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1. (WO2018185847) ピストン
Document

明 細 書

発明の名称 ピストン

技術分野

0001  

背景技術

0002  

発明の概要

0003   0004   0005   0006  

図面の簡単な説明

0007  

発明を実施するための形態

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070  

請求の範囲

1   2   3   4  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

明 細 書

発明の名称 : ピストン

技術分野

[0001]
 本発明は、内燃機関のピストンであって、断熱膜を有するピストンに関する。

背景技術

[0002]
 JP2014-20283Aには、ピストンの頂部に形成され、ピストンの内部への熱伝達を抑制するための遮熱膜と、ピストンの頂部にピストンの外周部から間隔を隔てて設けられる凹部とを備え、遮熱膜の末端部分が、ピストンの頂部に設けた凹部に配設されることが開示されている。

発明の概要

[0003]
 このような従来技術によれば、断熱膜(遮熱膜)が熱伝達を抑制することにより、気筒内の温度の低下を抑制できて、燃焼効率が向上できるという利点がある。
[0004]
 一方、断熱膜は体積当たりの熱容量が一般的に大きい。そのため、混合気の燃焼により断熱膜の温度が上昇することで、吸気、圧縮行程において熱せられた断熱膜により気筒内の混合気が受熱し、混合気の温度が上昇する。このために、ノッキングが発生しやすくなり、ノック性能が低下するという問題がある。
[0005]
 本発明の目的は、冷却損失の低減を抑制しながら、ノック性能の低下を抑制できるピストンを提供することである。
[0006]
 本発明のある態様によれば、内燃機関のピストンであって、ピストンの冠面には、吸気旋回流を保持する凹部が形成されており、冠面は、熱伝導率が前記ピストンの母材よりも低く、かつ、体積当たりの熱容量が前記ピストンの母材よりも小さい断熱膜を有する断熱膜形成部と、断熱膜形成部よりも内燃機関のシリンダボア側の外側位置にあって断熱膜を有しない断熱膜非形成部と、を備える。

図面の簡単な説明

[0007]
[図1] 図1は、内燃機関システムの全体構成の説明図である。
[図2] 図2は、筒内に生ずるタンブル流動の説明図である。
[図3] 図3は、タンブル流動崩壊の説明図である。
[図4] 図4は、燃料噴射時期と点火時期との関係を示す図である。
[図5] 図5は、プラグ近傍における流動付与の説明図である。
[図6] 図6は、燃料噴射弁による乱流増加の説明図である。
[図7] 図7は、燃料噴射弁から噴射される燃料噴霧の形態を示す説明図である。
[図8] 図8は、噴射ビームの形状の説明図である。
[図9] 図9は、点火プラグと燃料噴射弁の配置を示す図である。
[図10] 図10は、燃料噴射の縮流についての説明図である。
[図11] 図11は、ピストンの説明図である。
[図12] 図12は、断熱膜の説明図である。
[図13] 図13は、ピストンの表面温度の計測結果の一例を示す説明図である。

発明を実施するための形態

[0008]
 以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
[0009]
 図1は、本実施形態の内燃機関システム1の全体構成の説明図である。内燃機関システム1は、吸気通路51及び排気通路52がそれぞれ接続される内燃機関10を備える。内燃機関10は、吸気通路51から吸気された混合気が燃焼されることでピストン18が往復運動を行ない駆動する。燃焼後の排ガスは排気通路52へと排出される。
[0010]
 吸気通路51にはタンブルコントロールバルブ16が設けられる。タンブルコントロールバルブ16は、吸気通路51の流路断面の一部を閉塞することにより筒内にタンブル流動を生成する。
[0011]
 吸気通路51にはコレクタタンク46が設けられる。コレクタタンク46にはEGR通路53bが接続される。
[0012]
 吸気通路51において、コレクタタンク46の上流にはエアフローメータ33が設けられる。エアフローメータ33に接続するコントローラ50は、エアフローメータ33から吸気通路51内を流れる空気の流量(吸気量)を取得する。また、吸気通路51のエアフローメータ33の近傍には吸気温センサ34が設けられる。吸気温センサ34に接続するコントローラ50は、吸気温センサ34から吸気通路51を通過する空気の温度(吸気温)を取得する。
[0013]
 また、吸気通路51には電子制御スロットル41が設けられ、コントローラ50によりスロットル開度が制御される。
[0014]
 排気通路52には排気浄化用の排気触媒44、45が設けられる。排気触媒44、45には三元触媒等が用いられる。排気通路52において、排気触媒44と排気触媒45との間で、コレクタタンク46と接続するEGR通路53aに分岐する。
[0015]
 EGR通路53aにはEGRクーラー43が設けられる。また、EGR通路53bには、EGRバルブ42が設けられる。EGRバルブ42は、コントローラ50に接続される。内燃機関10の運転条件に応じて、コントローラ50によりEGRバルブ42の開度が制御される。
[0016]
 内燃機関10は、点火プラグ11と燃料噴射弁12と吸気側可変動弁機構13と排気側可変動弁機構14とを備える。さらに、内燃機関10は、燃料噴射ポンプ15とピストン18とを備える。燃料噴射弁12は、筒内に燃料を直接噴射する直上噴射弁であり、点火プラグ11の近傍に設けられる。
[0017]
 点火プラグ11は、内燃機関10の燃焼室内で火花点火を行う。点火プラグ11は、コントローラ50に接続され、コントローラ50によって火花点火時期が制御される。
[0018]
 燃料噴射弁12は、コントローラ50に接続され、燃料噴射時期が制御される。本実施形態では、吸気行程を含めて複数回燃料噴射を行う、いわゆる多段噴射が行われる。燃料噴射ポンプ15は、加圧した燃料を燃料噴射弁12に供給する。
[0019]
 吸気側可変動弁機構13は、吸気弁の開閉時期を変化させる。排気側可変動弁機構14は、排気弁の開閉時期を変化させる。吸気側可変動弁機構13及び排気側可変動弁機構14は、コントローラ50に接続される。コントローラ50は、吸気側可変動弁機構13及び排気側可変動弁機構14の開閉時期を制御する。本実施形態では、吸気側可変動弁機構13及び排気側可変動弁機構14を示しているが、いずれか一方を有するものであってもよい。
[0020]
 内燃機関10には、ノックセンサ21、燃圧センサ24、クランク角センサ26及び筒内圧センサ35が設けられる。ノックセンサ21及び燃圧センサ24は、内燃機関10のノックの状態及び燃料噴射ポンプ15から送られる燃料の燃圧を検出し、コントローラ50に送る。
[0021]
 同様に、クランク角センサ26は、内燃機関10におけるクランク角を検出する。クランク角センサ26はコントローラ50に接続され、内燃機関10のクランク角をコントローラ50に送る。筒内圧センサ35は、内燃機関10における燃焼室の圧力を検出する。筒内圧センサ35はコントローラ50に接続され、内燃機関10の燃焼室の圧力をコントローラ50に送る。
[0022]
 コントローラ50は、前述の各種センサ及び図示しないその他のセンサからの出力を読み込み、これらの出力及び予め記憶されたマップ等に基づいて、燃料噴射時期、点火時期、バルブ開閉時期、空燃比等を制御する。
[0023]
 図2は、本実施形態の内燃機関10の筒内に生ずるタンブル流動の説明図である。図3は、本実施形態の内燃機関10のタンブル流動崩壊の説明図である。
[0024]
 図2及び図3には、吸気通路51、排気通路52、点火プラグ11、燃料噴射弁12及びタンブルコントロールバルブ16が示されている。また、図2及び図3には、点火プラグ11の中心電極11aと外側電極11bが示されている。
[0025]
 図2では、吸気行程における筒内のタンブル流動が矢印で示されている。図3では、圧縮行程における筒内のタンブル流動が矢印で示されている。
[0026]
 本実施形態のピストン18は、その冠面に凹部としての浅皿61が形成されている。浅皿61は、タンブル流動を保持するのに適した、なめらかな凹形状に形成されている。
[0027]
 内燃機関10の吸気行程において、タンブルコントロールバルブ16が閉じられていると、吸気は吸気通路51の図中上側に偏って流れ、筒内に流入する。その結果、図示するように筒内には縦方向に旋回する吸気旋回流動(タンブル流動)が形成される。タンブル流動は、ピストン18の冠面の浅皿61の表面に沿って流動することで、タンブル流動が保持される。なお、ピストン18の冠面のシリンダボア近傍付近(図2中Aで示す箇所)では、タンブル流動から外れ、混合気の流動が弱くなる。
[0028]
 その後、図3に示すように、圧縮行程においてピストン18が上昇することにより筒内の燃焼室が狭まる。燃焼室が狭くなると、タンブル流動は押しつぶされ、徐々にその流動を維持できなくなり、やがて崩壊する。
[0029]
 タンブル流動が維持されている間に燃料と吸気との混合が促進される。よって、タンブル流動が崩壊するときには、筒内の混合気は均質化している。しかし、タンブル流動の崩壊後は、筒内の混合気の流動が弱まる。筒内の混合気の流動が弱まると、点火プラグ11の点火時にプラグ放電チャンネルが十分伸長しない状態となる。なお、「プラグ放電チャンネル」とは、点火プラグ11の中心電極11a、外側電極11bの間に生ずるアークである。特に、点火プラグ11の近傍の混合気の流動が弱まると、火花点火により発生した火炎核が成長し難くなるので、失火やパーシャルバーンを起こしやすくなる。
[0030]
 そこで、圧縮上死点以降のプラグ点火時にプラグ放電チャンネルが十分伸長するように、点火時近傍のタイミングにおいて点火プラグ近傍に流動を与える。具体的には、コントローラ50が、前述した多段噴射の吸気行程と膨張行程に加えて、タンブル流動崩壊後からプラグ放電チャンネル生成までの間に、さらに燃料噴射を行なうように制御する。
[0031]
 図4は、本実施形態における燃料噴射時期と点火時期との関係を示す説明図である。
[0032]
 図4に示すように、吸気行程において燃料噴射を行なうだけでなく、圧縮行程においても点火プラグ11の点火時期に合わせてさらに燃料噴射を行なう。燃料噴射弁12は点火プラグ11の近傍に配置されているので、噴射された燃料の一部は点火プラグ11の近傍を通過する。これにより、点火プラグ11近傍に流動が付与される。
[0033]
 なお、燃料噴霧による気流の乱れによって噴霧の一部が点火プラグ11の中心電極11a、外側電極11bに付着する可能性を考慮して、膨張行程噴射の後に燃料を噴射してもよい。
[0034]
 図5は、プラグ近傍における流動付与の説明図である。上記したように、燃料噴射弁12は直上噴射弁であり、点火プラグ11の近傍に設けられる。そのため、噴射された燃料の一部は放電ギャップ近傍を通過することになる。よって、タンブル流動が崩壊した後に燃料噴射が行われることにより、点火プラグ近傍に流動を付与することができる。
[0035]
 図6は、本実施形態の燃料噴射弁12による筒内の乱流増加の説明図である。図6において、横軸はクランク角を示し、縦軸は乱流強度を示す。
[0036]
 前述のように圧縮行程でタンブル流動は崩壊する。そのため、圧縮行程で乱流強度も徐々に弱くなる。そこで、図6に示すように、点火プラグ11の点火時期に合わせて燃料噴射を行うことによって、乱流強度を高めることができる。すなわち、燃料噴射を行うことによって流動を与えることができる。
[0037]
 図7は、本実施形態の燃料噴射弁12から噴射される燃料噴霧の形態を示す説明図である。図8は、図7の円Aを含む平面を図7の矢印VIII方向から観察した説明図である。
[0038]
 本実施形態の燃料噴射弁12は、6つの噴孔から燃料が噴射される。6つの噴孔から噴射される燃料噴霧(以下、噴霧ビームともいう)をB1-B6としたとき、各噴霧ビームは噴孔から遠ざかるほど噴霧断面が広くなる円錐形状である。
[0039]
 図9は、本実施形態の噴霧ビームB1-B6と点火プラグ11との位置関係を示す説明図である。燃料噴射弁12は、噴霧ビームB2の中心軸B2cと噴霧ビームB3の中心軸B3cとがなす角の二等分線である一点鎖線C上に配置される。
[0040]
 図10は、本実施形態の燃料噴射による効果を説明する説明図である。燃料噴射弁12から噴射された燃料は、液滴へと分裂して噴霧になり、図中の太線矢印のように周囲の空気を取り込みながら前進する。これにより噴霧の周りに気流の乱れが発生する。
[0041]
 また、流体は、周囲に物体(流体を含む)がある場合には、いわゆるコアンダ効果によってその物体に引き寄せられ、その物体に沿って流れる。すなわち、図9に示す配置では、噴霧ビームB2と噴霧ビームB3とが図10の細線矢印のように引き合う、いわゆる縮流が生じる。これにより、噴霧ビームB2と噴霧ビームB3との間には、強い乱流れが生じ、乱流によってプラグ放電チャンネルを伸長させることができる。
[0042]
 次に、本実施形態のピストン18の構成を説明する。
[0043]
 図11は、本実施形態のピストン18の説明図であり、ピストン18の正面図及びピストン18の側面図を示す。
[0044]
 ピストン18の冠面には、タンブル流動を保持するのに適した凹部としての浅皿61が形成されている。この浅皿61には、後述するように断熱膜60が備えられる。
[0045]
 ピストン18は、アルミ合金等の金属の母材により構成される。ピストン18の冠面に本実施形態の断熱膜60を備えない場合、ピストン18の母材の熱伝導率が大きいため、混合気の燃焼においてもピストン18の冠面の温度は上昇しにくい一方で、このことによる冷却損失により燃焼効率が低下する。
[0046]
 そこで、従来、ピストン18の冠面の温度の低下を防ぎ、冷却損失を抑制することを目的として、ピストン18の冠面に断熱膜を形成することが行なわれてきた。ピストン18の冠面に断熱膜を形成することにより、ピストン18の冠面の温度が低下し難くなり、冷却損失が抑制され燃焼効率の低下が防止できる。従来の断熱膜は、ピストン18の表面に陽極酸化処理により多孔質のアルマイト被膜を形成したり、熱伝導性の低い金属やセラミックス等を被覆したりすることにより、形成されることが一般的であった。
[0047]
 このように形成される断熱膜は、熱伝導率が低く、かつ、体積当たりの熱容量が大きいものであった。体積当たりの熱容量が大きい場合は、高負荷運転など、ピストン18の冠面の温度が大きく上昇するような運転状態では、上昇した断熱膜の温度が高いままとなり、ピストン18の冠面の温度が低下しにくい。ピストン18の冠面の温度が高いまま維持されると、吸気行程及び圧縮行程において混合気と断熱膜との間で熱交換が行なわれることで混合気が加熱される。
[0048]
 特に、ピストン18の浅皿61によりタンブル流動が維持されることで、混合気と断熱膜とが触れる度合いが大きくなり、断熱膜から混合気への熱伝達量が大きくなる。このために混合気の温度が上昇しやすくなり、異常点火が発生するなど、ノック性能が低下するという問題があった。
[0049]
 そこで、本実施形態では、ピストン18冠面の浅皿61(凹部)に形成される断熱膜60を、ピストン18の母材よりも熱伝導率が低く、かつ、体積当たりの熱容量が小さい材質により構成した。このような材質からなる断熱膜60は、熱容量が小さいことにより、燃焼時に断熱膜60の温度が上昇しても、その後筒内温度の低下に伴って断熱膜60の温度が維持されることなく低下する。このように、筒内の温度に伴って断熱膜の温度が追従するような特性を、「スイング特性」と呼ぶ。
[0050]
 本実施形態の断熱膜60は、多孔質の樹脂材料を塗布することにより形成される。樹脂材料は、耐熱性を有し、熱伝導率が低く、かつ、スイング特性を有する材料が好適であり、例えば多孔質ポリイミド樹脂が用いられる。
[0051]
 本実施形態では、図11に示すように、ピストン18の冠面において、浅皿61が形成される領域に、多孔質の樹脂材料からなる断熱膜60が形成された断熱膜形成部63を備える。
[0052]
 図12は、本実施形態の断熱膜60の説明図である。
[0053]
 断熱膜60は、ピストン18の冠面の浅皿61に樹脂材料を被覆することで形成される。樹脂材料は図12に示すように多数の空孔60aを有する。断熱膜60は、多数の空孔60aが分布していることより、熱伝導率が低く、かつ、体積当たりの熱容量が小さい、スイング特性を有する断熱膜60を形成することができる。空孔60aは、断熱膜60において一様に分布するように配置されていてもよいし、断熱膜60の厚さ方向にしたがって空孔60aの密度が増加又は減少するように配置されていてもよい。
[0054]
 なお、断熱膜60は、熱特性においてスイング特性を有する多孔質材料であればどのような材質でもよい。例えば、ジルコニア等のセラミックス材料をピストン18の冠面に溶射することで形成してもよいし、ニッケル、モリブデン等の金属材料をピストン18冠面に溶射、鍍金することで形成してもよい。また、ピストン18の冠面に陽極酸化処理等の処理を行なうことにより多孔質膜を形成してもよい。
[0055]
 また、ピストン18の冠面において、浅皿61以外の部分、すなわち、浅皿61を含むピストンの内周側領域よりも外側に位置するシリンダボア内径近傍付近(外側領域)には、断熱膜60が形成されていない断熱膜非形成部62を備える。断熱膜非形成部62においては、ピストン18の母材が筒内に露出している。
[0056]
 このように構成することで、断熱膜非形成部62では、燃焼後、熱伝導により速やかにピストン18冠面の温度が低下するため、タンブル流動から外れて混合気の流動が遅くなるシリンダボア近傍付近(図2中Aで示す箇所)において、混合気を過熱することがない。これにより、未燃焼の混合気の異常燃焼を防止することができるので、ノッキングの発生を防止できる。
[0057]
 図13は、本実施形態の断熱膜60を有するピストン18の表面温度の計測結果の一例を示す説明図である。図13において、横軸はクランク角度を示し、縦軸はピストン18の表面温度を示す。
[0058]
 図13では、本実施形態の断熱膜60を有するピストン18の断熱膜表面温度の推移を太実線で示し、断熱膜60を有しないピストン18の表面温度を一点鎖線で示し、スイング特性を有しない従来の断熱膜を有するピストン18の断熱膜表面温度を点線で示す。
[0059]
 断熱膜60を有しないピストン18の表面温度は、断熱膜60を有するピストン18と比較して熱伝導率が大きい。このため、図5中点線で示すように、ピストン18の上死点直後に行なわれる混合気の燃焼時において表面温度の上昇は僅かであり、その後は熱伝導により表面温度は比較的低い状態で推移する。
[0060]
 一方で、スイング特性を有しない従来の断熱膜、すなわち、熱伝導率が低く、かつ、体積当たりの熱容量が小さい断熱膜を有するピストン18の断熱膜表面温度は、図5中一点鎖線で示すようになる。すなわち、従来の断熱膜では熱伝導率が小さいため、ピストン18の上死点直後に行なわれる混合気の燃焼により表面温度が上昇し、排気行程及び吸気行程においても表面温度が上昇したままとなる。
[0061]
 これらに対して、本実施形態のスイング特性を有する断熱膜60の表面温度は、図5中太実線で示すように、ピストン18上死点直後に行なわれる混合気の燃焼により表面温度が一旦上昇する。その後は、断熱膜60の体積当たりの熱容量が小さいことから、熱がピストン18に伝達されて表面温度は徐々に低下する。その後、吸気行程においては、断熱膜を有さないピストン18の表面温度(点線で示す)、すなわちピストン18の母材と同等の温度まで低下する。
[0062]
 このように、本実施形態のスイング特性を有する断熱膜60の表面温度は、圧縮行程における燃焼に伴って一時的に上昇するが、その後はピストン18の熱伝導によって低下する。従って、タンブル流動により浅皿61の表面に混合気が流動しても、混合気への熱伝達を抑制できて、ノック性能の低下を防止できる。
[0063]
 次に、本実施形態の効果を説明する。
[0064]
 上記の通り本実施形態では、内燃機関10のピストン18であって、ピストン18の冠面に吸気旋回流を保持する凹部としての浅皿61が形成され、ピストン18の冠面は、熱伝導率がピストン18の母材よりも低く、かつ、体積当たりの熱容量がピストン18の母材よりも小さい断熱膜60を備える断熱膜形成部63と、断熱膜形成部63よりも内燃機関10のシリンダボア側の外側位置に形成され、断熱膜60を備えない断熱膜非形成部62と、を備える。
[0065]
 このように構成された本実施形態では、膨張行程において混合気の燃焼時にピストン18の冠面の温度は上昇する。一方で、吸気行程、圧縮行程において、断熱膜60の温度を低くできる。また、シリンダボア近傍付近(図2中Aで示す箇所、断熱膜非形成部62)では、断熱膜60を有さずピストン18の母材の熱伝達により冠面の温度を低くできる。これにより、燃焼時での冷却損失を抑制しつつ、吸気行程、圧縮行程時でのノック性能を向上できる。
[0066]
 また、本実施形態では、ピストン18の冠面において断熱膜60が形成された断熱膜形成部63は、凹部としての浅皿61が形成される領域と一致するように構成した。このように構成することにより、吸気行程、圧縮行程において、吸気旋回流による混合気の流動が大きくなる浅皿61での熱交換を抑制できるので、燃焼時での冷却損失を抑制しつつ、吸気行程、圧縮行程時でのノック性能を向上できる。
[0067]
 また、本実施形態では、ピストン18の浅皿61は、内燃機関10の筒内に流入する吸気の吸気旋回流としてタンブル流動を保持するように構成した。このように構成することにより、タンブル流動により浅皿61で流動する混合気との熱交換を断熱膜60により抑制できるので、燃焼時の冷却損失を抑制しつつ、吸気行程、圧縮行程時でのノック性能を向上できる。
[0068]
 また、本実施形態では、断熱膜60は、ピストン18の冠面に塗布された多孔質ポリイミド等の多孔質樹脂材料により形成される。このように構成することにより、樹脂材料を塗布するという簡易な工程により断熱膜を形成することができるので、陽極酸化皮膜やセラミックスの溶射等に比べると、ピストン18の製造工程のコストを低減することができる。
[0069]
 以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。例えば、ピストン18の浅皿61は、吸気旋回流としてタンブル流動を保持する形状としたが、これに限られない。浅皿61がスワール流動を保持する形状を有してもよい。また、浅皿61は、必ずしも凹形状でなくてもよく、その形状により吸気旋回流(タンブル流動、スワール流動)を保持する形状であればどのようなものでもよい。また、ピストン18の冠面にバルブリセスが形成されていてもよい。
[0070]
 また、本実施形態において、断熱膜60が形成される断熱膜形成部63は、必ずしも浅皿61の領域と一致する必要はない。断熱膜60が浅皿61の外周よりも外側へと形成されていてもよいし、断熱膜60が浅皿61の外周よりも内側に形成されていてもよい。

請求の範囲

[請求項1]
 内燃機関のピストンであって、
 前記ピストンの冠面には、吸気旋回流を保持する凹部が形成されており、
 前記冠面は、熱伝導率が前記ピストンの母材よりも低く、かつ、体積当たりの熱容量が前記ピストンの母材よりも小さい断熱膜を有する断熱膜形成部と、前記断熱膜形成部よりも前記内燃機関のシリンダボア側の外側位置であって前記断熱膜を有しない断熱膜非形成部と、を備えるピストン。
[請求項2]
 請求項1に記載のピストンであって、
 前記断熱膜形成部は、前記凹部が形成された領域であるピストン。
[請求項3]
 請求項1又は2に記載のピストンであって、
 前記吸気旋回流は、前記内燃機関の筒内に流入する吸気のタンブル流動であるピストン。
[請求項4]
 請求項1から3のいずれか一つに記載のピストンであって、
 前記断熱膜は、前記冠面に塗布された多孔質樹脂材料により構成されるピストン。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]