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1. (WO2018124189) 細胞を選抜する方法
Document

明 細 書

発明の名称 細胞を選抜する方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009  

先行技術文献

特許文献

0010  

非特許文献

0011   0012   0013   0014  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0015   0016  

課題を解決するための手段

0017   0018  

発明の効果

0019   0020  

図面の簡単な説明

0021  

発明を実施するための形態

0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103  

実施例

0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : 細胞を選抜する方法

技術分野

[0001]
 本発明は、細胞を選抜する方法に関し、より詳しくは組換えタンパク質の還元を抑制し得る細胞を選抜する方法に関する。

背景技術

[0002]
 近年の遺伝子組換え技術の発展に伴い、抗体を初めとするバイオ医薬品が広く供給されるようになっている。これらバイオ医薬品は、大腸菌、酵母、昆虫細胞、植物細胞及び動物細胞などの宿主細胞に、組換えタンパク質(以下、同じ細胞から内在性遺伝子に基づき翻訳され分泌されるタンパク質と区別するために、「目的タンパク質」とも言う)をコードする塩基配列を含む発現ベクターを導入することにより作製された生産細胞を用いて製造される。
[0003]
 バイオ医薬品(タンパク質医薬品)の製造工程として、一般的に用いられている工程では、まず、生産細胞を適切な条件で培養し、培養液中に目的タンパク質を分泌させる。目的タンパク質を含む培養液は、不要となった生産細胞が除去された後、精製に供される。
[0004]
 しかし、精製前の当該培養液中には、目的タンパク質以外にも生産細胞由来の様々な酵素活性を持つタンパク質が多数存在するため、それらの活性により、目的タンパク質が分解又は変性する場合がある。また、目的タンパク質を含む培養液を精製したとしても、その精製度によっては、生産細胞由来のタンパク質が残存することで、目的タンパク質が分解又は変性することがある。
[0005]
 目的タンパク質が分解又は変性する原因の一つとして、生産細胞に内在するチオレドキシンレダクターゼなどの還元作用が知られている。具体的には、タンパク質に含まれるジスルフィド結合がチオレドキシンレダクターゼに還元されることにより、当該タンパク質の活性の発現に必要な高次構造が失われることが挙げられる(非特許文献1)。
[0006]
 目的タンパク質の分解又は変性を引き起こす、この還元作用を抑制するため、培養液へのチオレドキシンレダクターゼ阻害剤又は酸化剤の添加、培養液に対する空気散布等を製造工程に組み込むことが試みられている(特許文献1、非特許文献2、3)。
[0007]
 また、還元作用が抑制された生産細胞の樹立を目的に、チオレドキシンレダクターゼ遺伝子をノックダウンした細胞を用いたタンパク質の生産が試みられている。しかしながら、当該遺伝子に着目した生産細胞の樹立は、ノックダウンにより生産細胞の生育が著しく低下するなどの問題があり実用化には至っていない(非特許文献4)。
[0008]
 さらに、還元作用が抑制された生産細胞を選抜する場合、現状では、製造工程を模した還元作用の評価(非特許文献1)以外の方法は知られておらず、多数の細胞を評価し、選抜するのは容易ではない。 
[0009]
 以上のように、目的タンパク質の分解又は変性を引き起こす、還元作用を抑制するため、培養以降の製造工程を対象とした手法が多く提案されている一方で、宿主細胞や遺伝子組換え細胞の改良又は選抜などの生産細胞自体の樹立工程に着目した手法は、現状では僅少である。

先行技術文献

特許文献

[0010]
特許文献1 : 日本国特開2014-129358号公報

非特許文献

[0011]
非特許文献1 : Biotechnology and Bioengineering,622-632,7(4),2010
[0012]
非特許文献2 : Biotechnology and Bioengineering,452-461,106(3),2010
[0013]
非特許文献3 : Bioengineering and Biotechnology,734-742,112(4),2015
[0014]
非特許文献4 : Journal of Biotechnology,261-267,157,2012

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0015]
 上述したように、組換え宿主細胞を用いてタンパク質を生産するには、目的タンパク質の分解や変性が起こらない細胞、その中でも特に、目的タンパク質の還元が起こらない細胞を生産に使用することが望まれている。
[0016]
 したがって、本発明は、組換えタンパク質(目的タンパク質)に対する還元作用が抑制された細胞を選抜する方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0017]
 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、驚くべきことに、目的タンパク質の分解又は変性を引き起こす還元作用は、細胞ごとに強さが異なることを見出した。そして、これまで、この還元作用との関連が全く示唆されていなかった遺伝子群を特定し、当該遺伝子の発現量と細胞の還元作用の間に相関を見出した。さらに、当該遺伝子の発現又は当該遺伝子がコードするタンパク質の発現量を指標に、細胞を選抜することで、その細胞を用いて目的タンパク質を生産したときに、その目的タンパク質に対する還元作用を抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0018]
 すなわち、本発明は、以下の[1]~[15]に関する。
[1]以下の第1工程および第2工程を含む、細胞を選抜する方法。
第1工程:配列番号1~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子について、細胞内の当該遺伝子の発現レベルを測定する工程
第2工程:前記第1工程において測定した前記遺伝子の発現レベルを、対照細胞における前記遺伝子の発現レベルの対照値と比較し、又は、それぞれの細胞における前記遺伝子の発現レベルを比較し、その差異に基づき、組換えタンパク質の還元を抑制し得る発現レベルを評価する工程
[2]以下の第1工程および第2工程を含む、細胞を選抜する方法。
第1工程:配列番号1~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを測定する工程
第2工程:前記第1工程において測定した前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを、対照細胞における前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルの対照値と比較し、又は、それぞれの細胞における前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを比較し、その差異に基づき、組換えタンパク質の還元を抑制し得る発現レベルを評価する工程
[3]以下の第1工程および第2工程を含む、細胞を選抜する方法。
第1工程:配列番号1~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子について、細胞内の当該遺伝子の発現レベルを測定する工程
第2工程:以下に示す(a)~(d)の手順に相対発現量を算出及び比較し、細胞を選抜する工程;
(a)第1工程において測定した被験細胞についての前記遺伝子の発現レベルを、当該被験細胞中の標準遺伝子の発現レベルで除した相対定量値を算出する。
相対定量値=(第1工程において測定した被験細胞についての前記遺伝子の発現レベル)/(標準遺伝子の発現レベル)
(b)対照細胞についての前記遺伝子の発現レベルを、当該対照細胞における標準遺伝子の発現レベルを除して対照値を算出する。
対照値=(対照細胞についての前記遺伝子の発現レベル)/(標準遺伝子の発現レベル)
(c)(a)において算出した被験細胞についての相対定量値を、(b)において算出した対照値で除した相対発現量を算出する。
相対発現量=[(a)において算出した被験細胞についての相対定量値]/[(b)において算出した対照値]
(d)各被験細胞間において、(a)で算出した相対定量値、又は(c)で算出した相対発現量、を比較することにより、それぞれの値が高い又は低い細胞を選抜する。
[4]第2工程(d)において、相対定量値若しくは相対発現量が高い細胞としては、その相対定量値若しくは相対発現量が対照値の2倍以上の細胞であり、又は、相対定量値若しくは相対発現量が低い細胞としては、その相対定量値若しくは相対発現量が対照値の1/2倍以下の細胞である、[3]に記載の方法。
[5]第1工程の前に、配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を細胞に導入し、形質転換する工程を含む、[1]~[4]のいずれか1に記載の方法。
[6]第1工程の前に、配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を細胞でノックダウン又はノックアウトする工程を含む、[1]~[5]のいずれか1に記載の方法。
[7]第1工程の前に、組換えタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入し、形質転換する工程を含む、[1]~[6]のいずれか1に記載の方法。
[8][1]~[7]のいずれか1に記載の方法により細胞を選抜する工程を含む、組換えタンパク質を生産する細胞を取得する方法。
[9][1]~[8]のいずれか1に記載の方法により選抜または取得された細胞または細胞を用いて組換えタンパク質を生産する方法。
[10]前記細胞が哺乳類動物細胞由来の細胞である、[1]~[9]のいずれか1に記載の方法。
[11]前記遺伝子がPlet1遺伝子である、[1]~[10]のいずれか1に記載の方法。
[12]前記組換えタンパク質が抗体である[1]~[11]のいずれか1に記載の方法。
[13]配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子が導入されて形質転換された、組換えタンパク質の還元を抑制し得る細胞。
[14]配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がノックダウン又はノックアウトされた、組換えタンパク質の還元を抑制し得る細胞。
[15]配列番号1~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を指標とすることにより、組換えタンパク質の還元を抑制し得る細胞の取得確率を上げる方法。

発明の効果

[0019]
 本発明の方法によれば、遺伝子組換えを行った細胞集団の中から、目的タンパク質に対する還元作用が抑制された細胞を高い確率で、かつ容易に選抜することが出来る。タンパク質の生産性など還元感受性以外の指標の評価と組み合わせることにより、医薬品を製造する上で望ましい特性を備えた遺伝子組換えタンパク質の生産細胞を、効率的に選抜することが出来る。
[0020]
 さらに、本発明の方法によれば、目的タンパク質に対する還元作用が抑制された細胞を得ることができる。この細胞を使用すれば、目的タンパク質に対する還元作用が抑制された、目的タンパク質の生産細胞を取得することができる。

図面の簡単な説明

[0021]
[図1] 図1は、A#1株が生産する抗体が還元せずwholeの抗体のまま安定に存在すること、及び、A#2株が生産する抗体が還元により経時的に分解されていることを示すキャピラリー電気泳動の結果を示す図である。
[図2] 図2は、抗体C生産細胞の80日間の継代培養期間におけるPlet1遺伝子の相対発現量の推移を示す図である。

発明を実施するための形態

[0022]
 本発明の第1実施形態は、以下の第1工程および第2工程を含む、組換えタンパク質(目的タンパク質)に対する還元作用が抑制された細胞を選抜する方法である。
第1工程:配列番号1~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子について、細胞内の当該遺伝子の発現レベルを測定する工程
第2工程:前記第1工程において測定した前記遺伝子の発現レベルを、前記遺伝子の発現レベルの対照値と比較し、その差異に基づき、組換えタンパク質の還元を抑制し得る発現レベルを評価する工程
[0023]
 本発明者らは、抗体を産生する細胞において、抗体が還元されにくい細胞と抗体が還元されやすい細胞とをマイクロアレイを用いた遺伝子発現差解析により比較し、細胞内における配列番号1~16に示す塩基配列を有する遺伝子の発現量が、抗体が還元されにくい細胞と還元されやすい細胞で大きく異なることを見出した。
[0024]
 配列番号1~16に示される塩基配列は、Affimetrix、又はNCBI(National Center for Biotechnology Information)に登録されている塩基配列であり、これらのいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子は、AffimetrixのWebページ(https://www.affymetrix.com/analysis/netaffx/xmlquery_ex.affx?netaffx=wtgene_transcript)、又はNCBIのWebページ(URL;http://www.ncbi.nlm.nih.gov)から、遺伝子名や部分配列を元にデータベースを検索することによって入手することができる。AffimetrixのWebページでは、ID:18083239として登録されている。なお、「オーソログな遺伝子」とは、異なる生物に存在する相同な機能を有するタンパク質をコードする類縁遺伝子をいう。
[0025]
 配列番号1、4、7、8および10~16に示される塩基配列は、それぞれPlet1遺伝子、マトリリン4遺伝子、Gタンパク質結合受容体133遺伝子、テナスシンC遺伝子、コラーゲンアルファ1(III)鎖遺伝子、グルタチオンS-トランスフェラーゼアルファ-3遺伝子、カルシウム/カルモジュリン依存3’,5’環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ1C遺伝子、炭疽毒素受容体1遺伝子、ガストロキン1遺伝子、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリー9遺伝子又はVI型コラーゲンα2遺伝子の塩基配列である。
[0026]
 「Plet1遺伝子」とは、Plet1をコードする遺伝子を意味する。Plet1は、胎盤で発現するplacenta-expressed transcript 1 proteinであり、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。Plet1は各種の哺乳類動物に存在しており、種々の哺乳類動物由来のPlet1をコードする遺伝子を使用することができるが、宿主細胞として用いる細胞が由来する哺乳類動物のものを使用することが好ましい。Plet1遺伝子としては、例えば、配列番号1に示される塩基配列を有するチャイニーズハムスターのPlet1遺伝子が挙げられる。
[0027]
 「マトリリン4遺伝子」とは、matrilin 4(Matn4)をコードする遺伝子を意味する。マトリリン4は、配列番号18に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。マトリリン4は各種の哺乳類動物に存在しており、種々の哺乳類動物由来のマトリリン4をコードする遺伝子を使用することができるが、宿主細胞として用いる細胞が由来する哺乳類動物のものを使用することが好ましい。マトリリン4遺伝子としては、例えば、配列番号4に示される塩基配列を有するチャイニーズハムスターのマトリリン4遺伝子が挙げられる。
[0028]
 「Gタンパク質結合受容体133遺伝子」とは、G protein-coupled receptor 133をコードする遺伝子を意味する。Gタンパク質結合受容体133遺伝子は、配列番号19に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。Gタンパク質結合受容体133遺伝子は各種の哺乳類動物に存在しており、種々の哺乳類動物由来のGタンパク質結合受容体133遺伝子をコードする遺伝子を使用することができるが、宿主細胞として用いる細胞が由来する哺乳類動物のものを使用することが好ましい。Gタンパク質結合受容体133遺伝子としては、例えば、配列番号7に示される塩基配列を有するチャイニーズハムスターのGタンパク質結合受容体133遺伝子が挙げられる。
[0029]
 「テナスシンC遺伝子」とは、tenascin Cをコードする遺伝子を意味する。テナスシンCは、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。テナスシンCは各種の哺乳類動物に存在しており、種々の哺乳類動物由来のテナスシンCをコードする遺伝子を使用することができるが、宿主細胞として用いる細胞が由来する哺乳類動物のものを使用することが好ましい。テナスシンC遺伝子としては、例えば、配列番号8に示される塩基配列を有するチャイニーズハムスターのテナスシンC遺伝子が挙げられる。
[0030]
 「コラーゲンアルファ-1(III)鎖遺伝子」とは、collagen alpha-1(III) chainをコードする遺伝子を意味する。コラーゲンアルファ-1(III)鎖は、配列番号21に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。コラーゲンアルファ-1(III)は各種の哺乳類動物に存在しており、種々の哺乳類動物由来のコラーゲンアルファ-1(III)をコードする遺伝子を使用することができるが、宿主細胞として用いる細胞が由来する哺乳類動物のものを使用することが好ましい。コラーゲンアルファ-1(III)鎖遺伝子としては、例えば、配列番号10に示される塩基配列を有するチャイニーズハムスターのコラーゲンアルファ-1(III)鎖遺伝子が挙げられる。
[0031]
 「グルタチオンS-トランスフェラーゼアルファ-3遺伝子」とは、glutathione S-transferase alpha-3をコードする遺伝子を意味する。グルタチオンS-トランスフェラーゼアルファ-3は、配列番号22に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。グルタチオンS-トランスフェラーゼアルファ-3は各種の哺乳類動物に存在しており、種々の哺乳類動物由来のグルタチオンS-トランスフェラーゼアルファ-3をコードする遺伝子を使用することができるが、宿主細胞として用いる細胞が由来する哺乳類動物のものを使用することが好ましい。グルタチオンS-トランスフェラーゼアルファ-3遺伝子としては、例えば、配列番号11に示される塩基配列を有するチャイニーズハムスターのグルタチオンS-トランスフェラーゼアルファ-3遺伝子が挙げられる。
[0032]
 「カルシウム/カルモジュリン依存3’,5’環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ1C遺伝子」とは、calcium/calmodulin-dependent 3’,5’-cyclic nucleotide phosphodiesterase 1Cをコードする遺伝子を意味する。カルシウム/カルモジュリン依存3’,5’環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ1Cは、配列番号23に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。カルシウム/カルモジュリン依存3’,5’環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ1Cは各種の哺乳類動物に存在しており、種々の哺乳類動物由来のカルシウム/カルモジュリン依存3’,5’環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ1Cをコードする遺伝子を使用することができるが、宿主細胞として用いる細胞が由来する哺乳類動物のものを使用することが好ましい。カルシウム/カルモジュリン依存3’,5’環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ1C遺伝子としては、例えば、配列番号12に示される塩基配列を有するチャイニーズハムスターのカルシウム/カルモジュリン依存3’,5’環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ1C遺伝子が挙げられる。
[0033]
 「炭疽毒素受容体1遺伝子」とは、anthrax toxin receptor 1をコードする遺伝子を意味する。炭疽毒素受容体1は、配列番号24に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。炭疽毒素受容体1は各種の哺乳類動物に存在しており、種々の哺乳類動物由来の炭疽毒素受容体1をコードする遺伝子を使用することができるが、宿主細胞として用いる細胞が由来する哺乳類動物のものを使用することが好ましい。炭疽毒素受容体1遺伝子としては、例えば、配列番号13に示される塩基配列を有するチャイニーズハムスターの炭疽毒素受容体1遺伝子が挙げられる。
[0034]
 「ガストロキン1遺伝子」とは、gastrokine-1をコードする遺伝子を意味する。ガストロキン1は、配列番号25に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。ガストロキン1は各種の哺乳類動物に存在しており、種々の哺乳類動物由来のガストロキン1をコードする遺伝子を使用することができるが、宿主細胞として用いる細胞が由来する哺乳類動物のものを使用することが好ましい。ガストロキン1遺伝子としては、例えば、配列番号14に示される塩基配列を有するチャイニーズハムスターのガストロキン1遺伝子が挙げられる。
[0035]
 「腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリー9遺伝子」とは、tumor necrosis factor ligand superfamily member 9をコードする遺伝子を意味する。腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリー9は、配列番号26に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリー9は各種の哺乳類動物に存在しており、種々の哺乳類動物由来の腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリー9をコードする遺伝子を使用することができるが、宿主細胞として用いる細胞が由来する哺乳類動物のものを使用することが好ましい。腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリー9遺伝子としては、例えば、配列番号15に示される塩基配列を有するチャイニーズハムスターの腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリー9遺伝子が挙げられる。
[0036]
 「VI型コラーゲンα2遺伝子」とは、collagen,type VI,alpha2をコードする遺伝子を意味する。VI型コラーゲンα2は、配列番号27に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。VI型コラーゲンα2は各種の哺乳類動物に存在しており、種々の哺乳類動物由来のVI型コラーゲンα2をコードする遺伝子を使用することができるが、宿主細胞として用いる細胞が由来する哺乳類動物のものを使用することが好ましい。VI型コラーゲンα2遺伝子としては、例えば、配列番号16に示される塩基配列を有するチャイニーズハムスターのVI型コラーゲンα2遺伝子が挙げられる。
[0037]
 上記遺伝子の中でも、本発明においては、Plet1[Placenta expressed transcrript 1 protein(ID:18083239)]遺伝子の発現レベルの差異を指標として用いて、組換えタンパク質の還元を抑制し得る該細胞の能力を評価することが好ましい。なお、本明細書において、「ID」はAffimetrix社のWebページ(https://www.affymetrix.com/analysis/netaffx/xmlquery_ex.affx?netaffx=wtgene_transcript)における登録番号を示す。
[0038]
 以下、本明細書においては、上記遺伝子のうち、主にPlet1遺伝子を用いて本発明を説明するが、本発明は、Plet1遺伝子を用いるものに限定されず、上記の遺伝子のいずれも使用可能である。また、表2に列挙したように、IDがそれぞれ17952793、17952795、17957314、17958207、及び18024962に相当する、配列番号2、3、5、6及び9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子も使用可能である。
[0039]
 本発明において、タンパク質の分解・変性とは、タンパク質の構造が化学的にまたは酵素的に影響を受け、共有結合や非共有結合が切断され、タンパク質を構成するサブユニット、タンパク質断片、ポリペプチド断片、アミノ酸等に分離することや、タンパク質の二次構造、三次構造、四次構造が天然に存在する状態から変化すること、会合・凝集や解離を生じることである。
[0040]
 本発明において、還元とは、タンパク質の分解又は変性を引き起こす原因の一つであり、例えば、タンパク質の分子内若しくは分子間に架橋されている複数のあるいは1か所以上のジスルフィド結合(-S-S-結合)が乖離し、遊離したスルフヒドリル基(-SH基)が複数あるいは1か所以上生じることをいう。
[0041]
 タンパク質の還元は、例えば、細胞内に存在するオキシドレダクターゼが細胞から遊離するなどしてタンパク質を還元させることにより生じる。オキシドレダクターゼとしては、例えば、デヒドロゲナーゼ類、シトクロム類、カタラーゼ類、オキシダーゼ類、オキシゲナーゼ類、脂肪酸不飽和化酵素類などが挙げられる。その中でもチオレドキシンレダクターゼはタンパク質の還元による分解に大きく関与していると考えられる。
[0042]
 本発明は特に、タンパク質の分子内若しくは分子間にジスルフィド結合を有するタンパク質に適用することができる。当該ジスルフィド結合はタンパク質の分子内若しくは分子間に1か所以上あればよい。また、分子間のジスルフィド結合の場合、結合されるタンパク質は同じでも異なっていてもよい。
[0043]
 ジスルフィド結合を分子内及び分子間に保有するタンパク質としては、例えば、抗体(例えば、IgG1~4、IgM、IgE、IgD、IgA)、一本鎖抗体、Fab、F(ab’) 等が挙げられる。
[0044]
 本発明において、還元又は還元作用の抑制とは、上述のタンパク質の還元を抑制することをいう。特に、組換えタンパク質においては、細胞により生産された組換えタンパク質をNativeな形態、例えば、ジスルフィド結合が適正な部位に形成された状態で維持することをいう。
[0045]
 本発明において、タンパク質の還元されやすさは、目的とするタンパク質の生産細胞を破砕し、無酸素条件下でインキュベートした細胞破砕液から経時的に溶液を採取し、次いで、採取した破砕液中に含まれる生産されたタンパク質の分子量を電気泳動、キャピラリー電気泳動、ゲルろ過HPLC、ペプチドマップなどにより測定することにより決定することができる。すなわち、生産されたタンパク質が分解されやすい場合は、タンパク質の分子量が小さくなるので、これを電気泳動等の理化学的な手法により測定し、還元されやすさの指標とすることができる。
[0046]
 なお、抗体のように立体構造を有するタンパク質は還元しても立体構造が維持されるため、通常のゲルろ過HPLC等の分析方法では還元による分解を検出できない。このような場合は、還元により遊離したチオール基についてアルキル化等の処理を行い、タンパク質を変性したうえで上記分析にかけることで、還元を検出することができる。
[0047]
 本発明で用いられる細胞としては、組換えタンパク質を発現する能力を有する細胞であれば特に限定されない。例えば、組換えタンパク質の産生に一般的に用いられるチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ベビーハムスターキドニー細胞(BHK)、ヒト細胞(HT1080繊維肉腫細胞、Per.C6)、マウスミエローマ細胞(NS0、SP2/0)、または、イヌ腎臓尿細管上皮細胞由来細胞(MDCK)のような哺乳類由来の細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、サルまたはブタなどの動物由来の細胞を使用してもよい。また、CHO細胞としては、CHO-K1株、CHO-DG44株、CHO-S株、DUKX-B11株などの亜株を用いてもよい。
[0048]
 本発明において、「組換えタンパク質」とは、当該組換えタンパク質をコードする遺伝子を組換えDNA技術によって適切な発現ベクターに挿入し、これを用いて細胞を形質転換して得るためのタンパク質を意味する。本発明において用いられる組換えタンパク質としては、例えば、抗体、既に医薬品として使用又は開発されている様々なペプチドやタンパク質、または、サイトカイン等が挙げられる。
[0049]
 前記細胞及び形質転換して得られた細胞を培養するための培地としては、上述したような細胞及び形質転換して得られた細胞を培養するために通常に用いられる培地が用いられる。このような培地としては、例えば、IMDM、MEM、DMEM、RPMI-1640、X-VIVO15培地、EX-CELLシリーズ培地(SAFC Biosciences)、BalanCD CHOシリーズ培地(JX)、その他の動物細胞用に開発された市販培地または特注培地が挙げられる。
[0050]
 前記培地には、ウシ胎仔血清が添加してもよいが、無血清培地を使用することもできる。ウシ胎仔血清を添加する場合、その濃度は5~20%程度であることが好ましい。また、前記培地にはアミノ酸、ビタミン類、糖類、大豆加水分解物、酵母抽出物、微量金属など様々な成分を適当な割合で混合して使用することができる。
[0051]
 第1実施形態では、第1工程において、被験細胞内の前記遺伝子(配列番号1~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子)の発現レベルを測定する。発現レベルを測定する遺伝子として、好ましくはPlet1である。
[0052]
 前記遺伝子の発現レベルの測定方法としては特に限定されないが、例えば、定量的リアルタイムPCR(qPCR)、逆転写定量的リアルタイムPCR(RT-qPCR)法、NGSを用いたRNA-seqによる発現差解析、DNAマイクロアレイを用いた発現差解析、ノーザンブロッティングまたはELISA(Enzyme-linked Immunosorbent Assay)等の方法が挙げられる。これらの中でも、RT-qPCR法は、迅速に測定できることから好ましい。RT-qPCR法については実施例の項で詳細に説明する。
[0053]
 第1実施形態では、第2工程において、前記第1工程において測定した前記遺伝子の発現レベルを、(i)対照細胞における前記遺伝子の発現レベルの対照値と比較し、又は、(ii)それぞれの細胞における前記遺伝子の発現レベルを比較し、その差異に基づき、組換えタンパク質の還元を抑制し得る発現レベルを評価する。
[0054]
 第1実施形態の第2工程における組換えタンパク質の還元を抑制し得る発現レベルの評価は、具体的には、例えば、以下に示す(a)~(d)の手順により行うことが好ましい。
(a)第1工程において測定した被験細胞についての前記遺伝子の発現レベルを、当該被験細胞中の標準遺伝子の発現レベルで除した相対定量値を算出する。
相対定量値=(第1工程において測定した被験細胞についての前記遺伝子の発現レベル)/(標準遺伝子の発現レベル)
(b)対照細胞についての前記遺伝子の発現レベルを、当該対照細胞における標準遺伝子の発現レベルを除して対照値を算出する。
対照値=(対照細胞についての前記遺伝子の発現レベル)/(標準遺伝子の発現レベル)
(c)(a)において算出した被験細胞についての相対定量値を、(b)において算出した対照値で除した相対発現量を算出する。
相対発現量=[(a)において算出した被験細胞についての相対定量値]/[(b)において算出した対照値]
(d)各被験細胞間において、(a)で算出した相対定量値、又は(c)で算出した相対発現量、を比較することにより、それぞれの値が高い又は低い細胞を選抜する。
[0055]
 前記(d)の手順は、以下に示す(d-1)又は(d-2)の手順により行うことがより好ましい。
(d-1)各被験細胞間で(a)で算出した相対定量値を比較することにより、値が高い(配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を用いた場合)又は低い(配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を用いた場合)細胞を選抜する。
(d-2)各被験細胞間で(c)で算出した相対発現量を比較することにより、値が高い(配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を用いた場合)又は低い(配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を用いた場合)細胞を選抜する。
[0056]
 前記相対定量値の高い細胞としては、その相対定量値が、被験細胞の中で最も小さい値を示した細胞(対照細胞)の相対定量値(対照値ともいう)の2倍以上である細胞が挙げられ、例えば、5倍以上、7倍以上、10倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、50倍以上、又は100倍以上である細胞が挙げられる。
[0057]
 特に、前記相対定量値の高い細胞としては、その相対定量値が、前記対照値の好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは20倍以上、さらにより好ましくは25倍以上、一層より好ましくは30倍以上、50倍以上、最も好ましくは100倍以上である細胞が挙げられる。
[0058]
 前記相対定量値の低い細胞としては、その相対定量値が、被験細胞の中で最も大きい値を示したもの(対照細胞)の相対定量値(対照値ともいう)の1/2倍以下である細胞が挙げられ、好ましくは1/5倍以下、より好ましくは1/10倍以下、さらに好ましくは1/20倍以下である細胞が挙げられる。
[0059]
 前記相対発現量の高い細胞としては、その相対発現量が、被験細胞の中で最も小さい値を示した細胞の相対発現量と比べて、2倍以上である細胞が挙げられ、例えば、5倍以上、7倍以上、10倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、50倍以上、又は100倍以上である細胞が挙げられる。
[0060]
 特に、前記相対発現量の高い細胞としては、その相対発現量が、被験細胞の中で最も小さい値を示した細胞の相対発現量と比べて、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは20倍以上、さらにより好ましくは25倍以上、一層より好ましくは30倍以上、さらにより一層好ましくは50倍以上、最も好ましくは100倍以上である細胞が挙げられる。
[0061]
 前記相対発現量の低い細胞としては、その相対発現量が、被験細胞の中で最も大きい値を示した細胞の相対発現量の1/2倍以下である細胞が挙げられ、好ましくは1/5倍以下、より好ましくは1/10倍以下、さらに好ましくは1/20倍以下である細胞が挙げられる。
[0062]
 また、第1実施形態の第2工程における組換えタンパク質の還元を抑制し得る発現レベルの評価として、以下に示す(e)~(g)の手順により行うこともできる。
(e)第1工程において測定した被験細胞についての前記遺伝子の発現レベルを、当該被験細胞中の標準遺伝子の発現レベルで除した相対定量値を算出する。
相対定量値=(第1工程において測定した被験細胞についての前記遺伝子の発現レベル)/(標準遺伝子の発現レベル)
(f)(e)において算出した被験細胞についての相対定量値を、他の細胞で同様に算出した相対定量値と比較する。
(g)各被験細胞間で(e)で算出した相対定量値を比較することにより、値が高い(配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を用いた場合)又は低い(配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を用いた場合)細胞を選抜する。
[0063]
 前記標準遺伝子としては、細胞内で一般的に発現している遺伝子であれば特に制限なく使用でき、例えば、GAPDH(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)、ベータアクチン、ベータ2-マイクログロブリン、HPRT1(Hypoxanthine phosphoribosyltransferase 1)、グロブリン、または、ユビキチン等が挙げられる。また、標準遺伝子の発現レベルの測定は、前記遺伝子の発現レベルと同様、RT-qPCR法等により実施することができる[Genome Biol.,1-11,3(7),2002]。好ましくはGAPDHである。
[0064]
 前記対照細胞としては、例えば、組換えタンパク質が還元されやすい細胞が挙げられる。対照細胞は、第1工程において前記遺伝子の発現レベルを測定する細胞とサンプリング時点が異なる同じ細胞由来の試料を用いてもよいし、由来となる細胞が異なるものでもよい。また、対照細胞は、被験細胞の中から一つ選んでもよく、その場合、各被験細胞のうち、どれを選んでもよい。
[0065]
 具体的には、例えば、配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を用いて評価する場合は、測定した各被験細胞の値の中で最も低い相対定量値を示した細胞を対照細胞とすれば、選抜すべき被験細胞との差異が大きくなることから、結果の解析が容易になる。
[0066]
 一方、配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を用いて評価する場合は、最も高い相対定量値を示した細胞を対照細胞とすれば、選抜すべき被験細胞との差異が大きくなることから、結果の解析が容易になる。
[0067]
 すなわち、前記対照細胞として好ましくは、配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を用いる場合には相対定量値が最も低い細胞であり、配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を用いる場合には相対定量値が最も高い細胞である。
[0068]
 本発明の第2実施形態は、以下の第1工程および第2工程を含む、組換えタンパク質に対する還元作用が抑制された細胞を選抜する方法である。
第1工程:配列番号1~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを測定する工程
第2工程:前記第1工程において測定した前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを、対照細胞における前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルの対照値と比較し、又は、それぞれの細胞における前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを比較し、その差異に基づき、組換えタンパク質の還元を抑制し得る発現レベルを評価する工程
[0069]
 第2実施形態では、第1工程において、被験細胞において発現される、前記遺伝子(配列番号1~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子)がコードするタンパク質の発現レベルを測定する。発現レベルを測定するタンパク質として、好ましくはPlet1である。
[0070]
 前記タンパク質の発現レベルの測定方法としては特に限定されないが、例えば、ELISA、ウエスタンブロッティング、FACS(Fluorescence-activated Cell Sorting)、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)またはLC-MS等の方法が挙げられる。これらの中でも、ELISA法は、迅速に測定できることから好ましい。
[0071]
 第2実施形態では、第2工程において、前記第1工程において測定した前記遺伝子(配列番号1~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子)がコードするタンパク質の発現レベルを、(i)対照細胞における前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルの対照値と比較し、又は、(ii)それぞれの細胞における前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを比較し、その差異に基づき、組換えタンパク質の還元を抑制し得る発現レベルを評価する。
[0072]
 第2実施形態の第2工程における評価は、具体的には、例えば、以下に示す(a)~(d)の手順により行うことが好ましい。
(a)第1工程において測定した被験細胞についての前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを、当該被験細胞中の標準遺伝子がコードするタンパク質(標準タンパク質)の発現レベルで除した相対定量値を算出する。
相対定量値=(第1工程において測定した被験細胞についての前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベル)/(標準タンパク質の発現レベル)
(b)対照細胞についての前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを、当該対照細胞における標準タンパク質の発現レベルを除して対照値を算出する。
対照値=(対照細胞についての前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベル)/(標準タンパク質の発現レベル)
(c)(a)において算出した被験細胞についての相対定量値を、(b)において算出した対照値で除した相対発現量を算出する。
相対発現量=[(a)において算出した被験細胞についての相対定量値]/[(b)において算出した対照値]
(d)各被験細胞間において、(a)で算出した相対定量値、又は(c)で算出した相対発現量、を比較することにより、それぞれの値が高い又は低い細胞を選抜する。
[0073]
 前記(d)の手順は、以下に示す(d-1)又は(d-2)の手順により行うことがより好ましい。
(d-1)各被験細胞間で(a)で算出した相対定量値を比較することにより、値が高い(配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がコードするタンパク質を用いた場合)又は低い(配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がコードするタンパク質を用いた場合)細胞を選抜する。
(d-2)各被験細胞間で(c)で算出した相対発現量を比較することにより、値が高い(配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がコードするタンパク質を用いた場合)又は低い(配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がコードするタンパク質を用いた場合)細胞を選抜する。
[0074]
 前記相対定量値の高い細胞としては、その相対定量値が、被験細胞の中で最も小さい値を示した細胞(対照細胞)の相対定量値(対照値ともいう)の2倍以上である細胞が挙げられ、例えば、5倍以上、7倍以上、10倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、50倍以上、又は100倍以上である細胞が挙げられる。
[0075]
 特に、前記相対定量値の高い細胞としては、その相対定量値が、前記対照値の好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは20倍以上、さらに好ましくは25倍以上、一層より好ましくは30倍以上、さらにより一層好ましくは50倍以上、最も好ましくは100倍以上である細胞が挙げられる。
[0076]
 前記相対定量値の低い細胞としては、その相対定量値が、被験細胞の中で最も大きい値を示したもの(対照細胞)の相対定量値(対照値ともいう)の1/2倍以下である細胞が挙げられ、好ましくは1/5倍以下、より好ましくは1/10倍以下、さらに好ましくは1/20倍以下である細胞が挙げられる。
[0077]
 前記相対発現量の高い細胞としては、その相対発現量が、被験細胞の中で最も小さい値を示した細胞の相対発現量と比べて、2倍以上である細胞が挙げられ、例えば、5倍以上、7倍以上、10倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、50倍以上、又は100倍以上である細胞が挙げられる。
[0078]
 特に、前記相対発現量の高い細胞としては、その相対発現量が、被験細胞の中で最も小さい値を示した細胞の相対発現量と比べて、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは20倍以上、さらにより好ましくは25倍以上、一層より好ましくは30倍以上、さらにより一層好ましくは50倍以上、最も好ましくは100倍以上である細胞が挙げられる。
[0079]
 前記相対発現量の低い細胞としては、その相対発現量が、被験細胞の中で最も大きい値を示した細胞の相対発現量の1/2倍以下である細胞が挙げられ、好ましくは1/5倍以下、より好ましくは1/10倍以下、さらに好ましくは1/20倍以下である細胞が挙げられる。
[0080]
 また、第2実施形態の第2工程における組換えタンパク質の還元を抑制し得る発現レベルの評価として、以下に示す(e)~(g)の手順により行うこともできる。
(e)第1工程において測定した被験細胞についての前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを、当該被験細胞中の標準遺伝子がコードするタンパク質(標準タンパク質)の発現レベルで除した相対定量値を算出する。
相対定量値=(第1工程において測定した被験細胞についての前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベル)/(標準タンパク質の発現レベル)
(f)(e)において算出した被験細胞についての相対定量値を、他の細胞で同様に算出した相対定量値と比較する。
(g)各被験細胞間で(e)で算出した相対定量値を比較することにより、値が高い(配列番号1~9で表わされる遺伝子を用いた場合)又は低い(配列番号10~16で表わされる遺伝子を用いた場合)細胞を選抜する。
[0081]
 前記標準タンパク質としては、細胞内で一般的に発現しているタンパク質であれば特に制限なく使用でき、例えばGAPDH(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)、ベータアクチン、ベータ2-マイクログロブリン、HPRT1(Hypoxanthine phosphoribosyltransferase 1)、グロブリン、または、ユビキチン等が挙げられる。
[0082]
 また、前記標準タンパク質の発現レベルの測定は、前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルと同様、ELISA法等により実施することができる。好ましくはGAPDHである。
[0083]
 前記対照細胞としては、例えば、組換えタンパク質が還元されやすい細胞が挙げられる。対照細胞は、第1工程において前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを測定する細胞とサンプリング時点が異なる同じ細胞由来の試料を用いてもよいし、由来となる細胞が異なるものでもよい。また、対照細胞は、被験細胞の中から一つ選んでもよく、その場合、各被験細胞のうち、どれを選んでもよい。
[0084]
 具体的には、例えば、配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がコードするタンパク質を用いて評価する場合は、測定した各被験細胞の値の中で最も低い相対定量値を示した細胞を対照細胞とすれば、選抜すべき被験細胞との差異が大きくなることから、結果の解析が容易になる。
[0085]
 一方、配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がコードするタンパク質を用いて評価する場合は、最も高い相対定量値を示した細胞を対照細胞とすれば、選抜すべき被験細胞との差異が大きくなることから、結果の解析が容易になる。
[0086]
 すなわち、前記対照細胞として好ましくは、配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がコードするタンパク質を用いる場合には相対定量値が最も低い細胞であり、配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がコードするタンパク質を用いる場合には相対定量値が最も高い細胞である。
[0087]
 第1実施形態又は第2実施形態では、第1工程の前に配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子、を細胞に導入し形質転換する工程を含んでもよい。
[0088]
 本発明において、「遺伝子を導入する」とは、目的遺伝子が細胞内に存在していることを意味する。例えば、目的遺伝子が細胞の染色体、又は細胞内に存在するベクター上に目的の遺伝子を有していることを意味する。目的遺伝子としては、細胞に生産される組換えタンパク質の遺伝子及び/又は配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子が挙げられる。
[0089]
 第1実施形態又は第2実施形態では、第1工程の前に、配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を細胞に導入し形質転換する工程、及び、組換えタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入し形質転換する工程を含んでもよい。これらの工程はどちらが先でもよく、同時でもよい。細胞に導入し形質転換する方法としては、上述した方法が挙げられる。
[0090]
 目的遺伝子の細胞への導入は、例えば、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の周知の方法を用いることができる。宿主細胞としてCHO細胞を用いる場合には、例えば、発現ベクターに目的遺伝子を導入し、これをリポフェクション法等でCHO細胞にトランスフェクションし、これを培養して遺伝子導入されたCHO細胞を得ることができる。
[0091]
 細胞に目的遺伝子を導入する方法としては細胞に応じて適したものを用いることができ、例えば、発現ベクターを用いる方法が挙げられる。発現ベクターとしては特に限定されないが、プラスミドベクターを用いることが好ましい。その他、例えば、ウイルスベクター、コスミドベクター、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)及び他の非プラスミドベクターを使用してもよい。これらのベクターとしては市販のものを使用することもできる。なお、細胞として哺乳類動物由来の細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する発現ベクターを用いることが好ましい。
[0092]
 さらに、第1実施形態又は第2実施形態では、第1工程の前に配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を、当該細胞からノックダウン又はノックアウトし、当該遺伝子の発現量を下方制御する工程を含んでもよい。
[0093]
 本発明において、「ノックダウン又はノックアウト」するとは、目的遺伝子の転写または翻訳が阻害され、通常よりも低下していることを意味する。これにより、目的遺伝子の機能が失われるか減弱する。
[0094]
 遺伝子のノックダウン若しくはノックアウトは、遺伝子の機能を抑制または消失することが可能であればいずれの技術も用いることができる。例えば、アンチセンスRNAを細胞に導入する方法、siRNAやmicroRNAなどを用いたRNAi法などを用いて、該当遺伝子の発現量を抑制することができる。また、TALENやCRISPR-Cas9などのゲノム編集技術を用いて遺伝子をノックアウトする方法も利用できる。
[0095]
 第1実施形態又は第2実施形態では、第1工程の前に、配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を細胞でノックダウン又はノックアウトする工程、及び、組換えタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入し形質転換する工程を含んでもよい。これらの工程はどちらが先でもよく、同時でもよい。遺伝子をノックダウン又はノックアウトする方法、細胞に導入し形質転換する方法としては、上述した方法が挙げられる。
[0096]
 前述のようにして選抜された細胞は、目的とする組換えタンパク質の還元を抑制する能力を有している可能性が高く、該細胞を宿主細胞として用いることで、いかなる組換えタンパク質を生産する細胞をも取得することができる。本発明の選抜方法により得られた細胞(生産細胞)により生産される組換えタンパク質は、還元により分解又は変性することなく単離することができる。
[0097]
 タンパク質の生産細胞を樹立する場合、数十から数千以上の細胞の集団を樹立し、その中から組換えタンパク質の生産に適切な細胞を選抜する場合が多い。本発明の方法に基づき取得された生産細胞は、組換えタンパク質の還元を抑制する性質を有している。少なくとも、本発明の方法に基づき取得された生産細胞は、組換えタンパク質の還元を抑制する性質を有している確率が高い。すなわち、本発明により、組換えタンパク質の還元を抑制しうる細胞の取得確率を従来の方法よりも上げることができる。
[0098]
 本発明の選抜方法は、生産性、高発現、及び、品質等、他の指標に基づく生産細胞の選抜方法を組み合わせることができる。従って、本発明は、組換えタンパク質を高生産又は高発現する細胞を取得する方法を提供する。
[0099]
 本発明の第3実施形態は、配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を細胞に導入し形質転換することを含む、組換えタンパク質の還元を抑制し得る細胞とその取得である。
[0100]
 本発明の第4実施形態は、配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がノックダウン又はノックアウトされた、組換えタンパク質の還元を抑制し得る細胞とその取得である。
[0101]
 配列番号1~9に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を導入した細胞、又は、配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がノックダウン又はノックアウトされた細胞を宿主細胞として用いることにより、当該細胞から生産される組換えタンパク質の還元、及びそれに伴う分解又は変性を抑制することができる。これにより、組換えタンパク質の活性が低下又は消失することが抑制された生産細胞を取得することが可能となる。
[0102]
 本発明により得られた細胞は、通常の培養を行うことで、目的タンパク質をNativeな形態、すなわち、ジスルフィド結合が適正な部位に形成された形態で生産させることができる。細胞の培養方法としては、バッチ培養、フェドバッチ培養、潅流培養など、タンパク質の生産によく知られた方法を利用することができる。得られた培養液は、細胞分離工程を経た後に精製に供される。細胞分離工程は、連続遠心分離、バッチ遠心分離、ろ過、潅流等の方法により行われる。
[0103]
 細胞から組換えタンパク質を単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。具体的には、例えば、尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒分別沈殿法、透析、遠心分離、限外ろ過、ゲルろ過、SDS-PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等が挙げられるが、これらに限定されない。
実施例
[0104]
 次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
[0105]
[実施例1]
 マイクロアレイ解析を用いた抗体生産細胞の遺伝子発現差解析
 生産されるタンパク質(抗体)の還元されやすさの違いと相関して発現する遺伝子(mRNA)を特定する目的でDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現差解析を行った。
[0106]
 生産される抗体が還元されにくい細胞[IgG4型モノクローナル抗体(以下、抗体Aという)を生産するCHO細胞#1(以下A#1株と略す)、抗体Aと異なる抗原に対する抗体であるIgG1/IgG3キメラ型モノクローナル抗体(以下、抗体Bという)を生産するCHO細胞#1(以下B#1株と略す)]及び還元されやすい細胞[抗体Aを生産するCHO細胞#2(以下A#2株と略す)、抗体Bを生産するCHO細胞#2(以下B#2株と略す)]を評価に用いた。それぞれの細胞の還元されやすさの大小を表1に示す。なお、還元されやすさの評価は以下のように行った。
[0107]
 すなわち、250mL三角フラスコに細胞を播種し、CO インキュベーター内で13日間培養した。培養期間中、適宜フィード培地の添加を行なうとともにサンプリングを実施した。生細胞密度及び生存率は生死細胞オートアナライザー(Vi-CELL XR)を用いて測定し、抗体濃度の測定はProtein A HPLCを用いて測定した。
[0108]
 培養13日目の細胞を、超音波破砕機(VP-300、TAITEC社製)を用いて破砕し、細胞破砕液を無酸素条件下でインキュベートした。経時的に溶液をサンプリングし、Agilent2100 Bioanalyzer(Agilent社製)を用いてキャピラリー電気泳動を行い、生産されたタンパク質の分解状態を評価した。A#1株及びA#2株について結果を図1に示す。
[0109]
 図1に示すように、A#1株及びA#2株が生産した抗体の構造変化を観察したところ、A#1株では目的物のバンド(Whole抗体、150kDa付近)が変化しなかったのに対し、A#2株では還元反応の進行により低分子量の分解物(28~95kDa)が経時的に増加することを確認した。
[0110]
[表1]


[0111]
 これらの細胞を250mL容量の三角フラスコを用いてCO インキュベーター内で14日間培養した。培養期間中、適宜フィード培地の添加及びサンプリングを実施した。培養3日目及び9日目に各細胞培養液をサンプリングし、約1×10 個の各細胞からISOGEN((株)ニッポンジーン製)を用いてtotal RNAを抽出した。
[0112]
 得られたtotal RNAのうち50μgを用いてDNase処理を実施し、フェノール・クロロホルム処理及びエタノール沈殿を行った後、各1μg以上のtotal RNAを含む溶液からGeneChip CHO Gene 2.0 ST Array(Affymetrix社製)を用いてマイクロアレイ解析を実施した(タカラバイオ(株)製)。
[0113]
 GeneSpring GX(Agilent社製)を用いてデータ解析を行い、数値補正法はRMA法またはPLIER法(Yi Qu et al. BMC Bioinformatics,211,11,2010)で行った。
[0114]
 解析結果により、発現量に差のある29700遺伝子が確認された。各補正法で作成したデータから、抗体が還元されにくい株と還元されやすい株で2倍以上発現レベルの差がある16遺伝子を特定した。16遺伝子のリストを表2に示す。
[0115]
[表2]


[0116]
 表2に示す特定された遺伝子の発現量またはそのタンパク質の生産量を指標とすることで、抗体をはじめとする目的タンパク質に対する還元作用が異なる細胞を特定することができると考えられる。
[0117]
[実施例2]
 RT-qPCR法を用いたplacenta-expressed transcript 1 protein(以下、Plet1という)遺伝子発現差解析による生産細胞の還元されやすさの判定
 実施例1において見出された遺伝子のうち、生産されるタンパク質が還元されにくい生産株で高発現していることが明らかになったPlet1遺伝子を一例として以下の解析を行った。
[0118]
 実施例1で調製し、マイクロアレイ解析に用いた4種類の細胞(表1)から得たtotal RNAに対して、RT-qPCR法を用いて以下の手法により遺伝子の発現量を解析した。まず、チャイニーズハムスターのPlet1遺伝子の塩基配列情報を元にRT-qPCR法に用いるプローブ及びプライマーを設計した(表3、配列番号3~5)。
[0119]
 反応液は1反応あたりTaqMan Fast Virus 1-Step Master Mix(Thermo Fisher Scientific社製)を5μL含み、上記プローブを200nM(終濃度)、プライマーを終濃度500nM、total RNAを10ng用い、20μLの反応系とした。反応は50°C、5分間→95°C、20秒間の前反応の後、「95°C、3秒間→60°C、30秒間」を40サイクル繰り返すスケジュールでリアルタイムPCR装置(Applied Biosystems社製、7900HT Fast Real Time PCR System)を用いて行った。
[0120]
 細胞間におけるPlet1の遺伝子発現量は、相対発現量を用いて比較した。具体的には、まず、Plet1の遺伝子発現量をGAPDHの遺伝子発現量で除して補正した相対定量値を算出した。次に、相対定量値が最も低い細胞を対照細胞とし、その他の細胞の相対定量値を対照細胞の相対定量値(対照値)で除して相対発現量を算出した。なお、ここで使用したGAPDHは細胞に一般的に発現しているハウスキーピング遺伝子の一例である。評価結果を表4に示す。
[0121]
[表3]


[0122]
[表4]


[0123]
 表4に示すように、抗体が還元されやすい細胞(A#2株、B#2株)と比較して還元されにくい細胞(A#1株、B#1株)はPlet1の遺伝子の相対発現量が52~208倍高いことが確認された。
[0124]
 この結果により、RT-qPCR法等の定量的遺伝子解析法を用いてPlet1遺伝子mRNA発現量を定量することで、目的タンパク質が還元されにくい生産細胞を容易に特定することができると考えられる。
[0125]
[実施例3]
 Plet1遺伝子の発現差解析によるタンパク質が還元されにくい生産細胞の選抜
 チャイニーズハムスター卵巣由来細胞(CHO細胞)を無血清培地へ馴化して宿主細胞Xを取得した。米国特許第6946292号明細書に記載の方法を用いて、フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)を欠損させたCHO細胞を取得し、宿主細胞Yとした。
[0126]
 次いで、宿主細胞YをPBSに懸濁し、抗体A又は抗体Bと異なる抗原に対する抗体であるIgG1型モノクローナル抗体(以下、抗体Cという)遺伝子を組み込んだ発現ベクターを用いて行った。
[0127]
 エレクトロポレーションによる遺伝子導入後、キュベット内の細胞を培地に懸濁して96ウェルプレートに播種し、CO インキュベーター内で数日間培養した。次に、遺伝子導入から数日後にシクロヘキシミドを含む培地に交換し1週間毎に培地交換を行いながら、4週間培養した。その間、プレートのサイズを適宜変更しながら、最終的に125mL容量の三角フラスコのスケールまで細胞を増殖させた。培養上清をサンプリングし、抗体の生産量の多い細胞を選定し、シングルセルクローニングに供した。
[0128]
 次に、取得した細胞をフローサイトメーター(FACS Aria II、ベクトン・ディッキンソン社製)または限界希釈法を用いて384ウェルプレートに播種した。培養を継続し、シングルコロニーを生じたウェルから細胞を取得し、125mL容量三角フラスコのスケールまで細胞を拡大培養した。
[0129]
 これらの細胞から抗体の生産性を指標に細胞を選定し、46種類の細胞を取得し、46株の抗体C生産細胞を調製した。46株の抗体C生産細胞を、それぞれ抗体C生産株#1~#46と命名した。細胞は各々1mLのバイアルに分注し凍結保存した。
[0130]
 次いで、各細胞を250mL容量の三角フラスコを用いてCO インキュベーター内で14日間培養した。培養期間中、適宜フィード培地の添加を行なうとともにサンプリングを実施した。培養3日目に各細胞培養液を1mLずつサンプリングし、遠心により回収した細胞ペレット(約3×10 個の細胞)にISOGENを500μL加えて溶解した後、total RNAを取得した。
[0131]
 次に、これを用いて実施例2と同様にRT-qPCR法によりPlet1の遺伝子発現量を測定した。その際、標準遺伝子の一例としてGAPDHを選択し、GAPDHの発現量に対する各々の抗体C生産株の相対定量値を算出した。また、一例として抗体C生産株#5を対照細胞とした。抗体C生産株#5のPlet1の相対定量値を1.0として、各々の細胞のPlet1の相対発現量を算出した。また、培養14日目に実施例1と同様の方法で、生産される抗体の還元されやすさを各々の細胞について評価した。結果を表5に示す。
[0132]
[表5]


[0133]
 抗体C生産株46細胞の内、抗体が還元しなかった細胞は11株(24%)であった(#11、#12、#21、#23、#38、#39、#42、#43、#44、#45、#46)。一方、抗体C生産株#5と比較して、Plet1の相対発現量が5倍以上高い生産株は18株存在し(#1、#11、#12、#15、#18、#20~#25、#33、#41~#46)、このうち抗体が還元しなかった生産株は10株(56%)存在した(#11、#12、#21、#23、#41~#46)。抗体C生産株#5と比較して、Plet1の相対発現量が10倍以上高い生産細胞は13株存在し(#1、#11、#12、#18、#21~#24、#42~#46)、このうち抗体が還元しなかった細胞は9株(69%)存在した。
[0134]
 また、抗体C生産株#5と比較して、Plet1の相対発現量が15倍以上高い生産細胞は11株存在し、このうち抗体が還元しなかった細胞は9株(82%)存在した(#11、#12、#21、#23、#42~#46)。さらに、抗体C生産株#5と比較して、Plet1の相対発現量が100倍以上高い生産細胞は6株存在し(#11、#12、#22、#42、#43、#46)、このうち抗体が還元しなかった細胞は5株(83%)存在した(#11、#12、#42、#43、#46)。
[0135]
 この結果から、RT-qPCR法を用いてPlet1遺伝子の発現量が高い細胞を選抜することで、目的タンパク質が還元されない細胞を高確率で取得できることが確認された。なお、対照値と比較して、Plet1遺伝子の相対発現量を5倍から100倍のように任意に上げることによって、目的タンパク質が還元されない確率を高められることも示された。
[0136]
[実施例4]
 Plet1遺伝子の発現差解析による目的タンパク質が還元されにくい生産細胞選抜の汎用性確認
 Plet1遺伝子の発現差解析により目的タンパク質が還元されにくい生産株を特定する方法の汎用性を確認する目的で、抗体D生産細胞を用いた検討を行った。
 実施例3に示す方法に従い、抗体A、抗体B又は抗体Cと異なる抗原に対する抗体であるIgG4型モノクローナル抗体(以下、抗体Dという)の遺伝子をCHO細胞に導入後、シングルセルクローニングし、6株の抗体D生産細胞を調製し、それぞれ抗体D生産株#1~#6とした。
[0137]
 各細胞を250mL容量の三角フラスコを用いてCO インキュベーター内で14日間培養した。培養期間中、適宜フィード培地の添加を行なうとともにサンプリングを実施した。培養14日目に全て実施例1と同様の方法により、生産される抗体の還元されやすさを評価した。次に、各細胞の継代培養中に作製された凍結細胞ストックを解凍し、遠心により回収した細胞ペレット(約3×10 個の細胞)にISOGENを500μL加えて溶解後、total RNAを取得した。
[0138]
 これを用いて実施例2と同様にRT-qPCR法によりPlet1の遺伝子発現量を測定した。標準遺伝子の一例としてGAPDHを選択し、Plet1の遺伝子発現量をGAPDHの遺伝子発現量で除して補正した相対定量値を算出した。更に1つの細胞(抗体D生産株#5)を対照細胞として選定し、当株(抗体D生産株#5)の相対定量値を対照値として、他の細胞におけるPlet1の相対発現量を算出した。抗体D生産株におけるPlet1遺伝子発現量と抗体還元評価の結果を比較した。結果を表6に示す。
[0139]
[表6]


[0140]
 表6に示すように、抗体D生産株6株の内、抗体が還元しなかった細胞は3株(50%)であった(#1、#2、#6)。抗体D生産株#5と比較して、Plet1遺伝子の相対発現量が5倍以上高い生産細胞は4株存在し(#1、#2、#4、#6)、このうち抗体が還元しなかった細胞は3株(75%)存在した(#1、#2、#6)。以上の通り、抗体や生産株の種類によらず、Plet1の遺伝子発現量を解析することで、還元されにくい生産株を取得できることが確認された。
[0141]
[実施例5]
 継代培養中の細胞を用いたPlet1遺伝子の発現解析
 実施例3で評価を行った抗体C生産株46細胞のうち、Plet1遺伝子発現量の異なる9細胞に対して80日間の継代培養を行い、Plet1遺伝子の相対発現量を解析した。結果を図2に示す。
[0142]
 図2に示すように、80日間の継代培養期間において、Plet1遺伝子の発現量は安定的であった。以上のように、細胞の世代数が変わってもPlet1遺伝子の発現量は一定であったことから、世代数などの細胞の状態に依存せずPlet1を指標に還元されやすさの異なる細胞を選抜可能であることが確認された。
[0143]
[実施例6]
 組換えタンパク質が還元されにくい宿主細胞(CHO細胞X’、Y’)の取得
 実施例3で取得した2種類の宿主細胞(X、Y)を用いて以下の方法でシングルセルクローニングを実施し、サブクローニング株を作製した。
[0144]
 各々の細胞(X又はY)を125mL三角フラスコのスケールまで拡大培養した。次いで、Vi-CELLを用いて生細胞密度を計測し、100ウェルあたり細胞が約16個含まれるように細胞液を調製した。384ウェルプレートに細胞液を50μLずつ播種し培養した。シングルコロニーを生じたウェルの細胞を125mL容量の三角フラスコのスケールまで培養し細胞を増殖させた後、1mLずつ細胞を分注して凍結した。
[0145]
 上記の過程で培養中に取得した細胞を用い、実施例2と同様にRT-qPCR法により、Plet1遺伝子の発現解析を実施した。宿主細胞X及びYのサブクローニング株各々40株ずつに対してPlet1遺伝子発現量が最も低い株を対照細胞として、上述の実施例と同様に相対発現量を算出した。
[0146]
 Plet1の遺伝子発現量が高い株を16株ずつ取得した(X’株、Y’株)。また、比較対象として、Plet1の相対発現量が低い株を対照細胞として2株ずつ(Xc株、Yc株)取得した。結果を表7に示す。
[0147]
[表7]


[0148]
 表7に示すように、X’株ではPlet1遺伝子の相対発現量が、Xc#1株と比較して、30倍以上高い株は9株(X’#2、X’#5、X’#6、X’#7、X’#9、X’#12~X’#15)、50倍以上高い株は7株存在した(X’#2、X’#5、X’#6、X’#7、X’#13~X’#15)。Y’株では、Plet1遺伝子の相対発現量が、Yc#1株およびYc#2株と比較して、10倍以上高い株は11株(Y’#2、Y’#5~Y’#8、Y’#10~Y’#13、Y’#15、Y’#16)、20倍以上高い株は5株存在した(Y’#5、Y’#6、Y’#8、Y’#10、Y’#13)。選抜した株はさらに125mL容量三角フラスコにスケールアップした後、分注し凍結保存した。
[0149]
 当該実施例で取得された宿主細胞のように、宿主細胞自体のPlet1遺伝子の相対発現量を高めることができれば、組換えタンパク質が還元されにくい生産細胞を容易に取得することができると考えられる。
[0150]
[実施例7]
 Plet1高発現の宿主細胞を使った生産株が還元されていない抗体を生産できることの確認
 Plet1遺伝子発現量を高めた宿主細胞を用いることで、還元されにくいタンパク質の生産細胞を調製することができると考え、以下の試験を実施した。
[0151]
 実施例6で取得したPlet1発現量の高い宿主細胞(X’#5、X’#6、X’#13、Y’#10)について、実施例3に示す方法にしたがって抗体Bを導入した抗体生産株を取得した(BX’#1、BX’#2、BX’#3、BY’#1)。
[0152]
 また、これらの抗体生産株の還元されにくさを確認するために、比較対象としてPlet1の発現量が低い宿主細胞(Xc#2、Yc#1)についても同様の操作を行い、抗体B生産株BXc#1、BYc#1を取得した。
[0153]
 前記株について、125mL容量の三角フラスコを用いてCO インキュベーター内で13日間培養した。培養期間中、適宜フィード培地を添加した。RNAの抽出は、培養液6日目の培養液50μLずつに対しmRNA catcher(Thermo Fisher Scientific社)を用いて実施した。
[0154]
 取得したmRNAに対し、実施例2と同様にRT-qPCR法を用いてPlet1の遺伝子発現量を測定した。BX’株及びBY’株の各々3株について、Plet1遺伝子発現量が最も低いBXc#1、BYc#1を対照細胞として相対発現量(Fold change)を算出した。また、培養13日目に、実施例1と同様の方法により、抗体の還元感受性を評価した。
[0155]
 結果を表8及び表9に示す。
[0156]
[表8]


[0157]
[表9]


[0158]
 表8に示すように、Plet1の相対発現量の高い宿主細胞X’株から調製した3株(BX’#1、BX’#2、BX’#3)は全ての抗体生産株で還元が認められなかった。一方、Plet1の相対発現量の低いXc株から調製した1株(BXc#1)では抗体の還元が確認された。
[0159]
 同様に、表9に示すように、Plet1の相対発現量が高い宿主細胞BY’#10株から調製したBY’#1株についても抗体の還元は認められなかった。一方、Plet1の相対発現量が低いYc株から調製した1株(BYc#1)については抗体の還元が確認された。
[0160]
 以上の結果から、Plet1遺伝子の相対発現量を高めた宿主細胞を用いることで、低還元性の抗体を生産する細胞を高い確率で取得できることが示された。
[0161]
 本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2016年12月28日付けで出願された日本特許出願(特願2016-256279号)に基づいており、その全体が引用により援用される。

請求の範囲

[請求項1]
 以下の第1工程および第2工程を含む、細胞を選抜する方法。
第1工程:配列番号1~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子について、細胞内の当該遺伝子の発現レベルを測定する工程
第2工程:前記第1工程において測定した前記遺伝子の発現レベルを、対照細胞における前記遺伝子の発現レベルの対照値と比較し、その差異に基づき、組換えタンパク質の還元を抑制し得る発現レベルを評価する工程
[請求項2]
 以下の第1工程および第2工程を含む、細胞を選抜する方法。
第1工程:配列番号1~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを測定する工程
第2工程:前記第1工程において測定した前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを、対照細胞における前記遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルの対照値と比較し、その差異に基づき、組換えタンパク質の還元を抑制し得る発現レベルを評価する工程
[請求項3]
 以下の第1工程および第2工程を含む、細胞を選抜する方法。
第1工程:配列番号1~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子について、細胞内の当該遺伝子の発現レベルを測定する工程
第2工程:以下に示す(a)~(d)の手順に相対発現量を算出及び比較し、細胞を選抜する工程;
(a)第1工程において測定した被験細胞についての前記遺伝子の発現レベルを、当該被験細胞中の標準遺伝子の発現レベルで除した相対定量値を算出する。
相対定量値=(第1工程において測定した被験細胞についての前記遺伝子の発現レベル)/(標準遺伝子の発現レベル)
(b)対照細胞についての前記遺伝子の発現レベルを、当該対照細胞における標準遺伝子の発現レベルを除して対照値を算出する。
対照値=(対照細胞についての前記遺伝子の発現レベル)/(標準遺伝子の発現レベル)
(c)(a)において算出した被験細胞についての相対定量値を、(b)において算出した対照値で除した相対発現量を算出する。
相対発現量=[(a)において算出した被験細胞についての相対定量値]/[(b)において算出した対照値]
(d)各被験細胞間において、(a)で算出した相対定量値、又は(c)で算出した相対発現量、を比較することにより、それぞれの値が高い又は低い細胞を選抜する。
[請求項4]
 第2工程(d)において、相対定量値若しくは相対発現量が高い細胞としては、その相対定量値若しくは相対発現量が対照値の2倍以上の細胞であり、又は、相対定量値若しくは相対発現量が低い細胞としては、その相対定量値若しくは相対発現量が対照値の1/2倍以下の細胞である、請求項3に記載の方法。
[請求項5]
 第1工程の前に、配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を細胞でノックダウン又はノックアウトする工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
[請求項6]
 第1工程の前に、組換えタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入し、形質転換する工程を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
[請求項7]
 請求項1~6のいずれか1項に記載の方法により細胞を選抜する工程を含む、組換えタンパク質を生産する細胞を取得する方法。
[請求項8]
 請求項1~7のいずれか1項に記載の方法により選抜または取得された細胞または細胞を用いて組換えタンパク質を生産する方法。
[請求項9]
 前記細胞が哺乳類動物細胞由来の細胞である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
[請求項10]
 前記遺伝子がPlet1遺伝子である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
[請求項11]
 前記組換えタンパク質が抗体である請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
[請求項12]
 配列番号10~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子がノックダウン又はノックアウトされた、組換えタンパク質の還元を抑制し得る細胞。
[請求項13]
 配列番号1~16に示される塩基配列のいずれか1を有する遺伝子又はそのオーソログな遺伝子から選ばれる少なくとも1の遺伝子を指標とすることにより、組換えタンパク質の還元を抑制し得る細胞の取得確率を上げる方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]