はシラン層、スペーサーは(CH 17となる。スペーサーの構造は特に限定されるものではなく、アルキル基、アルケン基、アルカン基、およびベンゼン環といった炭化水素系などの疎水性の構造体を用いることができる。炭素数についても特に限定されるものではないが、粒子表面の電気二重層の影響を受けず感度向上が期待できるという点では、3以上が好ましい。一般的には親水性の構造体が生体分子の吸着抑制に効果的であるため、微粒子表面が疎水的な金コロイド、ラテックス粒子、シリカ粒子などはPEGなどの親水性のスペーサーがよく使用される。例えば、長崎らは、金表面に長さの異なるPEG鎖を導入することで、非特異吸着を大幅に低減できることを報告している(長崎ら、高分子 61巻2号 2012年参照)。炭化水素系などの疎水性のスペーサーでは疎水性相互作用により、微粒子表面にスペーサーが吸着してしまうと考えられているからである。そのため、カルボキシル基と抗体との反応性が悪くなり、抗体が微粒子に必要量固定できず、検出感度が低下するおそれがある。また、一般的に疎水性の構造体はタンパク質などと疎水性相互作用をしやすい。つまりスペーサーに使用するとタンパク質などの生体分子が吸着してしまい、偽陽性が発生する可能性が高い。これに反し、本発明らは、かかる常識を覆し、微粒子表面の親水層と炭化水素系などの疎水性のスペーサーを組み合わせることで、驚くべきことに偽陽性の原因となる生体分子の吸着量を大幅に低減することに成功し、検出感度を維持しながら、偽陽性が大幅に低減できることを確認した。スペーサーが親水性であると、微粒子表面に親水層が存在するため、親水層と水素結合などの相互作用がおこると考えられる。そのため、スペーサーが親水層に吸着してしまい、抗体が微粒子に必要量固定化できずに検出感度が低下することに加え、生体分子の吸着量も低減できず、偽陽性の抑制も達成できなかった。他方、炭化水素系などの疎水性のスペーサーを用いた実施形態では、スペーサーが親水層へ吸着しないばかりでなく、スペーサー同士が疎水性相互作用により綺麗に整列し、微粒子上に隙間なくしっかり導入されるため、生体分子が微粒子表面やスペーサーに近づく隙間がなくなり、吸着量が大幅に低減でき、偽陽性も大幅に低減できたと考えられる。
 例えば、以下の表1に示すように、PEG鎖を用いた実施例15の偽陽性発生率が1%であるのに対し、疎水性スペーサーを用いた実施例2の偽陽性発生率は0%であり、PEG鎖を用いた実施例17の偽陽性発生率が1%であるのに対し、疎水性スペーサーを用いた実施例1の偽陽性発生率は0%であり、PEG鎖を用いた実施例18の偽陽性発生率が2%であるのに対し、疎水性スペーサーを用いた実施例16の偽陽性発生率は1%であり、そしてPEG鎖を用いた実施例20の偽陽性発生率が2%であるのに対し、疎水性スペーサーを用いた実施例19の偽陽性発生率は1%である。
[0029]
 スペーサーの同定方法には、赤外分光法、元素分析、核磁気共鳴法(NMR)、質量分析(MS)法などを用いることができる。例えば、カルボキシル基が導入された微粒子に強酸又は強塩基を高温で反応させ、スペーサー部を微粒子から脱離させる。その後、遠心分離などにより微粒子を分離し、上澄み液をNMRやMS測定することでスペーサーの構造を同定することができる。
[0030]
 用語「カルボキシル基の導入量」とは、着色セルロース微粒子1gあたりに導入されたカルボキシル基の量のことである。かかる導入量は0.20~3.00mmol/gであることが好ましい。この範囲にあることで、抗体やブロッキング剤に用いるタンパク質などが微粒子と化学的に強固にかつ多量に結合可能となるため、高感度化と偽陽性低減の両立が可能となる。導入量が0.20mmol/g未満では抗体などのタンパク質の結合量が十分でないため、添加剤を加えるなどの偽陽性低減対策を行うと、検出感度が低下するおそれがある。さらに、0.20mmol/g未満では、導入されたカルボキシル基同士の距離が遠いため、抗体などと反応しなかったカルボキシル基は分子内ではなく分子間の水素結合を誘発しやすくなる。つまりタンパク質などが水素結合を介して吸着し、偽陽性が発生するおそれがある。そのため、カルボキシル基の導入量の下限は好ましくは0.25mmol/g、より好ましくは0.30mmol/gである。他方、導入量が3.00mmol/gを超えると粒子1個あたりの重量が重くなるため、微粒子1個あたりの発色強度が低下する。発色強度が低下すると、イムノクロマトに使用した際に検出感度が低下するおそれがあるため、上限は好ましくは2.50mmol/g、より好ましくは2.00mmol/gである。
[0031]
 導入量の算出方法としては、蛍光測定法、中和滴定法、赤外分光法などが挙げられる。本実施形態では、抗体やタンパク質と反応可能なカルボキシル基量を正確に測定するために、主に蛍光測定法を使用する。カルボキシル基と反応した場合のみ発光する蛍光試薬を使用する。まず、カルボキシル基量が既知のサンプルで、カルボキシル基量と発光強度の関係について検量線を作成する。その後、蛍光試薬を微粒子に反応させる。その微粒子の蛍光強度を測定し、発光強度を得る。得られた発光強度を検量線に代入して、カルボキシル基量を算出する。
[0032]
 カルボキシル基を導入する際のカルボキシル化剤としては、特に限定されるものではないが、具体例としては以下のものが挙げられる:2-ブロモ酢酸、3-ブロモプロピオン酸、4-ブロモ酪酸、5-ブロモペンタン酸、6-ブロモヘキサン酸、7-ブロモヘプタン酸、8-ブロモオクタン酸、11-ブロモウンデカン酸、18-ブロモステアリン酸、16-ヘプタデセン酸、5-ヘキセン酸、エピクロロヒドリン、4-アミノ酪酸、3-アミノプロピオン酸、5-アミノペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、アジピン酸、エイコサン二酸、1,8-オクタンジカルボン酸、1,4-ブタンジカルボン酸、1,6―ヘキサンジカルボン酸、2-クロロ酢酸、3-クロロプロピオン酸、4-クロロ酪酸、5-クロロペンタン酸、6-クロロヘキサン酸、7-クロロヘプタン酸、8-クロロオクタン酸、11-クロロウンデカン酸、18-クロロステアリン酸、アミノ-PEG12-プロピオン酸、アミノ-PEG8-プロピオン酸、アミノ-PEG4-プロピオン酸、α,w-ビス[2-{(3-カルボキシ-1-オキソプロピル)アミノ}エチル]ポリエチレングリコール、HO-PEG12-COOH,HO-PEG12-プロピオン酸、HO-PEG8-プロピオン酸、O-(2-カルボキシエチル)ポリエチレングリコール、COOH-PEG12-COOH、ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル、プロピオン酸-PEG12-プロピオン酸、プロピオン酸-PEG8-プロピオン酸、プロピオン酸-PEG4-プロピオン酸。この中で好ましくは、3-ブロモプロピオン酸、4-ブロモ酪酸、5-ブロモペンタン酸、6-ブロモヘキサン酸、7-ブロモヘプタン酸、8-ブロモオクタン酸、11-ブロモウンデカン酸、18-ブロモステアリン酸、アジピン酸、エイコサン二酸、1,8-オクタンジカルボン酸、1,4-ブタンジカルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸であり、より好ましくは8-ブロモオクタン酸、11-ブロモウンデカン酸、18-ブロモステアリン酸、アジピン酸、エイコサン二酸、1,8-オクタンジカルボン酸である。
[0033]
 本明細書中、「微粒子」とは、長径(L)と短径(D)の長さが近く形状が球に近い構造体を指す。具体的には、L÷Dで表されるL/D比が1.0~3.0である構造体を指す。L/Dがこの範囲にあるとイムノクロマト診断キットとして用いる場合に目詰まりを起こしにくくなり、より好ましくは1.0~2.0、更に好ましくは1.0~1.5、最も好ましくは1.0~1.3である。測定方法としては、粒子の電子顕微鏡画像を撮影し、100個の粒子の長径(L)と短径(D)を測定し、その100個の平均値を算出する。
[0034]
 着色セルロース微粒子の製造方法は、特に限定されない。微粒子をまず成形し、色素、染料などの着色成分を担持させる方法、微粒子を成形し、金属コロイドや顔料などのより小さい発色微粒子を担持させる方法、微粒子の成形時に色素、染料、顔料、金属コロイドなどの着色成分も一緒に加えて成形する方法などが挙げられる。中でも粒子径の調整、色の濃さの調整、色の種類の調整、微粒子表面状態の調整などの微粒子の特徴の調整のしやすさから、微粒子をまず成形し、色素、染料などの着色成分を担持させる方法が好ましい。また、担持させる着色成分としては、担持の容易さから染料が好ましい。
[0035]
 着色成分として染料を用いる場合、染料の種類は特に限定されない。反応染料、直接染料、含金染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料、硫化染料、植物染料、ナフトール染料、蛍光染料などの染料を用いることができる。もちろん任意の染料を組み合わせても構わない。中でもセルロースの水酸基と共有結合で結合する反応性染料が、大量に染料を保持できる点や安定性の面から特に好ましい。
[0036]
 セルロース微粒子をまず成形し、その後着色成分を担持させる場合、セルロース微粒子の成形方法は特に限定されない。天然のセルロースをボールミルや高圧ホモジナイザーで物理的に微細化する方法、酸やアルカリなどで化学的に処理し微細化する方法、セルロースをその良溶媒に一度溶解させ粒子状に成形する方法などが挙げられる。また、誘導体化されたセルロースを溶解、粒子状に成形し、誘導体化された置換基を水酸基に戻しセルロース微粒子を調製してもよい。更にそれらの成形方法を組み合わせてもよい。またセルロースの種類も特に限定されるものではなく、再生セルロース、精製セルロース、天然セルロース、誘導体化された置換基を水酸基に戻したセルロースなどを用いることができる。中でも粒子径の調整、粒子形状の調整などの点から良溶媒に一度溶解させ粒子状に成形する方法が好ましく、セルロースの種類としては再生セルロースが好ましい。
[0037]
 セルロースをその良溶媒に一度溶解させ粒子状に成形する場合、セルロースを溶解させる良溶媒の種類も特に限定されるものではなく、銅アンモニア溶液、ビスコース溶液、N-メチルモルホリン、各種のイオン性液体などセルロースを溶解することのできる様々な良溶媒を用いることができる。中でも粒子径の調整、粒子形状の調整などの点から銅アンモニア溶液が好ましい。また、溶解させたセルロースを粒子に成形する方法も特に限定されるものではない。本実施形態では、相分離による方法を用いた。
[0038]
 用語「リガンド」とは、特定の検査対象物質に選択的かつ特異的に結合する性質をもつ物質である。その種類は特に限定されるものではないが、例えば、抗体、酵素、遺伝子、ホルモン、核酸、ペプチド、タンパク質などが挙げられる。
[0039]
 用語「イムノクロマト診断キット」とは、様々な検体中の検査対象物質の有無を簡便に検出するための抗原抗体反応を利用した物品である。イムノクロマト診断キットの種類としては、ラテラルフロー式やフロースルー式がある。発色粒子やサンプルパッドを用いるものであれば特に限定されないが、好ましくはラテラルフロー式である。また、ラテラルフロー式の中でも、ディップスティックタイプとカセットタイプがあるが、それらのタイプは特に限定されない。イムノクロマト診断キットの構成は、特に限定されるものではなく、当該分野で一般的に用いられる構成であればいずれでも構わない。発色粒子とサンプルパッド以外の部材の種類は、当該分野で用いられるものであれば特に限定されず、例えば、コンジュゲートパッド(抗体感作発色粒子を含む)、ニトロセルロース等のメンブレン、吸収パッド、及び台紙が挙げられる。また、必要に応じそれら部材を一部省いていてもかまわない。
[0040]
 イムノクロマト診断キットを使用する「診断方法」とは、イムノクロマト診断キットを用いて行われる様々な診断を指す。診断対象は特に限定されるものではなく、人用、動物用、食品用、植物用、その他環境検査など様々な診断対象であることができる。一般的な診断の手順では、検査対象から検体試料を採取し、必要であればそれを抽出やろ過などの前処理を行い、サンプルパッドに滴下し、検査開始から所定時間待ち、検査対象物質の有無によって異なる発色より診断結果を判断する。もちろんこの手順に限定されず、同じような手順、原理の診断にも用いることができる。好ましいのは、検体試料を予めろ過しておくことで余分な異物や夾雑物を除去でき、それによりより一層の診断時間の短縮化や、診断精度の向上が期待できる。
[0041]
 イムノクロマト診断キットで診断できる対象は特に限定されるものではないが、具体例としては以下のものが挙げられる:癌マーカー、ホルモン、感染症、自己免疫、血漿蛋白、TDM、凝固・線溶、アミノ酸、ペプチド、蛋白、遺伝子、細胞。より具体的には、CEA、AFP、フェリチリン、β2マイクロ、PSA、CA19-9、CA125、BFP、エラスターゼ1、ペプシノーゲン1・2、便潜血、尿中β2マイクロ、PIVKA-2、尿中BTA、インスリン、E3、HCG、HPL、LH、HCV抗原、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体、HBe抗原、HBe抗体、HTLV-1抗体、HIV抗体、トキソプラズマ抗体、梅毒、ASO、A型インフルエンザ抗原、A型インフルエンザ抗体、B型インフルエンザ抗原、B型インフルエンザ抗体、ロタ抗原、アデノウィルス抗原、ロタ・アデノウィルス抗原、A群レンサ球菌、B群レンサ球菌、カンジダ抗原、CD菌、クリプトロッカス抗原、コレラ菌、髄膜炎菌抗原、顆粒菌エラスターゼ、ヘリコバクターピロリ抗体、O157抗体、O157抗原、レプトスピラ抗体、アスペルギルス抗原、MRSA、RF、総IgE、LEテスト、CRP、IgG,A,M、IgD、トランスフェリン、尿中アルブミン、尿中トランスフェリン、ミオグロビン、C3・C4、SAA、LP(a)、α1-AC、α1-M、ハプトグロビン、マイクロトランスフェリン、APRスコア、FDP、Dダイマー、プラスミノーゲン、AT3、α2PI、PIC、PAI-1、プロテインC、凝固第X3因子、IV型コラーゲン、ヒアルロン酸、GHbA1c、その他の各種抗原、各種抗体、各種ウィルス、各種菌、各種アミノ酸、各種ペプチド、各種蛋白質、各種DNA、各種細胞、各種アレルゲン、各種残留農薬、各種有害物。
[0042]
 以下、セルロース微粒子の作製方法、セルロース微粒子の着色方法、着色セルロース微粒子の親水化方法、カルボキシル基の導入方法、イムノクロマト診断キットの作製方法などの一例を記載する、もちろん、本実施形態は、それらにより限定されるべきではない。
[0043]
〔セルロース微粒子の作製方法〕
 セルロースリンターをセルロースの良溶媒に溶解させる。良溶媒として公知の方法で調製した銅アンモニア溶液を用いる。そして凝固液としては有機溶媒+水+アンモニア混合系を主に用いる。この凝固液を攪拌しながら、調製しておいた銅アンモニアセルロ-ス溶液を加えて凝固を行う。さらに硫酸を加え中和、再生を行うことで、目的のセルロ-ス微粒子を含有したスラリーを得ることができる。この際スラリーは再生に用いた酸の残留により酸性であり、さらに中和で発生したアンモニウム塩などの不純物を含んでいるため、セルロース微粒子と媒体からなるセルロース分散液へと精製する操作が必要となる。この精製操作として遠心分離-デカンテーション-分散媒液体による希釈の処理の繰り返しを用いる。得られたセルロース微粒子分散液中のセルロース微粒子は、精製操作の過程において凝集する場合もあるので、この場合は剪断などによる分散処理を行うことができる。剪断を与える手段としては高圧ホモジナイザーを用いる。
[0044]
〔セルロース微粒子の着色方法〕
 得られたセルロース微粒子の水分散体に対し、硫酸ナトリウム、反応性染料を加え、マグネティックスターラーで撹拌しながら恒温槽で適温に昇温する。昇温後にアルカリとして炭酸ナトリウムを加え染色を開始する。所定時間経過後に目的の着色セルロース微粒子を含有したスラリーを得ることができる。この際スラリーはアルカリ性であり、さらに硫酸ナトリウム、未反応の染料などを含んでいるため、着色セルロース微粒子と媒体からなる着色セルロース微粒子分散液へと精製する操作が必要となる。前記同様に遠心分離による精製を行い、着色セルロース微粒子分散液を得る。得られた着色セルロース微粒子分散液中の着色セルロース微粒子は、精製操作の過程において凝集する場合もあるので、この場合は剪断などによる分散処理を行うことができる。剪断を与える手段としては高圧ホモジナイザーを用いる。
[0045]
〔着色セルロース微粒子の親水化方法〕
 得られた着色セルロース微粒子の水分散体に対し、有機溶媒、水を加え、マグネティックスターラーで撹拌しながら恒温槽で適温に昇温する。昇温後に市販の親水化剤を加え反応を開始する。所定時間経過後に目的の親水化着色セルロース微粒子を含有したスラリーを得ることができる。この際スラリーはアルカリ性であり、さらに有機溶媒、未反応の親水化剤などを含んでいるため、親水化着色セルロース微粒子と媒体からなる親水化着色セルロース微粒子分散液へと精製する操作が必要となる。前記同様に遠心分離による精製を行い、親水化着色セルロース微粒子分散液を得る。得られた親水化着色セルロース微粒子分散液中の親水化着色セルロース微粒子は、精製操作の過程において凝集する場合もあるので、この場合は剪断などによる分散処理を行うことができる。剪断を与える手段としては高圧ホモジナイザーを用いる。
[0046]
〔親水化着色セルロース微粒子へのカルボキシル基導入方法〕
 得られた親水化着色セルロース微粒子の水分散体に対し、有機溶媒、塩基を加え、マグネティックスターラーで撹拌しながら恒温槽で適温に昇温する。昇温後にカルボキシル基を有する反応剤を加え反応を開始する。所定時間経過後に目的のカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を含有したスラリーを得ることができる。この際スラリーは、有機溶媒、塩基、未反応の反応剤などを含んでいるため、カルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子と媒体からなるカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子分散液へと精製する操作が必要となる。前記同様に遠心分離による精製を行い、カルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子分散液を得る。得られたカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子分散液中のカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子は、精製操作の過程において凝集する場合もあるので、この場合は剪断などによる分散処理を行うことができる。剪断を与える手段としては高圧ホモジナイザーを用いる。
[0047]
〔イムノクロマト診断キットの作製方法〕
 所定の濃度に調整したカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子の分散液を準備し、緩衝液、抗体を加え、温度調整を行いながら一定時間撹拌し、カルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子に抗体を結合させる。一定時間撹拌後、更にブロッキング剤を加え温度調整を行いながら一定時間撹拌することで、カルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子のブロッキングを行う。ブロッキング剤としては、検査対象物質や検体又はそれを希釈する溶液の組成などに応じ様々なブロッキング剤を用いることができる。カゼインは、カルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子のブロッキングに特に好ましい。抗体結合&ブロッキング後のカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を洗浄するため、遠心分離を行い、余剰な抗体とブロッキング剤が含まれた上澄み液と沈降した微粒子を分離し、上澄み液をデカンテーションにて除去する。沈降した微粒子に緩衝液などの液体を加え、必要に応じ超音波などで分散処理を行う。この遠心分離による沈降、上澄みの除去、液体の添加という一連の操作による洗浄を必要回数行い、抗体吸着&ブロッキングを行った微粒子を所定の濃度含有した分散液を調整する。この分散液に必要に応じタンパク質、界面活性剤、スクロースやトレハロースなどの糖を加え、得られた溶液をガラス繊維製のコンジュゲートパッドに一定量塗布し、乾燥させ、検出試薬含有部を調整する。また、再生セルロース連続長繊維不織布に必要に応じ緩衝液、界面活性剤、タンパク、検体試料中の夾雑物をトラップする試薬、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、吸湿剤、などを塗布し、乾燥させ、サンプルパッドを調製する。更に所定の位置に抗体を固定化したニトロセルロース多孔膜製のメンブレン、検体を吸収するためのセルロース濾紙製の吸収パッドを調製する。それらをバッキングシートと呼ばれる接着部位を有するシートに固定化し、所定のサイズに裁断することでイムノクロマト診断キットを作製する。
実施例
[0048]
 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、特に記載のない全ての操作は温度23℃、相対湿度55%RHの環境下で行った。
 まず、用いた各種物性等の測定方法等について説明する。
[0049]
〔微粒子の平均粒子径〕
 装置としては日機装社製のナノトラック粒度分布測定装置UPA-EX150(動的光散乱式)を用いた。測定サンプルとして、微粒子が0.01wt%、純水99.99wt%のサンプルを用いた。測定条件としては積算回数を30回、1測定辺りの測定時間を30秒とし、体積平均の粒子径分布を用いそのメジアン径を平均粒子径とした。
[0050]
〔微粒子の発色強度〕
 装置としては日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計JASCO V-650に同社製の積分球ユニットISV-722を取り付けた装置を用いた。測定するサンプルとして微粒子が0.01wt%、純水99.99wt%のサンプルを用い、光路長10mmの石英セルにサンプルを入れ測定した。得られた吸光度ピークのうち、400~800nm可視光範囲での最大値(ABS)を発色強度とした。
[0051]
〔微粒子のL/D(真球度)〕
 装置としては日本電子社製の走査型電子顕微鏡JSM-6700を用いた。微粒子が0.01wt%、純水99.99wt%のサンプルを雲母板に滴下し、10秒経過させることで微粒子を雲母板上に吸着させ、キムワイプで余分な液体を吸い取り乾燥させた。得られた雲母板をプラチナでコーティングし、電子顕微鏡測定用のサンプルを調製した。加速電圧1.6kV、測定倍率5万倍で観測を行い、微粒子画像が100個以上になるように必要枚数の画像を撮影し、それぞれの微粒子の長径(L)と短径(D)を測定し、微粒子100個のL/Dの平均値を算出した。
[0052]
〔スペーサー構造の同定〕
 装置としてはブルカー社製の核磁気共鳴装置(AVANCE II400)を用いた。スペーサーを導入した微粒子の1.0wt%分散液に、0.1mL、1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬社製、72082100)、又は1.0Mの塩酸水溶液(和光純薬社製、080-10035)10.0mLを加え、60℃で5時間加熱撹拌する。その後、遠心分離により上澄み液を採取し、微粒子から切断されたスペーサーが溶解又は分散した溶液を得た。この溶液を最適な重溶媒で希釈し、核磁気共鳴装置によりNMR測定し得られたスペクトルから構造物を同定した。
[0053]
〔カルボキシル基の導入量〕
 装置としては日本分光社製の分光蛍光光度計FP-8300を用いた。カルボキシル基と反応した場合のみ蛍光を発する試薬を微粒子に結合させ、その蛍光強度から導入量を測定した。以下に、測定例を示す。導入量を測定したい微粒子の1.0wt%分散液0.1mL、蛍光試薬ADAM(KAK社製、FK-101)の2.3mMのエタノール溶液4.0mL、エタノール(関東化学社製、14033-70)3.9mLを容器に入れ、60℃で5分反応させる。その後、得られた反応液10.0μLにエタノール2.0mLを添加しFP-8300にて365nmの励起光を照射し、410nmの蛍光強度を測定した。検量線には、オクタン酸(東京化成社製、O0027)を使用した。
[0054]
〔残存反応性アミノ基量〕
 装置としては日本分光社製の分光蛍光光度計FP-8300を用いた。アミノ基と反応した場合のみ蛍光を発する試薬を微粒子に結合させ、その蛍光強度から導入量を測定した。以下に測定例を示す。残存反応性アミノ基量を測定したい微粒子の1.0wt%分散液0.1mL、蛍光試薬NBD-F(同仁化学社製)の2.5mMのエタノール溶液4.0mL、エタノール(関東化学社製、14033-70)3.9mLを容器に入れ、30℃で60分反応させる。その後、得られた反応液10.0μLにエタノール2.0mLを添加しFP-8300にて480nmの励起光を照射し、530nmの蛍光強度を測定した。検量線には、オクチルアミン(東京化成社製、O0045)を使用した。
[0055]
〔微粒子の親水化度〕
 微粒子分散液を濃度1%(wt/vol)に調製し試料溶液とした。試料溶液を撹拌後、0.5mLを外径10mmのガラス製NMR管に移し、30℃に設定されたパルスNMR装置に設置した。パルスNMR装置はブルカー社製のMinispec mq20装置を用いた。各種パラメータを以下の通りに設定し測定した。
    ・観測核:
    ・測定する緩和時間:横緩和時間T2(ms)
    ・測定モード:CPMG法
    ・積算回数:32回
    ・Recycle Delay:10(s)
    ・90°-180°Pulse Separation(τ):2(ms)。
 得られた磁化減衰曲線(磁化強度の経時変化を示す曲線)を、Microsoft Excelの指数近似機能を用いて最小二乗法により下記式(1)にフィッティングした。
    M(t)=M ・exp(-t/T2)・・・(式1)
{式中、M(t):ある時間tにおける信号強度、M :信号強度の初期値、T2:緩和時間。}。
 次に、図1に示すように、縦軸に緩和時間の変化割合(Rsp値)を、横軸に微粒子の総表面積値(TSA値)をプロットしたグラフを作成した。最小二乗法により近似直線を作成し、その傾きを親水化度と定義し、微粒子の親水化度を比較した。Rsp値とTSA値の計算方法は以下のとおりである。
   ・Rsp値の計算方法
        Rsp値=Rav÷Rb-1
          {式中、Rav:平均緩和時定数(試料の緩和時間逆数)、Rb:バルク水分子の緩和時定数(ブランク水の緩和時間逆数)。}。
 ・TSA値(m )の計算方法
        TSA値=SA×V×Ψ ×ρ
      {式中、SA:微粒子の比表面積(m /g)=6÷(ρ×d)、ここで、ρ:微粒子密度(g/cm )(微粒子密度:1.4g/cm 、ラテックス粒子密度:1.0g/cm 、金コロイド粒子密度:19.3g/cm )、d:微粒子直径(μm)、V:ラジオ波が照射される部分のNMR管体積(cm )(≒試料量)、Ψ :微粒子体積比、ここで、微粒子体積(i)=微粒子濃度(wt%)÷100÷微粒子密度、水の体積(ii)=(1-微粒子体積(i))÷水の密度(0.997g/cm )、Ψ (微粒子体積比)=微粒子体積(i)÷水の体積(ii)、ρ:同上。}。
[0056]
〔タンパク質吸着量〕
 装置としては日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計JASCO V-650を用いた。タンパク質の一例として牛血清アルブミン(以下、「BSA)という、シグマアルドリッチ社製、A7906)の吸着量の算出方法を示す。吸着量を測定したい微粒子の1.0wt%分散液を30.0μL、pH=5.0 濃度100mMのリン酸緩衝液(キシダ化学社製)270.0μL、1.0wt%のBSA溶液3.0μLを、37℃で2時間反応させ、その後遠心分離により上澄み液を採取する。この上澄み液を市販のBCA試薬(和光純薬社製、297-73101)と反応させ、V-650により562nmの吸光度を測定し、上澄み液中のBSA量を算出する。その後仕込んだBSA量から上澄み液中のBSA量を引き、使用した微粒子量を除してどれだけ吸着したかを算出した。
[0057]
〔カルボキシル基が導入された親水化セルロース微粒子と抗体の結合方法〕
 2-モルホリノエタンスルホン酸(以下、「MES」という、東京化成社製、M0606)、苛性ソーダ、純水を用いてpH=6.0、濃度が100mMのMES緩衝液を調製した。得られたMES緩衝液63.0μL、カルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子1.0wt%分散液7.0μL、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以下、「EDC」という、東京化成社製、D1601)の1.0wt%溶液3.5μL、N-ヒドロキシスクシンイミド(以下、「NHS」という、東京化成社製、B0249)の1.0wt%溶液7.0μLを、容器に入れ、室温で15分間した。その後、遠心分離により上澄み液を捨てて未反応のEDC、NHSを除去した。MES緩衝液70.0μLを入れ、微粒子を分散させた後、カルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子に対して10.0wt%となるように抗hCG抗体(Fitzgelardh製、♯5014)をスピッツ管に添加し、37℃で2時間反応させた。その後、1.0wt%カゼイン(和光純薬工業社製、030-01505)を含有するブロッキング溶液(100mM ホウ酸緩衝液、PH=8.5)840.0μLを、スピッツ管に添加し、37℃の乾燥機内で1時間静置した。1時間後、遠心分離機(クボタ商事社製、6200)と遠心分離ローター(クボタ商事社製、AF-5008C)を用い、14000gの遠心を30分間行い、抗体結合カルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を沈降させた後、上澄み液を廃棄した。次いで、ホウ酸緩衝液(50mM、PH=10.0)840.0μLをスピッツ管に加え、超音波分散機(エスエムテー社製、UH-50)で10秒間処理し、抗体結合カルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を分散させた。十分に分散させた後、14000gの遠心を20分間行い、上澄み液を廃棄した。抗体結合カルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子の濃度が0.04wt%となるようにホウ酸緩衝液(50mM、PH=10.0)を添加し、超音波分散機により十分に分散させた。以上の方法により、抗体結合カルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子(以下、「検出試薬」ともいう。)を得た。
[0058]
〔コンジュゲートパッドへの検出試薬の含浸と乾燥〕
 ポリエチレンテレフタレート製コンジュゲートパッド(Ah製、6615)を0.05wt%のTween-20(シグマアルドリッチ社製、T2700)に浸漬し、余分な液を取り除いた後に50℃で60分乾燥させた。次いで、高さ10mm、長さ300mmの形状にカットした。次いで、マイクロピペットを用い、検出試薬を272μL/800mm となるように均等に塗布し、37℃で30分乾燥させた。
[0059]
〔サンプルパッドの前処理〕
 再生セルロース連続長繊維不織布を、大過剰の2.0wt%のBSA(シグマアルドリッチ社製、A7906)と2.0wt%のTween-20を含有するPBS緩衝液(66mM、PH7.4)に含浸し、余分な液を取り除いた後、50℃で60分乾燥させた。次いで、高さ20mm、長さ300mmの形状にカットした。
[0060]
〔捕捉抗体塗布メンブレンの調製〕
 ニトロセルロース膜(Millipore社製、SHF0900425)を幅25mm、長さ300mmの形状にカットした。液体塗布装置(武蔵エンジニアリング社製、300DS)を用い、0.1wt%抗hCG-βマウス抗体(MedixBiochemica社製、6601)を含むPBS溶液(66mM、PH7.4)を0.1μL/mmの割合で高さ12mmの部分に塗布した。次いで、37℃で30分間乾燥させた。
[0061]
〔イムノクロマト診断キットの調製〕
 バッキングカード(Adhesives Reserch社製、AR9020)に、前記にようにして得た捕捉抗体塗布メンブレン、吸収パッド(Millipore社製、C083)、検出試薬を含有したコンジュゲートパッド、及びサンプルパッドを張り合わせた。次いで、裁断機にて5mmの幅にカットし、幅5mm、高さ60mmのイムノクロマト診断キットを得た。
[0062]
〔イムノクロマト診断キットの偽陽性判定〕
 妊娠していない100人分の尿を用いて偽陽性測定を実施した。15分経過後のテストライン(TL)の発色強度を0-10の11段階のグレード評価を目視で行った。図2に示すように、目視グレードは値が大きいほどTLの線の色が濃いことを示し、0は線が見えないことを示す。この測定を5回行い、得られた値の平均値で目視グレードが0であれば偽陽性はないと判断した。100検体中、偽陽性が発生した検体数を数え、100で除して偽陽性の発生率とした。また、偽陽性が発生した検体については、目視グレードを記録した。
[0063]
〔イムノクロマト診断キットの診断時間〕
 5mm幅にカットしたイムノクロマト診断キットをプラスチックのハウジングに入れた。得られたハウジング入りの診断キットを、0-10の11段階の目視グレードで判定した。検査対象物質には抗hCG-βマウス抗体を用いた。前記hCG抗体を1.0wt%のBSAを含む66mM、PH7.4のリン酸緩衝液(以下「PBS」という)で希釈し、前記hCG抗体が10.0mIU/mLの陽性検体を調製した。この陽性検体120.0μLを診断キットのサンプル滴下部に滴下し、以降20秒毎に目視で測定を行い、TLの経時変化を測定した。イムノクロマトリーダーで得られるTLの発色強度が1.0以上になった時間を測定した。ここで1.0以上とした理由は、個人差もあるが1.0以上になれば目視でもTLの存在を確認できるからである。この測定を5回行い、平均の時間を診断時間とした。
[0064]
〔イムノクロマト診断キットの検出限界〕
 5mm幅にカットしたイムノクロマト診断キットをプラスチックのハウジングに入れた。得られたハウジング入りの診断キットを、0-10の11段階の目視グレードで判定した。検査対象物質にはヒト絨毛性ゴナドトロピン(以下「hCG」という)を用いた。hCGを1.0wt%のBSAを含む66mM、PH7.4のリン酸緩衝液(以下「PBS」という)で希釈し、前記hCG濃度が1.600mIU/mL、0.800mIU/mL、0.400mIU/mL、0.200mIU/mL、0.100mIU/mL、0.050mIU/mL、0.025mIU/mL、0.013mIU/mL、0.007mIU/mL、0.0025mIU/mLと段階的に薄くしていった陽性検体を調製した。この陽性検体120.0μLを診断キットのサンプル滴下部に滴下し、15分経過後のTLの発色強度を目視で判定した。この測定を各濃度で5回行い、得られた値の平均値が1.0以上の場合は陽性と判定し、1.0未満の場合は検出限界以下と見なした。この陽性判定が得られる下限のhCG濃度を検出限界とした。
[0065]
〔実施例1〕
 従来公知の方法で、セルロース濃度0.37wt%、銅濃度0.13wt%、アンモニア濃度1.00wt%の銅アンモニアセルロース溶液を調製した。さらにテトラヒドロフラン濃度89.00wt%、水濃度11.00wt%、の凝固液を調製した。
 マグネティックスターラーを用い凝固液5000gをゆっくり攪拌しながら、調製しておいた銅アンモニアセルロース溶液500gを添加した。5秒程度攪拌を継続した後、10wt%の硫酸1000gを加え中和、再生を行い、セルロース微粒子を含有したスラリー6500gを得た。
 得られたスラリーを10000rpmの速度で10分間遠心分離した。沈殿物をデカンテーションにより取り出し、脱イオン水を注入して攪拌し、再び遠心分離した。pHが6.0~7.0になるまでこの操作を数回繰り返し、その後、高圧ホモジナイザーによる分散処理を行い、セルロース微粒子分散液150gを得た。得られたセルロース微粒子の平均粒径を測定した結果、261nmであった。
[0066]
 次に、前記のようにして調製したセルロース微粒子の染色を行った。微粒子濃度を1.00wt%に調整したセルロース微粒子分散体100gに対し、硫酸ナトリウム30g、反応性染料(ダイスター株式会社製Levafix Red CA GR.(登録商標))1.00g、を加え攪拌させながら恒温槽を用いて60℃まで昇温した。60℃に昇温後に炭酸ナトリウム4gを加え、2時間染色を行った。得られた粗着色微粒子を水酸化ナトリウム5%水溶液で洗浄し、遠心分離で回収、純水にて水洗した後遠心分離で回収するという一連の操作を1サイクルとし、同様の操作を計3サイクルまで実施し、着色セルロース微粒子を得た。
[0067]
 次に、前記のようにして調製した着色セルロース微粒子の表面親水化反応を行った。10.0wt%に調整した着色セルロース微粒子分散液10.0mLに対し、親水化剤としてN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成社製、A0774)10.0mL、N,N-ジメチルホルムアミド(東京化成社製、D0939)50.0mLを加え、撹拌させながら恒温槽を用いて50℃まで昇温し、4時間反応させた。反応後、遠心分離で回収、純水にて水洗した後遠心分離で回収した。pHが11.00以下になるまで上記水洗を繰り返し、親水化着色セルロース微粒子分散液を得た。親水化度などの粒子物性を以下の表1に示す。
[0068]
 次に、前記のようにして調製した親水化着色セルロース微粒子へのカルボキシル基導入反応を行った。5.0wt%に調整した親水化着色セルロース微粒子分散液10.0mLに対して、反応剤として6-ブロモヘキサン酸(東京化成社製,B1290)6.0g、N,N-ジメチルホルムアミド(東京化成社製、D0939)50.0mL、塩基として炭酸ナトリウム(キシダ化学社製,000-71245)0.1gを加え、撹拌させながら恒温槽を用いて50℃まで昇温し、6時間反応させた。反応後、遠心分離で回収、2-プロパノール(東京化成社製、I0277)にて3回遠心分離による洗浄後、純水にて3回遠心分離による洗浄を行い、カルボキシル基導入表面親水化着色セルロース微粒子を得た。得られた微粒子はカルボン酸ナトリウム型なので、0.1M HCl溶液(和光純薬社製、083-01115)15.0mL、純水35.0mL添加し、室温で2時間反応させた。その後、遠心分離で回収、純水にて水洗した後遠心分離で回収した。pHが4.0以上になるまで水洗を実施し、カルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子分散液を得た。カルボキシル基の導入量などの物性、及びこの微粒子を発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。親水層とスペーサーの効果により、タンパク質の吸着が大幅に低減できた。その結果、偽陽性発生率が0%となった。検出感度については、カルボキシル基量が多いことで、微粒子表面に抗体が十分量固定されたために、高い検出感度を維持した。また、親水層の影響で微粒子がメンブレンに吸着することなく、迅速に移動できたために、診断時間が短縮できた。
[0069]
〔実施例2〕
 カルボキシル基導入反応において、炭酸ナトリウムの量を9.9gに変更した以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。実施例1と同様に、親水層による親水化、疎水性のスペーサー及びカルボキシル基が多量に導入されたことで、タンパク質の吸着が大幅に低減できた。その結果、偽陽性発生率が0%となった。検出感度については、カルボキシル基量が多いことで、微粒子表面に抗体が十分量固定されたために、高い検出感度を維持した。また、親水層の影響で微粒子がメンブレンに吸着することなく、迅速に移動できたために、診断時間が短縮できた。
[0070]
〔実施例3〕
 カルボキシル基導入反応において、炭酸ナトリウムの量を29.7gに変更した以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。実施例1と同様に、親水層による親水化、疎水性のスペーサー及びカルボキシル基が多量に導入されたことで、タンパク質の吸着が大幅に低減できた。その結果、偽陽性発生率が0%となった。検出感度については、カルボキシル基量が多いことで、微粒子表面に抗体が十分量固定されたために、高い検出感度を維持した。また、親水層の影響で微粒子がメンブレンに吸着することなく、迅速に移動できたために、診断時間が短縮できた。
[0071]
〔実施例4〕
 染色反応を5サイクル、カルボキシル基導入反応において、炭酸ナトリウムの量を9.9gに変更した以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。実施例1と同様に、親水層による親水化、疎水性のスペーサー及びカルボキシル基が多量に導入されたことで、タンパク質の吸着が大幅に低減できた。その結果、偽陽性発生率が0%となった。検出感度については、カルボキシル基量が多いことで、微粒子表面に抗体が十分量固定されたために、高い検出感度を維持した。また、親水層の影響で微粒子がメンブレンに吸着することなく、迅速に移動できたために、診断時間が短縮できた。
[0072]
〔実施例5〕
 カルボキシル基導入反応において、反応剤を11-ブロモウンデカン酸(東京化成社製、B0389)7.2g、炭酸ナトリウムの量を9.9gに変更した条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。実施例1と同様に、親水層による親水化、疎水性のスペーサー及びカルボキシル基が多量に導入されたことで、タンパク質の吸着が大幅に低減できた。その結果、偽陽性発生率が0%となった。検出感度については、カルボキシル基量が多いことで、微粒子表面に抗体が十分量固定されたために、高い検出感度を維持した。また、親水層の影響で微粒子がメンブレンに吸着することなく、迅速に移動できたために、診断時間が短縮できた。
[0073]
〔実施例6〕
 カルボキシル基導入反応において、反応剤をエイコサン二酸(東京化成社製、E0320)10.0g、炭酸ナトリウムの量を9.9gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。実施例1と同様に、親水層による親水化、疎水性のスペーサー及びカルボキシル基が多量に導入されたことで、タンパク質の吸着が大幅に低減できた。その結果、偽陽性発生率が0%となった。検出感度については、カルボキシル基量が多いことで、微粒子表面に抗体が十分量固定されたために、高い検出感度を維持した。また、親水層の影響で微粒子がメンブレンに吸着することなく、迅速に移動できたために、診断時間が短縮できた。
[0074]
〔実施例7〕
 カルボキシル基導入反応において、反応剤をテレフタル酸(東京化成社製、T0166)6.5g、炭酸ナトリウムの量を9.9gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。実施例1と同様に、親水層による親水化、疎水性のスペーサー及びカルボキシル基が多量に導入されたことで、タンパク質の吸着が大幅に低減できた。その結果、偽陽性発生率が0%となった。検出感度については、カルボキシル基量が多いことで、微粒子表面に抗体が十分量固定されたために、高い検出感度を維持した。また、親水層の影響で微粒子がメンブレンに吸着することなく、迅速に移動できたために、診断時間が短縮できた。
[0075]
〔実施例8〕
 セルロース微粒子の凝固反応において、凝固液を酢酸エチル(東京化成社製、Q0040)濃度94.0wt%、水濃度6.0wt%に変更し、カルボキシル基導入反応において、炭酸ナトリウムの量を9.9gに変更したこと以外は実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。実施例1と同様に、親水層による親水化、疎水性のスペーサー及びカルボキシル基が多量に導入されたことで、タンパク質の吸着が大幅に低減できた。その結果、偽陽性発生率が0%となった。検出感度については、カルボキシル基量が多いことで、微粒子表面に抗体が十分量固定されたために、高い検出感度を維持した。また、親水層の影響で微粒子がメンブレンに吸着することなく、迅速に移動できたために、診断時間が短縮できた。
[0076]
〔実施例9〕
 セルロース微粒子の凝固反応において、凝固液をアセトン濃度27.0wt%、水濃度0.2wt%、アンモニア濃度72.8wt%に変更し、カルボキシル基導入反応において、炭酸ナトリウムの量を9.90gに変更したこと以外は実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。実施例1と同様に、親水層による親水化、疎水性のスペーサー及びカルボキシル基が多量に導入されたことで、タンパク質の吸着が大幅に低減できた。その結果、偽陽性発生率が0%となった。検出感度については、カルボキシル基量が多いことで、微粒子表面に抗体が十分量固定されたために、高い検出感度を維持した。また、親水層の影響で微粒子がメンブレンに吸着することなく、迅速に移動できたために、診断時間が短縮できた。
[0077]
〔実施例10〕
 カルボキシル基導入反応において、炭酸ナトリウムの量を9.9g、反応剤を3-ブロモプロピオン酸(東京化成社製、B0645)4.2gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。実施例1と同様に、親水層による親水化、疎水性のスペーサー及びカルボキシル基が多量に導入されたことで、タンパク質の吸着が大幅に低減できた。その結果、偽陽性発生率が0%となった。検出感度については、カルボキシル基量が多いことで、微粒子表面に抗体が十分量固定されたために、高い検出感度を維持した。また、親水層の影響で微粒子がメンブレンに吸着することなく、迅速に移動できたために、診断時間が短縮できた。
[0078]
〔実施例11〕
 表面親水化反応において、親水化剤をN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成社製、A0774)10.0mL、及びポリエチレングリコールシラン Mw2000(Creative PEGWorks社製、PLS-2012)10.0mLの混合体に変更し、カルボキシル基導入反応において、反応剤を11-ブロモウンデカン酸7.2gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。実施例1と同様に、親水層による親水化、疎水性のスペーサー及びカルボキシル基が多量に導入されたことで、タンパク質の吸着が大幅に低減できた。その結果、偽陽性発生率が0%となった。検出感度については、カルボキシル基量が多いことで、微粒子表面に抗体が十分量固定されたために、高い検出感度を維持した。また、親水層の影響で微粒子がメンブレンに吸着することなく、迅速に移動できたために、診断時間が短縮できた。
[0079]
〔実施例12〕
 表面親水化反応において、親水化剤をアミノ-PEG12-プロピオン酸(シグマアルドリッチ社製、JKA12006)10.0mL、カルボキシル基導入反応において、反応剤を11-ブロモウンデカン酸7.2g、炭酸ナトリウムを9.9gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。実施例1と同様に、親水層による親水化、疎水性のスペーサー及びカルボキシル基が多量に導入されたことで、タンパク質の吸着が大幅に低減できた。その結果、偽陽性発生率が0%となった。検出感度については、カルボキシル基量が多いことで、微粒子表面に抗体が十分量固定されたために、高い検出感度を維持した。また、親水層の影響で微粒子がメンブレンに吸着することなく、迅速に移動できたために、診断時間が短縮できた。
[0080]
〔実施例13〕
 カルボキシル基導入反応において、反応剤をBr-(CH 30-COOH11.0g、炭酸ナトリウムの量を9.9gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。実施例1と同様に、親水層による親水化、疎水性のスペーサー及びカルボキシル基が多量に導入されたことで、タンパク質の吸着が大幅に低減できた。その結果、偽陽性発生率が0%となった。検出感度については、カルボキシル基量が多いことで、微粒子表面に抗体が十分量固定されたために、高い検出感度を維持した。また、親水層の影響で微粒子がメンブレンに吸着することなく、迅速に移動できたために、診断時間が短縮できた。
[0081]
〔実施例14〕
 カルボキシル基導入反応において、炭酸ナトリウム量を0.01gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。親水層及び疎水性スペーサーの効果により、タンパク質の吸着量は、以下の比較例1などと比べると低減でき、偽陽性低減効果も認められた。
[0082]
〔実施例15〕
 カルボキシル基導入反応において、反応剤をポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル Mw600(Creative PEG Works社製、PSB-362)16.4gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。タンパク質の吸着量は、以下の比較例1などと比べると若干低減でき、偽陽性低減効果があった。
[0083]
〔実施例16〕
 表面親水化反応において親水化剤の量を40.0mL、カルボキシル基導入反応において、反応剤を11-ブロモウンデカン酸7.2gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。親水層及び疎水性スペーサーの影響で、以下の比較例1と比べるとタンパク質の吸着量は低減でき、偽陽性低減効果があった。
[0084]
〔実施例17〕
 表面親水化反応において、親水化剤の量を8.0mL、カルボキシル基導入反応において、反応剤をポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル Mw600(Creative PEG Works社製、PSB-362)16.4g、炭酸ナトリウムの量を0.01gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。タンパク質の吸着量は、以下の比較例1などと比べると若干低減でき、偽陽性低減効果が認められた。
[0085]
〔実施例18〕
 表面親水化反応において親水化剤の量を40.0mL、カルボキシル基導入反応において、反応剤をポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル Mw600(Creative PEG Works社製、PSB-362)16.4g、炭酸ナトリウム量を9.9gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。タンパク質の吸着量は、以下の比較例1と比べると若干改善された。その結果、若干ではあるが偽陽性低減効果も認められた。
[0086]
〔実施例19〕
 反応剤を11-ブロモウンデカン酸7.2g、炭酸ナトリウム量を0.01gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。親水層及び疎水性スペーサーの効果により、以下の比較例1と比べるとタンパク質の吸着量は低減した。その結果、偽陽性低減効果も認められた。
[0087]
〔実施例20〕
 カルボキシル基導入反応において、反応剤をポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル Mw600(Creative PEG Works社製、PSB-362)16.4g、炭酸ナトリウム量を0.01gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。タンパク質の吸着量は、以下の比較例1と比べると若干改善された。その結果、偽陽性低減効果が認められた。
[0088]
〔実施例21〕
 カルボキシル基導入反応において、反応剤をポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル Mw5000(Creative PEG Works社製、PSB-366)65.6g、炭酸ナトリウム量を9.9gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表1に示す。スペーサーはPEGであったが、長さが長いために排除体積効果が働き、タンパク質の吸着量は0となった。その結果、偽陽性低減効果があった。
[0089]
 実施例1~21で作製した微粒子ついては親水層が保護層として機能したためか抗体を結合させる前の段階での微粒子の発色強度は、反応活性基の導入によっても低下しなかった。
〔比較例1〕
 表面親水化反応とカルボキシル基導入反応を行わないこと以外は、実施例1と同様の方法で着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表2に示す。微粒子表面は疎水的なため、微粒子表面にタンパク質が多量に吸着しやすかったと思われる。その結果、非特異吸着が起こり偽陽性発生率は3%であった。
[0090]
〔比較例2〕
 特許文献4に記載の方法でスペーサーが(CH 16のカルボキシル基導入着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表2に示す。特許文献4とは抗体の使用量が異なるため、特許文献4より感度が飛躍的に向上したが、微粒子表面は疎水的なため、微粒子表面にタンパク質が多量に吸着したため、非特異吸着が起こり偽陽性発生率は3%であった。
[0091]
〔比較例3〕
 表面親水化を行わないこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表2に示す。カルボキシル基が若干多量に導入されたためか、タンパク質の吸着量が比較例1又は2と比べると若干改善された。しかし、親水層が存在しないため、親水化度が低く、タンパク質が吸着してしまい、偽陽性の低減効果はほとんどなかった。
[0092]
〔比較例4〕
 表面親水化を行わず、特許文献4に記載の方法で微粒子表面にアミノ基を導入した。その後、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表2に示す。残存反応性アミノ基量が多い上に親水層も存在しないため、タンパク質の吸着量低減効果は見られなかった。その結果、偽陽性低減効果も認められなかった。
[0093]
〔比較例5〕
 表面親水化を行わず、カルボキシル基導入反応において、反応剤をポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル Mw600(Creative PEG Works社製、PSB-362)16.40gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表2に示す。親水層が存在せず、スペーサーもPEGであったため、微粒子表面とスペーサーが電気的な相互作用で吸着してしまうことに加え、微粒子表面の親水性も十分ではないのでタンパク質が吸着してしまい、吸着量の低減効果は見られなかった。その結果、偽陽性低減効果も認められなかった。
[0094]
〔比較例6〕
 表面親水化は行わず、比較例4と同様の方法で微粒子にアミノ基を導入した。その後、カルボキシル基導入反応において、反応剤に11-ブロモウンデカン酸、炭酸ナトリウムの量を0.01gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表2に示す。親水層が存在せず、残存反応性アミノ基量が多いため、微粒子表面の親水性が十分ではなくタンパク質の吸着低減効果は見られなかった。その結果、偽陽性低減効果も認められなかった。
[0095]
〔比較例7〕
 表面親水化を行わず、比較例4と同様の方法で微粒子にアミノ基を導入した。その後、カルボキシル基導入反応において、反応剤をポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル Mw600(Creative PEG Works社製、PSB-362)16.4gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表2に示す。親水層が存在せず、残存反応性アミノ基量が多いため、微粒子表面の親水性が十分ではない上に、スペーサーもPEGであったために、タンパク質の吸着低減効果は見られなかった。その結果、偽陽性低減効果も認められなかった。
[0096]
〔比較例8〕
 表面親水化を行わず、比較例4と同様の方法で微粒子にアミノ基を導入した。その後、カルボキシル基導入反応において、反応剤をポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル Mw600(Creative PEG Works社製、PSB-362)16.4g、炭酸ナトリウム量を0.01gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表2に示す。親水層が存在せず、残存反応性アミノ基量が多いため、微粒子表面の親水性が十分ではない上に、スペーサーもPEGであったために、タンパク質の吸着低減効果は見られなかった。その結果、偽陽性低減効果も認められなかった。
[0097]
〔比較例9〕
 染色反応を1サイクルとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表2に示す。発色強度が低いために、実施例より検出感度は劣り、それに伴い診断時間も長くなってしまった。
[0098]
〔比較例10〕
 凝固液をジメチルスルホキシド(東京化成社製、D0798)50.00wt%、水50.00wt%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表2に示す。粒子径が小さいために、実施例より検出感度は劣り、それに伴い診断時間も長くなってしまった。
[0099]
〔比較例11〕
 表面親水化反応において親水化剤の量を1.0mLに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表2に示す。親水層が少なすぎたために、カルボキシル基導入反応時に微粒子の発色強度が著しく低下してしまった。
[0100]
〔比較例12〕
 セルロース微粒子の凝固反応において、凝固液をテトラヒドロフラン濃度97.0wt%、水濃度3.0wt%に変更し、カルボキシル基導入反応において、炭酸ナトリウムの量を9.9g、反応剤を11-ブロモウンデカン酸7.2gに変更したこと以外は実施例1と同様の方法でカルボキシル基導入親水化着色セルロース微粒子を作製した。この微粒子の物性、及び発色粒子として使用した際のイムノクロマト性能を以下の表2に示す。微粒子の粒径が大きすぎたために、メンブレン中を展開できなかった。
[0101]
〔比較例13〕
 粒径が50nmでかつカルボキシル基が導入されたカルボキシル基修飾金ナノ粒子2000Da PEGリンカー(CTD社製)を発色粒子として使用し、イムノクロマト性能を評価した。結果を以下の表2に示す。微粒子表面が疎水的なため、メンブレン中を移動する際に時間がかかり発色時間は遅かった。また、微粒子表面が疎水的なため、タンパク質も微粒子表面に吸着しやすく、偽陽性も起こりやすかった。
[0102]
〔比較例14〕
 粒径が470nm、発色強度が0.5でかつカルボキシル基が導入されたラテックス粒子(Bangs社製)を発色粒子として使用し、イムノクロマト性能を評価した。結果を以下の表2に示す。微粒子表面が疎水的なため、タンパク質も微粒子表面に吸着しやすく、偽陽性も起こりやすかった。
[0103]
〔比較例15〕
 実施例1と同様の方法で、親水化着色セルロース微粒子を作製した。その後カルボキシル基導入反応は行わず、そのまま発色粒子として使用した。粒子物性とイムノクロマト性能を表2に示す。粒子が親水性にも拘わらず、抗体との結合部位が存在しないために、抗体が粒子上に担持できなかったので感度が非常に低いものとなった。
[0104]
[表1]


[0105]
[表2]


産業上の利用可能性

[0106]
 本発明に係る親水化着色セルロース微粒子は、高い検出感度を維持しながら、迅速な診断も可能であり、偽陽性の発生リスクが驚くほど低減したイムノクロマト診断キットの発色粒子として好適に利用可能である。

請求の範囲

[請求項1]
 平均粒子径が60~900nmであり、発色強度が1.0~10.0であり、微粒子表面に、親水層を有し、かつ、スペーサーを介してカルボキシル基が導入されていることを特徴とする着色セルロース微粒子。
[請求項2]
 前記カルボキシル基の導入量が、前記着色セルロース微粒子1g当たり0.20~3.00mmolである、請求項1に記載の着色セルロース微粒子。
[請求項3]
 前記親水層が、シラン層、ポリエチレングリコール層(PEG)、又はシラン層とポリエチレングリコール(PEG)層の混合層のいずれかである、請求項1又は2に記載の着色セルロース微粒子。
[請求項4]
 前記スペーサーが、炭化水素系の構造体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の着色セルロース微粒子。
[請求項5]
 請求項1~4のいずれか1項に記載の着色セルロース微粒子の前記カルボキシル基にリガンドが共有結合されている構造体。
[請求項6]
 請求項5に記載の構造体を含むイムノクロマト診断キット。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]