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1. (WO2018181774) 新規モノオキシゲナーゼおよびその利用
Document

明 細 書

発明の名称 新規モノオキシゲナーゼおよびその利用

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

非特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028  

発明の効果

0029  

発明を実施するための形態

0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115  

実施例

0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167  

産業上の利用可能性

0168  

受託番号

0169  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17  

明 細 書

発明の名称 : 新規モノオキシゲナーゼおよびその利用

技術分野

[0001]
 本発明は、新規モノオキシゲナーゼ、およびそれをコードする遺伝子、ならびにそれらの利用に関する。

背景技術

[0002]
 光学活性なα,α-2置換アミノ酸は、ペプチダーゼに対する安定性を高めるため、ペプチド医薬品のビルディングブロックとして期待されている(非特許文献1)。
[0003]
 光学活性なα,α-2置換アミノ酸の製造方法として、例えば、非特許文献2には、不斉相関移動触媒を用いた不斉アルキル化反応による光学活性なα,α-2置換アミノ酸の製造方法が記載されている。また、特許文献1には、L-アラニンとホルムアルデヒドとを原料とした酵素反応により、α-メチル-L-セリンを合成する反応が記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特許第4877227号公報(2012年2月15日公開)

非特許文献

[0005]
非特許文献1 : Claudio Mapelli et al., J. Med. Chem., 2009, 52, 7788-7799.
非特許文献2 : Takashi Ooi et al., J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 5139-5151

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 しかしながら、非特許文献2の方法では、光学活性なα,α-2置換アミノ酸が得られるものの、保護基の導入、反応後の脱保護の工程等の複雑な工程を要するという問題がある。また、特許文献1の方法では、保護基を要しない製法であるものの、L体であるα-メチル-L-セリンしか合成できず、その光学異性体であるα-メチル-D-セリンを合成することはできない。
[0007]
 したがって、光学活性なα,α-2置換アミノ酸、例えば、光学活性α-メチル-D-セリンを簡便かつ効率的に製造するための改良された方法が求められていた。
[0008]
 上記の事情に鑑み、本発明の目的は、光学活性なα,α-2置換アミノ酸を含むβ-ヒドロキシアミノ酸、例えば、α-メチル-D-セリンの製造を可能にする新規酵素タンパク質を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、自然界において、2-アミノイソ酪酸を光学活性なα-メチル-D-セリンに変換する能力を有する微生物を見出し、単離することに成功した。また、上記微生物のプロテオーム解析およびそれに関連する各種解析により、2-アミノイソ酪酸をα-メチル-D-セリンに変換する新規モノオキシゲナーゼの同定に成功した。さらに、同定した新規モノオキシゲナーゼについて詳細な解析を進めたところ、上記モノオキシゲナーゼが、L-イソバリン、D-イソバリン、L-アミノブチレート、D-アミノブチレート等を基質として用いた場合にも、光学活性なβ-ヒドロキシアミノ酸に変換する活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明の一態様は、以下の発明を包含するものである。
[0010]
 〔1〕2種類のヘテロなサブユニットにより構成されていることを特徴とする、モノオキシゲナーゼ。
[0011]
 〔2〕α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸を、β-ヒドロキシアミノ酸に変換する反応を触媒することを特徴とする、〔1〕に記載のモノオキシゲナーゼ。
[0012]
 〔3〕上記α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸が、以下の式(1):
[0013]
[化1]


 (式中、
 R およびR は、それぞれ独立して、水素またはCH である。)
で示される化合物であり、
 上記β-ヒドロキシアミノ酸が、以下の式(2):
[0014]
[化2]


 (式中、
 R およびR は、それぞれ独立して、水素またはCH である。)
で示される化合物であることを特徴とする、〔2〕に記載のモノオキシゲナーゼ。
[0015]
 〔4〕以下の式(3)~(7)で示される、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸をβ-ヒドロキシアミノ酸に変換する反応の少なくとも一つ以上の反応を触媒することを特徴とする、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のモノオキシゲナーゼ:
式(3)
[化3]


;式(4)
[化4]


;式(5)
[化5]


;式(6)
[化6]


;式(7)
[0016]
[化7]


 〔5〕上記2種類のヘテロなサブユニットを、それぞれαサブユニット、βサブユニットとすると、
 αサブユニットが、以下の(a)~(d)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質を含み、
 βサブユニットが、以下の(e)~(h)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質を含むことを特徴とする、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のモノオキシゲナーゼ:
 (a)配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (b)配列番号1に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質で、かつ、当該タンパク質を含むサブユニットがβサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質;
 (c)配列番号1に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質で、かつ、当該タンパク質を含むサブユニットがβサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質;
 (d)配列番号6に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質;
 (e)配列番号2に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (f)配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質で、かつ、当該タンパク質を含むサブユニットがαサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質;
 (g)配列番号2に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質で、かつ、当該タンパク質を含むサブユニットがαサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質;
 (h)配列番号7に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質。
[0017]
 〔6〕〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のモノオキシゲナーゼと、電子伝達系タンパク質とを含むことを特徴とする、β-ヒドロキシアミノ酸を製造するためのモノオキシゲナーゼ反応システム。
[0018]
 〔7〕上記電子伝達系タンパク質が、以下の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質、および以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質であることを特徴とする、〔6〕に記載のモノオキシゲナーゼ反応システム:
 (i)配列番号3に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (j)配列番号3に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (k)配列番号3に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (l)配列番号8に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質;
 (m)配列番号4に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (n)配列番号4に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、上記の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (o)配列番号4に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、上記の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (p)配列番号9に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質。
[0019]
 〔8〕〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のタンパク質をコードするモノオキシゲナーゼ遺伝子。
[0020]
 〔9〕〔8〕に記載の遺伝子を含むことを特徴とする組換えベクター。
[0021]
 〔10〕〔8〕に記載の遺伝子または〔9〕に記載の組換えベクターを含むことを特徴とする形質転換体。
[0022]
 〔11〕
 さらに、以下に示す遺伝子を含む、〔10〕に記載の形質転換体:
 (1)電子伝達系タンパク質をコードする遺伝子、および/または
 (2)トランスポータータンパク質をコードする遺伝子。
[0023]
 〔12〕上記電子伝達系タンパク質が、以下の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質、および
 以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質であることを特徴とする、〔11〕に記載の形質転換体:
 (i)配列番号3に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (j)配列番号3に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (k)配列番号3に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (l)配列番号8に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質;
 (m)配列番号4に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (n)配列番号4に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、上記の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (o)配列番号4に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、上記の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (p)配列番号9に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質。
[0024]
 〔13〕上記トランスポータータンパク質が、以下の(q)~(t)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質であることを特徴とする、〔11〕または〔12〕に記載の形質転換体:
 (q)配列番号5に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (r)配列番号5に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、トランスポーター活性を有するタンパク質;
 (s)配列番号5に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、トランスポーター活性を有するタンパク質;
 (t)配列番号10に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質。
[0025]
 〔14〕上記形質転換体が、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌であることを特徴とする、〔10〕~〔13〕のいずれかに記載の形質転換体。
[0026]
 〔15〕〔10〕~〔14〕のいずれかに記載の形質転換体を、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸を含む培地中で培養する工程を含むことを特徴とする、β‐ヒドロキシアミノ酸の製造方法。
[0027]
 〔16〕上記形質転換体に含まれる〔8〕に記載の遺伝子が、ロドコッカス(Rhodococcus)属由来であることを特徴とする、〔15〕に記載の製造方法。
[0028]
 〔17〕ロドコッカス ラティスラビエンシス(Rhodococcus wratislaviensis) C31-06株(受託番号:NITE BP-02370)。

発明の効果

[0029]
 本発明の一態様によれば、保護基の導入や脱保護の工程を要することなく、簡便かつ効率的に、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸をβ-ヒドロキシアミノ酸に変換することができる。

発明を実施するための形態

[0030]
 本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
[0031]
 本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。ここで、遺伝子は、DNAの形態(例えば、cDNAもしくはゲノムDNA)、またはRNA(例えば、mRNA)の形態にて存在し得る。DNAまたはRNAは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。また、遺伝子は化学的に合成してもよく、コードするタンパク質の発現が向上するように、コドンユーセージ(Codon usage)を変更してもよい。同じアミノ酸をコードするコドン同士であれば置換することも可能である。
[0032]
 また、用語「タンパク質」は、「ペプチド」または「ポリペプチド」と交換可能に使用される。本明細書において使用される場合、塩基およびアミノ酸の表記は、適宜IUPACおよびIUBの定める1文字表記または3文字表記を使用する。
[0033]
 <1.モノオキシゲナーゼ>
 本発明の一実施形態において、少なくとも2種類のヘテロな(異なる)サブユニットにより構成されているモノオキシゲナーゼ(換言すれば、2種類以上の異なるサブユニットより構成されるヘテロモノオキシゲナーゼ)を提供する。
[0034]
 モノオキシゲナーゼは、酸化酵素の一種であり、酸素1原子を基質へ導入する酵素である。従来知られていたモノオキシゲナーゼは、その大部分が、構造の観点から単一の酵素として機能するものであり、本発明の一実施形態におけるような複合体(ヘテロなサブユニット)により構成されるモノオキシゲナーゼは、知られていなかった。したがって、上記構造を有する本発明の一実施形態におけるモノオキシゲナーゼの発見は、驚くべきことであり、従来のモノオキシゲナーゼでは不可能あるいは反応性の低かった反応をも触媒することが可能となる。それ故、本発明の一実施形態では、従来にはなかった新規かつ有用なモノオキシゲナーゼを提供するものである。
[0035]
 本発明の一実施形態におけるモノオキシゲナーゼは、2種類のヘテロな(異なる)サブユニットにより構成されていることが好ましい。サブユニットの数は、他のサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有する限り特段限定されず、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ等であり得る。
[0036]
 本発明の一実施形態におけるモノオキシゲナーゼの各サブユニットの構造は、他のサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有する限り特段限定されず、例えば、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー等で構成されていてもよい。また、本発明の一実施形態におけるモノオキシゲナーゼは、モノオキシゲナーゼ活性が生じる限りにおいて、上記のようなサブユニットを含むヘテロダイマー、ヘテロトリマー、ヘテロテトラマー、ヘテロペンタマー、ヘテロヘキサマー等で構成されていてもよい。
[0037]
 本発明の一実施形態におけるモノオキシゲナーゼは、上記で示される特徴的な構成を有している限り、その細部においては、適宜変更が可能である。当然ながら、そのような細部を変更したモノオキシゲナーゼも、本願発明の範囲に含まれる。
[0038]
 本発明の一実施形態におけるモノオキシゲナーゼの由来は、菌類、例えば、放線菌であり、例えば、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ノカルディア(Nocardia)属等が挙げられる。好ましくは、上記モノオキシゲナーゼは、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)、ロドコッカス ラティスラビエンシス(Rhodococcus wratislaviensis)、ノカルディア グロベルラ(Nocardia globerula)由来であり、より好ましくはロドコッカス ラティスラビエンシス(Rhodococcus wratislaviensis)由来である。
[0039]
 本発明の一実施形態におけるモノオキシゲナーゼは、後述する実施例で示した通り、ロドコッカス ラティスラビエンシス(Rhodococcus wratislaviensis)C31-06株より取得された。ロドコッカス ラティスラビエンシス(Rhodococcus wratislaviensis)C31-06株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)特許微生物寄託センター(292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、寄託者:国立大学法人京都大学大学院農学研究科 日比 慎(606-8502 京都府京都市左京区北白川追分町)、受託番号:NITE BP-02370(寄託日(国内寄託日):2016年10月6日、移管日:2018年3月12日、国内寄託受託番号NITE P-02370より移管)として寄託されている。よって、本発明は、当該ロドコッカス ラティスラビエンシス(Rhodococcus wratislaviensis)C31-06株をも提供する。
[0040]
 本発明の一実施形態におけるモノオキシゲナーゼは、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸を光学活性なβ-ヒドロキシアミノ酸に変換する反応を触媒することができる。すなわち、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸を光学活性なβ-ヒドロキシアミノ酸に変換する反応を触媒することができるモノオキシゲナーゼ、好ましくは、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸を光学活性なβ-ヒドロキシアミノ酸に変換する反応を触媒することができるロドコッカス属由来のモノオキシゲナーゼも、本発明の別の好ましい一実施形態である。
[0041]
 本明細書において「α-アミノ酸」は、アミノ酸のα位が一置換されたアミノ酸を意味する。本実施形態におけるα-アミノ酸としては、例えば、L-アミノブチレート、D-アミノブチレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
[0042]
 本明細書において「α,α-2置換アミノ酸」は、アミノ酸のα位が二置換されたアミノ酸を意味する。本実施形態におけるα,α-2置換アミノ酸としては、例えば、2-アミノイソ酪酸、L-イソバリン、D-イソバリン等が挙げられるが、これらに限定されない。
[0043]
 本明細書において「β-ヒドロキシアミノ酸」は、アミノ酸のβ位が水酸化されたアミノ酸を意味し、本発明の一実施形態におけるモノオキシゲナーゼにより、α-アミノ酸、α,α-2置換アミノ酸等の基質が光学的な活性を有するに至ったアミノ酸であれば特段限定されない。本実施形態におけるβ-ヒドロキシアミノ酸としては、例えば、α-メチル-D-セリン、(2S,3S)-2-メチルスレオニン、(2R,3R)-2-メチルスレオニン、L-アロ-スレオニン、D-アロ-スレオニン等が挙げられる。本明細書において「光学活性なβ-ヒドロキシアミノ酸」なる用語は、「β-ヒドロキシアミノ酸」と同義として用いられる。
[0044]
 本発明の一実施形態におけるモノオキシゲナーゼは、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸のβ位の水酸化を触媒することにより、β-ヒドロキシアミノ酸に変換すると想定される。このような作用機序により、上記モノオキシゲナーゼによって光学活性なβ-ヒドロキシアミノ酸に変換されるものであれば、α-アミノ酸、α,α-2置換アミノ酸およびβ-ヒドロキシアミノ酸は任意のものであってよい。
[0045]
 本発明の一実施形態において、モノオキシゲナーゼにより、β-ヒドロキシアミノ酸に変換されるα-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸は、以下の式(1)で示される化合物であることが好ましい:
[0046]
[化8]


 (式中、
 R およびR は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基である。)。
[0047]
 上記R がアルキル基である場合、その炭素数は、1~5個であってもよく、好ましくは、1~3個であり、より好ましくは、1個である。また、上記R がアルキル基である場合、アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、好ましくは、直鎖状であり得る。
[0048]
 上記R がアルキル基である場合、上記R と同様である。
[0049]
 なお、式中*は、不斉炭素原子であっても、不斉炭素原子でなくてもよい。
[0050]
 また、本発明の一実施形態において、モノオキシゲナーゼにより、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸から変換されるβ-ヒドロキシアミノ酸は、以下の式(2)で示される化合物であることが好ましい:
[0051]
[化9]


 (式中、
 R およびR は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基である。)。
[0052]
 上記R がアルキル基である場合、その炭素数は、1~5個であってもよく、好ましくは、1~3個であり、より好ましくは、1個である。また、上記R がアルキル基である場合、アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、好ましくは、直鎖状であり得る。
[0053]
 上記R がアルキル基である場合、上記R と同様である。
[0054]
 なお、式中*は、不斉炭素原子であっても、不斉炭素原子でなくてもよく、好ましくは*のいずれか、より好ましくは*の両方は、不斉炭素原子であり得る。
[0055]
 本発明の一実施形態において、以下の式(3)~(7)で示される、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸を光学活性なβ-ヒドロキシアミノ酸に変換する反応の少なくとも一つ以上の反応を触媒するモノオキシゲナーゼが好ましい:
式(3)
[化10]


;式(4)
[化11]


;式(5)
[化12]


;式(6)
[化13]


;式(7)
[0056]
[化14]


 本発明の一実施形態におけるモノオキシゲナーゼは、上記式で示される、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸を光学活性なβ-ヒドロキシアミノ酸に変換する反応において、得られるβ-ヒドロキシアミノ酸の光学純度が60%以上となるように変換しうるものであるのが好ましく、80%以上となるように変換しうるものであるのがより好ましく、85%以上となるように変換しうるものであるのがさらに好ましく、87%以上となるように変換しうるものであるのがとりわけ好ましい。
[0057]
 本発明の一実施形態におけるモノオキシゲナーゼは、上記2種類のヘテロなサブユニットを、それぞれαサブユニット、βサブユニットとすると、αサブユニットが、以下の(a)~(d)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質を含み、βサブユニットが、以下の(e)~(h)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質を含むことが好ましい:
 (a)配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (b)配列番号1に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質で、かつ、当該タンパク質を含むサブユニットがβサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質;
 (c)配列番号1に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質で、かつ、当該タンパク質を含むサブユニットがβサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質;
 (d)配列番号6に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質;
 (e)配列番号2に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (f)配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質で、かつ、当該タンパク質を含むサブユニットがαサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質;
 (g)配列番号2に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質で、かつ、当該タンパク質を含むサブユニットがαサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質;
 (h)配列番号7に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質。
[0058]
 上記(a)および(e)のタンパク質は、配列番号1および2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、いずれも、ロドコッカス ラティスラビエンシス(Rhodococcus wratislaviensis)に由来する。配列番号1は、全長378ミノ酸残基から構成されるポリペプチドであり、Protein Discover Software(Thermo Scientific社)において、Protein IDがpeg.803と標識されている。また、配列番号2は、全長373アミノ酸残基から構成されるポリペプチドであり、Protein Discover Software(Thermo Scientific社)において、Protein IDがpeg.804と標識されている。
[0059]
 上記(b)および(f)のタンパク質は、配列番号1および2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等であって、(b)のタンパク質の場合には、当該タンパク質を含むサブユニットがβサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有する限りにおいて、(f)のタンパク質の場合には、当該タンパク質を含むサブユニットがαサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有する限りにおいて、その具体的な配列については限定されない。ここで欠失、置換または付加されてもよいアミノ酸の数は、上記機能を失わせない限り、限定されてないが、部位特異的突然変異誘発法等の公知の導入法によって欠失、置換または付加できる程度の数をいい、好ましくは5アミノ酸以内であり、より好ましくは3アミノ酸以内(例えば、3、2または1アミノ酸)である。また、明細書中において「変異」とは、部位特異的突然変異誘発法等によって人為的に導入された変異を主に意味するが、天然に存在する同様の変異であってもよい。
[0060]
 置換されるアミノ酸残基は、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に置換されていることが好ましい。例えば、アミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸およびアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)が挙げられる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字表記を表す)。あるアミノ酸配列に対する1または複数個のアミノ酸残基の欠失、付加および/または他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている。さらに、変異後のアミノ酸残基は、共通した性質をできるだけ多く有するアミノ酸残基に変異していることがより好ましい。
[0061]
 本明細書において「機能的に同等」とは、対象となるタンパク質が、目的とするタンパク質と同等(同一および/または類似)の生物学的機能や生化学的機能を有することを意図する。生物学的な性質には発現する部位の特異性や、発現量等も含まれ得る。変異を導入したタンパク質が所望の機能を有するかどうかは、そのタンパク質をサブユニットの一部として用いた場合に、モノオキシゲナーゼ活性を有するかどうか調べることにより判断できる。
[0062]
 上記(c)および(g)のタンパク質も、配列番号1および2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等を意図しており、(c)のタンパク質の場合には、当該タンパク質を含むサブユニットがβサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有する限りにおいて、(g)のタンパク質の場合には、当該タンパク質を含むサブユニットがαサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有する限りにおいて、その具体的な配列については限定されない。
[0063]
 アミノ酸配列の相同性とは、アミノ酸配列全体(または機能発現に必要な領域)で、少なくとも80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列の同一性を有することを意味する。アミノ酸配列の相同性は、BLASTN(核酸レベル)やBLASTX(アミノ酸レベル)のプログラム(Altschul et al. J. Mol. Biol., 215: 403-410, 1990)を利用して決定することができる。該プログラムは、KarlinおよびAltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:2264-2268, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877, 1993)に基づいている。BLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore=50、wordlength=3とする。また、Gapped BLASTプログラムを用いて、アミノ酸配列を解析する場合は、Altschulら(Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402, 1997)に記載されているように行うことができる。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。比較対象の塩基配列またはアミノ酸配列を最適な状態にアラインメントするために、付加または欠失(例えば、ギャップ等)を許容してもよい。
[0064]
 本明細書において「相同性」とは、性質が類似のアミノ酸残基数の割合(homology、positive等)を意図しているが、より好ましくは、同一のアミノ酸残基数の割合、すなわち同一性(identity)である。なお、アミノ酸の性質については上述したとおりである。
[0065]
 上記(d)および(h)のタンパク質について、配列番号6および7は、それぞれ配列番号1および2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列(Open Reading Frame:ORF)を示す。
[0066]
 上記遺伝子・タンパク質を得る方法としては、通常行われるポリヌクレオチド改変方法を用いてもよい。すなわち、タンパク質の遺伝情報を有するポリヌクレオチドの特定の塩基を置換、欠失、挿入および/または付加することで、所望の組換えタンパク質の遺伝情報を有するポリヌクレオチドを作製することができる。ポリヌクレオチドの塩基を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(KOD-Plus Site-Directed Mutagenesis Kit(東洋紡)、Transformer Site-Directed Mutagenesis Kit(Clontech)、QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)等)の使用、またはポリメラーゼ連鎖反応法(polymerase chain reaction:PCR)の利用が挙げられる。これらの方法は当業者に公知である。
[0067]
 また、上記遺伝子は、上記タンパク質をコードするポリヌクレオチドのみからなるものであってもよいが、その他の塩基配列が付加されていてもよい。付加される塩基配列としては、特に限定されないが、標識(例えば、ヒスチジンタグ、MycタグまたはFLAGタグなど)、融合タンパク質(例えば、ストレプトアビジン、シトクロム、GST、GFPまたはMBPなど)、プロモーター配列、およびシグナル配列(例えば、小胞体移行シグナル配列、および分泌配列など)をコードする塩基配列などが挙げられる。これらの塩基配列が付加される部位は特に限定されるものではなく、例えば、翻訳されるタンパク質のN末端であっても、C末端でもあってもよい。
[0068]
 <2.モノオキシゲナーゼ反応システム>
 本発明の一実施形態において、上記モノオキシゲナーゼと、電子伝達系タンパク質とを含む、β-ヒドロキシアミノ酸を製造するためのモノオキシゲナーゼ反応システムを提供する。
[0069]
 本モノオキシゲナーゼ反応システムは、電子伝達系タンパク質を介した酸化還元力の供給により、上記モノオキシゲナーゼがβ-ヒドロキシアミノ酸を製造するシステムであり、上記モノオキシゲナーゼと、電子伝達系タンパク質とを含み、かつ、β-ヒドロキシアミノ酸を製造できるシステムであれば、特段限定されない。
[0070]
 本モノオキシゲナーゼ反応システムは、生物体内で構築されたシステムであってもよく、生物体外で人工的に構築されたシステムであってもよい。本モノオキシゲナーゼ反応システムは、モノオキシゲナーゼタンパク質の安定性および活性の観点から、生物体内で構築されたシステムであることが好ましい。
[0071]
 本モノオキシゲナーゼ反応システムの生物体内での構築は、生物が当該システムを元々有しているものであってもよく、当該システムを有しない生物に人工的に当該システムを導入することであってもよい。
[0072]
 本モノオキシゲナーゼ反応システムを人工的に導入する方法および導入対象は、特段限定されないが、例えば、後述する<4.ベクター>および<5.形質転換体>の項に記載の方法により行われ得る。
[0073]
 本モノオキシゲナーゼ反応システムにおける電子伝達系タンパク質は、上記モノオキシゲナーゼがモノオキシゲナーゼ活性を生じるための酸化還元力を供給するタンパク質であれば特段限定されない。
[0074]
 電子伝達系タンパク質としては、例えば、フェレドキシンおよびフェレドキシンレダクターゼの組み合わせ(フェレドキシンは、例えば、リスケタンパク質、プチダレドキシン、アドレノドキシン等であり、フェレドキシンレダクターゼは、例えば、フラボタンパク質レダクターゼ、プチダレドキシンレダクターゼ、アドレノドキシンレダクターゼ等である)、フラボドキシンおよびフラボドキシンレダクターゼの組み合わせ、P450レダクターゼ等が挙げられる。
[0075]
 本発明の一実施形態において、電子伝達系タンパク質は、以下の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質、および以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質であることが好ましい:
 (i)配列番号3に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (j)配列番号3に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (k)配列番号3に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (l)配列番号8に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質;
 (m)配列番号4に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (n)配列番号4に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、上記の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (o)配列番号4に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、上記の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (p)配列番号9に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質。
[0076]
 上記(i)および(m)のタンパク質は、配列番号3および4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、いずれも、ロドコッカス ラティスラビエンシス(Rhodococcus wratislaviensis)に由来する。配列番号3は、全長322ミノ酸残基から構成されるポリペプチドであり、Protein Discover Software(Thermo Scientific社)において、Protein IDがpeg.801と標識されている。また、配列番号4は、全長169ミノ酸残基から構成されるポリペプチドであり、Protein Discover Software(Thermo Scientific社)において、Protein IDがpeg.802と標識されている。
[0077]
 上記(j)および(n)のタンパク質は、配列番号3および4で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等であって、(j)のタンパク質の場合には、(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有する限りにおいて、(n)のタンパク質の場合には、(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有する限りにおいて、その具体的な配列については限定されない。
[0078]
 上記(k)および(o)のタンパク質も、配列番号3および4で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等を意図しており、(k)のタンパク質の場合には、(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有する限りにおいて、(o)のタンパク質の場合には、(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有する限りにおいて、その具体的な配列については限定されない。
[0079]
 上記(l)および(p)のタンパク質について、配列番号8および9は、それぞれ配列番号3および4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列(Open Reading Frame:ORF)を示す。
[0080]
 なお、本実施形態において、電子伝達系タンパク質は、上記(i)~(l)からなる群より選択されるタンパク質、および上記(m)~(p)からなる群より選択されるタンパク質に限定されるものではなく、電子伝達系に関与するその他のタンパク質を含み得ることを意図する。
[0081]
 遺伝子・タンパク質に関する一般的な記載(例えば、用語の定義等)については、<1.モノオキシゲナーゼ>の項の記載を援用するものとする。
[0082]
 <3.遺伝子>
 本発明の一実施形態において、上記タンパク質をコードするモノオキシゲナーゼ遺伝子を提供する。
[0083]
 本実施形態において、上記タンパク質は、<1.モノオキシゲナーゼ>の項に記載した本発明の一実施形態におけるモノオキシゲナーゼを構成するタンパク質であり得る。
[0084]
 <4.ベクター>
 本発明の一実施形態において、<3.遺伝子>の項に記載の遺伝子を含むベクターを提供する。本ベクターとしては、形質転換体作製のために宿主細胞内で、上記遺伝子を発現させるための発現ベクターのほか、組換えタンパク質の生産に用いるものも含まれる。
[0085]
 上記ベクターの母体となる基材ベクターとしては、一般的に使用される種々のベクターを用いることができる。例えば、プラスミド、ファージまたはコスミド等を用いることができ、導入される細胞または導入方法に応じて適宜選択できる。つまり、ベクターの具体的な種類は特に限定されるものではなく、宿主細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。宿主細胞の種類に応じて、確実に上記遺伝子を発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと上記遺伝子とを各種プラスミド等に組み込んだものを発現ベクターとして用いればよい。かかる発現ベクターは、例えば、ファージベクター、プラスミドベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、染色体ベクター、エピソームベクターおよびウイルス由来ベクター(例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体エレメントおよびウイルス(例えば、バキュロウイルス、パポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、トリポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルスおよびレトロウイルス))ならびにそれらの組合せに由来するベクター(例えば、コスミドおよびファージミド)を利用可能である。
[0086]
 細菌における使用に好ましいベクターの中には、例えば、pQE60、pQE70、pQE80およびpQE9(Qiagenから入手可能);pTipQC1(Qiagenまたは北海道システムサイエンスから入手可能)、pTipRT2(北海道システムサイエンスから入手可能);pBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16A、pNH18AおよびpNH46A(Stratageneから入手可能);ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540およびpRIT5(Addgeneから入手可能);pRSF(MERCKから入手可能);ならびにpAC((株)ニッポンジーンから入手可能)が含まれる。また、好ましい真核生物ベクターの中には、pWLNE0、pSV2CAT、pOG44、pXT1およびpSG(Stratageneから入手可能);ならびにpSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVL(Addgeneから入手可能)が含まれる。
[0087]
 また、上記遺伝子のインサートは、適切なプロモーターに作動可能に連結されることが好ましい。他の適切なプロモーターとしては、当業者に知られたものを利用可能であり、特に限定されないが、例えば、lacUV5プロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、lppプロモーター、tufBプロモーター、recAプロモーター、pLプロモーター、lacIプロモーター、lacZプロモーター、T3プロモーター、T7プロモーター、SV40初期プロモーターおよび後期プロモーター、ならびにレトロウイルスLTRのプロモーターが挙げられる。
[0088]
 上記ベクターは、さらに、転写開始、転写終結のための部位、および、転写領域中に翻訳のためのリボゾーム結合部位を含むことが好ましい。ベクター構築物によって発現される成熟転写物のコード部分は、翻訳されるべきポリペプチドの始めに転写開始AUGを含み、そして終わりに適切に位置される終止コドンを含むことになる。
[0089]
 ベクターが導入される宿主としては、特に限定されないが、各種細胞を好適に用いることができる。適切な宿主の代表的な例としては、細菌、酵母、糸状菌、植物細胞、動物細胞等が挙げられるが、特に限定されるものではない。上記の宿主細胞のための適切な培養培地および条件は当分野で公知ものを利用可能である。
[0090]
 上記ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換方法も特に限定されるものではなく、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入または感染等の従来公知の方法を好適に用いることができる。このような方法は、DavisらによるBasic Methods In Molecular Biology (1986)のような多くの標準的研究室マニュアルに記載されている。
[0091]
 <5.形質転換体>
 本発明の一実施形態において、<3.遺伝子>の項に記載の遺伝子または<4.ベクター>の項に記載の組換えベクターを含む形質転換体を提供する。ここで、「遺伝子またはベクターを含む」とは、公知の遺伝子工学的手法(遺伝子操作技術)により、対象細胞(宿主細胞)内に発現可能に導入されていることを意味する。また、上記「形質転換体」とは、細胞・組織・器官のみならず、生物個体を含む意味である。
[0092]
 本形質転換体の作製方法(生産方法)としては、上述したベクターを形質転換する方法が挙げられる。また、形質転換の対象となる生物も特に限定されるものではなく、上記宿主細胞で例示した各種生物を挙げることができる。
[0093]
 本発明の一実施形態において使用される宿主細胞としては、細菌、酵母、糸状菌、植物細胞、動物細胞等が挙げられるが、導入および発現効率の観点から、放線菌が好ましい。
[0094]
 放線菌としては、例えば、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ノカルディア(Nocardia)属細菌等が挙げられ、好ましくは、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)、ロドコッカス ラティスラビエンシス(Rhodococcus wratislaviensis)、ノカルディア グロベルラ(Nocardia globerula)等が用いられる。後述する実施例でも使用されているように、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)が宿主細胞として特に好ましく用いられる。
[0095]
 本発明の一実施形態において、上記形質転換体は、以下に示す遺伝子をさらに含むことが好ましい:
 (1)電子伝達系タンパク質をコードする遺伝子、および/または
 (2)トランスポータータンパク質をコードする遺伝子。
[0096]
 本電子伝達系タンパク質としては、特段限定されないが、例えば、<2.モノオキシゲナーゼ反応システム>の項で記載した電子伝達系タンパク質であり得る。
[0097]
 本トランスポータータンパク質は、上記モノオキシゲナーゼの基質となる物質を形質転換体の内部に取り込む機能を有するタンパク質であれば特段限定されない。
[0098]
 トランスポータータンパク質としては、例えば、パーミアーゼ(例えば、シンポーター、アンチポーター、ユニポーター等)、ABCトランスポーター等が挙げられる。
[0099]
 本発明の一実施形態において、トランスポータータンパク質は、以下の(q)~(t)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質であることが好ましい:
 (q)配列番号5に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (r)配列番号5に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、トランスポーター活性を有するタンパク質;
 (s)配列番号5に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、トランスポーター活性を有するタンパク質;
 (t)配列番号10に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質。
[0100]
 上記(q)のタンパク質は、配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、ロドコッカス ラティスラビエンシス(Rhodococcus wratislaviensis)に由来する。配列番号5は、全長480ミノ酸残基から構成されるポリペプチドであり、Protein Discover Software(Thermo Scientific社)において、Protein IDがpeg.800と標識されている。
[0101]
 上記(r)のタンパク質は、配列番号5で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等であって、トランスポーター活性を有する限りにおいて、その具体的な配列については限定されない。
[0102]
 上記(s)のタンパク質も、配列番号5で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等を意図しており、トランスポーター活性を有する限りにおいて、その具体的な配列については限定されない。
[0103]
 上記(t)のタンパク質について、配列番号10は、それぞれ配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列(Open Reading Frame:ORF)を示す。
[0104]
 なお、本実施形態において、トランスポータータンパク質は、上記(q)~(t)からなる群より選択されるタンパク質に限定されるものではなく、細胞膜上での物質輸送(トランスポート)に関与するその他のタンパク質を含み得ることを意図する。
[0105]
 遺伝子・タンパク質に関する一般的な記載(例えば、用語の定義等)については、<1.モノオキシゲナーゼ>の項の記載を援用するものとする。
[0106]
 形質転換体が上記(1)電子伝達系タンパク質をコードする遺伝子を含むことにより、上記モノオキシゲナーゼへの酸化還元力の供給が促進され、その結果として、β-ヒドロキシアミノ酸の製造が効率的に行われるという利点を有する。
[0107]
 上記(1)電子伝達系タンパク質をコードする遺伝子は、導入先の宿主/形質転換体が、上記モノオキシゲナーゼへの酸化還元力の供給を行う電子伝達系タンパク質を有していないときは、それを補償するものとして機能し、上記モノオキシゲナーゼへの酸化還元力の供給を行う電子伝達系タンパク質を有しているときは、酸化還元力の供給を強化するものとして機能し得る。
[0108]
 また、形質転換体が(2)トランスポータータンパク質をコードする遺伝子を含むことにより、形質転換体内部へのモノオキシゲナーゼ基質の取り込みが促進され、その結果として、β-ヒドロキシアミノ酸の製造が効率的に行われるという利点を有する。
[0109]
 <6.β‐ヒドロキシアミノ酸の製造方法>
 本発明の一実施形態において、<5.形質転換体>の項に記載の形質転換体を、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸を含む培地中で培養する工程を含む、β‐ヒドロキシアミノ酸の製造方法を提供する。本実施形態におけるβ‐ヒドロキシアミノ酸の製造は、<5.形質転換体>の項に記載の形質転換体を用いるものであればよく、その他の具体的な構成、条件、材料、および使用設備等については、特段限定されない。
[0110]
 上記形質転換体としては、放線菌が好ましく、特に、ロドコッカス属細菌、とりわけ、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)が好ましく用いられる。このような細菌を用いることで、β‐ヒドロキシアミノ酸を高効率で製造することができる。
[0111]
 本実施形態において、上記形質転換体によるβ‐ヒドロキシアミノ酸の製造は、培地中に、形質転換体と、基質となるα-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸が同時に存在していることにより成立する。α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸の培地への添加時期は、特に限定されることはないが、例えば、形質転換体内で導入した遺伝子を発現させるのと同時に、または形質転換体内で導入した遺伝子を発現させる前後のいずれか、もしくは両方において、添加され得る。本実施形態は、形質転換体がすでに含まれている培地へ、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸を添加する態様であってもよく、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸がすでに含まれている培地へ、形質転換体を投入することにより行われてもよい。このような条件は、上記に限らず、効率的なβ‐ヒドロキシアミノ酸の製造が可能なように、当業者により適宜設定され得る。
[0112]
 本実施形態において、α-アミノ酸、α,α-2置換アミノ酸およびβ‐ヒドロキシアミノ酸は、<1.モノオキシゲナーゼ>の項に記載されたものであり得る。
[0113]
 上記形質転換体を培養する工程に関しては、形質転換体の宿主菌株の培養方法として従来公知の手法を好適に利用でき、特に限定されない。例えば、培養時の温度であれば、常法にしたがい、20~45℃とするのが好ましく、25~35℃とするのがより好ましい。反応時間も特に限定されないが、導入遺伝子発現から1~120時間培養することが好ましく、24~72時間培養することがより好ましい。
[0114]
 培養物または菌体からのβ‐ヒドロキシアミノ酸の採取方法についても、微生物生産物を得るのに常用される方法に従って行うことができ、特に限定されない。
[0115]
 その他、上記<1>~<6>の各項目で記載した内容は、他の項目においても適宜援用できることを付言する。また、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例
[0116]
 〔実施例1〕2-アミノイソ酪酸資化性微生物の単離および水酸化活性の評価
 0.1% 2-アミノイソ酪酸、0.1% 塩化アンモニウム、0.1% リン酸2水素カリウム、0.1% リン酸水素2カリウム、0.03% 硫酸マグネシウム7水和物、0.01% Difco Yeast Nitogen Base w/o Amino Acids and Ammoniumu Sulfateで構成される2mlの集積用液体培地を用いて、自然界から採取した土壌サンプル各種を、28℃で5日間、振とう培養した(濃度はすべて(w/v)%で示す(以下、実施例全体に渡って同様))。微生物が生育してきた培養液を、2mlの新しい集積用液体培地に接種した。この操作を数回繰り返した後、同成分で調製した1.5% 寒天プレート培地にて、2-アミノイソ酪酸資化性微生物を単離した。単離した各微生物を再び2mlの集積用液体培地に播種し、28℃で5日間、振とう培養した。その後、8000gで10分間の遠心操作で集菌し、0.85%食塩水で2回洗浄した湿菌体を、以下の休止菌体反応に用いた。休止菌体反応は、10mM 2-アミノイソ酪酸、10mM グルコース、1mM アミノオキシ酢酸、5% 湿菌体を、50mM HEPESバッファー(pH7.5)中、300rpmで4時間振とうすることにより行った。
[0117]
 結果を表1に示す。表1に示す通り、3種類の微生物において、α-メチル-D-セリンの生成が確認された。
[0118]
[表1]


 <分析条件>
・測定機器:LCMS-2010A(島津製作所)
・カラム:Xbridge C18 カラム(5μm:2.1×150mm)(日本ウォーターズ)
・カラムオーブン温度:40℃
・移動相A:10mM 酢酸アンモニウム(pH5.0)
・移動相B:メタノール
・流速:0.3ml/分
・グラジエント設定:0~0.5分 0~1% 移動相B、0.5~18分 1~5% 移動相B、18~19分 5~9% 移動相B、19~29.5分 9~17% 移動相B、29.5~40分 17~60% 移動相B
・MS条件:ブロック温度 200℃、Curved desolvation line温度 250℃、Detector voltage 1.5kV、nebulizing gas flow 1.51/分
 AccQ-Tag derivation kit(日本ウォーターズ)を用いて、分析溶液中のアミノ酸を誘導化した後に、LCMS分析に供した。
[0119]
 〔実施例2〕R. wratislaviensis C31-06株のプロテオーム解析
 R. wratislaviensis C31-06株を、250mlの2-アミノイソ酪酸誘導液体培地(0.1% 2-アミノイソ酪酸、0.1% 塩化アンモニウム、0.1% リン酸2水素カリウム、0.1% リン酸水素2カリウム、0.03% 硫酸マグネシウム7水和物、0.01% Difco Yeast Nitogen Base w/o Amino Acids and Ammoniumu Sulfate)、または250mlの非誘導培地(2-アミノイソ酪酸誘導液体培地において、0.1% 2-アミノイソ酪酸の代わりに0.05%グルコースを使用)を用いて、28℃で38.5時間培養した(各々、n=3)。それぞれの培養菌体を、4℃、8000gで10分間の遠心分離で集菌し、7M尿素、2.0mMチオウレア、2%CHAPS、10mM ジチオスレイトール、1tablet/10ml プロテアーゼ阻害剤(Complete Mini,ロシュ)を含む50mM Tris-HCl(pH8.0)バッファーに懸濁した。0.10mmビーズを添加し、マルチビーズショッカーで菌体を破砕した後、4℃、20000gで15分間、遠心分離を行った。得られた遠心上清を細胞溶解液として使用した。200mM TEABバッファー(pH8.0)を最小量用いて沈殿物を洗浄し、細胞溶解液と合わせて、0.45μmのフィルターでろ過した。次いで、200mM TEABバッファーを用いてろ液を置換した。置換したろ液に9.5mM Tris(2-carboxyethyl)phosphineを添加し、55℃で60分間、処理した。その後、ヨードアセトアミドを17.9mMとなるように添加し、室温で30分間、処理した。最後に、2~4倍量の冷アセトンを添加し、-20℃で3時間、処理した。4℃、13000gで10分間の遠心分離により、タンパク質を回収した。残存アセトンは、37℃で2分間処理することにより、除去した。
[0120]
 次いで、タンパク質のトリプシン消化を行った。具体的には、回収したタンパク質を200mM TEABバッファーで懸濁した後、47.6ng/μlのトリプシンを用いて、37℃で終夜、消化処理した。その後、得られた消化物を、tandem mass tag(TMT)6-plex labeling kit(Thermo Fisher Scientific)を用いて、41μlの アセトニトリル中でラベル化した。室温で60分間の反応後、8μlの5%ヒドロキシルアミンを添加して15分間混合した。次いで、真空下で液体を蒸発させた後、100μlの0.1% トリフルオロ酢酸に溶解した。
[0121]
 上記により得られたトリプシン消化タンパク質を、LCMS分析(Prominence Nano Flow System(島津製作所))に供した。得られた質量分析のデータと、R. wratislaviensis C31-06株のゲノム情報(北海道システムサイエンスで取得)を基に作成したタンパク質データベースを備えたProtein Discover Software(Thermo Scientific社)を用いて、誘導タンパク質の同定を行った。結果を表2に示す。
[0122]
[表2]


 <分析条件>
・測定機器:Prominence Nano Flow System(島津製作所)
・カラム:Monolithic silica capillaryカラム (500cm長、0.1mm ID)(京都モノテック)
・カラムオーブン温度:40℃
・移動相A:0.1% ギ酸水溶液
・移動相B:0.1% ギ酸アセトニトリル
・流速:500ml/分
・グラジエント設定:0~600分 5~45% 移動相B
・MS条件:LTQ Velos linear ion trap mass spectrometer(Thermo Scientific)、2.3kVのESI voltage、LTQ Velos ion trap上のイオントランスファーチューブ温度=280℃
 〔実施例3〕2-アミノイソ酪酸水酸化酵素および電子伝達系タンパク質の同定
 実施例2で得られたProtein ID peg.801-804が2-アミノイソ酪酸水酸化反応を触媒する複合体であると予想されたことから、これらをコードする遺伝子の取得を試みた。
[0123]
 具体的には、以下のPCR条件の下でPCRを行い、peg.801-804のPCR産物を得た。
[0124]
 <PCR条件>
・鋳型:R. wratislaviensis C31-06株のゲノム (100ng/μl、1μl)
・ポリメラーゼ:PrimeSTAR Max Premix(2×)(タカラバイオ)(25μl)
・プライマー(pTipQC1_5’ Hyd):TGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACCATGGTTGCACCAACCTCGAA(配列番号11)(10μM、1μl)
・プライマー(pTipQC1_3’ Hyd):TGGTGATGGTGATGCTCGAGAGATCTACTAGAGATCGAGGACGAGCC(配列番号12)(10μM、1μl)
・増幅条件:98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃ 1分を30サイクル。
[0125]
 NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(New England BioLabs)を用いて、PCR産物を、NcoIとHindIIIとで制限酵素処理したベクターpTipQC1(北海道システムサイエンス)に挿入した。次いで、本プラスミドpQAH1を用いて、E.coli JM109を形質転換した。本形質転換体を、2mlのLB培地(50μg/ml アンピシリン含)中、28℃で終夜培養した。本菌体からpQAH1を取得後、本プラスミドを用いて、Rhodococcus erythropolis L88(北海道システムサイエンス)を形質転換した。本形質転換体を、2mlのLB培地(20μg/ml クロラムフェニコール含)中、28℃で終夜培養した。培養液の一部を新しい2mlのLB培地(20μg/ml クロラムフェニコール含)へ添加し、28℃で振とう培養を行った。培養液濁度が0.8(吸収波長:600nm)となった後に、タンパク質の発現を誘導する目的で、チオストレプトンを0.2μg/mlの濃度となるように添加した。次いで、反応基質として、2-アミノイソ酪酸を10mMの濃度となるように添加し、振とう反応を開始した。
[0126]
 その結果、48時間の反応後において、2.7mMのα-メチル-D-セリンの生成が確認された。
[0127]
 以上より、peg.801-804が2-アミノイソ酪酸水酸化反応を触媒する複合体であることが分かった。
[0128]
 <分析条件>
・測定機器:Shimadzu LC-VP(島津製作所)
・カラム:Xbridge C18 カラム(5μm:2.1×150mm)(日本ウォーターズ)
・カラムオーブン温度:40℃
・移動相A:Waters AccQ-Tag Eluent A
・移動相B:メタノール
・流速:0.3ml/分
・グラジエント設定:0~0.1分 0% 移動相B、0.1~0.5分 0~1% 移動相B、0.5~18分 1~5% 移動相B、18~19分 5~9% 移動相B、19~29.5分 9~17% 移動相B、29.5~40分 17~60% 移動相B、40~43分 60~0% 移動相B、43~55分 0% 移動相B
・検出:蛍光検出器(励起波長250nm 発光波長395nm)
 AccQ-Tag derivation kit(日本ウォーターズ)を用いて、分析溶液中のアミノ酸を誘導化した後に、LC分析に供した。
[0129]
 〔実施例4〕peg.803、804の機能解析
 〔4.1〕
 Protein ID peg.801、802、803を発現する形質転換放線菌の構築を試みた。
[0130]
 具体的には、以下のPCR条件の下でPCRを行い、peg.801、802、803のPCR産物を得た。
[0131]
 <PCR条件>
・鋳型:R. wratislaviensis C31-06株のゲノム (100ng/μl、1μl)
・ポリメラーゼ:PrimeSTAR Max Premix(2×)(タカラバイオ)(25μl)
・プライマー(pTipQC1_5’ 803):TGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACCATGACCATCATCGAACACGG(配列番号13)(10μM、1μl)
・プライマー(pTipQC1_3’ Hyd):TGGTGATGGTGATGCTCGAGAGATCTACTAGAGATCGAGGACGAGCC(配列番号12)(10μM、1μl)
・増幅条件:98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃ 1分を30サイクル。
[0132]
 NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(New England BioLabs)を用いて、PCR産物を、NcoIとHindIIIとで制限酵素処理したベクターpTipQC1(Qiagen)に挿入した。次いで、本プラスミドpQAH-d804を用いて、E.coli JM109を形質転換した。本形質転換体を、2mlのLB培地(50μg/ml アンピシリン含)中、28℃で終夜培養した。本菌体からpQAH-d804を取得後、本プラスミドを用いて、Rhodococcus erythropolis L88(北海道システムサイエンス)を形質転換した。本形質転換体を、2mlのLB培地(20μg/ml クロラムフェニコール含)中、28℃で終夜培養した。培養液の一部を新しい2mlのLB培地(20μg/ml クロラムフェニコール含)へ添加し、28℃で振とう培養を行った。培養液濁度が0.8(吸収波長:600nm)となった後に、タンパク質の発現を誘導する目的で、チオストレプトンを0.2μg/mlの濃度となるように添加した。次いで、反応基質として、2-アミノイソ酪酸を10mMの濃度となるように添加し、振とう反応を開始した。
[0133]
 その結果、48時間の反応後において、培養上清には、α-メチル-D-セリンの生成は確認できなかった。
[0134]
 実施例3の結果と本結果より、水酸化活性発現にはpeg.804タンパク質が必要であることが分かった。
[0135]
 〔4.2〕
 続いて、Protein ID peg.801、802、804を発現する形質転換放線菌の構築を試みた。
[0136]
 具体的には、以下のPCR条件の下でPCRを行い、peg.801、802、804のPCR産物を得た。
[0137]
 <PCR条件>
・鋳型:R. wratislaviensis C31-06株のゲノム (100ng/μl、1μl)
・ポリメラーゼ:PrimeSTAR Max Premix(2×)(タカラバイオ)(25μl)
・プライマー(pTipQC1_5’ Hyd):TGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACCATGGTTGCACCAACCTCGAA(配列番号11)(10μM、1μl)
・プライマー(joint802-4_3’):CGCTACCGATTACAAACTTGGACATTCTTAACCAACCTTTCCTGGGC(配列番号14)(10μM、1μl)
または
・プライマー(joint804-2_5’):CCCGAGCCCAGGAAAGGTTGGTTAAGAATGTCCAAGTTTGTAATCGG(配列番号15)(10μM、1μl)
・プライマー(pTipQC1_3’ Hyd):TGGTGATGGTGATGCTCGAGAGATCTACTAGAGATCGAGGACGAGCC(配列番号12)(10μM、1μl)
・増幅条件:98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃ 1分を30サイクル。
[0138]
 NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(New England BioLabs)を用いて、2種類のPCR産物を、NcoIとHindIIIとで制限酵素処理したベクターpTipQC1(Qiagen)に挿入した。次いで、本プラスミドpQAH-d803を用いて、E.coli JM109を形質転換した。本形質転換体を、2mlのLB培地(50μg/ml アンピシリン含)中、28℃で終夜培養した。本菌体からpQAH-d803を取得後、本プラスミドを用いて、Rhodococcus erythropolis L88(北海道システムサイエンス)を形質転換した。本形質転換体を、2mlのLB培地(20μg/ml クロラムフェニコール含)中、28℃で終夜培養した。培養液の一部を新しい2mlのLB培地(20μg/ml クロラムフェニコール含)へ添加し、28℃で振とう培養を行った。培養液濁度が0.8(吸収波長:600nm)となった後に、タンパク質の発現を誘導する目的で、チオストレプトンを0.2μg/mlの濃度となるように添加した。次いで、反応基質として、2-アミノイソ酪酸を10mMの濃度となるように添加し、振とう反応を開始した。
[0139]
 その結果、48時間の反応後において、培養上清には、α-メチル-D-セリンの生成は確認できなかった。
[0140]
 実施例3の結果と本結果より、水酸化活性発現にはpeg.803タンパク質が必要であることが分かった。
[0141]
 〔比較例1〕形質転換大腸菌についての反応性評価
 Protein ID peg.801-804を発現する形質転換大腸菌の構築を試みた。
[0142]
 具体的には、以下のPCR条件の下でPCRを行い、peg.803、804のPCR産物を得た。
[0143]
 <PCR条件>
・鋳型:R. wratislaviensis C31-06株のゲノム (100ng/μl、1μl)
・ポリメラーゼ:Tsk Gflex DNA Polymerase(タカラバイオ)(1.25ユニット/μl、1μl)
・プライマー(pQE60_5’ Hyd):GAATTCATTAAAGAGGAGAAATTAACCATGGTTGCACCAACCTCGAA(配列番号16)(10μM、1μl)
・プライマー(pQE60_3’ Hyd):CAACAGGAGTCCAAGCTCAGCTAATTACTAGAGATCGAGGACGAGCC(配列番号17)(10μM、1μl)
・増幅条件:98℃ 10秒、58℃ 15秒、68℃ 1分を30サイクル。
[0144]
 NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(New England BioLabs)を用いて、PCR産物を、NcoIとHindIIIとで制限酵素処理したベクターpQE60(Qiagen)に挿入した。次いで、本プラスミドpQEHydを用いて、E.coli JM109を形質転換した。本形質転換体を、2mlのLB培地(50μg/ml アンピシリン含)中、28℃で終夜培養した。次いで、培養液の一部を、250mlのTB培地(50μg/ml アンピシリン含)へ添加し、28℃で振とう培養を行った。培養液濁度が0.6(吸収波長:600nm)となった後に、タンパク質の発現を誘導する目的で、IPTGを1mMの濃度となるように添加した。16時間の培養後、反応基質として、2-アミノイソ酪酸を10mMの濃度となるように添加し、振とう反応を開始した。
[0145]
 その結果、48時間の反応後において、0.2mMのα-メチル-D-セリンの生成が確認された。これは、実施例3と比較して、α-メチル-D-セリンの生成量が少ない結果であった。
[0146]
 以上より、本反応系の宿主としては、大腸菌よりもロドコッカス属細菌において、反応性がより高まることが分かった。
[0147]
 〔実施例5〕peg.800導入による反応性評価
 相同性検索の結果に基づき、実施例2で得られたProtein ID peg.800が、2-アミノイソ酪酸のトランスポーターであると予想されたことから、peg.800をコードする遺伝子の取得を試みた。
[0148]
 具体的には、以下のPCR条件の下でPCRを行い、peg.800のPCR産物を得た。
[0149]
 <PCR条件>
・鋳型:R. wratislaviensis C31-06株のゲノム(100ng/μl、1μl)
・ポリメラーゼ: PrimeSTAR Max Premix(2×)(タカラバイオ)(25μl)
・プライマー(pTipRT2_NdeI_5’ 800):GTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGACAGTGAATCATTCCCA(配列番号18)(10μM、1μl)
・プライマー(pTipRT2_HindIII_3’ 800):TGGTGATGGTGATGCTCGAGAGATCTATCAGATTCTGGGCTGCAGAA(配列番号19)(10μM、1μl)
・増幅条件:98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃ 1分を30サイクル。
[0150]
 NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(New England BioLabs)を用いて、PCR産物を、NdeIとHindIIIとで制限酵素処理したベクターpTipRT2(北海道システムサイエンス)に挿入した。次いで、本プラスミドpRAT1を用いて、E.coli JM109を形質転換した。本形質転換体を、2mlのLB培地(50μg/ml アンピシリン含)中、28℃で終夜培養した。本菌体からpRAT1を取得後、本プラスミドを用いて、実施例3で作製したpQAH1 Rhodococcus erythropolis L88を形質転換した。本形質転換体(pQAH1/pRAT1 Rhodococcus erythropolis L88)を、2mlのLB培地(5μg/ml テトラサイクリン、20μg/ml クロラムフェニコール含)中、28℃で終夜培養した。培養液の一部を新しい2mlのLB培地(5μg/ml テトラサイクリン、20μg/ml クロラムフェニコール含)へ添加し、28℃で振とう培養を行った。培養液濁度が0.8(吸収波長:600nm)となった後に、タンパク質の発現を誘導する目的で、チオストレプトンを0.2μg/mlの濃度となるように添加した。次いで、反応基質として、2-アミノイソ酪酸を10mMの濃度となるように添加し、振とう反応を開始した。
[0151]
 その結果、48時間の反応後において、培養上清には、8.5mMのα-メチル-D-セリンの生成が確認された。
[0152]
 本実施例では、実施例3よりも多くの生成物が確認されたことから、peg.800タンパク質が反応性を向上させることが分かった。
[0153]
 なお、生成したα-メチル-D-セリンの光学純度は93.5%eeであった。
[0154]
 <分析条件>
・測定機器:LCMS-2010A(島津製作所)
・カラム:Xbridge C18 カラム(5μm:2.1×150mm)(日本ウォーターズ)
・カラムオーブン温度:40℃
・移動相A:5%酢酸
・移動相B:アセトニトリル/メタノール=90/10
・流速:0.25ml/分
・グラジエント設定:0~0.1分 5% 移動相B、0.1~30分 5~35% 移動相B、30~40分 90% 移動相B、40~50分 5% 移動相B
・MS条件:ブロック温度 200℃、Curved desolvation line温度 250℃、Detector voltage 1.5kV、nebulizing gas flow 1.51/分
 25μlの反応溶液と25μlの0.8%トリエチルアミンアセトニトリル溶液とを混合し、50μlの2,3,4,6,-tetra-O-acetyl-β-D-glucopyranosyl isocyanateで誘導化したものを用いて、光学純度分析を行った。
[0155]
 〔実施例6〕基質特異性評価
 実施例5と同様の方法により、pQAH1/pRAT1 Rhodococcus erythropolis L88をLB培地で培養した。0.2μg/mlのチオストレプトンでタンパク質の発現を誘導した後、10mMのL-イソバリン、D-イソバリン、L-アミノブチレート、D-アミノブチレートのそれぞれを、5% グルコースと共に添加した。26時間の反応後、実施例1に示すLCMS分析法にて、反応上清を分析した。
[0156]
 その結果、各基質について分子量が16増加した生成物が確認されたことから、水酸化反応が進行していることが分かった。NMR及び旋光度解析の結果から、L-イソバリンを基質とした際には(2S,3S)-2-メチルスレオニンが、D-イソバリンを基質とした際には(2R,3R)-2-メチルスレオニンが、L-アミノブチレートを基質とした際にはL-アロ-スレオニンが、D-アミノブチレートを基質とした際にはD-アロ-スレオニンが、それぞれ生成していることが確認された。
[0157]
 なお、(2S,3S)-2-メチルスレオニンおよび(2R,3R)-2-メチルスレオニンのNMRの結果は、以下の通りである(表3)。
[0158]
[表3]


 〔実施例7〕peg.803、804の構造解析
 Protein ID peg.803、804を発現する形質転換大腸菌の構築を試みた。
[0159]
 具体的には、以下のPCR条件の下でPCRを行い、peg.803、804のPCR産物を得た。
[0160]
 <PCR条件>
・鋳型:R. wratislaviensis C31-06株のゲノム (100ng/μl、1μl)
・ポリメラーゼ:PrimeSTAR Max Premix(2×)(タカラバイオ)(25μl)
・プライマー(pQE_804_5’):TCGCATCACCATCACCATCACGGATCCATGGTTGCACCAACCTCGAA(配列番号20)(10μM、1μl)
・プライマー(pQE_803_3’):CAACAGGAGTCCAAGCTCAGCTAATTATTAGTCCGCCTGATTCGTAA(配列番号21)(10μM、1μl)
・増幅条件:98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃ 1分を30サイクル。
[0161]
 NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(New England BioLabs)を用いて、PCR産物を、BamHIとHindIIIとで制限酵素処理したベクターpQE80(Qiagen)に挿入した。次いで、本プラスミドpQE804-803を用いて、E.coli Rosetta 2(DE3)を形質転換した。本形質転換体を、2mlのLB培地(50μg/ml アンピシリン、25μg/ml クロラムフェニコール含)中、28℃で終夜培養した。培養液の一部を、200mlのTB培地(50μg/ml アンピシリン、25μg/ml クロラムフェニコール含)へ添加し、20℃で振とう培養を行った。培養液濁度が0.6(吸収波長:600nm)となった後に、タンパク質の発現を誘導する目的で、IPTGを0.5mMの濃度となるように添加した。16時間の培養後、菌体を遠心分離により回収し、0.85% NaClで2回洗浄した。本菌体を、0.5M NaCl、30mM イミダゾール、20mM HEPES(pH8.0)に懸濁後、超音波破砕した。遠心分離した本破砕液の上清を、HisTALON Superflow(1.6×2.5cm)(タカラバイオ)に導入し、0.5M NaCl、30mM イミダゾール、150mM HEPES(pH8.0)で溶出することにより、peg.803、804を含む酵素画分を回収した。本酵素画分を限外濾過により濃縮後、Superdex 200 Increase 10/300GL column(1.0×30cm)(GEヘルスケア)に導入し、10mM HEPES(pH8.0)、0.14M NaClを用いてpeg.803、804の分子量を測定したところ、約180,000であった。peg.803、804の推定分子量はそれぞれ42,000、43,000であることから、上記SDS-PAGE分析の結果と併せて、peg.803とpeg.804とが等モルで会合していることが分かった。
[0162]
 以上より、上記モノオキシゲナーゼは、peg.803およびpeg.804の各々で構成され、モノオキシゲナーゼ全体としてヘテロテトラマー構造を取ることが推定された。
[0163]
 〔実施例8〕peg.801の補酵素の同定
 Protein ID peg.801を発現する形質転換大腸菌の構築を試みた。
[0164]
 具体的には、以下のPCR条件の下でPCRを行い、peg.801のPCR産物を得た。
[0165]
 <PCR条件>
・鋳型:R. wratislaviensis C31-06株のゲノム (100ng/μl、1μl)
・ポリメラーゼ:PrimeSTAR Max Premix(2×)(タカラバイオ)(25μl)
・プライマー(pQE_801_5’):TCGCATCACCATCACCATCACGGATCCATGACCAATTCAGATAGTTC(配列番号22)(10μM、1μl)
・プライマー(pQE_801_3’):CAACAGGAGTCCAAGCTCAGCTAATTACTAGAGATCGAGGACGAGCC(配列番号23)(10μM、1μl)
・増幅条件:98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃ 1分を30サイクル。
[0166]
 NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(New England BioLabs)を用いて、PCR産物を、BamHIとHindIIIとで制限酵素処理したベクターpQE80(Qiagen)に挿入した。次いで、本プラスミドpQE-801を用いて、E.coli Rosetta 2(DE3)を形質転換した。本形質転換体を、2mlのLB培地(50μg/ml アンピシリン、25μg/ml クロラムフェニコール含)中、28℃で終夜培養した。培養液の一部を、200mlのTB培地(50μg/ml アンピシリン、25μg/ml クロラムフェニコール含)へ添加し、20℃で振とう培養を行った。培養液濁度が0.6(吸収波長:600nm)となった後に、タンパク質の発現を誘導する目的で、IPTGを0.5mMの濃度となるように添加した。16時間の培養後、菌体を遠心分離により回収し、0.85% NaClで2回洗浄した。本菌体を、0.5M NaCl、30mM イミダゾール、20mM HEPES(pH8.0)に懸濁後、超音波破砕した。遠心分離した本破砕液の上清を、HisTALON Superflow(1.6×2.5cm)(タカラバイオ)に導入し、0.5M NaCl、30mM イミダゾール、150mM HEPES(pH8.0)で溶出することにより、peg.801を含む酵素画分を回収した。本酵素画分を限外濾過により濃縮後、MonoQ 10/100 GL column(1.0×10cm)(GEヘルスケア)に導入し、1M NaCl、20mM Tris-HClバッファー(pH7.4)で溶出することにより、peg.801の精製酵素を得た。0.77μg/mlのpeg.801を、10-150μM NADHまたはNADPH、20-100μM ジクロロインドフェノール、100mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)を含む反応液に添加して、peg.801の酵素活性を測定した。
[0167]
 本反応におけるKm値を測定したところ、NADHに対しては、8.2μM、NADPHに対しては、6.2mMであった。したがって、peg.801は、NADHを補酵素として要求することが分かった。

産業上の利用可能性

[0168]
 本発明は、安定したタンパク質の供給が求められる分野、例えば、ペプチド医薬の製造等の分野において利用することができる。

受託番号

[0169]
  NITE BP-02370

請求の範囲

[請求項1]
 2種類のヘテロなサブユニットにより構成されていることを特徴とする、モノオキシゲナーゼ。
[請求項2]
 α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸を、β-ヒドロキシアミノ酸に変換する反応を触媒することを特徴とする、請求項1に記載のモノオキシゲナーゼ。
[請求項3]
 上記α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸が、以下の式(1):
[化1]


 (式中、
 R およびR は、それぞれ独立して、水素またはCH である。)
で示される化合物であり、
 上記β-ヒドロキシアミノ酸が、以下の式(2):
[化2]


 (式中、
 R およびR は、それぞれ独立して、水素またはCH である。)
で示される化合物であることを特徴とする、請求項2に記載のモノオキシゲナーゼ。
[請求項4]
 以下の式(3)~(7)で示される、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸をβ-ヒドロキシアミノ酸に変換する反応の少なくとも一つ以上の反応を触媒することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のモノオキシゲナーゼ:
式(3)
[化3]


;式(4)
[化4]


;式(5)
[化5]


;式(6)
[化6]


;式(7)
[化7]


[請求項5]
 上記2種類のヘテロなサブユニットを、それぞれαサブユニット、βサブユニットとすると、
 αサブユニットが、以下の(a)~(d)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質を含み、
 βサブユニットが、以下の(e)~(h)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のモノオキシゲナーゼ:
 (a)配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (b)配列番号1に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質で、かつ、当該タンパク質を含むサブユニットがβサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質;
 (c)配列番号1に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質で、かつ、当該タンパク質を含むサブユニットがβサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質;
 (d)配列番号6に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質;
 (e)配列番号2に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (f)配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質で、かつ、当該タンパク質を含むサブユニットがαサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質;
 (g)配列番号2に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質で、かつ、当該タンパク質を含むサブユニットがαサブユニットと複合体を形成したときにモノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質;
 (h)配列番号7に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質。
[請求項6]
 請求項1~5のいずれか1項に記載のモノオキシゲナーゼと、電子伝達系タンパク質とを含むことを特徴とする、β-ヒドロキシアミノ酸を製造するためのモノオキシゲナーゼ反応システム。
[請求項7]
 上記電子伝達系タンパク質が、以下の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質、および以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質であることを特徴とする、請求項6に記載のモノオキシゲナーゼ反応システム:
 (i)配列番号3に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (j)配列番号3に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (k)配列番号3に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (l)配列番号8に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質;
 (m)配列番号4に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (n)配列番号4に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、上記の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (o)配列番号4に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、上記の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (p)配列番号9に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質。
[請求項8]
 請求項1~5のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするモノオキシゲナーゼ遺伝子。
[請求項9]
 請求項8に記載の遺伝子を含むことを特徴とする組換えベクター。
[請求項10]
 請求項8に記載の遺伝子または請求項9に記載の組換えベクターを含むことを特徴とする形質転換体。
[請求項11]
 さらに、以下に示す遺伝子を含む、請求項10に記載の形質転換体:
 (1)電子伝達系タンパク質をコードする遺伝子、および/または
 (2)トランスポータータンパク質をコードする遺伝子。
[請求項12]
 上記電子伝達系タンパク質が、以下の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質、および
 以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質であることを特徴とする、請求項11に記載の形質転換体:
 (i)配列番号3に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (j)配列番号3に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (k)配列番号3に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、以下の(m)~(p)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (l)配列番号8に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質;
 (m)配列番号4に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (n)配列番号4に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、上記の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (o)配列番号4に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、上記の(i)~(l)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質と組み合わせたときに電子伝達活性を有するタンパク質;
 (p)配列番号9に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質。
[請求項13]
 上記トランスポータータンパク質が、以下の(q)~(t)からなる群より選択されるいずれかのタンパク質であることを特徴とする、請求項11または12に記載の形質転換体:
 (q)配列番号5に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
 (r)配列番号5に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、トランスポーター活性を有するタンパク質;
 (s)配列番号5に記載されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、トランスポーター活性を有するタンパク質;
 (t)配列番号10に記載される塩基配列からなる遺伝子にコードされるタンパク質。
[請求項14]
 上記形質転換体が、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌であることを特徴とする、請求項10~13のいずれか1項に記載の形質転換体。
[請求項15]
 請求項10~14のいずれか1項に記載の形質転換体を、α-アミノ酸またはα,α-2置換アミノ酸を含む培地中で培養する工程を含むことを特徴とする、β‐ヒドロキシアミノ酸の製造方法。
[請求項16]
 上記形質転換体に含まれる請求項8に記載の遺伝子が、ロドコッカス(Rhodococcus)属由来であることを特徴とする、請求項15に記載の製造方法。
[請求項17]
 ロドコッカス ラティスラビエンシス(Rhodococcus wratislaviensis) C31-06株(受託番号:NITE BP-02370)。