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1. (WO2018179894) リチウムイオン二次電池
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明 細 書

発明の名称 リチウムイオン二次電池

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008   0009   0010   0011  

課題を解決するための手段

0012   0013   0014  

発明の効果

0015   0016   0017  

図面の簡単な説明

0018  

発明を実施するための形態

0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104  

符号の説明

0105  

請求の範囲

1   2   3  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : リチウムイオン二次電池

技術分野

[0001]
 本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。

背景技術

[0002]
 正極集電体、および正極集電体の表面に形成された正極合材層を有する正極と、負極集電体、および負極集電体の表面に形成された負極合材層を有する負極と、正極と負極との間に位置するセパレータと、非水電解液とを備えたリチウムイオン二次電池が知られている。
[0003]
 そのようなリチウムイオン二次電池において、例えば、エネルギー密度の向上や製造コストの低減のために、電極の合材層の厚みを厚くすることにより、単位電極面積当たりの容量を大きくする構成が考えられる。
[0004]
 しかしながら、合材層の厚みを厚くすると、電池の充放電時に、集電体に近い位置と比べて、セパレータに近い位置の活物質の使用頻度が高くなり、合材層内部での反応均一性が低下する。このため、電池の充放電サイクルが進行すると、セパレータに近い位置における活物質の劣化が進行し、電池のサイクル特性が悪化する。
[0005]
 このため、特許文献1には、合材層の厚み方向において、内部の構造を、外側表面部と比べて、高密度または低気孔率とすることによって、厚み方向の反応均一化を図った電極が記載されている。
[0006]
 また、特許文献2には、合材層の厚み方向において、セパレータに近い位置と比べて、集電体に近い位置における活物質粒子の比表面積を大きくすることによって、厚み方向の反応均一化を図った電極が記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特開平8-138650号公報
特許文献2 : 特開平11-25956号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 上述した特許文献1および特許文献2に記載の電極では、電極の複数の抵抗成分のうちの1つの抵抗成分について、セパレータに近い位置と比べて、集電体に近い位置の抵抗値が小さくなる構造としている。
[0009]
 しかしながら、電極には、複数の抵抗成分が存在するため、1つの抵抗成分のみについて、セパレータに近い位置と比べて、集電体に近い位置の抵抗値が小さくなるようにしただけでは、反応均一化の効果が限定されてしまう。
[0010]
 また、合材層内部での反応均一性の低下の主原因となっている抵抗成分は、電池の構造の違いなどによって異なるため、反応均一性の低下の主原因となっている抵抗成分とは異なる抵抗成分について、セパレータに近い位置と比べて、集電体に近い位置の抵抗値が小さくなるような構造としても、合材層内部での効果的な反応均一化を実現することはできない。
[0011]
 本発明は、上記課題を解決するものであり、電極の合材層の厚み方向における充放電反応の均一性を高めて、サイクル特性を向上させることができるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0012]
 本発明のリチウムイオン二次電池は、
 正極集電体、および前記正極集電体の表面に形成され、正極活物質を含む正極合材層を有する正極と、
 負極集電体、および前記負極集電体の表面に形成され、負極活物質を含む負極合材層を有する負極と、
 前記正極と前記負極との間に位置するセパレータと、
 非水電解液と、
を備え、
(1)前記正極および前記負極の少なくとも一方の電極に浸透する前記非水電解液中のリチウムイオンの拡散抵抗、
(2)前記正極および前記負極の少なくとも一方の電極に浸透する前記非水電解液のオーミック抵抗、
(3)前記正極合材層のオーミック抵抗、
(4)前記負極合材層のオーミック抵抗、
(5)前記正極活物質の表面における反応抵抗、
(6)前記負極活物質の表面における反応抵抗、
(7)前記正極合材層中のリチウムイオンの拡散抵抗、および、
(8)前記負極合材層中のリチウムイオンの拡散抵抗、
の8つの抵抗のうちの少なくとも3つの抵抗の抵抗値は、合材層の前記セパレータに近い位置と比べて集電体に近い位置の方が小さく、
 SOC0%から所定の上限電圧に達するまで1Cの電流で定電流充電を行ったときに、SOC0%のときの正極活物質中のリチウムイオン濃度を1.0としたときの、前記合材層の前記セパレータに近い位置と前記集電体に近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcが0.1以下であり、
 前記少なくとも3つの抵抗は、前記合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合に、前記8つの抵抗の中で抵抗値が大きい上位3つの抵抗を含み、
 前記合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合に、SOC0%から前記所定の上限電圧に達するまで1Cの電流で定電流充電を行ったときに、前記セパレータに近い位置と前記集電体に近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcが0.1より大きい、
ことを特徴とする。
[0013]
 前記少なくとも3つの抵抗のうちの1つの抵抗が、
  前記(1)の抵抗である場合には、前記合材層において、前記セパレータに近い位置と比べて前記集電体に近い位置の空隙率が低く、
  前記(2)の抵抗である場合には、前記合材層において、前記セパレータに近い位置と比べて前記集電体に近い位置の空隙率が低く、
  前記(3)の抵抗である場合には、前記正極合材層に含まれる導電助剤の含有量が、前記セパレータに近い位置と比べて前記正極集電体に近い位置の方が多く、
  前記(4)の抵抗である場合には、前記負極合材層に含まれる導電助剤の含有量が、前記セパレータに近い位置と比べて前記負極集電体に近い位置の方が多く、
  前記(5)の抵抗である場合には、前記正極合材層に含まれるバインダの含有量が、前記セパレータに近い位置と比べて前記正極集電体に近い位置の方が少なく、
  前記(6)の抵抗である場合には、前記負極合材層に含まれるバインダの含有量が、前記セパレータに近い位置と比べて前記集電体に近い位置の方が少なく、
  前記(7)の抵抗である場合には、前記正極活物質の粒径が、前記セパレータに近い位置と比べて前記正極集電体に近い位置の方が小さく、
  前記(8)の抵抗である場合には、前記負極活物質の粒径が、前記セパレータに近い位置と比べて前記負極集電体に近い位置の方が小さい構成としてもよい。
[0014]
 また、前記少なくとも3つの抵抗の抵抗値は、前記合材層の厚み方向において、前記セパレータに近い位置から前記集電体に近い位置へと近づくにつれて、少なくとも3段階以上で小さくなる構成としてもよい。

発明の効果

[0015]
 本発明によるリチウムイオン二次電池によれば、電極の合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合における上記(1)~(8)の8つの抵抗のうちの少なくとも3つの抵抗は、抵抗値が大きい上位3つの抵抗を含み、かつ、上記少なくとも3つの抵抗の抵抗値は、合材層のセパレータに近い位置と比べて集電体に近い位置の方が小さく、SOC0%から所定の上限電圧に達するまで1Cの電流で定電流充電を行ったときに、合材層のセパレータに近い位置と集電体に近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcが0.1以下である構造であることにより、合材層の厚み方向における充放電反応の均一性が向上し、局所的な劣化が抑制されるので、サイクル特性が向上する。
[0016]
 上記(1)~(8)の8つの抵抗の抵抗値は、電池の構造が異なると、それぞれ大きさが異なるが、本発明によるリチウムイオン二次電池によれば、少なくとも抵抗値が大きい上位3つの抵抗の抵抗値について、合材層のセパレータに近い位置と比べて集電体に近い位置の方が小さい構造とするので、合材層の厚み方向における充放電反応の均一性を効果的に向上させることができ、サイクル特性を効果的に向上させることができる。
[0017]
 また、電極の合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合に、SOC0%から所定の上限電圧に達するまで1Cの電流で定電流充電を行ったときの、セパレータに近い位置と集電体に近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcは0.1より大きいので、上記のように、少なくとも抵抗値が大きい上位3つの抵抗の抵抗値を、セパレータに近い位置と比べて集電体に近い位置の方が小さい構成とすることによる、サイクル特性の向上効果は大きい。

図面の簡単な説明

[0018]
[図1] 本発明の一実施の形態におけるリチウムイオン二次電池の断面図である。
[図2] 正極の構成を示す断面図である。
[図3] 負極の構成を示す断面図である。

発明を実施するための形態

[0019]
 以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに具体的に説明する。
[0020]
 以下では、セパレータを介して正極および負極を交互に複数積層して形成された積層体と、非水電解液とを外装体内に収容した構造のリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。
[0021]
 図1は、本発明の一実施の形態におけるリチウムイオン二次電池100の断面図である。このリチウムイオン二次電池100は、正極11と負極12がセパレータ13を介して交互に複数積層されることによって形成されている積層体10と、非水電解液14とがラミネートケース20内に収容された構造を有している。
[0022]
 外装体であるラミネートケース20は、一対のラミネートフィルム20aおよび20bの周縁部同士を熱圧着して接合することにより形成されている。
[0023]
 ラミネートケース20の一方端側からは、正極端子16aが外部に導出されており、他方端側からは、負極端子16bが外部に導出されている。複数の正極11は、リード線15aを介して、正極端子16aと接続されている。また、複数の負極12は、リード線15bを介して、負極端子16bと接続されている。
[0024]
 図2に示すように、正極11は、正極集電体21と、正極集電体21の両面に形成された正極合材層22とを有する。正極集電体21としては、例えば、アルミニウムなどの金属箔を用いることができる。正極合材層22は、正極活物質、バインダ、および導電助剤を含む。
[0025]
 図3に示すように、負極12は、負極集電体31と、負極集電体31の両面に形成された負極合材層32とを有する。負極集電体31としては、例えば、銅などの金属箔を用いることができる。負極合材層32は、負極活物質、バインダ、および導電助剤を含む。
[0026]
 本明細書では、正極合材層22および負極合材層32の主面と直交する方向、すなわち、正極11と負極12の積層方向を、厚み方向と呼ぶ。また、正極11と負極12を特定せずに、いずれか一方または両方の電極を説明する場合は、正極集電体21と負極集電体31とを区別せずに「集電体」と呼び、正極合材層22と負極合材層32とを区別せずに「合材層」と呼ぶ。
[0027]
 セパレータ13としては、リチウムイオン二次電池に使用可能な種々のセパレータを特に制約なく用いることができる。図1に示すセパレータ13は袋状の形状を有するが、シート状の形状を有するものであってもよいし、九十九折りの形状を有するものであってもよい。
[0028]
 非水電解液14もリチウムイオン二次電池に使用可能なものであれば、どのようなものであってもよく、既知の非水電解液を用いることができる。
[0029]
 本実施形態におけるリチウムイオン二次電池100は、下記の(1)~(8)の8つの抵抗のうちの少なくとも3つの抵抗の抵抗値は、セパレータ13に近い位置と比べて、集電体に近い位置の方が小さい。
(1)正極11および負極12の少なくとも一方の電極に浸透する非水電解液14中のリチウムイオンの拡散抵抗
(2)正極11および負極12の少なくとも一方の電極に浸透する非水電解液14のオーミック抵抗
(3)正極合材層22のオーミック抵抗
(4)負極合材層32のオーミック抵抗
(5)正極合材層22に含まれる正極活物質の表面における反応抵抗
(6)負極合材層32に含まれる負極活物質の表面における反応抵抗
(7)正極合材層22中のリチウムイオンの拡散抵抗
(8)負極合材層32中のリチウムイオンの拡散抵抗
[0030]
 ここで、上記少なくとも3つの抵抗は、電極の合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合に、8つの抵抗の中で抵抗値が大きい上位3つの抵抗を含む。
[0031]
 また、本実施形態におけるリチウムイオン二次電池100では、SOC(State of charge)0%から所定の上限電圧に達するまで、1Cの電流で定電流充電を行ったときに、上記少なくとも3つの抵抗の抵抗値がセパレータ13に近い位置と集電体に近い位置との間で異なる合材層において、SOC0%のときの正極活物質中のリチウムイオン濃度を1.0としたときの、上記セパレータ13に近い位置と、上記集電体に近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcは、0.1以下である。
[0032]
 また、本実施形態におけるリチウムイオン二次電池100において、上記少なくとも3つの抵抗の抵抗値がセパレータ13に近い位置と集電体に近い位置との間で異なる合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合において、SOC0%から所定の上限電圧に達するまで1Cの電流で定電流充電を行ったときに、当該合材層のセパレータ13に近い位置と集電体に近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcは、0.1より大きい。
[0033]
 ここで、上記少なくとも3つの抵抗の抵抗値がセパレータ13に近い位置と集電体に近い位置との間で異なる合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合において、SOC0%から所定の上限電圧に達するまで1Cの電流で定電流充電を行ったときに、当該合材層のセパレータ13に近い位置と集電体に近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcが0.1より大きい構造を有するリチウムイオン二次電池とは、例えば、合材層の厚みが比較的厚い構造や、単位電極面積当たりの容量が比較的大きい構造を有するリチウムイオン二次電池である。
[0034]
 ここで、本実施形態におけるリチウムイオン二次電池100において、上述した少なくとも3つの抵抗のうちの1つの抵抗が、「(1)正極11および負極12の少なくとも一方の電極に浸透する非水電解液14中のリチウムイオンの拡散抵抗」、または、「(2)正極11および負極12の少なくとも一方の電極に浸透する非水電解液14のオーミック抵抗」である場合には、当該電極の合材層の、セパレータ13に近い位置と比べて集電体に近い位置の空隙率が低い構成とすることにより、セパレータ13に近い位置と比べて、集電体に近い位置における、上記(1)または(2)の抵抗を小さくする。
[0035]
 また、上述した少なくとも3つの抵抗のうちの1つの抵抗が、「(3)正極合材層22のオーミック抵抗」である場合には、正極合材層22に含まれる導電助剤の含有量が、セパレータ13に近い位置と比べて正極集電体21に近い位置の方が多い構成とすることにより、セパレータ13に近い位置と比べて正極集電体21に近い位置における、正極合材層22のオーミック抵抗を小さくする。
[0036]
 また、上述した少なくとも3つの抵抗のうちの1つの抵抗が、「(4)負極合材層32のオーミック抵抗」である場合には、負極合材層32に含まれる導電助剤の含有量が、セパレータ13に近い位置と比べて負極集電体31に近い位置の方が多い構成とすることにより、セパレータ13に近い位置と比べて負極集電体31に近い位置における、負極合材層32のオーミック抵抗を小さくする。
[0037]
 また、上述した少なくとも3つの抵抗のうちの1つの抵抗が、「(5)正極活物質の表面における反応抵抗」である場合には、正極合材層22に含まれるバインダの含有量が、セパレータ13に近い位置と比べて正極集電体21に近い位置の方が少ない構成とすることにより、セパレータ13に近い位置と比べて正極集電体21に近い位置における、正極活物質の表面における反応抵抗を小さくする。
[0038]
 また、上述した少なくとも3つの抵抗のうちの1つの抵抗が、「(6)負極活物質の表面における反応抵抗」である場合には、負極合材層32に含まれるバインダの含有量が、セパレータ13に近い位置と比べて負極集電体31に近い位置の方が少ない構成とすることにより、セパレータ13に近い位置と比べて負極集電体31に近い位置における、負極活物質の表面における反応抵抗を小さくする。
[0039]
 また、上述した少なくとも3つの抵抗のうちの1つの抵抗が、「(7)正極合材層22中のリチウムイオンの拡散抵抗」である場合には、正極活物質の粒径が、セパレータ13に近い位置と比べて正極集電体21に近い位置の方が小さい構成とすることにより、セパレータ13に近い位置と比べて正極集電体21に近い位置における、正極合材層22中のリチウムイオンの拡散抵抗を小さくする。
[0040]
 また、上述した少なくとも3つの抵抗のうちの1つの抵抗が、「(8)負極合材層32中のリチウムイオンの拡散抵抗」である場合には、負極活物質の粒径が、セパレータ13に近い位置と比べて負極集電体31に近い位置の方が小さい構成とすることにより、セパレータ13に近い位置と比べて負極集電体31に近い位置における、負極合材層32中のリチウムイオンの拡散抵抗を小さくする。
[0041]
 <実施例>
 [正極]
 表1に示すa1~a6の6種類の正極を作製した。
[0042]
[表1]


[0043]
 まず初めに、正極a1の作製方法について説明する。正極a1は、正極合材層の厚み方向における構造が略均一である。
[0044]
 正極a1を作製するために、正極活物質として、平均粒径が15μmのコバルト酸リチウム(LCO)を、導電助剤としてアセチレンブラックを、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)をそれぞれ用意し、それらを、重量比でLCO:アセチレンブラック:PVdFが96:2:2となるように、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に分散させて、正極スラリーを作製した。
[0045]
 続いて、作製した正極スラリーを、ダイコーターを用いて、片面の目付が23.0mg/cm 2となるように、アルミニウム箔の両面に塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が16%となるように圧密化し、所定の形状になるように切断して、正極a1を作製した。
[0046]
 表1に示す正極a2~a6は、基本的には正極a1と同様の作製方法により作製することができるが、後述するように、正極合材層が三層構造であり、正極スラリーを3回塗布する必要がある。以下では、正極a1と異なる構造、および製造工程について、主に説明する。
[0047]
 正極a2は、正極合材層が、空隙率の異なる三層の構造を有する点で、正極a1と異なる。具体的には、正極a2の正極合材層の厚み方向において、集電体側に位置する第1層の空隙率は12%、中央に位置する第2層の空隙率は16%、セパレータ側に位置する第3層の空隙率は20%である。
[0048]
 そのような構造を実現するため、正極a1と同様の方法により正極スラリーを作製し、正極a1と比べて目付が1/3となるように、アルミニウム箔の両面に塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が12%となるように圧密化して、第1層を形成した。続いて、第1層の上から、上記正極スラリーを第1層と同じ厚さで塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が16%となるように圧密化して、第2層を形成した。最後に、第2層の上から、上記正極スラリーを第1層および第2層と同じ厚さで塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が20%となるように圧密化して、第3層を形成した。この後、所定の形状になるように切断して、正極a2を作製した。
[0049]
 正極a3は、正極合材層が、導電助剤の含有量の異なる三層の構造、すなわち、正極合材層に含まれる導電助剤の割合である導電助剤比の異なる三層の構造を有する点で、正極a1と異なる。具体的には、正極a3の正極合材層の厚み方向において、集電体側に位置する第1層の導電助剤比は2.5、中央に位置する第2層の導電助剤比は2.0、セパレータ側に位置する第3層の導電助剤比は1.5である。
[0050]
 そのような構造を実現するため、第1層、第2層および第3層を形成するための正極スラリーとして、LCO:アセチレンブラック:PVdFの重量比がそれぞれ、95.5:2.5:2、96:2:2、および、96.5:1.5:2となるものを用意した。そして、正極a1と比べてそれぞれの層の目付が1/3となるように、順に、第1層となる正極スラリーを塗布して乾燥、第2層となる正極スラリーを塗布して乾燥、第3層となる正極スラリーを塗布して乾燥させた後、圧密化して、正極a3を作製した。
[0051]
 正極a4は、正極合材層が、バインダの含有量の異なる三層の構造、すなわち、正極合材層に含まれるバインダの割合であるバインダ比の異なる三層の構造を有する点で、正極a1と異なる。具体的には、正極a4の正極合材層の厚み方向において、集電体側に位置する第1層のバインダ比は1.5、中央に位置する第2層のバインダ比は2.0、セパレータ側に位置する第3層のバインダ比は2.5である。
[0052]
 そのような構造を実現するため、第1層、第2層および第3層を形成するための正極スラリーとして、LCO:アセチレンブラック:PVdFの重量比がそれぞれ、96.5:2:1.5、96:2:2、および、95.5:2:2.5となるものを用意した。そして、正極a1と比べてそれぞれの層の目付が1/3となるように、順に、第1層となる正極スラリーを塗布して乾燥、第2層となる正極スラリーを塗布して乾燥、第3層となる正極スラリーを塗布して乾燥させた後、圧密化して、正極a4を作製した。
[0053]
 正極a5は、正極合材層が、平均粒径の異なる正極活物質をそれぞれ含む三層の構造を有する点で、正極a1と異なる。具体的には、正極a5の正極合材層の厚み方向において、集電体側に位置する第1層に含まれる正極活物質の平均粒径は10μm、中央に位置する第2層に含まれる正極活物質の平均粒径は15μm、セパレータ側に位置する第3層に含まれる正極活物質の平均粒径は20μmである。
[0054]
 そのような構造を実現するため、第1層、第2層および第3層を形成するための正極スラリーとして、平均粒径が10μmのコバルト酸リチウム(LCO)、平均粒径が15μmのコバルト酸リチウム(LCO)、および、平均粒径が20μmのコバルト酸リチウム(LCO)を含むものをそれぞれ用意した。そして、正極a1と比べてそれぞれの層の目付が1/3となるように、順に、第1層となる正極スラリーを塗布して乾燥、第2層となる正極スラリーを塗布して乾燥、第3層となる正極スラリーを塗布して乾燥させた後、圧密化して、正極a5を作製した。
[0055]
 正極a6は、正極合材層が、空隙率およびバインダの含有量(バインダ比)の異なる三層の構造を有する点で、正極a1と異なる。具体的には、正極a6の正極合材層の厚み方向において、集電体側に位置する第1層の空隙率は12%、中央に位置する第2層の空隙率は16%、セパレータ側に位置する第3層の空隙率は20%であり、第1層のバインダ比は1.5、第2層のバインダ比は2.0、第3層のバインダ比は2.5である。
[0056]
 そのような構造を実現するため、第1層、第2層および第3層を形成するための正極スラリーとして、LCO:アセチレンブラック:PVdFの重量比がそれぞれ、96.5:2:1.5、96:2:2、および、95.5:2:2.5となるものを用意した。そして、第1層を形成するための正極スラリーを、正極a1と比べて目付が1/3となるように、アルミニウム箔の両面に塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が12%となるように圧密化して、第1層を形成した。続いて、第1層の上から、第2層を形成するための正極スラリーを第1層と同じ厚さで塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が16%となるように圧密化して、第2層を形成した。最後に、第2層の上から、第3層を形成するための正極スラリーを第1層および第2層と同じ厚さで塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が20%となるように圧密化して、第3層を形成した。この後、所定の形状になるように切断して、正極a6を作製した。
[0057]
 [負極]
 表2に示すb1~b6の6種類の負極を作製した。
[0058]
[表2]


[0059]
 まず初めに、負極b1の作製方法について説明する。負極b1は、負極合材層の厚み方向における構造が略均一である。
[0060]
 負極b1を作製するために、負極活物質として、平均粒径が10μmの人造黒鉛を、導電助剤として鱗片状黒鉛を、バインダとして、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)およびスチレンブタジエンゴム(SBR)をそれぞれ用意し、それらを、重量比で人造黒鉛:鱗片状黒鉛:(CMC+SBR)が96:1:3(=1.5+1.5)となるように、水中に分散させて、負極スラリーを作製した。
[0061]
 続いて、作製した負極スラリーを、ダイコーターを用いて、片面の目付が12.1mg/cm 2となるように、銅箔の両面に塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が25%となるように圧密化し、所定の形状になるように切断して、負極b1を作製した。
[0062]
 表2に示す負極b2~b6は、基本的には負極b1と同様の作製方法により作製することができるが、後述するように、負極合材層が三層構造であり、負極スラリーを3回塗布する必要がある。以下では、負極b1と異なる構造、および製造工程について、主に説明する。
[0063]
 負極b2は、負極合材層が、空隙率の異なる三層の構造を有する点で、負極b1と異なる。具体的には、負極b2の負極合材層の厚み方向において、集電体側に位置する第1層の空隙率は20%、中央に位置する第2層の空隙率は25%、セパレータ側に位置する第3層の空隙率は30%である。
[0064]
 そのような構造を実現するため、負極b1と同様の方法により負極スラリーを作製し、負極b1と比べて目付が1/3となるように、銅箔の両面に塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が20%となるように圧密化して、第1層を形成した。続いて、第1層の上から、上記負極スラリーを第1層と同じ厚さで塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が25%となるように圧密化して、第2層を形成した。最後に、第2層の上から、上記負極スラリーを第1層および第2層と同じ厚さで塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が30%となるように圧密化して、第3層を形成した。この後、所定の形状になるように切断して、負極b2を作製した。
[0065]
 負極b3は、負極合材層が、導電助剤の含有量、すなわち、導電助剤比の異なる三層の構造を有する点で、負極b1と異なる。具体的には、負極b3の負極合材層の厚み方向において、集電体側に位置する第1層の導電助剤比は1.5、中央に位置する第2層の導電助剤比は1.0、セパレータ側に位置する第3層の導電助剤比は0.5である。
[0066]
 そのような構造を実現するため、第1層、第2層および第3層を形成するための負極スラリーとして、人造黒鉛:鱗片状黒鉛:(CMC+SBR)の重量比がそれぞれ、95.5:1.5:3、96:1:3、および、96.5:0.5:3となるものを用意した。そして、負極b1と比べてそれぞれの層の目付が1/3となるように、順に、第1層となる負極スラリーを塗布して乾燥、第2層となる負極スラリーを塗布して乾燥、第3層となる負極スラリーを塗布して乾燥させた後、圧密化して、負極b3を作製した。
[0067]
 負極b4は、負極合材層が、バインダの含有量、すなわち、バインダ比の異なる三層の構造を有する点で、負極b1と異なる。具体的には、負極b4の負極合材層の厚み方向において、集電体側に位置する第1層のバインダ比は2.0、中央に位置する第2層のバインダ比は3.0、セパレータ側に位置する第3層のバインダ比は4.0である。
[0068]
 そのような構造を実現するため、第1層、第2層および第3層を形成するための負極スラリーとして、人造黒鉛:鱗片状黒鉛:(CMC+SBR)の重量比がそれぞれ、97:1:2、96:1:3、および、95:1:4となるものを用意した。そして、負極b1と比べてそれぞれの層の目付が1/3となるように、順に、第1層となる負極スラリーを塗布して乾燥、第2層となる負極スラリーを塗布して乾燥、第3層となる負極スラリーを塗布して乾燥させた後、圧密化して、負極b4を作製した。
[0069]
 負極b5は、負極合材層が、平均粒径の異なる負極活物質をそれぞれ含む三層の構造を有する点で、負極b1と異なる。具体的には、負極b5の負極合材層の厚み方向において、集電体側に位置する第1層に含まれる負極活物質の平均粒径は7μm、中央に位置する第2層に含まれる負極活物質の平均粒径は10μm、セパレータ側に位置する第3層に含まれる負極活物質の平均粒径は13μmである。
[0070]
 そのような構造を実現するため、第1層、第2層および第3層を形成するための負極スラリーとして、平均粒径が7μmの人造黒鉛、平均粒径が10μmの人造黒鉛、および、平均粒径が13μmの人造黒鉛を含むものをそれぞれ用意した。そして、負極b1と比べてそれぞれの層の目付が1/3となるように、順に、第1層となる負極スラリーを塗布して乾燥、第2層となる負極スラリーを塗布して乾燥、第3層となる負極スラリーを塗布して乾燥させた後、圧密化して、負極b5を作製した。
[0071]
 負極b6は、負極合材層が、空隙率およびバインダ比の異なる三層の構造を有する点で、負極b1と異なる。具体的には、負極b6の負極合材層の厚み方向において、集電体側に位置する第1層の空隙率は20%、中央に位置する第2層の空隙率は25%、セパレータ側に位置する第3層の空隙率は30%であり、第1層のバインダ比は2.0、第2層のバインダ比は3.0、第3層のバインダ比は4.0である。
[0072]
 そのような構造を実現するため、第1層、第2層および第3層を形成するための負極スラリーとして、人造黒鉛:鱗片状黒鉛:(CMC+SBR)の重量比がそれぞれ、97:1:2、96:1:3、および、95:1:4となるものを用意した。そして、第1層を形成するための負極スラリーを、負極b1と比べて目付が1/3となるように、銅箔の両面に塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が20%となるように圧密化して、第1層を形成した。続いて、第1層の上から、第2層を形成するための負極スラリーを第1層と同じ厚さで塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が25%となるように圧密化して、第2層を形成した。最後に、第2層の上から、第3層を形成するための負極スラリーを第1層および第2層と同じ厚さで塗布して乾燥させた後、ロールプレス機を用いて空隙率が30%となるように圧密化して、第3層を形成した。この後、所定の形状になるように切断して、負極b6を作製した。
[0073]
 [セル]
 上述した方法により作製した正極と負極を、セパレータを介して交互に複数枚積層し、全ての正極を束ねて正極タブに溶着するとともに、全ての負極を束ねて負極タブに溶着した後、アルミラミネートカップに入れた。そして、アルミラミネートカップ内に、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で25:75の割合で混合した溶媒に、溶媒1リットル当たり1molの6フッ化燐酸リチウム(LiPF )を溶解した有機電解液を注液した。
[0074]
 その後、アルミラミネートカップに対して仮の真空シールを行った後、0.2CAで充放電を行い、充放電により発生したガスをアルミラミネートカップの外に放出し、その後、真空本シールを行うことによって、容量が2Ahのセルを作製した。そして、作製したセルを、SOC70%まで充電して、55℃で24時間、エージング処理を行い、表3に示す試料番号1~9のセルを作製した。
[0075]
[表3]


[0076]
 なお、表3において、試料番号に*を付したセル、すなわち、試料番号1~8のセルは、本発明の要件を満たさないセルである。また、試料番号に*を付していない試料番号9のセルは、本発明の要件を満たしているセルである。
[0077]
 ここで、CD-adapco製の電池シミュレータ「Battery Design Studio」を用いて、充放電時のCレート依存性や温度依存性などの電池特性が実測値と合うように、拡散係数、交換電流、活性化エネルギー、導電率、トーチュオシティなどの各種パラメータを変更してフィッティングを行うことにより、本電池系のシミュレーションモデルを作成した。
[0078]
 そして、試料番号1のセルについて、作成したシミュレーションモデルを用いて、1Cの電流で充電したときの各種抵抗、すなわち、上記(1)~(8)の抵抗の抵抗値を求め、全体の抵抗値に対する、その抵抗の抵抗値の割合である抵抗寄与率を求めた。なお、試料番号1のセルは、正極a1と負極b1とを用いて作製したセルであり、正極a1の正極合材層および負極b1の負極合材層の厚み方向における構造が略均一である。
[0079]
 上記(1)~(8)の抵抗の抵抗寄与率は、それぞれ、以下の通りである。なお、抵抗寄与率は、小数点以下を四捨五入している。また、抵抗寄与率の後に記載している括弧の中の数字は、抵抗寄与率を大きい方から並べたときの順位を表している。
(1)非水電解液中のリチウムイオンの拡散抵抗:12%(3)
(2)非水電解液のオーミック抵抗:5%(4)
(3)正極合材層のオーミック抵抗:0%(6)
(4)負極合材層のオーミック抵抗:0%(8)
(5)正極活物質の表面における反応抵抗:32%(2)
(6)負極活物質の表面における反応抵抗:50%(1)
(7)正極合材層中のリチウムイオンの拡散抵抗:0%(7)
(8)負極合材層中のリチウムイオンの拡散抵抗:1%(5)
[0080]
 表3において、試料番号2のセルは、「(1)非水電解液中のリチウムイオンの拡散抵抗」、および、「(2)非水電解液のオーミック抵抗」を低減するために、正極a2と負極b2とを用いて作製したセルであり、正極a2の正極合材層および負極b2の負極合材層において、セパレータに近い位置と比べて集電体に近い位置の空隙率が低い。
[0081]
 試料番号3のセルは、「(3)正極合材層のオーミック抵抗」を低減するために、正極a3と負極b1とを用いて作製したセルであり、正極a3の正極合材層に含まれる導電助剤の含有量は、セパレータに近い位置と比べて、正極集電体に近い位置の方が多い。
[0082]
 試料番号4のセルは、「(4)負極合材層のオーミック抵抗」を低減するために、正極a1と負極b3とを用いて作製したセルであり、負極b3の負極合材層に含まれる導電助剤の含有量は、セパレータに近い位置と比べて、負極集電体に近い位置の方が多い。
[0083]
 試料番号5のセルは、「(5)正極活物質の表面における反応抵抗」を低減するために、正極a4と負極b1とを用いて作製したセルであり、正極a4の正極合材層に含まれるバインダの含有量は、セパレータに近い位置と比べて、正極集電体に近い位置の方が少ない。
[0084]
 試料番号6のセルは、「(6)負極活物質の表面における反応抵抗」を低減するために、正極a1と負極b4とを用いて作製したセルであり、負極b4の負極合材層に含まれるバインダの含有量は、セパレータに近い位置と比べて、負極集電体に近い位置の方が少ない。
[0085]
 試料番号7のセルは、「(7)正極合材層中のリチウムイオンの拡散抵抗」を低減するために、正極a5と負極b1とを用いて作製したセルであり、正極a5の正極合材層に含まれる正極活物質の粒径は、セパレータに近い位置と比べて、正極集電体に近い位置の方が小さい。
[0086]
 試料番号8のセルは、「(8)負極合材層中のリチウムイオンの拡散抵抗」を低減するために、正極a1と負極b5とを用いて作製したセルであり、負極b5の負極合材層に含まれる負極活物質の粒径は、セパレータに近い位置と比べて、負極集電体に近い位置の方が小さい。
[0087]
 試料番号9のセルは、上記(1)~(8)の8つの抵抗のうち、抵抗値が大きい上位3つの抵抗、すなわち、(6)、(5)、および、(1)の抵抗を低減するために、正極a6と負極b6とを用いて作製したセルである。試料番号9のセルでは、正極a6の正極合材層および負極b6の負極合材層において、セパレータに近い位置と比べて集電体に近い位置の空隙率が低く、かつ、合材層に含まれるバインダの含有量は、セパレータに近い位置と比べて集電体に近い位置の方が少ない。 
[0088]
 また、上記シミュレータを用いて、試料番号1~9の各セルについて、SOC0%から所定の上限電圧まで、1Cの電流で定電流充電を行ったときに、SOC0%のときの正極活物質中のリチウムイオン濃度を1.0としたときの、負極のセパレータに近い位置と、負極集電体に近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcを求めた。このリチウムイオン濃度の差Δcは、負極合材層において、負極のセパレータに近い位置におけるリチウムイオン濃度から、負極集電体に近い位置におけるリチウムイオン濃度を減算することにより求められる。表3では、試料番号1~9の各セルについて、求めたリチウムイオン濃度の差Δcも示している。
[0089]
 なお、リチウムイオン濃度の差Δcを負極で求めたのは、この実施例におけるセルでは、正極よりも負極の方が、リチウムイオン濃度の差Δcが大きかったからである。したがって、負極よりも正極の方が、リチウムイオン濃度の差Δcが大きいセルでは、リチウムイオン濃度の差Δcを正極で求めるようにしてもよい。
[0090]
 また、試料番号1~9の各セルについて、エージング処理後のセルを、45℃、0.7Cの電流で、3.00V以上4.35V以下の電圧範囲でのフル充放電を200サイクル繰り返した後の容量維持率を測定した。表3では、試料番号1~9の各セルについて、求めた容量維持率も示している。なお、容量維持率の目標値は85%である。
[0091]
 上述したように、試料番号2~8のセルでは、上記(1)~(8)の抵抗のうちのいずれかの抵抗を低減するための構造を有することにより、正極合材層および負極合材層の厚み方向における構造が略均一である試料番号1のセルと比べて、電極の集電体に近い位置とセパレータに近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcは基本的に小さくなり、容量維持率は高くなった。特に、抵抗寄与率が大きい抵抗を低減するための構造を有するセル、すなわち、試料番号6および5のセルでは、容量維持率がそれぞれ71%および67%と高くなった。
[0092]
 しかしながら、試料番号2~8のセルはいずれも、容量維持率が85%未満であり、目標値に届いていない。
[0093]
 これに対して、試料番号9のセルは、合材層の集電体に近い位置とセパレータに近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcが0.08で、0.1以下であり、容量維持率も目標値以上である89%となった。
[0094]
 この試料番号9のセルは、上述したように、上記(1)~(8)の8つの抵抗のうち、抵抗値が大きい上位3つの抵抗、すなわち、(6)、(5)、および、(1)の抵抗を低減するために、正極合材層および負極合材層ともに、セパレータに近い位置と比べて集電体に近い位置の空隙率が低く、かつ、合材層に含まれるバインダの含有量は、セパレータに近い位置と比べて、集電体に近い位置の方が少ない構造を有するセルである。すなわち、試料番号9のセルでは、抵抗値が大きい上位3つの抵抗、すなわち、(6)、(5)、および、(1)の抵抗の抵抗値は、合材層のセパレータに近い位置と比べて集電体に近い位置の方が小さい。
[0095]
 また、試料番号9のセルにおいて、電極の合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合のセルは、試料番号1のセルに対応し、この試料番号1のセルの上記リチウムイオン濃度の差Δcは0.21であって、0.1より大きい。
[0096]
 すなわち、試料番号9のセルは、「(1)正極および負極の少なくとも一方の電極に浸透する非水電解液中のリチウムイオンの拡散抵抗、(2)正極および負極の少なくとも一方の電極に浸透する非水電解液のオーミック抵抗、(3)正極合材層のオーミック抵抗、(4)負極合材層のオーミック抵抗、(5)正極活物質の表面における反応抵抗、(6)負極活物質の表面における反応抵抗、(7)正極合材層中のリチウムイオンの拡散抵抗、および、(8)負極合材層中のリチウムイオンの拡散抵抗、の8つの抵抗のうちの少なくとも3つの抵抗の抵抗値は、合材層のセパレータに近い位置と比べて集電体に近い位置の方が小さく、SOC0%から所定の上限電圧に達するまで1Cの電流で定電流充電を行ったときに、SOC0%のときの正極活物質中のリチウムイオン濃度を1.0としたときの、合材層のセパレータに近い位置と集電体に近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcが0.1以下であり、上記少なくとも3つの抵抗は、合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合に、上記8つの抵抗の中で抵抗値が大きい上位3つの抵抗を含み、合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合に、SOC0%から所定の上限電圧に達するまで1Cの電流で定電流充電を行ったときに、セパレータに近い位置と集電体に近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcが0.1より大きい」という本発明の要件を満たすセルである。
[0097]
 なお、「電極の合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合に、SOC0%から所定の上限電圧に達するまで1Cの電流で定電流充電を行ったときに、セパレータに近い位置と集電体に近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcが0.1より大きい」という要件を満たすか否かは、合材層の構造を調べ、上述した電池シミュレータを用いて、合材層の厚み方向における構造を略均一とする条件でシミュレーションを行うことにより、判断することができる。
[0098]
 また、電極の合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合の、抵抗値が大きい上位3つの抵抗についても、上記電池シミュレータを用いて調べることができる。
[0099]
 本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
[0100]
 例えば、上述した実施形態では、セパレータを介して正極および負極を交互に複数積層して形成される積層体と、非水電解液とを外装体内に収容した構造のリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明したが、本発明によるリチウムイオン二次電池の構造が上記構造に限定されることはない。例えば、リチウムイオン二次電池は、セパレータを介して積層された正極および負極を巻回して形成される巻回体と、非水電解液とを外装体内に収容した構造であってもよい。また、外装体は、ラミネートケースではなく、金属缶であってもよい。
[0101]
 上述した実施例では、上記(1)~(8)の8つの抵抗のうち、抵抗値が大きい上位3つの抵抗の抵抗値が、合材層のセパレータに近い位置と比べて、集電体に近い位置の方が小さい構成としたが、さらに、抵抗値の大きさが4位以下の抵抗についても、合材層のセパレータに近い位置と比べて、集電体に近い位置の方が小さい構成としてもよい。
[0102]
 上述した実施例では、「(1)非水電解液中のリチウムイオンの拡散抵抗」、および、「(2)非水電解液のオーミック抵抗」を低減するために、正極合材層および負極合材層において、セパレータに近い位置と比べて集電体に近い位置の空隙率が低い構成としたが、正極合材層および負極合材層のいずれか一方において、セパレータに近い位置と比べて集電体に近い位置の空隙率が低い構成としてもよい。
[0103]
 上述した実施例では、電極の合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合に、上記(1)~(8)の抵抗のうちの抵抗値が大きい3つの抵抗について、合材層のセパレータに近い位置、合材層の厚み方向における中央付近の位置、および、集電体に近い位置の順に、3段階で抵抗値が小さくなる構造とした。しかしながら、合材層を二層構造として、セパレータに近い位置と比べて、集電体に近い位置の方が、抵抗値が小さい構造としてもよい。
[0104]
 また、合材層を四層以上の構造として、合材層の厚み方向において、セパレータに近い位置から集電体に近い位置へと近づくにつれて、抵抗値が小さくなる構造としてもよい。この場合、抵抗値は段階的に小さくなるような構造としてもよいし、無段階で連続的に小さくなるような構造としてもよい。

符号の説明

[0105]
10  積層体
11  正極
12  負極
13  セパレータ
14  非水電解液
20  ラミネートケース
21  正極集電体
22  正極合材層
31  負極集電体
32  負極合材層
100 リチウムイオン二次電池

請求の範囲

[請求項1]
 正極集電体、および前記正極集電体の表面に形成され、正極活物質を含む正極合材層を有する正極と、
 負極集電体、および前記負極集電体の表面に形成され、負極活物質を含む負極合材層を有する負極と、
 前記正極と前記負極との間に位置するセパレータと、
 非水電解液と、
を備え、
(1)前記正極および前記負極の少なくとも一方の電極に浸透する前記非水電解液中のリチウムイオンの拡散抵抗、
(2)前記正極および前記負極の少なくとも一方の電極に浸透する前記非水電解液のオーミック抵抗、
(3)前記正極合材層のオーミック抵抗、
(4)前記負極合材層のオーミック抵抗、
(5)前記正極活物質の表面における反応抵抗、
(6)前記負極活物質の表面における反応抵抗、
(7)前記正極合材層中のリチウムイオンの拡散抵抗、および、
(8)前記負極合材層中のリチウムイオンの拡散抵抗、
の8つの抵抗のうちの少なくとも3つの抵抗の抵抗値は、合材層の前記セパレータに近い位置と比べて集電体に近い位置の方が小さく、
 SOC0%から所定の上限電圧に達するまで1Cの電流で定電流充電を行ったときに、SOC0%のときの正極活物質中のリチウムイオン濃度を1.0としたときの、前記合材層の前記セパレータに近い位置と前記集電体に近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcが0.1以下であり、
 前記少なくとも3つの抵抗は、前記合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合に、前記8つの抵抗の中で抵抗値が大きい上位3つの抵抗を含み、
 前記合材層の厚み方向における構造を略均一とした場合に、SOC0%から前記所定の上限電圧に達するまで1Cの電流で定電流充電を行ったときに、前記セパレータに近い位置と前記集電体に近い位置との間の固相中のリチウムイオン濃度の差Δcが0.1より大きい、
ことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
[請求項2]
 前記少なくとも3つの抵抗のうちの1つの抵抗が、
  前記(1)の抵抗である場合には、前記合材層において、前記セパレータに近い位置と比べて前記集電体に近い位置の空隙率が低く、
  前記(2)の抵抗である場合には、前記合材層において、前記セパレータに近い位置と比べて前記集電体に近い位置の空隙率が低く、
  前記(3)の抵抗である場合には、前記正極合材層に含まれる導電助剤の含有量が、前記セパレータに近い位置と比べて前記正極集電体に近い位置の方が多く、
  前記(4)の抵抗である場合には、前記負極合材層に含まれる導電助剤の含有量が、前記セパレータに近い位置と比べて前記負極集電体に近い位置の方が多く、
  前記(5)の抵抗である場合には、前記正極合材層に含まれるバインダの含有量が、前記セパレータに近い位置と比べて前記正極集電体に近い位置の方が少なく、
  前記(6)の抵抗である場合には、前記負極合材層に含まれるバインダの含有量が、前記セパレータに近い位置と比べて前記集電体に近い位置の方が少なく、
  前記(7)の抵抗である場合には、前記正極活物質の粒径が、前記セパレータに近い位置と比べて前記正極集電体に近い位置の方が小さく、
  前記(8)の抵抗である場合には、前記負極活物質の粒径が、前記セパレータに近い位置と比べて前記負極集電体に近い位置の方が小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
[請求項3]
 前記少なくとも3つの抵抗の抵抗値は、前記合材層の厚み方向において、前記セパレータに近い位置から前記集電体に近い位置へと近づくにつれて、少なくとも3段階以上で小さくなる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]