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1. (WO2018020821) 単結晶製造装置
Document

明 細 書

発明の名称 単結晶製造装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030  

先行技術文献

特許文献

0031  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0032  

課題を解決するための手段

0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121  

発明の効果

0122   0123   0124  

図面の簡単な説明

0125  

発明を実施するための形態

0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170  

符号の説明

0171  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21  

図面

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : 単結晶製造装置

技術分野

[0001]
 本発明は、赤外線を照射して原料を加熱、溶解させ種子結晶などの上に固化させることにより単結晶を製造する赤外線集中加熱式の単結晶製造装置に関する。

背景技術

[0002]
 当該物質を構成する原子が規則正しく配列したいわゆる単結晶材料は、半導体産業、光通信産業など多くの分野で用いられ重要な役割を果たしている。このような単結晶の製造方法としては、粉末原料を融解して原子をバラバラにしてからゆっくりと固化させ、正しく所定の配列通りに固化された単結晶を製造するいわゆる融液法が知られている。
[0003]
 また、気体の反応を利用して単結晶を製造する気相法、原料を融剤に溶かしてから固体として析出させて単結晶を製造する融剤法なども知られている。
[0004]
 この中で、最も高効率に大型の単結晶材料を製造可能な方法として知られているのは、融液法である。
[0005]
 融液法としては、融液を適当なルツボ中に保持し、ここに種子結晶を浸して太らせながら上方に引き上げる引上法、棒状に成形した原料棒の一部を局部加熱して溶融,固化させて単結晶を製造する浮遊帯域溶融法、ルツボ中で原料を溶融し、そのまま下方からゆっくりと上方に固化させて大型単結晶を製造するブリッジマン法などが知られている。
[0006]
 これらの製造方法中、引上法およびブリッジマン法は、ルツボなどの容器中で融液を保持するため、融液中にルツボ材が溶け込み、ルツボ材の一部が単結晶中に混入してしまう場合がある。
[0007]
 なお、原料融液に添加物を加えた場合、融液中の添加物の濃度と固化した単結晶中の添加物の濃度は同じにはならず、一定の割合となることが知られている。これを「分配」と呼び、融液中の濃度と、融液から固化した結晶中の濃度と、の比を「分配係数」と呼ぶ。
[0008]
 育成した単結晶を産業的に利用する場合、例えば太陽電池用基板として使用する場合などでは、添加物としてリンもしくはホウ素が添加されるが、それぞれ最適添加物濃度は既知であり、単結晶としては全域に渡って最適添加物濃度であることが望ましい。
[0009]
 しかしながら前述した引上法やブリッジマン法は、原料を最初に全て溶融してから上方もしくは下方からゆっくりと全体を固化させるため、育成される単結晶中の添加物濃度は前述した分配係数によって規定された濃度となり、最初は薄く、次第に濃くなる傾向を示し、全域の濃度が一定になることは無い。
[0010]
 他方、原料を棒状に加工し、下部に赤外線を照射して溶融,固化させるいわゆる赤外線浮遊帯域溶融法(赤外線FZ法とも称する)では、融液は原料棒自身に保持されて溶融,固化が継続されるため、ルツボ材などからの汚染が無く、高純度な単結晶が製造可能である。
[0011]
 またこの赤外線FZ法は、原料の溶融,固化が、同時進行で継続されるため、添加物を均質に添加した原料を使用すると、育成される単結晶中の添加物濃度も均質になるので、理想的な製造方法である。
[0012]
 しかしながら、このような赤外線FZ法では、製造可能な単結晶の直径は、せいぜい30mm程度であり、大口径単結晶が必要な産業的用途には不向きで、専ら研究開発用機器として利用されている。
[0013]
 赤外線FZ法で大口径の単結晶が製造できない理由は、大口径単結晶を製造するのに必要な大口径の融体を形成することが困難だからである。すなわち、赤外線を照射して融液を形成させることが可能であることは、赤外線が吸収されて熱となっていることを意味する。そうすると融液中を赤外線は通過しながら吸収が進むので、次第に深部まで到達可能な赤外線量が少なくなってしまう。
[0014]
 また赤外線FZ法では、水平方向から赤外線を照射する方式が採用され、この方式では形成される融体と下側の固体との界面形状は中心部に向かうにつれて赤外線量が減少するとともに温度が下がり、融液に対して育成される単結晶が凸状となる傾向がある。
[0015]
 このような場合、育成される単結晶の外側部では、融液が垂れ易くなる。したがって前述した直径30mmを超えるような大口径の単結晶の製造は、極めて困難である。
[0016]
 そこで赤外線を斜め上方から下方に照射する傾斜照射型赤外線FZ法が本発明者によって開発された。この傾斜照射型赤外線FZ法では、原料を融解して形成される融液は、重力により下方に自然に流れて移動し、下部に配置されている種子結晶の上に乗る形となる。
[0017]
 下部の種子結晶の上面が平坦状であれば、上に乗る融液は表面張力で維持されるので、原理的には種子結晶の直径が大きくてもその上に安定的に融液を保持できることになるから育成可能な単結晶の直径には制限が無くなる。したがって原料の融解と、形成される融液の下方での単結晶としての固化を安定的に維持することを同時に実現できれば、大口径の単結晶が製造可能となる(例えば特許文献1)。
[0018]
 これまでに傾斜照射型赤外線FZ法によってシリコン単結晶の製造が試みられ、既に直径150mm程度に達する大口径の単結晶が製造可能となっている。
[0019]
 従来の水平照射型赤外線FZ法で製造可能なシリコン単結晶の直径が30mm程度とされていたことを考えると、格段の進歩である。さらに従来の引上法では、石英製のルツボを使用する必要があり、この石英成分が製造される単結晶中に大量に混入してしまうことから、これにより派生する離溶現象によって製品性能が大幅に劣化していた。
[0020]
 しかしながら、傾斜照射型赤外線FZ法ではそのような欠陥は導入されないので、高純度で高品質な単結晶が製造でき、さらなる大口径化への期待が高まっている。
[0021]
 傾斜照射型赤外線FZ法でさらなる大口径単結晶を製造しようとした際には、次のような課題も浮き彫りになっている。
[0022]
 すなわち、大口径の単結晶製造に使用するための大口径原料棒の製造が、厄介な課題となっている。小口径の原料棒を使用して大口径単結晶の製造は可能であるが、この場合には例えば結晶直径の半分の直径の原料棒を使用し、同じ長さの単結晶を製造するには、原料棒は4倍の長さのものを使用するか、もしくは4本の原料棒を次々と交換しながら単結晶の製造を継続しなくてはならない。このように長尺の原料棒を使用するには、単結晶製造装置を大型化せざるを得ない。
[0023]
 他方、単結晶製造装置の大型化を避けて製品と同じ長さで直径が半分の原料棒を使用しようとした場合には、製造を途中で中断して原料棒を次々と交換する必要がある。
[0024]
 なお、この原料棒の交換作業により、育成された単結晶には接合部が発生してしまうが、この接合部には様々な欠陥が導入され易いため不都合である。
[0025]
 さらに大型の単結晶を製造するために大型の原料棒を使用すると、大型の原料棒の融解に必要なエネルギー量(赤外線量)が膨大となり、大型の赤外線発生装置とそれに必要な大型の電力供給装置が必要となってしまう。
[0026]
 これまでの赤外線FZ法で単結晶を製造する場面では、上記のように大口径単結晶を製造しようとする方法以外に直径が5~10mm程度の細い単結晶でも高品質品が製造できれば研究開発用途としては十分であるとされている。
[0027]
 一般的な製造方法としては、粉末原料を丸棒状に成形し、適当な条件で焼結して密度を高めておいてから原料棒として使用し、下端に赤外線を照射して溶融し、下側にセットした種子結晶上に単結晶として固化させ、丸棒状の単結晶を製造している。
[0028]
 この方法で高品質な単結晶を製造するには、原料の融解と単結晶の固化が安定的に継続されることが重要である。しかるに原料によっては安定的に融解することが極めて困難で、その結果、融液の状態が刻々と変動してしまい、結果として得られた単結晶の組成が変動したり、多結晶化してしまったりしていた。
[0029]
 例えば高温超電導物質として知られるYBa 2Cu 3O 7単結晶を製造しようと、この組成の粉末を成形した原料棒に赤外線を照射して溶融しようとすると、原料棒は部分融解を生じ、比重の大きいビスマスやバリウム成分が比重の小さい銅成分と分離する傾向が強く、安定した融体の形成が困難となり、高品質な単結晶の製造が困難であった。
[0030]
 このような場合には粉末原料を丸棒状に成形して原料棒として使用するのではなく、粉末のまま供給してから赤外線を照射して融解し単結晶として固化させることにより、高品質な単結晶を安定的に製造可能であることが判った。

先行技術文献

特許文献

[0031]
特許文献1 : 特許第5279727号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0032]
 本発明はこのような実情に鑑み、通常の丸棒状原料を使用する方法では製造困難な物質の高品質単結晶を容易に製造できるようにした他、垂直方向,水平方向のいずれの方向に対しても組成が最適添加物濃度で均質な大型の単結晶を製造可能な単結晶製造装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0033]
 本発明者は、上記課題を解決するため、新たな単結晶製造装置を発明した。
[0034]
 すなわち原料の供給を、従来法の基本であった丸棒状に成形して供給する代わりに、粉末として供給する単結晶製造装置を発明した。
[0035]
 このような本発明の単結晶製造装置によれば、粉末原料の供給と融液の結晶化制御が分離され、融液からの結晶化を安定化することに注力でき、複雑組成の高品質単結晶や大型単結晶の製造を極めて容易に行うことができる。
[0036]
 また、原料の溶解に必要なエネルギー量が格段に少なくて済み、全体として大幅な省エネエルギー化を実現することができる。
[0037]
 なお、融液上に粉末原料(例えばシリコン粉末原料+添加物粉末)を落下して供給した場合、粉末原料が融液中に沈下して下側の種子結晶上に付着してしまうと、その粉末原料が起点となって負結晶や別の微結晶が生成してしまい、製品となる単結晶の性能を劣化させてしまう。
[0038]
 一般的に、ある物質の固体の比重と融液の比重とを比較すると、固体の比重の方が大きい場合が多い。しかしながら例外的に氷と水では、氷の方が比重は小さいことは良く知られている。半導体シリコンの場合も同様、固体の方が比重は小さいので、固体は融液上に浮く。
[0039]
 このように融液上に供給された粉末原料が浮遊して存在している場合には、浮遊している粉末原料に、直接赤外線を照射して溶融することが容易に可能となるので、浮遊帯域溶融法で単結晶を製造する場合、この方法は極めて好都合である。
[0040]
 他方、固体の比重が大きく、基本的に粉末原料が融液中に沈下して下方へ移動してしまう場合には、供給された粉末原料を融解することは困難となる。このような場合には供給する粉末原料の粒径もしくは粒子の形状を適宜選択することにより、供給された粉末原料が融液中に沈下してしまう前に、赤外線照射によって完全に融解できる場合があることを見出した。
[0041]
 具体的には、かさ密度が小さい形状の粉末原料は、見かけの密度が融液よりも小さくなるため、融液上に落下しても直ちには沈下せず浮遊することが分かった。その間に赤外線を照射して粉末原料を融解してしまうことで、粉末原料の供給と融解,固化による単結晶の製造が問題無く継続可能となる。
[0042]
 なお、融液上に粉末原料を落下、供給して粉末原料を溶融しようとすると、次のような課題に直面する。
[0043]
 1)供給された粉末原料が融液中に沈下し、下部の固相(種子結晶)に付着してしまうと、成長界面に固体の粉末原料が付着することになる。固体の粉末原料のサイズが十分に小さい場合にはこれが起点となって負結晶が形成される。また固体の粉末原料のサイズが大きい場合にはこれが起点となって新たな微結晶の成長が開始され全体が多結晶となってしまう。
[0044]
 2)供給された粉末原料を溶融するには、溶融するのに必要な熱量を周囲の融液から供給することになるが、それには周囲の融液の温度を高める必要がある。そのようにすると必然的に融液下部の固相(種子結晶)の溶出を招いてしまい、単結晶の製造を継続することが困難となる。
[0045]
 このような課題があるので、原料棒を局部加熱して融解,固化させて単結晶を製造する際に用いられる原料棒の代わりに、粉末原料を供給して融解,固化させる手法は、成功困難であると考えられていた。
[0046]
 加えて従来の赤外線FZ法では、赤外線は水平方向から照射される方式が主流であったので、現実問題として粉末状の原料を丸棒状の焼結体として成形したものを使用することにより形成される融液を、上方に配置した原料棒に融液の表面張力を利用して保持する方式が、最も簡便で安定的に融体を形成,維持できる手法であったので、そもそも原料を粉末状のまま供給する必要性があることに気付かなかった。
[0047]
 赤外線FZ法は、対象となる物質の粉末原料を丸棒状に成形して使用することが一般的な手法として確立され、様々な物質の単結晶製造に適用されて多くの成功を収めてきた。しかしながら赤外線FZ法ではどうしても高品質単結晶の製造が困難である物質があることが判ってきた。
[0048]
 例えば高温超電導物質ではLa 2CuO 4は比較的容易に赤外線FZ法で単結晶が製造可能とされてきたが、Bi 2Sr 2Ca 2Cu 3O 10は安定した融体の形成が困難で、高品質単結晶の製造は困難とされてきている。
[0049]
 他方、最近になって従来の水平方向からの照射ではなく、斜め上方から下方に照射する傾斜照射型赤外線FZ法が開発され、従来の水平照射型赤外線FZ法では不可能とされていた大口径単結晶の製造が現実となったことで、原料の供給方式についても、従来法のように粉末原料を棒状に成形、もしくは棒状の原料棒を使用する方式では限界があることが分かってきた。
[0050]
 赤外線FZ法で単結晶を製造することは、原料を融解し固化させる融液法で単結晶を製造する方法ということである。この場合、大型の単結晶を製造しようとすると、同等以上の大型の原料棒が必要となる。すなわち直径300mm、長さ1000mmの単結晶を製造しようとすると、現実には原料棒を保持して装置にセットするので、原料棒の保持部分は、原料として使えず、単に保持するためだけの部分となる。
[0051]
 したがって、原料棒としては同じ直径300mm品であれば原料棒の長さとしては1200mm以上のものが必要となる。このような大型の原料棒を融解するには極めて大量の熱量が必要となる。すなわち、大型の原料棒の下端のみを融解させれば十分であるが、原料棒の下端を融解させるには、原料棒中を伝導して逃げる熱量、輻射熱として逃げる熱量を加えた総量としての熱量が求められる。したがって極めて大掛かりな赤外線発生装置とそれを駆動するための大掛かりな電力供給装置が必要となってしまう。
[0052]
 これを解消するため、例えば直径を半分にした原料棒を使用すれば、原料棒の融解に必要な熱量は大幅に少なくなる。しかしながら、半分の直径の原料棒では全体としては4倍の長さが必要なので、極めて長尺の原料棒を使用するための大型の装置を使用するか、もしくは4本の原料棒を使用するために製造途中で単結晶の育成作業を一旦中断して使用済の原料棒を新規の原料棒に交換する作業を、複数回繰り返すこととなる。しかも製造作業を中断している間も加熱は中断できないので総合的にはより多くのエネルギーを消費することとなってしまう。
[0053]
 そこで原料を必要な量だけ粉末状のまま透明石英管内に供給し、融解,固化させることができれば、必要な熱量は極めて少なくすることが可能となる。このことは傾斜照射型赤外線FZ法によって大型の単結晶を製造しようとする際に、初めて必要性が生じた要素技術である。
[0054]
 このような状況で粉末状の原料を供給する単結晶製造装置の開発の必要性に直面し、最初に例としてシリコン単結晶の製造に際して様々な粒径のシリコン粉末原料を透明石英管内に供給してその状況を観察した。
[0055]
 本発明の単結晶製造装置を用いて直径100mmのシリコンの棒状種子結晶の上部を融解し、ここに細かく粉砕したシリコンの粉末原料を投下し、融液の表面での振る舞い、溶融性状を調べた。
[0056]
 最も懸念していたのは投下されたシリコンの粉末原料が溶けないまま、融液中に沈下して下部の固相(種子結晶)に到達し、固相(種子結晶)上に付着することで微結晶が発生して多結晶となってしまうことであった。しかしながら結果はそのようなことはなく、投下された粉末原料は数秒~数十秒で融解した。
[0057]
 粉末原料の投下を続けると融液が増えるが、その分シリコンの種子結晶を下方に降下させると一定の液面位置を保つことができ、結果としてこの新しい粉末原料投下法で大口径の単結晶を製造することが可能であることが確認できた。
[0058]
 さらに種子結晶の上面全面に対する粉末原料の供給と、赤外線照射量の分布の関係性を調べた。
[0059]
 すなわち、実際に単結晶をデバイスとして使用する場合には、必要な添加物を必要量添加した単結晶が必要となる。例えばシリコン単結晶を太陽電池用基板として使用しようとすると、リンを添加したN型単結晶もしくはホウ素を添加したP型単結晶が必要となる。
[0060]
 リンを添加したN型単結晶基板を製造しようとすると、リンの融液中の濃度とこの濃度の融液から固化する単結晶中のリンの濃度は同じにはならず、単結晶中のリンの濃度は、融液中の濃度を1とすると0.35となる。この比を「分配係数」と呼ぶが、この分配係数はリンの濃度によらず一定の値を示す。なお単結晶としては、全域に渡って添加物濃度が均質であることが望ましい。
[0061]
 粉末原料を融解してから固化させて単結晶を製造する融液法では、均質濃度の単結晶を製造するには溶媒移動法と呼ばれるスキームを導入することが必要である。
[0062]
 すなわち、組成C 0の単結晶が共存する融液の組成をC 1とすると、組成C 0のこの組成C 1の融液のみから固化するから、組成C 0の均質組成単結晶を製造するには、組成C 1の融液の一定量を共存させてこの融液から組成C 0の単結晶が生成した同じ分量の組成C 0の原料を組成C 1の融液中に投下、補給する。
[0063]
 これにより、均質組成の原料が溶媒相を通過して均質組成の単結晶として生成するので、全域として均質組成の単結晶が製造可能となる。このことを実行しようとすると、種子結晶上に乗っている融液の全域に満遍なく粉末原料を均質に供給し、これを融解,固化させることが最も組成均質品を製造する上で好都合であることは自明である。
[0064]
 しかしながら、実際に上記のスキームを実行しようとすると様々な不都合が発生することが確認された。
[0065]
 すなわち、単結晶の製造中、種子結晶の外側部端面では、融液は種子結晶の上面に融液自身の表面張力で乗っている。この部位の温度は、僅かな変動でも容易に融液を落下させ、単結晶の製造を失敗に導いてしまう。
[0066]
 そこで特に種子結晶の外側部は、極限まで温度変動を避け、融液の安定保持を図る必要がある。そのため粉末原料の投入を種子結晶の中心部近傍に限定し、ここで粉末原料を融解させて、融液が自然に種子結晶の外側部に流れることでも、見かけ上は粉末原料の融解,固化が安定的に進行しているように見えるが、実際には種子結晶の外側部には新たな粉末原料の供給が無く、中心部近傍から融液が流れてくることで形態上は定常状態が保たれているが組成的には中心部近傍で融解された粉末原料は、中心部近傍から固化が進みながら残った液が外側部に流れることになる。
[0067]
 前述した通り、添加物粉末の融液中の組成と固化してくる結晶中の添加物の組成は同じでは無く、「分配係数」と呼ばれる比で規定されている。
[0068]
 したがって、育成中の単結晶の中心部近傍と外側部とでは、添加物濃度が単結晶の外側部に近いほど濃くなってしまう傾向が発生する。
[0069]
 単結晶は平板状に加工して使用される場合が多い。このような場合、平板の平面内の添加物濃度の不均一性については、デバイス製造側の個別の事由により一定ではないが、一般的には5%程度、厳しい場合でも3%程度の許容幅である。
[0070]
 この条件を満足させるため、粉末原料の供給位置を、種子結晶の外側部のどこまで近づけることが必要かを調べた。
[0071]
 その結果、シリコンにリンを添加したN型シリコン単結晶を製造する場合には、種子結晶の直径90%の位置まで粉末原料を投下すると、粉末原料を安全に融解することができ、かつ融液を安定的に保持し、製造した単結晶中の添加物濃度の不均一性を3%以内に収めることができることが確認された。
[0072]
 このような状況下で粉末原料の融解,固化を達成できるのは、一つには傾斜照射型の赤外線照射手段で赤外線の照射を行ったからであり、本発明の単結晶製造装置の実用性が明白となった。
[0073]
 他方、上述のような大口径単結晶製造以外にも、例えば直径5mm程度の小型の単結晶製造に際しても原料棒の安定的な融解が困難な物質においては、粉末原料を丸棒状に成形することなく粉末状のまま供給することにより、安定的な単結晶製造が可能であることが実証できた。
[0074]
 すなわち、下側に配置された種子結晶の上面に斜め上方から赤外線を照射して融解し、融液が自身の表面張力で種子結晶上に乗せられた状態の融液に、粉末原料を供給、落下させる。この際、粉末原料のかさ密度を小さくして融液上に浮いている状態を維持し、これに赤外線を照射して融解する。
[0075]
 融液が生成すると融液量が増えるので、そのまま増えるに任せると落下してしまうので、下側の種子結晶保持のテーブルの位置を下に移動させ、下側の種子結晶と接している融液を単結晶として固化させ、融液量を一定に維持すると、粉末原料の供給、融解、固化が継続され単結晶が製造できた。
[0076]
 すなわち、本発明の単結晶製造装置は、
 内部に種子結晶が設置される透明石英管と、
 前記透明石英管の上部に設けられ、前記透明石英管内に設置される種子結晶上に粉末原料を供給する粉末原料供給手段と、
 前記透明石英管の外側に設けられ、前記透明石英管内に設置される種子結晶の上面および前記粉末原料供給手段により前記透明石英管内に供給される粉末原料に、赤外線を照射する赤外線照射手段と、
 を少なくとも備え、
 前記赤外線照射手段から前記透明石英管内に赤外線を照射することにより前記種子結晶の上面および粉末原料を溶融し、これを前記種子結晶上に固化させて単結晶を製造するよう構成されている。
[0077]
 このように構成されていれば、供給された粉末原料は赤外線を受けて融解し、融液となる。育成中の単結晶上面に形成されている融体の量は、粉末原料の融解が進むにつれて増え、下側の単結晶(種子結晶)の外側部では次第に融液が外側に膨らむようになる。
[0078]
 この状態が進行すると、やがて融液の量が増えすぎて落下してしまうので、その前に下側の単結晶が設置されているテーブルを下げ、固化を進行させて固化する量と供給する量が同一となるようにテーブルの下降速度を調整することで安定した状態を維持することができる。また供給された所定の添加物濃度を有する粉末原料と同一の最適添加物濃度を有する単結晶を育成することができ、全域に渡って最適添加物濃度で均質化した単結晶を製造することができる。
[0079]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記種子結晶の外側部を加熱する補助加熱手段が設けられていることを特徴とする。
[0080]
 このように透明石英管の外側に補助加熱手段が設けられていれば、予め種子結晶の外側部を加熱しておき、それから赤外線照射手段で赤外線を照射して粉末原料の融解を行うと、赤外線の照射量を減らすことができ、かつ制御性を高めることができる。
[0081]
 したがって、粉末原料の溶融を効率的に行うことができる。補助加熱手段は、透明石英管の外側から赤外線を照射して加熱するよう構成しても良いし、透明石英管の内側で製造中の単結晶の周囲に円筒状の抵抗加熱式電気炉を配置して所定の温度に加熱するよう構成しても良い。
[0082]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記粉末原料供給手段が、
 前記粉末原料を収容するホッパーと、
 前記ホッパー内の粉末原料を透明石英管内の所定位置に所定量供給する供給調整部と、
 前記供給調整部の下端に設けられ、前記透明石英管内に粉末原料を供給する供給管と、
 を有することを特徴とする。
[0083]
 このように構成すれば、透明石英管内に確実に粉末原料を供給することができる。
[0084]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記供給調整部が、
 前記透明石英管内に供給される前記粉末原料の供給速度を調整する供給速度調整手段を有することを特徴とする。
[0085]
 このように構成すれば、例えば円柱状の種子結晶の上面の中心部近傍では、供給速度を速め、種子結晶の外側部に近づくにつれて供給速度を遅くすることで、種子結晶の上面の中心部近傍で粉末原料の供給量を抑え、外側部に近づくにつれて粉末原料の供給量を増すようにすることができ、結果的には均質に粉末原料を種子結晶上に供給することができる。
[0086]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記供給調整部が、
 前記透明石英管内に供給される前記粉末原料の供給位置を調整する供給位置調整手段を有することを特徴とする。
[0087]
 このように供給位置を調整することができれば、均質に粉末原料を種子結晶上に供給することができる。
[0088]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記ホッパーには、
 前記粉末原料を収容する粉末原料収容容器が着脱自在に取り付けられるよう構成されていることを特徴とする。
[0089]
 このように粉末原料収容容器が着脱自在であれば、単結晶製造装置を起動して単結晶を製造している最中であっても、新たに粉末原料を補給することができ、極端に大型の粉末原料収容容器を保持しなくても随時、必要量の粉末原料を連続的に透明石英管内に供給可能となり、装置の大型化を避けることができる。
[0090]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記供給管が、石英製であることを特徴とする。
[0091]
 このように供給管が石英製であれば、石英管は赤外線を吸収しないので加熱されることも無く、また表面が円滑なので供給される粉末原料が付着して滞留することも少ない利点がある。
[0092]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記ホッパーが、
 結晶母材粉末を収容する結晶母材粉末用ホッパーと、
 添加物粉末を収容する添加物粉末用ホッパーと、から構成されていることを特徴とする。
[0093]
 このように結晶母材粉末と添加物粉末の収容を、それぞれ別々のホッパーで行えば、供給調整部にて容易に所望の組成割合とすることができる。例えばリンを添加したN型シリコン単結晶を育成しようとする際、最初に投入されるべき粉末原料は、リンの濃度が最適濃度組成の3倍の濃度とし、その量を定常状態に形成される融液相の量と同一の量を投入し、次いで最適濃度組成の粉末原料を固化の量と同一に制御して投入することにより、製造される単結晶の組成を概略、最初から最適濃度組成に合致させ、全体の良品率を向上させることができる。
[0094]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記ホッパーが、
 結晶母材粉末および添加物粉末とが混合された混合粉末を収容する混合粉末用ホッパーであることを特徴とする。
[0095]
 このように結晶母材粉末と添加物粉末の収容を、予め混合された混合粉末で行えば、ホッパーを別々に設ける場合に比べ、装置を小型化することができ、また一定の組成割合を確実に維持することができる。
[0096]
 ただし、この場合には種子結晶上に最初に形成される融液相の添加物濃度は、粉末原料中の添加物濃度よりも分配係数で規定された比で高い濃度が必要となる。そこで予め高い濃度で必要な分量の溶媒相相当分の固形物を別に作成して種子結晶上に配置し、これを最初に融解して溶媒相を形成させてから粉末原料の供給を開始すれば、全域に渡って均質組成の単結晶を製造することができる。
[0097]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記ホッパーが、
 結晶母材粉末を収容する結晶母材粉末用ホッパーと、
 結晶母材粉末および添加物粉末とが混合された混合粉末を収容する混合粉末用ホッパーと、から構成されていることを特徴とする。
[0098]
 このように結晶母材粉末と混合粉末とを別々に用意して収容するようにしても、組成を垂直方向,水平方向のいずれに対しても最適添加物濃度で均質化した単結晶を製造することができる。
[0099]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記結晶母材粉末が、シリコン粉末であることを特徴とする。
[0100]
 このように結晶母材粉末がシリコン粉末であれば、例えば半導体関連製品に用いられるシリコンの単結晶を製造することができる。
[0101]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記粉末原料供給手段は、
 前記種子結晶の直径の90%以内に前記粉末原料を供給するよう構成されていることを特徴とする。
[0102]
 このように種子結晶の直径の90%以内に粉末原料を供給すれば、粉末原料を安全に融解しかつ融液を安定的に保持し、組成を垂直方向,水平方向のいずれに対しても最適添加物濃度で均質化した単結晶を製造することができる。
[0103]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記赤外線照射手段が、
 前記種子結晶の直径の90%以内に赤外線を照射するよう構成されていることを特徴とする。
[0104]
 このように種子結晶の直径の90%以内を加熱すれば、粉末原料を安全に融解しかつ融液を安定的に保持し、組成を垂直方向,水平方向のいずれに対しても最適添加物濃度で均質化した単結晶を製造することができる。
[0105]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記赤外線照射手段が、
 内面を反射面として使用する楕円面反射鏡と、
 前記楕円面反射鏡の底部側の第1焦点位置に設けられた赤外線ランプと、
 を備えることを特徴とする。
[0106]
 このような赤外線照射手段であれば、効率的に粉末原料に赤外線を照射することができる。
[0107]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記赤外線ランプが、
 ハロゲンランプまたはキセノンランプであることを特徴とする。
[0108]
 このようにハロゲンランプまたはキセノンランプであれば、安価に入手可能であり、単結晶製造装置の製造コストを抑えることができる。
[0109]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記赤外線照射手段が、
 前記赤外線のレーザ光を照射する半導体レーザモジュールであることを特徴とする。
[0110]
 このように半導体レーザモジュールであれば、赤外線照射手段を小型化することができ、単結晶製造装置の小型化に寄与することができる。
[0111]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記赤外線照射手段が、複数設けられていることを特徴とする。
[0112]
 このように赤外線照射手段が複数設けられていれば、単数の場合よりも、粉末原料の溶融を安定して確実に行うことができる。さらにこのように複数設けられていれば、溶融表面を均質に加熱することができる。
[0113]
 なお、溶融表面を均質に加熱すれば、組成を垂直方向,水平方向のいずれに対しても均質化した単結晶を製造することができる。
[0114]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記透明石英管の下方には、前記種子結晶を設置するテーブルが設けられていることを特徴とする。
[0115]
 このようにテーブル上に種子結晶が載置されるようにすれば、単結晶の育成具合に応じて、適宜テーブルを移動させることで、組成を垂直方向,水平方向のいずれに対しても均質化した単結晶を製造することができる。
[0116]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記テーブルが、回転駆動手段を有することを特徴とする。
[0117]
 このようにテーブルが回転可能に構成されていれば、赤外線照射手段からの赤外線を均一に照射することができ、粉末原料を満遍なく加熱することができる。これにより組成を垂直方向,水平方向のいずれに対しても均質化した単結晶を製造することができる。
[0118]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記テーブルが、所定速度で上下方向に昇降する昇降手段を有することを特徴とする。
[0119]
 このようにテーブルが上下方向に昇降可能であれば、粉末原料の供給量と単結晶の成長量とを一致させることができ、好都合である。
[0120]
 また、本発明の単結晶製造装置は、
 前記透明石英管中の雰囲気を真空排気するおよび/または不活性ガスとする雰囲気制御手段を有することを特徴とする。
[0121]
 このように透明石英管内の雰囲気を真空排気するおよび/また不活性ガスとすれば、酸化性の材料であっても空気と反応して酸化されることを防止し、不純物を含まない高純度で高品質な単結晶を製造することができる。

発明の効果

[0122]
 本発明の単結晶製造装置によれば、単結晶の育成に合わせて結晶化した分と同量の粉末原料(結晶母材粉末(例えばシリコン粉末)+添加物粉末)が連続的に供給されるようになっているので、従来のように原料棒の直径、長さなどを制限する必要が無く、任意の直径で任意の長さの単結晶を製造することができる。
[0123]
 さらに原料棒を用いた従来の単結晶製造装置と比べ、単結晶の製造に必要なエネルギー量を大幅に低減することができ、製造コストを抑えることができる。
[0124]
 また、組成を垂直方向,水平方向のいずれに対しても均質化した大型の単結晶を、低コストで製造することができる。

図面の簡単な説明

[0125]
[図1] 図1は、本発明の一実施形態における単結晶製造装置の概略図である。
[図2] 図2は、図1に示した単結晶製造装置の上面視方向から見た図であり、粉末原料の供給範囲を説明するための説明図である。
[図3] 図3は、本発明の単結晶製造装置を用いた単結晶の製造工程の工程図であり、図3(a)は、テーブル上に種子結晶を載置した状態を示した図、図3(b)は、種子結晶の周囲に透明石英管を配設した状態を示した図、図3(c)は、赤外線加熱手段と補助加熱手段による赤外線照射の状態を示した図である。
[図4] 図4は、本発明の単結晶製造装置を用いた単結晶の製造工程の工程図であり、図4(a)は、種子結晶上に粉末原料を供給した状態を示した図、図4(b)は、昇降手段を介してテーブルを降ろしつつ、単結晶を育成している状態を示した図、図4(c)は、赤外線加熱手段と補助加熱手段による赤外線照射を止め、単結晶を完成させた状態を示した図である。

発明を実施するための形態

[0126]
 以下、本発明の実施形態を図面に基づいてより詳細に説明する。
[0127]
 本発明の単結晶製造装置は、例えば直径が200~300mmを超えるような大型の単結晶を、不純物の混入を避けて高純度で組成を最適組成に均質化しながら高効率に製造するためのものである。
[0128]
 また、本明細書中で「種子結晶」とは、単結晶製造装置を使用して大口径の単結晶を製造するに当たり、結晶の最初の形態を指すものである。この種子結晶から育成され、全体が同一の方位に維持されたものを「単結晶」と呼ぶ。
<単結晶製造装置10>
 図1に示したように、本実施例の単結晶製造装置10は、まず内部にシリコンの種子結晶30が設置される透明石英管12と、この透明石英管12の上部に設けられ、透明石英管12内に設置される種子結晶30上にシリコン粉末および添加物粉末から成る粉末原料24を供給する粉末原料供給手段14と、透明石英管12の外側に設けられ、粉末原料供給手段14により透明石英管12内に供給される粉末原料24に対し、斜め上方から下方に向けて赤外線18を照射する赤外線照射手段16と、を備えている。
[0129]
 また、本発明の単結晶製造装置10では、透明石英管12の外側に種子結晶30の外側部を加熱する補助加熱手段32が設けられている。
[0130]
 補助加熱手段32は、予め種子結晶30の外側部60を加熱するためのものであり、このように種子結晶30の外側部60を加熱した状態で、赤外線照射手段16で赤外線18を照射して粉末原料24の融解を行うと、赤外線18の照射量を減らすことができ、かつ制御性を高めることができる。
[0131]
 粉末原料24に赤外線18を照射する赤外線照射手段16および種子結晶30の外側部60を加熱する補助加熱手段32としては、例えば赤外線ランプ20,46から発せられた赤外線18が楕円面反射鏡22,48の内面で反射するように構成されたものを用いることができる。
[0132]
 赤外線ランプ20,46としては、ハロゲンランプ,キセノンランプなどが使用可能である。ハロゲンランプまたはキセノンランプは、安価に入手可能であり、単結晶製造装置10の製造コストを抑えることができる。このような赤外線照射手段16および補助加熱手段32は、1つに限定されず、複数個設けても良いものである。複数個設ける場合には、種子結晶30を中心として円周方向に等間隔置きに設ければ均等に加熱ができるため好ましい。
[0133]
 赤外線照射手段16および補助加熱手段32は、上記した赤外線ランプ20,46および楕円面反射鏡22,48から成るもの以外に、半導体レーザモジュール(図示せず)であっても構わない。半導体レーザモジュール(図示せず)であれば、赤外線照射手段16および補助加熱手段32を小型化することができ、単結晶製造装置10の小型化に寄与することができる。
[0134]
 本実施形態の単結晶製造装置10では、透明石英管12は、密閉チャンバー26内に配設され、密閉チャンバー26内の透明石英管12の外方に、赤外線照射手段16と補助加熱手段32が設けられている。ただし、補助加熱手段32についてはこれに限らず、種子結晶30の外側であって透明石英管12内に配設した円筒状の抵抗加熱式電気炉(図示せず)としても良いものである。
[0135]
 また透明石英管12内は、雰囲気制御手段(図示せず)により内部を真空排気し、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気に保持されるようになっている。透明石英管12内の雰囲気を真空排気し不活性ガス雰囲気とすれば、酸化性の材料であっても空気と反応して酸化されることを防止することができる。
[0136]
 一方、種子結晶30は、透明石英管12の下部に設けられたテーブル50上に載置され、このテーブル50が、回転駆動手段52を介して回転されるようになっている。このようにテーブル50が回転することで、赤外線照射手段16からの赤外線18を粉末原料24に対して均一に照射することができ、粉末原料24を満遍なく加熱することができる。
[0137]
 またテーブル50は、他にも昇降手段54を介して昇降自在に構成されており、後述するように単結晶の育成が進むにつれ、テーブル50を降ろしていくことで、単結晶を大型化させることができる。
[0138]
 他方、透明石英管12の上方には、粉末原料供給手段14が配設され、この粉末原料供給手段14は、粉末原料24を収容するホッパー40と、このホッパー40内の粉末原料24を透明石英管12の所定位置に所定量供給する供給調整部42と、この供給調整部42の下端に設けられ、透明石英管12内に粉末原料24を供給する供給管44と、を備えている。
[0139]
 供給調整部42は、透明石英管12内に供給される粉末原料24の供給速度を調整する供給速度調整手段34と、供給位置を調整する供給位置調整手段36を備えており、これにより単結晶の育成具合に応じて粉末原料24の供給調整をすることができる。
[0140]
 またホッパー40は、本実施形態においてはシリコン粉末と添加物粉末とが混合された混合粉末を収容する混合粉末用ホッパーであり、これにより粉末原料24の組成割合を確実に一定に維持することができる。
[0141]
 ただし、この場合には種子結晶30上に最初に形成される融液相の添加物濃度は、粉末原料24中の添加物濃度よりも分配係数で規定された比で高い濃度が必要となる。そこで予め高い濃度で必要な分量の溶媒相相当分の固形物を別に作成して種子結晶30上に配置し、これを最初に融解して溶媒相を形成させてから粉末原料24の供給を開始すれば、全域に渡って均質組成の単結晶30aを製造することができる。
[0142]
 なお本実施形態ではホッパー40として混合粉末用ホッパーを用いたが、これに限定されるものではなく、例えばシリコン粉末を収容するシリコン粉末用ホッパーと、添加物粉末を収容する添加物粉末用ホッパーと、の両方からなるホッパー40を用いても良いものである。
[0143]
 このようにシリコン粉末用ホッパーと添加物粉末用ホッパーの両方を用いれば、供給調整部42にて容易に所望の組成割合とすることができる。
[0144]
 例えばリンを添加したN型シリコン単結晶を育成しようとする際、最初に投入されるべき粉末原料24は、リンの濃度が最適濃度組成の3倍の濃度とし、その量を定常状態に形成される融液相の量と同一の量を投入し、次いで最適濃度組成の粉末原料24を固化の量と同一に制御して投入することにより、製造される単結晶30aの組成を概略、最初から最適濃度組成に合致させ、全体の良品率を向上させることができる。
[0145]
 また上記したシリコン粉末用ホッパーと添加物粉末用ホッパーの組合せの代わりに、シリコン粉末用ホッパーとシリコン粉末および添加物粉末とが混合された混合粉末を収容する混合粉末用ホッパーの組み合わせを用いても良いものである。
[0146]
 このようなホッパー40の上端には、粉末原料24を収容する粉末原料収容容器56が着脱自在に取り付けられるようになっている(図1は、粉末原料収容容器56が取り外された状態である)。
[0147]
 このような粉末原料収容容器56を用いれば、単結晶製造装置10を起動して単結晶を製造している最中であっても、新たに粉末原料24を補給することができ、極端に大型の粉末原料収容容器56をホッパー40上で保持しなくても、随時、必要量の粉末原料24を連続的に透明石英管12内に供給可能となり、単結晶製造装置10の大型化を避けることができる。
[0148]
 なお、粉末原料収容容器56は、ホッパー40の仕様に合わされて構成されることが好ましく、例えば本実施形態のように、ホッパー40がシリコン粉末と添加物粉末とが混合された混合粉末を収容する混合粉末用ホッパーであれば、粉末原料収容容器56は、混合粉末が収容される構成であることが好ましい。
[0149]
 また、ホッパー40がシリコン粉末用ホッパーと添加物粉末用ホッパーの組合せからなるような場合には、粉末原料収容容器56をシリコン粉末用容器と添加物粉末用容器の組合せとすれば良い。
[0150]
 さらに粉末原料24の供給管44は、供給管44の上部に設けられた供給調整部42によって、粉末原料24を透明石英管12の種子結晶30上の所定位置に所定量供給するようになっている。
[0151]
 供給管44は、図2に示したように、透明石英管12内の種子結晶30上であり、種子結晶30の上部中心の位置から外側部60の位置の間を移動可能に構成されている。
[0152]
 ここで供給管44から供給される粉末原料24は、種子結晶30の直径の90%以内の領域Aに供給されることが好ましい。このように種子結晶30の外側部60まで至ることなく、その手前までに留めて粉末原料24を供給するようにすれば、粉末原料24を安全に融解しかつ融液を安定的に保持し、組成を垂直方向,水平方向のいずれに対しても最適添加物濃度で均質化した単結晶30aを製造することができる。
[0153]
 なお、供給管44による粉末原料24の供給位置や供給量については、供給調整部42の供給位置調整手段36や供給速度調整手段34を用いて決められるようにすることが望ましい。
[0154]
 例えば、種子結晶30の中心部付近では粉末原料24の供給量を抑え、種子結晶30の外側部60に向かうにつれて供給量を増すようにするなどすれば、種子結晶30上に供給される粉末原料24がどの位置でも偏ることがないため、確実に溶融させることができ、また組成を垂直方向,水平方向のいずれに対しても最適添加物濃度で均質化した単結晶30aを製造することができる。
[0155]
 このような供給管44の材質は、石英製であることが好ましい。石英は赤外線18を吸収しないので赤外線源からの迷光を吸収して温度が上がってしまうことが無く、また表面が滑らかなので粉末原料24の滞留を少なくすることができ好ましい。
[0156]
 また、本発明の単結晶製造装置10では、赤外線照射手段16にて粉末原料24を加熱する際に、種子結晶30の直径の90%以内に赤外線18を照射することが好ましい。
[0157]
 これも供給管44から供給される粉末原料24の供給位置と同様、種子結晶30の外側部60まで至ることなく、その手前までを加熱するようにすれば、育成中の単結晶の表面形状を平坦状に維持することができ、また粉末原料24を安全に融解しかつ融液を安定的に保持し、組成を垂直方向,水平方向のいずれに対しても最適添加物濃度で均質化した単結晶30aを製造することができる。
[0158]
 本発明の一実施例に係る単結晶製造装置10は上記のように構成されているが、以下に、単結晶製造装置10を用いた単結晶製造方法について説明する。
<単結晶製造方法>
 まず、図3(a)に示したように、密閉チャンバー26内のテーブル50上に種子結晶30を設置する。
[0159]
 次いで図3(b)に示したように、種子結晶30を取り囲むように種子結晶30の外側に透明石英管12を配設し、雰囲気制御手段(図示せず)により、透明石英管12内の雰囲気を真空排気し、さらに育成される単結晶の種類に応じてアルゴンガスなどの不活性ガスや酸素などの雰囲気ガスを透明石英管12内に導入する。
[0160]
 この状態で図3(c)に示したように、今後は種子結晶30の斜め上方に配置された赤外線照射手段16から赤外線18を種子結晶30の上方に照射し、同時に種子結晶30の側面方向に配置された補助加熱手段32から赤外線18を種子結晶30の側面に照射し、種子結晶30を加熱する。この時、種子結晶30を載せたテーブル50は、円周方向に回転されている。
[0161]
 次いで、図4(a)に示したように、種子結晶30の上部が溶融したら、ここに供給管44より少量の粉末原料24を供給する。このまま、粉末原料24の投入、融解、下部での種子結晶30上への固化を継続し、単結晶の育成を継続させる。そして図4(b)に示したように、単結晶の育成速度に合わせてテーブル50を下方に降ろしていくことで、単結晶を徐々に大型化させる。
[0162]
 所定のサイズまで単結晶が育成されたら、図4(c)に示したように、赤外線照射手段16と補助加熱手段32からの赤外線18の照射を徐々に下げ、最終的に照射を完全に止める。
[0163]
 全体の固化が完了し、室温まで温度を低下させたら、密閉チャンバー26を開き、透明石英管12内の単結晶(固化物)30aを取り出し、これにて単結晶30aの製造が完了となる。
[0164]
 以上、本発明の単結晶製造装置10は、粉末原料24の透明石英管12内への供給と、これらの融解から固化までを連続的に行い、固化した分と同量の粉末原料24を連続的に透明石英管12内へ供給しながら単結晶を製造していくため、結晶中の組成を均質化させることができる。
[0165]
 なお、本発明の単結晶製造装置10およびこの単結晶製造装置10を使用した単結晶製造方法について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
[0166]
 例えば上記実施形態では、結晶母材粉末としてシリコン粉末を用いた場合を例に説明をしたが、これに限定されるものではなく、製造しようとする物質に合わせて用意した粉末を用いることができる。
[0167]
 また粉末原料(シリコン粉末+添加物粉末)24の粒度について、特に言及していないが、これらの粒度が大きすぎると融解させるのに時間がかかり、かつ透明石英管12内に落下した際に融液相を通過して沈み、下方の固化物の表面に到着してしまうことがある。
[0168]
 仮に固化物の表面に粉末原料24が到着してしまうと、その粉末原料24が固化物に取り込まれ、ここから別の結晶が成長を開始してしまう傾向がある。
[0169]
 一方、粉末原料24の粒度があまりに細かすぎると、透明石英管12内に向かって落下させた際に周辺に舞い散ることになるので、制御性が劣化する。したがって粉末原料24の粒子の直径は0.5mm程度の大きさであることが好ましい。
[0170]
 このように本発明の単結晶製造装置10は、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能なものである。

符号の説明

[0171]
10 単結晶製造装置
12 透明石英管
14 粉末原料供給手段
16 赤外線照射手段
18 赤外線
20 赤外線ランプ
22 楕円面反射鏡
24 粉末原料
26 密閉チャンバー
30 種子結晶
30a 単結晶
32 補助加熱手段
34 供給速度調整手段
36 供給位置調整手段
40 ホッパー
42 供給調整部
44 供給管
46 赤外線ランプ
48 楕円面反射鏡
50 テーブル
52 回転駆動手段
54 昇降手段
56 粉末原料収容容器
60 外側部
 A 領域

請求の範囲

[請求項1]
 内部に種子結晶が設置される透明石英管と、
 前記透明石英管の上部に設けられ、前記透明石英管内に設置される種子結晶上に粉末原料を供給する粉末原料供給手段と、
 前記透明石英管の外側に設けられ、前記透明石英管内に設置される種子結晶の上面および前記粉末原料供給手段により前記透明石英管内に供給される粉末原料に、赤外線を照射する赤外線照射手段と、
 を少なくとも備え、
 前記赤外線照射手段から前記透明石英管内に赤外線を照射することにより前記種子結晶の上面および粉末原料を溶融し、これを前記種子結晶上に固化させて単結晶を製造するよう構成されていることを特徴とする単結晶製造装置。
[請求項2]
 前記種子結晶の外側部を加熱する補助加熱手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の単結晶製造装置。
[請求項3]
 前記粉末原料供給手段が、
 前記粉末原料を収容するホッパーと、
 前記ホッパー内の粉末原料を透明石英管内の所定位置に所定量供給する供給調整部と、
 前記供給調整部の下端に設けられ、前記透明石英管内に粉末原料を供給する供給管と、
 を有することを特徴とする請求項1または2に記載の単結晶製造装置。
[請求項4]
 前記供給調整部が、
 前記透明石英管内に供給される前記粉末原料の供給速度を調整する供給速度調整手段を有することを特徴とする請求項3に記載の単結晶製造装置。
[請求項5]
 前記供給調整部が、
 前記透明石英管内に供給される前記粉末原料の供給位置を調整する供給位置調整手段を有することを特徴とする請求項3または4に記載の単結晶製造装置。
[請求項6]
 前記ホッパーには、
 前記粉末原料を収容する粉末原料収容容器が着脱自在に取り付けられるよう構成されていることを特徴とする請求項3~5のいずれかに記載の単結晶製造装置。
[請求項7]
 前記供給管が、石英製であることを特徴とする請求項3~6のいずれかに記載の単結晶製造装置。
[請求項8]
 前記ホッパーが、
 結晶母材粉末を収容する結晶母材粉末用ホッパーと、
 添加物粉末を収容する添加物粉末用ホッパーと、から構成されていることを特徴とする請求項3~7のいずれかに記載の単結晶製造装置。
[請求項9]
 前記ホッパーが、
 結晶母材粉末および添加物粉末とが混合された混合粉末を収容する混合粉末用ホッパーであることを特徴とする請求項3~7のいずれかに記載の単結晶製造装置。
[請求項10]
 前記ホッパーが、
 結晶母材粉末を収容する結晶母材粉末用ホッパーと、
 結晶母材粉末および添加物粉末とが混合された混合粉末を収容する混合粉末用ホッパーと、から構成されていることを特徴とする請求項3~7のいずれかに記載の単結晶製造装置。
[請求項11]
 前記結晶母材粉末が、シリコン粉末であることを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載の単結晶製造装置。
[請求項12]
 前記粉末原料供給手段は、
 前記種子結晶の直径の90%以内に前記粉末原料を供給するよう構成されていることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の単結晶製造装置。
[請求項13]
 前記赤外線照射手段が、
 前記種子結晶の直径の90%以内に赤外線を照射するよう構成されていることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の単結晶製造装置。
[請求項14]
 前記赤外線照射手段が、
 内面を反射面として使用する楕円面反射鏡と、
 前記楕円面反射鏡の底部側の第1焦点位置に設けられた赤外線ランプと、
 を備えることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の単結晶製造装置。
[請求項15]
 前記赤外線ランプが、
 ハロゲンランプまたはキセノンランプであることを特徴とする請求項14に記載の単結晶製造装置。
[請求項16]
 前記赤外線照射手段が、
 前記赤外線のレーザ光を照射する半導体レーザモジュールであることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の単結晶製造装置。
[請求項17]
 前記赤外線照射手段が、複数設けられていることを特徴とする請求項1~16のいずれかに記載の単結晶製造装置。
[請求項18]
 前記透明石英管の下方には、前記種子結晶を設置するテーブルが設けられていることを特徴とする請求項1~17のいずれかに記載の単結晶製造装置。
[請求項19]
 前記テーブルが、回転駆動手段を有することを特徴とする請求項18に記載の単結晶製造装置。
[請求項20]
 前記テーブルが、所定速度で上下方向に昇降する昇降手段を有することを特徴とする請求項18または19に記載の単結晶製造装置。
[請求項21]
 前記透明石英管中の雰囲気を真空排気するおよび/または不活性ガスとする雰囲気制御手段を有することを特徴とする請求項1~20のいずれかに記載の単結晶製造装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]