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1. (WO2018131445) 溶剤系インク組成物
Document

明 細 書

発明の名称 溶剤系インク組成物

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006   0007   0008   0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012   0013   0014   0015  

図面の簡単な説明

0016  

発明を実施するための形態

0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110  

実施例

0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126  

符号の説明

0127  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : 溶剤系インク組成物

技術分野

[0001]
 本発明は、溶剤系インク組成物に関する。

背景技術

[0002]
 インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、より安定して高品質な記録物を得ることについて種々の検討がなされている。
[0003]
 例えば、特許文献1には、保存安定性に優れるとともに、硬化性に優れ、光沢感、耐擦性に優れた印刷部を有し、耐久性に優れた印刷物の製造に好適に用いることのできる紫外線硬化型インクジェット組成物を提供することを目的として、インクジェット方式により吐出されるものであって、重合性化合物と、表面処理が施された金属粒子と、特定の部分構造を有する物質とを含む紫外線硬化型インクジェット組成物が開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2012-255143号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 特許文献1に記載されるような紫外線硬化型インクジェット組成物は、金属粒子が重合性化合物に対して活性を有していることに起因するゲル化を抑制することにより、優れた保存安定性を有するものである。このような紫外線硬化型のインク組成物は、重合性化合物が主要な溶媒であるが、それに対して、有機溶剤を主要な溶媒とするのが溶剤系インク組成物である。これらのインク組成物は、溶媒中で金属粒子が反応することが問題となり得る点では共通するが、その反応の主な対象物は互いに異なる。即ち、紫外線硬化型のインク組成物は、金属粒子と重合性化合物との反応が主な問題となるのに対して、溶剤系インク組成物は、金属粒子と不純物である水や酸素との反応と、それに伴う金属粒子同士の凝集とが主な問題である。ここで、特許文献1に記載されるような紫外線硬化型インクジェット組成物を、金属粒子を変えることなく、仮に有機溶剤を主要な溶媒とするものに置き換えて溶剤系インク組成物とし、インクジェット法により吐出しても、優れた吐出安定性を得ることはできない。
[0006]
 一般的に、金属粒子を含むインク組成物をインクジェット法によって吐出する場合は、金属粒子の平均粒子径が小さいほど吐出安定性が良好になる傾向にある。その理由は、金属粒子の微細化と粗大粒子の低減とに起因するものと推察される。
[0007]
 一方、鱗片状の金属粒子は異方性が高いため、ピエゾ方式のインクジェット法を採用した場合には、吐出不良が発生しやすくなり、金属粒子の粒子径を小さくしなければ、良好な吐出安定性が得られにくい。他方、金属粒子の粒子径を小さくした場合には、吐出して得られる塗膜について良好な光沢性が得られない。その理由は、金属粒子の微細化に伴ってアスペクト比が低下することが考えられ、また、インク組成物に含まれる有機溶剤が乾燥及び吸収されて光沢が発現していく過程で、金属粒子が対流の影響を受けやすいことにより被記録媒体表面に並行になりにくくなってしまうことも考えられる。例えば、平均粒子径が1μm以下の金属粒子を用いた場合には、光沢の低下が顕著になる場合がある。
[0008]
 ここで、金属粒子の表面を、疎水性の表面処理剤で処理すると、金属粒子の表面自由エネルギーが低下して、インク組成物が乾燥する過程で、液滴の気液界面に金属粒子が並びながら、有機溶剤の吸収及び乾燥されて高い光沢の状態を維持することができる(「リーフィング効果」ともいう。)。特に、フッ素系の表面処理剤で処理した金属粒子を用いた場合に、より高い光沢が得られる傾向にある。
[0009]
 ただし、フッ素系の表面処理剤を用いた金属粒子を含むインク組成物は、所定の有機溶剤との相溶性が低下する場合があり、また、ピエゾ方式のインクジェット法のように圧電素子でインク組成物を高速に高周波数で吐出する方式に適用すると、金属顔料の分散性が不安定となることに起因して、優れた吐出安定性を得ることができない傾向にある。これは、異方性が高く、表面自由エネルギーの低い金属粒子が互いに干渉しあって、ピエゾと共に流動する有機溶剤の運動に高速で追従できなくなってくるためと推察される。
[0010]
 そこで、本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、インクジェット法により吐出される場合に、吐出安定性に優れる溶剤系インク組成物を提供することを目的とする。特に、インクジェット法のピエゾ方式で高周波数、高飛翔スピードで吐出した場合においても、吐出安定性に優れる溶剤系インク組成物を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0011]
 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、有機溶剤と表面処理された金属粉末とポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物とを含み、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物の含有量はインクの総量に対して0.1質量%以上10.0質量%以下であり、表面処理された金属粉末はアルミニウム又はアルミニウム合金を含有し、かつ、フッ素系化合物の表面処理剤で表面処理されている、溶剤系インク組成物を用いることにより、分散の安定性が高いため長期保存安定性が高く、吐出安定性に優れることを見出した。
[0012]
 また、上記溶剤系インク組成物では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物を含むことにより、分子の立体障害が新たに金属粉末の表面に導入され、金属粉末同士の距離が近くなりすぎず、金属粒子間の干渉が抑制され、高周波における凝集抑制により吐出安定性に優れ、その結果、優れた光沢性を得られつつ、吐出安定性にも優れることを見出し、本発明を完成させた。
[0013]
 すなわち、本発明は、有機溶剤と、表面処理された金属粉末と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物と、を含み、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物の含有量は、インクの総量に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下であり、前記表面処理された金属粉末は、アルミニウム又はアルミニウム合金を含有し、かつ、フッ素系化合物の表面処理剤で表面処理されている、溶剤系インク組成物である。
[0014]
 また、本発明に係る溶剤系インク組成物において、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物は、下記式(5)で表される化合物又はその塩であると好ましい。
 RO[(CH 2CH 2O) nmPO(OH) 3-m   (5)
(式中、Rは、アルキル基を示し、nは、1以上の整数を示し、mは、1以上3以下の整数を示す。)
[0015]
 さらに、本発明に係る溶剤系インク組成物において、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物は、上記式(5)中のnが1以上25以下を示すポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸であるとより好ましく、前記表面処理された金属粉末の平均粒子径が、0.2μm以上1.0μm以下であると好ましく、前記表面処理された金属粉末の形状が、鱗片状であると好ましく、前記表面処理された金属粉末の平均厚さが、10nm以上90nm以下であるとより好ましい。

図面の簡単な説明

[0016]
[図1] 実施形態に用い得るインクジェット記録装置を模式的に示す斜視図である。
[図2] 本実施形態に係る吐出ヘッドを模式的に示す分解斜視図である。
[図3] 本実施形態に係る吐出ヘッドの要部を模式的に示す断面図である。

発明を実施するための形態

[0017]
 以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で、適宜に変形して実施できる。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
[0018]
〔溶剤系インク組成物〕
 本実施形態の溶剤系インク組成物(以下、「溶剤系組成物」、「インク組成物」、「組成物」ともいう。)は、有機溶剤と、表面処理された金属粉末と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物とを含む。また、そのポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物の含有量は、インクの総量に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下である。さらに、その表面処理された金属粉末は、アルミニウム又はアルミニウム合金を含有し、かつ、フッ素系化合物の表面処理剤で表面処理されている。ここで、「溶剤系」とは、有機溶剤を主要な溶媒とすることを意味する。
[0019]
 本実施形態の組成物は、フッ素系化合物の表面処理剤で表面処理された、アルミニウム又はアルミニウム合金を含有し、かつ、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物を含むことにより、インクジェット法により吐出される場合に、優れた吐出安定性を得ることが可能となる。この要因は、次のように推察される(ただし、要因はこれに限定されない。)。従来の溶剤系インク組成物は、アルミニウム又はアルミニウム合金を含有する金属粉末を含む場合に、インクジェット法により吐出される際の加熱や加圧のストレスにより、その金属粉末同士の凝集やその金属粉末が有機溶剤中の不純物である水や酸素と反応することに起因して、吐出安定性に劣る。特にそれは、溶剤系インク組成物を、ピエゾ方式のインクジェット法により高周波数で吐出する場合に顕著である。また、その金属粉末をフッ素系化合物の表面処理剤により表面処理したとしても、インクジェット法により吐出する際のストレスにより、金属粉末の表面から可逆的又は不可逆的に表面処理剤が外れ、金属粉末同士の凝集や水、酸素との反応が生じ、優れた吐出安定性を得ることはできない。一方、本実施形態の溶剤系インク組成物は、フッ素系化合物の表面処理剤で表面処理された、アルミニウム又はアルミニウム合金を含有する金属粉末を含む場合にも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物を含有することにより、インクジェット法により吐出される際の加熱や加圧のストレス条件下においても、金属粉末の表面に表面処理剤が強く保持されることに起因して、金属粉末同士の凝集や水、酸素との反応が抑制されると推察される。これにより、組成物の吐出安定性に優れる。さらに、光沢性を得るために必要な量の金属粉末を含有させることができるため、光沢性にも優れる。
[0020]
 さらに、従来の表面処理された金属粉末を含む組成物では、光沢性と吐出安定性とのバランスを図ることが困難である。特に、インクジェット法によってインク組成物を高周波で吐出する場合に吐出不良が増大する傾向にある。例えば、フッ素含有リン酸エステルで表面処理された金属粉末は、その表面自由エネルギーが減少しているため、インク組成物中に金属粉末が分散しているよりも、金属粉末同士が近距離で凝集しているほうが、疎水性相互作用により安定になる。このため、ピエゾ方式のインクジェット法を採用した場合に、インクジェット装置の圧力室でせん断応力が強くかかるような条件(例えば、高速で高電圧の条件)により、金属粉末同士の距離が近づき、軟凝集が生じる。軟凝集が生じることにより、流動性が低下し、圧力室からノズル周辺のインク組成物の流動が滞り、インク組成物の供給に影響が生じることで、吐出不良が増大するものと推察される。一方、本実施形態の組成物では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物を含むことにより上述した軟凝集が解れやすくなる効果が生まれる。具体的にはフッ素系の表面処理剤で表面処理された金属粉末の表面にポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物が吸着・配位し、分子の立体障害が新たに金属粉末の表面に導入される。その結果、金属粉末同士の距離が近くなりすぎず、金属粒子間の干渉が抑制され、高周波における吐出安定性に優れ、その結果、塗膜形成時においても金属粉末同士が凝集せずに乾燥して光沢面を形成するために、フッ素系の表面処理剤のみを用いたときと同程度以上の優れた光沢性を得られる。また、本実施形態の組成物では、フッ素系表面処理剤の化学構造単独と比較してポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物の化学構造(特にポリオキシエチレン構造)に起因して、金属粉末と所定の有機溶剤との相溶性が良好である。同様に、金属粉末と有機化合物との相溶性も高い為、金属粉末により形成された光沢表面の上に保護や意匠性向上の目的で、色材や樹脂などの有機薄膜層を設けた場合のインクの濡れ広がりも良く塗膜の厚みの均一性や密着性も良好となる。
[0021]
 本実施形態の溶剤系組成物は、少なくとも、後述する表面処理された金属粉末と有機溶剤とを含む。溶剤を含む組成物には大別して、リアルソルベント(高有機溶剤)組成物と、エコソルベント(低有機溶剤)組成物の2つがある。エコソルベント組成物は、低臭気性で人体や環境に配慮した組成物であり、労働安全衛生法が定める有機溶剤に該当しない、有機溶剤中毒予防則に定める第1種及び第2種有機溶剤にも該当しない、又は消防法に定める設置環境の屋内作業場において局所排気装置の義務付対象外となる有機溶剤を使用する。本実施形態の溶剤系組成物は、このようなエコソルベント組成物に用いられ得る有機溶剤を含むことが好ましい。
[0022]
 本実施形態の組成物は、吐出安定性に優れる観点から、非水系であることが好ましい。「非水系」とは、水を実質的に含有しないことである。また、組成物の調製において主な溶媒成分として意図的に水を添加しない組成物であることがより好ましく、組成物には、不純物として不可避的に水分を含んでしまう場合も包含される。組成物中の水の含有量は、吐出安定性の観点から、その組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは3.0質量%以下であり、より好ましくは2.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下である。その水の含有量の下限は特に限定されず、検出限界以下であってもよく、0.01質量%であってもよい。水の含有量は、公知の方法で定量することができる。
[0023]
 組成物における水の含有量を調整する方法としては、例えば、組成物の各成分から水を除去する方法、具体的には有機溶剤に混入した水を除去する方法、組成物から水を除去する方法、及び組成物の調製時における水の混入を抑制する方法が挙げられる。このうち、有機溶剤に混入した水を除去する方法として、より具体的には、有機溶剤を蒸留精製する方法、水を選択的に透過する半透過膜に有機溶剤を透過させる方法、及び水を吸着する水吸着剤に有機溶剤に混入した水を選択的に吸着させる方法が挙げられる。これらの中では、水分量をより効率的かつ確実に低減できる観点から、蒸留精製する方法が好ましい。
[0024]
 本実施形態の組成物は、インク用であり、インクジェット法により吐出して用いることができる。以下、本実施形態の組成物をインク組成物の1実施形態である、インクジェット記録用インク組成物として用いる場合についてより詳細に説明するが、本実施形態の組成物は、これに限定されない。
[0025]
〔分散液〕
 本実施形態の組成物は、例えば、溶媒(分散媒)とその溶媒中に分散された表面処理された金属粉末とを含む分散液と、必要に応じて有機溶剤とを混合して得られる。分散液は、特に限定されないが、例えば、溶媒である有機溶剤中の母粒子の金属粉末及び表面処理剤を、所定の温度下で混合することにより、母粒子の金属粉末が表面処理剤により表面処理されて、表面処理された金属粉末を含む液として得られる。また、表面処理された金属粉末を分散液に含まれた状態ではなく、単体でその他の原料と混合することで組成物を得てもよいが、有機溶剤を溶媒として用いることが好ましい。ただし、表面処理された金属粉末を得た後に、溶媒は公知の方法で取り除くこともできるため、特に溶媒は限定されない。
[0026]
<表面処理された金属粉末>
 本実施形態の表面処理された金属粉末は、母粒子(表面処理剤による表面処理を施される粒子)である金属粉末を表面処理剤で表面処理したものである。母粒子は、少なくとも、表面付近を含む領域がアルミニウム又はアルミニウム合金のアルミ金属(以下、「アルミ金属」という。)で構成されたものであればよく、例えば、全体がアルミ金属で構成されたものであってもよいし、非金属材料で構成されたコア部と、そのコア部を被覆するアルミ金属で構成された被膜とを備えるものであってもよい。アルミ金属を用いることにより、インク組成物の光沢性に優れ、原料コストにも優れる。なお、表面処理された金属粉末は、少なくともアルミ金属を含んでいればよく、他の金属をさらに含むものであってもよい。
[0027]
 アルミニウム合金としては、被記録媒体のような媒体に付着したときに光沢性を呈し得るものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウムと、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、及び銅からなる群より選ばれる1種又は2種以上との合金が挙げられる。
[0028]
 また、母粒子は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、気相成膜法によりアルミ金属で構成された膜を形成し、その後、当該膜を粉砕することにより得られたものであるのが好ましい。これにより、光沢性により優れ、かつ、各粒子間での特性のばらつきを抑制することができる傾向にある。また、母粒子の製造方法として上記方法を用いることにより、比較的薄い金属粉末であっても好適に製造することができる傾向にある。
[0029]
 母粒子は、粒子状であれば特に限定されず、球状、紡錘形状、針状、鱗片状等のいかなる形状のものであってもよい。この中では、鱗片状が好ましい。すなわち、表面処理された金属粉末も同様に、鱗片状であると好ましい。鱗片状であることにより、インク組成物が付着する被記録媒体上で、粒子の主面が被記録媒体の表面形状に沿うように、表面処理された金属粉末を配置することができ、表面処理された金属粉末を構成する金属材料が本来有している光沢性が得られやすくなり、印刷物の耐擦性をより優れたものとすることができる傾向にある。
[0030]
 本実施形態において、鱗片状とは、平板状、湾曲板状等のように、所定の角度から観察した際(平面視した際)の面積が、当該観察方向と直交する角度から観察した際の面積よりも大きい形状のことをいい、特に、投影面積が最大となる方向から観察した際(平面視した際)の面積S 1[μm 2]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最大となる方向から観察した際の面積S 0[μm 2]との比率(S 1/S 0)が、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは5.0以上であり、さらに好ましくは8.0以上である。比率(S 1/S 0)は、後述する表面処理された金属粉末の平均粒子径及び平均厚さから求めることができる。
[0031]
 母粒子が鱗片状をなすものである場合、表面処理された金属粉末の平均厚さは、好ましくは10nm以上90nm以下であり、より好ましくは12nm以上60nm以下であり、さらに好ましくは14nm以上35nm以下である。これにより、母粒子が鱗片状であることによる効果がより顕著に発揮される。
[0032]
 表面処理された金属粉末の平均厚さは以下の方法で測定した。
 まずアセトンで10倍以上に希釈した表面処理された金属顔料を平滑なガラス基板上に数滴滴下し、2時間以上自然乾固させる。
 次に、原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ株式会社製:「SPA400」)を用いてこのガラス基板上に強制配向したアルミニウム顔料を30点抽出し、タッピングモードによってそれぞれの厚みを測定する。
 測定した30点の厚みのうち、上位および下位の各3点の厚みを除外した残りの24点の厚みの平均値を求め、その平均値を平均厚みとする。
[0033]
 表面処理された金属粉末の平均粒子径は、好ましくは0.2μm以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.3μm以上0.7μm以下であり、さらに好ましくは0.4μm以上0.6μm以下である。平均粒子径が1.0μm以下であることにより、インク組成物を用いて製造される記録物の光沢性をより優れたものとすることができる傾向にある。また、組成物の吐出安定性をさらに優れたものとすることができる傾向にある。他方、平均粒子径が0.2μm以上であることにより、記録物の光沢性が得られ易くなる傾向にある。なお、平均粒子径は体積基準で求める。
[0034]
 表面処理された金属粉末の平均粒子径は、測定器として、マイクロトラックMT-3000(日機装株式会社)を使用し、表面処理された金属粉末をジエチレングリコールジエチルエーテルで最適な倍率に希釈した溶液を装置流路内に循環させて4回の測定結果の平均により算出した。
[0035]
 表面処理された金属粉末の最大粒子径は、好ましくは5.0μm以下であり、より好ましくは4.5μm以下であり、さらに好ましくは4.0μm以下である。これにより、組成物の吐出安定性をより優れたものとすることができる傾向にある。なお、金属粉末の最大粒子径の下限は特に限定されず、例えば、1.0μmであってもよい。
[0036]
 なお、表面処理された金属粉末の平均厚さ、平均粒子径、及び最大粒子径における上記の各範囲とするためには、その原料である母粒子の平均厚さ、平均粒子径、及び最大粒子径が同様の範囲のものを用いればよい。
[0037]
 分散液中の母粒子の含有量は、分散液中の溶媒の質量(100質量%)に対して、好ましくは0.5質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは3.0質量%以上10質量%以下である。母粒子の含有量をこのような範囲にすることにより、母粒子の分散性を更に良好にすると共に、最終的に得られるインク組成物に含まれる表面処理された金属粉末を所望の含有量以上にすることが一層容易となる。
[0038]
 組成物中における表面処理された金属粉末の含有量は、好ましくは0.2質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上10.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.2質量%以上3.0質量%以下である。表面処理された金属粉末の含有量をこのような範囲にすることにより、記録物の光沢性と組成物の吐出安定性とをさらにバランスよく良好なものとすることができる。
[0039]
<溶媒(分散媒)>
 分散液中の溶媒(分散媒)は、表面処理された金属粉末を分散できるものであれば特に限定されない。表面処理された金属粉末の分散をより良好にする観点から、溶媒(分散媒)は、後述する組成物に含まれる有機溶剤として例示されたものが好ましく、その中でも組成物において好ましいとされる有機溶剤が同様に好ましい。分散液に含有させる有機溶剤とそれとは別に組成物に含有させる有機溶剤は、互いに同一の有機溶剤であってもよく、異なる有機溶剤であってもよい。
[0040]
<表面処理剤>
 次に、母粒子の表面処理に用いられるフッ素系化合物について説明する。上述したように、本実施形態に係る溶剤系インク組成物に含まれる金属粉末は、上記母粒子がフッ素系化合物によって表面処理されたものである。このようなフッ素系化合物としては、フッ素系ホスホン酸、フッ素系カルボン酸、フッ素系スルホン酸、フッ素系シラン、およびこれらの塩などを好ましく用いることができる。これらのフッ素系化合物であれば、ホスホン酸基、カルボキシ基、スルホン酸基などが、母粒子の表面に結合することにより被膜を形成することができるので、耐水性が付与された卑金属顔料が得られる。これにより、卑金属顔料が水性媒体中における水と反応することを効果的に抑制でき、また分散性にも優れた卑金属顔料分散液が得られる。これらの中でも、ホスホン酸基が母粒子表面への結合能力に特に優れていることから、フッ素系ホスホン酸およびその塩がより好ましい。
[0041]
 フッ素系ホスホン酸およびその塩としては、下記一般式(1)で表される構造を有するものであることが好ましい。
[0042]
[化1]


[0043]
 上記式(1)中、R 1はそれぞれ独立にCF 3(CF 2m-、CF 3(CF 2m(CH 2l-、CF 3(CF 2m(CH 2O) l-、CF 3(CF 2m(CH 2CH 2O) l-、CF 3(CF 2mO-、CF 3(CF 2m(CH 2lO-の中から選択される1種の基であり、Mはそれぞれ独立に水素原子、1価の金属イオン、アンモニウムイオンまたはN(-R 2)(-R 3)(-R 4)である。R 2、R 3、R 4は、それぞれ水素原子またはC 24OH基であるが、R 2、R 3、R 4がともに水素原子である場合は除く。nは1以上3以下の整数であり、mは1以上12以下の整数であり、l(エル)は1以上12以下の整数である。
[0044]
 上記式(1)中、mは1以上12以下の整数であるが、1以上8以下の整数であることが好ましく、1以上5以下の整数であることがより好ましい。また、l(エル)は1以上12以下の整数であるが、1以上10以下の整数であることが好ましく、1以上6以下の整数であることがより好ましい。m及びl(エル)が上記好ましい範囲にあると、上述したような効果がより顕著に発揮される。
[0045]
 上記フッ素系ホスホン酸としては、母粒子表面への吸着能と耐水性向上とのバランスに優れている観点から、下記一般式(2)で表される化合物であることが特に好ましい。
[0046]
[化2]


[0047]
 上記式(2)中、mは1以上12以下の整数であるが、1以上8以下の整数であることが好ましく、1以上5以下の整数であることがより好ましい。また、l(エル)は1以上12以下の整数であるが、1以上10以下の整数であることが好ましく、1以上6以下の整数であることがより好ましい。m及びl(エル)が上記好ましい範囲にあると、上述したような効果がより顕著に発揮される。
[0048]
 フッ素系カルボン酸およびその塩としては、下記一般式(3)で表される構造を有するものであることが好ましい。
[0049]
[化3]


[0050]
 上記式(3)中、R 5は、CF 3(CF 2m-、CF 3(CF 2m(CH 2l-、CF 3(CF 2mO(CH 2l-の中から選択される1種の基であり、Mは水素原子、1価の金属イオンまたはアンモニウムイオンである。mは1以上12以下の整数であるが、1以上8以下の整数であることが好ましく、1以上5以下の整数であることがより好ましい。また、l(エル)は1以上12以下の整数であるが、1以上10以下の整数であることが好ましく、1以上6以下の整数であることがより好ましい。
[0051]
 フッ素系スルホン酸およびその塩としては、下記一般式(4)で表される構造を有するものであることが好ましい。
[0052]
[化4]


[0053]
 上記式(4)中、R 6は、CF 3(CF 2m-、CF 3(CF 2m(CH 2l-、CF 3(CF 2mO(CH 2l-の中から選択される1種の基であり、Mは水素原子、1価の金属イオンまたはアンモニウムイオンである。mは5以上17以下の整数であり、l(エル)は1以上12以下の整数である。
[0054]
 また、フッ素系化合物は、その構造の少なくとも一部にパーフルオロアルキル基(C n2n+1-)を有するものであることが好ましく、該パーフルオロアルキル基の炭素数が1~6であることがより好ましい。フッ素系化合物がこのような構造を有することにより、耐水性がより向上し、金属光沢性および分散性に優れた卑金属顔料が得られやすい。
[0055]
 なお、フッ素系化合物の分子量は、1000以下であることが好ましい。母粒子の表面に吸着させるフッ素系化合物が、例えば特開2003-213157号公報、特開2006-169393号公報、特開2009-215411号公報などに記載されているフッ素系重合体である場合、被膜が厚くなりすぎて金属光沢性が損なわれるだけでなく、被膜が形成された卑金属顔料同士のインタラクションが強くなるため、分散性が著しく低下する場合がある。そのため、母粒子の表面に形成される膜は、分子量1000以下のフッ素系化合物により形成された単分子膜とすることが好ましい。
[0056]
 分散液中の表面処理剤の含有量は、母粒子の質量(100質量%)に対して、好ましくは0.5質量%以上20質量%未満であり、より好ましくは1.5質量%以上10質量%未満であり、さらに好ましくは3.0質量%以上8.0質量%以下である。この含有量が0.5質量%以上であることにより、吐出安定性により優れる傾向にあり、3.0質量%以上であることにより、吐出安定性にさらに優れる傾向にある。また、この含有量が20質量%未満であることにより、吐出安定性により優れる傾向にあり、8.0質量%未満であることにより、吐出安定性にさらに優れる傾向にある。
[0057]
<ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物>
 本実施形態に係る溶剤系インク組成物は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物を含み、そのポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物は、好ましくは下記式(5)で表される化合物、そのエステル化合物、及びその塩である。
 [RO(CH 2CH 2O) nmPO(OH) 3-m   (5)
(式中、Rは、アルキル基を示し、nは、1以上の整数を示し、mは、1以上3以下の整数を示す。)
[0058]
 式(5)中のRは、アルキル基を示し、そのアルキル基の一部が置換されていてもよい。アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは4以上18以下である。具体的なアルキル基としては、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、及びトリデシル基が挙げられ、好ましくはトリデシル基である。また、アルキル基は、スチレン化フェニル基であってもよい。
[0059]
 式(5)中のnは、1以上の整数を示し、好ましくは1以上25以下であり、より好ましくは2以上24以下であり、さらに好ましくは5以上23以下である。
[0060]
 式(5)中のmは、1以上3以下の整数を示す。
[0061]
 ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物の市販品としては、特に限定されないが、例えば、プライサーフ A212C、A215C、A208F、M208F、A208N、A208B、A219B、DB-01、A210D、AL、及びAL12H(第一工業製薬社製の商品名)、DISPER BYK102、及びBYK180(ビック・ケミー社製の商品名)、NIKKOL DLP-10、DOP-8NV、DDP-2、DDP-4、DDP-6、DDP-8、及びDDP-10(日光ケエミカルズ社製)が挙げられる。この中でも、プライサーフ A212C、M208F、A209B、A215C、及びDISPER BYK102が好ましい。
[0062]
 ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸由来の構造を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、そのエステル化合物、及びその塩が挙げられる。
[0063]
 ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物の含有量は、インクの総量(100%質量)に対して、0.1%以上10.0%以下であり、好ましくは0.2%以上5.0%以下であり、より好ましくは、0.3%以上3%以下である。
[0064]
 母粒子である金属粉末を表面処理剤により表面処理する際の条件としては、例えば、温度及び時間が挙げられる。表面処理の温度は、20℃以上100℃以下が好ましく、30℃以上80℃以下がより好ましく、40℃以上60℃以下がさらに好ましい。表面処理の時間は、1.0分以上1週間以下が好ましく、1.0時間以上3日間以下がより好ましく、10時間以上1.5日以下がさらに好ましい。これらにより、インク組成物の吐出安定性がより良好となる傾向にある。
[0065]
 また、フッ素系化合物以外の他の表面処理剤を併用してもよい。このような場合、同一の母粒子に複数種の表面処理剤による表面処理が施されていてもよいし、表面処理された金属粉末が、異なる表面処理剤による表面処理を施された複数種の粒子を含むものであってもよい。他の表面処理剤としては、特に限定されず、例えば、フッ素系、脂肪酸系、油脂系、界面活性剤系、ワックス系、カルボン酸系、リン酸系、カップリング剤、及び高分子系の公知の表面処理剤を広く用いることができる。
[0066]
 上記のような表面処理剤による表面処理を施される母粒子は、予め酸又は塩基と接触させたものであると好ましい。これにより、母粒子表面に、表面処理剤による化学的な結合による修飾をより確実に行うことができ、上述したような本発明による効果をより効果的に発揮させることができる傾向にある。酸としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、炭酸、蟻酸、安息香酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、亜硫酸、次亜硫酸、亜硝酸、次亜硝酸、亜リン酸、及び次亜リン酸等のプロトン酸が挙げられる。これらの中でも、塩酸、リン酸、及び酢酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好適である。一方、塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化カルシウムが挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好適である。同一の粒子に対し、複数種の表面処理を施す場合、各表面処理剤に対応する複数の工程に分けて表面処理を行ってもよいし、同一工程において、複数種の表面処理剤による表面処理を行ってもよい。
[0067]
<有機溶剤>
 本実施形態の組成物に含まれる有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、グリコールモノエーテル、グリコールジエーテル、ラクトン、及び非プロトン性極性溶媒が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
[0068]
 グリコールモノエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルトリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。このなかでも、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びテトラエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられ、これらが好ましい。グリコールモノエーテルを含有することにより、得られる記録物の隠蔽性がより向上する傾向にある。グリコールモノエーテルは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
[0069]
 グリコールジエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、及び、ジプロピレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。これらのなかでも、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、及びジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。このようなグリコールジエーテルを含有することにより、吐出安定性と、得られる記録物の隠蔽性のバランスがより向上する傾向にある。グリコールジエーテルは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
[0070]
 ラクトンとしては、特に限定されないが、例えば、エステル結合による環状構造を有する化合物であり、5員環構造のγ-ラクトン、6員環構造のδ-ラクトン、及び7員環構造のε-ラクトンが挙げられる。より具体的には、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサラクトン、δ-ヘプタラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン、及びε-カプロラクタムが挙げられる。これらの中でも、5員環構造のγ-ラクトンが好ましく、γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトンがより好ましい。このようなラクトンを含有することにより、耐擦性がより向上する傾向にある。ラクトンは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
[0071]
 非プロトン性極性溶剤としては、特に限定されないが、例えば、環状ケトン化合物、鎖状ケトン化合物、及び鎖状窒素化合物が挙げられる。また、環状窒素化合物及び非プロトン性極性溶剤としては、ピロリドン系、イミダゾリジノン系、スルホキシド系、ラクトン系、アミドエーテル系の溶剤が代表例として挙げられる。具体的には、これらの中でも2-ピロリドン、N-アルキル-2-ピロリドン、1-アルキル-2-ピロリドン、γ‐ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、及び1,2-ジメチルイミダゾールが好ましい。
[0072]
 有機溶剤の含有量は、組成物の全量(100質量%)に対し、好ましくは35質量%以上99.5質量%以下であり、より好ましくは45質量%以上99.0質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以上98.5質量%以下である。なお、ここでの組成物中の有機溶剤の含有量は、分散液に用いた有機溶剤も含む含有量である。
[0073]
〔その他の成分〕
 本実施形態の組成物は、上記の各成分の他に、従来のインクジェット用インク組成物に用いられ得る任意の成分の1種又は2種以上を含んでもよい。そのような任意の成分として、具体的に、染料等の色材、界面活性剤、浸透剤、保湿剤、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤、その他の添加剤及び溶媒等が挙げられる。これらはそれぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
[0074]
〔インクジェット記録装置〕
 本実施形態に用い得るインクジェット記録装置は、インク組成物を吐出する吐出ヘッドを備える。以下、本実施形態に用い得るインクジェット記録装置を、図1に示すインクジェット記録装置200を用いて例示的に説明するが、本実施形態のインクジェット記録装置はインクジェット記録装置200の形状、構成等の態様には限定されず、適宜の構成とすることができる。図1は、本実施形態に用い得るインクジェット記録装置200を模式的に示す斜視図である。
[0075]
 インクジェット記録装置200は、ヘッドユニット230と、駆動部210と、制御部260とを備える。また、インクジェット記録装置200は、装置本体220と、給紙部250と、記録用紙Pを設置するトレイ221と、記録用紙Pを排出する排出口222と、装置本体220の上面に配置された操作パネル270とを備える。
[0076]
 ヘッドユニット230は、後述する吐出ヘッド100から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に「ヘッド」又は「吐出ヘッド」ともいう。)を備える。ヘッドユニット230は、さらに、ヘッドにインク組成物を供給するインクカートリッジ231と、ヘッド及びインクカートリッジ231を搭載した運搬部(キャリッジ)232とを備える。
[0077]
 駆動部210は、ヘッドユニット230を往復動させることができる。駆動部210は、ヘッドユニット230の駆動源となるキャリッジモーター241と、キャリッジモーター241の回転を受けて、ヘッドユニット230を往復動させる往復動機構242とを備える。
[0078]
 往復動機構242は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸244と、キャリッジガイド軸244と平行に延在するタイミングベルト243とを備える。キャリッジガイド軸244は、キャリッジ232が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ232を支持している。さらに、キャリッジ232は、タイミングベルト243の一部に固定されている。キャリッジモーター241の作動により、タイミングベルト243を走行させると、キャリッジガイド軸244に導かれて、ヘッドユニット230が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから所定のタイミングでインク組成物が吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
[0079]
 本実施形態では、吐出ヘッド100及び記録用紙Pがいずれも移動しながら印刷が行われる例を示しているが、インクジェット記録装置は、吐出ヘッド100及び記録用紙Pが互いに相対的に位置を変えて記録用紙Pに印刷される機構であればよい。また、本実施形態では、記録用紙Pに印刷が行われる例を示しているが、本実施形態のインクジェット記録装置によって印刷を施すことができる被記録媒体としては、紙に限定されず、布、フィルム、金属等の広範な媒体を挙げることができ、適宜構成を変更することができる。
[0080]
 制御部260は、ヘッドユニット230、駆動部210、及び給紙部250を制御することができる。給紙部250は、記録用紙Pをトレイ221からヘッドユニット230側へ送り込むことができる。給紙部250は、その駆動源となる給紙モーター251と、給紙モーター251の作動により回転する給紙ローラー252とを備える。給紙ローラー252は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラー252aと、駆動ローラー252bとを備える。駆動ローラー252bは、給紙モーター251に連結されている。制御部260によって給紙部250が駆動されると、記録用紙Pは、ヘッドユニット230の下方を通過するように送られる。ヘッドユニット230、駆動部210、制御部260、及び給紙部250は、装置本体220の内部に設けられている。
[0081]
 なお、例示しているインクジェット記録装置200は、1つの吐出ヘッドを備え、この吐出ヘッドによって、被記録媒体に印刷を行うことができるものであるが、複数の吐出ヘッドを備えてもよい。インクジェット記録装置が複数の吐出ヘッドを有する場合には、複数の吐出ヘッドは、それぞれ独立して上述のように動作されてもよいし、複数の吐出ヘッドが互いに連結されて、1つの集合したヘッドとなっていてもよい。このような集合となったヘッドとして、具体的には、複数のヘッドのそれぞれのノズル孔が全体として均一な間隔を有するような、ライン型のヘッド等が挙げられる。
[0082]
<吐出ヘッド>
 本実施形態の吐出ヘッドは、ノズル孔を有するノズルプレートと、振動板とを備え、振動板により容積を変化させられる圧力室と、圧力室及びノズル孔と連通する流路と、圧力室にインク組成物を供給するインク供給室と、を有する。以下、本実施形態の吐出ヘッドを、図2及び図3に示す吐出ヘッド100、101を用いて例示的に説明するが、本実施形態の吐出ヘッドは吐出ヘッド100、101の形状、構造等の態様には限定されず、適宜の構成とすることができる。図2は、本実施形態に係る吐出ヘッドを模式的に示す分解斜視図である。
[0083]
 図2に示す吐出ヘッド100は、図1に示すインクジェット記録装置200に搭載される状態とは上下を逆に示したものである。図2に示す吐出ヘッド100は、ノズルプレート10に形成される複数のノズル孔12のそれぞれに通ずる複数の圧力室20と、複数の圧力室20のそれぞれの容積を変化させる振動板30と、複数の圧力室20にインク組成物を供給するインク供給室40とを有する。
[0084]
 また、吐出ヘッド100は、圧電素子32を備え、圧電素子32は振動板30に直接接して形成されている。そして、圧電素子32と振動板30とによって圧電アクチュエーター34が構成されている。なお、図示においては説明の便宜のために各構成の縮尺を適宜変更して示してある。また、図2では、圧電素子32は簡略化して図示されている。
[0085]
 さらに、吐出ヘッド100は、ノズル孔12が形成されているノズルプレート10と、圧力室20を形成するための圧力室基板120と、圧電素子32とを備える。なお、吐出ヘッド100は、筐体130を備えることができる。
[0086]
 ノズルプレート10には、ノズル孔12が形成されている。ノズル孔12は、そこからインク組成物を吐出することができる。ノズルプレート10には、複数のノズル孔12が配列されて設けられている。ノズルプレート10の材質として、具体的には、シリコーン及びステンレス鋼(SUS)が挙げられる。また、ノズルプレート10の材質としては、鉄(Fe)を主成分(50質量%以上)として、クロム(Cr)を10.5質量%以上含む合金であると、剛性と錆び難さとを両立できるため好ましい。
[0087]
 ノズル孔12の孔径は、インク組成物を吐出することができれば特に限定されないが、5.0μm以上30μm以下が好ましく、10μm以上25μm以下がより好ましく、10μm以上20μm以下がさらに好ましい。孔径が、5.0μm以上であることで、吐出できる液適量を微小化しやすい傾向にあり、30μm以下であることで、200dpi以上の高密度に配列したノズルから連続安定して吐出できる傾向にある。複数のノズル孔12に対しては、孔径として平均の数値を用いる。
[0088]
 また、ノズル孔12の形状として、具体的には、円形、楕円形、長方形が挙げられ、円形が、加工精度、吐出された液適形状の観点から好ましい。
[0089]
 吐出ヘッド100において、圧力室基板120は、ノズルプレート10に直接接して設けられている。圧力室基板120の材質として、具体的には、シリコーンが挙げられるがこれに限定されない。圧力室基板120がノズルプレート10と振動板30との間の空間を区画することにより、インク供給室40(液体貯留部)と、インク供給室40と連通する供給口126と、供給口126と連通する圧力室20とが形成される。
[0090]
 この例では、インク供給室40と、供給口126と、圧力室20とを区別して説明するが、これらはいずれも液体の流路であって、圧力室20が形成される限り、流路はどのように設計されてもよい。また、例えば、図2に示す供給口126として、流路の一部が狭窄された形状を有しているが、そのような流路の拡大縮小は、設計にしたがって任意に形成することができる。
[0091]
 また、吐出ヘッド100の圧力室20は、ノズルプレート10と、圧力室基板120と、振動板30とによって区画される空間のことを指し、少なくともノズル孔12及び供給口126を含まない空間のことをいう。すなわち、圧力室20は、振動板30の変位によって容積が変化する空間であり、当該空間に連通する狭窄された流路等を含まない空間である。
[0092]
 インク供給室40、供給口126、及び圧力室20は、ノズルプレート10と圧力室基板120と振動板30とによって区画されている。インク供給室40は、外部(例えばインクカートリッジ)から、振動板30に設けられた貫通孔128を通じて供給されるインク組成物を一時貯留することができる。インク供給室40内のインク組成物は、供給口126を介して、圧力室20に供給されることができる。圧力室20は、振動板30の変形により容積が変化する。圧力室20はノズル孔12と連通しており、圧力室20の容積が変化することによって、ノズル孔12からインク組成物が吐出されたり、インク供給室40から圧力室20にインク組成物が導入されたりすることができる。
[0093]
 吐出ヘッド100では、振動板30は、圧力室基板120に接して設けられる。振動板30は、圧電素子32の動作によって変形し、圧力室20の容積を変化させることで圧力室20の内部圧力を変化させることができる。なお、この例では、圧力室20はノズルプレート10、圧力室基板120、及び振動板30によって区画されているが、圧力室20は、振動板30の振動によって容積が変化され得る限り、適宜の部材によって形成されることができ、そのための部材の数、形状、材質等は任意である。
[0094]
 吐出ヘッド100では、圧電素子32は、振動板30に直接接して設けられている。圧電素子32は、圧電素子駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。圧電素子32として、具体的には、電圧を印加することによって変形を生じる種の素子(電気機械変換素子)等が挙げられる。本実施形態では、振動板30のうち、圧力室20を区画する部分と、当該部分に設けられた圧電素子32とをあわせて圧電アクチュエーター34と称する場合がある。また、振動板30は、圧電素子32を構成する電極(例えば、Pt等で形成される。)と一体的であってもよい。
[0095]
 吐出ヘッド100は、複数のノズル孔12間の間隔を所定以下とすることができるため、圧電素子32として2つの電極の間に圧電材料が配置された構成であることが好ましい。すなわち、圧電アクチュエーター34として、具体的には、振動板30に対して、一方の電極、圧電材料(例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛))の層、及び他方の電極が順次積層された、全体として薄膜状の態様であることが好ましい。
[0096]
 振動板30の材質について、具体的には、酸化シリコーン(SiO 2)、窒化シリコーン(SiN)、酸化窒化シリコーン(SiON)、酸化ジルコニウム(ZrO 2)、酸化チタン(TiO 2)、及び炭化ケイ素(SiC)、並びにそれらの材質からなる層の積層体等が挙げられる。振動板30の材質としては、ヤング率が250GPa以下のものが、変位を大きくできる点、及び破損を生じにくい点でより好ましく、具体的には、ZrO 2(150GPa)、SiO 2(75GPa)、Si(130GPa)、SUS(199GPa)、及びCr(248GPa)の少なくとも1種を含んで形成されることがより好ましい(括弧内はヤング率)。また、圧電素子32の電極がPtで形成され、振動板30と一体的に積層されている場合には、ヤング率はPtで168GPa、ZrO 2で150GPaであり、組み合わせても250GPa以下となるため、そのように構成してもよい。
[0097]
 なお、本実施形態において、ヤング率とは、静的試験(JIS G0567J等、機械的試験)で測定されるヤング率を指し、具体的には、II-6号試験片を用いて測定される。
[0098]
 筐体130は、ノズルプレート10、圧力室基板120及び圧電素子32を収納することができる。筐体130の材質として、具体的には、樹脂、金属等が挙げられる。筐体130は、圧電素子32を外部環境から隔てる機能を有してもよい。また、筐体130内に不活性ガス等が封入されたり、筐体130内が減圧されてもよく、これにより、圧電材料の劣化等を抑制することができる。また、筐体130は、圧電素子32を覆うカバーとなっているが、筐体130とは別に、図示せぬカバーが設けられてもよく、その場合に筐体130は、吐出ヘッド100の支持体として機能してもよい。
[0099]
 図3は、本実施形態に係る吐出ヘッドの要部を模式的に示す断面図である。図3は吐出ヘッド101の要部を模式的に示す断面図である。吐出ヘッド101の説明においては、上述の吐出ヘッド100と同様の機能を有する部材については同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
[0100]
 図3に示す吐出ヘッド101は、ノズルプレート10に形成されたノズル孔12に通ずる圧力室20を形成され、圧力室20の容積を変化させる振動板30を備え、圧力室20にインク組成物を供給するインク供給室40を形成される。図3には、インク組成物の吐出動作の際のインク供給室40からノズル孔12までのインク組成物の流れを破線矢印で模式的に示してある。
[0101]
 図3に示す吐出ヘッド101には、流路127が形成されている。圧力室20は、流路形成基板110と、圧力室基板120と、振動板30とによって区画される空間のことである。すなわち、圧力室20は、振動板30の変位によって容積が変化する空間のことを指し、ノズル孔12、流路127を含まない空間である。
[0102]
 本実施形態の吐出ヘッド101は、より良好な吐出安定性及び印刷の解像度を得る観点から、特に限定されないが、圧力室20の容積が10.0×10 6μm 3以下、ノズル孔12の配列の密度が200dpi以上であることが好ましい。また、同様の観点から、ヘッド周波数は、8kHz以上100kHz以下であることが好ましく、10kHz以上60kHz以下であることがより好ましく、20kHz以上40kHz以下であることがさらに好ましい。
[0103]
 圧力室20の容積を上記の範囲にするためには、例えば、圧力室20を区画している流路形成基板110と振動板30との距離を適宜設定し、吐出ヘッド101を作製すればよい。また、圧力室20を区画している流路形成基板110により、圧力室20及びノズル孔12と連通する流路127が形成されている。
[0104]
 圧力室20は、ノズル孔12に通ずるものであるが、ノズル孔12に連通するものではなく、流路127を介してノズル孔12と通ずるものである。ここで、圧力室20とノズル孔12に直接に連通する場合に比べて、吐出するインク組成物の量を精密に制御することが可能となる。また、インク組成物の流れが、流路127によりインク組成物の吐出する方向に整えられることにより、より吐出性が良好となる傾向にある。
[0105]
 ただし、このような構造を有する吐出ヘッド101に対して、インク組成物が自己分散型顔料及び/又はポリマー分散型顔料を含む場合には、安定した連続印刷性が得られにくくなっている。これは、振動板30の変位後に、流路127中でこれらの顔料の分散性が抑制されていることから発生するものと推察される。また、ところが、さらにインク組成部中の窒素含有量を特定範囲にすることにより、安定した連続印刷性が得られる。
[0106]
 流路127は、ノズル孔12及び圧力室20と連通するものであり、流路20から流路120へと、インクの流れる方向が直線をなしておらず、インク組成物の流れの方向を変更するものである。図3においては、流路127のインク組成物の流れの方向が、圧力室20におけるインク組成物の流れの方向に対して、90度変化しているものであるが、流の方向が変化するものであればよく、特にその角度は限定されない。また、インク組成物の流れの方向は、重力方向と一致することが、安定した連続印刷性の点から好ましい。このような流れの変化点では、インクの流速分布が生じ、低流速部分にインク中の気泡が停滞することで、抜けが発生する場合がある。これは、インク組成物が自己分散型顔料及び/又はポリマー分散型顔料を含む場合に多く、顔料粒子と顔料粒子の空隙に吸着した微小な気泡が、前記低流速部分で多く集まることで気泡同士が融合し、大きく成長することで、ドット抜けを誘発するものと考えられる。
[0107]
 流路127の形状は、ノズル孔12及び圧力室20と連通するものであれば特に限定されないが、具体的には、インク組成物の流れ方向に垂直な面が正方形、長方形、円形であることが挙げられ、ヘッド製造上の観点から、正方形であることが好ましい。また、該垂直な面の面積は、1.0×10 -4μm 2以上1.0×10 -7μm 2以下であることが好ましく、1.010 -5μm 2以上1.010 -7μm 2以下であることがより好ましく、1.0×10 -5μm 2以上1.0×10 -6μm 2以下であることがさらに好ましい。面積が1.0×10 -4μm 2以上であることにより、印字に必要なインク流量を確保することができる傾向にあり、1.0×10 -7μm 2以下であることにより、流路を流れるインクの流速低下が抑制される傾向にある。さらに、流路127の長さは、1.0μm以上600μm以下であることが好ましく、2.0μm以上400μm以下であることがより好ましく、5.0μm以上300μm以下であることがさらに好ましい。長さが1.0μm以上であることで、安定した連続吐出を可能とする傾向にあり、600μm以下であることで、吐出するための最低限の圧力を与えることができる傾向にある。
[0108]
 図3に示す吐出ヘッド101には、インク流路の一部を形成する部材としてコンプライアンスシート140が用いられている。コンプライアンスシート140は、可撓性の弾性膜である。コンプライアンスシート140は、弾性を有する膜であれば特に限定されないが、具体例としては、高分子膜、薄膜にした金属、ガラスファイバーから構成される膜、及びカーボンファイバーから構成される膜が挙げられる。高分子膜の材質として、具体的には、ポリイミド、ナイロン、ポリオレフィン、及びポリフェニレンスルファイトが挙げられる。また、金属として、具体的には、鉄、及びアルミニウムを含む材料が挙げられる。
[0109]
 コンプライアンスシート140の厚さは、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。コンプライアンスシート140は、ポリフェニレンスルファイトで形成されることが好ましい。コンプライアンスシート140は、上記所定以上の厚さを有することで、インク組成物の吐出時に振動が大きくなることを抑制し、残留振動が発生することを抑制することができる。コンプライアンスシート140は、インク組成物の吐出又は流通のためのダンパーの機能を有する。また、コンプライアンスシート140は、インク組成物の体積が膨張した場合に、変形することによって吐出ヘッド101の破損を抑制する機能を有している。
[0110]
 吐出ヘッド101は、いずれもカバー150を有している。かかるカバー150は、図示せぬ筐体とは別部材として構成されている。カバー150は、振動板30に直接接して設けられ、圧電素子32を収容する空間を形成し、圧電素子32を当該空間に収納している。カバー150の材質は、上述の筐体130の材質と同様である。カバー150は、圧電素子32を外部環境から隔てる機能を有し、カバー150によって形成される空間に不活性ガス等が封入されたり、当該空間が減圧されてもよい。これにより、圧電素子32の圧電材料の劣化等を抑制することができる。
実施例
[0111]
 以下、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
[0112]
<アルミニウム顔料分散液Aの調製>
 まず、表面が平滑なポリエチレンテレフタレート製のフィルム(表面粗さRaが0.02μm以下)を用意した。
[0113]
 次に、このフィルムの一方の面の全体にシリコーンオイルを塗布した。このシリコーンオイルやメタクリレートなどの剥離コート剤を塗布した面側に、蒸着法を用いてアルミニウムで構成された膜(以下、単に「アルミニウム膜」ともいう。)を形成した。
[0114]
 次に、アルミニウム膜が形成されたフィルムを、ジエチレングリコールジエチルエーテル中に入れ、超音波を照射することにより、フィルムからアルミニウム膜を剥離・粉砕した。次に、これをホモジナイザーに投入し約8時間粉砕処理することにより、平板状のアルミニウム粒子(母粒子)の分散液を得た。この分散液中におけるアルミニウム粒子の濃度は10質量%であった。
[0115]
 次に、上記のようにして得られたアルミニウム粒子を含む分散液100質量部に対して、ジエチレングリコールジエチルエーテルを100質量部添加し、アルミニウム粒子の濃度を5質量%に調整後、アルミニウム粒子100質量部に対してフッ素系ホスホン酸化合物としてのCF 3(CF 25(CH 22O(P)(OH) 2を20質量部加え、液温55℃で、3時間超音波を照射しながら、アルミニウム粒子の表面処理を行い、アルミニウム粒子を5質量%含有する分散液を得た。
[0116]
 分散液中におけるアルミニウム粒子を、レーザー回折散乱式粒度分布計 マイクロトラック MT3000(日機装株式会社)を用いて、「粒子透過性:反射」とした測定条件
にて測定したところ、平均粒径は0.45μm(450nm)であった。一方、アルミニウム粒子の厚さは以下の方法で透過型電子顕微鏡により測定した。分散液をシリコーン基板上に塗布し、その後1日間自然乾燥させた。次に、集積イオンビーム(FIB)装置を用いてアルミニウム顔料の断面試料を作成し、透過型電子顕微鏡(FEI社、Tecnai G2 F30)により断面を観察することによって、厚さを測定した。30サンプルを測定し、得られた測定値のうち上下3サンプルを除いた24サンプルの算術平均を調べることにより、平均厚さを計測した。その結果、平均厚さは14.6nmであった。
[0117]
 最後に、このアルミニウム粒子を含有する分散液にヘキシレングリコールと水との混合物を加えて、超音波で撹拌処理することにより、アルミニウム顔料Aを含むアルミニウム顔料分散液Aを得た。
[0118]
<アルミニウム顔料分散液Bの調製>
 アルミニウム粒子の平均粒径と平均厚さを変更する以外はアルミニウム粒子分散液Aの調製と同様の手順により、平均粒径0.60μm(900nm)、平均厚さ30.5nmであるアルミニウム顔料Bを含むアルミニウム顔料分散液Bを得た。
[0119]
<アルミニウム顔料分散液Cの調製>
 アルミニウム粒子の平均粒径と平均厚さを変更する以外はアルミニウム粒子分散液Aの調製と同様の手順により、平均粒径0.95μm(950nm)、平均厚さ82.5nmであるアルミニウム顔料Bを含むアルミニウム顔料分散液Cを得た。
[0120]
<アルミニウム顔料分散液Dの調製>
 フッ素系ホスホン酸化合物として、CF 3(CF 23(CH 22O(P)(OH) 2を用いてアルミニウム粒子の表面処理を行う以外はアルミニウム顔料分散液Aの調製と同様の手順により、アルミニウム粒子の平均粒径0.45μm(450nm)、平均厚さ14.6nmであるアルミニウム顔料Dを含むアルミニウム顔料分散液Dを得た。
[0121]
[溶剤系インク組成物の調製]
 各材料を下記の表1に示す組成で混合し、十分に撹拌し、各組成物を得た。なお、下記の表1中、数値の単位は質量%であり、合計は100.0質量%である。
[0122]
 表1の実施例及び比較例において用いた溶剤系インク組成物用の主な材料は、以下の通りである。
〔ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物〕
 プライサーフA212C(ポリ(10)オキシエチレントリデシルエーテルリン酸、エーテル鎖の炭素数:13、第一工業製薬社製の商品名)
 プライサーフM208F(ポリ(10)オキシエチレントリデシルエーテルリン酸アミン、エーテル鎖の炭素数:8、第一工業製薬社製の商品名)
 プライサーフA208F(ポリ(10)オキシエチレントリデシルエーテルリン酸、エーテル鎖の炭素数:8、第一工業製薬社製の商品名)
 プライサーフA219B(ポリ(10)オキシエチレントリデシルエーテルリン酸、エーテル鎖の炭素数:12、第一工業製薬社製の商品名)
 NIKKOL DDP-2(ポリ(2)オキシエチレンアルキルエーテルリン酸、エーテル鎖の炭素数:12-15、日光ケミカルズ社製の商品名)
 NIKKOL DDP-10(ポリ(10)オキシエチレンアルキルエーテルリン酸、エーテル鎖の炭素数:12-15、日光ケミカルズ社製の商品名)
 NIKKOL DLP-10(ポリ(10)オキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、エーテル鎖の炭素数:12、日光ケミカルズ社製の商品名)
 NIKKOL DOP-8NV(ポリ(8)オキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、エーテル鎖の炭素数:18、日光ケミカルズ社製の商品名)
 NIKKOL TLP-4 (ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、日光ケミカルズ社製の商品名)
 シラノール変性シリコーン(両末端シラノールジメチルシリコーンオイル、信越シリコーン社製、商品名「X-21-5841」)
〔有機溶剤〕
 ジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤社製)
 ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(日本乳化剤社製)
 トリエチレングリコールモノブチルエーテル(日本乳化剤社製)
 γ-ブチロラクトン(三菱化学社製)
 ジメチルイミダゾリジノン(三井化学社製)
 2-ピロリドン(三菱化学社製)
[0123]
(吐出安定性)
 チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した液滴吐出装置および上記各実施例および比較例の組成物を用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、25℃、50%RHの環境下で、各記録物製造用組成物について、ノズル穴のサイズが直径22μmの液滴吐出ヘッドの全ノズルから、ピエゾ素子の振動数(周波数)を変化させつつ、液滴吐出を行った。各周波数での液滴吐出時間は1分間とした。1分間の吐出後時点で未吐出のノズル数が全ノズル数の0.5%未満であり、かつ遅延や吐出曲がり等の異常を示すノズル数が全ノズル数の5%未満の周波数までを実使用可能な最高周波数として、実使用可能な周波数範囲を以下の4段階の基準に従い、吐出安定性を評価した。この値が大きいほど周波数特性に優れていると言える。評価結果を表1に示す。
 A:15kHz以上。
 B:11kHz以上15kHz未満。
 C:5kHz以上11kHz未満。
 D:3kHz以上5kHz未満。
 E:3kHz未満
[0124]
(光沢性)
 得られた各組成物を、#6のバーコーターで基材(塩化ビニルシートTJ5829R(MACTAC社))に塗布し、50℃で2分間乾燥し、室温下で24時間放置し、HORIBA社製の光沢度計を用いて60°の光沢度を測定した。その結果及び下記の評価基準に基づいて光沢性を評価した。評価結果を表1に示す。
 A:300以上
 B:250以上300未満
 C:150以上250未満
 D:150未満
(外観)
 上記各実施例および比較例の組成物を、インクジェットプリンタ(セイコーエプソン株式会社製、型式「SC-S70650」)に充填し、インクジェットヘッドから吐出し、被記録媒体である塩化ビニルシートTJ5829R(MACTAC社)にベタパターンを連続して30秒間形成し続けた(Sドット、720×720dpi)。印刷後、50℃のホットプレート上で20分間乾燥させ、得られたベタパターンを、下記評価基準に基づいた、それぞれの限度サンプルと目視観察により比較して、得られたベタパターンの外観を評価した。評価結果を表1に示す。
 A:優れた光沢感を有し、極めて優れた外観を有している。
 B:光沢感を有し、優れた外観を有している。
 C:光沢感を有し、良好な外観を有している。
 D:光沢感に劣り、外観がやや不良。
 E:光沢感に劣り、外観が不良。
[0125]
[表1]


[0126]
 表1に示す実施例及び比較例の対比により、本発明に係る溶剤系インク組成物によれば、優れた吐出安定性が得られ、さらに、光沢性に優れた塗膜が得られることが分かった。

符号の説明

[0127]
 10…ノズルプレート、12…ノズル孔、20…圧力室、30…振動板、32…圧電素子、34…圧電アクチュエーター、40…インク供給室、100,101…吐出ヘッド、110…流路形成基板、120…圧力室基板、126…供給口、127…流路、128…貫通孔、130…筐体、140…コンプライアンスシート、150…カバー、200…インクジェット記録装置、210…駆動部、220…装置本体、221…トレイ、222…排出口、230…ヘッドユニット、231…インクカートリッジ、232…キャリッジ、241…キャリッジモーター、242…往復動機構、243…タイミングベルト、244…キャリッジガイド軸、250…給紙部、251…給紙モーター、252…給紙ローラー、252a…従動ローラー、252b…駆動ローラー、260…制御部、270…操作パネル

請求の範囲

[請求項1]
 有機溶剤と、表面処理された金属粉末と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物と、を含み、
 前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物の含有量は、インクの総量に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下であり、
 前記表面処理された金属粉末は、アルミニウム又はアルミニウム合金を含有し、かつ、フッ素系化合物の表面処理剤で表面処理されている、溶剤系インク組成物。
[請求項2]
 前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物は、下記式(5)で表される化合物又はその塩である、請求項1に記載の溶剤系インク組成物。
 RO[(CH 2CH 2O) nmPO(OH) 3-m   (5)
(式中、Rは、アルキル基を示し、nは、1以上の整数を示し、mは、1以上3以下の整数を示す。)
[請求項3]
 前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸化合物は、上記式(5)中のnが1以上25以下の整数を示す、請求項2に記載の溶剤系インク組成物。
[請求項4]
 前記表面処理された金属粉末の平均粒子径が、0.2μm以上1.0μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の溶剤系インク組成物。
[請求項5]
 前記表面処理された金属粉末の形状が、鱗片状である、請求項1~4のいずれか一項に記載の溶剤系インク組成物。
[請求項6]
 前記表面処理された金属粉末の平均厚さが、10nm以上90nm以下である、請求項5に記載の溶剤系インク組成物。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]