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1. (WO2018186221) 多孔質動圧軸受、流体動圧軸受装置、及びモータ
Document

明 細 書

発明の名称 多孔質動圧軸受、流体動圧軸受装置、及びモータ

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013  

課題を解決するための手段

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031  

発明の効果

0032   0033  

図面の簡単な説明

0034  

発明を実施するための形態

0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086  

符号の説明

0087  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

図面

1   2   3   4   5   6A   6B   6C   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 多孔質動圧軸受、流体動圧軸受装置、及びモータ

技術分野

[0001]
 本発明は、流体動圧軸受装置に組み込まれる動圧軸受に関し、特に、焼結金属等の多孔質材料からなる多孔質動圧軸受に関する。

背景技術

[0002]
 流体動圧軸受装置は、HDDのスピンドルモータをはじめとして、ポリゴンミラーモータ、小型冷却ファンモータ等、小型で高速、高回転精度を要求される用途に広く用いられている。流体動圧軸受装置は、軸部材と、内周に軸部材が挿入された円筒状の軸受部材(動圧軸受)とを備える。動圧軸受と軸部材との相対回転に伴って、動圧軸受の内周面(軸受面)と軸部材の外周面との間のラジアル軸受隙間に満たされた潤滑油の圧力が高められ、これにより軸部材が相対回転自在に非接触支持される。
[0003]
 ところで、HDDは、市場の高容量化の要求に対応するために、1台のドライブにより多くの記録用ディスク(フラッタ)を搭載する傾向にある。その結果、スピンドルモータの流体動圧軸受装置にかかる負荷が大きくなり、これに組み込まれる動圧軸受の耐摩耗性向上の要求が高まっている。
[0004]
 焼結金属製の動圧軸受の耐摩耗性を向上させる方法として、例えば下記の特許文献1に示されているように、ステンレス鋼粉末などの硬度の高い粉末を用いる方法が知られている。
[0005]
 また、焼結金属製の動圧軸受(焼結軸受)の製造に際し、例えば下記の特許文献2には、軸受面成形前の焼結金属素材の真密度比を75~85%の範囲に設定することが記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特開2006-214003号公報
特許文献2 : 特許第3602318号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 しかし、特許文献1のように硬度の高い粉末を用いると、軸受性能(特に、初期のなじみ性)や加工性(特に、動圧発生溝の成形性)に問題が生じるおそれがある。
[0008]
 そこで、本発明は、高硬度の粉末によることなく、多孔質動圧軸受の耐摩耗性を高めることを第1の目的とする。
[0009]
 また、多孔質体からなる焼結軸受の表面には、表面に開口した無数の気孔が存在する。軸受面に開口した気孔の数が多すぎると、当該気孔を介して軸受内部に逃げる潤滑油の量が増えるため、軸受隙間に満たされた潤滑油の圧力が低下する、いわゆる圧力抜けの問題を生じる。
[0010]
 その一方で、焼結軸受には、多孔質体であるが故に軸受内部を潤滑油が循環できるという利点がある。軸受内部で潤滑油を循環させることにより、軸受隙間でのせん断力等の常時作用による潤滑油の劣化を抑制でき、焼結軸受の長寿命化に寄与することができる。
[0011]
 圧力抜けを防止するため、従来では、焼結工程で得た焼結体の内周面に回転サイジングを施している。回転サイジングにより、焼結体の内周面に塑性流動を生じさせて、表面に開口した気孔を潰すことができ、圧力抜けの問題を解消することができる。なお、この回転サイジングは、圧力抜けが問題となる軸受面に限って施され、軸受面以外の表面には施されない。
[0012]
 ところで、特許文献2に記載されたような焼結軸受をハウジングに固定する際の固定手法として、接着や接着と圧入の併用が広く採用されている。このように接着剤を使用する場合、図10に示すように、ハウジング70の内周面701と焼結軸受80の外周面801との間に接着剤層90が形成される。しかしながら、焼結軸受80の外周面801に多数開口した気孔802が内部の気孔とつながった連通気孔を構成しているため、接着剤の硬化前に一部の接着剤が毛細管力により連通気孔を介して軸受内部に吸い込まれる。接着剤層90のうち、接着剤が吸い込まれた領域では、微小空間901が発生するため、ハウジングの内部を潤滑油で満たした後にもハウジング内にエアが残ることになる。このエアは、長期運転時に次第に焼結軸受内部にリークし、潤滑油にエアが混入する原因となる。潤滑油に混入したエアが軸受外に漏れ出た際には、潤滑油漏れや回転精度の低下を招くことになる。
[0013]
 そこで、本発明は、接着剤の吸い込みを原因とした潤滑油中へのエアの混入を抑制できる焼結軸受を提供することを第2の目的とする。

課題を解決するための手段

[0014]
 前記第1の目的を達成するために、本発明は、内周面に軸受面を有する多孔質動圧軸受であって、真密度比が90%以上95%以下である多孔質動圧軸受を提供する。
[0015]
 尚、真密度比は、以下の式で定義される。ρ1は多孔質体の密度であり、ρ0は、その多孔質体に気孔が無いと仮定した場合の密度(真密度)である。
 真密度比[%]=(ρ1/ρ0)×100
[0016]
 従来、焼結金属等からなる多孔質動圧軸受の真密度比は80~90%程度であったが、これを90%以上まで高めることにより、多孔質動圧軸受の内部及び表面(特に軸受面)における気孔が減じられる。これにより、多孔質動圧軸受の軸受面と軸部材の外周面との実摺動面積が広くなり、これらの間に生じる実荷重圧力が小さくなるため、これらの面の耐摩耗性が高められる。
[0017]
 ところで、多孔質動圧軸受の軸受面に回転サイジングや樹脂コーティング等の封孔処理を施すことによっても、軸受面の気孔が減じられるため、耐摩耗性の向上が期待できる。しかし、この場合、軸受面の摩耗が進むと、多孔質動圧軸受の内部の気孔が軸受面に露出するため、軸受面の気孔が増えて耐摩耗性が低下する。これに対し、上記のように、多孔質動圧軸受全体の密度を高め、表面だけでなく内部の気孔も減じることで、軸受面の摩耗がある程度進んだ状況でも優れた耐摩耗性を維持することができる。
[0018]
 多孔質動圧軸受は、内部気孔に潤滑油(潤滑グリースを含む。以下同様。)を保持することができ、この潤滑油が軸受面から滲み出してラジアル軸受隙間に供給されることで、潤滑性が高められる。しかし、上記のように多孔質動圧軸受を90%以上の超高密度にすると、内部と表面とを連数する連通気孔が無くなり、上記の効果が得られなくなるおそれがある。そこで、多孔質動圧軸受の内部と表面とを連通する連通気孔を維持しながら(好ましくは、4%以上の含油率を確保しながら)、多孔質動圧軸受の密度を90%以上まで高めることで、多孔質動圧軸受の内部における潤滑油の循環を保持し、軸受面からの潤滑油の滲み出しによる潤滑性向上効果を確保することができる。
[0019]
 上記のように多孔質動圧軸受を超高密度にすると、内部に保持される潤滑油量が極少量となるため、軸受面と軸部材との摺動により生じた摩耗粉等が混入することで、潤滑油が早期に劣化するおそれがある。本発明では、上記のように、軸受面と軸部材との実摺動面積を広くすることで実荷重圧力が小さくなり、これらの摺動による摩耗粉の発生が抑制されるため、上記のように多孔質動圧軸受の内部に保持される油量が少ない場合でも、潤滑油に対する汚染負荷が小さくなり、潤滑油の早期の劣化を防止できる。また、上記のように多孔質動圧軸受を超高密度にすることで、内部気孔の一つ一つの大きさが小さくなる。この微小な内部気孔を潤滑油が通過することで、潤滑油に混入した微細な摩耗粉を効果的に捕捉することができるため、軸受面と軸部材との摺動部に摩耗粉が供給されることによる悪影響を防止できる。
[0020]
 上記の多孔質動圧軸受は、例えば焼結金属、特に銅を35質量%以上含む焼結金属で形成することができる。
[0021]
 流体動圧軸受装置の稼働中に、多孔質動圧軸受の軸受面と軸部材の外周面との摺動部に介在する潤滑油が流出等により失われると、多孔質動圧軸受の内部に保持された潤滑油が軸受面から滲み出して摺動部に潤滑油が補われる。多孔質動圧軸受の内部に保持された潤滑油が無くなると、軸受面から摺動部に潤滑油を補うことができなくなるため、この時点が多孔質動圧軸受の寿命と考えられている。従って、上記のように、多孔質動圧軸受を超高密度にして内部に保持される油量が少なくなると、多孔質動圧軸受の寿命が却って短くなるおそれがある。
[0022]
 そこで、上記の多孔質動圧軸受は、断面楔状のシール空間を有する流体動圧軸受装置(いわゆるフルフィルタイプの流体動圧軸受装置)に適用することが好ましい。具体的には、上記の多孔質動圧軸受と、前記多孔質動圧軸受の内周に挿入された軸部材と、前記多孔質動圧軸受の内周面と前記軸部材の外周面との間に形成されるラジアル軸受隙間と、前記ラジアル軸受隙間の大気開放側に設けられ、前記ラジアル軸受隙間側に向けて半径方向隙間が漸次縮小した断面楔状をなし、潤滑流体と大気との界面を保持するシール空間とを備えた流体動圧軸受装置とすることが好ましい。このように、断面楔状のシール空間を設けることで、流体動圧軸受装置の内部の潤滑油が外部に漏れ出すことがほとんど無くなるため、内部に保持する油量が少ない上記のような超高密度の多孔質動圧軸受を適用することが可能となる。
[0023]
 上記の流体動圧軸受装置と、ステータコイルと、ロータマグネットとを有するモータは、高負荷荷重に対する耐久性が高い。このようなモータは、HDD、特に複数の記録用ディスクを搭載したHDDに好適に適用できる。
[0024]
 また、上記第2の目的を達成するために、本発明は、多孔質の焼結金属からなり、軸部材を支持する軸受面を備え、ハウジングに接着固定される焼結軸受において、銅を20質量%以上含有し、真密度比が90%以上95%以下であり、少なくともハウジングに接着固定される接着面が、前記焼結金属を塑性流動させた面であることを特徴とする。
[0025]
 この焼結軸受では、焼結軸受全体の真密度比が90%以上95%以下であり、既存の焼結軸受よりも高密度化されている。このように高密度化することで、焼結軸受中の気孔の割合(気孔の数や大きさ)を減少させることができる。
[0026]
 さらに、焼結軸受のうち、少なくともハウジングに接着固定される接着面を、焼結金属を塑性流動させた面とすることにより、接着面の表面に開口した気孔が概ね封孔される。そのため、毛細管力による軸受内部への接着剤の吸い込みが生じ難くなり、接着剤の吸い込みに起因した接着剤層での微小空間の発生を抑制して、潤滑油中へのエアの混入を防止することができる。
[0027]
 接着面での焼結金属の塑性流動は、接着面を型に圧接させた状態で両者を相対的に摺動させる工程、例えばサイジング工程で生じさせることができる。この際のサイジング代を既存品よりも大きくする(強サイジングを行う)ことにより、接着面の表面開孔率をより一層小さくすることができ、毛細管力による軸受内部への接着剤の吸い込みがより確実に防止される。特に本発明では、焼結体中に銅を20%以上含有させており、焼結体に含まれる軟質材料の割合が多くなっているので、強サイジングを行った際にも塑性流動が生じ易くなり、接着面の封孔効果が高まる。なお、強サイジングを行うと、焼結体の接着面近傍でクラック等の損傷を生じ易くなるが、上記のように焼結体を高密度化することにより、焼結体の強度が高まるため、かかる不具合を防止することができる。
[0028]
 軸受面に動圧発生溝を形成することにより、回転精度の向上や高速回転化を図ることができる。
[0029]
 以上に述べた焼結軸受と、焼結軸受との間で軸受隙間を形成する軸部材と、焼結軸受を収容するハウジングと、ハウジングの内部空間を大気に開放するシール空間と、ハウジングの内部空間を満たす潤滑油と、焼結軸受外に設けられ、軸受隙間の一端から流出した潤滑油を当該軸受隙間の他端に還流させる通油路とで流体動圧軸受装置を構成することができる。
[0030]
 このように焼結軸受外に通油路を設けることにより、この通油路が、ハウジングの内部で潤滑油を循環させる機能を担う。上記のように焼結軸受を高密度化した場合、焼結軸受内部での油の循環が阻害されるため、軸受隙間に油が滞留し易くなり、潤滑油の劣化を助長することになるが、上記の通油路を設けることにより、軸受隙間での潤滑油の滞留を防止して循環性の低下を補うことができ、潤滑油の劣化を抑制することが可能となる。
[0031]
 以上に述べた流体動圧軸受装置と、ロータマグネットと、ステータコイルとでモータを構成することができる。

発明の効果

[0032]
 以上のように、本発明によれば、高硬度の粉末によることなく、多孔質動圧軸受の耐摩耗性を高めることができる。
[0033]
 また、本発明によれば、毛細管力による軸受内部への接着剤の吸い込みが生じ難くなり、接着剤の吸い込みに起因した接着剤層での微小空間の発生を抑制することができる。従って、潤滑油中へのエアの混入を抑制することができ、長期にわたり、潤滑油の漏れを防止すると共に、回転精度を安定して維持することが可能となる。

図面の簡単な説明

[0034]
[図1] スピンドルモータの縦断面図である。
[図2] 本発明の一実施形態に係る流体動圧軸受装置の縦断面図である。
[図3] 軸受部材の縦断面図である。
[図4] 軸受部材の下面図である。
[図5] 回転サイジング工程を示す横断面図である。
[図6A] サイジング工程を示す縦断面図である。
[図6B] サイジング工程を示す縦断面図である。
[図6C] サイジング工程を示す縦断面図である。
[図7] サイジング工程の前後における焼結体の形状変化を示す縦断面図である。
[図8] 本実施形態におけるハウジングと軸受部材の接着部分を拡大して示す縦断面図である。
[図9] 従来品と本実施形態品の抜去力の測定結果を示す図である。
[図10] 従来品におけるハウジングと軸受部材の接着部分を拡大して示す縦断面図である。

発明を実施するための形態

[0035]
 以下、本発明(特に、上記第1の目的を達成するための発明)の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[0036]
 図1は、本実施形態に係る流体動圧軸受装置1を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に非接触支持する流体動圧軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5とを備えている。ステータコイル4はケーシング6に取付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3に取付けられる。流体動圧軸受装置1のハウジング7の外周面は、ケーシング6の内周に装着される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスクDが所定枚数保持される。ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に作用する電磁力でロータマグネット5が回転し、それによって、ディスクハブ3および軸部材2が一体となって回転する。
[0037]
 図2に示すように、流体動圧軸受装置1は、軸部材2と、ハウジング7と、ハウジング7の内周に保持された軸受部材8と、ハウジング7の軸方向一端の開口部に設けられたシール部9と、ハウジング7の軸方向他端を閉塞する蓋部10とを有する。なお、以下の説明では、便宜上、軸方向でハウジング7の閉塞側を下側、ハウジング7の開口側を上側と言うが、これは流体動圧軸受装置1の使用態様を限定する趣旨ではない。
[0038]
 軸部材2は、軸部2aと、軸部2aの下端に設けられたフランジ部2bとを備える。軸部材2は、ステンレス鋼等の金属材料で形成され、本実施形態では、軸部2aおよびフランジ部2bを含む軸部材2全体が一体に形成される。軸部2aとフランジ部2bを別体に形成することもできる。
[0039]
 軸部2aの外周面には、軸方向に離隔する2箇所に形成された円筒面2a1と、2箇所の円筒面2a1の間に設けられ、円筒面2a1よりも小径な環状凹部2a2とが設けられる。円筒面2a1は、軸受部材8の内周面8aの軸受面8a1と半径方向で対向する軸受対向面として機能する。
[0040]
 ハウジング7は軸受部材8を保持する部材であり、樹脂あるいは金属で円筒状に形成される。ハウジング7の内周面7aには、軸受部材8の外周面8dが、接着や圧入等の適宜の手段で固定される。
[0041]
 軸受部材8は、多孔質材料、例えば焼結金属で円筒状に形成された多孔質動圧軸受である。軸受部材8の内周面8aには、図3に示すように、軸方向に離隔した2箇所にラジアル軸受面8a1が形成される。各ラジアル軸受面8a1には、動圧発生部としてヘリングボーン形状に配列された動圧発生溝G1,G2が設けられる。図中クロスハッチングで示す領域は、周囲より盛り上がった丘部を示している(図4においても同様)。上側の動圧発生溝G1は軸方向で非対称な形状を成し、下側の動圧発生溝G2は軸方向で対称な形状を成している。軸方向非対称形状の上側の動圧発生溝G1により、ラジアル軸受隙間の潤滑流体が軸方向下向きに押し込まれ、ハウジング7の内部で潤滑流体が強制的に循環される(後述する)。ラジアル軸受面8a1の軸方向間領域には、円筒面8a2が設けられる。円筒面8a2は、動圧発生溝G1、G2の溝底面と同一円筒面上に連続して設けられる。
[0042]
 なお、上下の動圧発生溝G1,G2の双方を軸方向対称形状としてもよい。また、上下の動圧発生溝G1,G2を軸方向で連続させたり、上下の動圧発生溝G1,G2の一方あるいは双方を省略したりしてもよい。また、軸受部材8の内周面8aを円筒面として、軸部2aの外周面(軸受対向面)に動圧発生部を設けてもよい。また、軸受部材8の軸受面8a1および軸部2aの軸受対向面の双方を円筒面とした、いわゆる真円軸受を使用することもできる。
[0043]
 軸受部材8の下側端面8bにはスラスト軸受面が形成される。スラスト軸受面には、動圧発生部として、図4に示すようなポンプインタイプのスパイラル形状の動圧発生溝G3が形成される。尚、動圧発生溝の形状として、ヘリングボーン形状や放射溝形状等を採用しても良い。また、軸受部材8の下側端面8bを平坦面として、軸部材2のフランジ部2bの上側端面2b1に動圧発生溝を形成してもよい。
[0044]
 本実施形態の軸受部材8は、銅を35質量%以上含む焼結金属、特に、銅及び鉄をそれぞれ35質量%以上含む焼結金属で形成される。軸受部材8は、以下の方法で製造される。まず、原料粉末を圧縮成形して圧粉体を形成する(圧粉工程)。原料粉末は、主成分金属粉末として、銅系粉末(銅粉あるいは銅合金粉)及び鉄系粉末(鉄粉あるいは鉄合金粉)の何れか又は双方を含む。原料粉末は、ステンレス鋼粉末等の高硬度の粉末を含んでいない。本実施形態の原料粉末は、主成分金属粉末として、純鉄粉及び純銅粉を含む。原料粉末は、主成分金属粉末の他、錫粉末等の低融点金属粉末や、黒鉛粉等の炭素粉末、あるいは成形用潤滑剤等を含んでもよい。この圧粉体を所定の焼結温度で焼結することにより焼結体を得る(焼結工程)。この焼結体にサイジングを施すことにより、内周面及び下側端面に図3及び図4に示す動圧発生溝G1~G3を成形する(サイジング工程)。本実施形態では、焼結体の内周面及び下側端面に回転サイジング等の封孔処理は施さない。この焼結体の内部気孔に潤滑油を含浸させることにより、軸受部材8が完成する。
[0045]
 軸受部材8は、真密度比が90%以上95%以下である。軸受部材8には、内部と表面とを連通する連通気孔(特に内周面8aと外周面8dとを連通する連通気孔)が形成され、具体的には、含油率が4%以上となる程度の連通気孔が形成される。すなわち、含油率が4%以上となる程度の連通気孔が形成されるように、軸受部材8の成形条件(例えば、圧粉工程及びサイジング工程における圧縮率等)が設定される。軸受部材8は、サイジングにより、内周面8a(特にラジアル軸受面8a1)及び下側端面8b(スラスト軸受面)における表面開口率が、軸受部材8の気孔率(=100%-真密度比)の値以下となっており、具体的には10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下とされる。
[0046]
 シール部9は、ハウジング7の上端から内径側に突出している。本実施形態では、シール部9がハウジング7と一体に形成される。シール部9の内周面9aは、下方に向けて漸次縮径したテーパ状を成す。シール部9の内周面9aと軸部2aの外周面(円筒面2a1)との間には、下方に向けて半径方向幅を徐々に狭めた楔状のシール空間Sが形成される(図2参照)。この他、シール部9の内周面を円筒面とする一方で、軸部2aの外周面に上方に向けて漸次縮径するテーパ面を設け、これらの間に楔状のシール空間Sを形成してもよい。あるいは、シール部9の内周面及び軸部2aの外周面の双方に、上方に向けて漸次縮径するテーパ面を設け、シール部9のテーパ面の軸方向に対する傾斜角度を、軸部2aのテーパ面の軸方向に対する傾斜角度よりも小さくすることで、これらの間に楔状のシール空間Sを形成してもよい。シール部9の下側端面9bには、軸受部材8の上側端面8cが当接している。
[0047]
 蓋部10は、黄銅等の金属や樹脂で形成され、ハウジング7の内周面7aの下端部に、圧入、接着等の適宜の手段で固定される。これによりハウジング7の内部の空間がシール空間Sでのみ大気に開放された密閉空間となる。蓋部10は、ハウジング7と一体に形成することもできる。
[0048]
 蓋部10の端面10aにはスラスト軸受面が形成される。このスラスト軸受面には、例えばポンプインタイプのスパイラル形状の動圧発生溝が形成される(図示省略)。尚、動圧発生溝の形状として、ヘリングボーン形状や放射溝形状等を採用しても良い。また、蓋部10の端面10aを平坦面として、軸部材2のフランジ部2bの下側端面2b2に動圧発生溝を形成してもよい。
[0049]
 ハウジング7の内部には、軸方向に延びる軸方向通油路11と、半径方向に延びる半径方向通油路12とが形成される。図2に示す実施形態において、軸方向通油路11は、軸受部材8の外周面8dとハウジング7の内周面7aとの間に形成され、半径方向通油路12は、軸受部材8の上側端面8cとシール部9の下側端面9bとの間に形成されている。軸方向通油路11の下端は、軸受部材8の下側端面8bよりも下方の空間に開口し、上端は半径方向通油路12の外径端と連通する。半径方向通油路12の内径端はシール空間Sに開口している。
[0050]
 図2の実施形態では、軸受部材8の外周面8dに軸方向に延びる軸方向溝8d1を設け、軸方向溝8d1とハウジング7の内周面7aとで画成された隙間により、軸受部材8の外周面8dに沿う軸方向通油路11が形成されている。軸受部材8の上側端面8cには、環状溝8c1と環状溝8c1の内径側に位置する複数の半径方向溝8c2とが設けられ、環状溝8c1および半径方向溝8c2と、シール部9の下側端面9bとで形成される隙間により、軸受部材8の上側端面8cに沿う半径方向通油路12が形成されている。また、シール部9の下側端面の外径側領域は、軸受部材8の上側端面8cから離反した位置にあり、この外径側領域と軸受部材8の上側端面8cとの間に形成された環状隙間13に、軸方向通油路11の上端と半径方向通油路12の外径端とがそれぞれ開口している。環状隙間13は、軸方向通油路11もしくは半径方向通油路12の一部を構成する。かかる構成から、軸受部材8の下側端面8bよりも下方の空間が、軸方向通油路11および半径方向通油路12を介してシール空間S、さらにはラジアル軸受隙間と連通した状態となる。
[0051]
 なお、軸方向通油路11および半径方向通油路12は、軸受部材8の下側端面8bよりも下方の空間とシール空間Sとを連通させるものである限り任意の形態を採用することができ、図2および図3に示す形態には限定されない。例えば軸方向溝8d1をハウジング7の内周面7aに形成してもよい。また、環状溝8c1や半径方向溝8c2をシール部9の下側端面9bに形成してもよい。
[0052]
 流体動圧軸受装置1の内部には、潤滑流体としての潤滑油が真空含浸等の手段により供給され、ハウジング7の内部の全ての空間、例えば軸受部材8の内周面8aと軸部2aの外周面との間の隙間、軸受部材8の下側端面8bとフランジ部2bの上側端面2b1との間の隙間、フランジ部2bの下側端面2b2と蓋部10の端面10aとの間の隙間、軸方向通油路11、および半径方向通油路12が、軸受部材8の内部気孔を含めて全て潤滑油で満たされる。この時、油面は、シール空間S内に形成される。
[0053]
 軸部材2が回転すると、軸受部材8の内周面8aのラジアル軸受面8a1と軸部2aの円筒面2a1との間にラジアル軸受隙間が形成される。そして、動圧発生溝G1,G2によりラジアル軸受隙間に形成された油膜の圧力が高められ、これにより軸部材2をラジアル方向に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1及び第2ラジアル軸受部R2が構成される。これと同時に、軸受部材8の下側端面8b(スラスト軸受面)とフランジ部2bの上側端面2b1との間、及び、蓋部10の端面10a(スラスト軸受面)とフランジ部2bの下側端面2b2との間に、それぞれスラスト軸受隙間が形成される。そして、軸受部材8の下側端面8bの動圧発生溝G3及び蓋部10の端面10aの動圧発生溝により、各スラスト軸受隙間に形成された油膜の圧力が高められ、これにより軸部材を両スラスト方向に非接触支持する第1スラスト軸受部T1及び第2スラスト軸受部T2が構成される。
[0054]
 また、軸部材2の回転中は、第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2の各動圧発生溝G1,G2の非対称性等に起因して、軸受部材8の内周面8aと軸部2aの外周面との間の隙間を満たす潤滑油に一定方向の流れ(例えば下向き)が生じる。そのため、第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受隙間から流出した潤滑油は、スラスト軸受隙間、軸方向通油路11、半径方向通油路12を経てシール空間Sに達し、さらには第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受隙間を介して第2ラジアル軸受部のラジアル軸受隙間に還流する。
[0055]
 軸部材2の起動直後や停止直前の低速回転時には、ラジアル軸受隙間及びスラスト軸受隙間の油膜の圧力が低いため、これらの軸受隙間を介して対向する面(軸受部材8の内周面8aと軸部材2の軸部2aの円筒面2a1、軸受部材8の下側端面8bと軸部材2のフランジ部2bの上側端面2b1、及び、蓋部10の上側端面10aと軸部材2のフランジ部2bの下側端面2b2)とが互いに摺動する。このとき、軸受部材8が真密度比90%以上の超高密度であることで、軸受部材8の内周面8a(ラジアル軸受面8a1)及び下側端面8b(スラスト軸受面)に開口する気孔が少なくなっている。これにより、各軸受隙間を介して対向する面の実摺動面積が大きくなるため、これらの面の間に生じる実荷重圧力が小さくなり、耐摩耗性が高められる。特に、軸受部材8の表面の気孔だけを潰すのではなく、軸受部材8全体を高密度化しているため、軸受部材8の各軸受面の摩耗がある程度進行した状況でも、上記のような優れた耐摩耗性を維持することができる。
[0056]
 また、軸受部材8は、含油率が4%以上となる程度の連通気孔を有するため、軸受部材8の内部気孔にある程度の潤滑油が保持される。この潤滑油が軸受面から滲み出して軸受隙間に供給されることで、軸受部材8と軸部材2との摺動部における潤滑性を高めることができる。
[0057]
 また、上記のように軸受部材8を高密度に成形することで、内部気孔の一つ一つの大きさが小さくなる。この微小な内部気孔を潤滑油が通過することで、潤滑油に混入した微細な摩耗粉を効果的に捕捉することができるため、軸受部材8と軸部材2との摺動部(軸受隙間)に摩耗粉が供給されることによる悪影響を防止できる。
[0058]
 また、図2に示すように、流体動圧軸受装置1はいわゆるフルフィルタイプであり、ラジアル軸受隙間の一方側(図中上側)が大気開放側、他方側(図中下側)が閉塞側とされ、大気開放側に断面楔形状のシール空間Sが設けられる。流体動圧軸受装置1の内部(シール空間Sよりも内部側の空間)は潤滑油で満たされており、油面はシール空間S内に保持される。このようなフルフィルタイプの流体動圧軸受装置1は、シール空間Sから潤滑油が漏れ出すことがほとんど無いため、内部に充填される油量は少なくてもよい。上記のような超高密度の軸受部材8は、内部気孔が少なく、内部に含浸される油量が少ないため、油量が少なくて済むフルフィルタイプの流体動圧軸受装置1に好適に適用することができる。
[0059]
 本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、軸受部材8の原料粉末が高硬度の金属粉末を含まない場合を示したが、原料粉末として高硬度の粉末(ステンレス鋼粉末)を用いてもよい。このような原料粉末を用いて、上記のように超高密度に成形することで、耐摩耗性がさらに高められる。
[0060]
 また、軸受部材8の製造工程において、焼結体に、回転サイジング等の封孔処理を施してもよい。この場合、軸受部材8の軸受面における表面開口率がさらに小さくなるため、軸受面と軸部材2との実摺動面積がさらに大きくなり、耐摩耗性がさらに高められる。
[0061]
 また、上記の実施形態では、軸受部材8が固定され、軸部材2が回転する場合を示したが、これとは逆に、軸部材2を固定し、軸受部材8側を回転させてもよい。また、本発明に係る多孔質動圧軸受は、HDD等のディスク駆動装置用のスピンドルモータのみならず、冷却ファン用のファンモータやレーザビームプリンタ用のポリゴンスキャナモータなどに組み込んで使用することもできる。
[0062]
 本発明の効果を確認するために、以下の試験を行った。
[0063]
 組成が異なる2種類の材料を用いて、それぞれ真密度比が90%未満の多孔質動圧軸受(比較例1,2)と真密度比が90%以上の多孔質動圧軸受(実施例1,2)を作成した。これらの多孔質動圧軸受を有する流体動圧軸受装置を用いて、15000回、あるいは10000回のOn-Off試験を行った後、多孔質動圧軸受の内周面(軸受面)の摩耗量を測定した。各試験片の組成及び真密度比と、試験結果(摩耗量)を下記の表1に示す。
[0064]
[表1]


[0065]
 以上の結果から、多孔質動圧軸受の真密度比を90%とすることで、軸受面の耐摩耗性が向上することが確認された。
[0066]
 以下、本発明(特に、上記第2の目的を達成するための発明)の実施形態を、図1~図4を援用して説明する。尚、上記の実施形態と重複する点は説明を省略する。
[0067]
 この実施形態では、ハウジング7の内周面7aに、軸受部材8の外周面8dが接着によって固定される。接着としては、軸受部材8の外周面8dとハウジング7の内周面7aとを隙間嵌めの状態で接着した、いわゆる隙間接着が採用される。隙間接着は、軸受部材8の外周面8dとハウジング7の内周面7aを隙間嵌めで嵌合させた状態で、両面間の隙間に接着剤を注入し、毛細管力で隙間の奥に引き込むことにより行われる。この他、軸受部材8の外周面8dとハウジング7の内周面7aのどちらか一方に接着剤を塗布した上で、両者を隙間嵌めで嵌合させてもよい。接着剤としては、空気との遮断により硬化する嫌気性の接着剤、エポキシ系等のような加熱硬化型の接着剤、紫外線の照射で硬化する紫外線硬化型の接着剤等が知られている。本実施形態では、公知の接着剤を任意に使用することができる。
[0068]
 隙間接着により、軸受部材8の外周面8dとハウジング7の内周面7aの間に、硬化した接着剤からなる接着剤層18(図8参照)が形成される。接着剤層18は、軸受部材8の外周面8dとハウジング7の内周面7aの間の隙間の全域にわたって形成する他、当該隙間の一部領域(軸方向の一部領域、あるいは円周方向の一部領域等)に限って形成してもよい。
[0069]
 軸受部材8は、多孔質の焼結体で円筒状に形成された焼結軸受である。この焼結体としては、20質量%以上の銅を含む焼結金属が使用される。銅を20質量%以上含む限り、他の含有元素は任意であり、銅のみを主成分とする銅系焼結金属の他、銅と鉄を主成分とする銅鉄系焼結金属、あるいは、銅とステンレス鋼を主成分とするステンレス系焼結金属等を使用することもできる。
[0070]
 この実施形態の流体動圧軸受装置1における軸受部材8(焼結軸受)は、原料粉から、軸受部材8の形状に対応した形状の圧粉体を成形する成形工程、圧粉体を焼結する焼結工程、焼結により得られた焼結体の内周面に回転サイジングを施す回転サイジング工程、および焼結体を金型内で圧縮成形するサイジング工程、を順次経て製作される。
[0071]
 このうち、回転サイジング工程は、図5に示すように、円筒状の焼結体8’の内周面に締め代αをもって治具15を押し当てた状態で、焼結体8’の回転を拘束しつつ軸受中心を中心として治具15を回転させる工程である。この回転サイジングにより、焼結体8’の内周面に焼結金属の塑性流動が生じるため、内周面の気孔が潰れて表面開孔率が小さくなる。これにより、ラジアル軸受隙間の潤滑油が軸受部材8の内部に還流する圧力抜けの問題が回避される。回転サイジング工程では、焼結体8’の表面のうち、軸受面となる焼結体8’の内周面のみに回転サイジングが施される。
[0072]
 サイジング工程は、回転サイジング工程を経た焼結体8’の寸法矯正を行う工程である。このサイジング工程で使用する金型は、図6A~図6Cに示すように、ダイス20、上パンチ21、下パンチ22、およびコア23とからなる。図6Aに示すように、コア23と上パンチ21が上方に後退した状態で、下パンチ22上に焼結体8’をセットする。この時、焼結体8’の外径寸法は、ダイス20の内径寸法よりも大きく、焼結体の内径寸法は、コア23の外径寸法よりも大きい。つまり焼結体8’の外周面とダイス20の内周面との間には、締め代としてのサイジング代βがあり、焼結体8’の内周面とコア23の外周面との間には隙間がある。サイジング代βは、焼結体8’の内径寸法とコア23の外径寸法との差(隙間幅)よりも大きい。なお、サイジング代βおよび隙間幅の大小関係は、何れも直径寸法で対比する。
[0073]
 次に、図6Bに示すように、最初にコア23を焼結体8’の内周に挿入する。その後、図6Cに示すように、上パンチ21により焼結体8’をダイス20内に押し込み、上下のパンチ21,22により焼結体8’を圧縮する。これに伴い、ダイス20の内周面で焼結体8’の外周面が軸方向にしごかれると共に、焼結体8’の内周面がコア23の外周面に押し付けられて成形される。焼結体8’の外周面では、しごきにより焼結金属が軸方向に塑性流動し、焼結体8’の外周面が塑性流動した面となる。この塑性流動により焼結体8’の外周面に開口した気孔が封孔される。焼結体8’の内周面はコア23に対して殆ど摺動せず、また、焼結体8’の両端面もパンチ21,22に対して殆ど摺動しない。従って、サイジング工程中は、焼結体8’の外周面を除く表面では殆ど塑性流動が生じない。そのため、サイジング工程の前後で対比すると、焼結体8’の外周面で表面開孔率の減少量が最大となる。
[0074]
 図7に、サイジング工程により圧縮される前後の焼結体8’の形態を誇張して示す。サイジング工程を経る前の焼結体8’を二点鎖線で示し、サイジング工程を経た後の焼結体(軸受部材8)を実線で示す。同図に示すように、サイジング工程を経ることで、焼結体8’の外径寸法および内径寸法の双方が縮径する。また、焼結体8’の幅寸法(軸方向の寸法)も縮小する。焼結体8’の外径寸法の変化量Toは、内径寸法の変化量Tiよりも大きい。サイジング工程後は、焼結体8の表面のうち、回転サイジングされた内周面の表面開孔率が最小となり、ダイス20にしごかれた外周面の表面開孔率がその次に小さくなる。
[0075]
 以上の工程により、軸受部材8が完成する。完成後の軸受部材8は、既に述べたとおりハウジング7の内周面7aに接着固定される。引き続いて、ハウジング7内に軸部材2を収容し、さらにハウジング7の底部開口を蓋部10で封孔した後、真空含浸等の手法により、ハウジング7の内部の空間を軸受部材8の内部気孔も含めて潤滑油で満たすことにより、図2に示す流体動圧軸受装置1が完成する。
[0076]
 以下、本発明の特徴的構成を説明する。
 上記の各工程を経た最終製品としての軸受部材8(潤滑油を含浸させていない軸受部材)は、全体の真密度比が90%以上95%以下(好ましくは91%以上94%以下)とされる。これは、既存の焼結軸受よりも軸受部材8が高密度化されていることを意味する(既存品の真密度比は87%程度である)。この高密度化は、成形工程において、成形圧力を従来品よりも高めることで達成される。従って、本実施形態では、圧粉体の真密度比も従来品の圧粉体の真密度比よりも高くなっている。
[0077]
 歯車やエンジンのコネクティングロッド等のような焼結機械部品では、強度を溶製品に近付けるため、極力気孔を無くすのが好ましく、そのため、焼結体を真密度比で100%近くまで高密度化するのが通例である。これに対し、焼結軸受では、機械部品に比べれば機械的強度はそれほど必要とされず、むしろ気孔が存在することによるメリット(軸受内部で連通気孔を介して潤滑油を循環させ、潤滑油の劣化を防止する)を活用する必要があるため、真密度比は機械部品に比べれば低く設定されており、上記のとおり87%程度の真密度比が従来の焼結軸受では標準的である。
[0078]
 これに対して本実施形態では、軸受部材8の真密度比を90%~95%まで高めているため、軸受部材8全体における気孔の数を少なくすると共に気孔の大きさを小さくすることができ、それに応じて表面に開口する気孔の面積比(表面開孔率)を小さくすることができる。軸受部材8の真密度比が90%を下回れば、後述の塑性流動による封孔効果を考慮しても、軸受部材8の外周面8dでの接着剤の吸い込みを抑制する効果が不十分となる。その一方で、真密度比が95%を超えると、軸受部材8の内部での潤滑油の最低限の循環を確保することができず、潤滑油の早期劣化が問題となる。
[0079]
 なお、このように軸受部材8を高密度化することにより、軸受部材8の内部での潤滑油の循環性は低下するが、図2に示すように、軸受部材8の連通気孔を介した循環経路とは別に、軸受部材8外に軸方向通油路11や半径方向通油路12を設けることにより、ラジアル軸受隙間を満たす潤滑油が、ラジアル軸受隙間の一方の端部から流出して、他方の端部に還流する。このように潤滑油の外部循環機構を設けることにより、ラジアル軸受隙間で潤滑油が停滞することを防止して高密度化による循環性の低下を補うことができる。
[0080]
 このように軸受部材8を高密度化することに加えて、本実施形態では、サイジング工程により、軸受部材8の表面のうちで、接着面となる外周面8dに成形型(ダイス20)でしごきを与えて、外周面8dを、焼結金属の塑性流動が生じた面としている。そのため、外周面8dに開口した気孔が封孔される。特にサイジング工程におけるサイジング代β(図6A参照)を既存品におけるサイジング代(概ね20μm以下)よりも大きい100μm以上に設定した、いわゆる強サイジングを行うことにより、外周面8dに開口した気孔をほぼ完全に封孔することが可能となる。
[0081]
 そのため、図8に示すように、軸受部材8の外周面には、粗大気孔は開口せず、数少ない微小気孔17が開口しているにすぎない状態となる。従って、軸受部材8をハウジング7の内周面7aに接着固定した際にも、毛細管力による軸受内部への接着剤の吸い込みが生じ難くなる。そのため、接着剤の吸い込みに起因した接着剤層18での微小空間(図10の符号901)の発生を抑制することができる。これにより、微小空間901から軸受部材8の内部へリークするエアをなくし、潤滑油へのエアの混入による潤滑油の漏れや回転精度の低下を防止することが可能となる。
[0082]
 既に述べたように、本実施形態では、軸受部材8を、銅を20重量%以上含有する焼結金属で形成しており、軸受部材8に含有された軟質材料の割合が多くなっている。そのため、サイジング工程においてダイス20でしごきを与えた際に、外周面8dに塑性流動が生じ易くなり、外周面8dに対する封孔効果が高まる。また、サイジング工程で強サイジングを行うと、焼結体8’の外周面付近でクラック等の損傷を生じ易くなるが、本実施形態のように焼結体8’の段階で高密度化しておけば、焼結体8’の強度が高まるため、かかる不具合を防止することが可能となる。
[0083]
 図9に、従来品と本実施形態品とについて、ハウジング7に接着固定した軸受部材8をハウジング7から引き抜く際に必要となる引き抜き荷重(抜去力)を測定した結果を表す。なお、従来品と本実施形態品は、何れも焼結金属としてCu-Fe40%の銅鉄系を使用している。真密度比は従来品で87%、本実施形態品で92%である。
[0084]
 図9の結果から、本実施形態品では従来品よりも抜去力が向上し、特に本実施形態品のサイズであれば1400N以上の抜去力を達成できることが明らかとなった。これは、接着剤層18に微小空間が殆ど存在しないため、接着剤層18が十分な接着強度を発揮したことによる、と考えられる。従って、本実施形態の構成によれば、軸受部材8の抜去力を高めることができ、流体動圧軸受装置1の耐衝撃性を向上させることも可能となる。
[0085]
 以上の実施形態の説明では、ハウジング7と軸受部材8の接着手法として隙間接着を採用した場合を例示したが、この他にも、例えば軸受部材8を接着剤の介在の下でハウジング7の内周に圧入する、いわゆる圧入接着を採用する場合にも、上記の構成をそのまま適用することにより、同様の効果を得ることができる。
[0086]
 以上に説明した流体動圧軸受装置1は、HDD等のディスク駆動装置用のスピンドルモータに限らず、ファンモータやレーザビームプリンタ用のポリゴンスキャナモータなどの小型モータに組み込んで使用することもできる。

符号の説明

[0087]
1 流体動圧軸受装置
2 軸部材
7 ハウジング
8 軸受部材(多孔質動圧軸受)
8a1 ラジアル軸受面
8b 下側端面(スラスト軸受面)
9 シール部
10 蓋部
11 軸方向通油路
12 半径方向通油路
13 環状隙間
18 接着剤層
G1,G2,G3 動圧発生溝
R1,R2 ラジアル軸受部
T1,T2 スラスト軸受部
S シール空間
β サイジング代

請求の範囲

[請求項1]
 内周面に軸受面を有し、真密度比が90%以上95%以下である多孔質動圧軸受。
[請求項2]
 内部と表面とを連通する連通気孔を有する請求項1に記載の多孔質動圧軸受。
[請求項3]
 含油率が4%以上である請求項2に記載の多孔質動圧軸受。
[請求項4]
 銅を35質量%以上含む焼結金属からなる請求項1~3の何れか1項に記載の多孔質動圧軸受。
[請求項5]
 請求項1~4の何れか1項に記載の多孔質動圧軸受と、前記多孔質動圧軸受の内周に挿入された軸部材と、前記多孔質動圧軸受の内周面と前記軸部材の外周面との間に形成されるラジアル軸受隙間と、前記ラジアル軸受隙間の大気開放側に設けられ、前記ラジアル軸受隙間側に向けて半径方向隙間が漸次縮小した断面楔状をなし、潤滑流体と大気との界面を保持するシール空間とを備えた流体動圧軸受装置。
[請求項6]
 焼結金属からなり、ハウジングに接着固定され、
 銅を20質量%以上含有し、少なくともハウジングに接着固定される接着面が、前記焼結金属を塑性流動させた面である請求項1に記載の多孔質動圧軸受。
[請求項7]
 前記軸受面に動圧発生溝が形成されている請求項6に記載の多孔質動圧軸受。
[請求項8]
 請求項6または7に記載の多孔質動圧軸受と、前記多孔質動圧軸受との間で軸受隙間を形成する軸部材と、前記多孔質動圧軸受を収容するハウジングと、前記ハウジングの内部空間を大気に開放するシール空間と、前記ハウジングの内部空間を満たす潤滑油と、前記多孔質動圧軸受外に設けられ、前記軸受隙間の一端から流出した潤滑油を当該軸受隙間の他端に還流させる通油路とを備えた流体動圧軸受装置。
[請求項9]
 前記通油路が、前記多孔質動圧軸受の外周面に沿う軸方向通油路と、前記多孔質動圧軸受の端面に沿い、前記シール空間に通じる半径方向通油路とを有する請求項8に記載の流体動圧軸受装置。
[請求項10]
 請求項5、8、9の何れか1項に記載の流体動圧軸受装置と、ステータコイルと、ロータマグネットとを備えたモータ。
[請求項11]
 HDDに組み込まれる請求項10に記載のモータ。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6A]

[ 図 6B]

[ 図 6C]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]