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1. (WO2017029703) 無針注射器
Document

明 細 書

発明の名称 無針注射器

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005   0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026  

発明の効果

0027  

図面の簡単な説明

0028  

発明を実施するための形態

0029  

実施例 1

0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054  

実施例 2

0055   0056   0057   0058  

実施例 3

0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065  

符号の説明

0066  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

明 細 書

発明の名称 : 無針注射器

技術分野

[0001]
 本発明は、注射針を介することなく、注射目的物質を注射対象領域に注射する無針注射器に関する。

背景技術

[0002]
 火薬の点火により生じる燃焼ガスのエネルギーを利用して、注射成分を射出する注射器が知られている。例えば、特許文献1に記載の注射器では、バッテリからの着火電流が点火装置に供給されることでフィラメントに電流が流れ、火薬の燃焼により注射液が射出される。このバッテリからの電流供給は、ユーザが注射器の端部に設けられたダイヤフラムを押し込むことで実行されることになる。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 米国特許出願公開第2004/49151号明細書

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 従来技術によれば、火薬の燃焼エネルギー等を利用して注射針を介することなく注射成分を射出する無針注射器においては、ユーザの押圧動作を起点として、火薬の点火が行われるように構成されている。そのため、ユーザの誤操作によって火薬の燃焼が行われてしまうと、意図しない状態で注射液の射出が行われる可能性がある。一般に、無針注射器では、その射出液によって注射対象領域の表面(例えば、ヒトの皮膚等)を貫通する必要があるため、火薬の燃焼により相応に加圧された注射液が射出される。そのため、意図しない注射液の射出は、回避しなければならない。
[0005]
 上記先行技術文献では、注射液の意図しない射出が行われないように、注射器の非使用時にユーザの操作部位であるダイヤフラムを覆う安全部材が配置されている。しかし、使用時においても、注射液が射出される注射口が、必ずしも注射対象領域に接触している状態とは限らないため、例えば、ユーザが使用のために当該安全部材を外した場合に、ダイヤフラムが意図せずに押下され、注射液が誤って射出される可能性は少なからず残されている。
[0006]
 また、火薬の燃焼エネルギー以外のエネルギーを駆動源として、注射針を介することなく注射液を射出して注射対象領域に注射液を届ける注射器においても、ユーザの操作を起点として注射液の加圧を行う場合が多い。そのため、このような場合でも、上記のようにユーザの誤操作等により意図しない注射液の射出が生じ得る。
[0007]
 そこで、本発明は、上記した問題に鑑み、注射針を介することなく注射液等の注射目的物質を射出する注射器において、意図しない射出を好適に回避することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0008]
 上記課題を解決するために、本発明は、注射針を介することなく注射目的物質(例えば、注射液)を射出する注射器において、駆動部への電圧印加を、ユーザの注射操作と関連付けることで、すなわち、ユーザが注射を行うために注射器の射出口を注射対象領域に接触させる操作と、駆動部への電圧印加を機械的に関連付けることとした。これにより、ユーザが注射のために行う一連の動作を経ることが、注射目的物質の射出許可のための要件となるため、ユーザが意図しない注射目的物質の射出を的確に回避することが可能となる。
[0009]
 具体的には、本発明は、注射針を介することなく、注射目的物質を射出することによって該注射目的物質を注射対象領域に注射する無針注射器であって、前記無針注射器のハウジング内に設けられた、前記注射目的物質を収容する収容部と、電圧が印加されると作動して、前記収容部に収容された前記注射目的物質を射出するための射出エネルギーを発生させる駆動部と、前記駆動部により発生された射出エネルギーが付与された前記注射目的物質が流れる流路を含み、該流路の先端に形成された射出口から該注射目的物質を射出するノズル部と、その先端が前記ハウジングの端面から突出した第1の位置から、該先端の該ハウジングの端面からの突出長さが該第1の位置における突出長さよりも短い位置であって、該先端と前記射出口とが前記注射対象領域に接触し得る第2の位置まで移動可能に設けられた突出部材と、前記駆動部による射出エネルギーの発生前において、前記突出部材を前記第1の位置に維持する維持機構と、前記第1の位置に維持されていた前記突出部材が、該突出部材の先端が受けた押圧力により前記第2の位置に移動すると、前記駆動部に電圧を印加する電源回路と、を備える。
[0010]
 本発明に係る無針注射器において、駆動部は、電源回路からの印加電圧により注射目的物質を射出するためのエネルギーを発生し、注射目的物質に当該エネルギーを伝えることが可能であれば、エネルギー源としては、様々な公知のエネルギー発生態様を採用することができる。例えば、点火装置によって点火される点火薬や、燃焼によりガスを発生させるガス発生剤を採用することができる。また、上記以外の駆動部の態様として、バネ等の弾性部材のエネルギーや圧縮ガスのエネルギーの開放を、電源回路からの印加電圧によって制御する構成を採用してもよい。例えば、電源回路からの電圧印加によって駆動される電磁バルブやソレノイドアクチュエータ等を利用して、付勢バネで固定されているピストンを係止状態から開放させることで、蓄積されていた付勢バネの弾性エネルギーを、射出エネルギーとして利用することができる。
[0011]
 なお、火薬の燃焼エネルギーを射出エネルギーとして利用する場合、点火薬としては、例えば、ジルコニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬、水素化チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬、チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬、アルミニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬、アルミニウムと酸化ビスマスを含む火薬、アルミニウムと酸化モリブデンを含む火薬、アルミニウムと酸化銅を含む火薬、アルミニウムと酸化鉄を含む火薬のうち何れか一つの火薬、又はこれらのうち複数の組み合わせからなる火薬であってもよい。これらの点火薬の特徴としては、その燃焼生成物が高温状態では気体であっても常温では気体成分を含まないため、点火後燃焼生成物が直ちに凝縮を行う結果、本発明の注射器を生体に対する注射に用いた場合、生体の注射対象領域のより浅い部位への効率的な注射が可能となる。また、ガス発生剤の発生エネルギーを射出エネルギーとして利用する場合、ガス発生剤としては、シングルベース無煙火薬や、エアバッグ用ガス発生器やシートベルトプリテンショナ用ガス発生器に使用されている各種ガス発生剤を用いることも可能である。
[0012]
 上記駆動部による射出エネルギーは、収容部に収容されている注射目的物質に対して伝えられ、ノズル部に形成された流路に沿って注射目的物質が押し出され、最終的に射出口から注射対象領域に向けて射出される。ここで、従来技術では、電源回路から駆動部への電圧印加のための操作は、無針注射器の注射のための準備操作、すなわちノズル部に設けられた射出口を注射対象領域に対して対峙させる操作であって、多くの場合は、効率的に注射目的物質を注射対象領域内に届けるために射出口を注射対象領域の表面に接触させる操作(以下、単に「準備操作」という)とは独立して行われる。すなわち、従来技術では、準備操作を行い、その操作が完了した状態でユーザによる射出実行のための操作(例えば、射出のための電圧印加を実行する操作ボタンの押下等が挙げられ、また、当該操作を「射出実行操作」という)が実行される。しかし、このように準備操作と射出実行操作が独立していると、準備操作が完了していない状態、すなわち、注射対象領域に対する射出口の位置決めが完了していない状態で、射出実行操作が誤って行われ、ユーザが意図しない注射目的物質の射出が行われる可能性が払拭しきれない。
[0013]
 そこで、本願発明に係る無針注射器では、ハウジングの端面から先端が突出した突出部材が備えられている。当該突出部材は、注射目的物質の射出口からの射出方向に突出する部材であり、その突出状態に関し第1の位置と第2の位置との間を移動可能となるように構成されている。当該第1の位置は、無針注射器が使用される前、すなわち駆動部による射出エネルギーの発生前に維持機構によって突出部材が採る位置であり、少なくとも無針注射器において射出口の位置よりも突出部材の先端部が射出方向に突出している位置である。そのため、ユーザが注射対象領域に注射目的物質を注射しようとすると、第1の位置に置かれた突出部材が、射出口よりも先に注射対象領域の表面に接触することになる。
[0014]
 そして、第2の位置は、突出部材が外力によってハウジングの内部に押し込まれたときに突出部材が採る位置であり、したがって、第2の位置におけるハウジングの端面からの先端部の突出長さは、第1の位置における突出長さよりも短くなる。なお、本願発明に係る突出長さは、突出部材がハウジングの端面から突出している量を示す概念であり、突出部材が当該端面と面一となる状態、すなわち突出量が零も含むものである。そして、突出部材がその先端が注射対象領域から受ける押圧力によって第2の位置に至ると、突出部材の先端と射出口とが注射対象領域に接触した状態が形成されるとともに、電源回路から駆動部への電圧印加が実行されるように、無針注射器が構成されている。このことは、ユーザによる準備操作が完了した時点、すなわち射出口と注射対象領域とが接触した状態を形成した時点に、射出実行操作が連動して実行されることを意味する。したがって、本願発明に係る無針注射器では、準備操作と射出実行操作をそれぞれ独立した操作とせず、突出部材を介して準備操作と射出実行操作とを機械的に関連付けていることになる。これにより、ユーザが準備操作が完了していない状態で射出実行操作を誤って実行してしまうことを回避することが可能となる。
[0015]
 換言すれば、本発明の無針注射器は、ユーザが明らかな意思をもって準備操作を行わなければ射出実行操作が許可されないように構成されるものであり、したがって射出実行操作のためには、例えばユーザが意図的に注射器に荷重を加えて、注射対象領域に押し付ける操作が必要とされる。そのため突出部材が第1の位置から第2の位置に移動するに必要な荷重もそれに応じて調整する必要があり、その調整は例えば維持機構によって行われてもよい。なお突出部材は、無針注射器を注射対象領域に押し付けたときに、その押し付ける向きとは逆の向きに移動するようにできる限りにおいては、種々の機構を採用することができる。
[0016]
 また、本発明に係る無針注射器においては、ノズル部の先端はハウジングの端面と面一であってもよく、又は、ノズル部がハウジングの端面より突出した状態であってもよい。前者の場合、突出部材が採る第2の位置は、突出長さが零となる位置であり、後者の場合は、突出部材が採る第2の位置は、突出長さがノズル部のハウジング端面からの突出量と同じ場合(突出長さは零ではない)もあり、またノズル部の突出量よりも小さくなる場合もある。
[0017]
 なお、本発明に係る無針注射器においては、注射目的物質は、注射対象領域の目的部位で効能が期待される成分を含むものである。そのため、少なくとも駆動部によるエネルギーでの射出が可能であれば、収容部における注射目的物質の収容状態や、液体やゲル状等の流体、粉体、粒状の固体等の注射目的物質の具体的な物理的形態は問われない。たとえば、注射目的物質は液体であり、また固体であっても射出を可能とする流動性が担保されればゲル状の固体であってもよい。そして、注射目的物質には、目的部位に送り込むべき成分が含まれ、当該成分は注射目的物質の内部に溶解した状態で存在してもよく、又は当該成分が溶解せずに単に混合された状態であってもよい。一例を挙げれば、送りこむべき成分として、抗体増強のためのワクチン、美容のためのタンパク質、毛髪再生用の培養細胞等があり、これらが射出可能となるように、液体、ゲル状等の流体に含まれることで注射目的物質が形成される。
[0018]
 ここで、上記の無針注射器において、前記突出部材は、前記射出口を包囲する環状の部材から形成されてもよい。このように突出部材が射出口を包囲するように構成されることで、注射目的物質の射出が行われたときに、注射対象領域の内部に入り込まなかった注射目的物質の一部を、環状の突出部材で遮断し、ユーザの周囲に飛散することを防止することが可能となる。また、当該突出部材は、環状ではなくその一部を切り欠いた状態で射出口を包囲するように形成しても、切り欠き距離を短くすることで注射目的物質の飛散をより確実に防止することができる。
[0019]
 また、上記の無針注射器は、前記突出部材を複数備えてもよく、その場合、複数の前記突出部材の全てが、前記第2の位置に移動することで、前記電源回路から前記駆動部への電圧印加が実行される。このように無針注射器が構成されることで、全ての突出部材の第2の位置への移動が電圧印加のトリガーとなることになる。そのため、ユーザに対して、より注意深い準備操作を促すことができ、意図しない注射目的物質の射出をより的確に回避することができる。また、別の側面からは、このような構成により、注射を行うために全ての突出部材を第2の位置に移動させるべく、ユーザに、注射対象領域に対して無針注射器の姿勢を制御させることが可能となり、適切な注射の実現に資するものである。
[0020]
 また、上記のように複数の突出部材が備えられる場合、前記複数の突出部材は、前記ハウジングの端面上において、前記射出口の周囲に円周方向に沿って配置されてもよい。この場合、各々の突出部材は、ノズル部からの距離が等しくなるように配置されるのが好ましい。このような構成により、注射対象領域に対する無針注射器の姿勢を、射出口を中心としてより適切な姿勢(例えば、注射対象領域に対して垂直となる姿勢)とすることが可能となる。
[0021]
 また、上記のように複数の突出部材が備えられる場合、前記ハウジングは、内部を視認するための視認窓をその側面に備え、前記収容部は、収容された前記注射目的物質を、前記視認窓を通して外部から視認できるように形成されてもよい。この場合、前記複数の突出部材のそれぞれは、前記第1の位置から前記第2の位置への移動の前後において、前記視認窓と重ならないように配置されるのが好ましい。このような構成により、複数の突出部材による効果(的確な意図しない注射目的物質の射出回避や、無針注射器の姿勢維持)を妨げることなく、ユーザによる視認窓を通した注射目的物質の確認を確実に担保することができる。
[0022]
 ここで、上記の無針注射器において、前記収容部、前記駆動部、及び前記ノズル部を一つのユニットとしてまとめて前記ハウジング内に格納するユニットであって、該ノズル部における前記射出口は、該ユニットの先端に配置される、シリンジユニットを、更に備えてもよい。その場合、前記突出部材は前記シリンジユニットとして形成され、且つ、前記第1の位置は、該シリンジユニットの先端が、前記ハウジングの端面から突出した位置であるのが好ましい。このような構成により、シリンジユニット自体が本願発明に係る突出部材として機能させることが可能となる。具体的には、第1の位置にあるシリンジユニットが、射出口と注射対象領域が接触した状態でハウジング内に押し込まれて第2の位置に移動することで、電源回路から駆動部への電圧印加が実行されることになる。この結果、ユーザの準備操作と射出実行操作とを機械的に関連付けることができ、以て、意図しない注射目的物質の射出を回避することができる。
[0023]
 また、上記の無針注射器において、前記ハウジングの端面上に、前記シリンジユニットの先端を包囲する環状の弾力性を有するカバーを、更に備えてもよい。その場合、前記カバーは、前記シリンジユニットが前記第1の位置にあるときは、該カバーの先端の前記ハウジングの端面からの突出長さが、該シリンジユニットの先端の前記ハウジングの端面からの突出長さ以上であり、かつ、該シリンジユニットが前記押圧力によって押し込まれるときは、該押圧力によって弾性的に変形することによって前記シリンジユニットが前記第2の位置まで移動することを許容するように形成されるのが好ましい。シリンジユニットが第1の位置にあるときにカバーの先端がシリンジユニットの先端と面一になるかそれ以上突出していることで、不用意にシリンジユニットに押圧力が作用することを防ぐことができる。そして、押圧力によって弾性部材が変形していくことで、シリンジユニットが第1の位置から第2の位置へ移動することが可能となる。このため、少なくとも駆動部に電圧印加されるためには弾性部材の弾性力に抗していく必要があるため、不用意なシリンジユニットへの押圧力の作用があってもいたずらに電圧印加が生じることを回避することが可能となる。
[0024]
 ここで、上述までの無針注射器において、前記突出部材が前記第1の位置から前記第2の位置への移動方向とは異なる方向において、前記電源回路から前記駆動部への電圧印加に関するユーザの操作により操作される操作スイッチを、更に備えてもよい。その場合、前記突出部材が前記第2の位置へ至り、且つ、前記操作スイッチが電圧印加可能となるように操作されることで、前記電源回路から前記駆動部への電圧印加が実行される。すなわち、当該無針注射器は、突出部材を第1の位置から第2の位置へ移動させる操作に加えて操作スイッチの操作を、射出実行操作として準備操作に関連付ける発明である。このとき、前者の操作方向と後者の操作方向が異なるように設定されることで、射出実行操作における両者の操作を、互いに独立したものとすることができる。これにより、駆動部への電圧印加のためには、ユーザに、注射対象領域に射出口を接触させる操作とは別に操作スイッチの操作を行う必要が科せられることになる。そのため、より的確に、意図しない注射目的物質の射出を回避することができる。
[0025]
 ここで、突出部材の第1の位置に維持する維持機構の態様として、以下に示す形態を例示できる。例えば、上述までの無針注射器において、前記維持機構は、前記突出部材をその突出方向へ所定の付勢力で付勢する付勢部材を有してもよい。このような構成では、突出部材を付勢部材による所定の付勢力に抗して押し込んでいくことで、第2の位置へと移動させ、駆動部への電圧印加を実行することができる。なお、所定の付勢力は、突出部材の第2の位置への移動しやすさを決定するものであるから、ユーザの利便性や、意図しない注射目的物質の射出回避の実効性等を考慮して決定すればよい。
[0026]
 また、維持機構の別の態様として、上述までの無針注射器において、前記維持機構は、前記押圧力が所定値以下のときは該押圧力に抗して前記突出部材を前記第1の位置に維持し、該押圧力が該所定値より大きいときには該突出部材の、前記第2の位置への移動を許容するような嵌合関係に形成さてもよい。このような構成では、突出部材への押圧力が所定値を超えることで嵌合関係が解除され、突出部材を第2の位置へと移動させ、駆動部への電圧印加を実行することができる。なお、所定値の大きさは、突出部材の第2の位置への移動しやすさを決定するものであるから、上記態様と同じように、ユーザの利便性や、意図しない注射目的物質の射出回避の実効性等を考慮して決定すればよい。

発明の効果

[0027]
 注射針を介することなく注射液等の注射目的物質を射出する注射器において、意図しない射出を好適に回避することが可能となる。

図面の簡単な説明

[0028]
[図1] 本発明に係る無針注射器の概略構成を示す第1の図である。
[図2] 本発明に係る無針注射器の概略構成を示す第2の図である。
[図3] 本発明に係る無針注射器におけるスイッチ機構の動作を示す図である。
[図4] 本発明に係る無針注射器の正面図である。
[図5] 本発明に係る無針注射器の第2の実施例を示す概略図である。
[図6] 本発明に係る無針注射器の第3の実施例を示す概略図である。
[図7] 本発明に係る無針注射器の第4の実施例を示す概略図である。
[図8] 本発明に係る無針注射器の第5の実施例を示す概略図である。
[図9] 本発明に係る無針注射器の第6の実施例を示す概略図である。

発明を実施するための形態

[0029]
 以下に、図面を参照して本願発明の実施形態に係る無針注射器1(以下、単に「注射器1」という)について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本願発明はこの実施の形態の構成に限定されるものではない。
実施例 1
[0030]
 <注射器1の構成>
 ここで、図1、図2に注射器1の概略構成を示す。図1は注射器1の斜視図であり、図2は、注射器1のその長手方向に沿った断面図である。注射器1は、後述するシリンジユニット10が、ハウジング2内に装填されることで形成される。なお、本願の以降の記載においては、注射器1によって注射対象領域に注射される注射目的物質を「注射液」と総称する。しかし、これには注射される物質の内容や形態を限定する意図は無い。注射目的物質では、注射対象領域である皮膚構造体等に届けるべき成分が溶解していても溶解していなくてもよく、また注射目的物質も、加圧することでノズル16aから注射対象領域に対して射出され得るものであれば、その具体的な形態は不問であり、液体、ゲル状等様々な形態が採用できる。
[0031]
 注射器1は、ハウジング2にシリンジユニット10が脱着自在となるように構成されている。シリンジユニット10は、注射液の射出を行う度に使い捨てられるユニットであり、一方で、ハウジング2側には、シリンジユニット10に含まれる点火器11に電力供給するバッテリ30が含まれており、バッテリ30に点火器11に供給し得る電力が残っている限りにおいてはハウジング2は繰り返し使用することができるユニットである。なお、バッテリ30も交換可能とすることもできる。
[0032]
 ここで、シリンジユニット10は、そのボディが筒状に形成され、その内部に、火薬成分を燃焼させて射出のためのエネルギーを発生させる電気式点火器である点火器11を有し、点火器11によるエネルギーを後述するシリンジ(収容部)16側に伝えるピストン14が組み込まれた状態となっている。詳細には、シリンジユニット10のボディは、樹脂の射出成形によって製造され、当該射出成形については、公知の方法を使用することができる。このとき、点火器11での火薬の燃焼によって生成される燃焼ガスが放出される向きに、ピストン14が位置するように、ボディにおける点火器11の位置決めがなされ、点火器11がボディと一体となるように、インサート成形される。なお、シリンジユニット10のボディの樹脂材料としては、例えば、公知のナイロン6-12、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド又は液晶ポリマー等が使用できる。また、これら樹脂にガラス繊維やガラスフィラー等の充填物を含ませてもよく、ポリブチレンテレフタレートにおいては20~80質量%のガラス繊維を、ポリフェニレンサルファイドにおいては20~80質量%のガラス繊維を、また液晶ポリマーにおいては20~80質量%のミネラルを含ませることができる。更に、耐熱性や耐圧性が必要な部分は金属を併用してもよい。
[0033]
 ここで、点火器11において用いられる点火薬として、好ましくは、ジルコニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬(ZPP)、水素化チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬(THPP)、チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬(TiPP)、アルミニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬(APP)、アルミニウムと酸化ビスマスを含む火薬(ABO)、アルミニウムと酸化モリブデンを含む火薬(AMO)、アルミニウムと酸化銅を含む火薬(ACO)、アルミニウムと酸化鉄を含む火薬(AFO)、もしくはこれらの火薬のうちの複数の組合せからなる火薬が挙げられる。これらの火薬は、点火直後の燃焼時には高温高圧のプラズマを発生させるが、常温となり燃焼生成物が凝縮すると気体成分を含まないために発生圧力が急激に低下する特性を示す。適切な注射が可能な限りにおいて、これら以外の火薬を点火薬として用いても構わない。
[0034]
 なお、点火器11の前方(燃焼ガスが放出される方向)には燃焼室12が形成され、その燃焼室12に繋がる、軸方向に沿って径が一定である貫通孔13が設けられている。そして、貫通孔13の残りの一端はシリンジ16を収容するための空間に至っている。この貫通孔13には、金属製のピストン14が、貫通孔13内を軸方向に沿って推進可能となるように配置され、その一端が燃焼室12側を向いており、また、残りの他端は、シリンジ16において注射液を封入するためのプランジャ15に連結されている。
[0035]
 ここで、注射液を封入しているシリンジ16について説明する。プランジャ15は、樹脂で形成されている。プランジャ15の材質としては、例えば、ブチルゴムやシリコンゴムが採用できる。更には、スチレン系エラストマー、水添スチレン系エラストマーや、これにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、α-オレフィン共重合体等のポリオレフィンや流パラ、プロセスオイル等のオイルやタルク、キャスト、マイカ等の粉体無機物を混合したものがあげられる。さらにポリ塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーや天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、それらの混合物等を、プランジャの材質として採用することもできる。
[0036]
 このようにシリンジ16にプランジャ15が配置されることで、シリンジ16内に注射液を封入するための密閉空間16aが形成される。また、シリンジ16の先端部、すなわちプランジャ15が挿入される端部とは反対側の端部には、注射液を外部に射出するためのノズル16bが形成されている。このように構成されるシリンジユニット10では、点火器11での火薬の燃焼で生成された燃焼ガスにより燃焼室12内が高温高圧の状態となる。その結果、ピストン14が加圧により貫通孔13を推進し、密閉空間16aに収容されていた注射液を加圧し、ノズル16bの射出口から外部に注射液が射出されることになる。
[0037]
 なお、図2に示す燃焼室12内には、特に追加的な火薬成分は配置されていないが、ピストン14を介して注射液にかける圧力推移を調整するために、燃焼室12内に点火器11での火薬燃焼によって生じる燃焼生成物によって燃焼しガスを発生させるガス発生剤等を配置することもできる。ガス発生剤の一例としては、ニトロセルロース98質量%、ジフェニルアミン0.8質量%、硫酸カリウム1.2質量%からなるシングルベース無煙火薬が挙げられる。また、エアバッグ用ガス発生器やシートベルトプリテンショナ用ガス発生器に使用されている各種ガス発生剤を用いることも可能である。燃焼室12内に配置されるときのガス発生剤の寸法や大きさ、形状、特に表面形状を調整することで、該ガス発生剤の燃焼完了時間を変化させることが可能であり、これにより、注射液にかける圧力推移を所望の推移、すなわち注射対象領域に注射液が適切に到達し得る推移とすることができる。本発明では燃焼室12に配置される点火器11を駆動部とし、必要に応じて使用されるガス発生剤なども駆動部に含まれるものである。
[0038]
 このように構成されるシリンジユニット10は、図1に示すように、ハウジング2の側面に設けられた開口部から収容空間2bに装着される。このとき、シリンジ16の先端部に位置するノズル16bが、ハウジング2の先端面3に設けられた貫通孔4にはめ込まれ、図示しない弾性部材による固定手段によって、シリンジユニット10の基端部側(ノズル16bが設けられた先端部とは反対側の端部)が収容空間2bの奥に位置する底面2c側に押しつけられた状態で収容空間2bでの固定が行われる。この結果、シリンジユニット10の基端部側の端面上に設けられた点火器11用の接続端子10aが、底面2c上に設けられたバッテリ30側の接続端子30aと接触した状態で位置決めされる。なお、図2は、注射器1の構成が理解しやすくなるように、意図的に接触端子10a、30a同士を離した状態で記載している。この固定状態においては、バッテリ30から互いに接触した接続端子10a、30aを介して点火器11に電圧印加がされれば、火薬の燃焼により注射液の射出が実行されることになる。
[0039]
 なお、ハウジング2の収容空間2bに至るための開口部には、そこを開閉するための扉部2aが設けられている。ユーザは、注射器1の使用にあたってシリンジユニット10をハウジング2に装着する際は、その扉部2aを開くことで当該開口部にアクセスでき、シリンジユニット10の装着が完了すると、扉部2aを閉めることでシリンジ3が不意に脱落してしまうのを抑制することができる。
[0040]
 ここで、注射器1における注射液射出のための操作、すなわちバッテリ30から点火器11への電圧印加のための操作に関する構成について説明する。注射器1では、バッテリ30から点火器11への電圧印加は、スイッチ部材35、36から構成されるスイッチによってその実行が制御されることになる。すなわち、スイッチ部材35、36によって、バッテリ30から点火器11への電圧印加のための回路が形成されている。ここで、スイッチ部材35は棒状に形成され、ハウジング2の長手方向に沿ってスイッチ部材35がハウジング2内に、その長手方向にスライド可能となるように配置される。図2に示す状態では、スイッチ部材35の先端部35aは、ハウジング2の先端部の端面3aから突出しており、その突出高さはh1で表される。そして、スイッチ部材35の基端近くに鍔部35bが設けられ、更に、基端部35cが配置されている。ここで、底面2c上に配置された接続端子30aとスイッチ部材35の鍔部35b近くの部位は、ハウジング2内で配線33を介して接続され、これにより接続端子30aの一方と基端部35cとの間に電気的な導通状態が形成される。なお、スイッチ部材35の先端部35aは電気的に、基端部35cと絶縁状態が保たれるように構成されている。また、接続端子30aの他方(スイッチ部材35に接続されていない方)は、バッテリ30のマイナス端子に接続されている。
[0041]
 次に、スイッチ部材36は、ハウジング2内に固定され、バッテリ30のプラス端子と接続された金属製の鍔部36aと、絶縁材料によるバネ部36bを有している。バネ部36bは、スイッチ部材35の鍔部35bとスイッチ部材36の鍔部36aに、その両端が接続されている。そのため、ハウジング2内でスライド可能に配置されたスイッチ部材35の位置に応じてバネ部36bが弾性変形し、スイッチ部材35に対して弾性変形量に応じた付勢力を付与することになる。なお、バネ部36bは絶縁材料製であるため、バネ部36bを通して鍔部35bと鍔部36aとの間が電気的に導通状態となることはない。なお、スイッチ部材35は本件発明で言う突出部材に相当し、バネ部36bは作動前の状態において、スイッチ部材35の先端部35aがハウジング2の端面3aから突出した状態を維持する維持機構に相当する。
[0042]
 ここで、スライド可能に配置されたスイッチ部材35に対して外力が作用していない状態では、図2に示すように、バネ部36bの存在により先端部35aが、ハウジング2の先端面3の表面3a、すなわち注射液が射出されるノズル16bの射出口が配置された端面から、高さh1だけ突出した状態に維持される。当該突出状態でのスイッチ部材35の位置が、本発明に係る第1の位置に相当する。このとき、スイッチ部材35とスイッチ部材36は、バネ部36bによって電気的に接触していない状態(以下、「非接触状態」という)に置かれているため、バッテリ30の出力電圧が、接続端子10a、30aを介して点火器11に印加された状態とはなっていない。
[0043]
 ユーザは注射器1によって注射対象領域に注射液を注射しようとする場合、ノズル16bの射出口を注射対象領域の表面に接触させる準備操作と、注射液の射出のために点火器11に対して電圧印加する射出実行操作を行う必要がある。そこで、図3(a)に示すように、準備操作としてユーザがノズル16bの射出口を注射対象領域の表面に接触させようとすると、上記の通りスイッチ部材35の先端部35aが高さh1突出しているため、射出口が注射対象領域に接触する前に先端部35aが注射対象領域に接触することになる。なお、バネ部36bの付勢力により、先端部35aが注射対象領域に接触しただけでは、スイッチ部材35はハウジング2内にスライドしていくことはない。
[0044]
 そして、先端部35aが注射対象領域に接触した状態を保ったまま、ユーザによって注射器1を注射対象領域に近づけ、図3(b)に示す状態、すなわちノズル16bの射出口が注射対象領域に接触した状態とされる。このとき、スイッチ部材35にはバネ部36bが接続されているため、ユーザはその付勢力に抗しながらスイッチ部材35をハウジング2の内部に押し込めることで、ノズル16bの射出口を注射対象領域の表面に接触させ、注射のための準備操作を完了させることになる。このようにハウジング2の内部に押し込まれたスイッチ部材35の位置が、本発明に係る第2の位置に相当する。
[0045]
 この準備操作が完了した時点においては、スイッチ部材35はハウジング2内に、当初の突出高さh1分だけスライドするため、そのスライド量分だけバネ部36bが圧縮されることになる。そして、このバネ部36bが圧縮した状態では、スイッチ部材35の基端部35cが、スイッチ部材36の鍔部36aと接触する。したがって、スイッチ部材35とスイッチ部材36が電通状態となり、バッテリ30の出力電圧が接触端子30aに掛かり、シリンジユニット10に配置された点火器11に対して接続端子10aを介して電圧印加がなされ、注射液が射出されることになる。
[0046]
 このようにスイッチ部材35のハウジング2内へのスライドを起点として点火器11への電圧印加が制御される注射器1では、ユーザがノズル16bの射出口を注射対象領域に接触させる準備操作を開始し、該準備操作が完了すると、射出実行操作に相当するスイッチ部材35、36の接触によって、点火器11への電圧印加が連動して実行される。すなわち、注射器1では、準備操作と射出実行操作を、特にスライド動作をするスイッチ部材35を介して機械的に関連付けており、これにより、ユーザが準備操作が完了していない状態で射出実行操作を誤って実行してしまうことを回避することが可能となる。換言すれば、ノズル16bの射出口が注射対象領域に接触した状態でなければ、点火器11への電圧印加が実行されないことになる。そのため、注射器1では、意図しない注射液の射出を回避することが可能となる。
[0047]
 <変形例1>
 ここで、注射器1の第1の変形例について、図4に基づいて説明する。図4は、注射器1を先端側から見た場合の正面図である。上記実施例では、図4(a)に示すように、ハウジング2の先端面3aから突出しているスイッチ部材35は1つ配置されているが、本変形例では、図4(b)に示すように、ノズル16bの射出口を中心としてその周囲に3つのスイッチ部材35が等間隔(等角度)で複数配置されている。なお、各スイッチ部材35の突出高さは概ね同じ高さに設定されるとともに、各スイッチ部材35に対応した3つのスイッチ部材36がハウジング2内に配置される。そして、バッテリ30のプラス端子と接続端子30aとの間に3つのスイッチ部材35、36の対が直列に接続されている。
[0048]
 このように構成される本変形例に係る注射器1では、3つ全てのスイッチ部材35がハウジング内にスライドし、スイッチ部材35がそれぞれに対応するスイッチ部材36に接触することで、バッテリ30のプラス端子と接続端子30aとの間が導通状態となり点火器11への電圧印加が行われることになる。これにより、注射器1の準備操作としてユーザに対して3つのスイッチ部材35のスライドを要求することになるため、結果としてより注意深い準備操作を促すことができ、意図しない注射液の射出をより的確に回避することができる。また、3つのスイッチ部材35がノズル16bの射出口を中心として円周方向に沿って配置されており、且つ、これら複数のスイッチ部材のいずれもが、ノズル部16bとの距離が等しくなるように配置されている。そのため、この3つのスイッチ部材35を同時に注射対象領域に接触させてハウジング2内にスライドさせると、注射器1が注射対象領域に対して概ね垂直となるようにその姿勢が自動的に制御されることになる。これにより注射液の射出に適した注射器1の姿勢が確保されることになる。
[0049]
 <変形例2>
 ここで、注射器1の第2の変形例について、図5に基づいて説明する。上記実施例では、スイッチ部材35の鍔部35bとスイッチ部材36の鍔部36aとの間にバネ部36bが配置され、スイッチ部材35への付勢力によりスイッチ部材35の突出状態を維持する構成となっている。一方で、本変形例では、バネ部36bに代えた突出状態保持のための構成が採用されている。具体的には、スイッチ部材35が注射対象領域に接触していない状態でハウジング2の内部に位置する部分(図5(a)に示す点線の左側の領域に属するスイッチ部材35の部分)に設けられた円柱状の突起部35dと、ハウジング2内に固定された維持部材6とによって、突出状態が維持されることになる。
[0050]
 維持部材6は、図5(b)に示すように、2つの貫通孔6a、6bを有し、貫通孔6a、6bは、円形の貫通孔の一部が重なるように配置されて、いわゆるダルマ形状の貫通孔を形成している。貫通孔6a、6bの最大幅はともにD1である。そして、貫通孔6a、6bの境界となる幅W1は、幅D1よりも短くなる。ここで、突起部35dの直径はD2であり、幅D1よりわずかに小さく、且つ、幅W1よりわずかに大きい。そして、スイッチ部材35の先端部35aが突出した状態においては、突起部35dが図5(b)に示すように貫通孔6bに嵌め込まれている。突起部35dの直径D2は幅W1より大きいため、注射対象領域への接触により先端部35aに作用する押圧力が所定値以下である場合には、突起部35dは貫通孔6b内に留まることになる。
[0051]
 一方で、押圧力が高まり所定値を超えると、貫通孔6a、6bの境界付近の維持部材6が弾性変形し、境界の幅W1が広がることで、図5(c)に示すように突起部35dが貫通孔6bから貫通孔6aへと移動する。この結果、スイッチ部材35が先端部35aも含めてハウジング2内に押し込まれるとともに、基端部35cが鍔部36aに接触した状態となり、以て、点火器11への電圧印加が実行されることになる。このようなスイッチ部材35の維持構成を採用した注射器1によっても、意図しない注射液の射出を好適に回避することができる。なお、突起部35dが貫通孔6aに移動し終えると、貫通孔6a、6bの境界付近の維持部材6は上記弾性変形から復元し、再び、突起部35dの移動が制限されることになる。なお、図5の例においては、弾性変形するのは突起部35dとすることもできる。また、上記弾性変形以外にも、維持部材6や突起部材35dの塑性変形を利用して、上述したスイッチ部材35の移動を実現してもよい。
[0052]
 <変形例3>
 ここで、注射器1の第3の変形例について、図6に基づいて説明する。図6は、注射器の先端側を概略的に示す図である。図6に示す注射器1では、ノズル16bの射出口を囲むように3つのスイッチ部材35の先端部が突出している。各スイッチ部材35は所定の幅を有する帯状に形成されており、全体としてスイッチ部材35の先端部は、不連続な環状の突出部分を形成することになる。このように複数のスイッチ部材35を配置することで、上述したように意図しない注射壁の射出を好適に抑止することができるとともに、不連続な環状に形成された突出部分によって、注射時に射出された注射液が周囲に飛散するのを少なからず防ぐことが可能となる。
[0053]
 また、図6に示す注射器1のハウジング2の側面には、内部に装填されたシリンジユニット10内の注射液の状態(注射液の有無等)を外部から視認できるように、視認窓5が配置されている。この視認窓5の幅は、一のスイッチ部材35の端部Paと、隣接するスイッチ部材35の端部Pbとの距離W2よりも小さく設定されている。これにより、これらのスイッチ部材35のハウジング2内へのスライドが、視認窓5に干渉することを避けることができる。なお、視認窓5が1つ設けられる場合には、当該窓に対応する箇所においてスイッチ部材35同士を図6に示すように離間させ、その他の箇所においてはスイッチ部材35を繋げて、全体として馬蹄状のスイッチ部材を形成してもよい。
[0054]
 また、視認窓5を設ける必要がない場合、もしくは、視認窓5とスイッチ部材35のスライドとが干渉しない場合には、図7に示すように、スイッチ部材35を、ノズル16bの射出口を囲むように環状に形成してもよい。このような構成を採用することで、より確実に、射出された注射液の周囲への飛散を抑止することができる。
実施例 2
[0055]
 次に、本発明の第2の実施例に係る注射器1について、図8に基づいて説明する。なお、本実施例に係る注射器1の構成のうち、上記実施例1に係る注射器の構成と同一のものについては同一の参照番号を付して、その詳細な説明は割愛する。本実施例に係る注射器1は、バッテリ30のプラス端子とスイッチ部材36の鍔部36aとの間に、バッテリ30から点火器11への電圧印加を制御するための点火スイッチ37が更に設けられている点で、図2に示す注射器1と構成が異なる。
[0056]
 点火スイッチ37は、配線32aを介して鍔部36aに接続されるとともに配線32bを介してバッテリ30のプラス端子に接続されている。そして、ユーザの点火スイッチ37に含まれるボタンの押圧操作によりバッテリ30のプラス端子と鍔部36aとの間が導通状態となる。この点火スイッチ37の押圧操作方向は、ハウジング2の側面に対して垂直方向となる。したがって、ハウジング2の長手方向に沿うスイッチ部材35のスライド方向とは、略90度異なることになる。
[0057]
 このように構成される注射器1では、ユーザはノズル16bの射出口を注射対象領域に接触させてスイッチ部材35、36を導通状態とするとともに、点火スイッチ37を押圧操作することで、点火器11への電圧印加し注射液の射出が可能となる。このように点火器11への電圧印加に至るまでに、射出口と注射対象領域の接触操作の他に別の操作が要求されることで、更に、的確に意図しない注射液の射出を回避することが可能となる。更に、上記の通り、点火スイッチ37の押圧操作方向とスイッチ部材35のスライド方向とは異なっているため、ユーザに対して明確に異なる操作を要求することになる。そのため各操作は独立的に行われる必要があるため、意図しない注射液の射出回避に資することになる。
[0058]
 なお、スイッチ部材35、36を導通状態とすることと、点火スイッチ37の押圧操作は、いずれが先に行われてもよい。また、点火スイッチ37が押圧操作により導通状態を形成するものではなく、スライドスイッチをスライド操作することで導通状態を形成するタイプのスイッチでもよい。この場合も、そのスライドスイッチのスライド方向と、スイッチ部材35のスライド方向が異なるのが好ましい。あるいは、点火スイッチ37は、スイッチ部材35が第1の位置から第2の位置に移動した後でなければ操作できないように、あるいは操作しても通電しないように構成することもできる。
実施例 3
[0059]
 次に、本発明の第3の実施例に係る注射器1について、図9に基づいて説明する。なお、本実施例に係る注射器1の構成のうち、上記実施例1に係る注射器の構成と同一のものについては同一の参照番号を付して、その詳細な説明は割愛する。本実施例に係る注射器1では、スイッチ部材35に代えて、シリンジユニット10自体がハウジング2の先端面3の表面3bから突出する構成とされる点で、図2に示す注射器1と構成が異なる。したがって、図9に示す注射器1では、上述したスイッチ部材35、36の構成は採用されていない。
[0060]
 図9に示す注射器1では、ハウジング2の先端面3の表面3bから、シリンジユニット10に含まれたノズル16bの射出口が高さh2だけ突出するように、ハウジング2内にシリンジユニット10が装填される。そして、シリンジユニット10は、ハウジング2内でその長手方向に沿ってスライド可能となるように、ハウジング2対してバネ部17を介して接続されている。また、バッテリ30のプラス端子及びマイナス端子に接続された接続端子30bがハウジング2の底面2c上に突起状に形成されており、シリンジユニット10が底面2cに向かってスライドしたときに、シリンジユニット10側の接続端子10aと接触することで、バッテリ30の出力電圧が点火器11に印加されることになる。
[0061]
 シリンジユニット10に対して外力が作用していない場合は、バネ部17の付勢力との均衡により、上記の通りノズル16bの射出口位置は高さh2だけ先端面3bより突出した状態となっており、このとき接続端子30bと接続端子10aとは接触していないため点火器11への電圧印加は行われない。このように構成される注射器1では、ユーザがノズル16bの射出口を注射対象領域の表面に接触させ、その接触状態を保ちながらシリンジユニット10をハウジング内部に押し込むことで、接続端子30bと接続端子10aとを接触させ、点火器11に電圧印加及び注射液の射出を行わせることができる。したがって、ユーザは点火器11に電圧印加させるためには、ノズル16bの射出口を注射対象領域に接触させた状態で、シリンジユニット10をハウジング2内部に押し込んだ状態を維持しなければならず、図9に示す注射器1でもユーザの準備操作と射出実行操作が、本発明に係る突出部材に相当するシリンジユニット10を介して関連付けられることになる。よって、当該注射器1でも意図しない注射液の射出を回避することができる。
[0062]
 なお、シリンジユニット10がハウジング2の先端面3bから突出している場合、シリンジユニット10の先端が注射対象領域以外のものに接触し、不用意に点火器11に電圧印加が為されてしまうおそれも考え得る。そこで、図9に示すように、ハウジング2の先端面3の表面3b上に、シリンジユニット10の突出高さh2に相当する厚さを有する弾性シート38を設け、弾性シート38の表面とシリンジユニット10の先端面(ノズル16bの射出口位置)とを面一としてもよい。弾性シート38は、スポンジやゴム等の弾性部材によりシート状に形成されたものである。このようにシリンジユニット10の突出状態を弾性シート38によって隠すことで、シリンジユニット10に不用意に外力が作用してしまうことを避けることができる。このように構成される注射器1では、ユーザがノズル16bの射出口を注射対象領域の表面に接触させ、その接触状態を保ちながらシリンジユニット10をハウジング内部に押し込むとともに弾性シート38を圧縮することで、接続端子30bと接続端子10aとを接触させ、点火器11に電圧印加及び注射液の射出を行わせることができる。なお、点火器11への電圧印加を可能とするシリンジユニット10のスライド量h2’は、弾性シート38の厚さを考慮して、上記のh2より小さい値に設定すればよい。また図9の実施例においてバネ部17に代えて、シリンジユニット10とハウジング2とを、図5に示すような嵌合関係を利用して組み付けてもよい。また、図8に示すような点火スイッチ37を併用してもよい。
[0063]
 <その他の実施例>
 本願発明に係る注射器1によれば、上述した注射液を皮膚構造体に注射する場合以外にも、例えば、ヒトに対する再生医療の分野において、注射対象となる細胞や足場組織・スキャフォールドに培養細胞、幹細胞等を播種することが可能となる。例えば、特開2008-206477号公報に示すように、移植される部位及び再細胞化の目的に応じて当業者が適宜決定し得る細胞、例えば、内皮細胞、内皮前駆細胞、骨髄細胞、前骨芽細胞、軟骨細胞、繊維芽細胞、皮膚細胞、筋肉細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、腸管細胞、幹細胞、その他再生医療の分野で考慮されるあらゆる細胞を、注射器1により注射することが可能である。
[0064]
 さらには、特表2007-525192号公報に記載されているような、細胞や足場組織・スキャフォールド等へのDNA等の送達にも、本願発明に係る注射器1を使用することができる。この場合、針を用いて送達する場合と比較して、本願発明に係る注射器1を使用した方が、細胞や足場組織・スキャフォールド等自体への影響を抑制できるためより好ましいと言える。
[0065]
 さらには、各種遺伝子、癌抑制細胞、脂質エンベロープ等を直接目的とする組織に送達させたり、病原体に対する免疫を高めるために抗原遺伝子を投与したりする場合にも、本願発明に係る注射器1は好適に使用される。その他、各種疾病治療の分野(特表2008-508881号公報、特表2010-503616号公報等に記載の分野)、免疫医療分野(特表2005-523679号公報等に記載の分野)等にも、当該注射器1は使用することができ、その使用可能な分野は意図的には限定されない。

符号の説明

[0066]
 1・・・・注射器
 2・・・・ハウジング
 2b・・・・収容空間
 2c・・・・底面
 3・・・・先端面
 4・・・・貫通孔
 5・・・・視認窓
 6・・・・維持部材
 10・・・・シリンジユニット
 11・・・・点火器
 14・・・・ピストン
 15・・・・プランジャ
 16・・・・シリンジ
 17・・・・バネ部
 16a・・・・密閉空間
 16b・・・・ノズル
 30・・・・バッテリ
 35・・・・スイッチ部材
 35a・・・・先端部
 35b・・・・鍔部
 35c・・・・基端部
 36・・・・スイッチ部材
 36a・・・・鍔部
 36b・・・・バネ部
 37・・・・点火スイッチ
 38・・・・弾性シート

請求の範囲

[請求項1]
 注射針を介することなく、注射目的物質を射出することによって該注射目的物質を注射対象領域に注射する無針注射器であって、
 前記無針注射器のハウジング内に設けられた、前記注射目的物質を収容する収容部と、
 電圧が印加されると作動して、前記収容部に収容された前記注射目的物質を射出するための射出エネルギーを発生させる駆動部と、
 前記駆動部により発生された射出エネルギーが付与された前記注射目的物質が流れる流路を含み、該流路の先端に形成された射出口から該注射目的物質を射出するノズル部と、
 その先端が前記ハウジングの端面から突出した第1の位置から、該先端の該ハウジングの端面からの突出長さが該第1の位置における突出長さよりも短い位置であって、該先端と前記射出口とが前記注射対象領域に接触し得る第2の位置まで移動可能に設けられた突出部材と、
 前記駆動部による射出エネルギーの発生前において、前記突出部材を前記第1の位置に維持する維持機構と、
 前記第1の位置に維持されていた前記突出部材が、該突出部材の先端が受けた押圧力により前記第2の位置に移動すると、前記駆動部に電圧を印加する電源回路と、
 を備える無針注射器。
[請求項2]
 前記第1の位置は、前記突出部材の先端が、前記射出口よりも突出する位置である、
 請求項1に記載の無針注射器。
[請求項3]
 前記突出部材は、前記射出口を包囲する環状の部材から形成される、
 請求項1又は請求項2に記載の無針注射器。
[請求項4]
 前記突出部材を複数備え、
 複数の前記突出部材の全てが、前記第2の位置に移動することで、前記電源回路から前記駆動部への電圧印加が実行される、
 請求項1又は請求項2に記載の無針注射器。
[請求項5]
 前記複数の突出部材は、前記ハウジングの端面上において、前記射出口の周囲に円周方向に沿って配置される、
 請求項4に記載の無針注射器。
[請求項6]
 前記ハウジングは、内部を視認するための視認窓をその側面に備え、
 前記収容部は、収容された前記注射目的物質を、前記視認窓を通して外部から視認できるように形成され、
 前記複数の突出部材のそれぞれは、前記第1の位置から前記第2の位置への移動の前後において、前記視認窓と重ならないように配置される、
 請求項4又は請求項5に記載の無針注射器。
[請求項7]
 前記収容部、前記駆動部、及び前記ノズル部を一つのユニットとしてまとめて前記ハウジング内に格納するユニットであって、該ノズル部における前記射出口は、該ユニットの先端に配置される、シリンジユニットを、更に備え、
 前記突出部材は前記シリンジユニットとして形成され、且つ、前記第1の位置は、該シリンジユニットの先端が、前記ハウジングの端面から突出した位置である、
 請求項1に記載の無針注射器。
[請求項8]
 前記ハウジングの端面上に、前記シリンジユニットの先端を包囲する環状の弾力性を有するカバーを、更に備え、
 前記カバーは、前記シリンジユニットが前記第1の位置にあるときは、該カバーの先端の前記ハウジングの端面からの突出長さが、該シリンジユニットの先端の前記ハウジングの端面からの突出長さ以上であり、かつ、該シリンジユニットが前記押圧力によって押し込まれるときは、該押圧力によって弾性的に変形することによって前記シリンジユニットが前記第2の位置まで移動することを許容するように形成される、
 請求項7に記載の無針注射器。
[請求項9]
 前記突出部材が前記第1の位置から前記第2の位置への移動方向とは異なる方向において、前記電源回路から前記駆動部への電圧印加に関するユーザの操作により操作される操作スイッチを、更に備え、
 前記突出部材が前記第2の位置へ至り、且つ、前記操作スイッチが電圧印加可能となるように操作されることで、前記電源回路から前記駆動部への電圧印加が実行される、
 請求項1から請求項8の何れか1項に記載の無針注射器。
[請求項10]
 前記維持機構は、前記突出部材をその突出方向へ所定の付勢力で付勢する付勢部材を有する、
 請求項1から請求項9の何れか1項に記載の無針注射器。
[請求項11]
 前記維持機構は、前記押圧力が所定値以下のときは該押圧力に抗して前記突出部材を前記第1の位置に維持し、該押圧力が該所定値より大きいときには該突出部材の、前記第2の位置への移動を許容するように形成される、
 請求項1から請求項9の何れか1項に記載の無針注射器。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]