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1. (WO2018181033) 軸受装置の冷却構造
Document

明 細 書

発明の名称 軸受装置の冷却構造 0001  

技術分野

0002  

背景技術

0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023  

図面の簡単な説明

0024  

発明を実施するための形態

0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105  

符号の説明

0106  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19  

明 細 書

発明の名称 : 軸受装置の冷却構造

関連出願

[0001]
 この出願は、2017年3月29日出願の特願2017-065183、2017年10月11日出願の特願2017-197619および2017年10月11日出願の特願2017-197620の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本願の一部をなすものとして引用する。

技術分野

[0002]
 この発明は、例えば、工作機械の主軸および主軸に組み込まれる軸受装置の冷却構造に関する。

背景技術

[0003]
 工作機械の主軸装置では、加工精度を確保するために、装置の温度上昇を抑える必要がある。しかしながら、近年の工作機械では、加工能率を向上させるために、高速化の傾向にある。そのため、主軸を支持する軸受からの発熱も高速化と共に大きくなってきている。また、装置内部に駆動用のモータを組込んだいわゆるモータビルトインタイプが多くなってきており、装置の発熱要因ともなってきている。
[0004]
 発熱による軸受の温度上昇は、予圧の増加をもたらす結果となり、主軸の高速化、高精度化を考えると極力抑えたい。主軸装置の温度上昇を抑える方法として、冷却用の圧縮エアを軸受に送り、軸と軸受の冷却を行う方法がある(例えば、特許文献1)。特許文献1では、冷風が、2つの軸受間の空間に回転方向に角度を付けて噴射され、旋回流となっている。これにより、軸と軸受の冷却を行っている。
[0005]
 また、特許文献2に、上述の圧縮エアによる冷却方法をグリース潤滑の軸受装置に適用した冷却構造が記載されている。その場合、軸受内のグリースが圧縮エアによって吹き飛ばされることを避けるために、圧縮エアが軸受空間へ流入することを阻止する障害壁を設けることが提案されている。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特開2015-183738号公報
特許文献2 : 特開2014-062619号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 上述の圧縮エアによる冷却方法は、冷却効果が高いので、主軸装置の温度上昇を効果的に抑えることができる。また、特許文献2の冷却構造のように、圧縮エアが軸受空間へ流入することを阻止する障害壁を設けることにより、圧縮エアによる冷却方法をグリース潤滑の軸受装置にも適用することが可能となる。しかしながら、特許文献2に提案されている障害壁は、圧縮エアが軸受空間へ流入することを阻止する機能は有するが、排気を抑制する機能は有していない。このため、内輪間座の外周面に向けて吹き付けられた圧縮エアが、内輪間座と外輪間座との間に長く留まることなく、比較的短時間で排出されてしまう。その結果、十分な冷却効果が得にくい。
[0008]
 この発明の目的は、グリース潤滑の軸受装置において、軸受内のグリースが圧縮エアによって吹き飛ばされることを防止でき、かつ圧縮エアにより軸受装置を効率よく冷却することができる冷却構造を提供することである。

課題を解決するための手段

[0009]
 この発明の軸受装置の冷却構造は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の外輪間および内輪間に外輪間座および内輪間座がそれぞれ介在され、前記外輪および前記外輪間座がハウジングに設置され、前記内輪および前記内輪間座が主軸に嵌合され、前記転がり軸受が前記外輪と前記内輪との間の軸受空間に封入されたグリースにより潤滑されている軸受装置の冷却構造である。
[0010]
 この軸受装置の冷却構造において、前記外輪間座の内周面に、前記内輪間座の外周面に向けて冷却用の圧縮エアを供給する供給口が設けられ、前記外輪間座の軸方向端面に、前記供給口から供給された圧縮エアの排気口が設けられている。
 前記内輪間座の軸方向両端部に、外径側に張り出して前記供給口から供給された圧縮エアが前記軸受空間へ流入することを阻止する障害壁が設けられている。この障害壁の一部が前記外輪間座と微小な隙間を介して対向し、前記供給口から前記排気口への圧縮エアの円滑な流れを阻害する第1ラビリンスシールを構成している。
[0011]
 この構成によると、供給口から供給される冷却用の圧縮エアが内輪間座の外周面に吹き付けられることで、内輪間座が冷却され、それに接する転がり軸受の内輪も冷却される。その後、圧縮エアは内輪間座の外周面に沿って軸方向の両側へ流れる。軸方向の両側には転がり軸受が配置されているが、内輪間座の軸方向両端部に障害壁が設けられているので、圧縮エアが軸受空間へ流入することが阻止される。障害壁の一部が第1ラビリンスシールとして構成されているので、圧縮エアの排気が抑制され、内輪間座の外周面に吹き付けられた後の圧縮エアが、内輪間座と外輪間座との間の空間に留まる時間が長くなる。その結果、内輪間座を効率よく冷却することができる。これにより、軸受装置および主軸が効率よく冷却される。
[0012]
 また、上述のように、障害壁によって圧縮エアが軸受空間へ流入することが阻止されるので、軸受空間に封入されたグリースが圧縮エアで吹き飛ばされることが防がれる。これにより、良好な潤滑状態を維持することができる。
[0013]
 この発明において、前記障害壁は、複数の部分が前記外輪間座と微小な隙間を介して対向することで、前記第1ラビリンスシールを構成していてもよい。この場合、圧縮エアの排気がさらに抑制され、圧縮エアが内輪間座と外輪間座との間の空間に留まる時間がより一層長くなる。
[0014]
 この発明において、前記転がり軸受は、前記外輪の軸方向端に前記軸受空間を密封するシール材を有し、前記障害壁の端面は前記シール材と軸方向に対向し、前記シール材と前記障害壁とで、前記圧縮エアが前記軸受空間に流入するのを阻害する第2ラビリンスシールを構成していてもよい。これにより、圧縮エアが軸受空間により一層流入し難くなる。
[0015]
 この発明において、前記隙間は前記排気口よりも軸方向の内側に位置し、前記外輪間座の内周面における前記隙間と前記排気口との間の軸方向部分が、前記排気口に向かって徐々に内径寸法が大きくなるテーパ形状部であっていてもよい。外輪間座の内周面における前記軸方向部分がテーパ形状部であると、隙間を通過後の圧縮エアが排気口に円滑に流れる。したがって、排気が迅速に行われる。それにより、圧縮エアが転がり軸受の軸受空間に流入しにくくなり、軸受空間に封入されたグリースが長期間にわたって保持される。
[0016]
 この発明において、前記供給口が前記内輪の回転方向の前方へ傾斜させて設けられていると共に、前記排気口が前記外輪間座の回転方向の前方へ傾斜させて設けられていてもよい。
[0017]
 上記特許文献1の圧縮エアによる冷却は、圧縮エアに潤滑剤を混合して転がり軸受を潤滑する、いわゆる、エアオイル潤滑やオイルミスト潤滑に適用できる。この場合、軸受内部を通る圧縮エアの量が多過ぎると、エアオイルの円滑な給排気が阻害される可能性がある。また、回転によって転がり軸受の軸端付近に生じるエアカーテン状の空気流の膜や回転中の転動体に圧縮エアが衝突することで、騒音が大きくなる可能性がある。
 圧縮エアによる冷却は、軸受をグリース潤滑する場合にも適用できる。その場合、軸受内部を通る圧縮エアの量が多いと、圧縮エアが軸受内部のグリースを排出し、潤滑不良を誘発する可能性がある。
[0018]
 上記構成によると、外輪間座に設けられた供給口から、冷却用の圧縮エアが内輪間座の周面に向けて吐出される。供給口は回転側間座の回転方向の前方へ傾斜されているので、供給口から吐出された圧縮エアは、内輪間座の周面に沿って旋回しながら軸方向に流れ、この間に内輪間座を冷却する。圧縮エアが旋回するので、軸方向にまっすぐ流れる場合と比べて、圧縮エアが内輪間座の周面と接している時間が長くなる。その結果、内輪間座を効率良く冷却することができる。
[0019]
 内輪間座の周面を通過した圧縮エアは、外輪間座の軸方向端面に設けられた排気口を通って外部に排出される。排気口も内輪間座の回転方向の前方へ傾斜されているので、旋回流となっている圧縮エアが排気口から円滑に排出される。それにより、転がり軸受の内部を通る圧縮エアの量を減らすことができる。その結果、圧縮エアが転がり軸受の内部を多く流れることによる弊害を排除また軽減することができる。
[0020]
 具体的には、転がり軸受をエアオイル潤滑やオイルミスト潤滑する場合、エアオイル等円滑な給排気が阻害されることを防止できる。さらに、転がり軸受の軸端付近に生じるエアカーテン状の空気流の膜や回転中の転動体に圧縮エアが衝突することによる騒音を抑制できる。また、転がり軸受をグリース潤滑する場合、圧縮エアが軸受内部のグリースを排出するのを防止できる。
[0021]
 この発明において、前記供給口および前記排気口は複数で同数設けられ、前記ノズル孔および前記排気口が円周方向に等間隔で設けられていてもよい。この場合、ノズル孔から吐出される圧縮エアにより、内輪間座を円周方向に均等に冷却することができる。また、内輪間座の周面を通過した圧縮エアが、各排気口から均等に排出される。このため、圧縮エアの排出が円滑に行われる。
[0022]
 前記供給口および前記排気口は複数設けられる場合、任意の前記供給口からこの供給口に対して前記内輪間座の回転方向の前側に位置する前記排気口までの円周方向の距離が、この排気口から前記内輪間座の回転方向の一つ前側に位置する前記供給口までの円周方向の距離よりも長くてもよい。このようなノズル孔と排気口の位置関係であると、圧縮エアが回転側間座の周面に接している時間が長くなり、冷却効果が高い。
[0023]
 請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のどのような組合せも、この発明に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の2つ以上のどのような組合せも、この発明に含まれる。

図面の簡単な説明

[0024]
 この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。この発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
[図1] この発明の第1実施形態に係る冷却構造を備えた軸受装置の断面図である。
[図2] 図1の部分拡大図である。
[図3] 同軸受装置の内輪間座および外輪間座を軸方向と垂直な平面で切断した断面図である。
[図4] 同軸受装置の外輪間座の一部分を展開して表した図である。
[図5] この発明の第2実施形態に係る冷却構造を備えた軸受装置の断面図である。
[図6] 図5の部分拡大図である。
[図7] この発明の第3実施形態に係る冷却構造を備えた軸受装置の断面図である。
[図8] 図7の部分拡大図である。
[図9] 図1~8の軸受装置とは異なる軸受装置の内輪間座および外輪間座を軸方向と垂直な平面で切断した断面図である。
[図10] 図1に示す軸受装置を工作機械の主軸装置に組込んだ状態を示す断面図である。
[図11] この発明の第4実施形態に係る軸受装置の内輪間座および外輪間座を軸方向と垂直な平面で切断した断面図である。
[図12] この発明の第1応用例に係る軸受装置の冷却構造を備えた工作機械主軸装置の断面図である。
[図13] 同軸受装置の主要部の拡大断面図である。
[図14] 同軸受装置の外輪間座の一部分を展開して表した図である。
[図15] 図12のXV-XV断面図である。
[図16] この発明の第2応用例に係る軸受装置の冷却構造の主要部の断面図である。
[図17] 図16のXVII-XVII断面図である。
[図18] この発明の第3応用例に係る軸受装置の冷却構造の主要部の断面図である。
[図19] 図18の部分拡大図である。

発明を実施するための形態

[0025]
[第1の実施形態]
 この発明の第1実施形態に係る軸受装置の冷却構造を、図1ないし図4と共に説明する。
 図1に示すように、この軸受装置Jは、軸方向に並ぶ2個の転がり軸受1,1と、2個の転がり軸受1,1の外輪2,2間に介在された外輪間座4と、内輪3,3間に介在された内輪間座5とを備えている。この実施形態の転がり軸受1は、アンギュラ玉軸受である。2個の転がり軸受1,1は背面組合せで設置されている。外輪2の軌道面と内輪3の軌道面との間に、複数の転動体8が介在されている。転動体8は、保持器9により円周方向に等配に保持されている。転がり軸受1はグリース潤滑であり、外輪2の軸方向両端に、シール材31,32がそれぞれ取り付けられている。シール材31,32は、外輪2と内輪3との間の軸受空間30を密封する
[0026]
 この軸受装置Jは、例えば、工作機械の主軸の支持に用いられる。その場合、各転がり軸受1の外輪2はハウジング6内に固定され、内輪3は主軸7の外周面に嵌合されている。
[0027]
 軸受装置Jの冷却構造について説明する。
 図1に示すように、外輪間座4は断面形状が略T字状である。詳細には、外輪間座4は、T字の縦線部分である内径側突出部4aと、T字の横線部分である円筒部4bとを有している。内径側突出部4aの内周面と内輪間座5の外周面とが、径方向隙間9を介して対向している。外輪間座4の内径側突出部4aの内周面に、供給口10が設けられている。供給口10は、内輪間座5の外周面に向けて冷却用の圧縮エアAを供給する。この例では、図3に示すように、供給口10の数は3個であり、各供給口10は円周方向に等間隔に配置されている。
[0028]
 図1および図3に示すように、外輪間座4の外周面には、圧縮エアAを導入する環状の導入溝11が設けられている。導入溝11は、外輪間座4の外周面における軸方向中間部に設けられ、接続孔11aを介して各供給口10に連通している。軸受装置Jの外部に設けた圧縮エア供給装置45(図10)から、ハウジング6に設けられた圧縮エア導入孔46(図3)を通って、導入溝11に圧縮エアAが供給される。
[0029]
 図1に示すように、内輪間座5は、軸方向中央の円筒体13と、円筒体13の軸方向両側の障害壁形成体14,14とを有している。各障害壁形成体14の軸方向端に、障害壁15が設けられている。障害壁形成体14における障害壁15を除く本体部分14aは、円筒体13と同じ外径の円筒状である。
[0030]
 図2は、図1の部分拡大図である。図2に示すように、障害壁15は、外径側に延びるつば状部15aと、つば状部15aの外径端から軸方向内側に延びる円筒状部15bとを有している。つば状部15aの外径端は、転がり軸受1の外輪2の内周面付近まで延びている。円筒状部15bの軸方向内側端は、外輪間座4の内径側突出部4aと微小な隙間16を介して対向している。円筒状部15bと外輪間座4の内径側突出部4aとの対向部分により、第1ラビリンスシールLSが構成されている。
[0031]
 障害壁形成体14の本体部分14a、障害壁15のつば状部15a、円筒状部15bおよび外輪間座4の内径側突出部4aにより、環状の冷却用空間18が形成されている。また、障害壁15の円筒状部15bの外周面と、外輪間座4の円筒部4bの内周面との間に、排気用空間19が形成されている。これら冷却用空間18と排気用空間19は、第1ラビリンスシールLSを構成する隙間16を介して連通している。
[0032]
 外輪間座4の円筒部4bの軸方向端に、排気口20が設けられている。排気口20は、例えば、図4のような矩形の切り欠き形状である。外輪間座4に隣接して転がり軸受1の外輪2が配置されることで、図2に示す排気用空間19と軸受装置Jの外部とが排気口20を介して連通される。
[0033]
 図1において、軸受空間30と冷却用空間18とは、障害壁15によって完全に隔離されている。障害壁15のつば状部15aの外径端が外輪3の内周面付近まで延びているうえに、障害壁15のつば状部15aが軸方向内側のシール材31と僅かな軸方向隙間21を介して対向している。これにより、軸受空間30と排気用空間19との間に、第2ラビリンスシールが形成されている。
[0034]
 軸受装置Jの運転時に、冷却用の圧縮エアAが、軸受装置Jの外部の圧縮エア供給装置から外輪間座4の導入溝11に送られ、外輪間座4の供給口10から内輪間座5の外周面に向けて供給される。これにより、内輪間座5が冷却され、これに接する転がり軸受1の内輪3も冷却される。その後、圧縮エアAは内輪間座5の外周面に沿って軸方向の両側に流れる。軸方向の両側には転がり軸受1が配置されているが、内輪間座5の軸方向両端部に障害壁15が設けられているので、圧縮エアAが軸受空間30に流入しにくい。
[0035]
 また、障害壁15の一部が第1ラビリンスシールLSを構成しているので、内輪間座5の外周面に吹き付けられた圧縮エアAの排気が抑制される。その結果、圧縮エアAが冷却用空間18に留まる時間が長くなり、内輪間座5を効率よく冷却することができる。それにより、内輪間座5およびこれに接する転がり軸受1の内輪3がより一層効率よく冷却される。
[0036]
 冷却用空間18の圧縮エアAは、時間をかけて少しずつ隙間16を通って排気用空間19へ流れ、排気用空間19から排気口20を介して軸受装置Jの外部へ排出される。
[0037]
 障害壁15が設けられているので、冷却用空間18から軸受空間30に直接に圧縮エアAが流れ込むことはない。また、軸受空間30と排気用空間19との間に第2ラビリンスシールが形成されている。このため、圧縮エアAが軸受空間30に流れ込むことがほとんどなく、軸受空間30に封入されているグリースが圧縮エアAで吹き飛ばされるのを防ぐことができる。その結果、軸受装置Jの良好な潤滑状態を維持することができる。
[0038]
[第2実施形態]
 図5、図6はこの発明の第2実施形態に係る軸受装置の冷却構造を示す。
 第2実施形態の軸受装置Jは、内輪間座5の障害壁15の形状が異なる点を除いて、第1実施形態と同じ構成である。構成が同じ箇所については同一符号を付して示し、その説明は省略する。
[0039]
 第2実施形態の軸受装置Jの障害壁15は、2つの円筒状部15b,15cを有している。一方の円筒状部15bは、つば状部15aの外径端の箇所から軸方向内側に延びている。他方の円筒状部15cは、つば状部15aの外径端よりも内径側の箇所から軸方向内側に延びている。各円筒状部15b,15cの軸方向内側端は、外輪間座4の内径側突出部4aと微小な隙間16,17を介してそれぞれ対向している。これら2つの円筒状部15b,15cと外輪間座4の内径側突出部4aとの対向部分により、第1ラビリンスシールLSが構成されている。
[0040]
 このように、2つの対向部分を有すると、第1ラビリンスシールLSとしての機能が高まり、圧縮エアAが冷却用空間18に留まる時間がさらに長くなる。したがって、内輪間座5をより一層効率よく冷却することができる。それにより、内輪間座5およびそれに接する転がり軸受1の内輪3がより一層効率よく冷却される。
[0041]
[第3実施形態]
 図7、図8はこの発明の第3実施形態に係る軸受装置の冷却構造を示す。
 第3実施形態の軸受装置Jは、第1の実施形態と比べて、外輪間座4の内周面における隙間16と排気口20との間の軸方向部分の形状が異なる。すなわち、この軸方向部分は、全周にわたって、軸方向の外側(排気口20)に向かって内径寸法が徐々に大きくなるテーパ形状部23を構成している。テーパ角度θは、例えば、10°~60°である。その他の構成は第1実施形態と同じ構成である。構成が同じ箇所については同一符号を付して示し、その説明は省略する。
[0042]
 このように外輪間座4の内周面における前記軸方向部分をテーパ形状部23とすると、隙間16を通過した圧縮エアAが排気口20に円滑に流れるようになり、排気が迅速に行われる。それにより、圧縮エアAが転がり軸受1の軸受空間30に流入しにくくなり、軸受空間30に封入されたグリースが長期間にわたって保持される。
[0043]
 前記軸方向部分が円筒形状である軸受装置(図1)とテーパ形状である図7の軸受装置について、流体解析により、圧縮エアの軸受外部への排出量および軸受内部への圧縮エアの流入量を算出した。テーパ形状部23のテーパ角度θは15°に設定した。その結果を表1に示す。
[0044]
[表1]


 表1の結果から、前記軸方向部分が円筒形状である軸受装置と比べて、テーパ形状である軸受装置は、軸受外部への排出量が多く、軸受内部への流入量が少ないことが分かる。
[0045]
[異なる軸受装置]
 軸受装置Jにより支持される軸が、工作機械の主軸のように回転方向が一定している場合、図9のように、各供給口10のエア吐出方向を、内輪3(図1)および主軸7の回転方向D1の前方に傾斜させてもよい。各供給口10は、直線状であって、外輪間座4の軸心に垂直な断面における任意の半径方向の直線L1から、この直線L1と直交する方向にオフセット(オフセット量OS)した位置にある。このように、各供給口10のエア吐出方向を傾斜させると、吐出された圧縮エアAが内輪間座5の外周面に当たる際に、圧縮エアAの押圧力を内輪間座5に与えることができる。これにより、主軸7を駆動する作用を期待することができる。
[0046]
[工作機械の主軸装置]
 図10は、図1に示す軸受装置Jが組込まれた工作機械の主軸装置の一部を示す断面図である。軸受装置Jは、転がり軸受1,1の外輪2,2および外輪間座4がハウジング6の内周面に嵌合し、転がり軸受1,1の内輪3,3および内輪間座5が工作機械の主軸7の外周面に嵌合している。
[0047]
 この例では、外輪2および外輪間座4はハウジング6に対して隙間嵌めとされ、内輪3および内輪間座5は軸7に対して締まり嵌めとされている。一方(図の右側)の転がり軸受1の外輪3はハウジング6の段部6aで軸方向の位置決めがされ、一方(図の右側)の転がり軸受1の内輪3は位置決め間座41により軸方向の位置決めがされている。他方(図の左側)の転がり軸受1の外輪2および内輪3に、外輪押さえ42および内輪押さえ43がそれぞれ押し当てられることで、軸受装置Jがハウジング6に固定されている。ただし、軸受装置Jの固定方法はこれに限定されない。
[0048]
 ハウジング6および外輪押さえ42に、圧縮エア供給装置45からの冷却用の圧縮エアAを軸受装置Jに導入する圧縮エア導入孔46が設けられている。圧縮エア導入孔46は、外輪間座4の外周面に設けられた導入溝11に連通している。また、ハウジング6および外輪押さえ42に排気孔47が設けられている。排気孔47は、接続孔48を介して外輪間座4の排気口20と連通している。
[0049]
 この軸受装置Jの冷却構造は、上述のように軸受装置Jおよび主軸7の冷却効果が高いので、主軸装置を高速な領域で運転させることが可能となる。このため、この軸受装置Jを、工作機械の主軸の支持に好適に用いることができる。
[0050]
[第4実施形態]
 図11はこの発明の第4実施形態に係る軸受装置の冷却構造を示す。第4実施形態では、内輪間座5の外周面に冷却用の圧縮エアを供給する供給口10が、ノズル60のノズル孔60aで構成されている。ノズル孔60aは内輪間座5の回転方向D1の前方に傾斜している。また、排気口20も、内輪間座5の回転方向D1の前方に傾斜している。
[0051]
 このように、ノズル孔60aが内輪間座5の回転方向D1の前方へ傾斜しているので、ノズル孔60aから吐出された圧縮エアAは、内輪間座5の周面に沿って旋回しながら軸方向に流れ、この間に内輪間座5を冷却する。圧縮エアAが旋回するので、軸方向にまっすぐ流れる場合と比べて、圧縮エアAが内輪間座5の周面と接している時間が長くなる。その結果、内輪間座5を効率良く冷却することができる。
[0052]
 内輪間座5の周面を通過した圧縮エアAは、外輪間座4の軸方向端面に設けられた排気口20や、転がり軸受1の内部を通って外部に排出される。排気口20も内輪間座5の回転方向D1の前方に傾斜しているので、旋回流となっている圧縮エアAが排気口20から円滑に排出される。それにより、転がり軸受1の内部を通る圧縮エアAの量を減らして、圧縮エアAが転がり軸受1の内部を多く流れることによる弊害を排除また軽減することができる。
[0053]
 具体的には、転がり軸受1をエアオイル潤滑やオイルミスト潤滑する場合、エアオイルの円滑な給排気が阻害されることを防止できる。そのうえ、転がり軸受1の軸端付近に生じるエアカーテン状の空気流の膜や回転中の転動体8に圧縮エアAが衝突することによる騒音を抑制できる。また、転がり軸受1をグリース潤滑する場合、圧縮エアAが軸受内部のグリースを排出してしまうことを防止できる。
[0054]
 さらに、第4実施形態では、ノズル孔60aおよび排気口20が3つずつ設けられており、これらノズル孔60aおよび排気口20がそれぞれ円周方向に等間隔で配置されている。この構成によれば、ノズル孔60aから吐出される圧縮エアAにより、内輪間座5を円周方向に均等に冷却することができる。また、内輪間座5の周面を通過した圧縮エアAが、各排気口20から均等に排出される。このため、圧縮エアAの排出が円滑に行われる。
[0055]
 さらに、第4実施形態では、3つのノズル孔60aのうちの任意の1つのノズル孔60aからこのノズル孔60aに対して内輪間座5の回転方向D1の前側に位置する排気口20までの円周方向の距離Mが、この排気口20から内輪間座5の回転方向D1の一つ前側に位置するノズル孔60aまでの円周方向の距離Nよりも長くなっている。このようなノズル孔60aと排気口20の位置関係であると、圧縮エアAが内輪間座5の周面に接している時間が長くなり、冷却効果が高い。
[0056]
 以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
[0057]
 上述の第1~第4実施形態では、第1ラビリンスシールLSを備えた軸受装置の冷却構造を説明したが、本発明は、第1ラビリンスシールLSを備えない場合にも応用できる。
[0058]
[第1応用例]
 図12~図15はこの発明の第1応用例に係る軸受装置の冷却構造を示す。第1応用例の軸受装置の冷却構造は、工作機械の主軸装置に適用されている。ただし、工作機械の主軸装置だけに限定されるものではない。
[0059]
 図12に示すように、軸受装置Jは、軸方向に並ぶ2つの転がり軸受101,101を備えている。各転がり軸受101,101の外輪102,102の間に外輪間座104が介在され、内輪103,103の間に内輪間座105が介在されている。外輪102および外輪間座104がハウジング106に設置され、内輪103および内輪間座105が主軸107に嵌合されている。
[0060]
 この例の転がり軸受101はアンギュラ玉軸受であり、外輪102の軌道面と内輪103の軌道面の間に、複数の転動体108が介在されている。各転動体108は、保持器109により円周方向に等間隔に保持されている。2つの転がり軸受101,101は互いに背面組合せで配置されている。外輪間座104と内輪間座105の幅寸法差により、各転がり軸受101,101の初期予圧が設定されている。
[0061]
 第1応用例の転がり軸受101は内輪回転タイプである。つまり、外輪102が「固定側軌道輪」に相当し、内輪103が「回転側軌道輪」に相当する。また、外輪間座104が「固定側間座」に相当し、内輪間座105が「回転側間座」に相当する。さらに、主軸107が「回転部材」に相当し、ハウジング106が「固定部材」に相当する。後述の他の応用例についても同様である。
[0062]
 第1応用例では、外輪102,102および外輪間座104が、ハウジング106に対して隙間嵌めとされ、ハウジング106の段部106aと端面蓋140とにより軸方向の位置決めがされている。また、内輪103,103および内輪間座105は、主軸107に対して締まり嵌めとされ、軸方向両側の位置決め間座141,142により軸方向の位置決めがされている。図12の左側の位置決め間座142は、主軸107に螺着されたナット143により固定されている。外輪102,102、外輪間座104、内輪103,103および内輪間座105の固定方法はこれに限定されない。
[0063]
 冷却構造について説明する。
 図13は軸受装置の冷却構造の主要部を拡大して示す断面図である。外輪間座104は、外輪間座本体111と、外輪間座本体111とは別部材からなるリング状の潤滑用ノズル112,112とを有する。外輪間座本体111は、断面形状が略T字形状に形成されている。外輪間座本体111の軸方向両側に潤滑用ノズル112,112がそれぞれ固定されている。潤滑用ノズル112,112は、外輪間座本体111の軸方向中心に対して対称に配置されている。
[0064]
 外輪間座本体111の内径寸法は、潤滑用ノズル112,112の内径寸法よりも大きい。これにより、外輪間座104の内周面に、外輪間座本体111の内周面と、この内周面に続く潤滑用ノズル112,112の側面とで構成される凹み部113が形成されている。凹み部113は、断面形状が長方形の環状溝である。外輪間座104の凹み部113以外の内周面、すなわち潤滑用ノズル112,112の内周面と、内輪間座105の外周面とは、微小な径方向隙間δaを介して対向している。これにより、凹み部113と内輪間座105の外周面との間に、他よりも径方向幅の広い環状の空間114が形成されている。
[0065]
 外輪間座本体111に、内輪間座105の外周面に向けて冷却用の圧縮エアAを吐出するノズル孔115が設けられている。ノズル孔115の出口115aは、外輪間座104の内周面における凹み部113に開口している。この例では、3個のノズル孔115が設けられており、各ノズル孔115が円周方向に等間隔に配置されている。ノズル孔115の数は3つに限定されない。
[0066]
 図12のXV-XV断面図である図15に示すように、各ノズル孔115は、内輪間座105の回転方向D1の前方に傾斜している。つまり、各ノズル孔115は、外輪間座104の軸心に垂直な断面における任意の半径方向の直線Lから、この直線Lと直交する方向にオフセットした位置にある。ノズル孔115をオフセットさせることにより、圧縮エアAを内輪間座105の回転方向D1に旋回流として作用させ、冷却効果を向上させている。なお、図12、図13では、外輪間座104が、ノズル孔115の中心線を通る断面で表示されている。
[0067]
 外輪間座本体111の外周面に、軸受外部から各ノズル孔115に圧縮エアAを導入する導入溝116が形成されている。導入溝116は、外輪間座104の外周面における軸方向中間部に設けられ、各ノズル孔115に連通する円弧状に形成されている。導入溝116は、外輪間座本体111の外周面における円周方向の大部分を示す角度範囲にわたって設けられている。外輪間座本体111の外周面における導入溝116が形成されない円周方向位置に、後述のエアオイル供給経路(図示せず)が設けられる。図12のように、ハウジング106に圧縮エア導入経路145が設けられ、圧縮エア導入経路145に導入溝116が連通している。ハウジング106の外部に、圧縮エア導入孔145に圧縮エアAを供給するエア供給装置(図示せず)が設けられている。
[0068]
 潤滑構造について説明する。
 図12に示す外輪間座104の前記潤滑用ノズル112,112は、転がり軸受101の軸受内部にエアオイルを供給する。各潤滑用ノズル112は、軸受内部に突出する先端部130を有している。先端部130は、内輪103の外周面と環状隙間δbを介して対向する。環状隙間δbは、エアオイル通過用の通路を構成する。換言すれば、潤滑用ノズル112の先端部130は、内輪103の外周面に被さるように軸受内部に進入して配置されている。潤滑用ノズル112の先端部130は、保持器109の内周面よりも半径方向の内方に配置されている。
[0069]
 図13に示すように、潤滑用ノズル112に、環状隙間δbにエアオイルを供給するエアオイル供給孔131が設けられている。エアオイル供給孔131は、軸受側に向かって内径側に傾斜し、その出口が先端部130の内面に開口している。エアオイル供給孔131に、ハウジング106および外輪間座本体111に設けられたエアオイル供給経路(図示せず)を介してエアオイルが供給される。内輪103の外周面におけるエアオイル供給孔131に対向する箇所に、環状凹み部103aが設けられている。
[0070]
 潤滑用ノズル112から吐出されたエアオイルの油が環状凹み部103aに溜り、内輪103の回転に伴う遠心力により、内輪103の傾斜した外周面に沿って軸受中心側に導かれる。
[0071]
 排気構造について説明する。
 外輪間座本体111の軸方向端に、排気口117が設けられている。排気口117は、例えば、図14の展開図に示すような矩形の切り欠き形状である。外輪間座本体111に隣接して転がり軸受101の外輪102が配置されることで、排気口117は、軸受装置Jの内部と外部とを連通する開口を構成する。排気口117の数は、ノズル孔115と同じ(この例では3個)である。ノズル孔115と同様に、各排気口117は円周方向に等間隔で設けられている。さらに、排気口117は、ノズル孔115と同様に、内輪間座105の回転方向D1の前方に傾斜している。
[0072]
 図13では、ノズル孔115と排気口117が同一断面に示されているが、実際には、図15に示すように、ノズル孔115と排気口117の位置は円周方向にずれている。ノズル孔115および排気口117の円周方向の位置関係は、つぎのとおりである。
[0073]
 任意の一つのノズル孔115の出口115aからこのノズル孔115に対して内輪間座105の回転方向D1の一つ前側に位置する排気口117までの円周方向距離を距離Mとする。任意の一つの排気口117からこの排気口117に対して内輪間座105の回転方向D1の一つ前側に位置するノズル孔115の出口115aまでの円周方向距離を距離Nとする。この場合、距離Mが距離Nよりも長くなっている。ここで、ノズル孔115の位置は出口115aの中心の円周方向位置であり、排気口117の位置は排気口117の内径端の円周方向中央位置である。このようにノズル孔115および排気口117を配置することにより、圧縮エアAを軸受装置Jの内部に長時間滞留させることができる。
[0074]
 図12に示すように、ハウジング106に、冷却用の圧縮エアおよび潤滑用のエアオイルを軸受装置Jから排気する排気経路146が設けられている。排気経路146は、排気口117に連通する径方向排気孔148と、径方向排気孔148に連通する軸方向排気孔149とを有する。
[0075]
 第1応用例の軸受装置の冷却構造の作用について説明する。
 外輪間座104に設けられたノズル孔115から、冷却用の圧縮エアAが内輪間座105の外周面に向けて吹き付けられる。このとき、圧縮エアAが狭いノズル孔115から広い空間114に吐出されることで、圧縮エアAが断熱膨張する。ノズル孔115内における圧縮エアの体積をV1、温度をT1とし、空間114での圧縮エアの体積をV2、温度をT2とする。この場合、気体の状態方程式、熱力学の第1法則より、V1<V2、T1>T2となる。すなわち、空間114では、圧縮エアAの温度が下がると共に、体積が増加する。体積が増加することで、圧縮エアAの流速が増大する。このように、低温で高速の圧縮エアAが内輪間座105に吹き付けられることで、内輪間座105を効率よく冷却できる。
[0076]
 圧縮エアAは、隙間δaおよび隙間δbから外部に導出される。詳細には、圧縮エアAは、内輪間座105の外周面および内輪103の外周面に沿って軸方向の外側へ流れる。この間も、圧縮エアAにより内輪間座105および内輪103が冷却される。ノズル孔115が内輪間座105の回転方向D1の前方へ傾斜しているので、圧縮エアAは、内輪間座105の外周面および内輪103の外周面に沿って旋回しながら軸方向に流れる。旋回しながら軸方向に流れると、軸方向にまっすぐ流れる場合と比べて、圧縮エアAが内輪間座105の外周面および内輪103の外周面と接している時間が長くなる。
[0077]
 さらに、上述のように、円周方向の距離Mが距離Nよりも大きくなるようにノズル孔115および排気口117が配置されているので、圧縮エアAが軸受装置Jの内部に長時間滞留する。これらのことから、内輪間座105および内輪103をより一層効率よく冷却することができる。
[0078]
 内輪間座105の外周面および内輪103の外周面を通過した圧縮エアAは、外輪間座104の軸方向端面の排気口117および転がり軸受101の内部を通って外部に排出される。排気口117は、ノズル孔115と同様に、内輪間座105の回転方向D1の前方へ傾斜しているので、旋回流となっている圧縮エアAが排気口117から円滑に排出される。それにより、転がり軸受101の内部を通る圧縮エアAの量を減らすことができる。その結果、圧縮エアAが転がり軸受101の内部を多く流れることによる弊害を排除または軽減することができる。
[0079]
 この第1応用例のように、転がり軸受101をエアオイル潤滑する場合、エアオイルの円滑な給排気が阻害されることを防止できる。また、第1応用例のように、潤滑用ノズル112の先端部130が軸受内部に進入している場合、圧縮エアAが回転中の転動体108に衝突することによる騒音を低減できる。
[0080]
 ノズル孔115および排気口117は同数であり、ノズル孔115および排気口117がそれぞれ円周方向に等間隔で設けられているので、ノズル孔115から吐出される圧縮エアAにより、内輪間座105および内輪103を円周方向に均等に冷却することができる。また、内輪間座105の外周面および内輪103の外周面を通過した圧縮エアAが、各排気口117から均等に排出される。このため、圧縮エアAの排出が、より一層円滑になる。
[0081]
[第2応用例]
 図16、図17はこの発明の第2応用例を示す。第2応用例の軸受装置Jも転がり軸受101をエアオイル潤滑する。ただし、第2応用例は、外輪間座104が外輪間座本体111と別部材のリング状の潤滑用ノズル112とからなる第1応用例とは異なり、図16に示すように、外輪間座104が一体型である。この一体型の外輪間座104に、圧縮エアAを吐出するノズル孔115とエアオイル供給孔131とが設けられている。
[0082]
 第2応用例の軸受装置Jでは、ノズル孔115の出口115aが開口する外輪間座104の内周面に、第1応用例の外輪間座104のような凹み部113(図13)が形成されていない。これに代えて、内輪間座105に、貫通孔120が円周方向に等間隔で複数(この例では10個)設けられている。各貫通孔120は、内輪間座105の軸方向中間部に設けられている。貫通孔120は、例えば、丸孔形状である。各貫通孔120も、内径側に向かって内輪間座105の回転方向D1の前方に傾斜している。貫通孔120を設けることで、ノズル孔115から吐出された圧縮エアAの一部が、主軸107の外周面に衝突するようになっている。
[0083]
 エアオイル供給孔131は、外輪間座104の側面部に開口し、転がり軸受101の軸受内部に面している。第1応用例とは異なり、外輪間座104におけるエアオイル供給孔131が設けられている部分が軸受内部に突出していない。エアオイル供給孔131は、エアオイルが内輪103の軌道面と転動体8との境界付近に当たるように設けられている。詳細には、エアオイル供給孔131の軸心AXが、転がり軸受101に向かって内径側に傾斜している。エアオイルは、ハウジングに設けられたエアオイル供給経路(図示せず)から外輪間座104に設けられた径方向孔121(図17)を介して、エアオイル供給孔131に供給される。
[0084]
 第1応用例と同様に、外輪間座104の軸方向端面に、排気口117が設けられている。排気口117の形状は、第1応用例と同じである。排気口117の数は、ノズル孔115と同じ(この例では3個)である。図17に示すように、ノズル孔115および排気口117は、円周方向に等間隔で設けられている。また、ノズル孔115および排気口117は、内輪間座105の回転方向D1の前方に傾斜している。ノズル孔115および排気口117の円周方向の位置関係は、第1応用例と同じである。
[0085]
 第2応用例の軸受装置の冷却構造の場合、ノズル孔115から冷却用の圧縮エアAが内輪間座105の外周面に吹き付けられて内輪間座105が冷却されると共に、圧縮エアAの一部が内輪間座105の貫通孔120を通過して主軸107に当たることで主軸107が直接冷却される。その後、圧縮エアAは、内輪間座105の外周面に沿って軸方向の外側へ流れる。ノズル孔115が内輪間座105の回転方向D1の前方に傾斜しているので、圧縮エアAは内輪間座105の外周面に沿って旋回しながら軸方向に流れる。この間にも、内輪間座105は、圧縮エアAにより冷却される。
[0086]
 内輪間座105を冷却した後の圧縮エアAは、外輪間座104の排気口117および転がり軸受101の内部を通って外部に排出される。排気口117も内輪間座105の回転方向D1の前方に傾斜しているので、旋回流となっている圧縮エアAが排気口117から円滑に排出される。それにより、転がり軸受101の内部を通る圧縮エアAの量を減らすことができる。その結果、圧縮エアAが転がり軸受1の内部を多く流れることによる弊害を排除または軽減することができる。
[0087]
 この第2応用例のように、転がり軸受101をエアオイル潤滑する場合、エアオイルの円滑な給排気が阻害されることを防止できる。また、第2応用例のように、外輪間座104の一部が軸受内部に突出していない場合、回転によって転がり軸受101の軸端付近に生じるエアカーテン状の空気流の膜に圧縮エアAが衝突することで生じる騒音を低減することができる。
[0088]
 上記第1および第2応用例は、転がり軸受1をエアオイル潤滑する例を説明したが、この発明は転がり軸受をグリース潤滑する形式にも適用できる。
[0089]
[第3応用例]
 図18~19は第3応用例を示す。図18はグリース潤滑である軸受装置の断面図、図19はその部分拡大図である。第3応用例の軸受装置Jも、第1および第2応用例のエアオイル潤滑の軸受装置と同様に、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受101,101を備えている。転がり軸受101,101の外輪102,102の間に外輪間座104が介在され、内輪103,103の間に内輪間座105が介在されている。第3応用例の転がり軸受101は、アンギュラ玉軸受である。外輪102の軌道面と内輪103の軌道面との間に、複数の転動体108が介在されている。これら転動体108は、保持器109により円周方向に等間隔で保持されている。さらに、グリース潤滑である第3応用例の軸受装置Jは、外輪102の軸方向両端に、外輪102と内輪103との間の軸受内部空間S1を密封するシール部材151,152が取り付けられている。
[0090]
 外輪間座104は、その断面形状が略T字状である。詳細には、外輪間座104は、T字の縦線部分である内径側突出部104aと、T字の横線部分である円筒部104bとを有している。内側突出部104aの内周面と内輪間座105の外周面とが、径方向隙間δ1を介して対向している。外輪間座104に、内輪間座105の外周面に向けて冷却用の圧縮エアAを吐出するノズル孔115が設けられている。ノズル孔115の出口115aは、内径側突出部104aの内周面に開口している。ノズル孔115の数は、例えば、3個である。各ノズル孔115は円周方向に等間隔に配置されている。また、図示されていないが、第1および第2応用例と同様に、各ノズル孔115は、内輪間座105の回転方向D1の前方に傾斜している。
[0091]
 外輪間座104の外周面に導入溝116が形成されている。導入溝116は、軸受装置Jの外部からの圧縮エアAを各ノズル孔115に導入する。また、外輪間座104の軸方向端面に、ノズル孔115から吐出された圧縮エアAの排出口117が設けられている。排出口117は、第1および第2応用例と同様の切欠き形状である。各排出口117は、ノズル孔115と同様に、内輪間座105の回転方向D1の前方に傾斜している。
[0092]
 内輪間座105は、軸方向両端部に外径側に張り出す障害壁153を有する。第3応用例の障害壁153は、軸方向の転がり軸受101に向かって外径側への張り出し量が徐々に大きくなるテーパ形状である。なお、第3応用例の内輪間座105は、外輪間座104を組立可能にするため、すなわち外輪間座104の内周と障害壁153との干渉を防ぐために、軸方向に分割された2つの内輪間座分割体からなる。
[0093]
 図19に示すように、障害壁153の外径端は、外輪間座104の内周面と僅かな径方向隙間δ3を介して対向している。また、障害壁153の端面は、軸方向内側のシール部材151と僅かな軸方向隙間δ4を介して対向している。これにより、シール部材151と障害壁153とでラビリンスシール効果を持つラビリンスシール部55が形成されている。このラビリンスシール部55を介して、軸受内部空間S1と間座空間S2とが連通している。
[0094]
 第3応用例の軸受装置Jは、運転時に、冷却用の圧縮エアAが、軸受装置Jの外部に設けた圧縮エア供給装置から送られ、外輪間座104のノズル孔115から内輪間座105の外周面に向けて供給される。この圧縮エアAは、内輪間座105に衝突した後、内輪間座105の外周面に沿って軸方向両側へ流れる。圧縮エアAは、さらに内輪間座105の障害壁153のテーパ状外径面に沿って外径側へ導かれ、外輪間座104の排気口117から排出される。
[0095]
 障害壁153により圧縮エアAを外径側へ導くことに加えて、ノズル孔115と同様に排気口117が内輪間座105の回転方向D1の前方に傾斜しているので、間座空間S2での圧縮エアAの流れ、ならびに間座空間S2からの圧縮エアAの排出がスムーズになる。圧縮エアAが間座空間S2を通過する間に、軸受装置Jおよびこの軸受装置Jに支持された主軸107の熱を奪う。それにより、軸受装置Jおよび主軸107が効率よく冷却される。
[0096]
 内輪間座105の軸方向両端に障害壁153が設けられているので、圧縮エアAが軸受内部空間S1へ流入することが阻止される。特に、第3応用例では、軸受内部空間S1と間座空間S2との間にラビリンスシール部55が設けられているので、圧縮エアAの軸受内部空間S1への流入がより効果的に阻止される。さらに、間座空間S2において圧縮エアAがスムーズに流れるので、間座空間S2の内圧が軸受内部空間S1の内圧よりも低くなっており、圧縮エアAが軸受内部空間S1に流入し難い。これらのことから、圧縮エアAが軸受内部空間S1に流入することを抑えることができ、軸受内部空間S1に封入されたグリースが圧縮エアAで排除されることが防がれる。そのため、良好な潤滑状態を維持することができる。
[0097]
 以上の第1~3応用例では、内輪回転タイプの転がり軸受101を説明したが、外輪回転タイプの転がり軸受にも、この発明を適用することができる。その場合、内輪103の内周に嵌合する軸(図示せず)が固定部材を構成し、外輪2の外周に嵌合するローラ(図示せず)が回転部材を構成する。
[0098]
 図12~図19に示したこの発明の応用例は、以下の態様1~態様10を含む。
[0099]
[態様1]
 この発明の態様1に係る軸受装置の冷却構造は、転がり軸受の内外に対向する固定側軌道輪および回転側軌道輪に隣り合って固定側間座および回転側間座がそれぞれ設けられ、前記固定側軌道輪および前記固定側間座が固定部材および回転部材のうちの固定部材に設置され、前記回転側軌道輪および前記回転側間座が前記固定部材および前記回転部材のうちの回転部材に設置された軸受装置の冷却構造であって、
 前記固定側間座に、前記回転側間座における前記固定側間座と対向する周面に向けて圧縮エアを吐出するノズル孔が設けられ、
 前記ノズル孔の出口は、固定側間座における前記回転側間座と対向する周面に開口し、
 前記固定側間座の軸方向端面に、前記ノズル孔から吐出された圧縮エアの排気口が設けられ、
 前記ノズル孔が前記回転側間座の回転方向の前方に傾斜していると共に、前記排気口が前記回転側間座の回転方向の前方に傾斜している。
[0100]
 この態様1によると、固定側間座のノズル孔から冷却用の圧縮エアが回転側間座の周面に向けて吐出される。ノズル孔は回転側間座の回転方向の前方に傾斜しているので、ノズル孔から吐出された圧縮エアは、回転側間座の周面に沿って旋回しながら軸方向に流れ、この間に回転側間座が冷却される。圧縮エアが旋回するので、軸方向にまっすぐ流れる場合と比べて、圧縮エアが回転側間座の周面と接している時間が長い。したがって、回転側間座を効率良く冷却することができる。
[0101]
 回転側間座の周面を通過した圧縮エアは、固定側間座の軸方向端面に設けられた排気口や、転がり軸受の内部を通って外部に排出される。排気口も回転側間座の回転方向の前方に傾斜しているので、旋回流となっている圧縮エアが排気口から円滑に排出される。それにより、転がり軸受の内部を通る圧縮エアの量を減らすことができる。その結果、圧縮エアが転がり軸受の内部を多く流れることによる弊害を排除また軽減することができる。
[0102]
 具体的には、転がり軸受をエアオイル潤滑やオイルミスト潤滑する場合、エアオイルの円滑な給排気が阻害されることを防止できる。そのうえ、転がり軸受の軸端付近に生じるエアカーテン状の空気流の膜や回転中の転動体に圧縮エアが衝突することによる騒音を抑制することができる。また、転がり軸受をグリース潤滑する場合、圧縮エアが軸受内部のグリースを排出してしまうのを防止できる。
[0103]
[態様2]
 態様1において、前記ノズル孔および前記排気口は複数設けられ、両者の数は同じであり、前記ノズル孔および前記排気口が円周方向に等間隔で設けられていてもよい。この場合、ノズル孔から吐出される圧縮エアにより、回転側間座を円周方向に均等に冷却することができる。また、回転側間座の周面を通過した圧縮エアが、各排気口から均等に排出される。このため、圧縮エアの排出が円滑に行われる。
[0104]
[態様3]
 態様2において、任意の一つの前記ノズル孔の前記出口からこのノズル孔に対して前記回転側間座の回転方向の一つ前側に位置する前記排気口までの円周方向の距離が、任意の一つの前記排気口からこの排気口に対して前記回転側間座の回転方向の一つ前側に位置する前記ノズル孔の前記出口までの円周方向の距離よりも長くてもよい。このようなノズル孔と排気口の位置関係であると、圧縮エアが回転側間座の周面に接している時間が長くなり、冷却効果が高い。
[0105]
[態様4]
 態様1において、前記転がり軸受が、前記固定側軌道輪と前記回転側軌道輪との間の軸受内部に封入されたグリースにより潤滑される場合、前記回転側間座における前記固定側軌道輪に隣接する軸方向端部に、前記固定側間座の側に張り出して前記ノズル孔から吐出された圧縮エアが前記軸受内部へ流入することを阻止する障害壁が設けられていてもよい。障害壁が設けられていると、圧縮エアが転がり軸受の軸受内部へ流入することが阻止される。このため、軸受内部に封入されたグリースが圧縮エアで排除されることが防がれ、良好な潤滑状態を維持することができる。

符号の説明

[0106]
1…転がり軸受
2…外輪
3…内輪
4…外輪間座
5…内輪間座
6…ハウジング
7…主軸
10…供給口
15…障害壁
16,17…微小な隙間
20…排気口
21…軸方向隙間
23…テーパ形状部
30…軸受空間
30,31…シール材
A…圧縮エア
J…軸受装置
LS…第1ラビリンスシール

請求の範囲

[請求項1]
 軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の外輪間および内輪間に外輪間座および内輪間座がそれぞれ介在され、前記外輪および前記外輪間座がハウジングに設置され、前記内輪および前記内輪間座が主軸に嵌合され、前記転がり軸受が前記外輪と前記内輪との間の軸受空間に封入されたグリースにより潤滑される軸受装置の冷却構造であって、
 前記外輪間座の内周面に、前記内輪間座の外周面に向けて冷却用の圧縮エアを供給する供給口が設けられ、
 前記外輪間座の軸方向端面に、前記供給口から供給された圧縮エアの排気口が設けられ、
 前記内輪間座の軸方向両端部に、外径側に張り出して前記供給口から供給された圧縮エアが前記軸受空間へ流入することを阻止する障害壁が設けられ、
 前記障害壁の一部が前記外輪間座と微小な隙間を介して対向し、前記供給口から前記排気口への圧縮エアの円滑な流れを阻害する第1ラビリンスシールを構成している軸受装置の冷却構造。
[請求項2]
 請求項1に記載の軸受装置の冷却構造において、前記障害壁は、複数の部分が前記外輪間座と微小な隙間を介して対向することで、前記第1ラビリンスシールを構成している軸受装置の冷却構造。
[請求項3]
 請求項1または請求項2に記載の軸受装置の冷却構造において、前記転がり軸受は、前記外輪の軸方向端に前記軸受空間を密封するシール材を有し、
 前記障害壁の端面は、前記シール材と軸方向に対向して配置され、
 前記シール材と前記障害壁とで、前記圧縮エアが前記軸受空間に流入するのを阻害する第2ラビリンスシールを構成している軸受装置の冷却構造。
[請求項4]
 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の軸受装置の冷却構造において、前記隙間は前記排気口よりも軸方向の内側に位置し、
 前記外輪間座の内周面における前記隙間と前記排気口との間の軸方向部分が、前記排気口に向かって内径寸法が徐々に大きくなっている軸受装置の冷却構造。
[請求項5]
 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の軸受装置の冷却構造において、前記供給口が前記内輪の回転方向の前方へ傾斜させて設けられていると共に、前記排気口が前記外輪間座の回転方向の前方へ傾斜させて設けられている軸受装置の冷却構造。
[請求項6]
 請求項5に記載の軸受装置の冷却構造において、前記供給口および前記排気口は複数で同数設けられ、
 前記ノズル孔および前記排気口が円周方向に等間隔で設けられている軸受装置の冷却構造。
[請求項7]
 請求項6に記載の軸受装置の冷却構造において、任意の前記供給口からこの供給口に対して前記内輪間座の回転方向の前側に位置する前記排気口までの円周方向の距離が、この排気口から前記内輪間座の回転方向の一つ前側に位置する前記供給口までの円周方向の距離よりも長い軸受装置の冷却構造。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]