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1. (WO2018128062) 転動装置の診断方法
Document

明 細 書

発明の名称 転動装置の診断方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006  

課題を解決するための手段

0007  

発明の効果

0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037  

符号の説明

0038  

請求の範囲

1   2   3   4  

図面

1   2   3   4   5   6  

明 細 書

発明の名称 : 転動装置の診断方法

技術分野

[0001]
 本発明は、転動装置の診断方法に関する。

背景技術

[0002]
 軸受の如き転動装置は、自動車、各種産業機械など幅広い産業分野にて利用されている。転動装置の内部の潤滑状態を把握することは、機械の円滑な動作、転動装置の寿命の確保などの観点から極めて重要な事項であり、適切に把握することにより、各種潤滑剤(油、グリースなど)の供給や転動装置の交換等のメンテナンスを、過不足無く最適な時期に行うことができる。しかしながら、潤滑状態を直接目視により観察することは困難であるため、転動装置の診断方法として、振動、音、油膜状態をモニタリングする方法が提案されている。
[0003]
 特許文献1は、交流電圧を転動装置の回転輪に対して非接触な状態で印加し、測定した静電容量を用いて軸受の油膜状態の推定ができる。すなわち、油膜をコンデンサーとみなして電気的な等価回路をモデル化し、転動装置の回転輪に対して非接触な状態で交流電圧を印加し、油膜の静電容量を測定する。静電容量と油膜厚さ(潤滑膜厚さ)は相関関係があるため、この相関関係から油膜の状態を推定するものである。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 日本国特許第4942496号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 特許文献1に開示の技術によれば、油膜厚さを測定することは可能である。しかしながら、この方法では油膜厚さのみの算出が可能であり、その他の潤滑状態に影響を与える要素について把握することは困難である。
[0006]
 本発明は、潤滑膜厚さだけでなく金属接触割合をも考慮して転動装置の潤滑状態を把握することを可能とする転動装置の診断方法を提供する。

課題を解決するための手段

[0007]
 本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
 本発明の診断方法は、外方部材と、内方部材と、転動体とを備える転動装置の診断方法であって、前記外方部材と、前記転動体と、前記内方部材とから構成される電気回路に交流電圧を印加し、前記交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を測定し、測定した前記インピーダンスおよび前記位相角に基づき、前記外方部材と前記転動体の間または前記内方部材と前記転動体の間の少なくとも一つにおける潤滑膜厚さおよび金属接触割合を算出する。

発明の効果

[0008]
 本発明によれば、転動装置における潤滑膜厚さだけでなく金属接触割合をも把握することが可能であり、より詳細にかつより正確に転動装置の潤滑状態を診断することが可能となる。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] 図1は、外輪または内輪と転動体の接触領域を示す概念図であり、(a)は接触領域の構造をモデル化したモデル図を示し、(b)は(a)のモデルに対応した電気回路(等価回路)を示す。
[図2] 図2は、外輪または内輪と転動体の接触領域における表面における凹凸を示す概念図である。
[図3] 図3は、軸受装置の診断における電気回路(等価回路)の図を示す。
[図4] 図4は、試験装置の概略図である。
[図5] 図5は、軸受装置の診断の工程を示すフローチャート図である。
[図6] 図6は、実施例における潤滑膜厚さおよび金属接触割合の経時変化を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0010]
 以下、本発明に係る転動装置の診断方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
[0011]
 図1は、診断対象となる転動装置としての軸受装置の概念図である。軸受装置10は、固定された外輪(外方部材)1と、図示せぬ回転軸に嵌合する回転側輪である内輪(内方部材)3と、外輪1の内周面に形成された軌道面と内輪3の外周面に形成された軌道面との間に介在する複数個の転動体5を備える。さらに外輪1と転動体5の間、および内輪3と転動体5の間には、潤滑のために供給された油、グリース等の潤滑剤からなる油膜(潤滑膜)9が存在する。軸受装置10は、自動車、二輪車、鉄道車両などの如き移動体や、産業機械、工作機械などに適用されるが、適用される装置は特に限定されない。また、本図では、内輪側に回転軸が存在するいわゆる内輪回転型の軸受装置10を示しているが、本願発明はこれには限定されず、外輪側に回転軸が存在するいわゆる外輪回転型の軸受装置にも適用可能である。
[0012]
 本発明の発明者は、特に、外輪1と転動体5の間または内輪3と転動体5の接触領域において、図1(a)のような接触領域の構造をモデル化したモデル図を検討するに至った。すなわち、このような接触領域においては、外輪1、内輪3、転動体5などの各部材が油膜(潤滑剤)に覆われている部分のみならず、金属、すなわち外輪1、内輪3、転動体5などの各部材を構成する金属が接触し合う金属接触部が存在する。そこで、特定範囲の接触領域の全体面積をSと仮定し、この金属部分の接触領域中の油膜で覆われている面積と金属の接触が生じている面積の割合を1-α:αと仮定した。このとき、金属が接触し合う金属接触部7の面積はαSとなる。hは油膜9の厚さである潤滑膜厚さ(油膜厚さ)を示す。
[0013]
 ここで、図1(a)における外輪1と転動体5の接触領域の拡大図に示すように、油膜9を誘電体と捉え、外輪1と転動体5を電極と考えると、油膜9はコンデンサC を形成する。油膜9は同時に抵抗R をも有している。油膜(潤滑膜)9も電流が流れる際には、油膜(潤滑膜)9は抵抗成分を有しており、コンデンサとして作用するのみならず、抵抗としても作用するのが妥当である。
[0014]
 一方、金属が接触し合う金属接触部7は抵抗R を有している。この結果、図1(b)に示すような、図1(a)のモデルに対応した電気回路(等価回路)E1(外輪1または内輪3と転動体5により形成される回路)が導かれる。油膜9は、コンデンサC (静電容量C )と抵抗R (抵抗値R )の並列回路を形成し、当該並列回路と、金属接触部7が形成する抵抗R (抵抗値R )が並列に接続される。後述するように、本発明は、この電気回路を用いて、潤滑膜厚さのみならず、接触領域の全体面積に対して金属接触部7が占める面積の割合である金属接触割合αを算出し、転動装置の潤滑状態を診断することが可能である。
[0015]
 図2は、外輪1または内輪3と転動体5がなす接触領域の拡大図を示す。外輪1、内輪3、転動体5の表面は滑らかに研磨されているが、ミクロ的に見ると、本図のように細かい凹凸が生じている。このような凹凸により生ずる空間に油膜9が形成されており、また、破線で示すように、外輪1または内輪3と転動体5が直接接触する部分により金属接触部7が形成される。また、潤滑膜厚さhは、所定の範囲の接触領域における油膜9の平均的な厚さより得られる。
[0016]
 図3は、軸受装置10の診断における一実施形態の電気回路(等価回路)の図を示す。上述した様に、各転動体5について、外輪1または内輪3との間に図1(b)に示す様な電気回路(等価回路)E1が形成されている。各転動体5は、外輪1および内輪3の双方に接触しているため、図3に示すように、各転動体5について、二つの電気回路E1(外輪1-転動体5間および内輪3-転動体5間)が直列接続された電気回路(等価回路)E2が形成される。
[0017]
 さらに、軸受装置10にn個の転動体5が設けられている場合、電気回路E2がn個並列に接続されることになる。よって、図3に示すように、n個全ての転動体5を含む軸受装置10は電気回路(等価回路)E3を形成することになる。本実施形態の軸受装置10の診断に際しては、軸受装置10に、コイルのインダクタンスL、抵抗Rを直列接続した状態で軸受装置10の外輪1と内輪3の間に、電源から交流電圧を印加するため、図3に示す全体の電気回路(等価回路)E4が形成される。ただし、コイルのインダクタンスL、抵抗Rの接続はあくまで一実施形態であり、電気回路(等価回路)E4の採用は必須ではない。
[0018]
 交流電圧の周波数は、1Hz以上であり、かつ、1GHz未満であることが望ましい。周波数が1Hz未満または1GHz以上であると、測定されるインピーダンスおよび位相角(後述)に接触域外の情報(ノイズ)が多く含まれるため、接触域内の情報が正確に得られなくなるおそれがある。また、交流電圧の電圧については、1μV以上であり、かつ、100V未満であることが望ましい。電圧が1μV未満であると、軸受装置10に電流が流れないためモニタリングできず、また、100V以上であると、軸受装置10が電食を起こす危険性がある。
[0019]
 以下、具体的な方法について説明する。本実施形態における軸受装置10の診断方法は、図3にも示したように、軸受装置10に交流電圧を印加し、潤滑膜厚さhと金属接触割合αを求めることにより、軸受装置10の状態診断を行う。図3の電気回路E4を用いた場合、潤滑膜厚さhと金属接触割合αは、次式(1)、(2)により導かれる。
[0020]
[数1]


[0021]
 各記号は以下の意味である。
ω:交流電圧の周波数
ε :潤滑剤の誘電率
S:各接触領域を接触楕円に近似した場合の各接触楕円の面積の平均値
n:軸受装置10の転動体5の数(玉数)
Z:電気回路E4全体のインピーダンス
θ:位相角
20:完全に油膜9がない状態における金属接触部7の抵抗
θ :完全に油膜9がある状態(金属部分の接触領域がない状態)における位相角
L:軸受装置10に直列接続されているインダクタンスL
R:軸受装置10に直列接続されている抵抗R
[0022]
 上述した様に、潤滑膜厚さhは、軸受装置10の外輪1または内輪3と転動体5との全接触領域における油膜9の平均的な厚さである。金属接触割合αは、この全接触領域に対する金属接触部7の面積の割合である。
[0023]
 図4は、試験装置の一例の概略図である。軸受装置10を貫通する駆動軸の一端が回転コネクタ12を介して、一般的なLCRメーター20(交流電圧も兼ねる)に接続されるとともに、駆動軸の他端が駆動用のモーター14に接続されている。回転コネクタ12は、駆動軸の一端の回転輪に対してカーボンブラシを取り付けて構成したり、駆動軸にスリップリングを取り付けたりして構成することができるが、特に限定はされない。
[0024]
 軸受装置10の状態診断は、式(1)、(2)から求められる潤滑膜厚さhと金属接触割合αを用いて行う。図5は、図4の試験装置を用いた、軸受装置10の状態診断方法の工程を示すフローチャート図である。まず、モーター14を駆動して駆動軸を回転させた状態で、オペレータは、LCRメーター20に交流電圧の周波数ω、交流電圧の電圧Vを入力する(ステップS1)。入力を受けて、LCRメーター20がインピーダンスZ、位相角θを出力する(ステップS2)。この出力を受けて、図示せぬコンピュータ等が、(1)、(2)式より、潤滑膜厚さh、金属接触割合αを算出する(ステップS3)。ステップS2の出力、ステップS3の算出は、時系列的に、例えば所定の時間毎に(1秒間隔など)複数回行われる。更にコンピュータ、またはオペレータが、潤滑膜厚さh、金属接触割合αより、軸受装置10を診断する(ステップS4)。
[0025]
 外輪1、内輪3、転動体5の表面粗さに対して潤滑膜厚さhが十分な大きさを有し、金属接触部7が発生しない場合はh>0、α=0であり、軸受装置10として理想的な状態である。しかし、実際には潤滑剤、運転条件、運転時間など様々な要因によって、潤滑膜厚さh、金属接触割合αは刻々と変化する。潤滑膜厚さhと金属接触割合αの時間的な変化については、以下のようなケースが考えられる。
[0026]
(1)潤滑膜厚さhが増加し、金属接触割合αが減少する。
(2)潤滑膜厚さhが減少し、金属接触割合αが増加する。
(3)潤滑膜厚さhが増加し、金属接触割合αも増加する。
(4)潤滑膜厚さhが減少し、金属接触割合αも減少する。
[0027]
 (1)の状態は、金属接触が生じることによって、内外輪の表面粗さが小さくなる(いわゆるマイルドななじみ)過程を示していると考えられる。
[0028]
 (2)の状態は、転動体5と外輪1および/または内輪3が接触していく過程を示していると考えられる。
[0029]
 (3)の状態は、摩耗によって生じた導通する摩耗粉が二面間(外輪1-転動体5間または内輪3-転動体5間)に侵入することで、二面の隙間が大きくなり、その結果、潤滑膜厚さ(正確には二面間の隙間)hが増加し、金属接触割合αも増加する現象を示すと考えられる。つまり、(3)の状態は、摩耗によって導通する摩耗粉が接触領域に侵入する過程を示していると考えられる。
[0030]
 (4)の状態は、摩耗によって生じた導通する摩耗粉が二面間から排除されることで潤滑膜厚さ(正確には二面間の隙間)hが減少し、金属接触割合も減少したと考えられる。つまり、(4)の状態は、摩耗によって導通する摩耗粉が接触領域から排除される過程を示していると考えられる。
[0031]
 このように、本実施形態では、外方部材である外輪1と、転動体5と、内方部材である内輪3とから電気回路が構成され、この電気回路に交流電圧を印加することを前提としている。そして、LCRメーター20が、交流電圧の印加時の電気回路のインピーダンスZおよび位相角θを測定して出力する。この測定したインピーダンスZおよび位相角θに基づき、例えばコンピュータ等の演算装置を用いて、外輪1と転動体5の間または内輪3と転動体5の間の少なくとも一つにおける潤滑膜厚さhおよび金属接触割合αを算出する。このような値の算出により、簡易にかつ正確に転動装置である軸受装置10の状態、特に潤滑状態を診断することが可能となる。
[0032]
 特に本実施形態では、インピーダンスZおよび位相角θを時系列的に複数回測定するとともに、潤滑膜厚さhおよび金属接触割合を時系列的に複数回算出する。この結果、上記(1)~(4)に挙げたように、潤滑膜厚さhおよび金属接触割合αの時間的な変化を把握することができ、この時間的な変化から転動装置の潤滑状態に関する診断を行うことが可能となる。
[0033]
 以下、具体的な実施例について説明する。
 潤滑剤としてのポリアルファオレフィン、PAO(17mm /s、40℃)を封入した内径8mm、外径22mm、高さ7mmの単列深溝玉軸受(銘番:608)を用いて、潤滑膜厚さhおよび金属接触割合αの測定を行った。試験条件は、アキシアル荷重を19.6N、回転数を500rpm、温度は常温、潤滑剤の封入量は0.04gであり、図4に示す試験装置を用いて測定した。
[0034]
 図6は、停止状態から回転を開始して1時間後までの、潤滑膜厚さhおよび金属接触割合αの経時変化を示すグラフである。本試験条件では、潤滑膜厚さhよりも表面粗さの方が大きいため、回転試験開始直後から金属接触が生じていることがわかる。図6より、試験開始前(停止時)は潤滑膜厚さが0nm、金属接触割合が100%であったのに対して、回転試験を開始すると潤滑膜厚さhが増加し、金属接触割合αが減少していくことがわかる。これは、金属接触が生じることによって内外輪の表面粗さが小さくなる(マイルドななじみ)過程を示していると考えられる。尚、本実施例での各値は以下である。Z beforeは、軸受の静止時の電気回路E4全体のインピーダンスであり、cosθ beforeは、軸受の静止時の位相角のcos成分である。
[0035]
V:1.0V
ω:1MHz
ε :1.98
n:7個
20=(n/2)(Z before×cosθ before-R)
before:43.4Ω
cosθ before≒0.99
θ :-89度
L:0
R:0
S:2.92577×10 -8
[0036]
 尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
[0037]
 本出願は、2017年1月6日に日本国特許庁に出願した特願2017-001019号に基づく優先権を主張するものであり、特願2017-001019号の全内容を本出願に援用する。

符号の説明

[0038]
1  外輪(外方部材)
3  内輪(内方部材)
5  転動体
7  金属接触部
9  油膜(潤滑膜)
10 軸受装置(転動装置)
12 回転コネクタ
14 モーター
20 LCRメーター

請求の範囲

[請求項1]
 外方部材と、内方部材と、転動体とを備える転動装置の診断方法であって、
 前記外方部材と、前記転動体と、前記内方部材とから構成される電気回路に交流電圧を印加し、
 前記交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を測定し、
 測定した前記インピーダンスおよび前記位相角に基づき、前記外方部材と前記転動体の間または前記内方部材と前記転動体の間の少なくとも一つにおける潤滑膜厚さおよび金属接触割合を算出する、転動装置の診断方法。
[請求項2]
 請求項1に記載の転動装置の診断方法であって、
 前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を時系列的に測定するとともに、前記潤滑膜厚さおよび前記金属接触割合を時系列的に算出し、
 前記潤滑膜厚さおよび前記金属接触割合の時間的な変化に基づき、転動装置の潤滑状態に関する診断を行う、転動装置の診断方法。
[請求項3]
 請求項1に記載の転動装置の診断方法であって、
 前記交流電圧の周波数は1Hz以上であり、かつ1GHz未満である、転動装置の診断方法。
[請求項4]
 請求項1に記載の転動装置の診断方法であって、
 前記交流電圧は1μV以上であり、かつ100V未満である、転動装置の診断方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]