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1. (WO2018159432) 間葉系幹細胞及び医薬組成物
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明 細 書

発明の名称 間葉系幹細胞及び医薬組成物

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

非特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006  

課題を解決するための手段

0007   0008  

発明の効果

0009  

図面の簡単な説明

0010  

発明を実施するための形態

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076  

実施例

0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098  

産業上の利用可能性

0099  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15  

明 細 書

発明の名称 : 間葉系幹細胞及び医薬組成物

技術分野

[0001]
 本発明は、間葉系幹細胞及び医薬組成物に関する。

背景技術

[0002]
 間葉系幹細胞は、Friedenstein(1982)によって初めて骨髄から単離された多分化能を有する前駆細胞である(非特許文献1)。間葉系幹細胞は、骨髄、臍帯、脂肪等の様々な組織に存在することが明らかにされており、間葉系幹細胞移植は、様々な難治性疾患に対する新しい治療方法として、期待されている(特許文献1~2参照)。最近では、脂肪組織、胎盤、臍帯、卵膜等の間質細胞に同等の機能を有する細胞が存在することが知られている。そのため、間葉系幹細胞を間質細胞(Mesenchymal Stromal Cell)と称することもある。
[0003]
 しかしながら、間葉系幹細胞をマウスの静脈内に投与する研究において、肺における循環障害が原因と考えられる呼吸不全によって、マウスが死亡する例が認められたとの報告があり(非特許文献2~4参照)、安全性の高い間葉系幹細胞の開発が望まれている。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2012-157263号公報
特許文献2 : 特表2012-508733号公報

非特許文献

[0005]
非特許文献1 : Pittenger F.M.et al.,Science,284,pp.143-147,1999
非特許文献2 : Furlani D.et al.,Microvasc. Res.,77,pp.370-376,2009
非特許文献3 : Tathumi K. et al., Biochemical and Biophysical Research Communications, 431, pp.203-209, 2013
非特許文献4 : Shirathuki S. et al., Hepatology Research, 45, pp.1353-1359, 2015

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 本発明は、上述のような状況の中、医薬品として安全性の高い間葉系幹細胞を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0007]
 上記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明者らは、間葉系幹細胞(mesenchymal stem(stromal) cell;MSC)を無血清培地で培養することで、安全性の高い間葉系幹細胞が培養できることを見出し、本発明を完成させた。本発明によれば、医薬品として安全性の高い間葉系幹細胞を提供できる。すなわち本発明の要旨は、以下の通りである。
[0008]
[1]組織因子(Tissue Factor;TF)が低発現であることを特徴とする、間葉系幹細胞。
[2]ITGA11、ITGA1、ITGB5、ITGBL1、ITGB1及びITGAVからなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子が低発現であることを特徴とする、間葉系幹細胞。
[3]ITGA4、ITGA9、ITGA7及びITGA10からなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子が高発現であることを特徴とする、間葉系幹細胞。
[4]他家由来である、[1]~[3]のいずれかに記載の間葉系幹細胞。
[5]脂肪組織由来である、[1]~[4]のいずれかに記載の間葉系幹細胞。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の間葉系幹細胞を含む、医薬組成物。
[7]組織因子(Tissue Factor;TF)が低発現である間葉系幹細胞を使用することを特徴とする、疾患の治療方法。
[8]ITGA11、ITGA1、ITGB5、ITGBL1、ITGB1及びITGAVからなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子が低発現である間葉系幹細胞を使用することを特徴とする、疾患の治療方法。
[9]ITGA4、ITGA9、ITGA7及びITGA10からなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子が高発現である間葉系幹細胞を使用することを特徴とする、疾患の治療方法。
[10]上記間葉系幹細胞が、他家由来である、[7]~[9]のいずれかに記載の疾患の治療方法。
[11]上記間葉系幹細胞が、脂肪組織由来である、[7]~[10]のいずれかに記載の疾患の治療方法。

発明の効果

[0009]
 本発明によると、医薬品として用いる際に安全性の高い間葉系幹細胞を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0010]
[図1] 図1は、本発明の間葉系幹細胞の細胞サイズ(粒子径)を示す図である。
[図2] 図2は、本発明の間葉系幹細胞におけるTFのmRNA発現を示す図である。
[図3] 図3は、本発明の間葉系幹細胞におけるTFの細胞表面タンパク質発現(FACS解析)を示す図である。
[図4] 図4は、本発明の間葉系幹細胞におけるITGB5のmRNA発現を示す図である。
[図5] 図5は、本発明の間葉系幹細胞におけるITGB1のmRNA発現を示す図である。
[図6] 図6は、本発明の間葉系幹細胞におけるITGA1のmRNA発現を示す図である。
[図7] 図7は、本発明の間葉系幹細胞におけるITGA11のmRNA発現を示す図である。
[図8] 図8は、本発明の間葉系幹細胞におけるITGAVのmRNA発現を示す図である。
[図9] 図9は、本発明の間葉系幹細胞におけるITGA4のmRNA発現を示す図である。
[図10] 図10は、本発明の間葉系幹細胞におけるITGB1のmRNA発現を示す図である。
[図11] 図11は、本発明の間葉系幹細胞におけるITGA1のmRNA発現を示す図である。
[図12] 図12は、本発明の間葉系幹細胞におけるITGA4のmRNA発現を示す図である。
[図13] 図13は、本発明の間葉系幹細胞におけるITGA11のmRNA発現を示す図である。
[図14] 図14は、本発明の間葉系幹細胞におけるITGAVのmRNA発現を示す図である。
[図15] 図15は、本発明の間葉系幹細胞におけるITGB5のmRNA発現を示す図である。

発明を実施するための形態

[0011]
 以下、本発明の間葉系幹細胞及びそれを含む医薬組成物について詳細に説明する。
[0012]
[間葉系幹細胞及びそれを含む医薬組成物]
 本発明の間葉系幹細胞は、組織因子(以下、「TF」ともいう)が低発現であることを特徴とする。
[0013]
 組織因子(Tissue factor,TF)は、295のアミノ酸からなる47kDの糖タンパクで、TNF、IL-1、急性相蛋白、トロンビン、エンドトキシンなどのメディエーターや、脳、肺、胎盤などTFを多く含む組織の損傷(局所的要因)により、全身の血管内皮細胞や単球の表面に発現が誘導される。TFはF.VIIと結合し、F.VIIを活性化することで生理的な外因系凝固の起点に関与することが知られている。
[0014]
 なお、TFが低発現であるとは、細胞においてTFのmRNA発現が低発現であること、もしくはTFタンパク質が低発現であること、又はその両方が低発現であることを含む。また、本発明の間葉系幹細胞は、他の細胞に比べ、TFが低発現であればよいが、具体的には、本発明の間葉系幹細胞は、従来の培養条件下(例えば、10%FBS含有Minimum Essential Medium alpha(MEMα)培地による培養)で得られる間葉系幹細胞に比べて、TFが低発現であればよい。好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下、特に好ましくは60%以下発現している。
[0015]
 また、本発明の間葉系幹細胞は、ITGA11、ITGA1、ITGB5、ITGBL1、ITGB1及びITGAVからなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子が低発現であることを特徴とする。さらに、本発明の間葉系幹細胞は、ITGA4、ITGA9、ITGA7及びITGA10からなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子が高発現であることを特徴とする。
[0016]
 インテグリンは、細胞外マトリックスと相互作用し、細胞の形状・運動性や細胞周期の進行など細胞外マトリックスの情報に応答して細胞内シグナルを伝達する細胞表面タンパク質であることが知られている。
[0017]
 インテグリン関連遺伝子が低発現もしくは高発現であるとは、細胞においてインテグリン関連遺伝子のmRNA発現が低発現もしくは高発現であること、もしくはインテグリン関連遺伝子タンパク質が低発現もしくは高発現であること、又はその両方が低発現もしくは高発現であることを含む。また、本発明の間葉系幹細胞は、他の細胞に比べ、インテグリン関連遺伝子が低発現もしくは高発現であればよいが、具体的には、本発明の間葉系幹細胞は、従来の培養条件下(例えば、10%FBS含有Minimum Essential Medium alpha(MEMα)培地による培養)で得られる間葉系幹細胞に比べて、インテグリン関連遺伝子が低発現もしくは高発現であればよい。
[0018]
 インテグリン関連遺伝子が低発現であるとは、好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下、特に好ましくは60%以下発現している。具体的には、ITGA1が低発現であるとは、好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下発現している。ITGA11が低発現であるとは、好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下発現している。ITGB5が低発現であるとは、好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ70%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下、特に好ましくは40%以下発現している。ITGB1が低発現であるとは、好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下、特に好ましくは70%以下発現している。ITGBL1が低発現であるとは、好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ70%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下発現している。ITGAVが低発現であるとは、好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下、特に好ましくは35%以下発現している。また、本発明の間葉系幹細胞は、従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べて、ITGAE、ITGAМ、ITGB7もしくはITGA5が低発現であってもよい。
[0019]
 インテグリン関連遺伝子が高発現であるとは、好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ110%以上、より好ましくは120%以上、さらに好ましくは130%以上、特に好ましくは150%以上発現している。具体的には、ITGA10が高発現であるとは、好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ200%以上、より好ましくは500%以上、さらに好ましくは750%以上、特に好ましくは900%以上発現している。ITGA7が高発現であるとは、好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ150%以上、より好ましくは200%以上、さらに好ましくは300%以上、特に好ましくは400%以上発現している。ITGA9が高発現であるとは、好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ130%以上、より好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上、特に好ましくは250%以上発現している。ITGA4が高発現であるとは、好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ120%以上、より好ましくは150%以上、さらに好ましくは180%以上、特に好ましくは200%以上発現している。また、本発明の間葉系幹細胞は、従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べて、ITGA3もしくはITGB3が高発現であってもよい。
[0020]
 本発明において間葉系幹細胞とは、間葉系に属する一種以上の細胞(骨細胞、心筋細胞、軟骨細胞、腱細胞、脂肪細胞など)、好ましくは二種以上の細胞、より好ましくは三種以上の細胞への分化能を有し、当該能力を維持したまま増殖できる細胞を意味する。本発明において用いる間葉系幹細胞なる用語は、間質細胞と同じ細胞を意味し、両者を特に区別するものではない。また、単に間葉系細胞と表記される場合もある。間葉系幹細胞を含む組織としては、例えば、脂肪組織、臍帯、骨髄、臍帯血、子宮内膜、胎盤、羊膜、絨毛膜、脱落膜、真皮、骨格筋、骨膜、歯小嚢、歯根膜、歯髄、歯胚等が挙げられる。例えば脂肪組織由来間葉系幹細胞とは、脂肪組織に含有される間葉系幹細胞を意味し、脂肪組織由来間質細胞と称してもよい。これらのうち、各種疾患の治療に対する有効性の観点、入手容易性の観点等から、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞、胎盤由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞が好ましく、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞がより好ましく、脂肪組織由来間葉系幹細胞がさらに好ましい。
[0021]
 本発明における間葉系幹細胞は、処置される対象(被検体)と同種由来であってもよいし、異種由来であってもよい。本発明における間葉系幹細胞の種として、ヒト、サル、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ラビット、マウス、ラットが挙げられ、好ましくは処置される対象(被検体)と同種由来細胞である。本発明における間葉系幹細胞は、処置される対象(被検体)に由来、すなわち自家細胞(同種同系)であってもよいし、同種の別の対象に由来、すなわち他家細胞(同種異系)であってもよい。好ましくは他家細胞(同種異系)である。
[0022]
 間葉系幹細胞は同種異系の被験体に対しても拒絶反応を起こしにくいため、あらかじめ調製されたドナーの細胞を拡大培養して凍結保存したものを、本発明の医薬組成物における間葉系幹細胞として使用することができる。そのため、自己の間葉系幹細胞を調製して用いる場合と比較して、商品化も容易であり、かつ安定して一定の効果を得られ易いという観点から、本発明における間葉系幹細胞は、同種異系であることがより好ましい。
[0023]
 本発明において間葉系幹細胞とは、間葉系幹細胞を含む任意の細胞集団を意味する。当該細胞集団は、少なくとも20%以上、好ましくは、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、96%、97%、98%又は99%が間葉系幹細胞である。
[0024]
 本発明において脂肪組織とは、脂肪細胞、及び微小血管細胞等を含む間質細胞を含有する組織を意味し、例えば、哺乳動物の皮下脂肪を外科的切除又は吸引して得られる組織である。脂肪組織は、皮下脂肪より入手され得る。後述する脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与対象と同種動物から入手されることが好ましく、ヒトへ投与することを考慮すると、より好ましくは、ヒトの皮下脂肪である。皮下脂肪の供給個体は、生存していても死亡していてもよいが、本発明において用いる脂肪組織は、好ましくは、生存個体から採取された組織である。個体から採取する場合、脂肪吸引は、例えば、PAL(パワーアシスト)脂肪吸引、エルコーニアレーザー脂肪吸引、又は、ボディジェット脂肪吸引などが例示され、細胞の状態を維持するという観点から、超音波を用いないことが好ましい。
[0025]
 本発明において臍帯とは、胎児と胎盤を結ぶ白い管状の組織であり、臍帯静脈、臍帯動脈、膠様組織(ウォートンジェリー;Wharton’s Jelly)、臍帯基質自体等から構成され、間葉系幹細胞を多く含む。臍帯は、本発明の間葉系幹細胞を使用する被験体(投与対象)と同種動物から入手されることが好ましく、本発明の間葉系幹細胞をヒトへ投与することを考慮すると、より好ましくは、ヒトの臍帯である。
[0026]
 本発明において骨髄とは、骨の内腔を満たしている柔組織のことをいい、造血器官である。骨髄中には骨髄液が存在し、その中に存在する細胞を骨髄細胞と呼ぶ。骨髄細胞には、赤血球、顆粒球、巨核球、リンパ球、脂肪細胞等の他、間葉系幹細胞、造血幹細胞、血管内皮前駆細胞等が含まれている。骨髄細胞は、例えば、ヒト腸骨、長管骨、又はその他の骨から採取することができる。
[0027]
 本発明において、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞とは、それぞれ脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞を含む任意の細胞集団を意味する。当該細胞集団は、少なくとも20%以上、好ましくは、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、96%、97%、98%又は99%が、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞である。
[0028]
 本発明における間葉系幹細胞は、上記TFが低発現であることに加えて、例えば、成長特徴(例えば、継代から老化までの集団倍加能力、倍加時間)、核型分析(例えば、正常な核型、母体系統又は新生児系統)、フローサイトメトリー(例えば、FACS分析)による表面マーカー発現、免疫組織化学及び/又は免疫細胞化学(例えば、エピトープ検出)、遺伝子発現プロファイリング(例えば、遺伝子チップアレイ;逆転写PCR、リアルタイムPCR、従来型PCR等のポリメラーゼ連鎖反応)、miRNA発現プロファイリング、タンパク質アレイ、サイトカイン等のタンパク質分泌(例えば、血漿凝固解析、ELISA、サイトカインアレイ)、代謝産物(メタボローム解析)、本分野で知られている他の方法等によって、特徴付けられてもよい。
[0029]
(間葉系幹細胞の調製方法)
 TF低発現の間葉系幹細胞の調製方法は特に限定されないが、例えば以下のようにして調製することができる。すなわち、脂肪組織、臍帯、骨髄等の組織から、当業者に公知の方法に従って、間葉系幹細胞を分離、培養し、TFに特異的に結合する抗TF抗体を用いて、TF低発現細胞をセルソーターで分離したり、磁気ビーズ等でTF高発現細胞を除去すること等により取得することができる。また、特定の培地を用いた培養により、TF発現の低い間葉系幹細胞を誘導することで、TF低発現の間葉系幹細胞を取得することもできる。この誘導によって得られる細胞集団において、細胞集団の50%以上がTF低発現であることが好ましく、70%以上がTF低発現であることがより好ましく、80%以上がTF低発現であることがさらに好ましく、90%以上がTF低発現であることが特に好ましく、実質的にTF低発現の均一な細胞集団であることが最も好ましい。
[0030]
 各インテグリン関連遺伝子(タンパク)低発現又は高発現の間葉系幹細胞の調製方法は特に限定されないが、例えば以下のようにして調製することができる。すなわち、インテグリン関連遺伝子(タンパク)低発現細胞は、脂肪組織、臍帯、骨髄等の組織から、当業者に公知の方法に従って、間葉系幹細胞を分離、培養し、インテグリン関連タンパクに特異的に結合する抗体を用いて、セルソーターで分離したり、磁気ビーズ等でインテグリン関連タンパク高発現細胞を除去すること等により取得することができる。また、インテグリン関連遺伝子(タンパク)高発現細胞は、脂肪組織、臍帯、骨髄等の組織から、当業者に公知の方法に従って、間葉系幹細胞を分離、培養し、インテグリン関連タンパクに特異的に結合する抗体を用いて、セルソーターで分離することにより取得することができる。また、特定の培地を用いた培養により、インテグリン関連遺伝子(タンパク)低発現又は高発現の間葉系幹細胞を誘導することで、インテグリン関連遺伝子(タンパク)低発現又は高発現の間葉系幹細胞を取得することもできる。この誘導によって得られる細胞集団において、細胞集団の50%以上がそれぞれの特徴(インテグリン関連遺伝子(タンパク)低発現又は高発現)を示す細胞であることが好ましく、70%以上がそれぞれの特徴を示す細胞であることがより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましく、実質的にそれぞれの特徴を示す均一な細胞集団であることが最も好ましい。以下に、TF低発現の間葉系幹細胞の調製方法を具体的に説明する。
[0031]
 間葉系幹細胞は、当業者に周知の方法により調製することができる。以下に、一つの例として、脂肪組織由来間葉系幹細胞の調製方法を説明する。脂肪組織由来間葉系幹細胞は、例えば米国特許第6,777,231号に記載の製造方法によって得られて良く、例えば、以下の工程(i)~(iii)を含む方法で製造することができる:
[0032]
(i) 脂肪組織を酵素による消化により細胞懸濁物を得る工程;
(ii) 細胞を沈降させ、細胞を適切な培地に再懸濁する工程;ならびに
(iii) 細胞を固体表面で培養し、固体表面への結合を示さない細胞を除去する工程。
[0033]
 工程(i)において用いる脂肪組織は、洗浄されたものを用いることが好ましい。洗浄は、生理学的に適合する生理食塩水溶液(例えばリン酸緩衝食塩水(PBS))を用いて、激しく攪拌して沈降させることによって行い得る。これは、脂肪組織に含まれる夾雑物 (デブリとも言い、例えば損傷組織、血液、赤血球など)を組織から除去するためである。したがって、洗浄及び沈降は一般に、上清からデブリが総体的に除去されるまで繰り返される。残存する細胞は、さまざまなサイズの塊として存在するので、細胞そのものの損傷を最小限に抑えながら解離させるため、洗浄後の細胞塊を、細胞間結合を弱めるか、又は破壊する酵素(例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ又はトリプシンなど)で処理することが好ましい。このような酵素の量及び処理期間は、使用される条件に依存して変わるが、当技術分野で既知である。このような酵素処理に代えて、又は併用して、細胞塊を、機械的な攪拌、超音波エネルギー、熱エネルギーなどの他の処理法で分解することができるが、細胞の損傷を最小限に抑えるため、酵素処理のみで行うことが好ましい。酵素を用いた場合、細胞に対する有害な作用を最小限に抑えるために、適切な期間をおいた後に培地等を用いて酵素を失活させることが望ましい。
[0034]
 工程(i)により得られる細胞懸濁物は、凝集状の細胞のスラリー又は懸濁物、ならびに各種夾雑細胞、例えば赤血球、平滑筋細胞、内皮細胞、及び線維芽細胞を含む。従って、続いて凝集状態の細胞とこれらの夾雑細胞を分離、除去してもよいが、後述する工程(iii)での接着及び洗浄により、除去可能であることから、当該分離、除去は割愛してもよい。夾雑細胞を分離、除去する場合、細胞を上清と沈殿に強制的に分ける遠心分離によって達成しえる。得られた夾雑細胞を含む沈殿は、生理学的に適合する溶媒に懸濁させる。懸濁状の細胞には、赤血球を含む恐れがあるが、後述する個体表面への接着による選択により、赤血球は除外されるため、溶解する工程は必ずしも必要ではない。赤血球を選択的に溶解する方法として、例えば、塩化アンモニウムによる溶解による高張培地又は低張培地中でのインキュベーションなど、当技術分野で周知の方法を使用することができる。溶解後、例えば濾過、遠心沈降、又は密度分画によって溶解物を所望の細胞から分離してもよい。
[0035]
 工程(ii)において、懸濁状の細胞において、間葉系幹細胞の純度を高めるために、1回もしくは連続して複数回洗浄し、遠心分離し、培地に再懸濁してもよい。この他にも、細胞を、細胞表面マーカープロファイルを基に、又は細胞のサイズ及び顆粒性を基に分離してもよい。
[0036]
 再懸濁において用いる培地は、間葉系幹細胞を培養できる培地であれば、特に限定されないが、このような培地は、基礎培地に、血清を添加する、及び/又は、アルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、インスリン、亜セレン酸ナトリウム、コレステロール、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3’-チオールグリセロール等の1つ以上の血清代替物を添加して作製してもよい。これらの培地には、必要に応じて、さらに脂質、アミノ酸、タンパク質、多糖、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類等の物質を添加してもよい。
[0037]
 上記基礎培地としては、例えば、IMDM、Medium 199、Eagle’s Minimum Essential Medium(EMEM)、MEM、MEMα、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)、Ham’s F12培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、MCDB201培地及びこれらの混合培地等が挙げられる。
[0038]
 上記血清としては、例えば、ヒト血清、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清、仔ウシ血清、ヤギ血清、ウマ血清、ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、ラット血清等が挙げられるがこれらに限定されない。血清を用いる場合、基礎培地に対して、5v/v%から15v/v%、好ましくは、10v/v%を添加してもよい。
[0039]
 上記脂肪酸としては、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸等が例示されるが、これらに限定されない。脂質は、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン等が例示されるが、これらに限定されない。アミノ酸は、例えば、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン、L-システイン、L-シスチン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、L-グリシンなどを含むがこれらに限定されない。タンパク質は、例えば、エコチン、還元型グルタチオン、フィブロネクチン及びβ2-ミクログロブリン等が例示されるが、これらに限定されない。多糖は、グリコサミノグリカンが例示され、グリコサミノグリカンのうち特に、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸等が例示されるが、これらに限定されない。増殖因子は、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、肝細胞増殖因子(HGF)、上皮成長因子(EGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等が例示されるが、これらに限定されない。
[0040]
 本発明において得られる脂肪由来間葉系幹細胞を細胞移植に用いるという観点から、血清等の異種由来成分を含まない(ゼノフリー)培地を用いることが好ましい。また、間葉系幹細胞をTF低発現とするため、このような培地としては、例えば、PromoCell社、Lonza社、Biological Industries社、Veritas社、R&D Systems社、Corning社及びRohto社などから間葉系幹細胞(間質細胞)用として予め調製された培地として提供されている培地を用いてもよい。
[0041]
 続いて、工程(iii)では、工程(ii)で得られた細胞懸濁液中の細胞を分化させずに固体表面上で、上述の適切な細胞培地を使用して、適切な細胞密度及び培養条件で培養する。本発明において、「固体表面」とは、本発明における脂肪組織由来間葉系幹細胞の結合・接着を可能とする任意の材料を意味する。特定の態様では、このような材料は、その表面への哺乳類細胞の結合・接着を促すように処理されたプラスチック材料である。固体表面を有する培養容器の形状は特に限定されないが、シャーレやフラスコなどが好適に用いられる。非結合状態の細胞及び細胞の破片を除去するために、インキュベーション後に細胞を洗浄する。
[0042]
 本発明では、最終的に固体表面に結合・接着した状態で留まる細胞を、脂肪組織由来間葉系幹細胞の細胞集団として選択することができる。
[0043]
 選択された細胞について、本発明における脂肪組織由来間葉系幹細胞であることを確認するために、表面抗原についてフローサイトメトリー等を用いて従来の方法で解析してもよい。さらに、各細胞系列に分化する能力について検査してもよく、このような分化は、従来の方法で行うことができる。
[0044]
 本発明における間葉系幹細胞は、上述の通り調製することができるが、TFを低発現すること、また、ITGA11、ITGA1、ITGB5、ITGBL1、ITGB1及びITGAVからなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子が低発現であること、さらに、ITGA4、ITGA9、ITGA7及びITGA10からなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子が高発現であること以外に、次の特性を持つ細胞として定義してもよい;
(1)標準培地での培養条件で、プラスチックに接着性を示す、
(2)表面抗原CD44、CD73、CD90が陽性であり、CD31、CD45が陰性であり、
(3)培養条件にて骨細胞、脂肪細胞、軟骨細胞に分化可能である。
[0045]
 上記工程(iii)によって得られた間葉系幹細胞から、TFタンパクを低発現している細胞を、セルソータ―、磁気ビーズ等を用いた免疫学的手法により選択的に分離することで、TFタンパクを低発現している間葉系幹細胞を取得することができる。また、TFの低発現を誘導できる特定の培地による培養を行うことにより、間葉系幹細胞におけるTF低発現を誘導し、効率的にTF低発現の間葉系幹細胞を取得することもできる。さらに、上記工程(iii)によって得られた間葉系幹細胞から、インテグリン関連タンパクに特異的に結合する抗体を用いて、セルソーターで分離したり、磁気ビーズ等でインテグリン関連タンパク高発現細胞を除去すること等により、インテグリン関連遺伝子(タンパク)低発現細胞を取得することができる。また、インテグリン関連遺伝子(タンパク)高発現細胞は、上記工程(iii)によって得られた間葉系幹細胞から、インテグリン関連タンパクに特異的に結合する抗体を用いて、セルソーターで分離することにより取得することができる。また、特定の培地を用いた培養により、インテグリン関連遺伝子(タンパク)低発現又は高発現の間葉系幹細胞を誘導することで、インテグリン関連遺伝子(タンパク)低発現又は高発現の間葉系幹細胞を取得することもできる。一例として、セルソータ―を用いた免疫学的手法によるTF低発現細胞の選択的分離の具体的方法を以下に説明する。
[0046]
 上記調製した間葉系幹細胞をトリプシン・EDTA溶液等により処理して得られた細胞懸濁液を遠心(室温、400G、5分)して上清を除去する。細胞にStaining Buffer(1%BSA-PBS)を加え、1×10 cells/500uLとなるように調製する。ピペッティングにより細胞懸濁液濃度を均一にした後、新しい1.5mLマイクロチューブに50uLずつ分注する。分注した細胞懸濁液に抗体(PE Mouse anti-human CD142 Clone HTF-1、BD Biosciences社製、550312)を添加し、遮光・冷蔵下で30分間~1時間反応させる。Staining Buffer 1mLで3回洗浄を行った後に、PI Buffer(Staining bufferにPropidium iodide solution(SIGMA社製、P4864)を最終濃度5~20ug/mLとなるように添加して調製)300uLを加えてよく懸濁する。セルストレーナ付チューブに通した後に、fluorescence activated cell sorting(FACS)解析を行い、ソーティングによりTF低発現の間葉系幹細胞を分離することができる。
[0047]
(間葉系幹細胞の凍結保存)
 本発明における間葉系幹細胞は、疾患治療効果を備えていれば、適宜、凍結保存及び融解を繰り返した細胞であってもよい。本発明において、凍結保存は、当業者に周知の凍結保存液へ間葉系幹細胞を懸濁し、冷却することによって行い得る。懸濁は、細胞をトリプシンなどの剥離剤によって剥離し、凍結保存容器に移し、適宜、処理した後、凍結保存液を加えることによって行い得る。
[0048]
 凍結保存液は、凍害防御剤として、DMSO(Dimethyl sulfoxide)を含有していてもよいが、DMSOは、細胞毒性に加えて、間葉系幹細胞を分化誘導する特性を有することから、DMSO含有量を減らすことが好ましい。DMSOの代替物として、グリセロール、プロピレングリコール、多糖類及び糖アルコールが例示される。DMSOを用いる場合、5%~20%の濃度、好ましくは5%~10%の濃度、より好ましくは10%の濃度を含有する。この他にも、WO2007/058308に記載の添加剤を含んでもよい。このような凍結保存液として、例えば、バイオベルデ社、日本ジェネティクス株式会社、リプロセル社、ゼノアック社、コスモ・バイオ社、コージンバイオ株式会社、サーモフィッシャーサイエンティフィック社などから提供されている凍結保存液を用いてもよい。
[0049]
 上述の懸濁した細胞を凍結保存する場合、-80℃~-100℃の間の温度(例えば、-80℃)で保管することで良く、当該温度に達成しえる任意のフリーザーを用いて行い得る。特に限定されないが、急激な温度変化を回避するため、プログラムフリーザーを用いて、冷却速度を適宜制御してもよい。冷却速度は、凍結保存液の成分によって適宜選択しても良く、凍結保存液の製造者指示に従って行われ得る。
[0050]
 保存期間は、上記条件で凍結保存した細胞が融解した後、凍結前と同等の性質を保持している限り、特に上限は限定されないが、例えば、1週間以上、2週間以上、3週間以上、4週間以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、1年以上、又はそれ以上が挙げられる。より低い温度で保存することで細胞障害を抑制することができるため、液体窒素上の気相(約-150℃以下から-180℃以下)へ移して保存してもよい。液体窒素上の気相で保存する場合、当業者に周知の保存容器を用いて行うことができる。特に限定されないが、例えば、2週間以上保存する場合、液体窒素上の気相で保存することが好ましい。
[0051]
 融解した間葉系幹細胞は、次の凍結保存までに適宜、培養してもよい。間葉系幹細胞の培養は、上述した間葉系幹細胞を培養できる培地を用いて行われ、特に限定されないが、約30~40℃、好ましくは約37℃の培養温度で、CO 含有空気の雰囲気下で行われてもよい。CO 濃度は、約2~5%、好ましくは約5%である。培養において、培養容器に対して適切なコンフルエンシー(例えば、培養容器に対して、50%から80%を細胞が占有することが挙げられる)に達した後に、細胞をトリプシンなどの剥離剤によって剥離し、別途用意した培養容器に適切な細胞密度で播種して培養を継続してもよい。細胞を播種する際において、典型的な細胞密度として、100細胞/cm ~100,000細胞/cm 、500細胞/cm ~50,000細胞/cm 、1,000~10,000細胞/cm 、2,000~10,000細胞/cm などが例示される。特定の態様では、細胞密度は2,000~10,000細胞/cm である。適切なコンフルエンシーに達するまでの期間が、3日間から7日間となるように調整することが好ましい。培養中、必要に応じて、適宜、培地を交換してもよい。
[0052]
 凍結保存した細胞の融解は、当業者に周知の方法によって行い得る。例えば、37℃の恒温槽内又は湯浴中にて静置又は振とうすることによって行う方法が例示される。
[0053]
 本発明の間葉系幹細胞は、いずれの状態の細胞であってもよいが、例えば培養中の細胞を剥離して回収された細胞でもよいし、凍結保存液中に凍結された状態の細胞でもよい。拡大培養して得られる同ロットの細胞を小分けして凍結保存したものを使用すると、安定して同様の作用効果が得られる点、取扱い性に優れる点等において好ましい。凍結保存状態の間葉系幹細胞は、使用直前に融解し、凍結保存液に懸濁したまま輸液もしくは培地等の溶液に直接混合してもよい。また、遠心分離等の方法により凍結保存液を除去してから輸液もしくは培地等の溶液に懸濁してもよい。ここで、本発明における「輸液」とは、ヒトの治療の際に用いられる溶液のことをいい、特に限定されないが、例えば、生理食塩水、日局生理食塩液、5%ブドウ糖液、日局ブドウ糖注射液、リンゲル液、日局リンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、1号液(開始液)、2号液(脱水補給液)、3号液(維持液)、4号液(術後回復液)等が挙げられる。
[0054]
 本発明の間葉系幹細胞を医薬組成物に用いる場合、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記間葉系幹細胞以外に、その用途や形態に応じて、常法に従い、薬学的に許容される担体や添加物を含有させてもよい。このような担体や添加物としては、例えば、等張化剤、増粘剤、糖類、糖アルコール類、防腐剤(保存剤)、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、安定化剤、キレート剤、油性基剤、ゲル基剤、界面活性剤、懸濁化剤、結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、発泡剤、流動化剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、溶解補助剤、抗酸化剤、甘味剤、酸味剤、着色剤、呈味剤、香料又は清涼化剤等が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な成分として例えば次の担体、添加物等が挙げられる。
[0055]
 担体としては、例えば、水、含水エタノール等の水性担体が;等張化剤(無機塩)としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が;多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が;増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸、ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等が;糖類としては、例えば、シクロデキストリン、ブドウ糖等が;糖アルコール類としては、例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等(これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい)が;防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、トロメタモール、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、塩酸ポリヘキサニド(ポリヘキサメチレンビグアニド)等)、グローキル(ローディア社製商品名)等が;pH調節剤としては、例えば、塩酸、ホウ酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロン-アミノカプロン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、硫酸マグネシウム、リン酸、ポリリン酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム等が;安定化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等が;油性基剤としては、例えば、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油、ゴマ油、綿実油等の植物油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が;水性基剤としては、例えば、マクロゴール400等が;ゲル基剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、ガム質等が;界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート80、硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、セスキオレイン酸ソルビタン等が;懸濁化剤としては、例えば、サラシミツロウや各種界面活性剤、アラビアゴム、アラビアゴム末、キサンタンガム、大豆レシチン等が;結合剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が;賦形剤としては、例えば、ショ糖、乳糖、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が;滑沢剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、タルク等が;崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム等が;発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム等が;流動化剤としては、例えば、メタケイ酸アルミン酸ナトリウム、軽質無水ケイ酸等が、それぞれ挙げられる。
[0056]
 本発明の間葉系幹細胞は、目的に応じて種々の形態、例えば、固形剤、半固形剤、液剤等の様々な剤形で提供することができる。例えば、固形剤(錠剤、粉末、散剤、顆粒剤、カプセル剤等)、半固形剤[軟膏剤(硬軟膏剤、軟軟膏剤等)、クリーム剤等]、液剤[ローション剤、エキス剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、注射剤(輸液剤、埋め込み注射剤、持続性注射、用時調製型の注射剤を含む)、透析用剤、エアゾール剤、軟カプセル剤、ドリンク剤等]、貼付剤、パップ剤等の形態で利用できる。また、本発明の間葉系幹細胞は、油性又は水性のビヒクル中の溶液又は乳液等の形態にも利用できる。さらに、本発明の間葉系幹細胞は噴霧により、患部に適用することもでき、本発明の間葉系幹細胞は噴霧した後に患部でゲル化もしくはシート化される形態にも利用できる。本発明の間葉系幹細胞は上記間葉系幹細胞をシート状または立体構造体とした後に、患部に適用することもできる。
[0057]
 本発明の間葉系幹細胞は、生理食塩水、日局生理食塩液、5%ブドウ糖液、日局ブドウ糖注射液、リンゲル液、日局リンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液、1号液(開始液)、2号液(脱水補給液)、3号液(維持液)、4号液(術後回復液)等の輸液、又は、DMEM等の細胞培養培地を用いて、懸濁もしくは希釈して用いることができ、好ましくは生理食塩液、5%ブドウ糖液、1号液(開始液)で、より好ましくは5%ブドウ糖液、1号液(開始液)で懸濁もしくは希釈して用いることができる。
[0058]
 本発明の間葉系幹細胞を液剤に用いる場合、液剤のpHは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではないが、一例として、2.5~9.0、好ましくは3.0~8.5、より好ましくは3.5~8.0となる範囲が挙げられる。
[0059]
 本発明の間葉系幹細胞を液剤に用いる場合、液剤の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。液剤の浸透圧比の一例として、好ましくは0.7~5.0、より好ましくは0.8~3.0、さらに好ましくは0.9~1.4となる範囲が挙げられる。浸透圧の調整は無機塩、多価アルコール、糖アルコール、糖類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十五改正日本薬局方に基づき286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
[0060]
 本発明の間葉系幹細胞の対象への投与経路は、経口投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、髄腔内投与、腹腔内投与、舌下投与、経直腸投与、経腟投与、眼内投与、経鼻投与、吸入、経皮投与、インプラント、肝表面への噴霧及びシート等の貼付による直接投与等が挙げられるが、本発明の間葉系幹細胞は静脈内投与においても高い安全性が認められていることより、静脈内投与、動脈内投与等の血管内投与が好ましく、静脈内投与が最も好ましい。
[0061]
 本発明の間葉系幹細胞の用量(投与量)は、患者の状態(体重、年齢、症状、体調等)、及び本発明の医薬組成物の剤形等によって異なりうるが、十分な治療効果を奏する観点からは、その量は多い方が好ましい傾向にあり、一方、副作用の発現を抑制する観点からはその量は少ない方が好ましい傾向にある。通常、成人に投与する場合には、細胞数として、1x10 ~1x10 12個/回、好ましくは1x10 ~1x10 11個/回、より好ましくは1x10 ~1x10 10個/回、さらに好ましくは5x10 ~1x10 個/回である。また、患者の体重あたりの投与量としては、1x10~5x10 10個/kg、好ましくは1x10 ~5x10 個/kg、より好ましくは1x10 ~5x10 個/kg、さらに好ましくは1x10 ~5x10 個/kgである。なお、本用量を1回量として、複数回投与してもよく、本用量を複数回に分けて投与してもよい。
[0062]
 本発明の間葉系幹細胞は、1又は2以上の他の薬剤と共に投与してもよい。他の薬剤としては、肝臓の治療薬、心臓疾患の治療薬、炎症性腸疾患治療薬、呼吸器用薬、神経系用薬、循環器用薬、脳循環改善薬、免疫抑制薬として用いることができる任意の薬剤が挙げられる。
[0063]
 肝臓の治療薬としては、例えば、B型肝炎治療薬(ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テノホビル等)、インターフェロン製剤(インターフェロンα、インターフェロンα-2b、インターフェロンβ、ペグインターフェロンα-2a、ペグインターフェロンα-2b等)、C型肝炎治療薬(リバビリン、テラピレビル、シメプレビル、バニプレビル、ダクラタスビル、アスナプレビル、ソホスブビル等)、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム等)、抗凝固剤(乾燥濃縮人アンチトロンビンIII、ガベキサートメシル酸塩、トロンボモデュリンα等)、解毒剤(エデト酸カルシウム二ナトリウム水和物、グルタチオン、ジメチカプロール、チオ硫酸ナトリウム水和物、スガマデスクナトリウム等)、人血清アルブミン、肝臓抽出エキス、ウルソデオキシコール酸、グリチルリチン酸、アザチオプリン、ベザフィーブラート、アミノ酸(グリシン、L-システイン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-バリン、L-トレオニン、L-セリン、L-アラニン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、L-リシン、L-ヒスチジン、L-アルギニン及びこれらの塩等)、ビタミン(トコフェロール、フラビンアデニンジヌクレオチド、リン酸チアミンジスルフィド、ピリドキシン、シアノコバラミン及びこれらの塩等)、抗生物質(スルバクタムナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、メロペネム水和物、塩酸バンコマイシン等)等が挙げられる。
[0064]
 心臓疾患の治療薬としては、例えば、ACE阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、β遮断薬、抗血小板薬、ワーファリン、カルシウム拮抗薬、硝酸薬、利尿剤、HMG-CoA還元酵素阻害薬、アンカロン等が挙げられる。
[0065]
 炎症性腸疾患治療薬としては、例えば、サラゾスルファピリジン、メサラジン等が挙げられる。
[0066]
 呼吸器用薬としては、例えば、ジモルホラミン、ドキサプラム塩酸塩水和物、シベレスタットナトリウム水和物、ピルフェニドン、肺サーファクタント、ドルナーゼ アルファ等が挙げられる。
[0067]
 神経系用薬としては、例えば、エダラボン、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、フィンゴリモド塩酸塩、リルゾール、タルチレリン水和物等が挙げられる。
[0068]
 循環器用薬としては、例えば、ヘプロニカート、ミドドリン塩酸塩、アメジニウムメチルメチル硫酸塩、エチレフリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩等が挙げられる。
[0069]
 脳循環改善薬としては、例えば、イフェンプロジル酒石酸塩、ニセルゴリン、イプジラスト、ジヒドロエルゴトキシンメシル酸塩、ニゾフェノンフマル酸塩、ファスジル塩酸塩水和物等が挙げられる。
[0070]
 免疫抑制薬としては、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、ミゾリビン、バシリキシマブ、タクロリムス水和物、グスペリムス塩酸塩、ミコフェノール酸モフェチル、エベロリムス等が挙げられる。
[0071]
 上記他の薬剤を本発明の間葉系幹細胞と共に投与する場合、保存時には、間葉系幹細胞と、他の薬剤とは同一の容器内に保存されてもよいし、別の容器中に保存されていてもよい。疾患の種類、治療方法、患者の状態等により、他の薬剤と、間葉系幹細胞とを同時に投与してもよいし、一定の間隔をあけて投与してもよい。
[0072]
 本発明の間葉系幹細胞は、種々の疾患の治療に好適に用いることができる。例えば、内臓疾患、具体的には、心疾患、胃・十二指腸疾患、小腸・大腸疾患、肝疾患、胆道疾患、膵疾患、腎疾患、肺疾患、縦隔膜疾患、横隔膜疾患、胸膜疾患、腹膜疾患、神経疾患、中枢神経系(CNS)障害、末梢動脈疾患、末梢静脈疾患に対して用いることが好ましい。
[0073]
 具体的疾患としては、例えば、自己免疫性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease(NAFLD))、非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis(NASH))、非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver (NAFL))、肝線維症、肝硬変、肝癌、脂肪肝、薬剤アレルギー性肝障害、ヘモクロマトーシス、ヘモジデローシス、ウィルソン病、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、胆道閉鎖、肝膿瘍、慢性活動性肝炎、慢性持続性肝炎等の肝疾患;心筋梗塞、心不全、不整脈、動悸、心筋症、虚血性心筋症、狭心症、先天性心疾患、心臓弁膜症、心筋炎、家族性肥大型心筋症、拡張型心筋症、急性冠症候群、アテローム血栓症、再狭窄等の心疾患;急性胃炎、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃癌、十二指腸癌等の胃・十二指腸疾患;虚血性腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、Crohn病、単純性潰瘍、腸管ベーチェット病、小腸癌、大腸癌等の小腸・大腸疾患;急性胆嚢炎、急性胆管炎、慢性胆嚢炎、胆管癌、胆嚢癌等の胆道疾患;急性膵炎、慢性膵炎、膵癌等の膵疾患;急性腎炎、慢性腎炎、急性腎不全、慢性腎不全等の腎疾患;肺炎、肺気腫、肺線維症、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、急性間質性肺炎、非特異的間質性肺炎、薬物誘発性肺疾患、好酸球性肺疾患、肺高血圧症、肺結核、肺結核後遺症、急性呼吸窮迫症候群、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、肺塞栓症、肺膿症、塵肺、嚥下性肺炎肺線維症、急性上気道感染症、慢性下気道感染症、気胸、肺胞上皮に傷害が見られる疾患、リンパ管平滑筋種、リンパ性間質性肺炎、肺胞蛋白症、肺ランゲルハンス細胞肉芽腫症等の肺疾患;縦隔腫瘍、縦隔の嚢胞性疾患、縦隔炎等の縦隔膜疾患;横隔膜ヘルニア等の横隔膜疾患;胸膜炎、膿胸、胸膜腫瘍、がん性胸膜炎、胸膜中皮腫等の胸膜疾患;腹膜炎、腹膜腫瘍等の腹膜疾患;小児脳性麻痺を含む脳性麻痺症候群、無菌性髄膜炎、ギランーバレー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、重症筋無力症、モノニューロパシー、多発ニューロパシー、脊髄性筋萎縮症、脊椎障害、急性横断性脊髄炎、脊髄梗塞(虚血性脊髄障害)、頭蓋内腫瘍、脊椎腫瘍等の神経疾患;Alzheimer病、認知障害、脳卒中、多発性硬化症、Parkinson病等のCNS障害;線維筋性異形成、末梢動脈疾患(PAD)、閉塞性血栓血管炎(ビュルガー病)、川崎病(KD)等の末梢動脈疾患;深部静脈血栓症、慢性静脈不全、静脈炎後症候群、表在性静脈血栓症等の末梢静脈疾患;移植片対宿主病(GVHD)、続発性免疫不全症、原発性免疫不全疾患、B細胞の欠損、T細胞不全、B及びT細胞複合欠損、食細胞欠損、古典経路における補体欠損、MBL経路における補体欠損、代替経路における補体欠損、補体調節蛋白欠損、補体レセプター欠損等の免疫不全疾患が挙げられる。
[0074]
 これらのうち、間葉系幹細胞による治療効果が十分に得られることが確認されている肝疾患、心疾患、肺疾患、神経疾患、末梢動脈疾患、免疫不全疾患が好ましく、中でも、肝線維症、肝硬変、心筋梗塞、心不全、肺線維症、間質性肺炎、小児脳性麻痺、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、末梢動脈疾患(PAD)、移植片対宿主病(GVHD)の治療により好適に用いることができ、肝線維症、肝硬変、心筋梗塞、心不全、肺線維症、間質性肺炎にさらに好適に用いることができる。
[0075]
[疾患の治療方法]
 本発明のさらに別の側面によれば、本発明は、組織因子(TF)が低発現である間葉系幹細胞、ITGA11、ITGA1、ITGB5、ITGBL1、ITGB1及びITGAVからなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子が低発現であることを特徴とする間葉系幹細胞、又はITGA4、ITGA9、ITGA7及びITGA10からなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子が高発現であることを特徴とする間葉系幹細胞を使用する、疾患の治療方法も含む。すなわち、本発明によると、上記本発明の間葉系幹細胞を各種疾患の患者に投与することにより、安全性が高く、各種疾患の治療効果を奏することが可能である。なお、本発明の治療方法に用いられる間葉系幹細胞については、上述の[間葉系幹細胞及びそれを含む医薬組成物]の項における説明を適用できる。
[0076]
[治療用間葉系幹細胞の判定方法]
 本発明のさらに別の側面によれば、本発明は、間葉系幹細胞が疾患の治療に適しているか否かを判定する方法も含まれる。すなわち、本発明の判定方法は、間葉系幹細胞の組織因子(TF)の発現を測定する工程、ITGA11、ITGA1、ITGB5、ITGBL1、ITGB1及びITGAVからなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子の発現を測定する工程、ITGA4、ITGA9、ITGA7及びITGA10からなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子の発現を測定する工程を含む。上記工程において、間葉系幹細胞の組織因子(TF)の発現が低発現であること、ITGA11、ITGA1、ITGB5、ITGBL1、ITGB1及びITGAVからなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子の発現が低発現であること、ITGA4、ITGA9、ITGA7及びITGA10からなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子の発現が高発現であることを確認できた細胞は、疾患治療において安全性が高いと判定できる。なお、上記組織因子(TF)、各種インテグリンの発現についての詳細は、上述の[間葉系幹細胞及びそれを含む医薬組成物]の項における説明を適用できる。
実施例
[0077]
 以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
[0078]
[脂肪由来間葉系幹細胞の継代培養]
 脂肪組織由来間葉系幹細胞(以下「ADSC」)(ロンザ社製、品番PT-5006)をP2からP4まで間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)を用いて培養した。P4からP5では、間葉系幹細胞用無血清培地、又は10%FBS血清培地(Minimum Essential Medium alpha(MEMα))を用いて3日間培養した。フラスコに付着したADSCを、トリプシンを用いて剥離し、遠沈管に移し、400×gで5分間、遠心分離し細胞の沈殿を得た。上清を除去した後、細胞凍結保存液(STEM-CELLBANKER(ゼノアック社))を適量加え懸濁した。当該細胞懸濁溶液を、クライオチューブに分注した後、フリーザー内で-80℃にて保存後、液体窒素上の気相に移し、保存を継続し凍結ストックとした。
[0079]
[自己免疫性肝炎モデルマウスを用いた治療効果の確認](実施例1)
 マウス(C57BL/6、日本クレア、7週齢、雄)に20mg/kgのコンカナバリンA(sigma-aldrich社製)を単回投与する事で、肝炎を誘発した。この肝炎を誘発したマウスに、上記凍結ストックの細胞(間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)で培養した脂肪由来間葉系幹細胞、又は10%FBS血清培地(MEM)で培養した脂肪由来間葉系幹細胞)を、5×10 cells/kgにて、単回静脈内投与した。細胞は融解後、MEMα(血清無添加)で洗浄した後、HBSSに懸濁して投与に用いた。細胞無投与群にはHBSSのみを投与した。細胞無投与群及び、間葉系幹細胞用無血清培地群(間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)で培養した脂肪由来間葉系幹細胞投与群)では、全数が生存したのに対して、10%FBS血清培地群(10%FBS血清培地(MEMα)で培養した脂肪由来間葉系幹細胞)では全数が死亡した(表1)。
[0080]
[表1]


[0081]
 以上の結果により、10%FBS血清培地群(10%FBS血清培地(MEMα)で培養した脂肪由来間葉系幹細胞)は安全性に問題があるのに対して、間葉系幹細胞用無血清培地群(間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)で培養して得られた本発明の間葉系幹細胞)は、安全性が高いことが示された。
[0082]
[脂肪組織由来間葉系幹細胞の細胞サイズの測定](実施例2)
 上記と同様に調整を行った脂肪由来間葉系幹細胞の細胞サイズを、CellInsigh CX5 High-Content Screening (HCS) Platform(Thermo fisher scientific社製)用いて、測定した。間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)で培養を行った細胞は平均粒子径が11.99μmであったのに対して、10%FBS血清培地(MEMα)で培養を行った細胞の平均粒子径が13.03μmであった。間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)で培養を行った細胞の平均粒子径は、10%FBS血清培地で培養を行った細胞の平均粒子径より10%程度小さいことがわかった(図1)。
[0083]
[10%FBS血清培地培養細胞投与の、マウス生存率への影響](試験例1)
 ADSC(ロンザ社製、品番PT-5006)をP2からP4まで間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)を用いて培養した。P4からP5は、10%FBS血清培地(MEMα)を用いて3日間培養し、上記と同様に凍結ストックを作製した。この細胞を正常マウス(C57BL/6、日本クレア、9週齢、雄)に、単回静脈内投与(5×10 cells/kg)したところ、6例中全例で投与後20時間以内に死亡が認められた。なお、細胞は融解後、MEMα(血清無添加)で洗浄した後、HBSSに懸濁して投与に用いた。これにより、コンカナバリンA誘発肝炎との相互作用ではなく、10%FBS血清培地(MEMα)で培養された細胞によってマウスが死亡している可能性が示唆された。
[0084]
[脂肪由来間葉系幹細胞のTF発現](実施例3)
 ADSC(ロンザ社、品番PT-5006)をP2からP4まで間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)を用いて培養した。P4からP5では、間葉系幹細胞用無血清培地(無血清培地群)又は10%FBS血清培地(MEMα、血清培地群)を用いて3日間培養し、上記と同様に凍結ストックを作製した。それぞれのP5細胞を起眠し、Total RNAを回収した。TFのmRNA発現量をリアルタイムPCRにより測定した(図2)。また、タンパク質レベルでの発現はフローサイトメトリーにより検出した(図3)。
[0085]
 血清培地群に比べ、無血清培地群では、TFのmRNA及びTF蛋白の発現量が低いことがわかった。
[0086]
[脂肪由来間葉系幹細胞のインテグリン関連遺伝子の発現1](実施例4)
 ADSC(ロンザ社製、品番PT-5006)をP2からP4までそれぞれ間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社、無血清培地群)又は10%FBS血清培地(血清培地群)で培養し、上記と同様に凍結ストックを作製した。それぞれのP4細胞を起眠し、6ウェルプレートに5,000cells/cm で播種し、2種類それぞれの培地で3日間培養した後、マイクロアレイ解析により遺伝子発現を解析した。結果を表2に示す。
[0087]
 血清培地群に比べ無血清培地群では、有意にITGA11、ITGA1、ITGB5、ITGBL1、ITGB1及びITGAVの発現量が低く、ITGA4、ITGA9、ITGA7及びITGA10の発現量が高いことがわかった(表2)。表2中の数値は、各遺伝子(mRNA)の相対発現強度を、底が2の対数で表したものである。また、fold changeは、血清培地群/無血清培地群の値である。
[0088]
[表2]


[0089]
[脂肪由来間葉系幹細胞のインテグリン関連遺伝子の発現2](実施例5)
 ADSC(ロンザ社製、品番PT-5006)をP2からP4までそれぞれ間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社、無血清培地群)又は10%FBS血清培地(血清培地群)で培養し、上記と同様に凍結ストックを作製した。それぞれのP4細胞を起眠し、6ウェルプレートに5,000cells/cm で播種し、2種類それぞれの培地で3日間培養した後、ADSCのtotal RNAを回収し、インテグリン関連遺伝子であるITGB5及びITGB1のmRNA発現量を定量PCRで測定した。結果を図4及び5に示す。
[0090]
 図4及び図5に示すとおり、血清培地群に比べ、無血清培地群では、ITGB5及びITGB1の発現量が低いことがわかった。
[0091]
[脂肪由来間葉系幹細胞のインテグリン関連遺伝子の発現3](実施例6)
 ADSC(ロンザ社製、品番PT-5006)をP2からP4までそれぞれ間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社、Rohto培地群)、間葉系幹細胞用無血清培地(Lonza社、Lonza培地群)又は10%FBS血清培地(血清培地群)で培養し、凍結ストックを作製した。それぞれのP4細胞を起眠し、6ウェルプレートに5,000cells/cm で播種し、3種類それぞれの培地で3日間培養した後、ADSCのtotal RNAを回収し、インテグリン関連遺伝子であるITGA1、ITGA11、ITGAV及びITGA4のmRNA発現量を定量PCRで測定した。結果を図6~9に示す。
[0092]
 図6~9に示すとおり、血清培地群に比べ、無血清培地群では、ITGA1、ITGA11及びITGAVの発現量が低く、Rohto社培地群はLonza社培地群よりもさらにITGA1、ITGA11及びITGAVの発現量が低いことがわかった。また、血清培地群に比べ、無血清培地群では、ITGA4の発現量が高く、Rohto社培地群はLonza社培地群よりもさらにITGA14の発現量が高いことがわかった。
[0093]
[脂肪由来間葉系幹細胞及び臍帯由来間葉系幹細胞のインテグリン関連遺伝子の発現](実施例7)
 脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC、ロンザ社製、品番PT-5006)及び臍帯由来間葉系幹細胞の各細胞をP2からP4までそれぞれ間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社、無血清培地群)又は10%FBS血清培地(血清培地群)で培養し、上記と同様に凍結ストックを作製した。それぞれのP4細胞を起眠し、6ウェルプレートに5,000cells/cm で播種し、3種類それぞれの培地で3日間培養した後、脂肪由来間葉系幹細胞及び臍帯由来間葉系幹細胞のtotal RNAを回収し、インテグリン関連遺伝子であるITGB1のmRNA発現量を定量PCRで測定した。結果を図10に示す。
[0094]
 図10に示すとおり、脂肪由来間葉系幹細胞と同様、臍帯由来間葉系幹細胞についても血清培地群に比べ、無血清培地群では、ITGB1の発現量が低いことがわかった。
[0095]
[脂肪由来間葉系幹細胞及び骨髄由来間葉系幹細胞のインテグリン関連遺伝子の発現](実施例8)
 脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC、ロンザ社製、品番PT-5006)及び骨髄由来間葉系幹細胞(ロンザ社製、型番:PT-2501)の各細胞をP2からP4までそれぞれ間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社、無血清培地群)又は10%FBS血清培地(血清培地群)で培養し、上記と同様に凍結ストックを作製した。それぞれのP4細胞を起眠し、6ウェルプレートに5,000cells/cm で播種し、3種類それぞれの培地で3日間培養した後、脂肪由来間葉系幹細胞及び骨髄由来間葉系幹細胞のtotal RNAを回収し、インテグリン関連遺伝子であるITGA1及びITGA4のmRNA発現量を定量PCRで測定した。結果を図11及び12に示す。
[0096]
 図11及び図12に示すとおり、脂肪由来間葉系幹細胞と同様、骨髄由来間葉系幹細胞についても血清培地群に比べ、無血清培地群では、ITGA1の発現量が低く、ITGA4の発現量が高いことがわかった。
[0097]
[脂肪由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞及び骨髄由来間葉系幹細胞のインテグリン関連遺伝子の発現](実施例9)
 脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC、ロンザ社製、品番PT-5006)、臍帯由来間葉系幹細胞及び骨髄由来間葉系幹細胞(ロンザ社製、型番:PT-2501)の各細胞をP2からP4までそれぞれ間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社、無血清培地群)又は10%FBS血清培地(血清培地群)で培養し、上記と同様に凍結ストックを作製した。それぞれのP4細胞を起眠し、6ウェルプレートに5,000cells/cm で播種し、3種類それぞれの培地で3日間培養した後、各間葉系幹細胞のtotal RNAを回収し、インテグリン関連遺伝子であるITGA11、ITGAV及びITGB5のmRNA発現量を定量PCRで測定した。結果を図13~15に示す。
[0098]
 図13~15に示すとおり、脂肪由来間葉系幹細胞と同様、臍帯由来間葉系幹細胞及び骨髄由来間葉系幹細胞についても血清培地群に比べ、無血清培地群では、ITGA11、ITGAV及びITGB5の発現量が低いことがわかった。

産業上の利用可能性

[0099]
 本発明により、間葉系幹細胞及びそれを含有する医薬組成物が提供される。また、本発明によると、医薬品として用いる際に安全性の高い間葉系幹細胞を提供することができる。

請求の範囲

[請求項1]
 組織因子(TF)が低発現であることを特徴とする、間葉系幹細胞。
[請求項2]
 ITGA11、ITGA1、ITGB5、ITGBL1、ITGB1及びITGAVからなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子が低発現であることを特徴とする、間葉系幹細胞。
[請求項3]
 ITGA4、ITGA9、ITGA7及びITGA10からなる群より選択される少なくとも一種のインテグリン遺伝子が高発現であることを特徴とする、間葉系幹細胞。
[請求項4]
 他家由来である、請求項1から3のいずれか1項に記載の間葉系幹細胞。
[請求項5]
 脂肪組織由来である、請求項1から4のいずれか1項に記載の間葉系幹細胞。
[請求項6]
 請求項1から5のいずれか1項に記載の間葉系幹細胞を含有する医薬組成物。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]