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1. (WO2018180389) 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法
Document

明 細 書

発明の名称 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005   0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016  

発明の効果

0017  

図面の簡単な説明

0018  

発明を実施するための形態

0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093  

実施例

0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法

技術分野

[0001]
 本開示は、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 熱可塑性樹脂フィルムは、光学フィルム、太陽電池裏面保護用フィルム等、種々の用途で使用されている。
 熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、セルロースアシレートフィルム等のセルロース系樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、環状オレフィン樹脂フィルム等が挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムは、一般に、原料樹脂を溶融押出機で溶融してダイに押出し、押出された溶融樹脂をダイからシート状(膜状)の溶融樹脂(膜状溶融樹脂)として吐出して冷却固化する方法(以下、「溶融押出法」ともいう。)によって製膜される。
[0003]
 上記の溶融押出法により樹脂成形物又は樹脂フィルムを製造する場合、製造された樹脂成形物又は樹脂フィルムにスジ状の凹み(いわゆるダイライン)が発生する場合がある。不意に発生するダイラインは、製品品質を低下させる一因となる。
 そのため、ダイラインの発生を抑制するための方法が従来から種々検討されている。
 例えば、ダイスの加熱を開始してから溶融樹脂がダイスから押出されるまでの間、ダイスを不活性ガスで封止する溶融押出フィルムの製造方法、及び開口部が酸素濃度10ppm以下の不活性雰囲気下にある溶融押出機を用いて溶融押出成形を行う光学フィルムの製造方法に関する開示がある(例えば、特開2004-322346号公報、特開2008-137328号公報参照)。また、ダイの押出口端部と溶融樹脂との接触部を溶融樹脂に対して不活性な気体で包囲する熱可塑性樹脂の押出方法も開示されている(例えば、特開平1-180317号公報参照)。

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 しかしながら、従来から行われているように、ダイから溶融樹脂が押出される前までの時間帯のダイの内部を不活性雰囲気で封止する等してダイへの溶融樹脂の付着を防いでも、ダイの設置環境中の粉塵等が付着する場合もあり、予期し得ないダイラインが突発的に発生することがある。
[0005]
 従来から種々検討がなされ、ダイラインの発生頻度は少なく抑えられてはきたものの、従来技術によるダイラインの抑制効果は必ずしも充分とは言い難く、ダイラインの発生をより一層抑制することができる技術の確立が求められているのが実情である。
[0006]
 本開示は、上記に鑑みなされたものである。即ち、
 本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、熱可塑性樹脂フィルムにおけるダイラインの発生が従来に比べてより一層抑制される熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0007]
 本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、樹脂成分の酸化に由来する異物及びダイの設置環境における塵埃由来の異物などの、ダイラインの発生原因となるダイの吐出口先端に付着する異物の付着度合いを管理することが有効であるとの知見を得るに至り、かかる知見に基づいて達成されたものである。
 上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
[0008]
 <1> ダイを加熱する前に、ダイから吐出される溶融樹脂の吐出方向における、ダイの吐出口端部と吐出口端部から3mm上流の位置との間の樹脂流路壁面に存在する、10μm以上の最大高さ及び100μm以上の最大幅の少なくとも一方を有する付着物の有無を検査し、上記付着物が検出された場合に検出された付着物を除去する工程と、樹脂流路壁面に存在する付着物が除去されたダイを加熱する工程と、加熱されたダイから溶融樹脂として熱可塑性樹脂をシート状に吐出する工程と、を有する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
[0009]
 <2> 吐出する工程は、ダイの吐出口端部と、溶融樹脂の吐出方向における吐出口端部の下流の樹脂流通路の一部と、を含む空間を仕切部材で仕切り、仕切られた空間のクリーン度をクラス100以下の範囲に維持した状態で溶融樹脂を吐出する、<1>に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
[0010]
 <3> 仕切部材が、厚みが1μm~500μmであり、かつ、溶融樹脂の温度より低い融点を有する樹脂フィルムである<2>に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
[0011]
 <4> ダイを加熱する工程前に、更に、仕切られた空間に取り付けられた不活性ガス供給口から不活性ガスを供給し、上記空間の内部を不活性ガスで置換して酸素濃度を5000ppm以下に保持する工程を有する<3>に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
[0012]
 <5> 保持する工程は、ダイの吐出口端部及び溶融樹脂の吐出方向における吐出口端部の上流のリップ部の樹脂流路が溶融樹脂で満たされるまで酸素濃度を5000ppm以下に保持する、<4>に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
[0013]
 <6> 吐出する工程は、吐出口端部から吐出された溶融樹脂を接触させて仕切部材による仕切りを開放する、<2>~<5>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
[0014]
 <7> ダイのリップ部の表面エネルギーが0mN/m以上60mN/m以下である<1>~<6>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
[0015]
 <8> ダイのリップ部の材質が、硬質クロムめっき、炭化タングステン、ダイヤモンドライクカーボン、及びウルトラクロムめっきから選択される材質である<1>~<7>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
[0016]
 <9> 吐出する工程は、シート状に吐出した熱可塑性樹脂をキャスティングロールとタッチロールとの間に挟み込んでシート状に成膜する<1>~<8>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。

発明の効果

[0017]
 本発明の一実施形態によれば、熱可塑性樹脂フィルムにおけるダイラインの発生が従来に比べてより一層抑制される熱可塑性樹脂フィルムの製造方法が提供される。

図面の簡単な説明

[0018]
[図1] 図1は、熱可塑性樹脂フィルムの厚さ方向の断面の一例を示す概略断面図である。
[図2] 図2は、矢印20の方向にスジ状に凹みD(ダイライン)が発生している熱可塑性樹脂フィルムの一例を示す概略斜視図である。
[図3] 図3は、製膜装置の全体構成の一例を示す概略図である。
[図4] 図4は、Tダイの内部構造の一例を示す側部断面図である。
[図5] 図5は、図4のTダイの内部構造をTダイの幅方向に垂直な方向(正面)からみた正面断面図である。
[図6] 図6は、Tダイの吐出口側に仕切部材が取り付けられた状態を示す斜視図である。
[図7] 図7は、図6のA-A線断面図である。
[図8] 図8は、図6の仕切部材の閉塞部材を膜状溶融樹脂が突き破って空間を開放しているところを説明するための断面図である。

発明を実施するための形態

[0019]
 以下、本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法について詳細に説明する。
[0020]
 本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
[0021]
 本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
[0022]
 また、本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
[0023]
 本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、ダイを加熱する前に、ダイから吐出される溶融樹脂の吐出方向における、ダイの吐出口端部と吐出口端部から3mm上流の位置との間の樹脂流路壁面に存在する、10μm以上の最大高さ及び100μm以上の最大幅の少なくとも一方を有する付着物の有無を検査し、上記の付着物が検出された場合に検出された付着物を除去する工程(以下、「検査除去工程」ともいう。)と、樹脂流路壁面に存在する付着物が除去されたダイを加熱する工程(以下、「ダイ加熱工程」ともいう。)と、加熱されたダイから溶融樹脂として熱可塑性樹脂をシート状に吐出する工程(以下、「吐出工程」ともいう。)と、を有している。
 本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、上記工程に加え、必要に応じて、他の工程を有していてもよい。
[0024]
 従来、ダイを用いて溶融押出法によりフィルムを製造する際に、フィルムの吐出方向(ダイからの膜状溶融樹脂の吐出方向)にスジ状の凹み(以下、「ダイライン」ともいう。)が発生する場合があった。
 具体的には、図1及び図2に示すように、フィルムの厚さ方向の凹みが、ダイからのフィルムの吐出方向に沿って連続したスジ状の欠陥として認められる場合があった。
 図1は、熱可塑性樹脂フィルム10の厚さ方向の断面の一例を示す概略断面図であり、発生した凹み(ダイライン)Dが示されている。
 図2は、矢印20の方向にスジ状に凹み(ダイライン)Dが発生している熱可塑性樹脂フィルム10の一例を示す概略斜視図である。
[0025]
 従来から、溶融押出法により樹脂成形物又は樹脂フィルムを製造する場合に発現することがあるスジ状の凹み(ダイライン)の発生を抑制する方法として、ダイの吐出口端部及びダイの内部に不活性ガスを存在させて酸素の存在を減らす技術が採用されてきた。
 不活性ガスの存在により、ダイから吐出される前の樹脂が熱酸化劣化することによる樹脂滞留部の発生等の現象は解消され、ダイラインの発生頻度も低減する傾向にあるものの、完全にはダイラインが解消されるまでには至っていない。
 このような状況において、本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法では、ダイの吐出口端部と吐出口端部に繋がる樹脂流路壁面に存在する付着物のうち、10μm以上の最大高さ及び100μm以上の最大幅の少なくとも一方を有する付着物の付着度合いを管理する。即ち、ダイラインの発生を招来しやすい領域及び大きさの付着物が存在しない状態が継続的に維持されることにより、ダイラインの発生を安定的に防止することができる。
 これにより、ダイラインの発生のない高品質の熱可塑性樹脂フィルムを安定的に製造することができる。
[0026]
 なお、本明細書において、シート状に吐出された溶融樹脂を「膜状溶融樹脂」ということがあり、「膜状溶融樹脂」は、樹脂成分のみであってもよいし、添加剤を含む樹脂組成物であってもよい。
[0027]
 まず、本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に用いられる製膜装置(熱可塑性樹脂フィルム製造装置)の全体構成の一例について、図面を用いて概略を説明する。
[0028]
 図3は、本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を実施するためのTダイを備えた製膜装置110の全体構成の一例を示す概略図である。
 製膜装置110は、原料樹脂としての熱可塑性樹脂が投入されるホッパー112と、ホッパー112から供給された熱可塑性樹脂を溶融する溶融押出機114と、溶融押出機の下流に配置され、溶融した樹脂(溶融樹脂)の押出量を安定化させるギアポンプ116と、ギアポンプの下流に配置され、溶融樹脂を濾過するフィルター118と、フィルター118の更に下流に配置され、溶融樹脂をフィルム状に溶融押出するダイ120と、ダイ120から吐出された高温の熱可塑性樹脂を冷却する冷却ロール(キャスティングロール)122と、ダイ120から吐出された熱可塑性樹脂100を冷却ロール122との間で挟み込む接触ロール(タッチロール)124とを備えている。本発明の一実施形態に用いられる成膜装置110には、ダイ120としてTダイ12が備えられている。
 溶融押出機114とギアポンプ116とフィルター118とTダイ12とは、それぞれ配管140によって接続されている。なお、図示されていないが、通常は、キャスティングロールから熱可塑性樹脂フィルムを剥離する剥離ロール、及び膜状溶融樹脂を冷却してなるフィルムを巻き取る巻取機が設けられる。
 なお、原料樹脂については後述する。
[0029]
 ここで、図3に示す製膜装置の溶融押出機、ギアポンプ、フィルター、ダイ、並びにキャスティングロール及びタッチロールについて略説する。
[0030]
〔溶融押出機〕
 溶融押出機としては、公知の溶融押出機を使用することができ、例えば、フルフライト、マドック、ダルメージ等のスクリュータイプの単軸押出機、同方向や異方向のタイプの二軸押出機等が挙げられる。例えば、特開2009-154518号公報、及び、特開2008-194956号公報に記載のものが挙げられる。
 なお、原料樹脂(ペレット)は、ホッパー112に投入されることにより溶融押出機114に供給される。
[0031]
〔ギアポンプ〕
 溶融押出機114とダイ120との間にギアポンプ116を設けて、ギアポンプ116から一定量の溶融樹脂を供給することが好ましい。吐出量の変動を低く抑えることにより、フィルムの厚み精度を向上させることができる。
 ギアポンプは、ドライブギアとドリブンギアとからなる一対のギアが互いに噛み合った状態で収容され、ドライブギアを駆動して両ギアを噛み合わせて回転させることにより、ハウジングに形成されている吸引口から溶融状態の樹脂をキャビティ内に吸引し、同じくハウジングに形成されている吐出口から樹脂を一定量吐出する。
 溶融押出機の先端部分の樹脂圧力に若干の変動があっても、ギアポンプを用いることにより変動を吸収し、製膜装置の下流での樹脂圧力の変動は小さなものとなる。これにより、厚み変動が改善される。ギアポンプを用いることにより、ダイ部分の樹脂圧力の変動幅を±1%以内にすることが可能である。
[0032]
 ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリュの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力の変動を抑制する方法も用いることができる。また、3枚以上のギアを用いた高精度ギアポンプも有効である。
[0033]
〔フィルター〕
 ギアポンプ116の下流には、フィルター118を設けることが好ましい。フィルター118を設けることで、より高い精度で異物の混入を防ぐことができる。
 フィルター118としては、いわゆるリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は、濾過部を1ヶ所設けて行うことができ、また、複数ヶ所設けて行う多段濾過でもよい。フィルター濾材の濾過精度は高いことが好ましいが、濾材の耐圧や濾材の目詰まりによる濾圧上昇から、濾過精度は15μm~3μmが好ましく、より好ましくは10μm~3μmである。特に最終的に異物濾過を行うリーフ型ディスクフィルター装置を使用する場合では、品質の上で濾過精度の高い濾材を使用することが好ましく、耐圧、フィルター寿命の適性を確保するために装填枚数にて調整することが可能である。
[0034]
 濾材の種類は、高温高圧下で使用される点から鉄鋼材料を用いることが好ましい。
 鉄鋼材料の中でも、特に、ステンレス鋼、スチールなどが好ましく、腐食の点からは、特にステンレス鋼が好ましい。
 濾材の構成としては、線材を編んだ濾材の他に、例えば金属長繊維又は金属粉末を焼結して形成される焼結濾材が使用に適しており、濾過精度、フィルター寿命の点から焼結濾材が好ましい。
[0035]
〔ダイ〕
 溶融押出機114、ギアポンプ116、及びフィルター118を経てダイ120に連続的に送られた溶融樹脂(メルト)は、ダイ120からシート状にして吐出される。
 ダイ120としては、一般に用いられるTダイのほか、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイを用いてもよい。
 本開示の熱可塑性樹脂の製造方法に使用可能なダイとしては、特に制限はなく、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法の分野において公知のものが使用可能である。例えば、特開2009-154518号公報及び特開2008-194956号公報に記載のダイなどが挙げられる。
 ダイ120の直前に、樹脂温度の均一性を向上させるためのスタティックミキサーを配置してもよい。
[0036]
 ダイは、シートの厚み精度を左右する設備の1つであり、厚みを高精度に制御できるものが好ましい。通常、ダイによるシートの厚み調整は、吐出口のクリアランスをダイ全幅に対して幅方向で40mm~50mm間隔で調整して行うことが可能であり、中でも、35mm以下の間隔での調整が行えるダイが好ましく、25mm以下の間隔での調整が行えるダイがより好ましい。
 また、フィルムの均一性を向上するために、ダイは、温度ムラ及び幅方向の流速ムラができる限り少なくなるように設計されていることが好ましい。また、長期連続生産時の厚み変動を低減する観点から、下流のフィルムの厚みを計測して厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整機能を有するダイも有効である。
[0037]
 フィルムの製造は、設備コストの安い単層製膜装置が一般的に用いられるが、場合により、機能層を外層に設けることが可能な多層製膜装置を用い、2種以上の構造を有するフィルムの製造も可能である。一般に、機能層を表層として薄く積層することが好ましいが、特に層比を限定するものではない。
[0038]
-ダイのリップ部の表面エネルギー-
 ダイのリップ部は、表面エネルギーが60mN/m以下に調整されていることが好ましい。表面エネルギーが60mN/m以下であると、ダイのリップ部における樹脂の剥離性に優れ、樹脂の劣化物(本明細書において「メヤニ」(deposition of drool)ともいう。)の発生が抑制されるため、ダイラインの発生をより効果的に抑制することができる。
 ダイのリップ部の表面エネルギーとしては、50mN/m以下がより好ましく、40mN/m以下が更に好ましい。表面エネルギーの下限は、特に制限されず、0mN/m以上であればよい。中でも、0mN/m以上60mN/m以下がより好ましい。
[0039]
 ダイのリップ部の表面エネルギーは、水及びヨウ化メチレンとの接触角よりFowkes-Owensの式を用いて算出される値である。接触角は、協和界面科学株式会社の接触角計CA-Xを用いて25℃にて測定される。
[0040]
 上記の表面エネルギーは、例えば、リップ部を形成する素材として、硬質クロムめっき(HCr)、炭化タングステン(タングステンカーバイド;WC)、ダイヤモンドライクカーボン、又はウルトラクロムめっきを用いることにより好適に調整することができる。
[0041]
-ダイのリップ部の吐出口端部の輝線幅-
 ダイのリップ部の吐出口端部の輝線幅は、ダイラインの発生をより効果的に防ぐ観点から、10μm以下であることが好ましく、7μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。
 輝線幅が小さくなることによりリップ部に樹脂が付着しにくくなる。そのため、メヤニの発生が抑制され、結果、ダイラインの発生が更に抑制されると考えられる。
[0042]
〔キャスティングロール、タッチロール〕
 ダイより吐出された膜状溶融樹脂は、キャスティングロール上で冷却固化され、シート状に成膜される。
 キャスティングロールにシート状に溶融樹脂が供給される場合、キャスティングロールの表面への膜状溶融樹脂の密着性を高めることが好ましい。キャスティングロールと膜状溶融樹脂との間の密着性は、静電印加法、エアーナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、又はタッチロール法等の方法により行える。中でも、タッチロール法による方法が好ましい。
 タッチロール法を用いた場合、キャスティングロールとタッチロールとの間に膜状溶融樹脂を挟み込む際に溶融樹脂が大きく引っ張られるため、メヤニの付着が起こりやすいことが推定される。そのため、タッチロール法を用いた場合において、本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法による効果、即ち、ダイラインの発生が飛躍的に抑制される効果が奏されやすい。タッチロール法は、キャスティングロール上にタッチロールを配置し、溶融樹脂の表面を成形する方法である。タッチロールは、通常の剛性の高いロールではなく、弾性を有するロールが好ましい。
[0043]
 タッチロールの温度は、樹脂のガラス転移温度(Tg)-10℃を超え、かつ、樹脂のTg+30℃以下の範囲が好ましく、より好ましくは、樹脂のTg-7℃以上樹脂のTg+20℃以下であり、さらに好ましくは、樹脂のTg-5℃以上樹脂のTg+10℃以下である。
 キャスティングロールの温度も、上記と同様の温度域が好ましい。
[0044]
 タッチロールとしては、例えば、特開平11-314263号公報、特開平11-235747号公報に記載のタッチロールを利用できる。
[0045]
 また、複数本のキャスティングロールを用いて徐冷することがより好ましい。複数のキャスティングロールを用いる場合、後述する引き取り開始工程においては、タッチロールは最上流側(ダイに近い方)の最初の冷却ロールに接触させて配置する。例えば、3本のキャスティングロールを用いる方法が挙げられるが、この限りではない。
[0046]
 各ロールの直径は、50mm~5000mmが好ましく、より好ましくは100mm~2000mmであり、さらに好ましくは150mm~1000mmである。
 隣接するロールの間隔は、面間で0.3mm~300mmが好ましく、より好ましくは1mm~100mmであり、さらに好ましくは3mm~30mmである。
 また、キャスティングロールの最上流側のライン速度は20m/分以上70m/分以下であることが好ましい。
[0047]
 本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法により製造される未延伸フィルムの厚みとしては、用途等に応じて適宜選択すればよい。例えば、熱可塑性樹脂フィルムを光学用フィルムとして用いる場合は、機械的強度及び光透過性の観点から、厚みは20μm~250μmが好ましく、より好ましくは25μm~200μmであり、更に好ましくは30μm~180μmである。
[0048]
 図3に示す製膜装置は、あくまで本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に用いられる製膜装置の一例であり、本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法においては、この装置に限定されず、他の公知の製膜装置を使用することが可能である。
[0049]
 以下、本開示の熱可塑性樹脂の製造方法の各工程について、図面を参照しながら詳述する。
[0050]
-検査除去工程-
 本開示における検査除去工程は、ダイを加熱する前に、ダイから吐出される溶融樹脂の吐出方向(以下、「溶融樹脂吐出方向」ともいう。)における、ダイの吐出口端部と吐出口端部から3mm上流の位置との間の樹脂流路壁面に存在する、10μm以上の最大高さ及び100μm以上の最大幅の少なくとも一方を有する付着物(以下、「特定付着物」ともいう。)を検出し、検出された特定付着物を除去する。
 本工程では、ダイの加熱によりダイラインの発生を招来する異物の付着が抑える観点から、ダイの加熱開始前のダイの吐出口端部及びその近傍に存在する特定付着物の有無を検査し、検査により特定付着物が検出された場合は、特定付着物が存在しない状態にした後、溶融樹脂の吐出を開始して成膜する。一方、検査により特定付着物が検出されない場合は、除去すべき特定付着物が存在しないので、次の工程(例えばダイ加熱工程)に移行してよい。
 このように、ダイの吐出口端部の近傍にダイラインの発生原因となる特定付着物が存在しないように管理し、ダイラインの発生を安定的に防止する。
 本開示におけるダイの吐出口端部とは、ダイのリップ部の吐出口におけるエッジ部を指す。
[0051]
 ダイの吐出口端部から3mm上流の位置とは、ダイから溶融樹脂を吐出する際の溶融樹脂吐出方向における、ダイの吐出口の先端部から3mm上流に遡った位置を指す。
 したがって、ダイの吐出口端部と、吐出口端部から3mm上流の位置と、の間の樹脂流路壁面とは、例えば図4及び図5に示すTダイ12における距離qのリップ部28において、白抜矢印で表される膜状溶融樹脂の流れ方向(溶融樹脂吐出方向)における吐出端30と、リップ部28の距離qのうち、吐出端30から白抜矢印で表される膜状溶融樹脂の流れ方向の上流側に3mm遡った位置と、の間のリップ部28の内壁面を指す。
 上記の樹脂流路壁面は、ダイのリップ部のうち膜状溶融樹脂を吐出する吐出口の近傍に位置するため、樹脂流路壁面に特定付着物が存在していると、ダイラインが発生しやすく、上記の樹脂流路壁面における特定付着物が存在しない状態を保持することで、ダイラインの発生が安定的に防止される。
[0052]
 本工程では、ダイラインの発生要因となる特定付着物として、特に、最大高さが10μm以上の付着物、最大幅が100μm以上の付着物、又は最大高さが10μm以上であり、かつ、最大幅が100μm以上である付着物の有無を検査し、上記の付着物が検出された場合に除去する。これらの付着物がダイの吐出口端部及びその近傍に存在すると、ダイラインが顕著に発生しやすい。
 付着物の最大高さ及び最大幅が上記範囲であることは、大きいほど外観を著しく損なうダイラインが発生しやすいことによるものである。
 最大高さとは、溶融樹脂が流れる樹脂流路壁面と樹脂流路壁面から最も離れた付着物の部分との最大の距離を指す。
 最大幅とは、溶融樹脂が流れる樹脂流路壁面と平行方向の最大の長さを指す。
[0053]
 付着物の最大高さが10μm以上であると、図1~図2に示すように、凹みが深く、外観を損なうダイラインが形成されやすい。検出する付着物の最大高さは、凹みを浅くし、発生するダイラインの数を減らす観点から、5μm以上の範囲とすることがより好ましく、3μm以上の範囲とすることが更に好ましい。
 付着物の最大高さは、樹脂流路壁面に対して垂直にマイクロスコープVHX-900F(株式会社キーエンス製)を設置し、特定付着物を観察して測定される値である。
[0054]
 また、付着物の最大幅が100μm以上である場合も、外観を損なうダイラインが形成されやすい。検出する付着物の最大幅は、発生するダイラインの数を減らす観点から、50μm以上の範囲とすることがより好ましく、30μm以上の範囲とすることが更に好ましく、10μm以上の範囲とすることが更に好ましい。
 付着物の最大幅は、樹脂流路壁面に対して垂直にマイクロスコープVHX-900F(株式会社キーエンス製)を設置し、特定付着物を観察して測定される値である。
[0055]
 特定付着物の有無を検査する方法は、付着物が存在する場合に付着物の有無を検査することができればいずれの方法を採用してもよい。特定付着物の検査方法としては、例えば、特定付着物をダイの吐出口端部と吐出口端部から3mm上流の位置との間の樹脂流路壁面を目視観察により検査して付着物を検出する方法、樹脂流路壁面の撮像イメージを目視観察により検査して付着物を検出する方法、又は樹脂流路壁面の撮像イメージを画像処理し、画像処理データを特定付着物が存在しない基準データと比較することにより検査して付着物を検出する方法等であってもよい。
[0056]
 検出された特定付着物を除去する方法は、特定付着物を除去できれば特に制限はなく、例えば、特定付着物を布又はブラシ等を用いて除去する方法等であってもよい。
[0057]
 本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法では、本工程を終えた後の樹脂流路壁面に存在する最大高さ10μm以上の特定付着物の個数はゼロ(個数0)である(即ち、特定付着物が全く存在しない)ことが好ましい。
 また、本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法では、本工程を終えた後の樹脂流路壁面に存在する最大幅100μm以上の特定付着物の個数はゼロ(個数0)である(即ち、特定付着物が全く存在しない)ことが好ましい。
 ダイのリップ部における樹脂流路壁面に上記のような特定付着物が全く存在しないように管理されるので、ダイラインの発生を安定的に防ぐことが可能になる。
[0058]
-ダイ加熱工程-
 本開示におけるダイ加熱工程は、ダイを加熱する。
 本開示の熱可塑性樹脂の製造方法では、ダイラインの発生が懸念される異物等の付着物が検出されないか、あるいは上記の検査除去工程を経た後、即ち、ダイラインの発生が懸念される異物等の付着物が存在しない状態とした後、ダイの温度を樹脂の溶融に必要とされる温度まで加熱する。加熱は、 装置に応じた常法により行えばよい。
[0059]
 樹脂の溶融に必要とされる温度は、120℃~300℃の範囲が好適である。後述する樹脂を用いる場合、樹脂の溶融に必要とされる温度としては、250℃~300℃の範囲がより好ましい。
 上記の温度は、溶融押出機内で溶融混練される樹脂の温度に応じて適宜設定される。
[0060]
-吐出工程-
 本開示における吐出工程は、ダイラインの発生が懸念される異物等の付着物が検出されなかったダイ又は上記付着物が検出された場合は樹脂流路壁面に存在する付着物が除去されたダイから溶融樹脂として熱可塑性樹脂をシート状に吐出する。
 本開示の熱可塑性樹脂の製造方法では、上記の検査除去工程により樹脂流路壁面に存在する特定付着物が除去されたダイから溶融樹脂を吐出するので、特定付着物に起因したダイラインの発生を安定的に防止できる。
[0061]
 上記のように、溶融製膜を開始する際、あらかじめ検査除去工程を経てダイのリップ部における特定付着物の存在を解消した後に吐出工程に移行するが、ダイ加熱工程でダイの加熱を開始した後、次の吐出工程で溶融樹脂がリップ部を流通して吐出口端部から吐出されるまでの間に、溶融樹脂が到達していない、吐出口端部と吐出口端部から3mm上流の位置との間の樹脂流路壁面(リップ部の樹脂流路壁面)に、特定付着物が付着する懸念がある。ダイの加熱開始後において付着した特定付着物も、ダイラインの発生要因となり得るものである。
 そのため、吐出工程での溶融樹脂の吐出は、ダイの吐出口端部及び吐出口端部の溶融樹脂吐出方向の下流における樹脂流通路の一部を含む空間が仕切部材で仕切られた状態で行われることが好ましい。
 吐出口端部及びリップ部の樹脂流路が、大気(外部空間内の雰囲気)に容易に曝されなくなるので、ダイの加熱開始後の一定時間内に特定付着物が付着するのをより抑制することができる。これにより、ダイラインの発生をより安定的に防止することができる。
[0062]
 仕切部材は、ダイの吐出口端部、及び吐出口端部の溶融樹脂吐出方向の下流における樹脂流通路の一部を少なくとも含む空間と、他の空間と、の間を仕切り、少なくとも吐出口端部及び上記樹脂流通路が、他の空間内の雰囲気に容易に曝されないことが好ましい。
[0063]
 「仕切」とは、ダイの吐出口端部及び吐出口端部の溶融樹脂吐出方向の下流における樹脂流通路の一部を少なくとも含む空間と、他の空間と、の間を隔てて区画することを指し、上記の吐出口端部及び樹脂流通路の一部を少なくとも含む空間内の雰囲気と、他の空間内の雰囲気と、が雰囲気間で互いに流通しない完全な遮断状態とされてもよいが、必ずしも完全な遮断状態が形成されていなくてもよい。
 したがって、仕切部材としては、ダイの吐出口端部及び吐出口端部の溶融樹脂吐出方向の下流における樹脂流通路の一部を少なくとも含む空間と、他の空間と、の間を仕切るものであればよく、これにより他の空間内の雰囲気が容易に流入せず、少なくとも吐出口端部及び上記樹脂流通路を、仕切られた空間の外の雰囲気に容易に曝されない程度に区画されていればよい。
[0064]
 仕切部材の形状については、上記のように、少なくとも吐出口端部及び上記樹脂流通路が他の空間内の雰囲気に容易に曝されないように両空間を仕切ることができる形状を適宜選択することができる。
 仕切部材としては、例えば図6に示すように、両端が開口する筒形状に形成され、一端でTダイ12と接続される筒状の本体部14と、本体部14の他端の開口を閉塞する閉塞部材14Cと、からなる仕切部材22でもよい。図6は、仕切部材の一例を示す斜視図である。
 Tダイ12のリップ部の吐出口端部より吐出された膜状溶融樹脂100は、仕切部材22によって外部雰囲気との間が仕切られ、仕切部材22で仕切られた内部のあらかじめ定められた樹脂流通路を流通する。これにより、装置を起動し、ダイの加熱を開始した後、溶融樹脂がリップ部の吐出口端部に達し、かつ、溶融樹脂吐出方向における吐出口端部の上流のリップ部の樹脂流路が溶融樹脂で満たされるまでの間に、吐出口端部及び吐出口端部の上流のリップ部の樹脂流路に特定付着物が存在することになる現象を回避することができる。
[0065]
 仕切部材22の本体部14は、樹脂流通路を含む平面を境に互いに対称構造をなす二つの部材を組み合わせて作製されている。
 膜状溶融樹脂が吐出され、ダイの加熱開始から次第にダイの吐出口端部及び吐出口端部上流のリップ部の樹脂流路が溶融樹脂で満たされると、仕切部材は不要となる。その際、仕切部材22は、閉塞部材14Cが取り除かれた後、本体部14Aと本体部14Bとを二分割することで容易に取り外すことが可能である。
[0066]
 仕切部材の他の例として、樹脂流通路を含む平面を境に二分割された対象構造の二つの部材のみが組み合わせられた部材も用いることができる。
[0067]
 仕切部材は、いずれの材質を使用して作製されてもよく、例えば、樹脂材料、金属材料等が挙げられる。
 仕切部材は、溶融樹脂の温度で変形しない耐熱性を有しており、かつ、膜状溶融樹脂の吐出後に取り外しやすく、ダイのリップ部を傷付け難い材質で作製されていることが好ましい。これらの点を考慮すると、仕切部材の材質は、耐熱性樹脂が好ましく、例えばポリイミド等はより好ましい。
[0068]
 仕切部材で仕切られた空間は、クリーン度がクラス100以下の範囲に維持されていることが好ましい。吐出工程は、ダイラインの発生をより安定的に防ぐ観点から、この状態で溶融樹脂を吐出する態様が好ましい。
[0069]
 クリーン度は、アメリカ連邦規格Fed. Std. 209Dで表される清浄度のことであり、1立方フィート(ft )中に含まれる0.5μm以上の微粒子数(個/ft )により6段階のクラスに分類される。具体的には、1ft 中の0.5μm以上の微粒子数を数え、1個以下の場合をクラス1とし、2個~10個の場合をクラス10とし、11個~100個の場合をクラス100とし、101個~1000個の場合をクラス1000とする。
 クリーン度は、パーティクルカウンター(MetOne237B、Beckman Coulter社製)を用い、仕切られた空間内の空気をサンプリングし、0.3μm以上の粒子数を測定して求められる。
 クリーン度としては、仕切部材で仕切られた空間内がクリーンであるほど塵埃付着が抑制される点で、クラス1又はクラス10がより好ましく、クラス1が更に好ましい。
[0070]
 仕切られた空間内は、酸素濃度が低いことが好ましい。
 空間内の酸素濃度を低下させることにより、樹脂の酸化劣化が抑制され、メヤニの発生が抑制され、ダイラインの発生がより抑制されると考えられる。
 酸素濃度は、仕切部材で仕切られた空間を不活性ガスで置換することによって調整されることが好ましい。
[0071]
 具体的には、仕切られた空間に不活性ガス供給口を設け、設けられた不活性ガス供給口から、不活性ガスが仕切られた空間に供給できるようになっていることが好ましい。
 仕切られた空間に設けられた不活性ガス供給口から不活性ガスを供給し、ダイの吐出口端部及び空間の内部を不活性ガスで置換し、空間内の酸素濃度を5000ppm以下に保持する工程(以下、「保持工程」ともいう。)を有していることが好ましい。
 空間内の酸素濃度は、ジルコニア式酸素濃度計にて求められる値であり、例えば、飯島電子工業株式会社の酸素分析計IS-700を用いて測定することができる。
[0072]
 ダイからの膜状溶融樹脂の吐出が継続的に行われる、いわゆる定常状態においては、溶融押出機からダイ吐出口まで酸素に触れることは少ないと考えられる。しかしながら、装置起動時において、ダイから樹脂の吐出を開始する際は、先頭の樹脂は酸素に触れて酸化されやすいため、樹脂が高粘化することでダイに付着しやすくなる。そのため、ダイの加熱開始から膜状溶融樹脂をダイの吐出口端部から吐出し始めるまでの間の酸素濃度を低下させることにより、ダイのリップ部における特定付着物の付着をより効果的に防止することができる。結果、ダイラインの発生を防止することができる。
 酸素濃度は低いほど良く、酸素濃度の下限には特に制限はないが、0%以上としてもよい。
 装置を起動する前に既にダイに付着していた付着物だけでなく、装置起動後における溶融樹脂の熱酸化劣化物の付着もダイラインの原因となる。したがって、溶融樹脂の熱酸化劣化を防ぐ観点から、吐出口端部に加え、吐出口端部から溶融樹脂吐出方向の上流の樹脂流路における酸素濃度を低下させることが効果的である。
 かかる観点から、酸素濃度としては、1000ppm以下がより好ましく、500ppm以下が更に好ましい。
[0073]
 保持工程は、図6~図7に示すように、仕切部材22の本体部14の不活性ガス供給口16に不活性ガス供給管18の一端を接続し、不活性ガス供給管18を通じて仕切部材22の内部の雰囲気を窒素ガスで置換することで酸素濃度を調製してもよい。
 なお、不活性ガス供給管18の他端は、不図示の窒素ガス供給源と連通されている。
[0074]
 更には、保持工程において、ダイの加熱開始から、ダイの吐出口端部及び溶融樹脂吐出方向における吐出口端部の上流のリップ部が溶融樹脂で満たされるまでの酸素濃度を5000ppm以下に保持することが好ましい。
 ダイの加熱開始後も、大気雰囲気下に置かれると付着物ができたり、付着物が酸素に触れて酸化されやすいために、特定付着物が形成されやすい環境にあるので、ダイの吐出口端部及び溶融樹脂吐出方向における吐出口端部の上流のリップ部が溶融樹脂で満たされて大気が触れない状況になるまで酸素濃度を低く抑えることで、特定付着物の付着に起因するダイラインの発生をより効果的に防止することができる。
[0075]
 不活性ガスを供給する場合、不活性ガスとしては、窒素ガス、二酸化炭素、又はアルゴンガス等の希ガス等を使用することができる。不活性ガスは、安価で取扱いやすい点で、窒素ガスがより好適である。
[0076]
 樹脂流通路の一部を含む空間を仕切る仕切部材は、ダイから溶融樹脂が吐出する前に設置環境の雰囲気と接して異物等の付着が生じないように空間内の雰囲気をクリーンに保持する役割を担うため、仕切部材は、ダイが加熱されて溶融樹脂がシート状に吐出された後には取り除かれることが好ましい。
[0077]
 仕切部材を取り除く方法は、仕切部材の材質、形状、大きさ等の条件により種々選択すればよい。仕切部材が、例えば図6~図7に示すように、樹脂流通路を含む平面を境に二分割された二つの部材を組み合わせた本体部14A、14Bと閉塞部材14Cとを有する部材である場合は、吐出口端部からシート状に吐出された膜状溶融樹脂をそのまま流通し、膜状溶融樹脂を仕切部材の閉塞部材14Cと接触させて、図8に示すように閉塞部材14Cを突き破ることで仕切部材の一部を取り除く態様でもよい。これにより、仕切部材によって仕切られた状態を開放することができる。
 この場合の閉塞部材は、薄手の樹脂フィルムが好ましく、融点が溶融樹脂の温度より低い樹脂のフィルムがより好ましい。閉塞部材の具体的な例として、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンのフィルムが挙げられる。閉塞部材として使用されるフィルムの厚みとしては、1μm~500μmの薄厚が好ましく、1μm~100μmの範囲がより好ましく、1μm~50μmの薄厚が更に好ましい。
[0078]
 また、仕切部材の材質によらず、樹脂流通路を含む平面を境に二分割された対象構造の二つの部材を組み合わせた仕切部材の場合は、吐出口端部から溶融樹脂を吐出した後の任意の時期に対象構造の二つの部材を互いに膜状溶融樹脂から離れる方向に離して二分割することによって取り外してもよい。
[0079]
 次に、本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に用いられる原料樹脂について略説する。
[0080]
 膜状溶融樹脂の製造に用いられる原料樹脂は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、製造するフィルムの用途に応じて選択すればよい。
 例えば、環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
 環状オレフィン樹脂のような、一般的に溶融粘度が高く、かつ、酸化されやすい樹脂においては、メヤニが発生しやすいと考えられる。
 本開示に係る熱可塑性樹脂フィルムの製造方法においては、これらの樹脂においても、メヤニの発生が抑制され、ダイラインの発生が抑制されるため、これらの樹脂を用いた場合に特に有用であると考えられる。
[0081]
-環状オレフィン樹脂-
 環状オレフィン樹脂は、環状オレフィン構造を有する重合体樹脂であり、環状オレフィン構造を有する重合体樹脂の例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)~(4)の水素化物などが挙げられる。
 環状オレフィン樹脂の例としては、下記一般式(II)で表される構成単位の少なくとも1種を含む付加(共)重合体である環状ポリオレフィン、及び必要に応じて下記一般式(I)で表される構成単位の少なくとも1種を含む付加(共)重合体である環状ポリオレフィンが挙げられる。また、下記一般式(III)で表される構成単位の少なくとも1種を含む付加(共)重合体である環状ポリオレフィンも好適である。
[0082]
[化1]



[0083]
 一般式(I)、(II)、及び(III)において、mは、0~4の整数を表し、R ~R は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基を表し、X ~X 及びY ~Y は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1~10の炭化水素基、-(CH COOR 11、-(CH OCOR 12、-(CH NCO、-(CH NO 、-(CH CN、-(CH CONR 1314、-(CH NR 1314、-(CH OZ、-(CH W、X とY 、X とY 、もしくはX とY から形成される(-CO) O、又は(-CO) NR 15を表す。
 R 11、R 12、R 13、R 14、及びR 15は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表し、Zは、炭化水素基又はハロゲンで置換された炭化水素基を表し、Wは、SiR 16 3-pを表す。nは、0~10の整数を表す。Dは、ハロゲン原子、-OCOR 16、又は-OR 16を表し、R 16は、炭素数1~10の炭化水素基を表し、pは、0~3の整数を表す。
[0084]
 X ~X 及びY ~Y の全部又は一部の置換基に分極性の大きい官能基を導入することにより、光学フィルムの厚さ方向レターデーション(Rth)を大きくし、面内レターデーション(Re)の発現性を大きくすることができる。Re発現性の大きなフィルムは、製膜過程で延伸することによりRe値を大きくすることができる。
[0085]
 ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10-7732号公報、特表2002-504184号公報、米国特許第2004/229157号明細書あるいは国際公開第2004/070463号等に開示されている。ノルボルネン系付加(共)重合体は、ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合することによって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン;ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。
 ノルボルネン系付加(共)重合体には、上市されている市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、三井化学株式会社のアペル(登録商標)シリーズ〔商品名;例えば、ガラス転移温度(Tg)の異なる、APL8008T(Tg:70℃)、APL6013T(Tg:125℃)、及びAPL6015T(Tg:145℃)等〕、ポリプラスチック株式会社のTOPAS8007、TOPAS6013、TOPAS6015等のペレット、並びにFerrania社のAppear3000などが挙げられる。
[0086]
 ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1-240517号、特開平7-196736号、特開昭60-26024号、特開昭62-19801号、特開2003-159767号、又は特開2004-309979号等の各公報に記載されるように、多環状不飽和化合物を付加重合又はメタセシス開環重合した後、水素添加することにより製造することができる。
 上記の一般式(III)で表される構成単位の少なくとも1種を含む付加(共)重合体(環状ポリオレフィン)において、R ~R は、水素原子又はメチル基が好ましく、X 及びY は、水素原子、塩素原子、又は-COOCH が好ましく、その他の基は適宜選択される。
[0087]
 上市されているノルボルネン系樹脂の例としては、JSR株式会社のアートン(Arton;登録商標)G、アートンF(商品名)等、並びに、日本ゼオン株式会社のゼオノア(Zeonor;登録商標)ZF14、ZF16、及びゼオネックス(Zeonex;登録商標)250、ゼオネックス280等、などが挙げられる。
[0088]
 また、本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法には、製造されるフィルムの用途に応じて、種々の添加剤(例えば、劣化防止剤、紫外線防止剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤等)を用いてもよい。これらは、固体でもよく油状物でもよい。
[0089]
 原料樹脂となる熱可塑性樹脂と、必要に応じて添加される添加剤は、溶融製膜に先立ち混合してペレット化することが好ましい。
 ペレット化を行うにあたり熱可塑性樹脂及び添加剤は事前に乾燥を行うことが好ましい。熱可塑性樹脂の乾燥を行う場合、乾燥方法としては、例えば、加熱炉内にて90℃で8時間以上加熱する方法等を用いることができるが、この限りではない。乾燥時の加熱温度及び加熱時間は、樹脂のガラス転移温度Tg又は融点などを考慮して選択すればよい
[0090]
 熱可塑性樹脂のペレット化に例えばベント式溶融押出機を用いることで、乾燥を代用することもできる。ペレット化を行う際、添加剤は、溶融押出機の途中にある原料投入口又はベント口から投入されてもよい。
[0091]
 ペレットは、例えば、断面積が1mm ~300mm であり、かつ、長さが1mm~30mmであるものが好ましく、断面積が2mm ~100mm であり、かつ、長さが1.5mm~10mmであるものがより好ましい。
[0092]
 ペレットは、製膜に先立って水分を減少させておくことが好ましい。ペレットの乾燥は、除湿風乾燥機を用いて行う方法が一般的である。但し、目的とする含水率が得られる方法であれば、特に制限はなく適宜選択した方法により行える。乾燥は、加熱、送風、減圧、攪拌などの手段を単独で又は組み合わせて用いることにより効率的に行うことが好ましい。さらに、乾燥ホッパーを断熱構造にしてもよい。
 ペレットの乾燥温度は、好ましくは0℃~200℃であり、さらに好ましくは40℃~180℃であり、特に好ましくは60℃~150℃である。
[0093]
 原料樹脂として用いる熱可塑性樹脂の含水率は、1.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が更に好ましい。
実施例
[0094]
 以下、本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法の一実施形態を実施例により更に具体的に説明する。但し、本開示の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、その主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[0095]
 なお、ダイのリップ部の表面エネルギーは、水及びヨウ化メチレンとの接触角よりFowkes-Owensの式を用いて算出した。接触角の測定には、協和界面科学株式会社のCA-Xを用い、25℃にて行った。
[0096]
(実施例1)
 図3に示す構造を有する製膜装置110を準備した。
 製膜装置110は、ダイ120を備えており、ダイ120として、図4~図5に示す構造を有するTダイ12を用いた。Tダイ12は、距離pの供給流路24の下流に幅10mmのマニホールド26を備え、溶融樹脂吐出方向のマニホールド26のさらに下流に、めっき加工処理によって硬質クロムめっき(HCr;表面エネルギー:52mN/m)が施された長さq、幅長10mmのリップ部28を備えている。マニホールド26では、フィルター118から送られた溶融樹脂を、図5に示す幅方向に拡げて溶融樹脂をシート状に成膜する。ここで、膜状溶融樹脂が得られる。
[0097]
 Tダイ12には、図6に示すように、仕切部材22が筒形状の本体部14の一端で取り付けられており、仕切部材22の本体部14の他端には、閉塞部材として厚み12μmのポリエチレンフィルム(ポリラップ(融点108℃)、宇部フィルム株式会社製)14Cが付設され、本体部14で仕切られた空間はポリエチレンフィルムで閉塞されている。仕切部材22により、Tダイ12の吐出口端部及び吐出口端部の溶融樹脂吐出方向の下流における樹脂流通路の一部を含む空間Rが形成されており、空間Rは外部雰囲気と区画されている。
 更に、仕切部材22には、窒素ガス供給管18の一端が接続されており、窒素ガスを仕切部材22で仕切られた空間R内に供給できるようになっている。窒素ガスが空間R内に供給されると、供給された窒素ガス分の雰囲気が空間R外に放出され、供給された窒素ガスによって空間R内の雰囲気は置換されるようになっている。
[0098]
 また、Tダイ12には、図示しないが、Tダイ12の吐出口端部の溶融樹脂吐出方向の下流における樹脂流路壁面に対して光軸が直交する向きにマイクロスコープVHX-900F(株式会社キーエンス製)が設置されている。
[0099]
 また、樹脂として、環状オレフィン系樹脂(COP;ARTON、JSR株式会社製のノルボルネン系樹脂)のペレット(以下、COPペレット)を用意し、このペレットを90℃で5時間予備乾燥させた。
[0100]
 上記の製膜装置110を用い、まず初めにマイクロスコープにより、Tダイ12の吐出口端部、及び吐出口端部と溶融樹脂吐出方向における吐出口端部から3mm上流の位置との間の樹脂流路壁面を観察した。マイクロスコープにより映し出される撮像を観察することによって、ダイの吐出口端部と吐出口端部から3mm上流の位置との間の樹脂流路壁面に存在する付着物の有無を確認し、付着物が見つかった場合、見つかった付着物の高さ及び幅長を計測することにより特定付着物の検出を行った。更に、検出された特定付着物は、ダイラインの発生要因となり得るため、スポンジ(スコッチブライト、株式会社3M製)を用いて擦り取ることにより除去した。この際、樹脂流路壁面に存在する付着物は最大高さが2μm未満の付着物のみであり、特定付着物は存在しないことを確認した(検査除去工程)。
 次いで、仕切部材22で仕切られた空間R内の雰囲気に対し、仕切部材内部の洗浄を行い、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ(JIS Z 8122規定:2000;以下同様)を通したクリーンエアーの封入を施すことにより、空間R内のクリーン度を1000クラスに保持した。
[0101]
 続いて、Tダイ12の加熱を開始し、Tダイを285℃に昇温した(ダイ加熱工程)。この際、空間Rの酸素濃度を、Tダイ12の吐出口端部及び溶融樹脂吐出方向における吐出口端部の上流のリップ部の樹脂流路が溶融樹脂で満たされるまで下記表1に示す値で保持した。
[0102]
 ダイの温度が285℃に到達した後、溶融押出機114に設けたホッパー112にCOPペレットを投入し、溶融押出機114にて、投入したCOPペレットを285℃で溶融した。溶融された樹脂は、ギアポンプ116に送られ、ギアポンプ116から送り出された溶融樹脂を、濾過精度5μmのリーフディスクフィルター118によって濾過した。
 リーフディスクフィルター118での濾過後、溶融樹脂をTダイ12に送り、Tダイ12より、温度122℃に設定されたキャストロール122上に溶融樹脂をシート状に吐出した(吐出工程)。
[0103]
 Tダイ12からの吐出を継続することにより、吐出された膜状溶融樹脂100がTダイ12に取り付けられた仕切部材22の底部に達すると、膜状溶融樹脂100がポリエチレンフィルム14Cに接触してポリエチレンフィルム14Cを貫通し、仕切部材22で仕切られた空間Rを開放した。その後、仕切部材22を取り外した。
 吐出された膜状溶融樹脂をキャストロール上で冷却した後、図示しない他のキャストロールを通過させることで、幅10mm、厚み100μmの長尺状のCOPフィルムを作製した。
[0104]
(測定、評価)
 上記の製造過程及び作製したCOPフィルムに対し、以下の測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表1に示す。
[0105]
-酸素濃度-
 空間R内の酸素濃度は、飯島電子工業株式会社の酸素分析計IS-700を用いて測定した。
[0106]
-クリーン度-
 仕切部材で仕切られた空間内の空気をサンプリングし、パーティクルカウンター(MetOne237B、Beckman Coulter社製)を用いて0.3μm以上の粒子数を測定し、1立方フィート(ft )中に含まれる0.5μm以上の微粒子数(個/ft )を求めた。そして、アメリカ連邦規格Fed. Std. 209Dに準拠した方法により、1立方フィート中の粒子数の値から各実施例のクリーン度をクラス1、10、100又は1000に分類した。
 なお、クリーン度のクラスは、0.5μm以上の微粒子数を数え、0.5μm以上の微粒子数が、1個以下の場合をクラス1とし、2個~10個の場合をクラス10とし、11個~100個の場合をクラス100とし、101個~1000個の場合をクラス1000とする。クリーン度のクラスは、数値が小さいほどクリーン度が高いことを示す。
[0107]
-ダイラインの発生-
 長尺状のCOPフィルムから幅10mm、長手方向300mmのサイズのフィルム片を切り出し、切り出したフィルム片を黒色机の上に載置した。蛍光灯下でフィルム片を観察し、フィルム片中のダイラインの本数を目視により数え、幅1m当たりに換算した本数を算出した。
 この際、レーザー顕微鏡VKX-150(株式会社キーエンス製)にて、ダイラインが観察された箇所のフィルム片の表裏の凹凸を測定し、凸形状の高さ又は凹形状の深さが1μmを超えるダイラインを「強ダイライン」とし、凸形状の高さ又は凹形状の深さが1μm以下のダイラインを「弱ダイライン」として、以下の評価基準にしたがって評価した。
 <評価基準>
 A:強ダイラインの本数が0本/1mであり、かつ、ダイラインの総数が5本/1m以下である。
 B:強ダイラインの本数が0本/1mであり、かつ、ダイラインの総数が15本/1m以下である。
 C:強ダイラインの本数が0本/1mであり、かつ、ダイラインの総数が25本/1m以下である。
 D:強ダイラインの本数が1本/1m以上、又はダイラインの総数が25本/1mよりも多い。
[0108]
(実施例2~3、比較例1)
 実施例1において、布による擦り取り方を変えて、検査除去工程後に残存して確認される付着物の最大高さ及び最大幅を、下記表1に示すように変化させたこと以外は、実施例1と同様にして、COPフィルムを作製し、さらに測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表1に示す。
[0109]
(比較例2)
 実施例1において、検査除去工程を施さなかったこと以外は、実施例1と同様にして、COPフィルムを作製し、さらに測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表1に示す。
[0110]
(実施例4~6)
 実施例1において、空間R内のクリーン度を、仕切部材内部の洗浄を強化し、HEPAフィルターを通したクリーンエアーの封入することによって下記表1に示すクリーン度にそれぞれ調整したこと以外は、実施例1と同様にして、COPフィルムを作製し、さらに測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表1に示す。
[0111]
(実施例7~8)
 実施例6において、検査除去工程後のダイ加熱工程に先立ち、不活性ガス供給口16に取り付けられた窒素ガス供給管18から空間R内に窒素ガスの供給を開始して空間R内の雰囲気を窒素ガスで置換し、空間R内の酸素濃度を下記表1に示す値に保持した後(保持工程)、Tダイ12の加熱を開始したこと以外は、実施例6と同様にして、COPフィルムを作製し、さらに測定及び評価を行った。
 この際、空間Rの酸素濃度を、Tダイ12の吐出口端部及び溶融樹脂吐出方向における吐出口端部の上流のリップ部の樹脂流路が溶融樹脂で満たされるまで下記表1に示す値で保持した。
 測定及び評価の結果を表1に示す。
[0112]
(実施例9~10)
 実施例8において、Tダイ12のリップ部の材質を、硬質クロムめっき(HCr;表面エネルギー:52mN/m)から、めっき加工処理されたウルトラクロムめっき(表面エネルギー:46mN/m)、又はタングステンカーバイド(WC;表面エネルギー:42mN/m)に代えたこと以外は、実施例8と同様にして、COPフィルムを作製し、さらに測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表1に示す。
[0113]
(比較例3)
 実施例10において、検査除去工程を施さなかったこと以外は、実施例10と同様にして、COPフィルムを作製し、さらに測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表1に示す。
[0114]
(実施例11~13)
 実施例1において、樹脂をCOPから下記表1に示す樹脂に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、COPフィルムを作製し、さらに測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表1に示す。
 なお、各樹脂の詳細は、以下の通りである。
・アクリル:アクリル樹脂(デルペット(登録商標)80N、旭化成株式会社)
・PC:ポリカーボネート(カリバー 300シリーズ、住化スタイロン株式会社)
・COC:環状オレフィン共重合樹脂(TOPAS(登録商標)6017、ポリプラスチックス株式会社)
[0115]
[表1]



[0116]
 表1に示すように、最大高さ又は最大幅が特定の値以上の特定付着物が除去された実施例では、いずれもダイラインの発生が抑制された。特に、ダイのリップ部における吐出口端部と吐出口端部から3mm上流の位置との間の樹脂流路壁面に存在する付着物の最大高さが5μm以下であり、かつ、最大幅が20μm以下であると、ダイラインの発生がより効果的に抑えられ、更には、樹脂流路壁面に存在する付着物の最大高さが2μm以下であり、かつ、最大幅が20μm以下である場合がダイラインの発生抑止の点で優れていた。
 また、付着物自体のみならず、ダイの吐出口端部及び溶融樹脂吐出方向における吐出口端部下流の樹脂流通路の一部を含む空間を仕切部材で仕切り、仕切られた空間内の雰囲気のクリーン度をクラス1に保持することが有効である。
[0117]
 2017年3月31日に出願された日本出願特願2017-071850の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
 本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

請求の範囲

[請求項1]
 ダイを加熱する前に、ダイから吐出される溶融樹脂の吐出方向における、ダイの吐出口端部と前記吐出口端部から3mm上流の位置との間の樹脂流路壁面に存在する、10μm以上の最大高さ及び100μm以上の最大幅の少なくとも一方を有する付着物の有無を検査し、前記付着物が検出された場合に検出された付着物を除去する工程と、
 樹脂流路壁面に存在する前記付着物が除去された前記ダイを加熱する工程と、
 加熱された前記ダイから溶融樹脂として熱可塑性樹脂をシート状に吐出する工程と、
を有する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[請求項2]
 前記吐出する工程は、ダイの吐出口端部と、前記溶融樹脂の吐出方向における前記吐出口端部の下流の樹脂流通路の一部と、を含む空間を仕切部材で仕切り、仕切られた前記空間のクリーン度をクラス100以下の範囲に維持した状態で前記溶融樹脂を吐出する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[請求項3]
 前記仕切部材が、厚みが1μm~500μmであり、かつ、溶融樹脂の温度より低い融点を有する樹脂フィルムである請求項2に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[請求項4]
 前記ダイを加熱する工程前に、更に、仕切られた前記空間に設けられた不活性ガス供給口から不活性ガスを供給し、前記空間の内部を不活性ガスで置換して酸素濃度を5000ppm以下に保持する工程を有する請求項2又は請求項3に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[請求項5]
 前記保持する工程は、前記ダイの吐出口端部及び前記溶融樹脂の吐出方向における前記吐出口端部の上流のリップ部の樹脂流路が溶融樹脂で満たされるまで前記酸素濃度を5000ppm以下に保持する、請求項4に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[請求項6]
 前記吐出する工程は、前記吐出口端部から吐出された前記溶融樹脂を接触させて前記仕切部材による仕切りを開放する、請求項2~請求項5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[請求項7]
 前記ダイのリップ部の表面エネルギーが0mN/m以上60mN/m以下である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[請求項8]
 前記ダイのリップ部の材質が、硬質クロムめっき、炭化タングステン、ダイヤモンドライクカーボン、及びウルトラクロムめっきから選択される材質である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[請求項9]
 前記吐出する工程は、シート状に吐出した熱可塑性樹脂をキャスティングロールとタッチロールとの間に挟み込んでシート状に成膜する請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]