明 細 書
発明の名称 : 抗TMEM-180抗体、抗がん剤、及びがんの検査方法
技術分野
[0001]
本発明は、新規な抗TMEM-180抗体、抗TMEM-180抗体を含む抗がん剤、試料中のTMEM-180を測定するがんの検査方法等に関する。
背景技術
[0002]
近年、抗がん剤として、特定の分子に特異的に作用する分子標的薬が多数開発されている。特に、あるがん細胞に特異的に発現している分子や、がん細胞において発現が亢進している分子を抗原とした様々な抗体医薬の開発が進められている。このような抗体医薬の開発では、まず、手術の際に採取したがん組織におけるmRNA発現と、その近傍から採取した正常組織におけるmRNAの発現を比較して、がん組織のみに特異的に発現している分子や、がん組織において発現が亢進している分子を特定し、これを抗原として抗体を作製する。
[0003]
大腸がんは、大腸粘膜の細胞から発生するがんである。これまでに、上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor; EGFR)を標的とする抗体であるセツキシマブが開発され、大腸がんに使用されている(非特許文献1-3)。しかしながら、EGFRは正常組織でも発現しているため、セツキシマブは正常組織にも作用する可能性があり、より特異的に大腸がんに発現する分子を標的とした分子標的薬の開発が望まれていた。この点、大腸がんが発生する粘膜組織はわずかしか存在しないため、がん化した粘膜細胞と正常な粘膜細胞を比較して標的分子を特定することが難しいという問題があった。
先行技術文献
非特許文献
[0004]
非特許文献1 : Cunningham D. et al., The New England Journal of Medicine., Vol.351, No.4, 2004, p.p.337-345.
非特許文献2 : Goldstein NI. Et al., Clin Cancer Res. Vol.1, 1311-1318, 1995.
非特許文献3 : Karapetis CS. Et al., The New Engl J Med. Vol.359, 1757-1765.
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0005]
本発明は、がん特異的に発現している標的分子を見出し、この標的分子に特異的に作用することによってがんを治療できる抗がん剤を提供すること、及び、試料中の標的分子を測定する工程を含むがんの検査方法を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0006]
本発明者らは、上記課題を解決するために、各種大腸がん細胞株と、大腸内視鏡検査の際の洗浄液に含まれていた正常粘膜細胞とにおけるmRNAの発現をDNAマイクロアレイで解析して比較し、大腸がん細胞株でのみ発現している分子を探索した。その結果、すべての大腸がん細胞株で発現している一方、健常者の細胞では発現が認められないタンパク質としてtransmembrane protein 180(TMEM-180)を同定した。さらに、定量性PCRとin situ hybridization法により、TMEM-180が正常大腸組織には発現していないことを確認するとともに、主要な正常組織でTMEM-180が発現していないことを確認し、TMEM-180が抗がん剤の標的として、また、がんの検査における指標として理想的な分子であることを確認した。
そして、TMEM-180に対する抗体を作製し、この抗体が大腸がん細胞に対する殺細胞効果を示すこと、また、従前の大腸がんマーカーよりも特に再発を感度よく検出できることを確認して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕抗transmembrane protein 180(TMEM-180)抗体又はその抗原結合フラグメントを有効成分として含む抗がん剤;
〔2〕抗がん活性を有する物質を結合させた抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントを有効成分として含む抗がん剤;
〔3〕前記抗TMEM-180抗体が、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤:
重鎖CDR1:GFSLTRYNVH(配列番号:1);
重鎖CDR2:VIWTGGSTD(配列番号:2);
重鎖CDR3:DLGY(配列番号:3);
軽鎖CDR1:KSSQSLKYRDGKTYLN(配列番号:4);
軽鎖CDR2:QVSKLDS(配列番号:5);及び
軽鎖CDR3:CQGSYSPHT(配列番号:6);
〔4〕前記抗TMEM-180抗体が、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤:
重鎖CDR1:GFSLTSYYMQ(配列番号:7);
重鎖CDR2:FIRSGGSTE(配列番号:8);
重鎖CDR3:AFYGGYYFDY(配列番号:9);
軽鎖CDR1:KASQNVGSNVD(配列番号:10);
軽鎖CDR2:KASNRYT(配列番号:11);及び
軽鎖CDR3:MQSNTKYT(配列番号:12);
〔5〕前記抗TMEM-180抗体が、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤:
重鎖CDR1:GFTFSDYAMA(配列番号:40);
重鎖CDR2:TIIYDGSST(配列番号:41);
重鎖CDR3:HWYWYFDF(配列番号:42);
軽鎖CDR1:LASEGISNDLA(配列番号:43);
軽鎖CDR2:AASRLQD(配列番号:44);及び
軽鎖CDR3:QQSYKYPLT(配列番号:45);
〔6〕前記抗TMEM-180抗体が、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤:
重鎖CDR1:DCALN(配列番号:48);
重鎖CDR2:WINTQTGKPTYADDF(配列番号:49);
重鎖CDR3:EDYGYFDY(配列番号:50);
軽鎖CDR1:QASQNINKFIA(配列番号:51);
軽鎖CDR2:YTSTLVS(配列番号:52);及び
軽鎖CDR3:LQYDNLRT(配列番号:53);
〔7〕前記抗TMEM-180抗体が、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤:
重鎖CDR1:NYGMH(配列番号:56);
重鎖CDR2:SISPSGGSTYYRDSV(配列番号:57);
重鎖CDR3:SASITAYYYVMDA(配列番号:58);
軽鎖CDR1:KASQNVGSNVD(配列番号:59);
軽鎖CDR2:KASNRYT(配列番号:60);及び
軽鎖CDR3:MQSNSYPPT(配列番号:61);
〔8〕前記抗TMEM-180抗体が、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤:
重鎖CDR1:NYWMT(配列番号:64);
重鎖CDR2:SITNTGGSTYYPDSV(配列番号:65);
重鎖CDR3:AGYSSYPDYFDY(配列番号:66);
軽鎖CDR1:KAGQNIYNYLA(配列番号:67);
軽鎖CDR2:NANSLQT(配列番号:68);及び
軽鎖CDR3:QQYSSGWT(配列番号:69);
〔9〕前記抗TMEM-180抗体が、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤:
重鎖CDR1:DYWVS(配列番号:72);
重鎖CDR2:EIYPNSGATNFNENFK(配列番号:73);
重鎖CDR3:DGTMGIAYYFDY(配列番号:74);
軽鎖CDR1:KASQNINRYLN(配列番号:75);
軽鎖CDR2:NANSLQT(配列番号:76);及び
軽鎖CDR3:LQHNSWPYT(配列番号:77);
〔10〕前記抗TMEM-180抗体が、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤:
重鎖CDR1:SYDIS(配列番号:80);
重鎖CDR2:AINPGSGGTGYNEKFKGK(配列番号:81);
重鎖CDR3:IHGGYRYWFAY(配列番号:82);
軽鎖CDR1:RASSSVSYMH(配列番号:83);
軽鎖CDR2:DTSKLAS(配列番号:84);及び
軽鎖CDR3:LQRSSYPPT(配列番号:85);
〔11〕前記抗TMEM-180抗体が、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤:
重鎖CDR1:SNGVG(配列番号:88);
重鎖CDR2:TIWTGGGTNYNSGVQS(配列番号:89);
重鎖CDR3:EYMGFDY(配列番号:90);
軽鎖CDR1:KASQNVGINVG(配列番号:91);
軽鎖CDR2:WASNRDT(配列番号:92);及び
軽鎖CDR3:LQHNSYPRT(配列番号:93);
〔12〕前記抗TMEM-180抗体が、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤:
重鎖CDR1:SNGVG(配列番号:96);
重鎖CDR2:TIWSGGGTNYNSAVQS(配列番号:97);
重鎖CDR3:EEKGFAY(配列番号:98);
軽鎖CDR1:KASQNVGINVG(配列番号:99);
軽鎖CDR2:WASNRDT(配列番号:100);及び
軽鎖CDR3:LQHNSYPRA(配列番号:101);
〔13〕前記抗TMEM-180抗体は、
前記重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3の少なくとも1つに、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含む;又は
前記重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3の少なくとも1つが、前記重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する、上記〔3〕から〔12〕のいずれか1項に記載の抗がん剤;
〔14〕前記抗TMEM-180抗体は、
配列番号:13で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:13で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;若しくは、
配列番号:13で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖及び/又は、
配列番号:14で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:14で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;若しくは、
配列番号:14で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤;
〔15〕前記抗TMEM-180抗体は、
配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:15で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;若しくは、
配列番号:15で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖
及び/又は、
配列番号:16で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:16で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;若しくは、
配列番号:16で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤;
〔16〕前記抗TMEM-180抗体は、
配列番号:46で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:46で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;若しくは、
配列番号:46で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖
及び/又は、
配列番号:47で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:47で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;若しくは、
配列番号:47で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤;
〔17〕前記抗TMEM-180抗体は、
配列番号:54で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:54で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;若しくは、
配列番号:54で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖
及び/又は、
配列番号:55で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:55で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;若しくは、
配列番号:55で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤;
〔18〕前記抗TMEM-180抗体は、
配列番号:62で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:62で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;若しくは、
配列番号:62で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖
及び/又は、
配列番号:63で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:63で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;若しくは、
配列番号:63で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤;
〔19〕前記抗TMEM-180抗体は、
配列番号:70で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:70で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;若しくは、
配列番号:70で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖
及び/又は、
配列番号:71で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:71で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;若しくは、
配列番号:71で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤;
〔20〕前記抗TMEM-180抗体は、
配列番号:78で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:78で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;若しくは、
配列番号:78で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖
及び/又は、
配列番号:79で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:79で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;若しくは、
配列番号:79で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤;
〔21〕前記抗TMEM-180抗体は、
配列番号:86で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:86で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;若しくは、
配列番号:86で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖
及び/又は、
配列番号:87で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:87で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;若しくは、
配列番号:87で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤;
〔22〕前記抗TMEM-180抗体は、
配列番号:94で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:94で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;若しくは、
配列番号:94で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖
及び/又は、
配列番号:95で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:95で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;若しくは、
配列番号:95で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤;
〔23〕前記抗TMEM-180抗体は、
配列番号:102で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:102で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;若しくは、
配列番号:102で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖
及び/又は、
配列番号:103で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:103で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;若しくは、
配列番号:103で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗がん剤;
〔24〕前記抗TMEM-180抗体は、
Fc領域に1以上のN-結合型糖鎖が結合し、該N-結合型糖鎖の還元末端のN-アセチルグル
コサミンにフコースが結合していない、上記〔1〕から〔23〕のいずれか1項に記載の抗がん剤;
〔25〕TMEM-180を発現しているがんを対象とする、上記〔1〕から〔24〕のいずれか1項に記載の抗がん剤;
〔26〕大腸がんを対象とする、上記〔1〕から〔24〕のいずれか1項に記載の抗がん剤;
〔27〕配列番号104~170で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを少なくとも1つ含む組成物を用いたがんワクチン療法と併用して投与される、上記〔1〕から〔24〕のいずれか1項に記載の抗がん剤;
〔28〕上記〔3〕から〔24〕のいずれか1項に記載の抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメント;
〔29〕上記〔3〕から〔13〕のいずれか1項に記載の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のいずれか1つをコードする核酸;
〔30〕上記〔14〕から〔23〕のいずれか1項に記載の重鎖及び軽鎖のいずれか1つをコードする核酸;
〔31〕上記〔29〕又は〔30〕に記載の核酸を含む発現ベクター;
〔32〕上記〔31〕に記載の発現ベクターを含む形質転換体;
〔33〕上記〔32〕に記載の形質転換体で抗体を発現させる工程と、
前記抗体を回収する工程と、
を含む抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントの製造方法;
〔34〕被検者から採取された試料中のTMEM-180量を測定する工程を含む、がんの検査方法;
〔35〕前記TMEM-180量の測定を、抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントを用いたイムノアッセイで行う、上記〔34〕に記載のがんの検査方法;
〔36〕前記抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントが、上記〔28〕に記載の抗TMEM-180抗体若しくはその抗原結合フラグメントである、上記〔35〕に記載のがんの検査方法;
〔37〕大腸がんを対象とする、上記〔34〕から〔36〕のいずれか1項に記載のがんの検査方法;
〔38〕治療後の再発又は転移の検査に用いられる、上記〔34〕から〔37〕に記載のがんの検査方法;
〔39〕抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントを含むがんの検査用キット;
〔40〕前記抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントが、上記〔28〕に記載の抗TMEM-180抗体若しくはその抗原結合フラグメントである、上記〔39〕に記載のがんの検査用キット;及び
〔41〕大腸がんを対象とする、上記〔39〕又は〔40〕に記載のがんの検査用キットに関する。
[0007]
本発明者らはまた、TMEM-180は、がんを有する被験者の血清中に存在するエクソソームに表出して存在することを見出した。これの知見によれば、以下の発明が提供される。
〔A17〕被験者から採取された体液試料において、TMEM-180を有するエクソソームの量を検出する工程を含む、がんの検査方法。
〔A18〕上記〔A17〕に記載の方法であって、TMEM-180を有するエクソソームの量を検出する工程が、TMEM-180に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを用いて行われる、方法。
〔A21〕上記〔A18〕に記載の方法であって、TMEM-180を有するエクソソームの量を検出する工程が、上記〔3〕から〔24〕のいずれか1項に記載の抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントを用いて行われる、方法。
〔A22〕がんを有する対象において前記がんを処置することに用いる医薬組成物であって、TMEM-180に結合する抗体を含み、前記対象は、体液試料からTMEM-180が検出された対象である、医薬組成物。
[0008]
本発明者らはまた、1361クローン抗体から非特異的吸着が低減された1361-5クローン抗体を得た。従って、本発明は、以下の発明をも提供する。
〔A1〕transmembrane protein 180(TMEM-180)に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
[1]重鎖CDR1:NYWMT(配列番号:171);
重鎖CDR2:SITNTGGSTAYPDSV(配列番号:172);及び
重鎖CDR3:AGYSSYPDYFDY(配列番号:173)を含む重鎖可変領域と、
軽鎖CDR1:KAGQNIYNYLA(配列番号:174);
軽鎖CDR2:NANSLQT(配列番号:175);及び
軽鎖CDR3:QQYSSGWT(配列番号:176)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、または、
[2]TMEM-180に対する結合において上記[1]に記載の抗体と競合する抗体。
〔A2〕重鎖可変領域(配列番号:177)及び軽鎖可変領域(配列番号:178)を含む、上記〔A1〕に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
〔A3〕重鎖(配列番号:180)及び軽鎖(配列番号:182)を有する、上記〔A1〕または〔A2〕に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
〔A4〕Fc領域に1以上のN-結合型糖鎖が結合し、該N-結合型糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない、上記〔A1〕~〔A3〕のいずれかに記載の抗体。
〔A5〕上記〔A1〕~〔A4〕のいずれかに記載の抗体を含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物。
〔A6〕上記〔A1〕~〔A4〕のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、がんを診断することに用いるための組成物。
〔A7〕上記〔A1〕~〔A4〕のいずれかに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む、がんを診断することに用いるための診断キット。
〔A8〕TMEM-180を発現しているがんを対象とする、上記〔A5〕に記載の医薬組成物。
〔A9〕大腸がんを対象とする、上記〔A5〕に記載の医薬組成物。
〔A10〕上記〔A1〕~〔A4〕のいずれかに記載の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のいずれか1つをコードする核酸。
〔A11〕上記〔A1〕~〔A4〕のいずれかに記載の重鎖及び軽鎖のいずれか1つをコードする核酸。
〔A12〕上記〔A10〕または〔A11〕に記載の核酸を含む発現ベクター。
〔A13〕上記〔A12〕に記載の発現ベクターを含む形質転換体。
〔A14〕被検者から採取された試料中のTMEM-180量を上記〔A1〕~〔A4〕のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを用いて測定する工程を含む、がんの検査方法。
〔A15〕大腸がんを対象とする、上記〔A14〕に記載のがんの検査方法。
〔A16〕治療後の再発又は転移の検査に用いられる、上記〔A14〕または〔A15〕のがんの検査方法。
〔A19〕上記〔A18〕に記載の方法であって、TMEM-180を有するエクソソームの量を検出する工程が、上記〔A1〕から〔A4〕のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを用いて行われる、方法。
〔A20〕ステージ1または2のがんを検出する方法であって、被検者から採取された試料中のTMEM-180量を測定する工程を含む、方法。
〔A23〕ステージ1または2のがんを検出するための、上記〔A17〕から〔A19〕のいずれか1項に記載の方法。
〔A24〕がんが、大腸がんである、上記〔A17〕から〔A23〕のいずれか1項に記載の方法。
〔B1〕抗TMEM180抗体と細胞傷害剤との抗体薬物コンジュゲートを含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物。
〔B2〕抗TMEM180抗体が、
[1]重鎖CDR1:NYWMT(配列番号:171);
重鎖CDR2:SITNTGGSTAYPDSV(配列番号:172);及び
重鎖CDR3:AGYSSYPDYFDY(配列番号:173)を含む重鎖可変領域と、
軽鎖CDR1:KAGQNIYNYLA(配列番号:174);
軽鎖CDR2:NANSLQT(配列番号:175);及び
軽鎖CDR3:QQYSSGWT(配列番号:176)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、または、
[2]TMEM-180に対する結合において上記[1]に記載の抗体と競合する抗体
である、上記〔B1〕に記載の医薬組成物。
〔B3〕抗TMEM180抗体が、
重鎖(配列番号:180)及び軽鎖(配列番号:182)を有する、上記〔B2〕に記載の医薬組成物。
〔B4〕抗TMEM180抗体が、
[1]重鎖CDR1:DYWVS(配列番号:72);
重鎖CDR2:EIYPNSGATNFNENFK(配列番号:73);及び
重鎖CDR3:DGTMGIAYYFDY(配列番号:74)を含む重鎖可変領域と、
軽鎖CDR1:KASQNINRYLN(配列番号:75);
軽鎖CDR2:NANSLQT(配列番号:76);及び
軽鎖CDR3:LQHNSWPYT(配列番号:77)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、または、
[2]TMEM-180に対する結合において上記[1]に記載の抗体と競合する抗体
である、上記〔B1〕に記載の医薬組成物。
〔B5〕抗体と細胞傷害剤とが、開裂性リンカーで連結されている、上記〔B1〕~〔B4〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔B6〕開裂性リンカーが、体内でペプチダーゼにより開裂するペプチドリンカーであるか、ヒドラゾンリンカーであるか、または、カルバメート結合若しくはエステル結合を含むリンカーである、上記〔B5〕に記載の医薬組成物。
〔B7〕開裂性リンカーが、バリン-シトルリンまたはフェニルアラニン-リジンのジペプチドを含むリンカーである、上記〔B6〕に記載の医薬組成物。
〔B8〕開裂性リンカーが、バリン-シトルリンリンカーである、上記〔B7〕に記載の医薬組成物。
〔B9〕開裂性リンカーが、ポリエチレングリコールブロックとバリン-シトルリンブロックとを含む(例えば、Mal-PEG
12-Val-Cit-PABCを含む)、上記〔B8〕に記載の医薬組成物。
〔B10〕細胞傷害剤が、モノメチルアウリスタチンEである、上記〔B1〕~〔B9〕、特に〔B9〕に記載の医薬組成物。
〔B11〕抗体が上記〔1〕~〔23〕および〔A1〕に記載のいずれかの抗体である、〔B9〕または〔B10〕に記載の医薬組成物。
〔B12〕抗TMEM180抗体と細胞傷害剤との抗体薬物コンジュゲートを含む、医薬組成物、または
抗TMEM180抗体が、細胞傷害剤と連結した形態である、上記〔A5〕に記載の
がんを処置することに用いるための医薬組成物。
[0009]
本発明に係る抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントを含む抗がん剤は、特定のがんに特異的に発現し、正常組織には発現していないTMEM-180を標的とするので、がん細胞特異的に強い効果を得ることができる一方、副作用は少ないと考えられる。
TMEM-180は特定のがんに特異的に発現し、正常組織には発現していないので、本発明に係る抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントを用いるがんの検査方法及び検査用キットによれば、がんの検査を簡便に行うことができる。本発明に係るがんの検査方法及び検査用キットは、従来の大腸がんマーカーに比較して、特にがんの再発を感度よく検出することができる。
また、本発明に係る抗がん活性を有する物質を結合させた抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントを含む抗がん剤によれば、TMEM-180を発現するがん細胞に、その抗がん剤を特異的に送達させることができるので、抗がん活性を有する物質として毒性の強い物質も利用しやすい。
図面の簡単な説明
[0010]
[図1] 図1Aは、DNAマイクロアレイにより、ヒト大腸がん細胞株と、健常者由来の大腸粘膜細胞とにおける網羅的発現解析の結果のうち、TMEM-180の発現量を示す。図1Bは、大腸がん細胞と隣接正常大腸組織におけるTMEM-180の発現を定量性PCRで解析した結果を示す。図1C及びDは、in situ hybridizationにより、がん部及び正常部におけるTMEM-180の発現を調べた結果を示す。
[図2] 図2Aは、データベースを用いて、様々な正常組織におけるTMEM-180の発現を調べた結果を示す。図2Bは、図2Aと同様の方法で、TMEM-180と従来抗がん剤の標的とされている分子について、さらに微量の発現を調べた結果を示す。
[図3] 図3は、大腸がん、脳腫瘍、血液がんの各種細胞株について、98クローン、101クローン、及び212クローン抗TMEM-180抗体を用いて行ったフローサイトメトリー解析の結果を示す。
[図4] 図4は、98クローン、101クローン、及び212クローン抗TMEM-180抗体による大腸がん細胞に対する蛍光免疫染色の結果を示す。なお、各クローンの抗体濃度は揃えていない。
[図5] 図5は、98クローンラットIgM抗体と98クローンラット-ヒトキメラ抗体について、DLD-1大腸がん株とそのTMEM-180ノックアウト株に対する反応性をフローサイトメトリーで調べた結果を示す。
[図6] 図6は、98クローンラットIgM抗体によりヒト大腸がんと近接正常部を染色した結果を示す。
[図7] 図7は、98クローンラットIgM抗体産生ハイブリドーマ培養上清による細胞障害性試験の結果を示す。ハイブリドーマ培養上清中の抗体濃度は、IgM特異的抗体ELISAで測定した。
[図8] 図8は、101クローンラットIgM抗体産生ハイブリドーマ培養上清による細胞障害性試験の結果を示す。ハイブリドーマ培養上清中の抗体濃度は、IgM特異的抗体ELISAで測定した。
[図9] 図9は、がん細胞培養上清中のTMEM-180タンパク質濃度を測定した結果を示す。
[図10] 図10は、ステージ4大腸がん患者4名について、血漿中のTMEM-180タンパク質濃度を測定した結果を示す。また、図中右の表に、同じ患者に由来する検体におけるCEA値の測定結果を示す。
[図11] 図11は、ステージ3大腸がん患者3名について、術前、術後における血漿中のTMEM-180タンパク質濃度を測定した結果を示す。
[図12] 図12は、各ステージの大腸がん患者について、術前、術後、及び再発時における血漿中のTMEM-180タンパク質濃度及びCEA濃度を測定した結果を示す。
[図13] 図13は、1361-5抗体が正常皮膚組織を認識しないことを示す。
[図14] 図14は、1361-5抗体が皮膚以外の正常組織についても認識しないことを示す。
[図15] 図15は、1361-5抗体が大腸がん細胞株DLD-1の表面に結合することを示す。
[図16] 図16は、1361-5抗体が大腸がん細胞株DLD-1の表面に結合することを示す。
[図17] 図17は、1361-5抗体が大腸がん組織アレイの組織を良好に染色したことを示す。
[図18] 図18は、大腸がん細胞株DLD-1の培養上清中に存在するエクソソームがTMEM-180タンパク質を含むことを示す。図中、固相側抗体とは、プレート表面に固相化された抗体を示し、エクソソームの検出は抗CD9抗体を用いて行った。
[図19] 図19は、大腸がん細胞株DLD-1のTMEM-180強制発現株の培養上清をゲル濾過して得られた画分中における98抗体陽性成分の量を示す。
[図20A] 図20Aは、リツキシマブによる大腸がん細胞株DLD-1に対するADCC活性の評価結果を示す。
[図20B] 図20Bは、1361-5抗体による大腸がん細胞株DLD-1に対するADCC活性の評価結果を示す。
[図20C] 図20Cは、1361-5抗体のFc改変抗体(改変体1)による大腸がん細胞株DLD-1に対するADCC活性の評価結果を示す。
[図20D] 図20Dは、1361-5抗体のFc改変抗体(改変体2)による大腸がん細胞株DLD-1に対するADCC活性の評価結果を示す。
[図21] 図21は、ヒト大腸がん細胞移植マウスモデルにおいて、ヒトIgG化669抗体が強い抗がん作用を有することを示す。図中、「Erb」は、Erbitux(アービタックス)投与群における結果を示す。
[図22] 図22は、大腸がん患者の血清(ステージ1~4までの51例)中に含まれるエクソソームがTMEM-180陽性であることを示す。
[図23] 図23は、エクソソーム表面にTMEM-180が表出していることを示す電子顕微鏡像である。
[図24] 図24は、実施例C15で作製した抗体薬物コンジュゲート(ADC)の模式図である。
[図25] 図25は、TMEM180抗体の細胞内への移行を示す図である。
[図26] 図26は、実施例C15で作製したADCによる細胞殺傷作用を示す図である。
[図27] 図27は、TMEM180ノックアウトマウスの作製に用いたガイドRNA箇所と破壊された遺伝子の配列を示す図である。
発明を実施するための形態
[0011]
(抗TMEM-180抗体及び抗がん剤)
本発明に係る抗がん剤の一態様は、抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントを有効成分として含む。
本明細書において抗TMEM-180抗体とは、Transmembrane protein-180(TMEM-180)に結合する抗体をいい、TMEM-180に特異的に結合し得る。本明細書おいて、TMEM-180という場合、どのような動物に由来するTMEM-180であってもよく、また、抗がん剤の標的となり、がんの検査方法の指標となる限り、その変異体であってもよい。TMEM-180の一例として、ヒトTMEM-180のアミノ酸配列を配列番号:17に示す。
[0012]
本明細書において「抗体」は、免疫グロブリンを意味し、一対のジスルフィド結合で安定化された2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)が会合した構造をとるタンパク質をいう。重鎖は、重鎖可変領域VH、重鎖定常領域CH1、CH2、CH3、及びCH1とCH2の間に位置するヒンジ領域からなり、軽鎖は、軽鎖可変領域VLと軽鎖定常領域CLとからなる。この中で、VHとVLからなる可変領域断片(Fv)が、抗原結合に直接関与し、抗体に多様性を与える領域である。また、VL、CL、VH、CH1からなる抗原結合領域をFab領域と呼び、ヒンジ領域、CH2、CH3からなる領域をFc領域と呼ぶ。
可変領域のうち、直接抗原と接触する領域は特に変化が大きく、相補性決定領域(complementarity-determining region: CDR)と呼ばれる。CDR以外の比較的変異の少ない部分をフレームワーク(framework region: FR)と呼ぶ。軽鎖と重鎖の可変領域には、それぞれ3つのCDRが存在し、それぞれN末端側から順に、重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3と呼ばれる。
[0013]
本明細書において「処置」とは、治療または予防を意味する。従って、本明細書において「がんを処置することに用いる医薬組成物」とは、がんを治療または予防することに用いる医薬組成物を意味し、抗がん剤を一例として含む意味で用いられる。
[0014]
本発明に係る抗TMEM-180抗体は、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよい。また、本発明の抗TMEM-180抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEのいずれのアイソタイプであってもよい。マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ニワトリなどの非ヒト動物を免疫して作製したものであってもよいし、組換え抗体であってもよく、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト化抗体等であってもよい。キメラ型抗体とは、異なる種に由来する抗体の断片が連結された抗体をいう。
「ヒト化抗体」とは、非ヒト由来の抗体に特徴的なアミノ酸配列で、ヒト抗体の対応する位置を置換した抗体を意味し、例えば、マウス又はラットを免疫して作製した抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を有し、重鎖及び軽鎖のそれぞれ4つのフレームワーク領域(FR)を含むその他のすべての領域がヒト抗体に由来するものが挙げられる。かかる抗体は、CDR移植抗体と呼ばれる場合もある。用語「ヒト化抗体」は、ヒトキメラ抗体を含む場合もある。
「ヒトキメラ抗体」は、非ヒト由来の抗体において、非ヒト由来の抗体の定常領域がヒトの抗体の定常領域に置換されている抗体である。ヒトキメラ抗体では、ADCC活性を高める観点では、例えば、定常領域に用いるヒトの抗体のサブタイプはIgG1とすることができる。
[0015]
本明細書において、「抗原結合フラグメント」とは、抗体のフラグメントであって、TMEM-180に結合するフラグメントをいう。具体的には、VL、VH、CL及びCH1領域からなるFab;2つのFabがヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結されているF(ab')2;VL及びVHからなるFv;VL及びVHを人工のポリペプチドリンカーで連結した一本鎖抗体であるscFvのほか、diabody型、scDb型、tandem scFv型、ロイシンジッパー型などの二重特異性抗体等が挙げられるが、これらに限定されない。
[0016]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する。
これらのCDRは、後述する実施例に示す98クローン抗TMEM-180抗体のCDR配列である。
重鎖CDR1:GFSLTRYNVH(配列番号:1)
重鎖CDR2:VIWTGGSTD(配列番号:2)
重鎖CDR3:DLGY(配列番号:3)
軽鎖CDR1:KSSQSLKYRDGKTYLN(配列番号:4)
軽鎖CDR2:QVSKLDS(配列番号:5)
軽鎖CDR3:CQGSYSPHT(配列番号:6)
[0017]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する。
これらのCDRは、後述する実施例に示す101クローン抗TMEM-180抗体のCDR配列である。
重鎖CDR1:GFSLTSYYMQ (配列番号:7)
重鎖CDR2:FIRSGGSTE (配列番号:8)
重鎖CDR3:AFYGGYYFDY (配列番号:9)
軽鎖CDR1:KASQNVGSNVD (配列番号:10)
軽鎖CDR2:KASNRYT (配列番号:11)
軽鎖CDR3:MQSNTKYT (配列番号:12)
[0018]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する。
これらのCDRは、後述する実施例に示す212クローン抗TMEM-180抗体のCDR配列である。
重鎖CDR1:GFTFSDYAMA(配列番号:40)
重鎖CDR2:TIIYDGSST(配列番号:41)
重鎖CDR3:HWYWYFDF(配列番号:42)
軽鎖CDR1:LASEGISNDLA(配列番号:43)
軽鎖CDR2:AASRLQD(配列番号:44)
軽鎖CDR3:QQSYKYPLT(配列番号:45)
[0019]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する。
これらのCDRは、後述する実施例に示す129クローン抗TMEM-180抗体のCDR配列である。
重鎖CDR1:DCALN(配列番号:48)
重鎖CDR2:WINTQTGKPTYADDF(配列番号:49)
重鎖CDR3:EDYGYFDY(配列番号:50)
軽鎖CDR1:QASQNINKFIA(配列番号:51)
軽鎖CDR2:YTSTLVS(配列番号:52)
軽鎖CDR3:LQYDNLRT(配列番号:53)
[0020]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する。
これらのCDRは、後述する実施例に示す382クローン抗TMEM-180抗体のCDR配列である。
重鎖CDR1:NYGMH(配列番号:56)
重鎖CDR2:SISPSGGSTYYRDSV(配列番号:57)
重鎖CDR3:SASITAYYYVMDA(配列番号:58)
軽鎖CDR1:KASQNVGSNVD(配列番号:59)
軽鎖CDR2:KASNRYT(配列番号:60)
軽鎖CDR3:MQSNSYPPT(配列番号:61)
[0021]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する。
これらのCDRは、後述する実施例に示す1361クローン抗TMEM-180抗体のCDR配列である。
重鎖CDR1:NYWMT(配列番号:64)
重鎖CDR2:SITNTGGSTYYPDSV(配列番号:65)
重鎖CDR3:AGYSSYPDYFDY(配列番号:66)
軽鎖CDR1:KAGQNIYNYLA(配列番号:67)
軽鎖CDR2:NANSLQT(配列番号:68)
軽鎖CDR3:QQYSSGWT(配列番号:69)
[0022]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する。
これらのCDRは、後述する実施例に示す669クローン抗TMEM-180抗体のCDR配列である。
重鎖CDR1:DYWVS(配列番号:72)
重鎖CDR2:EIYPNSGATNFNENFK(配列番号:73)
重鎖CDR3:DGTMGIAYYFDY(配列番号:74)
軽鎖CDR1:KASQNINRYLN(配列番号:75)
軽鎖CDR2:NANSLQT(配列番号:76)
軽鎖CDR3:LQHNSWPYT(配列番号:77)
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、上記CDRのすべてを有する。本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、上記CDRのすべてを有するヒト化抗体である。
[0023]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する。
これらのCDRは、後述する実施例に示す699クローン抗TMEM-180抗体のCDR配列である。
重鎖CDR1:SYDIS(配列番号:80)
重鎖CDR2:AINPGSGGTGYNEKFKGK(配列番号:81)
重鎖CDR3:IHGGYRYWFAY(配列番号:82)
軽鎖CDR1:RASSSVSYMH(配列番号:83)
軽鎖CDR2:DTSKLAS(配列番号:84)
軽鎖CDR3:LQRSSYPPT(配列番号:85)
[0024]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する。
これらのCDRは、後述する実施例に示す1052クローン抗TMEM-180抗体のCDR配列である。
重鎖CDR1:SNGVG(配列番号:88)
重鎖CDR2:TIWTGGGTNYNSGVQS(配列番号:89)
重鎖CDR3:EYMGFDY(配列番号:90)
軽鎖CDR1:KASQNVGINVG(配列番号:91)
軽鎖CDR2:WASNRDT(配列番号:92)
軽鎖CDR3:LQHNSYPRT(配列番号:93)
[0025]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する。
これらのCDRは、後述する実施例に示す1105クローン抗TMEM-180抗体のCDR配列である。
重鎖CDR1:SNGVG(配列番号:96)
重鎖CDR2:TIWSGGGTNYNSAVQS(配列番号:97)
重鎖CDR3:EEKGFAY(配列番号:98)
軽鎖CDR1:KASQNVGINVG(配列番号:99)
軽鎖CDR2:WASNRDT(配列番号:100)
軽鎖CDR3:LQHNSYPRA(配列番号:101)
[0026]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、以下の6つのCDRの少なくとも1つを有する。
これらのCDRは、後述する実施例に示す1361-5クローン抗体のCDR配列である。
重鎖CDR1:NYWMT(配列番号:171)
重鎖CDR2:SITNTGGSTAYPDSV(配列番号:172)
重鎖CDR3:AGYSSYPDYFDY(配列番号:173)
軽鎖CDR1:KAGQNIYNYLA(配列番号:174)
軽鎖CDR2:NANSLQT(配列番号:175)
軽鎖CDR3:QQYSSGWT(配列番号:176)
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、この態様における抗体とTMEM-180に対する結合において競合する抗体である。
[0027]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、以下の6つのCDRの全てを有する。
これらのCDRは、後述する実施例に示す1361-5クローン抗体のCDR配列である。
重鎖CDR1:NYWMT(配列番号:171)
重鎖CDR2:SITNTGGSTAYPDSV(配列番号:172)
重鎖CDR3:AGYSSYPDYFDY(配列番号:173)
軽鎖CDR1:KAGQNIYNYLA(配列番号:174)
軽鎖CDR2:NANSLQT(配列番号:175)
軽鎖CDR3:QQYSSGWT(配列番号:176)
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、この態様における抗体とTMEM-180に対する結合において競合する抗体である。
[0028]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、重鎖可変領域(配列番号:177)及び軽鎖可変領域(配列番号:178)を有する。これらの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、後述する実施例に示す1361-5クローン抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域である。
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、この態様における抗体とTMEM-180に対する結合において競合する抗体である。
[0029]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、以下の重鎖(配列番号:180)及び軽鎖(配列番号:182)を有する。これらの重鎖及び軽鎖は、後述する実施例に示す1361-5クローン抗体の重鎖及び軽鎖である。
本発明に係る抗TMEM-180抗体の一態様は、この態様における抗体とTMEM-180に対する結合において競合する抗体である。
[0030]
上記の各態様において、抗TMEM-180抗体は、本発明の効果を奏する限り、6つのCDRのうちいくつを含むものであってもよいが、例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、又は6つ含むものとすることができる。
[0031]
上記の各態様において、重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3は、その少なくとも1つに、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含んでいてもよい。
[0032]
本明細書において「アミノ酸」は、その最も広い意味で用いられ、天然アミノ酸に加え、人工のアミノ酸変異体や誘導体を含む。アミノ酸は慣用的な一文字表記又は三文字表記で示される場合もある。本明細書においてアミノ酸又はその誘導体としては、天然タンパク質性L-アミノ酸;非天然アミノ酸;アミノ酸の特徴である当業界で公知の特性を有する化学的に合成された化合物などが挙げられる。非天然アミノ酸の例として、主鎖の構造が天然型と異なる、α,α-二置換アミノ酸(α-メチルアラニンなど)、N-アルキル-α-アミノ酸、D-アミノ酸、β-アミノ酸、α-ヒドロキシ酸や、側鎖の構造が天然型と異なるアミノ酸(ノルロイシン、ホモヒスチジンなど)、側鎖に余分のメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸、ホモフェニルアラニン、ホモヒスチジンなど)、及び側鎖中のカルボン酸官能基がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(システイン酸など)が挙げられるがこれらに限定されない。
[0033]
本明細書において「1から数個のアミノ酸の付加、置換又は欠失を有する」という場合、欠失、置換等されるアミノ酸の個数は、結果として得られるポリペプチドがCDRとしての機能を保持する限り特に限定されないが、例えば、1個、2個、3個又は4個とすることができる。置換又は付加されるアミノ酸は、天然のタンパク質性アミノ酸に加えて、非天然のアミノ酸又はアミノ酸アナログであってもよい。アミノ酸の欠失、置換又は付加の位置は、CDRとしての機能が保持される限り、もとのCDR配列のどこであってもよい。
[0034]
上記の抗TMEM-180抗体の各態様において、重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3の少なくとも1つが、もとの重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するものとなっていてもよい。
[0035]
本明細書において、「80%以上の同一性を有する」とは、元の配列を有するポリペプチドのアミノ酸配列と変異した配列を有するポリペプチドのアミノ酸配列の一致が最大になるようにアライメントしたときに、共通するアミノ酸残基の数が、元の配列のアミノ酸数の80%以上であることを意味する。
同一性は、80%以上であって、CDRとしての機能を保持する限り何%であってもよく、例えば85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上とすることができる。
[0036]
重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列にアミノ酸を付加、置換、又は欠失させたアミノ酸配列からなるCDRや、重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するCDRは、部位特異的変異導入法、ランダム変異導入法、チェーンシャフリング法、CDRウォーキング法などの公知の方法を用いて作製され得る。これらの方法によれば、ファージディスプレイ法によってCDRに種々の変異を有する抗体又は抗体断片をファージ表面に提示させ、抗原を使用してスクリーニングすることにより、より親和性が成熟したCDRを得られることが当業者によく知られている(例えば、Wu et al., PNAS, 95:6037-6042(1998); Schier, R. et al., J. Mol. Bio. 263:551-567(1996); Schier, R. et al., J. Mol. Biol. 255:28-43(1996); Yang, W.P. et al., J. Mol. Biol., 254:392-403(1995)。)。
[0037]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:13で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:13で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;又は、
配列番号:13で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、を含む。
配列番号:13で表されるアミノ酸配列は、98クローン抗TMEM-180抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0038]
本明細書において、重鎖又は軽鎖のアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失という場合、付加、置換、又は欠失するアミノ酸の数は、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個とすることができる。その他の用語は、上述したとおりである。
[0039]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:14で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:14で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;又は、
配列番号:14で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、を含む。
配列番号:14で表されるアミノ酸配列は、98クローン抗TMEM-180抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0040]
本発明に係る抗TMEM-180抗体は、配列番号:13で表されるアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号:13で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号:13で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、
配列番号:14で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号:14で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、配列番号:14で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含んでいてもよい。
[0041]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:15で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;又は、
配列番号:15で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、を含む。
配列番号:15で表されるアミノ酸配列は、101クローン抗TMEM-180抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0042]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:16で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:16で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;又は、
配列番号:16で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、を含む。
配列番号:16で表されるアミノ酸配列は、101クローン抗TMEM-180抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0043]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、配列番号:15で表されるアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号:15で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号:15で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、
配列番号:16で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号:16で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、配列番号:16で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含んでいてもよい。
[0044]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:46で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:46で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;又は、
配列番号:46で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、を含む。
配列番号:46で表されるアミノ酸配列は、212クローン抗TMEM-180抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0045]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:47で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:47で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;又は、
配列番号:47で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、を含む。
配列番号:47で表されるアミノ酸配列は、212クローン抗TMEM-180抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0046]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、配列番号:46で表されるアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号:46で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号:46で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、
配列番号:47で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号:47で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、配列番号:47で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含んでいてもよい。
[0047]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:54で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:54で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;又は、
配列番号:54で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、を含む。
配列番号:54で表されるアミノ酸配列は、129クローン抗TMEM-180抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0048]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:55で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:55で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;又は、
配列番号:55で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、を含む。
配列番号:55で表されるアミノ酸配列は、129クローン抗TMEM-180抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0049]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、配列番号:54で表されるアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号:54で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号:54で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、
配列番号:55で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号:55で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、配列番号:55で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含んでいてもよい。
[0050]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:62で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:62で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;又は、
配列番号:62で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、を含む。
配列番号:62で表されるアミノ酸配列は、382クローン抗TMEM-180抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0051]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:63で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:63で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;又は、
配列番号:63で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、を含む。
配列番号:63で表されるアミノ酸配列は、382クローン抗TMEM-180抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0052]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、配列番号:62で表されるアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号:62で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号:62で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、
配列番号:63で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号:63で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、配列番号:63で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含んでいてもよい。
[0053]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:70で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:70で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;又は、
配列番号:70で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、を含む。
配列番号:70で表されるアミノ酸配列は、1361クローン抗TMEM-180抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0054]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:71で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:71で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;又は、
配列番号:71で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、を含む。
配列番号:71で表されるアミノ酸配列は、1361クローン抗TMEM-180抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0055]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、配列番号:70で表されるアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号:70で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号:70で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、
配列番号:71で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号:71で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、配列番号:71で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含んでいてもよい。
[0056]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:78で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:78で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;又は、
配列番号:78で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、を含む。
配列番号:78で表されるアミノ酸配列は、669クローン抗TMEM-180抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0057]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:79で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:79で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;又は、
配列番号:79で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、を含む。
配列番号:79で表されるアミノ酸配列は、669クローン抗TMEM-180抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0058]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、配列番号:78で表されるアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号:78で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号:78で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、
配列番号:79で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号:79で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、配列番号:79で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含んでいてもよい。
[0059]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:86で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:86で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;又は、
配列番号:86で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、を含む。
配列番号:86で表されるアミノ酸配列は、699クローン抗TMEM-180抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0060]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:87で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:87で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;又は、
配列番号:87で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、を含む。
配列番号:87で表されるアミノ酸配列は、699クローン抗TMEM-180抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0061]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、配列番号:86で表されるアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号:86で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号:86で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、
配列番号:87で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号:87で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、配列番号:87で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含んでいてもよい。
[0062]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:94で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:94で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;又は、
配列番号:94で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、を含む。
配列番号:94で表されるアミノ酸配列は、1052クローン抗TMEM-180抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0063]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:95で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:95で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;又は、
配列番号:95で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、を含む。
配列番号:95で表されるアミノ酸配列は、1052クローン抗TMEM-180抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0064]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、配列番号:94で表されるアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号:94で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号:94で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、
配列番号:95で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号:95で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、配列番号:95で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含んでいてもよい。
[0065]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:102で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:102で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;又は、
配列番号:102で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、を含む。
配列番号:102で表されるアミノ酸配列は、1105クローン抗TMEM-180抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0066]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:103で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:103で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;又は、
配列番号:103で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、を含む。
配列番号:103で表されるアミノ酸配列は、1105クローン抗TMEM-180抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0067]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、配列番号:102で表されるアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号:102で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号:102で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、
配列番号:103で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号:103で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、配列番号:103で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含んでいてもよい。
[0068]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:180で表されるアミノ酸配列を含む重鎖;
配列番号:180で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖;又は、
配列番号:180で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、を含む。
配列番号:180で表されるアミノ酸配列は、1361-5クローン抗TMEM-180抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0069]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、
配列番号:182で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
配列番号:182で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖;又は、
配列番号:182で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖、を含む。
配列番号:182で表されるアミノ酸配列は、1361-5クローン抗TMEM-180抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
[0070]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、配列番号:180で表されるアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号:180で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号:180で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、
配列番号:182で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号:182で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の付加、置換、又は欠失を含むアミノ酸配列を含む軽鎖、又は、配列番号:182で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含んでいてもよい。
[0071]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の別の一態様は、本発明に係る抗TMEM-180抗体と、TMEM-180との結合において競合する抗体であり得る。この特定の態様における一態様では、本発明に係る抗TMEM-180抗体は、重鎖可変領域のCDRとして配列番号64~66のアミノ酸配列を有し、かつ軽鎖可変領域のCDRとして配列番号67~69のアミノ酸配列を有する抗体ではない抗体とすることができる。
本発明の抗体または本発明の抗体とTMEM-180との結合において競合する抗体において、Fc領域は、1以上のアミノ酸置換を有していてもよい。例えば、重鎖は、特に限定されないが配列番号180の262番目のアミノ酸に対応するアミノ酸においてセリンからアスパラギン酸へのアミノ酸置換、配列番号180の353番目のアミノ酸に対応するアミノ酸においてアラニンからロイシンへのアミノ酸置換、および配列番号180の355番目のアミノ酸に対応するアミノ酸においてイソロイシンからグルタミン酸へのアミノ酸置換を有する重鎖としてもよい。また、例えば、重鎖は、特に限定されないが配列番号180の262番目のアミノ酸に対応するアミノ酸においてセリンからアスパラギン酸へのアミノ酸置換、配列番号180の355番目のアミノ酸に対応するアミノ酸においてイソロイシンからグルタミン酸へのアミノ酸置換、および配列番号180の356番目のアミノ酸に対応するグルタミン酸からアラニンへのアミノ酸置換を有する重鎖としてもよい。
[0072]
本発明に係る抗TMEM-180抗体は、Fc領域に1以上のN-結合型糖鎖が結合し、該N-結合型糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない抗体であってもよい。
例えばIgG抗体のFc領域には、N-結合型糖鎖の結合部位が2ヶ所存在し、この部位に複合型糖鎖が結合している。N-結合型糖鎖とは、Asn-X-Ser/Thr配列のAsnに結合する糖鎖をいい、共通した構造Man3GlcNAc2-Asnを有する。非還元末端の2つのマンノース(Man)に結合する糖鎖の種類により、高マンノース型、混成型、及び複合型等に分類される。
N-結合型糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)にはフコースが結合しうるが、このフコースが結合していない場合、結合している場合に比較してADCC活性が著しく上昇することが知られている。このことは例えば、国際公開第2002/031140号パンフレットに記載されており、その開示は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
ADCC活性が著しく向上することにより、抗体を医薬として用いる場合に投与量を少なくすることができるので、副作用を軽減させることが可能であると共に、治療費も低減させることができる。
[0073]
本発明に係る抗がん剤の一態様は、抗がん活性を有する物質を結合させた抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントを有効成分として含む。このような物質は抗体薬物コンジュゲート(ADC)ともよばれる。この態様において、抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントは、それ自体抗がん活性を有するものであってもよいし、TMEM-180への結合能のみを有し抗がん活性を有しないものであってもよい。
[0074]
本明細書において、「抗がん活性を有する物質」とは、腫瘍サイズの低下(遅延又は停止)、腫瘍の転移の阻害、腫瘍増殖の阻害(遅延又は停止)、及びがんと関連する一つ又は複数の症状の緩和、の少なくとも1つを生じさせる物質を意味する。具体的には、毒素、抗がん剤、ラジオアイソトープを挙げることができるがこれらに限定されない。
[0075]
抗がん活性を有する毒素としては、例えば、緑膿菌外毒素(PE)又はその細胞障害性フラグメント(例えばPE38)、ジフテリア毒素、リシンA等が挙げられる。抗がん活性を有する毒素は、抗TMEM-180抗体が認識する細胞、即ちTMEM-180を発現しているがん細胞のみに毒性を発揮するので、周囲の細胞に悪影響を与えず、特異的に効果を得られるという利点がある。
[0076]
抗がん剤としては、例えば、アドリアマイシン、ダウノマイシン、マイトマイシン、シスプラチン、ビンクリスチン、エピルビシン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、アクラシノマイシン、ナイトロジェン・マスタード、サイクロフォスファミド、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、タモキシフェン、モノメチルアウリスタチンE、SN-38、デキサメタゾン等の低分子化合物や、免疫担当細胞を活性化するサイトカイン(例えば、ヒトインターロイキン2、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヒトマクロファージコロニー刺激因子、ヒトインターロイキン12)等のタンパク質が挙げられる。
[0077]
抗がん活性を有するラジオアイソトープとしては、
32P、
14C、
125I、
3H、
131I、
211At、
90Y等が挙げられる。
[0078]
抗がん活性を有する物質は、公知の方法又はそれに準ずるによって抗TMEM-180抗体に直接又はリンカー(例えば、開裂性リンカー)を介して結合させることができる。抗がん活性を有する物質をミセルやリポソーム等の担体に封入し、当該リポソームを抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントに結合させてもよい。
[0079]
上記抗がん活性を有する物質が蛋白質やポリペプチドの場合は、本発明の抗TMEM-180抗体をコードする核酸(後述)と抗がん活性を有する物質をコードするDNAを連結し、適当な発現ベクターに挿入することにより、抗がん活性を有する物質と抗TMEM-180抗体との融合タンパク質として発現させてもよい。
[0080]
本明細書において「抗がん剤」は、腫瘍サイズの低下(遅延又は停止)、腫瘍の転移の阻害、腫瘍増殖の阻害(遅延又は停止)、及びがんと関連する一つ又は複数の症状の緩和、の少なくとも1つを生じさせる医薬を意味する。本明細書において、「抗がん剤」は、「がんを処置することに用いるための医薬組成物」と相互互換的に用いられる。
[0081]
本発明に係る抗がん剤は、有効成分に加えて薬学的に許容できる担体や添加物を含んでいてもよい。
担体及び添加物の例としては、水、食塩水、リン酸緩衝液、デキストロース、グリセロール、エタノール等薬学的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ぺクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、界面活性剤等が挙げられるがこれらに限定されない。
[0082]
本発明の医薬組成物は、様々な形態、例えば、液剤(例えば注射剤)、分散剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末剤、坐剤などとすることができる。好ましい態様は、注射剤であり、非経口(例えば、静脈内、経皮、腹腔内、筋内)で投与することが好ましい。
[0083]
本発明の医薬組成物は、TMEM-180を発現しているがんの治療に有効である。TMEM-180を発現しているがんには、大腸がんと脳腫瘍が含まれるがこれらに限定されない。がんとしては、例えば、固形がんが挙げられ、例えば、大腸がん、脳腫瘍、胃がん、膵がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、および膀胱がんが挙げられる。
[0084]
本発明の医薬組成物は、がんを有する対象において当該がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、TMEM-180に結合する抗体を含む、組成物である。本発明のある態様では、処置対象は、TMEM-180を発現しているがんを有する対象であり得る。本発明のある態様では、処置対象は、体液試料からTMEM-180が検出された対象であり得る。本発明のある態様では、処置対象は、体液試料からTMEM-180を表出するエクソソームが検出された対象であり得る。
[0085]
本発明は、本発明に係る抗がん剤を投与することを含むがんの治療方法も包含する。すなわち、本発明のある側面では、がんを有する対象において当該がんを処置する方法であって、該対象にTMEM-180に結合する抗体を投与することを含む、方法が提供される。
[0086]
本発明の抗がん剤の投与量は、例えば、抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントの投与量が、0.025~50mg/kg、好ましくは0.1~0mg/kgであり、より好ましくは0.1~25mg/kg、さらに好ましくは0.1~10mg/kg又は0.1~3mg/kgとなる量とすることができるが、これに限定されない。
[0087]
本発明に係る抗がん剤は、他のがん治療法と組合せてもよい。他のがん治療法としては、上述した別の抗がん剤の投与、放射線療法、外科的手術、がんワクチン療法などが挙げられる。
本明細書において「がんワクチン療法」とは、がん抗原を患者に投与して、又は患者由来の免疫細胞を体外においてがん抗原で刺激してから患者に戻すことによって、がん細胞に対する患者自身の免疫力を高めるがんの治療又は予防方法である。がんワクチン療法に用いられるがん抗原の一例として、がん細胞特異的に発現するタンパク質に由来するペプチド(がん抗原由来ペプチド)が用いられる。
[0088]
がん抗原由来ペプチドは、樹状細胞などの抗原提示細胞表面のヒト白血球抗原(HLA)分子に結合して、細胞傷害性T細胞(CTL)に提示されことによってCTLを活性化する。活性化されたCTLは、当該ペプチドと同じ抗原を発現する癌細胞を攻撃して排除する。HLA分子は遺伝的多様性が高く、ヒトによって遺伝子型が異なる。あるがん抗原タンパク質に由来し、特定の遺伝子型のHLA分子に結合する可能性のあるペプチドの配列は、公知のソフトウエア等で決定することができる。
[0089]
例えば、TMEM-180タンパク質に由来するペプチドであって、日本人に多いHLA type A2又はHLA type A24に結合する可能性のあるペプチドは以下のとおりである(米国国立衛生研究所 Bioinformatics and Molecular Analysis Sectionが公開しているHLAPeptide Binding Predictions(http://www-bimas.cit.nih.gov/cgi-bin/molbio/ken_parker_comboform)を使用して予測した。)。表中「Start Ppositions」は、配列番号:17に示すアミノ酸配列における位置である。
これらのペプチドを用いたがんワクチン療法によれば、TMEM-180タンパク質を発現するがん細胞に対するCTLによる攻撃を活性化することができるので、TMEM-180を標的とする本発明に係る抗がん剤と併用することにより、がん細胞を効率よく攻撃することができ、がんを予防又は治療することが可能である。ペプチドを含むがんワクチン組成物は、公知の方法に従って、当業者が調製することができる。
[0090]
[表1]
[表2]
[0091]
(核酸)
本発明は、本発明に係る抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸も包含する。核酸は、天然の核酸であっても人工の核酸であってもよく、例えば、DNA、RNA、DNAとRNAのキメラが挙げられるがこれらに限定されない。抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸の塩基配列は、当業者が公知の方法又はそれに準ずる方法に従って決定することができ、公知の方法又はそれに準ずる方法で調製することができる。
本発明に係る抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸としては、例えば、98クローン抗TMEM-180抗体の重鎖又は軽鎖をコードするDNAを含む核酸、98クローン抗TMEM-180抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のいずれかをコードするDNAを含む核酸、101クローン抗TMEM-180抗体の重鎖又は軽鎖をコードするDNAを含む核酸、101クローン抗TMEM-180抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のいずれかをコードするDNAを含む核酸、212クローン抗TMEM-180抗体の重鎖又は軽鎖をコードするDNAを含む核酸、及び、212クローン抗TMEM-180抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のいずれかをコードするDNAを含む核酸が挙げられるがこれらに限定されない。
[0092]
本発明に係る抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸としてはまた、例えば、1361-5クローン抗TMEM-180抗体の重鎖又は軽鎖をコードするDNAを含む核酸、1361-5クローン抗TMEM-180抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のいずれか(特に重鎖CDR2)をコードするDNAを含む核酸が挙げられる。
[0093]
(発現ベクター)
本発明に係る発現ベクターは、本発明に係る抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸を含む。発現ベクターは、使用する宿主細胞にあわせて適宜選択することができ、例えば、プラスミド、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、カリフラワーモザイクウイルスベクターやタバコモザイクウイルスベクターなどの植物ウイルスベクター、コスミド、YAC、EBV由来エピソームなどが挙げられる。これらの発現ベクターには、公知の方法(制限酵素を利用する方法等)で、本発明の抗TMEM-180抗体をコードする核酸を挿入することができる。
[0094]
本発明に係る発現ベクターは、さらに、抗体遺伝子の発現を調節するプロモーター、複製起点、選択マーカー遺伝子等を含むことができる。プロモーター及び複製起点は、宿主細胞とベクターの種類によって適宜選択することができる。
[0095]
(形質転換体)
本発明に係る形質転換体は、本発明に係るベクターを含む。形質転換体は、本発明のベクターを適切な宿主細胞にトランスフェクトすることによって得ることができる。宿主細胞としては、例えば、哺乳類細胞(CHO細胞、COS細胞、ミエローマ細胞、HeLa細胞、Vero細胞等)、昆虫細胞、植物細胞、真菌細胞(サッカロミセス属、アスペルギルス属等)といった真核細胞や、大腸菌(E.Coli)、枯草菌などの原核細胞を用いることができる。
[0096]
(抗体の製造方法)
本発明に係る抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントの製造方法は限定されないが、例えば、抗TMEM-180モノクローナル抗体は、TMEM-180又はその断片で免疫した非ヒト哺乳動物から抗体産生細胞を単離し、これを骨髄腫細胞等と融合させてハイブリドーマを作製し、このハイブリドーマが産生した抗体を精製することによって得ることができる。また、抗TMEM-180ポリクローナル抗体は、TMEM-180又はその断片で免疫した動物の血清から得ることができる。
免疫は、TMEM-180タンパク質を常法に従って動物に免疫することで行うことができる。免疫はまた、TMEM-180タンパク質に代えて、TMEM-180タンパク質を表出したエクソソーム用いて行ってもよい。TMEM-180タンパク質を表出したエクソソームで免疫して得た抗体は、特に限定されないが、TMEM-180タンパク質を表出したエクソソームの検出に適し得る。
[0097]
本発明に係る抗TMEM-180抗体を遺伝子組換え法で作製する場合、例えば、本発明に係る核酸を含む発現ベクターで適当な宿主を形質転換し、この形質転換体を適当な条件で培養して抗体を発現させ、公知の方法に従って単離精製すればよい。
単離精製方法としては、例えば、プロテインA等を用いたアフィニティカラム、その他のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析が挙げられ、これらを適宜組み合わせることができる。
[0098]
ヒトキメラ抗体及びヒトCDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体を産生するハイブリドーマのmRNAから抗体遺伝子をクローン化し、これをヒト抗体遺伝子の一部と遺伝子組換え技術で連結することによって作製することができる。
例えば、ヒト型キメラ抗体の場合、マウス抗体を産生するハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素によりcDNAを合成し、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(LH)をPCRでクローニングして配列を解析する。次に、一致率の高い抗体塩基配列から、リーダー配列を含む5'プライマーを作製し、5'プライマーと可変部3'プライマーによって上記cDNAから、シグナル配列から可変領域の3'末端までをPCRでクローニングする。一方で、ヒトIgG1の重鎖及び軽鎖の定常領域をクローニングし、重鎖と軽鎖それぞれについて、マウス抗体由来可変領域と、ヒト抗体由来定常領域とをPCRによるOverlapping Hanging法で連結し、増幅する。得られたDNAを適当なベクターに挿入し、これを形質転換して、ヒト型キメラ抗体を得ることができる。
[0099]
CDR移植抗体の場合、使用するマウス抗体可変部と最も相同性の高いヒト抗体可変部を選択してクローン化し、メガプライマー法を用いた部位選択的突然変異導入により、CDRの塩基配列を改変する。フレームワーク領域を構成するアミノ酸配列をヒト化すると抗原との特異的な結合ができなくなる場合には、フレームワークの一部のアミノ酸をヒト型からラット型に変換してもよい。
元の配列において、1又は2個のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するアミノ酸配列からなるCDRや、元の配列にX%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるCDRは、部位特異的変異導入法、ランダム変異導入法、チェーンシャフリング法、CDRウォーキング法などの公知の方法を用いて作製され得る。
これらの方法により、ファージディスプレイ法によってCDRに種々の変異を有する抗体又は抗体断片をファージ表面に提示させ、抗原を使用してスクリーニングすることにより、より親和性が成熟したCDRを得られることが当業者によく知られている(例えば、Wu et al., PNAS, 95:6037-6042(1998); Schier, R. et al., J. Mol. Bio. 263:551-567(1996); Schier, R. et al., J. Mol. Biol. 255:28-43(1996); Yang, W.P. et al., J. Mol. Biol., 254:392-403(1995)。)。本発明は、このような方法で成熟させたCDRを含む抗体も包含する。
[0100]
その他の抗体の製造方法として、トリコスタチンA処理ニワトリB細胞由来DT40細胞株から抗体産生株を取得するAdlib法(Seo, H. et al., Nat. Biotechnol., 6:731-736, 2002)、マウス抗体遺伝子が破壊されヒト抗体遺伝子が導入されたマウスであるKMマウスを免疫してヒト抗体を作製する方法(Itoh, K. et al., Jpn. J. Cancer Res., 92:1313-1321, 2001;Koide, A. et al., J. Mol. Biol., 284:1141-1151, 1998)等があり、これらも本発明に係る抗体の産生に応用することができる。
[0101]
本発明に係る抗TMEM-180抗体の抗原結合フラグメントは、当該フラグメントをコードするDNAを用いて上述の方法で発現させてもよいし、また、全長の抗体を得てからパパイン、ペプシン等の酵素で処理して断片化してもよい。
[0102]
ある抗体と抗原との結合において競合する抗体は、当業者に周知の競合アッセイなどにより得ることができる。競合アッセイで、例えば、少なくとも20%、好ましくは少なくとも20~50%、さらに好ましくは少なくとも50%、所望の抗体の結合をブロックすることができるならば、同じ抗原に対する結合において競合する抗体とすることができる。競合する抗体は、交差ブロッキングアッセイ、好ましくは、競合ELISAアッセイにより確認することができる。交差ブロッキングアッセイでは、抗原を、例えばマイクロタイタープレート上にコーティングし、ここに候補となる競合抗体存在を添加してインキュベートし、抗原と候補抗体との結合を形成させる。その後、所望の抗体を標識した上でさらにウェルに添加してインキュベートし、洗浄して、所望の抗体の結合量を定量することにより、抗体が競合したか否かを判断することができる。競合する場合には、ウェル中に残存する標識量が少なくなるはずである。
[0103]
本発明に係る抗TMEM-180抗体は、作製方法や精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点、糖鎖の有無、形態などが異なり得る。しかしながら、得られた抗体が、本発明の抗体と同等の機能を有している限り、本発明に含まれる。例えば、本発明の抗体を、大腸菌等の原核細胞で発現させた場合、本来の抗体のアミノ酸配列のN末端にメチオニン残基が付加される。本発明は、かかる抗体も包含する。
[0104]
本発明に係る抗TMEM-180抗体が、還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していないN-結合型糖鎖を有する抗体である場合、かかる抗体は公知の方法又はそれに準ずる方法に従って製造することができる。かかる抗体の製造方法は、例えば、国際公開第2002/031140号パンフレット、特開2009-225781号公報に記載されており、その開示は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
具体的には、例えば、本発明に係る抗TMEM-180抗体をコードするDNAを含むベクターを用いて、GDP-フコースの合成に関与する酵素の活性、又はα-1,6-フコシルトランスフェラーゼの活性が低下又は欠失した細胞を形質転換し、得られた形質転換体を培養した後、目的とする抗TMEM-180抗体を精製することによって得ることができる。
GDP-フコースの合成に関与する酵素としては、例えば、GDP-mannose 4,6-dehydratase(GMP)、GDP-keto-6-deoxymannose 3,5-epimerase,4-reductase(Fx)、GDP-beta-L-fucose pyrophosphorylase(GFPP)が挙げられる。
ここで、細胞は特に限定されないが、哺乳動物細胞が好ましく、例えば上記酵素活性を低下又は欠失されたCHO細胞を用いることができる。
上記方法によって得られる抗体組成物は、還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合している抗体を含む場合もあるが、フコースが結合している抗体の割合は、抗体全体の20重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。
[0105]
また、還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していないN-結合型糖鎖を有する抗体は、本発明に係る抗TMEM-180抗体をコードするDNAを含むベクターを昆虫卵に導入し、孵化させて昆虫を成長させ、必要に応じて交配を行ってトランスジェニック昆虫を作製し、当該トランスジェニック昆虫又はその分泌物から抗TMEM-180抗体を抽出することによっても得ることができる。昆虫としてはカイコを用いることができ、その場合、繭から抗体を抽出することができる。
この方法によって得られる抗体組成物も、還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合している抗体を含む場合もあるが、フコースが結合している抗体の割合は、抗体全体の20重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。
[0106]
(本発明の抗体の活性)
抗体医薬の薬効メカニズムは、抗体が有する2つの生物活性に基づいている。1つは標的抗原特異的な結合活性であり、結合することによって標的抗原分子の機能を中和する活性である。標的抗原分子の機能の中和はFab領域を介して発揮される。
[0107]
もう1つは、エフェクター活性と呼ばれる抗体の生物活性である。エフェクター活性は、抗体のFc領域を介して、抗体依存性細胞障害活性(antibody-dependent cellular cytotoxicity;ADCC)、補体依存性細胞障害活性(complement-dependent cytotoxicity;CDC)、アポトーシスの直接誘導等の態様で発揮される。
本発明に係る抗TMEM-180抗体の活性は、以下の方法で測定することができる。
[0108]
(1)結合活性
抗体の結合活性は公知の方法、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)、蛍光抗体法、FACS法等で、測定することができる。
[0109]
(2)ADCC活性
ADCC活性とは、標的細胞の細胞表面抗原に本発明の抗体が結合した際、そのFc部分にFcγ受容体保有細胞(エフェクター細胞)がFcγ受容体を介して結合し、標的細胞に障害を与える活性を意味する。
ADCC活性は、TMEM-180を発現している標的細胞とエフェクター細胞と本発明の抗体を混合し、ADCCの程度を測定することによって知ることができる。エフェクター細胞としては、例えば、マウス脾細胞、ヒト末梢血や骨髄から分離した単球核を利用することができる。標的細胞としては、例えばTMEM-180陽性大腸がん粘膜細胞を用いることができる。標的細胞をあらかじめ
51Cr等で標識し、これに本発明の抗体を加えてインキュベーションし、その後標的細胞に対して適切な比のエフェクター細胞を加えてインキュベーションを行う。インキュベーション後、上清を採取し、上清中の上記標識をカウントすることにより、測定することが可能である。
[0110]
(3)CDC活性
CDC活性とは、補体系による細胞障害活性を意味する。
CDC活性は、ADCC活性の試験において、エフェクター細胞に代えて補体を用いることにより測定することができる。
[0111]
(4)腫瘍増殖抑制活性
腫瘍増殖抑制活性は、腫瘍モデル動物を利用して測定することができる。例えば、マウスの皮下に腫瘍を移植し、本発明の抗体を投与する。非投与群と投与群における腫瘍組織の体積を比較することにより、腫瘍増殖抑制効果を測定することができる。
なお、本発明の腫瘍増殖抑制活性は、個々の細胞の増殖を抑制する結果生じるものであっても、細胞死を誘導する結果生じるものであってもよい。
[0112]
(検査方法及び検査用キット)
本発明の検査方法または検査キットにより検出されるがんは、血液腫瘍以外のがん、例えば、固形がん、例えば、大腸がん、脳腫瘍、胃がん、膵がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、および膀胱がんであり得る。上述のとおり、TMEM-180は特定のがん細胞において発現し、正常組織や健常者組織では発現が見られない。従って、本発明に係るがんの検査方法は、被検者から採取された試料中のTMEM-180量を測定する工程を含む。
本明細書において、被検者から採取された試料は、がんの検査に適したあらゆる試料とすることができ、がん種によって当業者が適宜決定し採取することができる。例えば血清、血漿、全血、尿、糞便、体腔液、組織が挙げられるがこれらに限定されない。大腸がんの検査の場合、大腸内視鏡等によって被検者から採取した組織や、大腸内視鏡検査後の洗浄液に含まれる粘膜細胞を試料としてもよい。
[0113]
従来、大腸がんマーカーとしては、がん胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen; CEA)が広く用いられている。血漿CEA値は、手術によるがんの切除などの治療により低下するが、再発や転移に伴って再上昇するため、CEA値の測定は治療後の経過観察に用いられる。CEA値の再上昇が認められた場合には、腹部超音波検査や腹部CTによる精密検査が必要となる。しかしながら、大腸がん患者のうち、CEA値が上昇するのは45%にすぎず、CEA値が上昇しないタイプのがん患者は、経過観察のために毎回精密検査を受けなければならない。
[0114]
これに対し、血漿TMEM-180値は、後述する実施例に示されるとおり、CEA値が上昇しない患者においても上昇が見られ、術後は術前より低下する。さらに、血漿TMEM-180値は、術後一旦低下した後、再発の際に有意な上昇が見られる。特に、再発の際にCEA値が上昇しない患者においても上昇が見られることが示された。したがって、がん患者に広く用いることができる極めて有用性の高いマーカーであると考えられる。
本発明に係るがんの検査方法は、がんの診断に用いてもよく、また術後など治療後の経過観察において、再発や転移の確認に用いてもよい。
[0115]
本明細書において、「試料中のTMEM-180量を測定する工程」は、TMEM-180量を定量する工程のみならず、TMEM-180量の有無を検出する工程、TMEM-180量の増減を決定する工程、他の試料中のTMEM-180量と比較する工程も含む。
[0116]
また、被験者から採取された体液試料(例えば、血清、血漿、全血、尿、または体腔液)中に含まれるエクソソームの膜上にTMEM-180が表出しているので、TMEM-180を表出させたエクソソームを検出することでも、がん(またはがんの存在)を検出することができる。そして、TMEM-180を表出させたエクソソームが検出された場合には、被検者の体内にがんの存在が検出されたことが示される。また、上記「試料中のTMEM-180量を測定する工程」は、体液試料(例えば、血清、血漿、全血、尿、または体腔液)中のTMEM-180を表出させたエクソソームの有無または量を検出する工程、検出されたエクソソーム量と規定値とを比較して規定値よりも高い場合にがんが検出されたと判定する工程、を含んでいてもよい。規定値は、偽陽性率および偽陰性率を基に当業者が適宜設定することが可能である。すなわち、偽陽性率を低くしたければ、規定値を大きくすればよく、偽陰性率を低くしたければ、規定値を小さくすればよい。
[0117]
規定値としては、特に限定されないが例えば、任意の1人の健常者の体液試料中のエクソソーム量が挙げられる。規定値としてはまた、特に限定されないが例えば、複数人の健常者の体液試料中のエクソソーム量が挙げられる。複数人の健常者の体液試料中のエクソソーム量と比較する場合には、規定値は、特に限定されないが例えば、エクソソーム量の平均値、最大値若しくは第3四分位値、若しくはこれらのうち2つの値で挟まれる値またはこれ以上の値とし得る。あるいは、規定値は、特に限定されないが例えば、平均値、最大値若しくは第3四分位値、またはこれらのうち2つの値で挟まれる任意の値の1倍以上の値、2倍以上の値、3倍以上の値、4倍以上の値、または5倍以上の値とすることができる。例えば、規定値は、複数の健常者の体液試料中のエクソソーム量の平均値としてもよい。例えば、規定値は、複数の健常者の体液試料中のエクソソーム量の最大値としてもよい。例えば、規定値は、複数の健常者の体液試料中のエクソソーム量の平均値の1倍以上の値、2倍以上の値、3倍以上の値、4倍以上の値、もしくは5倍以上の値、または2~5倍もしくは3~5倍のいずれかの値としてもよい。例えば、規定値は、複数の健常者の体液試料中のエクソソーム量の最大値の1倍以上の値、2倍以上の値、3倍以上の値、4倍以上の値、もしくは5倍以上の値、または2~3倍もしくは3~5倍のいずれかの値としてもよい。本発明において検出されるがんは、血液腫瘍以外のがん、例えば、固形がん、例えば、大腸がん、脳腫瘍、胃がん、膵がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、および膀胱がんであり得る。規定値を設定するために参考とする健常者の人数は、特に限定されないが例えば、5人~100人程度とすることができる。
[0118]
TMEM-180を表出したエクソソームの検出は、エクソソームを精製してからTMEM-180を検出すること、または、TMEM-180を含む物質を精製してから精製物中においてエクソソームを検出することのいずれによって行ってもよい。すなわち、本発明では、エクソソームを検出する方法であって、体液試料中のTMEM-180を表出するエクソソームを精製することと、TMEM-180を表出するエクソソームを検出することと、これにより体液試料中にTMEM-180を表出するエクソソームが存在すると決定することとを含む、方法{精製および検出のどちらかまたは両方において抗TMEM-180抗体を用いる}が提供される。
エクソソームの精製または検出は、周知の技術を用いて行うことができ、特に限定されないが例えば、エクソソームに結合する抗体(例えば、抗CD9抗体、抗CD63抗体または抗CD81抗体)を用いて実施することができる。またTMEM-180の検出またはTMEM-180を含む物質の精製は、本発明の抗TMEM-180抗体を用いて実施することができる。検出に用いる抗体は、ペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼなどの酵素並びにラジオアイソトープ、蛍光物質および発光物質などの標識により検出可能に標識した抗体とすることができ、これらの抗体の検出は当業者に周知の方法により行うことができる。また、エクソソーム量および上記規定値は、これらの検出方法による測定値またはこれを標準化した値に基づいて決定することができる。当然、抗TMEM-180抗体でエクソソームを精製し、別の抗TMEM-180抗体でエクソソームを検出することもできる。
[0119]
例えば、TMEM-180を表出するエクソソームは、本発明のTMEM-180抗体を結合したビーズで試料中のエクソソームを免疫沈降し、その後、エクソソームに結合する抗体(例えば、抗CD9抗体、抗CD63抗体または抗CD81抗体)を用いてTMEM-180精製分画から検出することができる。また、例えば、TMEM-180を表出するエクソソームは、エクソソームに結合する抗体(例えば、抗CD9抗体、抗CD63抗体または抗CD81抗体)を結合したビーズで試料中のエクソソームを免疫沈降し、エクソソーム精製分画から本発明のTMEM-180抗体を用いて検出してもよいであろう。
[0120]
エクソソームの精製または検出において、本発明の抗体としては、TMEM-180に結合する限りいずれの抗体も用いることができるが、例えば、1361抗体若しくは1361-5抗体またはこれらの抗体とTMEM-180への結合に関して競合する抗体を用いることができる。
[0121]
試料中のTMEM-180量の測定は、試料中の特定のタンパク質量を測定するためのあらゆる方法を用いて行うことができ、例えば、イムノアッセイ(凝集法、比濁法を含む)、ウエスタンブロッティング法、表面プラズモン共鳴(SPR)法等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントを用いたイムノアッセイが簡便で有用である。
TMEM-180は膜タンパク質であることから、市販の細胞溶解バッファー、非イオン性界面活性剤、膜タンパク質可溶化試薬等で処理し、膜タンパク質を可溶化してからその量を測定してもよい。
[0122]
イムノアッセイは、検出可能に標識した抗TMEM-180抗体、及び/又は検出可能に標識した抗TMEM-180抗体に対する抗体(二次抗体)を用いる。抗体の標識法により、エンザイムイムノアッセイ(EIA又はELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、化学発光イムノアッセイ(CLIA)、蛍光酵素イムノアッセイ(FLEIA)、化学発光酵素イムノアッセイ(CLEIA)、電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA)等に分類され、これらのいずれも本発明の方法に用いることができる。
[0123]
ELISA法では、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素、RIA法では、
125I、
131I、
35S、
3H等の放射性物質、FPIA法では、フルオレセインイソチオシアネート、ロ
ーダミン、ダンシルクロリド、フィコエリトリン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、近赤外蛍光材料等の蛍光物質、CLIA法では、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、エクオリン等の発光物質で標識した抗体が用いられる。その他、金コロイド、量子ドットなどのナノ粒子で標識した抗体を検出することもできる。
また、イムノアッセイでは、抗TMEM-180抗体をビオチンで標識し、酵素等で標識したアビジン又はストレプトアビジンを結合させて検出することもできる。
[0124]
イムノアッセイの中でも、酵素標識を用いるELISA法は、簡便且つ迅速に抗原を測定することができる。
ELISA法には競合法とサンドイッチ法がある。競合法では、マイクロプレート等の固相担体に抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントを固定し、試料と酵素標識したTMEM-180を添加して、抗原抗体反応を生じさせる。いったん洗浄した後、酵素基質と反応、発色させ、吸光度を測定する。試料中のTMEM-180が多ければ発色は弱くなり、試料中のTMEM-180が少なければ発色が強くなるので、検量線を用いてTMEM-180量を求めることができる。
サンドイッチ法では、固相担体に抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントを固定し、試料を添加し、反応させた後、さらに酵素で標識した別のエピトープを認識する抗TMEM-180抗体を添加して反応させる。洗浄後、酵素基質と反応、発色させ、吸光度を測定することにより、TMEM-180量を求めることができる。サンドイッチ法では、固相担体に固定した抗体と試料中のTMEM-180を反応させた後、非標識抗体(一次抗体)を添加し、この非標識抗体に対する抗体(二次抗体)を酵素標識してさらに添加してもよい。
酵素基質は、酵素がペルオキシダーゼの場合、3,3'-diaminobenzidine(DAB)、3,3'5,5'-tetramethylbenzidine(TMB)、o-phenylenediamine(OPD)等を用いることができ、アルカリホスファターゼの場合、p-nitropheny phosphate(NPP)等を用いることができる。
あるいは、試料中のTMEM-180抗原をマイクロタイタープレートなどの固相担体に直接固定し、必要なブロッキングを行った後、非標識抗体(一次抗体)を添加し、この非標識抗体に対する抗体(二次抗体)を酵素標識してさらに添加してもよい。
[0125]
本明細書において「固相担体」は、抗体を固定できる担体であれば特に限定されず、ガラス製、金属性、樹脂製等のマイクロタイタープレート、基板、ビーズ、ニトロセルロースメンブレン、ナイロンメンブレン、PVDFメンブレン等が挙げられ、標的物質は、これらの固相担体に公知の方法に従って固定することができる。
[0126]
また、イムノアッセイの中で、微量のタンパク質を簡便に検出できる方法として凝集法も好ましい。凝集法としては、例えば、抗体にラテックス粒子を結合させたラテックス凝集法が挙げられる。
ラテックス粒子に抗TMEM-180抗体を結合させて適宜処理した試料に混合すると、TMEM-180が存在すれば、抗体結合ラテックス粒子が凝集する。そこで、サンプルに近赤外光を照射して、吸光度の測定(比濁法)又は散乱光の測定(比朧法)により凝集塊を定量し、抗原の濃度を求めることができる。
[0127]
抗TMEM-180抗体又はその抗体結合フラグメントとしては、上述したCDR配列を有する本発明に係る抗TMEM-180抗体又はその抗体結合フラグメントを用いてもよい。
[0128]
本発明に係るがんの検査用キットは、上述した検査方法を使用してがんの検査を行うためのキットであり、抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。本発明に係るがんの検査用キットは、抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメントに加え、イムノアッセイによって試料中のTMEM-180量を測定するために必要な試薬や装置を含んでいてもよい。
[0129]
検査用キットの一態様は、サンドイッチ法によってTMEM-180を測定するためのものであり、マイクロタイタープレート;捕捉用の抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメント;アルカリホスファターゼ又はペルオキシダーゼで標識した抗TMEM-180抗体又はその抗原結合フラグメント;及び、アルカリホスファターゼ基質(NPP等)又はペルオキシダーゼの基質(DAB、TMB、OPD等)、を含む。
捕捉用抗体と標識抗体は、異なるエピトープを認識する。
このようなキットでは、まず、マイクロタイタープレートに捕捉用抗体を固定し、ここに試料を適宜希釈して添加した後インキュベートし、試料を除去して洗浄する。次に、標識した抗体を添加した後インキュベートし、基質を加えて発色させる。マイクロタイタープレートリーダー等を用いて発色を測定することにより、TMEM-180量を求めることができる。
[0130]
検査用キットの別の態様は、二次抗体を使用してサンドイッチ法によりTMEM-180を測定するためのものであり、マイクロタイタープレート;捕捉用の抗TMEM-180抗体;一次抗体としての抗TMEM-180抗体;二次抗体として、アルカリホスファターゼ又はペルオキシダーゼで標識した抗TMEM-180抗体;及び、アルカリホスファターゼ(NPP等)又はペルオキシダーゼの基質(DAB、TMB、OPD等)、を含む。
捕捉用抗体と一次抗体は、異なるエピトープを認識する。
このようなキットでは、まず、マイクロタイタープレートに捕捉用抗体を固定し、ここに試料を適宜希釈して添加した後インキュベートし、試料を除去して洗浄する。続いて、一次抗体を添加してインキュベート及び洗浄を行い、さらに酵素標識した二次抗体を添加してインキュベートを行った後、基質を加えて発色させる。マイクロタイタープレートリーダー等を用いて発色を測定することにより、TMEM-180を求めることができる。二次抗体を用いることにより、反応が増幅され検出感度を高めることができる。
[0131]
検査用キットは、さらに、必要な緩衝液、酵素反応停止液、マイクロプレートリーダー等を含んでいてもよい。
[0132]
標識抗体は、酵素標識した抗体に限定されず、放射性物質(
25I、
131I、
35S、
3H等)、蛍光物質(フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ダンシルクロリド、フィコエリトリン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、近赤外蛍光材料等)、発光物質(ルシフェラーゼ、ルシフェリン、エクオリン等)、ナノ粒子(金コロイド、量子ドット)等で標識した抗体であってもよい。また標識抗体としてビオチン化抗体を用い、キットに標識したアビジン又はストレプトアビジンを加えることもできる。
[0133]
検査用キットのさらに別の態様として、ラテックス凝集法によってTMEM-180量を測定するものも挙げられる。このキットは、抗TMEM-180抗体感作ラテックスを含み、試料と抗TMEM-180抗体とを混合し、光学的方法で集塊を定量する。キットに凝集反応を可視化する凝集反応板が含まれていることも好ましい。
[0134]
本明細書において引用されるすべての特許文献及び非特許文献の開示は、全体として本明細書に参照により組み込まれる。
実施例
[0135]
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。当業者は、本発明の意義を逸脱することなく様々な態様に本発明を変更することができ、かかる変更も本発明の範囲に含まれる。
[0136]
実施例1.TMEM-180分子の同定
1)DNAマイクロアレイ解析
5種類のヒト大腸がん細胞株(HT29、SW480、LOVO、HCT116、DLD-1)と2種類のヒト健常者由来遊離大腸細胞由来のmRNA各々10μgを使用した。メーカー(Affymetrix)の指示に従いRNAから二本鎖cDNAを経由してビオチン標識されたcRNAを合成した。断片化後に、GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 Array(Affymetrix)とハイブリダイゼーションを行った。GeneChip Scanner 3000 7G(Affymetrix)を用いてスキャンを行い、CELデータ取得後に統計処理を行い、各サンプルのシグナル値を算出した。5種類のヒト大腸がん細胞株で発現を認め、2種類の健常者大腸細胞で発現を認めなかった大腸がん細胞特異的表面マーカーとしてTMEM-180を選び出した(図1A)。
[0137]
2)定量性PCR法
5人の大腸がん患者手術標本について、隣接正常大腸組織を陰性コントロールとする大腸がん細胞組織サンプルcDNA(Clontech)をABI7500Fast(Applied Biosystems)で解析した。20μLの反応液で、10μL 2X TaqMan Fast Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)、1μL 20X TaqMan Gene Expression Assay(Applied Biosystems)を使用した。また、Fast runでAmpliTaq Gold Enzyme Activation 95度、20秒、40サイクル;Denature 95度、3秒;Anneal/Extend 62度、30秒の条件で行った。7500 Fast System SDS ソフトウエアVer.1.3で解析した。各症例について、正常組織でのRNA量に対する大腸がん組織でのRNA量の比を計算した結果を図1Bに示す。いずれの症例においてもTMEM-180が正常大腸組織に比べて大腸がん組織で強く発現していることを確認した。
[0138]
3)in situ hybridization法
大腸がん組織パラフィン切片(Genostaff Co. Ltd.)をキシレンで脱ワックス処理後、エタノール、PBSで水和を行った。切片を4%パラホルムアルデヒド・PBSで15分間固定した。7μg/ml Protreinase K (Roche)を含んだPBSで処理後に、4%パラホルムアルデヒド・PBSで再固定した。0.25%無水酢酸0.1M TrisHCl PH8.0でアセチル化を行った。PBSで洗浄後、エタノールで脱水した。300ng/mlのdigoxigenin標識したTMEM-180のRNAプローブ(475bp, GeneBank登録番号 NM_024789の遺伝子配列1314から1789番目、Genostqaff Co. Ltd.)と60度で16時間のハイブリダイゼーション反応を行った。洗浄後に50μg/ml RNaseA・10mM TrisHCl PH8.0・0.1M NaCl・1mM EDTAで処理した。再洗浄後に、0.5%ブロッキング反応液(Roche)を用いて反応させた後、20%熱処理羊血清(Sigma)添加ブロッキング反応液で1時間反応させた。AP標識抗DIG抗体(Roche)を加え、室温で2時間の反応を行った。洗浄後にNBT/BCIP液(Roche)中で発色を行った。封入後顕微鏡で観察を行った結果を図1C及びDに示す。TMEM-180が5種類の大腸がん組織で全て陽性で、正常大腸粘膜では陰性であることを確かめた。
[0139]
実施例2.TMEM-180の正常組織での発現解析
公的データベースPaxDB; a comprehensive absolute protein abundance database http://pax-db.org/#!home(各タンパク質に特異的なペプチドをLC/MS/MSにより解析することでその発現レベルを測定してある)により、TMEM-180で検索をかけて各正常組織での測定値を調べた。TMEM-180以外に、対照として以下の分子の発現も調べた。
βアクチン(βACT)(ハウスキーピング分子)
Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)(ハウスキーピング分子)
上皮成長因子受容体(EGFR)(抗体医薬の標的分子)
HER2(抗体医薬の標的分子)
がん胎児性抗原(CEA)(代表的な腫瘍マーカー分子)
Excel(2010, Microsoft)ファイルにデータを入力してグラフを作成した結果を図2に示す。TMEM-180は正常にはほとんど発現しておらず(図2A)、感度を上げると血小板での発現がわずかに認められたものの、従来の抗体医薬の標的分子であるEGFRやHER2よりはるかに少なく(図2B)、TMEM-180ががん組織特異的に発現していることが確認された。
[0140]
実施例3.抗体作製および各種がん細胞に対するFACS
1)抗原作製
[PCR反応]
pET21bに組み込まれているtag配列に対して、以下のプライマーを用いてPCR増幅を行った。
使用PCR酵素:PrimeStar HS DNA polymerase (takara R010A)
免疫抗原1 作製用プライマー配列
(i) cagacctgcacctgaacgtggttgagagctgaggaattgacggtcactgagggactgtaatgctgcacttcgc(配列番号:18)
(ii) caaccacgttcaggtgcaggtctgtcttcacgtgctgttgtactggctcgtgttcaagagttcaaactggaggacctg(配列番号:19)
(iii) gagatatacatatgtcggaggtgactcgtagtc(配列番号:20)
(iv) tggtgctcgagaataggctgaacatcaaatg(配列番号:21)
免疫抗原2 作製用プライマー配列
(i) gcgaagtgcagcattacagtccgatcatctgagtctgctgtgcctcttcattgc(配列番号:22)
(ii) caggtcctccagtttgaactcagaagctgcttgcttacgatgattcagcaccaggtcctcgtctac(配列番号:23)
(iii) gagatatacatatgtcggaggtgactcgtagtc(配列番号:24)
(iv) tggtgctcgagaataggctgaacatcaaatg(配列番号:25)
[0141]
[制限酵素処理]
発現用ベクターpET21b及びPCR産物に対し、NdeI(takara)、XhoI(takara)をメーカープロトコールに従い2時間反応させ、1% アガロースゲル電気泳動を行った後、promega wizard SV gal and PCR clean-up systemキットを用いて精製した。
[0142]
[ライゲーション反応]
Ligation high(toyobo)を用いて30 min. ベクターとインサートを反応させた。
[0143]
[形質転換]
Competent High DH5α(toyobo)を用いて形質転換させ、LB培地(50 μg/mL)プレートで培養した。
[0144]
[遺伝子確認]
形質転換した大腸菌からプラスミドを抽出し、シーケンス解析を行い目的の配列を確認した。
[0145]
[形質転換(大腸菌)]
BL21(DE3)を目的配列が挿入されたプラスミドで形質転換させた。
[0146]
[培養]
10 mLのLB培地に植菌し、37℃、16時間培養した培地を1 LのLB培地に移し替え、37℃で培養した。OD 600 nmの値が0.6になったところで、終濃度1 mMになるようにIPTGを添加し、さらに4時間培養した。
[0147]
[精製]
菌体破砕した大腸菌の沈殿を50 mM Tris-HCl, 500 mM NaCl, 6 M GdnHClで懸濁し、16時間揺らしたサンプルの上清を回収してニッケルカラムにて精製した。
[0148]
[リフォールディング]
6 M GdnHClで溶かしているために目的抗原は変性しているので、透析法にてリフォールディング(タンパク質の巻き戻し)を行った。
リフォールディングの条件は次のステップで行った。
(1)50 mM Tris-HCl pH8.5, 500 mM NaCl, 1 mM EDTA, 1 mM DTT, 3 M GdnHCl ; 6 h
(2)50 mM Tris-HCl pH8.5, 500 mM NaCl, 1 mM EDTA, 1 mM DTT, 2 M GdnHCl ; 6 h
(3) 50 mM Tris-HCl pH8.5, 500 mM NaCl, 1 mM EDTA, 1 mM DTT, 1 M GdnHCl ; 12 h
(4) 50 mM Tris-HCl pH8.5, 500 mM NaCl, 1 mM EDTA, 1 mM DTT, 0.5 M GdnHCl ; 12 h
(5) 50 mM Tris-HCl pH8.5, 150 mM NaCl, 50 mM L-Arg ; 6 h
(6) 50 mM Tris-HCl pH8.5, 150 mM NaCl, 50 mM L-Arg ; 6 h
上記のサンプルに対し限外濾過膜(Amicon-Ultra 10K)を用いて50 mM リン酸緩衝液 pH8.0, 500 mM NaClに置換した。
[0149]
[CD測定]
リフォールディングした免疫抗原が立体構造を保持しているのか、確認するために円2色性分散器(日本分光J-725)を用いて理論値に近いヘリックス含量であることを確認した。
[0150]
2)抗体作製
PBS で100 μg/mLに希釈した免疫抗原1もしくは免疫抗原2とFreund complete adjuvantとを1:1で混合して調製したエマルジョンをラット(日本SLC、Wister、 メス、 6~8週令)尾根部両脇に100 μLずつ投与した。免疫12日~13日後にラット尾静脈から採血し調製した抗血清を用いて免疫抗原を固相としたELISAもしくはDLD-1細胞およびK562細胞に対するフローサイトメトリーで血清抗体価を評価し、細胞融合に用いる個体を選択した。免疫14日後に選択した個体から腸骨リンパ節、鼠径リンパ節、腋下リンパ節および膝下リンパ節を摘出し、PEG法にてリンパ節細胞とマウスミエローマ細胞p3X63と融合した。融合10日~14日後に培養上清を回収し、フローサイトメトリーにてDLD-1細胞に陽性、K562細胞に陰性を示す抗体産生ハイブリドーマ細胞を選択した。選択した抗体産生ハイブリドーマ細胞は限界希釈法にて単クローン化、樹立した。抗体のアイソタイプはアイソタイプ特異的ELISA(Bethyl)で判定した。
単クローン化されたクローンは、98クローン、101クローン、212クローン(以上IgM抗体)、129クローン、382クローン、1361クローン(以上IgG抗体)、669クローン、699クローン、1052クローン、1105クローン(以上IgM抗体)であった。本明細書では、クローン番号xのクローンから得られる抗体をx抗体と呼ぶことがある。
[0151]
3)フローサイトメトリー
測定対象とするがん細胞を培地に懸濁し、1×10
5個/wellとなるようにV底96ウェルプレート(corning)に添加した。プレートを440×g、4℃、3分遠心してから上清を除き、細胞ペレットに抗体産生ハイブリドーマ培養上清もしくは抗体溶液を50 μL/wellで加えて懸濁した。氷上で45分反応させた後、0.1%BSA/2mM EDTA/PBS 200 μL/wellで3回洗浄した。上清を除き、細胞ペレットに二次抗体を50 μL/wellで加えて懸濁した。二次抗体としてAlexaFluor647 Goat anti-Rat IgG(H-L)(Life Technologies)を0.1%BSA/2mM EDTA/PBSで400倍に希釈したものを用いた。氷上で45分反応させた後、0.1%BSA/2mM EDTA/PBS 200 μL/wellで3回洗浄した。上清を除き、細胞ペレットに50 ng/mL Propidium Iodide/0.1%BSA/2mM EDTA/PBSを250 μL/wellで加えて懸濁した。このように染色した細胞をGuava easyCyte 8HT(Merck Millipore)等のフローサイトメーターを用いて測定し、得られたデータをFlowJO(トミーデジタルバイオロジー)で解析した。FACSには大腸がん、脳腫瘍、血液系腫瘍を用いて解析した。
[0152]
取得した抗TMEM-180IgM抗体によるFACS解析の結果を図3に示す。98クローンは6種の全ての大腸がんおよび4種全ての脳腫瘍で陽性、101クローンは4種の大腸がんで陽性、脳腫瘍はすべて陰性であった。212クローンは6種全ての大腸がんで陽性であり、脳腫瘍では1種だけ陽性であった。いずれのクローンも血液系腫瘍は全て陰性であった。
[0153]
実施例4.DLD-1大腸がん細胞に対する蛍光免疫染色
DLD-1細胞を5×10
3個/wellとなるように96ウェルプレート(Corning、CellBIND)に添加し、2日間培養したものを細胞染色に供した。細胞の固定/透過処理は次のように行った。細胞培養プレートを200 μL/wellのPBSで2回洗浄後、洗浄液を除き、0.1%量のTriton X-100(Wako)を添加した4%パラホルムアルデヒド・りん酸緩衝液(Wako)を氷冷下で100μL/wellで加えて10分間固定した。固定液を除き、PBS 200 μL/wellで一回、1%FBS/PBS 200 μL/wellで一回洗浄し、細胞固定プレートとした。細胞染色は次のように行った。未固定の細胞培養プレートからは培地を、細胞固定プレートからは洗浄液を除き、抗体産生ハイブリドーマ培養上清もしくは抗体希釈液を50 μL/wellで添加した。氷上で1時間反応させた後、PBS 200 μL/wellで1回、1%FBS/PBS 200 μL/wellで2回洗浄した。洗浄液を除き5 μg/mL AlexaFluor647 Goat anti-Rat IgG(H-L) /2 μg/mL Hoechst 33342 /1%FBS/PBSを50 μL/wellで添加した。氷上で1時間反応させた後、PBS 200 μL/wellで2回洗浄した。PBS を50 μL/wellで添加し、ArrayScan(Thermo Scientific)にて測定した。
抗TMEM-180IgM抗体の98、101及び212クローンによる蛍光免疫染色の結果を図4に示す。98クローンは膜中心に染色された。101と212は98クローンよりは蛍光強度が弱く、細胞質も染まった。
[0154]
実施例5.抗TMEM-180抗体によるDLD-1親株とTMEM-180ノックアウト株におけるFACS
1)ノックアウト細胞の作成
[トランスフェクション]
Sigma CRISPR/Cas9 System(HS0000468201) plasmid 2.5 ugを0.5 mLのOpti-MEM(invitrogen)で希釈し、Lipofectionamine LTXを11 uL添加した。室温で静置し30 分後、DLD1細胞(6.25 x 10^5 cells/well 6 wellプレート(corning))に DNA-Lipofection調整液を添加した。
[0155]
[GFP発現細胞の選択]
トランスフェクション後に2日間培養した細胞に対してFACSAria セルソーター(BD)を用いてGFP発現細胞のみを取得した。
[0156]
[クローニング]
GFP発現細胞を培養し、GFPの発現が行われなくなったことを確認したのち96ウェルプレートに限外希釈した。細胞のコロニーが単一であったwellに対してPureLink Genomic DNA Mini Kit(Invitrogen)でゲノムを精製し、目的配列を確認することで、ノックアウト細胞を判定した。
[0157]
2)フローサイトメトリー
フローサイトメトリーの手順は上記3.に準じた。一次抗体とした98クローンラットIgM抗体は、抗体産生ハイブリドーマ培養上清を1 μg/mLに希釈して用いた。陰性コントロールとした356クローンラットIgM抗体産生ハイブリドーマ培養上清を1 μg/mLに希釈して用いた。98クローンラット-ヒトキメラ化抗体はキメラ化抗体定常発現細胞の培養上清を2倍に希釈して用いた。陽性コントロールとしてラット抗ヒトTissue Factor抗体Clone hTF1849、ラット抗ヒトEpCAM抗体Clone B8-4、マウス抗ヒトCD44v6抗体Clone 2F10(MBL)、マウス-ヒトキメラ化抗EGFR抗体(商品名Erbitux)をそれぞれ1 μg/mLに希釈して用いた。それぞれの抗体の希釈にはRPMI/FBS10%を用いた。なおハイブリドーマ培養上清中の抗体濃度はラットIgM特異的ELISA(Bethyl)で測定した。また一次抗体の由来に応じ、二次抗体としてAlexaFluor647 Goat anti-Rat IgG(H-L)、AlexaFluor647 Goat anti-Human IgG (H+L)もしくはAlexaFluor647 Goat anti-Mouse IgG(H+L)(Life Technologies)のいずれかを0.1%BSA/2mM EDTA/PBSで400倍に希釈して用いた。
[0158]
3)ヒトキメラ抗体の作製
ハイブリドーマ細胞株から全RNAを抽出し、抗体H鎖の可変領域とL鎖の可変領域のcDNAをSMARTer RACE cDNA増幅キット(takara)を用いて5'末端RACE(rapid amplification of cDNA ends)法を用いて合成した。
合成したcDNAに対し、PCRで増幅し、pUC19(Invitrogen)にクローニングした。H鎖の可変領域及びL鎖の可変領域は後掲表3~22に示す。
[0159]
H鎖及びL鎖の可変領域をPCRで増幅後、H鎖の可変領域は定常領域を組み込んだpQCxIP(クロンテック)、L鎖の可変領域は定常領域を組み込んだpQCxIH(クロンテック)に挿入し発現ベクターを完成させた。発現ベクターをリポフェクタミン2000(インビトロジェン)を用いて293T細胞にトランスフェクションを行った。ヒトIgG1型抗TMEM-180抗体定常発現細胞株は、ピュロマイシン(シグマ) 10μg /mL とハイグロマイシンB (インビトロジェン) 1 mg/mL で薬剤選択を行い、両耐性株を取得することで樹立された。樹立細胞株はDMEM(シグマ) 10%FBS、1% ペニシリン・ストレプトマイシン(インビトロジェン)、ピュロマイシン10μg /mL、ハイグロマイシンB 1 mg/mLで維持培養を行った。
[0160]
98クローンラットIgM抗体とヒトキメラIgG抗体を用いて、大腸がんDLD-1の親株とTMEM-180ノックアウト株でのFACSを行なった。結果を図5に示す。98クローンラットIgM抗体およびヒトキメラIgG1抗体ともノックアウト細胞で著しい左方変位を示した。コントロールとして抗Tissue factor抗体、抗EpCAM抗体、抗CD44v6抗体、抗EGFR抗体を用いたFACSでは親株とノックアウト株で差がなかった。このことは、98クローンラットIgM抗体とヒトキメラIgG1抗体のいずれも、TMEM-180を特異的に認識することを示す。
[0161]
実施例6.ヒト大腸がん手術標本ホルマリン固定切片における抗TMEM-180抗体による免疫染色
大腸がんホルマリン固定パラフィン切片に対し、抗TMEM-180 IgMラット抗体(98クローン)1μg/mlを反応させた。2次抗体はHRP標識抗ラット抗体を用い、DABで発色させ、ヘマトキシリンで後染色を行なった。結果を図6に示す。大腸がん特異的に染色された。大腸がんの膜だけでなく細胞質も染色された。
[0162]
実施例7.抗TMEM-180IgM抗体による殺細胞効果
DLD-1細胞ならびにK562細胞を1×10
3個/100 μL/wellで96ウェルプレートに添加し、24時間培養した。96ウェルプレートの各ウェルから培地50 μLを除き、抗体濃度を80 μg/mL、20 μg/mL、5 μg/mLに調製した98クローンラットIgM抗体産生ハイブリドーマ培養上清もしくは101クローンラットIgM抗体産生ハイブリドーマ培養上清を50 μL/well で添加した。なお各培養条件のn数は3とし、対照として培地のみを添加したウェルを用意した。96時間培養後、WST-8(同仁化学、Cell Counting Kit-8)を10 μL/wellで添加し、3時間培養後にマイクロプレートリーダーで450 nmの吸光度を測定した。抗体濃度を横軸として、培地のみを添加したウェルの吸光度を1とした各抗体濃度の吸光度の相対値をプロットした。結果を図7及び8に示す。98クローンも101クローンも大腸がんDLD-1細胞にのみ殺細胞効果を示し、血液腫瘍K562には殺細胞効果を示さなかった。その他の大腸がん細胞のDiFi、Car1、SW480、Colo201にも殺細胞効果を認めた。また、脳腫瘍LN229および乳がんMCF7にも同様な効果を認めた。血液腫瘍以外ではかなりの広汎ながんに効果があると予想される。
[0163]
実施例8.各クローンの可変部遺伝子配列とCDR決定
1)total RNAの抽出
それぞれの抗体を産生するハイブリドーマからRNeasy Mini Kit (QIAGEN)を用いてtotal RNAを抽出した。
[0164]
2)cDNAの作成
上記で得られたtotal RNAを用いてSMARTer RACE cDNA増幅キット(takara)を用いて5'末端RACE(rapid amplification of cDNA ends)法を用いてcDNAを合成した。
[0165]
3)抗TMEM-180抗体遺伝子のクローニング
上記のcDNAに対して、PrimeStar HS DNA Polymerase(takara)を用いて目的遺伝子を増幅した。増幅条件はDenature 98℃、10秒;Anneal/Extend 72℃、90秒、5サイクル;Denature 98℃、10秒;Anneal 67℃、5秒;Extend 72℃、90秒、5サイクル;Denature 98℃、10秒;Anneal 62℃、5秒;Extend 72℃、90秒、25サイクルのタッチダウンPCR法を用いた。
PCR装置:Takara PCR Thermal Cycler Dice Gradient
使用したプライマー配列
H鎖用
フォワードプライマー:
CTAATACGACTCACTATAGGGCAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT(配列番号:26)
フォワードプライマー:CTAATACGACTCACTATAGGGC(配列番号:27)
リバースプライマー:CCCATGGCCACCARATTCTYATCAGACAG(配列番号:28)
L鎖用
フォワードプライマー:
CTAATACGACTCACTATAGGGCAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT(配列番号:29)
フォワードプライマー:CTAATACGACTCACTATAGGGC(配列番号:30)
リバースプライマー:GTTGTTCAWGARGCACACGACTGAGGCA(配列番号:31)
増幅したH鎖及びL鎖のPCR産物をT4 polynucleotide Kinase (takara)を用いてリン酸化した。リン酸化したPCR産物をSmaIサイトで切断したpUC19(invitrogen)にLigation High(TOYOBO)試薬を用いて挿入した。挿入後、DH5α(TOYOBO)に形質転換し、シングルコロニーからプラスミドをPlasmid Mini Kit (QIAGEN)を用いて抽出した。
[0166]
4)遺伝子の解析
クローニングしたH鎖、L鎖各々の遺伝子をABI PRISM 3100 Genetic Analyzerを用いて遺伝子の塩基配列を解析した。各クローンのH鎖可変領域及びL鎖可変領域の配列を表3~22に示す。
98クローン H鎖(配列番号:13)
[表3]
98クローン L鎖(配列番号:14)
[表4]
101クローン H鎖(配列番号:15)
[表5]
101クローン L鎖(配列番号:16)
[表6]
212クローン H鎖(配列番号:46)
[表7]
212クローン L鎖(配列番号:47)
[表8]
129クローン H鎖(配列番号:54)
[表9]
129クローン L鎖(配列番号:55)
[表10]
382クローン H鎖(配列番号:62)
[表11]
382クローン L鎖(配列番号:63)
[表12]
1361クローン H鎖(配列番号:70)
[表13]
1361クローン L鎖(配列番号:71)
[表14]
669クローン H鎖(配列番号:78)
[表15]
669クローン L鎖(配列番号:79)
[表16]
699クローン H鎖(配列番号:86)
[表17]
699クローン L鎖(配列番号:87)
[表18]
1052クローン H鎖(配列番号:94)
[表19]
1052クローン L鎖(配列番号:95)
[表20]
1105クローン H鎖(配列番号:102)
[表21]
1105クローン L鎖(配列番号:103)
[表22]
[0167]
実施例9.TMEM-180量を測定するがんの検査方法
1)ELISAプロトコール
まず、以下の実施例に用いたELISA法のプロトコールを以下に示す。
(試薬)
以下の試薬を用いた。
96ウェルプレート C8 Maxi breakapart (NUNC #473768)
プレート洗浄液 PBS / 0.05% Tween 20
ブロッキング液 PBS / 1% BSA
抗体希釈液 PBS / 0.05% Tween 20 / 1% BSA
一次抗体 IgM 98(ハイブリドーマ培養上清)
二次抗体 polyclonal rabbit anti-rat immunoglobulins / HRP (Dako #P0450)
発色液 1-Step Slow TMB-ELISA Substrate (Thermo Scientific #34024)
停止液 2N H2SO4
[0168]
(手順)
以下の手順にしたがった。
(i) 抗原固相化
50μl/wellの細胞培養液上清もしくはヒト血漿(1/10希釈と1/50希釈)を96ウェルプレートに添加し、4℃で一晩インキュベーションした。
(ii) ブロッキング
200μl/wellのプレート洗浄液により、固相化済みプレートの洗浄を5回繰り返した。200μl/wellブロッキング液でブロッキングし、室温で1時間インキュベーションした。
(iii) 一次抗体反応
200μl/wellのプレート洗浄液により、固相化済みプレートの洗浄を5回繰り返した。100μl/well、10μg/mlのIgM 98抗体液を添加し、室温で1時間インキュベーションした。
(iv) 二次抗体反応
200μl/wellのプレート洗浄液により、固相化済みプレートの洗浄を5回繰り返した。100μl/well、4000倍希釈した二次抗体液を添加し、室温で1時間インキュベーションした。
(v) 発色・停止
200μl/wellのプレート洗浄液により、固相化済みプレートの洗浄を5回繰り返した。100μl/wellの発色液を添加し、室温で15分間インキュベーションした。100μl/wellの停止液を添加した。
(vi) 測定
反応停止後、450 nmの吸光度を測定した。
[0169]
2)がん細胞培養上清中のTMEM-180タンパク質量の測定
(TMEM-180強制発現株の作製)
ヒトTMEM180 cDNA (NM_024789.2)を組み込んだplasmid RC219636 (Origen)をリポフェクタミンLTX(インビトロジェン)を用いてDLD1細胞にトランスフェクションを行った。ヒトTMEM180 発現細胞株は600μg/mLジェネティシン(インビトロジェン)で薬剤選択を行い、耐性株を取得した。得られた耐性株に対して限外希釈を行い、各々のシングルクローンに対してFACSを行い抗体の反応を確認した。得られた細胞株はD-MEM (wako), 10% FBS, 1%ペニシリン, ストレプトマイシン, アンホテリシンB (wako), 600 μg/mLジェネティシン(インビトロジェン)で維持培養を行った。
(TMEM-180ノックダウン株の作製)
TMEM180ノックダウン細胞株は、American Type Culture Collection (ATCC,Manassas、VA)から購入した大腸がん細胞株DLD1、HCT116、HCT15、およびColo320それぞれに対して、MISSION
TM shRNA Lentiviral Transduction Particles (Sigma-Aldrich Corporation, St. Louis, MO)を用いて、説明書に従って作製した。TaqMan(R) Gene Expression Assays (Life Technologies Corporation, Carlsbad, CA)を用いて、定量性PCRを行い、TMEM180遺伝子発現の低下(ノックダウン)を確認した。
(がん細胞培養上清中のTMEM-180タンパク質量の測定)
大腸がん細胞DLD-1株のTMEM-180強制発現株、親株、およびTMEM-18ノックダウン株を培養し、ほぼコンフルエント状態になったところで、PBSで洗浄した。無血清DMEM培地に置換して、一晩培養し、翌日に培養上清を回収した。この上清をサンプル抗原として96穴プレートに固相化し、1)の方法でELISAを行なった。また脳腫瘍株LN229でも同様の実験を行なった。
結果を図9に示す。正常(培地のみ)コントロールと比べ、すべてのサンプルでTMEM-180は高値を示した。大腸がんDLD-1においては強制発現株、親株、ノックダウン株の順に高値を示した。脳腫瘍でも高値を示した。
[0170]
3)ステージIV大腸がん患者血漿中のTMEM-180タンパク質量の測定
EDTA採血のヒト血漿(ステージIVの4例と正常)を1/10と1/50に希釈後、それをサンプル抗原として96穴プレートに固相化し、1)の方法でELISAを行なった。
結果を図10に示す。正常血漿に比べ、すべての患者サンプルで高値を示した。また、CEA陰性であった患者#2と#4においても、血漿TMEM-180は陽性(正常より高値)を示した。
[0171]
4)ステージIII大腸癌患者の術前・術後の血漿中TMEM-180タンパク質量の測定
3)と同様の方法で、ステージIII大腸がん患者の術前術後の血漿につき、TMEM-180タンパク質量を測定した。
結果を図11に示す。すべての患者において、TMEM-180値は、術前に比較して術後に低下した。
[0172]
5)ステージIII、II、IV、及びIIIaの大腸がん患者の手術前後、及び再発時の血漿中TMEM-180タンパク質量と大腸がん腫瘍マーカーCEAを測定した。TMEM-180の測定は、669クローンと1361クローンを使用したサンドイッチELISA法で行った。TMEM-180のカットオフ値は、患者サンプルと同様のELISA法で測定した8人分の正常血漿中の値の平均とした。CEAのカットオフ値は、国立研究開発法人国立がん研究センターで採用している正常値とした。
結果を図12に示す。ステージIIの患者では、術前CEA値が陰性であるのに対し、TMEM-180は陽性を示した。また、ステージIIIaの患者では、CTで再発が確認された時点でもCEA値は陰性のままであったが、TMEM-180は再上昇していた。
[0173]
実施例A10.各クローンによるがん検出頻度の比較
上記実施例で得られたモノクローナル抗体(669抗体、1052抗体、1105抗体および1361抗体)でがんの検出率を試験した。
[0174]
本実施例では、ATCCおよびJCRBから入手した各がん由来の細胞株に対する反応性をFACSにより調べた。結果は下記表23に示される通りであった。
[0175]
[表23]
※NDは、データを取得していないことを意味する。
[0176]
表23に示されるように、いずれのクローンが産生する抗体も、組織検体中のがんを確実に認識することができることが明らかとなった。また、1361抗体が最も高感度に各種のがんを検出できることが明らかとなった。
[0177]
次に、ヒトの各種組織検体を用いて、各種抗体によるがんの検出頻度を試験した。ヒトの組織検体は、既にがんであると診断されたヒトから得られたがん組織検体とした。組織検体から常法に基づいて上記実施例6と同じくパラフィン切片を作製し、上記のモノクローナル抗体1μg/mLを反応させた。2次抗体はHRP標識抗ラット抗体を用い、DABで発色させ、ヘマトキシリン染色後、観察を行った。1361抗体は、正常組織では、皮膚、脳、小腸、肝臓、心臓、肺および腎臓の正常組織を常法により免疫組織学染色で染色したが、いずれの正常組織でも陰性であった。これに対して、EGFR遮断薬であるセツキシマブは、正常皮膚に対して強い陽性反応を示した。図13には、皮膚に対する1361抗体とセツキシマブとの反応性の相違を示す。また、図14には、皮膚以外の組織の免疫組織学染色の結果を示す。
[0178]
セツキシマブでは、正常な皮膚に対して強い反応性を示し、皮膚障害が副作用として報告されていることと一致する結果である。これに対して、1361抗体は、皮膚に対する反応性が低いため、このような副作用が大きく低減されると期待できる。
[0179]
実施例A11.1361クローンの改変体の作製と評価
インバースPCR法を用いて部位特異的な変異を重鎖または軽鎖のCDRに導入し、1361改変クローンを作製した。
[0180]
(1)1361改変クローンの作製
具体的には、フォワードプライマー(配列番号:183)及びリバースプライマー(配列番号:184)を用いたインバースPCR法(例えば、Ochman, H. et al., Genetics, 120(3): 621-623, 1988)に基づいてPrimeSTAR Max DNA polymerase (takara, R045A)を用いて1361クローンの重鎖CDR2に位置するチロシンをアラニンに置換するY78Aの1アミノ酸置換を導入した。同様の手法で、他にCDRにアミノ酸点変異を導入した22の1361改変クローンを作製した。例えば、改変体1361-7は、1361抗体の82番目のセリンをアラニン置換するS82Aの1アミノ酸置換を導入したものであり、その際の改変用PCRプライマーはフォワードプライマー(配列番号:185)で、リバースプライマー(配列番号:186)であった。導入後、得られたクローンについて、ABI PRISM 3100 Genetic Analyzerを用いて抗体遺伝子配列と変異導入を確認した。改変クローンでは、上記実施例5の3)に記載の方法に従って、ヒトキメラ抗体を作製した。以下、1361クローンの重鎖CDR2に位置するチロシンをアラニンに置換するY78Aの1アミノ酸置換を導入し、ヒトキメラ化したクローンを「1361-5クローン」と呼び、このクローンから産生される抗体を「1361-5抗体」と呼ぶ。1361-5抗体は、IgG1抗体である。
[0181]
(2)フローサイトメトリーによる抗体の結合性評価
上記実施例9で作製した大腸がん細胞DLD-1株のTMEM-180強制発現株、親株、およびTMEM-18ノックダウン株を培養し、これらのがん細胞と得られた1361-5抗体との結合性を以下で評価した。陰性対照としてK562細胞を用いた。
[0182]
測定対象とするがん細胞を培地に懸濁し、1×10
5個/wellとなるようにV底96ウェルプレート(corning)に添加した。プレートを440×g、4℃、3分遠心してから上清を除き、細胞ペレットに抗体溶液を50 μL/wellで加えて懸濁した。一次抗体の最終濃度は1μg/mL もしくは0.1μg/mLであった。氷上で45分反応させた後、0.1% BSA/2mM EDTA/PBS 200 μL/wellで3回洗浄した。上清を除き、細胞ペレットに二次抗体を50 μL/wellで加えて懸濁した。二次抗体としてAlexaFluor647 Goat anti-Human IgG(H-L)(Life Technologies)を0.1%BSA/2mM EDTA/PBSで400倍に希釈したものを用いた。氷上で45分反応させた後、0.1%BSA/2mM EDTA/PBS 200 μL/wellで3回洗浄した。上清を除き、細胞ペレットに50 ng/mL Propidium Iodide/0.1%BSA/2mM EDTA/PBSを200 μL/wellで加えて懸濁した。このように染色した細胞をGuava easyCyte 8HT(Merck Millipore)等のフローサイトメーターを用いて測定し、得られたデータをFlowJO(トミーデジタルバイオロジー)で解析した。結果は図15および16に示される通りであった。
[0183]
図15および16に示されるように、1361-5抗体は、DLD-1株をTMEM-180依存的に認識した。また、1361-5抗体は、K562細胞を認識することはなかった。
[0184]
作製した他の22クローンは、重鎖CDRに変異を導入した14クローンでは4クローンが抗原への結合性が低減し、軽鎖CDRに変異を導入した8クローンでは、3クローンが抗原への結合性が低減し、残りのクローンでは、1361-5とTMEM-180に対する結合性はほぼ同等であった。また、TMEM-180に対する結合性を維持した改変体(例えば、1361-7クローン)についての正常の間質に対する反応性は、1361抗体とほぼ同等であった。一方で、1361-5抗体は、1361抗体とTMEM-180に対する結合性やがんの認識については、相違が見られなかったが、正常の間質に対する反応性は、1361抗体およびその他の改変体よりも低減されており、がんへの結合性および特異性の点でより好ましい抗体であることが示された。
[0185]
実施例B11-2.抗体のADCC活性の検討
1361-5抗体は、IgGのサブクラスから高いADCC活性を有すると考えられる。本実施例では、1361-5抗体のADCC活性を検討した。また、本実施例では、Fc改変体を作製し、当該改変体のADCC活性を検討した。具体的には、以下の通りである。
[0186]
インバースPCR法を用いて部位特異的な変異を重鎖のFc部位に導入し、1361-5クローンのFc改変体を作製した。
[0187]
1)1361-5 Fc改変クローンFcDLEの作製
具体的には、フォワードプライマー(配列番号:A1,B1)及びリバースプライマー(配列番号:A2,B2)を用いたインバースPCR法(例えば、Ochman, H. et al., Genetics, 120(3): 621-623, 1988)に基づいてPrimeSTAR Max DNA polymerase (takara, R045A)を用いて1361-5クローンのFcに位置するS239D/A330L/I332Eの3重アミノ酸置換を導入した。
以下、本改変体を改変体1という。
[0188]
2)1361-5 Fc改変クローンFcDEAの作製
具体的には、フォワードプライマー(配列番号:187,189または191)及びリバースプライマー(配列番号:188,190および192)を用いたインバースPCR法(例えば、Ochman, H. et al., Genetics, 120(3): 621-623, 1988)に基づいてPrimeSTAR Max DNA polymerase (takara, R045A)を用いて1361-5クローンのFcに位置するS239D/I332E/E333Aの3重アミノ酸置換を導入した。
以下、本改変体を改変体2という。
[0189]
配列番号:187 (Fc_S239D_Fw) GGACCGGACGTCTTCCTCTTCCCCCCA
配列番号:188 (Fc_S239D_Rv) GAAGACGTCCGGTCCCCCCAGGAGTTC
配列番号:189 (Fc_A330L_I332E_Fw) CCACTGCCCGAGGAGAAAACCATCTCC
配列番号:190 (Fc_A330L_I332E_Rv) CTCCTCGGGCAGTGGGAGGGCTTTGTT
配列番号:191 (Fc_I332E_E333A_Fw) CCCGAGGCCAAAACCATCTCCAAAGCC
配列番号:192 (Fc_I332E_E333A_Rv) GGTTTTGGCCTCGGGGGCTGGGAGGGC
[0190]
3)ADCC活性の検討
ADCC活性は、セツキシマブを陽性対象として、1361-5抗体、改変体1および改変体2について調べた。
具体的には、エフェクター細胞として、TK176V(FcγRIII安定発現ナチュラルキラー細胞株)を用いた。TK176Vは、一般財団法人化学物質評価機構から得た。また、ターゲット細胞としては、DLD-1の野生型細胞を用いた。
TK176Vは10ng/mL IL-2及び10% FBS含有RPMI1640培地で培養した。継代は2~3日毎に新しい培地に希釈した。継代は2~3日毎にトリプシン処理で細胞を剥離し、新しい培地に懸濁してディッシュに播種した。
[0191]
ADCC活性の測定は以下の通り行った。
まず、陰性対照として、ターゲット細胞と培地のみで培養した時の51Cr放出量を測定し(Spontaneous release測定という)、陽性対象として、ターゲット細胞に0.1% Triton X-100を添加して全細胞を傷害した時の51Cr放出量を測定した(Max release測定という)。
1)50μCiの
51Crで標識したDLD-1 WTを96 well U底プレートに5,000細胞/50μL /wellで添加
2)TK176Vを200,000細胞 50μL/wellで添加(ET比:40)
Spontaneous release測定用well及びMax release測定用wellに培地を50μL/wellで添加
3)最大濃度2,000ng/mL、公比5の希釈系列で7種類の濃度の抗体を100μL/wellで添加
(反応中の抗体最終濃度:0、0.064、0.32、1.6、8、40、200、または1,000ng/mL)
4)Spontaneous release測定wellに培地、Max release測定wellに0.2% Triton X-100を100μL /wellで添加
5)プレートを遠心(250×g、4分)後、37℃で4時間培養
6)プレートを遠心(250×g、4分)
7)上清50μL/wellを測定用チューブに移す
8)ガンマカウンターで各チューブの放射線量(CPM)を測定
9)以下の式から細胞傷害活性及びADCC活性を算出
式1:
細胞傷害活性(%) =( 各チューブ CPM - Spontaneous release CPM平均値 )
÷( Max release CPM平均値 - Spontaneous release CPM平均値 )×100
式2:
ADCC活性(%) = 抗体添加時の細胞傷害活性 - 抗体非添加時の細胞傷害活性
10)解析ソフトPrismを用いて各抗体の50%有効濃度(EC50)を算出
[0192]
結果は、図20A~Dに示される通りであった。図20Aに示される通り、リツキシマブは、DLD-1の野生型細胞に対して強いADCC活性を示した。これに対して、図20Bに示される通り、1361-5抗体は、DLD-1の野生型細胞に対してリツキシマブよりも強いADCC活性を示した。また、図20CおよびDに示される通り、改変体1および2は、1361-5抗体と同等かそれ以上のADCC活性を示した。TMEM-180陰性細胞に対しては、ADCC活性は示されなかった。
このことから、1361-5抗体およびその改変体は、ADCC活性を有していることが確認された。
[0193]
実施例B11-3.インビボ腫瘍モデルにおける抗TMEM-180抗体の効果
本実施例では、マウスゼノグラフトモデル(ヒト大腸がん細胞株DLD-1)を用いてヒトIgG化669抗体の抗腫瘍効果を検証した。
[0194]
ヒトIgG化669抗体は、ヒトIgG1のCDRを669抗体のCDRに置き換えて作製した。
[0195]
ICRヌードマウス(♀、5~6週齢、日本チャールズリバー)の左腹側部にDLD-1細胞を5×10
6細胞/100μL PBSで皮下投与した。腫瘍体積が100~200mm
3となった個体を5群に分け、PBS 500μL、ヒトIgG化669抗体500μg/500μL PBS、ヒトIgG化669抗体100μg/500μL PBS、抗EGFR抗体のErbitux(アービタックス)500μg/500μLもしくはErbitux100μg/500μL PBSを週に3回ずつ投与した。また1群あたりマウス4~5匹とした。なお、腫瘍径およびマウス体重は毎投与時に記録した。腫瘍体積は[腫瘍長径×腫瘍短径
2]として求めた。結果は、図21に示される通りであった。
[0196]
図21に示されるように、ヒトIgG化669抗体は、PBSを投与した陰性対照と比較して顕著に腫瘍サイズの増大を抑制した。また、ヒトIgG化669抗体は、Erbituxよりも強い抗がん作用を有することが明らかとなった。なお、マウスの体重は投与前後で大きな変化は認められなかった。
[0197]
実施例A12.1361-5抗体を用いた大腸がん組織アレイの染色
本実施例では、実施例A11で作製した1361-5抗体を用いて大腸がんの免疫組織学染色を行った。
[0198]
大腸がん組織アレイは、BioChain Institue Inc.(Newark, CA)から入手し、実験に用いた。製造者マニュアルに従い、各組織アレイを染色した。結果は、図17に示される通りであった。図17に示されるように、1361-5抗体は良好に大腸がん組織(D8、B7およびB5)を染色できた(上の3つのパネル)。一方で、セツキシマブ染色像においては、これらのアレイではいずれも染色が陰性であった(図17における下の3つのパネル参照)。
[0199]
実施例A13.エクソソームの分析
本実施例では、細胞膜タンパク質であるTMEM-180タンパク質ががん細胞からエクソソーム中に放出され、かつ膜タンパク質としてエクソソームに表出されることが明らかとなった。
[0200]
具体的には、大腸がん細胞株DLD-1を培養し、培養上清を取得した。ゲル濾過後、各画分を98抗体を用いて確認したところ、タンパク質の分子量よりも遙かに大分子量の画分に98抗体陽性分画が存在することが明らかとなった。これは、TMEM-180タンパク質が巨大複合体を形成していることを意味している(例えば、図19参照)。
[0201]
そこで、上記培養上清中のエクソソームを検出する系を構築した。この検出系は、抗TMEM-180抗体をプレート表面に固相化し、固相化された抗体に結合するTMEM-180含有エクソソームをエクソソームマーカーである抗CD9抗体で検出する系であった。細胞としては、DLD-1細胞株(「DLD-1細胞野生株」ともいう)を用い、陰性対照としてTMEM-180ノックダウンDLD-1細胞株、およびK562細胞株を用いた。
具体的には、抗TMEM-180抗体を5 μg/mLとなるようにリン酸バッファーで希釈し、96ウェルプレート(Maxisorp #442404、Thermo Fisher co., Ltd.)に50μl/wellで添加した。固相化反応は、室温で2時間もしくは4℃で一晩のインキュベーションして行った。300μl/wellのプレート洗浄液により、固相化済みプレートの洗浄を3回繰り返した。200μl/wellのブロッキング剤(1%BSA/TBS-T)でブロッキングし、室温で1時間もしくは4℃で一晩静置した。ブロッキング剤を除去後、無血清培地で24時間培養したDLD-1細胞野生株培養上清およびTMEM180ノックダウンDLD-1細胞株培養上清、K562細胞培養上清をそれぞれ50μl/wellでプレートに添加し、室温で1時間静置した。なお陰性対照として未使用の無血清培地を用いた。プレート洗浄液により、プレートの洗浄を3回繰り返した後、1%BSA/TBS-Tで5 μg/mLに希釈したビオチン標識抗CD9抗体(156-030、Ancell co., LTD.)を50μl/wellでプレートに添加した。室温で1時間静置後、プレート洗浄液により、プレートの洗浄を3回繰り返した。1%BSA/TBS-Tで5000倍に希釈したStreptavidin-HRP conjugated(SA-5004、Vector Laboratories)を50μl/wellでプレートに添加した。室温で30分静置のうえ、プレート洗浄液によりプレートの洗浄を3回繰り返した後、100μl/wellの発色液を添加し、室温で30分間静置した。30μl/wellの停止液を添加して呈色反応を停止し、プレートリーダーで450 nmの吸光度を測定した。結果は、図18に示される通りであった。
[0202]
図18に示される通り、DLD-1細胞株は培養上清中にエクソソームを放出しており、このエクソソームは、その表面にTMEM-180タンパク質を表出しており、669抗体および1631抗体と抗CD9抗体を用いて検出することができた。一方で、TMEM-180ノックダウン株では、TMEM-180を表出するエクソソーム量が低減した。また、TMEM-180を発現しないK562細胞株でも同様であり、陰性対照として用いた培地と同程度であった。
[0203]
このことから、がん細胞からはTMEM-180を表出するエクソソームが放出されること、および、本発明の抗TMEM-180抗体と抗エクソソーム抗体を用いてこれを検出できることが明らかとなった。なお、発明者らは、ヒト大腸がん患者血清中にもTMEM-180を表出するエクソソームが放出されていることを既に見出している。このことから、がんの検査においては、体液試料中のTMEM-180タンパク質が表出しているエクソソームが検出されるか否かを指標としてがんを診断し得ることが明らかとなった。
[0204]
実施例B13-2.エクソソームを用いた大腸がん診断
本実施例では、大腸がんの患者血清中に含まれるエクソソームを用いて診断が可能であることを示した。
[0205]
本実施例では、1361抗体固定化ビーズを用いて、大腸がん患者血清(51例)から1361抗体に反応する成分を精製し、その後、エクソソームマーカーであるCD9抗体を用いてその中に含まれるエクソソームを検出した。具体的には以下の通りであった。
[0206]
1)抗体結合磁気ビーズの調製
1361抗体を25mM MES-NaOHで1mg/mLに希釈した。NHS-FGビーズ(多摩川精機、Cat.No.TAS8848N1141)を100μgあたり50μLの25mM MES-NaOHに懸濁し、等容量の抗体溶液と混合し、4℃で30分攪拌することで抗体とNHS-FGビーズとを結合させた。上清を除いてから1Mエタノールアミン(pH8.0)を250μL添加して4℃で一晩ブロッキングした。200μLの10mM HEPES-NaOH(pH7.9)/50mM KCl/1mM EDTA/10% glycerolで3回洗浄し、得られた抗体結合磁気ビーズを200μLの10mM HEPES-NaOH(pH7.9)/50mM KCl/1mM EDTA/10%グリセロールに懸濁して実験に用いた。
2)陽性検体の調製
DLD-1細胞を6.85×10
6細胞/15cm dishとして一晩培養した。培養上清を除いてからPBS 7mLを添加し、培地成分を洗い出した。PBSでの洗浄を2回行った後、無血清培地を30mL添加し、24時間培養した。得られた無血清培養上清は0.22μmフィルターで濾過してから測定に用いた。
3)TMEM180含有エクソソームの検出
以下の資材を用いた
・96ウェルプレート(Corning Co.,Ltd、Cat.No.3600)
・プレート洗浄液 10mM TBS(pH7.2)/0.1% Tween20/140mM NaCl
・希釈液 10mM TBS(pH7.2)/0.05% Tween20/140mM
NaCl/1% BSA
・検体希釈液 10mM TBS(pH7.2)/0.1% Tween20/140mM NaCl/1% BSA/20μg/mL TRU Block(Meridian Life Science, Inc.、Cat.No. A66800H-0.1)
・ビオチン化抗CD9抗体(Ancell corporation、Cat.No.156-030)
・ストレプトアビジンALP(R&D systems, Inc.、Cat.No.AR001)
・発光基質 ルミパルス基質液(富士レビオ株式会社)
・プレートリーダー Spectra Max Paradigm (MolecuLar Devices, LLC.)
(手順)
以下の手順にしたがった。
(i) 抗体結合磁気ビーズ調製
1361抗体結合磁気ビーズを0.001mg/50μLとなるように希釈液に懸濁した。
(ii) 検体調製
陽性検体および血清検体は検体希釈液で10倍に希釈した。
(iii) 一次反応
1361抗体結合磁気ビーズ懸濁液50μL/well、検体50μL/wellを96ウェルプレートで混合し、30分間プレートミキサーで攪拌、反応させた。
(iv) 標識抗体反応
300μl/wellのプレート洗浄液により、プレートの洗浄を3回繰り返した。ビオチン標識抗体を希釈液で0.3μg/mLに調製し、50μL/wellで添加した。30分間プレートミキサーで攪拌、反応させた。
(v) ストレプトアビジンALP反応
300μl/wellのプレート洗浄液により、プレートの洗浄を3回繰り返した。ストレプトアビジンALPを希釈液で2,000倍に希釈し、50μl/wellで添加した。30分間プレートミキサーで攪拌、反応させた。
(vi)測定
300μl/wellのプレート洗浄液により、プレートの洗浄を3回繰り返した。50μl/wellの発光基質液を添加し、室温で10分間インキュベーションした。プレートリーダーで発光量を測定した。
[0207]
結果は、図22に示される通りであった。図22に示されるように、健常者血清と比較して大腸がん患者の血清には、TMEM-180陽性のエクソソームが多く含まれていることが明らかであった。
[0208]
次に、図22に示されるデータを用いて、カットオフ値(閾値)を設定して、診断の感度および特異度を検証した。具体的には、健常者(50例)における相対的発光強度の平均値(N)を基準として、その3倍(S/N=3)、4倍(S/N=4)または5倍(S/N=5)をカットオフ値(閾値)に設定し、カットオフ値を超えた場合に大腸がんであると決定し、これにより診断の感度と特異度を検証した。結果は、表24に示される通りであった。
[0209]
[表24]
[0210]
表24に示されるように、本発明によれば、すべてのステージにおいて非常に高い感度で大腸がんを検出できることが明らかとなった。特に、ステージ2において、いずれのカットオフ値においても75%を超える高感度でがんを検出した。また、ステージ1においても、50%を超える高感度でがんを検出した。検出の特異度は、いずれの場合も85%を超える高い特異度を示した。
[0211]
上記の例では、S/Nを3以上にした例を例示したが、S/Nを1に設定した場合でもがんの検出ができることは、図22の結果から明らかであるといえる。一般的に、カットオフ値は高く設定すると特異度が上昇するが感度が低下し、カットオフ値を低く設定すると特異度は減少するが感度が上昇する。本発明および実施例によれば、疑陽性を減らすことを目的とするか、偽陰性を減らすことを目的とするかで、カットオフ値は当業者により自由に設定され得ることが理解されるであろう。
[0212]
実施例B13-3.エクソソーム上でのTMEM-180の表出の観察
本実施例では、電子顕微鏡を用いてエクソソーム上のTMEM-180の表出を観察した。
[0213]
培養上清からのエクソソーム回収
DLD-1細胞、およびTMEM180強制発現DLD-1細胞をそれぞれプラスチックシャーレに撒き、一晩インキュベートした。培養上清を除き、細胞をはがさないようにPBSで2回洗ってから無血清のD-MEM培地と交換した。24時間培養したのち培養上清を回収、0.22μmフィルターで濾過したものをエクソソーム含有無血清培養上清とした。またK562細胞はPBSで三回洗浄したものを無血清のRPMI-1640培地で24時間培養したのち培養上清を回収、0.22μmフィルターで濾過して用いた。エクソソーム含有無血清培養上清を100,000×g、4℃で24時間遠心し得られたペレットをPBSに懸濁したものをエクソソーム濃縮液とした。
[0214]
エクソソームの免疫染色
支持膜を張ったNiグリットにエクソソーム濃縮液を分散させ、膜に吸着させた。抗TMEN-180抗体クローンの669抗体もしくは抗ヒトCD9抗体(Cosmo bio)をNiグリットに添加し、室温で反応させた。1%BSA/PBSでNiグリッドを洗浄し、続けて金コロイド標識抗マウスIg抗体もしくは金コロイド標識抗ラットIg抗体を添加し、室温で反応させた。PBSで洗浄した後、グルタールアルデヒドで3分間固定した。なおネガティブ染色は2%リンタングステン酸溶液(pH7.0)で行った。固定したNiグリッドは乾燥させてから、透過型電子顕微鏡でエクソソームと抗体との結合を観察した。電子顕微鏡では、金コロイドは黒点として検出される。結果は、図23に示さる通りであった。
[0215]
図23に示されるように、エクソソームは、抗CD9抗体を用いた染色において複数の黒点を伴い、抗CD9抗体により染色されたことが分かる(図23のA)。また、エクソソームは、抗TMEN-180抗体を用いた染色においても、複数の黒点を伴い、抗TMEN-180抗体により染色されたことが分かる(図23のB)。なお、TMEM-180を表出しないK562細胞は、抗TMEN-180抗体とは反応しなかった。このことから、大腸がん細胞から体液中に放出されるエクソソームは、TMEM-180を表出していることが明らかとなった。この結果は、エクソソームと抗TMEM-180抗体を用いてがんの診断が可能であることを裏付ける結果であるといえる。
[0216]
実施例A14.エクソソームを抗原とした抗TMEM-180抗体の作製
上記TMEM-180タンパク質がエクソソーム上に検出されることが分かった後に、実施例3において上記抗原に代えて上記エクソソームを抗原として用いて抗TMEM-180抗体を得た。
[0217]
免疫原の調製
1)無血清培養上清の調製
DLD-1細胞TMEM-180過剰発現株を15 cm dish(#430599、Corning Co.,Ltd.)1枚あたり6.75×106 cellsとして、10%FBS含有D-MEM low glucose培地(wako)30 mL中で37℃、5%CO2条件下24時間培養した。培養器から培地を除きPBSで穏やかに洗浄した後、D-MEM low glucose培地を30 mL/dishで添加し、同様に24時間培養した。回収した無血清培養上清を0.22 μmフィルターフラスコでろ過して細胞片などを除去した後、Protease Inhibitor(Wako)を1/1000量加えて4℃で保管した。
2)エクソソーム画分の調製
CHT セラミックハイドロキシアパタイトタイプII(Bio-Rad)を充填させたカラムを30 mMHEPES, 100 mM NaCl pH6.7で平衡化した。無血清培養上清をカラムに添加し、同bufferで洗浄を行い、500 mM KPB pH6.7で溶出した。溶出した溶液を限外濾過を用いて10 mL以下にまで濃縮し、ゲル濾過カラムSuperdex200pg(GE)を用いて分画した。各フラクションに対してTMEM-180陽性過分の測定を行い、ボイド容量にある陽性画分のピークを回収し、TMEM-180含有エクソソームとした(図19参照)。
3)TMEM-180陽性画分の測定
測定サンプルを原液もしくはリン酸バッファーで希釈し、96ウェルプレート(Maxisorp #442404、Thermo Fisher co., Ltd.)に50μl/wellで添加した。固相化反応は室温で2時間とした。300μl/wellのプレート洗浄液により、固相化プレートの洗浄を3回繰り返した。200μl/wellの1%BSA/TBS-Tでブロッキングし、室温で1時間静置した。ブロッキング剤を除去後1%BSA/TBS-T で5 μg/mLに希釈したclone 98抗体を50μl/wellでプレートに添加した。室温で1時間静置後、プレート洗浄液により、プレートの洗浄を3回繰り返した後、1%BSA/TBS-T で10,000倍に希釈したGoat anti rat IgM antibody HRP conjugated(A110-100P、Bethyl laboratories, Inc.)を50μl/wellでプレートに添加した。室温で30分静置のうえ、プレート洗浄液によりプレートの洗浄を3回繰り返した後、100μl/wellの発色液を添加し、室温で20分間静置した。30μl/wellの停止液を添加して呈色反応を停止し、プレートリーダーで450 nmの吸光度を測定した。
4)抗体の作製
TMEM-180含有エクソソームとFreund complete adjuvantとを1:1で混合して調製したエマルジョンをラット(日本SLC、Wister、 メス、 6~8週令)尾根部両脇に100 μLずつ投与した。免疫14日後に腸骨リンパ節、鼠径リンパ節、腋下リンパ節および膝下リンパ節を摘出し、PEG法にてリンパ節細胞とマウスミエローマ細胞p3X63と融合した。融合10日~14日後に培養上清を回収し、フローサイトメトリーにてDLD-1細胞に陽性、K562細胞に陰性を示す抗体産生ハイブリドーマ細胞を選択した。またDLD-1細胞TMEM-180過剰発現株、DLD-1細胞TMEM-180ノックダウン株、DLD-1細胞TMEM-180ノックアウト株に対する反応性でスクリーニングを行った。選択した抗体産生ハイブリドーマ細胞は限界希釈法にて単クローン化、樹立した。抗体のアイソタイプはアイソタイプ特異的ELISA(Bethyl)で判定した。
[0218]
上記方法により、IgG抗体1種、IgM抗体3種を得た。これらの抗体は、良好にエクソソーム上のTMEM-180タンパク質を認識し、かつ、上記実施例と同様にがん組織を良好に染色した。エクソソームを免疫して得た抗体が、エクソソームを用いたがんの診断に有用であることは当然である。加えて、エクソソーム上ではTMEM-180はネイティブなコンフォメーションをとり、細胞膜上と同じ部分を表出していると考えられる。そして、エクソソームを免疫して得た抗体は、免疫組織学染色やFACSにより細胞膜上のTMEM-180と結合した。エクソソームを免疫して抗体を得る方法は、膜タンパク質、特に抗TMEM-180抗体を得る方法として有用であると考えられる。
[0219]
実施例C15.抗体薬物コンジュゲート(ADC)の構築と生理学的試験
本実施例では、ADCを構築し、大腸がん細胞株への効果を調べた。
[0220]
ADCとしては、669抗体または372抗体を抗TMEM-180抗体として用い、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)を薬物として用いた。抗体とMMAEは、リンカーを介して連結させた。リンカーは、カテプシンで開裂可能なバリン-シトルリンリンカー(Val-Citリンカー)とした。具体的なADCの構造は図24に示される通りであった。
[0221]
実施例C15-1.ADCの調製
(1)リンカーの合成
H-Cit-OH (1.18 g, 6.74 mmol)とNaHCO (566 mg, 6.74 mmol)の水溶液(18 mL)にFmoc-Val-OSu (2.80 g, 6.42 mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF) (18 mL)溶液を加え、さらにテトラヒドロフラン(THF) (9 mL)を加えて、終夜撹拌した。反応を15% クエン酸水溶液(40 mL)により停止させ、水層をAcOEt/i-PrOH (9/1)混合溶液 (100 mL, 20 mL x 2)により抽出した。あわせた有機層を水 (70 mL)で洗浄し、減圧濃縮した。残渣の固体をジエチルエーテルにより洗浄し、ジペプチドFmoc-Val-Cit-OH(3.11 g, 97%)を白色固体として得た。
[0222]
Fmoc-Val-Cit-OH (3.00 g, 6.04 mmol)とp-アミノベンジルアルコール(PAB) (1.49 g, 12.1 mmol)のジクロロメタン(70 mL)-メタノール (30 mL)の溶液に1-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ) (2.99 g, 12.1 mmol) を加えた。1日後、さらにEEDQ (1.50 g, 6.04 mmol)を加え、終夜撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をジエチルエーテル添加後、超音波により洗浄し、Fmoc-Val-Cit-PAB-OH (2.51 g, 69%)を得た。
[0223]
(2)リンカーとMMAEとの連結およびADCの調製
p-ニトロフェニルカーボネート体 (1.28 g, 1.67 mmol) と1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt) (376 mg, 2.78 mmol) のジメチルホルムアミド(3.4 mL)とピリジン (0.85 mL) の溶液にMMAE (1.00 g, 1.39 mmol) を加えた。24時間後、反応液をSephadex LH20 (溶媒CHCl
3:MeOH 1:1)により精製し、Fmoc-Val-Cit-PABC-MMAE (1.44 g, 77%)を得た。
[0224]
Fmoc-Val-Cit-PABC-MMAE (1.44 g, 1.07 mmol)のジメチルホルムアミド溶液 (20 mL) にEt
2NH (5 mL)を加えた。終夜撹拌後、反応液を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチルとジエチルエーテルにて洗浄し、淡黄色固体 (960 mg, 80%)を得た。
[0225]
H-Val-Cit-PABC-MMAE (960 mg, 0.855 mmol)のジクロロメタン溶液 (20 mL)にマレイミド-ポリエチレングリコール12-スクシンイミジルエステル(Mal-PEG
12-OSu) (814 mg, 0.94 mmol)とジイソプロピルエチルアミン(0.45 mmol, 2.57 mmol)を加えた。終夜撹拌し、反応液をSephadex LH20 (CHCl3:MeOH 1:1)と分子ふるい高速液体クロマトグラフィー(Size Exclusion HPLC)により精製し、Mal-PEG
12-Val-Cit-PABC-MMAE (769 mg, 48%)を無色オイルとして得た。
[0226]
その後、常法に従って、抗体をメルカプトエチルアミンで還元し、Mal-PEG
12-Val-Cit-PABC-MMAEのマレイミド基と抗体のチオール基とをマイケル付加反応により連結してADCを得た。抗体としては、669抗体およびコントロール抗体を用いた。
[0227]
実施例C15-2.抗体の細胞内移行の観察
96ウェルプレートに野生型DLD-1細胞を5000細胞/ウェルで播種して37℃で18時間インキュベートした。1回洗浄し、488ラベルした669抗体2μg/ウェル添加し、一定時間(1時間後、3時間後、または6時間後)、37℃でインキュベートした。3回洗浄し、ウサギ抗488抗体を2μg/ウェルの量で添加し、4℃で30分間静置して、細胞膜表面に結合した抗体に由来する蛍光を消光した。3回洗浄した後、4%PFAを100μL/ウェルで添加して、10分間室温で静置した。さらに3回洗浄した後、DAPI(1/500希釈)を100μL/ウェルで添加して、5分間室温で静置した。3回洗浄した後、撮影もしくはArray Scan解析を行った。対照としては、抗EGFR抗体であるセツキシマブ(Erbitux)を用いた。結果は図25に示される通りであった。
[0228]
図25に示されるように、669抗体は、細胞内に高濃度に濃縮されている様子が観察された。これに対してセツキシマブでは、その取込み量は限定的であった。
[0229]
実施例C15-3.ADCによる細胞殺傷作用
SW480細胞を96穴pレートに2×10
3細胞/ウェルの量で播種した。翌日、MMEA(単剤)、669抗体のADC、およびコントロール抗体のADC(コントロールADC)それぞれをMMAE換算濃度で希釈系列を作製して各ウェルに添加した。3日後、細胞毒性測定試薬であるWST-8を添加して3時間経過後、細胞生存率(%)を観察した。結果は、図26に示される通りであった。
[0230]
図26に示されるように、MMAE同様に669抗体のADCは細胞に対して細胞殺傷作用を発揮することが明らかとなった。また、669抗体のADCは、コントロールADCよりも高い細胞殺傷作用を発揮した。
[0231]
実施例C15-4.TMEM-180ノックアウトマウス
TMEM-180ノックアウトマウスを作製して表現型を観察した。
[0232]
CRISPR-Cas9システムを用いてTMEM180のエキソン2にガイドRNAを作製し、交配させて複数個体のTMEM180ホモノックアウトマウスを得た(図27参照)。胎生致死ではないことを確認した。この結果は、TMEM180の機能喪失は正常組織への影響が少ないことを示唆する。
[0233]
配列番号:1~3は、それぞれ98クローンの重鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:4~6は、それぞれ98クローンの軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:7~9は、それぞれ101クローンの重鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:10~12は、それぞれ101クローンの軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:13及び14は、それぞれ98クローンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号:15及び16は、それぞれ101クローンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号:17はヒトTMEM-180タンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号:18~21は、それぞれ免疫抗原1作製用プライマー(i)~(iv)を示す。
配列番号:22~25は、それぞれ免疫抗原2作製用プライマー(i)~(iv)を示す。
配列番号:26~31は、抗TMEM-180抗体遺伝子のクローニングに用いたプライマーを示す。
配列番号:40~42は、それぞれ212クローンの重鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:43~45は、それぞれ212クローンの軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:46及び47は、それぞれ212クローンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号:48~50は、それぞれ129クローンの重鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:51~53は、それぞれ129クローンの軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:54及び55は、それぞれ129クローンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号:56~58は、それぞれ382クローンの重鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:59~61は、それぞれ382クローンの軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:62及び63は、それぞれ382クローンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号:64~66は、それぞれ1361クローンの重鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:67~69は、それぞれ1361クローンの軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:70及び71は、それぞれ1361クローンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号:72~74は、それぞれ669クローンの重鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:75~77は、それぞれ669クローンの軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:78及び79は、それぞれ669クローンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号:80~82は、それぞれ699クローンの重鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:83~85は、それぞれ699クローンの軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:86及び87は、それぞれ699クローンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号:88~90は、それぞれ1052クローンの重鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:91~93は、それぞれ1052クローンの軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:94及び95は、それぞれ1052クローンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号:96~98は、それぞれ1105クローンの重鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:99~101は、それぞれ1105クローンの軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:102及び103は、それぞれ1105クローンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号:104~150は、HLAPeptide Binding Predictionsによって予測されたHLA type A2に結合するTMEM-180由来ペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号:151~170は、HLAPeptide Binding Predictionsによって予測されたHLA type A24に結合するTMEM-180由来ペプチドのアミノ酸配列を示す。
[0234]
配列番号:171~173は、それぞれ1361-5クローンの重鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:174~176は、それぞれ1361-5クローンの軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を示す。
配列番号:177及び178は、それぞれ1361-5クローンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号:179及び180は、それぞれ1361-5クローンの重鎖の塩基配列及びアミノ酸配列を示す。
配列番号:181及び182は、それぞれ1361-5クローンの軽鎖の塩基配列及びアミノ酸配列を示す。
配列番号:183および184は、それぞれ1361抗体に対してY79A変異の導入に用いたフォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:185および186は、それぞれ1361抗体に対してS82A変異の導入に用いたフォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:187~192は、実施例B11-2に記載される通り、1361抗体のFc領域に部位特異的変異導入するために用いたフォワードプライマーおよびリバースプライマーの核酸配列を示す。
請求の範囲
[請求項1]
transmembrane protein 180(TMEM-180)に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
[1]重鎖CDR1:NYWMT(配列番号:171);
重鎖CDR2:SITNTGGSTAYPDSV(配列番号:172);及び
重鎖CDR3:AGYSSYPDYFDY(配列番号:173)を含む重鎖可変領域と、
軽鎖CDR1:KAGQNIYNYLA(配列番号:174);
軽鎖CDR2:NANSLQT(配列番号:175);及び
軽鎖CDR3:QQYSSGWT(配列番号:176)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、または、
[2]TMEM-180に対する結合において上記[1]に記載の抗体と競合する抗体。
[請求項2]
重鎖可変領域(配列番号:177)及び軽鎖可変領域(配列番号:178)を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[請求項3]
重鎖(配列番号:180)及び軽鎖(配列番号:182)を有する、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[請求項4]
Fc領域に1以上のN-結合型糖鎖が結合し、該N-結合型糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
[請求項5]
請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体を含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物。
[請求項6]
請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、がんを診断することに用いるための組成物。
[請求項7]
請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む、がんを診断することに用いるための診断キット。
[請求項8]
TMEM-180を発現しているがんを対象とする、請求項5に記載の医薬組成物。
[請求項9]
大腸がんを対象とする、請求項5に記載の医薬組成物。
[請求項10]
請求項1~4のいずれか1項に記載の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のいずれか1つをコードする核酸。
[請求項11]
請求項1~4のいずれか1項に記載の重鎖及び軽鎖のいずれか1つをコードする核酸。
[請求項12]
請求項10又は11に記載の核酸を含む発現ベクター。
[請求項13]
請求項12に記載の発現ベクターを含む形質転換体。
[請求項14]
被検者から採取された試料中のTMEM-180量を請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを用いて測定する工程を含む、がんの検査方法。
[請求項15]
大腸がんを対象とする、請求項14に記載のがんの検査方法。
[請求項16]
治療後の再発又は転移の検査に用いられる、請求項14または15のがんの検査方法。
[請求項17]
被験者から採取された体液試料において、TMEM-180を有するエクソソームの量を検出する工程を含む、がんの検査方法。
[請求項18]
請求項17に記載の方法であって、TMEM-180を有するエクソソームの量を検出する工程が、TMEM-180に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを用いて行われる、方法。
[請求項19]
請求項18に記載の方法であって、TMEM-180を有するエクソソームの量を検出する工程が、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを用いて行われる、方法。
[請求項20]
抗TMEM180抗体と細胞傷害剤との抗体薬物コンジュゲートを含む、医薬組成物、または
抗TMEM180抗体が、細胞傷害剤と連結した形態である、請求項5に記載のがんを処置することに用いるための医薬組成物。
図面