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1. (WO2017033809) 細胞測定方法
Document

明 細 書

発明の名称 細胞測定方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016  

発明の効果

0017  

図面の簡単な説明

0018  

発明を実施するための形態

0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059  

実施例

0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069  

符号の説明

0070  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2   3   4   5   6   7  

明 細 書

発明の名称 : 細胞測定方法

技術分野

[0001]
 本発明は、細胞量の測定方法に関する。

背景技術

[0002]
 上皮性悪性腫瘍や肉腫等に対する抗癌剤の感受性試験では、抗癌剤と接触させた癌細胞と接触させなかった癌細胞とを同じ条件で培養して、培養後の癌細胞の増殖度を比較することで癌細胞の抗癌剤に対する感受性を評価する。癌細胞の増殖が少ないほど優れた抗癌剤となる。
[0003]
 癌細胞の培養法として、特許文献1~5には癌細胞をコラーゲンゲルに包埋して培養する方法が記載されている。このコラーゲンゲル包埋培養法は、寒天等の表面で癌細胞を培養する表面培養法に比べて、癌細胞の増殖が良好に行われることが知られている。
[0004]
 培養した癌細胞の定量方法として、特許文献1には、増殖した癌細胞をTVカメラ等で撮像し、得られた画像情報を電子的に画像解析して、癌細胞コロニーの推定体積値を算出する方法が記載されている。また、特許文献3には、コラーゲンゲル内で培養した癌細胞を色素で染色して撮像し、画像濃度に基づいて癌細胞を定量する方法が記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開平3-285696号公報
特許文献2 : 国際公開第95/18216号
特許文献3 : 特開平10-115612号公報
特許文献4 : 特許第3363445号公報
特許文献5 : 特開2008-11797号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 特許文献1や特許文献3に記載された癌細胞の定量方法には、さらなる定量精度の向上という課題があった。抗癌剤の感受性試験は、従来、癌患者から摘出された外科手術材料を出発材料として行われている。近年、患者の身体的負担の軽減を目的として、穿刺針等を用いて細胞を採取する生検材料を出発材料とする抗癌剤感受性試験への要望が高まっている。しかし、生検材料では、手術材料と比べて採取できる組織片が小さく、抗癌剤感受性試験においては、従来の10分の1以下の細胞量を精度よく定量することが求められる。特許文献1や特許文献3では、このような少量の癌細胞を精度良く定量することが難しかった。
[0007]
 本発明は上記を考慮してなされたものであり、より定量精度の高い細胞測定方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明の細胞測定方法は、培養された標的細胞を色素で染色する工程と、前記色素による吸光度が異なる第1の光および第2の光に対する透過像である第1画像および第2画像を取得する工程と、前記第1画像および前記第2画像のそれぞれを複数の分割領域に分割し、前記分割領域毎に前記第1画像と前記第2画像を比較してノイズを排除する工程と、前記ノイズを排除した画像において前記分割領域毎の細胞量の指標を積算することにより、前記標的細胞量を評価する工程とを有する。
[0009]
 ここで、標的細胞とは測定しようとする細胞をいう。また、ノイズとは染色された標的細胞に由来しない、不要な画像情報をいう。また、細胞量の指標とは、画像の濃淡や、画像の濃淡から算出される吸光度など、細胞の多寡に対応して増減する指標を意味する。この方法により、誤差の原因となるノイズの影響を排除して、細胞量を精度よく測定することができる。
[0010]
 好ましくは、前記ノイズを排除する工程は、前記分割領域毎に前記第1画像と前記第2画像を比較して、比較した分割領域の明度の差または比が所定値未満であるときは、当該分割領域を前記標的細胞量の評価の基になるデータから除外する工程である。
[0011]
 あるいは、好ましくは、前記ノイズを排除する工程は、前記分割領域毎に前記第1画像と前記第2画像を比較して、比較した分割領域の吸光度の差または比が所定値未満であるときは、当該分割領域を前記標的細胞量の評価の基になるデータから除外する工程である。
[0012]
 好ましくは、前記標的細胞が癌細胞である。
[0013]
 好ましくは、前記標的細胞が三次元培養された細胞であり、より好ましくは、前記細胞がコラーゲンゲルに包埋して培養された細胞である。
[0014]
 好ましくは、前記第1画像および前記第2画像は、前記第1の光および前記第2の光を同時に照射して、1台のカラーカメラで撮像した画像を色分解することにより取得される。
[0015]
 あるいは、好ましくは、前記第1画像および前記第2画像は、前記第1の光と前記第2の光を順次照射して、1台のカメラで都度撮像することにより取得される。
[0016]
 好ましくは、前記標的細胞量の評価は、前記分割領域毎に画像明度から吸光度を算出し、得られた吸光度を複数の該分割領域にわたって積算して、標的細胞の推定体積値を算出することにより行われる。

発明の効果

[0017]
 本発明の細胞測定方法によれば、培養された標的細胞が少量であっても、細胞量を精度よく評価することができる。

図面の簡単な説明

[0018]
[図1] 本発明の第1の実施形態で用いる細胞測定装置の構成例を示す図である。
[図2] 本発明の第1の実施形態の癌細胞定量方法のフロー図である。
[図3] 画像の明度を説明するための図である。
[図4] 本発明の第1の実施形態の癌細胞定量方法で得られる元画像を説明するための図である。
[図5] ニュートラルレッドの吸光スペクトルである。
[図6] 実施例で癌細胞を定量した試料の元画像である。
[図7] 実施例で癌細胞を定量した試料の元画像である。

発明を実施するための形態

[0019]
 本発明の細胞測定方法の第1の実施形態として、抗癌剤感受性試験における癌細胞の定量方法を以下に説明する。
[0020]
 生体から採取された組織に対しては、培養に先立って、細切、細胞分散酵素処理による細胞間質の消化などの分散処理が行われる。場合によっては、この後に、予備培養で血液などの不要な細胞を除去して、生細胞を回収する分離処理が行われる。
[0021]
 培養試料の作製は、種々公知の方法を用いることができる。なかでも、三次元培養法を用いるのが好ましい。より好ましくはコラーゲンゲル包埋培養法を用いるのがよい。この方法では、培養に使用する癌細胞の量が少なくても良好な培養およびその後の癌細胞の定量が行える。
[0022]
 コラーゲンゲル包埋培養法による手順は次のとおりである。分離・分散処理された細胞をコラーゲン溶液に混合する。このとき、コラーゲン溶液に、コラーゲン以外にも培養に必要な各種成分を添加しておくことができる。例えば、コラーゲン溶液に、目的とする細胞の生理的条件と同一または近似した緩衝液を添加することができる。この癌細胞を含むコラーゲン溶液を、培養容器内の支持面上に滴下して滴塊状のコラーゲンゲルを形成させ、培養容器内に液体培地を添加する。同様にいくつかの試料を調製する。一部の試料では、培養容器に抗癌剤を添加し、所定時間経過後に抗癌剤を洗浄除去して、再度培養を行う。
[0023]
 培養終了後、培養容器に色素を添加して、標的細胞である癌細胞を染色する。染色方法としては、通常の癌細胞培養における染色方法が適用できる。具体的には、ギムザ液染色法、クリスタルバイオレット染色法、ニュートラルレッド(NR)染色法、フルオレセインジアセテート(FDA)染色法あるいはその他の蛍光試薬を用いた染色法が挙げられる。染色法としては、癌細胞を選択的に染色でき、癌細胞以外の成分を出来るだけ染色しない方法が好ましい。生細胞を選択的に染色する生細胞染色法を用いれば、抗癌剤の感受性等を測定するのに適している。NR染色法は、癌細胞のうち生細胞だけを選択的に染色できる方法として好ましい。
[0024]
 染色完了後、ホルマリンにより色素を細胞内に固定して、乾燥させる。コラーゲンゲル乾燥物は、滴塊状コラーゲンゲルから水分が抜けて、平坦な面状になる。
[0025]
 次に、標的細胞を含む試料の撮像と画像処理の方法を説明する。図2に処理のフローチャートを示す。
[0026]
 図1において、本実施形態の測定装置10は、試料20を載せる試料ステージ11と、試料を下方から照射する照明12と、試料の透過像を撮像するカラーカメラ16と、画像処理装置17を有する。照明12は1個のLEDパッケージ13を有し、照明電源14に接続されている。照明と試料ステージの間には光拡散板15が挿入されている。各LEDパッケージには、第1の光を出射するLEDチップ(図示せず)と、第2の光を出射するLEDチップ(図示せず)が組み込まれている。
[0027]
 第1の光および第2の光は試料を染色した色素に対する吸光度が異なる。本実施形態では、第1の光と第2の光を同時に試料に向けて照射し、1台のカラーカメラで撮像して1枚の元画像を取得する。この元画像を色分解することにより、第1の光に対する透過像である第1画像と、第2の光に対する透過像である第2画像が取得される。
[0028]
 第1の光および第2の光は、前記色素に対する吸光度の違いが大きいほど好ましい。十分な測定精度を得るには、第1の光および第2の光が試料を透過する際の減衰量の比が1.5倍以上あることが好ましく、2倍以上あることがさらに好ましい。そのためには、両者の吸光度の差は、好ましくはlog1.5≒0.18以上であり、より好ましくlog2≒0.30以上である。吸光度は測定条件によって変化するので、実際の測定条件の下でこのような差が得られるように、第1の光および第2の光の波長を選択するのが好ましい。
[0029]
 例として、図5にニュートラルレッド(NR)のpH=7.1における吸光スペクトルを示す(小畠りから、中和滴定と酸塩基指示薬の可視吸収スペクトル、慶応義塾大学日吉紀要自然科学、2011年9月、No.50、pp.77-102を基に作成)。NRはこのpHでは約380nm~600nmの範囲に吸収帯があり、462nmと518nmに吸収ピークを有する。この場合、第1の光には波長分布がこの吸収帯と重なる緑色の光を、第2の光には波長分布がこの吸収帯と重ならない赤色の光を選択することができる。
[0030]
 照明の光源としては、LEDを用いるのが好ましい。LEDは波長分布が狭く、第1画像と第2画像の違いが明瞭に出やすいからである。なお、照明の物理的な形態は特に限定されない。例えば、LEDパッケージの数は特に限定されない。また、例えば、本実施形態のように第1の光を出射するLEDチップと第2の光を出射するLEDチップが一つのLEDパッケージに組み込まれていてもよいし、第1の光を出射するLEDパッケージと第2の光を出射するLEDパッケージを交互に並べてもよい。
[0031]
 画像は多数の画素データの集合として構成される。各画素には、カメラの撮像素子に捉えられた光の強度に対応した明度を表す情報が含まれている。明度は、例えば、撮像の取込階調が8ビットであれば0~255の256通りの数値で表される。光が試料を通過する際に吸収があると、透過像上でその部分は暗く、すなわち明度が小さく写る。
[0032]
 第1の光に対する透過像である第1画像は、NRによる吸収が大きいので、培養試料中にNRに染色された癌細胞が存在すれば、その部分の透過光強度は小さくなる。そして、癌細胞の厚さが大きいほど、透過光強度は小さく、画像の明度は小さくなる。他方、第2の光に対する透過像である第2画像は、癌細胞の存在量をあまり反映しない。
[0033]
 ここで、第1画像および第2画像のそれぞれを同じ方法で複数の分割領域に分割する。同じ方法で分割するとは、第1画像と第2画像の対応する分割領域同士が同じ大きさであって、試料の同じ場所を写したものであるように分割することをいう。以下に述べる画像の処理は各分割領域毎に行われる。本実施形態では、一つの画素を一つの分割領域とする。第1画像および第2画像は一つの元画像から得られるので、各画素は両画像を同じ方法で分割した領域である。
[0034]
 まず、癌細胞を含まない試料の画像情報から得られるブランク画像明度Wと、暗黒状態の画像情報から得られる暗画像明度Bとを上下限として、画素毎に前記上下限値に対する明度の相対値を求めて、第1画像および第2画像を補正する。ブランク画像は、癌細胞を添加しないことを除いて癌細胞の培養試料と同じ工程を経て処理されたブランク試料を撮像して得られた、最も明るい状態の画像である。ただし、コラーゲンゲル基質などは存在するので、完全な白画像ではない。暗画像は、撮影レンズのシャッターを閉じるなどして光が入らないようにした最も暗い状態での画像である。図3に示すように、第1画像の明度T と第2画像の明度T は、ブランク画像の明度Wと暗画像の明度Bとの間にある。
[0035]
 次に、第1画像と第2画像を比較して、ノイズの影響を排除する。
[0036]
 第1画像と第2画像の各画素を比較して、明度の差または比が所定の閾値より小さい場合は、その画素の領域は癌細胞ではないと判断して、当該画素を除外する。より詳しくは、当該画素のデータを、後に癌細胞量を評価する際の基になるデータから除外する。具体的には、例えば、第1画像を修正して、当該画素の明度を上記ブランク画像の明度で上書きすればよい。これにより、当該画素の明度は癌細胞量の評価に影響を及ぼさず、実質的に除外される。
[0037]
 上記閾値として、明度の差を基準とする場合は、例えば、閾値を明度の階調数の8分の1とすることができる。つまり、明度が8ビット・256階調で表されるときは、第1画像と第2画像の明度の差が32より小さい場合に当該画素を除外すればよい。あるいは、明度の比を基準とする場合は、第1画像と第2画像の明度の比が所定の閾値より小さい場合に当該画素を除外すればよい。より好ましくは、これらの閾値は予備実験により求めておく。
[0038]
 あるいは、各画素の明度から吸光度を求め、吸光度の差または比が所定の閾値より小さい場合に、その画素の領域が癌細胞ではないと判断してもよい。
[0039]
 不透明なゴミは、波長によらず光を透過しないので、第1画像でも第2画像でも同様に暗く写る。また、コラーゲンゲル乾燥物に含まれる気泡は、光の屈折によって画像上で暗く写るので、やはり光源の波長によらず、第1画像でも第2画像でも同様に暗く写る。したがって、第1画像と第2画像で明度に差がない領域を除外することによって、これらのノイズを排除することができる。
[0040]
 なお、気泡は、コラーゲンゲル包埋培養法において細胞量が少ない場合に特に問題となる。細胞量が少ないと、コラーゲンゲル乾燥物に気泡が残ることがある。その原因は明らかでないが、細胞量が多い場合は、ゲル内の気体がゲル滴塊中の細胞と基質の界面を通って外部に抜けるのに対して、細胞量が少なくなると、ゲル内の気体が抜けきらずに残存するものと考えられる。
[0041]
 図4に、NRで染色した試料の透過像(元画像)を示す。第1の光は主波長が528nmの緑色の光、第2の光は主波長が625nmの赤色の光であった。ただし、図4はカラー画像である元画像を白黒画像に変換したもので、解像度も変換している。中央部の円形の範囲が試料(コラーゲンゲル乾燥物)である。試料中に多数散在する細かな暗点が癌細胞またはそのコロニーで、元画像では赤く、第1画像には暗く現れ、第2画像には現れない。ただし、点線で囲んだ暗点はゴミで、元画像では灰色で、第1画像および第2画像に暗く現れる。上方の中実の楕円と下方の中空の楕円が気泡によるノイズで、元画像では灰色で、第1画像および第2画像に暗く現れる。
[0042]
 ノイズの他の原因に、線維芽細胞の混入がある。線維芽細胞の影響は、特許文献3に記載された方法によって排除することができる。線維芽細胞は、癌細胞とともにNR等の色素で染色されるが、癌細胞に比べて格段に染色され難く、画像の明度が癌細胞に比べて明らかに高くなる。そこで、第1画像において、ある画素の明度が所定の閾値を超える場合は、その画素の領域が線維芽細胞であると判断して、当該画素を除外する。具体的には、例えば、第1画像を修正して、当該画素の明度を上記ブランク画像の明度で上書きすればよい。閾値は、予備実験により求めておくことができる。
[0043]
 あるいは、線維芽細胞の影響を排除する他の方法として、特許文献1に記載されたように、画像解析により、癌細胞と線維芽細胞をその形状から識別して、癌細胞のみの情報を取り出してもよい。
[0044]
 以上の処理を試料の全範囲にわたって繰り返すことで、癌細胞による光吸収に起因しないノイズの影響を排除することができる。
[0045]
 次に、ノイズを排除した画像から、癌細胞を定量する。
[0046]
 癌細胞量は、各画素毎の細胞量の指標を積算することによって評価できる。好ましくは、癌細胞量は推定体積値によって評価される。コラーゲンゲル包埋培養法によれば、癌細胞のコロニーは3次元的に発達するので、その厚さを考慮することで、より的確な評価ができるからである。推定体積値は、各画素の明度から吸光度を求め、吸光度を試料範囲全体にわたって積算することで求められる。各領域において、吸光度は細胞厚さとリニアに相関しているからである。
[0047]
 ランベルト・ベールの法則により、試料への入射光強度をI 、透過光強度をIとすると、
  I/I =exp(-αL)
の関係がある。ここで、αは染色された癌細胞の吸光係数、Lは癌細胞中を光が通過する距離、すなわち癌細胞の厚さである。各画素の癌細胞による吸光度Aは、
  A=-log(I/I
   =(αL)/2.303
で表されるので、吸光度Aは癌細胞厚さLに比例する。吸光度Aは当該画素の細胞量の指標であり、これを試料の全範囲にわたって積算することにより細胞の体積を求めることができる。なお、logは常用対数である。
[0048]
 一方、吸光度Aは、修正された第1画像から、
  A=log{(W-B)/(T -B)}
で求められる。ここで、Wはブランク画像の画素の明度、Bは暗画像の画素の明度、T は修正された第1画像の画素の明度である。
[0049]
 以上より、癌細胞量の推定体積値Vは、
  V=ΣL=CΣA=CΣ[log{(W-B)/(T -B)}]  (式1)
で求められる。ここで、Cは定数である。このように、各画素の明度から吸光度を求め、吸光度を試料範囲全体にわたって積算することによって、細胞の推定体積値を求めることができる。
[0050]
 なお、何らかの理由によって、修正された第1画像の画素の明度T が暗画像の画素の明度Bに等しい(T =B)ときは、式1の右辺対数の真数の分母が0になり、計算ができない。これに対しては、試料画像が暗くなりすぎないように光源の明るさ等を調節するとともに、T =Bになる場合に適当な例外処理を行うのが好ましい。
[0051]
 なお、簡易的には、各画素の明度を積算して、その積算値から吸光度を求めてもよい。推定体積値V は、
  V =C =C log{(ΣW-ΣB)/(ΣT -ΣB)}
で表される。ここで、C は定数、A は吸光度である。この式は試料範囲全体を一つの領域として吸光度を求めているが、細胞量が多ければ、例えば手術材料を出発材料とするような場合には、十分な精度が得られる。この式を用いる場合でも、上記画像処理によって、ゴミ等に起因するノイズの影響はすでに排除されている。
[0052]
 抗癌剤の感受性試験では、抗癌剤を加えなかったコントロール試料と抗癌剤を加えた試料とで、培養後の癌細胞量を比較することにより、抗癌剤の感受性を評価する。
[0053]
 本実施形態の癌細胞定量方法の効果を改めて述べる。
[0054]
 ゴミや気泡によるノイズは、従来の技術では排除することが難しかった。本実施形態の方法によれば、第1の光および第2の光を用いることにより、ゴミの混入や気泡の残存の影響を排除して、癌細胞を精度良く定量することができる。不透明なゴミは、第1画像のみでは癌細胞と誤認識され、さらに画像に暗く写るため厚い癌細胞と誤認識されるので、定量精度を大きく損なう。気泡は、第1画像のみではやはり癌細胞と誤認識され、癌細胞のコロニーに比べて大きなものが多いので、定量精度を大きく損なう。
[0055]
 さらに、上記式1により、試料画像の分割領域毎に吸光度を求めて、それを積算すれば、癌細胞の推定体積値をより正確に算出することができる。
[0056]
 次に、本発明の細胞測定方法の第2の実施形態を説明する。
[0057]
 本実施形態は、第1の実施形態と同じく、抗癌剤感受性試験における癌細胞の定量方法に関する。本実施形態の方法は、第1画像および第2画像の取得方法が第1の実施形態と異なる。その他の工程は第1の実施形態と同様である。
[0058]
 本実施形態では、第1の光を発する第1光源と第2の光を発する第2光源を順次点灯させ、各光源点灯時に1台のカメラで都度撮像を行う。これにより、第1光源点灯時の撮像によって第1画像が、第2光源点灯時の撮像によって第2画像が得られる。なお、本実施形態においても、光源の物理的な形態は特に限定されない。例えば、第1光源であるLEDチップと第2光源であるLEDチップが一つのLEDパッケージに組み込まれていてもよいし、第1光源と第2光源として別個のLEDパッケージを用い、それらを交互に並べてもよい。
[0059]
 本実施形態では、モノクロカメラを使用することができる。その場合は、モノクロカメラの方がカラーカメラよりも高解像度のものが入手可能であるので、より精細な画像を得ることができる。
実施例
[0060]
 上記第1の実施形態を、実施例により、さらに具体的に説明する。
[0061]
 癌細胞としてヒト大腸癌由来細胞株であるHCT-116を用い、コラーゲンゲル包埋法で培養した。細胞を包埋するコラーゲンゲル溶液として、セルマトリックスTypeCD(倉敷紡績株式会社)8容量に、10倍のハムF12培養液(重曹不含)1容量、再構成用緩衝溶液(260mM重曹および200mM-HEPESを含む50mM-NaOH溶液)1容量を加え、氷中に保存した。コラーゲン溶液にHCT-116株を、最終密度が4×10 セル/mLになるように加え、良く混合してコラーゲン混合液を調製した。このコラーゲン混合液を、マイクロ・ピペットを用いて、24ウェルプレートの1ウェルに10μLずつ、適当な間隔をあけて3個所に滴下した。その後、CO インキュベータ中で37℃で1時間加温し、癌細胞を含むコラーゲン基質を作製した。得られたコラーゲンゲル基質に、10%FBS含有DF培地を1mL加えて、16時間培養を行った。その後、ウェルにNR染色剤を注入し、ホルマリン固定・乾燥を行って、コラーゲンゲル乾燥物を得た。
[0062]
 得られたコラーゲンゲル乾燥物を試料ステージに載せ、下方から照明で照らし、カラーカメラで透過像を撮像した。照明は、LEDパッケージ(CREE Inc.、MC-E Color)を1個使用した。LEDパッケージにはRGB3色のLEDチップが搭載されており、この内RおよびGのチップのみを点灯させて使用した。第1の光は主波長528nmの緑色の光、第2の光は主波長625nmの赤色の光であった。カラーカメラ(ソニー株式会社、XCL5005CR)は、画素数2448×2050、RGB各8ビット階調で、光学倍率1.3倍のレンズを用いた。このとき画像の解像度は約2.7μmであった。
[0063]
 撮像された元画像を白黒画像に変換したものが図6(気泡のない試料)および図7(気泡の多い試料)である。図6および図7に示す試料には、ほぼ同程度の量の癌細胞が含まれる。なお、前述の図4も本実施例と同じ方法で得られた画像である。元画像をRGBの3色に色分解して、G画像を第1画像、R画像を第2画像とした。第1画像と第2画像を画素毎に比較して、明度の差が35以内の場合に、癌細胞ではないと判断した。前述の式1によって、画素毎に吸光度を算出し、試料の全範囲にわたって積算して、癌細胞の推定体積値を求めた。このとき、式1の定数Cの値は2.0×10 -4を用いた。
[0064]
 比較例として、第2画像を利用せず、第1画像の明度から吸光度を算出し、試料の全範囲にわたって積算して、癌細胞の推定体積値を同様に求めた。
[0065]
 実施例の方法で得られた推定体積値は、図6が0.42、図7が0.44であった。比較例の方法では、図6が0.47、図7が1.54であった。気泡のない図6では、実施例と比較例で同程度の推定体積値が得られた。他方、気泡の多い図7では、比較例による推定体積値は、実施例のそれの約3倍であった。これは、気泡によるノイズの影響であり、実施例では気泡によるノイズが排除できた。
[0066]
 本発明の細胞測定方法は、上記の実施形態や実施例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
[0067]
 例えば、上記の実施形態では、明度の相対化(ブランク補正)、第1画像と第2画像の比較によるゴミ・気泡等のノイズ排除、線維芽細胞のノイズ排除の順に実施されるが、これらはそれぞれ順番を入れ替えて実施してもよい。
[0068]
 また、例えば、白色照明を用いて、カメラの前方に設けたカラーフィルタを順次切り替えて撮影し、第1画像および第2画像を取得してもよい。
[0069]
 また、例えば、照明に連続スペクトルを有する白色光源を用い、カラーカメラで撮像して色分解をすることで、第1画像と第2画像を取得してもよい。ただし、カラーカメラの撮像素子は一般に感度スペクトルが広く一部が重複しているため、波長の異なる2つの光源を用いる方が、第1画像と第2画像の違いが明瞭に得られる。

符号の説明

[0070]
 10 測定装置
 11 試料ステージ
 12 照明
 13 LEDパッケージ
 14 照明電源
 15 光拡散板
 16 カラーカメラ
 17 画像処理装置
 20 試料

請求の範囲

[請求項1]
 培養された標的細胞を色素で染色する工程と、
 前記色素による吸光度が異なる第1の光および第2の光に対する透過像である第1画像および第2画像を取得する工程と、
 前記第1画像および前記第2画像のそれぞれを複数の分割領域に分割し、前記分割領域毎に前記第1画像と前記第2画像を比較してノイズを排除する工程と、
 前記ノイズを排除した画像において前記分割領域毎の細胞量の指標を積算することにより、前記標的細胞量を評価する工程と、
を有する細胞測定方法。
[請求項2]
 前記ノイズを排除する工程は、前記分割領域毎に前記第1画像と前記第2画像を比較して、比較した分割領域の明度の差または比が所定値未満であるときは、当該分割領域を前記標的細胞量の評価の基になるデータから除外する工程である、
請求項1に記載の細胞測定方法。
[請求項3]
 前記ノイズを排除する工程は、前記分割領域毎に前記第1画像と前記第2画像を比較して、比較した分割領域の吸光度の差または比が所定値未満であるときは、当該分割領域を前記標的細胞量の評価の基になるデータから除外する工程である、
請求項1に記載の細胞測定方法。
[請求項4]
 前記標的細胞が癌細胞である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の細胞測定方法。
[請求項5]
 前記標的細胞がコラーゲンゲルに包埋して培養された細胞である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の細胞測定方法。
[請求項6]
 前記第1画像および前記第2画像は、前記第1の光および前記第2の光を同時に照射して、1台のカラーカメラで撮像した画像を色分解することにより取得される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞測定方法。
[請求項7]
 前記第1画像および前記第2画像は、前記第1の光と前記第2の光を順次照射して、1台のカメラで都度撮像することにより取得される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞測定方法。
[請求項8]
 前記標的細胞量の評価は、前記分割領域毎に画像明度から吸光度を算出し、得られた吸光度を複数の該分割領域にわたって積算して、標的細胞の推定体積値を算出することにより行われる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の細胞測定方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]