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1. (WO2018043307) しゅう動部品
Document

明 細 書

発明の名称 しゅう動部品

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009   0010   0011   0012  

発明の効果

0013   0014   0015   0016   0017   0018  

図面の簡単な説明

0019  

発明を実施するための形態

0020  

実施例

0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048  

符号の説明

0049  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7  

明 細 書

発明の名称 : しゅう動部品

技術分野

[0001]
 本発明は、たとえば、メカニカルシール、軸受、その他、しゅう動部に適したしゅう動部品に関する。特に、しゅう動面に流体を介在させて摩擦を低減させるとともに、しゅう動面から流体が漏洩するのを防止する必要のある密封環または軸受などのしゅう動部品に関する。

背景技術

[0002]
 しゅう動部品の一例である、メカニカルシールにおいて、密封性を長期的に維持させるためには、「密封」と「潤滑」という相反する条件を両立させなければならない。特に、近年においては、環境対策などのために、被密封流体の漏れ防止を図りつつ、機械的損失を低減させるべく、より一層、低摩擦化の要求が高まっている。低摩擦化の手法としては、しゅう動面に多様なテクスチャリングを施すことで、これらの実現を図ろうとしており、例えば、テクスチャリングのひとつとしてしゅう動面にディンプルを配列したものが知られている。
[0003]
 例えば、特開平11-287329号公報(以下、「特許文献1」という。)に記載の発明は、しゅう動面に、深さの異なる多数のディンプルを形成することにより、しゅう動時に相手しゅう動面との間に介在する流体に発生する流体軸受圧力による負荷容量が、流体温度の変化に伴って一部のディンプルでは減少しても他のディンプルでは増大するので負荷容量が安定し、温度変化に拘らず常に良好なしゅう動性を維持するといった効果が得られるようにしたものである。
 また、特開2000-169266号公報(以下、「特許文献2」という。)に記載の発明は、焼結したセラミックス材料からなる下地材の表面に硬質皮膜を蒸着したしゅう動面を形成し、このしゅう動面に、多数のディンプルを有する構成とすることにより、耐摩耗性の向上を図ると共に、ディンプルによる液体潤滑性の向上を図るようにしたものである。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開平11-287329号公報
特許文献2 : 特開2000-169266号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 しかし、特許文献1に記載の発明は、温度変化にかかわらず常に良好なしゅう動性を維持するためにしゅう動面に設けられるディンプルの深さに着目したものであって、ディンプルの開口径と深さとの比、及び、ディンプルの面積率によるしゅう動特性(摩擦係数低減)への影響については考察されていない。
 また、特許文献2に記載の発明は、しゅう動面にディンプルを設けることで液体潤滑性の向上を図るようにしたものであるが、特許文献1と同様、ディンプルの開口径と深さとの比、及び、ディンプルの面積率によるしゅう動特性(摩擦係数低減)への影響については考察されていない。
[0006]
 本発明は、しゅう動面に設けられるディンプルの開口径と深さとの比を所定の範囲に設定すると共にディンプルの面積率が所定の範囲になるようにランダムに配置することにより、しゅう動面における軸受特性数の広い範囲においてしゅう動特性を向上することができるしゅう動部品を提供することを目的とするものである。

課題を解決するための手段

[0007]
 上記目的を達成するため本発明のしゅう動部品は、第1に、一対のしゅう動部品の互いに相対しゅう動する少なくとも一方側の環状のしゅう動面にディンプルが複数配置されたしゅう動部品において、前記複数のディンプルは、開口径が略同一であって、相互に他のディンプルと独立して設けられ、ディンプルの深さhと開口径Dとの比は1/500~1/10の範囲に設定され、かつ、前記しゅう動面の円周方向の単位角度120°内における前記ディンプルの面積率は8%~50%の範囲になるようにランダムに配設されることを特徴としている。
 この特徴によれば、しゅう動面における軸受特性数の広い範囲においてしゅう動特性を向上することができる。
 また、複数のディンプルは、開口径が略同一であるため、ディンプルの加工が容易となる。
 さらに、しゅう動面の円周方向の単位角度120°内におけるディンプルの面積率は8%~50%の範囲とすることにより、しゅう動部品の材質としてSiCあるいはカーボンを採用した場合、ディンプル10の面積率を最適にできると共にしゅう動部品の材質としてポーラスSiCを採用した場合でも、気孔同士の連続的なつながりを防止することができる。
[0008]
 また、本発明のしゅう動部品は、第2に、第1の特徴において、前記ディンプルの深さhと径Dとの比は1/400~1/20の範囲に設定されることを特徴としている。
 この特徴によれば、より一層、しゅう動面における軸受特性数の広い範囲においてしゅう動特性を向上することができる。
[0009]
 また、本発明のしゅう動部品は、第3に、第1又は第2の特徴において、前記しゅう動面の円周方向の単位角度120°内における前記ディンプルの面積率は35%~45%の範囲になるようにランダムに配設されることを特徴としている。
 この特徴によれば、しゅう動部品の材質がSiCあるいはカーボンである場合の漏れを最小限に抑制することができる。
[0010]
 また、本発明のしゅう動部品は、第4に、第1ないし第3のいずれかの特徴において、前記複数のディンプルは、深さが略0.5μmに設定されることを特徴としている。
 この特徴によれば、低速でのしゅう動特性を向上することができる。
[0011]
 また、本発明のしゅう動部品は、第5に、第1ないし第4のいずれかの特徴において、前記複数のディンプルは、開口径が略100μmに設定されることを特徴としている。
 この特徴によれば、軸受特性数Gの値が7.6×10-8を超える範囲で摩擦係数を小さくすることができる。
[0012]
 また、本発明のしゅう動部品は、第6に、第1ないし第5のいずれかの特徴において、回転しゅう動試験によって得られた摩擦係数と軸受定数G(粘度×速度/荷重)との関係において、前記軸受定数G(粘度×速度/荷重)が2×10 -9~3×10 -7の範囲にあるように設定されることを特徴としている。
 この特徴によれば、流体潤滑遷移点(Gc点)がこの範囲に入り、摩擦係数を低く、境界潤滑になることを防止できる。

発明の効果

[0013]
 本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)複数のディンプルは、開口径が略同一であって、相互に他のディンプルと独立して設けられ、ディンプルの深さhと開口径Dとの比は1/500~1/10の範囲に設定され、かつ、しゅう動面の円周方向の単位角度120°内におけるディンプルの面積率は8%~50%の範囲になるようにランダムに配設されることにより、しゅう動面における軸受特性数の広い範囲においてしゅう動特性を向上することができる。
 また、複数のディンプルは、開口径が略同一であるため、ディンプルの加工が容易となる。
 さらに、しゅう動面の円周方向の単位角度120°内におけるディンプルの面積率は8%~50%の範囲とすることにより、しゅう動部品の材質としてSiCあるいはカーボンを採用した場合、ディンプル10の面積率を最適にできると共にしゅう動部品の材質としてポーラスSiCを採用した場合でも、気孔同士の連続的なつながりを防止することができる。
[0014]
(2)ディンプルの深さhと径Dとの比は1/400~1/20の範囲に設定されることにより、より一層、しゅう動面における軸受特性数の広い範囲においてしゅう動特性を向上することができる。
[0015]
(3)しゅう動面の円周方向の単位角度120°内におけるディンプルの面積率は35%~45%の範囲になるようにランダムに配設されるにより、しゅう動部品の材質がSiCあるいはカーボンである場合の漏れを最小限に抑制することができる。
[0016]
(4)複数のディンプルは、深さが略0.5μmに設定されることにより、低速でのしゅう動特性を向上することができる。
[0017]
(5)複数のディンプルは、開口径が略100μmに設定されることにより、軸受特性数Gの値が7.6×10-8を超える範囲で摩擦係数を小さくすることができる。
[0018]
(6)回転しゅう動試験によって得られた摩擦係数と軸受定数G(粘度×速度/荷重)との関係において、前記軸受定数G(粘度×速度/荷重)が2×10 -9~3×10 -7の範囲にあるように設定されることにより、流体潤滑遷移点(Gc点)がこの範囲に入り、摩擦係数を低く、境界潤滑になることを防止できる。

図面の簡単な説明

[0019]
[図1] 本発明の実施例1に係るメカニカルシールの一例を示す縦断面図である。
[図2] 本発明の実施例1に係るしゅう動部品のしゅう動面の一例を説明するためのものであって、(a)はしゅう動面の平面図、(b)はA-A断面の拡大図、(c)はB-B断面の拡大図である。
[図3] ディンプルの有する機能を説明する説明図である。
[図4] 本発明の実施例1に係るしゅう動部品のしゅう動面の一部を拡大した平面図である。
[図5] 本発明におけるディンプルの深さについて説明する説明図である
[図6] 回転しゅう動試験によって得られた摩擦係数と軸受特性数Gとの関係を示す参考図である。
[図7] 本試験に用いたしゅう動トルク計測可能な試験機を説明する概略的な断面図である。

発明を実施するための形態

[0020]
 以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置などは、特に明示的な記載がない限り、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。 
実施例
[0021]
 図1ないし図5を参照して、本発明の実施例1に係るしゅう動部品について説明する。
 なお、以下の実施例においては、しゅう動部品の一例であるメカニカルシールを例にして説明するが、これに限定されることなく、例えば、円筒状しゅう動面の軸方向一方側に潤滑油を密封しながら回転軸としゅう動する軸受のしゅう動部品として利用することも可能である。
 なお、メカニカルシールを構成するしゅう動部品の外周側を高圧流体側(被密封流体側)、内周側を低圧流体側(大気側)として説明するが、本発明はこれに限定されることなく、高圧流体側と低圧流体側とが逆の場合も適用可能である。
[0022]
 図1は、メカニカルシールの一例を示す縦断面図であって、しゅう動面の外周から内周方向に向かって漏れようとする高圧流体側の被密封流体を密封する形式のインサイド形式のものであり、高圧流体側のポンプインペラ(図示省略)を駆動させる回転軸1側にスリーブ2を介してこの回転軸1と一体的に回転可能な状態に設けられた一方のしゅう動部品である円環状の回転側密封環3と、ポンプのハウジング4に非回転状態かつ軸方向移動可能な状態で設けられた他方のしゅう動部品である円環状の固定側密封環5とが設けられ、固定側密封環5を軸方向に付勢するコイルドウェーブスプリング6及びベローズ7によって、ラッピング等によって鏡面仕上げされたしゅう動面S同士で密接しゅう動するようになっている。すなわち、このメカニカルシールは、回転側密封環3と固定側密封環5との互いのしゅう動面Sにおいて、被密封流体が回転軸1の外周から大気側へ流出するのを防止するものである。
 なお、図1では、回転側密封環3のしゅう動面の幅が固定側密封環5のしゅう動面の幅より広い場合を示しているが、これに限定されることなく、逆の場合においても本発明を適用出来ることはもちろんである。
[0023]
 回転側密封環3及び固定側密封環5の材質は、耐摩耗性に優れた炭化ケイ素(SiC)及び自己潤滑性に優れたカーボンなどから選定されるが、例えば、両者がSiC、あるいは、回転側密封環3がSiCであって固定側密封環5がカーボンの組合せが可能である。
 相対しゅう動する回転側密封環3あるいは固定側密封環5の少なくともいずれか一方のしゅう動面には、図2に示すように、ディンプル10がランダムに配設されている。
 本例では、固定側密封環5のしゅう動面Sに複数のディンプル10が配設されている。この場合、回転側密封環3にはディンプルは設けられなくても、設けられてもよい。回転側密封環3にディンプルを設ける場合には、固定側密封環5のしゅう動面Sに設けられるディンプル10と同じ(サイズ、比率)になるように設けるのが望ましい。
[0024]
 図示例では、固定側密封環5の断面形状は、図2(c)に示すように凸形状をしており、その頂面が平坦なしゅう動面Sを構成している。このしゅう動面Sには、図2(a)及び(b)に示すような多数のディンプル10がランド部R(平坦な部分)により離隔されて相互に独立して設けられている。これらのディンプル10は、しゅう動面Sの周方向及び径方向の全体に設けられる。
 ディンプル10は、しゅう動面Sの径方向において、高圧流体側と連通してもよいが、低圧流体側とは平坦なシール面ISにより隔離される。
 また、本例では、ディンプル2は、周方向に連続して設けられる場合を示しているが、これに限らず、周方向に断続的に設けられてもよい。
[0025]
本発明において、「ディンプル」とは、平坦なしゅう動面Sに形成されるくぼみのことであり、その形状は特に限定されるものではない。例えば、くぼみの平面形状は円形、楕円形、長円形、もしくは矩形が包含され、くぼみの断面形状もお椀状、または、方形など種々の形が包含される。
 そして、しゅう動面Sに形成された多数のディンプル10は、このしゅう動面Sと相対しゅう動する相手側しゅう動面との間に流体力学的な潤滑液膜として介入する液体の一部を保持して、潤滑液膜を安定化させる機能を有するものである。
[0026]
 個々のディンプル10は、図3に示すようなレイリーステップを構成するものとみなすことができる。
  図3において、固定側密封環5のしゅう動面S(R)には図の断面と直交する方向に延びるレイリーステップ10aが形成されており、回転側密封環3のしゅう動面Sは平坦に形成されている。回転側密封環3が矢印で示す方向に相対移動すると、両しゅう動面間に介在する流体が、その粘性によって矢印方向に追随移動しようとし、その際、レイリーステップ10aの存在によって動圧(正圧)を発生する。動圧の発生によりしゅう動面間の潤滑液膜が増大され、潤滑性能が向上されるものである。動圧効果により潤滑性能が向上させられる一方、漏れ量が増える恐れがあり、漏れ量を減らすため潤滑液膜を薄くするようにディンプルの量を少なくすると、しゅう動面Sが接触し摩耗を起こしやすくなる。
[0027]
 図4は、図2に示す固定側密封環5のしゅう動面Sの一部を拡大した平面図である。
 図4において、しゅう動面に形成された複数のディンプル10は、相互に他のディンプルと独立して設けられ、開口径が略同一の複数の円形のディンプルがランダムに分布するように配置されている。
[0028]
 複数の円形のディンプル10は、開口径が略同一であって、相互に他のディンプルと独立して設けられ、ディンプルの深さhと径Dとの比は1/500~1/10の範囲に設定するのがしゅう動面における軸受特性数の広い範囲においてしゅう動特性を向上させる意味で好ましい。好ましくは、ディンプルの深さhと径Dとの比は1/400~1/20の範囲であり、より好ましくは、ディンプルの深さhと径Dとの比は1/240~1/60の範囲である。
 図4に示すディンプルの場合、深さhは略0.5μmであり、開口径Dは略100μmに設定されている。この場合、ディンプルの深さhと開口径Dとの比は1/200となる。
 また、たとえば、ディンプルの深さhを0.5μmとした場合にh/D=1/500とすると、D=250μmとなり、さらに、h/D=1/10とすると、D=5μmとなる。
[0029]
 上記において、略0.5μmとは0.5±10%μmの範囲内のものを、また、同じく、略100μmとは100±10%μmの範囲内のものをいう。
[0030]
 ディンプルの深さhと径Dとの比を変化させた場合の、しゅう動面の鳴き試験及び漏れ試験の評価結果を表1に示す。
 なお、しゅう動部品の一方は炭化ケイ素(SiC)、他方はカーボンとした。
[表1]


 表1の結果によれば、ディンプルの深さhと径Dとの比が、少なくとも、1/60~1/240の範囲においては、鳴き及び漏れともに良好であることがわかる。
[0031]
 本願発明の発明者の研究によれば、ディンプルの深さhが浅くなるほど流体潤滑遷移点が低G側にシフトし、深さhが深くなるほど流体潤滑遷移点が高回転側にシフトし、流体潤滑を維持するのにより高い回転数が必要であることが確認されている。
[0032]
 なお、本発明において、ディンプルの開口径Dとは、未加工面と加工面との境界線をたどった「最大径部」と「最小径部」の平均の値のことである。未加工面と加工面との境界が目視できないものにおいては、しゅう動面Sの表面粗さを除いて0.05μm以上形状が深さ方向に変化した位置、またはしゅう動面Sの表面粗さを除いたディンプル深さの最深部の1/10以上形状が深さ方向に変化した位置を未加工面と加工面との境界とする。
 また、開口径Dが略同一とは、開口径の設計値の±10%の範囲内のものを意味する。 ディンプルの形状が円以外の場合、たとえば、楕円、長円あるいは矩形の場合における開口径については、便宜的に以下の等価直径を採用する。
 等価直径=4×(ディンプルの断面積/ディンプルの周の長さ)
 たとえば、1辺の長さがaの正方形の場合、等価直径=4a /4a=aとなる。
[0033]
 次に、図5を参照しながら、ディンプル10の深さhについて説明する。
 ディンプル10の断面形状が図5に示すような形状である場合、加工面の中心からD/4の範囲内の平均位置を算出し、当該算出位置と未加工面までの高さ寸法をディンプル10の深さhとする。
[0034]
 次に、図4を参照しながら、複数のディンプル10のランダム分布について説明する。
 図4に示すように、開口径が略同一の複数の円形のディンプル10は、しゅう動面Sの周方向及び径方向にランダムに分布するように配設されるものであり、しゅう動面Sの円周方向の単位角度120°内におけるディンプル10の面積率(全てのディンプルの面積の合計/しゅう動面の面積)が8%~50%の範囲になるように設定される。
 ディンプル10の面積率は、しゅう動面Sの密封圧に依存して適切な値に定められるものであり、たとえば、密封圧に基づきしゅう動部品の回転試験を行い、当該密封圧における漏れ量を確認して設定することが望ましい。
 また、ディンプル10の面積率は、しゅう動部品の材質により設定する必要がある。たとえば、ポーラスSiCの場合、ディンプル10の面積率を10%以上にすると気孔同士が連続的につながる恐れがあるため、8%程度が適当である。
[0035]
 ディンプル10の面積率を変化させた場合の、しゅう動面の漏れ(微量漏れ)試験、鳴き試験及びトルク試験の評価結果を表2に示す。
 なお、しゅう動部品の一方は炭化ケイ素(SiC)、他方はカーボンとした。
[表2]


 表2の結果から、漏れ、鳴き及びトルクの面から、しゅう動面Sの円周方向の単位角度120°内におけるディンプル10の面積率が35~45%の範囲において良好であることがわかる。
[0036]
 次に、しゅう動面にディンプルを加工する方法の一例を説明すると、次のとおりである。
(1)乱数を用いて金属マスクにあける孔の位置を決定する。
(2)決定された位置に金属マスクにレーザ加工などで孔をあける。
(3)ランダムに孔のあけられた金属マスクを対象となるしゅう動部品のしゅう動面上に設置する。
(4)金属マスクの上からフェムト秒レーザを照射したり、イオンエッチングなどで金属マスクの孔を利用してしゅう動面にディンプルを形成する。しゅう動面には、開口径の同一のディンプルが所定の分布でもって一様に配置される。
[0037]
 図6は、回転しゅう動試験によって得られた摩擦係数と軸受特性数Gとの関係を示す参考図である。
 回転しゅう動試験に用いられた摺動部品のしゅう動面の内径はφ18mm、しゅう動面の幅は1.8mmであり、ディンプル面積率は40%、ディンプルの深さhはすべて0.1μm、ディンプルの開口径Dは、それぞれ、φ50μm(h/D=1/500)、φ75μm(h/D=1/750)、φ100μ(h/D=1/1000)、の3種類であった。
[0038]
 また、回転しゅう動試験の試験条件は以下の表3のとおりである。
[表3]


 なお、本試験において試験中にしゅう動面からの漏れは生じていない。
[0039]
 図6において、試験における回転数域において、ディンプルの開口径がφ50μm、φ75μm、φ100μmの例においては、軸受特性数Gの値が7.6×10-8を超える範囲で、ディンプルの開口径が大きいほど摩擦係数が下がることが分かる。また、各ディンプルの開口径において、流体潤滑遷移点(以下、「Gc点」という。)が存在し、φ50μm、φ75μm、φ100μmの例においては、ディンプルの開口径が小さくなるほどGc点が低G側にシフトし、さらにGc点における摩擦係数が低くなっていることが分かる。
 図6の試験結果によれば、次のことがいえる。
(1)G値が7.6×10-8を超える範囲でディンプル開口径が大きいほど(h/Dの比が小さいほど)、摩擦係数は下がる。
(2)ディンプル開口径が小さくなるほど(h/Dの比が大きくなるほど)Gc点が低G側にシフトし、さらに、Gc点における摩擦係数が低くなる。
[0040]
 この回転しゅう動試験によって得られた摩擦係数と軸受定数G(粘度×速度/荷重)との関係を参考にすると、軸受定数G(粘度×速度/荷重)が2×10 -9~3×10 -7の範囲にある場合、摩擦係数が0.1以下と低く、流体潤滑遷移点(Gc点)がこの範囲に入り、境界潤滑にはならないことがわかる。
[0041]
 次に、図7を参照しながら、本試験に用いたしゅう動トルク計測可能な試験機19を説明する。
 試験機19の本体部分には、固定環11をバネ12を介して非回転状態に支持するケーシング13と、このケーシング13の内周に回転自在に挿通された回転軸14と、この回転軸14の外周に支持された、固定環11と軸方向に対向される回転環15とを備え、回転環15、ケーシング13、回転軸14で囲まれた密封空間には密封対象液Lが封入される。
[0042]
 本試験機19の特徴として、両側の軸受部分16に静圧気体軸受を採用し、メカニカルシールのしゅう動トルクを精度良く計測できるようになっている。また、トルクは、トルクメータ17および、カンチレバー方式によるロードセル18の2種類の方法で計測し、ダブルチェックにより計測ミスをなくすようにしている。
[0043]
 本発明の実施例に係るしゅう動部品は以下のような格別顕著な効果を奏する。
(1)複数のディンプル10は、相互に他のディンプルと独立して設けられ、ディンプルの深さhと径Dとの比は1/500~1/10の範囲に設定され、かつ、しゅう動面Sの円周方向の単位角度120°内におけるディンプル10の面積率は8%~50%の範囲になるようにランダムに配設されることにより、しゅう動面における軸受特性数の広い範囲においてしゅう動特性を向上することができる。
 また、複数のディンプル10は、開口径が略同一であるため、ディンプル10の加工が容易となる。
 さらに、しゅう動面Sの円周方向の単位角度120°内におけるディンプル10の面積率は8%~50%の範囲とすることにより、しゅう動部品の材質としてSiCあるいはカーボンを採用した場合、ディンプル10の面積率を最適にできると共にしゅう動部品の材質としてポーラスSiCを採用した場合でも、気孔同士の連続的なつながりを防止することができる。
(2)ディンプルの深さhと径Dとの比が1/400~1/20の範囲に設定されることにより、より一層、しゅう動面における軸受特性数の広い範囲においてしゅう動特性を向上することができる。
 複数のディンプルの深さが略0.5μm、開口径が略100μmに設定されると、ディンプルの深さhと径Dとの比は1/200となり、より一層、しゅう動面における軸受特性数の広い範囲においてしゅう動特性を向上することができる。
(3)しゅう動部品の材質がSiCあるいはカーボンである場合、しゅう動面の円周方向の単位角度120°内におけるディンプルの面積率が10%~45%の範囲で漏れがなく、また、ディンプルの面積率が35%~50%の範囲で鳴きがなく、更に、ディンプルの面積率が25%~50%の範囲で低トルクであることから、ディンプルの面積率は35~45%の範囲が好ましい。
(4)複数のディンプルの深さが略0.5μmに設定されると、低速でのしゅう動特性を向上することができる。また、複数のディンプルの開口径が略100μmに設定されると、軸受特性数Gの値が7.6×10-8を超える範囲で摩擦係数を小さくすることができる。また、複数のディンプルの深さが略0.5μmであって開口径が略100μmに設定されると、ディンプルの深さhと径Dとの比は1/200となり、より一層、しゅう動面における軸受特性数の広い範囲においてしゅう動特性を向上することができる。
(5)回転しゅう動試験によって得られた摩擦係数と軸受定数G(粘度×速度/荷重)との関係において、軸受定数G(粘度×速度/荷重)の範囲を2×10 -9~3×10 -7 と設定することにより、流体潤滑遷移点(Gc点)がこの範囲に入り、摩擦係数を低く、境界潤滑になることを防止できる。
[0044]
 以上、本発明の実施の形態を実施例により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
[0045]
 例えば、前記実施例では、しゅう動部品をメカニカルシール装置における一対の回転用密封環及び固定用密封環の少なくともいずれか一方に用いる例について説明したが、円筒状しゅう動面の軸方向一方側に潤滑油を密封しながら回転軸としゅう動する軸受のしゅう動部品として利用することも可能である。
[0046]
 また、例えば、前記実施例では、外周側に高圧の被密封流体が存在する場合について説明したが、内周側が高圧流体の場合にも適用でき、その場合、ディンプルを内周側に連通させて配設すればよい。
[0047]
 また、例えば、前記実施例では、複数のディンプルは、深さhが略0.5μm、開口径Dが略100μmである場合を説明したが、これらは好ましい1つの例を示したものであり、これらに限定されず、ディンプルの深さhと径Dとの比は1/500~1/10の範囲に設定されればよい。
[0048]
 また、例えば、前記実施例では、密封と潤滑の両立を図る観点から、複数のディンプルのしゅう動面の円周方向の単位角度120°内における面積率として40%を採用した場合について説明したが、これに限定されず、しゅう動面の円周方向の単位角度120°内におけるディンプルの面積率は30%~50%の範囲にあればよい。

符号の説明

[0049]
  1          回転軸
  2          スリーブ
  3          回転側密封環
  4          ハウジング
  5          固定側密封環
  6          コイルドウェーブスプリング
  7          ベローズ
  10          ディンプル
  19          試験機
  11         固定環
  12         バネ
  13         ケーシング
  14         回転軸
  15         回転環
 16         軸受部分
 17         トルクメータ
 18         ロードセル
 S          しゅう動面
 R          ランド部
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

請求の範囲

[請求項1]
 一対のしゅう動部品の互いに相対しゅう動する少なくとも一方側の環状のしゅう動面にディンプルが複数配置されたしゅう動部品において、
 前記複数のディンプルは、開口径が略同一であって、相互に他のディンプルと独立して設けられ、ディンプルの深さhと開口径Dとの比は1/500~1/10の範囲に設定され、かつ、前記しゅう動面の円周方向の単位角度120°内における前記ディンプルの面積率は8%~50%の範囲になるようにランダムに配設されることを特徴とするしゅう動部品。
[請求項2]
 前記ディンプルの深さhと径Dとの比は1/400~1/20の範囲に設定されることを特徴とする請求項1記載のしゅう動部品。
[請求項3]
 前記しゅう動面の円周方向の単位角度120°内における前記ディンプルの面積率は35%~45%の範囲になるようにランダムに配設されることを特徴とする請求項1又は2に記載のしゅう動部品。
[請求項4]
 前記複数のディンプルは、深さが略0.5μmに設定されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のしゅう動部品。
[請求項5]
  前記複数のディンプルは、開口径が略100μmに設定されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のしゅう動部品。
[請求項6]
 回転しゅう動試験によって得られた摩擦係数と軸受定数G(粘度×速度/荷重)との関係において、前記軸受定数G(粘度×速度/荷重)が2×10 -9~3×10 -7の範囲にあるように設定されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のしゅう動部品。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]