このアプリケーションの一部のコンテンツは現時点では利用できません。
このような状況が続く場合は、にお問い合わせくださいフィードバック & お問い合わせ
1. (WO2018181897) 多層構造体を含有する樹脂組成物およびその製造方法
Document

明 細 書

発明の名称 多層構造体を含有する樹脂組成物およびその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013  

発明の効果

0014  

図面の簡単な説明

0015  

発明を実施するための形態

0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079  

実施例

0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : 多層構造体を含有する樹脂組成物およびその製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、樹脂組成物に関する。より詳細に、本発明は、透明性、耐温水白化性、耐沸水白化性、耐衝撃性、および製膜性に優れる樹脂組成物に関する。

背景技術

[0002]
 アクリル系樹脂フィルムは、透明性、意匠性、耐候性などに優れているが、約80~100℃の温水または沸水に触れると白化することがある。また、耐衝撃性、金属や他の樹脂との密着性が低いこともある。
 耐温水白化性の改良を狙ったものとして、例えば、特許文献1は、平均粒子径0.2~0.4μmのゴム粒子が分散したアクリル樹脂からなり、鉛筆硬度がH以上であり、厚さが300μm以下であるアクリル積層浴室内装壁材用アクリルフイルムを開示している。
[0003]
 特許文献2は、メタクリル樹脂中にゴム粒子が分散したアクリル系樹脂からなり、水溶性物質の含有量が200ppm以下で、80℃の温水に1時間浸漬した後の曇価が5%以下であり、50μm以上600μm以下の厚みを有するアクリル樹脂フィルムを開示している。
 特許文献3は、平均粒子径が10nm以上300nm以下であるゴム弾性体粒子を含有するアクリル系樹脂組成物を成形してなるフィルムであって、フィルム中に含有される長軸が500nm未満であるミクロボイドが30個/400μm 2以下であるアクリル樹脂フィルムを開示している。
[0004]
 耐衝撃性、滑性および艶消し性の改良を図ったものとして、例えば、特許文献4は、メタクリル系樹脂(A)60~98質量%と多層構造重合体粒子(B)40~2質量%との合計100質量部およびシリコーン微粒子(C)0.1~5質量部からなるメタクリル系樹脂組成物からなるフィルムを開示している。
 金属との密着性を良好にすることを図ったものとして、例えば、特許文献5は、酸価が0.2mmol/g以上のアクリル系ゴム粒子(A)を含有し、フィルムを構成する樹脂全体の酸価が0.15mmol/g以上1.5mmol/g以下である、(メタ)アクリル系樹脂フィルムを開示している。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2000-191804号公報
特許文献2 : 特開2003-277528号公報
特許文献3 : 特開2009-73984号公報
特許文献4 : 特開2004-263034号公報
特許文献5 : WO2012/053190A1

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 本発明の目的は、透明性、耐温水白化性、耐沸水白化性、耐衝撃性および製膜性に優れる樹脂組成物を提供することである。

課題を解決するための手段

[0007]
 上記の目的を達成すべく検討を重ねた結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
[0008]
〔1〕 アクリル系軟質重合体(b1)の層と、アクリル系軟質重合体(b1)の層によって被覆されたアクリル系硬質重合体(a)の層と、アクリル系硬質重合体(a)の層の中に分散した少なくとも二つのアクリル系軟質重合体(b2)の分散相とを有する、平均径が0.13μm以上0.3μm以下である多層構造体を含有する、
 含水率が0.3%以下で且つ
 アセトン可溶分の酸価が0.020mmol/g以下である、
樹脂組成物。
[0009]
〔2〕 多層構造体は、アクリル系硬質重合体(a)の質量と、アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)の合計質量との比((a)の質量/[(b1)および(b2)の合計質量])が、5/60~50/20である、〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕 多層構造体は、アクリル系軟質重合体(b2)の質量と、アクリル系軟質重合体(b1)の質量との比((b2)の質量/(b1)の質量)が、0.1/99.9~30/70である、〔1〕または〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕 アクリル系硬質重合体(a)は、アセトン可溶分が10質量%以下であり、
 アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)は、いずれも、アセトン可溶分が10質量%以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかひとつに記載の樹脂組成物。
〔5〕 アクリル系硬質重合体(a)は、ガラス転移温度が30℃以上であり、
 アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)は、いずれも、ガラス転移温度が30℃未満である、〔1〕~〔4〕のいずれかひとつに記載の樹脂組成物。
[0010]
〔6〕 前記〔1〕~〔5〕のいずれかひとつに記載の樹脂組成物を80質量%以上含有する成形体。
〔7〕 前記〔1〕~〔5〕のいずれかひとつに記載の樹脂組成物を80質量%以上含有するフィルム。
[0011]
〔8〕 乳化重合を行って多層構造アクリル系重合体を含有するラテックスを得、 該ラテックスを凝固させてスラリーを得、 該スラリーを脱水し、 脱水されたスラリーを30℃~80℃にて乾燥させることを含む、〔1〕~〔5〕のいずれかひとつに記載の樹脂組成物の製造方法。
[0012]
〔9〕 前記多層構造アクリル系重合体は、 アクリル系軟質重合体(b1)の層と、アクリル系軟質重合体(b1)の層によって被覆されたアクリル系硬質重合体(a)の層と、アクリル系硬質重合体(a)の層の中に分散した少なくとも二つのアクリル系軟質重合体(b2)の分散相とを有する、平均径が0.13μm以上0.3μm以下である多層構造体の少なくとも一つが、アクリル系硬質重合体(c)の層によって被覆されてなるコアシェル構造重合体粒子である、〔8〕に記載の製造方法。
[0013]
〔10〕 アクリル系硬質重合体(c)は、ガラス転移温度が30℃以上である、〔9〕に記載の製造方法。
〔11〕 アクリル系硬質重合体(c)は、アセトン可溶分が90~100質量%である、〔9〕または〔10〕に記載の製造方法。

発明の効果

[0014]
 本発明の樹脂組成物は、透明性、耐温水白化性、耐衝撃性、製膜性などに優れる。

図面の簡単な説明

[0015]
[図1] 本発明の樹脂組成物中の多層構造体を示す概念図である。
[図2] 実施例1で得られた樹脂組成物の電子顕微鏡写真を示す図である。
[図3] 比較例1で得られた樹脂組成物の電子顕微鏡写真を示す図である。

発明を実施するための形態

[0016]
 本発明の樹脂組成物は、多層構造体を含有するものである。
[0017]
 多層構造体は、アクリル系硬質重合体(a)とアクリル系軟質重合体(b1)および(b2)とを含有する。
[0018]
 アクリル系硬質重合体(a)は、ガラス転移温度が好ましくは30℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上、よりさらに好ましくは100℃以上である。アクリル系硬質重合体(a)のガラス転移温度の上限は、好ましくは160℃である。
[0019]
 アクリル系硬質重合体(a)は、メチルメタクリレートに由来する構造単位、アルキルアクリレートに由来する構造単位、およびグラフト化剤に由来する構造単位を含有してなる重合体であることが好ましい。アクリル系硬質重合体(a)は、必要に応じて架橋剤に由来する構造単位を含有してもよい。
[0020]
 アクリル系硬質重合体(a)におけるメチルメタクリレートに由来する構造単位の量は、アクリル系硬質重合体(a)を構成する全構造単位の質量に対して、好ましくは40~99.8質量%、より好ましくは90~99.5質量%である。メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が多いほど耐候性が向上する傾向があり、メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が少ないほど耐衝撃性が向上する傾向がある。
[0021]
 アクリル系硬質重合体(a)におけるアルキルアクリレートに由来する構造単位の量は、アクリル系硬質重合体(a)を構成する全構造単位の質量に対して、好ましくは0~60質量%、より好ましくは0~10質量%である。アルキルアクリレート中のアルキル基は炭素数が1~8であることが好ましい。アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が多いほど耐熱分解性が向上する傾向があり、アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が少ないほど耐温水白化性若しくは耐沸水白化性が向上する傾向がある。
[0022]
 アクリル系硬質重合体(a)におけるグラフト化剤に由来する構造単位の量は、アクリル系硬質重合体(a)を構成する全構造単位の質量に対して、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%である。グラフト化剤に由来する構造単位の量が多いほどアクリル系硬質重合体(a)とアクリル系軟質重合体(b1)および(b2)との結合力が向上する傾向があり、グラフト化剤に由来する構造単位の量が少ないほど耐衝撃性が向上する傾向がある。
[0023]
 アクリル系硬質重合体(a)における架橋剤に由来する構造単位の量は、アクリル系硬質重合体(a)を構成する全構造単位の質量に対して、好ましくは0~0.5質量%、より好ましくは0~0.2質量%である。架橋剤に由来する構造単位は耐熱性などに寄与する。架橋剤に由来する構造単位の量が少ないほど耐衝撃性が向上する傾向がある。
 アクリル系硬質重合体(a)は、アセトン可溶分が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
[0024]
 アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)は、いずれも、ガラス転移温度が好ましくは30℃未満、より好ましくは0℃未満、さらに好ましくは-20℃未満、よりさらに好ましくは-30℃未満である。アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)のガラス転移温度の下限は、好ましくは-90℃である。
[0025]
 アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)は、いずれも、アルキルアクリレートに由来する構造単位、およびグラフト化剤に由来する構造単位を含有してなる重合体であることが好ましい。アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)は、いずれも、必要に応じてメチルメタクリレートに由来する構造単位、スチレンに由来する構造単位、または架橋剤に由来する構造単位を含有してもよい。アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)の単量体組成がアクリル系硬質重合体(a)の単量体組成に近いと、アクリル系軟質重合体(b2)の分散相が形成され難くなる。
[0026]
 アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)におけるアルキルアクリレートに由来する構造単位の量はアクリル系軟質重合体(b1)または(b2)を構成する全構造単位の質量に対して、好ましくは70~99.5質量%、より好ましくは80~99質量%である。アルキルアクリレート中のアルキル基は炭素数が1~8であることが好ましい。アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が多いほど耐衝撃性が向上する傾向があり、アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が少ないほど耐応力白化性および透明性が向上する傾向がある。
[0027]
 アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)におけるグラフト化剤に由来する構造単位の量は、アクリル系軟質重合体(b1)または(b2)を構成する全構造単位の質量に対して、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは1~3質量%である。グラフト化剤に由来する構造単位の量が多いほど耐応力白化性が向上する傾向があり、グラフト化剤に由来する構造単位の量が少ないほど耐衝撃性が向上する傾向がある。
[0028]
 アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)におけるメチルメタクリレートに由来する構造単位またはスチレンに由来する構造単位の量は、アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)を構成する全構造単位の質量に対して、合計で、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~20質量%である。
 メチルメタクリレートに由来する構造単位は、ガラス転移温度の調整に寄与する。スチレンに由来する構造単位は屈折率を調整し透明性向上に寄与する。メチルメタクリレートまたはスチレンに由来する構造単位の量が少ないほど耐衝撃性が向上する傾向がある。
[0029]
 アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)における架橋剤に由来する構造単位の量は、アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)の全構造単位に対して、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~2質量%である。架橋剤に由来する構造単位の量が多いほどフィルムの耐衝撃性が低下する傾向がある。
[0030]
 なお、アクリル系軟質重合体(b1)と(b2)は、構造単位の比率が、同じであってもよいし、相互に異なってもよい。
 また、アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)は、いずれも、アセトン可溶分が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
[0031]
 多層構造体は、アクリル系軟質重合体(b1)の層と、アクリル系軟質重合体(b1)の層によって被覆されたアクリル系硬質重合体(a)の層と、アクリル系硬質重合体(a)の層の中に分散した少なくとも二つのアクリル系軟質重合体(b2)の分散相とを有する(例えば、図1参照)。
 電子顕微鏡で観察される多層構造体の平均径は、0.13μm以上0.3μm以下、好ましくは0.15μm以上0.27μm以下である。平均径がこの範囲内であるとアクリル系軟質重合体(b2)の分散相が形成され易くなる。平均径が大きくなるほど耐衝撃性が向上する。多層構造体の平均径は、図2に示すような電子顕微鏡写真において観察される図1に示すような断面が表れている多層構造体の20個以上について環の外縁の長径と短径とを測定し、該測定値を算術平均して得られる値である。
[0032]
 多層構造体を構成するアクリル系硬質重合体(a)の質量と、アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)の合計質量との比((a)の質量/[(b1)および(b2)の合計質量])は、好ましくは5/60~50/20、より好ましくは10/30~30/10である。
 この質量比は、電子顕微鏡写真において観察される多層構造体におけるアクリル系軟質重合体(b1)の層の面積A b1とアクリル系硬質重合体(a)の層の面積A aとアクリル系軟質重合体(b2)の分散相の面積A b2とに基づいて次式によって推定できる。
 (a)の質量/[(b1)および(b2)の合計質量]=
     [(A a+A b2) 1.5-A b2 1.5]
          / [(A b1+A a+A b2) 1.5-(A a+A b2) 1.5+A b2 1.5]
 また、多層構造アクリル系重合体を含有するラテックスを製造する際に使用する単量体の質量比から推定することもできる。アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)の合計質量に対するアクリル系硬質重合体(a)の質量の比が上記の範囲内であると、アクリル系軟質重合体(b2)の分散相が形成され易くなる。
[0033]
 多層構造体を構成するアクリル系軟質重合体(b2)の質量と、アクリル系軟質重合体(b1)の質量との比((b2)の質量/(b1)の質量)は、好ましくは0.1/99.9~30/70、より好ましくは0.2/99.8~20/80、さらに好ましくは0.5/99.5~10/90である。
 この質量比は、電子顕微鏡写真において観察される多層構造体におけるアクリル系軟質重合体(b1)の層の面積A b1とアクリル系軟質重合体(b2)の分散相の面積A b2とに基づいて次式によって推定できる。
 (b2)の質量/(b1)の質量=
     A b2 1.5 / [(A b1+A a+A b2) 1.5-(A a+A b2) 1.5]
[0034]
 多層構造体は図2に示すようにマトリックス樹脂の中に散在している。マトリックス樹脂は、特に限定されないが、好ましくは熱可塑性樹脂、より好ましくはアクリル系硬質重合体(c)またはアクリル系樹脂(d)である。後述するアクリル系樹脂(d)はアクリル系硬質重合体(c)との相溶性が高いので好ましい。本発明の樹脂組成物においては、多層構造体を被覆する薄層のアクリル系硬質重合体(c)が在り、その周りにアクリル系硬質重合体(c)以外のマトリックス樹脂が在るようにすることが好ましい。
 アクリル系硬質重合体(c)以外のマトリックス樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系重合体、塩化ビニル系重合体、フッ化ビニリデン系重合体、アクリル系樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂などを挙げることができる。マトリックス樹脂には、本発明で規定する多層構造体以外の多層構造体(e)が含まれていてもよい。マトリックス樹脂/多層構造体の質量の比は、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは10/90~90/10である。マトリックス樹脂に該多層構造体(e)が含まれている場合、本発明で規定する多層構造体は、電子顕微鏡写真の任意の10μm 2中に少なくとも一つ存在していればよい。
 なお、多層構造体(e)は、例えば、アクリル系軟質重合体(b1)の層と、アクリル系軟質重合体(b1)の層によって被覆されたアクリル系硬質重合体(a)の層と、アクリル系硬質重合体(a)の層の中に分散した1つのアクリル系軟質重合体(b2)の分散相とを有するものであってもよいし、アクリル系軟質重合体(b1)の層とアクリル系軟質重合体(b1)の層によって被覆されたアクリル系硬質重合体(a)の層とを有するものであってもよいし、他の多層構造を成したものであってもよい。多層構造体(e)は、本発明で規定する多層構造体と同様に、多層構造体(e)を被覆する薄層のアクリル系硬質重合体(c)が存在してもよい。
[0035]
 アクリル系硬質重合体(c)は、ガラス転移温度が、好ましくは30℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上、よりさらに好ましくは100℃以上である。アクリル系硬質重合体(c)のガラス転移温度の上限は、好ましくは160℃である。アクリル系硬質重合体(c)のガラス転移温度が高いほど樹脂組成物の耐温水白化性若しくは耐沸水白化性が向上する傾向がある。
[0036]
 アクリル系硬質重合体(c)は、メチルメタクリレートに由来する構造単位、およびアルキルアクリレートに由来する構造単位を含有してなる重合体であることが好ましい。
[0037]
 アクリル系硬質重合体(c)におけるメチルメタクリレートに由来する構造単位の量は、アクリル系硬質重合体(c)を構成する全構造単位の質量に対して、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~99質量%である。メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が多いほど樹脂組成物の耐応力白化性が向上する傾向がある。
[0038]
 アクリル系硬質重合体(c)におけるアルキルアクリレートに由来する構造単位の量は、アクリル系硬質重合体(c)を構成する全構造単位の質量に対して、好ましくは0~20質量%、より好ましくは1~10質量%である。アルキルアクリレート中のアルキル基は炭素数が1~8であることが好ましい。
[0039]
 アクリル系硬質重合体(c)は、アセトン可溶分が、好ましくは90~100質量%、より好ましくは96~100質量%、さらに好ましくは97~100質量%である。
[0040]
 アクリル系硬質重合体(a)、アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)、ならびにアクリル系硬質重合体(c)に用いられるアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ブチルメチルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレートなどを挙げることができる。これらアルキルアクリレートは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、メチルアクリレートおよび/またはn-ブチルアクリレートが好ましい。
[0041]
 アクリル系硬質重合体(a)ならびにアクリル系軟質重合体(b1)および(b2)に用いられるグラフト化剤は、異種の重合性基を2個以上有する単量体である。グラフト化剤としては、例えば、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、モノ-またはジ-アリルマレエート、モノ-またはジ-アリルフマレート、クロトニルアクリレート、クロトニルメタクリレートなどを挙げることができる。これらグラフト化剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、透明性などの観点からアリルメタクリレートが好ましい。グラフト化剤は、アクリル系硬質重合体(a)とアクリル系軟質重合体(b1)および(b2)との界面、またはアクリル系軟質重合体(b1)とアクリル系硬質重合体(c)との界面における結合力の向上に寄与する。さらにグラフト化剤は、アクリル系硬質重合体(a)ならびにアクリル系軟質重合体(b1)および(b2)に架橋構造を形成することに寄与する。
[0042]
 アクリル系硬質重合体(a)ならびにアクリル系軟質重合体(b1)および(b2)に用いられる架橋剤は、同種の重合性基を2個以上有する単量体であり、例えば、ジアクリル化合物、ジメタクリル化合物、ジアリル化合物、ジビニル化合物、トリビニル化合物などである。架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテルなどを挙げることができる。これら架橋剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤は、アクリル系硬質重合体(a)ならびにアクリル系軟質重合体(b1)および(b2)に架橋構造を形成することに寄与する。
[0043]
 本発明の樹脂組成物は、例えば、多層構造アクリル系重合体を溶融混練することによって得られる。多層構造アクリル系重合体は、アクリル系軟質重合体(b1)の層と、アクリル系軟質重合体(b1)の層によって被覆されたアクリル系硬質重合体(a)の層と、アクリル系硬質重合体(a)の層に分散した少なくとも二つのアクリル系軟質重合体(b2)の分散相とを有する、平均径が0.13μm以上0.3μm以下である多層構造体の少なくとも一つが、アクリル系硬質重合体(c)の層によって被覆されてなる、コアシェル構造重合体粒子であることが好ましい。
[0044]
 多層構造アクリル系重合体に含有されるアクリル系硬質重合体(a)の量は、多層構造アクリル系重合体の質量に対して、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%である。アクリル系硬質重合体(a)の量が多いほど多層構造アクリル系重合体の熱安定性および生産性が向上する傾向がある。アクリル系硬質重合体(a)の量が少ないほど樹脂組成物の耐衝撃性および柔軟性が向上する傾向がある。
[0045]
 多層構造アクリル系重合体に含有されるアクリル系軟質重合体(b1)と(b2)の合計量は、多層構造アクリル系重合体の質量に対して、好ましくは20~60質量%、より好ましくは30~50質量%である。アクリル系軟質重合体(b1)と(b2)の合計量が多いほど熱安定性および生産性が向上する傾向がある。アクリル系軟質重合体(b1)と(b2)の合計量が少ないほど樹脂組成物の耐衝撃性および柔軟性が向上する傾向がある。
[0046]
 多層構造アクリル系重合体に含有されるアクリル系硬質重合体(c)の量は、多層構造アクリル系重合体の質量に対して、好ましくは5~35質量%、より好ましくは10~30質量%である。アクリル系硬質重合体(c)の量が多いほど多層構造アクリル系重合体の流動性および成形性が向上する傾向がある。アクリル系硬質重合体(c)の量が少ないほど樹脂組成物の耐衝撃性および耐応力白化性が向上する傾向がある。
[0047]
 本発明に用いられる多層構造アクリル系重合体は、230℃、3.8kg荷重下でのメルトフローレートが、好ましくは0.2~20g/10分、より好ましくは0.5~10g/10分である。多層構造アクリル系重合体のメルトフローレートが高い、すなわち流動性が高いほど成形性が向上する傾向がある。多層構造アクリル系重合体のメルトフローレートが低いほど樹脂組成物の力学的特性が向上する傾向がある。
[0048]
 本発明に用いられる多層構造アクリル系重合体は、アセトン可溶分の酸価が、好ましくは0.020mmol/g以下、より好ましくは0.018mmol/g以下、さらに好ましくは0.015mmol/g以下である。多層構造アクリル系重合体のアセトン可溶分の酸価の下限は、好ましくは0.001mmol/gである。多層構造アクリル系重合体の酸価が低いほど樹脂組成物の耐温水白化性若しくは耐沸水白化性が向上する傾向がある。
 アセトン可溶分の酸価は次のようにして測定する。試料2gをアセトン50mLに入れ常温にて24時間撹拌する。得られた液を、回転数20000rpm、温度0℃、180分間の条件にて、遠心分離する。上澄み液を分取し、50℃、真空下で8時間乾燥させて、アセトン可溶分を得る。アセトン可溶分1gを、クロロホルム50mLで溶解させる。この溶液をKOH水溶液にて中和滴定する。アセトン可溶分1gを中和するために必要なKOHのミリモル数を酸価〔mmol/g〕とした。
[0049]
 多層構造アクリル系重合体は、その製造方法によって、特に限定されない。例えば、アグロメーション、乳化重合法などを挙げることができる。
 アグロメーションによる場合は、例えば、アクリル系硬質重合体(a)を含有するラテックスとアクリル系軟質重合体(b1)または(b2)を含有するラテックスと所定割合にて混ぜ合わせ、強撹拌などによってアグロメ処理して多層構造体を含有するラテックスを得、これに、アクリル系硬質重合体(c)を含有するラテックスを所定割合で混ぜ合わせ、強撹拌などによってアグロメ処理することによって多層構造アクリル系重合体を含有するラテックスを得ることができる。
 乳化重合法による場合は、例えば、アクリル系硬質重合体(a)を構成するための単量体(a)を乳化重合してアクリル系硬質重合体(a)を含有するラテックスを得、これにアクリル系軟質重合体(b1)および(b2)を構成するための単量体(b)を添加して単量体(b)の一部をアクリル系硬質重合体(a)に吸収させ、次いで単量体(b)をシード膨潤乳化重合して多層構造体を含有するラテックスを得、これにアクリル系硬質重合体(c)を構成するための単量体(c)を加えて単量体(c)をシード乳化重合することによって、多層構造アクリル系重合体を含有するラテックスを得ることができる。
 ラテックスに含まれる多層構造アクリル系重合体の平均粒子径は、好ましくは0.13μm以上0.4μm以下、より好ましくは0.15μm以上0.28μm以下である。ラテックスに含まれる多層構造アクリル系重合体の平均粒子径は、光散乱法によって測定することができる。
[0050]
 本発明の樹脂組成物の好ましい製造方法は、乳化重合を行って多層構造アクリル系重合体を含有するラテックスを得、多層構造アクリル系重合体を含有するラテックスを凝固させてスラリーを得、該スラリーを脱水し、脱水されたスラリーを乾燥させることを含む。
[0051]
 乳化重合は公知の方法で行うことができる。乳化重合は重合体を含有するラテックスを得るために好ましく用いられる。
 シード乳化重合はシード粒子の表面で単量体の重合反応を行わせる乳化重合である。シード乳化重合はコアシェル構造重合体粒子を得るために好ましく用いられる。
 シード膨潤乳化重合は、シード粒子に単量体を吸収させてシード粒子の中で単量体の重合反応を行わせる乳化重合である。添加した単量体の量がシード粒子に吸収される単量体の量よりも多い場合には、シード粒子の中での重合反応とシード粒子の表面での重合反応を同時並行して行わせることができる。本発明における多層構造体は、シード膨潤乳化重合によって、比較的容易に形成することができる。
[0052]
 各重合において使用される単量体を、具体的にはメチルメタクリレート、アルキルアクリレート、グラフト化剤および架橋剤を所定の割合で混ぜ合わせたものを、反応系に供給する際の速度は、各重合において使用される単量体の合計量100質量%に対して、好ましくは0.05~3質量%/分、より好ましくは0.1~1質量%/分、さらに好ましくは0.2~0.8質量%/分である。このような速度で供給することによって、アクリル系硬質重合体(a)の層の中にアクリル系軟質重合体(b2)の分散相が形成され易くなる。また望ましくない重合体凝集物の生成や重合体スケールの反応槽への付着を防ぐことができ、重合体凝集物や重合体スケールの混入に起因するフィッシュアイなどの外観不良を無くすことができる。
[0053]
 各重合において使用される重合開始剤は、特に制限されない。重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性の無機系開始剤;無機系開始剤に亜硫酸塩またはチオ硫酸塩などを併用してなるレドックス開始剤;有機過酸化物に第一鉄塩またはナトリウムスルホキシレートなどを併用してなるレドックス開始剤などを挙げることができる。重合開始剤は重合開始時に一括して反応系に添加してもよいし、反応速度などを勘案して重合開始時と重合途中とに分割して反応系に添加してもよい。重合開始剤の使用量は、例えば、多層構造体の平均径が所定の範囲になるように適宜設定することができる。
[0054]
 各重合において使用される乳化剤は、特に制限されない。乳化剤としては、例えば、長鎖アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのアニオン系乳化剤; ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤; ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムなどのアルキルエーテルカルボン酸塩などのノニオン・アニオン系乳化剤を挙げることができる。乳化剤の使用量は、重合において使用される単量体の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部である。例えば、ラテックスに含まれる多層構造アクリル系重合体の平均粒子径が所定の範囲になるように適宜設定できる。単量体(a)の乳化重合および単量体(b)のシード膨潤乳化重合の際に使用する乳化剤の量が上記の範囲内であると、多層構造体が形成され易い傾向がある。
[0055]
 本発明においては、単量体(a)の乳化重合、単量体(b)のシード膨潤乳化重合および単量体(c)のシード乳化重合を一つの反応槽中で順次行ってもよいし、単量体(a)の乳化重合、単量体(b)のシード膨潤乳化重合および単量体(c)のシード乳化重合の度に反応槽を変えて順次行ってもよい。本発明においては各重合を一つの反応槽中で順次行うことが好ましい。また、重合を行っている間の反応系の温度は、好ましくは30~120℃、より好ましくは50~100℃である。なお、シード粒子に単量体を吸収させている間の反応系の温度は20~90℃が好ましい。
[0056]
 また、単量体(a)の乳化重合、単量体(b)のシード膨潤乳化重合および単量体(c)のシード乳化重合のいずれかにおいて、必要に応じて、反応性紫外線吸収剤、例えば2-[2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-1,2,3-ベンゾトリアゾールなどを添加することができる。反応性紫外線吸収剤が多層構造アクリル系重合体の分子鎖に導入され、多層構造アクリル系重合体の耐紫外線性が向上する。反応性紫外線吸収剤の添加量は、多層構造アクリル系重合体の製造に使用される単量体の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部である。
[0057]
 連鎖移動剤は、分子量の調節のために、各重合において使用することができる。各重合に使用される連鎖移動剤は、特に限定されない。連鎖移動剤としては、例えば、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン類; ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィドなどのキサントゲンジスルフィド類; テトラチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類; 四塩化炭素、臭化エチレンなどのハロゲン化炭化水素などを挙げることができる。連鎖移動剤の使用量は、重合体(a)、(b1)および(b2)、ならびに(c)のそれぞれを所定の分子量に調節できる範囲で適宜設定できる。単量体(c)のシード乳化重合において使用される連鎖移動剤の量は、メルトフローレートの値を前述の範囲にすることができる量であれば特に制限されない。各重合において使用される連鎖移動剤の好適な量は、その重合において使用される重合開始剤の量などによって変わる。単量体(c)のシード乳化重合において使用される単量体、具体的にはメチルメタクリレートおよびアルキルアクリレート、の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05~2質量部、より好ましくは0.08~1質量部である。
[0058]
 ラテックスの凝固は、公知の方法で行うことができる。凝固法としては、凍結凝固法、塩析凝固法、酸析凝固法などを挙げることができる。これらのうち、凍結凝固法は不純物となる凝固剤の添加を要しない点から好ましい。
[0059]
 凝固によって得られたスラリーを、必要に応じて洗浄し、次いで脱水する。多層構造アクリル系重合体の酸価が前述の範囲になるように洗浄と脱水を繰り返し行うことが好ましい。スラリーの洗浄および脱水によって、乳化剤や開始剤断片などの水溶性成分をスラリーから除去できる。スラリーの洗浄および脱水は、例えば、フィルタープレス、ベルトプレス、ギナ型遠心分離機、スクリューデカンタ型遠心分離機などで行うことができる。生産性、洗浄効率の観点からデカンタ式遠心脱水機を用いることが好ましい。スラリーの洗浄および脱水は、少なくとも2回行うことが好ましい。洗浄および脱水の回数が多いほど水溶性成分の残存量が下がる。しかし、生産性の観点から、洗浄および脱水の回数は、3回以下が好ましい。
[0060]
 脱水は、スラリーの含水率が、好ましくは0.3質量%未満、より好ましくは0.2質量%未満になるように行う。脱水されたスラリーの乾燥は、重合体の劣化を防ぎつつ含水率をさらに下げるために、好ましくは30~80℃、より好ましくは40~80℃の温度で行う。また、脱水されたスラリーの乾燥は、平均滞留時間で、好ましくは0.5~5時間、より好ましくは1~3時間かけて行う。乾燥時間が長いと得られる多層構造アクリル系重合体が熱劣化し、酸価が高くなり、耐温水白化性が低下してしまう。乾燥時間が短いと脱水が十分になされず、含水率が高くなってしまう。脱水および乾燥後の含水率が低いほど、耐温水白化性、耐沸水白化性が向上する傾向がある。
[0061]
 本発明の樹脂組成物は、多層構造アクリル系重合体に加えて、他の熱可塑性樹脂を含有することができる。他の熱可塑性樹脂を、例えば、多層構造アクリル系重合体と混合し、得られた混合物を押出機等で溶融混練し、次いでペレット化することによって本発明の樹脂組成物を得てもよい。他の熱可塑性樹脂/多層構造アクリル系重合体の質量比は、好ましくは0/100~95/5、より好ましくは10/90~90/10である。他の熱可塑性樹脂としてはアクリル系樹脂(d)が好適である。
[0062]
 他の熱可塑性樹脂として用いられるアクリル系樹脂(d)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位とアクリル酸エステルに由来する構造単位とを有する樹脂であることが好ましい。
 アクリル系樹脂(d)におけるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の量は、アクリル系樹脂(d)の全構造単位の質量に対して、好ましくは85~100質量%、より好ましくは90~100質量%、さらに好ましくは90~99質量%である。アクリル系樹脂(d)におけるアクリル酸エステルに由来する構造単位の量は、アクリル系樹脂(d)の全構造単位の質量に対して、好ましくは0~15質量%、より好ましくは0~10質量%、さらに好ましくは1~10質量%である。
[0063]
 アクリル系樹脂(d)におけるメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸8-トリシクロ[5.2.1.0 2,6]デカニル、およびメタクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル等が挙げられる。特に、メタクリル酸メチルが好ましい。
[0064]
 アクリル系樹脂(d)におけるアクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-へキシル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸フェニルなどを挙げることができる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1~6であるアルキルアクリレートが好ましい。
[0065]
 アクリル系樹脂(d)は上記の構造単位以外の他の構造単位を有してもよく、例えば、主鎖にラクトン環単位、無水マレイン酸単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位、またはN-置換マレイミド単位のような環状構造の単位を有していてもよい。
[0066]
 他の熱可塑性樹脂として用いられるアクリル系樹脂(d)は、ガラス転移温度が、好ましくは95℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは105℃以上である。アクリル系樹脂(d)のガラス転移温度の上限は、好ましくは180℃である。アクリル系樹脂(d)は、230℃、3.8kg荷重下でのメルトフローレートが、好ましくは0.5~20g/10分、より好ましくは0.8~10g/10分である。
[0067]
 アクリル系樹脂(d)は、その製造方法によって特に制限されない。アクリル系樹脂(d)は、例えば、ラジカル重合反応、アニオン重合反応などの公知の重合反応を、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法などの公知の重合方法によって行うことで、得ることができる。アクリル系樹脂(d)の所定の特性値への調整は、重合条件を調整することによって、具体的には、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量、重合開始剤の種類や量などを調整することによって行うことができる。このような重合条件の調整による樹脂特性の調整は当業者においてよく知られた技術である。
[0068]
 本発明の樹脂組成物は、運搬、保管、成形などを容易にするために、ペレット化することが好ましい。ペレット化のために使用する押出機はベントを備えることが好ましい。ベントは真空ベントまたはオープンベントであることが好ましい。ベントは樹脂溶融開始部より下流側に少なくとも1個設けることが好ましい。なお、真空ベントにおける圧力は、30Torr以下が好ましく、15Torr以下がより好ましく、9Torr以下がさらに好ましく、6Torr以下がもっとも好ましい。該真空ベントにおける圧力が上記範囲内にあれば、脱揮効率がよく、残存水分および残存単量体を少なくすることができる。
[0069]
 ペレット化のために使用する押出機は単軸スクリュー式であることが好ましい。単軸スクリュー式押出機は、多層構造アクリル系重合体等に与えるせん断エネルギーが小さく、重合体の熱分解を抑えることができる。スクリュー構成はフルフライトであることが好ましい。
[0070]
 ペレット化のために使用する押出機のシリンダ加熱温度は、好ましくは210~270℃、より好ましくは220~260℃、さらに好ましくは230~250℃である。押出機での滞留時間は、好ましくは7分間以下、より好ましくは5分間以下、さらに好ましくは3分間以下である。シリンダ加熱温度が低いほどまたは滞留時間が短いほど、得られる樹脂組成物の耐温水白化性が向上する傾向がある。
[0071]
 本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、高分子加工助剤、滑剤、染料、顔料などの公知の樹脂用添加剤が含まれていてもよい。樹脂用添加剤の総含有量は多層構造アクリル系重合体および他の熱可塑性樹脂の合計量100質量部に対して20質量部以下であることが好ましい。樹脂用添加剤は、樹脂溶融時に添加してもよいし、樹脂ペレットにドライブレンドしてもよいし、マスターバッチ法によって添加してもよい。
[0072]
 本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、2-[2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-1,2,3-ベンゾトリアゾールなどの反応性紫外線吸収剤を挙げることができる。紫外線吸収剤の含有量は、多層構造アクリル系重合体および他の熱可塑性樹脂の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部である。
[0073]
 本発明の樹脂組成物は、アセトン可溶分の酸価が、0.020mmol/g以下、好ましくは0.018mmol/g以下、より好ましくは0.015mmol/g以下である。本発明の樹脂組成物のアセトン可溶分の酸価の下限は、好ましくは0.001mmol/gである。本発明の樹脂組成物のアセトン可溶分の酸価が低いほど耐温水白化性若しくは耐沸水白化性が向上する傾向がある。
[0074]
 本発明の樹脂組成物は、含水率が、0.3質量%以下、好ましくは0.2質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満である。含水率が低いほど、シルバーストリークなどの外観不良がなく、耐温水白化性に優れる成形品を得やすい。本発明の樹脂組成物を様々な形状に成形する前に、ペレット化された本発明の樹脂組成物を乾燥させて含水率を減らすことが好ましい。
[0075]
 本発明の樹脂組成物を成形体に形成することができる。成形体は樹脂組成物を80質量%以上含有することが好ましい。また、本発明の樹脂組成物を成形体の一態様であるフィルムに成形することができる。フィルムは本発明の樹脂組成物を80質量%以上含有することが好ましい。
[0076]
 本発明の樹脂組成物をフィルムに形成するために使用する押出機はベントを備えることが好ましい。ベントは真空ベントまたはオープンベントであることが好ましい。ベントは樹脂溶融開始部より下流側に少なくとも1個設けることが好ましい。真空ベントにおける圧力は、30Torr以下が好ましく、15Torr以下がより好ましく、9Torr以下がさらに好ましく、6Torr以下がもっとも好ましい。フィルム形成のために使用する押出機は、単軸スクリュー方式または同方向回転二軸スクリュー方式であることが好ましい。
[0077]
 フィルム形成のために使用する押出機のシリンダ加熱温度は、好ましくは220~300℃、より好ましくは230~290℃、さらに好ましくは240~280℃である。フィルム形成のために使用する押出機での滞留時間は、好ましくは7分間以下、より好ましくは5分間以下、さらに好ましくは3分間以下である。シリンダ加熱温度が低いほどまたは滞留時間が短いほど、フィルムの耐温水白化性が向上する傾向がある。
[0078]
 本発明の樹脂組成物から得られるフィルムは、耐衝撃性に優れ、80℃~100℃の水に曝しても白化しない。本発明の樹脂組成物から得られるフィルムは、他の重合体、特に熱可塑性重合体との接着性に優れている。
[0079]
 本発明の樹脂組成物から得られるフィルムは、他の熱可塑性重合体から得られるフィルムと積層してもよい。本発明の樹脂フィルムとの接着性の観点から、他の熱可可塑性重合体として、ポリカーボネート系重合体、塩化ビニル系重合体、フッ化ビニリデン系重合体、メタクリル樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、またはAS樹脂が、好ましい。
 熱可塑性重合体成形品は、フィルム、シート、および板などのような面状成形品であってもよいし、管、棒などの線状成形品であってもよいし、レンズ、プリズム、容器などのような各種形状の成形品であってもよい。
実施例
[0080]
 以下に製造例、実施例、および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらにより何ら制限されるものではない。なお、「部」および「%」は質量部および質量%をそれぞれ表す。
[0081]
(構造体の平均径、分散相(b2)の数)
 樹脂フィルムから-100℃にてミクロトームを用いて80nmの薄膜切片を作成した。この薄片をルテニウムで染色後、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製HT7700)にて加速電圧100KVにて写真を撮影した。
 構造体の平均径は、図2に示すような電子顕微鏡写真において観察される図1に示すような断面が表れている多層構造体の20個以上について環の外縁の長径と短径とを測定し、該測定値を算術平均して得た。分散層(b2)の数については、多層構造体の20個以上を対象として数を数え、平均値を求めた。
[0082]
(ラテックスの体積基準平均粒子径)
 堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-910を用い、光散乱法によってその平均粒子径を決定した。
[0083]
(含水率)
 樹脂試料を105℃に設定された熱風乾燥機内で3時間加熱し、加熱前後での重量変化から、含水率を決定した。
[0084]
(酸価)
 樹脂試料2gをアセトン50mLに入れ常温にて24時間撹拌した。得られた液を、回転数20000rpm、温度0℃、180分間の条件にて、遠心分離した。上澄み液を50℃、真空下で8時間乾燥させて、アセトン可溶分を得た。
 アセトン可溶分1gをクロロホルム50mLで溶解させた。該溶液に窒素ガスを5分間吹き込んだ。その後、ブロモチモールブルーを数滴添加した。N/100 KOH水溶液を用いて中性(緑色)になるまでの滴定量A[ml]を計測した。
 クロロホルム50mLに窒素ガスを5分間吹き込み、その後、上記と同じ方法で中性(緑色)になるまでの滴定量B[ml]を計測した。
 酸価C[mmol/g]を次式に基づいて算出した。
 C=(A-B)×0.01×F/56.1
 なお、Fは、N/100 KOH水溶液のファクターである。
[0085]
(Haze)
 樹脂フィルムから50mm×50mmの試験片を切り出した。JIS K7136に準拠して、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM-150)を用いて、室温下でヘイズ(H 0)を測定した。
[0086]
(耐温水白化性)
 樹脂フィルムから50mm×50mmの試験片を切り出した。JIS K7136に準拠して、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM-150)を用いて、室温下でヘイズ(H 0)を測定した。
 次いで、試験片を80℃の水に1時間浸漬した。その後、表面に付着した水滴を取り除き、30分間室温にて乾燥させた。ヘイズを測定した。
 室温におけるヘイズから温水浸漬後におけるヘイズへの増加量(ΔH 80)を算出した。
[0087]
(耐衝撃性)
 樹脂試料をベント付単軸押出機に供給して、滞留時間3.5分、265℃で溶融させ、Tダイから押し出した。押し出されたシート状溶融樹脂を冷却し厚さ4mmのシートを得た。得られたシートを切削して試験片を作製し、JIS K7111(1eA)に準拠した方法でノッチ付シャルピー破壊強さを測定した。
[0088]
 本実施例では、メチルメタクリレートをMMA、n-ブチルアクリレートをnBA、メチルアクリレートをMA、アリルメタクリレートをALMA、スチレンをSt、n-オクチルメルカプタンをnOM、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)をAIBNと、それぞれ省略して記載する。
[0089]
製造例1
 攪拌機および採取管付オートクレーブに、精製されたMMA92部、およびMA8部を入れて攪拌した。これにAIBN0.006部およびnOM0.15部を加えて溶解させて原料液を得た。窒素ガスにより製造装置内の酸素ガスを追出した。
 前記原料液を、オートクレーブから、温度140℃に制御された連続流通式槽型反応器に、平均滞留時間120分間となるように、一定流量で供給して、重合転化率57%で塊状重合を行った。
 連続流通式槽型反応器から排出される液を240℃に加温し、250℃に制御されたオープンベントと真空ベントとを具える二軸押出機に一定流量で供給して、押出機供給口で断熱フラッシュ蒸発を行った。断熱フラッシュ蒸発で揮発した成分(単量体、二量体、三量体など)をオープンベントから排出した。二軸スクリューによる溶融混練で揮発した成分(単量体など)を押出機供給口よりも下流側に設けられた6Torrに減圧された真空ベントから排出した。揮発成分がほぼ除去された樹脂成分を二軸スクリューで押し出してストランドを得、該ストランドをペレタイザーでカットして、ペレット状のアクリル系樹脂[B1]を得た。アクリル系樹脂[B1]は、Tgが110℃、MFRが2g/10minであった。
[0090]
実施例1
 コンデンサ、温度計、および撹拌機を具えた容量100Lのグラスライニング反応槽に、イオン交換水48kgを投入し、次いでステアリン酸ナトリウム416g、ラウリルサルコシン酸ナトリウム128g、および炭酸ナトリウム16gを投入して溶解させた。次いで、MMA11.2kgおよびALMA110gを添加して、乳化させ、反応槽温度を70℃にした。その後、2%過硫酸カリウム水溶液560gを添加して乳化重合を開始した。反応熱により反応槽温度が上昇した。その後、反応槽温度が下降した。70℃まで下降した時点から70℃にてさらに30分間乳化重合を行って、アクリル系硬質重合体(a)を含有するラテックスを得た。
 アクリル系硬質重合体(a)を含有するラテックスに、2%過硫酸ナトリウム水溶液720gを添加した。その後、nBA12.4kg、St1.76kg、およびALMA280gからなる混合物を60分間かけて滴下して、混合物の一部をアクリル系硬質重合体(a)に吸収させながらシード膨潤乳化重合を行った。滴下終了後、70℃でさらに60分間シード膨潤乳化重合を行って、アクリル系硬質重合体(a)ならびにアクリル系軟質重合体(b1)および(b2)を含む多層構造体を含有するラテックスを得た。
 アクリル系硬質重合体(a)およびアクリル系軟質重合体(b)を含有するラテックスに、2%過硫酸カリウム水溶液320gを添加した。その後、MMA6.2kg、MA0.2kg、およびnOM200gからなる混合物を30分間かけて添加してシード乳化重合を行った。添加終了後、70℃にてさらに60分間シード乳化重合を行った。次いで室温まで冷まして、アクリル系硬質重合体(a)、アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)ならびにアクリル系硬質重合体(c)からなる多層構造アクリル系重合体(C-1)を40質量%含有するラテックスを得た。
[0091]
 コンデンサ、温度計、および撹拌機を備えた容量100Lのグラスライニング反応槽に、イオン交換水48kgを投入し、次いで界面活性剤(花王株式会社製「ペレックスSS-H」)252gを投入して溶解させた。反応槽温度を70℃にした。その後、これに、2%過硫酸カリウム水溶液160gを添加し、次いでMMA3.04kg、MA0.16kg、およびnOM15.2gからなる混合物を添加して乳化重合を開始した。反応熱の発生がなくなった時点からさらに30分間乳化重合を行った。
 これに2%過硫酸カリウム水溶液160gを添加し、次いでMMA27.4kg、MA1.44kg、およびnOM98gからなる混合物を2時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、70℃にてさらに60分間乳化重合を行った。次いで室温まで冷まして、体積基準平均粒径0.12μm、極限粘度0.44dl/gのアクリル系重合体(D-1)を40質量%含有するラテックスを得た。なお、アクリル系重合体(D-1)は多層構造アクリル系重合体(C-1)の分散を補助するための粒子である。
[0092]
 多層構造アクリル系重合体(C-1)を含有するラテックスとアクリル系重合体(D-1)を含有するラテックスとを、多層構造アクリル系重合体(C-1)/アクリル系重合体(D-1)の質量比が2/1になるように混ぜ合わせた。得られた混合ラテックスを-20℃で2時間かけて凍結させた。凍結物をその2倍量の80℃の温水に投入して融解させて、スラリーを得た。スクリューデカンタ式遠心分離機を用いてスラリーの洗浄および脱水を2回繰り返し行った。脱水されたスラリーを70℃に設定された棚段式乾燥機(平均滞留時間2.5時間)で乾燥させて、樹脂組成物[A0]を得た。樹脂組成物[A0]は、図1に示すような軟質重合体(b2)の分散相を2つ以上有する平均径0.23μmの多層構造体が散在して含有していることが電子顕微鏡観察によって確認された。
[0093]
 樹脂組成物[A0]とアクリル系樹脂[B1]とを6/4の質量比でベント付単軸押出機に供給して、平均滞留時間3.5分間、265℃で溶融混練し、Tダイからフィルム状に押し出した。押し出されたフィルム状溶融樹脂を鏡面ロールに巻き取って、厚さ50μmの樹脂フィルムを得た。樹脂フィルムの評価結果を表1に示す。樹脂組成物[A0]とアクリル系樹脂[B1]とを混練してなる樹脂組成物[A1]は、含水率が0.24質量%、アセトン可溶分の酸価が0.009mmol/gであった。樹脂組成物[A1]は、図1に示すような軟質重合体(b2)の分散相を2つ以上有する平均径0.23μmの多層構造体が散在して含有していることが電子顕微鏡観察によって確認された。
[0094]
実施例2
 ステアリン酸ナトリウム416gを1320gに変更し、ラウリルサルコシン酸ナトリウム128gを407gに変更した以外は実施例1と同じ方法で多層構造アクリル系重合体(C-2)を40質量%含有するラテックスを得た。
[0095]
 多層構造アクリル系重合体(C-2)を含有するラテックスとアクリル系重合体(D-1)を含有するラテックスとを、多層構造アクリル系重合体(C-2)/アクリル系重合体(D-1)の質量比が3/2になるように混ぜ合わせた。得られた混合ラテックスを-20℃で2時間かけて凍結させた。凍結物をその2倍量の80℃の温水に投入して融解させて、スラリーを得た。スクリューデカンタ式遠心分離機を用いてスラリーの洗浄および脱水を2回繰り返し行った。脱水されたスラリーを70℃に設定された棚段式乾燥機(平均滞留時間2.5時間)で乾燥させて、樹脂組成物[A2]を得た。樹脂組成物[A2]は、図1に示すような軟質重合体(b2)の分散相を2つ以上有する平均径0.15μmの多層構造体が散在して含有していることが電子顕微鏡観察によって確認された。樹脂組成物[A2]は、含水率が0.22質量%、アセトン可溶分の酸価が0.013mmol/gであった。
[0096]
 樹脂組成物[A2]をベント付単軸押出機に供給して、平均滞留時間3.5分間、265℃で溶融混練し、Tダイからフィルム状に押し出した。押し出されたフィルム状溶融樹脂を鏡面ロールに巻き取って、厚さ50μmの樹脂フィルムを得た。樹脂フィルムの評価結果を表1に示す。
[0097]
比較例1
 撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を具える反応容器に、イオン交換水150部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.3部および炭酸ナトリウム0.05部を仕込み、容器内を窒素ガスで充分に置換して実質的に酸素の影響がない状態とした。その後、反応容器内の温度を80℃にした。反応容器内に過硫酸カリウム0.015部を投入し、5分間撹拌した。次いで、MMA4部、nBA4部およびALMA0.02部からなる混合物を20分間かけて連続的に滴加し、乳化重合を行った。滴加終了後、さらに30分間撹拌し、乳化重合を転化率98%以上となるように行って、硬質重合体(a)を含有するラテックスを得た。
 硬質重合体(a)を含有するラテックスの入った反応容器内に、過硫酸カリウム0.030部を投入し、5分間撹拌した。次いで、MMA4部、nBA26部およびALMA0.9部からなる混合物を40分間かけて連続的に滴加し、シード乳化重合を行った。滴加終了後、さらに30分間撹拌し、シード乳化重合を転化率98%以上となるように行って、硬質重合体(a)と軟質重合体(b)とを含有するラテックスを得た。
 硬質重合体(a)と軟質重合体(b)と含有するラテックスの入った反応器内に、過硫酸カリウム0.055部を投入し、5分間撹拌した。その後、MMA56部、nBA6部およびnOM0.2部からなる混合物を100分間かけて連続的に滴加してシード乳化重合を行った。滴加終了後、さらに60分間撹拌し、シード乳化重合を転化率98%以上となるように行って、硬質重合体(a)、軟質重合体(b)および硬質重合体(c)を含有するラテックス(C-3)を得た。吸光度法により決定されたラテックス(C-3)の平均粒子径は0.09μmであった。
 ラテックス(C-3)を-20℃の雰囲気に3時間置いて凍結させた。得られた凍結物を3倍量の80℃の温水に投入して融解させて、スラリーを得た。スクリューデカンタ式遠心分離機を用いてスラリーの洗浄および脱水を2回繰り返し行った。脱水されたスラリーを80℃に設定された棚段式乾燥機(平均滞留時間2.5時間)で乾燥させて、樹脂組成物[A3]を得た。樹脂組成物[A3]は、平均径0.08μmの図3に示すような粒子が散在して含有していることが電子顕微鏡観察によって確認された。樹脂組成物[A3]は、含水率が0.21質量%、アセトン可溶分の酸価が0.007mmol/gであった。なお、図3中の黒い点は、染色剤であるルテニウムの残渣である。
[0098]
 樹脂組成物[A3]をベント付単軸押出機に供給して、平均滞留時間3.5分間、265℃で溶融混練し、Tダイからフィルム状に押し出した。押し出されたフィルム状溶融樹脂を鏡面ロールに巻き取って、厚さ50μmの樹脂フィルムを得た。樹脂フィルムの評価結果を表1に示す。
[0099]
比較例2
 脱水されたスラリーを70℃で乾燥させなかった以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物[A4]を得た。樹脂組成物[A4]は、含水率が6質量%、アセトン可溶分の酸価が0.008mmol/gであった。樹脂組成物[A4]をベント付押し出し機に供給してフィルム成形を試みたが、ベントアップしてフィルムを得ることができなかった。
[0100]
比較例3
 脱水されたスラリーの乾燥温度70℃を120℃に変えた以外は実施例1と同じ方法で樹脂組成物[A5]を得た。樹脂組成物[A5]は、含水率が0.11質量%、アセトン可溶分の酸価が0.028mmol/gであった。
 樹脂組成物[A5]は乾燥時に融着して大きな塊になったのでベント付押し出し機に供給できる程度の大きさに粉砕した。樹脂組成物[A5]をベント付単軸押出機に供給して、平均滞留時間3.5分間、265℃で溶融混練し、Tダイからフィルム状に押し出した。押し出されたフィルム状溶融樹脂を鏡面ロールに巻き取って、厚さ50μmの樹脂フィルムを得た。樹脂フィルムの評価結果を表1に示す。
[0101]
[表1]


請求の範囲

[請求項1]
 アクリル系軟質重合体(b1)の層と、アクリル系軟質重合体(b1)の層によって被覆されたアクリル系硬質重合体(a)の層と、アクリル系硬質重合体(a)の層の中に分散した少なくとも二つのアクリル系軟質重合体(b2)の分散相とを有する、平均径が0.13μm以上0.3μm以下である多層構造体を含有する、
 含水率が0.3%以下で且つ
 アセトン可溶分の酸価が0.020mmol/g以下である、
樹脂組成物。
[請求項2]
 多層構造体は、アクリル系硬質重合体(a)の質量と、アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)の合計質量との比((a)の質量/[(b1)および(b2)の合計質量])が、5/60~50/20である、請求項1に記載の樹脂組成物。
[請求項3]
 多層構造体は、アクリル系軟質重合体(b2)の質量と、アクリル系軟質重合体(b1)の質量との比((b2)の質量/(b1)の質量)が、0.1/99.9~30/70である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
[請求項4]
 アクリル系硬質重合体(a)は、アセトン可溶分が10質量%以下であり、
 アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)は、いずれも、アセトン可溶分が10質量%以下である、請求項1~3のいずれかひとつに記載の樹脂組成物。
[請求項5]
 アクリル系硬質重合体(a)は、ガラス転移温度が30℃以上であり、
 アクリル系軟質重合体(b1)および(b2)は、いずれも、ガラス転移温度が30℃未満である、請求項1~4のいずれかひとつに記載の樹脂組成物。
[請求項6]
 請求項1~5のいずれかひとつに記載の樹脂組成物を80質量%以上含有する成形体。
[請求項7]
 請求項1~5のいずれかひとつに記載の樹脂組成物を80質量%以上含有するフィルム。
[請求項8]
 乳化重合を行って多層構造アクリル系重合体を含有するラテックスを得、
 該ラテックスを凝固させてスラリーを得、
 該スラリーを脱水し、
 脱水されたスラリーを30℃~80℃にて乾燥させることを含む、
請求項1~5のいずれかひとつに記載の樹脂組成物の製造方法。
[請求項9]
 前記多層構造アクリル系重合体は、
 アクリル系軟質重合体(b1)の層と、アクリル系軟質重合体(b1)の層によって被覆されたアクリル系硬質重合体(a)の層と、アクリル系硬質重合体(a)の層の中に分散した少なくとも二つのアクリル系軟質重合体(b2)の分散相とを有する、平均径が0.13μm以上0.3μm以下である多層構造体の少なくとも一つが、アクリル系硬質重合体(c)の層によって被覆されてなるコアシェル構造重合体粒子である、
請求項8に記載の製造方法。
[請求項10]
 アクリル系硬質重合体(c)は、ガラス転移温度が30℃以上である、請求項9に記載の製造方法。
[請求項11]
 アクリル系硬質重合体(c)は、アセトン可溶分が90~100質量%である、請求項9または10に記載の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]