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1. (WO2018181441) 電気化学デバイス用正極およびそれを備える電気化学デバイス
Document

明 細 書

発明の名称 電気化学デバイス用正極およびそれを備える電気化学デバイス

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

0004   0005   0006   0007  

図面の簡単な説明

0008  

発明を実施するための形態

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062  

産業上の利用可能性

0063  

符号の説明

0064  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2   3   4A   4B   4C   4D  

明 細 書

発明の名称 : 電気化学デバイス用正極およびそれを備える電気化学デバイス

技術分野

[0001]
 本発明は、導電性高分子を含む活性層を備える電気化学デバイス用正極およびそれを備える電気化学デバイスに関する。

背景技術

[0002]
 近年、リチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタの中間的な性能を有する電気化学デバイスが注目を集めており、例えば導電性高分子を正極材料として用いることが検討されている(例えば、特許文献1)。正極材料として導電性高分子を含む電気化学デバイスは、アニオンの吸着(ドープ)と脱離(脱ドープ)により充放電を行うため、反応抵抗が小さく、一般的なリチウムイオン二次電池に比べると高い出力を有している。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開2014-130706号公報

発明の概要

[0004]
 ポリアニリンまたはその誘導体を含むポリアニリン類を導電性高分子として用いた場合、電気化学デバイスに一定電圧が連続的に印加されるフロート充電において、フロート特性が低下し易い。
[0005]
 本発明の一局面は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された導電性高分子を含む活性層と、を備え、
 前記導電性高分子は、ポリアニリン類を含み、
 前記活性層は、赤外線吸収スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)において、前記ポリアニリン類の4級化した窒素原子に由来する第1ピークと、前記ポリアニリン類のベンゼノイド構造に由来する第2ピークとを示し、
 前記第1ピークの吸光度の、前記第2ピークの吸光度に対する比は、0.3以上である、電気化学デバイス用正極に関する。
[0006]
 本発明の他の局面は、正極と、負極と、を具備し、
 前記正極は、上記の正極である、電気化学デバイスに関する。
[0007]
 本発明によれば、電気化学デバイスのフロート特性の低下が抑制される。

図面の簡単な説明

[0008]
[図1] 図1は、本発明の一実施形態に係る電気化学デバイス用正極の断面模式図である。
[図2] 図2は、本発明の一実施形態に係る電気化学デバイスの断面模式図である。
[図3] 図3は、図2の電気化学デバイスの電極群の構成を説明するための概略図である。
[図4A] 図4Aは、実施例1の正極の活性層のIRスペクトルである。
[図4B] 図4Bは、実施例2の正極の活性層のIRスペクトルである。
[図4C] 図4Cは、実施例3の正極の活性層のIRスペクトルである。
[図4D] 図4Dは、比較例1の正極の活性層のIRスペクトルである。

発明を実施するための形態

[0009]
 電気化学デバイスにおいて、導電性高分子を正極材料として用いることが検討されている。充電時には、電解液中のアニオンが導電性高分子にドープされ、電解液中のリチウムイオンが負極材料に吸蔵される。放電時には、導電性高分子から脱ドープされたアニオンが電解液中へ移動し、負極材料から放出されたリチウムイオンが電解液中へ移動する。なお、本発明において、導電性高分子は、脱ドープ状態において導電性が殆どない、または導電性がない場合も含む。
[0010]
 導電性高分子として、ポリアニリンおよびその誘導体などのポリアニリン類を用いる場合、フロート充電により電気化学デバイスに一定電圧が連続的に印加されると、正極の容量が低下し易くなる。
[0011]
 本発明の一実施形態に係る電気化学デバイス用正極では、導電性高分子を含む活性層において、導電性高分子がポリアニリン類を含む。また、活性層が、IRスペクトルにおいて、ポリアニリン類の4級化した窒素原子に由来する第1ピークと、ポリアニリン類のベンゼノイド構造に由来する第2ピークとを示す。そして、第1ピークの吸光度(以下、I とも言う)の、第2ピークの吸光度(以下、I とも言う)に対する比(=I /I )は、0.3以上である。このような活性層を設けることで、充放電に寄与する導電性高分子の状態を維持できる。よって、フロート充電時の内部抵抗の増加が抑制され、また、フロート充電時の容量低下が抑制されることにより、電気化学デバイスのフロート特性の低下を抑制できる。
[0012]
 なお、ベンゼノイド構造とは、ポリアニリン類に含まれる2つの芳香環とこれらの芳香環を連結する-NH-基とからなる部分の構造であり、-(Ar1-NH-Ar2)-で表すことができる。ここで、Ar1およびAr2は、それぞれ、ポリアニリン類に含まれる芳香環であり、置換基を有していてもよい。
[0013]
 上記IRスペクトルは、正極を十分に洗浄し、乾燥することにより得られるサンプルの表面の活性層について測定すればよい。
≪電気化学デバイス≫
 本実施形態に係る電気化学デバイスは、正極と、負極と、を具備する。正極は、正極集電体と、正極集電体上に形成された活性層とを備える。正極集電体上にはカーボン層を形成してもよい。カーボン層を設ける場合には、正極集電体と活性層との間の抵抗を低減して、容量の低下を抑制できるため、フロート特性の低下を抑制する上でより有利である。活性層は、正極集電体と活性層との間にカーボン層を介在させた状態で、正極集電体上に配されていてもよく、カーボン層が存在しない領域がある場合には、正極集電体上に直接配されていてもよい。
[0014]
 図1に、カーボン層を含む場合の正極の概略縦断面図を示す。図示例の正極11は、正極集電体111と、正極集電体111上に形成されたカーボン層112と、カーボン層112を介して正極集電体111上に形成された活性層113と、を備える。活性層113は、ポリアニリン類を含む導電性高分子を含む。活性層113は、IRスペクトルにおいて、ポリアニリン類の4級化した窒素原子に由来する第1ピークと、ポリアニリン類のベンゼノイド構造に由来する第2ピークとを示す。そして、第1ピークの吸光度I の、第2ピークの吸光度I に対する比I /I は、0.3以上である。
[0015]
 以下、本発明に係る電気化学デバイスの構成について、図面を参照しながら、より詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る電気化学デバイス100の断面模式図であり、図3は、同電気化学デバイス100が具備する電極群10の一部を展開した概略図である。
[0016]
 電気化学デバイス100は、電極群10と、電極群10を収容する容器101と、容器101の開口を塞ぐ封口体102と、封口体102を覆う座板103と、封口体102から導出され、座板103を貫通するリード線104A、104Bと、各リード線と電極群10の各電極とを接続するリードタブ105A、105Bと、を備える。容器101の開口端近傍は、内側に絞り加工されており、開口端は封口体102に対してかしめるようにカール加工されている。電極群10は、正極11と負極とを備えている。通常、正極11と負極との間にはセパレータが配置される。
(正極)
 本発明には、電気化学デバイスの正極(電気化学デバイス用正極)も包含される。以下に正極についてより詳細に説明する。
[0017]
 (正極集電体)
 正極11が備える正極集電体111には、例えば、シート状の金属材料が用いられる。シート状の金属材料としては、例えば、金属箔、金属多孔体、パンチングメタル、エキスパンデッドメタル、エッチングメタルなどが用いられる。正極集電体111の材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、チタンなどを用いることができ、好ましくは、アルミニウム、アルミニウム合金が用いられる。正極集電体111の厚みは、例えば、10~100μmである。
(カーボン層)
 カーボン層112は、例えば、正極集電体111の表面に導電性炭素材料を蒸着することにより形成される。あるいは、カーボン層112は、導電性炭素材料を含むカーボンペーストを、正極集電体111の表面に塗布して塗膜を形成し、その後、塗膜を乾燥することで形成される。カーボンペーストは、例えば、導電性炭素材料と、高分子材料と、水または有機溶媒とを含む。カーボン層112の厚さは、例えば1~20μmであればよい。
[0018]
 導電性炭素材料には、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラックなどを用いることができる。なかでも、カーボンブラックは、薄くて導電性に優れたカーボン層112が形成され易い点で好ましい。導電性炭素材料の平均粒径D1は特に限定されないが、例えば、3~500nmであり、10~100nmであることが好ましい。平均粒径とは、レーザー回折式の粒度分布測定装置により求められる体積粒度分布におけるメディアン径(D50)である(以下、同じ)。なお、カーボンブラックの平均粒径D1は、走査型電子顕微鏡で観察することにより、算出してもよい。
[0019]
 高分子材料の材質は特に限定されないが、電気化学的に安定であり、耐酸性に優れる点で、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、水ガラス(珪酸ナトリウムのポリマー)等が好ましく用いられる。
(活性層)
 活性層113は、導電性高分子を含む。活性層113を作製する際には、まず導電性高分子層を形成する。導電性高分子層は、例えば、カーボン層112を備える正極集電体111を、導電性高分子の原料を含む反応液に浸漬し、正極集電体111の存在下で原料を電解重合することにより形成できる。導電性高分子層を形成する際には、正極集電体111をアノードとして電解重合を行うことにより、導電性高分子層がカーボン層112の表面を覆うように形成される。なお、カーボン層112を形成しない場合には、正極集電体111を反応液に浸漬して電解重合を行うことで導電性高分子層が正極集電体111の表面を覆うように形成される。また、カーボン層以外の介在層を形成した後に、導電性高分子層を形成してもよい。
[0020]
 導電性高分子層は、電解重合以外の方法で形成されてもよい。例えば、原料を化学重合することにより、導電性高分子層を形成してもよい。あるいは、導電性高分子もしくはその分散体(dispersion)を用いて導電性高分子層を形成してもよい。
[0021]
 本実施形態において、活性層113は、ポリアニリン類を含む導電性高分子を含むため、電解重合または化学重合で用いられる原料は、重合により導電性高分子を生成可能な重合性化合物であればよい。原料としては、モノマーおよび/またはオリゴマーなどが挙げられる。原料モノマーとしては、例えば、アニリンまたはその誘導体などのアニリン類が挙げられる。アニリンの誘導体とは、アニリンを基本骨格とするモノマーを意味する。原料オリゴマーとしては、例えば、アニリン類のオリゴマーが挙げられる。これらの原料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0022]
 導電性高分子としては、ポリアニリン類が使用される。ポリアニリン類としては、ポリアニリンまたはその誘導体などを用いることができる。なお、ポリアニリンの誘導体とは、ポリアニリンを基本骨格とする高分子を意味する。ポリアニリン類は、π共役系であることが好ましい。ポリアニリン類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いることができる。ポリアニリン類の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000~100000である。
[0023]
 活性層を構成する導電性高分子は、ポリアニリン類(第1導電性高分子とも言う)以外の導電性高分子(第2導電性高分子とも言う)を含んでもよいが、その比率は小さいことが好ましい。活性層を構成する導電性高分子全体に占める第1導電性高分子の比率は、例えば、90質量%以上であり、95質量%以上であることが好ましく、導電性高分子をポリアニリン類のみで構成することがさらに好ましい。第2導電性高分子としては、ポリアニリン類以外のπ共役系高分子、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリチオフェンビニレン、ポリピリジン、または、これらの誘導体を用いることができる。なお、これらのπ共役系高分子の誘導体とは、π共役系高分子を基本骨格とする高分子を意味する。
[0024]
 電解重合または化学重合は、アニオン(ドーパント)を含む反応液を用いて行うことが望ましい。導電性高分子の分散液や溶液もまた、ドーパントを含むことが望ましい。ポリアニリン類および他のπ共役系高分子は、ドーパントをドープすることで、優れた導電性を発現する。例えば、化学重合では、ドーパントと酸化剤と原料モノマーとを含む反応液に正極集電体111を浸漬し、その後、反応液から引き揚げて乾燥させればよい。また、電解重合では、ドーパントと原料モノマーとを含む反応液に正極集電体111と対向電極とを浸漬し、正極集電体111をアノードとし、対向電極をカソードとして、両者の間に電流を流せばよい。
[0025]
 反応液の溶媒には、水を用いてもよいが、モノマーの溶解度を考慮して非水溶媒を用いてもよい。非水溶媒としては、アルコール類などを用いることができる。導電性高分子の分散媒あるいは溶媒としても、水や上記非水溶媒が挙げられる。
[0026]
 ドーパントとしては、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、硼酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン(CF SO )、過塩素酸イオン(ClO )、テトラフルオロ硼酸イオン(BF )、ヘキサフルオロ燐酸イオン(PF )、フルオロ硫酸イオン(FSO )、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン(N(FSO )、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン(N(CF SO )、シュウ酸イオン、ギ酸イオンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0027]
 ドーパントは、高分子イオンであってもよい。高分子イオンとしては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸などのイオンが挙げられる。これらは単独重合体であってもよく、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0028]
 活性層113は、導電性高分子層が形成された正極集電体を、還元処理することにより形成できる。還元処理は、電気化学的還元により行ってもよく、化学的還元により行ってもよい。還元処理は、例えば、導電性高分子層に還元剤を接触させることにより行なうことができ、必要に応じて、電圧を印加しながら行なってもよい。
[0029]
 本実施形態において、活性層113は、IRスペクトルにおいて、ポリアニリン類の4級化した窒素原子に由来する第1ピークと、ポリアニリン類のベンゼノイド構造に由来する第2ピークとを示す。ここで、第1ピークの吸光度は、第2ピークの吸光度よりも大きい。第1ピークの吸光度I の、第2ピークの吸光度I に対する比I /I は、0.3以上である。
[0030]
 活性層のIRスペクトルにおいて、4級化した窒素原子に由来する第1ピークおよびベンゼノイド構造に由来する第2ピークの位置は、特に制限されない。活性層のIRスペクトルにおいて、第1ピークは、少なくとも1100cm -1以上1200cm -1以下の範囲に現れることが好ましい。また、第2ピークは、活性層のIRスペクトルにおいて、少なくとも1450cm -1以上1550cm -1以下の範囲に現れることが好ましい。
[0031]
 また、活性層のIRスペクトルにおいて、第1ピークに、第1ピークおよび第2ピーク以外のピーク(第3ピーク)が重なっていてもよい。例えば、第1ピークに4級化した窒素原子に結合または相互作用するアニオンの第3ピークが重なっていてもよい。4級化した窒素原子に由来する第1ピークは、1100cm -1以上1200cm -1以下の範囲において最も高いピークを示す。
[0032]
 第1ピークの吸光度I の、第2ピークの吸光度I に対する比(=I /I )は、0.3以上であり、0.8以上であることが好ましい。I /I 比がこのような範囲であることで、充放電に寄与するポリアニリン類の状態を維持できる。よって、高いフロート特性を確保し易くなる。I /I 比の上限は特に制限されないが、I /I 比は3.0以下であることが好ましい。
[0033]
 I /I 比は、導電性高分子層のドーパントを脱ドープする際の還元条件、例えば、還元剤の種類、還元剤の量、還元温度、還元時間、および/または還元する際に印加する電圧などの条件を変更することにより調節することができる。
[0034]
 還元剤としては、例えば、アスコルビン酸類(アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、またはこれらの塩など)、ブチルヒドロキシアニソール、ヒドラジン、アルデヒド類、ギ酸、シュウ酸、および没食子酸などが挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、グリオキサールなどの他、脂肪族アルデヒド(アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドなど)、脂環族アルデヒド、芳香族アルデヒドのいずれを用いてもよい。これらの還元剤のうち、カルボニル基含有化合物、例えば、アスコルビン酸またはその塩、ギ酸、シュウ酸、没食子酸などを用いることが好ましい。中でも、カルボキシ基含有化合物(例えば、ギ酸、シュウ酸、没食子酸など)を還元剤として用いることが好ましい。
[0035]
 なお、活性層113の厚みは、例えば、電解の電流密度や重合時間を適宜変更したり、正極集電体上に付着させる導電性高分子の量を調節したりすることで容易に制御することができる。活性層113の厚みは、例えば、片面あたり10~300μmである。
(負極)
 負極12は、例えば負極集電体と負極材料層とを有する。
[0036]
 負極集電体には、例えば、シート状の金属材料が用いられる。シート状の金属材料としては、例えば、金属箔、金属多孔体、パンチングメタル、エキスパンデッドメタル、エッチングメタルなどが用いられる。負極集電体の材質としては、例えば、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼などを用いることができる。
[0037]
 負極材料層は、負極活物質として、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出する材料を備えることが好ましい。このような材料としては、炭素材料、金属化合物、合金、セラミックス材料などが挙げられる。炭素材料としては、黒鉛、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)が好ましく、特に黒鉛やハードカーボンが好ましい。金属化合物としては、ケイ素酸化物、錫酸化物などが挙げられる。合金としては、ケイ素合金、錫合金などが挙げられる。セラミックス材料としては、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、炭素材料は、負極12の電位を低くすることができる点で好ましい。
[0038]
 負極材料層には、負極活物質の他に、導電剤、結着剤などを含ませることが望ましい。導電剤としては、カーボンブラック、炭素繊維などが挙げられる。結着剤としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ゴム材料、セルロース誘導体などが挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体などが挙げられる。アクリル樹脂としては、ポリアクリル酸、アクリル酸-メタクリル酸共重合体などが挙げられる。ゴム材料としては、スチレンブタジエンゴムが挙げられ、セルロース誘導体としてはカルボキシメチルセルロースまたはその塩などが挙げられる。
[0039]
 負極材料層は、例えば、負極活物質と、導電剤および結着剤などとを、分散媒とともに混合して負極合剤ペーストを調製し、負極合剤ペーストを負極集電体に塗布した後、乾燥することにより形成される。
[0040]
 負極12には、予めリチウムイオンをプレドープすることが望ましい。これにより、負極12の電位が低下するため、正極11と負極12の電位差(すなわち電圧)が大きくなり、電気化学デバイス100のエネルギー密度が向上する。
[0041]
 リチウムイオンの負極12へのプレドープは、例えば、リチウムイオン供給源となる金属リチウム膜を負極材料層の表面に形成し、金属リチウム膜を有する負極12を、リチウムイオン伝導性を有する電解液(例えば、非水電解液)に含浸させることにより進行する。このとき、金属リチウム膜からリチウムイオンが非水電解液中に溶出し、溶出したリチウムイオンが負極活物質に吸蔵される。例えば負極活物質として黒鉛やハードカーボンを用いる場合には、リチウムイオンが黒鉛の層間やハードカーボンの細孔に挿入される。プレドープさせるリチウムイオンの量は、金属リチウム膜の質量により制御することができる。
[0042]
 負極12にリチウムイオンをプレドープする工程は、電極群10を組み立てる前に行なってもよく、非水電解液とともに電極群10を電気化学デバイス100の容器101に収容してからプレドープを進行させてもよい。
(セパレータ)
 セパレータ13としては、セルロース繊維製の不織布、ガラス繊維製の不織布、ポリオレフィン製の微多孔膜、織布、不織布などが好ましく用いられる。セパレータ13の厚みは、例えば10~300μmであり、10~40μmが好ましい。
(非水電解液)
 電極群10は、非水電解液を含むことが好ましい。
[0043]
 非水電解液は、リチウムイオン伝導性を有し、リチウム塩と、リチウム塩を溶解させる非水溶媒とを含む。このとき、リチウム塩のアニオンは、正極11へのドープと脱ドープとを、可逆的に繰り返すことが可能である。一方、リチウム塩に由来するリチウムイオンは、可逆的に負極12に吸蔵および放出される。
[0044]
 リチウム塩としては、例えば、LiClO 、LiBF 、LiPF (六フッ化リン酸リチウム)、LiAlCl 、LiSbF 、LiSCN、LiCF SO 、LiFSO 、LiCF CO 、LiAsF 、LiB 10Cl 10、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl 、LiN(FSO 、LiN(CF SO などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、アニオンとして好適なハロゲン原子を含むオキソ酸アニオンを有するリチウム塩およびイミドアニオンを有するリチウム塩よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが望ましい。電解液のイオン伝導性が高まるとともに、集電体やリードなどの金属部品の腐食を抑制することができる観点から、六フッ化リン酸リチウムを含む電解液を用いることが好ましい。
[0045]
 充電状態(充電率(SOC)90~100%)における非水電解液中のリチウム塩の濃度は、例えば、0.2~5mol/Lである。
[0046]
 非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン類、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-プロパンサルトンなどを用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0047]
 非水電解液に、必要に応じて非水溶媒に添加剤を含ませてもよい。例えば、負極12の表面にリチウムイオン伝導性の高い被膜を形成する添加剤として、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネートなどの不飽和カーボネートを添加してもよい。
(製造方法)
 以下、本発明の電気化学デバイス100の製造方法の一例について、図2および3を参照しながら説明する。ただし、本発明の電気化学デバイス100の製造方法はこれに限定されるものではない。
[0048]
 電気化学デバイス100は、例えば、正極集電体111上にカーボン層112を形成する工程と、正極集電体111上にカーボン層112を介して、導電性高分子を含む活性層113を形成することにより正極11を得る工程と、得られた正極11、セパレータ13および負極12をこの順に積層して、電極群10を得る工程と、得られた電極群10を非水電解液とともに容器101に収容する工程と、を備える方法により製造される。
[0049]
 カーボン層112は、上述のように、例えば、蒸着やカーボンペーストを利用して形成される。
[0050]
 活性層113は、上述のように、例えば、カーボン層112を備える正極集電体111の存在下で、導電性高分子層を形成し、導電性高分子層を還元処理することにより形成される。
[0051]
 上記のようにして得られた正極11に、リード部材(リード線104Aを備えるリードタブ105A)を接続し、負極12に他のリード部材(リード線104Bを備えるリードタブ105B)を接続する。続いて、これらリード部材が接続された正極11と負極12との間にセパレータ13を介在させて巻回し、図3に示すような、一端面よりリード部材が露出する電極群10を得る。電極群10の最外周を、巻止めテープ14で固定する。
[0052]
 次いで、図2に示すように、電極群10を、非水電解液(図示せず)とともに、開口を有する有底円筒形の容器101に収容する。封口体102からリード線104A、104Bを導出する。容器101の開口に封口体102を配置し、容器101を封口する。具体的には、容器101の開口端近傍を内側に絞り加工し、開口端を、封口体102に対してかしめるようにカール加工する。封口体102は、例えば、ゴム成分を含む弾性材料で形成されている。
[0053]
 上記の実施形態では、円筒形状の巻回型の電気化学デバイスについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、角形形状の巻回型や積層型の電気化学デバイスにも適用することができる。
[0054]
 上記の実施形態では、円筒形状の巻回型の電気化学デバイスについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、角形形状の巻回型や積層型の電気化学デバイスにも適用することができる。
[実施例]
 以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)正極の作製
 厚さ30μmのアルミニウム箔の両面に、カーボンブラックを含むカーボン層(厚さ2μm)が形成された積層体を準備した。一方、アニリンおよび硫酸を含むアニリン水溶液を準備した。
[0055]
 上記積層体と対向電極とを、アニリン水溶液に浸漬し、10mA/cm の電流密度で20分間、電解重合を行ない、硫酸イオン(SO 2-)がドープされた導電性高分子(ポリアニリン)の膜を、積層体の両面のカーボン層上に付着させた。
[0056]
 硫酸イオンがドープされた導電性高分子を還元し、ドープされていた硫酸イオンを脱ドープした。還元は、還元剤としてのシュウ酸を0.1mol/L濃度で含む水溶液に、導電性高分子の膜が形成された積層体を浸漬させた状態で、電圧を印加することにより行なった。こうして、導電性高分子を含む活性層を形成した。次いで、活性層を十分に洗浄し、その後、乾燥を行なった。活性層の厚さは、片面あたり35μmであった。
(2)負極の作製
 厚さ20μmの銅箔を負極集電体として準備した。一方、ハードカーボン97質量部と、カルボキシセルロース1質量部と、スチレンブタジエンゴム2質量部とを混合した混合粉末と、水とを、質量比で40:60の割合で混錬した負極合剤ペーストを調製した。負極合剤ペーストを負極集電体の両面に塗布し、乾燥して、厚さ35μmの負極材料層を両面に有する負極を得た。次に、負極材料層に、プレドープ完了後の電解液中での負極電位が金属リチウムに対して0.2V以下となるように計算された分量の金属リチウム層を形成した。
(3)電極群の作製
 正極と負極にそれぞれリードタブを接続した後、図3に示すように、セルロース製不織布のセパレータ(厚さ35μm)と、正極と、負極とを、それぞれ、交互に重ね合わせた積層体を巻回して、電極群を形成した。
(4)非水電解液の調製
 プロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとの体積比1:1の混合物に、ビニレンカーボネートを0.2質量%添加して、溶媒を調製した。得られた溶媒にリチウム塩としてLiPF を所定濃度で溶解させて、アニオンとしてヘキサフルオロリン酸イオン(PF )を有する非水電解液を調製した。
(5)電気化学デバイスの作製
 開口を有する有底の容器に、電極群と非水電解液とを収容し、図2に示すような電気化学デバイスを組み立てた。その後、正極と負極との端子間に3.8Vの充電電圧を印加しながら25℃で24時間エージングし、リチウムイオンの負極へのプレドープを進行させた。得られた電気化学デバイスについて、以下の方法に従って評価した。評価結果をまとめて表1に示す。
(評価法)
(1)IRスペクトル測定
 FT-IR測定装置を用いて、作製した正極の活性層についてIRスペクトルを測定した。IRスペクトルの測定は、電気化学デバイスを定格電圧の3.8Vで満充電した後に正極を取り出して十分に洗浄、乾燥を行なった後に行う。その結果、4級化した窒素原子に由来する第1ピークが、1150cm -1付近に観察され、ベンゼノイド構造に由来する第2ピークが、1480~1500cm -1付近に観察された。IRスペクトルにおいて、第1ピークおよび第2ピークのそれぞれの吸光度を求め、第1ピークの吸光度の第2ピークの吸光度に対する比(=I /I )を算出した。
[0057]
 実施例1における活性層のIRスペクトルでは、吸光度の比I /I は1.25であった。
(2)フロート特性(容量変化率ΔC)
 電気化学デバイスを3.8Vの電圧で充電した後、2.5Vまで放電した際の放電容量(初期容量)を求めた。
[0058]
 電気化学デバイスを、60℃、3.6Vの条件で1000時間連続充電(フロート充電)したときの放電容量を上記と同様にして測定し、初期容量を100%としたときの比率ΔC(%)を算出した。ΔCが100%に近いほど、フロート充電時の容量低下が小さく、電気化学デバイスの信頼性が高いことを示す。
(実施例2)
 シュウ酸をギ酸に変更することで、吸光度の比I /I を変化させたこと以外は、実施例1と同様にして電気化学デバイスを作製し、評価を行なった。活性層のIRスペクトルでは、吸光度の比I /I は0.86であった。
(実施例3)
 シュウ酸をアスコルビン酸に変更することで、吸光度の比I /I を変化させたこと以外は、実施例1と同様にして電気化学デバイスを作製し、評価を行なった。活性層のIRスペクトルでは、吸光度の比I /I は1.25であった。
(比較例1)
 シュウ酸水溶液に代えて、ヒドラジン水溶液中に、導電性高分子の膜が形成された積層体を浸漬させることで、吸光度の比I /I を変化させた。これ以外は、実施例1と同様にして電気化学デバイスを作製し、評価を行なった。活性層のIRスペクトルでは、吸光度の比I /I は0.18であった。
[0059]
 実施例1~3および比較例1で得られた正極の活性層についてのIRスペクトルを、それぞれ、図4A~図4Dに示す。実施例1~3は、A1~A3であり、比較例1は、B1である。これらの図では、点線の円で囲んだ部分が、4級化した窒素原子に由来する第1ピークであり、ベンゼノイド構造に由来する第2ピークは、1480~1500cm -1付近に表されるピークである。これらの図に示されるように、比較例の活性層のIRスペクトルでは、第1ピークよりも第2ピークの方が格段に大きくなっている。これに対し、実施例の活性層のIRスペクトルでは、第1ピークの吸光度は、第2ピークの吸光度に近づいており、比較例におけるIRスペクトルとは大きく特徴が異なっている。
[0060]
 実施例1~3および比較例1のフロート特性(容量変化率)の評価結果を表1に示す。実施例1~3はA1~A3であり、比較例1は、B1である。
[0061]
[表1]


[0062]
 表1に示されるように、比I /I が0.3以上である実施例では、比I /I が0.3未満である比較例に比べて、フロート充電時の容量変化率ΔCの低下が抑制されている。つまり、実施例では、比較例に比べて、フロート特性の低下が抑制されていることが分かる。

産業上の利用可能性

[0063]
 本発明に係る電気化学デバイスは、フロート特性に優れるため、各種電気化学デバイス、特にバックアップ用電源として好適である。

符号の説明

[0064]
 10:電極群
  11:正極
   111:正極集電体
   112:カーボン層
   113:活性層
  12:負極
  13:セパレータ
  14:巻止めテープ
 100:電気化学デバイス
  101:容器
  102:封口体
  103:座板
  104A、104B:リード線
  105A、105B:リードタブ

請求の範囲

[請求項1]
 正極集電体と、前記正極集電体上に形成された導電性高分子を含む活性層と、を備え、
 前記導電性高分子は、ポリアニリン類を含み、
 前記活性層は、赤外線吸収スペクトルにおいて、前記ポリアニリン類の4級化した窒素原子に由来する第1ピークと、前記ポリアニリン類のベンゼノイド構造に由来する第2ピークとを示し、
 前記第1ピークの吸光度の、前記第2ピークの吸光度に対する比は、0.3以上である、
電気化学デバイス用正極。
[請求項2]
 前記第1ピークは、1100cm -1以上1200cm -1以下の範囲に現れ、
 前記第2ピークは、1450cm -1以上1550cm -1以下の範囲に現れる、
請求項1に記載の電気化学デバイス用正極。
[請求項3]
 前記4級化した窒素原子は、アニオンにより4級化されている、
請求項1または2に記載の電気化学デバイス用正極。
[請求項4]
 正極と、負極と、を具備し、
 前記正極は、請求項1~3のいずれか1項に記載の正極である、
電気化学デバイス。
[請求項5]
 さらに電解液を含み、
 前記電解液は、六フッ化リン酸リチウムを含む、
請求項4に記載の電気化学デバイス。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4A]

[ 図 4B]

[ 図 4C]

[ 図 4D]