このアプリケーションの一部のコンテンツは現時点では利用できません。
このような状況が続く場合は、にお問い合わせくださいフィードバック & お問い合わせ
1. (WO2018180710) プレス成形装置及びプレス成形品の製造方法
Document

明 細 書

発明の名称 プレス成形装置及びプレス成形品の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008   0009  

課題を解決するための手段

0010   0011   0012  

発明の効果

0013  

図面の簡単な説明

0014  

発明を実施するための形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028  

実施例

0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035  

符号の説明

0036  

請求の範囲

1   2   3  

図面

1   2   3   4   5   6   7  

明 細 書

発明の名称 : プレス成形装置及びプレス成形品の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、素板又は素板に予め曲げもしくは絞り加工を施してなる被加工材(ブランク)を、一方の縦壁部が長手方向に沿って直線状に延在し他方の縦壁部は長手方向に沿って上記一方の縦壁部側に凸となる湾曲部を有し且つフランジ部が無いハット断面形状にプレス成形するためのプレス成形装置、及びフランジ部が無いハット断面形状のプレス成形品を製造する技術に関する。

背景技術

[0002]
 車両前方衝撃吸収部材の構成部品であるロアメンバーに代表されるような、天板部とそれに連続する左右の縦壁部を有するハット断面形状に、金属板(素板)をプレス成形する場合、離型後のプレス成形品には弾性回復によるスプリングバック変形が発生し、これに起因した製品寸法精度が問題となることがある。特に近年の自動車の骨格部品では、車体軽量化と衝突安全性を同時に達成するために、上記構成部品に対し薄肉の高張力鋼板の使用が増加している。しかし、これらの材料からなる金属板を単純にプレス成形すると、スプリングバックが大きく、寸法精度不良が顕在化している。
[0003]
 この寸法精度不良の問題は、特に、図1に示すような縦壁部の少なくとも一方が上面視から見て湾曲している部品にプレス成形する場合に顕著となり、上記のようなスプリングバック現象による不良には、断面形状の崩れによる2次元的な寸法精度不良の他に、部品長手方向の反りや部品全体のねじれといった3次元的な寸法精度不良があり、それぞれの不良現象に対して多くの対策技術が提案されている。
 ここで、断面形状の崩れは、主として天板部と縦壁部との境界部である曲げ部における角度変化と、縦壁部の反りとによって、プレスした部品の断面が開く方向に弾性回復する現象で発生する。
[0004]
 さらに、縦壁部の少なくとも一方が長手方向に沿って湾曲している部品を製造する場合では、長手方向に沿った各断面における縦壁部の反りの程度が異なっていることから、縦壁部は波打つようにスプリングバック変形が発生するため、これにより生じる縦壁部のうねりが問題となる。さらに、この縦壁部のうねりは金型形状の見込みでは改善することが困難なため、各断面における縦壁の反りそのものを低減させるようなプレス成形技術が必要となる。
 この縦壁部の反りへの対策技術として、反りの主要因である板厚方向の表裏応力差を低減させる成形技術が、従来から考えられている。
[0005]
 例えば特許文献1では、前工程において、製品形状の縦壁高さよりも数ミリメートル高く、もしくは低くなるように成形した中間部品を、最終工程で製品形状の縦壁高さになるように成形することで、縦壁全体に引張もしくは圧縮応力を発生させて、縦壁反りを抑制する技術を提案している。
 また、特許文献2では、上型と下型でブランクを押圧したあと、端部を拘束する構造を備えたホルダーが上昇することによってフランジ端が拘束された状態で、部品縦壁部に圧縮応力を付与する技術が提案されている。
[0006]
 特許文献3には、型締めを行う上型と下型とを有する一対の金型構造を有し、上型の下面側にパッドを設けるとともに下型がクッションを備える構造が開示されている。上型とパッドとは、縦壁部の座屈を防止するために凹凸形状を有する連結部が交互に噛み合うような構造をしており、これによってブランク端部を拘束した状態で縦壁部に圧縮応力を付与させる技術を提案している。なお、特許文献3では、上型とパッドとの間の圧縮量を、スペーサ挿入部に挿入するシムの厚さによって調整する(段落0035、0045)。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特許第4879588号公報
特許文献2 : 特許第5444687号公報
特許文献3 : 特許第3856094号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 しかし、特許文献1、2ではフランジ部を有するハット断面部品の成形技術であることが前提であり、ロアメンバーといったフランジ部を有さないハット断面部品への適用は困難である。さらに、上記の特許文献1,2では、部品縦壁部の圧縮応力を付与する際に問題となるブランクの座屈に対して効果的な対策を講じていないため、付与することができる圧縮量には限りがある。
 特許文献3では、上型とパッドとの連結部に凹凸形状をつけることで、圧縮中にブランクが座屈することを防ぐ機構を有しているが、この成形技術では金型構造が複雑になるだけでなく、凹凸形状が上手く噛み合っていない状態のまま成形をしてしまうと金型を大きく損傷してしまう恐れがあるため、量産への適用が困難と考えられる。また、圧縮量もシムの厚さによって調整するため、その分、調整が煩雑となる。
[0009]
 本発明は、上記のような課題に着目してなされたものであり、一方の縦壁部が長手方向に沿って直線状に延在すると共に他方の縦壁部は長手方向に沿って上記一方の縦壁部側に凸となる湾曲部を有し且つフランジ部を有さないハット断面形状のプレス成形品にプレス成形する際に、上記のフランジ部を有さない部品形状で発生する縦壁部の反りを座屈の発生なしに低減し得るプレス成形装置及びプレス成形品の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0010]
 本発明者は、スプリングバックによって発生する、湾曲した縦壁部の反りについて鋭意検討を行った結果、ブランク端部をストッパーによって拘束し、かつ、曲げ刃とパンチでブランク端部の面外変形を拘束した状態で、縦壁部に圧縮応力を付与させることで、圧縮付与前に発生していた板厚方向の表裏応力差が低減し、縦壁反りを低減可能であるという知見を得た。
 本発明は、このような知見に基づきなされたものである。
[0011]
 そして課題を解決するために、本発明の一態様のプレス成形装置は、天板部と上記天板部の幅方向両側に連続する左右の縦壁部とを有し、一方の縦壁部が長手方向に沿って直線状に延在し、他方の縦壁部は長手方向に沿って上記一方の縦壁部側に凸となる湾曲部を有し、且つフランジ部が無いハット断面形状に、素板又は素板に予め曲げもしくは絞り加工を施してなる被加工材を曲げ成形する第1の工程と、上記第1の工程による成形状態で上記縦壁部に対しプレス方向に沿った方向へ予め設定した圧縮量だけ圧縮を付与する第2の工程と、を行うためのプレス成形装置であって、
 上記予め設定した圧縮量は、上記縦壁部の高さの2%以上6%以下の範囲に設定され、
 上記天板部を板厚方向で挟持するパンチ及びパッドと、上記パンチ及びパッドの側方に配置され上記縦壁部を曲げ成形するための曲げ刃と、上記曲げ刃と上記プレス方向で対向し上記被加工材の端部を拘束するためのストッパーと、を備えて、上記パッド及び曲げ刃が上型を構成し、
 上記パンチは、上記プレス方向へ弾性伸縮可能な第1のクッション部品に支持され、
 上記曲げ刃は、上記プレス方向の途中で上下に分割され上記付与する圧縮量に等しい間隔を開けて上記プレス方向で対向配置した上側型部品及び下側型部品と、その上側型部品と下側型部品との間に介装され、上記間隔を保持すると共に所定圧力以上で上記プレス方向に縮み可能な第2のクッション部品とを有し、
 上記第2のクッション部品のクッション圧は、第1のクッション部品のクッション圧よりも小さく、且つ上記第1の工程での縦壁部の曲げ成形時に縮まないだけのクッション圧を有することを特徴とする。
[0012]
 また、本発明の一態様のプレス成形品の製造方法は、天板部と上記天板部の幅方向両側に連続する左右の縦壁部とを有し、一方の縦壁部が長手方向に沿って直線状に延在し、他方の縦壁部は長手方向に沿って上記一方の縦壁部側に凸となる湾曲部を有し、且つフランジ部が無いハット断面形状に、素板又は素板に予め曲げもしくは絞り加工を施してなる被加工材を成形する第1の工程と、上記第1の工程による成形状態で上記縦壁部に対しプレス方向に沿った方向へ予め設定した圧縮量だけ圧縮を付与する第2の工程と、を備え、
 上記予め設定した圧縮量を、上記縦壁部の高さの2%以上6%以下の範囲に設定し、
 上記天板部を板厚方向で挟持するパンチ及びパッドと、上記パンチ及びパッドの側方に配置され上記縦壁部を曲げ成形するための曲げ刃と、上記曲げ刃と上記プレス方向で対向し上記被加工材の端部を拘束するためのストッパーとを備えて、上記パッド及び曲げ刃が上型を構成し、上記曲げ刃は、上記プレス方向の途中で上下に分割され上記付与する圧縮量に等しい間隔を開けて上記プレス方向で対向配置した上側型部品及び下側型部品と、その上側型部品と下側型部品との間に介装され、上記間隔を保持すると共に所定圧力以上で上記プレス方向に縮み可能なクッション部品とを有する金型を用いて、
 上記第1の工程では、上記天板部を上記パンチ及びパッドで挟持しながら、上記被加工材の端部が上記ストッパーに当接すると共に上記下側型部品が上記ストッパーに当接するまで、クッション圧で上記クッション部品に縮みが発生しない状態を保持しつつ上記曲げ刃をプレス方向に移動させて上記縦壁部を曲げ成形し、
 上記第2の工程では、上記第1の工程に続いて、更に上側型部品と下側型部品とが接触するまで上記曲げ刃をプレス方向へ移動させて、上記縦壁部が上記曲げ刃と上記パンチ側面によって挟まれることで座屈を防止したまま上記間隔が小さくなることで、上記縦壁部に上記圧縮を付与することを特徴とする。

発明の効果

[0013]
 本発明の一態様によれば、一方の縦壁部が長手方向に沿って直線状に延在すると共に他方の縦壁部は長手方向に沿って上記一方の縦壁部側に凸となる湾曲部を有し且つフランジ部の無いハット断面部品形状にプレス成形する際に発生する縦壁部の反りを低減して、寸法精度の良いプレス成形品を提供可能となる。

図面の簡単な説明

[0014]
[図1] 車体骨格部品のうち、フランジ部を有さないハット断面形状で、かつ、縦壁部の少なくとも一方が湾曲している部品の例を示す斜視図である。
[図2] 本発明に基づく実施形態に係るプレス成形品を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は上面視の図である。
[図3] 本発明に基づく実施形態に係る金型を説明する模式的な断面図である。
[図4] 本発明に基づく実施形態に係るプレス成形の金型の動きを模式的に説明する断面図である。
[図5] 実施例で使用したブランクの展開した状態を模式的に示した図である。
[図6] プレス成形によって作製された部品の評価断面における部品形状との乖離量を長手方向に沿って測定した結果を示す図である。
[図7] うねり量と、湾曲側の縦壁部に付与した圧縮率との関係を示す図である。

発明を実施するための形態

[0015]
 次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
 ここで、以下の説明では、図2に示すように、プレス成形品1の形状が、天板部1Aと天板部1Aの幅方向両側に連続する左右の縦壁部1Ba、1Bbとを有すると共にフランジ部が無いハット断面形状を対象とする。本実施形態では、更に、上面視で、一方の縦壁部1Bbが直線的であり、他方の縦壁部1Baが長手方向に沿って湾曲している。すなわち、一方の縦壁部1Bbが長手方向に沿って直線状に延在し、また、他方の縦壁部1Baは、長手方向に沿って一方の縦壁部1Bb側に凸となる湾曲部を有する形状となっている。図2では、他方の縦壁部1Ba全体が湾曲部を構成する場合を例示しているが、図1のように、他方の縦壁部1Baの長手方向の一部に、一方の縦壁部1Bb側に凸となる湾曲部を有する形状であっても良い。
[0016]
 なお、図2中に記載の寸法は一例であり、実施例での寸法を併せて記載したものである。また、天板部1Aと縦壁部1Ba、1Bbとのなす角度は、例えば90度以上100度以下とする。
 また、本発明は、被加工材2の引張強度が440MPa以上、好ましくは590MPa以上の金属板である場合に特に効果を奏する。
[0017]
<金型>
 本実施形態のプレス成形装置は、天板部1Aを板厚方向で挟持するパンチ21及びパッド11と、パンチ21及びパッド11の側方に配置され縦壁部1Ba、1Bbを曲げ成形するための曲げ刃12と、曲げ刃12とプレス方向で対向し被加工材2の端部を拘束するためのストッパー22と、を備える(図3参照)。パンチ21は、プレス方向へ弾性伸縮可能な第1のクッション部品24に支持される。曲げ刃12は、プレス方向の途中で上下に分割され付与する圧縮量に等しい間隔Dを開けてプレス方向で対向配置した上側型部品12A及び下側型部品12Bと、その上側型部品12Aと下側型部品12Bとの間に介装され、上記間隔Dを保持すると共に所定圧力以上でプレス方向に縮み可能な第2のクッション部品14とを有する。第2のクッション部品14のクッション圧は、第1のクッション部品24のクッション圧よりも小さく、且つ第1の工程での縦壁部1Ba、1Bbの曲げ成形時に縮まないだけのクッション圧を有する。
 ここで、クッション部品は、油圧や空圧などによって、成形品に対し反力を発生させる圧力保持機能を備える装置であって、そのクッション部品が発生する反力がクッション圧となる。
[0018]
 次に、本実施形態のプレス成形装置の具体例について、図3を参照して説明する。
 本実施形態のプレス成形装置は、図3に示すように、上型10と下型20とを備える。
 上型10は、パッド11及び曲げ刃12を備える。パッド11は、上型用プレス板13の下面に対し、第3のクッション部品15を介して取り付けられている。第3のクッション部品15は、プレス方向(図3における上下方向)に伸縮方向の軸が設定されている。第3のクッション部品15は、例えばガススプリングから構成され、そのクッション圧を例えば8tonに設定する。
 曲げ刃12は、パッド11の側方に配置され、縦壁部1Ba、1Bbを曲げ成形するために使用される。曲げ刃12は、プレス成形した際に、縦壁部1Ba、1Bbと対向する位置における任意の位置で、プレス方向と交差する面で、上側型部品12Aと下側型部品12Bとに分割されている。上側型部品12Aは、上端部が上型用プレス板13に固定されていると共に、天板部1Aと縦壁部1Ba、1Bbとの接続部を曲げ成形する肩部12Aaを有する。
[0019]
 上側型部品12Aと下側型部品12Bの間の間隔Dは、予め設定した圧縮量に等しい間隔Dに設定され、その間隔Dは、上側型部品12Aと下側型部品12Bの間に介装された第2のクッション部品14によって保持されている。上記間隔Dは、縦壁部1Ba、1Bbの高さの2%以上6%以下の範囲で設定した圧縮量に等しい値に設定する。通常、上記間隔Dは、10ミリ未満である数ミリの大きさに設定される。
 第2のクッション部品14は例えばガススプリングから構成されて、プレス方向に沿った方向へ予め設定した所定圧力以上の圧力が負荷されると縮み可能となっている。例えば、上記の所定圧力が負荷されると縮み始め、負荷された圧力の大きさに応じた量だけ、間隔Dが小さくなる。なお、第2のクッション部品14は、上側型部品12Aと下側型部品12Bとが当接するまで収縮可能に設けられている。この第2のクッション部品14のクッション圧は例えば3tonとする。
[0020]
 下型20は、パンチ21と、パンチ21の側方に配置されたストッパー22とを備える。
 パンチ21は、パッド11とプレス方向で対向するように設定され、下型用プレス板23の上面に対し、第1のクッション部品24を介して設けられている。第1のクッション部品24は、例えばクッションピンなどのダイクッションからなり、プレス方向に弾性伸縮可能となっている。第1のクッション部品24のクッション圧は、例えば50tonに設定される。
 ストッパー22は、下型用プレス板23の上面に固定されている。プレス方向から見て、パンチ21とストッパー22の間の隙間は、被加工材2の厚さ未満、例えば、0.02mm以下となるように設定されている。
[0021]
 ここで、第1のクッション部品24、第2のクッション部品14、及び第3のクッション部品15の各クッション圧は、次に関係を満足するように設定される。
   第1のクッション部品24 > 第3のクッション部品15 
   第3のクッション部品15 > 第2のクッション部品14 
 但し、第2のクッション部品14のクッション圧は、縦壁部1Ba、1Bbを曲げ成形し、縦壁部1Ba、1Bbにプレス方向に沿った方向の圧縮力を付与しない状態では、上側型部品12Aと下側型部品12Bの間の間隔Dが変化しないだけ、つまりクッション部品が縮まらないだけのクッション圧以上となるように設定する。
[0022]
 「第1のクッション部品24のクッション圧 > 第3のクッション部品15のクッション圧」の関係に設定することで、パッド11で天板部1Aを押圧しながら、曲げ刃12によって曲げ成形を進める際に、第1のクッション部品24上に設置されたパンチ21が上下に動かないように設定することが可能となる。
 また、第2のクッション部品14のクッション圧(圧力)を3ton以上に設定すれば、縦壁部1Ba、1Bbの曲げ成形時に、上側型部品12Aと下側型部品12Bの間の間隔Dを一定に保持出来る。
 また、「第1のクッション部品24のクッション圧 > 第2のクッション部品14のクッション圧」とすることで、第2の工程において、上型10を、上側型部品12Aと下側型部品12Bとが接触するまで下降することで、縦壁部1Ba、1Bbに所望の圧縮量を付与出来る。
[0023]
<プレス成形品1の製造方法>
 次に、上記のプレス成形装置を使用したプレス成形品1の製造方法について説明する。
 本実施形態のプレス成形品1の製造方法は、少なくとも第1の工程と、第1の工程に続けて行う第2の工程とを有する。
 第1の工程は、天板部1Aと天板部1Aの幅方向両側に連続する左右の縦壁部1Ba、1Bbとを有し、一方の縦壁部1Bbが長手方向に沿って直線状に延在すると共に他方の縦壁部1Baは長手方向に沿って上記一方の縦壁部1Bb側に凸となる湾曲部を有し且つフランジ部が無いハット断面形状に、素板又は素板に予め曲げもしくは絞り加工を施してなる被加工材2(ブランク)の縦壁部1Ba、1Bbを曲げ成形して、第1の成形状態とする。すなわち、第1の工程は、被加工材2(ブランク)を金型にセットし、その被加工材2の天板部1Aをパンチ21とパッド11で挟持するとともに、分割した曲げ刃12のうち、下側の曲げ刃(下側型部品12B)の下面がストッパー22に接触するまで下降させて、縦壁部1Ba、1Bbを形成する工程である。
[0024]
 第2の工程は、第1の工程による曲げ成形状態で、縦壁部1Ba、1Bbに対しプレス方向に沿った方向へ予め設定した圧縮量だけ圧縮を付与して、第2の成形状態とする。すなわち、第2の工程では、第1の工程による第1の成形状態の後に、パッド11、曲げ刃12、パンチ21で部品全体を挟持した状態を保持しながら、さらに上型10を下降させ、それに伴い第1のクッション部品24上に設置されたパンチ21が下降する工程である。このとき、分割した曲げ刃12に設定した第2のクッション部品14(ガススプリング)が縮み、分割した曲げ刃12を構成する上側型部品12Aと下側型部品12Bとが接触するまで、上型10を下降させる。また、被加工材2の端部(縦壁部1Ba、1Bbの下端部)はストッパー22の面に垂直に押し当てられることで拘束されて移動しない。
[0025]
 上記のプレス成形における金型の動作を、図4を参照して説明する。
 図4では、フォームもしくはドロー成形などのプレス加工によって一度成形された後、スプリングバックによって変形したブランク(被加工材2)を、本発明に基づきプレス成形して、プレス成形品1として製造する場合の例を示す。勿論、平板状の素板をブランク(被加工材2)としても良い。
 まず、ブランクの天板部1Aを、図4(a)に示すようにパンチ底上に設置する。このとき、パンチ21はパンチ底が成形する部品の縦壁高さより高くなるように、予め、例えば10mm程度上昇させておく。
[0026]
 次に、図4(b)のように、上型10を下降させることで、ブランク2の天板部1Aをパンチ21とパッド11で挟持し、続く、曲げ刃12の下降によって、図4(c)のように、曲げ刃12による縦壁部1Ba、1Bbの曲げ成形が行われ、分割した曲げ刃12のうち、下側の曲げ刃(下側型部品12B)の下面をストッパー22に接触させる。なお、下側型部品12Bの下面がストッパー22に接触する時点で、ブランク端部がストッパー22に接触するように設定する。この状態までは、分割された曲げ刃12に設定された第2のクッション部品14は縮まないように設定しておく。この設定は第2のクッション部品14のクッション圧によって行うことが出来る。すなわち、ブランク2の縦壁部からの摩擦によって下側の曲げ刃(下側型部品12B)に伝達される力よりも大きなクッション圧に設定すればよい。
 この状態(図4(c)参照)では、ブランク2は上型10と下型20で挟持された状態であるので、一時的に目的の部品形状となり、この状態を第1の成形状態とする。ここまでが、第1の工程に対応する。
[0027]
 次に、第1の成形状態の後、図4(d)のように、更に上型10を予め設定した圧縮量だけ下降させる。このとき、第2のクッション部品14が縮むことで、上側型部品12Aが相対的に下側型部品12Bに接近して、両者12A、12Bが接触する。すなわち、パッド11及び曲げ刃12のうち上側型部品12Aはプレス機のスライドの下降に連動して下降する。さらにプレス機の加圧力の方が、パンチ21に連動するクッション圧よりも大きいため、パンチ21も下降する。一方で、ストッパー22は固定されており、移動しないため、ブランク2の端部はストッパー22により拘束される。さらに、このとき、ブランク2全体がパッド11、曲げ刃12、パンチ21によって拘束されるため、ブランク2が面外に変形する余地がない。そのため、ブランク2の縦壁部1Ba、1Bbに座屈を発生させることなく圧縮力を付与させることが可能となる。この状態を第2の成形状態(図4(d)参照)とする。ここまでが第2の工程に対応する。
[0028]
 最後に、図4(e)のように、上型10を上昇させることで、プレス成形で製造したプレス成形品1を金型から離型する。
 以上のように、本実施形態では、上型10を下降させるだけで、ブランク(被加工材2)を、一方の縦壁部1Bbが長手方向に沿って直線状に延在すると共に他方の縦壁部1Baは長手方向に沿って上記一方の縦壁部1Bb側に凸となる湾曲部を有し且つフランジ部の無いハット断面の部品に形成出来ると共に、縦壁部1Ba、1Bbに目的とする圧縮を付与出来て、天板部1Aとそれに連続する縦壁部1Ba、1Bbを有し且つフランジ部の無い部品形状にプレス成形する際に発生する、縦壁部1Ba、1Bbの反りを低減することができる。この結果、寸法精度の良いプレス成形品1を提供可能となる。
実施例
[0029]
 次に、本発明に基づく実施例について説明する。
 440MPa級冷延鋼板(板厚1.0mm)、及び1180MPa級冷延鋼板(板厚1.0mm)を素板として、図2に示すような天板部1A、直線的な縦壁部1Bb、湾曲した縦壁部1Baを有し且つフランジ部の無いハット断面形状のプレス成形品1にプレス成形を行った。
 このとき、プレス成形品1の縦壁部1Ba、1Bbへの圧縮量を変化させるために、図5に示す、展開したブランク形状のように、縦壁部1Ba、1Bbのブランク長さが成形品の縦壁部1Ba、1Bbの高さよりも1~5mm長くなるようにブランク形状をそれぞれ調整したブランクを被加工材2として用意した。図5中斜線部分が長くした部分である。
[0030]
 そして、上記の各ブランクを予め通常の天板部1Aをパッド11で挟持した状態でフォーム成形を行う加工を施した後に、離型によってスプリングバックしてブランク(被加工材2)として作成し、そのブランクを実施形態で説明した金型を使用してプレス成形した。
 設定する圧縮量は、成形品の縦壁部1Ba、1Bbの高さよりも長くした分である。すなわち、圧縮量を1~5mmの範囲で設定した。圧縮量は上型10の下降量で調整可能である。
[0031]
 なお、製品形状における縦壁部1Ba、1Bbの高さを、図2に示すように83mmに設定した。
 そして、各圧縮率を付与したときの断面形状が、プレス成形後の製品としての部品形状とどの程度乖離しているかを長手方向に沿って測定した。各材料における測定結果を図6に示す。図6中、フォームのみ(表1のNo.1、No.8に対応)とは、第2の工程による圧縮付与を行わない場合である。また、図6(a)は材料が1180MPa級冷延鋼板の場合であり、図6(b)は材料が440MPa級冷延鋼板の場合である。
[0032]
 また、表1に、縦壁部1Baを部品形状から長くした量と、その時に縦壁部1Ba、1Bbに発生する圧縮率を示す。さらに、長手方向に沿った製品形状との乖離量の最大値から最小値を引いた量をうねり量とし、本実施例の評価では、うねり量が5mm以下となった場合を形状凍結性が優れていると判定して表1中「○」とした。なお、実際の製品によっては、うねり量が10mm以下で合格とする場合もあり、表1でうねり量判定が「×」の場合であっても、製品としては合格の場合もある。ここで、圧縮率は、最終の製品形状における縦壁部1Baの高さに対する圧縮量の比((圧縮量/縦壁部の高さ)×100)である。
[0033]
[表1]


[0034]
 図6から分かるように、圧縮率の増加に伴って、湾曲した縦壁部1Baの反りが改善し、断面形状が部品形状に近づいて行っていることが分かる。さらにそれに伴って断面の部品形状との乖離量が減少していくことが分かる。
 図7に、縦壁部1Baに付与した圧縮率とうねり量の関係を示す。図7から分かるように、1180MPa鋼板では圧縮率を2.5%程度付与したあたりから、すなわち2.5%以上で急激に縦壁部1Baの反りが改善され、うねり量が低減し始めていることが分かる。そして、圧縮率が3.0%以上でうねり量が10mm未満となり、更に4.0%以上でうねり量が5mm未満となってうねり量の低減効果が収束し始めていることが分かる。440MPa鋼板でも同様に圧縮率が増加するにつれて縦壁部1Baの反りが改善され、圧縮率が2.0%以上でうねり量が5mm未満となった。また、本例ではいずれの材料でも圧縮率が6.0%を超えた条件では、分割した曲げ刃12の隙間に材料が流入してしまい、座屈が発生してしまい成形ができなかった。このようなことから、1180MPa級冷延鋼板を使用した本部品形状において、圧縮率は、3.0%以上6.0%未満が好ましく、より好ましくは4.0%以上6.0%未満であり、440MPa級冷延鋼板を使用した本部品形状において、圧縮率は2.0%以上6.0%未満が好ましい。
[0035]
 以上、本願が優先権を主張する、日本国特許出願2017-062445(2017年3月28日出願)の全内容は、参照により本開示の一部をなす。
 ここでは、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく各実施形態の改変は当業者にとって自明なことである。

符号の説明

[0036]
1 プレス成形品
1A 天板部
1Ba 湾曲側の縦壁部
1Bb 縦壁部
2 被加工材
10 上型
11 パッド
12 曲げ刃
12A 上側型部品
12B 下側型部品
13 上型用プレス板
14 第2のクッション部品
15 第3のクッション部品
20 下型
21 パンチ
22 ストッパー
23 下型用プレス板
24 第1のクッション部品
D 間隔

請求の範囲

[請求項1]
 天板部と上記天板部の幅方向両側に連続する左右の縦壁部とを有し、一方の縦壁部が長手方向に沿って直線状に延在し、他方の縦壁部は長手方向に沿って上記一方の縦壁部側に凸となる湾曲部を有し、且つフランジ部が無いハット断面形状に、素板又は素板に予め曲げもしくは絞り加工を施してなる被加工材を曲げ成形する第1の工程と、上記第1の工程による成形状態で上記縦壁部に対しプレス方向に沿った方向へ予め設定した圧縮量だけ圧縮を付与する第2の工程と、を行うためのプレス成形装置であって、
 上記予め設定した圧縮量は、上記縦壁部の高さの2%以上6%以下の範囲に設定され、
 上記天板部を板厚方向で挟持するパンチ及びパッドと、上記パンチ及びパッドの側方に配置され上記縦壁部を曲げ成形するための曲げ刃と、上記曲げ刃と上記プレス方向で対向し上記被加工材の端部を拘束するためのストッパーと、を備えて、上記パッド及び曲げ刃が上型を構成し、
 上記パンチは、上記プレス方向へ弾性伸縮可能な第1のクッション部品に支持され、
 上記曲げ刃は、上記プレス方向の途中で上下に分割され上記付与する圧縮量に等しい間隔を開けて上記プレス方向で対向配置した上側型部品及び下側型部品と、その上側型部品と下側型部品との間に介装され、上記間隔を保持すると共に所定圧力以上で上記プレス方向に縮み可能な第2のクッション部品とを有し、
 上記第2のクッション部品のクッション圧は、第1のクッション部品のクッション圧よりも小さく、且つ上記第1の工程での縦壁部の曲げ成形時に縮まないだけのクッション圧を有することを特徴とするプレス成形装置。
[請求項2]
 天板部と上記天板部の幅方向両側に連続する左右の縦壁部とを有し、一方の縦壁部が長手方向に沿って直線状に延在し、他方の縦壁部は長手方向に沿って上記一方の縦壁部側に凸となる湾曲部を有し、且つフランジ部が無いハット断面形状に、素板又は素板に予め曲げもしくは絞り加工を施してなる被加工材を成形する第1の工程と、上記第1の工程による成形状態で上記縦壁部に対しプレス方向に沿った方向へ予め設定した圧縮量だけ圧縮を付与する第2の工程と、を備え、
 上記予め設定した圧縮量を、上記縦壁部の高さの2%以上6%以下の範囲に設定し、
 上記天板部を板厚方向で挟持するパンチ及びパッドと、上記パンチ及びパッドの側方に配置され上記縦壁部を曲げ成形するための曲げ刃と、上記曲げ刃と上記プレス方向で対向し上記被加工材の端部を拘束するためのストッパーとを備えて、上記パッド及び曲げ刃が上型を構成し、上記曲げ刃は、上記プレス方向の途中で上下に分割され上記付与する圧縮量に等しい間隔を開けて上記プレス方向で対向配置した上側型部品及び下側型部品と、その上側型部品と下側型部品との間に介装され、上記間隔を保持すると共に所定圧力以上で上記プレス方向に縮み可能なクッション部品とを有する金型を用いて、
 上記第1の工程では、上記天板部を上記パンチ及びパッドで挟持しながら、上記被加工材の端部が上記ストッパーに当接すると共に上記下側型部品が上記ストッパーに当接するまで、クッション圧で上記クッション部品に縮みが発生しない状態を保持しつつ上記曲げ刃をプレス方向に移動させて上記縦壁部を曲げ成形し、
 上記第2の工程では、上記第1の工程に続いて、更に上側型部品と下側型部品とが接触するまで上記曲げ刃をプレス方向へ移動させて、上記縦壁部が上記曲げ刃と上記パンチ側面によって挟まれることで座屈を防止したまま上記間隔が小さくなることで、上記縦壁部に上記圧縮を付与することを特徴とするプレス成形品の製造方法。
[請求項3]
 上記被加工材の引張強度が440MPa以上の金属板であることを特徴する請求項2に記載したプレス成形品の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]