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1. (WO2018179197) 電動パワーステアリング装置
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明 細 書

発明の名称 電動パワーステアリング装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010  

発明の効果

0011   0012  

図面の簡単な説明

0013  

発明を実施するための形態

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128  

産業上の利用可能性

0129  

符号の説明

0130  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3A   3B   4   5   6   7A   7B   8   9A   9B   10  

明 細 書

発明の名称 : 電動パワーステアリング装置

技術分野

[0001]
 この発明は、電動機により車両の運転者の操舵トルクを補助するアシストトルクを発生するようにした電動パワーステアリング装置に関し、更に詳しくは、電動機を制御する制御ユニットにフェールセーフ機能を備えるようにした電動パワーステアリング装置に関するものである。

背景技術

[0002]
 周知のように、電動機により車両の運転者の操舵トルクを補助するアシストトルクを発生するようにした電動パワーステアリング装置は、各種のセンサからの信号に基づいて電動機を制御するように構成されている。
[0003]
 従来、センサの異常時に制御の継続を確保するためのバックアップ制御手段を備え、センサの検出値の1種類に異常が生じていると判断された場合に、バックアップ制御手段により異常が生じている値を除く他の値を用いて電動機を制御するようにした電動パワーステアリング装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
[0004]
 特許文献1に開示された従来の電動パワーステアリング装置は、センサによる検出値の1種類に異常が生じたときには異常が生じている値を除く他の値を用いて正常時とは異なるバックアップ制御を行って電動機の制御を継続し、更に、2種類以上の検出値の異常時には電動機の制御を停止し、若しくは更なるバックアップ制御を行なおうとするものである。
[0005]
 特許文献1に開示された従来の電動パワーステアリング装置によれば、センサの故障により検出値に異常が生じても、異常が生じている検出値を用いずに電動機の駆動が継続され、操舵のアシストを継続することができ、又、運転者に故障発生を適切に感知させることができるので、装置の故障に気づかずに使用を継続している間に、他の箇所も故障し、電動機の駆動ができなくなることによって操舵のアシストができなくなるという状況を回避することができるとされる。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特許第5920050号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 前述の従来の電動パワーステアリング装置によれば、センサに異常発生したとしてもできるかぎり電動機の制御を継続することができるが、センサの異常時には、バックアップ制御によりセンサの正常時とは異なる制御を行うようにしているが、バックアップ制御時に於ける更なる異常の検知を正常時の異常検知のための閾値と同一の閾値を用いて行なうと、正常であるにもかかわらず異常であると判定し、若しくは異常であるにもかかわらず正常であると判定する可能性がある。従って、バックアップ制御時に於ける更なる異常の検知には、異常判定の内容を見直す必要があった。
[0008]
 この発明は、従来の電動パワーステアリング装置に於ける前述のような課題を解決するためになされたもので、電動機の制御に関連する部位の異常を検知して電動機の制御を継続している場合に、更なる異常の検知を誤判定することなく判定することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0009]
 この発明による電動パワーステアリング装置は、
 車両の運転者による操舵トルクに基づきアシストトルクを発生する電動機と、前記電動機を制御する制御ユニットとを備えた電動パワーステアリング装置であって、
 前記制御ユニットは、
 前記電動機の制御に用いる情報が入力される入力回路と、
 前記電動機に電流を供給するインバータ回路と、
 前記入力回路に入力された前記情報に基づいて前記電動機を制御する制御量を演算し、前記制御量に基づく指令信号を出力するCPUと、
 前記CPUから出力された前記指令信号に基づいて前記インバータ回路を駆動する駆動回路と、
を備え、
 前記CPUは、
 前記電動機の制御に関連する部位の異常を検知したとき、前記異常が発生した部位及び前記異常の内容に応じて、少なくとも正常時とは異なる制御量を算出して前記電動機の制御を継続する異常制御モードを有し、前記異常制御モードにより前記電動機の制御を継続しているときは、前記異常制御モードによる前記制御の内容に応じて、前記異常を検知するためのしきい値を正常時とは異なる値に変更するように構成されている、
ことを特徴とする。
[0010]
 又、この発明による電動パワーステアリング装置は、
 車両の運転者による操舵トルクに基づきアシストトルクを発生する電動機と、前記電動機を制御する制御ユニットとを備えた電動パワーステアリング装置であって、
 前記電動機は、実質的の同一構成の第1の電機子巻線と第2の電機子巻線からなる2組の電機子巻線を備え、
 前記制御ユニットは、前記第1の電機子巻線を独立に制御可能に構成された第1の制御ユニットと、前記第2の電機子巻線を独立に制御可能に構成された第2の制御ユニットからなる実質的に同一構成の2組の制御ユニットにより構成され、
 前記第1の制御ユニットと前記第2の制御ユニットは、それぞれ、
 複数のセンサからの情報が入力される入力回路と、
 前記電動機を駆動する駆動信号を発生する駆動回路と、
 前記駆動信号により制御されるインバータ回路と、
 前記入力回路に入力された前記情報に基づき前記電動機を制御するための指令信号を前記駆動回路へ出力するCPUを備えた制御回路部と、を備え、
 前記CPUは、
 前記複数のセンサのうちの一部のセンサの異常を検知したとき、前記異常が発生したセンサ及び前記異常の内容に応じて、少なくとも正常時とは異なる制御量を算出して前記電動機の制御を継続する異常制御モードを有し、前記異常制御モードにより前記電動機の制御を継続しているときは、前記異常制御モードによる前記制御の内容に応じて、前記異常を検知するためのしきい値を正常時とは異なる値に変更するように構成されている、
ことを特徴とする。

発明の効果

[0011]
 この発明による電動パワーステアリング装置は、前記電動機の制御に関連する部位の異常を検知したとき、前記異常が発生した部位及び前記異常の内容に応じて、少なくとも正常時とは異なる制御量を算出して前記電動機の制御を継続する異常制御モードを有し、前記異常制御モードにより前記電動機の制御を継続しているときは、前記異常制御モードによる前記制御の内容に応じて、前記異常を検知するためのしきい値を正常時とは異なる値に変更するように構成されているので、異常制御モードでの制御の継続中に於ける異常の誤判定を防止することが可能となる。
[0012]
 又、この発明による電動パワーステアリング装置は、前記複数のセンサのうちの一部のセンサの異常を検知したとき、前記異常が発生したセンサ及び前記異常の内容に応じて、少なくとも正常時とは異なる制御量を算出して前記電動機の制御を継続する異常制御モードを有し、前記異常制御モードにより前記電動機の制御を継続しているときは、前記異常制御モードによる前記制御の内容に応じて、前記異常を検知するためのしきい値を正常時とは異なる値に変更するように構成されているので、異常制御モードでの制御の継続中に於ける異常の誤判定を防止することが可能となる。

図面の簡単な説明

[0013]
[図1] この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の全体回路図である。
[図2] この発明の基礎となる電動パワーステアリング装置に於ける、制御ユニットのブロック図である。
[図3A] この発明の基礎となる電動パワーステアリング装置の動作を説明するタイミングチャートである。
[図3B] この発明の基礎となる電動パワーステアリング装置の動作を説明するタイミングチャートである。
[図4] この発明の基礎となる電動パワーステアリング装置の動作を説明するフローチャートである。
[図5] この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置に於ける、制御ユニットのブロック図である。
[図6] この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の動作を説明するフローチャートである。
[図7A] この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の動作を説明するタイミングチャートである。
[図7B] この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の動作を説明するタイミングチャートである。
[図8] この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置の動作を説明するフローチャートである。
[図9A] この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置の動作を説明するタイミングチャートである。
[図9B] この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置の動作を説明するタイミングチャートである。
[図10] この発明の実施の形態3による電動パワーステアリング装置の動作を説明するフローチャートである。

発明を実施するための形態

[0014]
実施の形態1.
 以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。図1は、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の全体回路図である。図1に於いて、車両の運転者の操舵トルクを補助するアシストトルクを発生する電動機2は、3相の第1の電機子巻線2aと3相の第2の電機子巻線2bからなる2組の電機子巻線を備えている。第1の電機子巻線2aと第2の電機子巻線2bは、実質的に同一構成とされているが、互いに電気角120度ずれて配置されている。以下、第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流を制御する制御系を「第1群」、第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流を制御する制御系を「第2群」と称することがある。
[0015]
 第1の制御ユニット1aと第2の制御ユニット1bからなる2組の制御ユニットは、それぞれ同一の構成部材により構成されており、実質的に同一の構成である。第1の制御ユニット1aは、独立して第1の電機子巻線2aに電力を供給することができ、第2の制御ユニット1bは、独立して第2の電機子巻線2bに電力を供給することができる。
[0016]
 先ず、2組の制御ユニットのうち、第1の制御ユニット1aについて説明する。第1の制御ユニット1aは、第1のCPU10aを搭載した第1の制御回路部4aと、電動機2の第1の電機子巻線2aにモータ電流を供給する第1のインバータ回路3aと、第1の電源リレー5aと、第1のフィルタ6aを備えている。第1の制御ユニット1aの一対の電源端子は、車両に搭載されたバッテリ9の正極側端子に接続される+B電源と、バッテリ9の負極側端子であるグランド端子GNDにそれぞれ接続されている。又、第1の制御ユニット1aは、イグニッションスイッチ7により第1の制御回路部4aに+B電源が投入されるように構成され、更に、例えば車両のハンドルの近傍に搭載された操舵トルクを検出するトルクセンサや、車両の走行速度を検出する速度センサ等の情報がセンサ類8から入力されるように構成されている。
[0017]
 第1の制御回路部4aは、第1の電源回路13aと、第1の入力回路12aと、第1のCPU10aと、第1の駆動回路11aと備えている。第1の電源回路10aは、バッテリ9からの電源供給を受けて第1の制御回路部4aの各構成要素に供給するための電源を生成する。
[0018]
 センサ類8からの情報は、第1の制御回路部4aに設けられた第1の入力回路12aを介して第1のCPU10aに伝達される。第1のCPU10aは、伝達されたそれらの情報から電動機2を回転させるための制御量である電流値を演算し、その演算値に相当する出力信号を出力する。第1のCPU10aからの出力信号は、第1の出力回路を構成する第1の駆動回路11aと第1のインバータ回路3aへ伝達される。第1の駆動回路11aは、第1のCPU10aからの出力信号である第1の指令信号を受け、第1のインバータ回路3aの後述する各スイッチング素子を駆動する第1の駆動信号を出力する。第1の駆動回路11aには小電流しか流れないため、実施の形態1では第1の制御回路部4aに搭載されているが、第1のインバータ回路3aに配置することもできる。
[0019]
 第1のインバータ回路3aは、3相ブリッジ回路により構成され、互いに直列接続されたU相上アームスイッチング素子31UaとU相下アームスイッチング素子32UaとからなるU相アームと、互いに直列接続されたV相上アームスイッチング素子31VaとV相下アームスイッチング素子32VaとからなるV相アームと、互いに直列接続されたW相上アームスイッチング素子31WaとW相下アームスイッチング素子32WaとからなるW相アームとを備えている。
[0020]
 U相上アームスイッチング素子31UaとU相下アームスイッチング素子32Uaとの直列接続部は、U相電動機リレー用スイッチング素子34Uaを介して、第1の電機子巻線2aのU相巻線U1とV相巻線V1との接続部に接続されている。V相上アームスイッチング素子31VaとV相下アームスイッチング素子32Vaとの直列接続部は、V相電動機リレー用スイッチング素子34Vaを介して、第1の電機子巻線2aのV相巻線V1とW相巻線W1との接続部に接続されている。W相上アームスイッチング素子31WaとW相下アームスイッチング素子32Waとの直列接続部は、W相電動機リレー用スイッチング素子34Waを介して、第1の電機子巻線2aのW相巻線W1とU相巻線U1との接続部に接続されている。
[0021]
 U相電流検出用のU相シャント抵抗33Uaは、U相下アームスイッチング素子32Uaに直列接続され、V相電流検出用のV相シャント抵抗33Vaは、V相下アームスイッチング素子32Vaに直列接続され、W相電流検出用のW相シャント抵抗33Waは、W相下アームスイッチング素子32Waに直列接続されている。
[0022]
 U相ノイズ抑制用コンデンサ30Uaは、U相上アームスイッチング素子31UaとU相下アームスイッチング素子32UaとからなるU相アームに並列接続されている。V相ノイズ抑制用コンデンサ30Vaは、V相上アームスイッチング素子31VaとV相下アームスイッチング素子32VaとからなるV相アームに並列接続されている。そしてW相ノイズ抑制用コンデンサ30Waは、W相上アームスイッチング素子31WaとW相下アームスイッチング素子32WaとからなるW相アームに並列接続されている。
[0023]
 U相シャント抵抗33Ua、V相シャント抵抗33Va、及びW相シャント抵抗33Waの両端間の電位差、及び、第1の電機子巻線2aの各巻線端子の電圧は、第1の制御回路部4aに伝達されて第1のCPU10aに入力される。第1のCPU10aは、運転者の操舵トルク等に基づいて自身が演算した電流指令値と、入力された各シャント抵抗33Ua、33Va、33Waの両端間の電位差に基づいて算出した電流検出値との偏差を演算し、その偏差を零とする第1の駆動指令を第1の駆動回路11aに与える。
[0024]
 第1の駆動回路11aは、第1のCPU10aからの第1の駆動指令に基づいて、第1のインバータ回路3aのU相上アームスイッチング素子31UaとU相下アームスイッチング素子32Ua、及びV相上アームスイッチング素子31VaとV相下アームスイッチング素子32Va、及びW相上アームスイッチング素子31WaとW相下アームスイッチング素子32Wa、の各ゲート電極に駆動信号を与え、これらのスイッチング素子をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
[0025]
 このように、第1の制御ユニット1aは、電流指令値と電流検出値との偏差を零とするようにフィードバック制御を行うことで、所望の電動機電流を第1の電機子巻線2aに供給し、運転者の操舵トルクをアシストするアシストトルクを電動機2に発生させるように構成されている。
[0026]
 更に、第1の制御ユニット1aには、バッテリ9の+B電源から第1のインバータ回路3aへの電源の供給をオン/オフする第1の電源リレー5aが設けられている。第1の電源リレー5aは、互いに直列接続された電源リレー用スイッチング素子Qa1と電源リレー用スイッチング素子Qa2により構成されている。電源リレー用スイッチング素子Qa1と電源リレー用スイッチング素子Qa2は、それぞれ並列接続された寄生ダイオードを備え、電源リレー用スイッチング素子Qa1に並列接続された寄生ダイオードと、電源リレー用スイッチング素子Qa2に並列接続された寄生ダイオードとは、互いに逆極性となるように接続されている。
[0027]
 第1の電源リレー5aは、第1の制御回路部4aからの駆動信号により電源リレー用スイッチング素子Qa1、Qa2がオン/オフされることにより、電動機2の第1の電機子巻線2aへ供給する電流をオン/オフすることができる。尚、第1の電源リレー5aの電源リレー用スイッチング素子Qa1、Qa2は大電流が流れるため発熱を伴うので、第1のインバータ回路3aに包含させるようにしてもよい。
[0028]
 第1のインバータ回路3aに設けられたU相電動機リレー用スイッチング素子34Ua、V相電動機リレー用スイッチング素子34Va、W相電動機リレー用スイッチング素子34Waは、第1の制御回路部4aからの駆動信号によりオン/オフされることにより、第1のインバータ回路3aから第1の電機子巻線2aのU相巻線U1、V相巻線V1、W相巻線W1へ供給する電流を、個別にオン/オフすることができる。
[0029]
 第1のCPU10aは、入力されたセンサ類8からの操舵トルク検出値や車速等の各種情報のほか、第1の駆動回路11a、第1のインバータ回路3a、第1の電機子巻線2a等の異常を検出する異常検出機能を有し、これらの異常を検出した場合には、その異常に応じて例えば所定の相のみへの電流供給を遮断するために、異常を検出した相に於ける、上アームスイッチング素子、下アームスイッチング素子、電動機リレー用スイッチング素子をオフすることができる。或いは、前述の異常を検出した場合に、第1の制御ユニット1aに供給する電源自体を遮断するために、第1の電源リレー5aをオフすることも可能である。
[0030]
 又、前述のように、第1のインバータ回路3aは、第1のCPU10aからの第1の駆動指令に基づいて第1の駆動回路11aから与えられる駆動信号により、PWM駆動されるが、このPWM駆動による第1のインバータ回路3aの各スイッチング素子のオン/オフによりスイッチングノイズが発生してしまう。そこで、このスイッチングノイズの放出を抑制する目的で、フィルタコンデンサCaとフィルタコイルCLaからなる第1のフィルタ6aが、第1の電源リレー5aを介して第1のインバータ回路3aの入力側に配置されている。
[0031]
 次に、第2の制御ユニット1bについて説明する。第2の制御ユニット1bは、第2のCPU10bを搭載した第2の制御回路部4bと、電動機2の第2の電機子巻線2bにモータ電流を供給する第2のインバータ回路3bと、第2の電源リレー5bと、第2のフィルタ6bを備えている。第2の制御ユニット1bの一対の電源端子は、車両に搭載されたバッテリ9の正極側端子に接続される+B電源と、バッテリ9の負極側端子であるグランド端子GNDにそれぞれ接続されている。又、第2の制御ユニット1bは、イグニッションスイッチ7により第2の制御回路部4bに+B電源が投入されるように構成され、更に、例えば車両のハンドルの近傍に搭載された操舵トルクを検出するトルクセンサや、車両の走行速度を検出する速度センサ等の情報がセンサ類8から入力されるように構成されている。
[0032]
 第2の制御回路部4bは、第2の電源回路13bと、第2の入力回路12bと、第2のCPU10bと、第2の駆動回路11bと備えている。第2の電源回路10bは、バッテリ9からの電源供給を受けて第2の制御回路部4bの各構成要素に供給するための電源を生成する。
[0033]
 センサ類8からの情報は、第2の制御回路部4bに設けられた第2の入力回路12bを介して第2のCPU10bに伝達される。第2のCPU10bは、伝達されたそれらの情報から電動機2を回転させるための制御量である電流値を演算し、その演算値に相当する出力信号を出力する。第2のCPU10bからの出力信号は、第2の出力回路を構成する第2の駆動回路11bと第2のインバータ回路3bへ伝達される。第2の駆動回路11bは、第2のCPU10bからの出力信号である第2の指令信号を受け、第2のインバータ回路3bの後述する各スイッチング素子を駆動する第2の駆動信号を出力する。第2の駆動回路11bには小電流しか流れないため、実施の形態1では第2の制御回路部4bに搭載されているが、第2のインバータ回路3bに配置することもできる。
[0034]
 第2のインバータ回路3bは、3相ブリッジ回路により構成され、互いに直列接続されたU相上アームスイッチング素子31UbとU相下アームスイッチング素子32UbとからなるU相アームと、互いに直列接続されたV相上アームスイッチング素子31VbとV相下アームスイッチング素子32VbからなるV相アームと、互いに直列接続されたW相上アームスイッチング素子31WbとW相下アームスイッチング素子32WbとからなるW相アームとを備えている。
[0035]
 U相上アームスイッチング素子31UbとU相下アームスイッチング素子32Ubとの直列接続部は、U相電動機リレー用スイッチング素子34Ubを介して、第2の電機子巻線2bのU相巻線U2とV相巻線V2との接続部に接続されている。V相上アームスイッチング素子31VbとV相下アームスイッチング素子32Vbとの直列接続部は、V相電動機リレー用スイッチング素子34Vbを介して、第2の電機子巻線2bのV相巻線V2とW相巻線W2との接続部に接続されている。W相上アームスイッチング素子31WbとW相下アームスイッチング素子32Wbとの直列接続部は、W相電動機リレー用スイッチング素子34Wbを介して、第2の電機子巻線2bのW相巻線W2とU相巻線U2との接続部に接続されている。
[0036]
 U相電流検出用のU相シャント抵抗33Ubは、U相下アームスイッチング素子32Ubに直列接続され、V相電流検出用のV相シャント抵抗33Vbは、V相下アームスイッチング素子32Vbに直列接続され、W相電流検出用のW相シャント抵抗33Wbは、W相下アームスイッチング素子32Wbに直列接続されている。
[0037]
 U相ノイズ抑制用コンデンサ30Ubは、U相上アームスイッチング素子31UbとU相下アームスイッチング素子32UbとからなるU相アームに並列接続されている。V相ノイズ抑制用コンデンサ30Vbは、V相上アームスイッチング素子31VbとV相下アームスイッチング素子32VbとからなるV相アームに並列接続されている。そしてW相ノイズ抑制用コンデンサ30Wbは、W相上アームスイッチング素子31WbとW相下アームスイッチング素子32WbとからなるW相アームに並列接続されている。
[0038]
 U相シャント抵抗33Ub、V相シャント抵抗33Vb、及びW相シャント抵抗33Wbの両端間の電位差、及び、第2の電機子巻線2bの各巻線端子の電圧は、第2の制御回路部4bに伝達されて第2のCPU10bに入力される。第2のCPU10bは、運転者の操舵トルク等に基づいて自身が演算した電流指令値と、入力された各シャント抵抗33Ub、33Vb、33Wbの両端間の電位差に基づいて算出した電流検出値との偏差を演算し、その偏差を零とする第2の駆動指令を第2の駆動回路11bに与える。
[0039]
 第2の駆動回路11bは、第2のCPU10bからの第2の駆動指令に基づいて、第2のインバータ回路3bのU相上アームスイッチング素子31UbとU相下アームスイッチング素子32Ub、及びV相上アームスイッチング素子31VbとV相下アームスイッチング素子32Vb、及びW相上アームスイッチング素子31WbとW相下アームスイッチング素子32Wb、の各ゲート電極に駆動信号を与え、これらのスイッチング素子をPWM制御する。
[0040]
 このように、第2の制御ユニット1bは、電流指令値と電流検出値との偏差を零とするようにフィードバック制御を行うことで、所望の電動機電流を第1の電機子巻線2bに供給し、運転者の操舵トルクをアシストするアシストトルクを電動機2に発生させるように構成されている。
[0041]
 更に、第2の制御ユニット1bには、バッテリ9の+B電源から第2のインバータ回路3bへの電源の供給をオン/オフする第2の電源リレー5bが設けられている。第2の電源リレー5bは、互いに直列接続された電源リレー用スイッチング素子Qb1と電源リレー用スイッチング素子Qb2により構成されている。電源リレー用スイッチング素子Qb1と電源リレー用スイッチング素子Qb2は、それぞれ並列接続された寄生ダイオードを備え、電源リレー用スイッチング素子Qb1に並列接続された寄生ダイオードと、電源リレー用スイッチング素子Qb2に並列接続された寄生ダイオードとは、互いに逆極性となるように接続されている。
[0042]
 第2の電源リレー5bは、第2の制御回路部4bからの駆動信号により電源リレー用スイッチング素子Qb1、Qb2がオン/オフされることにより、電動機2の第2の電機子巻線2bへ供給する電流をオン/オフすることができる。尚、第2の電源リレー5bの電源リレー用スイッチング素子Qb1、Qb2は大電流が流れるため発熱を伴うので、第2のインバータ回路3bに包含させるようにしてもよい。
[0043]
 第2のインバータ回路3bに設けられたU相電動機リレー用スイッチング素子34Ub、V相電動機リレー用スイッチング素子34Vb、W相電動機リレー用スイッチング素子34Wbは、第2の制御回路部4bからの駆動信号によりオン/オフされることにより、第2のインバータ回路3bから第2の電機子巻線2bのU相巻線U2、V相巻線V2、W相巻線W2へ供給する電流を、個別にオン/オフすることができる。
[0044]
 第2のCPU10bは、入力されたセンサ類8からの操舵トルク検出値や車速等の各種情報のほか、第2の駆動回路11b、第2のインバータ回路3b、第2の電機子巻線2b等の異常を検出する異常検出機能を有し、これらの異常を検出した場合には、その異常に応じて例えば所定の相のみへの電流供給を遮断するために、異常を検出した相に於ける、上アームスイッチング素子、下アームスイッチング素子、電動機リレー用スイッチング素子をオフすることができる。或いは、前述の異常を検出した場合に、第2の制御ユニット1bに供給する電源自体を遮断するために、第2の電源リレー5bをオフすることも可能である。
[0045]
 又、前述のように、第2のインバータ回路3bは、第2のCPU10bからの第2の駆動指令に基づいて第2の駆動回路11bから与えられる駆動信号により、PWM駆動されるが、このPWM駆動による第2のインバータ回路3bの各スイッチング素子のオン/オフによりスイッチングノイズが発生してしまう。そこで、このスイッチングノイズの放出を抑制する目的で、フィルタコンデンサCbとフィルタコイルCLbからなる第2のフィルタ6bが、第2の電源リレー5bを介して第2のインバータ回路3bの入力側に配置されている。
[0046]
 電動機2は、前述のように3相の第1の電機子巻線2aと3相の第2の電機子巻線2bからなる2組の電機子巻線が、それぞれデルタ結線されたブラシレス電動機により構成されている。ブラシレス電動機のためにロータの回転位置を検出するために、第1の回転センサ17aと第2の回転センサ17bが搭載されている。このように、冗長性を確保するために、実質的に同一構成の2組の回転センサが搭載されている。第1の回転センサ17aが検出したロータの回転位置を示す情報は、第1の制御回路部4aに伝達され、第1の入力回路12aに入力される。第2の回転センサ17bが検出したロータの回転位置を示す情報は、第2の制御回路部4bに伝達され、第2の入力回路12bに入力される。
[0047]
 なお、電動機2は、3相デルタ結線のブラシレス電動機でなくても、スター結線であっても、或いは2極2対のブラシ付き電動機であってもよい。又、電機子巻線の巻線仕様は、従来の装置と同様に、分布巻き、集中巻きのいずれでもあってもよい。さらに、いわゆる2個のステータを有するタンデム電動機であってもよい。この場合、1組の電機子巻線のみであってもよく、或いは、2組の電機子巻線を設けてこれらの電機子巻線の協働により駆動するように構成されていてもよく、要は、所望の電動機回転数、トルクが出力できる構成であればよい。
[0048]
 報知手段15は、例えばランプを点灯できるように構成されており、第1のCPU10aが前述の異常を検出した場合に、第1のCPU10aから第1の出力回路16aを介して出力される警報信号に基づいてランプを点灯するなどの動作を行って運転者に以上を報知し、あるいは、第2のCPU10bが前述の異常を検出した場合に、第2のCPU10bから第2の出力回路16bを介して出力される警報信号に基づいてランプを点灯するなどの動作を行って運転者に異常を報知するように構成されている。
[0049]
 以上述べたように、第1の制御ユニット1aと第2の制御ユニット1bは、それぞれ独立に入力情報、制御量の演算値を使用して、独立に電動機2を駆動できる構成となっている。又、第1の制御ユニット1aと第2の制御ユニット1bは、相手側のデータ、情報を授受できるように通信ライン14により相互に接続されている。この通信ライン14は、第1のCPU10aと第2のCPU10bの間を相互に接続することにより、相手方の状況を把握することができる。例えば第1のCPU10aが前述の異常を検出し、その結果、前述の所定のスイッチング素子をオフにしたとすると、異常検知の内容、異常部品、電動機駆動内容等を第2のCPU10bへ伝達することができる。もし、CPU自体に異常を発生した場合は、所定のフォーマットによる定期的な通信信号を授受することができなくなり、これにより一方のCPUが他方CPU自体の異常発生を検知することもできる。
[0050]
 ここで、先ず、この発明の基礎となる電動パワーステアリング装置に於ける、制御ユニットについて説明する。図2は、この発明の基礎となる電動パワーステアリング装置に於ける、制御ユニットを説明する制御ブロック図であって、図1に示す第1の制御回路部4aの第1のCPU10aと、第2の制御回路部4bの第2のCPU10bと、電動機2を示している。
[0051]
 図2に於いて、ブラシレス電動機としての電動機2は、第1の電機子巻線2aに対応する制御要素として、q軸自己インダクタンスLq及び電機子抵抗Rからなる第1の制御ブロック22aと、第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流から相互インダクタンスMqにより制御対象に影響を与える第1の干渉ブロック23aを備える。更に、電動機2は、第2の電機子巻線2bに対応する制御要素として、q軸自己インダクタンスLq及び電機子抵抗Rからなる第2の制御ブロック22bと、第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流から相互インダクタンスMqにより制御対象に影響を与える第2の干渉ブロック23bを備える。
[0052]
 第1の制御回路部4aに於ける第1のCPU10aは、第1のPI制御器21aと、後述する第1の過電流判定器24aを有する。第1のPI制御器21aに於いて、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲイン、sはラプラス演算子を示す。同様に、第2の制御回路部4bに於ける第2のCPU10bは、第2のPI制御器21bと、後述する第2の過電流判定器24bを有する。第2のPI制御器21bに於いて、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲイン、sはラプラス演算子を示す。
[0053]
 第1の電機子巻線2aのモータ電流を制御する第1のCPU10aは、第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流の検出電流Iq1と目標電流Iq10とを比較し、検出電流Iq1が目標電流Iq10に追従するようにPI制御器21aにより第1の電機子巻線2aのモータ電流をフィードバック制御する。又、過電流判定器24aにより、第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流の検出電流Iq1が過電流判定しきい値Iq1_thhを越えたとき、第1の電機子巻線2aに対応するモータ駆動系が故障若しくは異常であると判定する。
[0054]
 同様に、第2の電機子巻線2bのモータ電流を制御する第2のCPU10bは、第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流の検出電流Iq2と目標電流Iq20とを比較し、検出電流Iq2が目標電流Iq20に追従するようにPI制御器21bにより第2の電機子巻線2bのモータ電流をフィードバック制御する。又、過電流判定器24bにより、第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流の検出電流Iq2が過電流判定しきい値Iq1_thhを越えたとき、第2の電機子巻線2bに対応するモータ駆動系が故障若しくは異常であると判定する。
[0055]
 この発明の基礎となる電動パワーステアリング装置では、後述するように異常判定しきい値としての過電流判定しきい値Iq1_thhは固定値に設定されている。図2に於いて、いま、「Kp=0.4」、「Ki=75」、「Lq=100[uH]」、「R=0.02[Ω]」、「Mq=50[uH]」とし、第1の電機子巻線2aに於ける目標電流Iq1を定格電流100[Arms]にて固定とし、回路の異常等により第2の電機子巻線2bの目標電流Iq2が「100[Arms]から「0[Arms]」に変化したとすれば、相互インダクタンスMqによる第1の電機子巻線2aのモータ電流の検出電流Iq1は、図3A、図3Bに示すようにシミュレーションされる。
[0056]
 即ち、図3Aは、この発明の基礎となる電動パワーステアリング装置の動作を説明するタイミングチャートであって、縦軸は第1の電機子巻線2aの目標電流Iq10[Arms]、検出電流Iq1[Arms]、異常判定しきい値としての過電流判定しきい値Iq1_thh[Arms]を示し、横軸は時間time[sec]を示す。ここで、過電流判定しきい値Iq1_thh[Arms]は、前述したように所定の固定値に設定されている。図3Bは、この発明の基礎となる電動パワーステアリング装置の動作を説明するタイミングチャートであって、縦軸は第2の電機子巻線2bの目標電流Iq20[Arms]、検出電流Iq2[Arms]を示し、横軸は時間time[sec]を示す。
[0057]
 図3A、図3Bに示すように、第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流の検出電流Iq1は、第1の干渉ブロック23aにより、時刻「0.1」に於ける第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流の検出電流Iq2の急減に伴い、検出電流Iq2の微分成分に相互インダクタンスMqを乗じた影響が生じるため、第1の電機子巻線2aの制御ブロック22aが正常であるにもかかわらず、時刻「0.1」に於いてモータ電流の検出電流Iq1が目標電流Iq10に対してオーバーシュートが発生する。
[0058]
 図4は、この発明の基礎となる電動パワーステアリング装置の動作を説明するフローチャートであって、モータの過電流を検出することにより、図1に示す第1のインバータ回路3a、及び第2のインバータ回路3bの短絡故障や各相の線間短絡時の故障を判定する過電流検出異常判定の動作を示している。この図4に示すフローチャートは、第1のCPU10a及び第2のCPU10bにより周期的に実行される。第1のCPU10aと第2のCPU10bは同じ処理を実行するため、ここでは、第1のCPU10aにより実行する処理の内容を説明する。
[0059]
 図4に於いて、ステップS101にて、図1に示すU相シャント抵抗33Ua、V相シャント抵抗33Ub、W相シャント抵抗33Ucにより検出されたU相モータ電流Iu1、V相モータ電流Iv1、W相モータ電流Iw1は、第1の入力回路12aを介して第1のCPU10aにより取得される。
[0060]
 次に、ステップS102へ進む。3相モータ電流制御では、一般的にトルクの電流成分であるq軸電流Iq、及び界磁磁束方向の電流成分であるd軸電流Idを用いて電流制御するため、ステップS102では、ステップS101で検出したU相モータ電流Iu1、V相モータ電流Iv1、W相モータ電流Iw1を、それぞれ[d-q]軸電流に変換する。尚、以下の説明では、説明を簡単にするために界磁磁束方向の電流成分であるd軸電流の制御は行なわないものとし、検出したU相モータ電流Iu1、V相モータ電流Iv1、W相モータ電流Iw1から3相交流/d-q変換されたq軸電流を、ここでは検出電流Iq1と称する。
[0061]
 ステップ102からステップS103に進み、検出電流Iq1が過電流判定しきい値Iq1_thhより大きいか否かを判定する。検出電流Iq1が過電流判定しきい値Iq1_thhより大きい場合に過電流が検出されたと判定して(Y)、ステップS104に進んで過電流判定時間(Iq1_timer)をインクリメントし、ステップS106へ進む。
[0062]
 尚、ここでは説明のため、検出したU相モータ電流Iu1、V相モータ電流Iv1、W相モータ電流Iw1から3相交流/d-q変換されたq軸電流の値を検出電流Iq1としてモータの過電流を判定しているが、検出したU相モータ電流Iu1、V相モータ電流Iv1、W相モータ電流Iw1をそのまま用いてモータの過電流を判定するようにしても同様である。
[0063]
 一方、ステップS103での判定の結果、検出電流Iq1が過電流判定しきい値Iq1_thh以下の場合に過電流が検出されていないと判定し(N)、ステップS105に進んで過電流判定時間Iq1_timerをクリアする。ここで、過電流判定しきい値Iq1_thhは、例えば、図3Aに示すように定格電流の10[%]増しの一定値とする。
[0064]
 以上述べたこの発明の基礎となる技術の場合、図3Aに示すように、過電流判定しきい値Iq1_thhを一定値とした場合、図2に第2の制御ブロック22bとして示される第2の電機子巻線2bのモータ電流の変動成分に、図2に第1の干渉ブロック23aとして示される相互インダクタンスMqを乗じた値が、第1の電機子巻線2aのモータ電流の制御に影響する。このため、第1の電機子巻線2aに対応するモータ駆動系が正常であるにもかかわらず、第1の電機子巻線2aのモータ電流が過電流判定しきい値Iq1_thhを越えてしまうため、上述したステップS104にて、過電流判定時間Iq1_timerがインクリメントされてしまう。
[0065]
 一方、図2に第1の制御ブロック22aとして示される第1の電機子巻線2aのモータ電流の変動成分に、図2に第2の干渉ブロック23bとして示される相互インダクタンスMqを乗じた値が、第2の電機子巻線2bのモータ電流の制御に影響する。このため、第2の電機子巻線2bに対応するモータ駆動系が正常であるにもかかわらず、第2の電機子巻線2bのモータ電流が過電流判定しきい値Iq1_thhを越えてしまうため、前述のステップS104にて、過電流判定時間Iq1_timerがインクリメントされてしまう。
[0066]
 図4に於いて、ステップS104にて過電流判定時間Iq1_timerがインクリメントされ、ステップS106に進むと、過電流判定時間Iq1_timerが、判定時間しきい値Iq1_timer_thより大きいか否かを判定し、過電流判定時間Iq1_timerが、判定時間しきい値Iq1_timer_thより大きければ(Y)、ステップS107に進んで故障確定とし、処理を終了する。ステップS106での判定の結果、過電流判定時間Iq1_timerが、判定時間しきい値Iq1_timer_th以下であれば(N)処理を終了する。
[0067]
 以上述べたように、この発明の基礎となる技術に於いては、過電流判定しきい値Iq1_thhが一定値とされているので、第1の電機子巻線2aに対するモータ駆動系が正常であるにもかかわらず、第1の電機子巻線2aのモータ電流が過電流判定しきい値Iq1_thhを越えてしまうため、上述したステップS104にて、過電流判定時間Iq1_timerがインクリメントされ、第1の電機子巻線2aに対応するモータ駆動系が故障若しくは異常であると判定され、同様に、第2の電機子巻線2bに対するモータ駆動系が正常であるにもかかわらず、第2の電機子巻線2bのモータ電流が過電流判定しきい値Iq1_thhを越えてしまうため、前述のステップS104にて、過電流判定時間Iq1_timerがインクリメントされてしまい、第2の電機子巻線2bに対応するモータ駆動系が故障若しくは異常であると判定されてしまう課題が存在する。
[0068]
 次に、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置について説明する。図5は、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置に於ける、制御ユニットのブロック図であって、図1に示す第1の制御回路部4aの第1のCPU10aと、第2の制御回路部4bの第2のCPU10bと、電動機2を示している。
[0069]
 この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置は、図5に示すように、第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流を第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流を制御する第1のCPU10aに取り込み、予め設定していた電動機の相互インダクタンスMqと電動機の自己インダクタンスLqと電動機の電機子抵抗Rによる第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流への影響を演算し、もともと設定していた過電流判定しきい値Iq1_thhより大きい場合には、過電流判定しきい値を置き換えるように構成された第1の過電流判定器24aにより、第2の電機子巻線2bのモータ電流の影響による誤判定を抑制する。
[0070]
 又、同様に、第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流を第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流を制御する第2のCPU10bに取り込み、予め設定していた電動機の相互インダクタンスMqと電動機の自己インダクタンスLqと電動機の電機子抵抗Rによる第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流への影響を演算し、もともと設定していた過電流判定しきい値Iq1_thhより大きい場合には、過電流判定しきい値を置き換えるように構成された第2の過電流判定器24bにより、第1の電機子巻線2aのモータ電流の影響による誤判定を抑制する。
[0071]
 図5に於いて、ブラシレス電動機としての電動機2は、第1の電機子巻線2aに対応する制御要素として、q軸自己インダクタンスLq及び電機子抵抗Rからなる第1の制御ブロック22aと、第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流から相互インダクタンスMqにより制御対象に影響を与える第1の干渉ブロック23aを備える。更に、電動機2は、第2の電機子巻線2bに対応する制御要素として、q軸自己インダクタンスLq及び電機子抵抗Rからなる第2の制御ブロック22bと、第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流から相互インダクタンスMqにより制御対象に影響を与える第2の干渉ブロック23bを備える。
[0072]
 第1の制御回路部4aに於ける第1のCPU10aは、第1のPI制御器21aと、第1の過電流判定器24aを有する。第1のPI制御器21aに於いて、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲイン、sはラプラス演算子を示す。同様に、第2の制御回路部4bに於ける第2のCPU10bは、第2のPI制御器21bと、第2の過電流判定器24bを有する。第2のPI制御器21bに於いて、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲイン、sはラプラス演算子を示す。
[0073]
 第1の電機子巻線2aのモータ電流を制御する第1のCPU10aは、第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流の検出電流Iq1と目標電流Iq10とを比較し、検出電流Iq1が目標電流Iq10に追従するようにPI制御器21aにより第1の電機子巻線2aのモータ電流をフィードバック制御する。同様に、第2の電機子巻線2bのモータ電流を制御する第2のCPU10bは、第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流の検出電流Iqと目標電流Iq20とを比較し、検出電流Iq2が目標電流Iq20に追従するようにPI制御器21bにより第2の電機子巻線2bのモータ電流をフィードバック制御する。
[0074]
 第1のCPU10aに於ける第1の過電流判定器24aは、過電流判定しきい値Iq1_thhと、第1の電機子巻線2aのモータ電流の検出電流Iq1と、第2の電機子巻線2bのモータ電流の検出電流Iq2と、が入力されており、予め設定していた電動機の相互インダクタンスMqと電動機の自己インダクタンスLqと電動機の電機子抵抗Rによる第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流への影響を演算し、もともと設定していた過電流判定しきい値Iq1_thhより大きい場合には、過電流判定しきい値を置き換えるように構成されている。
[0075]
 同様に、第2のCPU10bに於ける第2の過電流判定器24bは、過電流判定しきい値Iq1_thhと、第2の電機子巻線2bのモータ電流の検出電流Iq1と、第1の電機子巻線2aのモータ電流の検出電流Iq1と、が入力されており、予め設定していた電動機の相互インダクタンスMqと電動機の自己インダクタンスLqと電動機の電機子抵抗Rによる第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流への影響を演算し、もともと設定していた過電流判定しきい値Iq1_thhより大きい場合には、過電流判定しきい値を置き換えるように構成されている。
[0076]
 図6は、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の動作を説明するフローチャートである。図6に示すフローチャートは、前述の図4に示すフローチャートに於けるステップS101をステップS110に置き換え、図4に示すフローチャートに於けるステップS102とステップS103との間に、ステップS111とステップS112を挿入したものであり、それ以外は図4に示すフローチャートと実質的に同様である。以下の説明では、図4のフローチャートと異なる点を主体に説明する。この図6に示すフローチャートは、第1のCPU10a及び第2のCPU10bにより周期的に実行される。第1のCPU10aと第2のCPU10bは同じ処理を実行するため、ここでは、第1のCPU10aにより実行する処理の内容を主体に説明する。
[0077]
 図6に於いて、先ず、ステップS110にて、第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流としてのU相モータ電流Iu1、V相モータ電流Iv1、W相モータ電流Iw1、及び第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流としてのU相モータ電流Iu2、V相モータ電流Iv2、W相モータ電流Iw2を取得する。尚、第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流の取得に関しては、第2のCPU10bでも第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流を検出しているため、第1のCPU10aと第2のCPU10bとの間の通信で第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流を取得してもよい。
[0078]
 次にステップS102にて、ステップS101で検出したU相モータ電流Iu1、V相モータ電流Iv1、W相モータ電流Iw1、及び第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流としてのU相モータ電流Iu2、V相モータ電流Iv2、W相モータ電流Iw2を、それぞれ[d-q]軸電流への変換に基づいて、第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流の検出電流Iq1、及び第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流の検出電流Iq2に変換する。
[0079]
 尚、説明を簡単にするために界磁磁束方向の電流成分であるd軸電流の制御は行なわないものとし、検出したU相モータ電流Iu1、V相モータ電流Iv1、W相モータ電流Iw1から3相交流/d-q変換されたq軸電流をここでは検出電流Iq1と称し、U相モータ電流Iu2、V相モータ電流Iv2、W相モータ電流Iw2から3相交流/d-q変換されたq軸電流をここでは検出電流Iq2と称する。
[0080]
 次に、ステップS111に進み、図5に示す第1のCPU10aに於いて第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流の変化により検出電流Iq1に与える影響を、第1の干渉ブロック23a及び、第1の制御ブロック22aを用いて下記の式(1)に基づいて演算する。
[数1]


  
[0081]
 尚、ここで、図5に於いて、「Kp=0.4」、「Ki=75」、「Lq=100[uH]」、「R=0.02[Ω]」、「Mq=50[uH]」とし、第1の電機子巻線2aに於ける目標電流Iq1を定格電流100[Arms]にて固定とし、回路の異常等により第2の電機子巻線2bの目標電流Iq2が「100[Arms]から「0[Arms]」に変化したとして以下説明する。
[0082]
 前述の式(1)により演算された値に、定格電流Iq_typである「100[Arms])を加算した値が、予め設定した過電流判定しきい値Iq1_thh、つまり実施の形態1の例では、定格電流Iq_typ×1.1(=定格電流の10%増しの110[Arms])より大きい場合には、第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流に対する第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流の変化及び相互インダクタンスによる影響が大きいと判断して、ステップS112にて過電流判定しきい値を下記の式(2)に示す値に置き換え、ステップS103へ進む。
[数2]


 
[0083]
 一方、前述の式(1)による演算結果が、予め設定した過電流判定しきい値Iq1_thh以下であれば、第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流の変化の影響が無視できるぐらい小さいものとして、ステップS103へ進む。
[0084]
 式(2)に基づいて演算した値に置き換えた過電流判定しきい値に置き換えたときのタイミングチャートを図7A、図7Bに示す。即ち、図7A、及び図7Bは、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の動作を説明するタイミングチャートであって、図7Aの縦軸は、第1の電機子巻線2aの目標電流Iq10[Arms]、検出電流Iq1[Arms]、異常判定しきい値としての過電流判定しきい値Iq1_thh[Arms]を示し、横軸は時間time[sec]を示す。図3Bの縦軸は、第2の電機子巻線2bの目標電流Iq20[Arms]、検出電流Iq2[Arms]を示し、横軸は時間time[sec]を示す。
[0085]
 図7A、図7Bに示すように、第1の電機子巻線2aに流れるモータ電流の検出電流Iq1は、第1の干渉ブロック23aにより、時刻「0.1」に於ける第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流の検出電流Iq2が急変して1群のモータ電流に影響を与える場合でも過電流判定電流のしきい値を超えることなく、従って、故障の誤検出を抑制することができる。
[0086]
 前述の式(2)に関しては、ラプラス演算子sを用いて連続系として記載したが、CPUを用いて演算する場合、離散系のため、例えば下記の式(3)に示す双1次変換を用いて、離散系に変換してもよい。ここで、Tはサンプリング時間とする。
[数3]


 
[0087]
 式(3)を式(2)に代入すると、下記の式(4)となり、式(4)を逆z変換して、Iq1_thh(n)に関して整理すると下記の式(5)に示すようになる。ここで、nは今回値、[n-1]は前回演算値を示す。
[数4]


  
[数5]


[0088]
 図6のステップS103以降は、前述の図4で説明したフローチャートと同様であるため、説明を相略する。
[0089]
 以上のように、3相2組の電機子巻線のうちの一方の電機子巻線に流れるモータ電流が、回路の異常等で急変した場合でも、正常群の他方の電機子巻線側の過電流判定しきい値を変更することにより、故障の誤判定を抑制することができ、又、他群の影響がない場合には、従来からの過電流判定しきい値を変更することなく構成することができる。
[0090]
実施の形態2.
 次に、この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置について説明する。この発明の実施の形態2では、前述の実施の形態1に於ける式(2)又は式(5)による過電流判定しきい値の演算が、過電流を判定できるような周期で演算することが難しい場合、式(2)でラプラス演算子sによる微分成分が、式(5)で検出電流[Iq2(n)-Iq2(n-1)]に置き換わっていることを利用し、この差分値が大きい場合には過電流判定しきい値を大きくして、前述の差分が小さくなった場合には過電流判定しきい値を元に戻すことにより、故障判定するようにしたものである。
[0091]
 図8は、この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置の動作を説明するフローチャートである。図8に示すフローチャートは、図6に示す実施の形態1の場合のフローチャートに対して、過電流判定の判定ロジックのみが異なるものであり、前述の実施の形態の図1の全体回路図、及び図5に示す制御ユニットのブロック図は実施の形態2に於いても同様であるので、それらの説明は省略し、図8に示すフローチャートを主体に説明する。
[0092]
 図8に示すフローチャートは、図6に示すフローチャートのステップS111及びステップS112を、ステップS120、ステップS121、ステップS122、及びステップS123に置き換えたものであり、その他のステップは、図6に示すフローチャート実質的に同じであるため説明を省略する。
[0093]
 図8に於いて、ステップS120にて、図5に示す第1の干渉ブロック23aに於ける相互インダクタンスによる影響が大きく、2群つまり第2の電機子巻線2bに流れるモータ電流の検出電流の今回値と2群の検出電流の前回値との偏差が、第1の過電流偏差切替判定しきい値Iq_thh1より大きい場合、ステップS121に進み、過電流判定しきい値を誤判定しないように大きくするように、例えば過電流判定しきい値を[Iq1_thh=Iq_typ×1.3]に設定し、ステップS122へ進む。
[0094]
 一方、2群の検出電流今回値と2群の検出電流前回値の偏差が過電流偏差切替判定しきい値Iq_thh1以下である場合、過電流判定しきい値を変更せず、ステップS122へ進む。
[0095]
 ステップS122では、2群の検出電流の今回値と2群の検出電流の前回値との偏差が、2群のモータ電流による相互インダクタンスによる影響が小さいと判定できる第2の過電流偏差切替判定しきい値Iq_thh2より小さい場合、ステップS123に進み、過電流判定しきい値を前述のこの発明の基礎となる技術と同じように、例えば[Iq1_thh=Iq_typ×1.1]に設定し、ステップS103へ進む。
[0096]
 一方、2群の検出電流の今回値と2群の検出電流の前回値との偏差が、第2の過電流偏差切替判定しきい値Iq_thh2以上の場合、過電流判定しきい値を変更せず、ステップS103へ進む。
[0097]
 上記の判定を実施したときのタイミングチャートを図9A、及び図9Bに示す。即ち、図9A、及び図9Bは、この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置の動作を説明するタイミングチャートであって、図9Aの縦軸は、第1の電機子巻線2aの目標電流Iq10[Arms]、検出電流Iq1[Arms]、異常判定しきい値としての過電流判定しきい値Iq1_thh[Arms]を示し、横軸は時間tim[sec]を示す。図3Bの縦軸は、第2の電機子巻線2bの目標電流Iq20[Arms]、検出電流Iq2[Arms]を示し、横軸は時間tim[sec]を示す。
[0098]
 図9Aに示すように、2群のモータ電流の今回値と前回値の偏差が大きいときには過電流判定しきい値を「X」で示すように大きくすることにより、正常である群の異常の誤判定を防止し、2群のモータ電流の今回値と前回値の偏差が小さいときには、過電流判定しきい値を小さくすることにより、この発明の基礎となる技術と同様に過電流判定を実施することができる。ステップS103以降は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
[0099]
 図5に示す第1の干渉ブロック23a、又は第2の干渉ブロック23bによる他群のモータ電流の変化の影響を式(2)に示す複雑な演算をすることなく、他群のモータ電流の前回値と今回値を用いて、故障判定しきい値をヒステリシスをつけて切り替えることにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
[0100]
実施の形態3.
 次に、この発明の実施の形態3による電動パワーステアリング装置について説明する。この実施の形態3では、実施の形態1に於いて、2群のモータ電流が振動するような場合に、過電流判定時間を切り替えることにより、モータ電流振動時に過電流判定しきい値が振動的になるのを防止することができるようにしたものである。
[0101]
 図10は、この発明の実施の形態3による電動パワーステアリング装置の動作を説明するフローチャートである。図10に示すフローチャートは、図6に示すフローチャートに対してステップS102以降が変更されている。前述の実施の形態の図1の全体回路図、及び図5に示す制御ユニットのブロック図は実施の形態3に於いても同様であるので、それらの説明は省略し、図10に示すフローチャートのみについて説明する。
[0102]
 図10に於いて、ステップS130にて、経過タイマ(sw1_timer)をインクリメントする。この経過タイマは、一旦、フェイル判定時間を延ばした場合には、誤判定を防止するため少なくとも、所定時間、フェイル判定時間を短くすることを防ぐためのタイマである。ステップS130にて経過タイマをインクリメントした後、ステップS120に進む。
[0103]
 ステップS120にて、2群の検出電流の今回値と2群の検出電流の前回値との偏差が第1の過電流偏差切替判定しきい値Iq_thh1より大きく、図5に示す第1の干渉ブロック23aに於ける相互インダクタンスによる影響が大きいと判定できる場合(Y)、ステップS131に進み、過電流判定時間を式(1)に示す演算式から計算された時定数(Lq/R)を、例えば時間が短すぎて誤判定しないように通常の時定数の3倍に設定する。演算式から計算された時定数(Lq/R)を通常の時定数の3倍としたのは、時定数など安定性を確保するために誤判定しないような時間に設定したものであり、一般的にセンサの出力の変化が95[%]に到達するまでの時間とすればよい。
[0104]
 ステップS131に於いて、過電流判定時間を設定した後、ステップS132にて、一旦過電流判定しきい値を切り替えた後、所定時間は過電流判定時間を短くしないように経過タイマsw1_timerをクリアし、ステップS133へ進む。
[0105]
 一方、ステップS120にて、2群の検出電流の今回値と2群の検出電流の前回値との偏差が、第1の過電流偏差切替判定しきい値Iq_thh1以下の場合、過電流判定時間を切り替えずにステップS133へ進む。
[0106]
 ステップS133にて、2群の検出電流の今回値と2群の検出電流の前回値の偏差が、第2の過電流偏差切替判定しきい値Iq_thh2より小さく、図5に示す第1の干渉ブロック23aの相互インダクタンスによる影響が小さいと判定でき、又、過電流判定時間が切り替わってから所定時間sw1_thが経過した場合に(Y)、2群のモータ電流の変動により1群の過電流異常判定が誤判定することがないと判断して、ステップS134へ進み、過電流判定時間をこの発明の基礎となる技術と同様に短くなるように[Iq1_timer_th2]に切り替えてステップS103へ進む。
[0107]
 一方、ステップS133にて、2群の検出電流の今回値と2群の検出電流の前回値の偏差が、第2の過電流偏差切替判定しきい値Iq_thh2以上と判定した場合(N)には、過電流判定時間を切り替えることなく、ステップS103へ進む。ステップS103以降は実施の形態1の場合と同様であるため、説明を省略する。
[0108]
 以上のように、他群のモータ電流の変化により、自群の過電流異常判定時間を変化させることにより、他群のモータ電流が変動した場合でも、過電流異常を抑制することができる。
[0109]
実施の形態4.
 次にこの発明の実施の形態4による電動パワーステアリング装置について説明する。この発明の実施の形態4による電動パワーステアリング装置では、第1のCPU10a、第2のCPU10bは、検知したモータ電流の異常に応じてその後の制御内容が異なる。その制御内容は次の3種類に大別することができる。
 (1)正常時とほとんど変わらない制御量を出力するケース。
 (2)例えば、インバータの一部を非作動とし、残りで制御を継続するもので、正常時と比較し制御量が明らかに異なるケース。
 (3)全制御を停止するケース。
[0110]
 前記ケース(1)としては、例えば図1の第1の回転センサ17aと第2の回転センサ17bとして同一のセンサを2個設置しているとすると、両センサの検出値はほぼ同一値であるので一方の回転センサの異常時に他方の回転センサを使用したとしても演算される制御量としては、正常時と異常時でほとんど差異がなく、回転センサの機差レベル程度の誤差しかない。異常時に正常時と実質的に同等の制御量を出力するときは、過電流判定しきい値を変更する必要性は少ないので敢えて変更しない。
[0111]
 又、前述のケース(3)では、制御自体を停止するので制御量に差異があったとしても、又、新たに次の異常が発生したとしても装置として対応する必要性がなく、従って、このような場合もしきい値の変更は無駄である。しかし前述のケース(2)では制御を継続するものであって、正常時とは異なる制御量であり、前述のケース(1)と比べてもハンドル操舵力、フィーリングに差異が出るので、しきい値が同一であると誤判定の可能性がある。もし誤判定により異常と判断したとすると、2重故障となり、制御自体を停止せざるを得ない状況に陥ることがある。一方、正常と誤判定すると、その制御性が悪化する方向になり、車両の操舵性能に影響を及ぼす可能性がある。
[0112]
 そのため、この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置は、特に前述のケース(2)のように、制御継続中に於ける異常検知のための過電流判定しきい値を、その時の制御内容に応じて可変にするようにしたものである。
[0113]
 次に、この発明の実施の形態4による電動パワーステアリング装置の具体例について説明する。図1のセンサ類8に含まれるトルクセンサとして、同等の機能を有するものが2個設置され、一方のトルクセンサの異常時に他方のトルクセンサで制御を継続することは可能であるが、重要なセンサが1個しか存在しない場合、もしそのセンサが出力の固着異常を発生するとセンサからの出力の検知が不可能となる。そのためセンサの正常時と同等な制御量を第1のCPU10aは算出するが、この算出した制御量に対して周期的に所定値を加減算して出力する。これによりトルクセンサにこの加減した値の影響が生じ、トルク値が変動するようになる。これにより正常であった筈のセンサの異常を判定することが可能となる。
[0114]
 このように正常時とは異なる制御量を出力して制御を継続しているときは、トルクセンサの固着異常を検知するために、加減算された値に見合ったトルク値の変動幅を設定し、しきい値以上の変動が発生している場合はセンサが正常であると判定し、逆に加減制御をしているにもかかわらずトルク値に変動が検知できない場合はセンサが異常であると判定する。2個のトルクセンサを、正常時と比較して固着異常を判定するためのトルク変動幅、更には固着判定時間等を可変にして利用するものである。
[0115]
 以上のように1個のセンサの異常時に制御を継続中であり、かつその制御が正常時と異なる制御である場合、その制御内容に応じてセンサの異常しきい値を可変にすることで、誤判定を防止するように作用する。
[0116]
 又、同様な具体的として、第1の回転センサ17a、及び第2の回転センサ17bを備える場合のように、同一機能のセンサを2個設置し、一方のセンサの異常時に他方のセンサの値を用いて正常時と同様に制御を継続することが可能である。この場合であっても正常なセンサの異常判定の正確性を期するために、通常時の回転角に対して所定角ずらした制御を行うことができる。このように「ずれ」を有した制御により、正常時の目標とするトルク値よりも例えば小さ目、つまり操舵力を軽めにすること、又は逆に重めにすることができる。このような制御内容であれば、回転センサの異常閾値ではなく、例えば電流センサの閾値を変更することで、「ずれ」制御に合致したしきい値とすることができ、電流センサの異常判定の正確性をアップすることができる。
[0117]
 以上のように2個のセンサのうち1個のセンサが異常であるとき制御を継続し、その制御中にその制御が正常時と異なる制御である場合に、その制御内容に応じて別のセンサの異常しきい値を可変とすることで、別のセンサの誤判定を防止するように作用する。以上の2つの具体例によれば、図1のように2つの第1の制御ユニット1aと第2の制御ユニット1bを備えなくても1つの制御ユニットで対応することができる。
[0118]
 次に異常時の継続制御が正常時とほとんど同等である具体例について説明する。図1には記載していないが、スイッチング素子、又は電動機2の電機子巻線等の温度を検出するための温度センサを搭載している場合、この温度センサは、高温時の電動機2へ電流供給最大値を制限する際に使用される。この温度センサの異常により電流値制限ができないため、電流の大きさ、その供給時間等から温度を推定し、最大値制限を温度センサ利用の場合より低めに設定して安全性を確保することがある。このような場合であっては電流制限が機能するまでは正常時と異常時の制御量はほとんど差異はない。
[0119]
 つまり大電流領域が正常時と異常時で差異があるような場合、異常時に於ける例えばシャント抵抗の端子電圧による電流検知の閾値を可変することもできる。異常時には電流センサとしてのシャント抵抗の異常しきい値を正常時と比べ低めに設定することで、異常判定のみならず、温度推定の制限にも寄与することにより、ひいては装置全体の機能性劣化を防止する効果もある。
[0120]
実施の形態5.
 次に、この発明の実施の形態5による電動パワーステアリング装置について説明する。図1に於いて、第1のインバータ回路3a、第2のインバータ回路3b、第1の駆動回路11a、第2の駆動回路11bのいずれかの一部の部品の故障、又は電動機2の1相の巻線の断線等のように電動機2の1相又は2相の系統が故障し、第1のCPU10a、又は第2のCPU10bの制御指令どおり制御できないような異常を考える。各回路の部品、例えばスイッチング素子の異常、オープン故障、シャント抵抗の断線等が発生した場合、第1のCPU10a、又は第2のCPU10bは,各部位の電圧監視によりこの異常を検知することが可能である。又、エンジン始動直後に各部品、各接続が正常が否か初期チェックにより事前に検知することもできる。CPUが異常を検知し、その異常内容が、1相のみの異常であれば、残りの2相と、正常な電機子巻線の3相で制御を継続することができる。又、異常が発生した電機子巻線は、制御を停止し、正常な電機子巻線のみで制御を継続することも可能である。
[0121]
 いずれにしても、全回路が正常で2組の電機子巻線による6相駆動とした場合と、5相以下の駆動とで同一の制御量を算出して出力しようとしても6相駆動とは異なる制御とならざるを得ない。このような異常時の継続制御では、1相、又は2相が駆動されていない、又は1組のみの駆動であるため、例えば電動機の回転のスムーズ性が低下しトルクリップル、ハンドル振動、音が発生することもある。ドライバーには異常発生をランプ15で報知してはいるが、振動、音で異常が発生していることを実感することになる。
[0122]
 以上述べたこの発明の各実施の形態による電動パワーステアリング装置は、下記(1)から(6)に記載の発明のうち、少なくとも何れかの発明を具体化したものである。
(1)車両の運転者による操舵トルクに基づきアシストトルクを発生する電動機と、前記電動機を制御する制御ユニットとを備えた電動パワーステアリング装置であって、
 前記制御ユニットは、
 前記電動機の制御に用いる情報が入力される入力回路と、
 前記電動機に電流を供給するインバータ回路と、
 前記入力回路に入力された前記情報に基づいて前記電動機を制御する制御量を演算し、前記制御量に基づく指令信号を出力するCPUと、
 前記CPUから出力された前記指令信号に基づいて前記インバータ回路を駆動する駆動回路と、
を備え、
 前記CPUは、
 前記電動機の制御に関連する部位の異常を検知したとき、前記異常が発生した部位及び前記異常の内容に応じて、少なくとも正常時とは異なる制御量を算出して前記電動機の制御を継続する異常制御モードを有し、前記異常制御モードにより前記電動機の制御を継続しているときは、前記異常制御モードによる前記制御の内容に応じて、前記異常を検知するためのしきい値を正常時とは異なる値に変更するように構成されている、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
[0123]
(2)車両の運転者による操舵トルクに基づきアシストトルクを発生する電動機と、前記電動機を制御する制御ユニットとを備えた電動パワーステアリング装置であって、
 前記電動機は、実質的の同一構成の第1の電機子巻線と第2の電機子巻線からなる2組の電機子巻線を備え、
 前記制御ユニットは、前記第1の電機子巻線を独立に制御可能に構成された第1の制御ユニットと、前記第2の電機子巻線を独立に制御可能に構成された第2の制御ユニットからなる実質的に同一構成の2組の制御ユニットにより構成され、
 前記第1の制御ユニットと前記第2の制御ユニットは、それぞれ、
 複数のセンサからの情報が入力される入力回路と、
 前記電動機を駆動する駆動信号を発生する駆動回路と、
 前記駆動信号により制御されるインバータ回路と、
 前記入力回路に入力された前記情報に基づき前記電動機を制御するための指令信号を前記駆動回路へ出力するCPUを備えた制御回路部と、を備え、
 前記CPUは、
 前記複数のセンサのうちの一部のセンサの異常を検知したとき、前記異常が発生したセンサ及び前記異常の内容に応じて、少なくとも正常時とは異なる制御量を算出して前記電動機の制御を継続する異常制御モードを有し、前記異常制御モードにより前記電動機の制御を継続しているときは、前記異常制御モードによる前記制御の内容に応じて、前記異常を検知するためのしきい値を正常時とは異なる値に変更するように構成されている、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
[0124]
(3)前記CPUは、前記第1の電機子巻線と前記第2の電機子巻線との間の相互インダクタンスに基づいて、前記変更するしきい値を演算するように構成されている、
ことを特徴とする上記(2)に記載の電動パワーステアリング装置。
[0125]
(4)前記しきい値は、ヒステリシスを備えている、
ことを特徴とする上記(1)から(3)のうちの何れかに記載の電動パワーステアリング装置。
[0126]
(5)前記CPUは、前記異常を検知するための異常判定時間を変更し得るように構成されている、
ことを特徴とする上記(1)から(4)のうちの何れか一つに記載の電動パワーステアリング装置。
[0127]
(6)前記異常判定時間は、ヒステリシスを備えている、
ことを特徴とする上記(5)に記載の電動パワーステアリング装置。
[0128]
 尚、この発明は前述の各実施の形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各実施の形態を適宜組み合わせたり、その構成に一部変形を加えたり、構成を一部省略することが可能である。

産業上の利用可能性

[0129]
 この発明は、電動パワーステアリング装置の分野、ひいては電動パワーステアリング装置を搭載する自動車等の車両の分野に利用することができる。

符号の説明

[0130]
1a 第1の制御ユニット、1b 第2の制御ユニット、2 電動機、3a 第1のインバータ回路、3b 第2のインバータ回路、5a 第1の電源リレー、5b 第2の電源リレー、8 センサ類、10a 第1のCPU、10b 第2のCPU、11a 第1の駆動回路、11b 第2の駆動回路、12a 第1の入力回路、12b 第2の入力回路、13a第1の電源回路、13b 第2の電源回路、14 通信ライン、15 報知手段、17a 第1の回転センサ、17b 第2の回転センサ。
 

請求の範囲

[請求項1]
 車両の運転者による操舵トルクに基づきアシストトルクを発生する電動機と、前記電動機を制御する制御ユニットとを備えた電動パワーステアリング装置であって、
 前記制御ユニットは、
 前記電動機の制御に用いる情報が入力される入力回路と、
 前記電動機に電流を供給するインバータ回路と、
 前記入力回路に入力された前記情報に基づいて前記電動機を制御する制御量を演算し、前記制御量に基づく指令信号を出力するCPUと、
 前記CPUから出力された前記指令信号に基づいて前記インバータ回路を駆動する駆動回路と、
を備え、
 前記CPUは、
 前記電動機の制御に関連する部位の異常を検知したとき、前記異常が発生した部位及び前記異常の内容に応じて、少なくとも正常時とは異なる制御量を算出して前記電動機の制御を継続する異常制御モードを有し、前記異常制御モードにより前記電動機の制御を継続しているときは、前記異常制御モードによる前記制御の内容に応じて、前記異常を検知するためのしきい値を正常時とは異なる値に変更するように構成されている、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
[請求項2]
 車両の運転者による操舵トルクに基づきアシストトルクを発生する電動機と、前記電動機を制御する制御ユニットとを備えた電動パワーステアリング装置であって、
 前記電動機は、実質的の同一構成の第1の電機子巻線と第2の電機子巻線からなる2組の電機子巻線を備え、
 前記制御ユニットは、前記第1の電機子巻線を独立に制御可能に構成された第1の制御ユニットと、前記第2の電機子巻線を独立に制御可能に構成された第2の制御ユニットからなる実質的に同一構成の2組の制御ユニットにより構成され、
 前記第1の制御ユニットと前記第2の制御ユニットは、それぞれ、
 複数のセンサからの情報が入力される入力回路と、
 前記電動機を駆動する駆動信号を発生する駆動回路と、
 前記駆動信号により制御されるインバータ回路と、
 前記入力回路に入力された前記情報に基づき前記電動機を制御するための指令信号を前記駆動回路へ出力するCPUを備えた制御回路部と、を備え、
 前記CPUは、
 前記複数のセンサのうちの一部のセンサの異常を検知したとき、前記異常が発生したセンサ及び前記異常の内容に応じて、少なくとも正常時とは異なる制御量を算出して前記電動機の制御を継続する異常制御モードを有し、前記異常制御モードにより前記電動機の制御を継続しているときは、前記異常制御モードによる前記制御の内容に応じて、前記異常を検知するためのしきい値を正常時とは異なる値に変更するように構成されている、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
[請求項3]
 前記CPUは、前記第1の電機子巻線と前記第2の電機子巻線との間の相互インダクタンスに基づいて、前記変更するしきい値を演算するように構成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
[請求項4]
 前記しきい値は、ヒステリシスを備えている、
ことを特徴とする請求項1から3のうちの何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
[請求項5]
 前記CPUは、前記異常を検知するための異常判定時間を変更し得るように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から4のうちの何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
[請求項6]
 前記異常判定時間は、ヒステリシスを備えている、
ことを特徴とする請求項5に記載の電動パワーステアリング装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3A]

[ 図 3B]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7A]

[ 図 7B]

[ 図 8]

[ 図 9A]

[ 図 9B]

[ 図 10]