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1. (WO2018131492) ハイパーブランチポリマー、金属回収剤、金属回収方法及び触媒活性妨害剤
Document

明 細 書

発明の名称 ハイパーブランチポリマー、金属回収剤、金属回収方法及び触媒活性妨害剤

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004  

課題を解決するための手段

0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018  

発明の効果

0019  

図面の簡単な説明

0020  

発明を実施するための形態

0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043  

実施例

0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070  

産業上の利用可能性

0071  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : ハイパーブランチポリマー、金属回収剤、金属回収方法及び触媒活性妨害剤

技術分野

[0001]
 本発明は、新規なハイパーブランチポリマーに関し、更に該ハイパーブランチポリマーを用いた金属回収剤、金属回収方法及び触媒活性妨害剤に関する。

背景技術

[0002]
 ハイパーブランチポリマーは、デンドリマーと共にデンドリティックポリマーに分類される。デンドリティックポリマーとは、頻繁に規則的な分岐を繰り返す分子構造で構成されたポリマーである。デンドリマーは、核となる分子を中心に、規則正しく完全に樹状分岐した構造をもつ、直径数nmの球形のポリマーであり、ハイパーブランチポリマーは、完全な樹状構造をもつデンドリマーとは異なり、不完全な樹状分岐をもつポリマーである。デンドリティックポリマーの中でも、ハイパーブランチポリマーは、比較的合成が容易で且つ安価であるため、工業的生産において有利である。ハイパーブランチポリマー及びその製造方法としては、例えば、特許文献1~3に開示される構造のハイパーブランチポリマー及びその製造方法が知られている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特許第5499477号公報
特許文献2 : 特許第5748076号公報
特許文献3 : 特許第5534244号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 ハイパーブランチポリマーは、その特殊な枝分かれ構造により多くの末端基を有し、末端基の種類によって様々な特性の発現が期待されている。本発明は、金属捕捉能力が高く、金属回収剤や触媒活性妨害剤として利用可能である、新規なハイパーブランチポリマーを提供する。

課題を解決するための手段

[0005]
 本発明の第1の態様に従えば、下記式(1)で表され、重量平均分子量が、1,000~1,000,000であることを特徴とするハイパーブランチポリマーが提供される。
[0006]
[化1]


 式(1)において、A は芳香環を含む基であり、A は、アミド基を含む基であり、A は、硫黄を含む基であり、R は、水素又は炭素数1~10個の置換若しくは無置換の炭化水素基であり、m1は0.5~11であり、n1は5~100である。
[0007]
 前記式(1)において、A が下記式(2)で表される基であり、A が、ジチオカルバメート基であってもよい。また、前記式(1)において、A が、下記式(3)で表される基であってもよい。
[0008]
[化2]


[0009]
[化3]


 式(3)において、R 1は炭素数が1~5である置換若しくは無置換のアルキレン基、又は単結合であり、R 2及びR 3は、それぞれ、炭素数が1~10である置換若しくは無置換のアルキル基又は水素である。
[0010]
 前記式(3)において、R 1が単結合であり、R 2が水素であり、R がイソプロピル基であってもよい。
[0011]
 前記式(1)において、A が、下記式(4)で表される基であってもよい。
[0012]
[化4]


 式(4)において、R 及びR は、それぞれ、炭素数が1~5である置換若しくは無置換のアルキル基、又は水素である。
[0013]
 式(4)において、R 及びR がエチル基であってもよい。
[0014]
 式(1)において、硫黄を含む基であるA のモル数に対する、A に含まれるアミド基の総モル数の比率が、0.5以上、1.5未満であってもよい。また、A が、ジチオカルバメート基であり、硫黄を含む基であるA のモル数に対する、A に含まれるアミド基の総モル数の比率が、0.5~1.5であってもよい。
[0015]
 式(1)において、R が、ビニル基であってもよい。また、前記ハイパーブランチポリマーが、上記式(1)において、R がビニル基のハイパーブランチポリマーと、R がエチル基のハイパーブランチポリマーとの混合物であってもよい。
[0016]
 本発明の第2の態様に従えば、金属が溶解している液体中の前記金属を回収する金属回収剤であって、第1の態様のハイパーブランチポリマーを含むことを特徴とする金属回収剤が提供される。
[0017]
 本発明の第3の態様に従えば、金属が溶解している液体中の前記金属を回収する金属回収方法であって、第1の態様のハイパーブランチポリマーを溶媒に溶解して、ハイパーブランチポリマー溶液を調製することと、前記ハイパーブランチポリマー溶液を基材上に塗布してハイパーブランチポリマー層を形成することと、前記ハイパーブランチポリマー層に前記液体を接触させ、前記液体中の前記金属を吸着させて回収することとを含む金属回収方法が提供される。
[0018]
 本発明の第4の態様に従えば、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨げる触媒活性妨害剤であって、第1の態様のハイパーブランチポリマーを含むことを特徴とする触媒活性妨害剤が提供される。

発明の効果

[0019]
 本発明は、金属捕捉能力が高く、金属回収剤や触媒活性妨害剤として利用可能な新規なハイパーブランチポリマーを提供する。

図面の簡単な説明

[0020]
[図1] 実施形態のハイパーブランチポリマーの模式図である。
[図2] 実施例1で合成したハイパーブランチポリマーA1のIRスペクトルである。
[図3] 実施例1で合成したハイパーブランチポリマーA1の H‐NMRスペクトルである。

発明を実施するための形態

[0021]
 本実施形態のハイパーブランチポリマーは、下記式(1)で表される。
[化5]


 式(1)において、A は芳香環を含む基であり、A はアミド基を含む基であり、A は硫黄を含む基であり、R は、水素又は炭素数1~10個の置換若しくは無置換の炭化水素基であり、m1は0.5~11であり、n1は5~100である。
[0022]
 A は、芳香環を含む基であれば、任意のものを用いることができるが、例えば、下記式(2)で表される基であることが好ましい。
[化6]


[0023]
 A が、式(2)で表される基である場合、本実施形態のハイパーブランチポリマーのハイパーブランチ構造は、スチレン骨格を有する。ハイパーブランチ構造がスチレン骨格を有すると、ハイパーブランチポリマーの耐候性、耐熱性の向上が見込まれる。
[0024]
 本実施形態のハイパーブランチポリマーは、複数の末端基を有する。上記式(1)で表されるハイパーブランチポリマーの末端基において、A は、アミド基を含む基であり、A は、硫黄を含む基である。また、m1は、各末端基におけるアミド基を含む基(A )の数(繰り返し数)mの平均値である。したがって、m1は整数でなくてもよい。本実施形態のハイパーブランチポリマーは、平均値であるm1が0.5~11であればよく、アミド基を含む基(A )を有さない末端基(m=0)を有してもよい。
[0025]
 以下に、上記式(1)中のm1と、各末端基におけるアミド基を含む基(A )の繰り返し数mについて更に説明する。図1に示す模式化したハイパーブランチポリマー100A~100Dは、末端基以外の中心部Sと、10個の末端基とを有するハイパーブランチポリマーの例である。白丸で示す末端基E1は、アミド基を含む基(A )を有さず(m=0)、黒丸で示す末端基E2は、アミド基を含む基(A )を1個有し(m=1)、縦斜線の丸で示す末端基E3は、アミド基を含む基(A )を2個有する(m=2)。ハイパーブランチポリマー100A及び100Bのように、アミド基を含む基(A )を有さない末端基E1が存在してもよい。また、ハイパーブランチポリマー100Cのように、全ての末端基において、アミド基を含む基(A )の数が同一であってもよいし、ハイパーブランチポリマー100A、100B及び100Dのように、各末端基におけるアミド基を含む基(A )の数は、同一でなくてもよい。各末端基におけるアミド基を含む基(A )の数(繰り返し数)mは、例えば、0~11である。式(1)のm1は、分子内におけるアミド基を含む基(A )の総数(分子内におけるmの合計)を末端基の数で除した商である。ハイパーブランチポリマー100A及び100Bにおいて、m1は0.5であり、ハイパーブランチポリマー100Cにおいて、m1は1.0であり、ハイパーブランチポリマー100Dにおいて、m1は1.5である。m1の値は、NMR法や元素分析法といった方法で定量できる。
[0026]
 本実施形態のハイパーブランチポリマーは、複数の末端基を有することにより、様々な機能を発現することが期待される。例えば、上記式(1)で表されるハイパーブランチポリマーの末端基は、アミド基及び硫黄を含む基を有するため、金属イオンと相互作用する。このような末端基を複数有する本実施形態のハイパーブランチポリマーは、金属イオンの多座配位子として作用し、金属イオンとキレート結合する。これにより、本実施形態のハイパーブランチポリマーは、金属を吸着(トラップ)できる。この機能を応用して、本実施形態のハイパーブランチポリマーは、例えば、金属回収剤や無電解メッキ触媒の触媒活性を妨げる触媒活性妨害剤として利用できる。
[0027]
 上記式(1)において、A はアミド基を含む基であれば特に限定されず、また、A に含まれるアミド基は、1級アミド基、2級アミド基、3級アミド基のいずれであってもよい。また、A は、アミド基を1個含む基であってもよいし、2個以上含む基であってもよい。A は下記式(3)で表される基であることが好ましい。A が下記式(3)で表される基であると、本実施形態のハイパーブランチポリマーは、例えば、金属捕捉能力が向上する。
[0028]
[化7]


 式(3)において、R 1は炭素数が1~5である置換若しくは無置換のアルキレン基、又は単結合であり、R 2及びR 3は、それぞれ、炭素数が1~10である置換若しくは無置換のアルキル基又は水素である。また、式(3)において、R 1は単結合であることが好ましく、R 2は水素であることが好ましく、R はイソプロピル基であることが好ましい。
[0029]
 上記式(1)において、A は、硫黄を含む基であれば特に限定されず、例えば、ジチオカルバメート基、トリチオカーボネート基、スルフィド基、チオシアン基等が挙げられ、中ででも、ジチオカルバメート基であることが好ましい。A 3がジチオカルバメート基であると、本実施形態のハイパーブランチポリマーは、合成が容易となり、また、金属捕捉能力が向上する。更に、A は、下記式(4)で表される基であることが好ましい。
[0030]
[化8]


 式(4)において、R 及びR は、それぞれ、炭素数が1~5である置換若しくは無置換のアルキル基、又は水素である。また、式(4)において、R 及びR はエチル基であることが好ましい。
[0031]
 本実施形態のハイパーブランチポリマーは、末端基に含まれるアミド基の数を増減させることにより、様々な機能を発現することが期待される。末端基に含まれるアミド基の数は、式(1)で表されるハイパーブランチポリマーにおける、硫黄を含む基であるA に対する、A に含まれるアミド基のモル比(以下、適宜「モル比(N/S)」と記載する)として表現できる。即ち、モル比(N/S)は、式(1)で表されるハイパーブランチポリマーにおいて、硫黄を含む基であるA のモル数(数)に対する、A に含まれるアミド基の総モル数(総数)の比率である。尚、式(1)において、A の1つのユニットに含まれるアミド基の数が1個である場合、モル比(N/S)は、m1の値にほぼ等しい。また、モル比(N/S)は、例えば、ハイパーブランチポリマーの H‐NMRスペクトル( H‐核磁気共鳴測定の分析結果)において、硫黄を含む基であるA と、A に含まれるアミド基とのプロトン面積強度の比から換算することができる。
[0032]
 本実施形態のハイパーブランチポリマーにおいて、モル比(N/S)は、0.5~11であってもよい。モル比(N/S)が上記範囲内であると、式(1)で表されるハイパーブランチポリマーは、汎用の溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)等に溶解可能である。また、モル比(N/S)を適宜設定することで、例えば、炭素数が5以下の低級アルコールに対する溶解性を制御できる。
[0033]
 モル比(N/S)は、0.5以上、1.5未満であってもよい。モル比(N/S)が上記範囲内であると、式(1)で表されるハイパーブランチポリマーは、シクロヘキサノン、トルエン等の比較的、極性の低い溶媒への溶解性が向上する。この理由は定かではないが、末端基に含まれるアミド基の数を1.5個未満とすることで、ハイパーブランチポリマーの極性が低下するためだと推測される。
[0034]
 ハイパーブランチポリマーは、まず、ハイパーブランチポリマー溶液を調製し、次に、ハイパーブランチポリマー溶液を基材上に塗布してハイパーブランチポリマー層を形成し、基材上のハイパーブランチポリマー層の形態で利用される場合がある。ハイパーブランチポリマー溶液は、高濃度であっても低粘度である。このため、複雑形状の基材に塗布しても、均一な膜厚の塗布層(ハイパーブランチポリマー層)を形成できる。更に、ハイパーブランチポリマー層が薄膜であっても、多くの末端基を含むため、十分な特性を示すことができる。ハイパーブランチポリマー溶液の溶媒は、基材の種類によって適宜選択する必要がある。
[0035]
 本実施形態のハイパーブランチポリマーにおいて、モル比(N/S)は、0.5~3.5であってもよく、好ましくは0.5~2.5であってもよい。モル比(N/S)が上記範囲内であると、式(1)で表されるハイパーブランチポリマーは、金属捕捉能力が向上する。この理由は定かではないが、モル比(N/S)がこの範囲より小さいと、上記式(1)で表されるハイパーブランチポリマーの末端基において、金属と相互作用するアミド基の数が十分でなく、モル比(N/S)がこの範囲より大きいと、末端基が長くなり、且つ金属と相互作用するアミド基が過剰となるため、末端基と金属とで形成するキレート構造に立体的な歪みが生じ、この結果、キレート結合が不安定化するためと推測される。
[0036]
 また、上記式(1)で表される本実施形態のハイパーブランチポリマーにおいて、A がジチオカルバメート基であり、モル比(N/S)が0.5~1.5であることが好ましい。A をジチオカルバメート基とする場合、上記式(1)で表されるハイパーブランチポリマーの末端基が比較的短く、モル比(N/S)が比較的小さい構造のハイパーブランチポリマーを効率よく合成できる。上記式(1)中のA がジチオカルバメート基であり、モル比(N/S)が0.5~1.5であるハイパーブランチポリマーは、高い金属捕捉能力を有する。
[0037]
 上記式(1)において、R は、水素又は炭素数1~10個の置換若しくは無置換の炭化水素基であれば、任意の炭化水素基を用いることができる。上記炭化水素基は、鎖状若しくは環状の飽和脂肪族炭化水素基、鎖状若しくは環状の不飽和脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基であってもよい。R が、置換の炭化水素基である場合の置換基は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シリル基又はエステル基等であってもよい。また、R は、無置換の炭化水素基であってもよく、例えば、ビニル基又はエチル基であってもよい。
[0038]
 本実施形態のハイパーブランチポリマーは、式(1)において、R が異なるハイパーブランチポリマーの混合物であってもよい。例えば、R が不飽和結合を有する場合、ハイパーブランチポリマーの合成過程において、不飽和結合の一部に何らかの付加反応が生じて飽和結合となる場合がある。この場合、上記式(1)において、R が不飽和炭化水素基のハイパーブランチポリマーと、R が飽和炭化水素基のハイパーブランチポリマーとの混合物が得られる。本実施形態のハイパーブランチポリマーは、上記式(1)において、R がビニル基のハイパーブランチポリマーと、R がエチル基のハイパーブランチポリマーとの混合物であってもよい。
[0039]
 本実施形態のハイパーブランチポリマーの重量平均分子量は、1,000~1,000,000である。また、本実施形態のハイパーブランチポリマーは、数平均分子量が、3,000~30,000であり、重量平均分子量が、10,000~300,000であることが好ましく、数平均分子量が、5,000~30,000であり、重量平均分子量が、14,000~200,000であることがより好ましい。数平均分子量又は重量平均分子量が上記範囲より小さいと、ハイパーブランチポリマーは水に溶解する虞がある。一方で、数平均分子量又は、重量平均分子量が上記範囲より大きいと、ハイパーブランチポリマーは、溶媒に対する溶解性が低下し、金属回収剤や触媒活性妨害剤としての使用が難くなる虞がある。尚、ハイパーブランチポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で測定される。
[0040]
 本実施形態のハイパーブランチポリマーの合成方法は、特に限定されず、任意の方法により合成できる。例えば、市販のハイパーブランチポリマーを出発物質として、本実施形態のハイパーブランチポリマーを合成してもよい。また、モノマーの合成、モノマーの重合、末端基修飾等を順に行って、本実施形態のハイパーブランチポリマーを合成してもよい。尚、本実施形態のハイパーブランチポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量、式(1)中のm1及びn1は、合成に用いる試薬の比率、合成条件等を任意の方法で調整することにより、所定の範囲内に調整することができる。
[0041]
 本実施形態のハイパーブランチポリマーの用途は、特に限定されない。例えば、金属の捕捉剤、多官能架橋剤、金属若しくは金属酸化物の分散剤又はコーティング剤、塗料、インキ、接着剤、樹脂フィラー、各種成形材料、ナノメートルサイズの多孔形成剤、化学的機械的研磨剤、機能物質の担時材料、ナノカプセル、フォトニック結晶、レジスト材料、光学材料、電子材料、情報記録材料、印刷材料、電池材料、医用材料、磁性材料、中間原材料等として好適に利用される。
[0042]
 特に、本実施形態のハイパーブランチポリマーは、それの金属を捕捉する性質を利用して、金属が溶解している液体中の金属を回収する金属回収剤として利用できる。例えば、以下の金属回収方法を実施してもよい。まず、ハイパーブランチポリマーを溶媒に溶解して、ハイパーブランチポリマー溶液を調製し、次に、ハイパーブランチポリマー溶液を基材上に塗布してハイパーブランチポリマー層を形成する。そして、ハイパーブランチポリマー層に金属が溶解している液体を接触させ、金属(金属イオン)を吸着させて回収する。基材として、表面積の大きい多孔体や繊維を選択した場合、金属が溶解する液体と金属回収剤(ハイパーブランチポリマー)との接触面積が大きくなり、金属の回収効率が向上する。金属が溶解している液体及び金属は、特に限定されない。金属が溶解している液体としては、例えば、海水、廃液、汚泥、下水等が挙げられ、金属としては、例えば、Pd、Pt、Ag、Au等の貴金属、Co、Ti、Nb、V、希土類元素等が挙げられる。ハイパーブランチポリマー層に吸着させて回収した金属は、例えば、回収した金属が貴金属等であり、再利用を目的とする場合には、金属を吸着したハイパーブランチポリマー層を基材ごと燃焼等して除去して金属を取り出してもよい。また、回収した金属が有害金属である場合には、金属を吸着したハイパーブランチポリマー層を基材ごと廃棄してもよい。
[0043]
 また、金属回収剤と同様に、金属を捕捉する性質を利用して、本実施形態のハイパーブランチポリマーは、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨げる触媒活性妨害剤として利用できる。例えば、基材表面の一部分のみに無電解メッキ膜を形成するとき、無電解メッキ膜を形成しない部分にハイパーブランチポリマー溶液を塗布してハイパーブランチポリマー層を形成する。その後、ハイパーブランチポリマー層を形成した基材に、無電解メッキ触媒液及び無電解メッキ液を接触させることで、ハイパーブランチポリマー層が形成されていない部分にのみ、無電解メッキ膜を形成できる。この理由は定かでは無いが、以下のように推測される。基材上のハイパーブランチポリマーは、無電解メッキ触媒液中の無電解メッキ触媒(Pd等)を金属イオンの状態で、強固にトラップする。このため、金属イオンは、還元されて酸化数0(ゼロ)の金属となることができない。Pdイオンのままでは、無電解触媒活性を発現しないため、ハイパーブランチポリマー層上には無電解メッキ膜が形成されないと推測される。尚、このメカニズムは推定に過ぎず、本実施形態はこれに限定されない。
実施例
[0044]
 以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例及び比較例により制限されない。
[0045]
[実施例1]
<ポリマーA1の合成>
 式(6)で表される、市販のハイパーブランチポリマー(ポリマーD)にアミド基を有する基を導入して、式(5)で表されるポリマーA1を合成した。式(5)で表されるポリマーA1は、式(1)で表されるポリマーであり、式(1)において、A が式(2)で表される基であり;A が式(3)で表される基であって、R 1が単結合であり、R 2が水素であり、R がイソプロピル基であり;A が式(4)で表されるジチオカルバメート基であり、R 及びR がエチル基であり、R がビニル基又はエチル基である。
[0046]
 まず、式(6)で表されるハイパーブランチポリマー(ポリマーD)(日産化学工業製、ハイパーテック HPS-200)(1.3g、ジチオカルバメート基:4.9mmol)、N‐イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)(1.10g、9.8mmol)、α,α’‐アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(81mg、0.49mmol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)(10mL)をシュレンク管へ加え、凍結脱気を3回行った。その後、オイルバスを用いて70℃で一晩(18時間)撹拌して反応させ、反応終了後、氷水によって冷却し、THFで適度に希釈した。次に、ヘキサン中で再沈殿させ、得られた固体を60℃で一晩真空乾燥させた。乾燥させた固体を更にTHFで溶解し、水で再沈殿させた。得られた固体を60℃で一晩真空乾燥し、生成物を得た。生成物の収率は、69%であった。
[0047]
 生成物の H‐NMR(核磁気共鳴)測定及びIR(赤外吸収スペクトル)測定を行った。この結果、式(6)で表される市販のハイパーブランチポリマー(ポリマーD)にアミド基が導入されて、式(5)で表されるポリマーA1が生成していることが確認できた。図2に示すポリマーA1のIRスペクトルには、アミド基に由来する吸収a1(1600~1700cm -1付近)が出現していた。また、図3に示すポリマーA1の H‐NMRスペクトルのPeak1(4.0ppm)及びPeak2(3.7ppm)に基づいて、以下の式により、硫黄を含む基であるA のモル数に対する、A に含まれるアミド基の総モル数の比率(モル比:N/S)を計算した。モル比(N/S)は、0.96であった。
[0048]

      (N/S)=(I P1-I P2)/(I P2/2)

       I P1:Peak1のピーク面積
       I P2:Peak2のピーク面積

 図3に、ポリマーA1の構造の模式図を併せて示す。Peak1は、ポリマーA1の末端基における、硫黄を含む基(A )中の2個の水素(b)及びアミド基を含む基(A )中の1個の水素(c)に由来するピークであり、Peak2は、硫黄を含む基(A )中の2個の水素(a)に由来するピークである。
[0049]
 次に、生成物の分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定した。分子量は、数平均分子量(Mn)=9,946、重量平均分子量(Mw)=24,792であり、ハイパーブランチ構造独特の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)とが大きく異なった値であった。
[0050]
 ポリマーA1
[化9]


 ポリマーD
[化10]


[0051]
[実施例2]
<ポリマーA2の合成>
 NIPAMを2.20g、反応時間を24時間とした以外は、実施例1と同様の方法により、ポリマーA2を合成した。実施例1と同様の方法により、生成物(ポリマーA2)の H‐NMR測定、IR測定及び分子量測定を行った。この結果、ポリマーA2は、ポリマーA1と同様に式(5)で表されるハイパーブランチポリマーであることが確認できた。また、モル比(N/S)は、1.22であり、数平均分子量(Mn)=10,700、重量平均分子量(Mw)=25,200であった。
[0052]
[実施例3]
<ポリマーA3の合成>
 反応時間を8時間とした以外は、実施例1と同様の方法により、ポリマーA3を合成した。実施例1と同様の方法により、生成物(ポリマーA3)の H‐NMR測定、IR測定及び分子量測定を行った。この結果、ポリマーA3は、ポリマーA1と同様に式(5)で表されるハイパーブランチポリマーであることが確認できた。また、モル比(N/S)は、0.78であり、数平均分子量(Mn)=9,400、重量平均分子量(Mw)=24,000であった。
[0053]
[評価]
 実施例1で合成したポリマーA1~A3について、以下に記載する評価を行った。
[0054]
(1)溶解性の評価
 表1に示す4種類の溶媒に、濃度が2重量%となるようにポリマーA1~A3を加え、溶解するか試験した。試験は室温で行った。結果を表1に示す。
[0055]
[表1]


[0056]
 ポリマーA1~A3は、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルエンの汎用の溶媒に溶解した。
[0057]
(2)金属捕捉能力の評価1
 ハイパーブランチポリマー層を形成した基材に、無電解メッキ触媒(Pd)の付与及び無電解メッキ処理を行い、ハイパーブランチポリマーの金属捕捉能力を評価した。金属捕捉能力が高い場合、ハイパーブランチポリマーは多くの無電解メッキ触媒を強固に吸着(トラップ)するため、無電解メッキ反応が生じ難い。一方、金属捕捉能力が低い場合、ハイパーブランチポリマーが吸着する無電解メッキ触媒の数は少なく、また、吸着も強固ではないため、無電解メッキ反応が生じ易い。このように、ハイパーブランチポリマー層上のメッキ反応性は、ハイパーブランチポリマーの金属捕捉能力によって決定される。本評価では、ハイパーブランチポリマーを触媒活性妨害剤として用い、触媒活性妨害剤の効果の高いポリマーを金属捕捉能力が高いと評価した。本評価は、比較の為に、ポリマーA1~A3に加えて、ポリマーDについても同様の評価を行った。
[0058]
<評価方法>
 ポリマーA1をトルエンに溶解して、ポリマー濃度0.5重量%のポリマー溶液を調製した。樹脂基材(ポリアミド、東洋紡製、バイロアミド)に、ポリマーA1の溶液をディップコートして、乾燥し、ポリマーA1のポリマー層を形成した。同様の方法により、ポリマーA2、A3及びDを用いて、樹脂基材上にポリマーA2、A3及びDのポリマー層を形成した。
[0059]
 次に、ポリマー層を形成した樹脂基材に、市販の無電解メッキ用触媒液を用いて以下の方法により、無電解メッキ触媒を付与した。まず、樹脂基材を常温の感応性付与剤(奥野製薬工業製、センシタイザー)に浸漬し、5分間超音波を照射してセンシタイザー処理を行い、樹脂基材表面にスズコロイドを吸着させた。その後、樹脂基材を感応性付与剤から取り出し、十分に水洗した。次に、樹脂基材を常温の触媒化処理剤(奥野製薬工業製、アクチベータ)に浸漬し、2分間放置してアクチベータ処理を行い、樹脂基材表面にPdを吸着させた。その後、樹脂基材を触媒化処理剤から取り出し、十分に水洗した。
[0060]
 無電解メッキ触媒を付与した樹脂基材を61℃の無電解銅メッキ液(奥野製薬工業製、OPC-NCA)に15分浸漬し、無電解メッキ膜の生成の有無を判断した。
[0061]
 ポリマーA1~A3及びDの金属捕捉能力を以下の評価基準に従って評価した。評価結果を表2に示す。
[0062]
<金属捕捉能力の評価基準>
○:無電解メッキ膜が生成しなかった。したがって、金属捕捉能力は高い。
×:無電解メッキ膜が生成した。したがって、金属捕捉能力は低い。
[0063]
[表2]


[0064]
 表2に示すように、ポリマーA1~A3は、金属捕捉能力が高かった。一方、末端基にアミド基を含まないポリマーD((N/S)=0)は、金属捕捉能力が低かった。この理由は、ポリマーDは、末端基に金属と相互作用するアミド基を有さないため金属をトラップすることができないためと推測される。
[0065]
(3)金属捕捉能力の評価2
 ハイパーブランチポリマー層を形成した基材を金属が溶解している液体に浸漬して金属の回収を行い、ハイパーブランチポリマーの金属捕捉能力を評価した。即ち、本評価では、ハイパーブランチポリマーを金属回収剤として用いた。
[0066]
<評価方法>
 まず、金属が溶解している液体として、以下の3種類の溶液を用意した。それぞれの溶液中の金属濃度は、150ppmである。

Pd溶液:市販のPd水溶液(奥野製薬工業製、アクチベータ)
Pt溶液:テトラクロロ白金(II)酸カリウム水溶液
Ag溶液:硝酸銀水溶液
[0067]
 上述した(2)金属捕捉能力の評価1と同様の方法により、ポリマーA1を用いて、ポリマー層を有する樹脂基材を製造した。また、比較のため、ポリマー層を有さない樹脂基材も用意した。ポリマー層を有する樹脂基材、ポリマー層を有さない樹脂基材をそれぞれ、Pd溶液に5分間浸漬し、水洗、乾燥を行った。同様に、Pt溶液及びAg溶液にも、ポリマー層を有する樹脂基材、ポリマー層を有さない樹脂基材をそれぞれ浸漬し、水洗、乾燥を行った。
[0068]
 各溶液に浸漬した樹脂基材の表面をXPS分析(X線光電子分光)した。Pd溶液に浸漬した樹脂基材ではPdの定量を行い、Pt溶液に浸漬した樹脂基材ではPtの定量を行い、そして、Ag溶液に浸漬した樹脂基材ではAgの定量を行った。結果を表3に示す。
[0069]
[表3]


[0070]
 表3に示すように、Pd、Pt及びAgの全てにおいて、ポリマー層を有する樹脂基材の方が、多くの金属を回収できた。この結果から、ポリマーA1が、金属であるPd、Pt及びAgを捕捉する能力を有することが確認できた。

産業上の利用可能性

[0071]
 本発明の新規なハイパーブランチポリマーは、金属捕捉能力を有する。このため、例えば、金属が溶解している液体中の前記金属を回収する金属回収剤や、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨げる触媒活性妨害剤として利用可能である。

請求の範囲

[請求項1]
 下記式(1)で表され、重量平均分子量が、1,000~1,000,000であることを特徴とするハイパーブランチポリマー。
[化1]


 式(1)において、
 A は芳香環を含む基であり、
 A は、アミド基を含む基であり、
 A は、硫黄を含む基であり、
 R は、水素又は炭素数1~10個の置換若しくは無置換の炭化水素基であり、
 m1は0.5~11であり、n1は5~100である。
[請求項2]
 前記式(1)において、
 A が下記式(2)で表される基であり、
 A が、ジチオカルバメート基であることを特徴とする請求項1に記載のハイパーブランチポリマー。
[化2]


[請求項3]
 前記式(1)において、
 A が、下記式(3)で表される基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハイパーブランチポリマー。
[化3]


 式(3)において、
 R 1は炭素数が1~5である置換若しくは無置換のアルキレン基、又は単結合であり、
 R 2及びR 3は、それぞれ、炭素数が1~10である置換若しくは無置換のアルキル基又は水素である。
[請求項4]
 前記式(3)において、R 1が単結合であり、R 2が水素であり、R がイソプロピル基であることを特徴とする請求項3に記載のハイパーブランチポリマー。
[請求項5]
 前記式(1)において、
 A が、下記式(4)で表される基であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のハイパーブランチポリマー。
[化4]


 式(4)において、
 R 及びR は、それぞれ、炭素数が1~5である置換若しくは無置換のアルキル基、又は水素である。
[請求項6]
 式(4)において、R 及びR がエチル基であることを特徴とする請求項5に記載のハイパーブランチポリマー。
[請求項7]
 式(1)において、
 硫黄を含む基であるA のモル数に対する、A に含まれるアミド基の総モル数の比率が、0.5以上、1.5未満であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のハイパーブランチポリマー。
[請求項8]
 式(1)において、
 A が、ジチオカルバメート基であり、
 硫黄を含む基であるA のモル数に対する、A に含まれるアミド基の総モル数の比率が、0.5~1.5であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のハイパーブランチポリマー。
[請求項9]
 式(1)において、R が、ビニル基であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のハイパーブランチポリマー。
[請求項10]
 前記ハイパーブランチポリマーが、上記式(1)において、R がビニル基のハイパーブランチポリマーと、R がエチル基のハイパーブランチポリマーとの混合物であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のハイパーブランチポリマー。
[請求項11]
 金属が溶解している液体中の前記金属を回収する金属回収剤であって、請求項1~10のいずれか一項に記載のハイパーブランチポリマーを含むことを特徴とする金属回収剤。
[請求項12]
 金属が溶解している液体中の前記金属を回収する金属回収方法であって、
 請求項1~10のいずれか一項に記載のハイパーブランチポリマーを溶媒に溶解して、ハイパーブランチポリマー溶液を調製することと、
 前記ハイパーブランチポリマー溶液を基材上に塗布してハイパーブランチポリマー層を形成することと、
 前記ハイパーブランチポリマー層に前記液体を接触させ、前記液体中の前記金属を吸着させて回収することとを含む金属回収方法。
[請求項13]
 無電解メッキ触媒の触媒活性を妨げる触媒活性妨害剤であって、請求項1~10のいずれか一項に記載のハイパーブランチポリマーを含むことを特徴とする触媒活性妨害剤。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]