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1. (WO2018181699) 弾性モノフィラメントおよび織編物
Document

明 細 書

発明の名称 弾性モノフィラメントおよび織編物

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015  

発明の効果

0016  

図面の簡単な説明

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066  

実施例

0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093  

符号の説明

0094  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1  

明 細 書

発明の名称 : 弾性モノフィラメントおよび織編物

技術分野

[0001]
 本発明は、曲げ方向の繰り返し変形に対する耐疲労性に優れる弾性モノフィラメントに関する。さらに詳しくは、曲げ方向に繰り返しかかる瞬間的な高い負荷に対する耐疲労性に優れ、水産資材、建築資材、安全資材、衣料資材、土木資材、農業資材、車両資材、およびスポーツ資材等の各種産業用途、特に弾性を有する織編構造体用途に好適な弾性モノフィラメントに関するものである。また、前記弾性モノフィラメントを用いてなる織編物に関するものである。

背景技術

[0002]
 熱可塑性エラストマー製のモノフィラメントは、優れたゴム弾性を有することが知られている。このような熱可塑性エラストマー製のモノフィラメントを用いた織編物は優れた弾性を有することから、ストッキング等の衣料資材、サポーター等の医療資材、トランポリン等のスポーツ資材、ベッド等の寝装資材、および事務用椅子/カーシート等の着座資材用途への展開が進められている。
[0003]
 このような用途に適用される織編物を構成するモノフィラメントの一例として、その主成分をポリエステルやポリエーテルとする熱可塑性エラストマー製のモノフィラメントが、知られていた。従来の熱可塑性エラストマー製のモノフィラメントで構成される織編物は、繰り返し変形時の弾性回復率の低下、いわゆる長期使用時のヘタリが課題となっていた。この課題に対して、力学特性および繰り返し変形時の弾性回復性に優れる織編物を得ることを目的として弾性モノフィラメントが提案されている。
[0004]
 例えば、特許文献1には、2成分のポリエステル系エラストマーを主原料とし、繊維断面積に占めるコア部の面積比が50%以上であるシース(芯鞘構造の鞘)とコア(芯鞘構造の芯)からなる形状であり、コア部成分の融点が150℃以上200℃未満であり、且つシース部成分の融点はコア部成分の融点より20℃以上50℃未満低い弾性モノフィラメントを用いて、シース側に配置される低融点成分を部分融解あるいは融着させ、編・織組織の交点部において融着点を形成して拘束力を向上させることにより、布帛の繰り返し変形時における編織構造の変化が少なく長期の耐久性に優れる効果が得られると記載されている。
[0005]
 また、特許文献2には、2成分の芯鞘構造で構成され、鞘部成分に熱可塑性エラストマー、芯部成分に熱可塑性ポリエステル単位が95~100質量%、且つ、固有粘度(IV)が0.7以上の熱可塑性ポリエステル成分を配し、芯部成分であるポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル成分と、鞘部成分の熱可塑性ラストマーを特定の体積比率で組み合わせることにより、芯部が支持材の役目を果たし、織編物として使用する際に、屈曲する弾性モノフィラメントの内外層変形差を小さくすることで耐久性を向上させた弾性モノフィラメントが提案されている。
[0006]
 これらの提案においては、弾性モノフィラメントには高いゴム弾性を維持させることが必要と考えられている。すなわち、特許文献1の2種の熱可塑性エラストマーからなる芯鞘複合構造の弾性モノフィラメントでは、織編構造の目ズレを抑制し、また、特許文献2の熱可塑性エラストマーとポリエチレンテレフタレート等の2種ポリマーからなる芯鞘複合構造の弾性モノフィラメントでは、弾性モノフィラメントが曲がる際にかかる応力の支点を芯の部分にすることでヘタリを抑制するなど、極力高いゴム弾性を維持させることが前提となっている。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特開平11-152625号公報
特許文献2 : 特開2015-57522号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 しかしながら、上記の特許文献1、2に開示されている織編物のヘタリ改善に関する提案では、一定の効果はあるものの、実使用時の耐ヘタリ性をさらに向上させたいという要望があった。そこで本発明の目的は、弾性シート等の実使用時における更なる耐ヘタリ性に優れた弾性モノフィラメントを提供することにある。また、前記弾性モノフィラメントを用いた、実使用時における耐ヘタリ性に優れた織編物を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明者らは、上記特許文献2に提案されている弾性モノフィラメントの繰り返し変形に対する耐疲労性を更に改善する構成を鋭意検討した結果、特に芯の部分の樹脂に起因する曲げ方向の剛性を上げることで、弾性モノフィラメントの耐疲労性を大幅に改善させ得る下記一定の物理特性範囲が存在することを突き止めた。一定の剛性と、弾性を兼ね備えることで、弾性モノフィラメントの曲げ変形が抑制され、織編物に使用した際に、従来と比較して耐ヘタリ性を格段に向上させうることを見出したものである。
[0010]
 本発明の弾性モノフィラメントは、芯の部分の体積比率が2~25%である芯鞘複合構造を有し、前記芯の成分が、熱可塑性ポリエステルで、鞘の成分が、ハードセグメントとソフトセグメントを有する共重合系熱可塑性エラストマーであり、ヤング率が750~5000N/mm 、30%伸長時の引張強度が0.4~3.0cN/dtex、曲げ硬さが4cN以上である弾性モノフィラメントである。
[0011]
 本発明の弾性モノフィラメントの好ましい態様によれば、前記の芯の部分を構成する樹脂がポリエチレンナフタレート(以降、PENと略記することもある)、または、ポリエチレンナフタレートとポリエチレンテレフタレート(以降、PETと略記することもある)とのポリマーアロイであり、前記のポリエチレンナフタレートが、芯の成分の70質量%以上の範囲である。
[0012]
 また、本発明の弾性モノフィラメントの好ましい態様によれば、前記鞘の成分の共重合系熱可塑性エラストマーのハードセグメントは、芳香族ポリエステル単位を主たる構成単位とし、前記鞘の成分の共重合系熱可塑性エラストマーのソフトセグメントは、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位を主たる構成単位とすることであり、前記の芳香族ポリエステル単位は、ポリブチレンテレフタレート単位であり、前記の脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位は、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール単位である。
[0013]
 本発明の弾性モノフィラメントの好ましい態様によれば、前記のハードセグメントと前記のソフトセグメントの比率は、35:65~75:25(質量比)である。
[0014]
 本発明の好ましい態様によれば、定長下160℃の温度条件下で3分間熱処理した後、0.1cN/dtexの張力下で12時間保持した際の寸法変化率が0~5%である。
[0015]
 さらに、本発明の織編物は、前記弾性モノフィラメントを少なくとも一部に用いてなる織編物である。

発明の効果

[0016]
 本発明によれば、従来の芯鞘複合構造の弾性モノフィラメントとは異なり、芯の成分として高剛性な熱可塑性ポリエステルを特定の構成で組み合わせることにより、弾性モノフィラメントにかかる瞬間的な曲げ変形を抑制し、一定の剛性と、弾性を兼ね備えることで耐疲労性を格段に向上させた弾性モノフィラメントが得られる。これにより、トランポリン、サポーター、ベッド、カーシート、事務用椅子等に代表される織編物の実使用時の耐ヘタリ性を格段に向上させることが可能となる。

図面の簡単な説明

[0017]
[図1] 本発明におけるヘタリ量の測定方法を説明するための模式側面図である。

発明を実施するための形態

[0018]
 本発明の弾性モノフィラメントは、芯の部分の体積比率が2~25%である芯鞘複合構造を有し、前記芯の成分が、熱可塑性ポリエステルで、鞘の成分が、ハードセグメントとソフトセグメントを有する共重合系熱可塑性エラストマーであり、ヤング率が750~5000N/mm 、30%伸長時の引張強度が0.4~3.0cN/dtex、曲げ硬さが4cN以上である。
[0019]
 すなわち、本発明の弾性モノフィラメントは、共重合系熱可塑性エラストマーと、高剛性な熱可塑性ポリエステル(たとえば、ポリエチレンナフタレート等)とを特定の構成で組み合わせることにより、弾性モノフィラメントにかかる瞬間的な曲げ変形を抑制し、一定の剛性と弾性を兼ね備えることで耐疲労性を各段に向上させたものであり、従来の芯鞘複合構造の弾性モノフィラメントでは得る事の出来なかった耐ヘタリに関する顕著な効果が得られることを見いだしたものである。
[0020]
 このような顕著な効果が得られた理由については、下記のように推測している。
[0021]
 本発明の弾性モノフィラメントの使用態様の典型例として、弾性モノフィラメントを緯糸に用い、ポリエチレンテレフタレートモノフィラメントを経糸に用いた弾性織物を、事務用椅子やカーシート等に使用する場合を例に説明する。このような使用態様では、弾性織物に対して着座時の荷重は略垂直方向から付与される。このとき、弾性モノフィラメント1本の変形挙動について着目してみると、弾性織物に垂直方向からの荷重に対し経糸により移動を抑制された弾性モノフィラメントは、大きく曲げ方向に変形する。さらに、弾性モノフィラメントの屈曲部について微視的に着目してみると、屈曲部の内側では弾性モノフィラメントは圧縮され、屈曲部の外側では弾性モノフィラメントは大きく伸長される。
[0022]
 このような場において、従来の芯鞘複合構造の弾性モノフィラメントにおいては、上記屈曲部の圧縮、伸長の基本原理は発現するものの、上記弾性織物に対して、勢いよく体重をかけるような着座をしたり、重量物を投げるように置く等、上記弾性織物が瞬間的に高い負荷を受ける際には、上記屈曲部内側の鞘の部分が瞬間的に強く圧縮され、屈曲部外側の鞘の部分が強く伸長する。このため、本来、芯鞘複合構造の弾性モノフィラメントの有する曲げ方向の弾性変形可能伸び以上の変形が、瞬間的に生じて塑性変形を引き起こし、結果として織編物にヘタリが生じるものと考えられる。
[0023]
 一方、同様の場において、本発明のように、芯の部分に高剛性ポリエステルを用い、鞘の部分に共重合系熱可塑性エラストマーを特定の構成で配した芯鞘複合構造を有する弾性モノフィラメントは、一定量の剛性があるため、瞬間的に高い負荷を受ける際に発生する伸長変形、および、塑性変形が抑制され、鞘の部分に配した共重合系熱可塑性エラストマーの優れたストレッチバック性が損なわれにくい。更に、長時間曲げ変形に曝された際のクリープ伸びも抑制される。このため、本発明の弾性モノフィラメントを用いた織編物は、長期にわたってヘタリ難く、優れた弾性を発現し続けることができるものと考えられる。
[0024]
 本発明の弾性モノフィラメントは、曲げ方向に瞬間的にかかる高い負荷による変形抑制と弾性を両立させる観点から、芯の部分の割合が2~25体積%の範囲であることが必要である。芯の部分の割合が2体積%未満の場合、剛性が不足し、弾性モノフィラメントが、屈曲部に瞬間的な高い負荷を受ける際、鞘の部分の曲げ方向外側の共重合系熱可塑性エラストマーが塑性変形領域まで瞬間的に伸長し、織編物とした際にヘタリを引き起こし易くなる。芯の部分の割合が25体積%を越える場合、弾性モノフィラメントの剛性が高すぎるため、弾性が発現し難い。かかる観点から、好ましくは3~20体積%、さらに好ましくは5~13体積%の範囲である。
[0025]
 また、本発明の弾性モノフィラメントの断面形状としては、丸断面の他に、楕円、四角、多角および多葉断面などの異形断面形状をとることができる。
[0026]
 また、本発明の弾性モノフィラメントは、その直径が1.0mm以下であり、0.7mm以下であることが好ましい。直径が太すぎる場合には、屈曲変形時の屈曲外側の伸長絶対量が増大して塑性変形が生じやすくなり、織編物としたときにヘタリを引き起こしやすくなる。弾性モノフィラメントがその機能を発現するうえで、直径は0.1mm以上であることが好ましい。なお、弾性モノフィラメントの断面形状が異形断面形状である場合における弾性モノフィラメントの直径は、繊維方向に垂直な断面の面積相当円の直径とする。
[0027]
 ここで、弾性モノフィラメントの直径をL1とし、断面における芯の部分の直径(以降、芯の部分の直径と略記する)をL2とし、断面における芯の部分の重心(以降、芯の部分の重心と略記する)から弾性モノフィラメントの外周に引いた任意の線分tに沿った鞘の部分の厚みをLtとしたとき、弾性モノフィラメントの外周全周にわたって任意の線分tに対応するLtが、次の関係を満足することが好ましい。
-15(%)≦(Lt-LT)×100/LT≦15(%)
ここで、LT=(L1-L2)/2である。
[0028]
 上記の関係を満足すると、鞘の部分の厚みが弾性モノフィラメントの全周にわたって一定の厚みを保持することから、極端に鞘の厚みが小さい部分が生じたり大きい部分が生じたりしないため、屈曲変形時に過度に伸長して鞘の部分が裂けたり弾性回復性が不均一になる等の問題を生じ難い。
[0029]
 本発明の弾性モノフィラメントは、曲げ方向に瞬間的にかかる高い負荷による変形の抑制と弾性とを両立させる観点から、ヤング率が750~5000N/mm の範囲であることが必要である。ヤング率が750N/mm 未満の場合、剛性が不足し、変形の抑制が不十分となる。そのため弾性モノフィラメントが、屈曲部に瞬間的な高い負荷を受けた場合に、鞘の部分の曲げ方向外側の共重合系熱可塑性エラストマーが塑性変形領域まで瞬間的に伸長し、織編物としたときにヘタリを引き起こし易くなる。一方、5000N/mm を超える場合、剛性が高すぎるため、鞘の部分の持つ弾性が発現し難い。かかる観点から、800~4000N/mm の範囲であることが好ましく、900~3000N/mm の範囲であることがより好ましい。
[0030]
 本発明の弾性モノフィラメントは、30%伸長時の引張強度が0.4~3.0cN/dtexの範囲であることが必要である。上記引張強度が0.4cN/dtex未満の場合、の剛性が不足し、弾性モノフィラメントが、屈曲部に瞬間的な高い負荷を受ける際、鞘の部分の曲げ方向外側の共重合系熱可塑性エラストマーが塑性変形領域まで瞬間的に伸長し、織編物とした際にヘタリを引き起こし易くなる。3.0cN/dtexを越える場合、弾性モノフィラメントの剛性が高すぎるため、弾性が発現し難い。かかる観点から、0.5~2.0cN/dtexの範囲であることが好ましく、1.0~1.5cN/dtexの範囲であることがより好ましい。
[0031]
 本発明の弾性モノフィラメントは、曲げ硬さが4cN以上であることが必要である。上記曲げ硬さが4cN未満である場合、剛性が不足し、曲げ方向に瞬間的に高い負荷を受ける際、鞘の部分の曲げ方向外側の共重合系熱可塑性エラストマーが塑性変形領域まで瞬間的に伸長し、織編物とした際にヘタリを引き起こし易くなる。かかる観点から、6cN以上であることが好ましい。
[0032]
 本発明の弾性モノフィラメントの芯の成分を構成する熱可塑性ポリエステルは、曲げ方向に瞬間的にかかる強い負荷による変形の抑制と弾性とを両立させる観点から、ポリエチレンナフタレートであることが好ましい。
[0033]
 また、芯の成分を構成する熱可塑性ポリエステルは、ポリエチレンナフタレートとポリエチレンテレフタレートとのポリマーアロイにすることができる。かかる場合、ポリエチレンナフタレートが芯の成分の70質量%以上であることが好ましい。前記ポリエチレンナフタレートが芯の成分の70質量%以上である場合、剛性が向上し、弾性モノフィラメントが、曲げ方向に瞬間的に高い負荷を受ける際、鞘の部分の曲げ方向外側の共重合系熱可塑性エラストマーが塑性変形領域まで瞬間的に伸長することを抑制できるため、織編物とした際にヘタリがより生じ難くなる。また、前記ポリエチレンナフタレート成分が70質量%以上である場合、溶融加工性が良好となるため、繊維軸方向の繊度斑、芯鞘体積比率の変動が抑制される。かかる観点から、前記ポリエチレンナフタレートが芯の成分の80質量%以上であることが好ましい。
[0034]
 また、芯の成分に使用される熱可塑性ポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲、具体的には5質量%以下であれば、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、クレーなどの艶消し剤、顔料、染料、滑剤、酸化防止剤、耐熱剤、耐蒸熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤および難燃剤などを含むことができる。中でも、酸化チタンに関しては、得られる弾性モノフィラメントのテカリが抑制され高級感が生じること、および、詳細な機構は不明であるものの、弾性モノフィラメント耐久性向上の観点から、0.01~1質量%の範囲で含有されることが好ましい。
[0035]
 本発明の弾性モノフィラメントの鞘の成分を構成する共重合系熱可塑性エラストマーは、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーの様なハードセグメントとソフトセグメントを有する共重合系熱可塑性エラストマーであることが必要である。その理由は、オレフィン系エラストマーに代表されるブレンド型熱可塑性エラストマーでは、耐熱性が不足したり、海島の界面剥離や、リサイクル性等に懸念を有するためである。本発明で用いられる共重合系熱可塑性エラストマーに関しては、耐熱性および機械特性等の観点から、その融点が、150℃以上であることが好ましく、好ましくは180℃以上であることがより好ましい。
[0036]
 本発明の弾性モノフィラメントに用いられる共重合系熱可塑性エラストマーとしてのポリエステル系エラストマーとしては、ハードセグメントは、主として芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から形成される構造を有する芳香族ポリエステル単位を主たる構成単位とすることが好ましい。ここで、主たる構成単位とは、モル分率で55%以上含まれる構成単位であることをいい、70%以上であればより好ましく、90%以上であればさらに好ましい。
[0037]
 前記芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、および3-スルホイソフタル酸などが挙げられる。
[0038]
 また、前記芳香族ジカルボン酸を主として用いるが、必要によっては、この芳香族ジカルボン酸の一部を、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、およびダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸に置換してもよい。さらにジカルボン酸のエステル形成性誘導体、たとえば低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステル、および酸ハロゲン化物などももちろん同等に用い得る。
[0039]
 次に、前記ジオールの具体例としては、分子量400以下のジオール、例えば、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環族ジオール、およびキシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2’-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、および4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニルなどの芳香族ジオールが好ましく用いられ、このようなジオールは、エステル形成性誘導体、例えばアセチル体、アルカリ金属塩などの形でも用い得る。
[0040]
 これらのジカルボン酸、その誘導体、ジオール成分およびその誘導体は、2種以上併用することもできる。
[0041]
 このようなハードセグメントの好ましい例は、テレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位である。また、テレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位と、イソフタル酸および/またはジメチルイソフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンイソフタレート単位からなるものも好ましく用いられる。
[0042]
 本発明の共重合系熱可塑性エラストマーとしての前記ポリエステル系エラストマーのソフトセグメントは、脂肪族ポリエーテル単位及び/又は脂肪族ポリエステル単位を主たる構成単位とするものである。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、およびエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールなどが挙げられる。
[0043]
 また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルのなかで、得られるポリエステル系エラストマーの弾性特性からは、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、およびポリエチレンアジペートなどの使用が好ましく、これらの中でも特にポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールが構成単位であることが好ましい。また、これらのソフトセグメントの数平均分子量は、共重合された状態において300~6000程度であることが好ましい。
[0044]
 本発明の弾性モノフィラメントに用いられる前記ハードセグメントと前記のソフトセグメントの比率、即ち共重合比率が35:65~75:25(質量比)の範囲であることが好ましい。ハードセグメントとソフトセグメントの比率を前記の範囲とすることにより、複合紡糸時に熱分解し難い熱特性を得られることに加えて、鞘の部分が適度な弾性を有するため、ストレッチバック性に優れた弾性モノフィラメントを得ることができる。
[0045]
 また、本発明の弾性モノフィラメントにおいては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、熱接着性の付与等の目的で第3成分を、共重合系熱可塑性エラストマーからなる鞘の部分の外側、または、熱可塑性ポリエステルからなる芯の部分の更に内側に配することができる。
[0046]
 本発明の弾性モノフィラメントにおいて、鞘の成分を構成する共重合系熱可塑性エラストマーは、ショアーD硬度が30~65の範囲であることが好ましい。ショアーD硬度を前記範囲とすることにより、塑性変形し易いハードセグメントの量をコントロールしつつ、屈曲変形時の過大な伸長を抑制することが可能となる。
[0047]
 また、鞘の部分に使用される共重合系熱可塑性エラストマーは、本発明の効果を損なわない範囲、具体的には5質量%以下であれば、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、クレーなどの艶消し剤、顔料、染料、滑剤、酸化防止剤、耐熱剤、耐蒸熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤および難燃剤などを含むことができる。
[0048]
 本発明の弾性モノフィラメントは、定長下で160℃の温度条件下で3分間熱処理した後、0.1cN/dtex張力下で12時間保持した際の寸法変化率が0~5%であることが好ましい。ここで160℃の温度で3分の熱処理とは、弾性モノフィラメントを織編物として、熱セット等が施されることを想定したものであり、定長で160℃の温度で3分間熱処理した後、0.1cN/dtex張力下で12時間保持した際の寸法変化率が前記範囲を満足する場合には、織編物の製品として熱セットされた後も過度に伸長することなく、且つ、優れたクリープ特性を有することができる。定長下で160℃の温度条件で3分間熱処理した後の、0.1cN/dtex張力下で12時間保持した際の寸法変化率のより好ましい範囲としては、0~3%を挙げることができる。
[0049]
 本発明の弾性モノフィラメントは、その沸水収縮率が3~10%であることが好ましい。沸水収縮率を前記範囲とすることにより、熱付与時の寸法安定性に優れ、織編物とした際にも皺のより難い品位に優れた製品を得ることが可能となる。
[0050]
 本発明の弾性モノフィラメントは、単独で使用することは勿論、本発明の弾性モノフィラメントを複数本用いること、または、本発明の弾性フィラメントと他素材のフィラメントと合糸して用いることができる。
[0051]
 次に、本発明の弾性モノフィラメントの製造方法を詳細に説明するが、弾性モノフィラメントの製造方法はこれに限られるものではない。
[0052]
 本発明の弾性モノフィラメントは、従来知られた共押出設備を用いた芯鞘複合紡糸法により製造することができるため、生産性が高く低コストで生産することが可能である。
[0053]
 すなわち、芯鞘複合構造を有する弾性モノフィラメントの芯の部分を構成する熱可塑性ポリエステルポリマーと鞘の部分を構成する共重合系熱可塑性エラストマーとを、別々のエクストルーダーで溶融した後、それぞれギヤポンプで計量して複合パック中に流入させる。複合パック内に流入された芯と鞘を構成する2種のポリマーは、パック内で金属不織布フィルターや金属メッシュで濾過された後、複合口金に導入され、芯が鞘に囲まれた形態で紡出される。
[0054]
 このとき、紡糸に使用される共重合系熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性ポリエステルの紡糸機内における加水分解を抑制する目的で、紡糸に用いるポリマーを、事前に真空乾燥機等を用いて水分率200ppm未満とすることが好ましい。水分率が前記の範囲を満足する場合、複合異常が生じ難いことに加えて、耐久性に優れた弾性モノフィラメントを得やすくなる。
[0055]
 また、弾性モノフィラメントに、原着化、耐光性付与および抗菌性付与等の機能付与を行う場合、所望の顔料、耐光剤および抗菌剤等を多量に含有したマスターチップを作製しておき、熱可塑性ポリエステル樹脂および/または共重合系熱可塑性エラストマーに、これらを必要量ブレンドして紡糸をすることができる。
[0056]
 特に本発明の弾性モノフィラメントには、実使用時の紫外線等に起因する劣化を低減する目的で、共重合系熱可塑性エラストマーに耐光剤を添加することが好ましい。本発明の弾性モノフィラメントに耐光剤を付与するための好ましい耐光剤添加マスターチップとして、東レ・デュポン製“ハイトレル”(登録商標)21UVを例示することができる。
[0057]
 複合口金から紡出された溶融モノフィラメントは、複合口金直下に配置された加熱筒および/または断熱筒内を通過させることが、口金孔内で生じた分子構造の歪を除去する観点から好ましい。加熱筒および/または断熱筒の長さは、得られる弾性モノフィラメントの長手方向の繊度斑を低減する観点から、10~150mmの範囲とすることが好ましい。
[0058]
 必要に応じて、加熱筒および/または断熱筒を通過した溶融モノフィラメントは、溶媒を水やポリエチレングリコール等とする冷却浴内で冷却した後、所望の表面速度で回転する引取ロールで引き取られる。冷却浴の温度に関しては、得られる弾性モノフィラメントの真円度や繊度斑を確認しながら変更することができるが、本発明の弾性モノフィラメントを得るための冷却温度としては20~80℃の範囲を例示することができる。また、引取速度については、冷却浴中にて溶融モノフィラメントの冷却固化が完了する速度であればよく、未延伸糸の繊維構造を本発明の弾性モノフィラメントを得るために好適な範囲に設定するためには、5~50m/分とすることが好ましい。
[0059]
 引取ロールで引き取られた未延伸のモノフィラメントは一旦巻き取られた後、または、一旦巻き取ることなく延伸工程に供される。延伸工程における延伸段数は、本発明の弾性モノフィラメントを得るためには2段以上の多段延伸法を採用することが好ましい。また、延伸時の熱媒についても、温水、PEG浴、蒸気および乾熱延伸機を使用することができる。
[0060]
 また、延伸温度については、本発明の弾性モノフィラメントを得るためには、2段目の延伸温度を、鞘の部分に配される共重合系熱可塑性エラストマーの融点-50℃~融点-10℃に設定することが好ましい。2段目の延伸温度を共重合系熱可塑性エラストマーの分子運動性が高い前記範囲に設定することにより、延伸工程における共重合系熱可塑性エラストマーの過度な配向を抑制し、曲げ方向に変形した際も優れた弾性を有する弾性モノフィラメントを得ることが可能となる。
[0061]
 延伸後の弾性モノフィラメントは、次いで弛緩熱処理が施される。弛緩倍率は、糸揺れ抑制、および繰り返し曲げ変形に供された際の弾性回復性の確保の観点から、0.99~0.85の範囲であることが好ましい。また、弛緩熱処理温度は鞘の部分に配される共重合系熱可塑性エラストマーの融点-50℃~融点-10℃に設定することが好ましく、より好ましい範囲として共重合系熱可塑性エラストマーの融点-40℃~融点-10℃を例示することができる。弛緩熱処理温度を前記の範囲に設定することにより、熱処理工程において弾性モノフィラメント間の熱融着を抑制しつつ、延伸工程において、鞘の部分に生じた過度の配向を緩和することにより、曲げ方向に変形した際も優れた弾性を有する弾性モノフィラメントを得ることが可能となる。
[0062]
 本発明の芯鞘複合構造を有する弾性モノフィラメントにおいて、前述の本発明の引張強度の範囲を満足させるためには、延伸倍率に弛緩倍率を乗じて得られる総延伸倍率を7.0倍未満に設定することが好ましく、より好ましい範囲として6.0倍未満を例示できる。
[0063]
 弛緩処理後の弾性モノフィラメントは巻取機によって巻き取られるが、このとき、巻き取り張力は0.10cN/dtex以下の範囲とすることが好ましい。巻き取り張力を前記の範囲とすることにより、巻取り時に弾性モノフィラメントが受ける負荷が低減され、結果として耐久性に優れた弾性モノフィラメントを得ることが可能となる。巻き取り張力の下限は限定されるものではないが、実使用に適用可能な巻き取りパッケージを得るための下限は、実使用に適用可能な巻き取りパッケージを得るためには、0.02cN/dtex以上であることが好ましい。
[0064]
 このようにして、本発明の弾性モノフィラメントを得ることができる。
[0065]
 本発明の弾性モノフィラメントは、曲げ方向に繰り返しかかる瞬間的な高い負荷に対する耐疲労性に優れることから、水産資材、建築資材、安全資材、衣料資材、土木資材、農業資材、車両資材、およびスポーツ資材等の各種産業用途は勿論のこと、特に実使用時に曲げ方向に変形を受け易いカーシートや事務用椅子等の弾性織編構造体用途に好適に利用することができる。
[0066]
 さらに、本発明の織編物は、上記の弾性モノフィラメントを少なくとも一部に用いてなる織編物であり、従来公知の方法によって製造することができる。織物は、平織、綾織、朱子織や、これらの組織を組み合わせた二重織等の組織を用途に応じて適宜選定することができる。また、編物は、よこ編み、たて編み等のいずれであってもよい。
実施例
[0067]
 以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明する。なお、明細書本文および実施例に用いた特性の定義、測定方法は次のとおりである。測定n数については、特に記載していない場合は1で行った。
[0068]
 [直径]
 アンリツ製レーザー外径測定器を使用して、弾性モノフィラメントの外径を長さ方向に
10点測定し、得られた外径の平均値を直径とした。
[0069]
 [繊度]
 予め室温20℃、湿度50%RH環境下にて12時間以上放置した弾性モノフィラメント4本を長さ50cmにカットし、メトラー・トレド製電子天秤を使用してミリグラム単位まで質量Wを測定し、以下の数式にて算出した値を繊度とした。
繊度(dtex)=(W/2)×10 。
[0070]
 [30%伸長時の強力および引張強度]
 オリエンテック社製テンシロンUTM-4-100型引張試験機を用い、JIS L1013:2010 8.5.1に準じて、定速緊張形つかみ間隔25cm、引張速度30cm/分にて弾性モノフィラメントの30%伸長時の強力を3点測定し、その試行回数3回の30%伸長時の平均強力を求めた。30%伸長時の引張強度に関しては、前記30%伸長時の平均強力を前記繊度で除して求めた。
[0071]
 [芯の部分の直径と芯の部分の比率]
 弾性モノフィラメントを、繊維軸と垂直方向に切断して得られた切断面をキーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-100Fで観察し、デジタルマイクロスコープの長さ測定ツールを用いて芯の部分の直径を測定し、面積測定ツールを用いて得られた弾性モノフィラメントの断面積および芯の部分の断面積から、芯の部分の比率(体積%)を求めた。
[0072]
 [融点]
 パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC-7型を用い、試料10mgを昇温速度10℃/分にて測定した得られた融解吸熱曲線の極値を与える温度を融点とした。
[0073]
 [曲げ硬さ]
 水平方向に10mm間隔で2本設置された直径2mmのステンレス棒の下に、長さ約4cmにカットした弾性モノフィラメントをセットし、2本のステンレス棒の中央部の位置で弾性モノフィラメントに、直径1mmのJ字型ステンレス製フックを掛け、(株)メネベア製TCM-200型万能引張・圧縮試験機を用いて、ステンレス製フックを速度50mm/分で引き上げ、この時生じる最大応力を曲げ硬さとした。
[0074]
 [沸水収縮率(沸収)]
 予め室温20℃、湿度50%RH環境下にて12時間以上放置した弾性モノフィラメント2本を長さ50cmにカットし、沸騰水中に30分間沈めて取り出し、室温20℃、湿度50%RH環境下にて12時間放置した後、弾性モノフィラメントの長さLをミリメートル単位まで測定し、以下の算式にて沸水収縮率を算出した。
沸水収縮率(%)=((L-500)/500)×100 。
[0075]
 [熱処理後寸法変化率]
 長さ30cmの鉄製プレートに、原糸の弛みや、原糸間の隙間が無いように10回巻き付けた原糸サンプル(弾性モノフィラメント)を160℃の温度の乾熱オーブンで3分間熱処理した後、乾熱オーブンから取り出し、自然冷却した。次に、熱処理後の原糸サンプルを、オリエンテック社製テンシロンUTM-4-100型引張試験機に糸長25cmで取り付けた後、0.1cN/dtexの荷重を付与した際の伸度(E )%と、0.1cN/dtexの荷重を付与した状態で12時間放置した際の伸度(E 12)%を求め、E 12-E を熱処理後寸法変化率とした。測定n数=5とし、これらの平均値を採用した。
[0076]
 [弾性評価]
 市販のバドミントンラケットに、弾性モノフィラメントを経緯共に0.1cN/dtex荷重で張設した。弾性モノフィラメントを張設後、被験者に打球面と垂直方向から掌で5回の繰り返し荷重-除重運動をさせたのち、下記の基準で点数付けを実施した。被験者数は10人とし、10人の点数の平均値を結果として用いた。3点~5点を合格とした。
・5点:優れたゴム弾性を有する。
・4点:3点と5点の中間。
・3点:ゴム弾性を有する。
・2点:3点と1点の中間。
・1点:硬い。
[0077]
 [ヘタリ量]
 JIS P 8115:2001に準じた耐折疲労試験機を用い、荷重2.5kg/mm 、折り曲げ角度90°、且つ175回/分の速度で、弾性モノフィラメントの先端から50mmの位置を繰り返し折り曲げ、カウント数200回に達した時点で一旦機械を停止させ、前記荷重を付与した状態で24時間保持した。処理後のサンプル(弾性モノフィラメント)を耐折疲労試験機から取り外し、直ちに図1記載の如く6g/mm の荷重を付与した状態で鉛直方向に吊るした。吊るしたサンプル(弾性モノフィラメント1)について、マーキング間を結んだ線aから変形最大点に向かって引いた垂線の距離(mm)を求め、測定5回の平均値を弾性モノフィラメントにかかる瞬間的な曲げ変形によって生じるヘタリ量とした。
[0078]
 [織編物のヘタリ量]
 引張試験機(インストロン社製)を用い、次の条件で、織編物に繰り返し変形を与えた後のヘタリ量Sを算出した。
・サンプルサイズ:直径300mmの円形
・つかみ間隔:200mm
・つかみ幅:50mm
・荷重:350N/5cm
・引張速度:200mm/min
・繰り返し変形の回数:3000回。
[0079]
 [ヘタリ量の算出法]
 試験片の引張方向に1Nの荷重を負荷した状態で、つかみ位置を示す間隔200mmの標線2本を記載した後、上記条件で繰り返し変形を実施した。その後、再度試験片の引張方向に1Nの荷重を負荷した状態で、標線2本の間隔(L1)を測定し、次の式でヘタリ量(S)を算出した。
S=L1-200
 L1:繰り返し変形後の標線2本の間隔(mm)。
[0080]
 [共重合系熱可塑性エラストマー(A-1)の製造]
 テレフタル酸51.9質量部、1,4-ブタンジオール39.7質量部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール47.6質量部を、チタンテトラブトキシド0.04部とモノ-n-ブチル-モノヒドロキシスズオキシド0.02質量部を共にヘリカルリボン型攪拌翼を備えた反応容器に仕込み、190℃の温度から徐々に加熱して3時間で225℃の温度まで加熱し、反応水を系外に流出させながらエステル化反応を行った。反応混合物にテトラ-n-ブチルチタネート0.2質量部を追添加し、“イルガノックス(登録商標)”1098(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.05質量部を添加した後、245℃の温度に昇温し、次いで、50分かけて系内の圧力を27Paの減圧とし、その条件下で1時間50分重合を行った。得られたポリマーを水中にストランド状で吐出し、カッティングによりハード/ソフト比48/52(質量比)である共重合系熱可塑性エラストマー(A-1)のペレットを得た。得られたペレットの融点は200℃、ショアー硬度Dは47であった。
[0081]
 [共重合系熱可塑性エラストマー(A-2)の製造]
 テレフタル酸32.9部、イソフタル酸9.6質量部、1,4-ブタンジオール40.3質量部および数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール46.7質量部を、チタンテトラブトキシド0.04質量部とモノ-n-ブチル-モノヒドロキシスズオキシド0.02質量部を共にヘリカルリボン型攪拌翼を備えた反応容器に仕込み、190℃の温度から徐々に加熱して3時間で225℃の温度まで加熱し、反応水を系外に流出させながらエステル化反応を行った。反応混合物にテトラ-n-ブチルチタネート0.15質量部を追添加し、“イルガノックス(登録商標)”1098(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.05質量部を添加した後、245℃の温度に昇温し、次いで、50分かけて系内の圧力を27Paの減圧とし、その条件下で1時間50分重合を行った。得られたポリマーを水中にストランド状で吐出し、カッティングによりハード/ソフト比49/51(質量比)である共重合系熱可塑性エラストマー(A-2)のペレットとした。得られたペレットの融点は160℃であり、ショアー硬度Dは40であった。
[0082]
 (実施例1~4、比較例1、2)
 芯の部分に用いるポリマーとして、水分率が100ppm未満となるまで乾燥した融点が272℃のポリエチレンナフタレートポリマー(帝人株式会社製TN8065S)を用い、鞘の部分に用いるポリマーとして、水分率が100ppm未満となるまで乾燥した共重合系熱可塑性エラストマー(A-1)を用いて、それぞれ設定温度が300℃のφ30mmエクストルーダーと、設定温度が245℃のφ40mmエクストルーダーで溶融した後、それぞれ、245℃と300℃の温度に保温されたギヤポンプを用いて、表1に記載の外径(直径)および芯の部分の比率となるように計量し、300℃の温度に保温された複合紡糸パックに導入した。複合紡糸パック内では、それぞれの溶融ポリマーを200メッシュの金網で濾過した後、孔形状が円形で、孔径が1.5mmで、孔数が10の芯鞘複合口金より吐出した。吐出された溶融フィラメントは、口金直下に取り付けられた長さ30mmの断熱筒を通過させた後、エアーギャップ30mmを有して設置された40℃の冷却水浴を通過させ、表面速度20m/分で回転する引取ローラーで未延伸モノフィラメントとして引き取った。得られた未延伸モノフィラメントは、一旦巻き取ることなく95℃の温度に調温された温水槽を用いて、表1に記載の延伸倍率で1段目の延伸をおこなった後、表1に記載の温度に調温した乾熱延伸槽を用いて、表1記載の倍率で2段目の延伸を施した。延伸後のモノフィラメントは、引き続き表1に記載の温度に調温した乾熱槽を用いて、表1に記載の倍率で弛緩熱処理を行い、表1に記載の巻き取り張力で巻き取り、弾性モノフィラメントを得た。得られた弾性モノフィラメントの特性は、表1または表2に示すとおりであった。比較例1は、延伸温度および弛緩温度が低く、屈曲外側の過伸長を抑制することが出来ず、ヘタリ量が大きかった。比較例2は、芯部比率、延伸倍率ともに高いため、剛性が高すぎることで鞘の部分の弾性が損なわれ、ヘタリ量が大きかった。
[0083]
 (実施例5~7、比較例3)
 芯の部分に用いるポリマーとして、前記ポリエチレンナフタレートと、水分率が100ppm未満となるまで乾燥した融点が257℃、酸化チタンを0.1質量%含有するポリエチレンテレフタレートポリマー(東レ株式会社製T701T)とのポリマーアロイを用いたこと以外は、実施例1と同様におこなった。得られた弾性モノフィラメントの特性は、表1に示すとおりであった。なお、上記樹脂のブレンドには公知のブレンドミキサーを用いた。比較例3は、ヤング率が低いため、瞬間的な曲げ変形耐性が損なわれており、ヘタリ量が大きかった。
[0084]
 (実施例8)
 芯の部分に用いるポリマーとして、融点が257℃で、固有粘度が0.71、酸化チタンを0.1質量%含有するポリエチレンテレフタレートポリマー(東レ株式会社製T-301T)を用いたこと以外は、実施例2と同様におこなった。得られた弾性モノフィラメントの特性は、表1に示すとおりであった。
[0085]
 (比較例4)
 芯の部分に用いるポリマーとして、水分率が150ppm未満となるまで乾燥した、融点225℃のナイロン6ポリマー(東レ株式会社製M1021T)を、設定温度250℃のφ30mmエクストルーダーで溶融した後、250℃の温度に保温されたギヤポンプを用いて250℃に保温された複合紡糸パックに導入したこと以外は、実施例1と同様におこなった。得られた弾性モノフィラメントの特性は、ヤング率が低く、瞬間的な曲げ変形耐性が損なわれており、ヘタリ量が大きかった。
[0086]
 (比較例5)
 孔径が1.5mmで、孔数が20の芯鞘複合口金を用いたこと、2段目の延伸を1段目の延伸と同様の温水槽を用いたこと以外は、実施例8と同様におこなった。得られた弾性モノフィラメントの特性は、芯部比率、延伸倍率ともに高いため、ヤング率が高く、剛性が高すぎることで鞘の部分の弾性が損なわれ、ヘタリ量が大きかった。
[0087]
 (実施例9~16、比較例6~9)
 実施例1~8、比較例1~4にて得られた弾性モノフィラメントを緯糸として用いた。また、経糸として、ポリエチレンテレフタレートからなる、総繊度1670dtex-288フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸(東レ製高強力ポリエステル)を200T/mの甘撚を掛けた糸を用いた。経密度を25本/25.4mmとし、緯糸密度を26本/25.4mmとし、平織の織物を作製した。得られた織物を180℃の温度で2分間、経方向にのみ20%オーバーフィードしながら熱処理を行い、経密度25本/25.4mm、緯密度37本/25.4mmの織物とした。
[0088]
 得られた織編物の特性は、表3および表4に示すとおりであり、実施例1~8で得られた弾性モノフィラメントを使用した実施例9~16は、織編物のヘタリ量が小さかった。
[0089]
[表1]


[0090]
[表2]


[0091]
[表3]


[0092]
[表4]


[0093]
 表1と表2に示すとおり、本発明の弾性モノフィラメントは、瞬間的な曲げ変形耐性、弾性、耐疲労性に優れていた。また、表3と表4に示すとおり、本発明の織編物は、耐ヘタリ性に優れていた。

符号の説明

[0094]
1.耐折疲労試験後の弾性モノフィラメント
2.荷重
a.マーキング間を結んだ線
A.マーキング間を結んだ線aから変形最大点に向かって引いた垂線の距離(ヘタリ量)

請求の範囲

[請求項1]
 芯の部分の体積比率が2~25%である芯鞘複合構造を有し、
前記芯の成分が、熱可塑性ポリエステルで、鞘の成分が、ハードセグメントとソフトセグメントを有する共重合系熱可塑性エラストマーであり、
ヤング率が750~5000N/mm 、30%伸長時の引張強度が0.4~3.0cN/dtex、曲げ硬さが4cN以上である弾性モノフィラメント。
[請求項2]
 前記芯の成分に使用される熱可塑性ポリエステルが、ポリエチレンナフタレートである請求項1記載の弾性モノフィラメント。
[請求項3]
 前記芯の成分に使用される熱可塑性ポリエステルが、ポリエチレンナフタレートとポリエチレンテレフタレートのポリマーアロイであり、前記ポリエチレンナフタレートが、前記芯の成分の70質量%以上である請求項1記載の弾性モノフィラメント。
[請求項4]
 前記鞘の成分の共重合系熱可塑性エラストマーのハードセグメントが、芳香族ポリエステル単位を主たる構成単位とし、前記鞘の成分の共重合系熱可塑性エラストマーのソフトセグメントが、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位を主たる構成単位とする請求項1~3のいずれかに記載の弾性モノフィラメント。
[請求項5]
 前記芳香族ポリエステル単位が、ポリブチレンテレフタレート単位であり、前記脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位が、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール単位である請求項4記載の弾性モノフィラメント。
[請求項6]
 前記鞘の成分の共重合系熱可塑性エラストマーのハードセグメントとソフトセグメントの比率が、35:65~75:25(質量比)である請求項1~5のいずれかに記載の弾性モノフィラメント。
[請求項7]
 定長下160℃の温度条件下で3分間熱処理した後、0.1cN/dtexの張力下で12時間保持した際の寸法変化率が0~5%である請求項1~6のいずれかに記載の弾性モノフィラメント。
[請求項8]
 請求項1~7のいずれかに記載の弾性モノフィラメントを少なくとも一部に用いてなる織編物。

図面

[ 図 1]